JP2008506667A - 肝疾患及び上皮性癌の治療におけるミトコンドリアを標的とした酸化防止剤 - Google Patents

肝疾患及び上皮性癌の治療におけるミトコンドリアを標的とした酸化防止剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療及び予防における、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質の使用に関する。本発明はまた、このような使用が意図される酸化防止剤を含む薬剤組成物に関する。更に本発明は、このような予防及び治療に有用な酸化防止剤を含む医薬の製造法に関する。

Description

技術分野
本発明は、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療及び予防における、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質の使用に関する。
背景技術
肝疾患の範囲は、軽度で可逆性の脂肪肝から、肝硬変、肝不全及び肝癌という生死にかかわる症状の発生に至る、進行性の慢性肝疾患まで様々ある。
慢性肝疾患の主な原因は、B型又はC型肝炎ウイルスの感染、アルコールの過剰摂取及び非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である。
B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、世界的な公衆衛生の問題である。これは、世界中で肝硬変及び肝細胞癌(HCC)の主要な原因である(Conjeevaram H.S.ら, 2003, Journal of Hepatology, 38: 90-103)。世界中で肝臓関連の罹患及び死亡の主な原因である、C型肝炎ウイルス(HCV)は、主要な公衆衛生問題の1つである(Alberti, A.とBenvegnu L., Journal of Hepatology 2003, 38: 104-118)。HCV感染は、しばしば慢性肝炎を引き起こすが、これは、肝硬変及びHCCの発症につながる(Cyong J.C.ら, 2002, Am J Chin Med, 28: 351-360)。
アルコール性肝疾患(ALD)は、西洋では肝硬変の最大の原因であり、 現在のところ、十大死因の中の1つである。米国では、ALDに少なくとも2百万人、即ち人口の約1%が罹患している。多くの患者が無症候性であり、そして診察を受けないのかもしれないため、ALDの真の発生率は、特にその軽度のものは、実質的にはもっと大きいであろう。ALDの範囲は、大酒飲みの全てではないが多くに存在する脂肪肝(脂肪症)から、脂肪性肝炎、胆汁うっ滞(肝臓からの胆汁排出の阻止を特徴とする)、線維症及び最終的には肝硬変(Stewart S.F.及びDay C.P., 2003, Journal of Hepatology, 38: 2-13)までに及ぶ。脂肪肝は、禁酒により改善可能ではあるが、飲酒を続ける患者では(特に脂肪性肝炎が存在するとき)線維症及び肝硬変への進行のリスク因子である。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)とは、単純な脂肪症から、脂肪性肝炎、胆汁うっ滞、進行性線維症及び肝硬変までの、広い範囲の肝損傷を意味する。脂肪性肝炎(非アルコール性脂肪性肝炎)は、NAFLDの範囲内の病期のみを表す(Anguilo P., 2002, N Engl. J. Med., 346: 1221-1231)。病理像は、アルコール誘導肝傷害のものに似ているが、アルコールを濫用していない患者に発生する。NAFLDは、これらの症状が明確に異なる病因と転帰を持つため、副因から生じる肝炎を伴うか又は伴わない脂肪症とは区別すべきである。脂肪肝疾患(脂肪症)のこれらの副因は、栄養(例えば、タンパク質・カロリー欠乏、飢餓、完全非経口栄養、急激な体重減少、肥満症の消化管手術)、薬物(例えば、グルココルチコイド、合成エストロゲン、アスピリン、カルシウムチャネル遮断薬、テトラサイクリン、バルプロ酸、コカイン、抗ウイルス剤、フィアルリジン(fialuridine)、インターフェロンα、メトトレキサート、ジドブジン)、代謝又は遺伝(例えば、リポジストロフィ、異常βリポタンパク血症、ウェーバー・クリスチャン(Weber-Christian)病、ガラクトース血症、糖原病、妊娠の急性脂肪肝)、並びに糖尿病、肥満症又は高脂質血症のようなその他のものである(Anguilo P., 2002, N Engl. J. Med., 346: 1221-1231;MacSween R.N.M.ら, 2002, Pathology of the Liver. 第4版 チャーチル・リビングストーン(Churchill Livingstone), エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science))。
慢性肝障害の患者数にもかかわらず、このカテゴリーの多くの障害に対する有効な治療法は存在しない。
種々の遺伝性及び後天性肝疾患は、肝細胞の中間径フィラメント(IF)細胞骨格の変質を伴う。最も発生頻度の高いIF関連の変質の1つは、マロリー小体(MB)であり、これは、アルコール性脂肪性肝炎及び非アルコール性脂肪性肝炎(ASH及びNASH)、慢性胆汁うっ滞、銅中毒及び他の代謝性肝疾患並びにある種の肝細胞癌(HCC)の肝細胞中で形成される。MBは、主要な成分として凝集した異常折り畳みケラチン(aggregated misfolded keratin)と、更には折り畳まれていないタンパク質の応答(unfolded protein response)に関与する幾つかのタンパク質(HSP27、HSP70、p62及びユビキチン)からなる。タンパク質の異常折り畳みは、典型的には細胞ストレス、特に酸化ストレスの状況でのタンパク質改変の結果として起こる。MBの化学組成は、ケラチンが、ストレス状況における異常折り畳みの好ましい標的であること、及びMBが、異常折り畳みケラチンへの細胞防御応答の結果と考えられることを示す(Denkら, 2000, J. Hepatol., 32: 689-702)。
最も重篤な非ウイルス性慢性肝疾患である、アルコール性脂肪性肝炎及び非アルコール性脂肪性肝炎(ASH及びNASH)は、高頻度で肝硬変、肝不全及び肝癌(例えば、HCC)に至る。ASH及びNASHは、診断の病理検査室では形態学的評価によって識別することができない。しかし線維症、炎症及び肝臓細胞(肝細胞)形態の変質を伴う脂肪沈着の増加は、これらのより深刻な症状を示す。ASH及びNASHにおける細胞変化は、サイズの増大(膨張)及び細胞内凝集体(例えば、MB)の存在を含み、そしてこの範囲の肝臓細胞病理は、これらの症状についての徴候と考えられる。
全体的に見て、ASH及びNASHには、患者での疾患の管理にあまり影響しそうもない生検による確定診断法はあるが、証明された特異的な治療法は存在しない。
肝癌は、工業化された西洋世界では比較的まれであるが、全世界の癌の主要な原因に入る。他の多くの型の癌とは対照的に、肝癌が進行して死に至る人の数は増加している。
世界的規模では、HCCのような原発性肝癌は、約百万人死亡/年を占める、最もありふれた悪性腫瘍に属する(Bruix, J.ら, 2004, Cancer Cell (5): 215-219)。
肝癌の主要なリスク因子は、ウイルス、アルコール摂取、アフラトキシンかびによる食品汚染及び代謝障害である。アルコール依存症と慢性B型及びC型肝炎の比率は上昇し続けている。したがって肝癌比率の着実な上昇の見通しは、この領域における新しい治療法に対するニーズを際立たせている。
原発性肝癌は、治療が難しい。癌の外科的除去及び肝臓移植は、小さい癌に限定されており、そして診断時には癌がしばしば進行期に入っているため、多くの患者には実行可能な選択肢ではない。化学療法は、手術に適していない腫瘍に対して時々利用されるが、通常は恩恵があっても長続きしない。即ち、原発性肝癌の生存率は、著しく低い。従来の治療法は一般に、肝癌の管理において有効性が証明されていない。
例えば、HCCでは、切除及び移植を除いて有効な治療の選択肢は存在しないが、これらのアプローチは、HCCの初期にのみ適用可能であり、ドナー肝臓の入手機会により限定され、そして患者に対する重大なリスクを伴う。更に、これらのアプローチは、極めて費用がかかる。恐らくは有害化合物の解毒及び輸出における正常な肝臓機能のため、これらの癌は、化学療法にはほとんど応答しない。化学塞栓術、凍結療法及びエタノール注入法のような、幾つかの他の治療選択肢は、未だ実験段階にあり、これらの有効性は確立されていない。
よって今までのところ、肝障害及び他の上皮性癌に介入できるようにするための、満足できる治療法は開発されていない。
種々の酸化防止剤が、アルキレン鎖による親油性カチオンへのその共有結合によって、ミトコンドリアを標的にできることは既に知られている(Smith R.A.J.ら, 1999, Eur. J. Biochem., 263: 709-716、及びKelso G.F.ら, 2001, J. Biol. Chem., 276: 4588-4596;James A.M.ら, 2005, J. Biol. Chem., 280: 21295-21312)。このアプローチによって、酸化防止剤は、ランダムに拡散するよりは、細胞内のフリーラジカル及び反応性酸素種の一次産生部位を標的にすることができる。
詳細には、ビタミンE及び補酵素Q10の誘導体(US 6,331,532;WO 99/26954、WO 2005/016322及びWO 2005/016323)又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質(WO 2004/014927)の、これらをトリフェニルホスホニウムイオンに結合させることによるミトコンドリアへの標的化が記述されている。インビトロの実験により、[2−(3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)エチル]−トリフェニルホスホニウムブロミド(ミト・ビタミンE(Mito Vit E))、及びミト・キノール(MitoQuinol)[10−(3,6−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシ−2−メチルフェニル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミドとミト・キノン(MitoQuinone)[10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミドとの混合物(ミトQ(MitoQ))(Kelso G.F.ら, 上記引用文中、及びSmith R.A.J.ら, 上記引用文中)、又はアニオンがメタンスルホナートであるミトQ化合物(James A.M.ら, 2005, J. Biol. Chem., 280: 21295-21312;WO 2005/016322及びWO 2005/016323)が、ミトコンドリアにより単離細胞内に急速かつ選択的に蓄積されることが証明された。
更に、スピントラップ剤のフェニル−t−ブチルニトロンのミトコンドリアを標的とした誘導体(ミトPBN(MitoPBN))が開発されている(Smith R.A.J., Bioenergetics Group Colloquium, 2003, 679th Meeting of the Biochemical Society: 1295-1299)。
重要なことには、ミトコンドリアによるこれらの酸化防止剤の蓄積によって、これらは、非標的化酸化防止剤よりはるかに効果的に酸化損傷から防御されたが、このことは、ミトコンドリア内の生理活性分子の蓄積が、これらの効力を増大させ、また一方では有害な副作用を減少させることを示唆している(Murphy M.P.とSmith R.A.J., 2000, Adv. Drug. Delivery Rev., 41: 235-250)。
更には、単純なアルキルトリフェニルホスホニウムカチオンのTPMP、ミト・ビタミンE及びミトQは、脳、心臓、肝臓、及び筋肉内で見込み治療有効濃度を生み出しながら、マウスに安全に長期摂取させることができるということが見い出された(Smith R.A.ら, 2003, PNAS, 100(9): 5407-5412)。
これらの化合物の工業的応用(US 6,331,532、WO 99/26954又はWO 2004/014927、WO 2005/016322及びWO 2005/016323)としては、神経変性疾患(パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(Friedrich's Ataxia)、ウィルソン病(Wilson's disease))、ミトコンドリアDNA突然変異に伴う疾患、糖尿病、運動ニューロン疾患;脳卒中、心臓発作、臓器移植及び手術における炎症及び虚血再灌流組織傷害に伴うミトコンドリアの酸化ストレス上昇の防止、並びに加齢に伴う気力の非特異的消失の防止における使用について特許請求された。更に、移植中に臓器を保護するための、手術中に起こる虚血再灌流傷害を改善するための、脳卒中及び心臓発作後の細胞損傷を軽減するための予防薬として、あるいは脳虚血を起こしやすい未熟児に与えられる予防薬としてのこれらの化合物の使用が、上述の特許文献に特許請求されている。
アルコール性肝炎(AH)の治療における酸化防止剤療法の潜在的価値への関心は、アルコール性肝毒性における重要な機序として酸化ストレスが関係しているという一連の証拠の増加の結果として生じた(Stewart S.F.とDay C.P., 2003, Journal of Hepatology, 38: 2-13)。これらの考察は、最近になって、重篤なAHの患者における酸化防止剤補給の効果を研究する幾つかの試験につながった(例えば、Philips M.ら, 2001, Journal of Hepatology, 34: 250A)。最新の研究では(Stewart S.F.ら, 2002, Journal of Hepatology, 36: 16)、能動群に、負荷量のN−アセチルシステイン150mg/kg、続いて100mg/kg/日を1週間、並びにビタミンA〜E、ビオチン、セレン、亜鉛、マンガン、銅、マグネシウム、葉酸及び補酵素Qを毎日6ヶ月間投与した。この酸化防止剤療法は、単独でも、又はステロイドとの併用でも何の有用性も示さなかった。要約すると、これまでに入手可能なデータに基づくと、高用量酸化防止剤療法は、重篤なAHの患者に何ら延命効果を及ぼさない(Stewart S.F.とDay C.P., 上記引用文中)。
酸化ストレスはまた、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の病因にも関係している。しかしながら、コリン欠乏飼料給餌ラットによる研究では、広範な酸化状況においてラジカル反応の伝搬をブロックすることにより反応性酸素種(ROS)と反応することが知られているビタミンEが、決して脂肪肝の発生を防ぐことはなく、また酸化ストレスを減少させることもなかった(Oliveira C.P.ら, 2003, Nutr. J., 2(1): 9)。
アルファ−トコフェロール(VitE群)により処置した、肝硬変でありC型肝炎ウイルス(HCV)感染の既往歴を持つ患者による研究では、肝機能の改善も、肝細胞癌発生の抑制も、また累積生存率の改善も見られなかった(Tagaki H.ら, 2003, Int. J. Vitam Nutr. Res., 73(6): 411-5)。
更には、以前の一連のアルファ−インターフェロン処置に対してノンレスポンダーであった、生検で証明された慢性C型肝炎に罹患している続発性患者120名のランダム化多施設試験において、N−アセチルシステイン(1200mg/日)及びビタミンE(600mg/日)の経口補給は、アルファ−インターフェロン単独での再治療の効果の乏しさを改善しなかった(Ideo, G.ら, 1999, Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 11(11): 1203-7)。
発明の要約
本発明は、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療又は予防のための、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含むことを特徴とする、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用に関する。
詳細な説明
今や予期せぬことに、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質が、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療及び予防において有用であることが見い出された。
最も広い側面において、本発明は、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療及び予防において使用するための、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含む、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤を提供するが、ここで、この酸化防止剤残基は、ミトコンドリア膜を通して輸送することができ、無傷細胞のミトコンドリア内に蓄積することができる。詳細には、本発明の化合物は、ミトコンドリアにおける酸化ストレス(又はフリーラジカル)から生じる細胞損傷を防ぐ。
本発明の「肝疾患」という用語は、肝臓の解剖学的構造、生理機能、代謝、及び/又は遺伝的活性に影響し、全体として又はその一部として、一過性に、一時的に、慢性的に又は永久に、新しい肝細胞の発生及び/又は肝臓の再生に病的に影響する、全種類の障害を意味し、かつこれらを含む。
詳細には、アルコールにより引き起こされる肝疾患(例えば、ASH)、非アルコール性脂肪肝変化(NASHを含むNAFLDなど)、栄養性肝傷害(例えば、飢餓)、他の中毒性肝傷害[例えば、特に限定されないがアセトアミノフェン(パラセタモール)、塩素化炭化水素(例えば、CCl4)、アミオダロン(コルダロン)、バルプロ酸、テトラサイクリン(静脈内のみ)、イソニアジドのような薬物により誘導される非特異的肝炎など](Drug-induced liver disease 2004, Lazerow SK, Abdi MS, Lewis JH. Curr Opin Gastroenterol., 2005, 21(3): 283-292)、又は急性若しくは慢性肝不全で生じる食中毒[例えば、アフラトキシン(好ましくはB1アフラトキシン)を含むキノコの摂取、又はある種の金属(銅又はカドミウムなど)若しくは自然薬品中の薬草(オオアザミ(Milk thistle)、チャパラル(Chaparral)、カワカワ(Kawa-Kawa)のようなホメオパシー剤)の摂食による]、ビリルビン代謝の障害、肝炎様症候群、胆汁うっ滞、肉芽腫性病変、肝臓内血管病変及び硬変、外傷及び手術(例えば、プリングル法(Pringle maneuver))、放射性肝傷害(放射線療法により引き起こされるものなど)が含まれる。
肝疾患は、更に、感染性肝疾患[例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)感染により引き起こされる]、及び自己免疫性肝疾患(例えば、自己免疫性肝炎)を含むものと理解される。更に含まれるのは、敗血症による肝傷害である。
肝疾患は、更に、遺伝性肝障害(ヘモクロマトーシス及びアルファ1−アンチトリプシン欠乏症など)、及び他の遺伝性代謝性肝疾患[例えば、代謝性脂肪性肝炎(MSH)]を含むものと理解される。
治療すべき肝障害の好ましい例は、アルコール性肝疾患(ALD)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、急性及び慢性肝炎、ヘモクロマトーシス並びにアルファ1−アンチトリプシン欠乏症を含む。
本発明の意味の範囲内で、本発明の「肝疾患」という用語はまた、腫瘍(原発性肝新生物)及び肝臓の腫瘍様病変(限局性結節性過形成、FNHなど)を包含する。
肝疾患は、更に、肝腫瘍性疾患[良性肝腫瘍(例えば、肝細胞腺腫)など]、更には肝癌[例えば、肝細胞癌(HCC)]を含むものと理解される。HCCは更に、細胞内タンパク性封入体を特徴とする肝癌、肝細胞脂肪症を特徴とするHCC、及び線維層板状HCCを含む、上記障害のサブタイプを含む。例えば、肝細胞のサイズの増大を特徴とするもの(「大細胞」変化)、及び肝細胞のサイズの減少を特徴とするもの(「小細胞」変化)、並びにマクロ再生性(過形成性)結節のような、前癌性病変もまた含まれる(Anthony P.著, MacSweenら編, 2001, Pathology of the Liver, チャーチル・リビングストーン(Churchill Livingstone), エジンバラ, 英国)。
本発明の意味の範囲内で「上皮性癌」という用語は、肺、腎臓、膵臓、前立腺、皮膚及び乳房よりなる群から選択される、肝臓以外の臓器の癌、並びに胃、腎臓、及び結腸のような胃腸系の癌を含む。本発明の「上皮性癌」という用語は、組織の上皮細胞成分が、変形して、当業者には一般に知られているような標準的診断法により同定される悪性腫瘍が生じる、これらの臓器の障害を意味する。
好ましい実施態様は、肝疾患の治療及び予防における、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含むことを特徴とする、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用に相当し、そしてここで、肝疾患は、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、栄養性肝傷害、中毒性肝傷害、感染性肝疾患、敗血症の肝傷害、自己免疫性肝疾患、ヘモクロマトーシス、アルファ1−アンチトリプシン欠乏症、放射性肝傷害、肝癌、良性肝腫瘍及び限局性結節性過形成よりなる群から選択される疾患である。
別の好ましい実施態様は、肝疾患の治療及び予防における、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含むことを特徴とする、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用に相当し、そしてここで、肝疾患は、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、栄養性肝傷害、中毒性肝傷害、感染性肝疾患、敗血症の肝傷害、自己免疫性肝疾患、ヘモクロマトーシス、アルファ1−アンチトリプシン欠乏症、放射性肝傷害よりなる群から選択される疾患である。
本発明は、肝疾患及び上皮性癌の治療又は予防用の医薬の製造における、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含むことを特徴とする、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用に関する。
好ましい実施態様は、肝疾患の治療又は予防用の医薬の製造における、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の使用に相当し、そしてここで、肝疾患は、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、栄養性肝傷害、中毒性肝傷害、感染性肝疾患、敗血症の肝傷害、自己免疫性肝疾患、ヘモクロマトーシス、アルファ1−アンチトリプシン欠乏症、放射性肝傷害、肝癌、良性肝腫瘍及び限局性結節性過形成よりなる群から選択される疾患である。
更に別の好ましい実施態様は、肝疾患の治療又は予防用の医薬の製造における、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の使用であり、そしてここで、肝疾患は、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、栄養性肝傷害、中毒性肝傷害、感染性肝疾患、敗血症の肝傷害、自己免疫性肝疾患、ヘモクロマトーシス、アルファ1−アンチトリプシン欠乏症、放射性肝傷害よりなる群から選択される疾患である。
別の好ましい実施態様は、肝疾患が、アルコール性肝疾患又は非アルコール性脂肪肝疾患である、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用である。
更に別の好ましい実施態様は、肝疾患が、アルコール性脂肪性肝炎又は非アルコール性脂肪性肝炎である、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用に相当する。
別の好ましい実施態様は、肝疾患が、アルコール性脂肪性肝炎である、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用である。
更に別の好ましい実施態様は、肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用である。
本発明の意味の範囲内で「本発明の疾患」という用語は、上記と同義の肝障害及び上皮性癌を包含する。
好ましい実施態様は、親油性カチオンが、トリフェニルホスホニウムカチオンである、本発明の疾患の治療又は予防のための、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用に相当する。
本発明の酸化防止剤に共有結合することができる他の親油性カチオンは、トリベンジル若しくはトリフェニルアンモニウムカチオン、又はトリベンジル若しくは置換トリフェニルホスホニウムカチオンを含む。
別の好ましい実施態様において、該ミトコンドリアを標的とした本発明の化合物は、式:P(Ph)3 +XR・Z-[式中、Xは、結合基であり、Z-は、アニオンであり、そしてRは、酸化防止剤残基である]を有しており、そしてこの親油性カチオンは、一般式:
で示されるような、トリフェニルホスホニウムに相当する。
結合基としてのXは、炭素鎖、1個以上の炭素環、又はこれらの組合せ、並びに1個以上の炭素原子が酸素(エーテル又はエステルを形成)及び/又は窒素(アミン又はアミドを形成)により置換されている、このような鎖又は環であってよい。
炭素鎖は、アルキレン基であることが一般に好ましいが、1個以上の二重又は三重結合を含む炭素鎖もまた、本発明の範囲に含まれる。また、1個以上の置換基(オキソ、ヒドロキシル、カルボン酸又はカルボキサミド基など)、及び/又は非置換若しくは置換アルキル、アルケニル若しくはアルキニル基から選択される、1個以上の側鎖若しくは分枝を持つ炭素鎖も含まれる。
好ましくは、Xは、C1−C30、更に好ましくはC1−C20、最も好ましくはC1−C15炭素鎖である。
好ましくは、Xは、(CH2n[ここで、nは、1〜20、更に好ましくは約1〜約15の整数である]である。
幾つかの特に好ましい実施態様において、結合基Xは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン又はデシレン基である。
1つの特に好ましい実施態様において、酸化防止剤残基Rは、キノンである。別の好ましい実施態様において、酸化防止剤R残基は、キノールである。キノン及び対応するキノールは、それぞれ還元及び酸化により相互に変換されるため、均等である。
他の実施態様において、酸化防止剤残基Rは、ビタミンE及びビタミンE誘導体、連鎖破壊型酸化防止剤(ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンを含む)、一般的ラジカルスカベンジャー(誘導体化フラーレンを含む)、スピントラップ剤(5,5−ジメチルピロリンN−オキシド、tert−ブチルニトロソベンゼン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン及び関連化合物の誘導体を含む)よりなる群から選択される。
更に別の好ましい実施態様において、酸化防止剤残基Rは、ビタミンE又はビタミンE誘導体である。
別の好ましい実施態様において、酸化防止剤残基Rは、ブチル化ヒドロキシアニソール又はブチル化ヒドロキシトルエンである。
更になお別の好ましい実施態様において、酸化防止剤残基Rは、誘導体化フラーレンを表す。
幾つかの特に好ましい実施態様において、酸化防止剤残基Rは、5,5−ジメチルピロリンN−オキシド、tert−ブチルニトロソベンゼン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン及びこれらの誘導体である。
好ましくは、Z-は、薬剤学的に許容しうるアニオンである。このような薬剤学的に許容しうるアニオンは、有機又は無機酸から形成される。適切な無機酸は、例えば、ハロゲン酸(塩酸、臭化水素酸など)、硫酸、又はリン酸である。適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸又はスルファミン酸であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸(グルタミン酸又はアスパラギン酸など)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、ケイ皮酸、アルカンスルホン酸(メタン−又はエタン−スルホン酸など)、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、アリールスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸又は2−、3−若しくは4−メチルベンゼンスルホン酸など)、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−若しくはN−プロピル−スルファミン酸、又は他の有機プロトン酸(アスコルビン酸など)である。
1つの好ましい実施態様において、Z-は、ハロゲン化物である。別の好ましい実施態様において、Z-は、臭化物である。
更に別の好ましい実施態様において、Z-は、アルカン−又はアリールスルホン酸のアニオンである。1つの特に好ましい実施態様において、Z-は、メタンスルホナートである。
別の特に好ましい実施態様において、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療及び予防に有用なミトコンドリアを標的とした酸化防止剤は、下記式:
[式中、Z-は、薬剤学的に許容しうるアニオン、好ましくはBr-である]を有する(その全ての立体異性体を含む)。この化合物は、本明細書において「ミト・ビタミンE(Mito Vit E)」と称される。
別の好ましい実施態様において、本発明の疾患の治療及び予防に有用なミトコンドリアを標的とした酸化防止剤は、一般式:
[式中、Z-は、薬剤学的に許容しうるアニオン、好ましくはハロゲンであり、mは、0〜3の整数であり、各Yは、電子供与性及び受容性を有する、基、鎖並びに脂肪族及び芳香族環から独立に選択され、(C)nは、場合により1個以上の二重又は三重結合を持ち、そして場合により1個以上の置換基及び/又は非置換若しくは置換アルキル、アルケニル若しくはアルキニル側鎖を含む、炭素鎖を表し、そしてnは、1〜20の整数である]を有する。
好ましくは、各Yは、アルコキシ、アルキルチオ、アルキル、ハロアルキル、ハロ、アミノ、ニトロ、場合により置換されたアリールよりなる群から独立に選択されるか、あるいはmが、2又は3であるとき、2個のY基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、アリール環に縮合した脂肪族又は芳香族の炭素環又は複素環を形成する。更に好ましくは、各Yは、メトキシ及びメチルから独立に選択される。
好ましくは、(C)nは、式:(CH2nのアルキル鎖である。
特に好ましい実施態様において、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤は、本明細書において「ミト・キノール(MitoQuinol)」と呼ばれる、下記式:
[式中、Z-は、薬剤学的に許容しうるアニオン、好ましくはBr-である]を有するか、あるいは本明細書において「ミト・キノン(MitoQuinone)」と呼ばれる、この化合物の酸化型(ここで、この式のヒドロキノンが、キノンである)である。種々の量のミト・キノールとミト・キノンとの混合物は、「ミトQ(MitoQ)」と呼ばれる。
更に好ましくは、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤は、下記式:
[式中、薬剤学的に許容しうるアニオンZ-は、メタンスルホナートである]を有する。この実施態様において、種々の量のミト・キノールとミト・キノンとの混合物は、「ミトS(MitoS)」と呼ばれる。
本発明の更に別の好ましい実施態様は、本明細書において「ミトPBN(MitoPBN)」と呼ばれる、下記式:
で示されるスピントラップ剤のフェニル−t−ブチルニトロンのミトコンドリアを標的とした誘導体に相当する。
本発明の別の実施態様において、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤は、有機セレン化合物(即ち、少なくとも1個のセレン原子を含む有機化合物)のような、グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質である。好ましい種類の有機セレン系グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質は、ベンゾイソセレナゾロン類、二セレン化ジアリール類及びセレン化ジアリール類を含む。
詳細には、このグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質残基は、本明細書において「エベルセン(Ebelsen)」(2−フェニル−ベンゾ[d]イソセレナゾール−3−オン)と呼ばれる、下記式:
で示される。
本発明の好ましい化合物は、下記式:
[式中、Z-は、薬剤学的に許容しうるアニオン、好ましくはBr-であり、そしてLは、単糖である]を有する。
本発明の1つの特に好ましい実施態様は、下記式:
[式中、Z-及び(C)nは、上記と同義であり、Wは、O、S又はNH、好ましくはO又はSであり、そしてnは、1〜20、更に好ましくは3〜6である]を有する。
更に別の側面において、本発明は、肝疾患及び/又は上皮性癌に罹患している患者の治療及び/又は予防に適した薬剤組成物であって、有効量の本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤を、1つ以上の薬剤学的に許容しうる担体又は希釈剤[例えば、生理食塩水、脱塩水、安定化剤(好ましくは1:2の比のβ−シクロデキストリンなど)、及び/又はプロテイナーゼ阻害剤など]と組合せて含むことを特徴とする組成物を提供する。
本明細書において使用されるとき「薬剤学的に許容しうる」という用語は、化合物、成分、材料、組成物、投与量、剤形などに関連し、そしてこれらは、健全な医学的判断の範囲内にあり、問題の対象(好ましくはヒト)の組織と、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなく接触させて使用するのに適しており、妥当な受益性/危険性比率に見合っている。各担体、希釈剤、賦形剤などもまた、処方の他の成分と適合性であるという意味で「許容しうる」ものでなくてはならない。
また更に別の側面において、本発明は、酸化ストレスの減少により恩恵を受けるであろう、肝疾患及び/又は上皮性癌に罹患している患者の治療又は予防の方法であって、該患者に上記と同義のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤を投与する工程を特徴とする方法を提供する。
本発明の意味の範囲内で「治療」という用語は、好ましくは患者を本発明の少なくとも1つの障害から治癒させるか、かつ/又はその障害に関連する1つ以上の症候に関して患者の病態を、一過性に、短期に(数時間〜数日間の程度で)、長期に(数週間、数ヶ月又は数年間の程度で)、又は永久に改善する(ここで、病態の改善とは、全般的な効果が、対照患者に比較して症候の有意な改善であるかぎり、大きさは、一定の、増大する、減少する、連続的に変化又は振動するものであってよい)治療を意味する。
更に、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療との関連で本明細書において使用されるとき「治療」という用語は、一般に、ある所望の治療効果(例えば、症状の進行の阻害)が達成される、ヒト又は動物(例えば、獣医学的適用において)の治療及び療法に関連し、そして進行の速度の低下、進行の速度の停止、症状の改善、及び症状の治癒を含む。
本発明の「治療」という用語は、2つ以上の治療又は療法が、例えば、順次又は同時に組合せられる、併用治療及び療法を含む。予防的手段としての治療(即ち、予防)もまた含まれる。
本発明の治療は、当業者には一般に知られている従来法で、例えば、本発明の薬剤組成物の経口適用を利用して、又は静脈内注射を介して行うことができる。
治療効果及び毒性、例えば、ED50及びLD50は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬理学的手順により決定することができる。治療効果及び毒性効果の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比により表すことができる。大きな治療指数を示す薬剤組成物が好ましい。用量は、治療される個々の患者の年齢、体重及び症状、並びに投与の経路、投与剤形及び処方計画、及び望まれる結果に対して調整する必要があり、そして当然ながら正確な用量は、担当医が決定すべきである。
実際の用量は、治療される障害の性質と重篤度に依存し、そして医者の裁量の範囲内であり、そして望まれる治療効果を生み出すために、本発明の特定の状況に対する用量の滴定により変化させることができる。しかし、現在のところ、個々の用量当たり約0.1〜500mg/kg、好ましくは約0.1〜100mg/kg、最も好ましくは約0.1〜10mg/kgの活性成分からなる薬剤組成物が、治療処置に適している。
一般に、本発明の活性化合物の適切な用量は、処置される対象の体重1キログラム当たり約0.1mg〜約250mg/日の範囲である。
活性成分は、1日に1回又は数回の用量として投与することができる。満足できる結果は、場合によっては、わずか0.1mg/kg静脈内(i.v.)及び1mg/kg経口(p.o.)という用量で得ることができる。好ましい範囲は、0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日i.v.及び1mg/kg/日〜約100mg/kg/日p.o.である。
更に本発明は、活性化合物を適切な薬剤担体と共に混合又は溶解する先行技術において知られている標準法を用いる、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療及び/又は予防に有用な本発明の酸化防止剤化合物を含む医薬の製造に関する。このような方法は、活性化合物を、1種以上の副成分を含むことを特徴とする担体と一緒にする工程を含む。一般に、本発明の処方は、活性化合物を担体(例えば、液体担体、微粉化固体担体)と均質かつ密接に合わせて、次に必要であれば製品に成形することによって調製される。本発明において使用される適切な担体、希釈剤及び賦形剤は、標準的な製剤の教科書に見い出すことができる(例えば、Handbook for Pharmaceutical Additives, 2001, 第2版, M. AshとI. Ash編を参照のこと)。
本発明の酸化防止剤化合物、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質は、例えば、US 6,331,532、WO 99/26954、WO 2004/014927又はWO 2003/016323に記載されるこのような化合物の既知の製造方法のいずれかにより合成することができる。
本発明の組成物、方法及び製造法に、種々の改変を加えうることは、当業者には明らかであろう。よって、そのような改変及び変法が、添付された請求の範囲及びその均等物の範囲に入ってくるならば、本発明は、それらを対象とすることが意図されている。本明細書に引用された全ての刊行物は、引用例としてその全体が取り込まれる。
本発明の肝疾患の治療及び/又は予防において、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質の影響を実質的に評価するために、門脈付近の炎症細胞のような形態学的変性(Glisson's trias)の存在及び肝細胞損傷の程度(壊死、細胞骨格の虚脱(実施例3、図1)[特に限定されないが、肝細胞の膨張、濃厚化ケラチン中間径フィラメント(IF)ネットワークの形成、ケラチンIFの密度の低下、及びマロリー小体(MB)の存在(種々の遺伝性及び後天性肝疾患における最も高頻度のIF関連細胞骨格変性の1つを表す)を含む]を、これらの酸化防止剤での治療を伴うか、又は伴わずに評価する(実施例2及び3)。
MBを含む形態学的変性は、静真菌性抗微小管薬物のグリセオフルビン(GF)又はポルフィリン生成剤(porphyrogenic agent)の3,5−ジエトキシカルボニル−1,4−ジヒドロコリジン(DDC)での慢性中毒によりマウスで再現することができる(Denk H.ら, 1975, Lab. Invest.: 773-776;Tsunoo C.ら, 1987, J. Hepatol., 5: 85-97)。MB形成は、マウス肝において、DDC−又はGF含有飼料を給餌することにより誘導することができる(実施例1を参照のこと)。メチルラジカルにより誘導される酸化傷害は、DDC−又はGF給餌動物とASH又はNASHのヒト肝臓における共通の病理発生原理であると推測されるが、ここでは、エタノールのチトクロムP450介在性酸化により産生するフリーラジカル、更にはアセトアルデヒド及び遊離脂肪酸過負荷により引き起こされるミトコンドリア傷害が中心的な特色である(Lieber C.S., 2000, J. Hepatol., 32: 113-128;Anguilo P., 2002, N Engl. J. Med., 346: 1221-1231)。
更に、DDC−又はGF給餌マウスにおけるIFケラチン細胞骨格並びにMBの構造及び化学組成の変性が、ヒトASH及びNASHにおいて見られる変性と全く同一ではないにしても、非常に類似していることは、広く受け容れられている(Denk H.ら, 2000, J. Hepatol., 32: 689-702)。これに関連して、アルコール含有飼料の給餌に基づくアルコール性肝疾患の他のマウスモデルが、ヒトASHの脂肪代謝の妨害、及びある程度の炎症を再現するが、ケラチンIF細胞骨格の変性は再現せず、またMB形成にも至らないことは注目に値する。
1つの型の実験(実施例2)において、典型的には核周辺細胞質領域に局在する大MBの出現は、日常的な免疫組織化学法(ヘマトキシリン及びエオシン染色など)又は標準的な免疫蛍光顕微鏡法(例えば、p62タンパク質に対する抗体SMI31による)を用いて、試験マウスでは中毒の6〜10週目に検出される(Zatloukal K.ら, 2002, Am J Pathol. 160(1): 255-63)。p62は、初めはp56lckのSH2ドメインのホスホチロシン非依存性リガンドとして、及び細胞質非プロテアソームユビキチン結合タンパク質として同定された(Vadlamudi R.K.ら, 1996, J. Biol. Chem., 271: 20235-20237)。p62発現は、種々のストレス刺激、特に酸化ストレスにより増大するため、細胞ストレス応答におけるp62の一般的な役割が暗示されている(Ishii T.ら, 1996, Biochem Biophys. Res Comm., 226: 456-460)。
中毒からの回復の4週目には、細胞質ケラチンフィラメントを欠いているが、なお細胞周辺にデスモソームに付随してMBの小残留物を含む、肝細胞の群が存在する。マウスをGF又はDDCに再曝露するならば、多数のMBが24〜72時間以内に再出現する(Stumptner C.ら, 2001, J. Hepatol., 34: 665-675)。再中毒によるこのMBの形成増強は、アレルギー反応と同様に、毒性記憶効果と解釈された。
DDC−又はGF中毒マウス肝臓の初期段階における形態学的変性の回帰に及ぼす本発明の酸化防止剤の影響を評価するために、陽性対照群の動物(GF又はDDCのみに3〜7日間曝露)を、更に3〜7日間、例えば、それぞれ、ミトQ(ミト・キノール[10−(3,6−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシ−2−メチルフェニル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミドとミト・キノン[10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミドとの混合物)又はミト・ビタミンE[2−(3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)エチル]−トリフェニルホスホニウムブロミドで処置したDDC−又はGF中毒マウスと比較する。試験したマウスには、本発明の酸化防止剤化合物、例えば、ミトQ又はミト・ビタミンEを含む、腹腔内(i.p.)又は静脈内(i.v.)(尾静脈)注射を行い、そしてこれらのマウスをビヒクル注射対照マウス(酸化防止剤の溶解性を維持するのに充分なDMSOを補足したPBS)及び他の適切な対照マウスと比較する(実施例3)。
更に、ミトQ、若しくはミトS(ミト・キノール[10−(3,6−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシ−2−メチルフェニル)デシル]トリフェニルホスホニウム・メタンスルホナートとミト・キノン[10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)デシル]トリフェニルホスホニウム・メタンスルホナートとの混合物)のようなミトQ誘導体、又はミト・ビタミンEを飼料に補足する。用量は、水又は液体飼料の消費量及びマウスの体重を計測することにより求める(Smith R.A.J.ら, 2003, PNAS, 100(9): 5407-5412)。
更に別の型の実験では、DDC−又はGF中毒動物の群を同時に本発明の酸化防止剤(例えば、ミトQ又はミトS)で3〜7日間処置し、次に3〜7日間DDC又はGFのみに曝露した対照群と比較する(実施例3)。
別のセットの実験では、3〜12mg/kgのミトQを、DDC中毒マウスに3日間同時に腹腔内投与して、対照動物と比較する。これらの短期実験において本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤(例えば、ミトQ又はミトS)の影響を実際的に評価するために、門脈付近の炎症細胞の存在(又は非存在)(Glisson's trias)及び肝細胞損傷の程度[細胞膨張及び/又はマロリー小体分析(それぞれDDC又はGFへの長期曝露に典型的)の代わりに壊死、細胞骨格の虚脱(図2及び3を参照のこと)など]を適切な対照と比較する(図1〜3)。細胞膨張及びマロリー小体は両方とも、この短期のDDCへの曝露では統計的評価ができる程には形成されないため、これらの実験には適していない。
全体的に見て、ミトQ処置下では、類洞に縁取られた肝細胞の索により表される正常な構造が再び現れる。肝細胞の形態は、核のサイズと形態及び細胞質の構造に関して正常である。更に、炎症細胞(例えば、好中球、リンパ球、食細胞、マクロファージ)の数は、本発明の酸化防止剤での処置により著しく減少する(図1〜3)。
DDCで8〜10週間中毒にしたマウスを用いる長期実験では、処置動物の肝臓試料における細胞膨張及び/又はマロリー小体(MB)の存在(又は非存在)を求めて、対照群の動物と比較する(実施例3、図4〜6)。
10週間のそれぞれDDC又はGFでの中毒による、慢性肝代謝疾患及び上皮性癌の治療及び/又は予防における、これらの酸化防止剤の効果を求めるために、試験マウスに、本発明の酸化防止剤化合物(例えば、ミトQ、ミトS又はミト・ビタミンE)を含むi.p.又はi.v.(尾静脈)注射を続く7日間投与して、ビヒクル注射対照マウス及び他の適切な対照と比較する(実施例3を参照のこと)。
あるいは、DDC中毒の10週間後、試験動物にミトQ(1.25mg/kg)のi.p.注射を続く7日以内に2回(相当する週の1日目及び4日目)投与して、日常的な組織学法(Luna L.G., 1968, 軍病理学研究所の組織染色方法のマニュアル(Manual of Histologic staining methods of the Armed Forces Institute of Pathology), 第3版, マグロー・ヒル(McGraw Hill), ニューヨークによる標準的ヘマトキシリン/エオシン染色)により分析する。細胞膨張の程度及びマロリー小体の数は、適切な対照と比較すると、DDCで中毒にしたミトQ処置動物において大きく減少している(実施例3、図4〜6を参照のこと)。
更に別のセットの実験では、DDC又はGFで8〜10週間中毒にしたマウスに、続く7〜14日間ミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEをその飲料水中で摂取させる(実施例3)。
幾つかの他の実験では、本発明の酸化防止剤をマウスに適用して(6週間のDDC−又はGF中毒と、続く4週間の、それぞれ最大耐量の10〜50%のミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEを用いることによる、ミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEでの同時処置)、10週間DCC又はGFのみで中毒にした対照群の動物と比較する(実施例3を参照のこと)。
別のセットの実験では、DDC又はGFで10週間中毒のマウスを、続いて4週間回復させる。この実験では、毒性記憶効果(24〜72時間のDDC又はGF中毒への再曝露の結果として)が、本発明の酸化防止剤での同時処置により減少するか又は無くなる。
本発明の肝障害における酸化防止剤の予防効果を評価するために、DDC−又はGF給餌マウスの1群に、例えば、それぞれ最大耐量の10〜50%のミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEでの同時処置を行い、次に10週間DDC又はGFのみに曝露された対照動物の群と比較する(実施例3)。
あるいは、4週間の初期回復期間内に、例えば、ミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEの投与を行い、続いて24〜74時間DDC又はGFで中毒にし、そして次に処置マウスを、2.5ヶ月のDDC−又はGF曝露後に酸化防止剤により処置していない対照動物と比較する。
酸化防止剤、例えば、補酵素Q、ビタミンEの誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質の適用により、DDC−又はGF中毒動物の肝臓内の形態学的異常、例えば、肝細胞膨張、異常折り畳み構造のタンパク質の細胞内封入及びMBの有意な減少が得られる。これらの結果(実施例3、図1〜6)は、この細胞損傷が、本発明の酸化防止剤化合物のミトコンドリア標的化により軽減されることを証明している。DDC−又はGF中毒マウスモデルは、例えば、NASH又はASHに罹患している患者で行われる観察結果に似ており、本発明の疾患の治療又は予防における酸化防止剤、例えば、補酵素Q10及びビタミンEの誘導体の役割を研究するための強力なインビボ及びインビトロ系を提供する。
これらのミトコンドリアを標的とした酸化防止剤による本発明の肝障害のヒト患者の治療及び/又は予防は、肝臓病変を有意に縮小し、それによってこれらの障害用の処置として治療的及び/又は予防的効果を提供する。
対照対DDC中毒マウス(本発明の酸化防止剤を使用することによる処置を伴うか、又は伴わない)における酸化ストレスを評価するために、単離肝ミトコンドリア(全ての試験動物群は、実施例3のプロトコールにより調製)中のトコフェロールキノン(TQ)含量(Gille L.ら, 2004, Biochemic. Pharmacology, 68: 373-381)を測定する。マウス肝ミトコンドリアは、Staniek K.とNohl H., 1999, Biochem. et Biophys. Acta, 1413: 70-80;Mela L.とSietz S., 1979, Methods in Enzymology, アカデミック・プレス社(Academic Press Inc.): 39-46からの改良プロトコールにより調製して、TQ含量は、タンパク質及びチトクロム濃度、並びに複合体I(NADHデヒドロゲナーゼ)、複合体II(コハク酸デヒドロゲナーゼ)、複合体III(チトクロムbc1)及び複合体IV(チトクロムオキシダーゼ)の活性試験を含む幾つかのパラメーターに対して標準化する。全体的に見て、これらの実験は、対照及びミトQで処置したマウスに比較すると、DDC中毒マウスにおけるTQレベルの上昇を示している(実施例4)。
酸化ストレス誘導タンパク質を評価するための更に別の実験設定では、短時間曝露で同時にミトQで処置した(3日間、実施例5)DDC中毒マウスに由来する抽出物を用いることにより、ヘムオキシゲナーゼ(HO−1)発現レベルのウェスタンブロット分析を利用する。HO−1のDDC誘導過剰発現(反応性酸素種(ROS)により誘導されることが知られている、Suematsu M.とIshimura Y., 2000, Hepatology, 31(1): 3-6)の著しい減少は、本発明の酸化防止剤により肝臓の酸化ストレスが大きく減少することを示唆している(実施例5、図7)。
更には、肝細胞損傷の高感度マーカーに相当する脂肪酸結合タンパク質(FABP)のタンパク質発現レベル(Monbaliu D.ら, 2005, Transplant Proc., 37(1): 413-416)は、対照群に比較すると、DDC中毒マウスのFABPタンパク質の有意な低下を示している。この群の動物のミトQ処置下で、FABPタンパク質発現は、ほぼ対照マウスFABP発現値に到達するが、これは再び本発明の疾患の治療又は予防におけるミトQの効果を示唆している(実施例5)。
DDC−又はGF中毒対対照マウスにおける本発明の酸化防止剤の効果を調査するための別の実験設定では、肝特異的酵素の血清レベルを、例えば、アクチテスト(Actitest)(バイオプレディクティブ(Biopredictive)、ウイユ(Houilles)、フランス)で、肝損傷及び特に線維症(本発明の幾つかの疾患に特徴的である)の尺度を提供するものとしてモニターする(実施例6を参照のこと)。例えば、a2−マクログロブリン、ハプトグロビン、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、総ビリルビン、アポリポプロテインA1及びアラニンアミノトランスフェラーゼの血清レベルは、DDC−又はGF処置、対照、及びミトコンドリアを標的とした酸化防止剤にも曝露した対応するDDC−又はGF処置動物から、Poynardら, 2003, Hepatology 38: 481-492に記載される方法を用いて、実施例3の一般的な時間軸方策により測定する。
肝損傷、特に線維症の尺度としてヒト血清でも行われるアクチテストは、本発明の酸化防止剤でのこれらの疾患の患者の治療の効果をモニターするために同様に利用する。
あるいは、種々の試験動物群からの血清において、肝損傷を示す以下のパラメーター、即ち、ビリルビン、アラニン−アミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT/GOT)及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)を、市販のキットを利用して臨床診断の標準プロトコールにより測定する(実施例6)。本発明の化合物で処置した動物の血清肝酵素(例えば、アラニン−及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなど、図8を参照のこと)の減少は、このような処置試料における肝損傷の減少を示しており、そして本発明の疾患におけるこれらの化合物の治療効果を支持する。
反応性酸素種(ROS)の産生を評価するために、例えば、標準プロトコール(Brandes RPら, Free Radic Biol Med. 2002; 32(11): 1116-1122)により、対照及びDDC−又はGF中毒動物から調製される肝切片(例えば、凍結切片)のジヒドロエチジウム(DHE)染色を利用することができる。このアプローチにより、DDC−又はGF中毒動物の肝臓におけるインビボのROS産生の誘導を証明することができるが、これは本発明の疾患に罹患している患者で行われる観察結果に似ている(実施例7)。DDC−又はGF給餌マウスにおけるROS形成を評価するための他の可能性は、例えば、ルシゲニン化学ルミネセンスアッセイを含む(Goerlach A.ら, 2000, Circ Res., 87(1): 26-32)。
この実験設定は、本発明の標的化酸化防止剤で処置したDDC−又はGF−給餌動物に更に適用される(実施例6)。試験動物のDDC−又はGF中毒及びその酸化防止剤での処置に関する、時間軸及び処方計画の一般的方策は、実施例3のDDC−又はGF中毒動物の肝臓内の形態学的異常、例えば、異常折り畳み構造のタンパク質の細胞内封入及びMBの測定のために使用された実験的アプローチと同一である。
実施例7の一般的プロトコールを用いる、酸化防止剤、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質の適用は、ROS形成の有意な減少を提供し、そして本発明の肝障害における治療的有用性を有する(実施例8)。
場合により、ヘパトーマ細胞株(例えば、HepG2又はHep3B)、肝細胞癌に由来するSNU−398細胞株(ATCC番号CRL−2233、LGCプロモケム(LGC Promochem)、ドイツ)、HUH−7ヒト癌細胞(JCRB細胞バンク(Japanese Collection of Research Bioresources)、JCRB 0403)又はTib−73マウス胎生細胞株(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、ATCC TIB 73=BAL/cマウス由来のBNL CL2、メリーランド州、米国)を利用するインビトロ実験により、DDC中毒による肝細胞中のROS産生が測定できる(実施例9)。グルタチオン合成阻害剤のL−ブチオニン−(S,R)−スルホキシミン(BSO)は、内因性酸化ストレスを上昇させるための代替物として適用することができる(Kito M.ら, 2002, Biochem Biophys Res Commun., 291(4): 861-867)。
CoCl2がミトコンドリアに影響を及ぼすことが最近証明されている(Jung JYとKim WJ., 2004, Neurosci Lett., 371: 85-90)ので、分化した細胞株におけるROS産生を測定するために、HepG2(ATCC番号HB−8065、メリーランド州、米国)を代わりに100μM CoCl2(シグマ(Sigma))によって刺激することができる(Bel Aiba RSら, 2004, Biol. Chem. 385: 249-57)。
培養細胞で(並びに単離細胞小器官又は全組織中で)充分に確立した別のアプローチは、Chem Biol Interact. 2000 Jul 14; 127(3): 201-217にしたがいアンチマイシンA(Antimycin A)により(図10)、又はルシゲニン化学ルミネセンスアッセイを用いてロテノンにより(Goerlach A.ら, 2000, Circ Res., 87(1): 26-32)誘導されるROS産生の測定を可能にする。
DDC(濃度=50μg/ml培地)、BSO(100μM以下)、又はアンチマイシンA(又はロテノン)で、あるいはCoCl2(100μM)で3日間中毒にした肝細胞培養物により、インビトロのROS産生の誘導が証明されたため、これらは、本発明の疾患に罹患している患者で行われる観察結果に似ている別の適切なモデルを提供している。
実施例9の標準プロトコールを利用することにより、DDC、BSO、アンチマイシンA(又はロテノン)又はCoCl2(100μM)で中毒にし、そして同時にそれぞれミトQ又はミト・ビタミンE[ミトQではEC50=0.51nM及びミト・ビタミンEではEC50=416nMに相当する濃度(Jauslin M.L.ら, 2003, FASEB J., (13): 1972-4による)又は後者の場合には0.5〜10μMの範囲の濃度]で処置した分化した細胞株(例えば、ヘパトーマ細胞)は、ROS形成の有意な減少を提供し、そして本発明の肝障害におけるミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の治療的有用性を更に裏付けている(図9、実施例10を参照のこと)。
MBはまた、原発性胆汁性肝硬変及び原発性硬化性胆管炎のような慢性胆汁うっ滞においても見い出される。慢性胆汁うっ滞症状の治療及び/又は予防における本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の効果を測定するために、DDC−又はGF中毒マウスに関して上述の治療パラダイム(実施例3)にしたがう。回復した薬物処理動物は、一般的な胆管結紮(CBDL)又はコール酸(CA)補足飼料の給餌に7日間以内(Fickert P.ら, 2002, Am. J. of Pathology, 161(6): 2019-2026)それぞれミトQ及びミト・ビタミンEを伴うか又は伴わずに付して、適切な対照群と比較する。
肝線維症及び肝硬変の治療及び/又は予防におけるミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の効果を測定するための一般的な方策は、本発明の酸化防止剤で処理した、マウス又はラットモデルにおける四塩化炭素(CCl4)誘導肝損傷(Arias I.M.ら, 1982, The Liver Biology and Pathobiology, レイブン・プレス(Raven Press), ニューヨーク)を利用する。
例えば、DDC−又はGF中毒マウスについて上述の治療パラダイムにしたがい、上皮性癌の治療及び/又は予防における本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の効果を測定するために、代わりにヒト上皮細胞癌異種移植片をもつ免疫不全状態のマウスを利用する(ヌードマウス腫瘍異種移植片、例えば、チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles Rivers Laboratories)(米国)のCD1 ν/νマウスなど)。先行技術において知られている標準法(Li K.ら, 2003, Cancer Res., 63(13): 3593-3597)により皮下に異種移植される腫瘍は、特に限定されないが、結腸腺癌、浸潤性乳管癌、小細胞及び非小細胞肺癌、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍及び胃腫瘍を含む。
このようなマウスの処置は、腫瘍の増殖の縮小、腫瘍の壊死の増大及び腫瘍異種移植片の脈管化の減少を立証する。同様に、ヌードマウス腫瘍異種移植片におけるROSのレベルを上述のようにモニターすると、本発明の酸化防止剤で処置した異種移植片腫瘍では減少する(実施例11)。
肝障害並びに肝臓及び他の上皮性癌の治療又は予防の技術の現状に比較すると、本発明の処置の方法は、驚くべきことに、改善され、持続性でかつより効果的な治療法を提供する。
本発明は、本発明の好ましい実施態様及び特色を表す図と実施例を活用して(本発明をこれらに制限することなく)以下に更に説明される。
実施例
実施例1: マロリー小体(MB)の実験的誘導
MBは、種々のマウス系統:例えば、オスのスイスアルビノ(Swiss Albino)マウス:Him OF1 SPF系(実験動物研究所(Institute of Laboratory Animal Research)、ウィーン大学(University of Vienna)、ヒンベルク(Himberg)、オーストリア)の、3,5−ジエトキシカルボニル−1,4−ジヒドロコリジン(1,4−ジヒドロ−2,4,6−トリメチルピリジン−3,5−二炭酸ジエチルエステル、DDC、カタログ番号13703−0、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、シュタインハイム、ドイツ)又はグリセオフルビン(GF、カタログ番号85,644−4、シグマ・アルドリッチ)での慢性中毒によりマウス肝臓において誘導することができる。
2.5% GF又は0.1% DDCを含む標準飼料(スニッフ特殊飼料社(Sniff Spezialdiaeten GmbH)、ゾースト(Soest)、ドイツ)は、スニッフ社によりペレットとして製造される。
動物は、12時間の昼夜サイクルで、従来のケージ、又は無菌アイソレーターで飼う。動物は、全米科学アカデミー(National Academy of Sciences)により作成され、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により公表(NIH発表86−23、1985年改訂)された「実験動物の世話及び使用に関するガイド(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)」に概略が述べられる基準により動物愛護に沿う世話を受ける。
マウス(8週齢)に、0.1% DDC又は2.5% GFのいずれかを含む標準飼料を最大2.5ヶ月間給餌する。
マウス肝臓は、DDC−又はGF中毒に反応して、最初は肝細胞の膨張及び濃厚化ケラチンIFネットワークの形成が起こる。約6週間の中毒後、膨張肝細胞は、ケラチンIFの密度の低下を示し、初期MBが、ケラチンIFネットワークに結合した微細な粒子として観察できる。中毒を続けると、典型的には核周辺細胞質領域に局在する大MBの出現に至る。大MBを含む多くの肝細胞は、細胞質IFケラチンネットワークが著しく減少しているか、又は検出できないことさえある。中毒を停止すると、MBは数週間以内に消失する。中毒からの回復の4週目には、細胞質ケラチンフィラメントを欠いているが、なお細胞周辺にデスモソームに付随してMBの小残留物を含む、肝細胞の群が存在する。このようなマウスをDDC又はGFに再曝露するならば、多数のMBが24〜72時間以内に再出現する(Stumptner C.ら, 2001, J. Hepatol., 34: 665-675)。再中毒によるこのMBの形成増強は、アレルギー反応と同様に、毒性記憶効果と解釈された。
中毒の様々な時点で頸椎脱臼によりマウスを殺処分して、肝臓は、免疫蛍光法のために液体窒素で前もって冷却したメチルブタン中で直ちに瞬間凍結するか、又は日常的な組織学及び免疫組織化学法のための4%緩衝ホルムアルデヒド液中に固定する。
実施例2: 肝臓変性の評価;マロリー小体(MB)の検出。
実施例1により調製した肝臓試料を、ヘマトキシリン及びエオシンによるような簡易な組織染色のために使用する(Luna L.G., 1968, 軍病理学研究所の組織染色方法のマニュアル(Manual of Histologic staining methods of the Armed Forces Institute of Pathology), 第3版, マグロー・ヒル(McGraw Hill), ニューヨーク)。更には、単一標識免疫組織化学又は二重標識免疫蛍光顕微鏡法が、試験動物においてMBを検出するために行われる。
A) パラフィン包埋切片の単一標識免疫組織化学法:切片(4μm厚)をキシレン中で脱パラフィンして、段階的エタノール(100%、90%、80%、70%、50%エタノール)及びPBS(50mMリン酸カリウム、150mM NaCl、pH8.0〜8.5)に再水和する。抗原回復のために、再水和切片を0.1% XXIV型プロテアーゼ(シグマ、シュタインハイム、ドイツ)と共に10分間室温で(ユビキチン・ダコ(ubiquitin Dako)一次抗体について)、又は750Wのマイクロウェーブ(出力調節付きの従来の家庭用電子レンジ)で10分間10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で(ポリクローナルK8/18抗体50K160、モノクローナルK8抗体K8.8[ネオマーカーズ(Neomarkers)]、モノクローナルK18抗体DC−10[ネオマーカーズ]及びp62CT[p62のC末端ペプチド配列に対するポリクローナルモルモット抗体;Zatloukal K.ら, 2002, Am. J. Pathol., 160:255-263]について)インキュベートする。PBS中で洗浄後、内因性ペルオキシダーゼを、メタノール中の1% H22(メルク(Merck))中で10分間インキュベートすることによりブロックして、次いでPBS中で洗浄する。次の工程において、切片は、一次抗体と共に加湿チャンバー(ヌンク(Nunc))中で室温で60分間インキュベートして、PBSで3回洗浄する。次に切片は、PBS中に1:100希釈した、マルチ・リンク・ブタ抗ヤギ、マウス、ウサギ(Multi Link Swine anti-Goat, Mouse, Rabbit)イムノグロブリン(ダコ(Dako))と共に室温で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄して、ストレプトアビジン(Streptavidin)・ビオチン・西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体ABC/HRP(ダコ;SolA 1:100及びSolB 1:100 PBS中)と共に30分間インキュベートする。あるいは、PBS中に1:100希釈したペルオキシダーゼ結合ウサギ抗モルモットイムノグロブリン二次抗体(ダコ)と共に30分間インキュベートを実施し、続いてPBSで3回洗浄する。次に、増幅希釈液中の1:50ビオチニルチラミド溶液(TSA(登録商標)ビオチン・システム(TSATM Biotin System)、NEN、ボストン、マサチューセッツ州、米国)を5分間適用することによりチラミド増幅を実施し、PBSで3回洗浄し、続いてストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ溶液(PBS中1:100)と共に30分間インキュベートする。
p62CT抗体結合は、TSA(登録商標)ビオチン・システムを用いて検出する。ユビキチン及びK8/18抗体の反応性は、ABC複合体(ABComplex)システム(ダコ)を用いて検出し、水道水で濯ぎ、続いてマウント剤のアクアテックス(Aquatex)(登録商標)(メルク)でカバースリップの切片に適用する。
発色には、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC、ダコ)と共に5分間インキュベートを実施し、続いてPBS中で3回洗浄して、マイア(Mayr)のヘマローン(haemalaun)で対比染色し、次に水道水で濯いで、アクアテックス(登録商標)(メルク)でカバースリップをマウントする。
B) 凍結切片の二重標識免疫蛍光顕微鏡法:凍結切片(3μm厚)は、クリオカット(Cryocut)(ライカ(Leica)CM3050、ライカ、ヌスロッホ(Nussloch)、ドイツ)を用いて切り出し、空気乾燥して、アセトン中に−20℃で10分間固定する。あるいは(特に核構造の保存が必要であるならば)、切片は、PBS緩衝化4%ホルムアルデヒド中に室温で15分間固定し、続いて−20℃で5分間アセトン固定する。切片は、固定後空気乾燥するか、PBS中で濯ぐ。
次に、第1の一次抗体p62CT(p62のC末端ペプチド配列に対するポリクローナルモルモット抗体(Zatloukal K.ら, Am. J. Pathol., 2002, 160: 255-263))、K8(Ks8.7、プロジェン(Progen)、ハイデルベルク、ドイツ)、K18(Ks18.04、プロジェン)、K8/18(50K160)、及びユビキチン(ID研究所(ID Labs Inc.)、ロンドン、オンタリオ州、カナダ)に対する抗体を、湿ったチャンバー(バイオアッセイ(Bioassay)プレート、ヌンク、ロシルデ(Roshilde)、デンマーク)中で室温で30分間適用する。あるいは、抗体を4℃で一晩適用し、続いてPBSで5分間3回洗浄する。
次の工程では、第1の二次抗体を、加湿チャンバー中で遮光下で室温で30分間適用し、続いてPBSで5分間3回洗浄する。第2の一次抗体を湿ったチャンバー中で遮光下で室温で30分間適用し、続いて再びPBSで5分間3回洗浄する。更に、第2の二次抗体の適用を湿ったチャンバー中で遮光下で室温で30分間実施し、続いて再びPBSで5分間3回洗浄する。最後の抗体インキュベーション後、スライドを蒸留水、次にエタノールで数秒間濯いで空気乾燥する。
使用される二次抗体は、例えば、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)結合ヤギ抗マウスIgG(ザイメド(Zymed)、サンフランシスコ、カリフォルニア州、米国)又はアレクサ(Alexa)488nm結合ヤギ抗マウスIgG(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、ライデン、オランダ)及びテトラメチルローダミンイソチオシアナート(TRITC)、又はFITC結合ブタ抗ウサギIg(ダコ、グロストルップ(Glostrup)、デンマーク)及びTRITC結合ウサギ抗モルモットIg(ダコ)である。
最後に標本は、モヴィオール(Mowiol)(17%モヴィオール4−88[カルビオケム(Calbiochem)、番号475904]、34%グリセロール、PBS中)又は他の市販のマウント剤でマウントする。
全ての抗体は、PBS中に希釈して、逐次インキュベーションに別々に適用する。蛍光色素結合抗体は、16,000×gで5分間遠心分離することにより、スライドへの適用の前に凝集体を除去する。陰性対照には、第1の抗体を、それぞれ、PBS、免疫前血清又はアイソタイプ適合イムノグロブリンにより置換する。
免疫蛍光標本は、レーザー走査顕微鏡(LSM510レーザー走査顕微鏡、ツァイス(Zeiss)、オーバーコッヘン(Oberkochen)、ドイツ)で分析する。共局在化分析(デュアル標識化)のために、マルチトラック方式を用いてイメージを取得する。まとめられた画像は、共局在化の部位で黄色を含む緑色/赤色疑似カラーとして現れる。スライドは、遮光して+4℃で貯蔵する。
実施例3: 肝臓病変に及ぼす本発明の酸化防止剤の効果。
DDC−又はGF中毒マウス肝臓の初期段階における形態学的変性の回帰に及ぼす本発明の酸化防止剤の影響を評価するために、陽性対照群の動物(DDC又はGFのみに3〜7日間曝露)を、それぞれ、ミトQ(ミト・キノール[10−(3,6−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシ−2−メチルフェニル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミドとミト・キノン[10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミドとの混合物)(キー・オーガニクス社(Key Organics Ltd)、ロンドン、英国により提供)、又はミト・ビタミンE[2−(3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)エチル]−トリフェニルホスホニウムブロミド(キー・オーガニクス社、ロンドン、英国により提供)で更に3〜7日間処置したDDC−又はGF中毒マウスと比較する。
注射には、ミトQ又はミト・ビタミンEを、酸化防止剤の溶解性を維持するのに充分なDMSO(好ましくは1%)を補足したPBSに溶解する。腹腔内又はi.v.(尾静脈)注射をマウスの対に与えて、ビヒクル注射対照と比較する。これらは、Smith R.A.J.ら, 2003, PNAS, 100(9): 5407-5412による20mgのミトQ/kg/日(750nmol)及び6mgのミト・ビタミンE/kg/日(300nmol)の最大耐量に相当する。
ミトQ、若しくはミトS(ミト・キノール[10−(3,6−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシ−2−メチルフェニル)デシル]トリフェニルホスホニウム・メタンスルホナートとミト・キノン[10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)デシル]トリフェニルホスホニウム・メタンスルホナートとの混合物)のようなミトQ誘導体、又はミト・ビタミンEを飼料に補足する。用量は、水又は液体飼料の消費量及びマウスの体重を計測することにより求める。マウスには、その飲料水に入れて3〜7日間、肉眼的な何の中毒の徴候もなしに、500μM若しくは1mMのミトQ若しくはミトS(それぞれ、232μmol/kg/日又は346μmol/kg/日の最大耐量、500μM及び1mM飼料についての154及び230mg/kg/日に相当)、又は500μMミト・ビタミンE(60mgのミト・ビタミンE/kg/日に相当する105μmol/kg/日の最大耐量)を摂取させる(Smith R.A.J.ら, 2003, PNAS, 100(9): 5407-5412による)。
更に別の試験では、DDC−又はGF中毒動物の群を同時にミトQ(ミトS)又はミト・ビタミンEで3〜7日間処置して、DDC又はGFのみに3〜7日間曝露した対照群と比較する。
別のセットの実験では、PBS中の1%のDMSOに溶解した3〜12mg/kgのミトQをDDC中毒マウスに3日間同時に腹腔内投与して、対照動物と比較する(陽性対照群は、DDC中毒マウスに相当し、一方陰性対照は、非DDC中毒であるがビヒクル注射動物に相当する)。
これらの短期実験において、本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤(例えば、ミトQ又はミトS)の影響を実際的に評価するために、細胞膨張及び/又はマロリー小体分析(典型的にはそれぞれDDC又はGFに長期曝露)の代わりに、門脈周辺の炎症細胞(Grisson's Trias)の存在(又は非存在)、及び壊死、細胞骨格の虚脱のような肝細胞損傷の程度(図2及び3を参照のこと)を陽性対照と比較する。細胞膨張及びマロリー小体は両方とも、この短期のDDCへの曝露では統計的評価ができる程に形成されないという事実により、これらの実験には相応しくない。
全体的に見て、ミトQ処置下では、類洞に縁取られた肝細胞の索により表される正常な構造が再び現れる。肝細胞の形態は、核のサイズと形態及び細胞質の構造に関して正常である。更に、炎症細胞(例えば、好中球、リンパ球)の数は、本発明の酸化防止剤での処置により著しく減少する。
DDCで中毒にした(8〜10週間)マウスを用いる長期実験では、処置動物の肝臓試料中の細胞膨張及び/又はマロリー小体(MB)の存在(又は非存在)を求めて、対照群の動物と比較する。
1つのセットの実験では、DDC又はGFでの10週間の中毒直後、試験動物にミト・ビタミンE又はミトQ(又はミトS)のi.p.又はi.v.(尾静脈)注射を続く7日間投与する(マウスの対に与え、ビヒクル注射対照と比較する)。
別のセットの実験では、10週間のDDC中毒後、試験動物にミトQ(1.25mg/kg)を続く7日以内に2回(対応する週の1日目と4日目)i.p.注射を投与し、日常的な組織学法(Luna L.G., 1968, 軍病理学研究所の組織染色方法のマニュアル(Manual of Histologic staining methods of the Armed Forces Institute of Pathology), 第3版, マグロー・ヒル(McGraw Hill), ニューヨークによる標準的ヘマトキシリン/エオシン染色)により分析する。細胞膨張の程度及びマロリー小体の数は、適切な対照と比較すると、DDCで中毒にしたミトQ処置動物において大きく減少している(図4〜6)。
更に別のセットの実験では、DDC又はGFで8〜10週間中毒にしたマウスに、続いての7〜14日間ミトQ(ミトS)又はミト・ビタミンEをその飲料水に入れて摂取させる。
また別のセットの実験では、ミトQ(ミトS)又はミト・ビタミンEを、6週間DDC又はGFで中毒にしたマウスに適用して(続く4週間、更なるDDC又はGFと同時に、それぞれ最大耐量の10〜50%のミト・ビタミンE又はミトQ(ミトS)を用いることによる)、10週間DDC又はGFのみで中毒にした対照群の動物と比較する。
別のセットの実験では、DDC又はGFで10週間中毒のマウスを、続いて4週間回復させる。次に同時のDDC又はGFでの再中毒とミト・ビタミンE又はミトQ/ミトSでの処置によって、毒性記憶効果(24〜72時間のDDC又はGF中毒への再曝露の結果として)が、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤での処置により減少するか又は無くなることが明らかになる。
肝障害における酸化防止剤の予防効果を評価するために、DDC−又はGF給餌マウスの1群に、それぞれ最大耐量の10〜50%のミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEでの同時処置を行い、次に10週間のDDC−又はGF中毒のみに曝露した対照動物と比較する。
1つのセットの実験では、初期回復期間(4週間)内に、ミトQ、ミトS又はミト・ビタミンEの投与を行い、続いて次の24〜74時間DDC又はGFで中毒にし、そして対照の非処置動物と比較する。
この一般的プロトコールに種々の改変を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
全体的に見て、それぞれDDC又はGFでの短期及び長期の中毒の両方で、肝臓の顕著な変性が、肝疾患及び/又は上皮性癌の治療又は予防に使用される本発明の酸化防止剤の適用によって、大きく改善又は縮小する。
実施例4: 本発明の酸化防止剤による処置を伴うか、又は伴わない、DDC中毒マウスに由来する単離ミトコンドリアにおける酸化ストレスの測定(トコフェロールキノン含量の測定)
4.1. マウス肝ミトコンドリア(MLM)の単離
ラット心ミトコンドリアの方法(Staniek K.とNohl H., 1999, Biochem. et Biophys. Acta, 1413: 70-80;Mela L.とSietz S., 1979, Methods in Enzymology, アカデミック・プレス社(Academic Press Inc.): 39-46)を、実施例3の種々の動物群から単離したマウス肝臓(ラット肝臓に比較して重量約10%)に適応させる。肝臓の単離は、4℃で実施する。各肝臓は、細かく切り出し、貯蔵のために液体窒素(N2)中でショック凍結する。調製緩衝液(0.3Mショ糖、1mM EDTA、20mMトリエタノールアミン、pH7.4)に加えてトコフェロール酸化を防ぐために10mg/L BHT(ジ−tert−ブチル−ヒドロキシトルエン)及び1mMジエチレントリアミン五酢酸(Feキレート剤)中で解凍後、組織を小片に切り出し、調製緩衝液で4×洗浄し、ポッターピストゥル(Potter pistil)により15ml緩衝液中で5×穏やかにホモジナイズし、30mlに希釈して、570gで10分間遠心分離する。上清を2層のチーズクロスで濾過する。このミトコンドリアを7400gで10分間ペレット化し、手動で30ml緩衝液中に穏やかに再懸濁し、再びペレットにして上記のように再び洗浄し、最後に約200ml緩衝液に再懸濁する。タンパク質濃度は、3〜6mgの収量を期待して、ビウレット(Biuret)法(標準としてBSA、二重測定には少なくとも200mgのタンパク質を要する)により測定する。
標準化の目的で、チトクロム濃度は、0.2%(v/v)トリトンX−100による膜の可溶化後に、亜ジチオン酸還元−空気酸化したものの差スペクトル(アミンコ(Aminco)DW2000光度計、二重測定には約0.5〜1mgのミトコンドリアタンパク質を要する)(Williams J.N.,Jr., 1964, Archives of Biochemistry and Biophysics, 107: 537-543)から計算する;ラット肝ミトコンドリアから外挿される、健常ミトコンドリア中のCyt(a+a3)、Cyt c、Cyt c1及びCyt bの予想濃度:0.1〜0.3nmol/mg各タンパク質(Wakabayashi T.ら, 2000, Pathology International, 50: 20-33)。
対照として、全ての細胞膜を含む未加工ホモジネート(最初のホモジネート後)のアリコートを保持すべきである。最も軽い画分(ミクロソーム)を含む膜全体を、Murias M.ら, 2005, Biochemical Pharmacology, 69: 903-912により165,000gで40分間ペレット化(超遠心分離)し、洗浄して5mLの調製緩衝液中で再ペレット化して、最後に約200mLの緩衝液に再懸濁する。タンパク質濃度は、上記のように測定する。
4.2. トコフェロールキノン(TQ)の分析
全MLM(パラグラフ4.1.を参照のこと)を使用することができる。1ml H2O中の2〜5mgの量のタンパク質(ミトコンドリア、膜全体又は種々の画分)を、5mM SDS及び2nmol UQ6(ユビキノン−6、内部標準として)と混合して、3mlの無気エタノール/ヘキサン(2:5)で抽出する。有機相をアルゴン下で留去して、残渣を120mlエタノールに溶解する。40mlを、HPLC分析(1試料当たり二重分析)のためにC18カラムを持つウォーターズ(Waters)LC1モジュールに載せて使用する。キノン及びトコフェロールは、エタノール/メタノール/アセトニトリル/HClO4(400:300:300:1)中の50mM NaClO4で1ml/分で溶出して、光学的(TQには268nm、UQ6並びに内因性UQ9及びUQ10には275nm)又は電気化学的(+0.6V、トコフェロール及びキノールについて)に、Gille L.ら, 2004, Biochemical Pharmacology, 68: 373-381により検出する;健常ミトコンドリア中の予想TQ含量は、トコフェロール又はユビキノンに対して1〜5%である(Gille L.ら, 2004, Biochemical Pharmacology, 68: 373-381)。
全体的に見て、これらの実験は、対照及び本発明の酸化防止剤で処置したDDCマウスに比較すると、DDC中毒マウスのミトコンドリアではTQレベルの上昇を示している。
4.3. マウス肝ミトコンドリア(MLM)中の追加の酵素複合体の分析
種々の群の動物に由来するMLM(実施例3のプロトコールを参照のこと)を凍結して、2〜3回解凍することにより、膜を破砕して種々の試薬(下記を参照のこと)が接近できるようにする(Fato R.ら, 1996, Biochemistry, 35: 2705-2716による)。光度測定法は、25℃で実施することができ(アミンコDW2000デュアル波長光度計)、1回のアッセイ当たり約5〜20mgのミトコンドリアタンパク質を要する:
a) アコニターゼ(スーパーオキシド損傷のマーカー)(James A.M.ら, 2005, JBC, 2005年3月23日にManuscript M501527200として公表)。このアッセイは、0.6mM MnCl2、5mMクエン酸Na、0.2mM NADP+、0.1%トリトンX−100、0.4U/mLイソクエン酸デヒドロゲナーゼ及び50mMトリス(pH7.4)を含む。NADPH生成を340〜410nmで追跡する;健常ミトコンドリアの予想活性:単離ミトコンドリア1mg当たり約60nmol/分、Senft A.P.ら, 2002, Toxicology and Applied Pharmacology 178: 15-21による。
b) 複合体I(NADHデヒドロゲナーゼ)(Estornell E.ら, 1993, FEBS, 332, No.1,2: 127-131からの改変):このアッセイは、0.1mM NADH、0.05mMデシルユビキノン、2mM KCN、20mMアンチマイシンA及び20mMトリス(pH7.5)を含む。NADH崩壊を340〜410nmで追跡する。2mg/mLロテノンによる阻害によって、非特異的キノン還元を補正する;健常ミトコンドリアの予想活性:約100〜300nmol/(分・mg)、Stuart J.A.ら, 2005, Free Radical Biology & Medicine, 38: 737-745及びBarreto M.C., 2003, Toxicology Letters, 146: 37-47による。
c) 複合体II(コハク酸デヒドロゲナーゼ)(Gille 2001からの改変):このアッセイは、2mMコハク酸、0.05mMデシルユビキノン、2mM KCN、20mMアンチマイシンA及び20mMトリス(pH7.5)を含む。キノン崩壊を275−320nmで追跡する。25mMマロン酸による阻害によって、非特異的キノン還元を補正する;健常ミトコンドリアの予想活性:単離ミトコンドリア1mg当たり約70〜100nmol/分、Barreto M.C., 2003, Toxicology Letters, 146: 37-47による。
d) 複合体III(チトクロムbc1)(Stuart J.A.ら, 2005, Free Radical Biology & Medicine, 38: 737-745の改変プロトコール)。このアッセイは、0.05mMデシルユビキノール(デシルユビキノンから、亜ジチオン酸還元及びヘキサン抽出により調製)、15mM Cyt c、mM KCN及び20mMトリス(pH7.5)を含む。Cyt c還元は、550−540nmで追跡する。20mMアンチマイシンAによる阻害によって、非特異的キノール酸化を補正する;健常ミトコンドリアの活性:単離ミトコンドリア1mg当たり約80nmol/分、Stuart J.A.ら, 2005, Free Radical Biology & Medicine, 38: 737-745による。
e) 複合体IV(チトクロムオキシダーゼ)(Stuart J.A.ら, 2005, Free Radical Biology & Medicine, 38: 737-745から改変)。このアッセイは、15mM還元Cyt c(亜ジチオン酸還元及び過剰亜ジチオン酸の空気酸化により調製)及び20mMトリス(pH7.5)を含む。Cyt c酸化は、550−540nmで追跡する;健常ミトコンドリアの活性:単離ミトコンドリア1mg当たり約1mmol/分(Stuart J.A.ら, 2005, Free Radical Biology & Medicine, 38: 737-745)。
実施例5: 酸化ストレス誘導タンパク質(ヘムオキシゲナーゼI)の評価。
酸化ストレスにより誘導されることが知られているヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)タンパク質発現(Suematsu M.とIshimura Y., 2000, Hepatology, 31(1): 3-6)を評価するために、同時にミトQ(PBS中の1% DMSOに希釈)又はビヒクルだけで3日間処置したDDC中毒マウスに由来するタンパク質抽出物を用いて、標準的ウェスタンブロット分析を実施する(実施例3のプロトコールを参照のこと)。
肝組織は、2μg/mlロイペプチン、2μg/mlペプスタチン、2μg/mlアプロチニン、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、及び2mMジチオトレイトールを補足した氷冷RIPA緩衝液(50mMトリス−HCl(pH7.4)、250mM NaCl、0.1% SDS、1%デオキシコール酸、1% NP−40)に再懸濁し、続いて氷上での超音波処理によりホモジナイズする(5秒間の2回バースト)。氷上で20分間インキュベーション後、溶解物は、4℃で13,000rpmで15分間の微小遠心管での2回の遠心分離工程により清澄にして、上清を回収する。タンパク質濃度は、ブラッドフォード(Bradford)アッセイ(バイオラッド(Biorad))により、ウシ血清アルブミンを標準として用いて測定する。等量のタンパク質(典型的には10〜30μg)を12% SDS−PAGEゲルで分離して、セミドライ(Semidry)−ブロッティング(TE70、アマーシャム(Amersham))によりポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(ハイボンド−P(Hybond-P)、アマーシャム)に電気泳動で移す。この膜を室温でブロッキング液[TBS−T(25mMトリス−HCl(pH7.4)、137mM NaCl、3mM KCl、0.1%トゥイーン−20を含む)中の5%ミルク]中で室温で1時間ブロックして、一次抗体液(TBS−T/1%ミルク中で調製)と共に4℃で一晩撹拌しながらインキュベートする。下記抗原に特異的な抗体を使用する:HO−1(1:1000希釈;ストレス遺伝子(Stress Gene))(構成的に発現するアイソホームのHO−2(36kDa)と交差反応する)、及びβ−アクチン(1:5000、シグマ)。一次抗体液の除去及びTBS−T中での数回の洗浄後、膜をHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合二次抗体(ウサギ抗マウス、1:1000;ダコ)と共に室温で1時間インキュベートする。TBS−T中で数回洗浄後、化学ルミネセンス(ECL、アマーシャム)により検出を実施してX線フィルムに感光させる(図7)。バンドの強度は、ケミイメージャー5500(ChemiImager 5500)ソフトウェア(アルファ・イノテック(Alpha Innotech))を用いて密度測定により分析することができ、各シグナルは、対応するHO−2の強度(DDC中毒群の動物に比較すると、ミトQ処置によりHO−1の7倍減少を示している)、あるいはβ−アクチンに対して標準化する。
ミトQ処置下でのヘムオキシゲナーゼ1のDDC誘導過剰発現の著しい減少(図7)は、本発明の酸化防止剤により酸化ストレスが大きく減少することを示唆している。
長期実験では、DDC中毒中のマウスで増大することが知られているサイトケラチン8(Stumptner C.ら, 2001, Journal of Hepatology, 34: 665-675)及び/又は(N)ASH患者における減少が報告されているカタラーゼ(Videla L.A.ら, 2004, Clinical Science, 106: 261-268)のタンパク質発現レベルを評価することができる。
肝細胞損傷の高感度マーカーに相当する脂肪酸結合タンパク質(FABP)のタンパク質発現レベル(Monbaliu D.ら, 2005, Transplant Proc., 37(1): 413-416)を測定する。ウェスタンブロット分析は、正常マウスに比較すると、DDC中毒マウスにおけるFABPタンパク質の有意な低下を示す。更に、DDC中毒動物のミトQ処置下ではFABPは、ほぼ対照マウスFABPタンパク質発現値(対照は、ビヒクルのみで処置した非中毒群の動物に相当する、実施例3を参照のこと)に達しており、そしてこのことは、本発明の疾患の治療又は予防におけるミトQの効果を示唆している。
本発明の酸化防止剤で処置したDDC中毒マウスに由来するクリオスタット切片中のアポトーシス細胞の量は、先行技術において知られている抗カスパーゼ3免疫組織化学標準法(Brekkenら, 2003, The Journal of Clinical Investigation, 111, 4: 487-495)により半定量し、適切な対照と比較することができる。
更に、酸化防止剤で処置したDDC中毒マウスのホモジェネート中のプロトポルフィリンレベルは、蛍光アッセイ(Stumptner C.ら, 2001, Journal of Hepatology, 34: 665-675)を用いることにより測定して、適切な対照と比較することができる。
実施例6: 血液パラメーターに及ぼす本発明の酸化防止剤の効果の評価。
本発明の肝損傷の尺度を提供する、肝特異的酵素の血清レベルをアクチテスト(Actitest)(バイオプレディクティブ(Biopredictive)、ウイユ(Houilles)、フランス)でモニターする。a2−マクログロブリン、ハプトグロビン、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、総ビリルビン、アポリポプロテインA1及びアラニンアミノトランスフェラーゼの血清レベルは、DDC−又はGF中毒、対照、及び標的化酸化防止剤でも処置した対応するDDC−又はGF曝露動物から、Poynardら, 2003, Hepatology 38: 481-492に記載される方法を用いて、実施例3の一般的な時間軸方策により測定する。
肝損傷、特に線維症の尺度としてヒト血清でも行われるアクチテストは、本発明の酸化防止剤によるこれらの疾患の患者の治療の効果をモニターするために同様に利用することができる。
種々の試験動物群からの血清において、肝損傷を示す以下のパラメーター、即ち、ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT/GOT)及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)を、市販のキット(番号:11552414;11876805216;11876848216;11929992;全てロッシュAG(Roche AG)、スイスから購入)を日立/ロッシュ(Hitachi/Roche)917分析機で利用して臨床診断の標準プロトコールにより測定する。
本発明の化合物で処置した動物の血清肝酵素(例えば、アラニン−及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなど、図8を参照のこと)の減少は、このような処置試料における肝損傷の減少を示しており、そして本発明の疾患におけるこれらの化合物の治療効果を支持する。
実施例7: 組織切片における反応性酸素種(ROS)の測定
DDC−又はGF中毒及び対照組織からの肝臓標本におけるROSのインサイチュー生成を検出するために、ジヒドロエチジウムによる蛍光顕微鏡撮影法(DHE、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes))を標準プロトコール(例えば、Brandes R.P.ら, 2002, Free Radic Biol Med., 32(11): 1116-1122)により実施する。DHEは、細胞に自由に透過でき、O2の存在下ではエチジウムに酸化されるが、ここでDNAに挿入されることにより核内に捕捉される。エチジウムは、488nmで励起され、610nmの発光スペクトルを持つ。
肝臓試料は、OTC組織テック(OTC Tissue Tek)(サクラ・ファインテック・ヨーロッパ(Sakura Finetek Europe)、ズーテルワウデ(Zoeterwoude)、オランダ)に包埋して、液体窒素冷却イソペンタンを用いて凍結する。次に試料を切片(5μm〜30μm)に切り出し、ガラススライド上に載せる。ジヒドロエチジウム(5〜20μmol/L)を各組織切片に適用する。このスライドを次に、遮光した加湿チャンバー中で37℃で30分間インキュベートして、37℃で緩衝食塩水(PBS)で洗浄する(2〜3回)。次に切片にカバーガラスを載せる。蛍光顕微鏡法又は585nmロングパスフィルターによるレーザー走査共焦点イメージングを用いて、DHEの画像を得る。
当該分野において確立している別のアプローチにより、ルシゲニン化学ルミネセンスアッセイを用いて、DDC−又はGF中毒肝組織対対照肝組織におけるROS産生の測定が可能である(Goerlach A.ら, 2000, Circ Res., 87(1): 26-32)。肝組織の標本を、1mlの50mmol/L HEPES(pH7.4)、135mmol/L NaCl、1mmol/L CaCl2、1mmol/L MgCl2、5mmol/L KCl、5.5mmol/Lグルコース、及び5μmol/Lルシゲニン(電子受容体として)を含むバイアル中で平衡化する。スーパーオキシドとルシゲニンの間の光反応は、化学ルミネセンスリーダーを用いて検出する。化学ルミネセンスシグナルは、15〜30分間にわたり測定した乾燥組織1mg当たり1分間当たりの平均カウントとして表される。化学ルミネセンスシグナルデータは、標本の非存在下で観測されるバックグラウンドの化学ルミネセンスを差し引いた後に明らかになる。
このアプローチにより、DDC−又はGF中毒マウスに由来する肝臓中のROSの上昇を立証することができるが、これは、本発明の疾患に罹患している患者で行われる観察結果に似ている。
実施例8: DDC又はGFに曝露されたマウスにおける反応性酸素種(酸化損傷)の減少に及ぼす本発明の酸化防止剤の効果。
試験動物のDDC−又はGF中毒に関する、及びその酸化防止剤での処置に関する時間軸及び処方計画の一般的方策は、形態学的異常の測定のために使用された実験設定と同一である(実施例3を参照のこと)。
本発明の酸化防止剤、例えば、ビタミンE、補酵素Q10の誘導体又はグルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質の適用は、DDC又はGFに曝露された肝臓におけるROSレベルの有意な減少を提供する。この結果は、更に肝損傷におけるROSの影響を意味しており、この損傷が、ROSの主要な細胞内供給源であるミトコンドリアに対して、例えば、ミトQ/ミトS又はミト・ビタミンEを標的化することにより緩和されることを立証している。標的化酸化防止剤での処置による、実施例7の方法で測定されるROSのレベルの減少は、本発明の疾患に対するこれらの化合物の治療効果を示している。
実施例9: 肝細胞株における反応性酸素種(ROS)の測定
ヘパトーマ細胞株(例えば、HepG2又はHep3B)、SNU−398肝細胞癌由来細胞株(ATCC番号CRL−2233、LGCプロモケム(LGC Promochem)、ドイツ)、HUH−7ヒト癌細胞由来細胞株(JCRB細胞バンク(Japanese Collection of Research Bioresources)、JCRB 0403)又はTib−73マウス胎生肝細胞株(ATCC TIB 73=BAL/cマウス由来のBNL CL2、メリーランド州、米国)を利用する別の簡単なセットの実験により、DDC中毒によるこれらの細胞中のROS産生が測定できる。グルタチオン合成阻害剤のL−ブチオニン−(S,R)−スルホキシミン(BSO)は、内因性酸化ストレスを上昇させるための代替物として利用される(Kito M.ら, 2002, Biochem Biophys Res Commun., 291(4): 861-867)。
CoCl2がミトコンドリアに影響を及ぼすことが最近証明されている(Jung JYとKim WJ., 2004, Neurosci Lett., 371: 85-90)ので、分化した細胞株におけるROS産生を測定するために、HepG2を代わりに100μM CoCl2(シグマ(Sigma))によって刺激する(Bel Aiba RSら, 2004, Biol. Chem. 385: 249-57)。
培養細胞で(並びに単離細胞小器官又は全組織中で)充分に確立した別のアプローチは、Chem Biol Interact. 2000 Jul 14; 127(3): 201-217にしたがいアンチマイシンAにより(図10)、又はルシゲニン化学ルミネセンスアッセイを用いてロテノンにより(Goerlach A.ら, 2000, Circ Res., 87(1): 26-32)誘導されるROS産生の測定を可能にする。
例えば、ヘパトーマ細胞株におけるROS産生を測定するために、実施例8の標準的実験プロトコールが適用される。試験ヘパトーマ細胞は、96ウェルプレートで培地(10% FCSを補足したDMEM、ギブコ(Gibco))中で80%コンフルエンシーまで増殖させ、次にHBSSで洗浄して、暗所でDHE(10〜50μM)と共に37℃で10分間インキュベートする。次に細胞をハンクス液(Hank's balanced salt solution)(HBSS、ギブコ)で2回洗浄することにより、過剰の染料を除去する。蛍光は、蛍光顕微鏡(オリンパス(Olympus)、ハンブルク、ドイツ)でモニターする。
あるいは、ROSの生成は、蛍光ジクロロフルオレセイン(DCF;Djordjevic T.ら, 2004, Antioxidants & Redox Signaling, 6: 713-720)に変換される、蛍光プローブの5−(及び6)−クロロメチル−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸アセチルエステル(CM−H2DCFDA、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、ゲッティンゲン(Goettingen)、ドイツ)を用いることにより測定される。マイクロプレートリーダー(テカン(Tecan)、クライスハイム(Crailsheim)、ドイツ)でDCF蛍光を測定するために、細胞(例えば、HepG2、Hep3B又はSNU−398)を96ウェルプレートで80%コンフルエンシーまで増殖させる。次に細胞をハンクス液(HBSS、ギブコ)で2回洗浄して、N−ω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME、10μM)を含むHBSSに溶解したCM−H2DCFDA(8.5μM)と共に暗所で37℃で10分間インキュベートすることにより、NOの形成を防ぐ。過剰の染料を除去するためにHBSSで数回洗浄後、480nm励起及び540nm発光波長を用いて蛍光をモニターする。DCF蛍光は、アラマー・ブルー(Alamar Blue)試験を製造業者の取扱説明書により用いて生存細胞の数に対して標準化する(バイオソース(Biosource)、ニベル(Nivelles)、ベルギー)。簡単に述べると、細胞をアラマー・ブルーと共にリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.4)中で37℃でインキュベートすることにより、指示薬を酸化型(青色)から完全還元型(赤色)に変化させる。次に吸光度を580nmの波長で測定する。
場合により、ROS産生は、CM−H2DCFDA染色細胞のフローサイトメトリー分析により評価する。細胞を取り出し、トリプシン処理により回収し、遠心分離により集めて、HBSSに1×106細胞/mlの濃度で再懸濁する。次に細胞に、刺激前に暗所で37℃で15分間8.5μM CM−H2DCFDAを加える。DCF蛍光は、フローサイトメーター(パルテック(Partec)、ミュンスター(Muenster)、ドイツ)で480nm励起及び540nm発光波長を用いて、10,000細胞を分析することによりモニターする。
DDC(EC50=50μg/ml培地)、又は100μM以下のBSOを補足した培地(DMEM及び10% FCS、ギブコ)中で72時間以内インキュベートしたヘパトーマ細胞株は、本発明の疾患に罹患している患者で行われる観察結果に似ている、別の適切なインビトロモデルである。
実施例10: DDC−、BSO−、アンチマイシンA−(又はロテノン−)中毒又はCoCl2誘導培養細胞の酸化損傷の減少に及ぼす本発明の酸化防止剤の効果。
標準プロトコールを利用し、そして実施例9の時間軸の一般的な方策にしたがうことにより、それぞれDDC又はBSOで中毒にして、同時にミトQ/ミトS又はミト・ビタミンE[ミトQではEC50=0.51nM及びミト・ビタミンEではEC50=416nMに相当する濃度(Jauslin M.L.ら, 2003, FASEB J., 2003, (13): 1972-1974による)]で処置したヒト細胞株は、ROS形成が有意に減少する。
別の実験では、100μM CoCl2(シグマ)により刺激されたHepG2を使用する(Bel Aiba R.S.ら, 2004, Biol. Chem. 385: 249-57)。実施例9に記載された実験設定により、HepG2細胞を96ウェルプレートで培養して、実験の前の16時間血清を欠乏させる。次にHepG2をHBSS(ハンクス液、ギブコ)で1回洗浄して、0.5〜10μMの濃度範囲のミトQ又はそれぞれの量のDMSO(シグマ)と共にインキュベートする。15分後、DCFを細胞に加え(最終濃度8μM)、細胞を染料と共に10分間インキュベートする。装填後、培地を除去して、ミトQ及びCoCl2(100μM)を含む新鮮HBSSを加える。蛍光は、プレートリーダー(テカン・サファイア(Tecan Safire))で0、10、20及び30分後に測定する(Djordjevic T.ら, 2005, Free Radic Biol Med. 38: 616-30)。
5μMミトQで処置した非刺激細胞は既に、基礎量のROS産生の減少を示す。CoCl2刺激ROS産生(100μM CoCl2)は、5μMミトQにより有意に低下するが、このことは、本発明の酸化防止剤が、これらの細胞における基礎量及びCoCl2刺激ROSレベルを有意に低下させることを示唆している(図9)。
別のアプローチは、例えば、HUH−7又はTib−73においてルシゲニン化学ルミネセンスアッセイ(実施例9と同様の実験設定)を用いることにより、アンチマイシンA又はロテノンにより誘導されたROS産生の測定を可能にする。HUH−7細胞は、6ウェルプレートでインキュベートして、DMEM(ギブコ)に溶解した0〜1000nmolの濃度範囲のミトQ(又はミトS)を同時に伴うか、又は伴わずに、0〜25μM(好ましくは0、1及び5μM)の濃度のアンチマイシンAを使用することにより、37℃で3時間刺激する。3回連続洗浄後、細胞は、1mlの50mmol/L HEPES(pH7.4)、135mmol/L NaCl、1mmol/L CaCl2、1mmol/L MgCl2、5mmol/L KCl、5.5mmol/Lグルコース、及び5μmol/Lルシゲニン(電子受容体として)を含むプレート中で平衡化する。化学ルミネセンスリーダー(ルミスター(Lumistar)、BMGラボラトリーズ、ドイツ)を用いて、スーパーオキシドとルシゲニンの間の光反応を検出する。化学ルミネセンスシグナルは、1分当たりの平均カウントとして表し、細胞カウンター(キャシー・テクノロジー機器(Casy Technology Instrument)、シャルフェ・システム(Schaerfe-System)、ドイツ)により求めた細胞数に対して標準化する。
全体的に見て、これらの実験は、ROS形成の有意な減少を示しており(図10)、そして本発明の肝障害におけるミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の治療的有用性を更に裏付けている。
実施例11: ヌードマウスに及ぼす酸化防止剤化合物の効果の評価。
上皮性癌の治療及び/又は予防における本発明のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の効果を求めるための一般的方策は、DDC−又はGF中毒マウスに関して上述の治療パラダイム(実施例2〜7による)にしたがうが、代わりにヒト上皮細胞癌異種移植片をもつ免疫不全マウスを利用する(例えば、チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles Rivers Laboratories)(米国)からのCD1 ν/νマウスに適用したヌードマウス腫瘍異種移植片)。標準法(Li K.ら, 2003, Cancer Res., 63(13): 3593-3597)により皮下に異種移植される腫瘍細胞株又は原発性腫瘍は、結腸腺癌、浸潤性乳管癌、小細胞及び非小細胞肺癌、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍及び胃腫瘍を含む。
腫瘍由来細胞株(DMEM/10% FBS中で増殖)は、対数期増殖に回収し、PBSで2回洗浄し、1ml PBSに再懸濁(2.5×107細胞/ml)して、ヌードマウス(Hsd:無胸腺ν/ν、ハーラン・ウィンケルマン(Harlan Winkelmann);5週齢と6週齢の間)の右わき腹に5×106細胞/マウス(0.2ml)で皮下注射する。腫瘍増殖は、1日おきに所定の期間(細胞タイプに応じて)モニターする。腫瘍サイズは、2つの垂直な直径及び皮膚表面上の高さの積により求める。
例えば、ミトQ(ミトS)でのこのようなマウスの処置は、腫瘍の増殖の縮小、腫瘍の壊死の増大及び腫瘍異種移植片の脈管化の低下を立証する。同様に、ヌードマウス腫瘍異種移植片におけるROSのレベルを上述のようにモニターすると、本発明の酸化防止剤で処置した異種移植腫瘍ではこれが減少する。
当業者には、本発明の組成物及び方法に種々の改変を加えうることは明らかであろう。よって、そのような改変及び変法が、添付された請求の範囲及びその均等物の範囲に入ってくるならば、本発明は、それらを対象とすることが意図されている。本明細書に引用された全ての刊行物は、引用例としてその全体が取り込まれる。
DDCへの短期(3日間)曝露によるマウス肝臓の肝細胞損傷の程度に及ぼすミトQの効果 正常肝臓は、多くは中心静脈(三角形として注記)に配向する索として配置された肝細胞、及びこれらの肝細胞の索の間に位置する類洞(C、原本は白色、赤血球を表す幾つかの赤色の点を伴う)を特徴とする。肝細胞の核(A、原本はH&E染色で青色)は、大きいが、濃厚でなく、多くは1個の隆起した核小体を示し、細胞質(Bとして注記)は、H&E染色で比較的均質な桃色に染まる。門脈(アスタリスクとして注記)付近にリンパ球又は顆粒球による浸潤は検出されない(倍率200×)。 DDCへの短期(3日間)曝露によるマウス肝臓の肝細胞損傷の程度に及ぼすミトQの効果 DDCで3日間中毒後、肝臓の構造は重篤に損傷される:肝細胞の規則正しい配置は消失する。特に門脈(アスタリスクとして注記)付近は、リンパ球及び顆粒球による浸潤が見られる(矢印として注記)。肝細胞は、細胞損傷の種々の指標を示す:細胞は、他の細胞への接触を失い、核は濃厚化して、細胞質はアポトーシスの指標として帯青桃色になる。細胞は、サイズが増大(膨張)して、細胞質は不均質になり、サイトケラチンの塊が現れる。更に、細胞は、壊死の別の指標としてその原形質膜を失う。注記A、B、Cは、図1と同一である。門脈(アスタリスクでマーク)付近では、炎症細胞(矢印でマーク)及び損傷肝細胞(明確な細胞境界が認識できない、細胞膨張)が検出される。プロトポルフィリンの沈着(小さな褐色の点)は、プロトヘム・フェロリアーゼ(protohaem ferrolyase)に及ぼすDDC特異的効果を表す。注記A、B、Cは、図1と同一である(倍率:400×)。 DDCへの短期(3日間)曝露によるマウス肝臓の肝細胞損傷の程度に及ぼすミトQの効果 ミトQ(PBS/1% DMSO中ミトQ(6mg/kgに相当する225nmol/動物/日))での同時処置後、類洞に縁取られた肝細胞の索を持つ正常構造が再び現れる。肝細胞の形態は、核のサイズと形態、及び細胞質の構造に関して正常である(実施例3)。門脈(アスタリスクでマーク)付近の炎症細胞の非存在;細胞膨張及びプロトポルフィリンの沈着のわずかな指標を除き、肝細胞は正常に見える。注記A、B、Cは、図1及び2と同一である(倍率:400×)。 DDCへの長期(10週間)曝露によるマウス肝臓の肝細胞損傷の程度に及ぼすミトQの効果 正常な非DDC中毒マウス(月齢4ヶ月)では、肝臓の構造は一般に図1Aに描かれている幼体非DCC中毒マウスの構造と似ている(A=核、B=細胞質、C=類洞を参照のこと)。門脈(アスタリスク)付近の炎症は存在せず、肝細胞は索として配置されている。細胞の細胞質は、規則正しく染色され、同じサイズである;細胞の膨張やマロリー小体形成も見られない(倍率:400×)。 DDCへの長期(10週間)曝露によるマウス肝臓の肝細胞損傷の程度に及ぼすミトQの効果 構造は、図1〜4と同一であり(A=核(原本は青色)、B=細胞質(原本は桃色)、C=類洞(原本は白色、赤色点を伴う)を参照のこと)、そして原本は褐色のDは、胆管内の色素(大部分はプロトポルフィリン)を表す。DDCでの10週間の中毒と、これに続くDDCなしの1週間の回復後、肝細胞の配置はなお乱れている。肝細胞は、細胞骨格の崩壊から細胞膨張及びマロリー小体の形成(矢印)にわたる種々の程度の細胞損傷を示す。プロトポルフィリンの蓄積は、特に胆管(矢じり)において見られる、倍率:400×。 DDCへの長期(10週間)曝露によるマウス肝臓の肝細胞損傷の程度に及ぼすミトQの効果 10週間のDDC中毒後、回復期(DDCなし1週間)において、ミトQの2回の注射による処置が行われる。回復中の改善は著しい;肝細胞形態のほんのわずかな変性が見られる。肝細胞の大多数は、正常に見え、そして細胞膨張及び/又はマロリー小体形成は存在しない。胆管の門脈(アスタリスク)の近くのプロトポルフィリンの蓄積もまた著しく減少する。構造は、図1〜5と同一であり(A=核(原本は青色)、B=細胞質(原本は桃色)、C=類洞(原本は白色、赤色点を伴う)を参照のこと)、原本は褐色のDは、色素(大部分はプロトポルフィリン)を表す。倍率:400×。 ミトQで処置したDDC中毒マウスにおける誘導型のヘムオキシゲナーゼ(HO−1)の発現 HO−1(32kDa、矢印により注記)のウェスタンブロット分析は、DDC中毒下の著しい誘導(DDCを伴う溶媒対照を表すレーン番号4、5、6)を示すが、ミトQによる処置(レーン7、8=DDCなしの112mmol/kgミトQ及びレーン9、10=DDCを伴う112mmol/kgミトQ)によって、HO−1タンパク質発現の大幅な減少が起こる。レーン番号1〜3は、DDCなしの溶媒対照を表す。低分子量タンパク質マーカー(22、36、55、64、98及び148kDa)を使用する。 レーン1〜10のHO−1タンパク質発現を標準化するために、ケミイメージャー5500(ChemiImager 5500)ソフトウェア(アルファ・イノテック(Alpha Innotech))を用いることにより構成的に発現されるアイソホームのHO−2(36kDa)に対する比較を実施すると、ミトQで処置したDDC中毒動物では、DDC中毒マウスにより表される対照群に比較してHO−1が7倍の減少を示している。全体的に見て、このセットの実験では、PBS/1%DMSO中のミトQを毎日注射(i.p.)したDDC中毒マウス(3日間)を分析して、適切な対照と比較する。 同時ミトQ処置下のDCC中毒マウスの血清パラメーター 種々の動物群からの血清において、肝損傷を示す血清肝酵素、即ち、ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT;図中白の棒グラフにより表す)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT/GOT;図中黒の棒グラフにより表す)の活性を、臨床診断の標準プロトコールにより、市販のキット(番号:11552414;11876805216;11876848216;全てロッシュAG(Roche AG)、スイスから購入)を日立/ロッシュ(Hitachi/Roche)917分析機で利用することにより測定する。 レーン:番号1及び2は、それぞれ非DCC中毒群の動物及びDDC中毒マウスを表す。レーン3〜5は、DCC中毒(3日間)及び同時ミトQ処置動物(3、6及び12mg/kgの濃度で)を表す。酵素活性の最も顕著な低減は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT、白の棒グラフにより注記)、次いでアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/GOT、黒の棒グラフにより注記)を示し、一方ビリルビン活性は何の変化もないままである(データは示していない)。 同時にミトQで処置したHepG2細胞における100μM CoCl2(0、10、20、30分)によるROS産生 5μMミトQは、未刺激細胞に既にある基礎量のROS産生を減少させることができる。(レーン2を参照のこと)。CoCl2誘導ROS産生(100μM CoCl2)は、5μMミトQにより低下する。これらの結果は、5μMミトQが、HepG2細胞における基礎量及びCoCl2刺激ROSレベルを有意に低下させることができることを立証している(実施例10)。注記「A」(レーン4、5、6)は、CoCl2で刺激したHepG2細胞を表す。x軸は、ミトQの濃度範囲[μM]を表し、そしてy軸は、相対DCF蛍光[%]を表す。*p<0.05、未刺激(0μMミトQ)に対して;#p<0.05、CoCl2に対して。 ルシゲニン化学ルミネセンスアッセイを用いる、1μMアンチマイシンでのHUH−1細胞の刺激 HUH−7細胞を6ウェルプレートでインキュベートして、37℃で3時間、DMEM(ギブコ(Gibco))に溶解した濃度範囲0〜1000nmolのミトQを同時に伴うか、又は伴わない、濃度0〜25μM(0、1及び5μM)のアンチマイシンAで刺激する。スーパーオキシドとルシゲニンの間の光反応を検出する。x軸は、ミトQの濃度範囲[nM]を表し、一方y軸は、細胞カウンターにより求めた細胞数に対して標準化後の1分当たりの平均カウント[cpm]として表される化学ルミネセンスシグナルを表す。全体的に見て、この図は、ROS形成の有意な減少を示しており、そして本発明の肝障害におけるミトコンドリアを標的とした酸化防止剤の治療的有用性を更に裏付けている。

Claims (31)

  1. 肝疾患及び上皮性癌の治療又は予防用の医薬の製造における、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含むことを特徴とする、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用。
  2. 親油性カチオンが、トリフェニルホスホニウムカチオンである、請求項1記載の使用。
  3. 化合物が、下記式:

    [式中、Xは、結合基であり、Z-は、アニオンであり、そしてRは、酸化防止剤残基である]で示される、請求項1又は2記載の使用。
  4. 酸化防止剤残基Rが、キノン又はキノールである、請求項3記載の使用。
  5. 化合物が、下記式:

    で示される、請求項4記載の使用。
  6. 酸化防止剤残基Rが、グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質である、請求項3記載の使用。
  7. グルタチオンペルオキシダーゼ模倣物質残基が、下記式:

    で示される、請求項6記載のミトコンドリアを標的とした化合物の使用。
  8. 酸化防止剤残基Rが、ビタミンE及びビタミンE誘導体、連鎖破壊型酸化防止剤(ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンを含む)、一般的ラジカルスカベンジャー(誘導体化フラーレンを含む)、スピントラップ剤(5,5−ジメチルピロリンN−オキシド、tert−ブチルニトロソベンゼン、及びα−フェニル−tert−ブチルニトロンの誘導体を含む)よりなる群から選択される、請求項3記載の使用。
  9. 酸化防止剤残基Rが、ビタミンE又はビタミンE誘導体である、請求項3記載の使用。
  10. 化合物が、下記式:

    で示される、請求項9記載の使用。
  11. 酸化防止剤残基Rが、ブチル化ヒドロキシアニソール又はブチル化ヒドロキシトルエンである、請求項3記載の使用。
  12. 酸化防止剤残基Rが、誘導体化フラーレンである、請求項3記載の使用。
  13. 酸化防止剤残基Rが、5,5−ジメチルピロリンN−オキシド、tert−ブチルニトロソベンゼン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン及びこれらの誘導体である、請求項3記載の使用。
  14. 化合物が、下記式:

    で示される、請求項13記載の使用。
  15. 結合基Xが、C1〜C30炭素鎖(場合により1個以上の二重又は三重結合を含み、そして場合により1個以上の非置換又は置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル側鎖を含む)である、請求項3記載の使用。
  16. 結合基Xが、(CH2n(ここで、nは、1〜20の整数である)である、請求項15記載の使用。
  17. 結合基Xが、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン又はデシレン基である、請求項16記載の使用。
  18. アニオンZ-が、薬剤学的に許容しうるアニオンである、請求項3〜17のいずれか1項記載の使用。
  19. -が、ハロゲン化物である、請求項18記載の使用。
  20. -が、臭化物である、請求項19記載の使用。
  21. -が、アルカン−又はアリールスルホン酸のアニオンである、請求項18記載の使用。
  22. -が、メタンスルホナートである、請求項21記載の使用。
  23. 化合物が、下記式:

    で示される、請求項22記載の使用。
  24. 肝疾患が、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、栄養性肝傷害、中毒性肝傷害、感染性肝疾患、敗血症の肝傷害、自己免疫性肝疾患、ヘモクロマトーシス、アルファ1−アンチトリプシン欠乏症、放射性肝傷害、肝癌、良性肝腫瘍及び限局性結節性過形成よりなる群から選択される疾患である、請求項1〜23のいずれか1項記載の使用。
  25. 肝疾患が、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪症、胆汁うっ滞、肝硬変、栄養性肝傷害、中毒性肝傷害、感染性肝疾患、敗血症の肝傷害、自己免疫性肝疾患、ヘモクロマトーシス、アルファ1−アンチトリプシン欠乏症及び放射性肝傷害よりなる群から選択される疾患である、請求項1〜23のいずれか1項記載の使用。
  26. 肝疾患が、アルコール性肝疾患又は非アルコール性脂肪肝疾患である、請求項1〜23のいずれか1項記載の使用。
  27. 肝疾患が、アルコール性脂肪性肝炎又は非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1〜23のいずれか1項記載の使用。
  28. 肝疾患が、アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1〜23のいずれか1項記載のミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用。
  29. 肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1〜23のいずれか1項記載の使用。
  30. 請求項1〜29のいずれか1項記載の肝疾患及び上皮性癌の治療又は予防のための、酸化防止剤残基に共有結合した親油性カチオンを含むことを特徴とする、ミトコンドリアを標的とした酸化防止剤化合物の使用。
  31. 肝疾患又は上皮性癌の患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の請求項1〜29のいずれか1項記載の化合物を投与することを特徴とする方法。
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