JP2008311816A - 通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】超近距離に配置された情報機器間で静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用して高周波信号を伝送し、超近距離において大容量伝送を行なう。
【解決手段】通信装置は、無負荷状態でのインピーダンスが大きく開放端と同様にみなすことができるような高周波結合器と、無負荷状態で発生する高周波結合器からの反射波を抑えるための負荷抵抗を備える。無負荷状態であっても、送受信回路側から見てインピーダンス整合がとれ、終端の電極において反射波が発生せず、回路内に定在波の発生を抑えることができるので、不要な電波の放射や外部の電子機器に与える影響も少ない。
【選択図】 図18

Description

本発明は、超近距離に配置された情報機器間で静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用して高周波信号を伝送し、超近距離において大容量伝送を行なう通信装置に係り、特に、近隣に通信相手が存在せず電界結合を生じていない無負荷状態における不要な電波の放射を抑制するとともに、信号の歪みやスプリアスの発生を抑制する通信装置に関する。
最近、画像や音楽などのデータをパソコンとの間で交換するなど、小型の情報機器間でデータを移動する際、AV(Audio Visual)ケーブルやUSB(Universal Serial Bus)ケーブルなどの汎用ケーブルで相互接続したデータ通信やメモリカードなどのメディアを媒介にする方法に代わって、無線インターフェースを利用することが増えてきている。後者によれば、データ伝送の度にコネクタの付け替え作業をしてケーブルを引き回す必要がなく、ユーザの利便性が高い。各種のケーブルレス通信機能を搭載した情報機器も多く出現している。小型機器間でケーブルレスによりデータ伝送を行なう方法として、IEEE802.11に代表される無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)通信を始めとして、アンテナを用いて無線信号の送受信を行なう電波通信方式が開発されている。
また、近年注目されている「ウルトラワイドバンド(UWB)」と呼ばれる無線通信方式は、3.1GHz〜10.6GHzという非常に広い周波数帯域を使用し、近距離ながら100Mbps程度の大容量の無線データ伝送を実現する無線通信技術であることから、例えば動画像やCD1枚分の音楽データといった大容量のデータを高速且つ短時間で転送することができる。UWB通信は、送信電力の関係から通信距離が10m程度であり、PAN(Personal Area Network)などの近距離向けの無線通信方式が想定される。例えば、IEEE802.15.3などにおいて、UWB通信のアクセス制御方式として、プリアンブルを含んだパケット構造のデータ伝送方式が考案されている。また、米インテル社は、UWBのアプリケーションとして、パソコン向けの汎用インターフェースとして普及しているUSB(Universal Serial Bus)の無線版を検討している。また、3.1GHz〜10.6GHzという伝送帯域を占有しなくても100Mbpsを超えるデータ伝送が可能であることやRF回路の作り易さを考慮して、3.1〜4.9GHzのUWBローバンドを使った伝送システムも開発が盛んである。
ここで、日本国内の電波法の下では、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が所定レベル以下、すなわち近隣に存在する他の無線システムにとってノイズ・レベル程度となる微弱無線であれば、無線局の免許を受ける必要はなく、無線システムの開発・製造コストを削減することができる。上述したUWB通信は、送信電力の関係から、比較的低い電界レベルで近距離向けの無線通信システムを構成することができる。しかしながら、アンテナを用いて無線信号の送受信を行なう電波通信方式によりUWB通信システムを構成した場合、発生電界をかかる微弱レベルに抑えることは困難である。
従来の無線通信システムの多くは電波通信方式を採用したものであり、空中線(アンテナ)に電流を流した際に発生する放射電界を利用して信号を伝搬させるものである。この場合、送信機側からは通信相手がいるかどうかに拘わらず電波を放出するので、近隣の通信システムに対する妨害電波の発生源になってしまうという問題がある。また、受信機側のアンテナは、送信機からの所望波だけでなく、遠方から到来した電波も受信するので、周囲の妨害電波の影響を受け易く、受信感度低下の原因になる。また、通信相手が複数存在する場合には、その中から所望の通信相手を選択するために複雑な設定を行なう必要がある。例えば、狭い範囲で複数の組の無線機が無線通信を行なう場合は、互いの干渉を回避するために、周波数選択などの分割多重を行なって通信を行なう必要がある。また、電波は偏波の向きが直交すると通信することができないため、送受信機間では互いのアンテナの偏波方向が揃っている必要がある。
例えば、数ミリ〜数センチメートルといった至近距離での非接触データ通信システムを考えた場合、近距離では送受信機が強く結合する一方、他のシステムへの干渉を回避するために遠距離まで信号が到来しないことが好ましい。また、データ通信する機器同士を至近距離に接近させた際の互いの姿勢(向き)に依存せず、結合すること、すなわち指向性がないことが望ましい。また、大容量データ通信を行なうには、広帯域通信が可能であることが望ましい。
無線通信には、上記の放射電界を利用した電波通信以外にも、静電界や誘導電界などを利用した通信方式が挙げられる。例えば、主にRFID(Radio Frequency IDentification)に利用されている既存の非接触通信システムでは、電界結合方式や電磁誘導方式が適用されている。静電界や誘導電界は発生源からの距離に対し、それぞれ距離の3乗並びに2乗に反比例することから、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が所定レベル以下となる微弱無線が可能であり、無線局の免許を受ける必要はない。また、この種の非接触通信システムは、伝送信号は距離に応じて急峻に減衰するので、通信相手が近くに存在しないときには結合関係が生じないので、他の通信システムを妨害することはない。また、遠方から電波が到来してきても、結合器(カプラ)が電波を受信しないので、他の通信システムからの干渉を受けなくて済む。すなわち、誘導電界や静電界を利用した電界結合による非接触・超近距離通信は微弱無線の実現に適していると言える。
非接触による超近距離通信システムは、通常の無線通信システムに対し、幾つかの利点がある。例えば、比較的距離の離れた機器同士で無線信号のやり取りを行なう場合、周辺の反射物の存在や通信距離の拡大に応じて無線区間の信号の質が低下してしまうが、近距離通信によれば周辺環境の依存はなく、高い伝送レートを用いて誤り率の少ない高品質の伝送が可能である。また、超近距離通信システムでは、伝送データを傍受する不正な機器が介在する余地はなく、伝送路上でハッキングの防止や秘匿性の確保を考慮する必要がない。
また、電波通信では、アンテナは使用波長λの2分の1又は4分の1程度の大きさを持つ必要があることから、装置は必然的に大型化してしまう。これに対し、誘導電界や静電界を利用した超近距離通信システムでは、このような制約はない。
例えば、複数の通信補助体間にRFIDタグが位置するように配置した通信補助体組を形成し、通信補助体間に挟むように複数の商品に付けられたRFIDタグを配置することにより、RFIDタグが重なり合った状態であっても、情報の安定した読み取り・書き込みが可能となるRFIDタグ・システムについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
また、装置本体とこの装置本体を身体に装着するための装着手段とを備えるとともに、アンテナ・コイルとこのアンテナ・コイルを介して外部の通信装置と非接触でデータ通信を行うデータ通信手段を備え、装置本体の上部に設けられたアウターケースにアンテナ・コイルとデータ通信手段とを配置して、誘導磁界を用いたデータ通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
また、携帯情報機器に挿入されるメモリカードに外部機器とデータ通信を行なうためのアンテナ・コイルを搭載し、携帯情報機器のメモリカード挿入口の外側にRFIDのアンテナ・コイルが配置される構造として、携帯性を損なうことなく通信距離を確保したRFIDを有する携帯電話機について提案がなされている(例えば、特許文献3を参照のこと)。
静電界や誘導電界を利用した従来のRFIDシステムは、低周波数信号を用いているため通信速度が遅く、大量のデータ伝送には不向きであった。また、アンテナ・コイルによる誘導磁界を用いて通信する方式の場合には、コイルの背面に金属板があると通信を行なうことができず、コイルを配置する平面上に大きな面積が必要となるなど、実装上の問題もある。また、伝送路における損失が大きく、信号の伝送効率がよくない。
これに対し、本発明者らは、高周波信号を電界結合で伝送すること、すなわち、静電界若しくは誘導電界による電界結合、あるいは誘導磁界による磁界結合を利用して上記のUWB通信信号を伝送する超近距離通信システムにより、無線局として免許取得が不要な微弱電界により、秘匿性を考慮した高速データ伝送を実現することができる、と考えている。静電界若しくは誘導電界を利用したUWB通信システムでは、例えば動画像やCD1枚分の音楽データといった大容量のデータを高速且つ短時間で転送することができる、と本発明者らは考えている。
特開2006−60283号公報 特開2004−214879号公報 特開2005−18671号公報
放射電界を利用した電波通信方式の無線通信システムでは、遠方まで無線信号を伝搬することができるが、高周波の無線通信システムでは意図しない電波の発生により他の無線システムを干渉し、周辺の情報機器の誤動作の要因にもなり、外来の妨害電波により通信が妨げられることがある。無線機のアンテナの近傍に電波吸収体を置くと、不要な電波を遮断することができるが、所望信号を伝搬する所望電波をも吸収してしまい通信を行なうことができなくなる。
これに対し、通信距離を近距離に限定し静電界や誘導電界によって結合する電界結合型の非接触通信システムや、誘導磁界によって結合する磁界結合型の非接触通信システムの場合、結合用の電極あるいはコイルが理想的に設計をされていれば、不要な電波の発生を抑え、外来電波の受信を行なわないようにすることができる。上述したように、静電界を利用してUWB通信信号を伝送する超近距離通信システムにより、無線局として免許取得が不要な微弱電界により、秘匿性を考慮した高速データ伝送を実現することができる。
しかしながら、送受信機間で電界結合により高周波信号を伝送する高周波結合器は、通信相手と結合関係にない無負荷状態では高インピーダンスとなるため、終端となる結合用電極において反射波が発生し、回路内に定在波が発生するという問題がある。かかる定在波により、信号線やグランドがアンテナのように動作すると、不要な電波を放射して、外部の電子機器に影響を与えるおそれがある。
また、高周波結合器のインピーダンスが50Ωに見えないことにより、RFフィルタなどの特性が変化して、スプリアスが発生したり伝送信号が歪んでしまったりする。
本発明はこのような技術的課題を鑑みたものであり、その主な目的は、超近距離に配置された情報機器間で静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用して高周波信号を伝送し、超近距離において大容量伝送を行なうことができる、優れた通信装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、近隣に通信相手が存在せず電界結合を生じていない無負荷状態における不要な電波の放射を抑制するとともに、信号の歪みやスプリアスの発生を抑制することができる、優れた通信装置を提供することにある。
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、通信相手側の高周波結合器との間における静電界若しくは誘導電界の電界結合により前記の高周波信号を伝送する通信装置であって、データを伝送する高周波信号の処理を行なう通信回路部と、超近距離を隔てて対向する通信相手と電界結合するための高周波結合器で構成される。そして、前記高周波結合器は、結合用電極と、互いの結合用電極間における電気的結合を強くするため共振部と、前記通信回路部との入力端に接続された負荷抵抗を備えている。
無線LANに代表される多くの無線通信システムでは、アンテナに電流を流した際に発生する放射電界を利用するので、通信相手がいるかどうかに関わらず電波が放出されてしまう。また、放射電界はアンテナからの距離に反比例して緩やかに減衰するので、比較的遠方まで信号が到達して、近隣の通信システムに対する妨害電波の発生源になるとともに、受信機側のアンテナも周囲の妨害電波の影響で受信感度が低下する。要するに、電波通信方式では、至近距離の通信相手に制限した無線通信を実現することは困難である。
これに対し、静電界や誘導電界などによる電界結合を利用した、データを伝送するUWBなどの高周波信号を生成する送信機と、高周波信号を受信処理する受信機で構成される非接触通信システムは、通信相手が近くに存在しないときには、結合関係が生じない。また、誘導電界や静電界の電界強度はそれぞれ距離の2乗並びに3乗に反比例して急峻に減衰する。すなわち、不要な電界が発生せず、且つ、電界が遠くまで到達しないので、他の通信システムを妨害することはない。また、遠方から電波が到来してきても、結合用電極は電波を受信しないので、他の通信システムからの干渉を受けなくて済む。よって、無線局の免許が不要な微弱無線が可能であるとともに、伝送路上でハッキングの防止や秘匿性の確保を考慮する必要がない。また、UWBなどの高周波信号を用いた広帯域通信であることから、超近距離の大容量通信が可能であり、例えば動画像やCD1枚分の音楽データといった大容量のデータを高速且つ短時間で転送することができる。
ここで、高周波回路では、波長に対する伝搬距離の大きさに応じて伝搬損が生じることから、UWBなどの高周波信号を伝送させるときには、伝搬損を十分に低く抑え込む必要がある。
そこで、高周波信号を用いた電界結合型の非接触通信システムでは、送信機及び受信機の高周波結合器は、共振部やインピーダンス整合部を備えている。互いの共振部によって電界結合を強くするとともに、インピーダンス整合部は、送信機と受信機の電極間すなわち結合部分において、インピーダンスの整合をとり、反射波を抑えるようになっている。すなわち、送信機及び受信機の1対の高周波結合器は、所望の高周波帯域を通過するバンドパス・フィルタとして動作するように構成されている。
インピーダンス整合部や共振部は、例えば、直列インダクタ、並列インダクタを高周波信号伝送路に接続した集中定数回路で構成することができる。しかしながら、集中定数回路は、インダクタンスLやキャパシタンスCなどの定数を中心周波数に基づいて決定することから、想定する中心周波数から外れた帯域ではインピーダンスの整合がとられておらず、設計通りの動作はしない。言い換えれば狭帯域でしか有効に動作しない。特に高い周波数帯では集中定数回路部分の微細な構造、値の小さいインダクタやコンデンサのばらつきによって共振周波数が左右されるため、周波数の調整が難しい。また、インピーダンス整合部や共振部を集中定数で構成した場合、インダクタとして小型のチップ・インダクタを用いると、チップ・インダクタ内部での損失があり、高周波結合器間の伝搬損が大きくなるという問題もある。
また、結合器を機器の筐体内に収容する場合には、周辺の金属部品からの影響により中心周波数がずれることが想定される。このため、結合器をあらかじめ広い周波数で有効に動作するように設計する必要がある。帯域の狭いデバイスを複数配置した場合、全体のシステムとしての帯域はさらに狭くなるため、高周波結合器を広帯域の通信システムで同時に複数用いることは難しくなる。
そこで、高周波結合器は、結合用電極と、互いの結合用電極間におけるインピーダンスの整合をとるためのインピーダンス整合部や共振部を、集中定数回路から分布定数回路に代えて構成することで、広帯域化を実現することができる。
また、送受信機間で電界結合により高周波信号を伝送する高周波結合器は、通信相手と結合関係にない無負荷状態では高インピーダンスとなるため、終端となる結合用電極において反射波が発生し、回路内に定在波が発生するという問題がある。かかる定在波により、信号線やグランドがアンテナのように動作すると、不要な電波を放射して、外部の電子機器に影響を与えるおそれがある。
そこで、本発明に係る通信装置は、無負荷状態でのインピーダンスが大きく開放端と同様にみなすことができるような高周波結合器と、無負荷状態で発生する高周波結合器の終端からの反射波を抑えるための負荷抵抗を備え、結果的に送受信回路側から見て高周波結合器側のインピーダンス整合が取れているように構成されている。
したがって、高周波結合器同士が近接した位置にない無負荷状態であっても、送受信回路側から見てインピーダンス整合がとれ、終端の電極において反射波が発生しないので、回路内に定在波が立つのを抑えることができる。この結果、不要な電波の放射を抑えて外部の電子機器に与える影響も少ない。また、RFフィルタなどが正常に動作して、信号の歪みやスプリアスの発生を防ぐことができる。
ここで、負荷抵抗付きの高周波結合器同士を近接させて近距離無線通信を行なうとき、送信機側では送信信号のほぼ半分が入力端の負荷抵抗で消費され、さらに受信機側でも受信信号のほぼ半分が入力端の負荷抵抗で消費されることになる。このため、負荷抵抗がない場合に比べると、受信電力は著しく低下してしまう。
そこで、通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在し、電界結合により通信状態にあるときは高周波結合器の入力端に負荷抵抗を接続するが、電界結合による通信状態から外れたときには入力端から負荷抵抗を切り離すように構成するようにしてもよい。
具体的には、送受信回路部からの信号線が切り替えスイッチを介して高周波結合器又は負荷抵抗のいずれかに択一的に接続されるように、高周波結合器を構成する。
あるいは、送受信回路部からの信号線が高周波結合器に接続される入力端が、切り替えスイッチを介して負荷抵抗に接続されるように構成するようにしてもよい。
送受信機それぞれの高周波結合器においてこのような構成を採用すると、通信状態でないときには送信回路部からの入力信号を負荷抵抗で消費することにより不要な電波や信号歪み、スプリアスの発生を抑制する一方(同上)、通信状態では送信信号並びに受信信号が負荷抵抗により浪費されることはなく、受信電力が低下しないので、より効率的な通信を行なうことができる。
なお、切り替えスイッチによる負荷抵抗の接続切り替えを、送受信機間の通信状態に応じて自動で行なうことができる。例えば、通信相手の高周波結合器が近接した位置にあるかどうかの判断は、受信信号の電力強度により行なうことができる。
あるいは、送受信機が互いの位置関係を検知するセンサ類を搭載し、そこから得られるセンサ信号に基づいて切り替えスイッチを作動させるようにしてもよい。勿論、データ通信を行なおうとするユーザがマニュアルで切り替えスイッチを操作するようにしてもよい。
ここで、送受信機間で電界結合を柔軟に生じさせるための設計論の1つとして、単一の送受信機に複数の高周波結合器を配置するという構成が考えられる。1つの送受信回路部に対して複数の高周波結合器をシリアル状又はパラレル状に接続した場合においても、無負荷状態すなわち通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在しないときに、高周波結合器の入り口部分が高インピーダンス状態となり、送信信号の反射により定在波が発生し、不要な電波ノイズの発生源となるといった上述と同様の問題がある。
したがって、これらの場合においても、高周波結合器は無負荷状態でのインピーダンスが大きく開放端と同様にみなすことができるようにするとともに、無負荷状態で発生する高周波結合器の終端からの反射波を抑えるための負荷抵抗を備えることが好ましい。
例えば、1つの送受信回路部に対して複数の高周波結合器がシリアル状に配置されているときには、末端に接続された高周波結合器の入力端に負荷抵抗を接続することで、無負荷状態における定在波の発生を効率的に抑制することができる。
また、1つの送受信回路部に対して複数の高周波結合器がパラレル状に配置されているときには、各高周波結合器への分岐点に負荷抵抗を接続することで、無負荷状態における定在波の発生を効率的に抑制することができる。
勿論、これら複数の高周波結合器を配置した場合においても、通信時における受信信号の低下を防ぎ、効率的な通信を行なうためには、通信状態に応じて負荷抵抗を接続又は切り離すための切り替えスイッチを備えていることが好ましい。
本発明によれば、超近距離に配置された情報機器間で静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用して高周波信号を伝送し、超近距離において大容量伝送を行なうことができる、優れた通信装置を提供することができる。
本発明に係る通信装置は、通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在しない、すなわち電界結合を生じていない無負荷状態であっても、送受信回路側から見てインピーダンス整合がとれ反射波が発生しないため、回路内に定在波がたつのを抑えることができる。その結果、不要な電波の放射を抑えて外部の電子機器に与える影響も少ない。また、RFフィルタなどが正常に動作して、信号の歪みやスプリアスが発生することを抑制することができる。
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
本発明は、静電界や誘導電界の電界結合を利用して情報機器間でデータ伝送を行なう通信システムに関する。静電界若しくは誘導電界に基づく通信方式によれば、通信相手が近くに存在しないときには結合関係がなく電波を放射しないので、他の通信システムを妨害することはない。また、遠方から電波が到来してきても、結合器が電波を受信しないので、他の通信システムからの干渉を受けなくて済む。
また、アンテナを用いた従来の電波通信では放射電界の電界強度が距離に反比例するのに対し、誘導電界では電界強度が距離の2乗に、静電界では電界強度が距離の3乗に反比例して減衰することから、電界結合に基づく通信方式によれば、近隣に存在する他の無線システムにとってノイズ・レベル程度となる微弱無線を構成することができ、無線局の免許を受ける必要はなくなる。
なお、時間的に変動する静電界のことを「準静電界」と呼ぶこともあるが、本明細書ではこれを含めて「静電界」に統一して称することにする。
従来の静電界若しくは誘導電界を利用した通信では、低周波信号を用いるため大量のデータ伝送には不向きである。これに対し、本発明に係る通信システムでは、高周波信号を電界結合で伝送することによって、大容量伝送が可能である。具体的には、UWB通信のように高周波、広帯域を使用する通信方式を電界結合に適用することで、微弱無線であるとともに、大容量データ通信を実現することができる。
UWB通信は、3.1GHz〜10.6GHzという非常に広い周波数帯域を使用し、近距離ながら100Mbps程度の大容量の無線データ伝送を実現することができる。また、UWB通信は、3.1GHz〜10.6GHzという伝送帯域を占有しなくても100Mbpsを超えるデータ伝送が可能であることやRF回路の作り易さを考慮して、3.1〜4.9GHzのUWBローバンドを使った伝送システムも開発が盛んである。
本発明者らは、UWBローバンドを利用したデータ伝送システムを、モバイル機器に搭載する有効な無線通信技術の1つと考えている。例えば、ストレージ・デバイスを含む超高速な近距離用のDAN(Device Area Network)など、近距離エリアにおける高速データ伝送を実現することが可能である。静電界や誘導電界などの電界結合を利用したUWB通信システムによれば、微弱電界によるデータ通信が可能であるとともに、例えば動画像やCD1枚分の音楽データといった大容量のデータを高速且つ短時間で転送することができる、と考えている。
図1には、静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用した非接触通信システムの構成例を示している。図示の通信システムは、データ送信を行なう送信機10と、データ受信を行なう受信機20で構成される。同図に示すように送受信機それぞれの高周波結合器を向かい合わせて配置すると、2つの電極が1つのコンデンサとして動作し、全体としてバンドパス・フィルタのように動作することから、2つの高周波結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することができる。図示の通信システムにおいて、電界結合による伝送路を好適に形成するには、送受信機の高周波結合器間において、十分なインピーダンス整合がとられていることと、高周波数帯で且つ広帯域において有効に動作することが必要である。
送信機10及び受信機20がそれぞれ持つ送受信用の電極14及び24は、例えば3cm程度離間して対向して配置され、電界結合が可能である。送信機側の送信回路部11は、上位アプリケーションから送信要求が生じると、送信データに基づいてUWB信号などの高周波送信信号を生成し、送信用電極14から受信用電極24へ信号が伝搬する。そして受信機20側の受信回路部21は、受信した高周波信号を復調及び復号処理して、再現したデータを上位アプリケーションへ渡す。
UWB通信のように高周波、広帯域を使用する通信方式によれば、近距離において100Mbps程度の超高速データ伝送を実現することができる。また、電波通信ではなく電界結合によりUWB通信を行なう場合、その電界強度は距離の3乗若しくは2乗に反比例することから、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が所定レベル以下に抑制することで無線局の免許が不要となる微弱無線とすることが可能であり、安価に通信システムを構成することができる。また、電界結合方式により超近距離でデータ通信を行なう場合、周辺に存在する反射物により信号の質が低下することはない、伝送路上でハッキングの防止や秘匿性の確保を考慮する必要がない、といった利点がある。
一方、波長に対する伝搬距離の大きさに応じて伝搬損が大きくなることから、電界結合により高周波信号を伝搬する際には、伝搬損を十分低く抑える必要がある。UWB信号のように高周波数の広帯域信号を電界結合で伝送する通信方式では、3cm程度の超近距離通信であっても、使用周波数帯4GHzにとっては約2分の1波長に相当するため、無視することはできない長さである。とりわけ、高周波回路では、低周波回路に比べると特性インピーダンスの問題はより深刻であり、送受信機の電極間の結合点においてインピーダンス不整合による影響は顕在化する。
kHzあるいはMHz帯の周波数を使った通信では、空間での伝搬損が小さいため、図2に示すように送信機及び受信機が電極のみからなる結合器を備え、結合部分が単純に平行平板コンデンサとして動作する場合であっても、所望のデータ伝送を行なうことができる。しかしながら、GHz帯の高周波を使った通信では、空間での伝搬損が大きいため、信号の反射を抑え、伝送効率を向上させる必要がある。図3に示すように、送信機及び受信器のそれぞれにおいて高周波信号伝送路が所定の特性インピーダンスZ0に調整されているとしても、平行平板コンデンサで結合しただけでは、結合部においてインピーダンス・マッチングをとることはできない。このため、結合部におけるインピーダンス不整合部分において、信号が反射することにより伝搬損が生じてしまい、効率が低下する。例えば、送信回路部11と送信用電極14を結ぶ高周波信号伝送路は50Ωのインピーダンス整合がとられた同軸線路であったとしても、送信用電極14と受信用電極24間の結合部におけるインピーダンスが不整合であると、信号は反射して伝搬損を生じる。
そこで、送信機10及び受信機20のそれぞれに配置される高周波結合器を、図4に示すように、平板状の電極14、24と、直列インダクタ12、22、並列インダクタ13、23を高周波信号伝送路に接続して構成している。このような高周波結合器を、図5に示すように向かい合わせて配置すると、2つの電極が1つのコンデンサとして動作し、全体としてバンドパス・フィルタのように動作するため、2つの高周波結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することができる。ここで言う高周波信号伝送路とは、同軸ケーブル、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路などを示す。
ここで、送信機10と受信機20の電極間すなわち結合部分において、単にインピーダンス・マッチングを取り、反射波を抑えることだけを目的とするのであれば、図6Aに示すように、各結合器を平板状の電極14、24と、直列インダクタ12、22、並列インダクタ13、23を高周波信号伝送路に接続して構成する必要はなく、図6Bに示すように各結合器を平板状の電極14、24と直列インダクタを高周波信号伝送路に接続するという簡素な構造であってもよい。すなわち、高周波信号伝送路上に直列インダクタを挿入するだけでも、送信機側の結合器に対向して超近距離で受信機側の結合器が存在する場合において、結合部分におけるインピーダンスが連続的となるように設計することは可能である。
但し、図6Bに示す構成例では、結合部分の前後における特性インピーダンスに変化はないので電流の大きさも変わらない。これに対し、図6Aに示したように、高周波信号伝送路末端の電極の手前において並列インダクタンスを介してグランドに接続した場合、結合器単体としては、結合器の手前側の特性インピーダンスZ0に対し、結合器の先の特性インピーダンスZ1は低下する(すなわちZ0>Z1)というインピーダンス変換回路としての機能を備えることになり、結合器への入力電流I0に対し結合器の出力電流I1を増幅する(すなわちI0<I1)ことができる。
図7A及び図7Bには、並列インダクタンスを設けた場合と設けない場合の結合器のそれぞれにおいて、電極間の電界結合によって電界が誘起される様子を示している。同図からも結合器は直列インダクタに加えて並列インダクタを設けることによって、より大きな電界を誘起して、電極間で強く結合させることを理解できよう。また、図7Aに示すようにして電界近傍に大きな電界を誘起したとき、発生した電界は進行方向に振動する縦波として電極面の正面方向に伝搬する。この電界の波により、電極間の距離が比較的大きな場合であっても電極間で信号を伝搬することが可能になる。
したがって、UWB信号などの高周波信号を電界結合により伝送する通信システムでは、高周波結合器として必須の条件は以下の通りとなる。
(1)電界で結合するための電極があること。
(2)より強い電界で結合させるための並列インダクタがあること。
(3)通信に使用する周波数帯において、結合器を向かい合わせに置いたときにインピーダンス・マッチングが取れるように、インダクタ、及び電極によるコンデンサの定数が設定されていること。
図5に示したように電極が対向する1組の高周波結合器からなるバンドパス・フィルタは、直列インダクタと並列インダクタのインダクタンス、電極によって構成されるコンデンサのキャパシタンスによって、その通過周波数f0を決定することができる。図8には、1組の高周波結合器からなるバンドパス・フィルタの等価回路を示している。特性インピーダンスR[Ω]、中心周波数f0[Hz]、入力信号と通過信号の位相差をα[ラジアン](π<α<2π)、電極によって構成されるコンデンサのキャパシタンスをC/2とすると、バンドパス・フィルタを構成する並列及び直列インダクタンスの各定数L1、L2は、使用周波数f0に応じて下式で求めることができる。
また、結合器単体としてインピーダンス変換回路として機能する場合、その等価回路は図9に示す通りとなる。図示の回路図において、下式を満たすように、使用周波数f0に応じて並列インダクタンスL1及び直列インダクタンスL2をそれぞれ選ぶことにより、特性インピーダンスをR1からR2へ変換するインピーダンス変換回路を構成することができる。
このように、図1に示した非接触通信システムでは、UWB通信を行なう通信機は、従来の電波通信方式の無線通信機においてアンテナを使用する代わりに、図4に示した高周波結合器を用いることで、従来にない特徴を持った超近距離データ伝送を実現することができる。
図5に示したように、超近距離を隔てて互いの電極が対向する2つの高周波結合器は、所望の周波数帯の信号を通過するバンドパス・フィルタとして動作するとともに、単体の高周波結合器としては電流を増幅するインピーダンス変換回路として作用する。他方、高周波結合器が自由空間に単独で置かれるとき、高周波結合器の入力インピーダンスは高周波信号伝送路の特性インピーダンスと一致しないので、高周波信号伝送路から入った信号は高周波結合器内で反射され、外部に放射されない。
したがって、図1に示した非接触通信システムでは、送信機側では、通信を行なうべき相手がいないときには、アンテナのように電波を垂れ流すことはなく、通信を行なうべき相手が近づいてそれぞれの電極がコンデンサを構成したときのみ、図5に示したようにインピーダンス整合がとれることによって、高周波信号の伝達が行なわれる。
ここで、送信機側の結合用電極において発生する電磁界について考察してみる。図10には、微小ダイポールによる電磁界を表している。図示のように電磁界は、伝搬方向と垂直な方向に振動する電界成分(横波成分)Eθと、伝搬方向と平行な向きに振動する電界成分(縦波成分)ERに大別される。また、微小ダイポール回りには磁界Hφが発生する。下式は微小ダイポールによる電磁界を表しているが、任意の電流分布はこのような微小ダイポールの連続的な集まりとして考えられるので、それによって誘導される電磁界にも同様の性質がある(例えば、虫明康人著「アンテナ・電波伝搬」(コロナ社、16頁〜18頁)を参照のこと)。
上式から分るように、電界の横波成分は、距離に反比例する成分(放射電界)と、距離の2乗に反比例する成分(誘導電界)と、距離の3乗に反比例する成分(静電界)で構成される。また、電界の縦波成分は、距離の2乗に反比例する成分(誘導電界)と、距離の3乗に反比例する成分(静電界)のみで構成され、放射電磁界の成分を含まない。また、電界ERは、|cosθ|=1となる方向、すなわち図10中の矢印方向で最大となる。
無線通信において広く利用されている電波通信では、アンテナから放射される電波はその進行方向と直交方向に振動する横波Eθであり、電波は偏波の向きが直交すると通信することができない。これに対し、静電界や誘導電界を利用した通信方式において結合電極から放射される電磁波は、横波Eθの他に、進行方向に振動する縦波ERを含む。縦波ERは「表面波」とも呼ばれる。ちなみに、表面波は、導体や、誘電体、磁性体などの媒体の内部を通じて伝搬することもできる。
電磁界を利用した伝送波のうち位相速度vが光速cより小さいものを遅波、大きいものを速波という。表面波は前者の遅波に相当する。
非接触通信システムでは、放射電界、静電界、誘導電界のいずれの成分を媒介として信号を伝達することもできる。しかしながら、距離に反比例する放射電界は比較的遠くにある他のシステムへの妨害波になるおそれがある。このため、放射電界の成分を抑制すること、言い換えれば、放射電界の成分を含む横波Eθを抑制しながら、放射電界の成分を含まない縦波ERを利用した非接触通信が好ましい。
上述した観点から、本実施形態に係る高周波結合器では、以下のような工夫をしている。まず、電磁界を示した上記の3式より、θ=0゜という関係を有する場合に、Eθ=0となり、且つ、ER成分が極大値をとることが分かる。すなわち、Eθは電流の流れる向きに対して垂直な方向で最大になり、ERは電流の流れる向きと平行な方向で最大になる。したがって、電極面に対して垂直な正面方向のERを最大にするには、電極に対して垂直な方向の電流成分を大きくすることが望ましい。一方、電極の中心から給電点をオフセットさせた場合には、このオフセットに起因して、電極に対して平行な方向に対する電流成分が増加する。そして、この電流成分に応じて電極の正面方向のEθ成分が増加してしまう。このため、本実施形態に係る高周波結合器では、電極の中心位置からのオフセットなしに給電点を設け、ER成分が最大となるようにしているのである。
勿論、旧来のアンテナでも放射電界だけでなく、静電界や誘導電界が発生し、送受信アンテナを近接させれば電界結合が起きるが、エネルギの多くは放射電界として放出され、非接触通信としては効率的でなく、また不要な電波が周辺の電子機器に及ぼす悪影響が懸念される。これに対し、図4に示した高周波結合器は、所定の周波数においてより強い電界ERを作り伝送効率を高めるように、結合用電極及び共振部が構成されている。また、結合用電極の近傍に磁性損失材からなる電波吸収体を用いることで、近距離における送受信機間の電界結合を安定化させたまま、不要な電波の放射や外来の妨害電波の影響を抑える。
図4に示した高周波結合器を送信機側で単独で使用した場合、結合用電極の表面には縦波の電界成分ERが発生するが、放射電界を含む横波成分EθはERに比べ小さいことから、電波はほとんど放射されない。すなわち、近隣の他システムへの妨害波を発生しない。また、高周波結合器に入力された信号のほとんどが電極で反射して入力端に戻る。
これに対し、1組の高周波結合器を使用した場合、すなわち送受信機間で高周波結合器を近距離に配置されたときには、結合用電極同士が主に準静電界成分によって結合して1つのコンデンサのように働いて、バンドパス・フィルタのように動作し、インピーダンス・マッチングが取れた状態になっている。したがって、通過周波数帯では信号・電力の大部分は相手方に伝送され、入力端への反射は少ない。ここで言う「近距離」は波長λによって定義され、結合用電極間の距離dがd≪λ/2πであることに相当する。例えば、使用周波数f0が4GHzであれば電極間距離が10mm以下のときである。
また、送受信機間で高周波結合器を中距離に配置したときには、送信機側の結合用電極の周囲には、静電界は減衰し、主に誘導電界からなる電界ERの縦波が発生する。電界ERの縦波は、受信機側の結合用電極で受け取られ、信号が伝送される。但し、両結合器を近距離に配置した場合と比較すると、送信機側の高周波結合器では、入力された信号が電極で反射して入力端に戻る割合が高くなる。ここで言う「中距離」は波長λによって定義され、結合用電極間の距離dがλ/2πの1〜数倍程度であり、使用周波数f0が4GHzであれば電極間距離が10〜40mmのときである。
既に述べたように、図4に示した高周波結合器では、インピーダンス整合部は並列インダクタ及び直列インダクタの定数L1、L2により動作周波数f0が決定される。これら直列インダクタ12、22、並列インダクタ13、23を集中定数回路とみなされる回路素子で構成することが一般的な回路製作方法である。ところが、高周波回路では集中定数回路は分布定数回路よりも帯域が狭いことが知られており、また周波数が高いときインダクタの定数は小さくなるので、定数のばらつきによって共振周波数がずれるという問題がある。
そこで、本発明では、インピーダンス整合部や共振部を集中定数回路から分布定数回路に代えて高周波結合器を構成することで、広帯域化を実現するようにした。図11には、インピーダンス整合部や共振部に分布定数回路を用いた高周波結合器の構成例を示している。
図示の例では、下面にグランド導体102が形成されるとともに、上面に印刷パターンが形成されたプリント基板上101に、高周波結合器が配設されている。高周波結合器のインピーダンス整合部並びに共振部として、並列インダクタと直列インダクタの代わりに、分布定数回路として作用するマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路すなわちスタブ103が形成され、信号線パターン104を介して送受信回路モジュール105と結線している。スタブ103は、先端においてプリント基板101を貫挿するスルーホール106を介して下面のグランド102に接続してショートされ、また、スタブ103の中央付近において金属線107を介して結合用電極108に接続される。
なお、電子工学の技術分野で言う「スタブ(stub)」は、一端を接続、他端を未接続又はグランド接続した電線の総称であり、調整、測定、インピーダンス整合、フィルタなどの用途で回路の途中に設けられる。
スタブ103の長さは高周波信号の2分の1波長程度とし、信号線104とスタブ103はプリント基板101上のマイクロストリップ線路、コプレーナ線路などで形成される。スタブ103の長さが2分の1波長で先端がショートしているとき、スタブ103内に発生する定在波の電圧振幅はスタブの先端で0となり、スタブの中央、すなわちスタブ103の先端から4分の1波長のところで最大となる(図12を参照のこと)。電圧振幅が最大となるスタブ103の中央に結合用電極108を金属線107で接続することで、伝搬効率の良い高周波結合器を作ることができる。
インピーダンス整合部をスタブ103すなわちプリント基板101上のマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路からなる分布定数回路で構成することにより、広い帯域にわたって均一な特性を得ることができることから、図1に示した通信システムに対してDSSS(Direct Sequence Spread Spectrum:直列系列スペクトル拡散)やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)といった広帯域信号に周波数拡散する変調方式を適用することが可能になる。スタブ103は、プリント基板101上のマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路であり、その直流抵抗が小さいことから、高周波信号でも損失が少なく、高周波結合器間の伝搬損を小さくすることができる。
分布定数回路を構成するスタブ103のサイズは高周波信号の2分の1波長程度と大きいことから、製造時の公差による寸法の誤差は全体の長さに比較すると微量であり、特性のバラツキが生じにくい。
図13には、インピーダンス整合部を集中定数回路及び分布定数回路でそれぞれ構成した場合の高周波結合器の周波数特性の比較を示している。但し、集中定数回路でインピーダンス整合部を構成した高周波結合器は、図14に示すように、プリント基板上の信号線パターンの先端に金属線を介して結合用電極を配設するとともに、信号線パターンの先端に並列インダクタ部品を実装し、並列インダクタの他端をプリント基板内のスルーホールを介してグランド導体に接続したものを想定している。また、分布定数回路でインピーダンス整合部を構成した高周波結合器は、図15に示すように、プリント基板上に形成された2分の1波長の長さからなるスタブの中央に金属線を介して結合用電極を配設し、スタブをその先端においてプリント基板内のスルーホールを介してグランド導体に接続したものを想定している。いずれの高周波結合器もそれぞれ動作周波数が3.8GHz付近になるように調整されているものとする。また、図14、図15のいずれにおいても、マイクロストリップ線路によりポート1からポート2に向かって高周波信号が伝達され、マイクロストリップ線路の途中にそれぞれの高周波結合器が配設されている。そして、周波数特性は、ポート1からポート2への伝達特性として測定し、その結果が図13に示されている。
高周波結合器は、他の高周波結合器と結合関係にないときは開放端とみなせるので、ポート1から入力された高周波信号は高周波結合器には供給されず、そのままポート2へと伝送される。したがって、高周波結合器の動作周波数である3.8GHz付近ではどちらの高周波結合器の場合もポート1からポート2へ伝送される信号強度を表す伝搬損S21が大きな値となっている。しかし、図14に示す高周波結合器の場合、動作周波数から前後に外れた周波数ではS21の値が大きく落ち込んでいる。これに対し、図15に示した高周波結合器では動作周波数を中心とした広い周波数帯域に渡ってS21の値が大きい良好な特性を保っていることが分かる。すなわち、インピーダンス整合部を分布定数回路で構成することで、高周波結合器が広帯域において有効に動作すると言うことができよう。
スタブ103の中央付近において金属線107を介して結合用電極108が接続されるが、この金属線は結合用電極108のほぼ中央で接続することが好ましい。何故ならば、結合用電極の中心に高周波伝送線路を接続することにより、電極内に均等に電流が流れて電極正面に電極面とほぼ垂直な向きに不要な電波を放射しないが(図16Aを参照のこと)、結合用電極の中心からオフセットのある位置に高周波伝送線路を接続すると、結語用電極内に不均等な電流が流れてマイクロストリップ・アンテナのように動作して不要な電波を放射してしまうからである(図16Bを参照のこと)。
また、電波通信の分野では、図17に示すようにアンテナ素子の先端に金属を取り付けて静電容量を持たせ、アンテナの高さを短縮させる「容量装荷型」のアンテナが広く知られており、一見して図4に示した結合器と構造が類似する。ここで、本実施形態で送受信機において用いられる結合器と容量装荷型アンテナとの相違について説明しておく。
図17に示した容量装荷型アンテナは、アンテナの放射エレメントの周囲B1及びB2方向に電波を放射するが、A方向は電波を放射しないヌル点となる。アンテナの周りに発生する電界を詳細に検討すると、アンテナからの距離に反比例して減衰する放射電界と、アンテナからの距離の2乗に反比例して減衰する誘導電界と、アンテナからの距離の3乗に反比例して減衰する静電界が発生する。そして、誘導電界と静電界は放射電界に比べ距離に応じて急激に減衰するため、通常の無線システムでは放射電界についてのみ議論され、誘導電界と静電界は無視されることが多い。したがって、図17に示す容量装荷型アンテナであっても、Aの方向に誘導電界と静電界を発生させているが、空気中で速やかに減衰するため、電波通信では積極的には利用されていない。
ここまで、通信距離を近距離に限定し静電界や誘導電界によって結合する電界結合型の非接触通信システムにおいて、送受信機で用いられる高周波結合器の構成について説明してきた。結合用の電極あるいはコイルが理想的に設計をされていれば、不要な電波の発生を抑え、外来電波の受信を行なわないようにすることができる。このことは、誘導磁界によって結合する磁界結合型の非接触通信システムについても当てはまる。
しかしながら、送受信機間で電界結合により高周波信号を伝送する高周波結合器は、通信相手と結合関係にない無負荷状態では高インピーダンスとなるため、終端となる結合用電極において反射波が発生し、回路内に定在波が発生するという問題がある。かかる定在波により、信号線やグランドがアンテナのように動作すると、不要な電波を放射して、外部の電子機器に影響を与えるおそれがある。
図11には、インピーダンス整合部及び共振部をスタブで形成して広帯域化を図った高周波結合器を示した。この高周波結合器は、負荷状態すなわち通信相手側の高周波結合器が近接した位置にあるときは、上述したようにインピーダンス整合が取れており、送信信号を効率的に放射する。これに対し、無負荷状態、すなわち通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在しないときには、高周波結合器の入り口部分(図11中の点Aで示す、スタブとなるパターンの開始点)は高インピーダンス状態となることから、回路部から流入した送信信号はこの入り口部分で反射し、送信回路側に戻ることになる。
図18に示すように、回路中に進行する波と逆方向に反射する波が同時に存在するとき、定在波が発生する。一般に、定在波は不要な電波ノイズの発生源になることが知られている。また、送受信回路中のRFフィルタ(図示しない)などは、通常、入力・出力側がともに50Ωになっている状態、すなわちインピーダンス整合がとれて反射波がない状態で性能を発揮できるように設計されているものの、反射波があると正常な動作が妨げられ、スプリアスが発生したり、信号が歪んだりしてしまうという影響がある。
そこで、本発明に係る通信装置は、高周波結合器のインピーダンス整合部や共振部を分布定数回路で構成して広帯域化を図ることに加えて、高周波結合器は無負荷状態でのインピーダンスが大きく開放端と同様にみなすことができるようにするとともに、無負荷状態で発生する高周波結合器の終端からの反射波を抑えるための負荷抵抗を備え、結果的に送受信回路側から見て高周波結合器側のインピーダンス整合が取れているように構成した。
このような場合、高周波結合器同士が近接した位置にない無負荷状態であっても、送受信回路側から見てインピーダンス整合がとれ、終端の電極において反射波が発生しないので、回路内に定在波が立つのを抑えることができる。この結果、不要な電波の放射を抑えて外部の電子機器に与える影響も少ない。また、RFフィルタなどが正常に動作して、信号の歪みやスプリアスが発生することを抑制することができる。
図19には、入力端に負荷抵抗が接続された高周波結合器の等価回路の構成を示している。図示のように高周波結合器の入力端に負荷抵抗を接続した場合、通信相手側の高周波結合器が近接した位置にないときには、終端部では単に負荷抵抗を介して接地されているだけとなり、信号線を介して流入される信号は負荷抵抗によって消費されるので、反射波を発生しない。
このとき、送受信回路側から見ると、高周波結合器は50Ωにマッチングが取れた状態になることから、送信信号は高周波結合器で反射されることがなくなり、回路中の定在波から不要な電波が発生してRFフィルタなどの特性が設計からずれてしまうのを防ぐことができる。
ここで、図19に示した回路構成を持つ1対の高周波結合器が対向して配置され、電界結合による非接触通信を行なう場合について考察してみる。
負荷抵抗付きの高周波結合器同士を近接させて近距離無線通信を行なうとき、送信機側では送信信号のほぼ半分が入力端の負荷抵抗で消費され、さらに受信機側でも受信信号のほぼ半分が入力端の負荷抵抗で消費されることになる。このため、負荷抵抗がない場合に比べると、受信電力は著しく低下してしまう、という問題がある。
例えば、近距離に限定して通信を行なうために送信出力を小さく絞っているようなシステム運用形態では、受信電力の低下分を補うように送信出力を絞る量を減らすことで従来と同じ通信距離を確保することも可能である。但し、これは効率的な通信とは言い難い。
そこで、通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在し、電界結合により通信状態にあるときは高周波結合器の入力端に負荷抵抗を接続するが、電界結合による通信状態から外れたときには入力端から負荷抵抗を切り離すように構成することが考えられる。送受信機それぞれの高周波結合器においてこのような構成を採用すると、通信状態でないときには送信回路部からの入力信号を負荷抵抗で消費することにより不要な電波や信号歪み、スプリアスの発生を抑制する一方(同上)、通信状態では送信信号並びに受信信号が負荷抵抗により浪費されることはなく、受信電力が低下しないので、より効率的な通信を行なうことができる。
図20には、送受信回路部からの信号線が切り替えスイッチを介して高周波結合器又は負荷抵抗のいずれかに択一的に接続される高周波結合器の構成例を示している。このような場合、通信相手の高周波結合器が近接した位置にあって通信状態にあるときに切り替えスイッチにより信号線を高周波結合器に接続し、そうでないときは負荷抵抗に接続する。
また、図21には、送受信回路部からの信号線が高周波結合器に接続される入力端が、切り替えスイッチを介して負荷抵抗に接続される高周波結合器の構成例を示している。このような場合、通信相手の高周波結合器が近接した位置にあって通信状態にあるときには切り替えスイッチにより高周波結合器の入力端を負荷抵抗から切り離し、そうでないときは入力端に負荷抵抗を接続する。
図20又は図21のいずれに示した構成においても、通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在し、電界結合により通信状態にあるときは高周波結合器の入力端に負荷抵抗を接続するが、電界結合による通信状態から外れたときには入力端から負荷抵抗を切り離すことができる。
送受信機それぞれの高周波結合器において、図20又は図21に示したような構成を採用すると、通信状態でないときには送信回路部からの入力信号を負荷抵抗で消費することにより不要な電波や信号歪み、スプリアスの発生を抑制する一方(同上)、通信状態では送信信号並びに受信信号が負荷抵抗により浪費されることはなく、受信電力が低下しないので、より効率的な通信を行なうことができる。
なお、図21に示した構成では、切り替えスイッチによる負荷抵抗の接続切り替えを、送受信機間の通信状態に応じて自動で行なうことができる。例えば、通信相手の高周波結合器が近接した位置にあるかどうかの判断は、受信信号の電力強度により行なうことができる。
また、図20並びに図21に示したいずれの構成においても、送受信機が互いの位置関係を検知するセンサ類を搭載し、そこから得られるセンサ信号に基づいて切り替えスイッチを作動させるようにしてもよい。勿論、データ通信を行なおうとするユーザがマニュアルで切り替えスイッチを操作するようにしてもよい。
ここで、静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用した通信方式では、結合用電極同士で電界結合を生じさせるには、送受信機間で互いの結合用電極の微妙な位置合わせを行なう必要があるが、機器内のどの部分に結合用電極が配置され、どの箇所を接触させればよいのかユーザにとっては分かり難いことが多く、このため最大の通信速度を得られない可能性がある。この種の問題に対する解決方法として、単一の送受信機に複数の高周波結合器を配置するという構成が考えられる。
電波通信の場合、複数の送信アンテナを並列して設けると、送信電力は各アンテナに分散してしまい個々のアンテナの出力は低下することから、通信に寄与しないアンテナは送信電力を徒に浪費してしまう。これに対し、電界結合による通信方式においては、他の高周波結合器と結合関係にあるもののみが高周波信号の伝達を行ない、その他の高周波結合器はほぼ開放端とみなせるように設計することができる。すなわち、複数の高周波結合器を例えばアレイ状に並べても、通信相手側の高周波結合器と電界結合しない高周波結合器は送信電力を浪費するという問題は深刻でない。
図22には、図11に示した高周波結合器をプリント基板上で複数配置した様子を示している。各高周波結合器のスタブの一端は、信号線路を介して1つの送受信回路モジュールに並列接続されている。
図示の3個の高周波結合器1〜3のうち、他の高周波結合器と結合関係にあるもののみが高周波信号の伝達を行ない、その他の高周波結合器は開放端となる。例えば、同図中の高周波結合器2のみが通信相手側の高周波結合器(図示しない)と結合関係にあるときには、送受信回路モジュールからの出力信号は高周波結合器1には供給されず、高周波結合器2を通って、通信相手側の高周波結合器に信号を伝達する。
また、送受信回路部からの出力信号の一部は、高周波結合器2を通過してさらに信号線を伝わって高周波結合器3まで達した後、高周波結合器3の手前で反射し、再び高周波結合器2に供給される。ここで、元の信号と反射して戻ってくる信号の干渉を防ぐためには、各高周波結合器間をつなぐ信号線の長さは2分の1波長の整数倍であること、あるいは、送受信回路モジュールと各高周波結合器の間の信号線路の長さの差が2分の1波長の整数倍であることが望ましい。これにより、単に送受信回路モジュールからの信号を分配器により複数に分配し、それぞれの高周波結合器に供給するのに比べて、他の高周波結合器と結合関係にある高周波結合器だけに信号を供給できることから、選択的且つ効果的に信号を伝達することができる。
また、図22に示したように高周波結合器をシリアル状に並べるのではなく、図23に示すように1つの入力端から複数の高周波結合器にパラレル状に信号線を分岐し、その先に高周波結合器を配置することもできる。図23に示した配置例においては、分岐点からそれぞれの高周波結合器までをつなぐ信号線の長さを2分の1波長の整数倍とすることにより、送受信回路モジュールと各高周波結合器の間の信号線路の長さの差は2分の1波長の整数倍となるから静電結合する高周波結合器へ供給される元の信号と反射波との干渉を抑えることができる。
図22や図23に示したように1つの送受信回路部に対して複数の高周波結合器をシリアル状又はパラレル状に接続した場合も、上述と同様に、無負荷状態すなわち通信相手側の高周波結合器が近接した位置に存在しないときに、高周波結合器の入り口部分が高インピーダンス状態となり、送信信号の反射により定在波が発生し、不要な電波ノイズの発生源となる、あるいは信号歪みやスプリアスの要因になる、といった問題がある。したがって、これらの場合においても、高周波結合器は無負荷状態でのインピーダンスが大きく開放端と同様にみなすことができるようにするとともに、無負荷状態で発生する高周波結合器の終端からの反射波を抑えるための負荷抵抗を備えることが好ましい。
図22に示したように、1つの送受信回路部に対して複数の高周波結合器がシリアル状に配置されているときには、末端に接続された高周波結合器の入力端に負荷抵抗を接続することで、無負荷状態における定在波の発生を効率的に抑制することができる。図24には、その等価回路の構成を示している。
また、図23に示したように、1つの送受信回路部に対して複数の高周波結合器がパラレル状に配置されているときには、各高周波結合器への分岐点に負荷抵抗を接続することで、無負荷状態における定在波の発生を効率的に抑制することができる。図25には、その等価回路の構成を示している。
勿論、これら複数の高周波結合器を配置した場合においても、通信時における受信信号の低下を防ぎ、効率的な通信を行なうためには、通信状態に応じて負荷抵抗を接続又は切り離すための切り替えスイッチを備えていることが好ましい。
これまでは、図1に示した電界結合方式の非接触通信システムにおいて、1組の高周波結合器間で信号を伝送する仕組みについて説明してきた。ここで、2つの機器間で信号を伝送する際には必然的にエネルギの移動を伴うことから、この種の通信システムを電力伝送に応用することも可能である。上述したように、送信機側の高周波結合器で発生した電界ERは表面波として空中を伝搬し、受信機側では高周波結合器で受け取った信号を整流・安定化して電力を取り出すことができる。
図26には、高周波結合器を利用した通信システムを電力伝送に応用したときの構成例を示している。
図示のシステムでは、AC電源に接続された充電器と無線通信機を近づけることにより、それらに内蔵する高周波結合器を介して非接触で無線通信機への送電、及び充電を行なう。但し、高周波結合器は電力伝送の用途のみで使用される。
受電する高周波結合器が送電する高周波結合器の近くにないとき、送電用の高周波結合器に入力された電力の大部分は負荷抵抗で消費されるため、外部に不要な電波を放射することを抑えることができる。
また、同図では無線通信機への充電を行なう例を挙げたが、充電される側は無線機に限らず例えば音楽プレイヤやデジタルカメラへの非接触電力伝送を行なうようにしてもよい。
また、図27には、高周波結合器を利用した通信システムを電力伝送に応用した他の構成例を示している。図示のシステムは、高周波結合器と表面波伝送線路を電力伝送と通信に兼用して使用するように構成されている。
通信及び送電を行なうタイミングの切り替えは送信回路部から送られる通信・送(受)電切り替え信号によって行なう。例えば、通信と送電はあらかじめ決められた周期で切り替えを行なうようにしてもよい。このとき、充電の状態を通信信号に加えて充電器側にフィードバックすることで送電出力を最適に保つことができる。例えば、充電が完了したらその情報を充電器側に送り、送電の出力を0にするようにしてもよい。
同図に示したシステムでは、充電器をAC電源に接続するようにして構成されているが、他にも例えば、電池の少なくなった携帯電話に他の携帯電話から電力を分け与えるような用途に用いてもよい。
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
本明細書では、UWB信号を電界結合によりケーブルレスでデータ伝送する通信システムに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、UWB通信方式以外の高周波信号を使用する通信システムや、比較的低い周波数信号を用いて電界結合によりデータ伝送を行なう通信システムに対しても、同様に本発明を適用することができる。
また、本明細書では1組の高周波結合器間でデータ通信を行なうシステムに対して本発明を適用した実施形態を中心に説明してきたが、2つの機器間で信号を伝送する際には必然的にエネルギの移動を伴うことから、この種の通信システムを電力伝送に応用することも当然にして可能である。
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
図1は、静電界若しくは誘導電界による電界結合を利用した非接触通信システムの構成例を示した図である。 図2は、kHzあるいはMHz帯の周波数を使った通信において、送信機及び受信機が電極のみからなる結合器を備え、結合部分が単純に平行平板コンデンサとして動作する構成例を示した図である。 図3には、GHz帯の高周波を使った通信において、結合部におけるインピーダンス不整合部分において、信号が反射することにより伝搬損が生じる様子を示した図である。 図4は、インピーダンス整合部や共振部を集中定数回路で構成した高周波結合回路の等価回路を示した図である。 図5は、図4に示した高周波結合器の電極同士を向かい合わせて配置した様子を示した図である。 図6Aは、図4に示した高周波結合器の単体での特性を説明するための図である。 図6Bは、図4に示した高周波結合器の単体での特性を説明するための図である。 図7Aは、インピーダンス変換器としての機能により高周波結合器が電界を誘起する様子を示した図である。 図7Bは、インピーダンス変換器としての機能により高周波結合器が電界を誘起する様子を示した図である。 図8は、図4に示した2つの高周波結合器を対向して配置することにより構成されるバンドパス・フィルタの等価回路を示した図である。 図9は、高周波結合器単体として構成されるインピーダンス変換回路の等価回路を示した図である。 図10は、微小ダイポールによる電磁界を表した図である。 図11は、インピーダンス整合部や共振部に分布定数回路を用いた高周波結合器の構成例を示した図である。 図12は、スタブ103に定在波が発生している様子を示した図である。 図13は、インピーダンス整合部を集中定数回路及び分布定数回路でそれぞれ構成した場合の高周波結合器の周波数特性の比較を示した図である。 図14は、集中定数回路でインピーダンス整合部を構成した高周波結合器を示した図である。 図15は、分布定数回路でインピーダンス整合部を構成した高周波結合器を示した図である。 図16Aは、結合用電極の中心に高周波伝送線路を接続した様子を示した図である。 図16Bは、結合用電極の中心からオフセットのある位置に高周波伝送線路を接続し、結語用電極内に不均等な電流が流れる様子を示した図である。 図17は、アンテナ素子の先端に金属を取り付けて静電容量を持たせ、アンテナの高さを短縮させる「容量装荷型」のアンテナの構成例を示した図である。 図18は、回路中に進行する波と逆方向に反射する波が同時に存在して定在波が発生する様子を示した図である。 図19は、入力端に負荷抵抗が接続された高周波結合器の等価回路の構成を示した図である。 図20は、送受信回路部からの信号線が切り替えスイッチを介して高周波結合器又は負荷抵抗のいずれかに択一的に接続される高周波結合器の構成例を示した図である。 図21は、送受信回路部からの信号線が高周波結合器に接続される入力端が、切り替えスイッチを介して負荷抵抗に接続される高周波結合器の構成例を示した図である。 図22は、図11に示した高周波結合器をプリント基板上で複数配置した様子を示した図である。 図23は、図11に示した高周波結合器をプリント基板上で複数配置した様子を示した図である。 図24は、図22に示した高周波結合器に負荷抵抗を接続したときの等価回路を示した図である。 図25は、図23に示した高周波結合器に負荷抵抗を接続したときの等価回路を示した図である。 図26は、図1に示した高周波結合器を利用した通信システムを電力伝送に応用したときの構成例を示した図である。 図27は、図1に示した高周波結合器を利用した通信システムを電力伝送に応用した他の構成例を示した図である。
符号の説明
101…プリント基板
102…グランド
103…スタブ
104…信号線
105…送受信回路
106…スルーホール
107…金属線
108…結合用電極
109…スペーサ
110…スルーホール
111、112…マイクロストリップライン又はコプレーナ導波路

Claims (11)

  1. データを伝送する高周波信号の処理を行なう通信回路部と、
    超近距離を隔てて対向する通信相手と電界結合するための高周波結合器とを備え、
    前記高周波結合器は、結合用電極と、互いの結合用電極間における電気的結合を強くするため共振部と、前記通信回路部との入力端に接続された負荷抵抗を備え、
    通信相手側の高周波結合器との間における静電界若しくは誘導電界の電界結合により前記の高周波信号を伝送する、
    ことを特徴とする通信装置。
  2. 前記の高周波信号は、超広帯域を使用するUWB信号である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
  3. 前記共振部は、通信相手の高周波結合器との間において所望の高周波帯域を通過するバンドパス・フィルタを構成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
  4. 前記共振部は分布定数回路で構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
  5. 前記負荷抵抗を接続し又は切り離すための切り替えスイッチをさらに備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
  6. 前記切り替えスイッチは、前記高周波結合器又は前記負荷抵抗のいずれかを択一的に前記通信回路部と接続する、
    ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
  7. 前記切り替えスイッチは、前記高周波結合器の入力端に前記負荷抵抗を接続し又は切り離す、
    ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
  8. 通信相手の高周波結合器が近接した位置にあるかどうかに応じて前記切り替えスイッチを作動させる制御手段をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
  9. 前記通信回路部には複数の高周波結合器がシリアル状に接続され、
    前記負荷抵抗は末端に接続された高周波結合器の入力端に接続される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
  10. 前記通信回路部には複数の高周波結合器がパラレル状に接続され、
    前記負荷抵抗は各高周波結合器への分岐点に接続される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
  11. 前記高周波結合器間により伝送された前記高周波信号を整流し、電力を生成する電力生成手段をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
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