JP2008505611A - イヌ寒冷およびメントール感受性受容体1 - Google Patents

イヌ寒冷およびメントール感受性受容体1 Download PDF

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Abstract

本発明は、本明細書でイヌCMR1(cCMR1)と命名された新規イヌ寒冷およびメントール感受性受容体を記述する核酸およびポリペプチド配列を提供する。本発明の単離された核酸若しくはポリペプチド分子は、検出アッセイおよびスクリーニングアッセイで使用し得る。

Description

関連出願との交差引用
本出願は、2004年4月8日出願の米国特許出願第60/560,400号および2004年10月22日出願の同第60/621,223号(それらの内容全体は引用することにより本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
本発明は温度受容器イオンチャンネルタンパク質に関する。具体的には、本発明は、新規イヌ寒冷(cold)およびメントール感受性受容体CRM1の単離された核酸分子およびポリペプチド、ならびにそれらの用途に関する。
神経組織中での熱および冷覚の検出、変換および伝達に関与する生化学的機構の解明に大きな努力が払われてきた。熱刺激は、後根神経節(DRG)および三叉神経節(TG)由来のもののような知覚ニューロン上に位置する特化された受容体を活性化する。これらの刺激が有害な範囲にある(すなわち非常に熱い若しくは冷たい)場合、それらは、侵害受容器(疼痛知覚ニューロン)と呼ばれる知覚ニューロンの亜集団上の温度受容器のある種の1サブセットを活性化する。活性化に際して、温度受容器(例えばイオンチャンネル)は、侵害性刺激を電気シグナルに変換し、電気シグナルが知覚ニューロンに沿って脊髄に伝播され、そこでそれは脳に中継されて、最終的には疼痛の知覚に至る。従って、これらの温度受容器は、多様な疼痛状態の処置のための薬物を開発するための高度に有望な標的を表す。
数種の温度で活性化される受容体が熱の検知に関与している。TRPV1(VR1:カプサイシンおよび熱活性化型チャンネル)は43℃(大部分の哺乳動物が侵害性と認識する温度)近くで活性化される。TRPV1に対する40%以上のアミノ酸レベルの同一性をもつ他のTRPVチャンネルもまたクローン化されており、そして温度センサーとして特徴付けられている。これらのチャンネルは、TRPV3について39℃(温)からTRPV2/VRL1について55℃(高閾値侵害的熱)までの範囲にわたる多様な熱閾値で活性化される(非特許文献1およびその中の参考文献を参照されたい)。対照的に、TRPV4は室温で構成的に開放され、およそ27℃以上の温度で活性化される(非特許文献2)。これらの温度活性化型受容体は、非選択的陽イオンチャンネルの一過性受容器電位チャンネル(TRP)ファミリーに属し、それらはC.エレガンス(C.elegans)およびキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)において機械および圧調節に関与している。TRPチャンネルは、TRPC(限界若しくは容量性サブファミリー)、TRPV(バニロイドサブファミリー)およびTRPM(メラノスタチンサブファミリー)と呼称される3種のサブファミリーに分割される。全部は、膜貫通ドメイン5と6の間に1個の提案された孔領域を伴う6個の推定の膜貫通ドメインを有する。TRPチャンネルは細胞質のNおよびC末端を有すると考えられる(非特許文献1およびその中の参考文献を参照されたい)。
より最近、タンパク質のTRPファミリー内にありかつ寒冷刺激に対する応答を調節するタンパク質が発見された。ラットCRM1タンパク質(「寒冷およびメントール感受性受容体」を示す;非特許文献3)およびマウスTRPM8タンパク質(「一過性受容器電位チャンネル、メラノスタチンサブファミリー、タイプ8」を示す;非特許文献4)は、比較的低温への曝露に際して活性化される興奮性イオンチャンネルとして機能するようである。TRPM8活性化の閾値はおよそ約23℃である。ラットCMR1およびマウスTRPM8は、メントールおよびイチリンのような冷覚を惹起する化合物に対してもまた感受性である。興味深いことに、ラットCMR1およびマウスTRPM8は、それらのアミ
ノ酸配列の長さ全体にわたり90%超の配列の同一性を共有する。
付加的な温度受容器は疼痛の処置のための潜在的標的であるために、それらを同定する必要性が存在する。多様な種の温度受容器は試験化合物の効果を検討するためのモデル系として使用し得るために、それらを同定する必要性もまた存在する。とりわけ、寒冷刺激に応答する温度受容器の活性を潜在的に増大若しくは低下させる化合物を試験するために使用し得る系に対する必要性が存在する。こうした化合物の同定および試験は、慢性疼痛を伴う多様な障害の処置、若しくは組織冷却が望ましい他の状態での使用について可能にするとみられる。
Storyら、Cell、2003、112:819−829 Guelerら、J.Neurosci.2002 McKemy,D.D.ら、Nature、416:52−58、2002 Peier,A.M.ら、Cell 108:705−715、2002
[発明の要約]
今や、本明細書でイヌCMR1(cCMR1)と呼称されるイヌタンパク質が、寒冷刺激に対する応答を調節しかつタンパク質のTRPファミリーに属することが発見された。
全般的な一局面において、本発明は、寒冷刺激を検出かつ伝達することが可能でかつ配列番号2に対する最低96%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子を提供する。一態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するcCMR1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子を提供する。本発明はまた、本発明の核酸分子を含んでなる発現ベクター若しくは組換え宿主細胞も提供する。本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明の核酸分子に選択的にハイブリダイズする核酸プローブ、およびこうしたプローブを含んでなるキットを提供する。
全般的な別の局面において、本発明は、寒冷刺激を検出かつ伝達することが可能でかつ配列番号2に対する最低96%の配列の同一性を有する実質的に精製されたポリペプチドを提供する。一態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するcCMR1タンパク質を含んでなる実質的に精製されたポリペプチドを提供する。本発明はまた:a)本発明のポリペプチドをコードすることが可能な発現ベクターを細胞に導入する段階;およびb)該発現ベクターからのポリペプチドの発現を可能にする条件下で該細胞を培養する段階を含んでなる、本発明のポリペプチドの発現方法も提供する。本発明はさらに、本発明のポリペプチドに選択的に結合する抗体、およびこうした抗体を含んでなるキットを提供する。
本発明は、本発明の核酸分子若しくはポリペプチドを、該核酸分子若しくはポリペプチドに特異的に結合することが可能な剤と接触させる段階を含んでなる、本発明の核酸分子若しくはポリペプチドの検出方法を提供する。
本発明は:
(a)cCMR遺伝子の発現を調節するための機構を含んでなる細胞と試験化合物を接触させる段階;および(b)該試験化合物が、該細胞からの前記機構により制御される遺伝子の発現を増大若しくは減少させるかどうかを決定する段階
を含んでなる、cCMR1タンパク質の発現を増大若しくは減少させる化合物の同定方法を提供する。
本発明はまた:(a)cCMR1イオンチャンネルと試験化合物を接触させる段階;および(b)該試験化合物が該イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階を含んでなる、cCMR1イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる化合物の同定方法も提供する。
本発明の他の局面は:(a)活性化量以下のカルシウムを含有する緩衝溶液中でCMR1イオンチャンネルをインキュベートする段階;(b)該イオンチャンネルを活性化する段階;(c)該イオンチャンネルを試験化合物と接触させる段階;(d)緩衝溶液中のカルシウムの量を増大させる段階;ならびにc)細胞内カルシウム量を測定する段階、およびイオンチャンネルを試験化合物と接触させなかった対照の量と該量を比較する段階を含んでなる、哺乳動物のCMR1イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる化合物の同定方法を包含する。
加えて、本発明は;(a)試験化合物をcCMR1イオンチャンネルと接触させる段階;および(b)該試験化合物が該イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階を含んでなる、疼痛を処置するのに有用な化合物の同定方法を提供する。いくつかの態様において、該方法はさらに:(a)試験化合物を動物に投与する段階;および(b)試験化合物が該動物の侵害受容/侵害防御応答を変える程度を決定する段階を含んでなる。
本発明の他の局面、特徴および利点は、本発明およびその好ましい態様の詳細な記述、ならびに添付の請求の範囲を包含する以下の開示から明らかであろう。
[発明の詳細な記述]
本明細書で引用される全部の刊行物は、引用することによりここに組み込まれる。別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される全部の技術的および科学的用語は、本発明が関する技術分野の当業者に一般に理解されると同一の意味するところを有する。
本明細書で使用されるところの「含んでなる」、「含有する」、「有する」および「包含する」は、それらの公然の制限しない意味で使用される。
以下は、本明細で時折使用される略語である。
bp=塩基対
cDNA=相補DNA
CMR1=寒冷およびメントール感受性受容体1;
cCMR1=イヌ寒冷およびメントール感受性受容体1;
DRG=後根神経節
ELISA=酵素結合免疫測定法
FLIPR=蛍光画像化プレートリーダー
kb=キロ塩基;1000塩基対
nt=ヌクレオチド
PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PCR=ポリメラーゼ連鎖反応
RT−PCR=逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
SSC=塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム
TG=三叉神経節
TRPM8=一過性受容器電位チャンネル、メラノスタチンサブファミリー、タイプ8
UTR=非翻訳領域
ポリペプチド若しくは核酸の「活性」、「生物学的活性」若しくは「機能的活性」は、標準的技術に従ってin vivo若しくはin vitroで測定されるところのポリペプチド若しくは核酸分子により発揮される活性を指す。こうした活性は、イオンチャンネル活性、第二のタンパク質との会合若しくはそれに対する酵素活性のような直接的活性、あるいは、限定されるものでないが多段階の連続的様式で起こる相互作用を挙げることができる1種若しくは1種以上の付加的なタンパク質または他の分子(1種若しくは複数)とのタンパク質の相互作用により媒介される細胞のシグナル伝達活性のような間接的活性であり得る。
本明細書で使用されるところの「生物学的サンプル」は、被験体から単離された細胞若しくは生物学的液体のような細胞若しくは組織物質を含有する若しくはそれらよりなるサンプルを指す。「被験体」は、処置、観察若しくは実験の対象であったラット、マウス、サル若しくはヒトのような哺乳動物であり得る。生物学的サンプルの例は、例えば、唾液、血液、血液細胞(例えば白血球)、羊水、血漿、精液、骨髄、組織若しくは穿刺生検サンプル、尿、腹水、胸水および細胞培養物を包含する。生物学的サンプルは、組織学的目的上採取された凍結切片のような組織の切片もまた包含しうる。試験生物学的サンプルは、分析、監視若しくは観察の対象であった生物学的サンプルである。対照生物学的サンプルは、試験生物学的サンプルの陽性若しくは陰性いずれかの対照であり得る。しばしば、対照生物学的サンプルは、試験生物学的サンプルの型と同一の型の目的の組織、細胞および/若しくは生物学的液体を含有する。
「細胞」は、検出方法の感度に適切な最低1個の細胞若しくは複数の細胞を指す。本発明に適する細胞は細菌でありうるが、しかし好ましくは真核生物であり、そして最も好ましくは哺乳動物である。
「クローン」は、単一の細胞若しくは有糸分裂による共通の祖先に由来する細胞の一集団である。「細胞株」は、細胞のクローン増殖を導きかつ多世代の間in vitroで安定な増殖が可能である初代細胞である。
「寒冷およびメントール感受性受容体」、「CMR1」、「一過性受容器電位チャンネル、メラノスタチンサブファミリー、タイプ8」すなわち「TRPM8」タンパク質は、それぞれ低温、若しくは限定されるものでないがメントールおよびイチリンを挙げることができる冷覚を惹起する化合物のような寒冷刺激を検知かつ伝達することが可能であるタンパク質を指す。「CMR1」は興奮性イオンチャンネルCMR1チャンネルを形成し得、これは低温若しくは冷覚を惹起する化合物により活性化され得る。活性化されたCMR1チャンネルは、該チャンネルを通るCa++イオンの流入をゲートして膜の脱分極をもたらす。CMR1タンパク質は、(1)配列番号2に描かれるイヌCMR1(cCMR1)タンパク質に対する約80%以上のアミノ酸配列の同一性を有し得るか;または(2)配列番号2に描かれるcCMR1タンパク質に対し生じられた抗体、例えばポリクローナル若しくはモノクローナル抗体に結合し得る。いくつかの態様において、CMR1は配列番号2に対する約85、90若しくは95パーセント以上のアミノ酸配列の同一性を有する。例示的CMR1は、配列番号2に描かれるcCMR1タンパク質の構造的および機能的多形を包含するcCMR1を包含する。「多形」は、一集団の個体間の特定の一遺伝子座の一組の遺伝子バリアントを指す。CMR1はまた、ヒト、ラット、マウス、ブタ、イヌおよびサルを包含する他の動物におけるイヌCMR1のオルトログ、例えばラットCMR1(GenBankタンパク質ID:NP_599198)若しくはマウスTRPM8(GenBankタンパク質ID:NP_599013)の構造的および機能的多形も包含する。CMR1遺伝子は、DRGおよびTGのようなある種の神経組織中で天然に発現される。
「CMR1活性化温度」は、CMR1チャンネルが基礎に比較してその伝導性の最低10%の増大を表す温度である。当業者は、CMR1チャンネルの活性化温度を実験で決定し得る。いくつかの態様において、「CMR1活性化温度」は、CMR1チャンネルが基礎に比較してその伝導性の最低15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%若しくは50%の増大を表す温度である。「CMR1活性化温度」は典型的に約6℃〜28℃のものである。いくつかの態様において、CMR1活性化温度は、約15℃〜28℃、19℃〜28℃、23℃〜28℃若しくは19℃〜24℃である。
「CMR1非活性化温度」は、「CMR1活性化温度」の範囲の外側にある温度である。例示的なCMR1非活性化温度は37℃である。
「遺伝子」は、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質の産生に関与するDNA、ならびに、コーディング領域、コーディング領域に先行する(「5’UTR」)および後に続く(「3’UTR」)非コーディング領域を包含するこうしたタンパク質種をコードするmRNAのセグメントである。「遺伝子」はまた、個々のコーディングセグメント(「エキソン」)間の介在非コーディング配列(「イントロン」)も包含しうる。「プロモーター」は、遺伝子の転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合に関与するDNAの制御配列を意味している。プロモーターは、しばしば、遺伝子の転写開始部位の上流(「に対し5’」)である。「制御配列」は、遺伝子の発現を制御し得る遺伝子の部分を指す。「制御配列」は、プロモーター、エンハンサー、ならびにポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位(細菌の発現について)および/若しくはオペレーターのような他の発現調節領域を包含し得る。「エンハンサー」は、遺伝子の発現を距離および方向依存性の様式で調節し得るDNAの制御配列を意味している。「コーディング領域」は、三塩基コドンを介しての対応するポリペプチドの翻訳のためのアミノ酸ならびに開始および終止シグナルをコードする遺伝子の部分を指す。
「核酸配列」若しくは「ヌクレオチド配列」は、一若しくは二本鎖いずれかの形態のポリマー中のデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドいずれかの残基の配置を指す。核酸配列は、以下の塩基すなわちチミジン、アデニン、シトシン、グアニンおよびウラシル(それぞれT、A、C、GおよびUと略記される)の天然のヌクレオチド、ならびに/若しくは合成アナログから構成され得る。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、比較的短い長さ、例えば100残基長未満の一本鎖DNA若しくはRNA配列を指す。多くの方法について、長さ約16〜25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが有用であるが、とは言え約25ヌクレオチド以上のより長いオリゴヌクレオチドをときに利用しうる。いくつかのオリゴヌクレオチドは、相補核酸鎖の合成のための「プライマー」として使用し得る。例えば、DNAプライマーは、相補核酸配列にハイブリダイズして、DNAポリメラーゼを使用する反応で相補DNA鎖の合成を開始し得る。オリゴヌクレオチドはまた、数種の核酸検出方法、例えばノーザンブロッティング若しくはin situハイブリダイゼーションにおけるハイブリダイゼーションにも有用である。
「ポリペプチド配列」若しくは「タンパク質配列」は、ポリマー中のアミノ酸残基の配置を指す。ポリペプチド配列は、標準的な20種の天然に存在するアミノ酸、加えて希なアミノ酸および合成アミノ酸アナログから構成され得る。より短いポリペプチドは一般にペプチドと称される。
「単離された」核酸分子は、該核酸の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。「単離された」核酸分子は、例えば、該核酸が由来する生物体のゲ
ノムDNA中でその5’および3’端で該核酸分子に天然に隣接するヌクレオチド配列の最低1種を含まない核酸分子であり得る。単離された核酸分子は、他の配列に依存しない別個の核酸分子(例えばPCR若しくは制限エンドヌクレアーゼ処理により生じられるcDNA若しくはゲノムDNAフラグメント)、ならびにベクター、自律複製プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス若しくはヘルペスウイルス)、または原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれている核酸分子を制限なしに包含する。加えて、単離された核酸分子は、ハイブリッド若しくは融合核酸分子の一部である核酸分子を包含し得る。単離された核酸分子は:(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりin vitroで増幅される;(ii)例えば化学合成により合成される;(iii)クローニングにより組換え的に製造される;または(iv)切断および電気泳動若しくはクロマトグラフィー分離によるように精製される核酸配列であり得る。
「単離された」若しくは「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性の部分は、細胞、または該タンパク質が由来する組織供給源からの細胞性物質若しくは他の汚染するタンパク質を実質的に含まないか、または、化学的に合成される場合は化学物質前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」という言語は、該タンパク質が単離若しくは組換えで製造される細胞の細胞成分から該タンパク質が分離されている、タンパク質の調製物を包含する。従って、細胞性物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%若しくは5%(乾燥重量)未満の異種タンパク質(本明細書で「汚染するタンパク質」ともまた称される)を有するタンパク質の調製物を包含する。タンパク質若しくはその生物学的に活性の部分が組換えで製造される場合、それはまた、好ましくは培地を実質的に含まない。すなわち、培地はタンパク質調製物の容量の約20%、10%若しくは5%未満を表す。タンパク質が化学合成により製造される場合は、それは、好ましくは化学物質前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。すなわち、それは、化学物質前駆体若しくはタンパク質の合成に関与する他の化学物質から分離されている。従って、タンパク質のこうした調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量)未満の化学物質前駆体若しくは目的のポリペプチド以外の化合物を有する。単離された生物学的に活性のポリペプチドはいくつかの異なる物理的形態を有し得る。単離されたポリペプチドは、完全長の生来のすなわちプロセシングされていないポリペプチドとして、または部分的にプロセシングされたポリペプチドとして、若しくはプロセシングされたポリペプチドの組合せとして存在し得る。完全長の新生ポリペプチドは、該完全長の新生ポリペプチドのフラグメントの形成をもたらす特異的タンパク質分解的切断事象により、翻訳後に修飾され得る。フラグメント若しくはフラグメントの物理的会合は、完全長のポリペプチドと関連する生物学的活性を有し得るが;しかしながら、個々のフラグメントに関連する生物学的活性の程度は変動し得る。単離されたすなわち実質的に精製されたポリペプチドは、単離された核酸配列によりコードされるポリペプチド、ならびに、例えば化学合成法により合成されたポリペプチド、および生物学的材料から分離されかつその後慣習的タンパク質分析若しくは調製手順を使用して本明細書に記述される方法に従ってそれが使用されることを可能にする程度まで精製されたポリペプチドであり得る。
「組換え」は、分子生物学技術を使用してその天然の状態以外の何かに改変された、核酸、核酸によりコードされるタンパク質、細胞若しくはウイルス粒子を指す。例えば、組換え細胞は、天然の(非組換え)形態の細胞内で見出されないヌクレオチド配列を含有し得るか、または、そうでなければ異常に発現されるか、過小発現されるか、若しくは全く発現されない天然の遺伝子を発現し得る。組換え細胞は、遺伝子が人工的手段により改変されかつ細胞中に再導入されている天然の形態の細胞中で見出される遺伝子もまた含有し得る。該用語はまた、細胞から核酸を取り出すことなく修飾された内因性の核酸を含有する細胞も包含し;こうした改変は、例えば遺伝子置換および部位特異的突然変異誘発により得られるものを包含する。
「組換え宿主細胞」は、それ中に組換えDNA配列を導入した細胞である。組換えDNA配列は、例えば電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、微小注入法、形質転換、遺伝子銃およびウイルス感染を包含するいずれかの適する方法を使用して宿主細胞に導入し得る。組換えDNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組込まれ(共有結合され)ても組込まれなくてもよい。例えば、組換えDNAはプラスミドのようなエピソーム要素上で維持され得る。あるいは、安定に形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞に関して、組換えDNAは、それが染色体の複製により娘細胞により受け継がれるように染色体に組み込まれている。この安定性は、外因性DNAを含有する娘細胞の一集団から構成される細胞株すなわちクローンを樹立する、安定に形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞の能力により示される。組換え宿主細胞は、大腸菌(E.coli)のような細菌、酵母のような真菌細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サルおよびげっ歯類起源の細胞株のような哺乳動物細胞、ならびにドロソフィラ属(Drosophila)およびカイコ由来の細胞株のような昆虫細胞を包含する原核生物若しくは真核生物でありうる。「組換え宿主細胞」という用語が、特定の被験体細胞のみならず、しかしまたこうした細胞の子孫若しくは潜在的な子孫も指すことがさらに理解される。ある種の改変が、突然変異若しくは環境の影響のいずれかにより後継世代で起こり得るため、こうした子孫は事実上親細胞に同一でないことがあるが、しかしなお本明細書で使用されるところの該用語の範囲内に包含される。
本明細書で使用されるところの「操作可能に連結される」は、2種の核酸配列間の機能的関係を指す。例えば、コーディング配列の発現(例えば転写)を制御するプロモーター配列は、そのコーディング配列に操作可能に連結されている。操作可能に連結された核酸配列は、連続的(多くのプロモーター配列に典型的)、若しくは非連続的(例えばリプレッサータンパク質をコードする核酸配列の場合)であり得る。組換え発現ベクター内で、「操作可能に連結される」は、目的のコーディング配列が、例えばin vitro転写/翻訳系、若しくはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞中での該コーディング配列の発現を見込む様式で、制御配列(1種若しくは複数)に連結されていることを意味することを意図している。
「ベクター」若しくは「構築物」は、異種核酸が挿入され得るか若しくは挿入されている核酸分子を指す。数種のベクターは、該ベクターの複製、または該ベクター若しくは構築物によりコードされるタンパク質の発現を見込んで宿主細胞に導入し得る。ベクターは、典型的には選択可能なマーカー、例えば、薬剤耐性を見込むタンパク質をコードする遺伝子、複製起点配列、および異種配列の挿入を見込むマルチクローニング部位を有する。ベクターは、典型的にはプラスミドに基づき、そして、小文字の「p」、次いで文字および/若しくは数字の組合せにより呼称される。本明細書で開示される出発プラスミドは、商業的に入手可能、制限されずに公的に入手可能のいずれかであるか、若しくは当該技術分野で既知の手順の応用により、入手可能なプラスミドから構築し得る。本発明により使用し得る多くのプラスミドならびに他のクローニングおよび発現ベクターは公知であり、そして当業者に容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明での使用に適するいかなる数の他のプラスミドも構築しうる。こうしたプラスミド、ならびに本発明中の他のベクターの特性、構築および使用は、本開示から当業者に容易に明らかであろう。
「配列」は、単量体がポリマー中に存在する直線的順序、例えばポリペプチド中のアミノ酸の順序若しくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序を意味している。
当該技術分野で既知のところの「配列の同一性若しくは類似性」は、配列を比較することにより決定されるところの2種若しくはそれ以上のポリペプチド配列または2種若しくはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。2種若しくはそれ以上の核酸配列ま
たは2種若しくはそれ以上のポリペプチド配列間の関係の文脈で本明細書で使用されるところの「同一性」は、配列を最適に整列かつ分析する場合に同一であるそれぞれヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の比率を指す。例えばアミノ酸配列、配列番号2に対して問い合わせ配列を比較する目的上、問い合わせ配列を配列番号2と最適に整列し、そして配列番号2の長さ(1104アミノ酸)全体にわたる最良の局所的アライメントを得る。
分析は、人的に、若しくは配列比較アルゴリズムを使用して実施し得る。配列の比較のため、典型的には1配列が参照配列として作用し、それと問い合わせ配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合は下位配列の座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。
比較のための配列の最適のアライメントは、例えば、NeedlemanとWunsch、J Mol.Biol.、48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムを使用することにより実施し得る。NeedlemanとWunschの分析を実施するためのソフトウェアは、パスツール研究所(フランス)の生物学的ソフトウェアのウェブサイト:http://bioweb.pasteur.fr/seqanal/ interfaces/needle.htmlにより公的に入手可能である。NEEDLEプログラムは、それらの長さ全体を考慮する場合に2配列の(ギャップを包含する)最適のアライメントを見出すために、Needleman−Wunschの包括的アライメントアルゴリズムを使用する。同一性は、長さ中のいかなるギャップも包含する報告された整列させた領域にわたる2配列間の同一の一致の比率と一緒に計算される。長さ中のいかなるギャップも包含する報告された整列させた領域にわたる2配列間の一致の比率として類似性が計算される、類似性スコアもまた提供される。標準的比較は、タンパク質配列についてEBLOSUM62マトリックス、およびヌクレオチド配列についてEDNAFULLマトリックスを利用する。ギャップオープンペナルティは、ギャップが創製される場合に減じられるスコアであり;ギャップオープンペナルティを使用するデフォルト設定は10.0である。ギャップ伸長については、ギャップ中の各塩基若しくは残基について標準的ギャップペナルティにペナルティを加算し;デフォルト設定は0.5である。
ハイブリダイゼーションは、2種のポリヌクレオチドが相互に実質的に同一であることを示すための試験としてもまた使用し得る。高程度の同一性を共有するポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で相互にハイブリダイズすることができる。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、(1989)に記述されるとおり当該技術分野で既知の意味するところを有する。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、次いでハイブリダイズするポリヌクレオチドが相補性を共有する長さに依存して50〜65℃で0.2×SSCおよび0.1%SDS中での1回若しくはそれ以上の洗浄を含んでなる。
「レポーター遺伝子」は、レポーター遺伝子産物をコードする核酸配列を指す。当該技術分野で既知であるとおり、レポーター遺伝子産物は典型的に標準的方法により容易に検出可能である。例示的な適するレポーター遺伝子は、限定されるものでないが、ルシフェラーゼ(lux)、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−グルクロニダーゼ、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、およびグアニンキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。
「CMR1チャンネルの伝導性を増大させる化合物」は、CMR1チャンネルを通るイオンの増大された通過をもたらすいかなる化合物も包含する。一態様において、こうした化合物は、CMR1チャンネルに結合してその伝導性を増大させるCMRチャンネルのアゴニストである。別の態様において、こうした化合物は、アゴニスト結合部位と異なるアロステリック部位でCMR1チャンネルと相互作用するがしかしアゴニストに対する該チャンネルの応答を増強する、正のアロステリック調節物質である。
「CMR1チャンネルの伝導性を低下させる化合物」は、CMR1チャンネルを通るイオンの低下された通過をもたらすいかなる化合物も包含する。一態様において、こうした化合物は、CMR1チャンネルに結合して、競合的若しくは非競合的いずれかの様式でアゴニストの作用を打ち消す、低下させる若しくは制限する、CMRチャンネルのアンタゴニストである。別の態様において、こうした化合物は、アゴニスト若しくはアンタゴニスト結合部位と異なるアロステリック部位でCMR1チャンネルと相互作用しかつアゴニストに対する該チャンネルの応答を低下させる、負のアロステリック調節物質である。なお別の態様において、こうした化合物は、アゴニストのようないずれかの他の化合物の非存在下でCMR1チャンネルに結合しかつ該チャンネルの伝導性を低下させる、インバースアゴニストである。
本明細書で使用されるところの「膜電位」、「膜貫通電位」若しくは「膜貫通電位差」は、それぞれ、細胞の原形質膜、外側の、限界脂質二重層膜を横断する電位差を指す。ほぼ全部の動物細胞は、−20ないし−100mVの範囲の静止電位を伴い、内側で負である。本明細書で使用されるところの「静止電位」は、細胞が静止している場合にその周囲に関する細胞の内側の電位を指す。
本明細書で使用されるところの「脱分極」は、より正に(例えば−90mVから−50mVに)なる細胞膜電位の傾向を指す。
本明細書で使用されるところの「過分極」は、より負に(例えば−50mVから−90mVに)なる細胞膜電位の傾向を指す。本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの慣習的技術を使用する。これらの技術は公知であり、そして例えばCurrent Protocols in Molecular Biology、第I、IIおよびIII巻、Ausubel編(1997);ならびにSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2001)に説明されている。
一局面において、本発明は、新規cCMR1(cCMR1)核酸、これらの核酸によりコードされるポリペプチド、組換えcCMR1物質、ならびにこれらの物質の製造、検出および利用を伴う方法に関する。
CMR1の命名法はMcKemy,D.D.ら(Nature、416:52−58、2002)により確立され、そしてラットのDRGおよびTGニューロン中で発現される寒冷およびメントール感受性受容体を記述するのに使用された。ヒトCMR1(ヒトTRPM8としてもまた知られる)は、ラットCMR1のアミノ酸配列に92%同一であり、そして、前立腺特異的転写物として以前に同定され、かつ、前立腺、黒色腫、結腸直腸および乳癌を包含する多様な腫瘍組織中で発現されることもまた見出されている(Tsavaler,L.ら Cancer Res.61:3760−3762、2002)。マウスCMR1(マウスTRPM8としてもまた知られる)は、マウスのDRG cDNA調製物からクローン化され、そしてヒトCMR1アミノ酸配列に93%同一であることが
示された(Peier,A.M.ら、Cell 108:705−715、2002)。
本発明において、イヌcCMR1遺伝子はイヌDRG組織から調製したcDNAライブラリーからクローン化した。cCMR1のオープンリーディングフレーム(ORF)ならびに対応するmRNAの5’および3’非翻訳領域を包含するcCRM1 cDNAが配列決定された。cCMR1のcDNA配列を配列番号1(表1)として示す。配列番号1は、また表1に示される1104残基のポリペプチド(配列番号2)をコードし、ヒト、マウスおよびラットからのCMR1タンパク質配列と整列されている(表2を参照されたい)。このアライメントに基づけば、cCMR1ポリペプチドは、95.23%のヒトCMR1と最大のアミノ酸同一性を共有する。
本発明において、cCMR1核酸を発現ベクターにもまたサブクローニングし、そしてcCMR1タンパク質の発現のため宿主細胞に形質転換した。この組換えcCMR1細胞系は、該組換えcCMR1細胞を低温でインキュベートしたか、またはメントール若しくはイチリンに曝露させた場合に、Ca++イオンの流入を可能にした機能的cCMR1タンパク質を発現することが示された。該組換えcCMR1系はcCRM1の機能若しくは発現を調節する化合物をスクリーニングかつ同定するのに有用である。CMR1の機能若しくは発現を調節する化合物は治療上有用であり得る。これらの化合物は、例えばcCMR1タンパク質を発現する組換え系を使用して同定し得、そしてその後、ヒトで有用であり得る投薬パラメータを確立するためにイヌ若しくはいずれかの他の適する哺乳動物でin vivoで試験し得る。
CMR1タンパク質の機能若しくは発現の調節は、多様な疼痛状態の処置に有利であり得る。CMR1受容体は、寒冷、ならびに寒冷様感覚を模倣するメントールおよびイチリンのような化合物に応答性であるため、cCMR1活性の調節は、鎮痛またはうっ血性鼻炎、咳若しくは喘息性気管支炎のような他の解消の方法として寒冷若しくはメントール処置を使用する治療的応用にもまた適切であることが予期される。例えば、CMR1タンパク質の機能若しくは発現の調節は、皮膚の炎症、ならびに日焼けおよびかみそり負けを包含する皮膚の火傷、若しくは咽頭痛のような皮膚若しくは粘膜の状態を有する患者に有用であり得る。CMR1活性の調節は、冷感異痛を引き起こす寒冷に対する過敏症に罹っている患者でもまた適切であり得る。CMR1活性の調節は、急性疼痛、例えば歯痛(toothache)(歯痛(odontalgia))、ならびに三叉神経痛(疼痛性チック)および顎関節痛のような他の三叉で分散される疼痛を処置するためにもまた適切であり得る。
加えて、ヒトCMR1は腫瘍増殖と関連するマーカーとして同定されている(Tsavaler,L.ら Cancer Res.61:3760−3769、2002)ため、cCMR1もまたイヌの多様な細胞増殖障害の診断に有用であり得る。
cCMR1ホモログをクローン化するための試みにおいて、PCRに基づく戦略を使用した。オリゴヌクレオチドプライマーを、配列番号3(cmr1−23)および配列番号4(cmr1−26)に示される配列に従って合成した。これらのプライマーは、配列番号1の位置1761から位置2886までのcCMR1配列の一部分を成功裏に増幅することが可能であった。大きさがおよそ1.1kbであったPCR産物を精製し、そしてその後配列決定ベクターにサブクローニングした。1.1kbのcCMR1フラグメントの配列に基づいて新たなプライマーを開発し、そして、RACE(cDNA端の迅速増幅)で改変したイヌDRG cDNAを用いる別個のPCR反応で使用した。5’および3’双方の非翻訳領域を包含するcCMR1 cDNAの完全な配列が得られた(配列番号1)。cCMR1のオープンリーディングフレームは、表1に示されるところの1104残基のポリペプチド(配列番号2)をコードする。
従って、一態様において、本発明は、配列番号1の位置69から3380までの配列を含んでなる単離された核酸配列を提供する。配列番号1の位置69ないし3380は1個のオープンリーディングフレーム配列(コーディング領域)であり、配列番号2のCMR1ポリペプチドをコードし得る。本発明はまた、例えば配列番号1の位置1から69までのcCMR1のオープンリーディングフレームから上流の領域に対応する単離された核酸配列、および例えば配列番号1の位置3380から3815までのcCMR1のオープンリーディングフレームから下流の領域に対応する単離された核酸配列も提供する。従って、別の態様において、本発明は、配列番号1の位置1から69まで、および別の態様において配列番号1の位置3380から3815までの配列を包含する単離された核酸配列を提供する。
配列番号1のフラグメントを含んでなる単離された核酸は多様な目的上有用である。例えば、これらの配列は、CMR1核酸の検出若しくはCMR1核酸に隣接する配列の検出のためのオリゴヌクレオチドプローブとして使用し得る。それらはCMR1核酸の増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマーとして使用し得る。それらはまた、別のポリペプチド配列に融合されたcCMR1ポリペプチドの一部分若しくは全部、例えば1種若しくはそれ以上の異種配列からの1個若しくはそれ以上のモチーフ若しくはドメインで組換えられたcCMR1配列の1個若しくはそれ以上のモチーフ若しくはドメインをコードするキメラ核酸の製造にも使用し得る。
なお別の態様において、本発明は、配列番号2を含んでなるポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる単離された核酸を提供する。遺伝暗号の縮重により、1種以上のコドンが特定の1アミノ酸をコードするのに使用されることがあり、そして従って、cCMR1アミノ酸配列(例えば配列番号2)は複数の核酸配列のいずれか1つによりコードされ得る。単離された核酸は、配列中の1個若しくはそれ以上のコドンが、異なる配列のコドンにより置換されているがしかし同一アミノ酸残基をコードする配列を包含するは、本明細書で「保存的コドン置換」と称される。従って、本発明は、1種若しくは1種以上の保存的コドン置換を有する配列番号2をコードする核酸配列を包含する。当業者は、本明細書に提供される配列情報に基づき、1個若しくは1個以上の保存的コドン置換を有しかつ配列番号2をコードする特定の核酸配列を決定することが可能であろう。保存的コドン置換はCMR1ポリペプチドをコードする核酸配列中で行うことができ、例えば、コドンTTTおよびTTC(集合的にTTT/Cと称される)はPhe(フェニルアラニン)残基をコードし得;他のコドン置換は後に続くとおりである:TTA/GおよびCTT/C/A/G:Leu;ATT/C:Ile;ATG:Met;GTT/C/A/G:Val;TCT/C/A/G:Ser;CCT/C/A/G:Pro;ACT/C/A/G:Thr;GCT/C/A/G:Ala;TAT/C:Tyr;CAT/C:His;CAA/G:Gln;AAT/C:Asn;AAA/G:Lys;GAT/C:Asp;GAA/G Glu;TGT/C:Cys;CGT/C/A/G:Arg;AGT/C:Ser;AGA/G;Arg;GGT/C/A/G:Gly。保存的コドン置換は、cCMR1ポリペプチドをコードする核酸配列中のいずれの位置でも行い得る。
本明細書に示されるとおり、配列番号1の位置69ないし位置3380は、天然に発現されるところのイヌCMR1の予測された配列である1104アミノ酸残基のポリペプチド(配列番号2)をコードする。表2に示されるとおり、配列番号2をヒト、マウスおよびラットCMR1のタンパク質配列と整列した。アライメントにより、cCMR1ポリペプチド配列(配列番号2)は、ヒトCMR1タンパク質配列に最も同一であり、1104残基のうち1052を共有する(95.23%の同一性)。cCMR1タンパク質配列は、マウス(1042/1140:94.38%の同一性)およびラット(1043/1140:94.47%の同一性)CMR1ポリペプチド配列とのより低い程度の同一性を共有する。
示されるとおり、表2に示されるところのイヌ、ヒト、マウスおよびラットCMR1配列は、全般として90%以上のアミノ酸の同一性を共有する。しかしながら、あるアミノ酸位置で、イヌ配列はヒト、マウス若しくはラット配列の1種若しくはそれ以上と異なる。イヌ残基が1種若しくは1種以上の他の種と異なるアミノ酸位置は、該残基がヒト、イヌ、マウスおよびラット配列中で同一である位置に比較してより変動性である。例えば、配列のアライメントに基づけば、配列番号2の位置1、2および3のアミノ酸残基はヒト、マウスおよびラット配列のものに同一である。しかしながら、配列番号2の位置4および5のアミノ酸残基はヒト配列に関して変動し、また、配列番号2の位置28のアミノ酸残基はヒト、マウスおよびラット配列に関して変動する。イヌ配列と、ヒト、マウス若しくはラットCMR1配列のいずれか1種との間に最低1個の差違が存在するアミノ酸位置は、本明細書で「CMRファミリーのバリアント位置」と称される。CMRファミリーのバリアント位置の一覧を表3に提供する。
この分析に基づけば、1個若しくはそれ以上のCMRファミリーのバリアントアミノ酸の1個の置換を有するcCMR1ポリペプチドは、CMR1の生物学的活性を有することが予期される。すなわち、配列番号2は、1個若しくはそれ以上のCMRファミリーのバリアントアミノ酸位置にて、その同一位置でヒト、マウス若しくはラット配列中で見出されるアミノ酸残基から選択される1アミノ酸、または同等な1アミノ酸で置換され得る。cCMR1のアミノ酸を置換するアミノ酸は本明細書で「CMRファミリーのバリアントアミノ酸」と称される。「CMRファミリーのバリアントアミノ酸」は、cCMR1アミノ酸と異なりかつヒト、マウス若しくはラットのような他の哺乳動物のCMR1配列中に存在するアミノ酸であるアミノ酸よりなる。そのいずれも元のcCMR1アミノ酸残基を置換するのに使用し得る、適するCMRファミリーのバリアントアミノ酸の一覧もまた表3に見出し得る。例えば、配列番号2のグルタミン酸(E)の置換に適する位置4のCMRファミリーのバリアントアミノ酸はアルギニン(R、ヒトCMR1中に存在するところの)である。
いくつかのCMRファミリーバリアントアミノ酸位置で、イヌ、ヒト、マウスおよびラットアミノ酸残基は共通の化学特性を共有する。例えば、配列番号2の位置18および34のCMRファミリーバリアントアミノ酸は、疎水性アミノ酸残基、例えばメチオニン(M)若しくはロイシン(L)を包含し得る。他の疎水性アミノ酸はグリシン、バリン、イソロイシンおよびプロリンを包含する。他のアミノ酸群は、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンを包含する「塩基性アミノ酸」;グルタミン酸およびアスパラギン酸を包含する「酸性アミノ酸」;フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンを包含する「芳香族アミノ酸」;グリシンおよびアラニンを包含する「小型アミノ酸」;セリン、トレオニンおよびシステインを包含する「求核アミノ酸」;ならびにアパラギンおよびグルタミンを包含する「アミドアミノ酸」を包含する。
従って、別の局面において、本発明は、CMRファミリーバリアントアミノ酸を包含する配列番号2のCMR1ポリペプチドをコードする核酸を提供する。いくつかの態様において、cCMR1ポリペプチドは、元のcCMR1アミノ酸残基の4%未満のCMRファミリーバリアントアミノ酸を包含する。好ましくは、cCMR1ポリペプチドは、元のcCMR1アミノ酸残基の約2%未満、および、最も好ましくは元のcCMR1アミノ酸残基の約1%未満のCMRファミリーバリアントを包含する。
本発明はまた、本明細書に記述されるところのいずれかの単離された核酸分子に相補的である単離された核酸分子も提供する。
本発明の単離された核酸は、付加的なアミノ酸残基を有するcCMR1ポリペプチドをコードする核酸配列もまた包含し得る。いくつかの態様において、該付加的なアミノ酸は、アミノ末端、カルボキシル末端に、cCMR1配列内、若しくはこれらの位置の組合せに存在する。これらの型の付加的なアミノ酸配列を有するcCMR1ポリペプチドは、「cCMR1融合タンパク質」と称され得る。いくつかの場合において、付加的なアミノ酸配列の性質に依存して、それらをそうでなければ「キメラ」若しくは「標識」cCMR1タンパク質と称することがより適切でありうる。にもかかわらず、本明細書に提供される配列情報を考えれば、付加的なアミノ酸配列を有するCMR1ポリペプチドを識別することが可能であろう。付加的なアミノ酸残基は、短い(例えば1から約20までの付加的なアミノ酸残基)、若しくはより長い(例えば約20以上の付加的なアミノ酸残基)ことができる。付加的なアミノ酸残基は、例えばタンパク質(例えば抗体)若しくは小分子の結合のためのエピトープとしてはたらくこと;細胞内および細胞外輸送のための標識としてはたらくこと;付加的な酵素若しくは他の活性を提供すること;または検出可能なシグナルを提供することを包含する、1種若しくはそれ以上の機能若しくは目的を供し得る。
例えば、核酸配列は、有機若しくは無機化合物との(イオン、共有、配位、水素若しくはファンデルワールス結合のような結合、またはそれらの組合せのための座標(coordinate)を提供する付加的なアミノ酸残基を包含し得るcCMR1融合タンパク質をコードし得る。有用な付加的なアミノ酸配列は、例えば、Ni結合した残基を介するタンパク質の精製に有用なポリヒスチジン残基、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメイン若しくはそれらの部分(CH1、CH2、CH3)、アルブミン、検出若しくは精製のための免疫複合体の形成に有用なヘマグルチニン(HA)若しくはmyc親和性エピトープ標識(これらの部分に対する抗体は商業的に得ることができる)、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような検出に有用なポリペプチド、β−ガラクトシダーゼ(B−Gal)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼおよびアルカリホスファターゼ(A)のような酵素、タンパク質輸送のためのシグナル配列、ならびに所望の場合はcCMR1配列から付加的なアミノ酸配列を分離するのに有用なプロテアーゼ切断配列を包含する。
別の局面において、cCMR1タンパク質若しくは核酸のようなcCMR1の発現を検出することが可能である診断アッセイが提供される。cCMR1タンパク質の発現は、検出可能に標識されているか若しくは後に標識され得るプローブにより検出し得る。典型的には、プローブは上述されたところの発現されたタンパク質を認識する抗体、とりわけモノクローナル抗体である。従って、一態様において、cCMR1タンパク質の発現を検出することが可能なアッセイは、cCMR1に結合する1種若しくは1種以上のモノクローナルおよび/若しくはポリクローナル抗体とイヌ組織サンプルを接触させることを含んでなる。
cCMR1核酸およびタンパク質、CMR1に向けられた抗体、ならびにこれらの成分のいずれかを含有する生物学的系は、検出可能な試薬で標識し得るか、若しくは、cCMR1に対する特異性を有する化合物を検出可能な試薬で標識し得、そしてcCMR1の実体を検出するために使用し得る。検出可能な試薬は、分光学的、生化学的、光化学的、生体電子工学的、免疫化学的、電気的、光学的若しくは化学的技術により検出され得る化合物および組成物を包含する。検出可能な部分の例は、限定されるものでないが、放射性同位元素(例えば3233P、35S)、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、蛍光マーカーおよび色素のような分光学的マーカー、結合された酵素、質量分析標識ならびに磁性標識を挙げることができる。
抗体を利用するイムノアッセイ法は、限定されるものでないがドットブロッティング、ウエスタンブロッティング、競合的および非競合的タンパク質結合アッセイ、酵素結合免
疫測定法(ELISA)、免疫組織化学、蛍光標示式細胞分取(FACS)、イムノPCR、免疫沈降および一般に使用される他者を挙げることができる。
cCMR1遺伝子に対応するmRNAの発現のレベルは、一般に使用される分子生物学的方法、例えばノーザンブロッティング、in situハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護アッセイ、RT−PCR(リアルタイム、定量的PCRを包含する)、高密度アレイおよび他のハイブリダイゼーション法を利用して検出し得る。従って、別の態様において、cCMR1核酸にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドとイヌ組織サンプルを接触させることを含んでなる、イヌ組織のサンプル中の1種若しくは1種以上のcCMR1遺伝子の発現を検出することが可能なアッセイが提供される。オリゴヌクレオチドプライマーは、一般に、PCR/プライマー伸長実験のため長さが10〜20ヌクレオチドからである。およそ40〜50ヌクレオチドのより長いオリゴヌクレオチドが、in situ若しくはブロットハイブリダイゼーションにより恒常的に利用される。50ヌクレオチドより長い配列さえ、検出実験にもまた使用され得る。RNAは、例えばAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons,Inc.(1996)に記述されるところの当業者に公知の方法により、組織サンプルから単離し得る。cCMR1遺伝子から転写されたmRNAのレベルの好ましい一検出方法はRT−PCRによる。RT−PCR技術の詳細は公知であり、かつ、本明細書にもまた記述される。
開示される遺伝子の1種以上から得られるmRNA転写物のレベルの別の好ましい検出方法は、オリゴヌクレオチド若しくは組織の秩序正しいアレイへの標識mRNAのハイブリダイゼーションを必要とする。こうした方法は、複数のこれらの遺伝子の転写のレベルを同時に測定して遺伝子発現プロファイル若しくはパターンを生成させることを可能にする。
本ハイブリダイゼーション法で利用されるオリゴヌクレオチドは、典型的には固体支持体に結合される。固体支持体の例は、限定されるものでないが、膜、フィルター、スライドガラス、紙、ナイロン、ウエハー、ファイバー、磁性若しくは非磁性ビーズ、ゲル、管、ポリマー、ポリ塩化ビニル皿などを挙げることができる。オリゴヌクレオチドを、直接若しくは間接的のいずれかで共有若しくは非共有いずれかで結合させ得るいかなる固体表面も使用し得る。とりわけ好ましい固体支持体は高密度アレイすなわちDNAチップである。これらの高密度アレイは、特定のオリゴヌクレオチドプローブをアレイ上の予め選択された場所に含有する。各予め選択された場所は1分子以上の特定のプローブを含有し得る。該オリゴヌクレオチドは支持体上の指定された場所にあるため、ハイブリダイゼーションパターンおよび強度(一緒に独特の発現プロファイル若しくはパターンをもたらす)を、特定の遺伝子の発現レベルに関して解釈し得る。
オリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、目的の上で同定された遺伝子(1種若しくは複数)の相補的転写物にのみ特異的にハイブリダイズするのに十分な長さのものである。
場合によっては、cCMR1核酸配列の全部若しくは一部分を、他の種からの核酸調製物をプロービングして類似の配列の存在を決定するのに使用し得る。例えば、cCMR1核酸の全部若しくは一部分を、cCMR1配列に類似である他の種からのcDNA若しくはゲノム核酸配列を同定するのに、プロービングされたとして使用し得る。陽性のクローンを、cCMR1プローブにハイブリダイズするものと同定し得る。
加えて、本発明により提供されるところのcCMR1核酸若しくはポリペプチド配列の全部若しくは一部分を、他の有用な情報、例えばcCMR1配列に対する相同性を有する
タンパク質若しくはcCMR1配列に結合する分子を同定するためにコンピュータ支援プログラムで使用し得る。例えば、cCMR1配列の全部若しくは部分を使用して多様な電子的データベースをスクリーニングして、該電子的データベースのメンバーがcCMR1配列に対する相同性を有するかどうかを決定し得る。種特異的である多数の遺伝子データベースを、本明細書に示されるところのイヌ核酸若しくはポリペプチド配列のいずれかの部分を使用して問い合わせ得る。核酸およびタンパク質のいずれか若しくは双方の検索を実施し得る。
別の局面において、cCMR1ポリペプチドの三次元モデルを決定し得、そして、該タンパク質構造の多様な部分に結合する分子を同定するのに使用し得る。例えば、本明細書に記述されるところの単離されたcCMR1核酸を使用して、cCMR1タンパク質を細胞系にて発現、精製し、そしてその後該タンパク質の構造に関する情報を得るために結晶化し得る。構造の情報は、例えばX線回折若しくは核磁気共鳴分光法を実施することにより得ることができる。アミノ酸残基およびそれらの側鎖の位置は、三次元モデル中の座標として表し得る。この情報をその後、コンピュータプログラムに提供し得る。
分子モデル化プログラムを使用して、小分子がcCMR1ポリペプチドの機能上適切な部分、例えば活性部位に適合し得るかどうかを決定し得る。分子モデル化に関する基礎的な情報は、例えば、M.Schlecht、Molecular Modeling on the PC、1998、John Wiley & Sons;Gansら、Fundamental Principals of Molecular Modeling、1996、Plenum Pub.Corp.;N.C.Cohen(編者)、Guidebook on Molecular Modeling in Drug Design、1996、Academic Press;およびW.B.Smith、Introduction to Theoretical Organic Chemistry and Molecular Modeling、1996に提供される。分子モデル化に関する詳細な情報を提供する米国特許は、米国特許第6,093,573号;同第6,080,576号;同第5,612,894号;および同第5,583,973号を包含する。
分子モデル化研究に有用であり得るプログラムは、例えば、オックスフォード大学、英国オックスフォードから入手可能なGRID(Goodford,P.J.、“A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules”J.Med.Chem.、28、pp.849−857、1985);Molecular Simulations、マサチューセッツ州バーリントンから入手可能なMCSS(Miranker,A.とM.Karplus、“Functionality Maps of Binding Sites:A Multiple Copy Simultaneous Search Method.”Proteins:Structure,Function and Genetics、11、pp.29−34、1991);Scripps Research Institute、カリフォルニア州ラホヤから入手可能なAUTODOCK(Goodsell,D.S.とA.J.Olsen、“Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing”Proteins:Structure,Function and Genetics、8、pp.195−202、1990);およびカリフォルニア大学、カリフォルニア州サンフランシスコから入手可能なDOCK(Kuntz,I.D.ら、“A Geometric Approach
to Macromolecule−Ligand Interactions”J.Mol.Biol.、161、pp.269−288、1982)を包含する。
cCMR1ポリペプチドをコードする核酸配列に加え、本発明はまた、cCMR1ポリペプチド、cCMR1ポリペプチドバリアント、cCMR1ポリペプチドのフラグメント、および付加的なアミノ酸を有するcCMR1ポリペプチドも包含する。核酸によりコードされるcCMR1ポリペプチドの局面が本明細書に記述され、そしてこれらの局面はcCMR1ポリペプチドにもまた当てはまり得る。
一態様において、本発明は、配列番号2の配列を包含する単離されたポリペプチドを提供する。
別の態様において、本発明は、元のcCMR1アミノ酸残基の4%未満のCMRファミリーバリアントアミノ酸を有する配列番号2の配列を包含する単離されたポリペプチドを提供する。好ましくは、cCMR1ポリペプチドは、元のcCMR1アミノ酸残基の約2%未満、および最も好ましくは元のcCMR1アミノ酸残基の約1%未満のCMRファミリーバリアントを包含する。
本明細書に記述されるところのcCMR1ポリペプチドは、そのアミノ末端、そのカルボキシル末端若しくは双方に付加的なアミノ酸残基もまた有し得る。こうした付加的な残基は、例えば免疫検出、精製、細胞輸送、酵素活性などを包含する多様性若しくは目的上有用である。
本発明はまたcCMR1ポリペプチドのフラグメントも提供する。cCMR1ポリペプチドのフラグメントは、例えば抗体製造を包含する多数の目的上有用であり得る。cCMR1ポリペプチド配列の部分若しくは配列それ自身全体を、抗CMR1抗体を生成させるのに使用し得る。
別の局面において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列内のエピトープを特異的に認識する抗体に関する。有用な抗体は、限定されるものでないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化若しくはキメラ抗体、およびcCMR1タンパク質の一部分に結合することが可能である生物学的に機能的な抗体フラグメントを挙げることができる。前述の配列によりコードされるタンパク質に特異的な抗体は、いくつかの型の応用で有用性を有する。これらの抗体は、例えばcCMR1の検出が望ましいいかなる種類のアッセイのための診断キットでも使用し得る。それらはまた、例えば抗cCMR1抗体それ自身が治療的であるか、若しくは抗cCMR1抗体が治療薬に結合されている治療薬の製造でも使用し得る。抗cCMR1抗体を疼痛を処置するために使用し得ることが予期される。これらの場合には、抗cCMR1抗体は、例えばアゴニスト(例えば触媒)若しくは拮抗活性のいずれかを提供してcCMR1の活性を調節し得る。
本発明はまた、イヌ特異的モノクローナル抗CMR1抗体の製造方法も提供する。これらのモノクローナル抗体の製造のため、独特の抗cCMR1決定子を提供するペプチドを使用し得る。モノクローナル抗体は、特異的抗原(すなわちエピトープ)に向けられる抗体の均質なクローン集団である。抗cCMR1モノクローナル抗体を製造するため、cCMR1特異的配列すなわち「cCMR1エピトープ」を有するペプチドを使用する。cCMR1配列は、イヌ、マウスおよびラットCMR1配列に関して1個若しくはそれ以上の位置で異なるものである。cCMR1特異的配列を決定するために、本明細書に提供される表2を参照し得る。
モノクローナル抗体(mAb)は、培養物中の連続継代細胞株による抗体分子の産生を提供するいかなる技術によっても得ることができる。これらは、例えば、ハイブリドーマ技術(KohlerとMilstein、Nature、256:495−497、19
75);ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、Immunology Today、4:72、1983);およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、pp.77−96、1985)を包含する。こうした抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを包含するいずれの免疫グロブリンのクラス若しくはそれらのいずれのサブクラスのものであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマはin vitro若しくはin vivoで培養しうる。
CMR1タンパク質に対する抗体の製造のため、多様な宿主動物を、cCMR1ポリペプチド若しくはその一部分での注入により免疫し得る。cCMR1ポリペプチド全体を使用する場合、cCMR1に特異的な抗体が、異なる種からの他のCMR1タンパク質と交差反応性である抗CMR抗体と一緒に生成されうる。例えば、ポリクローナル抗体調製物は、CMR1ポリペプチドのような抗原で免疫した動物の血清由来の抗体分子の不均質な集団である。このポリクローナル集団中で、抗体はCMR1ポリペプチドの多様な部分と交差反応することができ、それらの抗体のいくつかはcCMR1と特異的に反応性であり、また、他者は他の種のCMR1ポリペプチドと交差反応性である。ポリクローナル抗体の製造のため、cCMR1タンパク質若しくはその一部分で、典型的には該動物中での抗体力価を引き上げるために反復して、また、典型的には本明細書に記述されるところのアジュバントを補充して、宿主動物を免疫する。抗CMR1抗体の製造に一般に使用される宿主動物はウサギ、マウスおよびラットを包含するが;しかしながら所望の場合は他の動物を使用し得る。多様なアジュバント、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、ならびに水酸化アルミニウムのような鉱物ゲルを、宿主種に依存して免疫学的応答を増大させるために使用しうる。とりわけ免疫化および抗体産生の目的上より短いcCMR1ペプチドを使用する場合に、免疫化のため複合物(例えばKLH)もまた包含し得る。
cCMR1ポリペプチド若しくはcCMR1ポリペプチドフラグメントは、いずれの種類の合成若しくは分子生物学的技術を使用しても生成させ得る。標準的な合成ペプチド技術を使用して、より小さいcCMR1ポリペプチドフラグメント、例えば長さが30アミノ酸若しくはより短いペプチドフラグメントを生成し得る。ペプチドフラグメントの合成技術は公知であり、そして例えばThe Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.Vol.2:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.中、BaranyとMerrifield、Solid−Phase Peptide Synthesis;pp.3−284、Merrifieldら、J.Am.Chem.Soc.、85:2149−2156(1963)、およびStewartら、Solid Phase Peptide Synthesis、第2版 Pierce Chem.Co.、イリノイ州ロックフォード(1984)に記述されている。
組換え技術を、例えばcCMR1核酸で形質転換した原核生物若しくは真核生物宿主細胞からのcCMR1の部分、バリアントおよび融合物を包含するcCMR1の発現に使用し得る。これらの方法は、例えば、in vitro組換えDNA技術およびin vivo遺伝子組換えを包含する(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク(2001);およびAusubelら編、Short Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク(1999)に記述される技術を参照されたい)。
従って、cCMR1は、(a)cCMR1配列を含んでなる核酸を提供すること、(b
)宿主細胞に該核酸を挿入すること、および(c)cCMR1ポリペプチドの発現を見込む条件下で該宿主細胞を維持することにより製造し得る。精製されたcCMR1ポリペプチドが望ましい場合は、cCMR1ポリペプチドを単離および所望の場合は精製する段階もまた実施し得る。
別の態様において、本発明は、制御配列に操作可能に連結されたcCMR1コーディング配列全体若しくはその一部分を包含する異種核酸構築物を提供する。これらの異種核酸構築物は、宿主細胞中でのcCMR1核酸の発現に適する組換え発現ベクターを包含する。組換え発現ベクターは、cCMR1核酸配列に操作可能に連結された、cCMR1発現に使用される宿主細胞の型に基づき選択され得る1個若しくはそれ以上の制御配列を包含する。制御配列は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節領域、例えばポリ(A)+配列を包含する。制御配列は、原核生物細胞、例えば大腸菌(E.coli)のような細菌細胞、あるいは酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞(例えばHEK、CHO若しくはCOS細胞)のような真核生物細胞に特異的であり得る。制御配列は、cCMR1核酸配列に関してcis若しくはtransに配置され得る。制御配列は、多様な増殖条件下および多様な宿主細胞中での核酸の発現を典型的に駆動する構成的発現配列、特定の宿主細胞若しくは組織中での発現を駆動する組織特異的制御配列、および二次因子に応答して発現を駆動する誘導可能な制御配列を包含し得る。発現ベクターの選択および設計は、利用される特定の宿主細胞、およびポリペプチド発現の所望のレベルのような因子に依存し得る。他の発現ベクター成分は、限定されるものでないが以下、すなわちシグナル配列、複製起点、1種若しくはそれ以上の選択遺伝子および転写終止配列の1種若しくはそれ以上を挙げることができる。選択遺伝子は、(a)抗生物質若しくは他のトキシン、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート若しくはテトラサイクリンに対する耐性を与える、(b)栄養要求欠損を補足する、または(c)複合培地から利用可能でない決定的な栄養素を補充するタンパク質をコードする。
cCMR1ポリペプチドの発現に使用される異種核酸構築物はまた、in vitroで転写かつ翻訳され得る構築物、例えばT7プロモーター制御配列を有する構築物も包含し得る。
cCMR1の発現に適するベクターは当該技術分野で既知であり、そして商業的に入手可能である。適するベクターは、例えば、それぞれNovagenおよびInvitrogenから入手可能でありかつ大腸菌(E.Coli)、COS細胞およびバキュロウイルスに感染させた昆虫細胞中での発現に使用し得る、pET−14b、pCDNA1AmpおよびpVL1392を包含する。
別の態様において、本発明はcCMR1核酸を包含する組換え細胞を提供する。組換え細胞は核酸配列が導入されたものを包含する。典型的には、組換え細胞は、分子生物学的技術を使用して特定の核酸を細胞に導入することにより創製する。しかしながら、組換え細胞は、所望の核酸配列の発現を促進するための他の方法で操作された細胞もまた包含する。例えば、標的核酸配列の近位にある領域を、標的核酸の発現を促進するように変えることができるか、若しくは、標的核酸の発現を調節するように作用する遺伝子を細胞に導入し得る。
組換え細胞は、増殖および分割の期間の後に出発親細胞に同一でないことがあるが;しかしながら、これらの細胞はなお組換え細胞と称され、そして本明細書で使用されるところの該用語の範囲内に包含される。
cCMR1発現の機構をもちかつ提供するのに適する宿主細胞は、原核生物および真核生物双方の細胞を包含する。適する原核生物宿主細胞の例は、グラム陰性若しくはグラム
陽性生物体のような真正細菌、例えば、エシェリキア属(Escherichia)、例えば大腸菌(E.coli)のような腸内細菌科、エンテロバクター属(Enterobacter)、サルモネラ属(Salmonella)、例えばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびに枯草菌(B.subtilis)のようなバチリ属(Bacilli)、シュードモナス属(Pseudomonas)およびストレプトミセス属(Streptomyces)である。
糸状菌若しくは酵母のような真核生物細胞はcCMR1発現ベクターの適するクローニング若しくは発現宿主である。パン酵母としてもまた知られるサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は一般に使用される発現系であり、そして多様なプロモーターおよび選択可能なマーカー配列を提供する。宿主細胞として有用な他の真菌若しくは酵母は、スキゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア パストリス(Pichia pastoris)、カンジダ属(Candida)、アカパンカビ(Neurospora crassa)およびアスペルギルス ニズランス(Aspergillus nidulans)を包含する。
ドロソフィラ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞のような昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎(COS)細胞、イヌ腎(MDCK)細胞、ヒト子宮頚癌(HeLa)細胞、およびヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞のような哺乳動物細胞、ならびに植物細胞を包含する多くの高等真核生物宿主細胞を使用し得る。
形質転換した宿主細胞の増殖は当該技術分野で既知である条件下で起こり得る。該条件は、一般に、使用される宿主細胞およびベクターの型に依存する。温度および化学物質のような適する誘導条件を使用することができ、そして利用されるプロモーターの型に依存することができる。適する培地の例は、最小必須培地((MEM)、RPMI−1640およびダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)を包含する。
発現構築物を包含する核酸は、慣習的な形質転換若しくはトランスフェクション技術を介して原核生物若しくは真核生物細胞に導入し得る。本明細書で使用されるところの「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、遺伝子銃若しくは電気穿孔法を包含する、宿主細胞中に外来核酸分子(例えばDNA)を導入するための多様な技術に認識された技術を指すことを意図している。宿主細胞の適する形質転換若しくはトランスフェクション方法は、Sambrookら(上記)および他の実験室手引書に見出し得る。
哺乳動物細胞は、選択可能なマーカー遺伝子を有する発現構築物および目的の遺伝子で安定にトランスフェクトし得る。典型的には、哺乳動物細胞の選択可能なマーカーは、抗生物質耐性遺伝子、例えば形質転換された細胞をG418、ハイグロマイシン若しくはメトトレキセートのような化合物の存在下で増殖させる遺伝子を包含する。
組換え細胞は、精製の目的上、若しくはcCMR1ポリペプチドを伴う機能研究のためのcCMR1ポリペプチドの製造に有用であり得る。例えば、組換えcCMR1細胞を使用して、多数の化合物を、cCMR1ポリペプチドの活性を変えるそれらの能力について試験し得る。組換えcCMR1細胞はまた、cCMR1ポリペプチドの多様な特性を変えること、例えばcCMR1ポリペプチドのアミノ酸配列を変えることがcCMR1活性にどのように影響を及ぼすかを試験するのにも使用し得る。
cCMR1核酸配列を有する組換え細胞は、ヒト以外のトランスジェニック動物を製造するのにもまた使用し得る。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組込まれかつ成熟動物のゲノム中に留まってそれによりトランスジェニック動物の1種若しくはそれ以上の細胞型若しくは組織中でのコードされる遺伝子産物の発現を指図する、外因性DNAである。例えば、cCMR1核酸配列を含有する核酸は、微小注入法のような適する技術を使用して、受精卵母細胞若しくは胚性幹細胞のような宿主細胞中に導入し得る。これらのcCMR1を含有する宿主細胞をその後、ヒト以外のトランスジェニック動物を創製するのに使用し得る。とりわけ有用な動物は、cCMR1遺伝子を有するトランスジェニックマウス若しくはラットを包含し、それらはまた、例えば疼痛モデルのような研究にそれらを有用にする身体的若しくは遺伝的特徴も有し得る。
cCMR1トランスジェニック動物を使用して、潜在的に有用な化合物、またはcCMR1の機能若しくは発現を調節する既知化合物を同定、スクリーニング若しくは試験し得る。これらのトランスジェニック動物は、そのアミノ酸配列を変えることにより、cCMR1ポリペプチドの機能を研究するのにもまた使用し得る。
胚の操作および微小注入を介するトランスジェニック動物、とりわけマウスのような動物の生成方法は、当該技術分野で慣習的になっており、そして例えば米国特許第4,736,866号および同第4,870,009号、米国特許第4,873,191号明細書、ならびにHogan、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1986)に記述されている。相同的組換えベクターおよび相同的組換え動物の構築方法は、Bradley(Current Opinion in Bio/Technology、2:823−829、1991)ならびにPCT公開第WO 90/11354号、同第WO 91/01140号、同第WO 92/0968号および同第WO 93/04169号明細書にさらに記述されている。本明細書に記述されるヒト以外のトランスジェニック動物のクローンは、Wilmutら(Nature、385:810−813、1997)ならびにPCT公開第WO 97/07668号および同第WO 97/07669号明細書に記述される方法に従ってもまた製造し得る。
いくつかの場合には、例えばCMR1調節物質であることが疑われる化合物の特異性を試験するために、系に存在するCMR1の量を減少させることが望ましいことができる。本明細書に記述されるところの組換え細胞若しくはトランスジェニック動物を、その表面上で発現される若しくは存在するCMR1の量を減少させるために操作し得る。例えば、細胞は、細胞中に存在するcCMR1 RNAの量を減少させてそれによりcCMR1タンパク質発現を低下させる分子を包含し得る。適する分子は、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、二本鎖RNA、干渉RNA(iRNA)およびアンタゴニスト若しくはアゴニストを包含する。
多様な方法をcCMR1ポリペプチドの精製に使用し得る。例えば、粗精製は、硫酸アンモニウム沈殿、遠心分離若しくは他の既知技術を使用して実施し得る。より高程度の精製は、例えば陰イオン交換、陽イオン交換、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル濾過、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィー、例えばcCMR1タンパク質に向けられた抗体を使用するイムノアフィニティークロマトグラフィーを包含する適するクロマトグラフィー技術により達成し得る。必要とされる場合は、該タンパク質をリフォールディングするための段階を使用して、cCMR1タンパク質が細胞内の合成、単離若しくは精製の間に変性される場合に該タンパク質の活性のコンホメーションを得ることができる。
本発明はまた、生物学的サンプル(試験サンプル)中の本発明のポリペプチド若しくは核酸の存在を検出するためのキットも包含する。こうしたキットは、好ましくは、緊密な閉じこめの最低1個の容器中に保持するのに適する区画化された容器を含んでなる。担体は、標識抗原若しくは酵素基質などのような検出のための手段を含有し得る。例えば、キットは、該ポリペプチド若しくは該ポリペプチドをコードするmRNAを検出することが可能な標識化合物若しくは剤、およびサンプル中の該ポリペプチド若しくはmRNAの量を測定するための手段(例えば、該ポリペプチドを結合する抗体、または該ポリペプチドをコードするDNA若しくはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含み得る。キットはまた、該ポリペプチド若しくは該ポリペプチドをコードするmRNAの量が正常レベルより上若しくは下である場合に、試験被験体が該ポリペプチドの異常な発現を伴う障害に罹っているか若しくはそれを発症する危険にさらされているかどうかを決定するための説明書も包含し得る。
抗体に基づくキットについては、該キットは、例えば:(1)配列番号2に対する最低96%の配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに選択的に結合する第一の抗体(例えば固体支持体に結合された抗体);および、場合によっては;(2)第一の抗体、若しくは、第一の抗体がしかし異なるエピトープで結合するポリペプチドのいずれかに結合しかつ検出可能な剤に結合されている第二の抗体;ならびに(3)陽性対照としての精製された組換えcCMR1タンパク質を含み得る。好ましくは、第一の抗体は、cCMR1にのみ結合するが、しかしヒト、ラット若しくはマウスのような他の種からのCMR1に結合しない。
オリゴヌクレオチドに基づくキットについては、該キットは、例えば:(1)緊縮性条件下で配列番号1にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、若しくは(2)配列番号2に対する最低96%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を増幅するのに有用な一対のプライマーを含み得る。該キットはまた、例えば緩衝剤、保存剤若しくはタンパク質安定剤も含み得る。該キットはまた、検出可能な剤を検出するために必要な成分(例えば酵素若しくは基質)も含み得る。該キットはまた、アッセイしかつ試験サンプルと比較し得る1個の対照サンプル若しくは一連の対照サンプルも含有し得る。該キットの各成分は、通常、個別の容器内に封入され、そして多様な容器の全部が、好ましくは単一の包装内に含有される。
CMR1は冷(cool)ないし寒(cold)温で活性化されかつ神経組織中で発現されるため、この遺伝子は、疼痛、炎症および皮膚障害、例えば日焼けおよび他の感作状態を伴うものの処置において有用な薬物の同定のための治療標的としてはたらき得る。従って、別の一般的局面において、本発明は、治療的化合物、例えば疼痛の処置、低温に対する応答の調節において有用な化合物、および皮膚に冷覚を提供する化合物の同定方法におけるcCMR1核酸およびタンパク質の使用に関する。これらの型の化合物は、cCMR1ポリペプチド若しくはcCMR1核酸を包含する系を使用して同定し得る。化合物はまた、動物モデル系、例えばラット、マウス若しくはイヌモデル系においてin vivoでも直接試験し得る。とりわけ有用な系は疼痛の動物モデルを包含する。これらの方法は、cCMR1タンパク質の発現、cCMR1チャンネルの伝導性、若しくは動物の侵害受容挙動を増大若しくは低下させる多様な化合物の能力についてアッセイすることを含んでなる。
化合物の同定方法は、慣習的な実験室の形式を使用して、若しくはハイスループットに適合されたアッセイで実施し得る。「ハイスループット」という用語は、同時のかつ/若しくは迅速な連続での複数のサンプルの容易なスクリーニングを可能にするアッセイデザインを指し、そしてロボット操作の能力を包含し得る。ハイスループットアッセイの別の
所望の特徴は、試薬の使用を低減させるか若しくは所望の分析を達成するための操作の数を最小限にするように最適化されているアッセイデザインである。アッセイ形式の例は、96ウェル若しくは384ウェルプレート、浮遊液滴、および液体取扱い実験に使用される「実験室チップ(lab on a chip)」マイクロチャンネルチップを包含する。プラスチック型および液体取扱い装置の小型化が進んだため、若しくは改良されたアッセイ装置が設計されるため、本発明の設計を使用してより多数のサンプルが処理され得ることが当業者により公知である。
候補化合物は、限定されるものでないが小型の有機若しくは無機化合物、抗体、タンパク質若しくはそのフラグメント、アンチセンスヌクレオチド、干渉RNA(iRNA)およびリボザイムのような天然若しくは合成分子を挙げることができる、多数の化学的分類を包含する。好ましくは、それらは小型有機化合物、すなわち50以上だがなお約2500未満の分子量を有するものである。候補化合物は、ポリペプチドとの構造的相互作用に必要な官能性化学基を含んでなり、かつ、典型的には最低1個のアミン、カルボニル、ヒドロキシル若しくはカルボキシル基、好ましくは官能性化学基の最低2個、およびより好ましくは官能性化学基の最低3個を包含する。候補化合物は、上で同定された官能基の1個若しくはそれ以上で置換された炭素環若しくは複素環構造および/または芳香族若しくは多環芳香族構造を含み得る。候補化合物はまた、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジンのような生体分子、上の誘導体若しくは構造的アナログ、またはそれらの組合せなどでもあり得る。化合物が核酸である場合、該化合物は典型的にDNA若しくはRNA分子であるが、とは言え非天然の結合若しくはサブユニットを有する修飾核酸もまた企図している。
候補化合物は、合成若しくは天然の化合物のライブラリーを包含する多様な供給源から得られる。例えば、多数の手段が、無作為化オリゴヌクレオチドの発現、合成有機コンビナトリアルライブラリー、ランダムペプチドのファージディスプレイライブラリーなどを包含する多様な有機化合物および生体分子の無作為および指向性合成に利用可能である。候補化合物はまた、生物学的ライブラリー;空間的に接近可能な平行固相若しくは溶液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)を包含する当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれを使用しても得ることができる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然の化合物のライブラリーが利用可能であるか、若しくは容易に製造される。加えて、天然のおよび合成で製造されるライブラリーおよび化合物は、慣習的な化学的、物理的および生化学的手段により容易に改変し得る。
さらに、既知の薬理学的剤を、該剤の構造的アナログを製造するために、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような指向された若しくは無作為の化学修飾にかけることができる。候補化合物は無作為に選択し得るか、またはCMR1に結合かつ/若しくはCMR1活性の機能を調節する既存の化合物に基づくことができる。従って、候補の剤の供給源は、より多い若しくはより少ない化学的部分または異なる化学的部分を含有するように分子の1個若しくはそれ以上の位置で化合物の構造が変えられている、CMR1チャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる1種若しくは1種以上の既知化合物に基づく分子の1種若しくは1種以上のライブラリーである。類似の活性化物質/阻害剤のライブラリーの創製において分子になされる構造的変化は、指向され得るか、無作為であり得るか、または指向性および無作為化双方の置換および/若しくは付加の組合せであり得る。コンビナトリアルライブラリーの製造の当業者は、既存の化合物に基づき、こうしたライブラリーを容易に製造し得る。
多様な他の試薬もまた混合物中に包含され得る。これらは、最適なタンパク質−タンパク質および/若しくはタンパク質−核酸結合を助長するのに使用し得る塩、緩衝剤、中性タンパク質(例えばアルブミン)、洗剤などのような試薬を包含する。こうした試薬はまた、反応成分の非特異的すなわちバックグラウンドの相互作用も低下させ得る。ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などのようなアッセイの効率を向上させる他の試薬もまた使用し得る。
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野で、例えば:Zuckermannら(1994).J Med.Chem.37:2678に見出され得る。化合物のライブラリーは、溶液中で(例えばHoughten(1992)Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(米国特許第5,223,409号明細書)、胞子(特許第5,571,698号明細書)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)若しくはファージ(例えばScottとSmith(1990)Science 249:386−390を参照されたい)上に提示され得る。
一局面において、本発明は:(a)cCMR遺伝子の発現を調節するための機構を含んでなる細胞と試験化合物を接触させる段階;および(b)該試験化合物が、該細胞からの前記機構により制御される遺伝子の発現を増大若しくは減少させるかどうかを決定する段階を含んでなる、cCMR1タンパク質の発現を増大若しくは減少させる化合物の同定方法を提供する。cCMR遺伝子の発現を調節するための機構は、核、細胞質若しくは細胞内因子が転写若しくは翻訳のレベルで遺伝子の作用の制御に影響する機構を包含する。例えば、該機構は遺伝子活性化若しくは遺伝子抑制を包含する。cCMR遺伝子の発現を調節するための機構を含んでなる細胞は、イヌDRG細胞のようなcCMRを内因性に発現する天然の宿主細胞であり得る。該細胞はまた、cCMR遺伝子の制御配列を有する組換えDNA配列を含有する組換え細胞でもあり得、そして該制御配列は遺伝子、好ましくはレポーター遺伝子に操作可能に連結されている。
CMR1の制御配列により制御される遺伝子の発現に対する化合物の影響は、多様な手段により測定し得る。例えば、該影響は、細胞からの遺伝子のmRNA若しくはタンパク質の量により、または細胞からの遺伝子産物の活性により測定し得る。レポーター遺伝子を使用する場合、該影響は細胞からのレポーター遺伝子産物のレベルとして測定し得る。例えば、CMR1の制御配列がGFP遺伝子に操作可能に連結されている場合、遺伝子発現に対する化合物の影響は、蛍光計を使用して、細胞からの緑色蛍光の発射に対する化合物の影響として測定し得る。内因性のcCMR1細胞を使用する場合、遺伝子発現に対する化合物の影響は、下述される方法(すなわちノーザンブロット、RT−PCR、SDS−PAGE、ウエスタンブロット、免疫組織若しくは免疫細胞化学、放射受容体リガンド結合など)を使用して、細胞の内側のcCMR1のmRNA若しくはタンパク質の量により測定し得る。あるいは、cCMR1チャンネルの伝導性を使用して、cCMR1タンパク質の発現に対する化合物の影響を測定し得る。
本明細書に記述される細胞に基づく方法は、cCMR1遺伝子の1種若しくは1種以上の制御配列への結合を介してcCMR1発現を直接調節する化合物を同定するのみならず、しかしまた、その活性がcCMR1の発現若しくはタンパク質の安定性に影響する他の細胞成分への結合を介してcCMR1発現を間接的に調節する化合物も同定する。例えば、cCMR1遺伝子の転写活性化物質若しくは阻害剤の活性を調節する化合物を、本明細書に記述される方法を使用して同定し得る。cCMR1タンパク質をin vivoで分解するプロテアーゼの活性を調節する化合物もまた同定し得る。
本発明はまた:(a)試験化合物をイオンチャンネルと接触させる段階;および(b)試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階を含んでなる、cCMR1イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる化合物の同定方法も提供する。いくつかの態様において、cCMR1イオンチャンネルは宿主細胞の表面上で発現される。細胞は、cCMR1を内因性に発現するcCMR1の天然の宿主細胞、例えばイヌDRG若しくはTG細胞であり得る。細胞はまた、cCMR1の組換え宿主細胞、例えばcCMR1を組換え的に発現するCHO若しくはCOS細胞でもあり得る。
いくつかの他の態様において、cCMR1イオンチャンネルは単離された膜調製物を伴う。膜調製物は、その細胞表面上にcCMR1を発現する天然の宿主細胞、若しくはその細胞表面上にcCMR1を発現する組換え宿主細胞から単離し得る。それはまた、組織膜、原形質膜、細胞膜、若しくはcCMR1チャンネルを含んでなる内的オルガネラ膜のような生物学的膜からも調製し得る。生物学的膜調製物の単離および調製方法は当業者に既知である。例えば、こうした方法は、組織若しくは細胞の機械的若しくは酵素的破壊、他の成分から膜を分離するための遠心分離、および適する緩衝溶液に膜断片若しくは小胞を再懸濁することの段階を包含し得る。あるいは、膜を含有する調製物は人工膜にもまた由来し得る。精製したcCMR1タンパク質を脂質二重層に再構成して人工膜小胞を形成させ得る(Chenら、1996、J.Gen.Physiol.108:237−250を参照されたい)。こうした型の膜小胞は目的のチャンネルに対し非常に特異的であり得、他のチャンネルでの汚染の問題を回避する。人工膜小胞の製造方法は当業者に既知である。
いくつかの態様において、cCMR1を含んでなる膜小胞は発明のアッセイおよび方法のためのより容易な形式を提供し得る。細胞の溶解および/若しくは剪断がアッセイの間のそれほど大きな問題でないからである。他の態様において、しかしながら、cCMR1を発現する細胞は、例えば細胞膜調製処置が目的のチャンネルを破壊若しくは不活性化する場合に、好ましい。
試験化合物を、cCMR1チャンネルのイオン伝導性を増大若しくは低下させるその能力について評価し得る。例えば細胞の脱分極の刺激若しくは細胞内カルシウムイオンレベルの増大を介するCMR1チャンネルの伝導性の測定方法は当業者に既知である。細胞内カルシウムのレベルは、カルシウムイオン感受性の蛍光色素のようなカルシウムイオン感受性の蛍光指示薬を使用して評価し得る。適するカルシウムイオン感受性蛍光色素は、例えば、quin−2(例えばTsienら、J Cell BioL、94:325、1982を参照されたい)、fura−2(例えばGrynkiewiczら、J BioL Chem.、260:3440、1985を参照されたい)、fluo−3(例えばKaoら、J BioL−43 Chem.、264:8179、1989を参照されたい)、およびrhod−2(例えばTsienら、J Biol.Chem.、Abstract 89a、1987を参照されたい)を包含する。適するカルシウムイオン感受性の蛍光色素は、例えばMolecular Probes(オレゴン州ユージーン)から商業的に入手可能である。細胞の蛍光はまた、蛍光計、若しくは蛍光ランプおよび検出器を有するフローサイトメーターを使用してもモニターし得る。
cCMR1陽イオンチャンネルは、二価の陽イオン例えばCa++のみならず、しかし一価の陽イオン例えばNa若しくはKもまた輸送するよう機能する。従って、一価の陽イオンの輸送の変化を測定するためのアッセイもまた、cCMR1チャンネルの伝導性を測定するために実施し得る。NaおよびK感受性色素は当該技術分野で既知であり
、そして例えばMolecular Probes(オレゴン州ユージーン)から商業的に入手可能である。
cCMR1チャンネルの伝導性はまた、パッチクランプのような電気生理学的技術によっても測定し得る。パッチクランプ技術は、細胞、細胞膜および単離された組織中の電気的活動を研究するのに慣例に使用される。それは、マイクロピペットと原形質膜の間に電気的に密な高抵抗のシールを形成することを必要とする。原形質膜内の個々のイオンチャンネルを流れる電流をその後測定し得る。該技術に対する多様な変型が、原形質膜の多様な表面が浸積媒体に露出されることを可能にする。4種の最も一般的な変型は、オンセル(on−cell)パッチ、インサイドアウト(inside−out)パッチ、アウトサイドアウト(outside−out)パッチおよび全細胞クランプを包含する。
パッチクランプ法は、膜を横切る電圧を制御しかつ電流を測定する電圧クランプとともに一般に使用される。電圧クランプ過程の間に、微小電極を細胞中に挿入し、そして、いずれかの予め定義されたレベルで細胞膜電位を保持するように電極を通して電流を注入する。パッチクランプ法はまた、電流を制御しかつ電圧を測定する電流クランプ法とともにも使用し得る。
cCMR1チャンネルの伝導性を低下させる化合物を同定するためのアッセイは、好ましくは、特定のイオンチャンネルが活性化される条件下で実施する。例えば、こうしたアッセイは、CMR1が活性化される温度で実施し得る。全細胞パッチクランプ記録からの研究は、cCMR1が約17℃若しくはより下の低温で活性化されることを示した(下の実施例7)。あるいは、こうしたアッセイは、寒冷化合物(cool compound)メントール若しくはイチリン、または辛味化合物からし油のような、cCMR1を活性化する化合物の存在下で実施し得る。加えて、こうしたアッセイは、脱分極した電位でチャンネルをクランプすることによるような、cCMR1チャンネルが脱分極される条件で実施し得る。
逆に、cCMR1チャンネルの伝導性を増大させる化合物を同定することを探求する場合、好ましくは、cCMR1チャンネルが活性でないか若しくはそうでなければ遮断されている試験条件が調節される。例えば、こうしたアッセイはCMR1の非活性化温度で実施し得る。室温でなお活性であるラットCMR1と異なり、cCMR1は室温で不活性化されている(下の実施例7)。あるいは、こうしたアッセイは、cCMR1チャンネルの伝導性を低下させる化合物の存在下で実施し得る。加えて、こうしたアッセイは、cCMR1チャンネルを脱感作するのに十分である細胞外Ca2+の存在下で実施し得る。当業者は、慣例の実験により、cCMR1チャンネルを脱感作するのに十分である細胞外Ca2+の適切な濃度を決定することが可能である。さらに、こうしたアッセイは、過分極電位でチャンネルをクランプすることによるような、cCMR1チャンネルが過分極される条件で実施し得る。
cCMR1調節物質の同定のためのアッセイは、人的に若しくは自動化装置を使用して実施し得る。自動化装置はハイスループットスクリーニングを実施する場合に好ましい。例えば、1つの型の自動化装置は多ウェル培養プレート、例えば96ウェル、384ウェル若しくは1536ウェルの培養プレートを利用し、ここで各ウェルはcCMR1タンパク質をコードする核酸を有する組換え細胞を含有する。該プレートを、ウェルのそれぞれ中の細胞のカルシウムの流れおよび/若しくは膜電位を測定し得る蛍光計、例えばFlexStationTM(Molecular Devices Corp.、カリフォルニア州サニーベールから)に負荷する。カルシウムイオン感受性の蛍光指示薬色素若しくは試験化合物を含有する溶液を、ウェルのそれぞれに自動的に添加し得る。蛍光計中の温度は実施するアッセイの型に従って制御し得、例えば、温度は、CMR1アゴニストであ
ることが疑われる試験化合物に対してCMRを活性化する温度より上、例えば28℃より上の温度に調節し得る。同様に、温度は、CMR1アンタゴニストであることが疑われる試験化合物に対して、CMRを活性化する温度、例えば28℃もしくはより下に調節し得る。
CMR1チャンネルが活性化され、そして(Ca++イオンのような)陽イオンの流入を可能にした後、Ca++イオンの細胞内蓄積は、負のフィードバックおよびCMR1チャンネルの不活性化を促進する。CMR1は、例えば細胞からポンプでくみ出されるかまたは細胞内オルガネラに取り込まれるCa++により細胞内Ca++レベルが低下した後に再活性化される。
CMR1チャンネルは、冷ないし寒温度に応答してのCa++イオンの流入を可能にし得るとは言え、それはいくぶん漏れやすいイオンチャンネルのものである。数種のCMR1チャンネルは、活性化しない温度、例えば28℃より上でさえCa++イオンの流入を可能にすることができる。慣習的なアッセイ系では、mM範囲の細胞外Ca++濃度を典型的に使用し、それは、活性化しない温度でさえカルシウムの細胞内蓄積につながり、CMR1の負のフィードバックの不活性化を引き起こし得る。
従って、本発明の別の局面は:(a)不活性化量以下のカルシウムを含有する緩衝溶液中でイオンチャンネルをインキュベートする段階;(b)イオンチャンネルを活性化する段階;(c)イオンチャンネルを試験化合物と接触させる段階;(d)緩衝溶液中のカルシウムの量を増大させる段階;ならびにe)細胞内カルシウム量を測定する段階、およびイオンチャンネルが試験化合物と接触されなかった対照の量と該量を比較する段階を含んでなる、哺乳動物のCMR1イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる化合物の同定方法である。「不活性化量以下のカルシウム」は、CMR1チャンネルの負のフィードバックおよび不活性化を促進する程度までのCa++イオンの細胞内蓄積を引き起こさないとみられる細胞外Ca++の量である。当業者は、特定のCMR1チャンネルの「不活性量以下のカルシウム」を実験で決定し得る。いくつかの態様において、「不活性量以下のカルシウム」は緩衝溶液中で本質的に0のカルシウムである。他の態様において、「不活性量以下のカルシウム」は、緩衝溶液中のカルシウムのμM範囲にある。本発明の方法は、段階(c)が段階(b)に先行する、本明細書に記述されるところの段階(a)ないし(e)を含んでなる方法を包含する。
CMR1の活性若しくは発現を調節するための所望の基準に合致する化合物が同定された後、該化合物をその後生存動物に投与し得る。これは、投薬レジメンを確立するために重要な毒性および他の薬理学的パラメータを確立するために有用であり得る。例えば、cCMR1ポリペプチドを含有するex vivo系を使用して化合物を同定した後、該化合物をイヌに投与して、イヌにおける該化合物の多様な薬理学的局面を検査し得る。本明細書に記述されるところのcCMR1系は、ヒトにおける投薬レジメンを同定かつ確立するためにとりわけ有利である。イヌ、とりわけ大型の品種はラット若しくはマウスに比較してヒトに体重がより近く、そして従ってヒトの投薬を推定するためのより適する動物モデルを提供するからである。
化合物はまた、侵害受容過程を変える化合物の能力を評価するためにも動物に投与し得る。疼痛の多様な動物モデル、例えば、KimとChung(Pain、50:355−363、1992)により開発されたラットにおける神経因性疼痛モデルである、神経傷害の脊髄神経結紮(SNL)モデルが存在する。
疼痛の他の適する動物モデルを本明細書の教示とともに利用し得る。神経因性疼痛の一般に研究されるげっ歯類モデルは、慢性絞扼性神経傷害(CCI)すなわちBennet
tモデル;神経腫若しくは軸索切断モデル;および部分的座骨神経離断モデルすなわちSeltzerモデル(Shirら、Neurosci.Lett.、115:62−67、1990)を包含する。例示的神経因性疼痛モデルは、数種の外傷性神経傷害調製物(Bennettら、Pain 33:87−107、1988;Decosterdら、Pain 87:149−58、2000;Kimら、Pain 50:355−363、1992;Shirら、Neurosci Lett 115:62−7、1990)、神経炎症モデル(Chacurら、Pain 94:231−44、2001;Milliganら、Brain Res 861:105−16、2000)糖尿病性ニューロパシー(Calcuttら、Br J Pharmacol 122:1478−82、1997)、ウイルス誘発性ニューロパシー(Fleetwood−Walkerら、J Gen Virol 80:2433−6、1999)、ビンクリスチンニューロパシー(Aleyら、Neuroscience 73:259−65、1996;Nozaki−Taguchiら、Pain 93:69−76、2001)、およびパクリタキセルニューロパシー(Cavalettiら、Exp Neurol 133:64−72、1995)、ならびに急性侵害受容試験モデルおよび炎症性モデル(Brennann,T.J.ら Pain 64:493、1996;D’Amour,F.E.およびSmith,D.L.J Pharmacol 72:74−79、1941;Eddy,N.B.ら J Pharmacol Exp Ther 98:121、1950;Haffner,F.Dtsch Med Wochenschr 55:731、1929;Hargreaves,K.ら Pain 32:77−88、1988;Hunskaar,S.ら J Neurosci Meth 14:69、1985;Randall,L.O.とSelitto,J.J.Arch.Int.Pharmacodyn 111:409−419、1957;Siegmund,E.ら Proc Soc Exp Bio Med 95:729、1957)を包含する。
従って、別の態様において、本発明は:(a)試験化合物をcCMR1イオンチャンネルと接触させる段階;および(b)該試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階を含んでなる、疼痛を処置するのに有用な化合物の同定方法を提供する。いくつかの態様において、該方法は:(a)試験化合物を動物に投与する段階;および(b)該試験化合物が動物の侵害受容/侵害防御応答を変える程度を決定する段階をさらに含んでなる。
いくつかの態様において、疼痛の動物モデルはげっ歯類、例えばラット若しくはマウスを伴い;別の局面において、疼痛の動物モデルはイヌ、例えば皮膚攣縮試験(Kamerlingら Pharmacol.Biochem.Behav.17:733−749、1982;Burns JCら Perspect Biol Med.Autumn;35(1):68−73、1991もまた参照されたい)を伴う。
治療的有効性および毒性は、例えばED50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対し致死的な用量)を計算することにより、細胞培養物若しくは実験動物での標準的製薬学的処置により決定しうる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、そしてそれは比LD50/ED50として表し得る。組換えCMR1を使用する細胞培養物アッセイおよびイヌ試験のような動物試験から得られるデータを、ヒトの使用のための投薬量の範囲の規定において使用する。こうした組成物に含有される投薬量は、好ましくは、毒性をほとんど若しくは全く伴わないED50を包含する循環濃度の範囲を生じさせる。投薬量は、使用される投薬形態物、患者の感受性および投与経路に依存してこの範囲内で変動する。正確な投薬量は、処置を必要とする被験体に関する因子に照らして、用量を投与する者により決定することができる。投薬量および投与は、十分なレベルの有効成分を提供するように、若しくは所望の効果、例えば効果的な鎮痛を維持するように調節する。考慮に入れられうる因子は、疼痛の重症度、ならびに、被験体
の全般的健康状態、被験体の齢、重量および性別、食餌、投与の時間および頻度、薬物の組合せ(1種若しくは複数)、反応の感受性ならびに治療に対する忍容性/応答を包含する他の因子を包含する。
CMR1活性を調節するとして同定された化合物を含有する製薬学的組成物は、限定されるものでないが、経口、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、クモ膜下、硬膜外、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、吸入、眼内、耳内若しくは直腸の手段を挙げることができるいずれかの数の経路により投与し得る。
有効成分に加え、これらの製薬学的組成物は、製薬学的に使用し得る製剤中への有効成分の加工を助長するかまたは有効成分の吸収若しくは分布を助長する賦形剤および補助物質を含んでなる適する製薬学的に許容できる担体を含有しうる。処方および投与のための技術に関するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical
Sciences、Maack Publishing Co.、ペンシルバニア州イーストンに見出しうる。
経口投与のための製薬学的組成物は、当該技術分野で公知の製薬学的に許容できる担体を使用して、経口投与に適する投薬量に処方し得る。こうした担体は、製薬学的組成物が患者による摂取のために錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして処方されることを可能にする。
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実施例
イヌDRGニューロンからのCMR1のクローニング
A.ポリ(A)RNAの単離
cCMR1のクローニングにおける第一段階として、ポリ(A)RNAを、OligotexTMスピンカラム(Qiagen Inc.、カリフォルニア州)を使用してイヌDRGからの全RNA[(Analytical Biological Service Inc.デラウェア州による特注)]100μgから単離した。簡潔には、150μlのRNアーゼを含まない水、250μlの緩衝液OBB[20mMトリス、pH7.5、1M NaCl、2mM EDTAおよび0.2% SDS]ならびに15μlのOligotexビーズの懸濁液を、100μlの全RNA溶液(1μg/μl)に添加した。RNA/Oligotexビーズ混合物をその後70℃で3分間加熱して、RNAのいかなる二次構造も破壊し、次いで室温で10分間インキュベートした。ポリ(A)RNA/Oligotex粒子複合体を遠心分離し、そして400μlの緩衝液OW2[10mMトリス、pH7.5、150mM NaClおよび1mM EDTA]で2回洗浄し、そしてその後溶出段階のためスピンカラムに移した。ポリ(A)RNAを、200μlの予め加温した(70℃)緩衝液OEB[5mMトリス、pH7.5]を使用してOligotexビーズから溶出した。最後に、イヌDRGポリ(A)RNAを、20μgのグリコーゲンおよび150mMの酢酸ナトリウムの存在下でエタノールにより沈殿させ、そして10μlのRNアーゼを含まない水に再懸濁した。
B.二本鎖cDNAの合成
4μl(1μg)のイヌDRGポリ(A)RNAおよび1μlのcDNA合成プライ
マー(5’−TTCTAGAATTCAGCGGCGC(T)30−1N−3’の配列を伴う52merオリゴ、N−1=G、A若しくはC;およびN=G、A、C若しくはT(Clontech、カリフォルニア州 配列番号10))を混合し、70℃で2分間インキュベートし、そしてその後氷上で2分間冷却した。第一鎖のcDNA合成(逆転写)を、10μl中1mM dNTP混合物ならびに第一鎖合成緩衝液(50mMトリス、pH8.5、8mM MgCl、30mM KClおよび1mM DTT)の存在下に20単位のAMV逆転写酵素を使用して42℃で1時間実施した。第二鎖のcDNA合成は、80μl中24単位の大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、5単位の大腸菌(E.coli)DNAリガーゼI単位の大腸菌(E.coli)RNアーゼH、0.25mMのdNTP混合物(0.25mMのそれぞれdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、ならびに第二鎖緩衝液(100mM KCl、10mM硫酸アンモニウム、5mM MgCl、0.15mM β−NAD、20mMトリス pH7.5および50μM/mlウシ血清アルブミン)よりなる酵素カクテルを添加することにより実施した。反応は最初に16℃で90分間実施し、次いで同一温度で45分間の継続したインキュベーションを伴い20単位のT4 DNAポリメラーゼを添加した。反応を、10mM EDTAおよび8μgのグリコーゲンを添加することにより停止した。フェノールおよびクロロホルム抽出を実施し、次いでエタノール沈殿した。二本鎖cDNAをその後、200μlのTE緩衝液に懸濁しかつ−20℃で保存した。
C.イヌCMR1のカルボキシル末端近くのPCR増幅
cCMR1配列の一部分を、配列番号1のヌクレオチド1761−1781にハイブリダイズするcmr1−23(5’−ttcatctgggccattcttcag−3’(配列番号3)、および配列番号1のヌクレオチド2868−2886にハイブリダイズするcmr1−26(5’−cacagtggcttggactcatt−3’(配列番号4)と呼称される2種のプライマーを使用するPCRにより成功裏に増幅した。PCR反応は、5μlのイヌDRG二本鎖cDNA、5μlのAdvantage2 DNAポリメラーゼとともに提供された10×反応緩衝液、200μM dNTP、200nMのフォワードプライマーcmr1−23、200nMのリバースプライマーcmr1−26および1μlの50×AdvantageTM−HF2 DNAポリメラーゼ混合物(Clontech、カリフォルニア州)を含有する50μlの最終容量中で実施した。PCRは、94℃で1分間の初期変性段階、次いで30周期の:(a)94℃で30秒間の変性、(b)55℃で30秒間のアニーリングおよび(c)72℃で60秒間の伸長により実施した。
アガロースゲル電気泳動を実施し、それはPCR産物がおよそ1.1kbであったことを示した。PCR後に1.1kbのPCRフラグメントを精製し、そして供給元のプロトコルに従いpPCRscript(Stratagene)にサブクローニングした。2個の独立したクローンを拾い、そしてDNA配列決定分析にかけた。
配列の結果は、PCR増幅したフラグメントが、マウス、ラットおよびヒトCMR1のカルボキシル末端近くにそれぞれ83% 84%および87%同一であったことを示した。
D.cCMR1配列の5’および3’端のRACE−PCR
cCMR1遺伝子の完全な5’および3’cDNA配列を得るために、RACE−PCR技術を実施した。最初に、5’−および3’−双方のRACE−Ready cDNAを、製造元の説明書に従ってSMARTTM RACE DNA増幅キット(BD Clontech、カリフォルニア州)を用いて個別に合成した。5’RACEのためのcDNAを調製するため、1本の0.5mlチューブ中で、3μlのA.で得られたイヌDRGポリ(A)RNAを1μlの5’−CDSプライマーおよび1mlのSMART I
I Aオリゴと混合した。3’−RACEのためのcDNAを調製するため、3μlのイヌDRGポリ(A)RNAを、別の0.5mlチューブ中で1μlの3’−CDSプライマーおよび1μlのRNアーゼを含まない水と混合し、そしてその後70℃で2分間インキュベートし、次いで氷上で2分間冷却した。次に、2μlの5×第一鎖緩衝液、1μlの20mM DTT、1μlの10mM dNTP混合物および1μlのPowerScript逆転写酵素を各チューブに添加し、そして合成を42℃で90分間実施した。200μlのTE緩衝液を添加することおよびサンプルを72℃に7分間加熱することにより反応を停止した。反応生成物を−20℃で保存した。
RACE−PCRのため、cCMR1 cDNAの5’部分に近接した1.1kbのcDNA配列に基づき2種のプライマーを合成した。3’RACE−PCRのためのフォワードプライマーはdcmr1−3と命名され、そして以下の配列:5’−GCCCATCGACAAG CACAAGAAGATC−3’(配列番号5)を有し、配列番号1(相補鎖)のヌクレオチド2213−2237にハイブリダイズし;5’−RACE−PCRのためのリバースプライマーはdcmr1−1と命名され、そして以下の配列:5’−GATCTTCTTGTGCTTGTCGATGGG C−3’(配列番号6)を有し、配列番号1のヌクレオチド2213−2237にハイブリダイズする。5’および3’双方のRACE PCRを、5μlのcDNA鋳型(上述されたところの5’−若しくは3’−いずれかのRACE−Ready cDNA)、5μlの10×反応緩衝液、200μMのdNTP、200nMのユニバーサルプライマーミックス(UPM)(Clontech)、配列番号7(5’−CCA TCC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGC−3’)、200nM cCMR1特異的プライマー(5’−RACE PCRのためdcmr1−1若しくは3’−RACE PCRのためdcmr1−3)、および1μlの50×AdvantageTM−HF2 DNAポリメラーゼ混合物(Clontech)を含有する50μlの最終容量中で実施した。RACE−PCRのためのサーマルサイクラーのパラメータは:a)94℃で2分間の初期変性;b)5周期の:94℃30秒間、72℃3分間;c)5周期の:94℃30秒間、70℃30秒間、72℃3分間;およびd)25周期の94℃5秒間、68℃30秒間、72℃3分間であった。反応後にRACE−PCR産物を精製し、研磨し(polish)、そしてpPCRscriptに直接サブクローニングした。5’−RACE若しくは3’−RACEいずれかからの4個の独立したクローンを拾い、そしてDNA配列決定分析にかけた。
E.完全長のcCMR1 cDNAの配列:
完全長のイヌCMR1 cDNAの配列を、RACE−PCRにより得た5’および3’端の配列に基づくPCRプライマーを合成することにより確認した。完全長のcCMR1 cDNAを、以下の配列:5’−AAGCTTCAT ATG TCC TTC GAG GGG GCC AGG CTC AGC ATG AGG AA−3’(配列番号8)を有したフォワードプライマーdcmr1−7、および以下の配列:5’−CTCGAG CTA TTT GAT TTT ATT AGC GAT CTC TTT CAG AAG GCCC−3’(配列番号9)を有したリバースプライマーdcmr1−8を用いる高正確度(high−fidelity)DNAポリメラーゼにより、B.で調製したイヌDRG二本鎖cDNAから増幅した。PCRは、5μlの上のイヌDRG二本鎖cDNA、5μlの10×反応緩衝液、200μMのdNTP、200nMのフォワードプライマーdcmr1−7、200nMのリバースプライマーdcmr1−8、および1μlの50×AdvantageTM−HF2 DNAポリメラーゼ混合物(Clontech、カリフォルニア州)を含有する50μlの最終容量中で実施した。PCR反応のパラメータは:1周期:94℃で2分間の初期変性;35周期:a)94℃で30秒間の変性、b)70℃で5分間のアニーリングおよび伸長であった。PCR後に3.4kbのPCRフラグメントを精製し、そしてC.でと同一のクローニングプロトコルに従ってpPCRscriptにサブクローニングした。4個の独立したクローンを拾い、そしてDNA配列決定分析にかけた。クローンNQC562をさらなるサブクローニングおよび研究に使用した。配列の結果は、cCMR1 cDNAの核酸配列(配列番号1のヌクレオチド69−3380)が、マウス(受託番号:AY095352)、ラット(受託番号:AY072788)およびヒト(受託番号:NM_024080)のCMR1のcDNA配列にそれぞれ86.2%、86.6%および90.9%同一であったことを示した。
F.配列分析
5’−および3’−RACE−PCRは5’非翻訳領域の68ヌクレオチドの配列の決定を見込み;3’−RACE−PCRは37−merのポリ(A)尾部を包含する3’非翻訳領域の431bpの決定を見込んだ。インフレームの終止コドンは同定されなかった。
予測されたcCMR1のオープンリーディングフレームは、127.6kDaの計算される分子量を有する1104アミノ酸のポリペプチド(配列番号2)をコードすることが予測される3315bpの配列よりなる(表1を参照されたい)。一次配列のKyte−Doolitleの親水性分析(示されない)は、カルボキシル末端近くに群集した8個の推定の疎水性ドメインの存在を予測する。チャンネルのオリゴマー化に関与しているとみられる、残基1070から最後までの非常にカルボキシル末端に位置するコイルドコイルドメインの高い確率が同定された。さらに、GCG SeqWebを用いる一次配列解析は、cCMR1がそれぞれ残基15、256、317、812、934、1050および1072に位置する複数のN−グリコシル化部位を含有したことを示した。cCMR1はまた、残基92に1個の推定のPKA(タンパク質キナーゼA)リン酸化部位、残基30、228および288に3個のチロシンリン酸化部位、ならびに17個のPKC(タンパク質キナーゼC)リン酸化部位も含有する。
cCMR1アミノ酸配列を、AccelrysのSeqweb version 2からのGapプログラムを使用して、ヒト(GenBank受託番号:NP_076985)、ラット(GenBank受託番号:NP_599198)およびマウス(GenBank受託番号:AAM23261)配列と整列し、それぞれ95.1%、94.1%および93.9%の同一性を示した。Gapプログラムは2個の完全な配列のアライメントを見出すのにNeedlemanとWunsch(J Mol.Biol.、48:443(1970))のアルゴリズムを使用する。それは一致の数を最大にしかつギャップの数を最少にする。
CMR1の組換え発現
A.哺乳動物発現ベクターへのcCMR1のクローニング
哺乳動物細胞株中でのcCMR1の発現のため、cCMR1の完全長cDNAを、3方向ライゲーションを実施することによりpcDNA3.1にサブクローニングした。最初に、完全長のcCMR1クローンNQC562をHindIIIおよびNcoIで消化して、0.8kbの5’フラグメントを生じた。次に、独立した制限反応で、NQC562をNcoIおよびSalIで消化して2.5kbの3’フラグメントを生じた。該0.8kbの5’および2.5kbの3’cCMR1フラグメントを精製し、そして、HindIIIおよびSalIで予め消化したpcDNA3.1と連結して、ベクターpcDNA3.1−cCMR1を創製した。
in vitro翻訳分析のため、完全長のcCMR1 cDNAをpAGA4ベクター(PromegaのpGEM3から改変した、Sanford 1991およびQinら 1997)にサブクローニングした。簡潔には、0.8kbのN末端フラグメントをNQC562のNdeIおよびNcoIでの消化により得、また、2.5kbのC末端フラグメントをNQC562のNcoIおよびXhoIでの消化により得た。該2種の精製したフラグメントを、NdeIおよびSalIで予め消化したベクターpAGA4と一緒に連結して、構築物cCMR1/pAGA4を創製した。全部の最終構築物をDNA配列決定により確認した。
B.cCMR1のin vitro翻訳
イヌCMR1のin vitro翻訳を、供給元の推奨するプロトコルに従い、TnTTM T7 Quick Coupled転写/翻訳系(Promega)を用いて行った。簡潔には、1μlの0.1μg/μlのcCMR1/pAGA4を、0.2μlの[35S]−メチオニン(10mCi/mlで1000Ci/mmol)を含む9μlのTNT Quickマスターミックスに添加した。反応混合物を30℃で90分間インキュベートした。等容量の2×SDS/PAGE負荷緩衝液を添加することにより反応を停止し、そしてその後、サンプルを4〜20%勾配SDS−PAGE分析にかけた。電気泳動後に、ゲルをクマシーブルーR250で染色し、乾燥しかつX線フィルムに露出した。in vitro翻訳したcCMR1は、対応する核酸配列からのアミノ酸配列の誠実な翻訳により予測されるところの135kDaの近似分子量に移動した。
in vitro翻訳したcCMR1タンパク質をウエスタンブロットによってもまた分析した。5μlのin vitro翻訳したcCMR1タンパク質を4〜20%勾配SDS−PAGEにかけた。ゲル上のタンパク質をその後ニトロセルロースに転写した。ブロットをその後、TTBS(pH=7.5の0.5%Tween 20、100mMトリス−HClおよび0.9%NaCl)中5%粉乳で室温で1時間ブロッキングし、そしてその後、抗cCMR1ポリクローナル抗体(500倍希釈)と4℃で一夜インキュベートした。翌日、ブロットを100mlのTTBSで3回洗浄し、そしてワサビペルオキシダーゼで複合したヤギ抗ウサギIgG抗体(Pierce)と室温で1時間インキュベートした。ブロットを100mlのTTBSで3回洗浄し、そして製造元の説明書に従って、ECL−Plus発光試薬(Amersham−Pharamacial Biotech)で可視化した。
pcDNA3.1−cCMR1構築物を、製造元のプロトコルに従い、GeneJammerTMキット(Stratagene、カリフォルニア州)を使用してHEK293(ヒト胎児由来腎臓細胞(ATCC CRL−1573)にトランスフェクトした。G418の存在下での増殖により安定な細胞クローンを選択した。単一のG418耐性クローンを単離かつ精製した。cCMR1 cDNAを含有するクローンを、カルシウム流入アッセイを使用して分析した。
cCMR1のカルシウム流入機能アッセイ
FLIPRアッセイを実施して、細胞の一集団内のcCMR1チャンネルの特性を研究した。
組換え細胞中で発現されるcCMR1の機能性を示すため、CMR1/HEK293の安定にトランスフェクトされた細胞を、6.7×10細胞/ウェルの濃度で384ウェルプレートに接種し、そして37℃で一夜インキュベートした。翌日、細胞に、40μlの最終容量中の緩衝液およびカルシウム色素(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)を負荷し、そして室温で30分間インキュベートした。それぞれ100μM若しくは10μMの濃度で細胞に添加したメントール若しくはイチリンの添加の前および後にそれぞれ、蛍光強度をFLIPRにより測定した。結果を図1に示す。
低下されたCa++負荷濃度でのCMR1機能アッセイ
CMR1は、メントール若しくはイチリンのようなアゴニストに、およびまた穏やかな低温(15℃ないし25℃)に応答して開放する。従って、室温(22〜24℃)では、CMR1は活性でありかつCa2+流入を誘発し得る。しかしながら、Ca2+流入はまたCa2+依存性の不活性化も誘導することができ、CMR1の負のフィードバック調節をもたらす。この場合、CMR1は室温により活性化後に不活性化されることができ、そして、温度を約25℃より上に増大させるまで再活性化されないことができる。従って、通常の試験条件(室温および2mM Ca2+を含有する緩衝液の存在下)では、ラットCMR1のようなある種からのCMR1はいかなるアゴニストに対しても応答性でない。室温でアンタゴニストをスクリーニングするのにCMR1を使用しうる系を調製するため、色素負荷緩衝液からCa2+を除去すること、およびその後CMR1を含有する系を4mM Ca2+で攻撃することによりCa2+流入アッセイを開発した。この条件下で、CMR1は(室温で)活性であるとは言え、カルシウムは該チャンネルを通って細胞に進入しないことができ、そして不活性化が起こらないことができる。これらのアッセイ条件下でCMR1は構成的に活性であり、そしてCa2+が細胞外溶液に添加されるや否やCa2+流入を可能にするようプライミングされる。
ラットCMR1でトランスフェクトしたヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)を384ウェルプレートに接種した(6.7×10細胞/ウェル)。翌日、培地を除去し、そして細胞を完全ハンクス液ですすいだ。細胞にその後、40μlの最終容量中の緩衝液およびカルシウム色素(Mol.Dev.)を負荷し、そして室温で30分間インキュベートした。プレートをその後FLIPR装置に移し、ここで、アンタゴニスト活性について試験する化合物を時間ゼロに4.2μMの最終濃度まで添加した。カルシウムを約時間10秒に4mMの最終濃度まで添加し、そして蛍光強度をFLIPRにより測定した。試験化合物を時間ゼロに添加しなかった代表的結果を図2に示す。
CMR1チャンネルの脱感作物質若しくは不活性化物質のスクリーニングアッセイ
一般に、イオンチャンネルの活性化する刺激(例えばアゴニスト)への長時間の曝露に際して、または直接脱感作若しくは不活性化する刺激に応答して、チャンネルは、活性化する刺激に応答して変動してより少なく活性化可能である代替のコンホメーションをとりうる。これらのより少なく活性化可能な若しくは不活性化可能なコンホメーションは、機能的に脱感作若しくは不活性化されると、また、これらの状態を生じる化合物はそれぞれ脱感作物質若しくは不活性化物質であると称されうる。こうしたコンホメーションは、これらのいわゆる脱感作物質若しくは不活性化物質により若しくはそれらの存在下で誘導若しくは安定化されることができ、そして、開放若しくは閉鎖したチャンネルに対する脱感作物質若しくは不活性化物質の優先的作用により生じうる。加えて、こうしたコンホメーションは変動する時間経過および条件にわたり可逆的でありうるか、若しくは新生チャンネルの不可逆的な未決のデノボ合成でありうる。可逆的若しくは不可逆的いずれかである脱感作物質若しくは不活性化物質と同定される化合物は、低下されたCMR1活性が治療的でありうる疼痛状態を包含するある種の状態の処置において有用でありうる。
従って、別の態様において、本発明は、CMR1活性の可逆的および不可逆的脱感作物質若しくは不活性化物質の同定方法を提供する。第一の方法は、閉鎖状態から脱感作若しくは不活性化状態のチャンネルを誘導かつ/若しくは安定化する化合物を同定するよう設計され、そして:(a)cCMR1タンパク質をコードする核酸を含んでなる組換え細胞を提供する段階、(b)該組換え細胞を、活性化の閾値より上の温度(典型的には約28℃より上)で変動する長さの時間、試験化合物と接触させる段階、(c)試験化合物を徹底的に洗い流す段階、および(d)変動する時間点で、CMR1を活性化する刺激へのその後の曝露に応答して該試験化合物がCMR1活性を低下させる程度を測定する段階を含んでなる。第二の方法は、開放状態から脱感作若しくは不活性化状態のチャンネルを誘導かつ/若しくは安定化する化合物を同定するよう設計され、そして:(a)cCMR1タンパク質をコードする核酸を含んでなる組換え細胞を提供する段階、(b)活性化の閾値より上の温度(典型的には約28℃より上)でCMR1アゴニストと該組換え細胞を接触させる段階、(c)該組換え細胞を、変動する長さの時間、試験化合物と接触させる段階、(d)試験化合物およびアゴニストを徹底的に洗い流す段階、ならびに(e)変動する時間点で、CMR1を活性化する刺激へのその後の曝露に応答して該試験化合物がCMR1活性を低下させる程度を測定する段階、若しくは:(a)cCMR1タンパク質をコードする核酸を含んでなる組換え細胞を提供する段階、(b)活性化の閾値より下の温度(典型的には約28℃より下)で該組換え細胞をインキュベートする段階、(c)該組換え細胞を、変動する長さの時間、試験化合物と接触させる段階、(d)試験化合物を徹底的に洗い流す段階、および(e)変動する時間点で、CMR1を活性化する刺激へのその後の曝露に応答して該試験化合物がCMR1活性を低下させる程度を測定する段階、のいずれかを含んでなる。
からし油によるcCMR1の活性化
からし油は皮膚に適用される場合に疼痛および炎症を導き出す天然の生成物である。最近、TRPファミリーの新規1メンバーTRPA1が、からし油の辛味作用の細胞および分子標的の1つとして提案された(Jordtら 2004、Nature、427:260−265)。われわれはからし油もまたcCMR1を活性化することを示した。
cCMR1で安定にトランスフェクトされたHEK293細胞を、6.7×10細胞/ウェルの濃度で384ウェルプレートに接種し、そして37℃/5%COで一夜インキュベートした。翌日、細胞にカルシウム色素を負荷し、そして室温で30分間インキュベートした。化合物を細胞に投与する前および後に、カルシウム媒介性の蛍光強度をFLIPRにより測定した。図3に示されるとおり、cCMR1は100nMイチリン(実線)のような冷却化合物に感受性であるのみならず、しかしまた辛味化合物(1mMからし油)(点線)によっても活性化される。
全細胞パッチクランプ研究
パッチクランプ実験を実施して、単一細胞中で発現されるcCMR1チャンネルの特性を研究した。
イヌcCMR1で安定にトランスフェクトされたHEK293細胞を、10%ウシ胎児血清、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび1mg/ml G418を補充したDMEM中で培養した。細胞は37℃でかつ5%CO中で維持した。
別の方法で示されない限り、記録に使用した標準細胞外溶液は(mMで):NaCl、132、EGTA、1;KCl、5.4;MgCl、0.8;HEPES、10;ブドウ糖、10;pH=7.4を含有した。細胞外溶液がCa2+を含有した実験において、使用した細胞外溶液は、使用されたCa2+濃度に依存して、以下(mMで):(1)NaCl、132;CaCl、0.1若しくは1.8;KCl、5.4;MgCl、0.8;HEPES、10;ブドウ糖、10;pH=7.4;(2)NaCl、116;CaCl、10;KCl、5.4;MgCl、0.8;HEPES、10;ブドウ糖、10;pH=7.4の一方であった。記録ピペットを満たすのに使用した細胞内溶液は(mMで):CsCl、145;EGTA、5;HEPES、10;ブドウ糖、5;pH=7.4を含有した。
記録は、単一細胞記録に適切な密度で細胞をガラス製カバーガラス上にプレーティングした1〜2日後に、慣習的全細胞パッチクランプ技術を使用して実施した。電流をパッチクランプ増幅器により増幅し、そして2kHzでフィルタリングした(Axopatch
200B、Axon Instruments)。メントール(100μM)若しくはイチリン(1μM)を、重力供給式灌流装置を介して0.5ml/分で細胞に適用した。アゴニスト刺激を伴う記録を22℃で実施した。
温度を変動させた実験において、温度傾斜は、双極温度制御装置(型式CL−100、Warner Instruments、コネチカット州ハムデン)により制御される二重インラインヒーター/クーラー(型式SC−20、Warner Instruments)中で灌流液を加熱/冷却することにより生成させた。記録される細胞付近の温度は、モニタリング温度計(型式TH−8、Physitemp、ニュージャージー州クリフトン)に接続した特注の小型温度マイクロプローブで測定し、そして、全細胞パッチクランプモードで同時に電流が測定されたように、Digidata 1322AおよびpClamp 9.0(Axon Instruments、カリフォルニア州ユニオンシティ)を使用してサンプリングした。2種の電圧プロトコルをこれらの研究で使用した。第一のものは10kHzのサンプリングレートで、−100mVから+60mVまでの600msの電圧傾斜を伴った。この電圧パルスを5秒ごとに1回反復した。細胞は、電圧パルスの間、−100mVで保持した。第二のプロトコルにおいて、細胞は−80mVで保持し、そして電流をこの保持電位で連続的に(100Hzで)サンプリングした。
図4は、cCMR1が強く外側に整流しておりかつ陽イオンに対し非選択的であることを具体的に説明する。cCMR1の全細胞パッチクランプ記録を、上述された電圧傾斜プロトコルを使用して実施した。冷却剤100μMメントールの適用に際して、過分極および脱分極双方の膜電位で、対照(点線)に比較して全細胞電流振幅(実線)の大きな増大が存在した。この増大は、過分極電位でよりも脱分極電位ではるかにより顕著であった。これゆえに、該チャンネルは強く外側に整流している。加えて、メントールで活性化された電流は0mV近くで逆転電位を有し、該チャンネルの比較的非選択的(少なくともこれらの実験で使用した陽イオンに対して)の性質を示す。定性的に類似の結果が、別の冷却剤イチリンについてもまた得られた。
cCMR1の温度感受性を図5に具体的に説明する。cCMR1を発現する細胞を灌流する溶液の温度が低下された際に、+60mVで該細胞を通過する電流は、約17℃の活性化閾値で有意に増大された。cCMR1チャンネルは室温で開放でなかったが、しかし約17℃より下の低温により活性化された。
図6は、細胞外Ca2+がcCMR1チャンネルを脱感作することを示す。100μMのメントールは細胞外Ca2+の非存在下で非脱感作電流を活性化した(−80mV;灰色の軌跡)。対照的に、脱感作は、それ以外は同一の記録条件下で、1.8mMの細胞外Ca2+の存在下で容易に発生した(黒色の軌跡;表示の明快さのためCa2+を含まない軌跡に対し正規化した)。
細胞外Ca2+は、該チャンネルが例えば1mMのメントールにより活性化された場合にcCMR1の電流の振幅を減少させた。細胞外Ca2+によるこの見かけの阻害は濃度依存性であった(図7)。細胞外Ca2+の濃度が高くなるほど、電流の振幅の阻害が大きくなる。図7中の点線は、該データへの最良適合を表すロジスティック関数である。1.6mMの細胞外Ca2+のIC50値が最良適合解析から得られた。加えて、細胞外Ca2+による見かけの阻害は電圧依存性であった(図8)。細胞外Ca2+(10mM)は、過分極電位で電流の振幅を強く阻害した。該阻害はより脱分極した電位で減少された。
イヌCMR1発現ベクターで安定にトランスフェクトされた組換え細胞での細胞に基づくカルシウム流入アッセイの結果を具体的に説明する。細胞は、10μMのイチリン(黒丸);若しくは100μMの(−)−メントール(白丸)に応答するカルシウム媒介性の蛍光の増大を示した。化合物は時間点200秒で細胞に添加した。細胞への緩衝剤のみの添加(白三角)に際して、カルシウムの流入は観察されなかった。 実質的にカルシウムを含まない負荷緩衝液を使用する細胞に基づくカルシウム流入アッセイの結果を具体的に説明する。ラットCRM1発現ベクターで安定にトランスフェクトされた組換え細胞(黒丸)は、4mM Ca2+の添加に際してカルシウム媒介性の蛍光の増大を示した。非形質転換細胞(白丸)は4mM Ca2+の添加に際してより少ないCa2+流入を有した。Ca2+は時間点10秒で細胞に添加した。 cCMR1がからし油(辛味化合物)により活性化されることを具体的に説明する。cCMR1で安定にトランスフェクトされた組換え細胞は、1mMからし油(点線)若しくは陽性対照としての100nMイチリン(実線)の添加に際して、カルシウム媒介性の蛍光の増大を示した。緩衝液単独を陰性対照(点線)として使用した。 cCMR1は強く外側に整流しておりかつ陽イオンに対し非選択的であることを具体的に説明する。実線は、100μMメントールの存在下で実施したcCMR1の全細胞パッチクランプ記録を表す一方、点線は緩衝液対照を表す。 cCMR1の温度感受性を具体的に説明する。細胞を通過する電流は、cCMR1を発現する細胞を灌流する溶液の温度を低下させた際に有意に増大し、約17℃の活性化閾値を示す。 細胞外Ca2+がcCMR1チャンネルを脱感作することを具体的に説明する。最も下の軌跡は、100μMメントールの存在下かつ細胞外Ca2+の非存在下でのcCMR1の全細胞パッチクランプ記録を表す一方、表示の明快さのためCa2+を含まない軌跡に対し正規化した最も上の黒色の軌跡は、1.8mMの細胞外Ca2+の存在下で100μMメントールにより活性化された電流を表す。 細胞外Ca2+によるcCMR1チャンネルの電流の増幅の阻害の濃度依存性を具体的に説明する。チャンネルを−80mVで電圧クランプし、そして1mMメントールにより活性化した。点線は、1.6mMというIC50値を伴う、該データへの最良適合を表すロジスティック関数である。 細胞外Ca2+によるcCMR1チャンネルの電流の増幅の阻害の電圧依存性を具体的に説明する。チャンネルは1mMメントールにより活性化した。

Claims (49)

  1. 寒冷刺激を検出かつ伝達することが可能でかつ配列番号2に対する最低96%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。
  2. 配列番号2に対する最低98%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  3. 配列番号2のポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  4. 配列番号1のヌクレオチド69ないし3380を含んでなる、配列番号1に記載の単離された核酸分子。
  5. 請求項1に記載の単離された核酸配列を含んでなる発現ベクター。
  6. 請求項1に記載の単離された核酸配列を含んでなる組換え宿主細胞。
  7. 寒冷刺激を検出かつ伝達することが可能でかつ配列番号2に対する最低96%の配列の同一性を有する、実質的に精製されたポリペプチド。
  8. 配列番号2に対する最低98%の配列の同一性を有する、請求項7に記載の実質的に精製されたポリペプチド。
  9. 配列番号2を含んでなる、請求項7に記載の実質的に精製されたポリペプチド。
  10. (a)請求項7に記載のポリペプチドをコードすることが可能な発現ベクターを細胞に導入する段階;および
    (b)該発現ベクターからのポリペプチドの発現を可能にする条件下で細胞を培養する段階
    を含んでなる、請求項7に記載のポリペプチドの発現方法。
  11. ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で請求項1に記載の核酸分子に選択的にハイブリダイズする核酸プローブ。
  12. 請求項7に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
  13. 請求項11に記載の核酸プローブを含んでなるキット。
  14. 請求項12に記載の抗体を含んでなるキット。
  15. 請求項11に記載の核酸プローブと核酸分子を接触させる段階を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子の検出方法。
  16. 請求項12に記載の抗体とポリペプチドを接触させる段階を含んでなる、請求項7に記載のポリペプチドの検出方法。
  17. (a)cCMR1遺伝子の発現を調節するための機構を含んでなる細胞と試験化合物を接触させる段階;および
    (b)該試験化合物が、該細胞からの前記機構により制御される遺伝子の発現を増大若し
    くは減少させるかどうかを決定する段階
    を含んでなる、cCMR1タンパク質の発現を増大若しくは減少させる化合物の同定方法。
  18. その発現が該機構により制御される遺伝子がレポーター遺伝子である、請求項17に記載の方法。
  19. その発現が該機構により制御される遺伝子がcCMR1遺伝子である、請求項17に記載の方法。
  20. (a)試験化合物をcCMR1イオンチャンネルと接触させる段階;および
    (b)該試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階
    を含んでなる、cCMR1イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる化合物の同定方法。
  21. cCMR1イオンチャンネルが、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる、請求項20に記載の方法。
  22. cCMR1イオンチャンネルが宿主細胞と会合される、請求項20に記載の方法。
  23. 宿主細胞が、cCMR1イオンチャンネルの組換え宿主細胞である、請求項22に記載の方法。
  24. 宿主細胞が、cCMR1イオンチャンネルの内因性宿主細胞である、請求項22に記載の方法。
  25. cCMR1が、単離された膜調製物と会合される、請求項20に記載の方法。
  26. 段階(b)が、細胞内カルシウムレベルの量を測定することを含んでなる、請求項20に記載の方法。
  27. 試験化合物をイオンチャンネルと接触させる段階の前に、イオンチャンネルの伝導性を増大させる段階をさらに含んでなる、請求項20に記載の方法。
  28. イオンチャンネルの伝導性を増大させる段階が、イオンチャンネルの伝導性を増大させることが可能な化合物を含有する緩衝溶液中で該チャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項27に記載の方法。
  29. チャンネルの伝導性を増大させることが可能な化合物が、メントール、イチリンおよびmusterオイルよりなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
  30. イオンチャンネルの伝導性を増大させる段階が、cCMR1チャンネル活性化温度でイオンチャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項27に記載の方法。
  31. cCMR1チャンネル活性化温度が4〜17℃の範囲内にある、請求項30に記載の方法。
  32. イオンチャンネルの伝導性を増大させる段階が、イオンチャンネルを脱分極させることを含んでなる、請求項27に記載の方法。
  33. 試験化合物をイオンチャンネルと接触させる段階の前に、イオンチャンネルの伝導性を低下させる段階をさらに含んでなる、請求項20に記載の方法。
  34. イオンチャンネルの伝導性を低下させる段階が、イオンチャンネルの伝導性を低下させることが可能な化合物を含有する緩衝溶液中で該チャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項33に記載の方法。
  35. イオンチャンネルの伝導性を低下させる段階が、cCMR1チャンネルを活性化しない温度でイオンチャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項33に記載の方法。
  36. cCMR1チャンネルを活性化しない温度が室温である、請求項35に記載の方法。
  37. イオンチャンネルの伝導性を低下させる段階が、イオンチャンネルの伝導性を低下させるのに十分である濃度の細胞外Ca2+を含有する緩衝溶液中で該チャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項33に記載の方法。
  38. イオンチャンネルの伝導性を低下させる段階が、イオンチャンネルを過分極させることを含んでなる、請求項33に記載の方法。
  39. (a)不活性化量以下のカルシウムを含有する緩衝溶液中でイオンチャンネルをインキュベートする段階;
    (b)イオンチャンネルを活性化する段階;
    (c)イオンチャンネルを試験化合物と接触させる段階;
    (d)緩衝溶液中のカルシウムの量を増大させる段階;および
    (e)該試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階
    を含んでなる、哺乳動物のCMR1イオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させる化合物の同定方法。
  40. イオンチャンネルを活性化する段階が、イオンチャンネルの伝導性を増大させる化合物を含有する緩衝溶液中で該チャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項39に記載の方法。
  41. イオンチャンネルを活性化する段階が、哺乳動物のCMR1チャンネルの活性化温度でイオンチャンネルをインキュベートすることを含んでなる、請求項39に記載の方法。
  42. イオンチャンネルを活性化する段階が、イオンチャンネルを脱分極することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
  43. 哺乳動物のCMR1タンパク質が、ヒト、ラット、マウス若しくはイヌの起源のものである、請求項39に記載の方法。
  44. 試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階が、細胞内カルシウム量を測定することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
  45. 細胞内カルシウム量がFLIPRアッセイを使用して測定される、請求項44に記載の方法。
  46. 試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階が、該イオンチャンネルにより伝導される電流を測定することを含んでなる、請求項39に記載の方法。
  47. イオンチャンネルにより伝導される電流が、パッチクランプ技術を使用して測定される、請求項46に記載の方法。
  48. (a)cCMR1から構成されるイオンチャンネルと試験化合物を接触させる段階;および
    (b)該試験化合物がイオンチャンネルの伝導性を増大若しくは低下させるかどうかを決定する段階
    を含んでなる、疼痛を処置するのに有用な化合物の同定方法。
  49. (a)試験化合物を動物に投与する段階;および
    (b)該試験化合物が該動物の侵害受容/侵害防御応答を変える程度を決定する段階
    をさらに含んでなる、請求項48に記載の方法。
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