JP2008505229A - C.i.ピグメントイエロー181の新規な結晶性変態および関連する製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明はC.I.ピグメントイエロー181の新規な結晶性変態(イータ型、シータ型、イオタ型、カッパ型)に関連し、この場合、本発明の新規な結晶性変態は、前記顔料の公知相の1つまたは別の本発明の相を特定の溶媒により処理したときに得られる。本発明の新規な結晶性相は黄色の色相および優れた着色特性によって特徴づけられる。
Description
本発明は、下記の式(1)のC.I.ピグメントイエロー181の4つの新規な結晶性変態(イータ型、シータ型、イオタ型、カッパ型)、これらの調製、および、顔料としてのこれらの使用に関連する。
C.I.ピグメントイエロー181(本明細書中以降、P.Y.181)は、ジアゾ化された4−(4’−アミノベンゾイルアミノ)ベンズアミドの5−アセトアセチルアミノベンゾイミダゾロン(アセトロン)とのカップリング反応から得られる下記の式(1)の化合物を示す。
固体状態において、化合物(1)はまた、別の互変異性形態および/またはcis−trans異性形態でも存在することができ、また、適する場合には、典型的には10重量%までの水分子をさらに含有し得る。
ほとんどの有機顔料は多数の異なる結晶性変態(これらは相としてもまた公知である)で存在する。結晶性変態は同じ化学的組成を有するが、結晶における構成単位(分子またはイオン)の配置が異なる。化学的性質および物理的性質を決定するのは結晶構造であり、従って、個々の結晶性変態は、多くの場合、レオロジー、色および他の色彩的性質が異なる。種々の結晶性変態をx線粉末回折法によって特定することができる。
P.Y.181はこれまで、6つの結晶性変態を有することが公知である。これらは本明細書中下記では、アルファ型、ベータ型、ガンマ型、デルタ型、イプシロン型およびゼータ型として示される。これらはx線粉末回折図において下記の特徴的な線を特徴とする(Cu−Kα1放射線、2倍の回折角2θ(度単位)、d値(Å−1度単位)、格子面間隔d(Å−1単位)):
アルファ型変態(すべての線が比較的広い)
アルファ型変態(すべての線が比較的広い)
ベータ型変態:
ガンマ型変態:
デルタ型変態:
イプシロン型変態:
ゼータ型変態:
すべての線位置が±0.2°の不確実さで示される。
アルファ相でのP.Y.181が、4−(4’−アミノベンゾイルアミノ)ベンズアミドを5−アセトアセチルアミノベンゾイミダゾロン(アセトロン)とカップリングしたときに得られる。
ベータ相が、カップリング直後のP.Y.181を欧州特許出願公開EP−A−0010273の実施例1における指示に従ってジメチルホルアミドにより処理したときに得られる。
ガンマ相が、カップリングをピリジン中で行い、この後、反応混合物を還流下で加熱したときに得られる。
デルタ相が、ベータ型変態でのP.Y.181をジメチルスルホキシドにより処理したときに得られる。処理の過程で、ベータ相でのP.Y.181が200℃でDMSOに溶解され、続いて温度を下げることによって再び析出させられる。
イプシロン相が、N−メチルピロリドンとの処理によって類似する様式で得られる。
ゼータ相が、カップリングを水およびN−メチルピロリドンの混合物において行い、この後、反応混合物を還流下で加熱したときに得られる。
今回、驚くべきことに、合成直後の顔料をある種の溶媒において加熱し、顔料を部分的または完全に溶解し、続いて再び析出させたとき、P.Y.181が4つの新規な結晶性変態で調製可能であることが見出された。これらの新規な結晶性変態は、イータ型、シータ型、イオタ型およびカッパ型として示される。
これらは下記の特徴的な線を特徴とする(Cu−Kα1放射線、2θ値(度単位)、d値(Å−1単位)、室温において透過で測定されたとき):
イータ型変態:
イータ型変態:
シータ型変態:
イオタ型変態:
カッパ型変態:
すべての線位置が±0.2°の不確実さで示される。
周知の一般的知識であるように、x線粉末回折図における観測可能なピークの数は、特に、結晶子のサイズ分布、粒子形態の異方性、異方性の結晶性性状(特に、応力、歪みおよび結晶欠陥に関して)、サンプル量、使用された回折計、および、測定のための幾何学的配置に依存する。すべての場合における強度はさらに、特に異方性の結晶子形態の場合には組織効果に依存し、また、強度を取り出すために使用された方法に依存する。好ましい事前処理条件のもとで、下記の線を観測することができる(Cu−Kα1放射線、2θ値(度単位)、d値(Å−1単位)、室温において透過で測定されたとき):
イータ型変態:
イータ型変態:
シータ型変態:
イオタ型変態:
カッパ型変態:
すべての線位置が±0.2°の不確実さで示される。
本発明の変態は、総重量に基づいて、通常的には10重量%まで、水分子および溶媒分子を結晶格子にさらに含有し得る。
4つの新規な変態はすべて、難溶性であり、黄色の色相および良好な色彩的性質について注目に値する。
従って、本発明はC.I.ピグメントイエロー181の相変換方法を提供し、この場合、この方法は、下記の式(1)の化合物:
または、式(1)の互変異性体、cis/trans異性体または互変異性cis/trans異性体を、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドとN−メチルピロリドンとの混合物、および、1,2−ジクロロベンゼンとN−メチルピロリドンとの混合物からなる群から選択される溶媒の作用に40℃から250℃(好ましくは110℃から210℃)の温度で供することを含む。
新規な結晶性相を調製するための出発物資は、好ましくは、公知の変態の1つ(より好ましくは、アルファ型変態またはベータ型変態)でのP.Y.181であり、しかし、新規な結晶性変態の1つ以上を、記載された手段を使用してこれ以外の新規な結晶性変態の1つに変換することもまた可能である。
このために、例えば、α相またはβ相での単離されたP.Y.181が、好都合には本発明の溶媒に完全または部分的に溶解され、続いて、水の添加、温度の低下および/または溶媒のエバポレーションによって再び析出させられる。
顔料は、大気圧下だけでなく、加圧下でもまた加熱することができ、このような場合、圧力は1barから200barの間が可能であり、好ましくは1barから50barの間が可能である。
溶媒処理の継続期間は好都合には1分から10時間が可能であり、好ましくは30分から5時間が可能である。
シータ相が、ジメチルスルホキシドとN−メチルピロリドンとの混合物における再結晶によって得られる。この場合、P.Y.181(例えば、ベータ相)が、25:75体積パーセントから75:25体積パーセントの混合範囲(好ましくは、40:60体積パーセントから60:40体積パーセントの混合範囲)でのジメチルスルホキシドとN−メチルピロリドンとの混合物に、好ましくは150℃から200℃の間の温度で溶解され、続いて温度の低下および/または水の添加によって析出させられる。
イータ相が、25:75体積パーセントから75:25体積パーセントの混合範囲(好ましくは、40:60体積パーセントから60:40体積パーセントの混合範囲)でのN−メチルピロリドンと1,2−ジクロロベンゼンとの混合物を溶媒として使用して同様の様式で得られる。
イオタ相が、P.Y.181(例えば、ベータ相)をジメチルアセトアミドにおいて、好ましくは120℃から180℃の間の温度に加熱し、懸濁物をろ過し、ろ液を室温に冷却したときに得られる。顔料が溶液から結晶化する。
カッパ相が、P.Y.181(例えば、アルファ相)を、加圧反応器において、好都合には1分間から6時間(好ましくは10分間から2時間)、水において、好ましくは110℃から150℃の温度(特に、120℃から140℃の温度)に加熱したときに得られる。より長く加熱することは可能であるが、これは技術的利点を何らもたらさない。続いて、顔料がろ過される。
出発物質の純度、濃度、用いられる温度および温度軌跡、可能な後処理、圧力、不純物または添加剤の存在、ならびに、種結晶の存在に依存して、新規な結晶性変態を純粋な形態で得ることができ、または、互いに新規な相の混合物および/または公知の相との新規な相の混合物として得ることができる。
純粋な結晶性変態または実質的に純粋な結晶性変態が、この変態の種結晶または結晶核を既に含有する溶液または懸濁物から処理したときに、また、結晶成長速度が比較的大きく、しかし、核形成速度が比較的低く、この結果、存在する結晶核がこの変態の保持を伴って成長する範囲で過飽和が維持されるように析出化を非常に遅く行ったとき、優先的に生じる。機械的な撹拌装置の使用が好都合である場合がある。これは、機械的な撹拌装置の使用により、所望する変態の存在する結晶が、この変態のための結晶核としてこの後に役立つ多くのより小さい断片(いわゆる二次核形成)に壊されるからである。例えば、溶液がより迅速に冷却されるために、過飽和がより大きいとき、核形成速度は一層より大きくなり、この結果、この変態および他の変態の多くの結晶核が自然に生じ得る。このことは、所望する変態から一部のみからなる変態混合物を優先的に生じさせる。
本発明による複数の変態の混合物、または、本発明による変態の1つ以上を、公知の変態を用いて調製することは、特定の色彩的性質およびレオロジー的性質が所望されるとき、特に、純粋な変態の性質の間である性質が所望されるときには注目され得る。
様々な変態の混合物を、例えば、ふるい分け、再結晶、熱処理、選択的溶解またはこれ以外の変態の抽出によって、または、特定の相の形成が有利である本発明のプロセス手段の反復した適用によって、1つの相、または、そのほかの純粋な相のより大きな割合を得るために濃縮することもまた可能である。
従って、本発明はまた、少なくとも10%(好ましく少なくとも25%、特に、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%)のイータ型変態、シータ型変態、イオタ型変態、カッパ型変態、または、述べられた変態の混合物を含有するP.Y.181混合物を提供する。
所望の使用分野に依存して、得られた顔料を機械的な微分割に供することが理解され得る。微分割は湿式粉砕または乾式粉砕または混練によって達成することができる。粉砕または混練の後に、溶媒による処理、水による処理、または、溶媒−水混合物による処理を、顔料を使用可能な形態に変換するために続けることができる。
変態の変化を促進させるために、本発明の変態を安定化させるために、色彩的性質を改善するために、また、特定の色彩的効果を得るために、顔料分散物、表面活性剤、消泡剤、増量剤または他の添加剤をプロセスの任意の所望されるところで加えることが可能である。これらの添加物質の混合物を使用することもまた可能である。添加物質は一度にすべてを加えることができ、または、2回以上に分けて加えることができる。添加物質は、合成の任意の段階で、または、様々な後処理の任意の段階で、または、後処理の後で加えることができる。最も好適な時点は範囲発見試験で事前に決定されなければならない。
本発明の変態におけるP.Y.181、または、本発明の変態を含有する混合物におけるP.Y.181は、天然起源または合成起源の高分子有機材料の顔料着色のために、例えば、被覆剤、プラスチック、樹脂、塗料、印刷用インク、顔料配合物(具体的には、水性顔料配合物または溶媒含有顔料配合物)、電子写真用のトナーおよび現像剤、液体インク、インクジェット用インク、カラーフィルターおよび電子的インクの顔料着色のために、また、種子の着色のために有用である。本発明の変態はプラスチックフィルムの着色のために特に有用である。
電子写真用のトナーおよび現像剤は、1成分粉末トナーまたは2成分粉末トナー(これらは1成分現像剤または2成分現像剤としてもまた公知である)、磁気トナー、液体トナー、ラテックストナー、付加重合トナー、および、同様に、特殊トナーであり、これらは当業者の間での周知の一般的知識である。
典型的なトナー結合剤は、付加重合樹脂、重付加樹脂および重縮合樹脂であり、例えば、スチレン樹脂、スチレン−アクリラート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリラート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン(個々または混合されたもの)、ならびに、同様に、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどであり、これらはそれぞれがさらなる成分(例えば、電荷抑制剤、ワックスまたは流動補助剤など)を含有することができ、または、これらの添加によって続いて改変される。
インクジェット用インクは、水性または非水性のインクジェット用インク、ミクロエマルションインク、および、同様に、ホットメルトインクを示し、これらは当業者の間での周知の一般的知識である。
下記の実施例において、部および百分率は重量比である。得られた生成物の結晶性変態はx線粉末回折法によって決定された。
(実施例1):1,2−ジクロロベンゼンおよびNMPにおける再結晶によるイータ相の調製
ベータ相での24部のP.Y.181を500部の1,2−ジクロロベンゼンおよび500部のN−メチルピロリドンの混合物に沸騰状態で完全に溶解する。顔料を、ゆっくり室温に冷却することによって溶液から再び析出させる。これにより、P.Y.181がイータ相で得られる。
(実施例2):DMSOおよびNMPにおける再結晶によるシータ相の調製
実施例1を、1,2−ジクロロベンゼンの代わりにジメチルスルホキシドを使用して繰り返す。これにより、P.Y.181がシータ相で得られる。
(実施例3):DMAcを用いた処理によるイオタ相の調製
ベータ相での30部のP.Y.181を160部のジメチルアセトアミドとともに加熱して沸騰状態にし、これにより、ジメチルアセトアミドは、少量を除いて溶解する。懸濁物をろ過する。顔料の溶解画分を、室温に冷却することによってろ液から徐々に結晶化させる。これにより、P.Y.181がイオタ相で得られる。
(実施例4):水を用いた加圧処理によるカッパ相の調製
アルファ相での25部のP.Y.181を、140℃で120分間、オートクレーブにおいて500部の水とともに加熱する。懸濁物を冷却し、顔料をろ過する。プレスケークを、塩が存在しなくなるまで洗浄し、乾燥する。これにより、P.Y.181がカッパ相で得られる。
(実施例5):水を用いた加圧処理、続く氷酢酸を用いた処理によるカッパ相の調製
アルファ相での25部のP.Y.181を、140℃で120分間、オートクレーブにおいて500部の水とともに加熱する。懸濁物を冷却し、顔料をろ過する。プレスケークを、塩が存在しなくなるまで洗浄し、1400部の氷酢酸とともに110℃で30分間加熱する。顔料をろ過し、プレスケークを水およびアセトンにより洗浄する。これにより、P.Y.181がカッパ相で得られる。
Claims (12)
- 溶媒が110℃から210℃の温度で作用させられる、請求項1に記載の方法。
- 溶媒が1barから200barの圧力で作用させられる、請求項1または2に記載の方法。
- 溶媒が1分間から10時間にわたって作用させられる、請求項1から3の少なくとも一項に記載に方法。
- 式(I)の化合物が溶媒に完全または部分的に溶解され、続いて、温度の低下、水の添加および/または溶媒のエバポレーションによって再び析出させられる、請求項1から4の少なくとも一項に記載に方法。
- 少なくとも10%(好ましくは少なくとも25%、特に少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%)の請求項6から10で規定される変態の1つ以上を含有する、C.I.ピグメントイエロー181混合物。
- 被覆剤、プラスチック、印刷用インク、塗料、顔料配合物(具体的には、水性顔料配合物または溶媒含有顔料配合物)、電子写真用のトナーおよび現像剤、粉末被覆剤、液体インク(好ましくは、インクジェット用インク)、カラーフィルター、電子的インクの顔料着色のための、また、種子の着色のための、請求項6から11の一項以上に記載のC.I.ピグメントイエロー181の使用。
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