JP2008513035A - Ap205のコートタンパク質と抗原性ポリペプチドとの融合タンパク質を含んでなるウイルス粒子 - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野
本発明は、医学、免疫学、ウイルス学及び分子生物学の分野に関連する。
本発明は、RNAバクテリオファージAP205由来の修飾されたウイルス様粒子(VLP)を含有してなる組成物を提供する。また、本発明は、前述のVLPの産生方法を提供する。本発明において開示した修飾されたVLPは、感染性疾患、アレルギー、癌及び薬物中毒を含む疾患、障害の予防又は治療のために免疫応答を誘発するための組成物の産生に有用である。さらに、本発明の修飾されたVLPは、特に、自己特異的免疫応答、特に抗体応答を効果的に誘発するために有用である。
ウイルスのコートタンパク質に融合される外因性エピトープに対して免疫応答を誘発させるためには少なくとも2つの条件が必要である。まず第一に、外因性配列の融合がウイルス様粒子内のコートタンパク質のアッセンブリを妨げないこと、第二に、外因性エピトープがウイルス様粒子の表面上に表出されることである。RNAファージのコートタンパク質へのアミノ酸配列の融合については、過去に記載されている。例えば、MS2ファージのコートタンパク質のABループ内へのエピトープの挿入が記載されている(国際公開公報92/13081;Mastico 等 J. Gen. Virol. (1993) 74:541-548)。エピトープのN末端又はC末端の融合はMS2ファージについて記載されていない。この技術の重大な限界は、MS2のABループ内への挿入を介してポリペプチドがその天然の立体構造とは異なる立体構造内に無理に存在することである。
しかしながら、多くの場合、エピトープのフリーN末端又はフリーC末端の存在はエピトープ認識のための重要な因子である。例えば、Seubert P. 等 (Neurobiol. (2004), Aging 25: S588)は、Aβエピトープのマッピングはそれぞれのワクチンによって誘発された抗体に認識されるが、マッピングした試料の41では、主要な抗体エピトープがAβの遊離型(フリー)アミノ末端に対するものであることを発見し、報告した。同様に、アンジオテンシンIIのC末端に特異的な抗体も記載されている(Budisavljevic M. 等. (1988) J. Immunol. 140:3059-3065)。
したがって、当分野では、多種類の抗原がウイルスのコートタンパク質に融合し、結果として生じる融合タンパク質がVLPを形成して、VLPの該表面上に抗原を表出することができる能力を有する、ウイルスのコートタンパク質を同定することが求められている。さらに、外因性エピトープの融合が起こり、フリー末端が強力な免疫原性を担う場合にエピトープのフリー末端がアクセス可能になるような、ウイルスのコートタンパク質を発見することが求められている。
驚くべきことに、多種類のポリペプチドがAP205のコートタンパク質のN末端又はC末端に融合することができ、宿主、一般的で好ましくは大腸菌内で発現された場合、結果として生じる融合タンパク質はウイルス様粒子を形成することを発見した。さらに驚くべきことに、前記ポリペプチドが少なくとも一の抗原を含有する場合、抗原又は抗原の少なくとも一の抗原性部位がアッセンブリされたVLPの体表面上に表出されることも発見した。
したがって、第一の態様では、本発明は、少なくとも一の融合タンパク質を含有してなる修飾されたウイルス様粒子(VLP)であって、当該少なくとも一の融合タンパク質が:(a) 第一ポリペプチド;と(b) 第二ポリペプチドとを含有してなり、該第一ポリペプチドがAP205バクテリオファージのコートタンパク質又はそのムテインであり、該第二ポリペプチドが該第一ポリペプチドのN末端又はC末端の何れかに融合している、修飾されたウイルス様粒子を提供する。
さらに、本発明は、少なくとも一抗原の少なくとも一端が自由にアクセス可能としている。これは、フリー端(free end)が強力な免疫応答の誘発の原因とみなされる場合に重要である。さらに、コートタンパク質の何れかの一端に少なくとも一の抗原を表出するために同じVLPを使用する可能性から、運搬の効果に依存しない、少なくとも一の抗原のN末端又はC末端融合型の免疫原性を評価することができる。
他の態様では、本発明は、修飾されたVLPを含有するワクチン組成物を提供する。さらに、本発明は、動物又はヒトへのワクチンの投与方法を提供する。
ある態様では、本発明は、(a) スペーサーをコードするヌクレオチド配列を、第一ポリペプチドをコードする第一ヌクレオチド配列又は第二ポリペプチドをコードする第二ヌクレオチド配列に(選択的に)インフレームで連結する;(b) 前記第二ヌクレオチド配列を前記第一ヌクレオチド配列にインフレームで連結した結果、前記の融合タンパク質をコードする第三ヌクレオチド配列を生じる;(c) 第一ヌクレオチド配列の3'で抑制される停止コドンを(選択的に)導入する;(d) 好ましくは結果として生じる発現されたタンパク質が前記の修飾されたウイルス様粒子を形成することができる条件下で、宿主内で該第三ヌクレオチド配列を発現させる;そして(e) (d)の工程で得られた該修飾されたウイルス様粒子を精製する、という工程を含む、本発明の修飾されたVLPの産生方法を提供する。
更なるある態様では、本発明は、修飾されたVLPと薬剤的に受容可能な担体を含有してなる薬剤組成物を提供する。
さらに他の態様では、本発明は、動物又はヒトに、本発明の修飾されたVLP又は、本発明の薬剤組成物又は、本発明のワクチン組成物が投与されることを含む、個体の疾患、障害又は病理学的症状を治療又は予防する方法を提供する。
定義:
「AP205バクテリオファージ」なる用語及び「RNAファージAP205」なる用語は、本明細書中において相互に交換可能に用いられる。
抗原:本明細書で使用するように、「抗原」という用語は、MHC分子によって提示される場合、抗体又はT細胞レセプター(TCR)に特異的に結合されうる分子を指す。「抗原」という用語は、本明細書で使用するように、T細胞エピトープも含む。さらに抗原は、免疫系に認識されることができ、及び/又は、B及び/又はTリンパ球の活性化がもたらされる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、このことは、少なくともいくつかの場合において、抗原がTh細胞エピトープを含むかあるいはこれと連結し、アジュバント中に存在することが必要でありうる。または抗原が本発明に従って提示されることが必要でありうる。抗原は、1つ又は複数のエピトープ又は抗原性部位(BおよびTエピトープ)を有しうる。本明細書中で用いる「特異的な結合」なる用語は、抗原が、好ましくは典型的には非常に選択的な方式で、その対応する抗体又はTCRと反応し、他の抗原によって誘発される可能性がある多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意図する。また、ここで用いた抗原はいくつかの別々の抗原の混合でもよい。しかしながら、本出願の範囲内で用いられる「抗原」なる用語は、AP205バクテリオファージのVLPに加えて、さらにAP205のコートタンパク質又はそのムテインに加えて、AP205のコートタンパク質又はそのムテインでない抗原であり、AP205バクテリオファージのVLPでない抗原であることを意味する。
結合(bound):本発明で用いる「結合」なる用語は、共有、たとえば化学的結合、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を指す。共有結合は、たとえばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、イミド、炭素−イオウ結合、炭素−リン結合などであってよい。また、この用語は、物質の封入、又は部分的封入も含む。「結合(bound)」なる用語はより広義であり、「連結(coupled)」、「融合(fused)」、「封入(enclosed)」、「パッケージ化(packaged)」および「付着(attached)」などを含む。
AP205バクテリオファージのコートタンパク質:ここで用いる「AP205のコートタンパク質」なる用語は、AP205バクテリオファージのゲノム又はAP205バクテリオファージの変異体のゲノムによってコードされるコートタンパク質を意味する。典型的に好ましくは、本明細書中で用いられる「AP205のコートタンパク質」なる用語は、AP205バクテリオファージのゲノムによってコードされるコートタンパク質を意味する。より好ましくは、「AP205のコートタンパク質」なる用語は、配列番号1又はそのアミノ酸配列を意味し、この第一メチオニンは配列番号1(配列番号67)から切断される。典型的に好ましくは、AP205のコートタンパク質は、ウイルスキャプシドの一サブユニット又はRNAファージAP205のVLPとしてアッセンブリされうる。
エピトープ:ここで用いる「エピトープ」なる用語は、動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトの、抗原又は免疫活性を有するポリペプチドの連続的又は非連続的一部分を指す。エピトープはMHC分子の関係でそのT細胞レセプターを介して抗体又はT細胞により認識される。ここで用いる「免疫原生エピトープ」は、当分野で知られている任意の方法によって決定される(たとえば、Geysen他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA81:3998-4002(1983)を参照のこと)、動物の抗体応答を誘発するかあるいはT細胞応答を誘導する、ポリペプチドの一部分として定義する。本明細書で使用する「抗原性エピトープ」は、当分野でよく知られている任意の方法によって決定される、抗体がその抗原に特異的に結合するタンパク質の一部分として定義される。免疫特異的結合は非特異的結合を除外するが、他の抗原との交差反応性は必ずしも除外しない。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。抗原性エピトープはT細胞エピトープであってもよく、この場合抗原性エピトープを、MHC分子の概念でT細胞レセプターによって免疫特異的に結合させることができる。
融合(fusion)(又は融合する(fuse)):本明細書中で用いられる「融合」(又はその動詞である「融合する」)なる用語は、コードするヌクレオチド配列がインフレームで組み合わさることによって、一つのポリペプチド鎖内に異なる起源のアミノ酸配列が組み合わさっていることを意味する。一以上のヌクレオチド配列は、ゲノムコードの縮重によりある特定のアミノ酸配列をコードしうる。
免疫賦活物質:本明細書で使用するように、「免疫賦活物質」なる用語は、免疫応答を誘導する、及び/又は高めることができる物質を指す。好ましくは、免疫賦活物質は、toll様レセプター(toll-like receptor)活性化物質を指す。本出願の文脈で用いられる「免疫賦活性物質」なる用語は、前記の修飾されたVLPに加えて、本発明の修飾されたVLPでない免疫賦活性物質を指す。
ポリペプチド:本明細書で使用するように、「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結したモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの生成物を指すわけではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義中に含まれる。たとえば、グリコシル化、アシル化、リン酸化など、ポリペプチドの翻訳後修飾も包含する。
本明細書中で用いられるウイルス様粒子(VLP)とは、ウイルス粒子に似ている構造を指す。本発明のウイルス様粒子はウイルスゲノムのすべてないしは一部を欠損している、典型的に好ましくは、ウイルスゲノムの複製及び感染因子のすべてないしは一部を欠損しているため、非複製性で非感染性である。
本出願内で、抗体は、106M−1以上、好ましくは107M−1以上、より好ましくは108M−1以上、最も好ましくは109M−1以上の結合親和性(Ka)で抗原に結合する場合、特定に結合するものとして定義される。抗体の親和性は、当分野の通常の任意の技術(例えばスキャッチャード分析)によって測定することができる。
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも1つ」、又は「1つ又は複数」を意味する。
本明細書中で用いられる任意の数値を示す場合の「約」又は「およそ」なる用語は、記載の値の±10%の値を意味することを意図する。例えば、「約50℃」(又は「およそ50℃」)は、45℃から55℃の温度範囲を包括的に包含する。同様に、「約100mM」(又は「およそ100mM」)は、90mMから110mMの濃度範囲を包括的に包含する。
近年、RNAバクテリオファージAP205が同定されている(Klovins,J., 等, J. Gen. Virol. 83: 1523-33 (2002))。AP205RNAファージ(Taxonomy ID: 154784)は、一本鎖のポジティブ鎖RNAウイルスである。AP205ゲノムは、長さの4267ヌクレオチド(nt)である(寄託 AF334111, NC_002700)。AP205ファージの天然の宿主はアシネトバクター属種である。(Klovins,J., 等, J. Gen. Virol. 83: 1523-33 (2002))。AP205ファージのゲノムは、3つの大きな転写解読枠(ORF)を具備しており、このORFは成熟タンパク質、コートタンパク質およびレプリカーゼタンパク質をそれぞれコードする。加えて、2つの付加的な小さいORFが成熟遺伝子の前の5'末端に存在する。これらのORFによってコードされるタンパク質の機能は、知られていない。これらのORFのうちの1つが溶解タンパク質をコードすると推測されている(Klovins,J., 等, J. Gen. Virol. 83: 1523-33 (2002))。また近年、VLP内での大腸菌で発現されたAP205コートタンパク質のアッセンブリについては国際公開公報2004/007538において開示されており、その開示内容は引用により本明細書中に組み込まれる。AP205のコートタンパク質のクローニング及び発現については、国際公開公報04/007538の24頁の第2段落から25頁の第2段落と同じ出願の実施例1及び2に開示されており、これらの具体的な開示内容は引用によって本明細書中に組み込まれる。
本発明のある好適な実施態様では、AP205バクテリオファージの前記コートタンパク質又はそのムテインが:(a) 配列番号1;(b) 配列番号2;(c) 配列番号42;(d) 配列番号67;(e) 配列番号68;(f) 配列番号69;及び(g) 配列番号1又は67のムテイン;からなる群から選択される。ある好適な実施態様では、ムテインは、配列番号1、2、42、67、68又は69に記載のアミノ酸配列を有するものであり、配列番号1、2、42、67、68又は69の最大6アミノ酸残基、好ましくは最大5、4又は3アミノ酸残基、より好ましくは最大2アミノ酸残基、及びさらにより好ましくは1アミノ酸残基が欠損、内部付加又は置換されており、該置換の好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2、3又は4、及びさらにより好ましくは全てが保存的な置換である。
ある好適な実施態様では、ムテインは配列番号1、2、42、67、68又は69に記載のアミノ酸配列を有するものであり、少なくとも1のリジン残基、好ましくは最大3のリジン残基、より好ましくは最大2のリジン残基、さらにより好ましくは1リジンが欠損されるか置換されており、該置換の好ましくは少なくとも一、より好ましくは少なくとも2ないし3、及びさらにより好ましくは全てが保存的な置換である。
本発明は、多様な配列と多様な長さのポリペプチドの多くが、AP205バクテリオファージのコートタンパク質ないしはそのムテインに融合することができ、結果として生じた融合タンパク質が依然としてVLPを形成する能力を持つという驚くべき発見に基づいている。
一つの更なる好適な実施態様では、第二ポリペプチドは、1−60アミノ酸、好ましくは3−40、より好ましくは5−30、さらにより好ましくは10−25アミノ酸からなる。第二ポリペプチドの存在により、第一ポリペプチドのVLPへのアッセンブリが妨げられないことが好ましい。
ある好適な実施態様では、第二ポリペプチドは、少なくとも一の活性な機能的な基を有する少なくとも一のアミノ酸を含有するかあるいは、それからなる。一つの更なる好適な実施態様では、第二ポリペプチドは、少なくとも一システイン、好ましくは一システイン残基を含有するかあるいは、それからなる。少なくとも一の活性な機能的な基を有する少なくとも一のアミノ酸は、同じあるいは他の分子成分からなる他の機能的な基と作用するための接着部位として有用である。
本発明のある好適な実施態様では、第二ポリペプチドが、少なくとも一の抗原を含有するかないしは、そこから基本的になるか、それからなるものであり、この少なくとも一の抗原はポリペプチドである。抗原の大きさ、疎水性及び構造は、本発明によるVLP内への融合タンパク質のアッセンブリに適合するものでなければならない。さらに、この発明は、多様な配列と多様な長さの抗原の多くが、AP205バクテリオファージのコートタンパク質ないしはそのムテインに融合することができ、結果として生じた融合タンパク質が依然としてVLPを形成する能力を持つという驚くべき発見に基づいている。さらに、抗原ないしは抗原の少なくとも一の抗原性部位が形成されたVLPの外表面上に表出されるという驚くべき発見があった。
修飾されたVLPの表面上の抗原ないしは抗原の少なくとも一の抗原性部位の表出を、マウスなどの動物を修飾されたVLPで免疫化して、抗原ないしは抗原の少なくとも一の抗原性部位に特異的なELISAでの抗体応答を測定することによって評価してもよい。あるいは、阻害ELISAを行ってもよい。抗原はELISAプレートに直接的又は間接的にコートする。コートされた抗原への抗原特異的な血清、例えばマウス血清の結合の阻害は、修飾されたVLPの段階希釈液を添加することによって測定することができる。
一実施態様では、少なくとも一の抗原はタンパク質である。他の実施態様では、少なくとも一の抗原はタンパク質の断片である。本明細書中で用いられる「タンパク質の断片」なる用語又はそれと相互に交換可能に用いられる「ポリペプチドの断片」ないしは「抗原の断片」は、本明細書中で定義したタンパク質、ポリペプチドないしは抗原の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、17、18、19、20、25、30の連続するないしは連続しないアミノ酸を含有するか、ないしは好ましくはこれらアミノ酸からなる任意のポリペプチドであり、並びに、それらに対して65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上のアミノ酸配列相同性を有するポリペプチドを包含する。タンパク質の断片は、少なくとも一の抗原性部位を含有しなければならない。本発明に従って存在する場合のタンパク質の断片は、インビボのT細胞の刺激ないしは抗体の産生を誘導することができるものであり、この抗体はMHC分子の関係で提示されるタンパク質ないしはタンパク質の断片に特異的に結合するものである。タンパク質の断片の好適な実施態様は、タンパク質の切断型ないしは内部欠損型である。
本発明の更なる他の実施態様では、少なくとも一の抗原はタンパク質の変異体である。本明細書中で用いられる「タンパク質の変異体」なる用語又はそれと相互に交換可能に用いられる「ポリペプチドの変異体」ないしは「抗原の変異体」は、タンパク質、抗原ないしはポリペプチドの配列に、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列相同性を有する、任意の天然ないしは遺伝子操作したポリペプチドを含有するか、ないしは好ましくはこれらポリペプチドからなる任意のポリペプチドを包含する。タンパク質の変異体を生成する好適な方法は、好ましくは挿入、置換、欠損ないしはこれらの組合せによって遺伝子操作することによるものである。本発明に従って提示されるタンパク質の変異体は、インビボのT細胞の刺激ないしは抗体の産生を誘導することができるものであり、この抗体はMHC分子の関係で提示されるタンパク質ないしはタンパク質の断片に特異的に結合するものである。
本発明の好適な実施態様では、少なくとも一の抗原は、(a) 癌細胞に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;(b) 少なくとも一の病原性微生物に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;(c) 少なくとも一のアレルゲンに対する免疫応答を誘発するために適した抗原;(d) 少なくとも一の自己抗原に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;(e) 畜産動物又は愛玩動物の免疫応答を誘発するために適した抗原;及び(f) ポリペプチド毒又はポリペプチドホルモンに対する免疫応答を誘発するために適した抗原、からなる群から選択されるものである。
ある好適な実施態様では、少なくとも一抗原は、直列のM2タンパク質、好ましくは直列のM2二量体、あるいは直列のM2三量体を含有するか、基本的にそれからなるか、それからなる。この実施態様は、M2ペプチドに対して誘発される免疫応答を亢進しうる。一つの更なる好適な実施態様では、さらに少なくとも一の抗原は少なくとも一のスペーサーを含有しており、該スペーサーはM2ペプチド間に位置する。好ましくは、スペーサーは最大15アミノ酸、好ましくは最大10、より好ましくは最大8、最大6、より好ましくは最大4アミノ酸である。
B型肝炎は、世界的に350万人以上の人々が慢性的に感染している、重大な健康問題である。B型肝炎ウイルスに慢性的に感染すると、肝硬変及び肝癌などの多くの疾患が起こる。
(a) HIV env 1:SLEQIWNNMTWMQWDK (配列番号98);
(b) HIV env 2:SLEQIWNNMTWMQWDR (配列番号99);
(c) HIV env 3:IWNNMTWMQWDR (配列番号100);
(d) HIV env 4:WASLWNW (配列番号101);
(e) HIV env 5:NWFDISNWLW (配列番号102);
(f) HIV env 6:LLELDKWASLWNWFNL (配列番号103);
(g) HIV env 7:ELDKWA, (配列番号104);
(h) HIV env 8:WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL (配列番号105);
(i) HIV env 9:CSKLIC (配列番号106);
(j) HIV env 10:GFLGAAGSTMGAASITLVQ (配列番号107);
(k) HIV env 11:QQNNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQL (配列番号108);
(l) HIV env 12:GIVQQQ (配列番号109);
(m) HIV env 13:QLLGIWGCSGKLICTTAVPWNSSWS (配列番号110);
(n) HIV env 14:NAKTIIVQLNQSVE (配列番号111);
(o) HIV env 15:GGNSNNESEIFRPGGGD (配列番号112);及び
(p) HIV env 16:VAPTKAKRRVVQREKRAVGIGALFLGFLGAAGSGC (配列番号113)
本発明の更なる好適な実施態様では、自己抗原は、(a) リンホトキシン(好ましくはリンホトキシンα(LTα)、リンホトキシンβ(LTβ));(b) リンホトキシンレセプター;(c) 核因子kBリガンド(RANKL)のレセプター活性化因子;(d) 血管内皮成長因子(VEGF);(e) 血管内皮成長因子レセプター(VEGF-R);(f) インターロイキン-5;(g) インターロイキン-17;(h) インターロイキン-13;(i) IL-23 p19;(j) グレリン;(k) CCL21;(l) CXCL12;(m) SDF-1;(n) M-CSF;(o) MCP-1;(p) エンドグリン;(q) GnRH;(r) TRH;(s) エオタキシン;(t) ブラジキニン;(u) BLC;(v) 腫瘍壊死因子α;(w) アミロイドβペプチド(Aβ1−42);(x) Aβ1−6;(y) アンギオテンシン;(z) CCR5細胞外ドメイン;(aa) CXCR4細胞外ドメイン;(bb) ガストリン;(cc) CETP;(dd) C5a;(ee) ブラジキニン;(ff) Des-Argブラジキニン;(gg) (a)−(ff)の断片;(hh) (a)−(ff)の変異体、からなる群から選択されるものである。前述の自己抗原又はその断片ないしは変異体については国際公開公報02/056905の56頁の最終段落から86頁の第一段落に詳しく開示されている。この開示内容は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。
ある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はGnRHないしはその断片である。ワクチンの産生に有用なVLP-GnRHコンジュゲートはPCT/EP2005/053858に開示されており、その内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。好適な実施態様では、GnRH (EHWSYGLRPG (配列番号20)又はQHWSYGLRPG (配列番号114))がAP205のコートタンパク質のC末端に融合されている。少なくとも一の抗原としてGnRHを含有する修飾されたVLPは、雄ブタの肉質の汚染を防ぐためにブタなどの哺乳動物に投与されうる。GnRHを含有する修飾されたVLPは、繁殖行動及び/又は繁殖能力を低減するためにイヌ、ネコ、ヒツジ、ウシなどの動物に投与されうる。GnRHを含有する修飾されたVLPは、性腺ステロイドホルモン依存性の癌を有するヒトに投与されうる。
ある具体的で好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はアミロイドβペプチド断片を含有するかそれからなるものである。ある具体的で好適なその断片はAβ1−6(DAEFRH、配列番号117)であり、PCT特許出願公開番号WO04/016282に開示されており、その内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。
ある具体的で好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はTNF-α又はその変異体ないしは断片を含有するか、それからなるものである。本発明に有用なTNF-αの好適な断片はPCT/EP2005/005935及びPCT/EP2005/005936に開示されている。これら2つの出願の全体の内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。ある非常に好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はマウスTNF-α配列のアミノ酸4−23(配列番号41)である。一つの更なる好適な実施態様では、抗原は、AP205のコートタンパク質のC末端に融合されている。本発明のある好適な実施態様では、修飾されたVLPは少なくとも一の融合タンパク質を含有しており、この融合タンパク質は配列番号41を含有しており、ヒトのワクチンとして用いられる。
本発明のある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原がCXCR4細胞外ドメインの断片を含有するか、それからなるものである。CXCR4細胞外ドメインの断片は少なくとも6、7、好ましくは少なくとも8、9、10アミノ酸を有し、CCR5細胞外ドメインの断片は30未満、好ましくは20、より好ましくは15、さらにより好ましくは12アミノ酸を有する。
本発明のある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はCCR5、好ましくはCCR5細胞外ドメイン、より好ましくはCCR5細胞外ドメインの断片である。HIV R5株は、マクロファージ及びCD4+T細胞に接着して侵入するために細胞表面分子CD4及びCCR5を用いる。CCR5は、PNt、ECL-1、ECL-2及びECL-3とそれぞれ称される4つの細胞外ドメイン:N末端配列及び細胞外領域に露出された3つのループを有する7膜貫通型レセプターである。
ある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はCCR5細胞外ドメインの断片を含有するか、それからなる。CCR5細胞外ドメインの断片は少なくとも6、7、好ましくは少なくとも8、9、10のアミノ酸を有しており、CCR5細胞外ドメインの断片は35未満、好ましくは30未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、さらにより好ましくは12未満のアミノ酸を有する。
本発明のある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はガストリン及び/又はプロガストリンである。ガストリン(G17)は、大腸や膵臓に微量に存在する古典的な内臓ペプチドホルモネーゼのグループにある(Koh , Regulatory Peptides. 93, 37-44 (2000))。ガストリンはその前駆体であるプロガストリン(G34)からプロセシングされる。ガストリンとプロガストリンは何れもC末端グリシン伸展型及びC末端フェニルアラニンアミド化型で存在する。ガストリンは胃酸の分泌を刺激する能力についてよく知られている(Pharmacol Ther. 98, 109-127 (2003))。近年のデータから、ガストリンが消化器系の癌の発達を促すであろうことが示唆される。
ガストリン配列の一部としての配列EGPWLEEEEの何れかの位置のEは、E、pyroE又はQである。付加されるアミノ酸がEGPWLEEEEのN末端に融合される場合、配列EGPWLEEEEの何れかの位置にあるEがE又は好ましくはQでありうる。
ある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原は配列番号:51のアミノ酸配列を有するCETP断片を含有するか、それからなる。
ある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はブラジキニンを含有するか、それからなる。ブラジキニン(BK、KRPPGFSPFR、配列番号52)は、主要な血管拡張因子ペプチドであって、血圧、血流及び血管透過の局所的な調節機能において、重要な役割を果たす(Margolius H.S, 等, Hypertension, 1995)。さらに、ブラジキニンのいくつかの他の生物学的活性は、平滑筋の収縮と緩和、痛覚と痛覚過敏の誘導及び炎症反応の調節などが記載されている。ブラジキニンはB2-レセプターを介してその効果を及ぼす。
BK とDes-Arg9-BKは、一次及び慢性の炎症性疾患、特にウイルスなどの特定の抗原やアレルゲンによって誘発される気道炎症及び関節炎に役割がある。
ある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原がポリペプチド毒に対する免疫応答を誘発するために適しており、好ましくは少なくとも一の抗原がポリペプチド毒又はその断片ないしは変異体である。
本発明のある好適な実施態様では、少なくとも一の抗原が畜産動物又は愛玩動物の免疫応答を誘発するために適するものである。更なる好適な実施態様では、この抗原は、(a) 畜産動物又は愛玩動物の癌細胞に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;(b) 畜産動物又は愛玩動物に感染する少なくとも一の病原性微生物に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;(c) 畜産動物又は愛玩動物の少なくとも一の自己抗原に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;及び(d) ポリペプチド毒又はポリペプチドホルモンに対する免疫応答を誘発するために適した抗原、からなる群から選択されるものである。本出願に開示されるような本発明に有用な抗原の例は、ヒト又は動物起源のものであり、したがって、後者は本発明の修飾されたVLPが動物のワクチンとして用いられる場合、本発明の好適な実施態様である。「動物」なる用語は、例えばヒト、ヒツジ、エルク、シカ、ラバミンク、サル、ウマ、雄ウシ、ウシ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、ニワトリ、カモ、ラット及びマウスなどを意味する。好適な動物は、脊椎動物であり、より好適な動物は真獣類であり、さらにより好適な動物は哺乳動物である。
ある好適な実施態様では、スペーサーは最大15アミノ酸、好ましくは最大13、より好ましくは最大11、さらにより好ましくは最大8アミノ酸、さらにより好ましくは最大4、よりさらに好ましくは最大3アミノ酸を有する。
本発明のある好適な実施態様では、スペーサーのアミノ酸配列は、(a) GSGG;(b) GSG;(c) GTAGGGSG;(d) SGG及び(e) GSGTAGGGSGSからなる群から選択されるものである。
ある好適な実施態様では、第二ポリペプチドは、(a) インフルエンザウイルスM2ペプチド(配列番号43);(b) B型肝炎ウイルスPre S1ペプチド(配列番号62);(c) HIV Nefポリエピトープ(配列番号23);(d) GnRH(配列番号20);(e) ガストリンG17(配列番号47);(f) ネコグレリン(配列番号59);(g) イヌグレリン(配列番号58);(h) HIV Envペプチド1(配列番号98);(i) HIV Envペプチド2(配列番号99);(j) CCR5 PNt(配列番号45);及び(k) CCR5 ECL2(配列番号91)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有するか、基本的にそれからなるか、それからなるものである。
ある好適な実施態様では、免疫賦活性核酸は、(a) 免疫賦活性配列、特に隣接する塩基内の非メチル化CpGジヌクレオチド(CpGモチーフと称する)を含有する細菌DNA、及び(b) 多種類のウイルスによって合成される二本鎖RNA、からなる群から選択されるものが好ましい。一つの更なる好適な実施態様では、免疫核酸は二本鎖RNAポリI:Cを含有するか、基本的にそれからなるか、あるいはそれからなる。
更なる一つの好適な実施態様では、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは、パリンドローム配列を含有するか、あるいは基本的にそれからなるか、あるいはそれからなる。更なる好適な実施態様では、前記パリンドローム配列はグアニンヌクレオチド、好ましくは少なくとも4又は6グアニンヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも8又は10グアニンヌクレオチドが隣接する。ある好適な実施態様では、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドはGGGGTCAACGTTGAAGGGGGG (配列番号95)を含有するか、それからなる。
他の有用な免疫賦活性核酸配列は公開された国際公開公報2004/085635に開示さており、その開示内容は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。免疫賦活性物質、特に免疫賦活性核酸、より好ましくは非メチル化CpGを含有するオリゴヌクレオチドについては、国際公開公報03/024480、国際公開公報03/024481及びPCT/EP/04/003165に詳述されている。
ある好適な実施態様では、免疫賦活性物質は修飾されたVLPと混合される。他の好適な実施態様では、免疫賦活性物質は修飾されたVLPに結合されているか、好ましくは内部にパッケージ化されている。免疫賦活性物質をVLP-抗原と混合する方法は国際公開公報03/024480に開示されている。免疫賦活性物質をVLP内部にパッケージ化する方法は国際公開公報03/024481に開示されている。国際公開公報03/024480、同03/024481及びPCT/EP/04/003165の出願内容は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。さらに、パッケージ化された核酸とCpGのそれぞれは分解から保護される、すなわちこれらはより安定である。さらに、先天性の免疫システムの細胞の非特異的活性は劇的に減少する。
ある好適な実施態様では、ワクチン組成物はアジュバントを欠いている。したがって、本発明のワクチン組成物の患者への投与は、該ワクチンの投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後に、同じ患者への少なくとも一のアジュバントを投与せずに行ってもよい。本発明の有利な特徴は、アジュバントがない場合においても組成物の免疫原性が高いことである。さらに、アジュバントがないと、ワクチン接種、特に自己抗原に対するワクチン接種の安全性を表す、不要な炎症性T細胞応答の発生を最小限にする。
免疫応答の性質は、抗原の性質、体内への導入経路、用量及び投与計画、抗原の反復性性質、宿主のバックグラウンド又は免疫系のシグナル伝達因子に影響されうる。当分野の公知の理論と日常の経験との総合的な表れとして免疫応答が起こる。投与される個体に投与が合っていれば、本発明のワクチンは「製薬的に受容可能」であるといえる。さらに、本発明のワクチンは、「治療的に有効な量」(すなわち、所望の生理学的効果を示す量)で投与されうる。免疫応答の性質又は種類は本発明で開示される因子に限定するものではない。
更なる一つの態様では、本発明は、個体の疾患、障害又は病理学的症状を治療又は予防する方法を提供するものであり、該方法は、本発明の修飾されたVLP、本発明のワクチン組成物又は本発明の薬剤組成物が、動物又はヒトに投与されることを含む。他の態様では、本発明は、動物又はヒトの疾患、障害又は病理学的症状を治療又は予防するための医薬を製造するための修飾されたVLPの使用を提供する。
一態様では、本発明は、本発明の修飾されたVLPの産生方法であって、(a) スペーサーをコードするヌクレオチド配列を、第一ポリペプチドをコードする第一ヌクレオチド配列又は第二ポリペプチドをコードする第二ヌクレオチド配列に(選択的に)インフレームで連結する;(b) 前記第二ヌクレオチド配列を前記第一ヌクレオチド配列にインフレームで連結した結果、前記の融合タンパク質をコードする第三ヌクレオチド配列を生じる;(c) 第一ヌクレオチド配列の3'で抑制される停止コドンを(選択的に)導入する;(d) 好ましくは結果として生じる発現されたタンパク質が前記の修飾されたウイルス様粒子を形成することができる条件下で、宿主内で該第三ヌクレオチド配列を発現させる;(e) (d)の工程で得られた該修飾されたウイルス様粒子を精製する、という工程を含む産生方法を提供する。
他の好適な実施態様では、AP205バクテリオファージのコートタンパク質ないしはそのムテインの末端に融合されるポリペプチドは、30アミノ酸未満、好ましくは20アミノ酸未満、より好ましくは15アミノ酸未満、さらにより好ましくは10アミノ酸未満を有する。
さらに好適なある実施態様では、ポリペプチドは、(a) 配列番号1;(b) 配列番号2;(c) 配列番号42;(d) 配列番号67;(e) 配列番号68;(f) 配列番号69;及び(g) 配列番号1又は67のムテインからなる群から選択されるAP205のコートタンパク質ないしはそのムテインのN末端ないしはC末端、又はその両端に融合される。
更なるある態様では、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。ムテインの一アミノ酸配列は、遺伝子コードの縮重のために一以上のヌクレオチド配列によってコードされるかもしれない。したがって、ムテインと同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列は本発明に包含される。
以下に記載するクローニング作業においてAP205コートタンパク質のN末端を指す場合、「N末端」なる用語は、開始メチオニンでなく第一アラニンを指す。
コンストラクト378-2:短いGSGGスペーサーと、AP205コートタンパク質のN末端の該スペーサーをコードする核酸配列内にNcoI及びKpn2Iクローニング部位を付加。
これは、pAP283-58(配列番号3)を鋳型として、NcoI制限酵素部位を含有する上流プライマーp2.561(配列番号4)とHindIII制限酵素部位を含有する下流プライマーp1.46(配列番号5)を用いたPCRによって構築した。PCR断片をNcoIとHindIIIで消化して、pQb185内の同じ制限酵素部位内にクローニングして、プラスミドpAP378-2を生成した。
これは、378-2を鋳型として、NcoI制限酵素部位を含有する上流プライマーp2.589(配列番号6)とHindIII制限酵素部位を含有する下流プライマーp1.46(配列番号5)を用いたPCRによって構築した。PCR断片をNcoIとHindIIIで消化して、pQb185内の同じ制限酵素部位内にクローニングして、プラスミドpAP382-2を生成した。
コンストラクト409-44:短いGSGスペーサーと、AP205コートタンパク質のC末端の該スペーサーをコードする核酸配列内にKpn2I及びMph1103Iクローニング部位を付加。
これは、pAP283-58(配列番号3)を鋳型として、XbaI制限酵素部位を含有する上流プライマーp1.45(配列番号7)とMph1103I制限酵素部位を含有する下流プライマーp2.587(配列番号8)を用いたPCRによって構築した。PCR断片をXbaIとMph1103Iで消化して、pQb10内の同じ制限酵素部位内にクローニングして、プラスミドpAP409-44を生成した。
これは、409-44を鋳型として、XbaI制限酵素部位を含有する上流プライマーp1.45(配列番号7)とMph1103I制限酵素部位を含有する下流プライマーp2.588(配列番号9)を用いたPCRによって構築した。PCR断片をXbaIとMph1103Iで消化して、pQb10内の同じ制限酵素部位内にクローニングして、プラスミドpAP405-61を生成した。
コンストラクト378-2、382-2、409-44、405-61とその対応するプラスミドは、便宜上378 (pAP378)、382 (pAP382)、409 (pAP409)及び405 (pAP405)と称する。以下の実施例において、多種類の抗原を上記のベクター内にクローニングした。
粒子アッセンブリに対するリンカーの効果を試験するために、コンストラクト378のタンパク質を実施例2に記載のように発現させ、VLPへのアッセンブリをEMと免疫核酸(オークタロニー法)アッセイによって証明した。
大腸菌JM109細胞を対応するAP205融合タンパク質プラスミドにて形質転換させた。20mg/lのアンピシリンを含有するLB培地内に、100mg/lのアンピシリンを含有する寒天上で生育させた個々のコロニーを播種し、振とうせずに37℃で終夜培養させることによって種培養を調整した。例えば、終夜培養物を、casaminoacids (Difco)と20mg/lのアンピシリンを添加したM9培地にて1:50に希釈し、活発に通気しながら14−20時間、37℃で培養物を生育させた。細胞を6000rpmで15−20分間、4−8℃で遠心して回収した。
AP205コートタンパク質のC末端のD2ペプチドのクローニング
D2ペプチドをコードするDNA断片(TSNGSNPSTSYGFAN、配列番号10) を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo2.196(配列番号11)及びoligo 2.197(配列番号12)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をKpn2I及びMph1103Iで消化して、pAP409-44及びpAP405-61の、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にある同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
418-7 (409-44ベース):AP205コートタンパク質−GSG− D2ペプチド
420-21 (405-61ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−D2ペプチド
D2ペプチドをコードするDNA断片(TSNGSNPSTSYGFAN、配列番号10) を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo2.590(配列番号13)及びoligo 2.591(配列番号14)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をNcoI及びKpn2Iで消化して、ベクターpAP378-2及びpAP382-2の同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
421-8 (378-2ベース):MG−D2ペプチド−GSGG−AP205コートタンパク質
クローニングの結果、配列番号1のアミノ酸14がアスパラギン酸に変化した。
422-2 (382-2ベース):MG−D2ペプチド−GSGTAGGGSGS−AP205コートタンパク質
以降、コンストラクト418-7、420-21、421-8及び422-2を便宜上418、420、421及び422と称する。
精製の前工程に用いる標準バッファーはNETバッファー:5mM EDTA及び150mM NaClを含む20mM トリス-HCl、pH7.8である。
細胞溶解物をCL-4Bカラムにて精製し、プールした溶出分画をさらにCsCl勾配超遠心によって精製した。精製したタンパク質の濃度をブラッドフォード試験によって測定した。
抗原の表出は阻害ELISAにて試験した。この場合、ペプチドD2を、アミノ酸スペーサー(CGG)とクロスリンカーSPDPを介してRNアーゼにコンジュゲートして、ELISAプレート上にコートし、一方D2ペプチドを表出するVLPを、VLP内にアッセンブリされたD2-fr融合タンパク質に対して生じた抗D2ウサギ抗血清と共にインキュベートした。ロバ抗ウサギHRPコンジュゲートにて検出した。
4つすべての修飾されたVLP(短いスペーサー又は長いスペーサーの何れかを有するN末端又はC末端のD2ペプチド)は、RNアーゼにコンジュゲートさせ、ELISAによって示されるプレート上にコートしたD2ペプチドに対する抗D2抗血清の結合を阻害した。これにより、4つの融合タンパク質からアッセンブリされた修飾されたVLP上にD2ペプチドが表出されたことが示唆される(図2)。
さらに、ゲル濾過によって精製された4つすべての修飾されたVLPの電子顕微鏡像によってキャプシドアッセンブリが確認された(図1)。
以降、418、420、421及び422と称するコンストラクト418-7、420-21、421-8及び422-2からのタンパク質25μgにて、第0日目及び第14日目にマウスに皮下注射して免疫化した(1グループ当たりn=3)。タンパク質をPBSにて最終容量200μlにまで希釈し、100μlを各動物の左右の鼠径部に注射した。動物を第14及び第21日目に採血し、抗体応答をELISAにて測定した。簡潔にいうと、そのN末端にアミノ酸配列CGGを含有するD2ペプチドの変異体をクロスリンカーSPDPを用いてRNアーゼに結合させた。結果として生じたコンジュゲートを終夜、4℃でコートした。西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウスIgGコンジュゲートにて血清の結合を検出した。
4つすべての修飾されたVLPはD2ペプチドに対して高い力価の抗体応答を誘発したが、免疫化前の血清では血清の結合は検出されなかった。これより、結合の特異性が示唆される。この力価を最大半量の結合が与えられる希釈として測定し、3匹の動物の平均力価は、コンストラクト418については10700±8600、コンストラクト420については1:10200±3000、コンストラクト421については1:7900±5500、及びコンストラクト422については1:2018±2500であった。
AP205コートタンパク質のC末端のAngio Iペプチドのクローニング
Angio IペプチドをコードするDNA断片(DRVYIHPF、配列番号15) を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo3.216(配列番号16)及びoligo 3.217(配列番号17)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をKpn2I及びMph1103Iで消化して、pAP409-44及びpAP405-61の、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にある同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
441-9 (409-44ベース):AP205コートタンパク質−GSG− DRVYIHPF
442-7 (405-61ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−DRVYIHPF
アミノ酸配列DRVYIHPF (配列番号15)のペプチドをAngio Iペプチドと称する。Angio Iペプチドをコードする断片を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo3.218(配列番号18)及びoligo 3.219(配列番号19)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をNcoI及びKpn2Iで消化して、ベクターpAP378-2及びpAP382-2の同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
446-6 (378-2ベース):MG−DRVYIHPF−GSGG−AP205コートタンパク質
447-9 (382-2ベース):MG−DRVYIHPF−GSGTAGGGSGS−AP205コートタンパク質
以降、コンストラクト441-9、442-7、446-6及び447-9を便宜上441、442、446及び447と称する。
1mg/ml リゾチーム及び0.1% Tween20を含有するトリス-緩衝溶解バッファー中で凍結と解凍を3回繰り返した後、超音波処理を行うことによって細胞を溶解した。溶解物を遠心によって分類して溶解物1と溶解物バッファーにて再抽出したペレットを溶解物2とした。その後ゲル濾過工程の組み合わせによって上清を精製し、結果として生じた純粋な分画を混合した。
各コンストラクトについてのゲル濾過の組合せは以下の通りである。
コンストラクト441:溶解物1はセファロースCL-2Bの後、セファロース6Bカラムに流した。第二溶解物はCL-4Bの後、CL-2Bカラムに流した。
コンストラクト442:溶解物1はCL-2Bの後、CL-4B、最後にセファロース6Bカラムに流した。溶解物2はCL-4Bの後、セファロース6Bカラムに流した。
コンストラクト446:溶解物1はCL-2Bの後、セファロース6Bカラムにて精製した。溶解物2は廃棄した。
コンストラクト447:溶解物1はCL-4Bの後、セファロース6Bカラムにて精製した。溶解物2はCL-4Bカラムにて2回精製した。
修飾されたVLPを形成した4つすべてのコンストラクトは電子顕微鏡像によって確認した。VLP上のAngio Iペプチドの表出はさらにELISAにて確認した。このELISAによって、VLPをおよそ10μg/mlの濃度でコートして、Angio I又はAngio XVIIIそれぞれに対してマウス内で生じた2つの抗血清の結合を評価した。4つすべての修飾されたVLPはELISAにおいて陽性であった。これにより、修飾されたVLP上でのAngio Iペプチドの表出が確認された。
AP205コートタンパク質のC末端のGnRHのクローニング
GnRHペプチドをコードするDNA断片(EHWSYGLRPG、配列番号20) を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo4.56(配列番号21)及びoligo 4.57(配列番号22)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をKpn2I及びMph1103Iで消化して、pAP405-61の、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にある同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
489-7 (405-61ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG− EHWSYGLRPG、このコンストラクトを便宜上コンストラクト489と称する。
精製
実施例4に記載のように細胞を溶解した。4つの7M 尿素及び0.05M トリスを含有するバッファーにてペレットを抽出した。プールした上清をNETバッファーで平衡化したセファロースCL-2Bカラムに流した後、セファロース6Bカラムにてクロマトグラフィを再度行った。キャプシドアッセンブリをEM分析にて確認した。
コンストラクト489から発現されるタンパク質50μgにて、第0日目にマウスに皮下注射して免疫化した(1グループ当たりn=5)。タンパク質を20mM Hepes pH7.2にて最終容量200μlにまで希釈し、100μlを各動物の左右の鼠径部に注射した。動物を第21日目に採血し、抗体応答をELISAにて測定した。簡潔にいうと、そのN末端にアミノ酸配列CGGを含有する変異体GnRHペプチドをクロスリンカーSPDPを用いてRNアーゼに結合させた。結果として生じたコンジュゲートを終夜、4℃でコートした。西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウスIgGコンジュゲートにて血清の結合を検出した。
コンストラクト489からのタンパク質はGnRHペプチドに対して高い力価の抗体応答を誘発したが、免疫化前の血清では血清の結合は検出されなかった。これより、結合の特異性が示唆される。この力価を最大半量の結合が与えられる希釈として測定し、5匹の動物の平均力価は、1:18329、標準偏差(standard derivation)9245であった。
クローニング
Nef55(配列番号23)はHIV Nefコンセンサス配列由来のポリペプチドであり、最も多いと思われるT細胞エピトープを含有し、溶解性があるために選択した。Nef55をHIV Nefの他のポリペプチドであるNef74ポリペプチドをコードするDNAからPCRによって増幅した。Nef55をコードするDNAは、アミノ酸配列GVGFPVRPQVPLRPMTYKAAV-DLSHFLKEKGGLE及びGPGIRYPLTFGWCFKLVPVEPをコードするPCRによって産生された2つの断片からアッセンブリされたものである。34のアミノ酸断片を増幅するために、Kpn2I制限酵素部位を含有する上流プライマーp3.242(配列番号24)と下流プライマーp3.222(配列番号25)を用いた。21のアミノ酸断片を増幅するために、上流プライマーp3.223(配列番号26)とMph1103I制限酵素部位を含有する下流プライマーp3.225(配列番号27)を用いた。断片の融合は、上記と同じ上流及び下流のプライマーを用いたアッセンブリPCRにて行った。得られた断片を、Kpn2I及びMph1103Iにて消化して、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にあるベクターpAP409-44及びpAP405-61内の同じ制限酵素部位にクローニングした。
結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
コンストラクト457-17 (409-44ベース):AP205コートタンパク質−GSG−Nef55
コンストラクト459-35 (405-61ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−Nef55
コンストラクト457-17及び459-35は便宜上、以下では457及び459とそれぞれ称する。
実施例4に記載のように細胞を溶解した。コンストラクト457については、プールした溶解物をショ糖密度勾配超遠心の後にセファロース2Bカラムによって精製した。部分的に精製されたタンパク質のEM分析においてキャプシドが可視化されるが、目に見える多くのキャプシドの半分は質が悪い。
コンストラクト459については、溶解物2を、2ml/時の溶解速度でセファロース2Bカラム(サイズ2.5×45cm)に流し、Amicon遠心濃縮器にて濃縮し、セファデックス2Bカラムに流した。さらに、タンパク質をCsCl密度勾配超遠心で2回精製した。融合タンパク質のVLP内へのアッセンブリをEM分析によって確認し、一様に良好な形のキャプシドを確認した(図3)。
HHDマウスは、Dbα3ドメインと融合したA2α1とα2ドメインのN末端に共有結合したヒトβ2ミクログロブリンを有するキメラ単鎖クラスI分子を発現する(Firat, H. 等 1999, Eur.J.Immunol., 29:3112)。これらマウスにおけるHLA-A2導入遺伝子発現により、AP205-Nef55 VLPの一次CTLへの能力をインビボで調査することができる。さらに、ISSとしてのアジュバントの効果をインビボで研究した。
HHDマウスを、未処理のものと、100μgのAP205-Nef55を皮下注射することで免疫化するものに分けた。8日後、脾臓細胞を単離し、HIVエピトープやコンセンサス配列についてオンラインデータベース(http://hiv-web.lanl.gov/seq-db.html)を用いるなどして同定した、刺激するために好適なHLA-A2限局性T細胞エピトープを用いて、増殖アッセイ(Th細胞応答について、Belshe R.B. 等, J. Inf. Dis. 183: 1343-1352 (2001))、ELISPOTアッセイ(Oxenius, A. 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 13747-13752 (2002))又は細胞障害性アッセイ(Belshe R.B. 等, J. Inf. Dis. 183: 1343-1352 (2001))におけるインターフェロンγについて細胞内サイトカイン染色アッセイにおいてT細胞誘導を分析した。
クローニング
AP205コートタンパク質とNef55コード配列の供給源としてコンストラクト459-35を用いた。コートタンパク質とコードする配列と、アミノ酸スペーサーGTAGGGSGをコードする配列の間にオパールコドンを導入するために、新規のコンストラクト512を2工程PCRによって設定した。
オパールコドンの導入は逆方向PCRによって行った。逆方向プライマーは、逆位のテールトゥテールの方向で、TGAが挿入されるようにプライマーp4.101(配列番号28)とp4.102(配列番号29)を用いて設定した。NcoI制限酵素部位を含有する上流プライマーp1.44(配列番号30)及びコンストラクト459-35内のNef56ペプチドのC末端の非翻訳領域の23ヌクレオチド下流に相補的な下流プライマーp74-2(配列番号31)を用いた。
PCR断片をNcoIとHindIIIで消化して、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にあるpGEM由来発現ベクター内の同じ制限酵素部位にクローニングした。
結果として生じるコンストラクトは以下の通りである。
コンストラクト512-24:AP205コートタンパク質−オパールコドン−GTAGGGSG−Nef55、以降、このコンストラクトを便宜上512と称する。
ヘルパープラスミドpISM3001を含有する大腸菌JM109細胞を、プラスミドpAP512-24に形質転換して、100mg/lのアンピシリンと10mg/lのクロラムフェニコールを含有するLB寒天上に播いた。10mg/lのクロラムフェニコールをすべての培養培地に添加することを除いては上記と同じようにその後の工程を行った。
精製
細胞を実施例4に記載のように溶解した。溶解物1を、トリス、NaCl、EDTAバッファー(NETバッファー)にて、1ml/時の溶解速度で、セファロース4Bカラム(1.2×25cm)にて精製した。溶出した分画をプールして、Amicon遠心濃縮器にて濃縮して、2ml/時の溶解速度で、セファロース6Bカラム(1.2×35cm)に流した。AP205コートタンパク質と融合タンパク質の発現は、精製されたVLPのウェスタンブロット分析によって確認し、キャプシドアッセンブリをEM分析によって確認した。
クローニング
伸展したp33ペプチドをコードするDNA断片(AKSLKAVYNFATMA、配列番号32) を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo3.309(配列番号33)及びoligo 3.310(配列番号34)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をNcoI及びKpn2Iで消化して、ベクター378-2及び382-2の、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にある同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
466 (382-2ベース):MAKSLKAVYNFATMA−GSGTAGGGSGS− AP205コートタンパク質。伸展したp33ペプチドはCTLエピトープKAVYNFATMを含有する。
精製
細胞を実施例4に記載のように溶解した。溶解物2から単離したペレットを、緩衝した7M 尿素、pH7.5トリスバッファーにてさらに抽出した。p33ペプチドを表出する修飾されたVLPをセファロース4Bカラム(1.2×25cm)にて精製し、NETバッファーで平衡化して1ml/時で溶出した。VLPにて較正したカラムからの溶出体積にてキャプシドアッセンブリを確認した。
伸展したp33ペプチドの配列(KSLKAVYNFATMA、配列番号32)はp33CTLエピトープ(KAVYNFATM)を含有する。
以下のオリゴヌクレオチドを合成した。
5’ CG AAA TCT CTT AAA GCG GTT TAC AAC TTC GCT ACC ATG GCT T (配列番号39)
5’ CGA AGC CAT GGT AGC GAA GTT GTA AAC CGC TTT AAG AGA TTT (配列番号40)
オリゴヌクレオチド1は特有のNcoI部位を含有しており、クローンの選択が容易である。オリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼにて37℃で30分間処理し、次いで、混合物1、2を100℃で3分間熱し、ゆっくり室温まで冷ました。
ベクター調整
プラスミドpFRd8をAsuII部位で37℃で3時間かけて切断した。ベクター断片を精製して、アニールさせたオリゴ1及びオリゴ2に結合させた。結果として生じたコンストラクトは、frコートタンパク質のアミノ酸2とアミノ酸3の間に配列KSLKAVYNFATMAが挿入されていた(切断されたN末端アラニンの後の開始アラニンは位置1である)。
細菌細胞溶解物の調整と超音波処理を含めたタンパク質精製の初めの工程はバッファーAを用いて行った。
バッファーA:250mM NaCl、50mM トリスHCl pH7.2、5% グリセロール、2mM EDTA及びライソザイムを20μg/mlに添加した。
1gの細胞を3倍量のバッファーAに懸濁し、この懸濁液を4℃で20分間インキュベートし、次いで、この懸濁液を200ワット-秒、3回の30sバーストにて超音波処理を行った。超音波処理した懸濁液を10℃で20分間インキュベートし、このとき1mMのPMSFと共に等量の同じバッファーを添加した。混合物を既に述べたように超音波処理して、次いで10000×gで30分間遠心した。ペレットを3mlの4M 尿素にて抽出した。
ポリイミンP(10%w/v pH7.2)を0.35%w/vの終濃度となるように懸濁液にゆっくしと添加し、この混合溶液を6000gにて15分間遠心した。上清を硫酸アンモニウムにて35%飽和させて沈殿させ、さらに3時間溶液を撹拌し、次いで8000×gにて15分間遠心した。ペレットをバッファーBの1細胞体積(1ml)に再懸濁させた。
バッファーB:1M NaCl、10mM トリスHCl pH7.2、5% グリセロール、1mM EDTA
次いで、上清を、硫酸アンモニウムにて50%飽和にして沈殿させた。タンパク質調製物の各々の処置からの分割量をSDS PAGE電気泳動して、ウェスタンブロット分析を行った。試料を、カラムクロマトグラフィ及びショ糖密度勾配遠心法によるその後の精製に用いた。
バッファーBで35%飽和状態の硫酸アンモニウム沈殿によって得られたタンパク質調製物をEMにて分析したが、キャプシドは検出されなかった。にもかかわらず、タンパク質の分析量は、比較のためのセファクリルS-400又はセファクリルS-200ゲル濾過カラムにて精製した。トリス-HCl pH7.2、0.5M NaCl、1mM EDTAにてタンパク質を溶出した。回収した12の分画は、SDS-PAGEにて分析した。セファクリル400のピークに対応する分画を回収して、EM(電子顕微鏡)分析にて分析した。電子顕微鏡分析では精製した画分中に粒子は検出されなかった。このことから、frコートタンパク質に対するp33ペプチドの融合がキャプシドアッセンブリを妨げたことが示唆される。
長いスペーサーないしは短いスペーサーを有するN末端(コンストラクト378-2及び382-2)ないしはC末端(コンストラクト409-44及び405-61)の何れかへ抗原を融合するための4つのプラスミドを実施例1により入手した。4つのベクターは、AP205へ融合される配列が挿入されうる特定の制限酵素部位を含有する。簡単にいえば、それぞれのベクターに存在する制限酵素部位を含有し、AP205コード配列と共にインフレームに融合される所望のアミノ酸配列(以下を参照のこと)をコードする2つの相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。また、融合がAP205のC末端に達する場合、コード配列の終わりに停止コドンを含有させた。2つのオリゴヌクレオチドをアニールさせ、好適な制限酵素にて消化し、それぞれのAP205融合発現ベクター内にクローニングした。
CCR5細胞外ドメイン断片ECL2A(配列番号46、RSQKEGLHYT)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
CXCR4 176-185(配列番号49)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
ヒトC5a断片55-74(配列番号46)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
ガストリンG17(配列番号47、EGPWLEEEEEAYGWMDF)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
CETP断片461-476(配列番号51)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
ブラジキニン(配列番号52)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
des-Arg-ブラジキニン(配列番号53)をコードするヌクレオチド配列を4つのすべてのプラスミド内にインフレーム結合させた。
上記の融合タンパク質の発現及び精製は実施例2及び3に記載のものと実質的に同じである。AP205融合タンパク質とのVLPの形成を確認するために、試料を電子顕微鏡で分析した。
実施例11から入手したAP205融合タンパク質のVLPのタンパク質25μgにて、第0日目及び第14日目にマウスに皮下注射して免疫化した(1グループ当たりn=3)。タンパク質をPBSにて最終容量200μlにまで希釈し、100μlを各動物の左右の鼠径部に注射した。動物を第14及び第21日目に採血し、抗体応答をELISAにて測定した。
簡潔にいうと、試験する抗原をアミノ酸スペーサー(CGG)及びクロスリンカーSPDPを用いてRNアーゼにコンジュゲートさせ、ELISAプレート上に4℃で終夜をかけてコートした。西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウスIgGコンジュゲートにて血清の結合を検出した。
実施例6に記載のコンストラクト489から発現して精製したタンパク質400μgにて、第0日目にブタに皮下注射して免疫化した(1グループ当たりn=2)。タンパク質を、アジュバントとして終濃度15%でDEAEデキストランを含有する5mM リン酸/100mM NaClバッファー, pH6.8にて最終容量1mLにまで希釈した。ワクチンは各動物の耳の裏に皮下注射した。20mM HepesバッファーpH7.2で調整し、15%のDEAEデキストランを含有する1mlのQβ VLP(0.4mg/ml)にて免疫化したものを対照動物とした(1グループ当たりn=2)。動物は、初回の免疫化で用いたのと同じ量のワクチン組成物で第28日目に追加免疫した。動物を第28及び第49日目に採血し、抗体応答をELISAにて測定した。簡潔にいうと、N末端にアミノ酸配列CGGを含有する変異体GnRHペプチドをクロスリンカーSPDPを用いてRNアーゼに結合させ、4℃で終夜をかけてコートした。西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウスIgGコンジュゲートにて血清の結合を検出した。
表1に示すように、GnRHに融合したAP205コートタンパク質で免疫化したブタはGnRHペプチドに対して高い力価の抗体応答を誘発したが、免疫化前の血清でも、Qβ免疫化対照ブタの血清でも血清の結合は検出されなかった。これより、結合の特異性が示唆される。この力価を最大半量の結合が与えられる希釈として測定した。
表1
AP205コートタンパク質のC末端のpreS1ペプチドのクローニング
preS1ペプチドをコードするDNA断片(PLGFFPDHQLDPAFRANTANPDWDFNP、配列番号62) を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo preS1-1(配列番号63)及びoligo preS1-2(配列番号64)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をKpn2I及びMph1103Iで消化して、pAP409-44及びpAP405-61の、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にある同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
preS1-A (409-44ベース):AP205コートタンパク質−GSG− preS1ペプチド
preS1-B (405-61ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−preS1ペプチド
preS1ペプチドをコードする断片を、2つのオリゴヌクレオチド−preS1-3(配列番号65)及びoligo preS1-4(配列番号66)とアニーリングさせて作製した。得られた断片をNcoI及びKpn2Iで消化して、ベクターpAP378-2及びpAP382-2の同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
preS1-C (378-2ベース):MG−preS1ペプチド−GSGG−AP205コートタンパク質
preS1-D (382-2ベース):MG−preS1ペプチド−GSGTAGGGSGS−AP205コートタンパク質
上記の融合タンパク質の発現及び精製はAP205-D2融合物と実質的に同じように行った。
成体雄のC57BL/6マウス(1グループ当たり5匹)にAP205-preS1(aa21-47)VLP、又は、対照としてAP205 VLPをワクチン接種した。各マウスについて、100μgの透析したワクチンを200μlの体積にまでPBSで希釈し、第0日目及び第14日目に皮下注射した(100μlを腹側2箇所に)。ワクチンはアジュバントなしで投与した。対照として、1グループのマウスにPBSを接種した。第21日目に心穿刺してマウスから採血し、血清を精製した。各グループの5匹のマウスからの血清をプールして、14000rpmにて5分間遠心した。3mlのプレウォッシュプロテインGセファロースのカラム(Amersham Biosciences)に上清を流した。次いで、カラムを10カラム容量のPBSにて洗浄して、100mM グリシンpH2.8にて溶出させた。1mlの分画を、200μlの1M トリスpH8.0を含有するチューブに回収した。タンパク質含有分画をプールして、5kDaの分子重量カットオフのMillipore Ultrafree遠心フィルター(Millipore)を用いて濃縮した。同じ濃縮フィルターを用いてバッファーをPBSに交換した。精製したIgG分画をMillipore Millexフィルター(Millipore)を用いてフィルター滅菌し、液体N2で凍結させ、長期保存の場合には−80℃で保存するか、一定期間であれば4℃で保存した。
preS1-特異的ポリクローナルIgGの中和活性を基本的に記載される(Glebe 等, 1993, J. Virol. 77, 9511-9521)ように行った。簡潔に言うと、慢性のキャリア由来の精製したB型肝炎ウイルス遺伝子型D(1ウェル当たり1×108ゲノム)を精製したポリクローナルIgG(0.1から100μg/ml)と共に20℃で1時間、プレインキュベートした。次いで、原発性tupaia belangeri肝細胞(1ウェル当たり5×105)をウイルス菌種と共に37℃で10時間インキュベートし、その後、細胞を十分に洗浄して、37℃でのインキュベートを続けた。培養液を3日ごとに交換して、市販されている酵素結合免疫吸着アッセイ(AxSYM, Abbott Laboratories)によって、感染後9日から12日まで産生されるB型肝炎e抗原の量を測定した。
クローニングと発現
ヒトCCR5に対する抗体を誘発するワクチンを生成するために、ヒトCCR5の第二細胞外ループ(ECL2)とN末端(Nt)に対応するペプチドをAP205に融合させた。次いで、ワクチンをマウスに接種し、HIV中和活性について抗体を試験した。N末端ペプチドに加えて、2つのループペプチド、遺伝子操作したN末端及びC末端のシステインを有し、ループ形成を阻害しないように位置11のCysがSerに変異している完全長ECL2の相対物、及びN末端に遺伝子操作したシステインを有するECL2aである他のものを試験した。したがって、両ループはループ内のN末端とC末端のシステインの間のジスルフィド結合によって近接しうる。
542:(405ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−CRSQKEGLHYTSSSHFPYSQYQFWKNFQTLKIC
530:(405ベース):AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−CRSQKEGLHYTC
541:(378ベース):MDYQVSSPIYDINYYTSEPSQKINVKQIAAR−SGG−AP205コートタンパク質
結果として生じたプラスミドpAP542、pAP530及びpAP541にて大腸菌JM109を形質転換して、実施例2に記載のように発現させた。3つすべてのコンストラクトの溶解物中でキャプシドが同定された。これにより、大腸菌内でのそれぞれのAP205コートタンパク質融合物の発現の際にVLPの自己アッセンブリが起こることが示された。
細胞を、5μg/mlのPMSFを添加した溶解バッファー(50mM トリス、5mM EDTA、0.1% Tween20, pH8.0)中で超音波処理することによって溶解した。溶解物を遠心によって分離し、ペレットを溶解バッファーにて3回洗浄した。プールした上清をNETバッファーのセファロース4Bカラムにて精製した。VLPを含有する溶出分画をプールし、Amicon遠心フィルターユニットを用いて濃縮し、NETバッファーのセファロース2Bカラムにて精製した。ECL2ペプチドの粒子のアッセンブリと表出は、ECL2ペプチドに特異的なマウス抗血清を用いたウェスタンブロット、SDS-PAGE、及びEMによって精製したVLPを分析することによって確認した。
細胞を、溶解バッファー(50mM トリス、5mM EDTA、0.1% Tween20, pH8.0、5μg/ml PMSF)中で超音波処理することによって溶解した。溶解物を遠心によって分離し、ペレットを、10mM DTTを含有する溶解バッファーにて3回洗浄した。プールした洗浄物の上清をNETバッファーのセファロース4Bカラムにて精製した。VLPを含有する溶出分画をプールし、10mM DTTを加えて、Amicon遠心フィルターユニットを用いて濃縮し、NETバッファーのセファロース4Bカラムにて再びクロマトグラフィを行った。ECL2aペプチドの粒子のアッセンブリと表出は、ECL2aペプチドに特異的なマウス抗血清を用いたウェスタンブロット、SDS-PAGE、及びEMによって精製したVLPを分析することによって確認した。
ECL2aペプチドの2つのシステインのジスルフィド結合を促進してECL2aループを近づけるために、上記のようにして得られたVLP調整物を、0.1から1mMの還元型グルタチオンと0.2から5mMの酸化型グルタチオンを含有する、50mM トリス、150mM NaCl, pH8.0にて透析した。その後、透析したVLP調整物をさらに、50mM トリス、150mM NaCl, pH8.0又はPBS又は20mM Hepes、150mM NaCl, pF7.2にて透析し、表出したエピトープの免疫原性を試験するためにマウスに接種した。
0.1mM DTTを含有する溶解バッファーにて上記に記載のように細胞を溶解した。その後のすべての工程は0.1mM DTTを含有したバッファーで行った。ジスルフィド結合の形成が不十分であることが予想される場合には、上記のように、選択的にECL2aループの内部システインを最終的に酸化することができる。
クローニング及び発現
ヒトCXCR4に対する抗体を誘発するワクチンを生成するために、ヒトCXCR4のN末端に対応するペプチド(酸化を防ぐためにCys28のSerへの変異を有する)をAP205に融合した。次いで、ワクチンをマウスに接種し、HIV中和活性について抗体を試験した。CXCR4 N末端ペプチド(CXCR4-Nt) (MEGISIYTSDNYTEEMGSGDYDSMKEPSFREENANFNKI、配列番号75)をコードするDNA断片を、2つの5'リン酸化オリゴヌクレオチド−oligo Oligo 4-I (5’-CATGGAAGGAATTTCCATATATACTTCGGACAACTACACCGAGGAAATGGGTAGCGGCGACTACGACAGCATGAAAGAACCATCCTTCCGCGAGGAGAATGCAAATTTTAATAAAATTT-3’、配列番号76)とoligo Oligo 4-II (5’-CCGGAAATTTTATTAAAATTTGCATTCTCCTCGCGGAAGGATGGTTCTTTCATGCTGTCGTAGTCGCCGCTACCCATTTCCTCGGTGTAGTTGTCCGAAGTATATATGGAAATTCCTTC-3’、配列番号77)をアニールさせることによって作製した。得られた断片を、予めNcoI及びKpn2Iで消化したベクターpAP378に結合させた。
543:(378ベース):MEGISIYTSDNYTEEMGSGDYDSMKEPSFREENANFNKI−SGG−AP205コートタンパク質
結果として生じたプラスミドpAP543にて大腸菌JM109を形質転換し、実施例2に記載のように発現させた。溶解物中のキャプシドは、個々のAP205コートタンパク質融合物が大腸菌内で発現される際に、VLPの自己アッセンブリがあることを示す。
細胞を、5μg/mlのPMSFを添加した溶解バッファー(50mM トリス、5mM EDTA、0.1% Tween20, pH8.0)中で超音波処理することによって溶解した。溶解物を遠心によって分離させ、ペレットを1Mの尿素を含有する溶解バッファーにて洗浄した。プールした上清をNETバッファーのセファロース4Bカラムにて精製した。VLPを含有する溶出分画をプールし、Amicon遠心フィルターユニットを用いて濃縮し、NETバッファーのセファロース6Bカラムにて精製した。CXCR4-Ntペプチドの粒子のアッセンブリと表出は、CXCR4-Ntペプチドに特異的なマウス抗血清を用いたウェスタンブロット、SDS-PAGE、及びEMによって精製したVLPを分析することによって確認した。
C57BL/6マウスを、実施例17及び18より入手した50μgのNt-AP205、AP205-cECL2c、AP205-cECL2A、CXCR4-Nt-AP205 VLPにて、第0日目に初回刺激し(皮下に0.2mlPBS)、50μgのコンストラクト378及び405VLPにて初回刺激したBalbCマウスとそれぞれ比較した。第14日目に同じワクチンで追加免役した後、α-AP205及びα-CCR5、α-CXCR4抗体の力価を第14日目と第21日目にELISAにて確認した。
ポリクローナルマウスIgGの精製
マウスを免疫化した血清を14000rpmで5分間遠心した。上清を3.3mlのプレウォッシュしたプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Otelfingen, Switzerland)のカラムに流した。次いで、カラムをPBSで洗浄し、100mM グリシン pH2.8にて溶出した。1mlの分画を、予め120μlの1M トリスpH8を入れたチューブに回収した。280nmの吸光度のピーク時の分画をプールした。
CEM.NKR-CCR5は、CD4を天然に発現するヒト細胞株であるCEM.NKR細胞株のCCR5-発現変異体である(Trkola 等, J. Virol., 1999, 8966頁)。CEM.NKR-CCR5細胞をRPMI1640培養液(10% FCS、グルタミン及び抗生物質を有する)中で生育させた。細胞をペレット化し、2.3×106細胞/mlとなるように、1% ウシ胎仔血清(FCS)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。2mg/lのラット-α-マウス-CD16/CD32(Fcγ)(Pharmingen, Basel, Switzerland)をブロック試薬として添加し、20分間インキュベートした。細胞を1% FCS/PBSにて1回洗浄し、0.1ml(2.3×105細胞/ウェル)を播き、次いでV底96ウェルプレート中でペレット化した。次いで、細胞を0.1mlのα-CCR5ポリクローナル抗体(350 mg/l、35mg/l、3.5mg/l又は0.35mg/l;プロテインGカラムから溶出;1% FCS/PBSにて希釈)と共に再懸濁した。4℃で30分間置いた後、細胞を1% FCS/PBSにて洗浄し、15mg/lのFITC-ヤギ-α-マウス-IgG(Jackson, Milan Analytica, LaRoche)を含む1% FCS/PBSにて4℃で20分間染色した。1% FCS/PBSで2回洗浄した後、5000−10000の染色した細胞をフローサイトメトリーによって分析した。各染色物の相乗平均を「cell quest」フローサイトメトリーソフトウェアを用いて測定した。
一次CD8枯渇PBMCの刺激
簡単に言うと、3の健康な血液ドナーから得たバフィーコートをRosette Sep混合液(StemCell Technologies Inc., BIOCOBA AG)を用いてCD8+T細胞の枯渇を行い、Ficoll-Hypaque遠心分離(Amersham-Pharmacia Biotech)によってPBMCを単離した。細胞を培養液(RPMI 1640、10% FCS、100 U/ml IL-2、グルタミン及び抗生物質)にて4×106/mlに調整して、3つに分け、5μg/ml フィトヘマグルチニン(PHA)、0.5μg/ml PHA又は1mg/l 抗CD3 MAb OKT3の何れかで刺激した。72時間後、3つすべての刺激したものからの細胞を混合し、感染とウイルス中和実験のために刺激したCD4+T細胞の供給源として用いた。
HIV中和アッセイは、基本的に既に記載されているように行った(Trkola 等, J. Virol., 1999, 8966頁)。R5ウイルス(CCR5コレセプター特異的細胞株)、JR-FL及びSF162は既に記載されている(O'Brien 等, Nature 1990, 348, 69頁;及びShioda 等, Nature 1991, 349, 167頁)。あるいは、X4細胞株NL4-3及び2044は既に記載されている(Trkola 等 (1998), J. Virol. 72:396;Trkoly 等 (1998), J. Virol 72-1876)。簡単に言えば、96ウェルの培養プレートにて、精製したポリクローナルマウスIgG又は対照抗体2D7の段階希釈物(25μg/ml−25ng/ml;Pharmingen)と共に細胞を37℃で1時間インキュベートした。
HIV-1菌種を、アッセイ培地中におよそ1000から4000TCID50/ml含むように調整した(TCID50:50%組織培養感染用量、Trkola 等, J. Virol., 1999, 8966頁)。ウイルス菌種(100TCID50:50%組織培養感染用量)を加え、4−14日間プレートを培養した。合計の感染容量を200μlとした。好ましくは、感染6日後に、上清培養物をHIV-1 p24抗原産生について、記載される(Moore 等, 1990. Science 250, 139頁)ように免疫アッセイを用いてアッセイした。
クローニング及び発現
抗原提示細胞中のプロセシングを改善するためにN末端にロイシンが付加されたP33ペプチドをコードするDNA断片を、2つのオリゴヌクレオチド−oligo 2.198 (5'-CCTCCGGACTGAAA GCTGTGTATAACTTCGCGACTATGTAATGCATCG-3'、配列番号79)とoligo 2.199 (5'-CGATGCATTACATAGTCGCGAAGTTATACACAGCTTTCAGTCCGGAGG-3'、配列番号80)をアニールさせることによって作製した。得られた断片をKpn2I及びMph1103Iで消化して、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にあるベクターpAP409内の同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
425:(409ベース):AP205コートタンパク質−GSG−LKAVYNFATM
結果として生じたプラスミドをpAP425と称し、大腸菌JM109を形質転換して、実施例2に記載のように発現させた。
細胞を、5μg/ml PMSFを添加した溶解バッファー(50mM トリス、5mM EDTA、0.1% トリトンX100, pH8.0)中で超音波処理することによって溶解した。溶解物を遠心によって分離し、ペレットを、溶解バッファーにて2回、1M 尿素を含有する溶解バッファーにて1回洗浄した。プールした上清をNETバッファーのセファロースCL-4Bカラムにて精製した。VLPを含有する溶出分画をプールし、Amicon遠心フィルターユニットを用いて濃縮し、NETバッファーのCL-6Bカラムにて精製した。P33ペプチドの粒子のアッセンブリと表出は、P33ペプチドに特異的なマウス抗血清を用いたウェスタンブロット、SDS-PAGE、及びEMによって精製したVLPを分析することによって確認した。タンパク質の回収率は2.7mg/g細胞であった。したがって、P33ペプチドは、AP205コートタンパク質のC末端に成功裏に融合し、大量に粒子形成が起こった。この結果から、修飾されたAP205 VLPはP33などのエピトープの融合の強固なシステムであり、Frなどの他のRNAファージVLPに融合した場合には粒子のアッセンブリを妨げることが示唆される。
上記のように得られたAP205-p33(2.7mg/ml)を20mM Hepes, pH7.4で透析し、RNアーゼ(300μg/ml VLP)にて37℃で3時間消化した。次いで、RNアーゼ処理したVLPを4℃で終夜透析した(Molecular weight cutoff=100000)。オリゴデオキシヌクレオチド(oligos)1668pt(t*c*c*a*t*g*a*c*g*t*t*c*c*t*g*a*a*t*a*a*t、この*はホスホロチオエート結合を意味する、配列番号94)及びNKpt(g*g*g*g*t*c*a*a*c*g*t*t*g*a*g*g*g*g*g*g、配列番号95)を以下のようにAP205-p33内にパッケージ化した。0.12mlの1mM oligo貯蔵物/ml 処理したVLPとMgCl2(終濃度2mM)を加え、37℃で3時間インキュベートした。フリーoligoを20mM Hepes, pH7.4バッファーを用いた接線流量濾過(tangential flow filtration)によって除去した。oligoのパッケージ化は、エチジウムブロマイドのアガロースゲル電気泳動法によって再アッセンブリされたVLPの分析を行うことにより確認した。パッケージ化されたVLP調整物中の残渣フリーoligoを、同じゲル上の同じoligoの標準物質の8つの希釈物と比較することによって定量した。オリゴの合計量をプロテイナーゼKでパッケージ化されたVLP調整物を処理して、10% TBE/尿素ゲルのPAGEによって分析することによって定量した。ゲルをSYBRゴールドにて染色して、標準物質として同じoligoの5つの希釈物を用いたデンシトメトリーによって各バンドの合計オリゴ含有量を定量した。パッケージ化されたoligo含有量を求めるために、残渣のoligo含有量を合計のoligo含有量から減算した。これは、NKpt oligoは4.36nmol/100μg VLPであり、1668pt oligoは2.98nmol/100μg VLPであった。
実施例19に記載のoligo1668pt又は内部パッケージ化oligoNKptとAP205-p33(コンストラクト425)、又はToll様レセプターに対するリガンドでない、異なる量のポリ-L-グルタミン酸の存在下で再アッセンブリされるAP205-p33 VLP(0.1mg/ml、0.2mg/ml又は0.4mg/mlのポリ-L-グルタミン酸とAP205-p33/ポリ-L-Glu)、150μgを皮下接種することによってC57BL/6マウスを免疫化した。8日後、免疫化した動物から採取した血液をgp33-特異的CD8+T細胞の増殖について分析した。血液をFACSバッファー(PBS、2% FCS、5mM EDTA, pH8.2)中に回収して、gp33-ペプチド(Proimmune)を添加したPE-標識H2-Db-四量体にて37℃で10分間染色した後、APC標識ラット抗マウスCD8a抗体(BD PharMingen)にて4℃で30分間染色した。洗浄の後、赤血球をBD-Lyzing溶液(BD Biosciences, San Jose, USA)にて室温で10分間かけて溶解した。最後に、CellQuestソフトウェアを用いたFACS Caliburにて細胞を分析した。まず初めに、細胞をフォワードスキャッターとサイドスキャッターに置き、リンパ球をゲートした。このリンパ球集団から、gp33-PE標識細胞及びCD8-APC標識細胞をFL2及びFL4検出器にてそれぞれ測定した。gp33-特異的T細胞をCD8陽性リンパ球の合計に対するパーセントCD8陽性、gp33陽性細胞として算出した。
gp33-特異的T細胞応答の測定の後に、マウスを、gp33-ペプチドを発現する1.5×106pfuの組み換えワクチンにて負荷試験した。5日後、マウスの卵巣におけるウイルス力価を測定した。単一の卵巣の細胞懸濁液をBSC40細胞の段階希釈物中でインキュベートした。5% CO2、37℃で終夜インキュベートした後、ウイルス誘発細胞溶解物由来の細胞層にてプラークを可視化するために、細胞をクリスタルバイオレット(500ml 96% エタノール、5g クリスタルバイオレット(Sigma C-3886)、8g NaCl、450ml H2O、50ml ホルムアルデヒド)にて染色した。卵巣中の残渣ウイルスの数はプラーク形成単位(pfu)として算出した。
クローニング及び発現
グレリンに対して抗体を誘発するワクチンを作製するために、ヒトグレリン(1-8)に対応するペプチドをAP205のC末端に融合した。次いで、ワクチンをマウスに接種し、グレリンへの結合について抗体を試験した。グレリンペプチド(GSSFLSPE、配列番号55)をコードするDNA断片を2つのオリゴヌクレオチド−Oligo 4.173 (5’-GT TCC GGA GGG AGC TCC TTC CTG TCT CCG GAA TAA TGCATGT-3’、配列番号81)とOligo 4.174 (5’-ACATGCA TTA TTC CGG AGA CAG GAA GGA GCT CCC TCC GGA AC-3’、配列番号82)にアニールさせることによって作製した。得られた断片をKpn2I及びMph1103Iにて消化して、大腸菌トリプトファンオペロンプロモータの制御下にあるベクターpAP405及びpAP409内の同じ制限酵素部位内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
(405ベース) 513 AP205コートタンパク質−GTAGGGSG−GSSFLSPE
(409ベース) 514 AP205コートタンパク質−GSG−GSSFLSPE
結果として生じたプラスミドpAP513及びpAP514にて大腸菌JM109を形質転換して、実施例2に記載のように発現させた。溶解物中に存在するキャプシドにより、それぞれのAP205コートタンパク質融合物が大腸菌内で発現される際にVLPの自己アッセンブリが起こることが示された。
細胞を、5μg/ml PMSFを添加した溶解バッファー(50mM トリス、5mM EDTA、0.1% Tween20, pH8.0)中で超音波処理することによって溶解した。溶解物を遠心によって分離し、ペレットを溶解バッファーにて3回洗浄した。プールした上清に終濃度0.4MとなるようにNaClを添加し、半量の40% PEG6000水溶液にて沈殿させた。沈殿物を遠心によって単離し、洗浄して、H2Oに再懸濁して、NETバッファーのセファロースCL-2Bカラムにて精製した。VLPを含有する溶出分画をプールし、Amicon遠心フィルターユニットを用いて濃縮した。さらに、コンストラクト513からのタンパク質を、以下のショ糖溶液にて調整したショ糖密度勾配法により精製した:9ml 36%、3ml 30%、6ml 25%、8ml 20%、6ml 15%、6ml 10%及び3ml 5%。VLP分画をプールし、遠心フィルターユニットにより濃縮して、10mM Hepes, pH7.5にて透析した。コンストラクト514からのタンパク質のCL-2B精製物からのVLPを含有する濃縮された分画をさらに、セファロース6Bカラムにて精製して、VLPを含有する分画を遠心フィルターユニットにより濃縮した。
グレリンペプチドの表出は、グレリンに特異的なマウス抗血清を用いたウェスタンブロット、SDS-PAGE、AP205-グレリン VLPにてELISAプレートをコートし、RNAアーゼにコンジュゲートされたグレリンペプチドへのグレリンに特異的なマウス抗血清の結合を阻害する阻害ELISA、及びEMによって精製したVLPを分析することによって確認した。
その後、グレリン特異的な抗体力価が実験中に著しく低下した場合には、マウスを追加免役した。すべてのマウスに高脂肪食(35重量%の脂肪、60%エネルギー)を与え、食事誘発性の肥満の発達を容易にした。食事と水は適宜与えた。一定の間隔で体重をモニターした。
クローニング及び発現
インフルエンザタンパク質M2に対して抗体を誘発するワクチンを作製するために、インフルエンザウイルスのM2タンパク質に対応するペプチドをAP205のN末端に融合した。次いで、ワクチンをマウスに接種し、免疫化の保護効果を評価した。N末端にMGが付加されたM2ペプチド(MGSLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG、配列番号83)をコードするDNA断片を2つの5'リン酸化オリゴデオキシヌクレオチド−oligo M2- I (5’- GGC CAT GGG ATC TCT GCT GAC CGA AGT TGA AAC CCC GAT TCG TAA TGA ATG GGG TTG CCG TTG CAA TGA TTC TTC TGA TGG TTC CGG AGG - 3’、配列番号84) とoligo M2- II (5’- CCT CCG GAA CCA TCA GAA GAA TCA TTG CAA CGG CAA CCC CAT TCA TTA CGA ATC GGG GTT TCA ACT TCG GTC AGC AGA GAT CCC ATG GCC -3’、配列番号85)にアニールさせることによって作製した。得られた断片を、予めNcoI及びKpn2Iで消化したベクターpAP378内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
551:(378ベース):MGSLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG−SGG−AP205コートタンパク質
結果として生じたプラスミドpAP551にて大腸菌JM109を形質転換して、実施例2に記載のように発現させた。溶解物中に存在するキャプシドにより、AP205コートタンパク質融合物が大腸菌内で発現される際にVLPの自己アッセンブリが起こることが示された。
細胞を、5μg/ml PMSFを添加した溶解バッファー(50mM トリス、5mM EDTA、0.1% Tween20, pH8.0)中で超音波処理することによって溶解した。溶解物を遠心によって分離し、ペレットを1M 尿素を含有する溶解バッファーにて洗浄した。プールした上清をNETバッファーのセファロースCL-4Bカラムにて精製した。VLPを含有する溶出分画をプールし、Amicon遠心フィルターユニットを用いて濃縮し、NETバッファーのセファロース6Bカラムにて精製した。VLPを含有する分画をプールし、遠心フィルターユニットにより濃縮して、10mM Hepes, pH7.5にて透析し、M2ペプチドの粒子のアッセンブリと表出を、SDS-PAGE及びEMによって精製したVLPを分析することによって確認した。
クローニング及び発現
インフルエンザウイルスのM2ペプチドに対応するペプチドをAP205コートタンパク質のC末端に融合した。簡単に言うと、AP205コートタンパク質とインフレーム融合し、クローニングのためのKpn2I及びMph1103Iの制限酵素部位に隣接するM2配列(配列番号43)をコードする2つの相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。また、ペプチドコード配列の終末に停止コドンを含有させた。この相補的なオリゴヌクレオチドをアニールさせ、Kpn2I及びMph1103Iにて消化して、C末端融合物の生成のためにpAP409、pAP405内にクローニングした。結果として生じたコンストラクトは以下の通りである。
pAP409-M2:AP205−GSG−SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG
pAP405-M2:AP205−GTAGGGSG−SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG
実質的に実施例22に記載と同じように、対応する融合タンパク質を発現させて精製した。
発現ベクターのクローニング
短いスペーサー配列で直列に分離するM2ペプチドの多量体をAP205コートタンパク質にインフレーム融合させた。簡単に言うと、AP205コートタンパク質とインフレーム融合し、クローニングに好適な制限酵素部位に隣接する所望の配列(以下を参照)をコードする2つの相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。また、AP205のC末端に融合させるためのペプチドコード配列の終末に停止コドンを含有させた(pAP409、pAP405内にクローニング)。相補的なオリゴヌクレオチドをアニールし、好適な制限酵素にて消化して、それぞれのAP205融合ベクター内にクローニングした。N末端融合物を生成するためにpAP378及びpAP382内に、C末端融合物を生成するためにpAP409及びpAP405内に、M2二量体(SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG−GSSG−SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG、配列番号96)又はM2三量体( SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG−GSSG−SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG−GSSG−SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDG、配列番号97)をクローニングした。実質的に実施例22と同じように、対応する融合タンパク質を発現させ、精製した。
異なるAP205-M2融合ワクチンを試験するために、実施例22−24より入手したVLPにて免疫化し、その後、基本的には既に記載される(Jegerlehner 等, J. Immunol., 2004, 5598-5605頁)ようにインフルエンザAウイルス負荷試験を行った。簡単に言うと、実施例22−24からそれぞれ入手したVLPとネガティブ対照としてAP205 VLPを用いて、成体C57BL/6マウス(1グループ当たり5匹)にワクチン接種した。各マウスについて、100μgのワクチンを200μlの容積にまでPBSで希釈し、第0日目及び第14日目に、各動物の左右の鼠径部に皮下注射した。第14日目及び第21日目に動物から採血し、M2特異的抗体応答をELISAで測定した。簡単に言うと、M2ペプチドを、アミノ酸スペーサー(CGG)とクロスリンカーSPDPを介してRNアーゼにコンジュゲートさせ、ELISAプレート上に4℃で終夜をかけてコートした。血清の結合を西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウスIgGコンジュゲートにて検出した。
第33日目に、すべてのマウスを、4000生インフルエンザAウイルス(細胞株:A/Puerto Rico 8/34, H1N1サブタイプ)/マウスにて負荷試験した。次いで、各免疫化グループの体重及び死亡率を14日間モニターした。
クローニング及び発現
HIVエンベロープ糖タンパク質gp160由来のペプチド(配列番号98−113)をAP205コートタンパク質にインフレーム融合させた。簡単に言うと、AP205コートタンパク質とインフレーム融合し、クローニングに好適な制限酵素部位に隣接する所望の配列をコードする2つの相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。また、AP205のC末端に融合させるためのペプチドコード配列の終末に停止コドンを含有させた(pAP409、pAP405内にクローニング)。AP205のN末端で融合させるためのOligoの開始部分に開始メチオニンコドンを付加した。相補的なオリゴヌクレオチドをアニールさせ、好適な制限酵素にて消化し、それぞれのAP205融合ベクター内にクローニングした。HIV envペプチドを、N末端融合物を生成するためにpAP378及びpAP382内に、C末端融合物を生成するためにpAP409及びpAP405内にクローニングした。
実質的に、実施例2及び3に記載のように、対応する融合タンパク質の発現と精製を行った。
第14日目及び第21日目に動物から採血し、抗体応答をELISAで測定した。簡単に言うと、試験する抗原を、アミノ酸スペーサー(CGG)とクロスリンカーSPDPを介してRNアーゼにコンジュゲートさせ、ELISAプレート上に4℃で終夜をかけてコートした。血清の結合を西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウスIgGコンジュゲートにて検出した。
第21日目に心穿刺してマウスから採血し、各ワクチンの血清を以下のように精製した:各グループの5匹のマウスからの血清をプールして、14000rpmにて5分間遠心した。3mlのプレウォッシュプロテインGセファロースのカラム(Amersham Biosciences)に上清を流した。次いで、カラムを10カラム容量のPBSにて洗浄して、100mM グリシンpH2.8にて溶出させた。1mlの分画を、200μlの1M トリスpH8.0を含有するチューブに回収した。タンパク質含有分画をプールして、5kDaの分子重量カットオフのMillipore Ultrafree遠心フィルター(Millipore)を用いて濃縮した。同じ濃縮フィルターを用いてバッファーをPBSに交換した。精製したIgG分画をMillipore Millexフィルター(Millipore)を用いてフィルター滅菌し、液体N2で凍結させ、長期保存の場合には−80℃で保存、又は一定期間であれば4℃で保存した。
次いで、得られた血清を、R5、X4ウイルス株を用いて基本的には実施例19に記載のようにHIV中和アッセイにて試験した。さらに、精製したIgG分画を、既に記載されている(Hovanessian 等, Immunity 2004, 617-627頁)ように一次HIV単離物を中和する能力について試験した。
Claims (23)
- 少なくとも一の融合タンパク質を含有してなる修飾されたウイルス様粒子(VLP)であって、当該少なくとも一の融合タンパク質が:
(a) 第一ポリペプチド;と
(b) 第二ポリペプチド
とを含有してなり、該第一ポリペプチドがAP205バクテリオファージのコートタンパク質又はそのムテインであり、該第二ポリペプチドが該第一ポリペプチドのN末端又はC末端の何れか、又は該第一ポリペプチドに融合している、修飾されたウイルス様粒子。 - 前記第二ポリペプチドが少なくとも一の抗原を含有してなる、請求項1に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 前記第一ポリペプチドが124−138アミノ酸からなる、請求項1又は2に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- AP205バクテリオファージの前記コートタンパク質又はそのムテインが、
(a) 配列番号1;
(b) 配列番号2;
(c) 配列番号42;
(d) 配列番号67;
(e) 配列番号68;
(f) 配列番号69;及び
(g) 配列番号1又は67のムテイン;
からなる群から選択される、請求項1ないし3の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。 - 前記ムテインが配列番号1又は67に記載のアミノ酸配列を有し、配列番号1又は67の最大3アミノ酸残基が欠失、内部に付加又は置換されている、請求項4に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 前記融合タンパク質がさらにスペーサーを含有し、該スペーサーが前記の第一ポリペプチドと前記の第二ポリペプチドの間に位置する、請求項1ないし5の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 前記スペーサーが最大15アミノ酸を有する、請求項6に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 前記の第二ポリペプチドが、
(a) 癌細胞に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;
(b) 少なくとも一の病原性微生物に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;
(c) 少なくとも一のアレルゲンに対する免疫応答を誘発するために適した抗原;
(d) 少なくとも一の自己抗原に対する免疫応答を誘発するために適した抗原;
(e) 畜産動物又は愛玩動物の免疫応答を誘発するために適した抗原;及び
(f) ポリペプチド毒又はポリペプチドホルモンに対する免疫応答を誘発するために適した抗原
からなる群から選択される少なくとも一の抗原を含有してなる、請求項1ないし7の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。 - 前記の少なくとも一の抗原が、
(a) HIVのポリペプチド;
(b) B型肝炎ウイルスのポリペプチド;
(c) インフルエンザウイルスのポリペプチド;
(d) C型肝炎ウイルスのポリペプチド;
(e) トキソプラズマのポリペプチド;
(f) マラリヤ原虫のポリペプチド;
(g) 三日熱マラリアのポリペプチド;
(h) 卵形マラリア原虫のポリペプチド;
(i) 四日熱マラリア原虫のポリペプチド;
(j) クラミジアのポリペプチド;
(k) 乳癌細胞のポリペプチド、
(l) 腎臓癌細胞のポリペプチド、
(m) 前立腺癌細胞のポリペプチド、
(n) 皮膚癌細胞のポリペプチド、
(o) 脳癌細胞のポリペプチド、
(p) 白血病細胞のポリペプチド、
(q) 組換え体プロファイリング、
(r) ミツバチの針アレルギーに伴われるポリペプチド、
(s) 木の実アレルギーに伴われるポリペプチド、
(t) 食物アレルギーに伴われるポリペプチド、
(u) 喘息に伴われるポリペプチド、
(v) Her2;
(w) GD2;
(x) EGF-R;
(y) CEA;
(z) CD52;
(aa) ヒトメラノーマgp100;
(bb) ヒトメラノーマmelanA
(cc) チロシナーゼ;
(dd) NA17-A nt;
(ee) MAGE3;
(ff) P53;
(gg) CD21;
(hh) HPV16E7;
(ii) ホスホリパーゼA2タンパク質;
(jj) Der pIペプチド;
(kk) インフルエンザM2タンパク質;
(ll) (a)から(z)及び(aa)から(kk)の前記少なくとも一の抗原の断片;及び、
(mm) (a)から(z)及び(aa)から(kk)の前記少なくとも一の抗原の変異体
からなる群から選択されるものである、請求項1ないし8の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。 - 前記の少なくとも一の抗原が自己抗原である、請求項1ないし9の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 前記の自己抗原が、
(a) リンホトキシン(好ましくはリンホトキシンα(LTα)、リンホトキシンβ(LTβ));
(b) リンホトキシンレセプター;
(c) 核因子kBリガンド(RANKL)のレセプター活性化因子;
(d) 血管内皮成長因子(VEGF);
(e) 血管内皮成長因子レセプター(VEGF-R);
(f) インターロイキン-5;
(g) インターロイキン-17;
(h) インターロイキン-13;
(i) IL-23p19;
(j) グレリン;
(k) CCL21;
(l) CXCL12;
(m) SDF-1;
(n) M-CSF;
(o) MCP-1;
(p) エンドグリン;
(q) GnRH;
(r) TRH;
(s) エオタキシン;
(t) ブラジキニン;
(u) BLC;
(v) 腫瘍壊死因子α;
(w) アミロイドβペプチド(Aβ1−42);
(x) Aβ1−6;
(y) アンギオテンシン;
(z) CCR5細胞外ドメイン;
(aa) CXCR4細胞外ドメイン;
(bb) ガストリン;
(cc) CETP;
(dd) C5a;
(ee) ブラジキニン;
(ff) Des-Argブラジキニン
(gg) (a)−(ff)の断片;及び、
(hh) (a)−(ff)の変異体
からなる群から選択されるポリペプチドである、請求項10に記載の修飾されたウイルス様粒子。 - 前記の第二ポリペプチドが5−30アミノ酸からなる、請求項1ないし11の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 前記の第二ポリペプチドが、
(a) インフルエンザウイルスM2ペプチド(配列番号:43);
(b) B型肝炎ウイルスPre S1ペプチド(配列番号:62);
(c) HIV Nefポリエピトープ(配列番号:23);
(d) GnRH(配列番号:20);
(e) ガストリンG17(配列番号:47);
(f) ネコグレリン(配列番号:59);
(g) イヌグレリン(配列番号:58);
(h) HIV Envペプチド1(配列番号:98);
(i) HIV Envペプチド2(配列番号:99);
(j) CCR5 PNt(配列番号:45);及び、
(k) CCR5 ECL2(配列番号:91)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有してなる、請求項1ないし12の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。 - さらに、少なくとも一の免疫賦活性核酸を含有してなり、該免疫賦活性核酸が前記の修飾されたウイルス様粒子内にパッケージ化されている、請求項1ないし13の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- 少なくとも一の非メチル化CpGモチーフを含有する前記核酸が配列GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG (配列番号:71)を含有する、請求項14に記載の修飾されたウイルス様粒子。
- (a) 請求項1ないし15の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子;及び
(b) 受容可能な薬剤的担体
を含有してなる薬剤組成物。 - 免疫学的に有効な量の請求項1ないし15の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子を含有してなるワクチン組成物。
- さらに、アジュバントを含有してなる、請求項17に記載のワクチン組成物。
- 請求項17又は18に記載のワクチン組成物が動物又はヒトに投与されることを含む、免疫化方法。
- ポリペプチドを含有してなる融合タンパク質であり、該ポリペプチドがAP205バクテリオファージのコートタンパク質又はそのムテインのN末端又はC末端、又はその両端に融合されており、該ポリペプチドが3−10アミノ酸からなり、該融合タンパク質がウイルス様粒子を形成することができる、融合タンパク質。
- 請求項20の前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列。
- (a) スペーサーをコードするヌクレオチド配列を、第一ポリペプチドをコードする第一ヌクレオチド配列又は第二ポリペプチドをコードする第二ヌクレオチド配列に選択的にインフレームで連結する;
(b) 前記第二ヌクレオチド配列を前記第一ヌクレオチド配列にインフレームで連結した結果、前記の融合タンパク質をコードする第三ヌクレオチド配列を生じる;
(c) 第一ヌクレオチド配列の3'で抑制される停止コドンを選択的に導入する;
(d) 好ましくは結果として生じる発現されたタンパク質が前記の修飾されたウイルス様粒子を形成することができる条件下で、宿主内で該第三ヌクレオチド配列を発現させる;
(e) (d)の工程で得られた該修飾されたウイルス様粒子を精製する、
という工程を含む、請求項1ないし15の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子の産生方法。 - 動物又はヒトに、請求項1ないし15の何れか一に記載の修飾されたウイルス様粒子又は請求項16に記載の薬剤組成物又は請求項17ないし18に記載のワクチン組成物が投与されることを含む、個体の疾患、障害又は病理学的症状を治療又は予防する方法。
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