JP2008309161A - 火花点火式内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】膨張比を20以上にすることにより良好な燃費を確保する。
【解決手段】機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構Aと、実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bとを具備する。機関低負荷運転時に膨張比が20以上となるように機械圧縮比を最大にすると共に機関低負荷運転時における実圧縮比を機関高負荷運転時とほぼ同じ実圧縮比とする。
【選択図】図1

Description

本発明は火花点火式内燃機関に関する。
機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備し、機関中負荷運転時および機関高負荷運転時には過給機による過給作用を行い、かつこれら機関中高負荷運転時においては実圧縮比を一定に保持した状態で機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比を増大すると共に吸気弁の閉弁時期を遅くするようにした火花点火式内燃機関が公知である(例えば特許文献1を参照)。
ところでこの内燃機関では機関低負荷運転時にも機械圧縮比が高くされ、吸気弁の閉弁時期が遅くされるが機械圧縮比が機関中負荷運転時に比べて高いか低いかが不明であり、吸気弁の閉弁時期が機関中負荷運転時に比べて遅いか早いかが不明である。また、この内燃機関では機関低負荷運転時における実圧縮比が機関中高負荷運転時に比べて高いか低いかも不明である。
特開2004−218522号公報
さて、一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って車両走行時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関低負荷運転時における熱効率を向上させることが必要となる。ところで内燃機関では膨張比が大きくなればなるほど膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、従って膨張比が大きくなるほど熱効率が向上する。一方、機械圧縮比を高くすると膨張比が高くなる。従って機関運転時における熱効率を向上させるためには機関低負荷運転時における機械圧縮比を可能な限り高くして、機関低負荷運転時に最大の膨張比を得られるようにすることが好ましいことになる。
しかしながら上述の公知の内燃機関では機関低負荷運転時に最大の膨張比が得られるように機械圧縮比を可能な限り高くしているか否かが不明である。また、機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備した内燃機関では、通常機械圧縮比を増大させたときには実圧縮比も増大させるようにしている。というのは通常、圧縮比を増大させるために機械圧縮比を増大させているのであり、このとき実圧縮比が増大しなければ意味がないと考えているからである。
しかしながら実圧縮比が増大するとノッキングが発生するので実圧縮比はそれほど高くすることができない。従って従来ではたとえ機関低負荷運転時に機械圧縮比を高めたとしても実圧縮比をそれほど高くすることができないために機械圧縮比がそれほど高くされることはない。その結果、従来では機関低負荷運転時に十分に高い膨張比が得られておらず、斯くして複雑な構造を有する割には良好な燃費が得られないという問題がある。
上記問題点を解決するために本発明によれば、機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構とを具備し、機関低負荷運転時に最大の膨張比が得られるように機械圧縮比を最大にすると共に機関低負荷運転時における実圧縮比を機関中高負荷運転時とほぼ同じ実圧縮比としている。
更に本発明によれば、機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備し、機関低負荷運転時に最大の膨張比が得られるように機械圧縮比を最大にすると共に燃焼室内に供給される吸入空気量が主に吸気弁の閉弁時期を変えることによって制御される。
車両走行時における熱効率が向上せしめられ、良好な燃費が得られる。
図1に火花点火式内燃機関の側面断面図を示す。
図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火栓、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11には夫々対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒コンバータ20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
一方、図1に示される実施例ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示される実施例ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。吸入空気量検出器18の出力信号および空燃比センサ21の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火栓6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50が形成されており、各突出部50内には夫々断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔てて夫々対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52が形成されており、これらの各突出部52内にも夫々断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
図2に示されるように一対のカムシャフト54、55が設けられており、各カムシャフト54、55上には一つおきに各カム挿入孔51内に回転可能に挿入される円形カム56が固定されている。これらの円形カム56は各カムシャフト54、55の回転軸線と共軸をなす。一方、各円形カム56間には図3においてハッチングで示すように各カムシャフト54、55の回転軸線に対して偏心配置された偏心軸57が延びており、この偏心軸57上に別の円形カム58が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示されるようにこれら円形カム58は各円形カム56間に配置されており、これら円形カム58は対応する各カム挿入孔53内に回転可能に挿入されている。
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54、55上に固定された円形カム56を図3(A)において実線の矢印で示される如く互いに反対方向に回転させると偏心軸57が下方中央に向けて移動するために円形カム58がカム挿入孔53内において図3(A)の破線の矢印に示すように円形カム56とは反対方向に回転し、図3(B)に示されるように偏心軸57が下方中央まで移動すると円形カム58の中心が偏心軸57の下方へ移動する。
図3(A)と図3(B)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は円形カム56の中心と円形カム58の中心との距離によって定まり、円形カム56の中心と円形カム58の中心との距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、従って各カムシャフト54、55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
図2に示されるように各カムシャフト54、55を夫々反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸には夫々螺旋方向が逆向きの一対のウォームギア61、62が取付けられており、これらウォームギア61、62と噛合する歯車63、64が夫々各カムシャフト54、55の端部に固定されている。この実施例では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。なお、図1から図3に示される可変圧縮比機構Aは一例を示すものであっていかなる形式の可変圧縮比機構でも用いることができる。
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転しかつ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側には夫々進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
各油圧室76、77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁85によって行われる。この作動油供給制御弁85は各油圧室76、77に夫々連結された油圧ポート78、79と、油圧ポンプ80から吐出された作動油の供給ポート81と、一対のドレインポート82、83と、各ポート78、79、81、82、83間の連通遮断制御を行うスプール弁84とを具備している。
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁84が右方に移動せしめられ、供給ポート81から供給された作動油が油圧ポート78を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁84が左方に移動せしめられ、供給ポート81から供給された作動油が油圧ポート79を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート82から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁84が図4に示される中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。従って可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。従って吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、従って吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
図1および図4に示される可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。また、本発明では実際の圧縮作用の開始時期を変更するために可変バルブタイミング機構Bを用いているので、可変バルブタイミング機構ではなくても実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構であればいかなる形式の実圧縮作用開始時期変更機構も用いることができる。
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A)、(B)、(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A)、(B)、(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示される例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。即ち、図6(B)に示されるように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。従って実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示される例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示される例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
次に図7および図8を参照しつつ本発明において最も基本となっている特徴について説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ圧縮下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A)、(B)、(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。即ち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、即ち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、即ち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。従って通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
一方、このような状況下で本発明者は機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分して理論熱効率を高めることについて検討し、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことを見い出したのである。即ち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。従って膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、従って実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示される通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示される場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
前述したように一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って車両走行時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関低負荷運転時における熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示される超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、従ってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。従って本発明では機関低負荷運転時には図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。これが本発明が基本としている特徴である。
次に図9を参照しつつ運転制御全般について説明する。
図9には機関負荷に応じた機械圧縮比、膨張比、吸気弁7の閉弁時期、実圧縮比、吸入空気量、スロットル弁17の開度およびポンピング損失の各変化が示されている。なお、本発明による実施例では触媒コンバータ20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC、COおよびNOXを同時に低減しうるように通常燃焼室5内における平均空燃比は空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている。
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。従って図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開又はほぼ全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図9に示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って機械圧縮比が増大され、従って膨張比も増大される。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9において実線で示される如く機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。なお、このときにもスロットル弁17は全開又はほぼ全開状態に保持されており、従って燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。このときにもポンピング損失は零となる。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。即ち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。従ってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機械圧縮比が燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。従って機関低負荷運転時には機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると本発明では機関低負荷運転時に最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。また、このとき実圧縮比は機関中高負荷運転時とほぼ同じ実圧縮比に維持される。
一方、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は機関負荷が低くなるにつれて燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期まで遅らされ、吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L2よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御しえないので他の何らかの方法によって吸入空気量を制御する必要がある。
図9に示される実施例ではこのとき、即ち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L2よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御される。ただし、スロットル弁17による吸入空気量の制御が行われると図9に示されるようにポンピング損失が増大する。
なお、このようなポンピング損失が発生しないように吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L2よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17を全開又はほぼ全開に保持した状態で機関負荷が低くなるほど空燃比を大きくすることもできる。このときには燃料噴射弁13を燃焼室5内に配置して成層燃焼させることが好ましい。
図9に示されるように機関低回転時には機関負荷にかかわらずに実圧縮比がほぼ一定に保持される。このときの実圧縮比は機関中高負荷運転時の実圧縮比に対してほぼ±10パーセントの範囲内とされ、好ましくは±5パーセントの範囲内とされる。なお、本発明による実施例では機関低回転時の実圧縮比はほぼ10±1、即ち、9から11の間とされる。ただし、機関回転数が高くなると燃焼室5内の混合気に乱れが発生するためにノッキングが発生しずらくなり、従って本発明による実施例では機関回転数が高くなるほど実圧縮比が高くされる。
一方、前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。従って本発明では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
また、図9に示される例では機械圧縮比は機関負荷に応じて連続的に変化せしめられている。しかしながら機械圧縮比は機関負荷に応じて段階的に変化させることもできる。
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。従って、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施例では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L2まで圧縮下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。
図10に運転制御ルーチンを示す。図10を参照するとまず初めにステップ100において図11(A)に示すマップから目標実圧縮比が算出される。図11(A)に示されるようにこの目標実圧縮比は機関回転数Nが高くなるほど高くなる。次いでステップ101では図11(B)に示すマップから吸気弁7の閉弁時期ICが算出される。即ち、要求吸入空気量を燃焼室5内に供給するのに必要な吸気弁7の閉弁時期ICが機関負荷Lおよび機関回転数Nの関数として図11(B)に示すようなマップの形で予めROM32内に記憶されており、このマップから吸気弁7の閉弁時期ICが算出される。
更に、実圧縮比を目標実圧縮比とするのに必要な機械圧縮比CRが機関負荷Lおよび機関回転数Nの関数として図11(B)に示すようなマップの形で予めROM32内に記憶されている。ステップ102ではこのマップから機械圧縮比CRが算出される。次いでステップ103では機械圧縮比が機械圧縮比CRとなるように可変圧縮比機構Aが制御され、吸気弁7の閉弁時期が閉弁時期ICとなるように可変バルブタイミング機構Bが制御される。
火花点火式内燃機関の全体図である。 可変圧縮比機構の分解斜視図である。 図解的に表した内燃機関の側面断面図である。 可変バルブタイミング機構を示す図である。 吸気弁および排気弁のリフト量を示す図である。 機械圧縮比、実圧縮比および膨張比を説明するための図である。 理論熱効率と膨張比との関係を示す図である。 通常のサイクルおよび超高膨張比サイクルを説明するための図である。 機関負荷に応じた機械圧縮比等の変化を示す図である。 運転制御を行うためのフローチャートである。 目標実圧縮比等を示す図である。
符号の説明
1 クランクケース
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 燃焼室
7 吸気弁
70 吸気弁駆動用カムシャフト
A 可変圧縮比機構
B 可変バルブタイミング機構

Claims (28)

  1. 機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構とを具備し、機関低負荷運転時に最大の膨張比が得られるように機械圧縮比を最大にすると共に機関低負荷運転時における実圧縮比を機関中高負荷運転時とほぼ同じ実圧縮比とした火花点火式内燃機関。
  2. 上記最大の膨張比が20以上である請求項1に記載の火花点火式内燃機関。
  3. 機関低回転時には機関負荷にかかわらずに上記実圧縮比が機関中高負荷運転時の実圧縮比に対してほぼ±10%の範囲内とされる請求項1に記載の火花点火式内燃機関。
  4. 機関回転数が高くなるほど上記実圧縮比が高くされる請求項3に記載の火花点火式内燃機関。
  5. 上記実圧縮作用開始時期変更機構が吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる請求項1に記載の火花点火式内燃機関。
  6. 燃焼室内に供給される吸入空気量が吸気弁の閉弁時期を変えることによって制御される請求項5に記載の火花点火式内燃機関。
  7. 吸気弁の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期まで圧縮下死点から離れる方向に移動せしめられる請求項6に記載の火花点火式内燃機関。
  8. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の高い領域では燃焼室内に供給される吸入空気量が機関吸気通路内に配置されたスロットル弁によらずに吸気弁の閉弁時期を変えることによって制御される請求項7に記載の火花点火式内燃機関。
  9. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の高い領域ではスロットル弁が全開状態に保持される請求項8に記載の火花点火式内燃機関。
  10. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では機関吸気通路内に配置されたスロットル弁によって燃焼室内に供給される吸入空気量が制御される請求項7に記載の火花点火式内燃機関。
  11. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では負荷が低くなるほど空燃比が大きくされる請求項7に記載の火花点火式内燃機関。
  12. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に保持される請求項7に記載の火花点火式内燃機関。
  13. 上記機械圧縮比は機関負荷が低くなるにつれて限界機械圧縮比まで増大せしめられる請求項1に記載の火花点火式内燃機関。
  14. 上記機械圧縮比が上記限界機械圧縮比に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が上記限界機械圧縮比に保持される請求項13に記載の火花点火式内燃機関。
  15. 機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備し、機関低負荷運転時に最大の膨張比が得られるように機械圧縮比を最大にすると共に燃焼室内に供給される吸入空気量が主に吸気弁の閉弁時期を変えることによって制御される火花点火式内燃機関。
  16. 吸入空気量が主に吸気弁の閉弁時期を変えることによって制御されているときにはスロットル弁がほぼ全開状態に保持される請求項15に記載の火花点火式内燃機関。
  17. 機関低負荷運転時における実圧縮比を機関中高負荷運転時とほぼ同じ実圧縮比とした請求項15に記載の火花点火式内燃機関。
  18. 上記最大の膨張比が20以上である請求項15に記載の火花点火式内燃機関。
  19. 機関低回転時には機関負荷にかかわらずに上記実圧縮比が機関中高負荷運転時の実圧縮比に対してほぼ±10%の範囲内とされる請求項15に記載の火花点火式内燃機関。
  20. 機関回転数が高くなるほど上記実圧縮比が高くされる請求項19に記載の火花点火式内燃機関。
  21. 吸気弁の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期まで圧縮下死点から離れる方向に移動せしめられる請求項15に記載の火花点火式内燃機関。
  22. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の高い領域では燃焼室内に供給される吸入空気量が機関吸気通路内に配置されたスロットル弁によらずに吸気弁の閉弁時期を変えることによって制御される請求項21に記載の火花点火式内燃機関。
  23. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の高い領域ではスロットル弁が全開状態に保持される請求項22に記載の火花点火式内燃機関。
  24. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では機関吸気通路内に配置されたスロットル弁によって燃焼室内に供給される吸入空気量が制御される請求項21に記載の火花点火式内燃機関。
  25. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では負荷が低くなるほど空燃比が大きくされる請求項21に記載の火花点火式内燃機関。
  26. 吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では吸気弁の閉弁時期が上記限界閉弁時期に保持される請求項21に記載の火花点火式内燃機関。
  27. 上記機械圧縮比は機関負荷が低くなるにつれて限界機械圧縮比まで増大せしめられる請求項15に記載の火花点火式内燃機関。
  28. 上記機械圧縮比が上記限界機械圧縮比に達したときの機関負荷よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が上記限界機械圧縮比に保持される請求項27に記載の火花点火式内燃機関。
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