本発明は、全ての血清型のボツリヌス毒素および破傷風毒素を含むクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定するために有用なSNAP−25基質およびタグ付き毒素基質をコードするヌクレオチド配列を含有する核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、一つには、同族のクロストリジウム毒素に対する結合親和性を高めることが可能なより長い毒素認識配列を有する組換えSNAP−25基質およびタグ付き毒素基質を都合良く調製するために使用することができるという理由で貴重である。このような組換えSNAP−25基質およびタグ付き毒素基質は、動物に頼ることのない簡単なスクリーニングアッセイにおいて利用することができ、未精製およびバルクサンプル、ならびに高純度の二鎖(dichain)毒素または単離クロストリジウム毒素軽鎖を分析するために有用である。さらに本明細書において開示されるように、本発明の核酸分子から調製される組換えSNAP−25基質およびタグ付き毒素基質を使用して、低ピコモル濃度のBoNT/AおよびBoNT/Eを検出し、低ナノモル濃度のBoNT/Cを検出することができる。
本発明はさらにクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定する方法を提供し、該方法は、敏感、迅速、および高スループットであり得るという点で有利であり、溶液相のタンパク質分解反応を可能にする。他のアッセイとは違って、本発明の方法はその同族の毒素に対して良好な親和性を有するクロストリジウム毒素基質の分析を組み合わせており、その結果、毒素のプロテアーゼ活性が溶液相中でアッセイされる構成の高感度アッセイが得られ、毒素活性の動態学的分析が可能になる。米国特許第6,762,280号明細書に記載されるような別のアッセイは、毒素に対して良好な結合親和性を有するものではあるが、固定化基質に依存していた。さらなるアッセイは高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)分離に依存しており、そのため高スループット構成に従わない(米国特許第5,965,699号明細書)か、あるいは比較的乏しい結合特性を有する短いペプチド基質に頼った、より低感度のアッセイ(例えば、アン(Anne)ら、Anal.Biochem.291:253−261頁(2001年)を参照)であった。
従って本発明は、一つには、(i)緑色蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)緑色蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列を含むSNAP−25の一部分と、を含有するSNAP−25基質をコードするヌクレオチド配列を含有する核酸分子を提供する。本発明の核酸分子において、親和性対のコードされた第1のパートナーは、ヒスチジンタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、ビオチン化配列、ストレプトアビジン、Sペプチド、Sタンパク質、もしくはFLAG、赤血球凝集素(hemagluttinin)、c−mycまたはAU1エピトープなどのエピトープであり得るが、限定はされない。1つの実施形態では、親和性対のコードされた第1のパートナーは、ヒスチジンタグである。
本発明の核酸分子において、コードされたSNAP−25基質は、切断部位を含有するBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列を有するSNAP−25の様々な部分のいずれかを含むことができる。このようなSNAP−25の部分は、例えば、配列番号:90の残基134−206、もしくは本明細書中で開示されるかまたは当該技術分野において既知である別のBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列および切断部位を含むことができる。1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも1ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断されるSNAP−25基質をコードするヌクレオチド配列を含む。もう1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも100ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断されるSNAP−25基質をコードするヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも1000ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断されるSNAP−25基質をコードするヌクレオチド配列を含む。
本発明はさらに、(i)蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するクロストリジウム毒素認識配列と、を含有するタグ付き毒素基質をコードするヌクレオチド配列を含有する核酸分子を提供する。タグ付き毒素基質をコードする核酸分子において、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質または赤色蛍光タンパク質であり得るが、限定はされない。1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、緑色蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
このような核酸分子において、親和性対の様々な第1のパートナーは、コードされたタグ付き毒素基質内に取り込まれ得る。非限定的な例として、コードされたタグ付き毒素基質は、親和性対の第1のパートナーとして、ヒスチジンタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、ビオチン化配列、ストレプトアビジン、Sペプチド、Sタンパク質、もしくはFLAG、赤血球凝集素、c−mycまたはAU1エピトープなどのエピトープを含むことができる。さらに、コードされたクロストリジウム毒素認識配列は、配列番号:90の残基134−206、もしくは例えば本明細書中で開示されるかまたは当該技術分野において既知である認識配列のうちの1つのようなBoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/GまたはTeNT認識配列などのSNAP−25の一部分であり得るが、限定はされない。
さらに、本発明の核酸分子は、低いまたは高い活性を有する同族のクロストリジウム毒素によって切断可能なタグ付き毒素基質をコードするヌクレオチド配列を含有する。1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも1ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断可能なタグ付き毒素基質をコードする。もう1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも100ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断可能なタグ付き毒素基質をコードする。さらにもう1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも1000ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断可能なタグ付き毒素基質をコードする。
本発明はさらに、(i)遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するクロストリジウム毒素認識配列と、を含むタグ付き毒素基質をコードするヌクレオチド配列を含有する核酸分子を提供する。本発明の核酸分子において、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、ルシフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたは蛍光タンパク質であり得るが、限定はされない。
親和性対の様々な第1のパートナーはどれも、本発明の核酸分子によってコードされたタグ付き毒素基質において、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと組み合わせることができる。親和性対のコードされた第1のパートナーは、例えば、ヒスチジンタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、BirAspなどのビオチン化配列、ストレプトアビジン、Sペプチド、Sタンパク質、もしくはFLAG、赤血球凝集素、c−mycまたはAU1エピトープなどのエピトープであり得る。1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、親和性対の第1のパートナーとしてヒスチジンタグを含むタグ付き毒素基質をコードする。
さらに、様々なコードされたクロストリジウム毒素認識配列はいずれも、本発明の核酸分子によってコードされたタグ付き毒素基質において、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと組み合わせることができる。このようなクロストリジウム毒素認識配列としてはボツリヌス毒素認識配列があるが、これに限定されない。非限定的な例として、コードされたタグ付き毒素基質において、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと組み合わせられるクロストリジウム毒素認識配列は、配列番号:90残基134−206、もしくは本明細書中で開示されるかあるいは当該技術分野において既知である認識配列のうちの1つのようなBoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/GまたはTeNT認識配列などのSNAP−25の一部分であり得る。
本発明の核酸分子は、低いまたは高い活性を有する同族のクロストリジウム毒素によって切断されるタグ付き毒素基質をコードすることができる。1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも1ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断可能なタグ付き毒素基質をコードする。その他の実施形態では、本発明の核酸分子は、少なくとも100ナノモル/分/ミリグラムの毒素、または少なくとも1000ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断可能なタグ付き毒素基質をコードする。
さらに、本明細書では、(i)緑色蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)緑色蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列を含むSNAP−25の一部分と、を含むSNAP−25基質が提供される。親和性対の様々な第1のパートナーはどれも本発明のSNAP−25基質において有用である。非限定的な例として、親和性対の第1のパートナーは、ヒスチジンタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、ビオチン化配列、ストレプトアビジン、Sペプチド、Sタンパク質、もしくはFLAG、赤血球凝集素、c−mycまたはAU1エピトープなどのエピトープであり得る。1つの実施形態では、本発明は、親和性対の第1のパートナーがヒスチジンタグであるSNAP−25基質を提供する。
本発明のSNAP−25基質は、対応する切断部位を含有するBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列を含むSNAP−25の一部分を取り込む。1つの実施形態では、本発明のSNAP−25基質は、配列番号:90の残基134−206を含む。さらなる実施形態では、本発明のSNAP−25基質は、BoNT/A認識配列、BoNT/C1認識配列、またはBoNT/E認識配列を含む。さらに、本発明のSNAP−25基質は、少なくとも1ナノモル/分/ミリグラムの毒素、少なくとも100ナノモル/分/ミリグラムの毒素、あるいは少なくとも1000ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断可能であるが、限定はされない。
さらに、本明細書では、(i)蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するクロストリジウム毒素認識配列と、を含むタグ付き毒素基質が提供される。緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および赤色蛍光タンパク質(RFP)を含むが限定はされない、様々な蛍光タンパク質はどれも本発明のタグ付き毒素基質内に取り込むことができる。1つの実施形態では、本発明のタグ付き毒素基質は、緑色蛍光タンパク質を含む。親和性対の様々な第1のパートナーはどれも本発明のタグ付き毒素基質において有用である。非限定的な例として、タグ付き毒素基質は、親和性対の第1のパートナーとして、ヒスチジンタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、ビオチン化配列、ストレプトアビジン、Sペプチド、Sタンパク質、もしくはFLAG、赤血球凝集素、c−mycまたはAU1エピトープなどのエピトープを含むことができる。1つの実施形態では、本発明は、親和性対の第1のパートナーがヒスチジンタグであるタグ付き毒素基質を提供する。
ボツリヌス毒素認識配列を含むがこれに限定されない様々な認識配列が、本発明のタグ付き毒素基質において有用であることは理解される。1つの実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないが配列番号:90の残基134−206などのSNAP−25の一部分を含むタグ付き毒素基質を提供する。もう1つの実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがSNAP−25の少なくとも6つの連続残基(ここで、6つの連続残基は配列Gln−Argを包含する)を含むBoNT/A認識配列などのBoNT/A認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがVAMPの少なくとも6つの連続残基(ここで、6つの連続残基は配列Gln−Pheを包含する)を含むBoNT/B認識配列などのBoNT/B認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがシンタキシンの少なくとも6つの連続残基(ここで、6つの連続残基は配列Lys−Alaを包含する)を含むBoNT/C1認識配列、あるいはSNAP−25の少なくとも6つの連続残基(ここで、6つの連続残基は配列Arg−Alaを包含する)を含むBoNT/C1認識配列などのBoNT/C1認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがVAMPの少なくとも6つの連続残基(ここで、6つの連続残基は配列Lys−Leuを包含する)を含むBoNT/D認識配列などのBoNT/D認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがSNAP−25の少なくとも6つの連続残基(6つの連続残基は配列Arg−Ileを包含する)を含むBoNT/E認識配列などのBoNT/E認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがVAMPの少なくとも6つの連続残基(6つの連続残基は配列Gln−Lysを包含する)を含むBoNT/F認識配列などのBoNT/F認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。本発明はさらに、認識配列が、限定はされないがVAMPの少なくとも6つの連続残基(6つの連続残基は配列Ala−Alaを包含する)を含むBoNT/G認識配列などのBoNT/G認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、認識配列が、限定はされないがVAMPの少なくとも6つの連続残基(6つの連続残基は配列Gln−Pheを包含する)を含むTeNT認識配列などのTeNT認識配列であるタグ付き毒素基質を提供する。
本発明のタグ付き毒素基質は、高いまたは低い活性で切断することができる。1つの実施形態では、本発明のタグ付き毒素基質は、少なくとも1ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断することができる。もう1つの実施形態では、本発明のタグ付き毒素基質は、少なくとも100ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断することができる。またさらなる実施形態では、本発明のタグ付き毒素基質は、少なくとも1000ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断することができる。
破傷風およびボツリヌス神経毒素はクロストリジウム属によって産生され、破傷風およびボツリヌス中毒症の神経麻痺症候群を引き起こす。破傷風神経毒素が主にCNSシナプスに作用する一方、ボツリヌス神経毒素は末梢性に作用する。クロストリジウム神経毒素は近似した細胞中毒機序を共用し、神経伝達物質の放出を抑制する。ジスルフィド結合した二つのポリペプチド鎖より構成されるこれらの毒素において、大きい方のサブユニットは、神経特異的結合および小さい方のサブユニットの細胞質内へのトランスロケーションに関与する。神経細胞内におけるトランスロケーションおよび還元の後、小さい方の鎖が、神経細胞細胞質におけるニューロエキソサイトーシスに関与するタンパク質成分に特異的なプロテアーゼ活性を示す。クロストリジウム毒素の標的であるSNAREタンパク質は、様々な非神経細胞タイプにおけるエキソサイトーシスに共通している;神経細胞と同様にこれらの細胞において、軽鎖プロテアーゼ活性がエキソサイトーシスを阻害する。
破傷風およびボツリヌス神経毒素B、D、F、およびGは、VAMP(synaptobrevin)を特異的に認識するが、これは神経毒素によって異なる結合の所で切断されるシナプス小胞膜内在性タンパク質である。ボツリヌスAおよびE神経毒素は、シナプス前膜のタンパク質であるSNAP−25を、そのタンパク質のカルボキシ末端部分における二つの相異なる部位で特異的に認識および切断する。ボツリヌス神経毒素Cは、SNAP−25に加えて、神経細胞膜タンパク質であるシンタキシンを切断する。三つのクロストリジウム神経毒素標的タンパク質は酵母からヒトまで保存されているが、切断部位および毒素感受性は必ずしも保存されていない(以下参照;Humeau et al., Biochimie 82:427 446 (2000); Niemann et al., Trends in Cell Biol. 4:179 185 (1994); および Pellizzari et al., Phil. Trans. R. Soc. London 354:259-268 (1999))も参照)。
天然の破傷風およびボツリヌス神経毒素は、リーダー配列のない150kDaの不活性ポリペプチド鎖として産生される。これらの毒素は、露出したプロテアーゼ感受性ループのところで細菌または組織プロテイナーゼによって切断され、活性二鎖毒素を生成し得る。天然のクロストリジウム毒素は、重鎖(H、100kDa)および軽鎖(L、50kDa)を架橋する鎖間ジスルフィド結合を一つ含む;このような架橋は、細胞外に加えられた毒素の神経毒性にとって重要である(Montecucco and Schiavo, Quarterly Rev. Biophysics 28:423-472 (1995)。
図1に示すように、クロストリジウム毒素は三つの別個の50kDaドメインに折り畳まれているようであり、各ドメインは別個の機能的役割を有する。図2に描かれるように、クロストリジウム毒素の細胞中毒機序は4つの異なる段階より成る:(1)結合、(2)内在化、(3)膜トランスロケーション、および(4)酵素的標的修飾。重鎖のカルボキシ末端部分(HC)は神経特異的結合において機能し、一方H鎖のアミノ末端部分(HN)は、膜トランスロケーションにおいて機能する。L鎖は、細胞内触媒活性に関与する(Montecucco and Schiavo, 前述, 1995)。
8種類のヒトクロストリジウム神経毒素のアミノ酸配列は、対応する遺伝子に由来している(Neimann, ”Molecular Biology of Clostridial Neurotoxins” in Sourcebook of Bacterial Protein Toxins Alouf and Freer (Eds.) pp. 303-348 London: Academic Press 1991)。L鎖およびH鎖は、それぞれおよそ439および843残基より構成されており、相同性あるセグメントが、ほとんどまたは全く類似しない領域によって隔てられている。L鎖の最も良く保存された領域は、アミノ末端部分(100残基)および中心領域(TeNTの残基216−244に相当)、および鎖間ジスルフィド結合を形成している二つのシステインである。この216−244の領域は、亜鉛−エンドペプチダーゼに特徴的なHis-Glu-X-X-His結合モチーフを含む。
重鎖は軽鎖ほどよくは保存されておらず、HCのカルボキシ末端部分(TeNTの残基1140−1315に相当)が最も変化に富んでいる。このことは、HCドメインが神経終末への結合に関与していること、および異なる神経毒素は異なる受容体に結合しているようであるという事実と一致する。多くの血清型特異的抗体が重鎖決定基を認識することは驚くべきことではない。
クロストリジウム毒素のヌクレオチドおよびアミノ酸配列の比較により、それらが共通の先祖遺伝子に由来することがわかる。クロストリジウム神経毒素遺伝子の拡散は、これら遺伝子が移動性の遺伝子エレメント上に位置することよって促進されている可能性がある。以下にさらに述べるように、7種類のボツリヌス毒素を含むクロストリジウム神経毒素の配列変異体が当業界で知られている。例えば図5から図7、および Humeau et al., 前述, 2000 参照。
前述のように、クロストリジウム神経毒素の本来の標的は、VAMP、SNAP−25、およびシンタキシンを含む。図3に示すように、VAMPはシナプス小胞膜に結合しており、一方SNAP−25およびシンタキシンは標的膜に結合している(図3参照)。BoNT/AおよびBoNT/EはSNAP−25をカルボキシ末端領域において切断してそれぞれ9または26アミノ酸残基を放出し、BoNT/C1もまたSNAP−25をカルボキシ末端付近で切断する。ボツリヌス血清型BoNT/B、BoNT/D、BoNT/FおよびBoNT/G、および破傷風毒素は、VAMPの保存された中心部分に作用し、VAMPのアミノ末端部分を細胞質中へ放出する。BoNT/C1は、シンタキシンを細胞膜内側膜表面付近の単一の部位で切断する。従ってBoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/F、BoNT/G、およびTeNTの作用により、VAMPまたはシンタキシンの細胞質内ドメインの大部分が放出されるが、一方BoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/Eのタンパク分解によっては、SNAP−25の小さな部分しか放出されない (Montecucco and Schiavo, 前述, 1995)。
膜貫通セグメントを欠く約206残基のタンパク質であるSNAP−25は、神経細胞膜の細胞質内表面に結合している(図3、Hodel et al., Int. J. Biochemistry and Cell Biology 30:1069-1073 (1998)も参照)。Drosophilaから哺乳類まで高度に保存されたホモログに加えて、SNAP−25関連タンパク質はまた酵母からも単離されている。SNAP−25は発生中の軸索伸長に必要であり、また成熟神経系における神経終末可塑性にとって必要な可能性がある。ヒトにおいては、発生中に二つのアイソフォームが相異なるかたちで発現する;アイソフォームaは、胎児段階の初期に構成的に発現し、一方アイソフォームbは出生時に現れ成年期に主に発現する。SNAP−23のようなSNAP−25アナログもまた、神経系外部、例えば膵臓細胞に発現している。
VAMPは約120残基のタンパク質であり、正確な長さは種およびアイソタイプに依存する。図3に示すように、VAMPは短いカルボキシ末端セグメントを小胞内腔内に含むが、一方でその分子のほとんどは細胞質に露出している。プロリンリッチアミノ末端30残基は種およびアイソフォーム間で相違するが、VAMPの中心部分(残基30−96)は高度に保存されており、荷電および親水性残基に富み、かつ高度に保存された既知の切断部位を含む。VAMPは、シナプトフィジンとともにシナプス小胞膜上に結合している。
ヒト、ラット、ウシ、Torpedo、Drosophila、酵母、イカおよびAplysiaホモログを含む(これらに限定されない)、様々なVAMPの種ホモログが当業界において知られている。さらに、VAMP−1、VAMP−2およびセルブレビンを含む、多数のVAMPアイソフォームが同定されており、かつ非神経細胞において非感受性型が同定されている。VAMP−1およびVAMP−2の分布は相異なる細胞タイプにおいて様々であるが、VAMPはすべての脊椎動物組織において存在するようである。チキンおよびラットVAMP−1は、TeNTまたはBoNT/Bによって切断される。これらのVAMP−1ホモログは、TeNTまたはBoNT/B切断部位において、ヒトまたはマウスVAMP−1ではグルタミンが存在する場所にバリンを有する。置換はBoNT/D、/F、または/Gには影響せず、それらはVAMP−1およびVAMP−2を同様の率で切断する。
シンタキシンは神経細胞膜の細胞膜内側表面上に位置し、カルボキシ末端セグメントを介して膜に固定されており、そのタンパク質のほとんどが細胞質に露出している。シンタキシンは、シナプス前膜の活性領域にカルシウムチャンネルと共に局在する。さらに、シンタキシンは、細胞膜と小胞の間に機能的架橋を形成するSSV膜タンパク質であるシナプトタグミンと相互作用する。様々なシンタキシンアイソフォームが同定されている。幾分長さの異なる二つのアイソフォーム(285残基および288残基)が神経細胞において同定されており(アイソフォーム1Aおよび1B)、アイソフォーム2、3、4、および5は他の組織に存在する。これらアイソフォームはBoNT/C1に対する感受性が様々であり、シンタキシン 1A、1B、2および3アイソフォームが本毒素によって切断される。
上記のように、本発明のSNAP−25基質は、(i)緑色蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)緑色蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列を含むSNAP−25の一部分とを含む。本発明のタグ付き毒素基質は、(i)蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含有するクロストリジウム毒素認識配列とを含む。
SNAP−25基質は、一つには、緑色蛍光タンパク質を含む。本明細書で用いられる場合、「緑色蛍光タンパク質」という用語は「GFP」と同義語であり、特定の波長の光を吸収して、520〜565nmの範囲の波長の光エネルギーを発するタンパク質を意味する。本発明において有用な緑色蛍光タンパク質には、A.ビクトリア(A.Victoria、オワンクラゲ)GFP(配列番号:98)またはその相同体などの野生型緑色蛍光タンパク質と、野生型緑色蛍光タンパク質の天然に存在する変異体および遺伝子操作された変異体、ならびに520〜565nmの範囲の光を発する能力を保持するその活性断片とが含まれるが、限定はされない。非限定的な例として、「緑色蛍光タンパク質」という用語は、促進されたフルオロフォア形成を実証する野生型A.ビクトリアGFPのGFPのSer65Thr変異体(ハイム(Heim)ら、Nature 373:663(1995年))と、野生型GFPの大小の吸収ピークを489nmにおける単一の吸収ピークに変換して、より明るい緑色蛍光タンパク質を生じる、Ser65のThr、Ala、Gly、CysまたはLeuへの置換を含有するGFP変異体(ハイムら、上記、1995年)と、野生型GFPの温度感受性を軽減するPhe64LeuなどのGFP変異体(ツィン(Tsien)ら、Biochem.67:509(1998年))と、高濃度における二量体化を克服するGFPのAla206Lys、Leu221Lys、およびPhe223Arg変異体(ツァハリアス(Zacharias)ら、Science 296:913頁(2002年))と、哺乳類細胞における発現のためのコドン最適化とSer65ThrおよびPhe64Leu置換とを組み合わせて明るく安定な変異体をもたらす高感度GFP(EGFP)(コーマック(Cormack)ら、Gene 173:33(1996年))とを含む。1つの実施形態では、本発明において有用な緑色蛍光タンパク質は、野生型A.ビクトリアGFP(配列番号:98)と少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する。その他の実施形態では、本発明において有用な緑色蛍光タンパク質は、野生型A.ビクトリアGFP(配列番号:98)と少なくとも75%、80%、85%、90%または95%のアミノ酸同一性を有する。さらなる実施形態では、本発明において有用な緑色蛍光タンパク質は、野生型A.ビクトリアGFP(配列番号:98)に対して最大でも10のアミノ酸置換を有する。またさらなる実施形態では、本発明において有用な緑色蛍光タンパク質は、野生型A.ビクトリアGFP(配列番号:98)に対して最大でも1、2、3、4、5、6、7、8または9のアミノ酸置換を有する。
タグ付き毒素基質は、一つには、蛍光タンパク質を含む。本明細書で用いられる場合、「蛍光タンパク質」という用語は、特定の波長の光エネルギーを吸収して、より長い波長の光エネルギーを発するタンパク質を意味する。本発明において有用な蛍光タンパク質は、野生型蛍光タンパク質と、海洋生物に由来するものなどの蛍光タンパク質の天然に存在する変異体および遺伝子操作された変異体とを包含するが、限定はされない。
タグ付き毒素基質において有用な蛍光タンパク質は、野生型A.ビクトリアタンパク質、ならびにA.ビクトリアタンパク質の天然に存在する変異体および遺伝子操作された変異体などのA.ビクトリア由来の蛍光タンパク質(AFP)を含むが、限定はされない。このような蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)を含むが、これらに限定されない。ここで、蛍光の色は発光される光の波長に依存し、緑色蛍光タンパク質は520〜565nmの範囲の光を発し、シアン蛍光タンパク質は500〜520nmの範囲の光を発し、青色蛍光タンパク質は450〜500nmの範囲の光を発し、黄色蛍光タンパク質は565〜590nmの範囲の光を発し、そして以下にさらに説明される赤色蛍光タンパク質は625〜740nmの範囲の光を発する。さらに、本発明において有用な蛍光タンパク質は、例えば、限定はされないが、励起または発光波長の変化、明るさ、pH耐性、安定性またはフルオロフォア形成速度の増強、光活性化、もしくはオリゴマー化または光退色の低減などの特性の改善のために遺伝子操作されたものを含む。また、本発明において有用な蛍光タンパク質は、野生型コドンを、蛍光タンパク質を含むSNAP−25またはタグ付き毒素基質を発現する働きをする細胞においてより効率的に利用される他のコドンに変換することによって、タンパク質の発現の改善のために操作され得る。
本発明において有用な蛍光タンパク質は、紫色、青色、シアン、緑色、黄色、オレンジ色および赤色を含む様々なスペクトルで発光するものを包含する。また、以下にさらに説明されるように、本発明において有用な蛍光タンパク質は、GFPのランダム変異誘発によって産生された青色蛍光タンパク質(BFP)およびシアン蛍光タンパク質(CFP)、ならびに合理的に設計された黄色蛍光タンパク質(YFP)を含むが、これらに限定されない。BFPはGFPに対するTyr66His置換を有し、これは吸収スペクトルを384nmのピークにシフトさせ、448nmで発光する(ハイムら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:12501(1994年))。BFPよりも明るく光安定性であるCFPは、Tyr66Trp置換のために、BFPとEGFPとの中間の吸収/発光スペクトル範囲を有する(ハイムら、上記、1994年、ハイムおよびツィン、Curr.Biol.6:178−182(1996年)およびエレンバーグ(Ellenberg)ら、Biotechniques 25:838(1998年))。「CGFP」として知られるThr203TyrのCFP変異体は、CFPとEGFPとの中間の励起および発光波長を有する。合理的に設計されたYFPは、緑色蛍光タンパク質に関してレッドシフトした吸収および発光スペクトルを有する(オルモ(Ormo)ら、Science 273:1392(1996年)、ハイムおよびツィン、上記、1996年)。YFP変異体「シトリン(Citrine)」(YFP−Val68Leu/Gln69Met、グリースベック(Griesbeck)ら、J.Biol.Chem.276:29188−29194頁(2001年))と、「ビーナス(Venus)」(YFP−Phe46Leu/Phe64Leu/Met153Thr/Val163Ala/Ser175Gly)、極めて明るく、成熟の速いYFP(ナガイ(Nagai)ら、Nature Biotech.20:87−90頁(2002年))とを含むが限定はされない様々なYFP変異体は、改善された特性を示す。例えばGFPまたは他の天然に存在する蛍光タンパク質に由来するこれらおよび様々な他の蛍光タンパク質も、本発明において有用である得ることは当業者には理解される。例えば、リピンコット−シュワルツ(Lippincott−Schwartz)、Science 300:87頁(2003年)、およびチャン(Zhang)ら、Nature Reviews 3:906−918頁(2002年)を参照されたい。
また本発明において有用な蛍光タンパク質は、真核細胞または組織に由来するサンプルからのバックグラウンド蛍光を低減または除去するために有用であり得る赤色または遠赤色蛍光タンパク質などの長波長の蛍光タンパク質でもよい。このような赤色蛍光タンパク質には、dsRed(DsRed1またはdrFP583、マッツ(Matz)ら、Nat.Biotech.17:969−973(1999年))、dsRed2(テルスキク(Terskikh)ら、J.Biol.Chem.277:7633−7636頁(2002年))、T1(dsRed−Express、カリフォルニア州パロアルトのクロンテック(Clontech)、ベビス(Bevis)およびグリック(Glick)、Nature Biotech.20:83−87頁(2002年))、およびdsRed変異体mRFP1(キャンベル(Campbell)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA99:7877−7882頁(2002年))を含むが限定はされない、ディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata)タンパク質の天然に存在する形態および遺伝子改変された形態が含まれる。このような赤色蛍光タンパク質にはさらに、HcRed(ガルスカヤ(Gurskaya)ら、FEBS Lett.507:16頁(2001年))などのヘテラクティス・クリスパ(Heteractis crispa)タンパク質の天然に存在する形態および遺伝子改変された形態が含まれる。
タグ付き毒素基質において有用な蛍光タンパク質は、A.ビクトリアおよび他の腔腸海洋生物などの海洋種を含む様々な種のいずれにも由来することができる。有用な蛍光タンパク質は、狭い励起(498nm)および発光(509nm)ピークを有する二量体レニラ・ムレリ(Renilla mulleri)GFPなどのレニラ・ムレリ(Renilla mulleri)由来の蛍光タンパク質(ピール(Peele)ら、J.Prot.Chem.507−519頁(2001年))と、DsRedタンパク質、例えばasFP595などのアネモニア・スルカタ(Anemonia sulcata)蛍光タンパク質(ルキャノフ(Lukyanov)ら、J.Biol.Chem.275:25879−25882頁(2000年))と、ディスコソマ(Discosoma)蛍光タンパク質、例えばdsFP593などのディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata)赤色蛍光タンパク質(フラトコフ(Fradkov)ら、FEBS Lett.479:127−130頁(2000年))と、HcRedおよびHcRed−2Aなどのヘテラクティス・クリスパ(Heteractis crispa)蛍光タンパク質(ガルスカヤ(Gurskaya)ら、FEBS Lett.507:16−20頁(2001年))と、eqFP611などの赤色蛍光タンパク質を含むエンタクメアエ・クアドリカラー(Entacmeae quadricolor)蛍光タンパク質(ビーデンマン(Wiedenmann)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA99:11646−11651頁(2002年))とを包含するが、限定はされない。上記の天然に存在する蛍光タンパク質および操作された蛍光タンパク質の相同性の種を含むこれらおよび他の多くの蛍光タンパク質が、本発明の核酸分子によってコードされる組換えタグ付き毒素基質において有用であり得ることは、当業者には理解される。蛍光タンパク質の細菌、哺乳類および他の発現に適した発現ベクターは、BDバイオ・サイエンシーズ(BD Biosciences)(カリフォルニア州パロアルト)を含む様々な商業的供給源から入手可能である。
本明細書で用いられる場合、「蛍光切断産物」という用語は、タグ付き毒素基質の蛍光タンパク質を含有する部分を意味し、この部分は、クロストリジウム毒素切断部位におけるタンパク質分解によって生成される。定義によると、「蛍光切断産物」は、親和性対の第1のパートナーを含まない。
さらに本明細書では、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーを含むタグ付き毒素基質が提供される。本明細書で用いられる場合、「遺伝的にコードされた検出可能なマーカー」という用語は、マーカーを含有する基質または切断産物の相対量を容易に決定できるような特性を有するタンパク質を意味する。このような遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、クロストリジウム毒素を含有するサンプルで処理されるタグ付き毒素基質中にマーカーが含まれるときに、検出可能な切断産物を生成する。酵素と、テトラシステインモチーフと、蛍光、生物発光、化学発光および他の発光タンパク質と、ハプテンと、単鎖抗体とを含むがこれらに限定されない様々な遺伝的にコードされた検出可能なマーカーはどれも、本発明において有用である。
本明細書で用いられる場合、「検出可能な切断産物」という用語は、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーを含有する、タグ付き毒素基質の部分を意味し、この部分は、クロストリジウム毒素切断部位におけるタグ付き毒素基質のタンパク質分解によって生成される。
検出可能な切断産物の相対量が、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーに適切なシステムまたは装置を用いて決定されることは当業者には理解される。例としては、分光光度計を用いて、遺伝的にコードされた色素生産性のマーカーを含有するタグ付き毒素基質から生成される色素生産性の検出可能な切断産物をアッセイすることができ、蛍光光度計を用いて、遺伝的にコードされた蛍光マーカーを含有するタグ付き毒素基質から生成される蛍光性の検出可能な切断産物をアッセイすることができ、そしてルミノメーターを用いて、遺伝的にコードされた発光マーカーを含有するタグ付き毒素基質から生成される発光性の検出可能な切断産物をアッセイすることができる。
遺伝的にコードされた様々な検出可能なマーカーはどれも、タグ付き毒素基質において有用である。1つの実施形態では、遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、限定はされないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、β−グルクロニダーゼ(glucouronidase)(GUS)、グルコースオキシダーゼまたはβ−ラクタマーゼなどの酵素である。非限定的な例として、ホースラディッシュペルオキシダーゼを含有する検出可能な切断産物の相対量は、テトラメチルベンジジン(TMB)などの色素生産性基質を用いて決定することができ、過酸化水素の存在下で450nmにおける吸収を測定することにより検出可能な可溶性産物がもたらされる。検出可能なアルカリホスファターゼ含有切断産物の相対量は、p−ニトロフェニルホスフェートなどの色素生産性基質を用いて決定することができ、405nmにおける吸収を測定することによって容易に検出可能な可溶性産物がもたらされる。検出可能なルシフェラーゼ含有切断産物の相対量は、ATP、Mg2+および分子酸素の存在下で基質としてルシフェリンを用いて決定することができる(ブロンシュテイン(Bronstein)ら、Anal.Biochem.219:169−181頁(1994年))。そして、検出可能なβ−ガラクトシダーゼ含有切断産物の相対量は、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)などの色素生産性基質を用いて検出することができ、410nmにおける吸収を測定することによって検出可能であるか、あるいは例えば1,2−ジオキセタン基質を用いる化学ルミネッセンスによって検出可能な可溶性産物がもたらされる(ブロンシュテインら、上記、1994年)。同様に、検出可能なウレアーゼ含有切断産物の相対量は、尿素−ブロモクレゾールパープル(ミズーリ州セントルイスのシグマ・イムノケミカルズ(Sigma Immunochemicals))などの基質を用いて決定することができる。そして、検出可能なβ−グルクロニダーゼ(glucouronidase)(GUS)含有切断産物の相対量は、例えばX−Glucなどのβ−グルクロニド(glucouronide)基質を用いる比色分析アッセイか、例えば4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシド(4−MUG、ジェファーソン(Jefferson)ら、上記、1987年)を用いる蛍光アッセイか、あるいは例えばアダマンチル1,2−ジオキセタンアリールグルクロニド(glucouronide)基質(ブロンシュテインら、上記、1994年)を用いる化学発光アッセイで決定することができる。同じようにして、例えば、検出可能なβ−ラクタマーゼ含有切断産物の相対量は、例えば蛍光基質エステルを用いる蛍光アッセイで決定することができる(ズロカルニク(Zlokarnik)ら、Science 279:84−88頁(1998年))。また、オースベル(Ausubel)、分子生物学におけるカレント・プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョン・ウィリー&サンズ社(John Wiley & Sons、Inc.)、ニューヨーク、2000年も参照されたい。
また、タグ付き毒素基質において有用な遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、限定はされないが、蛍光性エクオリア・ビクトリア(Aequorea victoria)、レニラ・ムレリ(Renilla mulleri)、アネモニア・スルカタ(Anemonia sulcata)、ディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata)、ヘテラクティス・クリスパ(Heteractis crispa)、およびエンタクメアエ・クアドリカラー(Entacmeae quadricolor)蛍光タンパク質の天然に存在する変異体または遺伝子操作された変異体などの蛍光タンパク質でもよい。本発明において有用な蛍光タンパク質はさらに、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質または赤色蛍光タンパク質でもよいが、限定はされない。本発明において有用な様々な蛍光タンパク質は上記に記載されており、さもなければ当該技術分野において既知である。例えば、チャンら、上記、2002年と、フォーク(Falk)、Trends Cell Biol.12:399−404頁(2002年)と、セルビン(Selvin)、上記、2000年と、マハジャン(Mahajan)ら、上記、1999年とを参照されたい。
また、本発明において有用な遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、テトラシステインモチーフでもよい。本発明において有用な例示的なテトラシステインモチーフには、配列Cys−Cys−Xaa−Xaa−Cys−Cys(配列番号:99)またはCys−Cys−Pro−Gly−Cys−Cys(配列番号:100)が含まれるが、限定はされない。二ヒ素(biarsenical)試薬と組み合わせられると、還元されたテトラシステインモチーフは、結合体の各ヒ素原子がモチーフ内のシステイン対と協働的に結合した蛍光複合体を形成する。従って、テトラシステインモチーフ含有切断断片の相対量は、レゾルフィンに基づく赤色標識(ReAsH−EDT2)、フルオレセイン砒素らせん結合剤(FlAsH−EDT2)または二ヒ素(biarsenical)タンパク質CHoXAsH−EDT2などの二ヒ素タンパク質と組み合わせられたときに蛍光性の共有結合性複合体を形成するその能力によって決定することができる(アダムス(Adams)ら、J.Am.Chem.Soc.124:6063−6076頁(2002年)、およびチャンら、上記、2002年)。これらおよび他の二ヒ素タンパク質は、本発明の方法においてテトラシステインモチーフ含有切断断片の相対量を決定するために有用であることが理解される。
また、本発明において有用な遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、ハプテンまたは単鎖抗体でもよい。以下に開示されるような商業的に入手可能な抗体と合わせて検出可能であり、FLAG、赤血球凝集素(HA)、c−myc、6−HISおよびAU1ハプテンを含むがこれらに限定されない様々な遺伝的にコードされたハプテンが当該技術分野において知られている。当該技術分野においてよく知られている手順を用いて、ハプテンを含有する検出可能な切断断片の相対量は、標識化抗ハプテン抗体または標識化二次抗体を用いて決定することができる。非限定的な例として、酵素結合免疫測定法(ELISA)は、ハプテンを含有する検出可能な切断産物の相対量を決定するために有用であり得る。タグ付き毒素基質が、遺伝的にコードされた検出可能なハプテンであるマーカーを含む場合、このようなハプテンが親和性対の第1および第2のパートナーとは異なるように選択されることは当業者により理解される。さらに、酵素と、テトラシステインモチーフと、蛍光、生物発光、化学発光および他の発光のタンパク質と、ハプテンと、単鎖抗体とを含むがこれらに限定されないこれらおよび様々な他のよく知られた遺伝的にコードされた検出可能なマーカーが、本発明のタグ付き毒素基質において有用であり得ることは当業者により理解される。
SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、親和性対の第1のパートナーを含む。本明細書で用いられる場合、「親和性対(affinity couple)」という用語は、安定な非共有結合性の結合を形成することができる第1および第2のパートナーを意味する。本発明において有用な親和性対は、ヒスチジンタグ−金属、結合タンパク質−配位子、ビオチン化配列−ストレプトアビジン、ストレプトアビジン−ビオチン、Sペプチド−Sタンパク質、抗原−抗体、または受容体−配位子であり得るが、限定はされない。
上記のように、親和性対の第1のパートナーは、SNAP−25またはタグ付き毒素基質内に含まれる。特に、SNAP−25基質は、緑色蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在するBoNT/A、/C1または/E切断部位を含有する。従って、切断部位におけるタンパク質分解の際、緑色蛍光タンパク質は、親和性対の第1のパートナーを含有するSNAP−25基質の一部分から分離される。同様に、タグ付き毒素基質は、蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に介在するクロストリジウム毒素切断部位を含有する。従って、タグ付き毒素基質の切断部位におけるタンパク質分解の際、蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは、親和性対の第1のパートナーを含有するタグ付き毒素基質の一部分から分離される。さらに以下に記載されるように、本発明の方法は、非切断基質と、親和性対の第1のパートナーを含有する処理済サンプルの他の成分とから、蛍光または別の検出可能な切断産物(親和性対の第1のパートナーを欠いている)を分離するために、処理済サンプルを親和性対の第2のパートナーと接触させることによって実施することができる。
SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、クロストリジウム毒素認識配列を含む。本明細書で用いられる場合、「クロストリジウム毒素認識配列」という用語は、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適切な条件下でクロストリジウム毒素によって切断容易な結合における検出可能なタンパク質分解のために十分な近接または非近接の認識エレメントもしくはその両方を有する切断容易な結合を意味する。
SNAP−25またはタグ付き毒素基質において、切断部位は、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に「介在する」。従って、切断部位は、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に位置するので、切断部位におけるタンパク質分解は、親和性対の第1のパートナーを欠いた蛍光または他の検出可能な切断産物と、親和性対の第1のパートナーを含む基質の残りの部分とをもたらす。クロストリジウム毒素認識配列の全てまたは一部だけが、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に介在し得ることは理解される。
SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に位置するクロストリジウム毒素切断部位を含有する。1つの実施形態では、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは切断部位のアミノ末端に位置するが、親和性対の第1のパートナーは切断部位のカルボキシ末端に位置する。もう1つの実施形態では、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーは切断部位のカルボキシ末端に位置するが、親和性対の第1のパートナーは切断部位のアミノ末端に位置する。
クロストリジウム毒素は、特異的かつ別個の切断部位を切断する。BoNT/AはGln−Arg結合を切断する;BoNT/BおよびTeNTはGln−Phe結合を切断する;BoNT/C1はLys−AlaまたはArg−Ala結合を切断する;BoNT/DはLys−Leu結合を切断する;BoNT/EはArg−Ile結合を切断する;BoNT/FはGln−Lys結合を切断する;およびBoNT/GはAla−Ala結合を切断する(表1参照)。標準的命名法において、クロストリジウム毒素切断部位の周辺の配列はP5−P4−P3−P2−P1−P1’−P2’−P3’−P4’−P5’と示され、P1−P1’が切断容易な結合を表す。P
1またはP
1’部位、または両方を、天然の残基に代えて別のアミノ酸または模擬アミノ酸に置換できることが理解される。例えば、BoNT/A基質は、P
1位置(Gln)がアラニン、2−アミノ酪酸またはアスパラギン残基に改変され、調製されており、これらの基質は、P
1−Arg結合においてBoNT/Aによって加水分解される(Schmidt and Bostian, J. Protein Chem. 16:19-26 (1997))。置換は、切断容易な結合、例えばBoNT/Aの切断容易な結合のP
1位置に導入することができるが、検出可能なタンパク分解にとってP
1’残基の保存が通常重要であることは理解される(Vaidyanathan et al., J. Neurochem. 72:327-337 (1999)。従って、特定の態様において本発明は、クロストリジウム毒素によって切断される標的タンパク質の天然の残基と比較してP
1’残基が改変または置換されていない、SNAP−25またはタグ付き毒素基質を提供する。別の態様において本発明は、クロストリジウム毒素によって切断される標的タンパク質の天然の残基と比較してP
1が改変または置換されている、SNAP−25またはタグ付き毒素基質を提供する;そのような基質はP
1およびP
1’残基の間のペプチド結合切断に対する感受性を保持している。
SNAP−25、VAMPおよびシンタキシンは、αヘリカル構造をとると予想される領域内に位置する短いモチーフを共有する。このモチーフは、本神経毒素に感受性のある動物に発現するSNAP−25、VAMPおよびシンタキシンアイソフォーム中に存在する。それに対し、これらの神経毒素に対して抵抗性のあるDrosophilaおよび酵母ホモログ、およびエキソサイトーシスに関与しないシンタキシンアイソフォームは、これらVAMPおよびシンタキシンタンパク質のαヘリカルモチーフ領域中に配列変動を含む。
αヘリカルモチーフの複数の反復が、クロストリジウム毒素による切断に感受性のあるタンパク質に存在する:SNAP−25において4つのコピーが天然に存在する;VAMPにおいて二つのコピーが天然に存在する;およびシンタキシンにおいて二つのコピーが天然に存在する(図4A参照)。さらに、αヘリカルモチーフの特異的配列に相当するペプチドは、in vitro およびin vivoにおいて神経毒性活性を阻害することができ、このようなペプチドは異なる神経毒素を交差阻害することができる。さらに、このようなペプチドに対して作られた抗体は、この三つの標的タンパク質の間で交差反応でき、このことは、このαヘリカルモチーフがタンパク質表面上に露出し、三つの標的タンパク質各々において良く似た構造をとっていることを意味している。これらの知見と一致して、SNAP−25特異的、VAMP特異的およびシンタキシン特異的神経毒素は、同じ結合部位に対し競合することによって互いに交差阻害する。これらの結果は、クロストリジウム毒素認識配列が、要すれば、αヘリカルモチーフを少なくとも一つ含むことができることを意味する。しかしながら、BoNT/A基質として機能するがαヘリカルモチーフを欠く16merおよび17mer基質によって証明されるように、αヘリカルモチーフはクロストリジウム毒素による切断に必ずしも必要ではないことは認識される。
ある態様において本発明は、クロストリジウム毒素認識配列が単一のαヘリカルモチーフを含むSNAP−25またはタグ付き毒素基質を提供する。別の態様において本発明は、クロストリジウム毒素認識配列が二つまたはそれ以上のαヘリカルモチーフを含むSNAP−25またはタグ付き毒素基質を提供する。限定ではなく例示として、BoNT/AまたはBONT/E認識配列は、S4αヘリカルモチーフを単独で、または一つまたはそれ以上の更なるαヘリカルモチーフと組み合わせて含むことができる;BoNT/B、BONT/G、およびTeNT認識配列は、V2αヘリカルモチーフを単独で、または一つまたはそれ以上のαヘリカルモチーフと組み合わせて含むことができる;BoNT/C1認識配列は、S4αヘリカルモチーフを単独で、または一つまたはそれ以上のαヘリカルモチーフと組み合わせて、またはX2αヘリカルモチーフを単独で、または一つまたはそれ以上のαヘリカルモチーフと組み合わせて含むことができる;BoNT/DまたはBoNT/F認識配列は、V1αヘリカルモチーフを単独で、または一つまたはそれ以上のαヘリカルモチーフと組み合わせて含むことができる(図4A参照)。
本明細書で用いられる場合、「A血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/A認識配列」と同義語であり、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に適した条件下、BoNT/Aによって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、その切断容易な結合および近接もしくは非近接またはその両方の認識エレメントを意味する。BoNT/Aによって切断される切断容易な結合は、例えば、Gln−Alaである。
様々なBoNT/A認識配列が当業界においてよく知られている。BoNT/A認識配列は、例えば、ヒトSNAP−25の残基134−206または残基137−206を有することができる(Ekong et al., 前述, 1997; U.S. Patent No. 5,962,637)。BoNT/A認識配列はまた、配列Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met (配列番号: 27)またはその模擬ペプチド(ヒトSNAP−25の残基190−202に相当); Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys (配列番号: 28) またはその模擬ペプチド(ヒトSNAP−25の残基187−201に相当); Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met (配列番号: 29) またはその模擬ペプチド(ヒトSNAP−25の残基187−202に相当); Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met Leu (配列番号: 30) またはその模擬ペプチド(ヒトSNAP−25の残基187−203に相当); Asp-Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met (配列番号: 31) またはその模擬ペプチド(ヒトSNAP−25の残基186−202に相当); またはAsp-Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met-Leu (配列番号: 32) またはその模擬ペプチド(ヒトSNAP−25の残基186−203に相当)を含むことができるが、これらに限定されない。例えば、Schmidt and Bostian, J. Protein Chem. 14:703 708 (1995); Schmidt and Bostian, 前述, 1997; Schmidt et al., FEBS Letters 435:61-64 (1998); and Schmidt and Bostian, U.S. Patent No. 5,965,699)参照。要すれば、近似するBoNT/A認識配列は、別のBoNT/A感受性SNAP−25アイソフォームまたはマウス、ラット、ゴールドフィッシュまたはゼブラフィッシュSNAP−25のようなホモログの対応する(相同性ある)セグメントから調製することができ、または、本明細書に開示される、または当業界において(例えばU.S. Patent No. 5,965,699に)記載される、いずれかのペプチドであってよい。
BoNT/A認識配列は、A血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはBoNT/A感受性タンパク質のセグメントに実質的に近似してもよい。表2に描かれるように、BoNT/Aによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、マウス、およびラットSNAP−25、ゴールドフィッシュSNAP−25AおよびSNAP−25Bを包含する。従って、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質に有用なBoNT/A認識配列は、例えば、ヒトSNAP−25、マウスSNAP−25、ラットSNAP−25、ゴールドフィッシュSNAP−25Aまたは25B、またはBoNT/Aによる切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、BoNT/Aによって切断される本来のSNAP−25アミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されていないことがわかり(表2および図5参照)、このことは、天然BoNT/A感受性SNAP−25配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変が本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
本発明のBoNT/A認識配列を含むSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、BoNT/Aによって切断される天然配列と比較して、一つまたは複数の改変を有することができる。例えば、ヒトSNAP−25の残基187−203に相当する17merと比較して、Asp193のAsnとの置換により、タンパク分解の相対率が0.23になる;Glu194のGlnとの置換により、相対率は2.08になる;Ala195の2−アミノ酪酸との置換により、相対率が0.38となる;そしてGln197のAsn、2−アミノ酪酸、またはAlaとの置換により、相対率がそれぞれ0.66、0.25、または0.19となる(表3参照)。その上、Ala199と2−アミノ酪酸との置換により、相対率は0.79となる;Thr200のSerまたは2−アミノ酪酸との置換により、相対率はそれぞれ0.26または1.20となる;Lys201のAlaとの置換により、相対率は0.12になる;そしてMet202のAlaまたはノルロイシンとの置換により、相対率はそれぞれ0.38または1.20になる。Schmidt and Bostian, 前述, 1997参照。これらの結果は、SNAP−25またはタグ付き毒素基質において、天然の毒素感受性配列と比較して様々な残基が置換可能であることを意味している。BoNT/Aの場合、これらの結果は、Glu194、Ala195、Gln197、Ala199、Thr200およびMet202、Leu203、Gly204、Ser205、およびGly206を含む(ただしこれらに限定されない)残基およびGln−Argの切断容易な結合からもっと離れている残基が、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質を生産するため置換可能であること、を意味している。このような基質は、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に適した条件下、BoNT/Aのよって、その切断容易な結合において検出可能にタンパク分解される。つまり、理解されるように、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、要すれば、天然SNAP−25配列に対する一つまたはいくつかのアミノ酸置換、付加、欠失を含むことができる。SNAP−25またはタグ付き毒素基質はまた、所望によりカルボキシ末端アミドを含むことができる。
本明細書で用いる場合、「B血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/B認識配列」と同義語であり、適した条件下、BoNT/Bによって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、その切断容易な結合および近接または非近接認識エレメントを意味する。BoNT/Bによって切断される切断容易な結合は、例えば、Gln−Pheである。
様々なBoNT/B認識配列が当業界においてよく知られており、あるいは平凡な方法によって規定できる。そのようなBoNT/B認識配列は、例えば、ヒトVAMP−1またはヒトVAMP−2のようなVAMPタンパク質の親水性コアのいくつかまたは全てに相当する配列を含むことができる。BoNT/B認識配列は、ヒトVAMP−2(配列番号:4)の残基33−94、残基45−94、残基55−94、残基60−94、残基65−94、残基60−88または残基65−88、またはヒトVAMP−1(配列番号96)の残基60−94を含み得るが、これらに限定されない(例えば Shone ら、Eur. J. Biochem. 217: 965-971 (1993) および 米国特許番号5,962,637参照)。要すれば、別のBoNT/B感受性VAMPアイソフォームまたはヒトVAMP−1またはラットもしくはチキンVAMP−2のようなホモログの対応する(相同性ある)セグメントから、近似するBoNT/B認識配列を調製できる。
つまり、BoNT/B認識配列は、B血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはBoNT/B感受性タンパク質のそのようなセグメントに実質的に近似してもよい。表4に描かれるように、BoNT/Bによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、マウス、およびウシVAMP−1およびVAMP−2、ラットVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−2、TorpedoVAMP−1、ウニVAMP、Aplysia VAMP、イカVAMP、C.elegans VAMP、Drosophila n−syb、およびヒルVAMPを含む。つまり、本発明のタグ付き毒素基質に有用なBoNT/B認識配列は、例えば、ヒトVAMP−1またはVAMP−2、マウスVAMP−1またはVAMP−2、ウシVAMP−1またはVAMP−2、ラットVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−2、TorpedoVAMP−1、ウニVAMP、AplysiaVAMP、イカVAMP、C.elegansVAMP、Drosophila n−syb、ヒルVAMP、またはBoNT/Bによる切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、表4に示すように、BoNT/Bによって切断される本来のVAMPアミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されていないことがわかり(図6も参照)、このことは、天然VAMP配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変がBoNT/A認識配列を含むタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
本明細書で用いる場合、「C1血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/C1認識配列」と同義語であり、適した条件下、BoNT/C1によって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、切断容易な結合および近接または非近接認識エレメントを意味する。BoNT/C1によって切断される切断容易な結合は、例えば、Lys−AlaまたはArg−Alaである。
BoNT/C1認識配列は、C1血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはBoNT/C1感受性タンパク質のセグメントに実質的に近似してもよい。表5に示されるように、BoNT/C1による切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、ラット、マウス、およびウシシンタキシン 1Aまたは1B、ラットシンタキシン2および3、ウニシンタキシン、Aplysia シンタキシン 1、イカシンタキシン、Drosophila Dsynt1、およびヒルシンタキシン 1を含む。つまり、本発明のタグ付き毒素基質に有用なBoNT/C1認識配列は、例えば、ヒト、ラット、マウス、またはウシシンタキシン 1Aまたは1B、ラットシンタキシン2、ラットシンタキシン3、ウニシンタキシン、Aplysia シンタキシン 1、イカシンタキシン、Drosophila Dsynt1、およびヒルシンタキシン 1、またはBoNT/C1による切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、BoNT/C1によって切断される本来のシンタキシンアミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されていないことがわかり(表5および図7も参照)、このことは、天然BoNT/C1感受性シンタキシン配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変がBoNT/C1認識配列を含むタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
様々な天然SNAP−25タンパク質もまたBoNT/C1による切断に感受性があり、それには、ヒト、マウス、およびラットSNAP−25、ゴールドフィッシュSNAP−25Aおよび25B、およびDrosophilaおよひヒルSNAP−25が含まれる。従って、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質に有用なBoNT/C1認識配列は、例えば、ヒト、マウス、またはラットSNAP−25、ゴールドフィッシュSNAP−25Aまたは25B、TorpedoSNAP−25、ゼブラフィッシュSNAP−25、Drosophila、ヒルSNAP−25またはBoNT/C1による切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。天然シンタキシン配列の変異体に関して前述されているように、BoNT/C1によって切断される本来のSNAP−25アミノ酸配列と比較すると、顕著な配列変動性があることがわかり(表2および図5も参照)、このことは、天然SNAP−25配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変が本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
「D血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/D認識配列」と同義語であり、適した条件下、BoNT/Dによって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、切断容易な結合および近接もしくは非近接またはその両方の認識エレメントを意味する。BoNT/Dによって切断される切断容易な結合は、例えば、Lys−Leuである。
様々なBoNT/D認識配列が当業界でよく知られており、あるいは平凡な方法で規定できる。BoNT/D認識配列は、例えばラットVAMP−2(配列番号:7、Yamasaki ら、J. Biol. Chem. 269:12764 12772 (1994))の残基27−116、残基37−116、残基1−86、残基1−76または残基1−69を含むことができる。従って、BoNT/D認識配列は、例えばラットVAMP−2(配列番号:7)の残基27−69または残基37−69を含むことができる。要すれば、別のBoNT/D感受性VAMPアイソフォームまたはヒトVAMP−1またはヒトVAMP−2のようなホモログの、対応する(相同性ある)セグメントから、近似のBoNT/D認識配列を調製できる。
BoNT/D認識配列は、D血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはBoNT/D感受性タンパク質のセグメントに実質的に近似してもよい。表5に示されるように、BoNT/Dによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、マウス、およびウシVAMP−1およびVAMP−2、ラットVAMP−1およびVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−1およびVAMP−2、Torpedo VAMP−1、Aplysia VAMP、イカVAMP、Drosophila sybおよびn−sybおよびヒルVAMPを含む。つまり、本発明のタグ付き毒素基質に有用なBoNT/D認識配列は、例えば、ヒトVAMP−1またはVAMP−2、マウスVAMP−1またはVAMP−2、ウシVAMP−1またはVAMP−2、ラットVAMP−1またはVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−1またはVAMP−2、Torpedo VAMP−1、AplysiaVAMP、イカVAMP、Drosophila sybまたはn−syb、ヒルVAMP、またはBoNT/Dによる切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、上記表5に示されるように、BoNT/Dによって切断される本来のVAMPアミノ酸配列の比較により、顕著な配列変動性が明らかとなり(図6も参照)、このことは、天然BoNT/D感受性VAMP配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変が本発明のタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
本明細書で使用される場合、「E血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/E認識配列」と同義語であり、適した条件下、BoNT/Eによって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、切断容易な結合および近接または非近接認識エレメントを意味する。BoNT/Eによって切断される切断容易な結合は、例えば、Arg−Ileである。
当業者は、BoNT/E認識配列が、E血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはBoNT/E感受性タンパク質のセグメントに実質的に近似してもよいことを認識している。BoNT/Eによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界で知られており、例えば、ヒト、マウスおよびラットSNAP−25、マウスSNAP−23、チキンSNAP−25、ゴールドフィッシュSNAP−25AおよびSNAP−25B、ゼブラフィッシュSNAP−25、C.elegansSNAP−25およびヒルSNAP−25(表2参照)が含まれる。つまり、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質に有用なBoNT/E認識配列は、例えば、ヒトSNAP−25、マウスSNAP−25、ラットSNAP−25、マウスSNAP−23、チキンSNAP−25、ゴールドフィッシュSNAP−25AまたはSNAP−25B、C.elegansSNAP−25、ヒルSNAP−25、またはBoNT/Eによる切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、上記表2および図5に示されるように、BoNT/Eによって切断される本来のSNAP−23およびSNAP−25のアミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されていないことがわかり、このことは、天然BoNT/E感受性SNAP−23またはSNAP−25配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変が本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
本明細書で用いる場合「F血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/F認識配列」と同義語であり、適した条件下、BoNT/Fによって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、切断容易な結合および近接または非近接認識エレメントを意味する。BoNT/Fによって切断される切断容易な結合は、例えば、Gln−Lysである。
様々なBoNT/F認識配列が当業界でよく知られており、あるいは平凡な方法で規定できる。BoNT/F認識配列は、例えばラットVAMP−2(配列番号:7、Yamasaki et al., 前述, 1994)の残基27−116、残基37−116、残基1−86、残基1−76または残基1−69を含むことができる。BoNT/F認識配列はまた、例えばラットVAMP−2(配列番号:7)の残基27−69または残基37−69残基を含むことができる。近似のBoNT/F認識配列は、要すれば、別のBoNT/F感受性VAMPアイソフォームまたはヒトVAMP−1またはヒトVAMP−2のようなホモログの、対応する(相同性ある)セグメントから調製できることは理解される。
BoNT/F認識配列は、F血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはBoNT/F感受性タンパク質のセグメントに実質的に近似してもよい。BoNT/Fによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、マウス、およびウシVAMP−1およびVAMP−2、ラットVAMP−1およびVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−1およびVAMP−2、Torpedo VAMP−1、Aplysia VAMP、Drosophila sybおよびヒルVAMPを含む(表5参照)。つまり、本発明のタグ付き毒素基質に有用なBoNT/F認識配列は、例えば、ヒトVAMP−1またはVAMP−2、マウスVAMP−1またはVAMP−2、ウシVAMP−1またはVAMP−2、ラットVAMP−1またはVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−1またはVAMP−2、Torpedo VAMP−1、Aplysia VAMP、Drosophila syb、ヒルVAMP、またはBoNT/Fによる切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、上記表5に示されるように、BoNT/Fによって切断される本来のVAMPアミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されておらず(図6も参照)、このことは、天然BoNT/F感受性VAMP配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変がBoNT/F認識配列を含むタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
本明細書で用いる場合「G血清型ボツリヌス毒素認識配列」なる用語は、「BoNT/G認識配列」と同義語であり、適した条件下、BoNT/Gによって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、切断容易な結合および近接もしくは非近接またはその両方の認識エレメントを意味する。BoNT/Gによって切断される切断容易な結合は、例えば、Ala−Alaである。
BoNT/G認識配列は、G血清型ボツリヌス毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはそのようなBoNT/G感受性セグメントに実質的に近似してもよい。上記表5に示されるように、BoNT/Gによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、マウス、およびウシVAMP−1およびVAMP−2、ラットVAMP−1およびVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−1およびVAMP−2、Torpedo VAMP−1、を含む。従って、本発明のタグ付き毒素基質に有用なBoNT/G認識配列は、例えば、ヒトVAMP−1またはVAMP−2、マウスVAMP−1またはVAMP−2、ウシVAMP−1またはVAMP−2、ラットVAMP−1またはVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−1またはVAMP−2、Torpedo VAMP−1、またはBoNT/Gによる切断に感受性のある別の天然タンパク質の、セグメントと一致してよい。さらに、上記表5に示されるように、BoNT/Gによって切断される本来のVAMPアミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されておらず(図6も参照)、このことは、天然BoNT/G感受性VAMP配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変がBoNT/G認識配列を含むタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
「破傷風毒素認識配列」なる用語は、適した条件下、破傷風毒素によって切断容易な結合におけるタンパク分解を検出可能とするのに十分な、切断容易な結合および近接または非近接認識エレメントを意味する。TeNTによって切断される切断容易な結合は、例えば、Gln−Pheであり得る。
様々なTeNT認識配列が当業界でよく知られており、あるいは平凡な方法で規定でき、ヒトVAMP−1またはヒトVAMP−2のようなVAMPタンパク質の親水性コアのいくつかまたは全てに相当する配列を含む。TeNT認識配列は、例えばヒトVAMP−2(配列番号:4、Cornille ら、Eur. J. Biochem. 222:173-181 (1994); Foranら、Biochem. 33: 15365-15374 (1994))の残基33−94、ラットVAMP−2(配列番号:7、Yamasaki et al., 前述, 1994)の残基51−93または残基1−89、またはヒトVAMP−1(配列番号96)の残基33−94を含むことができる。TeNT認識配列はまた、例えばヒトVAMP−2(配列番号:4)の残基25−86、残基33−86、または残基51−86を含むことができる。近似のTeNT認識配列は、要すれば、別のTeNT感受性VAMPアイソフォームまたはヒトVAMP−1またはウニまたはAplysia VAMPのようなホモログの、対応する(相同性ある)セグメントから調製できることは理解される。
つまり、TeNT認識配列は、破傷風毒素による切断に感受性のあるタンパク質のセグメントに一致してよく、またはTeNT感受性タンパク質のセグメントに実質的に近似してもよい。上記表5に示されるように、TeNTによる切断に感受性のある様々な天然タンパク質が当業界において知られており、例えば、ヒト、マウス、およびウシVAMP−1およびVAMP−2、ラットVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−2、Torpedo VAMP−1、ウニVAMP、Aplysia VAMP、イカVAMP、C.elegans VAMP、Drosophila n−sybおよびヒルVAMPを含む。従って、本発明のタグ付き毒素基質に有用なTeNT認識配列は、例えば、ヒトVAMP−1またはVAMP−2、マウスVAMP−1またはVAMP−2、ウシVAMP−1またはVAMP−2、ラットVAMP−2、ラットセルブレビン、チキンVAMP−2、Torpedo VAMP−1、ウニVAMP、Aplysia VAMP、イカVAMP、C.elegans VAMP、Drosophila n−syb、ヒルVAMPまたはTeNTによる切断に感受性のある別の天然タンパク質のセグメントと一致してよい。さらに、TeNTによって切断される本来のVAMPアミノ酸配列を比較すると、そのような配列は完全には保存されていないことがわかり(表5および図6)、このことは、天然TeNT感受性VAMP配列と比較して、様々なアミノ酸置換および改変がTeNT認識配列を含むタグ付き毒素基質において許容されることを意味している。
上記のことを考慮して、SNAP−25基質内に含まれる「SNAP−25の一部分」、またはタグ付き毒素基質内に含まれる「クロストリジウム毒素認識配列」が、全長のSNAP−25、VAMPまたはシンタキシンよりも短いSNAP−25、VAMPまたはシンタキシンのセグメントに相当し得ることは明らかである。特定の実施形態では、BoNT/A認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のSNAP−25の連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Gln−Argを含む。非限定的な例として、BoNT/A認識配列は、ヒトSNAP−25(配列番号:2)または別のSNAP−25の最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Gln−Argを含む。
その他の実施形態では、BoNT/B認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のVAMPの連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Gln−Pheを含む。非限定的な例として、BoNT/B認識配列は、ヒトVAMP−1(配列番号:96)またはヒトVAMP−2(配列番号:4)または別のVAMPの最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Gln−Pheを含む。
さらなる実施形態では、BoNT/C1認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のシンタキシンの連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Lys−Alaを含む。非限定的な例として、BoNT/C1認識配列は、ヒトシンタキシン1A(配列番号:21)またはヒトシンタキシン−1Bまたは別のシンタキシンの最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Lys−Alaを含む。
またさらなる実施形態では、BoNT/C1認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のSNAP−25の連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Arg−Alaを含む。非限定的な例として、BoNT/C1認識配列は、ヒトSNAP−25(配列番号:2)または別のSNAP−25の最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Arg−Alaを含む。
さらなる実施形態では、BoNT/D認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のVAMPの連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Lys−Leuを含む。非限定的な例として、BoNT/D認識配列は、ヒトVAMP−1(配列番号:96)またはヒトVAMP−2(配列番号:4)または別のVAMPの最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Lys−Leuを含む。
その他の実施形態では、BoNT/E認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のSNAP−25の連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Arg−Ileを含む。非限定的な例として、BoNT/E認識配列は、ヒトSNAP−25(配列番号:2)または別のSNAP−25の最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Arg−Ileを含む。
さらなる実施形態では、BoNT/F認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のVAMPの連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Gln−Lysを含む。非限定的な例として、BoNT/F認識配列は、ヒトVAMP−1(配列番号:96)またはヒトVAMP−2(配列番号:4)または別のVAMPの最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Gln−Lysを含む。
またさらなる実施形態では、BoNT/G認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のVAMPの連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Ala−Alaを含む。非限定的な例として、BoNT/G認識配列は、ヒトVAMP−1(配列番号:96)またはヒトVAMP−2(配列番号:4)または別のVAMPの最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Ala−Alaを含む。
またさらなる実施形態では、TeNT認識配列は、最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10のVAMPの連続残基と相同性であり、ここで連続残基は、切断部位Gln−Pheを含む。非限定的な例として、TeNT認識配列は、ヒトVAMP−1(配列番号:96)またはヒトVAMP−2(配列番号:4)または別のVAMPの最大でも160、140、120、100、80、60、40、20または10の連続残基と、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有することができ、ここで連続残基は、切断部位Gln−Pheを含む。
もう1つの実施形態では、クロストリジウム毒素認識配列は、米国特許第7,762,280号明細書に記載される基質配列以外の配列である。さらなる実施形態では、クロストリジウム毒素認識配列は、SNRTRIDEANQRATRMLG(配列番号:109)、LSELDDRADALQAGASQFETSAAKLKRKYWWKNLK(配列番号:110)、AQVDEVVDIMRVNVDKVLER DQKLSELDDRADALQAGAS(配列番号:111)、NKLKSSDAYKKAWGN NQDGVVASQPARVVDEREQMAISGGFIRRVTNDARENEMDENLEQVSGIIGNLRH MALDMGNEIDTQNRQIDRIMEKADSNKTRIDEANQRATKMLGSG(配列番号:112)、またはNKLKSSDAYKKAWGNNQDGVVASQPARVVDEREQMA ISGGFIRRVTNDARENEMDENLEQVSGIIGNLRHMALDMGNEIDTQNRQIDRIMEKADSNKTRI DEANQAATKMLGSG(配列番号:113)以外の配列である。
またSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同一または異なるクロストリジウム毒素に対して1つまたは多数のクロストリジウム毒素切断部位を含有することができる。1つの実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、単一の切断部位を含有する。もう1つの実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同じクロストリジウム毒素に対して多数の切断部位を有する。これらの切断部位は、同一または異なるクロストリジウム毒素認識配列内に取り込むことができる。さらなる実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同じ緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に介在する同じクロストリジウム毒素に対する多数の切断部位を有する。SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同一または異なる緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に介在する、例えば、2つ以上、3つ以上、5つ以上、7つ以上、8つ以上、または10以上の、同じクロストリジウム毒素に対する切断部位を含有することができる。またSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同一または異なる緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に介在する、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10の、同じクロストリジウム毒素に対する切断部位を有することができる。
またSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、異なるクロストリジウム毒素に対して多数の切断部位を含有することができる。1つの実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同じ緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に全てが介在する、異なるクロストリジウム毒素に対する多数の切断部位を含む。SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同じ緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、親和性対の第1のパートナーとの間に全てが介在する、例えば、2つ以上、3つ以上、5つ以上、または10以上の、異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を含有することができる。またSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、緑色蛍光タンパク質または蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカー、および親和性対の第1のパートナーの少なくとも2つの異なるペアの間に介在する、例えば、2つ以上、3つ以上、5つ以上、または10以上の、異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を含有することができる。特定の実施形態では、クロストリジウム基質は、異なるクロストリジウム毒素に対する2、3、4、5、6、7、8、9または10の切断部位を有し、切断部位は、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカー、および親和性対の第1のパートナーの同一または異なるペアの間に介在する。多数の切断部位を有するSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、以下のクロストリジウム毒素:BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/GおよびTeNTの任意の組み合わせに対して、2、3、4、5、6、7または8の切断部位の任意の組み合わせを有し得ることが理解される。
緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカー、親和性対の第1のパートナー、およびクロストリジウム毒素認識配列に加えて、SNAP−25基質またはタグ付き毒素基質は、所望される場合には1つまたは複数のさらなる成分を含み得ることが理解される。一例として、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質には、GGGGS(配列番号:84)などのフレキシブルスペーサー配列が含まれ得る。SNAP−25またはタグ付き毒素基質はさらに、以下の:カルボキシ末端システイン残渣、免疫グロブリンヒンジ領域、N−ヒドロキシスクシンイミドリンカー、ペプチドまたはペプチド模倣ヘアピンターン、親水性配列、もしくはSNAP−25またはタグ付き毒素基質の溶解性または安定性を促進する別の成分または配列のうちの1つまたは複数を含むことができるが、限定はされない。
さらに、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、SNAP−25、VAMPまたはシンタキシンタンパク質に関して、あるいは蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーまたは親和性対の第1のパートナーを含有しない同様のペプチドまたはペプチド模倣物に関して、低減または増大された速度で切断可能である。BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/GまたはTeNT基質などのSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、例えば、ヒトSNAP−25、VAMPまたはシンタキシンの、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%である初期加水分解速度で切断することができ、ここでSNAP−25またはタグ付き毒素基質、およびSNAP−25、VAMPまたはシンタキシンはそれぞれ、16μMの濃度で存在する。
SNAP−25またはタグ付き毒素基質がBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E認識配列を含む場合には、基質は、例えば、それぞれBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/EによるヒトSNAP−25の、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、または300%である初期加水分解速度で切断することができ、ここで基質およびヒトSNAP−25はそれぞれ、16μMの濃度で存在する。その他の実施形態では、このような基質は、それぞれBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/EによるヒトSNAP−25の、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、または300%である初期加水分解速度で切断され、ここでSNAP−25またはタグ付き毒素基質、およびヒトSNAP−25はそれぞれ、200μMの濃度で存在する。
同様に、SNAP−25またはタグ付き毒素基質がBoNT/B、BoNT/D、BoNT/FまたはBoNT/G認識配列を含む場合には、基質は、例えば、それぞれBoNT/B、BoNT/D、BoNT/FまたはBoNT/GによるヒトVAMP−2の、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、または300%である初期加水分解速度で切断することができ、ここで本発明の基質およびヒトVAMP−2はそれぞれ、16μMの濃度で存在する。その他の実施形態では、このような基質は、それぞれBoNT/B、BoNT/D、BoNT/FまたはBoNT/GによるヒトVAMP−2の、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、または300%である初期加水分解速度で切断され、ここでSNAP−25またはタグ付き毒素基質、およびヒトVAMP−2はそれぞれ、200μMの濃度で存在する。
タグ付き毒素基質がBoNT/C1認識配列を含む場合には、基質は、BoNT/C1によるヒトシンタキシンの、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、または300%である初期加水分解速度で切断することができ、ここでタグ付き毒素基質およびヒトシンタキシンはそれぞれ、16μMの濃度で存在する。その他の実施形態では、このような基質は、BoNT/C1によるヒトシンタキシンの、それ以外は同一条件下における初期加水分解速度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、または300%である初期加水分解速度で切断され、ここでタグ付き毒素基質およびヒトシンタキシンはそれぞれ、200μMの濃度で存在する。
「ターンオーバー数」という用語またはkcatは、毒素−基質複合体の分解の速度である。SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、同じ条件下で同じクロストリジウム毒素で切断される場合のヒトSNAP−25、ヒトVAMP−2またはヒトシンタキシン標的タンパク質のkcatと比較して低減または増大されたkcatで切断することができる。SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、例えば、約0.001〜約4000秒−1のkcatで切断することができる。1つの実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、約1〜約4000秒−1のkcatで切断される。その他の実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、5秒−1、10秒−1、25秒−1、50秒−1、100秒−1、250秒−1、500秒−1、または1000秒−1よりも小さいkcatを有する。またSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、例えば、1〜1000秒−1、1〜500秒−1、1〜250秒−1、1〜100秒−1、1〜50秒−1、10〜1000秒−1、10〜500秒−1、10〜250秒−1、10〜100秒−1、10〜50秒−1、25〜1000秒−1、25〜500秒−1、25〜250秒−1、25〜100秒−1、25〜50秒−1、50〜1000秒−1、50〜500秒−1、50〜250秒−1、50〜100秒−1、100〜1000秒−1、100〜500秒−1、または100〜250秒−1の範囲のkcatを有することができる。ターンオーバー数、kcatが過剰の基質が存在する標準の定常状態の条件下でアッセイされることは当業者には理解される。
SNAP−25またはタグ付き毒素基質における緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカー、および親和性対の第1のパートナーの選択および配置の際には、いくつかの考慮すべき事項があることは、当業者には理解される。これらの要素は通常、クロストリジウム毒素への基質の結合、またはクロストリジウム毒素によるタンパク質分解に対する妨害を最小限にするように配置される。従って、緑色蛍光タンパク質または他の蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカー、および親和性対の第1のパートナーは、例えば、結合のために重要な結合相互作用および非結合相互作用の破壊を最小限にするように、そして立体障害を最小限にするように選択および配置することができる。
VAMP基質およびBoNT/B軽鎖(LC/B)の複合体において、水素結合アクセプターまたはドナーを含有する側鎖を有するほぼ全てのVAMP残基は、LC/Bと水素結合された。従って、所望される場合には、毒素による切断に敏感な未変性タンパク質における水素結合の可能性と比較して、例えばSer、Thr、Tyr、Asp、Glu、AsnまたはGln残基による水素結合の可能性が基質において減少されずに、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質を調製可能であることが理解される。従って、特定の実施形態では、本発明は、対応するボツリヌス毒素または破傷風毒素による切断に敏感な未変性タンパク質と比較して、水素結合の可能性が基質において減少されないSNAP−25またはタグ付き毒素基質を提供する。
また本発明は、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定するためのキットも提供する。キットは、SNAP−25またはタグ付き毒素基質をバイアルまたは他の容器中に含有する。キットは一般に使用説明書も含む。1つの実施形態では、本発明のキットはさらに、ポジティブコントロールとして、限定はされないが組換え毒素軽鎖などの、キット内に含まれるSNAP−25またはタグ付き毒素基質を切断することができる既知の量のボツリヌス毒素または破傷風毒素を含む。もう1つの実施形態では、キットはSNAP−25またはタグ付き毒素基質を含有し、そしてさらに、ポジティブコントロールとして蛍光または他の方法で検出可能な切断産物を含む。本発明のキットは、任意に、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適したバッファーを有する容器を含んでもよい。上記のように、本発明の方法は、タグ付き毒素基質の組み合わせと共に実施することができる。従って、1つの実施形態では、本発明は、少なくとも2つの異なるタグ付き毒素基質を含む、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定するためのキットを提供する。
さらに、本明細書では、(a)サンプル中にクロストリジウム毒素が存在するときに蛍光切断産物が生成されるように、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件下の溶液相中で、(i)蛍光タンパク質と、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列と、を含有するタグ付き毒素基質をサンプルで処理することと、(b)処理済サンプルを親和性対の第2のパートナーと接触させ、それにより親和性対の第1および第2のパートナーを含有する安定な複合体を形成することと、(c)処理済サンプル中の蛍光切断産物の存在または量をアッセイし、それによりクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定することとによって、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定する方法が提供される。1つの実施形態では、本発明の方法は、蛍光切断産物の存在または量をアッセイする前に、安定な複合体から蛍光切断産物を分離することによって実施される。緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質を含むが限定はされない様々な蛍光タンパク質が、本発明の方法において有用であり得る。1つの実施形態では、本発明の方法は、緑色蛍光タンパク質を含有するタグ付き毒素基質を用いて実施される。本発明の方法において有用な親和性対の第1のパートナーは、ヒスチジンタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、ビオチン化配列、ストレプトアビジン、Sペプチド、Sタンパク質、もしくはFLAG、赤血球凝集素、c−mycまたはAU1エピトープなどのエピトープを包含するが、これらに限定されない。
本発明の方法は、様々などんなサンプル中のクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定するためにも有用であり得る。このようなサンプルには、清澄化および他の未精製細胞ライセート、未変性および組換えの単離クロストリジウム毒素、単離クロストリジウム毒素軽鎖、BOTOXなどの処方クロストリジウム毒素製品、ならびに生の、調理済み、半調理済み、そして加工された食料および飲料を含む食品が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の方法では、タグ付き毒素基質は、溶液相中でサンプルにより処理される。タグ付き毒素基質に関して本明細書で用いられる場合、「溶液相中」という用語は、基質が可溶性であり、ビーズ、カラムまたは皿などの固体支持体に拘束または固定化されていないことを意味する。
本明細書で用いる場合、「試料」なる用語は、活性クロストリジウム毒素、または軽鎖あるいはそのタンパク分解活性フラグメントを含む、または含む可能性のある、生物学的物質を意味する。従って、試料なる用語は、精製または半精製クロストリジウム毒素;天然または非天然配列を有する組換え単鎖または二鎖毒素;複数のクロストリジウム毒素種またはサブタイプに由来する構造エレメントを含むキメラ毒素;天然または非天然配列を有する組換え毒素軽鎖;バルク毒素;製剤化製品;細胞、または未精製、分画化または半精製細胞溶解物であって、例えば限定ではないが、クロストリジウム毒素またはその軽鎖をコードする組換え核酸を含むように設計された動物、昆虫、細菌その他の細胞;細菌、バキュロウィルスおよび酵母溶解物;生、調理済、半調理済または加工済食物;飲物;動物飼料;土壌試料;水試料; 池堆積物;ローション;化粧品;および臨床製剤を包含するが、これらに限定されない。さらに、試料なる用語は組織試料を包含し、それは哺乳類試料、および霊長類およびヒト試料(これらに限定されない)を含み、またさらに、例えば幼児腸試料のような腸試料および傷から得られた試料を包含することが理解される。従って本発明の方法は、限定はされないが、以下ものに有用であり得ることが理解される:食物または飲物中のクロストリジウム毒素プロテアーゼ活性のアッセイ;ヒトまたは動物(例えば、クロストリジウム毒素にさらされたもの、または1つまたはそれ以上のクロストリジウム毒性症状を有するもの)由来の試料のアッセイ;クロストリジウム毒素の生産および精製中の活性の追跡、あるいは製剤化クロストリジウム毒素製品(医薬品および化粧品を含む)のアッセイ。
本発明の方法は、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性を有するいずれのタンパク質または分子をアッセイするのにも適しており、例えばクロストリジウム毒素の神経細胞に結合する能力、または膜を越えて取り込まれる、あるいは転位される能力に依存しないことを当業者は理解している。従って、本発明の方法は、クロストリジウム毒素軽鎖単独のクロストリジウム毒素プロテアーゼ活性のアッセイにも適しており、また、単鎖または二鎖ヘテロ毒素のアッセイに有用であるが、重鎖の存在は必要としない。さらに、本発明の方法は、本来の、および組換えクロストリジウム毒素(例えば膵臓腺房細胞または他の非神経細胞を標的とするよう設計されたクロストリジウム毒素)を含む、非神経クロストリジウム毒素に適用可能である。
アッセイされるクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に応じて、本発明の方法に含まれるタグ付き毒素基質は、様々なクロストリジウム毒素認識配列のうちの1つを取り込み得る。本発明の方法は、例えば、限定はされないが配列番号:90の残基134−206またはSNAP−25の別の部分などのボツリヌス毒素認識配列と共に実施することができる。また本発明の方法は、例えば、限定はされないがSNAP−25の少なくとも6つの連続残基を含有するBoNT/A認識配列などのBoNT/A認識配列と共に実施することもでき、ここで6つの連続残基は、配列Gln−Argを包含する。さらに、本発明の方法は、限定はされないがVAMPの少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/B認識配列などのBoNT/B認識配列と共に実施することができ、ここで6つの連続残基は、配列Gln−Pheを包含する。またさらなる実施形態では、本発明の方法は、認識配列が、限定はされないがシンタキシンの少なくとも6つの連続残基(ここで6つの連続残基は、配列Lys−Alaを包含する)を含むBoNT/C1認識配列、あるいはSNAP−25の少なくとも6つの連続残基(ここで6つの連続残基は、配列Arg−Alaを包含する)を含むBoNT/C1認識配列などのBoNT/C1認識配列であるタグ付き毒素基質と共に実施される。
また本発明の方法は、限定はされないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/D認識配列などのBoNT/D認識配列と共に実施することができ、ここで6つの連続残基は、配列Lys−Leuを包含する。本発明の方法はさらに、限定はされないが、SNAP−25の少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/E認識配列などのBoNT/E認識配列と共に実施することができ、ここで6つの連続残基は、配列Arg−Ileを包含する。さらに、本発明の方法は、限定はされないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/F認識配列などのBoNT/F認識配列と共に実施することができ、ここで6つの連続残基は、配列Gln−Lysを包含する。本発明の方法はさらに、限定はされないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/G認識配列などのBoNT/G認識配列と共に実施することができ、ここで6つの連続残基は、配列Ala−Alaを包含する。さらなる実施形態では、本発明の方法は、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含むTeNT認識配列などのTeNT認識配列と共に実施され、ここで6つの連続残基は、配列Gln−Pheを包含する。
本発明の方法では、基質は、様々な活性のいずれかで切断することができる。1つの実施形態では、本発明の方法は、基質が少なくとも1ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断されるような条件下で、タグ付き毒素基質と共に実施される。もう1つの実施形態では、本発明の方法は、基質が少なくとも100ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断されるような条件下で、タグ付き毒素基質と共に実施される。さらなる実施形態では、本発明の方法は、基質が少なくとも1000ナノモル/分/ミリグラムの毒素の活性で切断されるような条件下で、タグ付き毒素基質と共に実施される。
コバルト(Co2+)およびニッケル(Ni2+)を含むがこれらに限定されない様々な第2のパートナーはどれも本発明において有用である。さらに、親和性対の第2のパートナーは、任意に、例えばカラムまたはフィルタープレートに固定化することができる。さらに、本発明の方法は、任意に、処理済サンプル中の切断されていないタグ付き毒素基質の量をアッセイするステップを含んでもよい。様々なサンプルはどれも、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定するための本発明の方法においてアッセイすることができると理解される。本発明の方法に従ってアッセイされるサンプルは、任意の血清型の単離クロストリジウム毒素と、単離クロストリジウム軽鎖と、処方BoNT/Aを含むがこれに限定されない処方クロストリジウム毒素製品と、1つまたは複数の組換え発現クロストリジウム毒素を含有する完全または部分的に精製された細胞抽出物とを包含するが、限定はされない。
本発明の方法では、様々な手段を用いて、親和性対の第1および第2のパートナーを含有する安定な複合体から、蛍光または別の方法で検出可能な切断産物を分離することができる。分離は、一般に、親和性対の第1のパートナーを含有する処理済サンプル内の成分に対する親和性対の第2のパートナーの特異的な結合によって実行される。上記のように、定義により、蛍光または別の方法で検出可能な切断産物は親和性対の第1のパートナーを含有せず、従って、第1のパートナーを含有する処理済サンプル内の全ての成分から容易に分離することができる。さらに下記のように、蛍光のまたは別の方法で検出可能な切断産物は、金属キレートアフィニティクロマトグラフィを含むがこれらに限定されない様々な手段のいずれかを用いて、安定な複合体から分離される。
本発明の方法では、金属キレート、免疫親和性および他のタイプのアフィニティ精製技法を含むアフィニティ精製を用いて、蛍光または別の方法で検出可能な切断産物を分離することができる。1つの実施形態では、親和性対の第1のパートナーは、ヒスチジンタグである。もう1つの実施形態では、親和性対の第1のパートナーは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)である。さらにもう1つの実施形態では、親和性対の第1のパートナーはマルトース結合タンパク質(MBP)である。さらにもう1つの実施形態では、親和性対の第1のパートナーは、異種エピトープである。
本発明の方法では、親和性対の第2のパートナーは、任意に、固体支持体に取り付けることができる。本明細書で用いられる場合、「固体支持体」という用語は、第2のパートナーが共有結合され得る不溶性の支持材料を意味する。固体支持体という用語は、親和性ビーズまたはゲルを含む親和性マトリックスと、変性ポリスチレンを含む樹脂と、デキストランおよび磁性ビーズなどのビーズと、アガロースおよびセファロースなどの炭水化物ポリマーとを含むが、限定はされない。
親和性対の第1のパートナーがヒスチジンタグである場合には、金属キレートアフィニティクロマトグラフィ(MCAC)は、蛍光または別の方法で検出可能な切断産物を分離するために有用であり得る。本明細書で用いられる場合、「ヒスチジンタグ」という用語は、通常溶媒にさらされる約6〜10のヒスチジン残基の連続系列を意味する。1つの実施形態では、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、6X−HISタグHHHHHH(配列番号:95)を含む。もう1つの実施形態では、本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質は、10X−HISタグHHHHHHHHHH(配列番号:108)を含む。
金属キレートクロマトグラフィは、オースベルら、上記、10.15、付録41に記載され、そして本明細書中の実施例IIで例示されるように、当該技術分野においてよく知られている。本発明において有用な金属親和性タグには、例えば、天然の金属結合部位の天然または合成模倣物であり得る金属親和性ペプチドが含まれるが、限定はされない。様々な金属親和性ペプチドおよび他の金属親和性タグは、例えば、エンゼルバーガー(Enzelberger)ら、J.Chromatogr.A.898:83−94頁(2000年)に記載されるように当該技術分野において知られており、6X−HIS、7X−HIS、8X−HIS、9X−HISおよび10X−HISタグ(モハンティ(Mohanty)およびウェイナー(Weiner)、Protein Expr.Purif.33:311−325頁(2004年)、ならびにグリシャマー(Grisshammer)およびタッカー(Tucker)、Prot.Expr.Purif.11:53−60頁(1997年))が含まれるが、限定はされない。金属キレートアフィニティ精製において、親和性対の第2のパートナーは、ニッケルイオン(Ni2+)、銅イオン(Cu2+)またはコバルトイオン(Co2+)などの金属イオンである。非限定的な例として、本発明の方法は、セファロース、例えばセファロースCL−6Bなどのビーズか、樹脂か、あるいはイミノ二酢酸(IDA)またはニトリロ三酢酸(NTA)によって固定化されたニッケルまたは他の金属イオンを含有する別の固体支持体を用いて実施することができる。ヒスチジンタグ−金属親和性対を含有する安定な複合体から、蛍光または別の方法で検出可能な切断断片(ヒスチジンまたは他の金属親和性タグを含有しない)を分離することに続いて、安定な複合体は任意に、酸性バッファーまたはイミダゾールを含有するバッファーを用いて、固体支持体から溶出させることもできる。以下にさらに記載されるように、ヒスチジンタグも免疫親和性分離のために有用であり得ることは、当業者により理解される。
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)/グルタチオンも、本発明の方法において有用な親和性対であり得る。この場合、グルタチオン−S−トランスフェラーゼは、親和性対の第1のパートナーとして、SNAP−25またはタグ付き毒素基質内に取り込まれる。大腸菌(E.Coli)およびバキュロウイルス(Baculovirus)などの微生物におけるGST含有SNAP−25またはタグ付き毒素基質の発現のためのベクターは、当該技術分野においてよく知られている。このようなベクターはpGEXシリーズのベクターを含み、ベクトン・ディッキンソン・バイオサイエンシーズ(Becton Dickinson Biosciences)およびアマシャム・ファルマシア・バイオサイエンシーズ(Amersham Pharmacia Biosciences)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)などの供給元から市販されている。グルタチオン−S−トランスフェラーゼが親和性対の第1のパートナーである本発明の方法では、蛍光または別の方法で検出可能な切断断片(グルタチオン−S−トランスフェラーゼを含有しない)は、親和性対の第2のパートナーとしてグルタチオンを用いて、グルタチオン−S−トランスフェラーゼを含有するサンプル内の成分から分離することができる。例えばアガロースまたは他のビーズに結合されたグルタチオンは、シグマ(SIGMA)、アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンシーズおよび他の供給元から市販されている。遊離グルタチオンは、任意に、GST−グルタチオンを含有する安定な複合体をビーズまたは他の固体支持体から放出する働きをする。グルタチオンを用いるアフィニティクロマトグラフィは、例えばスミス(Smith)、Methoods Mol.Cell Biol.4:220−229頁(1993年)、またはオースベル、上記、2000年(16.7章を参照)に記載されるように当該技術分野においてよく知られている。
マルトース結合タンパク質/マルトースも、本発明の方法において有用な親和性対であり得る。本質的に、マルトース結合タンパク質(MBP)は、大腸菌のmalE遺伝子によってコードされる。親和性対の第1のパートナーとしてマルトース結合タンパク質を含有するSNAP−25またはタグ付き毒素基質の発現のためのベクターが市販されている。このようなベクターは、pMAL−c2e、−c2gおよび−c2x、ならびにpMAL−p2e、−p2gおよびp2xなどのpMALベクターを含み、例えばニュー・イングランド・バイオラボズ(New England Biolabs)(マサチューセッツ州ビバリー)などの供給元から市販されている。1つの実施形態では、親和性対の第2のパートナーは、マルトースサブユニットからなる多糖類であるアミロースである。非限定的な例として、本発明の方法は、アミロースで誘導体化され、ニュー・イングランド・バイオラボズから市販されているアガロース樹脂などのアミロース樹脂を用いて実施することができる。従って、マルトース結合タンパク質が親和性対の第1のパートナーである本発明の方法では、蛍光または別の方法で検出可能な切断断片(マルトース結合タンパク質を含有しない)は、アミロースまたは別のマルトースを含有する第2のパートナーを用いて、マルトース結合タンパク質を含有する処理済サンプル内の成分から分離することができる。所望される場合には、10mMの遊離マルトースを含有するカラムバッファーなどの遊離マルトースを用いて、アミロース樹脂に結合した安定な複合体を溶出させることができる。マルトースアフィニティクロマトグラフィ法はルーチン的であり、例えばオースベル上記、2000年(16.6章)に記載されるように当該技術分野においてよく知られている。
ビオチン−ストレプトアビジン親和性システムも、本発明の方法において有用であり得る。非限定的な例として、8アミノ酸ストレプトアビジンタグが当該技術分野において知られおり(シュミット(Schmidt)およびスケラ(Skerra)、Prot.Engin.6:109−122頁(1993年))、市販されている(シグマ−ジェノシス(SIGMA−Genosys))。
また本発明の方法は、親和性対の第1のパートナーとして異種エピトープを含有するSNAP−25またはタグ付き毒素基質と共に実施することができる。このような異種エピトープは、蛍光または別の方法で検出可能な切断産物を分離するための便利な手段を提供する。エピトープに関連して本明細書で用いられる場合、「異種」という用語は、融合蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーをコードする遺伝子、ならびにクロストリジウム毒素認識配列をコードする遺伝子とは異なる遺伝子に由来するエピトープを意味する。従って例えば、本発明のFLAG−SNAP25−GFPタグ付き毒素基において、「FLAG」成分は、SNAP−25をコードする遺伝子に由来しない異種エピトープである。様々な異種エピトープが当該技術分野においてよく知られており、FLAGエピトープDYKDDDDK(配列番号:91、チュベット(Chubet)およびブリザード(Brizzard)、BioTechniques 20:136−141頁(1996年))、赤血球凝集素(HA)エピトープYPYDVPDYA(配列番号:92)、c−mycエピトープEQKLISEEDL(配列番号:93)、AU1エピトープDTYRYI(配列番号:94)、および6−HISエピトープHHHHHH(配列番号:95)が含まれるが、これらに限定されない。これらのおよび他の異種エピトープが、本発明の基質および方法における親和性対の第1のパートナーとして有用であり得ることは当業者には理解される。
非限定的な例として、SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、親和性対の第1のパートナーとしてFLAGタグDYKDDDDK(配列番号:91)を含むことができる。基質はルーチン的な分子法によって産生することができ、得られる検出可能な切断産物の相対量は、例えばイーストマン・コダーック(Eastman Kodak)(ニューヨーク州ロチェスター)またはバークリー・アンチボディ・カンパニー(Berkeley Antibody Company)(BabCO、カリフォルニア州リッチモンド)から市販されている抗FLAGモノクローナル抗体を用いて決定される。同様に、赤血球凝集素(HA)エピトープYPYDVPDYA(配列番号:92)は本発明のSNAP−25またはタグ付き毒素基質内に操作することができ、対応する検出可能な切断断片の相対量は、BabCO(ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)、インディアナ州インディアナポリス(Indianopolis))またはサンタ・クルズ・バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology)から入手される抗HA抗体または抗血清を用いて検出される。SNAP−25またはタグ付き毒素基質内にc−mycエピトープEQKLISEEDL(配列番号:93)を同じように操作することができ、対応する検出可能な切断産物の相対量は、BabCO、インビトロジェン(Invitrogen)(カリフォルニア州サンディエゴ)、ロシュ・ダイアグノスティックス、シグマ(ミズーリ州セントルイス)およびサンタ・クルズ・バイオテクノロジーなどの供給元から市販されている抗体または抗血清を用いて決定することができる。親和性対の第1のパートナーとして有用なさらなる異種エピトープには、BabCOから入手可能なモノクローナル抗体によって認識されるAU1タグDTYRYI(配列番号:94)と、BabCO、インビトロジェン、シグマ、サンタ・クルズ・バイオテクノロジーおよび他の商業的供給元から入手可能な抗体および抗血清によって認識される6−HISタグHHHHHH(配列番号:95)とが含まれるが、限定はされない。これらのおよび他の異種エピトープが、本発明の方法において蛍光または別の方法で検出可能な切断産物を分離するために便利に使用され得ることは当業者には理解される。
親和性対の第1のパートナーが異種エピトープである場合には、本発明の方法では、一般に免疫沈降または別の免疫親和性分離手順を用いて蛍光または別の方法で検出可能な切断産物を分離する。免疫沈降において、親和性対の第1のパートナーを認識する抗体は、限定はされないがタンパク質Aまたはタンパク質G−アガロースビーズまたはセファロースなどの沈降可能なマトリックスに取り付けられる。低速遠心分離を実行して固相マトリックスおよび異種エピトープを含有する結合成分を分離することができ、未結合タンパク質は洗浄によって除去される。様々な免疫沈降プロトコルはルーチン的であり、例えばハーロー(Harlow)およびレイン(Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1988年)ならびにオースベル、上記、2000年(特に10章、付録48および20章、付録46を参照)に記載されるように、当該技術分野においてよく知られている。親和性対の第1のパートナーが、限定はされないがFLAG、赤血球凝集素(HA)、c−myc、AU1または6−HISエピトープなどのよく知られた異種エピトープである場合には、エピトープに特異的に結合する抗体または抗血清は、通常、上記のようにBabCO、インビトロジェン、ロシュ・ダイアグノスティックス、シグマおよびサンタ・クルズ・バイオテクノロジーなどの供給元から市販されている。またこれらのおよび他の異種エピトープに対する抗体は、例えばハーローおよびレイン、上記、1988年に記載されるようにルーチン的な方法によって調製することもできる。
蛍光または別の方法で検出可能な切断産物の免疫親和性分離において有用な抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体プールであり、そしてさらに、少なくとも約1×105M−1である親和性対の第1のパートナーに対する特異的結合活性を保持する抗体の抗原結合断片であり得る。非限定的な例として、Fab、F(ab’)2およびFv断片などの抗体断片は親和性対の第1のパートナーに対する特異的結合活性を保持することができ、従って、本発明において有用であり得る。さらに、免疫親和性分離は、最低でも1つのVHおよび1つのVLドメインを含有する天然に存在しない抗体または断片、例えば親和性対の第1のパートナーに特異的に結合するキメラ抗体、ヒト化抗体または単鎖Fv断片(scFv)と共に実行することができる。このような天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構成するか、組換えで産生するか、あるいはボレベック(Borrebaeck)(編)、Antibody Engineering(第2版)ニューヨーク:オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press)(1995年)に記載されるように、例えば可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって得ることができる。所望される場合には、抗体は、免疫親和性分離のために固体支持体に取り付けることができる。このような固体支持体には、不溶性の大きい細孔径のクロマトグラフィーマトリックスであるセファロースが含まれるが、限定はされない。1つの実施形態では、抗体は、セファロースCL−4B、4%架橋アガロースに取り付けられる。例えば、高いまたは低いpHへの短時間の曝露を用いて、溶出を実行することができる(オースベル、上記、10.11A章、2000年)。
以下でさらに説明されるように、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した様々な条件が、本発明の方法において有用である。例えば、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、基質の少なくとも10%が切断されるように提供することができる。同様に、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%が切断されるように、あるいはSNAP−25またはタグ付き毒素基質の100%が切断されるように提供することができる。1つの実施形態では、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、アッセイが線形であるように選択される。もう1つの実施形態では、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の少なくとも90%が切断されるように提供される。さらなる実施形態では、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の最大でも25%が切断されるように提供される。またさらなる実施形態では、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の最大でも5%、10%、15%または20%が切断されるように提供される。
本発明の方法では、サンプルは、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件下、溶液相中でSNAP−25またはタグ付き毒素基質で処理される。クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した例示的な条件は当該技術分野においてよく知られており、そしてさらに、ルーチン的な方法によって決定することができる。例えば、ハリス(Hallis)ら、J.Clin.Microbiol.34:1934−1938頁(1996年)と、エコング(Ekong)ら、Microbiol.143:3337−3347頁(1997年)と、ショーン(Shone)ら、国際公開第95/33850号パンフレットと、シュミットおよびボスティアン(Bostian)、上記、1995年と、シュミットおよびボスティアン、上記、1997年と、シュミットら、上記、1998年と、シュミットおよびボスティアン、米国特許第5,965,699号明細書とを参照されたい。クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、一つには、アッセイされている特定のクロストリジウム毒素のタイプまたはサブタイプおよび毒素調製の純度に依存し得ると理解される。クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、一般に、通常はpH5.5〜9.5の範囲、例えばpH6.0〜9.0の範囲、pH6.5〜8.5の範囲またはpH7.0〜8.0の範囲において、HEPES、Trisまたはナトリウムホスフェートなどのバッファーを含む。またクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、例えば二鎖毒素がアッセイされている場合には、所望によりジチオスレイトール、β−メルカプトエタノールまたは別の還元剤を含むこともできる(エコングら、上記、1997年)。1つの実施形態では、条件は0.01mM〜50mMの範囲のDTTを含み、他の実施形態では、条件は、0.1mM〜20mM、1〜20mM、または5〜10mMの範囲のDTTを含む。所望される場合には、SNAP−25またはタグ付き毒素基質を添加する前に、単離クロストリジウム毒素またはサンプルは、還元剤、例えば10mMのジチオスレイトール(DTT)と共に約30分間プレインキュベートすることができる。
クロストリジウム毒素は亜鉛メタロプロテアーゼであり、通常は1〜500μMの範囲、例えば5〜10μMの範囲である塩化亜鉛または酢酸亜鉛などの亜鉛源は、所望される場合には、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件の一部として含まれ得る。EDTAなどの亜鉛キレート剤は、一般には、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性をアッセイするためのバッファーから排除されることは当業者には理解される。
クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、任意に、例えばウシ血清アルブミンの代わりに使用することができるトゥイーン(TWEEN)−20などの洗剤を含むことができる。トゥイーン−20は、例えば、0.001%〜10%(v/v)のトゥイーン−20の範囲、または0.01%〜1.0%(v/v)のトゥイーン−20の範囲で提供することができる。1つの実施形態では、トゥイーン−20は、0.1%(v/v、実施例IIを参照)の濃度で提供される。
またクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、所望される場合には、ウシ血清アルブミン(BSA)を含むことができる。含まれる場合には、BSAは通常、0.1mg/ml〜10mg/mlの範囲で提供される。1つの実施形態では、BSAは、1mg/mlの濃度で含まれる。例えば、シュミットおよびボスティアン、上記、1997年を参照されたい。もう1つの実施形態では、BSAは、0.1%(v/v、実施例IIを参照)の濃度で含まれる。
本発明の方法において、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の量は変化され得る。SNAP−25またはタグ付き毒素基質は、例えば、1μM〜500μM、1μM〜50μM、1μM〜30μM、5μM〜20μM、50μM〜3.0mM、0.5mM〜3.0mM、0.5mM〜2.0mM、または0.5mM〜1.0mMの濃度で供給することができる。SNAP−25またはタグ付き毒素基質の濃度もしくはサンプルの量が、所望される場合には、アッセイが線形であるように制限され得ることは当業者には理解される。1つの実施形態では、本発明の方法は、100μM未満のSNAP−25またはタグ付き毒素基質濃度に依存している。さらなる実施形態では、本発明の方法は、50μM未満または25μM未満のSNAP−25またはタグ付き毒素基質濃度に依存している。さらなる実施形態では、本発明の方法は、10μM〜20μMのSNAP−25またはタグ付き毒素基質濃度に依存している。所望される場合には、線形のアッセイは、SNAP−25またはタグ付き毒素基質と、緑色蛍光タンパク質または蛍光タンパク質または遺伝的にコードされた検出可能なマーカーが欠けている対応する「非標識化」基質とを混合することによって実行することもできる。適切な希釈は、例えば対応の非標識化基質中のSNAP−25またはタグ付き毒素基質の連続的な希釈物を調製することによって決定することができる。
本発明の方法でアッセイされる精製または部分的に精製されたクロストリジウム毒素の濃度は、一般に、約0.1pM〜100nM、例えば1pM〜2000pM、1pM〜200pM、1pM〜50pM、1〜200nM、1〜100nMまたは3〜100nMの毒素の範囲であり、例えば、精製した未変性または組換え軽鎖または二鎖毒素、もしくはヒト血清アルブミンおよび賦形剤を含有する処方クロストリジウム毒素製品であり得る。特定の実施形態では、精製または部分的に精製された組換えBoNT/AまたはBoNT/E軽鎖または二鎖もしくは処方毒素製品の濃度は、1pM〜2000pM、10pM〜2000pM、20pM〜2000pM、40pM〜2000pM、または1pM〜200pMの範囲である。さらなる実施形態では、精製または部分的に精製された組換えBoNT/C軽鎖または二鎖もしくは処方毒素製品の濃度は、1〜200nM、4〜100nM、10〜100nMまたは4〜60nMの範囲である。精製または部分的に精製されたクロストリジウム毒素の濃度が、アッセイされる毒素の血清型と、毒素の純度、阻害性成分の存在およびアッセイ条件とに依存し得ることは当業者には理解される。精製、部分精製または未精製サンプルが、標準曲線に対してクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性をアッセイするために便利な範囲内で希釈され得ることは、さらに理解される。同様に、毒素プロテアーゼ活性のためのアッセイが線形であるように、所望される場合にはサンプルは希釈され得ることが理解される。
またクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は一般に、例えば、約20℃〜約45℃の範囲、例えば25℃〜40℃の範囲、または35℃〜39℃の範囲の温度を含む。アッセイ体積は、多くの場合、約5〜約200μlの範囲、例えば約10μl〜100μlの範囲または約0.5μl〜100μlの範囲であるが、ナノリットルの反応体積も本発明の方法と共に使用することができる。またアッセイ体積は、例えば、100μl〜2.0mlの範囲、または0.5ml〜1.0mlの範囲でもよい。
アッセイ時間は当業者により適切に変更可能であり、一般に、一つにはクロストリジウム毒素の濃度、純度および活性に依存する。アッセイ時間は、一般に、約15分〜約5時間の範囲で変更されるが、限定はされない。非限定的な例として、例示的なアッセイ時間には、例えば、37℃で30分間、45分間、60分間、75分間または90分間のインキュベーションが含まれる(実施例IIIを参照)。特定の実施形態では、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が切断される。さらなる実施形態では、プロテアーゼ反応は、SNAP−25またはタグ付き毒素基質の5%、10%、15%、20%、25%または50%より多くが切断される前に停止される。プロテアーゼ反応は、一般に基質内の蛍光タンパク質または他の検出可能なマーカーによって決まる適切な試薬によって終了させることができる。非限定的な例として、GFP含有基質に基づくプロテアーゼ反応は、実施例IIの場合のように、例えば1〜2Mの最終濃度まで塩化グアニジウムなどの終結試薬を添加することによって終了させることができる。またプロテアーゼ反応は、H2SO4の添加、約0.5〜1.0Mのホウ酸ナトリウム、pH9.0〜9.5の添加、あるいは亜鉛キレート剤の添加によって終了させることができる。所望される場合には、処理済サンプルを親和性対の第2のパートナーと接触させる前にプロテアーゼ反応が終了され得ることは当業者には理解される。
非限定的な例として、BoNT/Aプロテアーゼ活性などのクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、10〜16μMの基質と共に、50mMのHEPES(pH7.2)、10μMのZnCl2、10mMのDTT、および0.1%(v/v)トゥイーン−20を含有するバッファー中、37℃で90分間のインキュベーションであり得る(実施例IIを参照)。所望される場合には、BoNT/A、特に二鎖BoNT/Aは、基質の添加の前に、ジチオスレイトールと共に例えば20または30分間プレインキュベートすることができる。さらに非限定的な例として、BoNT/Aプロテアーゼ活性に適した条件は、5mMのジチオスレイトールなどの還元剤を含有する30mMのHEPES(pH7.3)、ならびに25μMの塩化亜鉛(約7nM、シュミットおよびボスティアン、上記、1997年)などの亜鉛源のようなバッファー中、37℃におけるインキュベーションであり得る。また、サンプルがSNAP−25またはタグ付き毒素基質で処理される場合には、0.1mg/ml〜10mg/mlの範囲のBSA、例えば1mg/mlのBSAが含まれてもよい(シュミットおよびボスティアン、上記、1997年)。またさらなる非限定的な例として、クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性、例えばBoNT/B活性に適した条件は、10μMの塩化亜鉛、1%ウシ胎児血清および10mMのジチオスレイトールと共に50mMのHEPES、pH7.4中、37℃で90分間のインキュベーションである(ショーン(Shone)およびロバーツ(Roberts)、Eur.J.Biochem.225:263−270頁(1994年)、ハリス(Hallis)ら、上記、1996年)か、あるいは例えば、任意に0.2%(v/v)トリトン(Triton)X−100を含む10mMのジチオスレイトールと共に40mMのナトリウムホスフェート、pH7.4中、37℃で2時間のインキュベーション(ショーン(Shone)ら、上記、1993年)であり得る。破傷風毒素のプロテアーゼ活性または他のクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性に適した条件は、例えば、25μMペプチド基質と共に、20mMのHEPES、pH7.2および100mMのNaCl中、37℃で2時間のインキュベーション(コルニーユ(Cornille)ら、上記、1994年)であり得る。
クロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を決定するための本発明の方法では、サンプルは、(i)蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、(ii)親和性対の第1のパートナーと、(iii)蛍光タンパク質と親和性対の第1のパートナーとの間に介在する切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列と、を含有するタグ付き毒素基質で処理される。所望される場合には、第2のタグ付き毒素基質が含まれてもよく、この第2の基質は、第2の蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーと、第2の親和性対の第1のパートナーと、第1のクロストリジウム毒素認識配列内の第1の切断部位を切断する毒素とは異なるクロストリジウム毒素によって切断される第2の切断部位を含む第2のクロストリジウム毒素認識配列とを含有する。第2の基質内の蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーおよび親和性対の第1のパートナーは、第1の基質内のものと同一でもよいし異なっていてもよい。このようにして、単一のサンプルを多数のクロストリジウム毒素の存在について便利にアッセイすることができる。
クロストリジウム毒素の任意の組み合わせ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のクロストリジウム毒素をアッセイ可能であることが理解される。例えば、TeNT、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/FおよびBoNT/Gのうちの2、3、4、5、6、7または8つの任意の組み合わせをアッセイすることができる。例えば、同じ蛍光または他の遺伝的にコードされた検出可能なタンパク質と、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/FまたはBoNT/G認識配列に隣接する親和性対の同じ第1のパートナーとをそれぞれが含有する7つの基質は、処理済サンプルを親和性対の第2のパートナーと接触させる前に、ボツリヌス毒素のプロテアーゼ活性に適した条件下、溶液相中でサンプルにより処理することができる。蛍光切断産物の存在は、少なくとも1つのボツリヌス毒素のクロストリジウム毒素のプロテアーゼ活性を示す。このようなアッセイは、例えば、任意のボツリヌス毒素の存在について食品サンプルまたは組織サンプルをアッセイするために有用であり、所望される場合には、個々のボツリヌス毒素またはボツリヌス毒素の特定の組み合わせについての1つまたは複数のその後のアッセイと組み合わせることができる。
もう1つの実施形態では、2つ以上の異なるタグ付き毒素基質を用いて、2つ以上の異なるクロストリジウム毒素について単一のサンプルがアッセイされ、各基質は、異なる蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーを含有する。多数の基質の使用は、例えば米国特許第6,180,340号明細書に記載されるように、アッセイのダイナミックレンジを拡大するために有用であり得る。多数のタグ付き毒素基質の使用の一例として、緑色蛍光タンパク質およびBoNT/A認識配列を含有する第1のタグ付き毒素基質と、赤色蛍光タンパク質およびBoNT/B認識配列を含有する第2のタグ付き毒素基質とを用いて、BoNT/AおよびBoNT/Bプロテアーゼ活性について単一のサンプルをアッセイすることができる。所望される場合には、2つの基質が、ヒスチジンタグなどの親和性対の同じ第1のパートナーを用いることもできる。処理済サンプルを親和性対の第2のパートナーと接触させ、蛍光切断産物を安定な複合体から分離した後、緑色蛍光切断産物はBoNT/Aプロテアーゼ活性を示し、赤色蛍光切断産物はBoNT/Bプロテアーゼ活性を示し、そして緑色および赤色の両方の蛍光切断産物は、BoNT/AおよびBoNT/B切断産物を示す。
また本発明の方法において多数の基質を使用して、アッセイの範囲を拡大することができる。例えば、少なくとも2つのタグ付き毒素基質が異なる希釈で一緒に使用され、基質が異なる蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーを有し、従って、別個に検出可能であるが、同じクロストリジウム毒素の認識配列を有する。1つの実施形態では、異なる蛍光タンパク質または他の遺伝的にコードされた検出可能なマーカーを有しその他の点では同一のタグ付き毒素基質が異なる希釈で一緒に使用され、本発明の方法のダイナミックレンジが拡大される。
本発明の方法において、1つまたは複数のコントロールが任意に用いられてもよい。コントロール基質は通常、1つまたは複数のクロストリジウム毒素を含有する定義されたサンプルで処理された同じSNAP−25またはタグ付き毒素基質か、いずれのサンプルでも処理されていない同じSNAP−25またはタグ付き毒素基質か、あるいはSNAP−25またはタグ付き毒素基質の切断不能な形態である。本発明の方法において様々なコントロール基質が有用であり、コントロール基質がポジティブコントロール基質またはネガティブコントロール基質であり得ることは当業者には理解される。コントロール基質は、例えば、活性クロストリジウム毒素を含有しない同様のサンプルと接触されるか、あるいはどのサンプルとも接触されない同様または同一の基質などのネガティブコントロールであり得る。蛍光または別の方法で検出可能な切断産物と同様または同一のコントロール切断産物も本発明の方法において有用であり得る。
本発明の方法は自動化することができ、さらに例えば、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルプレートを用いて高スループットまたは超高スループット形式で構成することができると理解される。一例として、蛍光発光は、96ウェルプレートアッセイ用に設計されたモレキュラー・デバイシーズ(Molecular Devices)FLIPR計測システム(モレキュラー・デバイシーズ(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)を用いて検出することができる(シュレイダー(Schroeder)ら、J.Biomol.Screening 1:75−80頁(1996年))。FLIPRは、水冷式の488nmアルゴンイオンレーザー(5ワット)またはキセノンアークランプと、電荷結合デバイス(CCD)カメラを有する半共焦点型(semiconfocal)光学系とを用いて、プレート全体を照射および画像形成する。FPM−2の96ウェルプレートリーダ(フォーリー・コンサルティング・アンド・リサーチ(Folley Consulting and Research)、イリノイ州ラウンドレイク)も、本発明の方法で蛍光発光を検出する際に有用であり得る。ECLIPSEキュベットリーダー(バリアン−ケーリー(Varian−Cary、カリフォルニア州ウォールナットクリーク)、SPECTRAmaxGEMINI XS(モレキュラー・デバイシーズ)および例えばパーキン・エルマー(Perkin Elmer)からの他のシステムなど、適切な分光学的適合性を有するこれらのおよび他の自動化システムが、本発明の方法において有用であり得ることは当業者には理解される。
以下の実施例は本発明を説明するが限定はしないことが意図される。
実施例I
組換えGFP−SNAP−25基質の発現および特徴付け
この実施例では、GFP−SNAP25(134−206)およびSNAP25(134−206)−GFP基質、ならびに改変された切断部位を含有するコントロール基質の発現のためのプラスミドの構成が記載される。
同じ成分を含有するが反対の配向で存在する2つのGFP基質を設計および発現させた。各基質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、マウスSNAP−25残基134−206、およびポリヒスチジン親和性タグ(6xHis)からなる融合タンパク質であり、各成分はペプチドリンカーによって分離された。以下にさらに記載されるように、GFPおよびポリヒスチジンタグがSNAP25(134−206)の反対の末端に融合されるように基質を設計した。融合タンパク質基質をGFP−SNAP25およびSNAP25−GFPと命名した。
A.pQE50/BirASNAP(128−206)の構成
ドリー(Dolly)教授により提供されるグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子の3’末端でフレームに挿入された全長マウスSNAP−25遺伝子(GST−SNAP25(1−206))を含有するpT25FLプラスミドからSNAP−25配列を得た(オサリバン(O’Sullivan)ら、J.Biol.Chem.274:36897−36904頁(1999年))。pT25FLからのSNAP−25配列は第2の発現ベクター内に取り込まれ、これは、SNAP−25の残基134−206のN末端に融合されたビオチン化のためのBirAspシグナル配列およびポリヒスチジン親和性タグ(BirAsp−polyHis−SNAP25(134−206)、「BA−SNAP」で表す)を有するように設計された。PCRプライマー5’−GCT AGA TCT CGA GTT AAC CAC TTC CCA GCA TCT TTG−3’(配列番号:104、アンチセンス)および5’−ATC CGG AGG GTA ACA AAC GAT GCC−3’(配列番号:101、センス)を用いるpT25FLプラスミドの適切な領域のPCR増幅によって、SNAP25(134−206)をコードするDNA配列を生成し、Bgl II制限部位を含有するSNAP25(134−206)PCR産物(PCR産物A)を産生した。
20bpの相補領域を含有する合成オリゴヌクレオチド配列番号:102および103を用いて、SNAP25(134−206)配列の上流およびフレーム内における融合のために、BirAsp配列、ビオチン化のための天然基質、およびポリヒスチジン親和性タグを操作した。これらのオリゴヌクレオチド、5’−CGA ATT CCG CGG GCC ACC ATG GGA GGA GGA CTG AAC GAC ATC TTC GAG GCT CAA AAG ATC−3’(配列番号:102、センス、下線のSacII部位)および5’−TCG TTT GTT ACC CTC CGG ATA TGA TGA TGA TGA TGA TGA TGA TGG GAT CCA TGC CAC TCG ATC TTT TGA GCC TCG AAG A−3’(配列番号:103、アンチセンス)をアニールし、一本鎖オーバーハングをPCR増幅で充填して、PCR産物Bをもたらした。
PCR産物Aで表されるSNAP25(134−206)、PCR産物Bで表されるBirAspおよびポリヒスチジンのためのコード配列を含有する2つの二本鎖PCR産物を変性およびアニールした。2つの遺伝子断片における20bpの相補配列は、PCRプライマー配列番号:101および配列番号:103においてイタリック体で示される)。PCRによるオーバーハングの充填の後、産物をプライマー配列番号:102および配列番号:104で増幅した。BirAsp−polyHis−SNAP25(134−206)をコードする得られたPCR産物(「BA−SNAP」と命名される)をSacIIおよびBglIIで消化し、pQBI25fA2ベクターに結合された単離遺伝子挿入断片をSacIIおよびBamHIで消化して、プラスミドpNTP12(BA−SNAPを含有するpQBI25fA2)をもたらした。
大腸菌からの発現および精製のために、BA−SNAP遺伝子をpTrc99Aプラスミド(アマシャム・ファーマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech))に転移させた。NcoIおよびXhoIでの消化によってBA−SNAP遺伝子をpNTP12から単離した後、ゲル精製を行った。別個に、pTrc99AプラスミドをNcoIおよびSalIで消化し、単離ベクターをBA−SNAP遺伝子に結合させて、プラスミドpNTP14(BA−SNAPを含有するpTrc99A)をもたらした。
プラスミドpQE−50にBA−SNAP遺伝子をクローン化するために、プライマー配列番号:104およびプライマー配列番号:105(5’−CGA AGA TCT GGA GGA CTG AAC GAC ATC TTC−3’(センス、下線のBglII部位))を用いてpNTP14からA−SNAP断片をPCR増幅した。BglIIおよびXhoIでの消化の後、増幅PCR産物を、BamHIおよびSalIで消化済みのベクターpQE−50内に結合させた。BA−SNAPを含有するpQE50を表す得られたプラスミドは、pNTP26と命名した。
B.GFP−SNAP−25発現ベクターの構成
以下に記載されるようにベクターpQBI T7−GFP(カリフォルニア州カールズバッドのクアンタム・バイオテクノロジーズ(Quantum Biotechnologies)を改変することによって、緑色蛍光タンパク質(GFP)融合タンパク質基質をコードするプラスミドを調製した。プラスミドマップは、以下の図8Aおよび9Aに示される。GFP−SNAP25(134−206)およびSNAP25(134−206)−GFP基質の核酸および予測アミノ酸配列はそれぞれ、図8Bおよび9Bに示される。
プラスミドpQBI GFP−SNAP25(134−206)を、次のとおりに2相で構成した。まず、ベクターpQBI T7−GFPをPCR改変して、GFP−コード配列の3’末端の終止コドンを除去して、GFPをSNAP−25断片から分離するペプチドリンカー部分のコード配列を挿入した。第2に、SNAP−25(134−206)遺伝子に5’融合したペプチドリンカーの残りのコード配列、および遺伝子の3’に融合した6xHis親和性タグを取り込むように設計されたPCRプライマーを用いて、SNAP−25(134−206)をコードするDNA断片をpNTP26からPCR増幅した。結果として生じるPCR産物を上記の改変pQBIベクターにクローン化しして、GFP−SNAP25(134−206)−6xHisの発現のためのpQBI GFP−SNAP25(134−206)プラスミドをもたらした(図8Aを参照)。
プラスミドpQBI SNAP25(134−206)−GFPを以下のとおりに構成した。BirAspビオチン化配列、poly−His親和性タグ、およびSNAP25残基134−206を含有するPCR増幅遺伝子をpQBI T7−GFPにサブクローン化することによって、図9Bに示されるプラスミドpQBI SNAP25(134−206)−GFPを構成した。BirAsp全体、6xHis、およびpNTP26からのSNAP25(134−206)遺伝子を、増幅遺伝子の融合タンパク質リンカー3’のコード配列を取り込み、GFP遺伝子の5’末端への融合を容易にするように設計されたプライマーを用いてPCR増幅し、図9Bに示されるようなBirAsp−6xHis−SNAP25(134−206)−リンカー−GFPの発現のための単一の遺伝子をもたらした。
C.SNAP−25/GFP発現ベクター変異体をコードするベクターの構成
Arg198AlaおよびArg180Asp類似体を作成するためのベクターpQBI GFP−SNAP25(134−206)の改変は、プライマー5’−GATGAAGCCAACCAAGCTGCAACAAAGATGCTG−3’(配列番号:106、「SNAP25(R198A)」)および5’−CGCCAGATCGACGATATCATGGAGAAGGCTG−3’(配列番号:107、「SNAP25(R180D)」)をその相補配列と共に用いて実施された。
各プライマー対に対して、5μLの10×Pfuバッファー(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、1μLのdNTPs(それぞれ12.5mM、プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)、1μLのPfuターボ(Turbo)DNAポリメラーゼ(ストラタジーン、ホットスタート付加)を含有する6つの50μLのPCR反応物を構築し、テンプレートDNAの濃度を変え(10〜100ngのpQBI GFP−SNAP25134−206)、各プライマーは0.2μMの最終濃度であった。ヌクレアーゼを含まない水で、反応物を50μLの最終体積にした。95℃で2分間のインキュベーションに続いて、25サイクルの増幅(95℃で1分間、60℃で30秒間、そして72℃で12分間)を実施した後、最終の72℃で7分間の伸展を行った。
サーモサイクリングに続いて、1μLのDpnI制限酵素(ストラタジーン)を各反応物に添加し、37℃で1時間インキュベートして、テンプレートDNAを消化した。QIAクイックキット(キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)によって反応物を精製し、アガロースゲル電気泳動法によって分析した。1つを除く全ての反応物が全長プラスミドを産生した。候補プラスミドの配列決定によって、1つのArg180Asp変異体と、所望の変化を含有する2つのArg198Ala変異体とが明らかになった。
D.GFP−SNAP25基質の発現および精製
上記の発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)細胞(ノバジェン(Novagen)、ウィスコンシン州マディソン、またはインビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)、もしくはT7RNAポリメラーゼ遺伝子を含有する大腸菌BL21−コドン・プラス(登録商標)(DE3)−RIL細胞(ストラタジーン)に形質転換した。形質転換した細胞を37℃で一晩LB(amp)プレート上に選択した。単一のコロニーを用いて、1〜3mLのスターターカルチャーをインキュベートし、次にこれを用いて0.5〜1.0Lの培養物をインキュベートした。A595が0.5〜0.6に到達するまで、振とうさせながら37℃で多量の培養物を成長させ、この時点でインキュベータから取り出し、短時間で冷却させた。1mMのIPTGによるタンパク質発現の誘発後、GFP部分のフォールディングを容易にするために、16℃で一晩振とうさせながらpQBI GFP−SNAP25(134−206)プラスミドからGFP−SNAP25基質を発現させた。発現培養物の250mLのアリコートからの細胞を遠心分離(30分、6,000×g、4℃)によって捕集し、必要になるまで−80℃で貯蔵した。
以下のように、IMAC精製と、イミダゾールを除去するためのその後の脱塩ステップとを含む2段階手順によって基質を4℃で精製し、通常150mg/Lよりも多い精製基質をもたらした。7〜12mLのカラム結合バッファー(25mMのHEPES、pH8.0、500mMのNaCl、1mMのβ−メルカプトエタノール、10mMのイミダゾール)中に、250mLの培養物からの細胞ペレットをそれぞれ再懸濁し、超音波処理(38%振幅の10秒パルスにおいて1分40秒)により溶解し、遠心分離(16000rpm、4℃、1時間)によって清澄化した。4カラム体積の無菌ddH2Oおよび4カラム体積のカラム結合バッファーで洗浄することによって、親和性樹脂(細胞ペレットあたり3〜5mLのタロン・スーパーフロー(Talon SuperFlow)Co2+)を、ガラスまたは使い捨てのカラム支持体(バイオラド(Bio−Rad))中で平衡にした。(1)ライセートを樹脂に添加し、緩やかに振動させながら1時間の水平のインキュベーションによってバッチを結合するか、あるいは(2)ライセートを鉛直カラムにアプライし、重力流によりゆっくりとカラムに入らせるか、2つの方法のうちの1つで清澄化ライセートをカラムにアプライした。バッチ結合の後にだけ、カラムを直立にし、溶液を排出し、捕集し、そしてもう一度樹脂を通過させた。いずれも場合にも、ライセートがアプライされた後、4〜5カラム体積のカラム結合バッファーでカラムを洗浄した。いくつかの場合には、1〜2カラム体積のカラム洗浄バッファー(25mMのHEPES、pH8.0、500mMのNaCl、1mMのβ−メルカプトエタノール、20mMのイミダゾール)でカラムをさらに洗浄した。1.5〜2.0カラム体積のカラム溶出バッファー(25mMのHEPES、pH8.0、500mMのNaCl、1mMのβ−メルカプトエタノール、250mMのイミダゾール)でタンパク質を溶出させ、これは、〜1.4mLの留分に捕集された。緑色の留分を合わせ、HiPrep26/10サイズ排除カラム(ファルマシア(Pharmacia))および10mL/分の流速の冷却した融合タンパク質脱塩バッファー(50mMのHEPES、pH7.4、4℃)の無勾配移動相を用いるFPLC(バイオラド・バイオロジック・デュオロジック(BioRad Biologic DuoLogic)、QuadTec紫外可視検出器)によって脱塩した。脱塩したタンパク質を単一の留分として捕集して、アポロ(Apollo)20mL濃縮器(QMWL10kDa、オービタル・バイオサイエンシーズ(Orbital Biosciences))において濃縮し、バイオラド(BioRad)タンパク質アッセイを用いて濃度を決定した。GFP−SNAP25基質は、サイズ排除クロマトグラフィで実証されるように単量体であった。次に、タンパク質溶液を500μLのアリコートに分割し、液体窒素で急速冷凍して−80℃で貯蔵した。いったん解凍したら、作業用アリコートを4℃で貯蔵し、光から保護した。
E.GFP−SNAP25基質の特徴付け
図10A〜10Cに示されるように、GFP−SNAP25のQ197−R198の切断容易な結合に対するA型毒素の特異性は、rLC/Aにより切断される基質のSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析によって検証した。同様に、BoNT/EによるGFP−SNAP25のタンパク質分解が、期待されるGFP−SNAP25(134−180)産物をもたらすことを実証した(図10D〜10F)。これらの結果は、GFPおよびヒスチジンタグを含有する合成基質、ならびにクロストリジウム毒素認識配列および切断部位を含有するSNAP−25の一部分が、関連のクロストリジウム毒素に有効な基質であり得ることを実証する。
BoNT/AおよびBoNT/Eタンパク質分解反応物のSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析を以下のように実施した。GFP−SNAP25134−206基質(0.4mg/mL)を、毒素反応バッファー(50mMのHEPES、pH7.4、0.1μg/mLのBSA、10μMのZnCl2、10mMのDTT)中で、単鎖の未変性BoNT/E(50.0μg/mL)、またはrLC/A(0.1μg/mL)のいずれかと合わせた。反応物を37℃でインキュベートし、0、5、10、15、30、および60分間のインキュベーション後にアリコートを取り出し、ゲルローディングバッファーに添加することによって失活させた。反応混合物は、サイプロ・ルビー(Sypro Ruby)(バイオラド)により染色してSDS−PAGE(10%Bis−Tris MOPS)によって分析するか、あるいはニトロセルロース膜に移してGFP、SNAP25134−197またはSNAP25134−180に特異的な抗体で探査した。
F.活性な組換えBoNTA型およびE型を含有する細胞ライセートの発現および同定
未精製の清澄化BL21−コドン・プラス細胞ライセートを以下のように調製した。化学的にコンピテントな大腸菌BL21−コドン・プラス(登録商標)(DE3)−RIL細胞(ストラタジーン)をpETベクターで形質転換して、カナマイシン耐性を提供し、LB/kan(50μg/mL)プレートに広げ、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーから成長させた3mLの培養物を用いて、175mLの培養物をインキュベートした。これは、37℃で振とうさせながら一晩インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレットにし、10mLの25mMのHEPESバッファー、pH7.4中に再懸濁し、超音波処理(38%振幅の10秒パルスにおいて1分40秒)によって溶解した。ライセートを遠心分離(16,000rpm、4℃、1時間)により清澄化し、0.4mLのアリコートに分割し、液体窒素で急速冷凍して、−80℃で貯蔵した。バイオラドタンパク質アッセイによって、清澄化ライセートのタンパク質含量は0.7mg/mLであると決定した。
トップ10細胞ライセートを以下のように調製した。ジョアンヌ・ワン(Joanne Wang)により、アンピシリン耐性大腸菌TOP10細胞(インビトロジェン)の20mL培養物が提供された。細胞を遠心分離によりペレットにし、2mLのDTTを含まない毒素反応バッファー(50mMのHEPES、pH7.4、0.1%(v/v)トゥイーン−20、10μMのZnCl2)中に再懸濁した。細胞を超音波処理(38%振幅の10秒パルスにおいて1分40秒)により溶解した。遠心分離(14000rpm、4℃、30分)によりライセートを清澄化する前に、2つの200μLアリコートを回収した。作業用アリコート以外の全ての未精製の清澄化ライセートを液体窒素で急速冷凍し、−80℃で貯蔵した。
活性BoNT/AまたはBoNT/Eの遺伝子を潜在的にコードするプラスミドで形質転換したBL21(DE3)細胞の単一のコロニーを用いて、1.0mLの培養物を、オーバーナイト・エクスプレス(Overnight Express)TM自己誘導培地(ノバジェン)中でインキュベートし、BoNT/A培養物は100μg/mLのアンピシリンを含有し、BoNT/E培養物は、50μg/mLのカナマイシンを含有した。膜の蓋を備えたセーフロック(Safe−Lock)チューブ(2mL、エッペンドルフ(Eppendorf)、ニューヨーク州ウェストベリー)を用いた。サーモミキサー(Thermomixer)R(エッペンドルフ)において37℃、1400rpmで、濁るまで(A型では約3時間、そしてE型では7時間)培養物を成長させ、この時点で温度を低下させ、培養物を16℃で一晩インキュベートした。遠心分離(6,000×g、4℃で15分)により細胞を捕集し、必要とされるまで−80℃で貯蔵した。
活性毒素を発現する培養物を同定するために、清澄化細胞ライセートを調製し、GFP−SNAP25アッセイにおいて試験した。細胞ペレットを氷上で解凍し、それぞれを、25U/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼと、A型の細胞ペレットでは1.2KU/mLのrLysozyme(登録商標)および1×プロテアーゼ阻害薬カクテル(Cocktail)IIIとを含有する500μLのバグバスター(BugBuster)(登録商標)タンパク質抽出試薬(4つの試薬は全てノバジェンから)で溶解した(サーモミキサーRにおいて23℃、300rpmで20分間)。遠心分離(16000rpm、4℃において20分間)によってライセートを清澄化し、上澄み溶液を新しい微量遠心管に移した。アッセイ反応物は、総体積50μLの毒素反応バッファー(50mMのHEPES、pH7.2、10μMのZnCl2、10mMのDTT、0.1%(v/v)トゥイーン−20)中に、10μLの清澄化ライセートおよび10μM(A型)または15μM(E型)のGFP−SNAP25基質を含有した。2つのコントロール反応物を構築し、それぞれがライセートの代わりにdH2Oを含有し、1つは0.01μg/mLの最終濃度のrLC/Eを含有した。全ての反応物を3通り構築し、37℃で40分間(A型反応)または1時間(E型反応)インキュベートした。反応を失活させ、GFP−SNAP25アッセイの一般的な手順で以下に記載されるように加工した。
実施例II
GFP−SNAP25の蛍光放出アッセイ
この実施例では、GFP−SNAP25(134−206)の特異的なタンパク質分解と、蛍光放出アッセイを用いたタンパク質分解の定量化とが記載される。
A.GFP−SNAP25の蛍光放出アッセイの概観
GFP−SNAP25の蛍光放出アッセイの概要は、図10Gに示される。反応混合物の加工は、エンドペプチダーゼ生成GFP−SNAP25(134−197)切断産物からの未反応GFP−SNAP25の固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)分離を容易にするポリヒスチジン親和性タグの存在に依存した。概観として、処理済基質を以下のように加工した。まず、適切な軽鎖(亜鉛メタロプロテアーゼ)または予め低減されたボツリヌス神経毒素(血清型A、C、またはE)に基質を添加することによって溶液相反応を開始させた。以下にさらに記載される条件下における所望される時間のインキュベーションに続いて、1〜2Mの最終濃度まで塩化グアニジウムを添加することによって、反応を失活させた。反応の終了後、未反応基質を、IMAC樹脂上のエンドペプチダーゼ生成GFP含有産物(GFP−SNAP25(134−197))から分離した。ポリヒスチジンタグ付き種を結合するためにCo2+樹脂を含有するスピンカラムまたは96ウェルのフィルタープレートに反応混合物をアプライした。タンパク質分解によってポリヒスチジン親和性タグから解放されるGFP−SNAP25(134−197)断片は、第1の「フロースルー」留分において樹脂を通過するが、未反応基質は樹脂に結合したままである。フロースルー留分の捕集に続いて、樹脂をバッファーで洗浄して、未反応GFP−SNAP25基質をイミダゾールで溶出させる前に、残留GFP−SNAP25(134−197)を除去した。GFP−SNAP25(134−197)切断産物およびGFP−SNAP25基質の両方の捕集は、蛍光による産物および未反応基質の両方の定量化を容易にする。次に、エンドペプチダーゼ産物(および、所望される場合には未反応基質)の相対蛍光を毒素濃度に対してプロットすることができる。
B.溶液相クロストリジウムタンパク質分解反応
クロストリジウム毒素のプロテアーゼ反応を以下のように実行した。毒素、組換え毒素、または組換えLC/AまたはLC/Eを、2×毒素反応バッファー(100mMのHEPES、pH7.2または7.4、20μMのZnCl2、20mMのDTT、0.2%(v/v)のBSAまたはトゥイーン−20)で所望の反応濃度の2倍に希釈し、最終反応体積の半分に等しいアリコートで黒色v底96ウェルプレート(ワットマン(Whatman)、ニュージャージー州クリフトン)または微量遠心管に添加した。それぞれの軽鎖または毒素サンプルを37℃で20分間プレインキュベートした。反応の開始前に、GFP−SNAP25基質を無菌ddH2Oで所望の反応濃度の2倍に希釈し、37℃に温めた。最終反応体積の半分に等しいアリコートでそれぞれのウェルまたは管に基質を添加することによって反応を開始させた。標準反応における基質の最終濃度は、10〜16μMであった。反応容器を密封し、光から保護し、37℃でインキュベートした。インキュベーション時間は、経時的反応がしばしばより長い時間かかったことを除いて通常90分であり、反応を3通り実行した。インキュベーション時間の最後、または特定の時点で、8Mのグアニジン塩酸塩を1〜2Mの最終濃度まで添加することによって反応または反応アリコートを失活させ、続いて、以下のように加工した。
C.蛍光切断産物の分離
サンプルを以下のように加工し、全てのステップは、−15inHgにおける溶出のためにUniVac(登録商標)真空マニホールド(ワットマン)を用いて手動で実施するか、あるいはフィルタープレートへの樹脂の添加を除いて、Biomek−FX液体ハンドリングシステム(ベックマン/コールター(Beckman/Coulter)、カリフォルニア州フラートン)において実施した。96ウェルフィルタープレート(400μLまたは800μLのウェル、0.45μmのフィルター、ロングドリップ、イノベーティブマイクロプレート(Innovative Microplate)、マサチューセッツ州チコピー)内の必要とされる数のウェルに、75μLのタロン(Talon)TMスーパーフロー(Superflow)Co2+親和性樹脂(ベクトン・ディッキンンソン・バイオサイエンシーズ(Becton Dickinson Biosciences))を負荷した。樹脂貯蔵バッファーを真空除去し、4カラム体積のddH2Oおよび4カラム体積のアッセイリンスバッファー(50mMのHEPES、pH7.4)で洗浄することによって樹脂を条件付けた。使用する直前に、アッセイリンスバッファーの最後のアリコートを樹脂から溶出させた。
グアニジン塩酸塩で失活させた後、条件付けされたCo2+樹脂を含有するフィルタープレートウェルに反応溶液を移し、室温で15分間インキュベートした。次に、反応溶液を溶出させ、黒色平底96ウェルプレート(BDファルコン(Falcon))に捕集し、樹脂床をさらに2回通過させ、最後の通過の後に捕集した。次に各樹脂床を2×135μLのアッセイリンスバッファーで洗浄し、これを、GFP産物を含有する溶出反応溶液を含有するプレート内に溶出させた。
いくつかの場合には、樹脂床を3×250μLのアッセイリンスバッファーで洗浄した後に未反応基質を捕集した。次に、260μLのアッセイ溶出バッファー500(50mMのHEPES、pH7.4、500mMのイミダゾール)により未反応基質を樹脂床から溶出させ、黒色平底96ウェルプレート(BDファルコン)に捕集した。スペクトラマックス・ジェミニ(SpectraMax Gemini)XS分光光度計(モレキュラー・デバイシーズ(Molecular Devices)、λEx474nm、λEm509nm、495nmカットオフフィルター)を用いて、反応フロースルーおよびイミダゾール溶出溶液の蛍光を定量化した。
D.GFP−SNAP25蛍光放出アッセイの結果
GFP−SNAP25蛍光放出アッセイの結果は、以下に要約される。未反応の出発材料を容易に測定する能力は、反応の内部コントロールを提供し、基質が産物に完全に転換されることを実証するのに役立った(一例として図11Cを参照)。組換え軽鎖A型(rLC/A)ならびにボツリヌス神経毒素血清型AおよびEのタンパク質分解活性をピコモル濃度で検出した。また、血清型Cが活性のための膜の存在を必要とし、概して乏しいインビトロ活性を有するという文献報告(バイディアナサン(Vaidyanathan)ら、J.Neurochem 72:327−337頁(1999年)、フォラン(Foran)ら、Biochemistry 35:2630−2636頁(1996年)、ブラージ(Blasi)ら、EMBO J.12:4821−4828頁(1993年))と一致して、BoNT/C複合体の酵素活性は低ナノモル濃度で検出した。
組換えA型軽鎖(rLC/A)活性
図11Aに示されるにようにGFP−SNAP25蛍光放出アッセイによりrLC/Aの活性を効率的に測定した。基質濃度が16μMである反応では、9〜1,250pMの濃度範囲におけるrLC/Aは、730から24,000を超える相対蛍光単位(RFU)を有する反応産物をもたらした。図11Aにおいてさらに実証されるように、36pMのrLC/A濃度において顕著なシグナルを測定した。
150kDaのBoNT/A(純粋なA)毒素活性
また、GFP−SNAP25蛍光放出アッセイにより未変性のBoNT/A毒素の活性を効率的に測定した(図11Bを参照)。基質濃度が16μMである反応では、17〜1,000pMの濃度範囲における未変性の純粋なBoNT/Aは、4,600からほとんど24,000の相対蛍光単位を有する反応産物をもたらした。図11Bは、さらに、17pMの純粋なBoNT/A濃度において顕著なシグナルが測定されたことを示す。
900kDaのBoNT/A(バルク)毒素活性
BoNT/A複合体は、GFP−SNAP25基質の切断に非常に効率的であり、6pMのバルクのBoNT/A毒素複合体は、バックグラウンドの19倍であるシグナルをもたらした(図11Cを参照)。基質濃度が16μMである反応では、3〜89pMの濃度範囲におけるBoNT/Aは、2,600から60,000を超える(相対蛍光単位)を有する反応産物をもたらした(図11C)。
146kDaのBoNT/E(純粋なE)毒素活性
BoNT/Aとは違って、単鎖(SC)BoNT/Eは、クロストリジウムによって、活性化二鎖形態を形成するように切れ目を入れられない。未変性の単鎖BoNT/E毒素の活性化は、トリプシンでの毒素の外因的な処理によって達成することができる。図12Aおよび12Bにそれぞれ示されるように、未変性の単鎖および二鎖BoNT/EはいずれもGFP−SNAP25基質を切断した。二鎖形態をもたらすための単鎖BoNT/Eのトリプシンニッキングは、血清型Eのタンパク質分解活性を実質的に増大させる。
図12Aに示されるように、基質濃度が16μMである反応では、2〜21nMの濃度範囲における未変性の単鎖BoNT/Eは、約3,800〜22,000の相対蛍光単位を有する反応産物をもたらした。図12Bに示されるように、同じ反応条件下の未変性の二鎖BoNT/Eの特異的な活性ははるかに大きかった。17〜1,546pMの濃度範囲では、二鎖BoNT/Eは、約1,200〜19,000の相対蛍光単位を有する反応産物をもたらした。
BoNT/C複合体の活性
上記のように、BoNT/Cは、インビボでシンタキシンおよびSNAP−25の両方を切断することがわかっており、GFP−SNAP基質内のBoNT/C切断部位は、SNAP25のArg198−Ala199に存在する。BoNT/C複合体とのインキュベーションによってGFP−SNAP基質をC型の基質としてアッセイした。図12Cに示されるように、GFP−SNAPは、BoNT/C活性を検出することができるが、、BoNT/Aまたは/E活性ほど容易には検出されない。基質濃度が16μMである反応では、血清型Cの乏しいインビトロ活性の文献報告、およびBoNT/Cが効率的な酵素活性のために膜の存在を必要とし得るという報告(バイディアナサンら、上記、1999年、フォランら、上記、1996年、ブラージら、上記、1993年)と一致して、4〜60nMの濃度範囲における未変性のBoNT/Cは、約3,800〜22,000の相対蛍光単位を有する反応産物をもたらした。
実施例III
組換えGFP−SNAP−25基質によるアッセイ条件の変化
この実施例では、GFP−SNAP25蛍光放出アッセイの変化および最適化が記載される。
A.アッセイの最適化:BSA対トゥイーン−20
初めに、タンパク質キャリア/安定剤としてウシ血清アルブミン(BSA)を含有する毒素反応バッファー(50mMのHepes、pH7.4、10μMのZnCl2、10mMのDTT、および0.1mg/mLのBSA)中で、GFP−SNAPアッセイを実行した。いくつかのボツリヌス神経毒素アッセイのための反応バッファーは、BSAではなく洗剤トゥイーン−20を含有する。BoNT反応に対するこれらのタンパク質安定剤の影響を比較する研究によって、血清型A、C、およびEは全て、BSAと比べて0.1%(v/v)のトゥイーン−20の存在下で著しく高い活性を有することが明らかになった。これらの結果は、BSAの代わりにトゥイーン−20を使用すると、BoNT/A、/Cおよび/Eの活性がより高くなることを示す。
B.アッセイの最適化:pH
プロテアーゼ反応バッファーのpHを7.0〜8.2の範囲内で変化させた。バルクA毒素はpH7.2において最も活性であったが、E型二鎖はpH7.0において最も活性であった。GFP融合タンパク質基質の蛍光は酸性条件下で失活されるので、7よりも低いpH値はアッセイしなかった(エコングら、Dev.Animal Vet.Sci.27:1039−1044頁(1997年))。バルクA毒素の活性は、高pHで最も効率的なプロセス(ハリス(Hallis)ら、J.Clin.Microbiol.34:1934−1938頁(1996年))で、複合体からの毒素および軽鎖の放出に依存することがわかっているが、GFP−SNAP25基質で得られる結果は、合成遺伝子から発現されるrLC/Aの最適なpHはpH7.2であり、この最適条件の両側で活性はかなり急速に降下することを示すことと一致する。対照的に、E型毒素のpHの優先度はバルクAほど顕著ではなく、E型活性は、pH8.2でも完全には除去されなかった。
バルクA毒素および純粋なE二鎖毒素のpHプロファイルを以下のように決定した。記載される点を除いて、上記のGFP−SNAP25アッセイの一般的な手順に従って、最適な毒素反応pHを決定した。7つの2×毒素反応バッファー溶液をpH7.00、7.20、7.41、7.60、7.80、8.01、および8.24において調製した。これらのバッファーを用いて毒素希釈物を調製した。毒素の最終反応濃度は、89pMの未変性BoNT/A複合体および203pMの未変性の純粋なE二鎖であった。90分のインキュベーション後に反応を失活させた。
C.アッセイの最適化:ジチオスレイトール依存性
バルクA毒素を用いて、10mMのジチオスレイトールとのプレインキュベーション時間が不足すると、単に、切断産物の産生が遅くなることを観察した。対照的に、ジチオスレイトールがないと、活性は本質的に完全に失われる。
ジチオスレイトール(DTT)依存性についてのバルクBoNT/A毒素のGFP−SNAP25経時的アッセイは、以下のように実施した。以下の点を除いて、上記のGFP−SNAP25アッセイの一般的な手順に従って、バルクA活性のDTTへの依存性およびプレインキュベーション時間の必要性を試験した。バルクA毒素の最初の希釈は、DTTを用いずに2×毒素反応バッファー中で行った。この溶液からアリコートを取り出して、一方はDTTを含有する毒素反応バッファー中、他方はDTTを含まない同じバッファー中において、さらなる希釈物を調製した。バッファー溶液を予め30℃に温めた。4つのタイプの反応と、1つの基質のみのコントロールとを、それぞれ3通り構築した。2つの反応セットはDTTを含有し、2つは含有せず、それぞれのタイプの1つのセットだけは反応の開始前に30℃で20分間プレインキュベートした。バルクAをストック溶液から移してから、「プレインキュベーションなし」反応の開始までに経過した時間は1.5分であった。基質のみのコントロール反応はDTTを含有しなかったが、プレインキュベートした。最終反応体積は400μLであり、44pMのバルクAおよび16μMのGFP−SNAP25基質を含有した。50μLのアリコートを各反応から取り出し、15、30、45、60、および90分の時点で20μLのグアニジンHClで失活させた。
D.切断容易な結合が変化した突然変異体GFP−SNAP25基質を用いて実証された毒素切断の特異性
上記のように、GFP−SNAP25アッセイにおいて使用される融合タンパク質基質は、SNAP−25の残基134−206を含有する。BoNT/Aは、残基Ala197とArg198の間でSNAP−25を切断するが、BoNT/Cは、残基Arg198とAla199の間の近接ペプチド結合を切断する。Arg198のアラニンへの転換は、特定のアッセイ(シュミットら、FEBS Lett 435:61−64頁(1998年))において検出可能なBoNT/Aによる加水分解を排除し、またおそらくBoNT/Cによるタンパク質分解も排除することが示されている。従って、Arg198からAlaへの変化が部位特異的変異誘発によりGFP−SNAP25基質内に導入されて、GFP−SNAP25(R198A)で示されるコントロール融合タンパク質が作成された。
BoNT/Eの切断部位は、残基Arg180とIle181の間に存在するが、単一残基の突然変異が、加水分解を排除することは示されていない。変化によって導入される電荷の反転および立体的な差異の理由から、可能性のあるコントロール基質としてArg180のアスパラギン酸塩への突然変異を選択した。この突然変異を含有するGFP−SNAP基質類似体は、GFP−SNAP(R180D)で示される。
標準GFP−SNAP25(134−206)基質について本質的に上記で記載されたとおりに、融合タンパク質基質突然変異体R198A#2、R198A#4およびR180Dを発現および精製した。次に、比較的高い濃度の毒素(4.5nMのrLC/A、6.8nMの未変性の純粋なE二鎖、および60nMのBoNT/C複合体)と共に、GFP−SNAP25アッセイ条件下で突然変異体基質を試験した。図13において実証されるように、高い毒素濃度にもかかわらず、rLC/AによるR198A突然変異体の切断は実質的に存在せず、さらに、BoNT/C複合体による切断は、GFP−SNAP25基質で見られるレベルの約14%(〜4×バックグラウンドシグナルと言い換えることができる)まで低減された。切断容易な結合の部位において基質に導入される立体的な差異および電荷の反転にもかかわらず、シグナルは11×バックグラウンドシグナルよりも大きいままであったが、R180D突然変異体のBoNT/Eによるタンパク質分解は、標準基質タンパク質分解の約15%まで著しく低減された。
E型毒素によるR180Dタンパク質分解の分析を繰り返して、結果が再現可能であることを確認し、Asp180/Ile181結合における切断を検証した。反応産物のSDS−PAGE分析により、R180D突然変異体はE型により部分的に切断され、産生されたより大きい断片は、標準GFP−SNAP25基質のタンパク質分解によって産生されるものと同じ見かけ上の分子量を有することが確認された。
毒素タンパク質分解実験に加えて、基質のトリプシン消化を実施した。GFPはプロナーゼ以外のプロテアーゼに耐性であることが示されている(米国特許第5,965,699号明細書)ので、基質のGFP部分はインタクトのままであることが期待された。期待されたとおり、GFPの本質的に全ては、トリプシン消化により放出された。
GFP−SNAP25基質のトリプシン消化を以下のとおりに実施した。スピンカラムおよびフィルター(35μm細孔径、モビテック(MoBiTec)、独国ゲッティンゲン)を5μLのアガロースビーズ結合トリプシン(24.1U/mLの充填ゲル、シグマ)で充填した。融合タンパク質基質(GFP−SNAP25および突然変異体R198A#4およびR180D)を消化バッファー(20mMのHEPES、pH7.4、300mMのNaCl)中で30μg/15μLの濃度に希釈した。反応を2通り実行し、トリプシンゲルを含有するスピンカラムに15μLの基質溶液を添加することによって開始した。30℃で1時間のインキュベーションの後、反応産物を遠心分離により溶出させ、1.7mLの微量遠心管に捕集した。各樹脂床を40μLの消化バッファーで洗浄し、これを溶出させ、反応溶液と同じ管に捕集した。次に、上記のフィルター−プレート加工方法に従ってサンプルを加工した。
E.未精製ライセート中の内在性プロテアーゼによる融合タンパク質基質の切断
基質突然変異体R180DおよびR198Aは、細胞ライセートにおける毒素活性を内在性プロテアーゼのタンパク質分解活性と区別するために、基質コントロールとしての役割を果たす。本質的に、ライセートにおける非毒素タンパク質分解は、コントロール基質からのシグナルに反映され得るが、GFP−SNAP25シグナルは、毒素および内在性プロテアーゼの合わせた活性を反映し得る。
2つのタイプの大腸菌細胞からのライセートをアッセイした。1つ目は、BL21−コドン・プラス(登録商標)(DE3)−RILからのライセートであり、rLC/Aおよび融合タンパク質基質を発現するように形質転換されたプロテアーゼ欠損細胞株であった。毒素の代わりに5μLまたは20μLのいずれかの清澄化ライセートを含有させた点を除いて、GFP−SNAP25アッセイ条件を模倣するように反応を構築した。図14Aに示されるように、基質のいずれかのタンパク質分解がわずかに存在した。R180Dを含有する反応のシグナルだけが、GFP−SNAP25アッセイにおいて通常見られるバックグラウンドシグナルを上回る。プロテアーゼ欠損のないトップ10(登録商標)細胞からの細胞ライセートもアッセイした。これらの実験では、20μLの清澄化ライセートが含有され、この場合も加水分解のレベルは無視できる程度であった(図14B)。これらの結果は、GFP−SNAP25基質のタンパク質分解がクロストリジウム毒素に特異的であり、細胞ライセート(cell lystate)に内在性の他のプロテアーゼによるものではないことを示す。
未精製の清澄化細胞ライセートにおける融合タンパク質基質のタンパク質分解を以下のように実施した。大腸菌BL21−コドン・プラス(登録商標)(DE3)−RIL細胞(ストラタジーン)または大腸菌トップ10細胞(インビトロジェン)からの5μLまたは20μLの未精製の清澄化ライセートを含有する反応を構築し、GFP基質(GFP−SNAP25、R198A、またはR180D)を16μMの最終濃度まで添加することによって開始させた。2×毒素反応バッファー(100mMのHEPES、pH7.4、20μMのZnCl2、20mMのDTT、0.2%(v/v)のトゥイーン−20)で基質希釈物を調製し、最終濃度がおよそ1×毒素反応バッファーになるように、さらに5μLの2×毒素反応バッファーを各反応に含有させた。全ての場合において、最終反応体積は50μLであり、反応は3通り実行した。コントロール反応では、細胞ライセートの代わりに無菌ddH2Oを含有させた。反応を37℃で1時間インキュベートし、15μLの8Mのグアニジン塩酸塩で失活させ、上記のフィルター−プレート加工方法に従って加工した。
F.rLC/Aの動態学的データ
GFP−SNAP25蛍光放出アッセイがKMに隣接する基質濃度範囲にわたって敏感であるかどうか、そして必要とされる基質濃度が標準の加工条件下で適応され得るかどうかを決定するために、いくつかの反応および加工条件を探索した。基質濃度の範囲にわたって単一の毒素濃度で一連の経時的アッセイを実行することによってデータを得た。反応の長さおよび樹脂体積などの反応条件および加工の詳細は、アッセイ間で変更した。これらの初期試験では、全ての反応は178pMのrLC/Aを含有し、基質濃度は、2.5〜80μMで変化させた。
動態学的分析方法には、データのプロットへの曲線の非線形フィッティングと、これらの曲線からの初期基質速度の決定と、最後に、vmaxおよびKmの推定のために基質濃度に対して初期速度をプロットすることとが含まれた。初期プロットは、この毒素濃度において4.6μMの予備Km値を提供する(図15および16)。あるいは、アッセイはこの基質濃度において何度も実行され得る。
公知のA型毒素の速度定数は表6に示されており、そのほとんどはHPLCに基づくアッセイを用いて決定されたものである。
0.01μg/mL(0.18nM)の最終毒素濃度を用いて、動態学的分析のためのrLC/Aの経時的アッセイを実施したが、基質濃度は、2.5〜80μMで変化させた。GFP−SNAP25アッセイの一般的な手順に基づいて記載されるようにそれぞれの基質濃度で、3つの反応と、1〜3つの基質のみのコントロールを構築し、反応を2〜7時間インキュベートした。4分の時点から開始して、反応の経過と共に50μL(80μM基質反応では30μL)のアリコートを回収し、20μLの8Mのグアニジン塩酸塩で失活させた。GFP−SNAP25アッセイの一般的な手順に基づいて、失活させたサンプルを上記のように加工した。
G.単一のBOTOX(登録商標)バイアルのGFP−SNAP25蛍光放出アッセイ
上記の結果から、GFP−SNAPアッセイは、単一のBOTOX(登録商標)バイアルの内容物をアッセイするのに十分に敏感である。しかしながら、BOTOX(登録商標)は、上記の標準条件下でGFP−SNAP25基質を著しくは切断しなかった。特に、BOTOX(登録商標)には、塩含量(〜0.88mgのNaCl/バイアル)および多量のHSA(〜0.5mg/バイアル)が存在する。塩を除去するための透析ステップは、結果的にバックグラウンド蛍光を増大させ、著しいタンパク質分解を生じなかった。タンパク質分解またはHisタグ付き種の精製樹脂への結合を妨害し得るHSAを除去するために、100,000MWCO膜を有するテフロン(Teflon)被覆された透析ユニットを用いてBOTOX(登録商標)バイアル内容物を透析した。バイアルの内容物を100μLのdH2O中に再懸濁し、透析に続いて、100%の毒素がバイアルから移され、透析後に回収されたと仮定して、最終反応のそれぞれにバイアルからの約1/5の毒素を含有させた。2つのバイアルの内容物を全部で6つの反応においてアッセイし、プラセボコントロールバイアルも3通りにアッセイした。図17に示されるように、BOTOX(登録商標)シグナルは、バックグラウンドの15倍で容易に検出可能であった。これらの結果は、処方BOTOX(登録商標)産物の高NaClおよびHSA含量がGFP−NAP25蛍光放出アッセイを妨害し得ることを示す。これらの結果はさらに、透析または別の方法によるNaClおよびヒト血清アルブミンの除去の後に、本明細書に開示されるGFP−SNAP25蛍光放出アッセイを用いてBOTOX(登録商標)または他の処方毒素産物をアッセイ可能であることを示す。
BOTOX(登録商標)のGFP−SNAP25アッセイを以下のとおりに実施した。BOTOX(登録商標)の2つのバイアルの内容物を、それぞれ100μLの無菌dH2O中に溶解し、同じ透析ユニット(ファースト・スピン・ダイアライザー(Fast Spin Dializer)、ハーバード・アパレイタス(Harvard Apparatus)、100,000MWCO)に移した。単一のプラセボバイアルの内容物も100μLの無菌dH2O中に溶解し、同じタイプだがより小さい体積の透析ユニットに移した。2×1LのBOTOX透析バッファー(50mMのHEPES、pH7.2、10μMのZnCl2)に対して毒素溶液を透析し、プラセボ溶液を2×500mLのBOTOX透析バッファーに対して透析し、全透析時間は室温で1時間であった。透析に続いて、140μLのBOTOX溶液を、30℃に予め温めた35μLのBOTOX反応バッファー(50mMのHEPES、pH7.2、10μMのZnCl2、0.17%(v/v)のトゥイーン−20、16mMのDTT)と合わせた。80μLのプラセボ溶液を20μLのBOTOX反応バッファーと合わせた。両方の溶液を30℃で20分間プレインキュベートした。BOTOX反応バッファーでGFP−SNAP25希釈物(40μMまで)を調製した。25μLのBOTOXまたはプラセボ溶液のいずれかを25μLの基質溶液と合わせることによって反応を開始させた。6つのBOTOX反応および3つのプラセボコントロール反応を開始させ、30℃で3時間5分インキュベートした。20μLの8Mのグアニジン塩酸塩で反応を失活させ、GFP−SNAP25アッセイの上記の一般的な手順に記載されるように加工した。
上記で括弧内あるいは別の形で提供され、以前に記載されていてもいなくても、全ての雑誌の記事、参考文献および特許の引用は、その全体が参照によって本明細書中に援用される。
本発明は上記で提供された例に関して説明されたが、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な変更が成され得ることは理解されるべきである。従って本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。