JP2008500835A - ヒスチジン含有量を増強した動物飼料組成物 - Google Patents
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Abstract
反芻動物飼料を補充するための組成物および方法を開示する。組成物は、増強されたヒスチジン含有量を有する少なくとも1つの成分を含む。成分は、通常、非動物供給源に由来する。方法は、ミルク生成を改善する成分を含む飼料組成物を反芻動物に与える段階を含む。
Description
関連出願の相互参照
本出願は、2004年5月28日出願の米国仮特許出願第60/575,628号;および2004年6月4日出願の米国仮特許出願第60/577,363号の優先権の恩典を主張し、その全ての内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
本出願は、2004年5月28日出願の米国仮特許出願第60/575,628号;および2004年6月4日出願の米国仮特許出願第60/577,363号の優先権の恩典を主張し、その全ての内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
背景
全ての動物は、最適な成長、生殖、授乳および生命維持に必要な構築単位であるアミノ酸(AA)を必要とする。ウシの小腸で吸収されたアミノ酸は、微生物タンパク質、および第一胃内で分解された食物タンパク質に由来する。小腸で消化されたタンパク質は、10種類の必須アミノ酸(EAA)を供給しなければならず、これらのアミノ酸はウシ自身が作り出すことができないものであり、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンおよびバリンが含まれる。1種類のアミノ酸の不足が他のアミノ酸の利用を制限することがあることから、吸収された各EAAの相対比はウシの必要条件に正確に一致することが理想的である。
全ての動物は、最適な成長、生殖、授乳および生命維持に必要な構築単位であるアミノ酸(AA)を必要とする。ウシの小腸で吸収されたアミノ酸は、微生物タンパク質、および第一胃内で分解された食物タンパク質に由来する。小腸で消化されたタンパク質は、10種類の必須アミノ酸(EAA)を供給しなければならず、これらのアミノ酸はウシ自身が作り出すことができないものであり、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンおよびバリンが含まれる。1種類のアミノ酸の不足が他のアミノ酸の利用を制限することがあることから、吸収された各EAAの相対比はウシの必要条件に正確に一致することが理想的である。
反芻動物(ウシ、ヒツジ)は、前胃腔を有しており、消化はその中で起こることから、タンパク質栄養摂取は複雑である。最初の2つの胃腔、即ち第一胃および網胃では、共生細菌および原生動物の集団が餌を発酵し、アンモニアまたは尿素のような非タンパク性の窒素源を作り出す。これらの細菌は植物の繊維を消化でき、ウシがこれらの餌からエネルギーを獲得できるようにしている。それらはまた、費用のかからない副生成物からタンパク質を合成する。微生物によるタンパク質生成は、微生物の増殖に直接関係し、それはデンプン、非デタージェント繊維(non-detergent fiber)(NDF)、糖、ならびに残留非繊維性炭水化物(例えばペクチンおよびβグルカン)のような炭水化物の存在によってほぼ決定される。微生物集団は第一胃から真胃(即ち皺胃)に洗い出され、そこで消化されてウシにアミノ酸を供給する。
微生物が生成したタンパク質からアミノ酸を獲得することに加え反芻動物は、第一胃から皺胃へ通過する、非分解必須アミノ酸(UEAA)からもアミノ酸を得ている。泌乳中の反芻動物は、ミルク中に特定のアミノ酸(例えばヒスチジン)を、食事で消費されまたウシの小腸の中に見られるよりも、多く分泌する。不足するこれらのアミノ酸は制限アミノ酸と呼ばれる。動物へ制限アミノ酸を補給することで、ミルクの生成およびミルクの成分組成を改善できる。制限アミノ酸は、UEAAの形でも提供できる。
概要
本明細書では、一般的には、乳牛およびその他反芻動物のミルク生成を増やすための組成物および方法が提供される。動物製品の製造を最適化するための反芻動物への給餌には、アミノ酸、脂肪酸および炭水化物栄養物を理解することが含まれる。本明細書には、反芻動物の栄養、特にアミノ酸栄養を改善する組成物および方法が示されている。本明細書には、反芻動物に、1つまたは複数の制限アミノ酸含有量を増強した飼料を給餌することによって、アミノ酸制限を軽減し、泌乳中の反芻動物のミルク生成およびミルク成分組成を改善する方法も示されている。
本明細書では、一般的には、乳牛およびその他反芻動物のミルク生成を増やすための組成物および方法が提供される。動物製品の製造を最適化するための反芻動物への給餌には、アミノ酸、脂肪酸および炭水化物栄養物を理解することが含まれる。本明細書には、反芻動物の栄養、特にアミノ酸栄養を改善する組成物および方法が示されている。本明細書には、反芻動物に、1つまたは複数の制限アミノ酸含有量を増強した飼料を給餌することによって、アミノ酸制限を軽減し、泌乳中の反芻動物のミルク生成およびミルク成分組成を改善する方法も示されている。
乳牛に、10種類の必須アミノ酸のバランスを改善する特定の飼料組成物を給餌することによって、ウシのミルク生成を増やすことができる。具体的には、飼料組成物は、維持、成長およびミルク生成に関するウシのアミノ酸要求条件による決定に従って、含有量を増強した、1つまたは複数の制限アミノ酸を有することができる。制限アミノ酸としては、ヒスチジン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、ロイシン、および/またはスレオニンが含まれ得る。これら飼料組成物は、第一胃の後へ、改善されたバランスの必須アミノ酸を送達するように調合することもできる。
飼料組成物は、典型的にはヒスチジン含有量の高い成分を少なくとも1つ含み、この成分は、典型的には非動物供給源(例えば細菌、酵母、および/または植物)に由来する。例えば、組成物は、L-Hisを含むヒスチジン供給源、およびヒスチジン生成微生物の発酵中に形成されたバイオマスを含んでよい。別の例では、飼料組成物は、L-Hisおよびヒスチジン生成微生物の発酵中に形成された発酵ブロスに由来する溶解および浮遊成分を含むことがある、ヒスチジン供給源を含む。別の態様では、飼料組成物は、少なくとも1種類の非動物起源の高ヒスチジンタンパク質(即ち細菌、酵母および/または植物が生成した動物性または非動物性高ヒスチジンタンパク質)を含む粗タンパク質分画を有してもよい。これに加えて、飼料組成物は、組換え細菌、酵母および/または植物が生成した(例えば組換え細菌の発酵による)動物性または非動物性高ヒスチジンタンパク質を含んでよい。例えば、細菌、酵母および/または植物を、血粉中に存在する高ヒスチジンタンパク質(例えばヘモグロビンα鎖)を生成するように遺伝子工学的に作ることができる。記載の飼料組成物は全て、一般的に追加栄養成分を少なくとも1つ含む。
飼料組成物は、少なくとも約1g/kgのヒスチジン供給源を含むことができる。いくつかの態様では、飼料組成物は、少なくとも約2g/kgのヒスチジン供給源を含む。飼料組成物は、約10g/kgまでのヒスチジン供給源を含むことができる。
本明細書で使用する場合、L-Hisは、遊離アミノ酸およびヒスチジン塩(例えばHis(HCl))としてのヒスチジンを包含する。本明細書中にL-Hisの量を引用する場合、量は遊離アミノ酸をベースとしたヒスチジンを表す。
飼料組成物は、ヒスチジン生成微生物の発酵中に形成された発酵成分を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「発酵成分」は、発酵ブロスからのあらゆる適合成分を包含してよい。例えば、発酵成分は、発酵ブロス由来の溶解および/または浮遊成分を包含してよい。浮遊成分は、溶解していない可溶性成分(例えば溶液が、1つまたは複数の成分について過飽和である場合)および/または発酵ブロス中に存在する不溶性物質を包含してよい。発酵成分は、発酵中に形成されたバイオマスの少なくとも一部も包含できる。発酵成分は、発酵終了時に存在する乾燥固形物(例えば発酵ブロス、および発酵により生成したバイオマスの噴霧乾燥による)を実質的に全て包含するか、またはその一部を包含してもよい。例えば、ヒスチジン生成微生物の発酵からの粗発酵生成物を分画および/または部分精製して、物質のヒスチジン含有量を増加させることができるが、物質にはヒスチジン以外の発酵成分がまだ含まれてもよい。
飼料組成物は、少なくとも約2.8重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を含むことができる。適当な態様では、粗タンパク質分画は、少なくとも約3%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%および、適当な態様では少なくとも約20%のヒスチジン含有量を有してよい。一般には、飼料組成物は、約7.0重量%までのヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を含んでよい。より一般的には、飼料組成物は約2.8〜5.0重量%、そしてさらに一般的には3.0〜4.0重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を含んでよい。
飼料組成物は、遊離アミノ酸を基本として、乾燥固形物1キログラムあたり少なくとも約300グラムのヒスチジン含有量を有するヒスチジン供給源を含んでよい。適当な態様では、ヒスチジン供給源は、遊離アミノ酸を基本として乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約400グラム、乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約500グラム、乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約600グラム、乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約700グラム、および/または乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約800グラムのヒスチジン含有量を有する。
飼料組成物は、第一胃保護(rumen-protected)L-Hisおよび/または非動物起源の第一胃保護高ヒスチジンタンパク質を含む第一胃保護ヒスチジン供給源を含むことができる。L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質を少なくとも1種類の還元炭水化物(例えば還元糖)と反応させることによって、第一胃保護化できる。適当な還元炭水化物としては、キシロース、ラクトース、および/またはグルコースが含まれる。L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質を少なくとも1種類の脂肪酸でコーティングすることによって第一胃保護化できる。適した脂肪酸としては、少なくとも一部が水素化された、ダイズ油のような植物油が含まれ得る。
第一胃保護ヒスチジン供給源は、少なくとも約40%の第一胃保護ヒスチジンを第一胃より後に送達することができる。より一般的には、第一胃保護ヒスチジン供給源は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、または90%の第一胃保護ヒスチジンを第一胃より後に送達することができる。
組成物は、完全飼料型、濃縮型、配合型および基材混合型を含む複数の型で用いることができるが、これらに限定されるものではない。特定の完全飼料、濃縮、配合または基材混合の型の組成物を用いて、必須アミノ酸のバランスを取ることによって、乳牛のミルク生成を増加するための飼料型については、米国特許第5,145,695号および米国特許第5,219,596号に記載されており、その開示が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
組成物が完全飼料の型をしている場合は、タンパク質のパーセントレベル(粗タンパク質含有量)は、約10〜約25パーセント、より適当には約14〜約24パーセント(もしくは約14〜約19パーセント)であろう;これに対し、組成物が濃縮型の場合は、タンパク質レベルは約30〜約50パーセント、より適当には約32〜約48パーセントであろう。組成物が混合型の場合は、組成物のタンパク質レベルは約20〜約30パーセント、より適当には約24〜約26パーセントであろう;そして組成物が基材混合型の場合は、組成物のタンパク質レベルは約55〜約65パーセントであろう。本明細書では、特に記載がない限り、パーセンテージは重量パーセントに基づき記載される。
完全飼料型の組成物は、コムギミドリング(middling)、トウモロコシ、ダイズ粉、トウモロコシグルテン粗びき粉、蒸留穀粒、または可溶物を含む蒸留穀粒、塩、多量ミネラル、微量ミネラル、およびビタミンを含んでよい。その他の成分としては、一般的にはヒマワリ粉、カノーラ粉、綿実粉、全綿実、ビール穀粒、アマニ粉、麦芽の新芽およびダイズの外皮が含まれるが、これらに限定されるものではない。
濃縮型組成物は、一般的にコムギミドリング、トウモロコシ、ダイズ粉、トウモロコシグルテン粗びき粉、蒸留穀粒、または可溶物を含む蒸留穀粒、塩、多量ミネラル、微量ミネラルおよびビタミンを含む。これに代わる成分としては、一般的にはヒマワリ粗びき粉、カノーラ粗びき粉、綿実粗びき粉、全綿実、ビール醸造粕、アマニ粉、および麦芽の新芽が含まれるが、これらに限定されるものではない。配合型組成物は、一般的にコムギミドリング、トウモロコシグルテン粗びき粉、蒸留穀粒もしくは可溶物を含む蒸留穀粒、塩、多量ミネラル、微量ミネラルおよび/またはビタミンを含む。これに代わる成分としては、一般的には、トウモロコシ、ダイズ粗びき粉、ヒマワリ粗びき粉、綿実粗びき粉、全綿実、ビール醸造粕、アマニ粉、モルツの新芽およびダイズの外皮が含まれるが、これらに限定されるものではない。
基材型の組成物は、一般的には、コムギミドリング、トウモロコシグルテン粗びき粉、および/または蒸留穀粒もしくは可溶成分を含む蒸留穀粒を含む。追加の成分としては、一般的には、ダイズ粗びき粉、ヒマワリ粗びき粉、綿実粗びき粉、全綿実、ビール醸造粕、アマニ粗びき粉、麦芽の新芽、多量ミネラル、微量ミネラル、および/またはビタミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
完全飼料型組成物、濃縮型組成物、配合型組成物および基材型組成物はまた、1つもしくは複数の選択したアミノ酸について高いアミノ酸含有量を有する生成物を含んでもよい。特に生成物は、ミルク生成に関する1つもしくは複数の制限アミノ酸に関し、高いアミノ酸含有量を有してよい。生成物は、生成物中の遊離アミノ酸の存在、および/または生成物中のアミノ酸を含むタンパク質もしくはペプチドの存在により、高いアミノ酸含有量を有してよい。例えば、生成物は、遊離アミノ酸として存在する、および/または高ヒスチジンタンパク質として存在するヒスチジンを多く含むことができる。典型的には、生成物は微生物(例えば細菌および酵母)ならびに/または植物のような非動物性供給源に由来する。生成物としては、非動物性および/または動物性タンパク質(例えば組換え細菌、酵母、および/または植物で生成した高ヒスチジン動物タンパク質)が含まれる。
生成物は、1つまたは複数のアミノ酸、特にミルク生成に関して制限的であるとされる1つまたは複数の必須アミノ酸について高い含有量を有することができる。制限アミノ酸としては、ヒスチジン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、および/またはトリプトファンが含まれ、これらは遊離アミノ酸または選択したアミノ酸に富むタンパク質またはペプチドとして生成物中に存在できる。例えば、生成物は、少なくとも1種類の高ヒスチジンタンパク質を含むことができる。本明細書で定義するように、高ヒスチジンタンパク質は、典型的にはタンパク質中の全アミノ酸残基あたり少なくとも約5%のヒスチジン残基を、より典型的にはタンパク質中の全アミノ酸残基あたり少なくとも約10%のヒスチジン残基を有するであろう。適当な態様では、高ヒスチジンタンパク質は、タンパク質の全アミノ酸残基当たり少なくとも約15%のヒスチジン残基、および/または少なくとも約20%のヒスチジン残基を有してもよい。
ヒスチジン含有量の高い生成物は、典型的には、生成物の全含有アミノ酸の重量に対し少なくとも約2.8重量%のヒスチジン含有量(タンパク質またはペプチド中に存在する遊離ヒスチジンおよびヒスチジンを含めた)を有し、より一般的には生成物の全含有アミノ酸の重量に対し、少なくとも約3.0重量%、4.0重量%、および適当な態様では5.0重量%のヒスチジン含有量を有する。
高ヒスチジン含有量を有する生成物は、微生物発酵工程で生成してもよい。一つの例では、ヒスチジンを過剰生成する細菌または酵母を発酵システムで増殖させ、発酵ブロスおよび/または発酵バイオマスをさらに処理して、高ヒスチジン含有量の生成物を生成する。発酵ブロスおよび/またはバイオマスを乾燥させ(例えば噴霧乾燥)、高ヒスチジン含有量の生成物を生成できる。
ヒスチジンまたは高ヒスチジン含有量を有する生成物は、発酵ブロスまたは溶解したバイオマスから少なくとも部分的に精製してもよい。例えば、ヒスチジンまたは高ヒスチジンタンパク質はヒスチジンの等電点に基づいて単離でき、および/またはヒスチジンは分子中のイミダゾール部分の存在に基づいて単離してもよい。同様に、高ヒスチジンタンパク質中のヒスチジンの存在は、タンパク質の等電点に基づいた、タンパク質の単離に用いることができる。一つの態様では、高ヒスチジンタンパク質に望ましい等電点は、遺伝子組換え技術を用いてタンパク質のアミノ酸組成を変える(例えば選択したヒスチジン含有量および所望の等電点を有するタンパク質を作製する)ことによって変更してもよい。
他のアミノ酸と比べて独特であるヒスチジンの等電点(pI)によって、ヒスチジンを選択的に沈殿すること、有機溶媒中に選択的に抽出すること、または各種イオン交換樹脂もしくは金属キレートマトリックスに結合させることができる。例えば、ヒスチジン独特のpIは、高ヒスチジンタンパク質に特有、かつ固有のpI値をもたらし、これによりその後に飼料もしくは餌に使用するために、他の細胞性タンパク質からこれらタンパク質を選択的に沈殿させることができる。
高ヒスチジンタンパク質は、タンパク質の単離を容易にする固有の結合特性を示すだろう。例えば、6個のヒスチジン残基のストレッチはヒスチジンタグと呼ばれ、それはニッケル(Ni)のような遷移金属に結合し、そしてタンパク質の単離を容易にするのに用いることができる(例えばヒスチジンタグの付いたタンパク質をニッケル含有マトリックスに結合させることによって)。ニッケルに加え、銅(Cu)のようなその他遷移金属も用いることができる。
ヒスチジンのイミダゾール部分はまた、ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質の単離を容易にすることもできる。例えば、イミダゾール部分は、サイズ排除クロマトグラフィーとイオン交換樹脂との固有の組み合わせを用いて、他のアミノ酸および副産物を含有する発酵ブロスからヒスチジンを単離することを可能にする。
高ヒスチジンタンパク質は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)由来の高ヒスチジンタンパク質IIおよび/または抗菌および抗真菌活性を示す「ヒスタチン」と呼ばれる種類のタンパク質に由来する1つまたは複数のタンパク質のような、文献に記載されている高ヒスチジンタンパク質から選択してもよい。高ヒスチジンタンパク質はまた、元の全長タンパク質に比べてヒスチジン含有量が高い、公知の高ヒスチジンタンパク質の特別な断片を含んでもよい。例えば、熱帯熱マラリア原虫由来の高ヒスチジンタンパク質IIは、約32%のヒスチジン組成を有する。しかしながら、このタンパク質の、アミノ酸61〜130位の断片は約44%のヒスチジン組成を有し、またこのタンパク質のアミノ酸58〜80位の断片は約55%のヒスチジン組成を有する。高ヒスチジンタンパク質は、本明細書に記載の組成物または方法に適合する上で、その本来の機能を保持する必要はない。
高ヒスチジンタンパク質は組換え遺伝子工学で作製されたタンパク質の形をとってもよい。例えば、上記のように、「ヒスチジンタグ」と呼ばれるポリヒスチジンモチーフは、ポリヒスチジンモチーフがニッケルのような遷移金属に結合することから、普通にタンパク質に加えられて精製を助けている。しかしながら、組換え遺伝子工学で作製されたタンパク質は、ヒスチジン以外の他のアミノ酸についても高含有量を有してもよい。具体的には、タンパク質は必須アミノ酸の1つもしくは複数について高含有量を有することができるか、またはタンパク質はミルク生成に関するその他制限アミノ酸の1つもしくは複数について高含有量を有することができ、そのようなアミノ酸としてはリジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、ロイシン、イソロイシンおよびトリプトファンが含まれる。このように組換え遺伝子工学で作製されたタンパク質は、選択したアミノ酸のプロフィールを含むようにデザインできる。ミルク生成に関する制限アミノ酸に加えて、タンパク質を、システイン残基を含むように遺伝子工学的に作製し、分子内および/または分子間にジスルフィド結合を作ることもできる。組換え遺伝子工学で作製されたタンパク質中のアミノ酸の割合を様々に変えること、または飼育研究または予測に基づき、乳牛にとって最適と予測された割合にデザインすることもできる。一つの態様では、例えば組換え体で作製されたタンパク質中の選択したアミノ酸プロフィールは、血粉のプロフィールに類似する。タンパク質をデザインし、その遺伝子を発現ベクターにクローニングするのを完了すれば、タンパク質は、微生物宿主(例えば大腸菌(E.coli.)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、バチルス(Bacillus)、酵母)、植物等を用いた組換えシステムで発現(または過剰発現)させることができる。
宿主でのタンパク質の発現を最適化するために、タンパク質をコードしている遺伝子をデザインし、宿主で一般的な特定のtRNAを利用できるようにできる。または、選択したtRNAを宿主内で同時発現させ、タンパク質の発現を促進してもよい。
組換え遺伝子工学により作製されたタンパク質は、タンパク質の精製を容易にするための特別な配列を含んでもよい。例えば、タンパク質はヒスチジンタグを含んでよい。タンパク質はまた、タンパク質を周辺細胞質のような宿主細胞内の特定の場所に向かわせる、またはタンパク質を分泌させるための「リーダー配列」を含んでよい。例えば宿主細胞は細菌でよく、またタンパク質は、ペクテートリアーゼ分泌配列のような細菌の分泌シグナル配列を含んでよい。
組換え遺伝子工学により作製されたタンパク質はまた、プロテアーゼ開裂部位を含み、皺胃でのタンパク質の開裂を容易にし、タンパク質中のアミノ酸の小腸へ運搬を高めてもよい。例えば、一つのこのようなプロテアーゼは、ウシの皺胃のタンパク質消化酵素の一つであるペプシンである。ペプシンは、ペプチドを、P1およびP1'位置にある、疎水性、もっぱら芳香族の残基を優先的に開裂する事を実証する。特に、ペプシンはタンパク質を、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンおよびロイシン残基のカルボキシ側で開裂する。このように、タンパク質は1つまたは複数のペプシン開裂部位を含んでよい。
別の例では、生成物は、他のアミノ酸、特に制限アミノ酸について高い含有量を有するペプチドまたはタンパク質を増量した高ヒスチジンタンパク質を含んでよい。例えば、生成物は、同一または異なるアミノ酸の1つまたは複数について高い含有量を有する1つまたは複数のタンパク質を含んでよい。このように、生成物は複数のタンパク質、ペプチドおよび/またはアミノ酸を含んでよい。
高ヒスチジンタンパク質またはペプチドは、微生物宿主(例えば大腸菌、コリネバクテリア、ブレビバクテリア、バチルス、酵母)、植物等で過剰発現させることができる。微生物のバイオマス全体を噴霧乾燥し、動物飼料または高ヒスチジンタンパク質において用いることができ、またバイオマスから関係するタンパク質もしくはペプチドを少なくとも部分的に精製できる。または、宿主の微生物がヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質を分泌する場合には、発酵により生成されたバイオマスからヒスチジン濃縮ブロスを分離でき、また清浄化したブロスを動物飼料の成分として、例えば液体もしくは噴霧乾燥の形態で用いることができる。一つの態様では、高ヒスチジンタンパク質は、タンパク質中のヒスチジンタグを、ニッケル金属を含むマトリックスに結合させることによって精製できる。
エンドトキシン作用を有するリポポリサッカライド(「LPS」)を含有しない微生物、例えばコリネバクテリアおよびブレビバクテリアのような、例えばグラム陽性細菌を用いることが望ましい。大腸菌のようなグラム陰性細菌は、エンドトキシン作用を有するLPSを含むことが多い。エンドトキシン性LPSを含まない細菌を選択することは、バイオマスを調製し、ヒスチジン供給源として用いる場合に特に重要であるが、それは大部分のLPSが細菌に結合して残り、細菌が溶解されるまでは発酵ブロス中に実質的に放出されないからである。その場合、エンドトキシン性LPSは、発酵後バイオマス中に局在することが予想される。
生成物は、第一胃バイパスを促進するように加工された成分を含むことができる。例えば、生成物は加工ヒスチジンおよび/または加工高ヒスチジンタンパク質を含むことができる。ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、1つまたは複数の還元炭水化物(例えばキシロース、ラクトース、グルコース等)で処理してよい。様々な態様において、ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、ポリマー化合物、形式化(formalized)タンパク質、脂肪、脂肪およびカルシウムの混合物、脂肪とタンパク質の混合物、または長鎖脂肪酸の金属塩でコーティングしてもよい。ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、植物油(ダイズ油のような)でコーティングしてもよく、植物油は改質されてもよい。例えば、ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、少なくとも部分的に水素化された植物油でコーティングしてもよい。特に、ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、脂肪酸の金属塩(例えばステアリン酸亜鉛)および脂肪酸(例えばステアリン酸)の混合物でコーティングしてよい。ヒスチジンおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、pH感受性ポリマーでコーティングしてもよい。pH感受性ポリマーは、第一胃のpHでは安定であるが、皺胃のpHに曝されると分解してタンパク質を放出し、皺胃で消化され、小腸で吸収される。
一つの局面では、開示した方法は複数の段階を含む。第一段階では、アミノ酸あるいは1つまたは複数のアミノ酸に富むタンパク質を合成する。上記したように、好適なアミノ酸はヒスチジンであり、また好適なタンパク質は高ヒスチジンタンパク質であろう。アミノ酸および/または高アミノ酸タンパク質は、微生物発酵システムを用いて合成でき、発酵バイオマスを提供し、これを乾燥させて(例えば噴霧乾燥)乾燥発酵バイオマスを提供する。または、アミノ酸および/またはタンパク質は発酵ブロス中に存在してよく、これらは発酵バイオマスから(例えば濾過によって)分離でき、噴霧乾燥にかけられ、アミノ酸および/またはタンパク質の含有量が高い乾燥発酵ブロスを生成する。さらに、アミノ酸および/または高アミノ酸タンパク質は、乾燥生成物を調製する前に、バイオマスおよび/またはブロスのいずれかより単離または少なくとも部分精製されてよい。乾燥発酵バイオマス、乾燥発酵ブロスおよび/または乾燥生成物は、コーティング材をコーティングしてコーティング生成物を提供し、かつ/または処理(例えば乾燥発酵バイオマス、乾燥発酵ブロス、および/または乾燥生成物をキシロースのような還元炭水化物で処理することによって)することができる。コーティングは疎水性でよい。コーティングおよび/または処理は、生成物を保護し、生成物が少ない分解で第一胃を通過でき、少なくとも生成物の一部が皺胃および/または小腸に運ばれるようにする。このように、コーティングおよび/または処理は、コーティングおよび/または処理が施された生成物が第一胃をバイパスできるようにする(即ち、第一胃バイパス)。コーティングおよび/または処理が施された生成物を反芻動物に与え、ミルクの生成を改善すると同時にミルクタンパク質の成分を改善できる。
詳細な説明
ヒスチジンは反芻動物の飼料において、一次速度制限アミノ酸であると考えられており、飼料中のその濃度は乳牛のミルク生成と直接相関する。血粉は、現在動物飼料に用いられておりヒスチジンの豊かな供給源である。さらには、血粉中に存在するヒスチジンは第一胃では有意な分解を受けない。血粉の代用物は同様のヒスチジン含有量を有しておらず、血粉を含まない飼料は、ヒスチジンを補充してアミノ酸要求条件を満たす必要があるだろう。これに加え、ミルク生成量が増加してくると、それに応じてヒスチジン以外のアミノ酸の要求も増加する。この、これらアミノ酸に対する要求の増加についても応える必要がある。
ヒスチジンは反芻動物の飼料において、一次速度制限アミノ酸であると考えられており、飼料中のその濃度は乳牛のミルク生成と直接相関する。血粉は、現在動物飼料に用いられておりヒスチジンの豊かな供給源である。さらには、血粉中に存在するヒスチジンは第一胃では有意な分解を受けない。血粉の代用物は同様のヒスチジン含有量を有しておらず、血粉を含まない飼料は、ヒスチジンを補充してアミノ酸要求条件を満たす必要があるだろう。これに加え、ミルク生成量が増加してくると、それに応じてヒスチジン以外のアミノ酸の要求も増加する。この、これらアミノ酸に対する要求の増加についても応える必要がある。
タンパク質は第一胃による分解を回避して小腸に進み、十分な量のアミノ酸を供給しなければならない。アミノ酸の発酵分解を防止するために開発された主な方法としては、(1)高アミノ酸含有量を有する生成物を、第一胃での分解から生成物を保護する組成物でコーティングする方法、および(2)アミノ酸の構造を操作して第一胃での分解が少ないことが証明されているアミノ酸類似体を生成する方法が含まれる。単一のヒスチジン残基は、タンパク質またはペプチド中に存在するヒスチジンに比べ、第一胃内でより容易に分解され、したがって、高ヒスチジンタンパク質は、単一のヒスチジン残基に比べ優れているだろう。さらに、有意な二次または三次構造(例えばジスルフィド結合)を持つタンパク質は、より高い第一胃保護性を示すだろう。
反芻動物用飼料向けのヒスチジン供給源を提供することに加えて、高ヒスチジンタンパク質は、血粉中に存在する「高ヒスチジン」タンパク質と密接に類似しうる。例えば血粉は、ウシヘモグロビンα鎖、SwissProtアクセッション番号P01966を含む可能性があり、それは7%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)および以下のアミノ酸配列を有する:
他の高ヒスチジンタンパク質は文献から公知であり、熱帯熱マラリア原虫由来の高ヒスチジンタンパク質II、アクセッション番号AAC47453が含まれ、それは32%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)および以下のアミノ酸配列を有する:
上記のように、タンパク質の断片は、高ヒスチジンタンパク質またはペプチドとして好適であり得る。例えば、タンパク質が高ヒスチジンの内部アミノ酸配列を含んでいる場合には、タンパク質をN末端またはC末端で切断して、高ヒスチジンタンパク質を作製することもできる。断片の長さはいずれでもよいが、特に好適な断片は、少なくとも約20アミノ酸を含み得る。熱帯熱マラリア原虫由来の高ヒスチジンタンパク質IIのアミノ酸61〜130位の断片は、約44%のヒスチジン含有量を有しており(ヒスチジン残基/全残基)、かつ、このタンパク質の、アミノ酸58〜80位の断片は約55%のヒスチジン含有量を有している。このように、これら断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
別の高ヒスチジンタンパク質は、ハツカネズミ(Mus musculus)由来の高ヒスチジン糖タンパク質、アクセッション番号AAH11168であり、これは10%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)および以下のアミノ酸配列を有する:
このタンパク質の、アミノ酸331〜406位の断片は、50%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)を有しており、これによりこの断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
このタンパク質の、アミノ酸331〜406位の断片は、50%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)を有しており、これによりこの断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
別の高ヒスチジンタンパク質は、セイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa)由来の根粒形成ノジュリン(actinorizal nodulin)、アクセッション番号AAD00171であり、これは約15%のヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)および以下のアミノ酸配列を有する:
このタンパク質の、アミノ酸50〜83位の断片は、44%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)を有しており、これによりこの断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
このタンパク質の、アミノ酸50〜83位の断片は、44%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)を有しており、これによりこの断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
別の高ヒスチジンタンパク質は、ヒト高ヒスチジンカルシウム結合タンパク質、前駆体、アクセッション番号AAH69795であり、これは約12%のヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)および以下のアミノ酸配列を有する:
このタンパク質の、アミノ酸211〜371位の断片は、22%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)を有しており、これによりこの断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
このタンパク質の、アミノ酸211〜371位の断片は、22%を超えるヒスチジン含有量(ヒスチジン残基/全残基)を有しており、これによりこの断片は特に適当な高ヒスチジンタンパク質であろう。
他の高ヒスチジンタンパク質としては、「ヒスタチン」と呼ばれる種類のタンパク質が含まれる。ヒスタチンは、唾液中に生じ、かつ抗真菌および抗菌特性を有する高ヒスチジンタンパク質である。例えばNeumanら、(1996) Electrophoresis 17: 266-270参照。これら高ヒスチジンタンパク質またはペプチドは、動物飼料、例えば乳牛用の動物飼料にヒスチジン供給源として用いることができる。ヒスタチンは、ヒスチジン供給源として役立つだけでなく、抗真菌および抗菌特性を持つことから、ヒスタチンは動物飼料の有効期限をより長くすることもできる。
アミノ酸要求 制限アミノ酸を、動物飼料に制限アミノ酸を補給することによって動物に供給し、選択した動物生成物(例えばミルク)の生成を増加させることができる。制限アミノ酸は、選択した動物生成物のアミノ酸プロフィール(即ちアウトプットプロフィール)を分析すること、かつこのプロフィールを動物に供給するアミノ酸のプロフィール(即ちインプットプロフィール)と比較することによって特定できる。アミノ酸要件を決定するための方法は、当該技術分野において公知であり、米国特許第5,145,695号および米国特許第5,219,596号に記載されており、それが全体として参照により本明細書に組み入れられる。
アミノ酸供給 反芻動物はアミノ酸を以下の二つの供給源から得る:(1)微生物の増殖が決定する微生物タンパク質;および(2)第一胃内で分解されなかったタンパク質(即ち「第一胃未分解胃タンパク質」または「RUP」)。微生物の増殖は、第一胃内の発酵に利用できる炭水化物(例えばデンプン、糖、中性デタージェント繊維、ペクチンおよびβグルカン)、第一胃分解タンパク質の補給量および第一胃のpHに基づいて予測できる。微生物タンパク質は完全には消化されないことから、微生物タンパク質によって供給される微生物アミノ酸は、タンパク質の消化度に基づき調整して消化性の微生物アミノ酸の値を得る。
アミノ酸の第2供給源は、第一胃から皺胃に通された後、分解されずに残っている飼料成分(即ちバイパスタンパク質分画)である。飼料成分内のアミノ酸は、第一胃内の微生物によって、様々な速度で処理され、利用される(即ち分解される)。このように、様々なアミノ酸が様々な非分解必須アミノ酸(「UEAA」)の値を持つであろう。これに加えて、UEAA値を小腸でのアミノ酸の消化能に基づいて調整し、可消化性UEAA値を得ることができる。第一胃から送られてくる必須アミノ酸の量は、Craigら「Amino Acids Released During Protein Degradation by Rumen Microbes」 (1984) Journal of Animal Science, 58:436-443に記載の技術を用いて予測できる。可消化性微生物アミノ酸および可消化性UEAAの合計は、小腸に提供される可消化性アミノ酸である。乳牛では、これを問題のアミノ酸の乳牛可消化性アミノ酸(「ddAA」)、例えば乳牛可消化性ヒスチジン(「ddAA HIS」)のように呼ぶことがある。
食餌の内容を決定する際には、予測された第一胃発酵で生じた可消化性微生物アミノ酸から、動物のプロフィールから決定した動物のアミノ酸要求量を差し引く。飼料からUEAAとして供給すべきアミノ酸の量は、動物のアミノ酸要求と可消化性微生物アミノ酸から供給されるアミノ酸の量の差である。
ミルクのアミノ酸プロフィールは、動物の消化管内の微生物により生成されるアミノ酸のプロフィール(即ち微生物アミノ酸プロフィール)と比較できる。微生物とミルクとのアミノ酸プロフィールの差は、過剰なアミノ酸、または制限されているアミノ酸を示す。しかしながら、このアミノ酸プロフィールの比較は、目的の動物生成物の生成を増やすために必要な情報の一部に過ぎない。体が、小腸においてアミノ酸を問題の動物生成物内に組み入れる効率についても考慮しなければならない。アウトプット/インプットアミノ酸プロフィール比を決定すること、組み入れの効率を決定することによって、乳牛可消化性アミノ酸要求を決定し得る。ヒスチジン、リジン、メチオニン、フェニルアラニンおよびスレオニンは、乳牛のミルク生成における制限アミノ酸である可能性を有する。同様の決定は、筋肉のアミノ酸プロフィールについても実施できる。
高ヒスチジン生成物の合成 高ヒスチジン生成物は、遊離アミノ酸としてヒスチジンを高含有量有している生成物、および/または高ヒスチジンタンパク質を含む生成物を包含してもよい。高ヒスチジン生成物は、当技術分野公知の方法により生成できる。例えば、高ヒスチジン発酵ブロスは、ヒスチジン供給源として用いることができる。高ヒスチジン発酵ブロスは、ヒスチジンを過剰生成するように選択された、または遺伝子工学的に作製された、単細胞生物(例えば細菌または酵母のような微生物)および/または植物に作製させることができる。好適な微生物としては、大腸菌、バチルス、マイコバクテリア、アルトロバクター(Arthrobacter)、セラチア、およびコリネバクテリア属に属する微生物が含まれ得る。グラム陰性菌は、リポポリサッカライド(lipopolysaccharides)(「LPS」)を生成することが公知であるが、これらはエンドトキシンである。このように、グラム陽性菌(例えばコリネバクテリアおよびブレビバクテリア)を宿主細胞として選択することが、特にバイオマスを調製する場合には、望ましいと思われる。大部分のLPSが宿主細菌に結合して残り、宿主細菌を溶解するまでは発酵ブロス中に放出されないことから、大腸菌のようなグラム陰性菌は、ヒスチジンブロス生成に適しているだろう。
高ヒスチジン発酵ブロスは、噴霧乾燥させて、ヒスチジン供給源として直接使用することができ、またはブロスを濃縮することができる。別の態様では、ヒスチジンは、発酵媒体またはバイオマスから少なくとも部分的に精製してもよい。微生物が生成したヒスチジンは、次に第一胃バイパス技術に基づいて調製され、必要なレベルで飼料に加えられる。
または、微生物を遺伝子工学的に作製し、ヒスチジンを蓄積して保持してもよく、また微生物を乾燥噴霧バイオマス生成物として調製してもよい。場合により、バイオマスは分離、デカンテーション、分離とデカンテーションの組み合わせ、限外濾過またはマイクロフィルトレーション(microfiltration)のような公知の方法によって分離してよい。バイオマス生成物をさらに処理し、第一胃バイパスを促進してもよい。一つの態様では、バイオマス生成物は発酵媒体から分離し、噴霧乾燥し、場合によりコーティングを施して第一胃バイパスを促進し、ヒスチジン供給源として飼料に加えてよい。
さらなる態様では、微生物を遺伝子工学的に作製し、高ヒスチジンタンパク質を生成させてよい。高ヒスチジンタンパク質としては、公知かつ特徴付けされたタンパク質(例えば熱帯熱マラリア原虫の高ヒスチジンタンパク質IIまたはヒスタチン)および遺伝子工学で作製されたタンパク質(例えば選択したアミノ酸プロフィールを有するようにデザインされたタンパク質)が含まれる。例えば熱帯熱マラリア原虫の高ヒスチジンタンパク質または選択されたヒスタチンは、発現ベクターにクローニングし、適当な宿主細胞に導入できる。または、組換え技術で作製された、選択したアミノ酸プロフィールを有するタンパク質は、発現ベクターにクローニングして適当な宿主細胞(例えば微生物)に導入できる。
高ヒスチジンタンパク質は、発酵媒体内に分泌でき、またはそれに替わって高ヒスチジンタンパク質は微生物に蓄積できる。微生物は噴霧乾燥バイオマス生成物として調製でき、または高ヒスチジンタンパク質もしくはペプチドを微生物バイオマスから単離して高ヒスチジン生成物を提供することもできる。いずれの場合においても、高ヒスチジン生成物をさらに処理して第一胃バイパスを増加させることができる。その後、処理された生成物は、ヒスチジン供給源として飼料に加えることができる。
微生物宿主、大腸菌における高ヒスチジンタンパク質(HRP)またはペプチドの構築および発現。高ヒスチジンタンパク質コンストラクトHrcpET30(Xa/LIC)の構築は、以下のようにして実施できる。pET30(Xa/LIC)ベクター(Novagen, Madison, WI)の適合性オーバーハングを用いて、ハツカネズミ高ヒスチジンカルシウム結合タンパク質遺伝子(Hrc)をクローニングするためのプライマーをデザインする。pETベクターはXa/LIC部位の5'側に12塩基の単鎖オーバーハングを、かつXa/LIC部位の3'側に15塩基の単鎖オーバーハングを有する。プラスミドを、N末端HisおよびSタグおよび任意でC末端Hisタグを用いて、連結非依存性クローニングに関しデザインする。融合タンパク質のタグが取り除けるように、Xaプロテアーゼ認識部位(IEGR)は、関心対象の遺伝子の開始コドンの前方に配置されている。
ハツカネズミHrc遺伝子のpET30 Xa/LICクローニング用に、以下のプライマーが販売されている:
正方向
および逆方向
。
ハツカネズミHrc遺伝子の核酸配列および対応するタンパク質の配列は、Strausbergら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26), 16899-16903 (2002)により提出されたようにGenBankアクセッション番号BC021623から入手可能であり、ならびに表1(遺伝子のDNA配列)および表2(コードされたタンパク質のアミノ酸配列)に提示されている。Hrc遺伝子の内側に在り、作成されるペプチドが元のタンパク質配列に比べて全アミノ酸当たりのヒスチジン残基のパーセンテージが高くなるようなプライマーをデザインすることもできる。
正方向
および逆方向
。
ハツカネズミHrc遺伝子の核酸配列および対応するタンパク質の配列は、Strausbergら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26), 16899-16903 (2002)により提出されたようにGenBankアクセッション番号BC021623から入手可能であり、ならびに表1(遺伝子のDNA配列)および表2(コードされたタンパク質のアミノ酸配列)に提示されている。Hrc遺伝子の内側に在り、作成されるペプチドが元のタンパク質配列に比べて全アミノ酸当たりのヒスチジン残基のパーセンテージが高くなるようなプライマーをデザインすることもできる。
tRNA濃度およびアミノアシルtRNA合成酵素の変化は、アミノ酸生合成に影響することが報告されている。これに加えて、tRNAは、翻訳の低下およびタンパク質生成物のアミノ酸配列中の誤りを介して、微生物発現システムでの異質遺伝子の発現および過剰発現に大きく影響することがある。(例えばO'Neill et al., J. Bacteriol. 1990 Nov;172(11):6363-71); Smith et al., Biotechnol Prog. 1996 Jul-Aug;12(4):417-22); Dieci et al., Protein Expr Purif. 2000 Apr;18(3):346-54参照)。それゆえに、高ヒスチジンタンパク質の発現を上昇させるには、例えば対応するヒスチジルtRNA遺伝子も同時に発現させることが有利であろう。高ヒスチジンカルシウム結合タンパク質およびヒスチジルtRNA合成酵素が同時発現するように、ハツカネズミHrc遺伝子をHisSpET30 Xa/LICと一緒に、一つのオペロン内に導入されるようにプライマーをデザインすることも可能である。
異種タンパク質のより高い発現を達成するために、特定の高ヒスチジンタンパク質の供給源に応じて、それぞれの遺伝子のコドンの偏り(codon bias)を変えて、宿主の微生物のコドン利用に一致させることができる。(例えばBaca et al., Int'l J. of Parasitology. 30: 113-118参照)。コドン利用度表は多くの提供元から入手できる。
ハツカネズミ高ヒスチジンカルシウム結合タンパク質mRNA (cDNA クローンMGC: 13723 IMAGE:3979848)は、ATCC、カタログ番号MGC-13723より購入する。全ての制限酵素は、New England BioLabs (Beverly, MA)から購入する。特記がなければ、プライマーは、Integrated DNA Technologies, Inc (Coralville, IA)により合成される。
以下は、ハツカネズミHrc遺伝子を増幅するのに用いることができるPCRプロトコールの一例である。50μLの反応液に、0.1〜0.5μgの鋳型、1.5μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5UのExpand High Fidelity(商標)ポリメラーゼ、およびMg2+添加1×Expand(商標)バッファーを加える(Roche, Indianapolis, IN)。選択したサーモサイクラープログラムは、96℃、5分間のホットスタート、それに続く、以下の段階を含む29回のサイクルを含む:94℃を30秒間、40〜65℃を1分間(グラジエントサーモサイクラー)および72℃で2分間。29サイクル後、サンプルを72℃で10分間維持し、その後4℃で保存する。
PCR産物を0.8または1%TEAアガロースゲルから、Qiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を使用してゲル精製する。PCR産物をアガロースゲル上の標準物質と比較して定量化し、次にLigation Independent Cloning (Novagen, Madison, WI)について製造業者が推奨するプロトコールに従ってT4 DNAポリメラーゼ処理を行う。
簡単に説明すると、約0.2pmolの精製PCR産物を、dGTP存在下、1UのT4 DNAポリメラーゼで30分間、22℃で処理する。ポリメラーゼは、PCR産物の3'末端から連続する塩基を除去する。ポリメラーゼがグアニン残基と出会うと、酵素の5'から3'方向のポリメラーゼ活性がエクソヌクレアーゼ活性を打ち消し、それ以上の除去を効果的に阻止する。これによりpET Xa/LICベクターに適合する単鎖のオーバーハングが作製される。ポリメラーゼは、75℃で20分間インキュベートすることにより不活性化される。
ベクターおよび処理した挿入体をNovagenが推奨する方法でアニーリングする。約0.02pmolの処理済み挿入体と0.01pmolのベクターとを、5分間、22℃でインキュベートする;6.25mMのEDTA(終濃度)を加える;さらに22℃のインキュベーションを繰り返す。アニーリング反応液(1μL)をNovaBlue(商標)Singlesコンピテント細胞 (Novagen, Madison, WI) に加え、氷上で5分間インキュベートする。混合後、細胞を30秒間、42℃のヒートショックにより形質転換させる。細胞を氷上に2分間置き、250μLの室温のSOCの中で、30分間、37℃で、225rpmで振盪しながら回復させる。細胞を、カナマイシン(25〜50μg/mL)を含むLBプレートに接種する。
カナマイシンを含むLBプレートで増殖した培養体のプラスミドDNAを、Qiagenスピンミニプレップキット(Valencia、CA)を用いて精製し、正しい挿入体をスクリーニングする。正しい挿入体を有すると思われたプラスミドの配列を、SタグおよびT7ターミネータプライマー(Novagen)および内部プライマーを用いたジデオキシ鎖ターミネーションDNA配列決定法(SeqWright, Houston, TX)により確認する。配列が確認されたHrcpET30(Xa/LIC)を、Novagenのプロトコールに従って発現宿主BL21(DE3)へ形質転換する。
大腸菌BL21(DE3)::HrcpET30(Xa/LIC)細胞中の高ヒスチジンタンパク質の発現は、以下のように実施してもよい。大腸菌BL21(DE3)::ハツカネズミHrc/pET30(Xa/LIC)細胞の新しいプレートを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地を用いて調製する。一晩培養物(5mL)を単一コロニーから接種し、カナマイシンを含むLB培地で、30℃で増殖させる。典型的には、50μg/mlのカナマイシンを含む100ml〜500mlのLB培地の誘導では、1〜5mlの接種物を用いる。細胞を37℃で増殖させ、OD600が0.35〜0.8になるまで、1時間おきにサンプルを採取する。次に細胞を0.1mMのIPTGを用いて誘導する。約4〜10時間増殖させた後(誘導後)、培養物全量を、20分間4℃、3500rpmで遠心分離する。分析をすぐに行わない場合には、上清を捨て、ブロスと細胞との両方(一度無菌蒸留水で洗浄する)を-80℃で別々に凍結する。Novagenのプロトコールに従って、Novagen BugBuster(商標)試薬をベンゾナーゼヌクレアーゼおよびCalbiochemプロテアーゼ阻害剤カクテルIIIと共に使用して、タンパク質分析用に細胞抽出物を調製する。細胞抽出物のタンパク質発現レベルは、4〜15%の勾配ゲルを使用するSDS-PAGE (Bio-Rad, Hercules, CA)により分析する。
最大の高ヒスチジンタンパク質の発現をもたらす適当な誘導条件(例えば時間および温度)が決定されたなら、細胞をそれらの条件で培養し、細胞の沈殿を適当量の好適な等張バッファー、例えば生理学的食塩水(0.85% NaCl pH 7.0)に再懸濁する。次にこの細胞懸濁液を、フレンチプレスでの細胞処理のような、当業者に公知の方法を用いて溶解する。溶解した細胞を10,000〜15,000rpm、20〜30分間、4℃で遠心分離し、バイオマスと細胞破壊物とを分離し、高ヒスチジンタンパク質を含む無細胞抽出物を生成する。高ヒスチジンタンパク質を含むこの抽出物は、噴霧乾燥し、そのまま、または第一胃を通じた残存を確実にするのに適当な封入を施した後、動物飼料に加えることができる高ヒスチジンタンパク質を生成する。大腸菌BL21(DE3)::HrcpET30(Xa/LIC)細胞からの高ヒスチジンタンパク質の精製および/または濃縮は、文献に記載されているか、または下記に詳述する技術を使用して実行し得る。
ヒスチジンに富んだ組換えもしくは合成タンパク質もしくはペプチド(高ヒスチジンタンパク質もしくはペプチドHRP)、または選択したアミノ酸とヒスチジンとの組み合わせの、適当なアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子と組み合わせた構築および発現。合成高ヒスチジンタンパク質もしくはペプチドコンストラクトHEPpET30(Xa/LIC)の構築は、以下のようにして実施できる。合成ペプチドまたはタンパク質を、例えば、ヒスチジン(H、44残基、約52%)、フェニルアラニン(F、4残基、約5%)およびロイシン(L、7残基、約8%)の含有量を有する以下の配列
を有するようにデザインすることができる。
を有するようにデザインすることができる。
微生物宿主のコドン利用度を考慮に入れて、所望する高ヒスチジンペプチドに翻訳される合成遺伝子をデザインし、稀なコドンは使用しない。大腸菌のコドン利用度は、例えばコリネバクテリアのものとは異なると思われる。コドン利用度表は公知であり、当技術分野で入手できる。
Stemmerら、Gene 1995 Oct 16; 164(1):49-53に記載のプロトコールに基づいて、以下のことが可能である:(1)所望ペプチドをコードする核酸配列をデザインするのに用いる最善のコドンを決定すること、(2)合成核酸の長さ全体にわたって、必要とされる複数の重複オリゴヌクレオチドをデザインすること、および(3)DNAリガーゼには依存しないが、DNAポリメラーゼの特性を使用してPCRアセンブリ反応の間により長いDNA断片を構築するPCRを用いて、合成遺伝子を組み立てること。次に、高ヒスチジンペプチドをコードする合成核酸を、適当な抗生物質/選択マーカーを含む所望のベクターにクローニングして、選択した宿主、例えば植物、大腸菌、コリネバクテリア、ブレビバクテリア、バチルスおよび酵母での合成高ヒスチジンペプチドの発現を確実にすることができる。
上記のように、tRNA濃度およびアミノアシルtRNA合成酵素の変更は、アミノ酸の生合成に影響すると報告されている。これに加えて、tRNAは翻訳の低下、およびタンパク質生成物のアミノ酸配列中の誤りを介して、微生物発現システムでの異質遺伝子の発現および過剰発現に大きく影響することがある。(例えばO'Neill et al., J. Bacteriol. 1990 Nov;172(11):6363-71; Smith et al., Biotechnol Prog. 1996 Jul-Aug;12 (4):417-22); Dieci et al., Protein Expr Purif. 2000 Apr;18(3):346-54参照)。それゆえに、高ヒスチジンタンパク質の発現を上昇させるには、例えば対応するヒスチジルtRNA遺伝子または各アミノアシルtRNA遺伝子も同時に発現させることが有利であり得る。
プライマーを、高ヒスチジンタンパク質またはペプチドをHisSpET30 Xa/LICと一緒に一つのオペロン内に導入するようにデザインし、高ヒスチジンタンパク質またはペプチドとヒスチジルtRNA合成酵素とを同時発現させて生成物の合成を増加させることも可能である。
大腸菌BL21(DE3)::HrcpET30(Xa/LIC)細胞中の合成または組換え高ヒスチジンタンパク質の発現は、下記のように実行してよい。大腸菌BL21(DE3)::合成または組換えHEP/pET30(Xa/LIC)細胞の新しいプレートは、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で調製する。一晩培養物(5mL)を単一コロニーから接種し、カナマイシンを含むLB培地で、30℃で増殖させる。典型的には、50μg/mlのカナマイシンを含む100ml〜500mlのLB培地の誘導では、1〜5mlの接種物を用いる。細胞を37℃で増殖させ、OD600が0.35〜0.8になるまで、1時間おきにサンプルを採取する。次に細胞を0.1mMのIPTGを用いて誘導する。約4〜10時間増殖させた後(誘導後)、培養物全量を、20分間4℃、3500rpmで遠心分離する。分析をすぐに行わない場合には、上清を捨て、ブロスと細胞との両方(一度無菌蒸留水で洗浄する)を-80℃で別々に凍結する。Novagenのプロトコールに従って、Novagen BugBuster(商標)試薬をベンゾナーゼヌクレアーゼおよびCalbiochemプロテアーゼ阻害剤カクテルIIIと共に使用し、タンパク質分析用に細胞抽出物を調製する。細胞抽出物のタンパク質発現レベルは、4〜15%の勾配ゲルを使用するSDS-PAGE(Bio-Rad, Hercules, CA)により分析する。
最大の高ヒスチジンタンパク質またはペプチドの発現をもたらす適当な誘導時間が決定されたなら、細胞をそれらの条件で培養し、細胞の沈殿を適当量の好適な等張バッファー、例えば生理学的食塩水(0.85% NaCl pH 7.0)に再懸濁する。次にこの細胞懸濁液を、フレンチプレスでの細胞処理のような、当業者に公知の方法を用いて溶解する。溶解した細胞を、10,000〜15,000rpm、20〜30分間、4℃で遠心分離し、バイオマスと細胞破壊物とを分離し、高ヒスチジンタンパク質を含む無細胞抽出物を生成する。高ヒスチジンタンパク質を含むこの抽出物は、噴霧乾燥して、そのまま、または第一胃を通じた残存を確実にするのに適当な処理および/または封入化を施した後、動物飼料に加えることができる高ヒスチジンタンパク質またはペプチドを生成することができる。
必要であれば、大腸菌BL21(DE3)::HEPpET30(Xa/LIC)細胞からの合成または組換え高ヒスチジンタンパク質を精製または濃縮してもよい。生成した高ヒスチジンタンパク質またはペプチドは、文献に記載されているか、または以下に詳述する技術を使用してさらなる濃縮および精製に供することができる。
ヒスチジンtRNA合成酵素コンストラクトHisSpET30(Xa/LIC)の構築は、以下のようにして実施できる。プライマーは、大腸菌ヒスチジンtRNA合成酵素遺伝子(HisS)をクローニングするために、pET30(Xa/LIC)ベクター(Novagen, Madison, WI)に適合するオーバーハングを有するようにデザインする。pETベクターは、Xa/LIC部位の5'側に12塩基の単鎖オーバーハングを、かつXa/LIC部位の3'側に15塩基の単鎖オーバーハングを有している。プラスミドは連結非依存型のクローニングに合わせてデザインされており、N末端HisおよびSタグならびに任意でC末端タグを有している。融合タンパク質のタグが除去できるように、Xaプロテアーゼ認識部位(IEGR)が関心対象の遺伝子の開始コドンの前方に配置されている。
以下のプライマーが、大腸菌ヒスチジンtRNA合成酵素遺伝子のpET30Xa/LICクローニング用に販売されている:
正方向5'-
および逆方向
大腸菌HisS遺伝子、アクセッション番号M11843 J01629の核酸配列を図5に示し、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を図6に示す。
正方向5'-
および逆方向
大腸菌HisS遺伝子、アクセッション番号M11843 J01629の核酸配列を図5に示し、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を図6に示す。
大腸菌ATCC 10798からの大腸菌ゲノムDNAは、ATCC、カタログ番号10798Dから購入する。全ての制限酵素は、New England BioLabs (Beverly, MA)から購入する。特記がなければ、プライマーは、Integrated DNA Technologies, Inc (Coralville, IA)により合成される。
以下は、大腸菌HisS遺伝子を増幅するのに用いるPCRプロトコールの一つである。50μLの反応液に、0.1〜0.5μgの鋳型、1.5μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5UのExpand High Fidelity(商標)ポリメラーゼ、およびMg添加1×Expand(商標)バッファーを加える(Roche, Indianapolis, IN)。利用したサーモサイクラープログラムは、96℃、5分間のホットスタート、およびそれに続く以下の段階を含む29回のサイクルを含む:94℃を30秒間、40〜65℃を1分間(グラジエントサーモサイクラー)および72℃で2分間、30秒間。29サイクル後、サンプルを72℃で10分間維持し、その後は4℃で保存する。
PCR産物を0.8または1%TEAアガロースゲルから、Qiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を用いてゲル精製する。PCR産物をアガロースゲル上の標準物質と比較して定量化し、次にLigation Independent Cloning(Novagen, Madison, WI)について製造業者が推奨するプロトコールに従ってT4 DNAポリメラーゼ処理を行う。
簡単に説明すると、約0.2pmolの精製PCR産物を、dGTP存在下、1UのT4 DNAポリメラーゼで30分間、22℃で処理する。ポリメラーゼは、PCR産物の3'末端から連続する塩基を除去する。ポリメラーゼがグアニン残基と出会うと、酵素の5'から3'方向のポリメラーゼ活性がエクソヌクレアーゼ活性を打ち消し、それ以上の除去を効果的に阻止する。これによりpET Xa/LICベクターに適合する単鎖のオーバーハングが作製される。ポリメラーゼは、75℃で20分間インキュベートすることにより不活性化される。
ベクターおよび処理した挿入体をNovagenが推奨する方法でアニーリングする。約0.02pmolの処理済み挿入体と0.01pmolのベクターとを5分間、22℃でインキュベートする;6.25mMのEDTA(終濃度)を加え;さらに22℃のインキュベーションを繰り返す。アニーリング反応液(1μL)をNovaBlue(商標)Singlesコンピテント細胞(Novagen, Madison, WI)に加え、氷上で5分間インキュベートする。混合後、細胞を30秒間、42℃のヒートショックにより形質転換させる。細胞を氷上に2分間置き、250μLの室温のSOCの中で、30分間、37℃で、225rpmで振盪しながら回復させる。細胞を、カナマイシン(25〜50μg/mL)を含むLBプレートに接種する。
カナマイシンを含むLBプレートで増殖した培養体のプラスミドDNAを、Qiagenスピンミニプレップキット(Valencia、CA)を用いて精製し、正しい挿入体をスクリーニングする。正しい挿入体を有すると思われたプラスミドの配列を、SタグおよびT7ターミネータプライマー(Novagen)および内部プライマーを用いたジデオキシ鎖ターミネーションDNA配列決定法(SeqWright, Houston, TX)により確認する。配列が確認されたHisSpET30(Xa/LIC)を、Novagenのプロトコールに従って発現宿主BL21(DE3)へ形質転換する
発酵実験後の高ヒスチジンタンパク質またはペプチドの精製は、以下のようにして実施することができる。高ヒスチジンタンパク質またはペプチドを発現している細胞をまず、例えば標準で960psi(細胞内で約19,000psi)の圧力で細胞をフレンチプレスに繰り返しかけるといった、文献に報告されている技術を用いて破壊する。細胞破壊物を、15,000rpm、4℃の遠心分離によって高ヒスチジンタンパク質から分離する。無細胞抽出物または上清は、高ヒスチジンタンパク質を含んでおり、高ヒスチジンタンパク質を特異的に結合する別の方法に供し、無細胞抽出物中のその他タンパク質からそれらを分離する。
高ヒスチジンタンパク質を精製する一つの方法は、ヒスチジンタグ配列のヒスチジン結合樹脂への結合能力に基づいており、高ヒスチジンタンパク質をヒスチジン結合樹脂に結合させ、金属キレートクロマトグラフィー技術を実施することによるものである。「His Bind Kit」がNovagenより市販されている。ヒスチジン残基および/または高ヒスチジンタンパク質の高ヒスチジン断片は、ヒスチジン結合樹脂に固定されているNi2+カチオンに結合する。未結合タンパク質は洗い流され、高ヒスチジンタンパク質はイミダゾールを用いて溶出することによって回収できる。高ヒスチジンタンパク質は、そのままの形で飼料組成物に加えるために透析にかけてイミダゾールを除き、次に濃縮または噴霧乾燥するか、または第一胃での分解を最小限にとどめるための適当な処理に供することができる。
発酵システムで高ヒスチジン生成物を生成することに加えて、高シスチジン生成物はトランスジェニック植物システムでも生成できる。トランスジェニック植物システムを生成するための方法は、当技術分野公知である。
ヒスチジンおよび高ヒスチジン生成物の第一胃保護 ヒスチジンおよび/または高ヒスチジン生成物(即ち成分)は、第一胃での分解を減少させるために(即ち第一胃バイパスを促進するために)、処理、および/またはコーティングもしくは封入化を施すことができる。好適なコーティングは、以下記載するように比較的高い融点を有するだろう。
好適なコーティングとしては、疎水性、かつ高融点の化合物と脂質との混合物が含まれる。1つまたは複数の疎水性の高融点化合物(例えば工業等級のステアリン酸亜鉛のような脂肪酸のミネラル塩)と、1つまたは複数のタイプの脂質との組み合わせは、コーティングされた成分の中身と機能性を保護することができるコーティング材料を形成する。これらのコーティングは、高温および高圧の加工条件、ならびに第一胃の微生物環境から付加されるアミノ酸の保護のニーズに合わせて調合できる。好適なコーティングは、米国特許出願第2003/0148013号に記載されており、それは全体として参照により本明細書に組み入れられる。
疎水性の高融点化合物は、典型的には少なくとも約70℃、そしてより望ましくは100℃より高い融点を有する。特に、約115℃〜130℃の融点を有する、脂肪酸の亜鉛塩が好適な疎水性の高融点化合物である。
脂質成分は典型的には、少なくとも約0℃、そしてより好適には約40℃以上の融点を有する。脂質成分としては、ダイズ油のような植物油が含まれる。別の態様では、脂質成分は、約45〜75℃の融点を持つトリアシルグリセロールである。工業等級のステアリン酸は代表的な脂質として、以下の群より選択されるが、これらに限定されない:ステアリン酸、水素化動物性脂肪、動物性脂肪(例えば動物性獣脂)、植物油、(粗植物油および/または、部分的または完全に水素化されている水素化植物油)、レシチン、パルミチン酸、動物性油、ロウ、脂肪酸エステル(C8〜C24)、脂肪酸(C8〜C24)。
コーティングは、コーティング生成物中に、コーティングされる成分の重量に対し、1〜2000重量%存在してよい。通常、コーティングは、コーティングされる成分の重量に対し、約15〜85重量%である。より一般的には、コーティングは、コーティングされる成分の重量に対し、約20〜60重量%、および/または30〜40重量%である。コーティングは、疎水性混合物から調製してよい。コーティングは、界面活性剤を含んでよい。
コーティングは、1つまたは複数の疎水性の不溶性化合物を脂質と組み合わせ用いてよい。例えば、工業等級のステアリン酸亜鉛は、強疎水性であり、水には全く溶解しない。コーティング調合物に工業等級のステアリン酸亜鉛を加えると、成分の保護レベルおよびその機能性が、脂質のみのコーティングに比べ大きく改善される。例えば、ステアリン酸亜鉛を工業等級のステアリン酸のような若干不溶性である脂質と混合することによって、コーティング化合物は、コーティング生成物が水性媒体中にある時、浸出(即ち、コーティング生成物からの活性成分の損失)に対しより優れた保護を提供する。このように、本コーティング組成物の長所は、反芻動物向けにデザインされた飼料に利用し、かつ第一胃をバイパスして活性成分を小腸に送り込むことができる。
第一胃バイパスを促進することに加えて、コーティングはまた、製造工程中に加わる熱および圧力(ペレット化および押し出し成形)からコーティングされた成分を保護するのにも役立つだろう。コーティング組成物は、熱が加えられ、そして熱感受性の成分を用いるあらゆるタイプの製造工程に有用であろう。この形の保護から便益を受けることができる成分は、熱による損傷または分解を受ける、アミノ酸、タンパク質、酵素、ビタミン、色素および誘因剤のような成分である。
熱が関係する損傷または損失から成分を保護することに加え、他の成分との結合または化学反応による損傷または損失から成分を保護する必要もある。封入化(encapsulation)法は、他の成分との有害な結合を阻止できる。このように、封入法は成分を調合物内に予備充填または混入する能力を提供するが、このとき成分は通常個別に充填される。
コーティング組成物は様々な方法で調製できる。好ましくは、調製工程は、亜鉛有機塩成分と脂質成分の固溶体を作製する段階を含む。一つの態様では、亜鉛有機塩と脂質成分は、両者が溶解して溶液を形成するまで溶解される。次に溶液は、固溶体を形成するまで固化される。
亜鉛有機酸成分および脂質成分以外に、コーティングは別の成分を含んでよい。例えば、コーティングは、1つまたは複数の、グリセリン、多糖類、レシチン、ゲル化剤および石鹸のような乳化剤を含むことができるが、これは封入化工程の速度および効率を上げることができる。さらに、コーティングは酸化防止剤を含み、酸化作用に対する保護を増加させることもできる。さらにまた、コーティング組成物は、固溶体を形成する工程で溶解する、または溶解できない他の成分も含むことができる。例えば、コーティング組成物は少量の酸化亜鉛およびその他元素または化合物を含むことができる。
好適なコーティングは、部分的に水素化された、ダイズ油のような植物油から調製できる。別の、少なくとも部分的に水素化されている好適な植物油としては、パーム油、綿実油、コーン油、ピーナッツ油、パーム穀粒油、ババス油、ヒマワリ油、サフラワー油およびそれらの混合物が含まれる。
好適なコーティングは、部分的に水素化された植物油とロウのような追加成分とを含む混合物から調製してもよい。好適なロウとしては、蜜ロウ、石油ロウ、米ぬかロウ、キャスターロウ、微結晶ロウおよびそれらの混合物が含まれる。いくつかの態様では、好適コーティングは、部分的に水素化された植物油を約85〜95%(好ましくは約90%)、およびロウを約5〜15%(好ましくは約10%)含む混合物から調製される。
コーティングは、コーティングされた基材の密度を変えるための薬剤、例えばポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ジオクチルスルホスクシネート、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸のラクチルエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステルおよびそれらの混合物のような界面活性剤を含んでよい。
コーティングされた基材(または予備コーティングされた基材)は、部分的に水素化されている植物油(85%〜95%)およびロウ(5%〜15%)を含む疎水性混合物を、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質を含む基材の上に噴霧することで調製できる。場合により、予備コーティングされた基材の表面に界面活性剤を噴霧することによって、予備コーティングされた基材をさらにコーティングし、コーティングされた基材を作ることもできる。コーティング基材は、以下の組成を有し得る:基材(40〜80%);疎水性混合物(20〜60%);界面活性剤(0〜40%)(任意で)。コーティングされた基材は、約0.3〜2.0(より好適には約1.3〜1.5)の比重を有するだろう。一つの態様では、コーティングされた基材は以下を含む:基材を約50%;疎水性混合物を約35%;および界面活性剤を約15%。コーティングされた基材は、基材を疎水性混合物で予備コーティングし、続いて予備コーティングされた基材を表面活性剤でコーティングすることによって調製してもよい。
コーティング組成物を調製した後、それを用いて保護された成分を調製することができる。保護された成分を調製するための一つの好適な手順は、封入化技術、好ましくはマイクロ封入化(microencapsulation)技術を用いる。マイクロ封入化技術は、少量の気体、液体または固体成分を、第2の物質、この場合はコーティング組成物で閉じこめるか、あるいは取り囲み、成分を周囲の環境から遮蔽する工程である。保護された成分の調製は、回転ディスク、噴霧、同時押し出し成形といった方法、および複合コアセルベーション、相分離およびゲル化といったその他化学的方法のように、数多くのマイクロ封入化技術を用いて行うことができる。マイクロ封入化技術の一つの好適な方法は、回転ディスク法である。回転ディスク法では、活性成分とコーティング組成物の乳濁液および/または懸濁液を調製し、熱された回転ディスクの表面に重力送りする。ディスクは回転するため、乳濁液/懸濁液は遠心力によってディスク表面全体に広がり、薄層を形成する。ディスクの縁で乳濁液/懸濁液は、活性成分をコーティングが取り囲む独立した滴となる。滴がディスクから収集ホッパーに落ちると、滴は冷やされてマイクロ封入化された成分(即ちコーティングされた生成物)を形成する。(例えば、図2に示す好適な回転ディスクコーティングシステムの概略図を参照されたい)。乳濁液または懸濁液をオリフィスを通して押し出すわけではないため、この技術はより高粘度のコーティングの使用を可能とし、かつコーティングにおけるより多くの付加を可能とする。
動物飼料に用いられる成分の封入については、米国特許公開第2003/0148013号に記載されており、これは全体として参照により本明細書に組み入れられる。
アミノ酸(ヒスチジンのような)および/またはタンパク質(高ヒスチジンタンパク質のような)を化学的に改変し、第一胃の中でアミノ酸を保護し、皺胃および小腸に送られる特定のアミノ酸を増やすこともできる。例えば、メチオニンヒドロキシル類似体(MHA(登録商標))は、アミノ酸補給剤として用いられている。これに加え、アミノ酸はアミノ酸/ミネラルキレートとして提供できる。亜鉛−メチオニンおよび亜鉛−リジン錯体は、アミノ酸補給剤として用いられている。
ヒスチジン供給源は、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質を含んでもよく、これを還元炭水化物と反応させて、第一胃での分解からヒスチジンを保護することができる(例えばメイラード反応を行うことによって)。例えば、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質は、キシロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、マンノース、リボースおよびそれらの混合物のような還元糖と反応させることができるが、これらに限定されるものではない。糖の供給源としては、トウモロコシ生成物、およびトウモロコシ生成物の加水分解物(例えば少なくとも部分的に加水分解したコーンスターチ、および/または加工コーンスターチ)、糖蜜および糖蜜の加水分解物、ヘミセルロースおよびヘミセルロースの加水分解物、亜硫酸廃液中に含まれる糖、およびそれらの混合物が含まれる。
ヒスチジン供給源は、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質を含み、これを反応混合物中の還元糖と反応させて、処理されたヒスチジン供給源を作ることができる。処理がされたヒスチジン供給源は、次に飼料組成物に加えることができる。または、ヒスチジン供給源は、L-Hisおよび/または高ヒスチジンタンパク質を含み、これを飼料組成物に加えて補充飼料組成物を作ることができる。補充飼料組成物は、反応混合物中の還元糖と反応させて、ヒスチジン供給源中に存在するアミノ酸を含む、補充飼料組成物中に存在するアミノ酸を保護することができる。
反応混合物は、典型的には1モルの遊離アミノ酸当たり少なくとも約1モルの還元糖を含む。典型的には、反応混合物は1モルの遊離アミノ酸当たり少なくとも約3〜5モルの還元糖を含む。反応混合物は、典型的には約4.0〜10.5のpHを有する(好適には約6.0〜8.5)。反応混合物は、典型的には約6〜40%の水分含有量を有する(好適には約15〜25%)。反応混合物は、典型的には約20〜150℃(好適には約80〜110℃および/または90〜100℃)の温度に、約0.5〜72時間(好適には約1〜4時間)加熱される。反応混合物に圧力(例えば約2000〜3500Kpa(約300〜500p.s.i)を加えてもよい。反応混合物には、反応混合物を加熱する前、加熱中または加熱後に圧力を加えることができる。反応混合物は、押し出し成形および/またはペレット化してもよい。
保護された生成物を提供するという観点では、高ヒスチジンタンパク質および/またはアミノ酸を発現させるための宿主としては、酵母が特に好適であろう。リジン蓄積酵母は、その乾燥重量の4〜15%をリジンとして蓄積することが示されている。リジンの大部分は、第一胃液とインキュベートした場合でも安定である小胞の中に含まれているが、皺胃のタンパク質消化酵素の一つであるペプシンに曝されると直ちに放出される。したがって、この生物は、タンパク質および/またはアミノ酸を発現すること、腸内吸収に利用できるタンパク質および/またはアミノ酸の量を増加する保護された飼料補助物を提供することに関し、有用な宿主であろう。
1つまたは複数の必須アミノ酸の含有量を増強した飼料調合物 まず、経験的な方法を用いて、泌乳牛についての必須アミノ酸の必要条件を明らかにした。第一胃の微生物タンパク質の必須アミノ酸組成を、ミルクタンパク質の必須アミノ酸組成と比較した(表5)。(増殖、維持および生殖に関するアミノ酸必要条件の指標として、筋肉タンパク質についても同じことを行ってもよい。)
次に制限的と予想されるアミノ酸を、更なる研究の候補とした。ひとたびアミノ酸の必要条件が決定されれば、これらのアミノ酸必要条件を満たす方法を開発した。第一段階は、第一胃内の微生物によるアミノ酸生成を知ることであった。アミノ酸生成の微生物モデルを図1に示す。微生物のアミノ酸生成は、微生物の増殖から決定したが、これはデンプン、中性デタージェント繊維(「NDF」)、糖、ならびにペクチンおよびβグルカンのような残留非繊維性炭水化物(「RNFC」)を含む、第一胃内で発酵される炭水化物の濃度から決定された。
第一胃の微生物タンパク質の、動物の餌としてのアミノ酸への寄与度を決定するために、全第一胃微生物タンパク質に、タンパク質中に存在する各特定アミノ酸のパーセントを乗じた。多くの研究者は、第一胃微生物タンパク質のアミノ酸組成がほぼ一定のままであることを見いだしている。細菌性アミノ酸の吸収率は、各アミノ酸について約80%であると想定される。次に第一胃微生物タンパク質から提供される得られたアミノ酸の量を、アミノ酸必要量から減じた。不足分(即ち、必要量と第一胃微生物タンパク質から供給されるアミノ酸の差)は、非分解性必須アミノ酸(UEAA)として飼料中に加えることが有益であるアミノ酸の量を表す。
UEAA中に多い飼料成分(または「バイパス」アミノ酸)を調べ、UEAAの潜在的供給源を決定した。これまで、UEAAの一般的供給源として、血粉が用いられている。血粉はヒスチジンの優れた供給源でもある(表6)。
動物のアミノ酸必要量 乳牛用の飼料に求められるアミノ酸は、乳牛可消化性アミノ酸(「ddAA」)と呼ばれる。消化可能な微生物アミノ酸に加えた、同一アミノ酸の消化可能であるが第一胃で分解されない必須アミノ酸(UEAA)の濃度の合計がddAAである。乳牛可消化性アミノ酸は、小腸に送られる可消化性AAの全供給量を表している。乳用動物の全アミノ酸必要量は、以下のようにして決めることができる。必要とされるアミノ酸の総量(「TAAR」)は、維持に必要な量(「維持アミノ酸」または「MAA」)にミルク生成に必要なアミノ酸の量(「ミルクアミノ酸アウトプット」または「MAAO」)を加え、さらに成長に必要なアミノ酸の量(「成長アミノ酸」または「GAA」)を加えた量に等しい(即ち、TAAR=MAA+MAAO+GAA)。
封入化 図2に示した工程は、回転ディスク技術によるマイクロ封入化を示している。その他のマイクロ封入化の工程としては、噴霧法、遠心同時押し出し成形法、および化学的方法が含まれる。
工程は、コーティングを調製することで始まる、例えば;水溶性栄養物を、脂肪コーティングを用いて水溶解から保護できる。コーティングが液化するまで、脂肪貯蔵タンクの中でコーティングをその融点まで加熱して、コーティングを溶解する。栄養物は典型的にアミノ酸の乾燥粉末であり、バイオマス、ペプチドまたはタンパク質を調製する。(いくつかの例では、栄養物の粒子サイズが大きすぎる場合、栄養物をふるいにかけることができる(例えばSWECOふるい装置))。栄養物は容積供給器内に入れられ、供給器は、既知の正確な濃度の栄養物(例えば乾燥粉末として)を一定速度で送り込む。
液体脂肪を、定量ポンプを用いて制御された速度でスラリー容器に加える。添加速度は、液体脂肪が栄養物と選択した比率で一つになるように選択される。例えば、コーティングした生成物が栄養物を35%含み、生成物が100 lbs/時の速度で生成される場合、溶解した脂肪を65 lbs/時の速度で加えなければならず、また容積供給器は栄養物を35 lbs/時の速度で送り届けなければならない。
溶解した脂肪および栄養物をスラリー容器の中で合わせて混合し、乳濁液または懸濁液を作製する。乳濁液/懸濁液は容器の底から放出され、容器のすぐ下にある回転中のディスクに層の形で注がれる。乳濁液/懸濁液は遠心力によってディスク全体に広がる。層がディスクの縁に達すると、層は、コーティングに取り囲まれた栄養物を含む個別の粒子に分割される(即ち滴またはマイクロ封入体)。粒子がディスクから落下すると、コーティングは冷やされて固化する。コーティングされた粒子は収集ホッパーの中に落ち、収集ホッパーから移動コンベヤの上に移る。コンベヤはバルクを高融解点コーティング冷却器に移し、固化する。カプセルは収集ホッパーの中に落ち、収集ホッパーの壁の傍らを落ち、かつ移動コンベヤの上に落ちる。コンベヤはさらに包装するためにバルク粒子をバルク貯蔵庫に移す。
飼料調合物 ヒスチジン含有量を増強した生成物は、飼料調合物に含めることができる。表7〜14に、ヒスチジン含有量を増強した飼料調合物の例を示す。
例えば、表7は、ヒスチジン含有量を増強した完全飼料の一例を示す。表7は、この例示的な、ヒスチジン含有量を増強した完全飼料を作るのに用いることができる飼料成分の相対量を列挙している。完全飼料組成物は、ヒスチジン含有量が約10%である高ヒスチジンタンパク質を含む。表8は、表7に記載した完全飼料組成物中に存在する、多数の一般的な栄養物の量を列挙している。
表9は、タンパク質含有量を増強した濃縮飼料の一例を示す。表9は、このヒスチジン含有量を増強した例示的濃縮飼料を作るのに用いることができる飼料成分の相対量を列挙している。濃縮飼料は、ヒスチジン含有量が約10%である高ヒスチジンタンパク質を含む。表10は、表9に記載の濃縮飼料中に存在する、多数の一般的な栄養物の量を列挙している。
表11は、第一胃保護ヒスチジンの含有量を増強した補充物の一例を示す。表11は、この例示的補充物を作るのに用いることができる飼料成分の相対量を列挙している。補充物は、第一胃保護ヒスチジンおよび/または、約10%のヒスチジン含有量を有する第一胃保護高ヒスチジンタンパク質のような第一胃保護ヒスチジン供給源を含む。表12は、表11に記載した補充物中に存在するいくつかの一般的栄養物の量を列挙している。
表13は第一胃保護ヒスチジンの含有量を増強した完全飼料組成物の一例を示す。表13は、この例示的飼料組成物を作るのに用いることができる飼料成分の相対量を列挙している。飼料組成物は、第一胃保護ヒスチジンおよび/または、約10%のヒスチジン含有量を有する第一胃保護高ヒスチジンタンパク質のような第一胃保護ヒスチジン供給源を含む。表14は、表13に記載した飼料組成物中に存在する多数の一般的栄養物の量を列挙している。
例示的実施態様
以下の態様は例示的なものであり、特許請求の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
以下の態様は例示的なものであり、特許請求の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
一つの態様では、ある種の飼料組成物が提供される。この飼料組成物はヒスチジン供給源および少なくとも一つの追加栄養成分を含む。ヒスチジン供給源は、L-Hisおよびヒスチジン生成微生物の発酵に由来する発酵成分を含む。飼料組成物は、少なくとも約2.8重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を有する。一般的には、飼料組成物は約2.8〜7.0重量%、2.8〜5.0重量%、および好適な態様においては約3.0〜4.0重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を有する。
いくつかの態様では、粗タンパク質分画は、飼料組成物の少なくとも約10重量%を占めてよい。一般的には、粗タンパク質分画は、飼料組成物の少なくとも約14〜19重量%を占める。
ヒスチジン供給源の少なくとも一部は、第一胃での分解から保護できる。例えばヒスチジン供給源に存在するL-Hisは還元性炭水化物と反応させる、および/またはコーティング混合物でコーティングしてもよい。コーティング混合物は、少なくとも1種類の脂肪酸を含んでよい。コーティング混合物は、部分的に水素化された植物油(例えばダイズ油)および/または界面活性剤を含んでよい。
発酵成分は、ヒスチジン生成微生物発酵中に形成された発酵ブロスに由来する可溶性および/または不溶性成分を含んでよい。発酵成分は、ヒスチジン生成微生物発酵中に形成された発酵ブロスに由来する溶解成分および/または不溶解成分を含んでよい。発酵成分は、ヒスチジン生成微生物発酵中に形成されたバイオマスを含んでよい。
いくつかの態様では、ヒスチジン生成微生物は、コリネバクテリアである。別の態様では、ヒスチジン生成微生物は、ブレビバクテリアである。
いくつかの態様では、ヒスチジン供給源は第一胃保護されており、また飼料組成物は、第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在する所望量のヒスチジンを、第一胃より後に提供することができる。例えば、いくつかの態様では、飼料組成物は、第一胃保護ヒスチジンの少なくとも約50%を第一胃より後に提供することができる。例えば、第一胃保護ヒスチジン供給源中に約1gのヒスチジンが存在すると、この第一胃保護ヒスチジンのうちの約500mgのヒスチジンが、第一胃より後方へ送達され得る。別の態様では、第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在する少なくとも60%、70%、かつ好適な態様では80%のヒスチジンを、第一胃より後方へ送達することができる。
別の態様では、ある飼料組成物が提供される。この飼料組成物はヒスチジン供給源および少なくとも1種類の追加栄養化合物を含む。ヒスチジン供給源は、L-Hisおよびヒスチジン生成微生物の発酵に由来する発酵成分を含む。ヒスチジン供給源は、遊離アミノ酸として、乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約10グラムのヒスチジン含有量を有する。
ヒスチジン供給源の少なくとも一部分は、第一胃での分解から保護されている。いくつかの態様では、第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在するヒスチジンの少なくとも50%、60%、70%、かつ好適な態様においては80%を、第一胃より後方へ送達することができる。
別の態様では、ある種の飼料組成物が提供される。この飼料組成物は、第一胃保護ヒスチジン供給源および少なくとも1種類の追加栄養成分を含む。第一胃保護ヒスチジン供給源は、第一胃保護L-Hisおよび/または非動物起源の第一胃保護高ヒスチジンタンパク質を含む。いくつかの態様では、第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在するヒスチジンの少なくとも50%、60%、70%、かつ好適な態様においては80%を、第一胃より後方へ送達することができる。
いくつかの態様では、ヒスチジン供給源は、遊離アミノ酸として、乾燥固形物1キログラム当たり少なくとも約10グラムのヒスチジン含有量を有する。第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在できる高ヒスチジンタンパク質は、タンパク質中のアミノ酸の総数に対し少なくとも10%のヒスチジン含有量を占めることができる。
いくつかの態様では、第一胃保護L-Hisおよび/または非動物起源の第一胃保護高ヒスチジンタンパク質を少なくとも1種類の還元糖(例えばラクトースおよび/またはキシロース)と反応させている。いくつかの態様では、第一胃保護L-Hisおよび/または非動物起源の第一胃保護高ヒスチジンタンパク質は、少なくとも1種類の脂肪酸を含むコーティング混合物でコーティングされている。コーティング混合物は、部分的に水素化された植物油(例えばダイズ油)および/または界面活性剤を含んでよい。
別の態様では、ある種の飼料組成物が提供される。この飼料組成物は少なくとも約40重量%(乾燥固体ベース)のL-His遊離アミノ酸を含む第一胃保護ヒスチジン供給源を含む。飼料組成物は、少なくとも約2.8重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を有してよい。一つの態様では、飼料は約2.8〜7.0重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を含む。
第一胃保護ヒスチジン供給源は、ヒスチジン生成微生物の発酵に由来する発酵成分を含んでよい。
いくつかの態様では、ヒスチジン供給源は、ヒスチジン供給源を少なくとも1種類の還元糖と反応させることによって第一胃保護し、第一胃保護ヒスチジン供給源を提供する。還元糖には、ラクトースおよび/またはキシロースが含まれる。
ヒスチジン供給源は、少なくとも1種類の脂肪酸を含むコーティング混合物でコーティングして、第一胃保護ヒスチジン供給源を提供できる。例えば、ヒスチジン供給源は、ダイズ油のような部分的に水素化された植物油を含む疎水性混合物でコーティングできる。疎水性混合物は、蜜ロウのようなロウでよい。ヒスチジン供給源は、界面活性剤でコーティングできる。いくつかの態様では、ヒスチジン供給源は、疎水性混合物でコーティングされ、続いて界面活性剤でコーティングされる。
いくつかの態様では、飼料組成物を反芻動物に与えた時、第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在するヒスチジンの少なくとも約50%は、第一胃より後方へ送達することができる。より一般的には、飼料組成物を反芻動物に与えた時、第一胃保護ヒスチジン供給源中に存在するヒスチジンの少なくとも約60%、70%、および好適な態様では80%を第一胃より後方へ送達することができる。
実施例
メイラード反応のプロトコール
1. 等量の糖(1.5gのキシロース、フルクトース、ラクトースまたはグルコース)とアミノ酸(1.5gのヒスチジンまたはリジン)とを、50mlの遠心チューブに入れる。水を加え(0.9ml)、チューブにキャップをする。チューブを80℃の水槽で、2時間までインキュベートする。サンプルを凍結乾燥し、次に40mlの水に再溶解する。メイラード反応生成物は、420nmの吸光度を測定することで検出する。サンプルを、必要に応じて水で希釈し、2.0吸光度単位未満の吸光度を得る。
メイラード反応のプロトコール
1. 等量の糖(1.5gのキシロース、フルクトース、ラクトースまたはグルコース)とアミノ酸(1.5gのヒスチジンまたはリジン)とを、50mlの遠心チューブに入れる。水を加え(0.9ml)、チューブにキャップをする。チューブを80℃の水槽で、2時間までインキュベートする。サンプルを凍結乾燥し、次に40mlの水に再溶解する。メイラード反応生成物は、420nmの吸光度を測定することで検出する。サンプルを、必要に応じて水で希釈し、2.0吸光度単位未満の吸光度を得る。
2. 50mlの遠心チューブの中で、ヒスチジン(0.g)とジアルデヒドデンプン(0.5g)を10mlの0.05Mリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)に溶解する。チューブにキャップをして、65℃または100℃で4時間までインキュベートする。可溶化したメイラード生成物を4℃で保管する。メイラード反応生成物は、420nmの吸光度を測定することで検出する。サンプルを、必要に応じて水で希釈し、2.0吸光度単位未満の吸光度を得る。
インビボでのメイラード保護ヒスチジン分解の測定
第一胃の流動マーカーとしてコバルト(CoII)を用い、メイラード保護ヒスチジン(これはラクトースと反応している)の第一胃外への流れを追跡する技術を用いて、インビボにおける遊離アミノ酸の分解を測定した。メイラード保護されたヒスチジンの消失を、フィステル形成(fistulated)を行ったウシでのCoIIの流出に対し評価した。遊離ヒスチジンまたはメイラード反応プロトコールによって修飾されたヒスチジンを、フィステル形成したウシの体内にコバルトIIと一緒に導入した。ヒスチジンおよび修飾ヒスチジンをウシ体内に導入した後、第一胃液のサンプルを定期的に抜き取り、Roth (1971), Anal. Chem. 43: 880によって記載のO-フタルジアルデヒドアッセイを用いてヒスチジンの量を測定した。CoIIの量は、誘導結合高周波プラズマ発光分析装置を用いて測定した。CoIIに対するヒスチジンの量を時間に対しプロットし、遊離および保護ヒスチジンの分解係数(Kd)を計算した。遊離ヒスチジンの分解係数は、Kd=0.75〜0.95/時と決定された。メイラード反応プロトコールで修飾したヒスチジンの分解係数は、Kd=0.17/時と決定された。
第一胃の流動マーカーとしてコバルト(CoII)を用い、メイラード保護ヒスチジン(これはラクトースと反応している)の第一胃外への流れを追跡する技術を用いて、インビボにおける遊離アミノ酸の分解を測定した。メイラード保護されたヒスチジンの消失を、フィステル形成(fistulated)を行ったウシでのCoIIの流出に対し評価した。遊離ヒスチジンまたはメイラード反応プロトコールによって修飾されたヒスチジンを、フィステル形成したウシの体内にコバルトIIと一緒に導入した。ヒスチジンおよび修飾ヒスチジンをウシ体内に導入した後、第一胃液のサンプルを定期的に抜き取り、Roth (1971), Anal. Chem. 43: 880によって記載のO-フタルジアルデヒドアッセイを用いてヒスチジンの量を測定した。CoIIの量は、誘導結合高周波プラズマ発光分析装置を用いて測定した。CoIIに対するヒスチジンの量を時間に対しプロットし、遊離および保護ヒスチジンの分解係数(Kd)を計算した。遊離ヒスチジンの分解係数は、Kd=0.75〜0.95/時と決定された。メイラード反応プロトコールで修飾したヒスチジンの分解係数は、Kd=0.17/時と決定された。
コーティングされたヒスチジンの調製
コーティングされたヒスチジンを、工業等級のL-Hisを部分的に水素化されたダイズ油およびロウと一緒に噴霧することによって調製し、予備コーティングされたL-His基質を調製した。次に、予備コーティングしたL-His基質を、全内容が全体として参照により本明細書に組み入れられている米国特許5,190,775号;第6,013,286号;および第6,106,871号に記載の方法を実質的に用いて界面活性剤でコーティングした。
コーティングされたヒスチジンを、工業等級のL-Hisを部分的に水素化されたダイズ油およびロウと一緒に噴霧することによって調製し、予備コーティングされたL-His基質を調製した。次に、予備コーティングしたL-His基質を、全内容が全体として参照により本明細書に組み入れられている米国特許5,190,775号;第6,013,286号;および第6,106,871号に記載の方法を実質的に用いて界面活性剤でコーティングした。
インビトロでの保護ヒスチジン分解の測定
インビトロでのヒスチジン分解およびインビトロでのリジン分解。種々の量の遊離リジンおよびヒスチジン(100mMの保存溶液由来)を、ゴム栓付きの16×100mlチューブに加えた。ヒスチジンおよびリジンの終濃度は0〜5mMであった。種々の量のコーティングされたヒスチジンおよびコーティングされたリジン(秤量後)を、ゴム栓付きの25×150mmチューブに加えた。ヒスチジンおよびリジンの終濃度は0〜5mMであった。
インビトロでのヒスチジン分解およびインビトロでのリジン分解。種々の量の遊離リジンおよびヒスチジン(100mMの保存溶液由来)を、ゴム栓付きの16×100mlチューブに加えた。ヒスチジンおよびリジンの終濃度は0〜5mMであった。種々の量のコーティングされたヒスチジンおよびコーティングされたリジン(秤量後)を、ゴム栓付きの25×150mmチューブに加えた。ヒスチジンおよびリジンの終濃度は0〜5mMであった。
餌を控えた二頭のウシから第一胃液を集め、4層のチーズクロスを通して漉した(CO2下に)。反復ピペットの中(39℃に維持した)で、300mlの漉した第一胃液を700mlのマクドウガル(McDougall)バッファーに加えた。遊離アミノ酸のチューブに2mlの第一胃液を加え、封入アミノ酸のチューブには10mlを加えた。チューブをCO2でフラッシュし、ゴム栓でキャップして、39℃の水槽内に30分間置いた。0.2mlまたは1mlの55%メタリン酸(MPA)を加え、MPA終濃度を5%にして反応を停止した。
遊離アミノ酸反応液を12×75mmの遠心チューブに移し、9000rpm、4℃で10分間回転した。上清を13×100mmのチューブに移し、アッセイまで4℃で保管した。コーティングされたアミノ酸の反応液:0.2mlを微量遠心チューブに移し、5分間、室温で、速度#14で回転した。上清を清浄な微量遠心チューブに移して、アッセイまで4℃に保管した(チューブA)。残った反応液は80℃の水槽で5分間インキュベートし、ビーズを溶解して保護されたアミノ酸を放出させた。反応液1mlを12×75mmの遠心チューブに移して、9000rpm、4℃で10分間回転した。上清を13×100mmのチューブに移し、アッセイまで4℃に保管した(チューブB)。B中の[アミノ酸]−A中の[アミノ酸]=保護された量。
遊離アミノ酸の濃度はパウリー(Pauly)アッセイを用いて決定した(SOP参照)。遊離のリジンの濃度は、Lysオキシダーゼアッセイを用いて決定した(SOP参照)。アミノ酸分解速度(V、μmol/ml/時)を初期アミノ酸濃度(So、μmol/ml)に対しプロットした。データをヒルの式:v=Vmax[S]h/(K'+[S]h)に適合させた。図7は、遊離ヒスチジンおよびコーティングしたヒスチジンの結果を示す。
マクドウガル溶液(CaCl2なし)を実験実施前夜に調製した。マクドウガルバッファー(1リットル):S-8875重炭酸ナトリウム(NaHCO3)(9.8g);S-0876二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4 *7H2O)(7.0gまたは3.71g無水);P-4504塩化カリウム(KCl)(0.57g);S271-500塩化ナトリウム(NaCl)(0.47g);M-1880硫酸マグネシウム(MgSO4 *7H2O)(0.12g);C-5080塩化カルシウム(CaCl2)(使用直前に0.04g添加);CO2の気泡を用いて通気しpHを6.8〜7.2にする。実験時に、マクドウガル溶液1リットル当たり1.45gのマルトースを加えた;マクドウガル溶液1リットル当たり1.45gのセロビオースを加えた。SRF 1L当たり約0.525mLのBMEを加えた。投与溶液はマクドウガル液を70%、SRFを30%含んだ。
インビボにおけるコーティングされたヒスチジンの分解の測定
この試験では、4種類のAA供給源についてその腸内消化性を調べた。結晶性HisおよびLysを、部分的に水素化された植物油を用いてコーティングし、それぞれHis(HCl)およびLys(HCl)と比較して、その消化性を試験した。His(HCl)はHisを74.3重量%含むのに対し、コーティング生成物はHisを40重量%含む。Lys(HCl)はLysを78.8重量%含むのに対し、コーティング生成物はLysを45重量%含む。
この試験では、4種類のAA供給源についてその腸内消化性を調べた。結晶性HisおよびLysを、部分的に水素化された植物油を用いてコーティングし、それぞれHis(HCl)およびLys(HCl)と比較して、その消化性を試験した。His(HCl)はHisを74.3重量%含むのに対し、コーティング生成物はHisを40重量%含む。Lys(HCl)はLysを78.8重量%含むのに対し、コーティング生成物はLysを45重量%含む。
この試験では、試験品を低レベル加えた。対照の餌をブランクとして用い、内因性の消失を測定し、HisおよびLysの消化性を計算した。対照の餌には、His(HCl)またはLys(HCl)をそれぞれ用いてHisまたはLysを加えた(含有率0.50%)。これによって、HisおよびLysはそれぞれ0.372%および0.394%与えられた。コーティングされたHisおよびLys生成物を加え、HisまたはLysのレベルをHis(HCl)またはLys(HCl)により提供されたものとそれぞれ同一にした。カゼイン中のHisおよびLysの消化性を決定し、コーティングされたHisおよびコーティングされたLysの消化性を計算して、その効果について調べた。全ての試験餌は、対照餌と同一量のカゼイン(HisおよびLysについて、唯一の他の供給源)を含んだ。結果を表15に示す。
本明細書に引用されている全ての参照、特許および/または出願は、発明が属する当業者の通常の技術水準を示すものであり、参照により任意の表および図面を含めて全体が、参照により各参照の全体が個々に組み入れられた場合と同一の程度に、組み入れられる。
当業者にとって、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに、本明細書に開示した発明について、様々な置換および変更を行うことができることは容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載した発明は、本明細書に明確に開示されていない要素、制限なしに、適切に実施できる。用いられている用語および表現は、記述を目的として用いられたものであって、何らの制限もなく、またこのような用語および表現の使用において、示し記載した特徴またはその一部分の均等物を排除することを意図するものではなく、本発明の範囲内において様々な変更が可能であることを認識しなければならない。したがって、本発明は特定の態様および随意の特徴によって例示されているが、本明細書に開示した概念の変更および/または変形は当業者により実施できること、そしてこのような変更および変形は本発明の範囲内にあると理解するものである。
加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュグループまたはその他代替物のグループ化の形で記載されている場合、当業者は、これによって本発明がマーカッシュグループまたはその他のグループの個別の構成要素または構成要素の小グループの形でも記載できることを認識するだろう。
また、そうでないと明記されない限り、態様に様々な数値が与えられる場合、2つの異なる数値を範囲の両端とすることによって別の態様も記載される。このような範囲もまた、本記載の発明の範囲内である。
Claims (23)
- 少なくとも約2.8重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を有し、以下を含む飼料組成物:
(a)L-Hisおよびヒスチジン生成微生物の発酵に由来する発酵成分を含むヒスチジン供給源;および
(b)少なくとも1つの追加栄養成分。 - 少なくとも約10重量%の粗タンパク質分画を含む、請求項1記載の飼料組成物。
- ヒスチジン供給源の少なくとも一部が第一胃分解(rumen degradation)に対し保護されている、請求項1記載の飼料組成物。
- 発酵成分が、ヒスチジン生成微生物の発酵中に形成された発酵ブロスに由来する、少なくとも1つの可溶性および不溶性成分を含む、請求項1記載の飼料組成物。
- 発酵成分が、ヒスチジン生成微生物の発酵中に形成された発酵ブロスに由来する、少なくとも1つの溶解成分および未溶解成分を含む、請求項1記載の飼料組成物。
- 飼料成分がヒスチジン生成微生物の発酵中に形成されたバイオマスを含む、請求項1記載の飼料組成物。
- ヒスチジン生成微生物がコリネバクテリウム(Corynebacterium)である、請求項1記載の飼料組成物。
- ヒスチジン生成微生物がブレビバクテリウム(Brevibacterium)である、請求項1記載の飼料組成物。
- 第一胃保護(rumen-protected)ヒスチジン供給源に存在するヒスチジンの少なくとも約50%を、第一胃より後方へ送達することができる、請求項3記載の飼料組成物。
- ヒスチジン供給源が、遊離アミノ酸をベースとして、乾燥固形物1キログラムあたり少なくとも約400グラムのヒスチジン含有量を有する、以下を含む飼料組成物:
(a)L-Hisおよびヒスチジン生成微生物の発酵に由来する発酵成分を含むヒスチジン供給源;および
(b)少なくとも1つの追加栄養成分。 - ヒスチジン供給源の少なくとも一部が第一胃分解に対し保護されている、請求項10記載の飼料組成物。
- 第一胃保護ヒスチジン供給源に存在するヒスチジンの少なくとも約50%を、第一胃より後方へ送達することができる、請求項11記載の飼料組成物。
- 少なくとも約40重量%(dsb)のL-Hisを含む第一胃保護ヒスチジン供給源を含む、飼料組成物。
- 少なくとも約2.8重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を有する、請求項13記載の飼料組成物。
- 約3.0〜7.0重量%のヒスチジン含有量を有する粗タンパク質分画を有する、請求項13記載の飼料組成物。
- 第一胃保護ヒスチジン供給源が、ヒスチジン生成微生物の発酵に由来する発酵成分をさらに含む、請求項13記載の飼料組成物。
- 第一胃保護ヒスチジン供給源に存在するヒスチジンの少なくとも約50%を第一胃より後方へ送達することができる、請求項13記載の飼料組成物。
- 第一胃保護ヒスチジン供給源が、少なくとも1種類の還元糖と反応させたヒスチジンを含む、請求項13記載の飼料組成物。
- 少なくとも1種類の還元糖がラクトースを含む、請求項18記載の飼料組成物。
- ヒスチジン供給源が、少なくとも1種類の脂肪酸を含むコーティング混合物によりコーティングされている、請求項13記載の飼料組成物。
- コーティング混合物が部分的に水素化された植物油を含む、請求項20記載の飼料組成物。
- 少なくとも約1g/kgの第一胃保護ヒスチジン供給源を含む、請求項13記載の飼料組成物。
- 以下を含む、飼料組成物:
(a)
(i)第一胃保護L-His、
(ii)非動物起源の第一胃保護高ヒスチジンタンパク質;および
(iii)それらの混合物
のうち少なくとも1つを含む、第一胃保護ヒスチジン供給源;ならびに
(b)少なくとも1つの追加栄養成分。
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