JP2008514934A - 炎症及び感染症のバイオマーカーとしてのgastrokine1(gkn1)の同定 - Google Patents

炎症及び感染症のバイオマーカーとしてのgastrokine1(gkn1)の同定 Download PDF

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Abstract

本発明は、炎症及び感染症の診断のための検出、進行の予後、並びに進行及び治療のモニタリングのための、液性バイオマーカーとしてのgastrokine1(GKN1; 配列番号1)の使用に関する。

Description

本発明は、胃腸管、特に腸に影響を与える炎症及び感染症の診断、進行の予後、並びに進行及び治療のモニタリングのための新規なバイオマーカーを同定する、胃腸管、特に腸に影響を与える炎症及び感染症の診断、進行の予後、並びに進行及び治療のモニタリングのための方法に関する。特に、本発明は、診断される炎症及び感染症が敗血症の病理学的なプロセス(感染性の病因を有する全身性の炎症;敗血症)の複雑な進行の一部であるか、又は炎症が慢性炎症性腸疾患、クローン病、又は潰瘍性大腸炎の1つの進行の一部である、前記のタイプの方法に関する。
全体に亘って単純に「診断(diagnosis)」又は「診断の(diagnostic)」のような用語を使用するが、文脈に根拠がない限り、問題の疾患のより具体的な鑑別診断、予後/早期の予後のための適用、及び進行及び治療のモニタリングを含む。
本発明は、敗血症の診断及び治療の更なる改善に関連する本出願人による集約的な研究に基づくものである。
敗血症と炎症との間には、構成及び定義において科学的関係が存在する。非常に一般的に、各種のタイプの外的作用、例えば損傷、火傷、アレルゲン、細菌及び真菌のような微生物による感染、並びにウイルス、拒絶反応を引き起こす異質の器官、又は身体のある種の炎症を引き起こす内因性の疾患、例えば自己免疫疾患及び癌に対する生物のある種の生理学的な防御反応が炎症として示される。
炎症がある種の外的プロセス、例えば自己免疫疾患に対する身体の誤った応答であるか、及び/又は慢性的な性質のものである際、あるいは全身性炎症反応症候群(SIRS)又は感染による重度の敗血症におけるもののように、炎症が全身に達する際には、炎症は実際に病的なプロセスとなる可能性があり、SIRS及び敗血症の場合のような典型的に炎症反応に関する病的なプロセスが制御不能である際には、生命に対する深刻な脅威となる可能性すらある。
全身性の炎症、例えば敗血症又は敗血症性ショックの場合には、炎症に特異的な反応カスケードが制御不能な様式で全身に進行し、過剰な免疫応答のために生命を脅かす。外的な炎症特定的物質の個々の群の発生及び潜在的な役割についての現在の知識に関しては、例えば、A. Beishuizen et al., "Endogenous Mediators in Sepsis and Septic Shock", Advances in Clinical Chemistry, Vol. 33, 1999, 55-131及びC. Gabay et al., "Acute Phase Proteins and Other Systemic Responses to Inflammation", The New England Journal of Medicine, Vol. 340, No. 6, 1999, 448-454を参照する。敗血症の理解及びそれによる定義の認識が近年において変化し、洗練されてきたため、敗血症の最新の定義が挙げられているK. Reinhart et al., "Sepsis und septischer Schock" [Sepsis and septic shock], in: Intensivmedizin, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 2001, 756-760、及び特にMitchell M. Levy et al., "2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definition Conference", in: Crit Care Med 2003, Vol. 31, No. 4,1250-1256も参照する。「重度の敗血症」の臨床的な症状の重要性に関しては、Niels C. Riedemann et al., The enigma of sepsis, J. Clin. Invest. 112:460-467 (2003)を参照する。敗血症及び密接に関連する臨床的症状の基準及び定義の最新のサマリーはhttp://www.talessin.de/scripte/medizin/sepsis1.htmlにおいて見られるべきである。本願において、敗血症という用語は、特に敗血症、重度の敗血症、及び敗血症性ショックを含む包括的な意味で、集中治療室における重病患者の敗血症性の臨床的症状に関する前記文献に挙げられている定義に基づいて使用する。
少なくとも欧州地域では、血液培養陽性によって検出可能な全身性の細菌感染が敗血症という用語を特徴付けている。その一方で、敗血症は感染によって引き起こされるが、病理学的なプロセスとして他の原因の全身性の炎症と非常に類似した全身性の炎症として主に理解されている。
敗血症の理解における前記変化は診断方法の変化に基づく。かくして、細菌性の病原の直接的な検出は、コンピューターを使用したいわゆるスコアシステム(例えば、APACHE II SCORE;APACHEは「急性生理学及び慢性的な健康及び評価(Acute Physiology and Chronic Health and Evaluation)」を意味する; cf.G. Pilz et al., Krankenpflege-Journal 29 (1991), Pages 483-492、又は特許DE42 27 454 C1の導入部)を使用する実験的なパラメーター及び血流学的パラメーターの複合的なモニタリング、並びにより最近では特に敗血症のプロセス又は炎症のプロセスに関与するある種の内在性物質、つまり特異的な「バイオマーカー」の検出を追加するか、又はそれに置き換わられている。
大多数の仲介物質及び急性期タンパク質のうち、特に敗血症又は敗血症のある段階に非常に特異的に生じ、濃度が大きく診断上変化し、ルーチンな測定に必要とされる安定性を有し、非常に高い濃度の値に達するタンパク質が診断目的には適している。病理学的なプロセス(敗血症)と個々のバイオマーカーとの信頼性のある相関関係が、診断のためにまず重要であり、敗血症のプロセスに関与する内在性の物質の複雑なカスケードにおけるその役割を具体的に知る必要はない。しかしながら、広範に亘る可能性がある治療的処置から最も適切な治療的処置が適用され得るように、「層化」において疾患の関連する原因又は同様に予測される進行を有する群に敗血症患者を分類できる新規な特定のバイオマーカーの測定に対する関心が高まっている。これに関連して、John C. Marshall et al., Crit Care Med 2003, Vol. 31, No. 5, 1560-1567も参照してよい。
敗血症マーカーとして得に適する確立された内在性の物質は、プロカルシトニン(PCT)である。プロカルシトニンは、感染性の病因を有する全身性の炎症(敗血症)の状態において非常に高い値の血漿濃度を有するプロホルモンであるが、健康なヒトでは実際には検出不可能である。敗血症の比較的初期の段階でプロカルシトニンの高い値に達するため、プロカルシトニンの測定は、敗血症の早期の診断及び感染による敗血症と他の原因の重度の炎症との間の早期の区別にも適する。敗血症マーカーとしてのプロカルシトニンの測定は、文献M. Assicot et al., "High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection", The Lancet, Vol. 341, No. 8841, 1993, 515-518;並びに特許DE 42 27 454 C2、EP 0 656 121 B1、及びUS 5,639,617の主題である。本明細書を補足する前記文献において挙げられる過去の文献の参照及び前記特許を特に参照する。
敗血症の診断におけるPCTを含むバイオマーカーの使用の最近の議論は、Shawn D. Carrigan et al., "Toward Resolving the Challenges of Sepsis Diagnosis" in: Clinical Chemistry 50:8, August 2004, 1301-14によるレヴューにおいても見られる。
敗血症マーカーであるプロカルシトニンの有用性は敗血症研究に相当の衝撃を与え、プロカルシトニン測定を補うことができ、正確な診断、鑑別診断、又は層化のための更なる情報を提供することができる更なるバイオマーカーを発見するために集約的な努力が最近為されている。
しかしながら、敗血症のプロセスに関与するある種の内在性の物質の発生の正確な理由又は正確な機能について、ほとんど又は全く知られていないという事実が、潜在的な新規敗血症バイオマーカーの探索を困難にする。
更なる潜在的な敗血症マーカーを決定するための有益で純粋に仮説的な方法の最初の実験結果は、本出願人のDE 198 47 690 A1又はWO 00/22439において見られる。敗血症において、プロホルモンであるプロカルシトニンの濃度上昇だけでなく、ペプチドプロホルモンの中でカウントできる他の物質、又はその様なプロホルモンのフラグメントであり、その様なプロホルモンの典型的な免疫反応性を有する他の物質に関しても濃度の有意な上昇が認められることを示している。
本出願は、更なる敗血症に特異的な生体分子の探索における他の有用な純粋に実験的なアプローチの結果である。これは、エンドトキシンの霊長類(ヒヒ)に対する投与又は細菌を霊長類に感染させることによって人工的な敗血症と称されて良い症状を誘導し、次いで「敗血症」のヒヒにおいてのみ認められ、そのため潜在的な敗血症に特異的なバイオマーカーであることを表わす内在性物質であるペプチド又はタンパク質の特性を、エンドトキシン処理及び未処理のヒヒのゲル電気泳動によるタンパク質スポットのサンプルの比較によって決定する。霊長類とヒトの生理学的な非常に大きな類似並びに多数の治療的及び診断的なヒトの試薬の高度な交差反応性のために霊長類モデルを選択した。
本出願人の以前の特許出願の実験の節において非常に正確に記載したように、処理した動物においてのみ同定され得る多数のタンパク質スポットが、エンドトキシン投与(Salmonella Typhimurium由来のLPS;下記の実験においてはS. pyogenes及びLPS E.coliも使用している)によるヒヒにおける人工的な敗血症の実験的誘導及び2Dゲル電気泳動による処理した動物の組織の精密検査後にのみ認められる。前記スポットに相当するタンパク質生産物を電気泳動ゲルから単離して、質量分析によって(特にタンデム型質量分析によって)調べる。
とりわけ、本出願人の以前の独国及び欧州特許出願において初めて記載したように、タンパク質「inflammin」(WO 02/085937)、CHP(WO 03/005035)、可溶性サイトケラチン-1フラグメント(sCY1F; WO 03/002600)、タンパク質LASP-1(WO 03/089934)、並びアルドース-1-エピメラーゼ(ムタロターゼ; WO 03/048780)、グリシンNアシルトランスフェラーゼ(GNAT; WO 03/048781)、及び可溶性カルバモイルホスフェートシンテターゼ1(CPS1; WO 03/089933)のような酵素を、前記方法によって新規敗血症マーカーとして同定した。関連のプロテオーム分析方法の議論、及びその方法を使用して確立し、ホルモンであるANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)の前駆体の中間部分の形態で同定され得る敗血症マーカーに関して得られる結果は、J. Struck et al., Immuno-analyse & biologie specialisee 19 (2004) 131-137で公表されている。
本出願人の前記の以前の出願及びその関連の文献の内容は、これらの出願及び文献の明示的な参照によって本願の開示の補足的な部分として解されるべきである。
DE42 27 454 C1 DE 42 27 454 C2 EP 0 656 121 B1 US 5,639,617 DE 198 47 690 A1 WO 00/22439 WO 02/085937 WO 03/005035 WO 03/002600 WO 03/089934 WO 03/048780 WO 03/048781 WO 03/089933 A. Beishuizen et al., "Endogenous Mediators in Sepsis and Septic Shock", Adbances in Clinical Chemistry, vol. 33, 1999, 55-131 C. Gabay et al., "Acute Phase Proteins and Other Systemic Responses to Inflammation", The New England Journal of Medicine, Vol. 340, No. 6, 1999, 448-454 K. Reinhart et al., "Sepsis und septischer Schock" [Sepsis and septic shock], in: Intensivmedizin, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 2001, 756-760 Mitchell M. Levy et al., "2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definition Conference", in: Crit Care Med 2003, Vol. 31, No. 4,1250-1256 Niels C. Riedemann et al., The enigma of sepsis, J. Clin. Invest. 112:460-467 (2003) G. Pilz et al., Krankenpflege-Journal 29 (1991), Pages 483-492 John C. Marshall et al., Crit Care Med 2003, Vol. 31, No. 5, 1560-1567 M. Assicot et al., "High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection", The Lancet, Vol. 341, No. 8841, 1993, 515-518 Shawn D. Carrigan et al., "Toward Resolving the Challenges of Sepsis Diagnosis" in: Clinical Chemistry 50:8, August 2004, 1301-14 J. Struck et al., Immuno-analyse & biologie specialisee 19 (2004) 131-137
本発明は、グラム陽性菌であるS. pyogenesを感染させたヒヒの小腸抽出物の可溶性タンパク質全体を使用する上述のタイプの実験において、健康なヒヒには存在せず、感染させたヒヒの抽出物においてのみ生じる物質を単離したという事実に基づく。前記物質は「gastrokine 1」(GKN1)として同定することができた。以下の実験の節でより詳細に説明する。
従って、請求項1によれば、本発明は、胃腸管に影響を与える炎症及び感染症の診断、進行の予後、並びに進行及び治療のモニタリングのための、液性バイオマーカーとしてのgastrokine 1(GKN1;配列番号1)の使用に広範に関する。
2つの好ましい診断的な使用は請求項2及び3に記載している。
請求項4から10は、敗血症の診断及び慢性炎症性腸疾患の診断のための好ましい方法、並びにそれらの好ましい拡張に関する。
実験の節により詳細に記載するように、本出願人による実験によって、過去の文献にはAMP-18、CA11、又はFOV(foveolin)と示されており、Human Gene Nomenclature Comitteeが2003年11月からgastrokine 1(GKN1)と命名した(Karin A Oien et al., Gastrokine is abundantly and specifically expressed in superficial gastric epithelium, down-regulated in gastric carcinoma, and shows high evolutionary conservation, J Pathol 2004; 203: 789-797)ペプチド物質が同定された。GKN1は2番染色体の6つのエクソンを含有する遺伝子によってコードされている。GKN1遺伝子の主な翻訳産物は185アミノ酸を含む(Martin TE et al., A novel mitogenic protein that is highly expressed in cells of the gastric antrum mucosa. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2003; 285: G332-43)。最初の20N末端アミノ酸は、分泌のシグナル配列であることが明らかである。対照的に、他の著者は、GKN1-mRNAの翻訳は早期に開始し、主な翻訳残物は199アミノ酸を含むであろうと仮説を立てている(Shiozaki K et al., Human stomach-specific gene, CA11, is down-regulated in gastric cancer. Int J Oncol 2001; 19:701-7; Yoshikawa Y. et al., Isolation of two novel genes, down-regulated in gastric cancer. Jpn J Cancer Res 2000; 91: 459-63)。シグナル配列の除去後、165アミノ酸を含む成熟GKN1がいずれの場合にも生じる。GKN1の配列について重要なことは、いわゆるBRICHOSドメイン(pos. 54-150)の存在である。このドメインは、痴呆、癌、及びARDS(急性呼吸促迫症候群)において役割を担う各種のタンパク質において認められている(Sanchez-Pulido L, Devos D, Valencia A., BRICHOS: a conserved domain in proteins associated with dementia, respiratory distress and cancer. Trends Biochem Sci 2002; 27: 329-32)。BRICHOSドメインの分子機能は未知である。
マウスにおけるGKN1の発現の組織特異性における研究によって、前記ペプチドが胃粘膜において専ら発現していることが示された(Martin TE, et al., 2003; loc. cit.; Karin A Oien, 2004, loc cit.)。GKN1は、ムチンを含有する「分泌顆粒」に蓄積される。
上皮細胞でGKN1によって細胞増殖及び分化が刺激されることが示された。かくして、GKN1は胃粘膜において増殖因子として作用することが明らかである(Martin TE et al., 2003; loc. cit.)。GKN1の中央部分の21アミノ酸のみ含む範囲がこの活性に重要である(Toback FG et al., Peptide fragments of AMP-18, a novel secreted gastric antrum mucosal protein, are mitogenic and motogenic. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2003; 285: G344-53)。免疫組織学的な研究は、胃癌でGKN1の発現が非常に低減していることを示した(Shiozaki K, 2001, loc. cit.; Yoshikawa Y et al., 2000; loc. cit.)。GKN1がマイトジェンとして作用するが、同時に癌においてダウンレギュレートされるという明らかな矛盾のもっともらしい説明はいまだに為されていない。
GKN1に関連する(幾つかは非常に漠然と関連する)特許出願及び特許として以下を挙げる。
WO 02/092758又はWO 02/078640及び米国特許6,734,289 B2は、フラグメント又はインヒビターとしてのGKN1の治療応用に関する。
WO 00/61623 A1は、分泌タンパク質と主張されている62タンパク質のcDNA配列を挙げている;これらのcDNAの1つがGKN1に特定される可能性がある。
WO 00/00610 A2は、シグナル配列を有する多数のペプチドを挙げており、その中にGKN1がある。
WO 01/93983は、とりわけGKN1に対する抗体及び細胞内発現レベルの測定による癌の検出に関する。
WO 02/00690は、とりわけGKN1に対する抗体に関する。GKN1と感染症/炎症又は敗血症との間の関係は、前記特許出願のいずれにおいても確立されていない。
GKN1は、その細胞外の領域への分泌を可能にするシグナル配列を有するタンパク質である。そのため、GKN1は胃粘膜では細胞外において認められる。
しかしながら、炎症/敗血症の場合には、GKN1、又はGKN1免疫反応性を有する病態生理学的に生じるGKN1フラグメント、GKN1のスプライシングバリアント及び/又は翻訳後修飾された形態が体液中、特に血液循環中でも検出されることが予測されるべきである。そのため、本発明は、特に血清及び/又は血漿においても測定され得る液性バイオマーカーとしてのGKN1、又はGKN1免疫反応性を有するGKN1の病態生理学的に生じるフラグメント、スプライシングバリアント、及び/又は翻訳後修飾された形態の測定に関する。
少なくとも適用した試験条件の下では、GKN1として同定したタンパク質スポットが、LPS E. coliを感染させたヒヒではなく、グラム陽性菌(S. pyogenes)を感染させたヒヒの小腸抽出物においてのみ認められたため、グラム陽性菌感染に特異的にGKN1が生じる可能性があり、そのためGKN1の検出が鑑別診断目的のために(敗血症を誘導する感染症のタイプを示すものとして)使用することができる。
体液中のGKN1の測定は、免疫診断アッセイ方法(リガンド結合アッセイ;免疫アッセイ)を用いて好適に効果を示す。
当然、必要とされる特異性及び感度を考慮して、既知の原理に従って機能する任意のリガンド結合アッセイ/免疫アッセイを、体液中、特に血清又は血漿のような血液循環中のGKN1の定量的又は半定量的な測定のために使用してよい。
好ましい実施態様では、第1のGKN1-結合抗体を任意の固体相(例えば、コーティングされた試験管の壁(例えばポリスチレンのもの;コーティングされた管;CT))、又はマイクロタイタープレート(例えばポリスチレンのもの)、又は粒子(例えば磁性粒子)に固定化し、一方でGKN1に特異的な更なる抗体が、直接検出可能なラベルである残基を有するか又はラベルを選択的に結合させてサンドイッチ構造の形成の検出に役立つ、不均一サンドイッチ免疫アッセイ(heterogeneous sandwich immunoassay)として前記方法を実施する。適切な固体相を使用して遅延させて又は後に続いて固定化することも可能である。
原則として、上述のタイプのアッセイに使用でき、放射性同位体、酵素、又は蛍光、化学発光、若しくは生物発光ラベルを使用する標識、及び特にその場(point-of care(POC))での試験又は試験の迅速化のために使用される光学的に検出可能な色標識、例えば金原子及び染色粒子を含む、全ての標識技術が使用されて良い。そのため本発明において、本発明に係る方法は迅速化された試験として設計されるべきでもある。
GKN1の測定方法は、例えばサンドイッチ複合体が2つの抗体から形成され、検出されるGKN1がリガンド相に懸濁された状態である均一な(homogeneous)検出方法を使用して実施しても良い。その様な場合では、双方の抗体が単一のサンドイッチ中で一緒にされる際にシグナルを発生又はシグナルを作動させる検出システムの部分を使用して、双方の抗体を標識することが好ましい。その様な技術は、特に蛍光増幅又は蛍光の消光を検出する方法として意図されて良い。特に好ましいこのタイプの方法は、対で使用される検出試薬の使用に関するものであり、例えばUS-A-4 822 733、EP-B1-180 492、又はEP-B1-539 477及びそれらに記載されている先行技術に記載されている。それらは、反応混合物において直接的に単一の免疫複合体中の標識成分の双方を含有する反応生成物のみ選択的に検出する測定を可能にする。例として、前述の特許出願の教示を実施するようなTRACE(登録商標)(Time Resolved Amplified Cryptate Emission)及びKRYPTOR(登録商標)という名称の技術を参照する。
しかしながら、不均一サンドイッチ免疫アッセイの場合であっても、GKN1に特異的な2つの抗体が、均一アッセイに関して記載されているようなタイプの検出システムの部分を有して良い。
以下に記載のように、細胞質小腸抽出物におけるGKN1の(検出可能な発現であるという状況での)発生は、エンドトキシン刺激を誘導する前述の「敗血症」又は前述の感染症と関連する。未処理の対照では、小腸細胞にGKNが検出されない可能性があり、冒頭に記載の文献と一致する。そのため、GKN1はまず潜在的な敗血症マーカーであり、今まで小腸の細胞においてのみ検出されている感染特異的な発生のため、このマーカーは、敗血症患者において検出可能である際には、感染症/炎症/敗血症が胃腸管、特に腸に進行していることを示唆する。
慢性的な炎症性腸疾患又はその様な疾患の急性のエピソードにおいても腸特異的な炎症マーカーとしてGKN1を検出することが可能であり、診断目的のために又は特に進行及び治療のモニタリングのために使用して良いことが更に予想されるべきである。
(実施例1)
動物モデル(ヒヒ)におけるエンドトキシン投与による感染の刺激
エンドトキシン注射によるプロカルシトニン分泌を刺激するため(cf. H. Redl, et al., "Procalcitonin release patterns in a baboon model of trauma and sepsis : Relationship to cytokines and neopterin", Crit Care Med 2000, vol. 28, No. 11, 3659-4663; H. Redl et al., "Non-Human Primate Models of Sepsis", in: Sepsis 1998; 2 : 243-253)及び上述の以前の本出願人の特許出願及び特許に従って新規敗血症マーカーを同定するためにヒヒを使用して実施した試験に関して、29から35kgの重量のオスのヒヒ(チャクマヒヒ(papio ursinus))に2時間に亘って、300mlの生理食塩水(対照群)、1-2×108 cfu/kgのS. pyogenes(グラム陽性菌感染)、又は100μg/kgのLPS E. coli 026:B6 (グラム陰性菌感染)の各々を注入した。試験開始の6時間後、すなわち注入が終わった4時間後に、飽和KCl溶液を使用して前記動物を屠殺し、組織サンプルを回収して、これらを液体窒素の中で即時に凍結した。
更なる処理において、窒素で冷却しながら、個々の凍結組織のサンプル(各々1.5g)を3mlのバッファーA(50mM HEPES、pH 7.1、50mM NaCl、20%グリセロール、250μMロイペプチン、100μMアマスタチン、1mM ペファブロック)と混合して、磁器製の乳鉢中で粉末化して粗粉末を得た(cf. J. klose, "Fractionated Extraction of Total Tissue Proteins from Mouse and Human for 2-D Electrophoresis", in: Methods in Molecular Biology, Vol. 112:2-D Proteome Analysis Protocols, Humana Press Inc., Totowa, NJ)。その後に、前記サンプルを超音波水浴中において10秒間で6回処理し、その懸濁物を4℃、100000gで40分間遠心分離した。第1の細胞内可溶質の上清を得て、残部のペレットをバッファーAに再懸濁し、上述のように超音波で再び処理して、遠心分離した。そこから得られた第2の上清を第1の上清と混合し、更なる処理まで-80℃で保存した。
(実施例2)
ヒヒ由来の細胞質性小腸細胞タンパク質を使用する比較プロテオーム分析
第1の健康なヒヒ(NaClを注入した対照)及びLPS E. coli又はS. pyogenesを注入した第2のヒヒ由来の細胞質性小腸タンパク質抽出物をプロテオーム分析に使用した。予備的な2Dゲル電気泳動分析では、100μgのタンパク質を含有する小腸タンパク質抽出物を9M尿素、70mM DTT、2%両性イオン、pH2-4に調整し、次いでJ. Klose et al., "Two-dimensional electrophoresis of proteins: An updated protocol and implications for a functional analysis of the genome", Electrophoresis 1995, 16, 1034-1059に記載されているように2Dゲル電気泳動分析によって分離した。2Dゲルにおけるタンパク質の可視化は銀染色によって実施した(cf. J. Houkeshoven et al., "Improved silver staining procedure for fast staining in Phast-System Development Unit. I. Staining of sodium dodecyl gels", Electrophoresis 1988, 9, 28-32)。
評価するために、対照のタンパク質スポットサンプルを敗血症誘導動物の組織由来のタンパク質スポットサンプルと比較した。
対照サンプルでは生じていないが、処理した動物の全てにおいて付加的に生じた物質を更なる分析実験のために選択した。図1は、対照サンプル(A)と処理した動物のサンプル(B)に関する2Dゲルの比較を示し、ゲル内の位置が矢印と丸で強調されているGKN1に相当する(B)の付加的なタンパク質スポットを示す。
2Dゲル電気泳動分析のタンパク質スポットサンプルにおいて検出した新規の特異的なタンパク質の同定のために、次いで、450μgのタンパク質を使用して2Dゲル電気泳動による分離を実施した。2Dゲル電気泳動による分離では、タンパク質の染色をクマシーブリリアントブルーG250によって実施した(cf. V. Neuhoff et al., "Improved staining of proteins in polyacrylamid gels including isoelectric focusing gels with clear background at nanogram sensitivity using Coomassie Brilliant Blue G-250 and R-250", Electrophoresis 1998, 9, 255-262)。
更なる分析のために事前に選択したタンパク質スポットをA. Otto et al., "Identification of human myocardial proteins separated by two-dimensional electrophoresis using an effective sample preparation for mass spectrometry", Electrophoresis 1996, 17, 1643-1650に記載の方法を使用してゲルから切り出し、トリプシンを使用して切断して、生じたペプチドを質量分析によって、特に例えばG. Neubauer et al., "Mass spectrometry and EST-database searching allows characterization of the multi-protein spliceosome complex", in: Nature Genetics Vol. 20, 1998, 46-50; J. Linger et al., "Reverse Transcriptase Motifs in the Catalytic Subunit of Telomerse", in: Science, Vol. 276, 1997, 561-567; M. Mann et al., "Use of mass spectrometry-derived data to annotate nucleotide and protein sequence database" in: TRENDS in Biochemical Sciences, Vol. 26, 1, 2001, 54-61に記載され議論されている質量分析解析を使用して分析した。
トリプシン消化したサンプルをESI(エレクトロスプレーイオン化)によってタンデム質量分析に供した。Dionex社製のナノLCシステムをApplied Biosystems ABI社製のQSTAR ESI-MS/MS質量分析器と組み合わせて使用した。装置の製造業者の操作説明に従って実施した。
(実施例3)
gastrokine1(GKN1)の同定
図1(A)及び(B)に示すように、とりわけ、既知の分子量を有するマーカー物質と比較してゲル電気泳動のデータに基づいて推定された約19000ダルトンの分子量の新規タンパク質が、S. pyogenesを注射投与したヒヒの小腸細胞抽出物に存在する。約8.6から8.8の等電点が一次元目からタンパク質の相対的な位置より推定された。
このタンパク質をトリプシンで消化した後に、上述のように質量分析によって分析した。Mascotソフトウェア(http://www.matrixscience.com/search form select. html)を使用するNCBInrデータベース20031016の哺乳動物配列における測定したペプチドのデータベース検索において、既知のタンパク質に特定することが可能であった。データベース検索は、スコアリスト(可能性に基づくマウススコア)と共に認められたタンパク質のリストを提示する。個々のスコアが50より大きいペプチドをp<0.05、すなわち95%の確率で疑いなく同定されたものとみなす。データベース登録gi17366998(CA11)及びgi136429(18kDa antrum mucosa protein; AMP-18)に係るタンパク質においてのみ生じる2つのペプチド(重複した試験の各々の場合において;酸化されていないペプチド及び酸化されたペプチド)が有意な範囲(120のスコア)で同定することができた。CA11及びAMP-18はgastrokine 1(GKN1)の別名である。
シグナル配列の除去後の完全な配列(配列番号1)が既知であるヒトGKN1は、理論的には5.3のpIを有し、ヒヒのタンパク質に関して実験的に観察されたものよりもかなり酸性である。ヒヒのタンパク質の完全なアミノ酸配列が文献からは既知でなく、理論的なpIを算出することができない。しかしながら、ヒト及びヒヒに進化的に近いブタ由来のGKN1(Swiss Prot No. Q8HYA9)は8.3の理論的なpIを有することを考慮すると、ヒトとヒヒのタンパク質の間のpI値の差は信頼できるものであろう。
MS/MSによって、トリプシン消化した2つのペプチドのアミノ酸配列をGLMYSVNPNK(配列番号2)及びGLMYSVNPNKVDDLSK(配列番号3)と決定することができた。これらのペプチドはヒトGKN1(配列番号1)の配列のアミノ酸118-127及び118-133に相当する。より長い配列(配列番号3;中性ペプチドの計算されたモノアイソトピック質量(Mr):1794.88)を特定することが可能であった、測定されたより強力なイオンピークに関しては、このペプチドのフラグメンテーションに対して理論的に可能なb及びy系列の158イオンの内、異なる電荷状態で29が生じた。
そのため、ペプチドフラグメントGLMYSVNPNKVDDLSK(配列番号3)は疑いなく同定されたと解されるべきである。データベース検索によれば、前記ペプチドはヒトGKN1に相当するタンパク質にのみ生じるため、感染させた動物においてのみ認められたヒヒのタンパク質はヒトGKN1に相当するタンパク質であり、少なくとも同定した配列の部分においては同一の配列を有すると解されるであろう。特にヒヒにおいて人工的に誘導した敗血症の結果に基づく上述の本出願人による多数の研究において再現的に認められてもいるような、ヒヒとヒトの病態生理学的な反応の非常に大きな類似性のために、感染症又は敗血症のヒトの患者において生じる状態が上述のヒヒの動物モデルにおける状態と実質的に同一であると解されるであろう。
図1は、健康なヒヒの細胞質性小腸タンパク質のスポットのパターン(A)とグラム陽性菌(S. pyogenes)の注射による敗血症誘導の6時間後のヒヒの小腸タンパク質(B)との比較を可能にする拡大した2つの2D電気泳動ゲルを示す。矢印は、GKN1と同定した本発明に係る敗血症特異的な生産物の位置を示す。図(B)では丸で強調している。

Claims (10)

  1. 炎症及び感染症の診断、進行の予後、並びに進行及び治療のモニタリングのための液性バイオマーカーとしてのgastrokine 1(GKN1;配列番号1)の使用。
  2. 患者の体液、特に血清又は血漿におけるGKN1、並びに/又はGKN1免疫反応性を有するGKN1の病態生理学的に生じるフラグメント、スプライシングバリアント、及び翻訳後修飾された形態の発生及び/又は量の測定によって、敗血症及び重度の感染症の早期の鑑別診断及び同定、重症度の測定、並びに進行及び治療のモニタリングのための請求項1に記載の使用。
  3. 患者の体液、特に血清又は血漿におけるGKN1、並びに/又はGKN1免疫反応性を有するGKN1の病態生理学的に生じるフラグメント、スプライシングバリアント、及び翻訳後修飾された形態の発生及び/又は量の測定による、慢性炎症性腸疾患、クローン病、又は潰瘍性大腸炎の早期の鑑別診断及び同定、重症度の測定、並びに進行及び治療のモニタリングのための請求項1に記載の使用。
  4. 患者の体液におけるgastrokine 1(GKN1)、並びに/又はGKN1免疫反応性を有するGKN1の病態生理学的に生じるフラグメント、スプライシングバリアント、及び翻訳後修飾された形態の存在及び/又は量を測定し、GKN1免疫反応性の検出及び/又は量から敗血症、感染症、又は慢性炎症性腸疾患の存在、予測される進行、重症度、及び治療の成功に関連する結論を出すことを特徴とする、敗血症及び重度の感染症、特に胃腸管に影響を与える敗血症様の全身性感染症、並びに慢性炎症性疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎の早期の鑑別診断及び同定、進行の予後、重症度の評価、進行及び治療のモニタリングのための方法。
  5. 免疫診断アッセイ方法であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. サンドイッチアッセイの形態の不均一又は均一免疫診断アッセイ方法であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 少なくとも1つの更なる敗血症パラメーターを同時に測定し、正確な敗血症診断及び患者の層化のために評価する少なくとも2つの測定量のセットの形態で測定結果が得られる複数のパラメーターのアッセイの一部として実施されることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. GKN1免疫反応性に加えて、プロカルシトニン、CA 19-9、CA 125、S100B、S100Aタンパク質、可溶性サイトケラチンフラグメント、特にCYFRA 21、TPS、及び/又は可溶性サイトケラチン-1フラグメント(sCY1F)、酵素であるアルドース-1-エピメラーゼ、グリシンN-アシルトランスフェラーゼ(GNAT)、Cu/Zn-SOD、カルバモイルホスフェートシンテターゼ(CPS)、及び前記酵素のフラグメント、ペプチドであるinflammin、CHP、LASP-1、及び血管作用性ペプチドの前駆体、特にプロANP、プロ-エンドセリン、プロ-バソプレッシン、及びプロ-アドレノメジュリンに由来する免疫反応性、並びにサイトカイン、インターロイキン、TNF、及びC-反応性タンパク質(CRP)からなる群より選択される少なくとも1つの更なるバラメーターを、複数のパラメーターのアッセイの一部として測定することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 前記複数のパラメーターのアッセイが、チップ技術で測定する装置又は免疫クロマトグラフィーで測定する装置によって同時に測定されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 前記測定装置を使用して得られた複合的な測定結果の評価をコンピュータープログラムを使用して実施することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
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