JP2008309524A - コンクリート内部の鉄筋腐食度測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】測定が適切に行なわれているかどうかを測定途中に確認できる鉄筋腐食度測定方法を提供する。
【解決手段】対極20の設置位置が適切である場合(鉄筋12の直上に対極20が設置されている場合)、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡は半円形状となる。一方、対極20の設置位置が不適切である場合(鉄筋12の直上からずれた位置に対極20が設置されている場合)には、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡が半円形状を描かない。したがって、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をその算出の度にコール・コールプロット図として表示装置上に描画していけば、得られた軌跡が半円形状を描くかどうかを確認することによって測定が適切に行なわれているかどうかを判断することが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】対極20の設置位置が適切である場合(鉄筋12の直上に対極20が設置されている場合)、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡は半円形状となる。一方、対極20の設置位置が不適切である場合(鉄筋12の直上からずれた位置に対極20が設置されている場合)には、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡が半円形状を描かない。したがって、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をその算出の度にコール・コールプロット図として表示装置上に描画していけば、得られた軌跡が半円形状を描くかどうかを確認することによって測定が適切に行なわれているかどうかを判断することが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、交流インピーダンス法を利用した鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食度測定方法の改良に関する。
鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食度を判定するために、交流インピーダンス法を利用して鉄筋腐食度を測定することが一般に行なわれている(特許文献1)。
この交流インピーダンス法を利用した従来の鉄筋腐食度測定方法は、コンクリート内部に埋設されている鉄筋とコンクリート母材の表面に設けた対極との間に周波数を変えながら交流電圧を印加し、鉄筋と対極との間に形成される等価回路の応答特性(具体的には、鉄筋と対極との間に流れる電流およびその位相角)を測定するというものである。なお、測定により得られた位相角の大小を解析すれば、鉄筋の腐食度を判定することができる。
交流インピーダンス法を利用した従来の鉄筋腐食度測定方法において或る測定点における位相角を求めるためには、極めて広い周波数領域(例えば、1mHzから10kHzの周波数領域)の中から多数(20〜30波程度)の周波数を選択し、これら選択した複数の周波数の全てについてインピーダンスを求めておき、得られたインピーダンスに基づいてコール・コールプロット図を作成する必要がある。したがって、判定結果を得るまでには、非常に膨大な作業時間を必要としていた。
特開2004−177124号公報
交流インピーダンス法を利用した鉄筋腐食度の測定において測定を精度良く行なうためには、測定を行なう際に対極を鉄筋の直上に設置する必要がある。
ところが、鉄筋はコンクリート母材の内部に埋設されているため、対極が鉄筋の直上に正しく設置されているかどうかを目視で確認することはできない。
そのため、従来では、測定結果である位相角の値が異常値を示すかどうかを判断することによって測定が適切に行なわれていたかどうかを事後的に判断していたのであるが、上述したように、判定結果を得るまでには膨大な時間を必要とするため、測定が正しく行なわれていなかったことが判明した場合には膨大な時間をかけて測定をやりなおさなければならず、時間効率が非常に悪いという問題があった。
それゆえに、本願発明の目的は、測定が適切に行なわれているかどうかを測定途中に確認できる鉄筋腐食度測定方法を提供することである。
請求項1に記載した発明は、「コンクリート母材14中に埋設されている鉄筋12を作用電極とし、計測点におけるコンクリート母材14の表面に対極20を設置し、鉄筋12と対極20との間に二種以上の周波数の交流電圧を印加することによって鉄筋12の腐食度を測定する鉄筋腐食度の測定方法において、印加電圧Vと、鉄筋12と対極20との間に流れる電流Iの大きさと、印加電圧Vに対する位相角φとに基づいて鉄筋12と対極20との間のインピーダンスZを周波数毎に算出し、周波数毎に算出されたインピーダンスZを、その算出の都度、コール・コールプロット図34として表示装置30bに表示させるようにした」ことを特徴とするコンクリート内部の鉄筋腐食測定方法である。
本発明は、「対極20の設置位置と、測定により得られるインピーダンスZをコール・コールプロット図に表わしたときの軌跡との間に相関関係がある」という新規な発見に基づいてなされたものである。
つまり、対極20の設置位置が適切である場合(鉄筋12の直上に対極20が設置されている場合)、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡は半円形状となる。一方、対極20の設置位置が不適切である場合(鉄筋12の直上からずれた位置に対極20が設置されている場合)には、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡が半円形状を描かず歪な形となる。
したがって、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をその算出の度にコール・コールプロット図34として表示装置30b上に順次描画していけば、得られる軌跡が半円形状を描くかどうかを確認することによって測定が適切に行なわれているかどうかを判断することが可能となる。
この発明では、測定が適切に行なわれているかどうかを視覚的に確認しながら測定することが可能となる。したがって、表示装置に順次描かれるコール・コールプロット図を見て測定が適切に行われていないと判断できるような場合には、すぐに測定を終了して再測定に取りかかることができ、再測定までに要する時間を大幅に短縮できる。
本発明が適用された「鉄筋腐食度の測定方法」は、図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物10を構成する鉄筋12の腐食の程度を交流インピーダンス法を利用して測定する方法の改良に関するものである。
鉄筋コンクリート構造物10の内部には、図1に示すように、複数の鉄筋12が互いに導通するように縦横に配設され、かつ、結束されており、これらの鉄筋12がコンクリート母材14中にほぼ一定の深さで埋設されている。
コンクリート母材14中には水分子が存在しているため、鉄筋12の表面では、酸化還元反応が進行する。つまり、鉄筋12からコンクリート母材14に向かって鉄イオンが移動し、鉄筋12中には電子が残留することによって鉄筋12の腐食が徐々に進行するのである。
このようにして鉄筋12とコンクリート母材14との界面に腐食が生じると、鉄筋12から飛び出した鉄イオンと電子とが界面において対峙した形態をとり、図2に示すような抵抗16とコンデンサ18との並列回路、すなわち電気二重層等価回路aが界面に構成される。このような電気二重層等価回路aを構成する部分は、一般に「電気二重層部」と称される。
また、図1に示すように、鉄筋12を作用電極として、計測点におけるコンクリート母材14の表面に対極20を設置すると、鉄筋コンクリート構造物10においては、鉄筋12とコンクリート母材14との界面だけでなく、コンクリート母材14中や、コンクリート母材14と対極20との界面にも電気二重層等価回路a(a1〜a3)が構成されることになる。したがって、計測系の全体では、図3に示すように、3つの電気二重層等価回路a(a1〜a3)が直列に接続された等価回路Aが構成されることになる。
次に、その測定方法について説明する。まず、或る測定点において、対極20と作用電極となる鉄筋12との間に一定の交流電圧(数mHz〜数kHzという極めて広い周波数領域の間の20〜30程度(勿論、この数字に限定されるものではない。)の周波数が選択される)を印加し、それぞれの周波数において鉄筋12と対極20との間における全体のインピーダンスZ=X+jY(jは虚数単位)を測定装置(例えば、ロックインアンプがその一例として挙げられる)により測定する。
なお、コンクリート母材14中における鉄筋12の界面に生じる電気二重層部の静電容量C3は、1cm2当たり数十マイクロファラドといわれており、対極20とコンクリート母材14との間の静電容量C1やコンクリート母材14の静電容量C2に比べて十分大きい。そのため、大きな電気二重層部の静電容量C3に対して静電容量C1、C2を無視する事が出来、測定により得られるインピーダンスZの値を、鉄筋12とコンクリート母材14との界面における電気二重層部のインピーダンスの値として取り扱うことができる。
測定により得られたインピーダンスZ(上述したように、鉄筋12とコンクリート母材14との界面における電気二重層部のインピーダンスの値として取り扱うことができる。)のうち、実数部Xを横軸に、虚数部Yを縦軸にとり、或る測定点におけるインピーダンスZの各点(X,Y)を曲線で結んだコール・コールプロット図の模式図が図4である。
コール・コールプロット図の曲線は、鉄筋12とコンクリート母材14との界面において発生する並列接続された電荷移動抵抗R3とコンデンサC3の組、コンクリート母材14中において発生する並列接続された抵抗R2とコンデンサC2の組、コンクリート母材14と対極20との界面において発生する並列接続された抵抗R1とコンデンサC1の組毎に半円を繋いだ3つの山状態を示す(図4においては、左側から右側に行くほど低周波領域となる)。
なお、第1の半円部S1は電荷移動抵抗R1とコンデンサC1の組であり、第2の半円部S2は電荷移動抵抗R2とコンデンサC2の組であり、第3の半円部S3が電荷移動抵抗R3とコンデンサC3の組である。
こうして得られたコール・コールプロット図を参照し、原点(0,0)から第3の半円部S3上の測定点(X、Y)を結ぶ直線と、X軸とが成す角度(これが位相角φである。)を求める。
位相角φは、抵抗値R1、R2の影響を受けるものの電気二重層部の静電容量C3の大小に依存しているので、その値が小さくなるほど、鉄筋12の腐食が進行していないことを示す。換言すれば、或る測定点において、適当な低周波数fにおける位相角φを測定し、基準となる腐食が生じていない鉄筋の位相角φと比較することで鉄筋12の状態を推測する事が出来るようになる。
なお、これまでの経験から基準となる腐食を生じていない鉄筋12の位相角φは5°〜8°であった。位相角φがこれ以上である場合、鉄筋12に腐食が発生しているか発生し得る状態にある事を示している。
次に、腐食度測定装置22について説明する。腐食度測定装置22は、図1に示すように、対極20および照合電極24と協働して腐食測定システム26を構成するものであり、アンプ部28とパソコン部30とによって構成されている。
アンプ部28は、鉄筋12と対極20との間に所定の交流電圧を付与するとともに、インピーダンスZの計測に必要な各種信号を取得するものであり、このアンプ部28には、図3に示した電流計32が組み込まれている。そして、アンプ部28の2つの出力端子に鉄筋12および対極20が接続され、照合端子(図示省略)に自然電位を取得するための照合電極24が接続されている。
パソコン部30は、各種演算を実行する演算装置と、制御または測定に必要な種々のデータを入力する入力装置(キーボードまたはマウス等)30aと、データを記憶する記憶装置(ハードディスク等)と、データを表示するための表示装置(液晶ディスプレイ等)30bとを備えている。そして、腐食測定の際には、印加電圧V、計測周波数、検波数、電流レンジ等の設定データが入力装置30aから入力され、これらの設定データに基づいて、アンプ部28の出力が制御される。また、演算装置では、印加電圧Vに対応する電流IおよびインピーダンスZが算出され、記憶装置では、各周波数における生波形データ、電流値(実効値)およびインピーダンスZ等が記憶され、表示装置30bでは、交流インピーダンスZの軌跡がコール・コールプロット図34上に描画される。
ここで重要な点は、演算装置において周波数毎のインピーダンスZが算出されると、その算出の都度、インピーダンスZの値がコール・コールプロット図34として表示装置30bに順次描画されることである。なお、図5は、測定点P1〜P3におけるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図34として表示装置30bに描画した状態を示した図である。
対極20の設置位置が適切である場合(鉄筋12の直上に対極20が設置されている場合)、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡は半円形状となる(図5のP1、P2を参照)。
これに対し、対極20の設置位置が不適切である場合(鉄筋12の直上からずれた位置に対極20が設置されている場合)には、周波数毎に算出されるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図に表したときの軌跡が半円形状を描かない(図5のP3を参照)。
このように、測定結果であるインピーダンスZの値をコール・コールプロット図34に表わしたときの軌跡を表示装置30b上で確認することにより、現在行われている測定が適切に行なわれているか否かを判断することができるのである。
なお、表示装置30bにコール・コールプロット図34を表示する際、基準となるインピーダンスの軌跡(図5の二点鎖線を参照)を同時に表示させておけば、上記判断を容易く行なうことが可能となる。
以上のようにして判断した結果、測定が適切に行なわれていないと判断した場合には、直ちに測定を終了して再測定に取りかかることが可能となるので、再測定までに要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
なお、本願発明は、その前提として交流インピーダンス法を利用さえしていれば、他の統計的手法による腐食度測定法にも適用が可能である。
たとえば、特開2007−17405号のように静電容量に基づく統計的手法によって鉄筋の腐食度を評価するような場合であっても、その前提として交流インピーダンス法を利用して鉄筋の腐食度を測定するものであれば適用が可能である。
10…鉄筋コンクリート構造物
12…鉄筋
14…コンクリート母材
16…抵抗
18…コンデンサ
20…対極
22…腐食度測定装置
22a…アンプ部
22b…パソコン部
24…照合電極
26…腐食度測定システム
28…電流計
12…鉄筋
14…コンクリート母材
16…抵抗
18…コンデンサ
20…対極
22…腐食度測定装置
22a…アンプ部
22b…パソコン部
24…照合電極
26…腐食度測定システム
28…電流計
Claims (1)
- コンクリート母材中に埋設されている鉄筋を作用電極とし、計測点におけるコンクリート母材の表面に対極を設置し、前記鉄筋と前記対極との間に二種以上の周波数の交流電圧を印加することによって前記鉄筋の腐食度を測定する鉄筋腐食度の測定方法において、
前記印加電圧と、前記鉄筋と前記対極との間に流れる電流の大きさと、前記印加電圧に対する位相角とに基づいて前記鉄筋と前記対極との間のインピーダンスを周波数毎に算出し、
周波数毎に算出された前記インピーダンスを、その算出の都度、コール・コールプロット図として表示装置に表示させるようにしたことを特徴とするコンクリート内部の鉄筋腐食度測定方法。
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JP2007155287A JP2008309524A (ja) | 2007-06-12 | 2007-06-12 | コンクリート内部の鉄筋腐食度測定方法 |
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JP2007155287A Pending JP2008309524A (ja) | 2007-06-12 | 2007-06-12 | コンクリート内部の鉄筋腐食度測定方法 |
Country Status (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101055224B1 (ko) * | 2009-07-27 | 2011-08-11 | 대구가톨릭대학교산학협력단 | 콘크리트 구조물의 전기비저항 추정을 통한 비파괴 부식진단시스템 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05340907A (ja) * | 1990-12-14 | 1993-12-24 | Shikoku Sogo Kenkyusho:Kk | コンクリート中の鉄筋等の腐食診断方法 |
JP2004177124A (ja) * | 2002-11-22 | 2004-06-24 | Kansai Electric Power Co Inc:The | コンクリート内部の鉄筋腐食計測方法 |
JP2007017405A (ja) * | 2005-07-11 | 2007-01-25 | Kansai Electric Power Co Inc:The | 鉄筋腐食度の評価方法 |
-
2007
- 2007-06-12 JP JP2007155287A patent/JP2008309524A/ja active Pending
Patent Citations (3)
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KR101055224B1 (ko) * | 2009-07-27 | 2011-08-11 | 대구가톨릭대학교산학협력단 | 콘크리트 구조물의 전기비저항 추정을 통한 비파괴 부식진단시스템 |
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