JP2008307728A - 三次元造形装置、および三次元造形方法 - Google Patents

三次元造形装置、および三次元造形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】三次元造形物の表面に現れる段差が目立たなくなる程度に、十分に薄い粉体層を形成可能とする。
【解決手段】粉体層に結合液を吐出して断面部材を形成し、断面部材を積層して三次元物体を造形する。粉体層を形成するために、先ず転写面上に帯電した粉体膜を形成し、粉体層の積層面側は、粉体膜とは逆極性に帯電させる。そして静電気力で転写面上の粉体膜を積層面上に転写して新たな粉体層を積層する。転写面は比較的固いので、転写面上に極めて薄い粉体膜を形成することが可能であり、粉体膜を静電気力で転写してやれば、積層面上に極めて薄い粉体膜を安定して形成することができる。このようにして形成した薄い粉体層に結合液を供給して断面部材を形成し、断面部材を積層して三次元物体を造形すれば、粉体層の厚さに相当する段差が目立たない三次元造形物を得ることができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、三次元物体を造形する技術に関し、詳しくは、結合液を吐出して粉末材料を結合させることによって、三次元物体を造形する技術に関する。
粉体を結合液で固めながら、三次元物体を造形する技術が知られている。この技術では、次のような操作を繰り返すことによって三次元物体を造形する。先ず、粉体を均一な厚さで薄く敷き詰めて粉体層を形成し、この粉体層の所望部分に結合液を吐出することによって粉体同士を結合させる。この結果、粉体層の中で、結合液が吐出された部分だけが結合して、薄い板状の部材が形成される。本明細書中では、この薄い板状の部材を「断面部材」と呼ぶことにする。次いで、その粉体層の上に更に粉体層を薄く形成し、所望部分に結合液を吐出する。その結果、新たに形成された粉体層の結合液が吐出された部分にも、新たな断面部材が形成される。このとき、粉体層上に吐出した結合液が染み込んで、先に形成された断面部材に到達するので、新たに形成された断面部材は先に形成された断面部材にも結合される。このような操作を繰り返して、薄い板状の断面部材を一層ずつ積層することによって、三次元物体を造形することができる。
このような三次元造形技術では、粉体層の厚みに相当する断面部材を積層して三次元物体を造形している関係上、得られた舞台の表面には粉体層の厚みに相当する段差が発生する。このため、粉体層はできるだけ薄く、尚且つ、均一な厚さで形成することが望ましい。薄く均一な厚さの粉体層を形成する技術としては、例えば、一定量ずつ粉体を供給しながら、その粉体を伸展ローラで伸ばすことによって粉体層を形成する技術が提案されている(特許文献1)。かかる提案の技術では、伸展ローラを進行方向に対して逆回転させることによって余分な粉体を進行方向に押し戻しながら、伸展ローラの前進に伴って適量ずつ粉体を伸展することにより、一定厚さの粉体層を形成することが可能となっている。
特開2001−334581号公報
しかし、提案されている技術では、粉体層の厚さがあまりに薄くなると、安定して粉体層を形成することができなくなるという問題があった。これは、伸展ローラを用いた方法では、ローラの下面側で一定厚さの粉体層を形成すると同時に、余分な粉体は伸展ローラの回転によって押し戻しているため、粉体層の厚さがあまりに薄くなると、余分な粉体を押し戻す際に必要な粉体も押し戻してしまうことがあるためと考えられる。この結果として、得られる三次元造形物の表面には依然として粉体層の厚さに相当する段差が目立ってしまうという問題があった。
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、十分に薄い厚さの粉体層を安定して形成可能として、粉体層の厚さに起因して表面に現れる段差の目立たない三次元造形物を形成することが可能な三次元造形技術の提供を目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の三次元造形装置は次の構成を採用した。すなわち、
粉体によって形成された粉体層に結合液を供給して、該結合液が供給された部分の粉体を結合させ、その粉体層の上に新たな粉体層を形成して結合液を供給する操作を繰り返すことにより、三次元物体を造形する三次元造形装置であって、
前記結合液によって粉体が結合していない部分の前記粉体層よりも少なくとも変形し難く形成された転写面上に、粉体を供給する粉体供給手段と、
前記供給された粉体が付着した前記転写面と、該転写面に対向させて設けられ、該転写面上に所定厚さ以上に付着した粉体の通過を規制する規制部材とを、該転写面の方向に沿って相対的に移動させることにより、帯電した粉体による該所望厚さの粉体膜を、該転写面上に形成する粉体膜形成手段と、
前記粉体層を積層しようとする表面たる積層面を、前記帯電した粉体の極性とは逆の極性に帯電させる積層面帯電手段と、
前記転写面上に形成された前記粉体膜を、静電気力によって前記積層面上に転写することにより、前記粉体層として積層する粉体層積層手段と
を備えることを要旨とする。
また、上記の三次元造形装置に対応する本発明の三次元造形方法は、
粉体によって形成された粉体層に結合液を供給して、該結合液が供給された部分の粉体を結合させ、その粉体層の上に新たな粉体層を形成して結合液を供給する操作を繰り返すことにより、三次元物体を造形する三次元造形方法であって、
前記結合液によって粉体が結合していない部分の前記粉体層よりも少なくとも変形し難く形成された転写面上に、粉体を供給する粉体供給工程と、
前記供給された粉体が付着した前記転写面と、該転写面に対向させて設けられ、該転写面上に所定厚さ以上に付着した粉体の通過を規制する規制部材とを、該転写面の方向に沿って相対的に移動させることにより、帯電した粉体による該所望厚さの粉体膜を、該転写面上に形成する粉体膜形成工程と、
前記粉体層を積層しようとする表面たる積層面を、前記帯電した粉体の極性とは逆の極性に帯電させる積層面帯電工程と、
前記転写面上に形成された前記粉体膜を、静電気力によって前記積層面上に転写することにより、前記粉体層として積層する粉体層積層工程と
を備えることを要旨とする。
かかる本発明の三次元造形装置および三次元造形方法においては、先ず初めに、転写面上に粉体による粉体膜を形成する。粉体膜を形成するに際しては、転写面に粉体を供給して粉体を付着させ、次いで、粉体が付着した転写面と規制部材とを、転写面の方向に沿って相対的に移動させる。規制部材は、転写面上に所定厚さ以上に付着した粉体が通過することを規制する機能を有しており、その結果、規制部材の部分を通過した転写面には、帯電した粉体による所定厚さの粉体膜が形成される。このとき、転写面はある程度に固く形成されていることが望ましいが、少なくとも、結合液によって粉体が結合していない部分の粉体層よりも変形し難いように、転写面の表面を形成しておけば、粉体層の上に形成する場合よりも薄い粉体膜を転写面上に形成することができる。また、転写面上に形成された粉体膜は種々の要因によって帯電させることができる。例えば、粉体膜を形成する際の摩擦によって帯電させることもできるし、あるいは、粉体が撹拌されるようにすることで、粉体膜を形成する前に帯電させておくこともできる。更には、粉体膜を形成した後に、粉体膜を構成する粉体を帯電させるようにしてもよい。一方、粉体層を積層しようとする表面(積層面)は、粉体膜が帯電している極性とは逆の極性に帯電させておく。そして、転写面上に形成した粉体膜を、静電気力によって積層面上に転写することによって、粉体層として積層する。
転写面は比較的固く形成されているので、転写面上に薄い粉体膜を形成することができる。そして、こうして形成した粉体膜を静電気力によって積層面上に転写してやれば、薄い粉体層を積層面上に積層することができる。その結果、この粉体層に結合液を供給して粉体層を結合していけば、粉体層の厚さに相当する段差が表面に目立たない三次元造形物を得ることが可能となる。
かかる本発明の三次元造形装置においては、規制部材によって粉体膜を形成する前に、あるいは粉体膜を形成する際に、粉体同士の摩擦によって粉体を帯電させることにより、転写面上に帯電した粉体膜を形成することとしても良い。
粉体同士の摩擦を利用すれば、特別な装置を用いなくても粉体を帯電させることが可能であり、転写面上に帯電した粉体膜を形成することが可能となる。このため、簡単な構成によって薄い粉体層を積層することが可能となり、延いては、三次元造形装置の構成を簡素なものとすることが可能となる。
あるいは、本発明の三次元造形装置においては、転写面上に粉体膜を形成した後に、粉体膜を帯電させることとしてもよい。
このように粉体膜を形成する部分と、粉体膜を帯電させる部分とを分けて構成しておけば、粉体膜を形成する動作と、粉体膜を帯電させる動作とを、それぞれ最適化することが可能となる。このため、転写面上に最適な粉体膜を形成するとともに、粉体膜を最適な状態に帯電させることが可能となり、延いては、極めて薄い粉体層であっても安定して積層することが可能となる。
また、上記の本発明の三次元造形装置においては、転写面の表面には、粉体の粒子の直径の1/2〜2倍程度のピッチで、凹凸を形成しておいてもよい。
こうすれば、転写面の表面で粉体の粒子をしっかりと保持することができるので、たとえ粉体膜の厚さが極めて薄い場合でも、転写面の表面から粉体が脱落することが無い。このため、転写面上に極めて薄い粉体膜を安定して形成することが可能となり、延いては、積層面上に極めて薄い粉体層を積層することが可能となる。尚、仮に凹凸のピッチが粉体粒子直径の半分以下であれば、粉体微粒子を凹凸にしっかりと保持することができず、また、凹凸のピッチが粉体粒子直径の3倍近くあった場合には、凹部に3つの粉体粒子が収まることになり、このとき真ん中の粉体粒子をしっかりと保持しておくことができなくなる。従って、転写面の表面に形成する凹凸のピッチは、粉体の粒子の平均直径の半分から2倍の範囲の大きさにしておけば、粉体をしっかりと保持しておくことが可能となる。
また、上述した本発明の三次元造形装置においては、次のようにして転写面上に粉体膜を形成しても良い。先ず、回転可能なローラの側表面に転写面を形成する。そして、この点斜面に粉体を供給し、ローラを回転させて、転写面の表面に付着した粉体を規制部材の位置を通過させることによって、転写面上に、所望厚さの粉体膜を形成することとしてもよい。
こうすれば、ローラを回転させることによって、転写面上に粉体膜を形成する動作と、転写面上の粉体膜を積層面に転写する動作とを、1つの動作で連続して実施することができる。このため、三次元造形装置の構造を簡素なものとするとともに、装置をコンパクトに構成することが可能となる。
また、上述した本発明の三次元造形装置においては、積層面上の所望の領域だけを帯電可能として、その上に、静電気力によって粉体膜を転写することとしてもよい。
こうすれば、積層面の帯電している領域だけに、転写面上に形成された粉体膜が静電気力によって転写されることになる。このため、積層面の所望の領域だけを帯電させておくことで、所望の領域にだけ粉体層を積層することができる。その結果、三次元造形物の最表面の所定の領域にだけ、1層分の粉体層を積層して凹凸を形成したり、あるいは、三次元造形物の内部に、異なる粉体で形成された二次元的あるいは三次元的な複雑な構造を作り込むことも可能となる。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.三次元造形装置の構成:
B.三次元物体の造形方法の概要:
C.本実施例における粉体層の積層方法:
D.変形例:
D−1.第1の変形例:
D−2.第2の変形例:
D−3.第3の変形例:
D−4.第4の変形例:
D−5.第5の変形例:
D−6.第6の変形例:
A.三次元造形装置の構成 :
図1は、本実施例の三次元造形装置100の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、三次元造形装置100は、大きな枠体から構成され内部に三次元物体が造形される造形部10と、造形部10内に粉体による粉体層を形成する粉体層形成部20と、粉体同士を結合させる結合液を粉体層に供給する結合液供給部30と、三次元造形装置100の全体の動作を制御するために各種の演算処理を行う演算処理部40などから構成されている。
演算処理部40は、造形しようとする三次元物体の形状データを記憶しておくとともに、三次元物体を複数の断面で層状に切断して、各層での断面データを生成する断面データ生成部42と、得られた断面データに従って造形部10や、粉体層形成部20、結合液供給部30の動作を制御する制御部44などから構成されている。制御部44は、断面データ生成部42から断面データを受け取ると、粉体層形成部20を駆動して造形部10内に粉体層を形成させ、結合液供給部30を駆動して結合液を断面データに従って粉体層に供給する。こうすることにより、造形部10内には、1層分の断面データに対応する断面形状の薄板状の部材(断面部材)が形成される。こうして1層分の断面部材が形成されたら、底面駆動部16を駆動して底面部14を少しだけ低下させる。次いで、断面データ生成部42から次の断面データを受け取って、断面部材を形成した粉体層の上に新たな粉体層を形成し、その上から結合液を供給することにより、新たな断面部材を形成する。このように制御部44は、断面データ生成部42から各層の断面データを受け取ると、造形部10や、粉体層形成部20、結合液供給部30を駆動することにより、1層ずつ断面部材を形成して積層していく。
尚、断面データ生成部42は、CPUやROM、RAM、ハードディスクなどが相互にデータをやり取り可能に構成された周知のコンピュータを用いて構成することができる。また、制御部44は、断面データを変換して、造形部10や粉体層形成部20、結合液供給部30への駆動信号を生成する専用のICチップを用いて構成することができる。もちろん、こうした変換をCPUやROM、RAMなどを用いて実行しても良い。この場合は、断面データ生成部42を構成するコンピュータに制御部44の機能を組み込んで、断面データ生成部42と制御部44とを一体に構成することも可能である。
造形部10は、上方から見ると矩形形状をした枠体12と、枠体12の底面を形成して上下方向に摺動可能な底面部14と、底面部14を上下方向に摺動させる底面駆動部16等から構成されており、枠体12と底面部14との間に形成された空間に三次元物体が造形される。また、底面駆動部16は制御部44からの制御によって、底面部14を正確に上下方向に移動させることが可能となっている。
粉体層形成部20は、粉体層を積層しようとする表面(積層面)を帯電させる積層面帯電部22や、積層面に粉体層を積層する粉体層積層部24などから構成されている。粉体層積層部24の内部には粉体が収納され、更に粉体層積層部24の下部には転写ローラ26が設けられており、転写ローラ26が回転することによって、積層面とは逆極性に帯電した粉体の薄い層(粉体膜)が、転写ローラ26の表面上に形成されるようになっている。また、積層面帯電部22、転写ローラ26、および粉体層積層部24は、造形部10に設けられた底面部14の一辺(図示した例ではY方向の辺)と、ほぼ同程度の長さを有している。
粉体層を形成する際には、先ず初めに、粉体層形成部20を図1の左端に移動させる。このとき、形成する粉体層の厚さに相当する分だけ、底面駆動部16を駆動して底面部14の位置を下方(マイナスのY方向)に下げておく。そして、今から粉体層を積層しようとする積層面を、積層面帯電部22で帯電させるとともに、転写ローラ26を所定方向(図1では時計周り方向)に回転させながら、粉体層形成部20を右方向(プラスのX方向)に移動させる。このとき、回転する転写ローラ26の表面と、積層面との相対的な速度差が所定値以内に収まるように、粉体層形成部20の移動速度を制御しておく。すると、転写ローラ26の表面に形成された粉体の薄い層(粉体膜)が、静電気力によって積層面上に転写され、新たな粉体層が形成される。本実施例の三次元造形装置100は、このようにして粉体層形成部20を移動させながら、転写ローラ26の表面上に形成した粉体膜を、静電気力によって積層面に転写することによって粉体層を積層していく。粉体層形成部20の詳細な構造および、粉体層を積層する様子については、後ほど詳しく説明する。
結合液供給部30は、粉体層に向けて結合液を供給する結合液供給ヘッド32と、結合液を収容しておく結合液収容部34などから構成されており、制御部44の制御の元で、粉体層形成部20とは独立して、X方向(図1の紙面上で左右方向)およびY方向(図1の紙面に垂直方向)に移動させることが可能となっている。
本実施例の結合液供給ヘッド32には、いわゆるピエゾ駆動方式の液滴吐出ヘッドが採用されている。ピエゾ駆動方式の液滴吐出ヘッドは、微細なノズル穴が設けられた圧力室を液体で満たしておき、ピエゾ素子を用いて圧力室の側壁を撓ませることによって、圧力室の容積減少分に相当する体積の液体を液滴として吐出することが可能である。本実施例の結合液供給部30では、結合液収容部34に収容された結合液を、結合液供給ヘッド32の圧力室に導いてピエゾ素子を駆動することにより、結合液を液滴状にして吐出することが可能となっている。
ここで結合液としては、モノマーと、モノマーが結合したオリゴマーとを主成分とする液体の樹脂材料が用いられている。また、結合液供給ヘッド32から液滴として吐出可能な程度の低粘度となるように、結合液のモノマーは比較低分子量のモノマーが選択されており、更に1つのオリゴマーに含まれるモノマーの分子数も数分子程度に調整されている。そして、結合液は、それ単独では安定であるため、結合液収容部34や結合液供給ヘッド32の内部で硬化することなく、液滴として吐出することができるが、重合開始剤に接触すると、モノマーが互いに重合してオリゴマーに成長し、またオリゴマー同士もところどころで重合して、比較的速やかに硬化して固体となる性質を有している。本実施例の三次元造形装置100では、粉体の表面に重合開始剤がコーティングされており、粉体層に結合液の液滴を供給すると、結合液が粉体層の内部に浸透するとともに、粉体表面の重合開始剤に接触して速やかに硬化する。このため、粉体層形成部20によって粉体層を形成した後、制御部44で制御しながら、粉体層の所望領域に結合液を吐出すると、結合液が吐出された部分の粉体同士を、硬化した結合液によって結合させることができる。
B.三次元物体の造形方法の概要 :
以上のような構成を有する本実施例の三次元造形装置100では、次のようにして三次元物体を造形する。先ず、造形しようとする物体の三次元形状データを予め記憶しておく。次いで、三次元物体を複数の断面で層状に切断して、各断面での断面データを生成する。
図2は、造形しようとする三次元物体の形状データから、各断面での断面データを生成する様子を概念的に示した説明図である。図2(a)は、三次元物体の形状データを概念的に表したものであり、図2(b)は、三次元物体を層状に切断して得られた断面データを概念的に表している。図2(a)に示されているように、造形しようとする三次元物体は、中央部が若干絞られた茶筒形状をしており、茶筒形状の上面および下面の中央には丸い大きな窓が形成されている。そして、茶筒形状の内部には、茶筒形状の内部を上下に仕切る仕切り板が設けられている。
このような三次元物体を上面(あるいは下面)に平行な複数の断面で層状に切断すると、図2(b)に示すような断面データを得ることができる。尚、断面を取る間隔は必ずしも等間隔である必要はないが、ここでは等間隔であるものとする。また、これらの処理は、断面データ生成部42で行われ、得られた断面データは制御部44に供給される。
制御部44は、造形部10および粉体層形成部20を駆動して粉体層を形成するとともに、断面データ生成部42から受け取った断面データに従って結合液供給部30を駆動して、粉体層に結合液を吐出する。その結果、粉体層には、断面データに示される形状に粉体が結合した断面部材が形成される。こうした操作を繰り返して断面部材を積層していくことにより、三次元形状データに対応する三次元物体を得ることができる。
図3は、粉体層に結合液を吐出して粉体を結合させることにより、断面部材を形成している様子を概念的に示した説明図である。図中に示した細い破線は、積層された各粉体層の境界面を表している。また、図中に細かい斜線を付して示した部分は、結合液を吐出することによって形成された断面部材を表している。このようにして、粉体層に相当する厚みの断面部材を積層して造形している関係上、得られた造形物の表面には、図示されているように、断面部材の厚みに相当する段差が現れてしまう。こうした段差は、形成する粉体層を薄くするほど目立たなくなるが、その一方で、粉体層が薄くなるほど、安定して粉体層を形成することは難しくなる。この点で、本実施例の三次元造形装置100は、転写面上に薄く形成した粉体の層(粉体膜)を、静電気力を用いて転写する方法を用いて粉体層を形成しているため、極めて薄い粉体層を安定して形成することが可能であり、その結果、段差の目立たない滑らかな表面の三次元物体を造形することが可能となっている。以下、本実施例の三次元造形装置100の粉体層形成部20が、粉体層の積層方法について詳しく説明する。
C.本実施例における粉体層の積層方法 :
図4は、本実施例の三次元造形装置100において、極めて薄い粉体層を積層可能とするために採用された基本的な考え方を示す説明図である。図示されているように、本実施例の積層方法では、先ず初めに、転写面上に帯電した粉体膜を形成する。転写面は、平坦であれば、平面でも曲面でも構わない。また、表面があまりに柔らかいと薄い粉体膜を形成することが困難なので、ある程度は丈夫な表面であることが望ましい。もっとも、原理的には、結合液によって結合していない部分の粉体層よりも丈夫であれば、少なくとも粉体層の上に直接形成した粉体層よりも、薄い粉体膜を形成することができる。更には、粉体膜を帯電させる方法も、粉体膜に損傷を与えずに(すなわち、粉体膜を壊さずに)帯電させることが可能であれば、どのような方法を用いても良い。
一方、粉体層を積層しようとする表面(積層面)は、粉体膜と逆の極性に帯電させておく。積層面を帯電させる方法も、積層面を壊さずに帯電させることが可能であれば、どのような方法を用いても良い。そして、帯電させた積層面に、逆の極性に帯電させた粉体膜を近づけて、静電気力によって粉体膜を転写させることによって、積層面上に積層する。これらの工程、すなわち、転写面上に粉体膜を形成する工程と、転写面上の粉体膜を静電気力を用いて積層面上に転写する工程とは、互いに並行させて連続的に行っても良いし、あるいは、1つの工程が終わったら、次の工程を行うというように、交互に行っても良い。例えば、回転するローラの一部箇所では粉体膜を形成し、他の箇所では粉体膜を転写するようにすれば、それぞれの工程を並行して連続的に行うことができる。あるいは、ある面積を有する転写面の上に粉体膜を形成し、転写面の全面に粉体膜を形成したら、粉体膜を積層面上に転写して粉体層として積層する。こうして粉体膜を転写したら、再び転写面の上に新たな粉体膜を形成する。このように、粉体膜を形成する工程と、転写する工程とを交互に行いながら、粉体層を積層することも可能である。
図5は、本実施例の三次元造形装置100に搭載された粉体層形成部20が粉体層を積層する様子を概念的に示した説明図である。尚、ここでは、粉体層形成部20は紙面上で左から右方向に向かって移動しながら、粉体層を積層するものとして説明する。
図示されているように、粉体層積層部24の内部には大きな空間が設けられており、ここに粉体が収納されている。また、粉体が収納された空間の下端側には、回転可能に搭載された転写ローラ26と、規制ブレード28とが設けられ、転写ローラ26が回転していないときには、粉体層積層部24の内部から粉体がこぼれ出ないようになっている。
転写ローラ26を所定方向(図示した例では時計回り方向)に回転させると、転写ローラ26の表面に接している粉体は、転写ローラ26の表面に付着したまま、規制ブレード28の位置まで移動する。規制ブレード28は、転写ローラ26の表面から所望の隙間(t)だけ隔てた位置に設けられている。このため、転写ローラ26の表面に付着したまま移動してきた粉体は、表面から厚さt以上に付着した部分が、規制ブレード28によって通過を遮られ、その結果、規制ブレード28を通過した転写ローラ26表面には、厚さtで粉体が付着した状態、すなわち粉体膜が形成された状態となる。
ここで、転写ローラ26の表面と規制ブレード28との間の隙間tが狭くなると、転写ローラ26の表面に付着した粉体がこの隙間を通過しようとする際に、転写ローラ26の表面に強い力が加わることがある。しかし、転写ローラ26は、金属製の心棒の表面をゴムなどの絶縁性の皮膜で覆ったり、あるいは表面処理によって絶縁性の皮膜を設けた構造となっており、多少の力がかかっても転写ローラ26の表面が変形することはない。このため、規制ブレード28を転写ローラ26の表面に近づけることで、幾らでも粉体膜の厚さを薄くすることが可能であり、その結果、転写ローラ26の表面上に、極めて薄い粉体膜を形成することが可能となっている。
尚、図5に示されているように、転写ローラ26の表面と規制ブレード28との間の空間を、転写ローラ26の回転方向に向かって、末狭まり形状に構成しても良い。こうすると、転写ローラ26の表面上に付着した粉体が、規制ブレード28に近付くにつれて転写ローラ26表面に押しつけられ、その結果、適度に押し固められた粉体膜が形成されるので、粉体膜が薄くなっても転写ローラ26の表面から脱落することを回避することが可能となる。また、たとえ規制ブレード28の手前側では、転写ローラ26の表面に付着した粉体の厚さがtに満たない箇所が一部に発生した場合でも、その箇所が規制ブレード28に近付くにつれて周辺から粉体が供給されるので、結局、その箇所にも厚さtの粉体膜が形成される。従って、極めて薄い粉体膜を安定して形成することが可能となる。もちろん、粉体の粒子よりも薄い粉体膜は形成することができないが、粉体の粒子1つ〜3つ程度の極めて薄い粉体膜であっても、安定して形成することが可能である。
また、こうして転写ローラ26の表面に粉体膜を形成する際に、粉体同士、および粉体と規制ブレード28との摩擦によって粉体が帯電した状態となる。そして、転写ローラ26の表面は絶縁性の皮膜で覆われているので、転写ローラ26の表面にも、帯電した粉体膜が形成される。図5には、このようにして転写ローラ26の表面に、マイナスに帯電した粉体膜が形成されている様子が示されている。
尚、粉体が帯電する極性(従って、粉体膜が帯電する極性)は、粉体の材質によって決定される。また、転写ローラ26の表面と規制ブレード28との間を末狭まり形状としておけば、末狭まり形状を通過する際に粉体同士、および粉体と規制ブレード28との間に強い摩擦が生じるので、粉体を、延いては粉体層を十分に帯電させることが可能となる。
一方、前述したように、粉体層積層部24の進行方向には、積層面帯電部22が設けられている。図5に示されているように、積層面帯電部22は、ワイヤー状の中心電極22cや、中心電極22cの三方を囲うフレーム22fなどから構成されている。中心電極22cとフレーム22fとの間に高い電圧を印加すると放電が発生し、その際、中心電極22cから周囲に向かってイオンが放出され、そのイオンの一部が、フレーム22fの開口部から飛び出して、対向する位置にある粉体層の表面を帯電させる。こうして帯電させた粉体層の表面が、新たな粉体層を積層する表面(積層面)となる。飛び出すイオンの極性(従って、積層面を帯電させる極性)は、中心電極22cおよびフレーム22fに印加する電圧の極性を切り換えることによって、プラスにもマイナスにも自由に変更することができる。図5に示した例では、中心電極22c側にプラス電圧を印加し、フレーム22f側にマイナス電圧を印加することによって、プラスのイオンを飛び出させ、その結果、粉体層の表面(積層面)をプラスに帯電させている様子が示されている。
前述したように、転写ローラ26の表面にはマイナスに帯電した粉体膜が形成されているので、プラスのイオンによってプラスに帯電した積層面の上を、転写ローラ26が転がるようにして移動すると、転写ローラ26の表面上の粉体膜が、静電気力によって引き付けられて積層面(粉体層の表面)に転写される。前述したように、転写ローラ26の表面に形成する粉体膜は極めて薄くすることができるから、転写ローラ26の表面上に形成した粉体膜を転写することにより、極めて薄い(例えば、粉体の粒子1〜3つ程度の)粉体層を積層することが可能となる。
加えて、転写ローラ26の表面上に形成された粉体膜は、転写ローラ26の回転によって積層面に近付くと、粉体膜自らに働く静電気力に引き付けられて積層面に転写されるので、転写ローラ26の表面上に形成されたそのままの状態で、粉体膜を積層面上に転写することが可能である。
本実施例の三次元造形装置100では、このように極めて薄い粉体層を安定して形成することができるので、粉体層に結合液を吐出して形成する断面部材の厚さを薄くすることができる。その結果、断面部材を積層して三次元物体を造形しているにも拘わらず、断面部材の厚さに相当する段差が目立つことの無い滑らかな表面の三次元物体を得ることが可能となる。
尚、以上の説明から明らかなように、粉体は、摩擦などによって帯電する性質を有することが望ましい。このような粉体としては、アクリルや、ポリウレタン、ポリエステルなどの樹脂材料粉末や、シリカ、金属酸化物(酸化チタンや酸化アルミなど)、ガラスなどの無機材料粉末などを用いることができる。また、こうした粉体としては、帯電性を調整可能であり、しかも優れた流動性を有することが特に望ましい。このような粉体としては、直径3μm〜20μm程度の大きさを有する樹脂材料(アクリルや、ポリウレタン、ポリエステルなど)の微粒子の外側に、直径0.01μm〜1μm程度に微粒化された無機材料(シリカ、金属酸化物など)の粉末をまぶした構造の複合粒子を、好適に用いることができる。
D.変形例 :
上述した本実施例の粉体層の積層方法には、種々の変形例が存在している。以下では、これら変形例について簡単に説明する。
D−1.第1の変形例 :
上述した実施例では、転写ローラ26の表面と規制ブレード28との間には、粉体膜(従って、粉体層)の厚さtに相当する隙間が設けられており、転写ローラ26の表面に付着した粉体が、この隙間を通過することによって、半ば自動的に、厚さtの粉体膜が転写ローラ26の表面上に形成されるものとして説明した。しかし、転写ローラ26の表面上に、より積極的に厚さtの粉体膜を形成するようにしても良い。
図6は、このような第1の変形例の粉体層積層部24を例示した説明図である。図示した粉体層積層部24には、規制ブレード28の代わりに伸展ローラ28rが設けられている。転写ローラ26と伸展ローラ28rとの間は、距離tだけ隙間が設けられており、また伸展ローラ28rは、転写ローラ26と同じ方向(図示した例では時計回り方向)に回転している。このため、転写ローラ26と伸展ローラ28rとは、互いに向き合う側の表面が、逆方向に移動する状態となっている。その結果、転写ローラ26の回転に伴って、転写ローラ26の表面に付着した粉体が移動してくると、伸展ローラ28rは、厚さtよりも厚く付着した粉体を逆方向に押し戻しながら、粉体を押し伸ばすようにして転写ローラ26の表面上に厚さtの粉体膜を形成する。
前述したように、転写ローラ26は、多少の力では簡単に変形しないような構造となっているので、このように伸展ローラ28rを用いて粉体を押し伸ばすことによって、転写ローラ26の表面上に極めて薄い(例えば、粉体粒子1〜3つ分程度)の粉体膜を形成することが可能である。
加えて、上述した方法では、転写ローラ26と伸展ローラ28rとの間で粉体に強い摩擦を生じさせるので、粉体を十分に帯電させることができ、粉体膜を十分に帯電させることが可能である。その結果、転写ローラ26上に形成された粉体膜を、積層面上に確実に転写して、粉体層として積層することが可能となる。
D−2.第2の変形例 :
上述した実施例では、粉体は、粉体同士の摩擦、あるいは粉体と規制ブレード28との摩擦によって自然に帯電するものとして説明した。これに代えて、粉体層積層部24の内部で粉体に摩擦を加えることにより、積極的に粉体を帯電させるようにしてもよい。
図7は、このような第2の変形例の粉体層積層部24を例示した説明図である。図示した例では、粉体層積層部24内の粉体に摩擦を与えて帯電させる帯電ローラ27が設けられている。転写ローラ26とは別に、このような帯電ローラ27を回転させれば、粉体同士あるいは粉体と帯電ローラ27との摩擦によって、粉体を帯電させることができる。その結果、十分に帯電した粉体膜を、転写ローラ26の表面に形成することが可能となる。
尚、帯電ローラ27は、転写ローラ26の近くに設けることが望ましい。帯電ローラ27を転写ローラ26の近くに設けておけば、2つのローラに挟まれた部分の粉体に強い摩擦を生じさせることができるので、粉体を効果的に帯電させることが可能となる。また、このとき、帯電ローラ27と転写ローラ26とを同じ向きに回転させれば、2つのローラの表面が近接した箇所の粉体に非常に強い摩擦を生じさせることができる。一方、帯電ローラ27と転写ローラ26とを逆向きに回転させれば、2つのローラの表面が回転につれて近付く側の比較的広い範囲で粉体を圧縮する形となり、その結果、広い範囲の粉体に摩擦を生じさせて帯電させることが可能となる。使用する粉体に応じて、何れか適した方法を選択することにより、粉体をより適切に帯電させることが可能となる。
D−3.第3の変形例 :
上述した各種の実施例では、粉体に働く摩擦によって予め粉体を帯電させておき、あるいは転写ローラ26に粉体膜を形成する際に働く摩擦で粉体を帯電させることによって、帯電した粉体膜を形成していた。しかし、先に粉体膜を形成し、その後から粉体膜を帯電させるようにしてもよい。
図8は、このような第3の変形例の粉体層積層部24を例示した説明図である。図8に示した粉体層積層部24には、2本の転写ローラ26a,26bが設けられており、これら転写ローラ26a,26bは、ゴム製の転写ベルト26cによって接続されている。そして、上側の転写ローラ26aで支えられている部分の転写ベルト26cの表面に対向させて、規制ブレード28が設けられている。このため、転写ローラ26a,26bを回転させると、転写ベルト26cの表面上に粉体層が形成される。粉体膜は、転写ベルト26cが転写ローラ26aで支えられている部分で形成されるので、規制ブレード28を転写ベルト26cの表面に近づけることによって、転写ベルト26cの表面に極めて薄い粉体膜を形成することができる。
次いで、こうして形成された粉体膜に向かってイオンを放射することにより、粉体膜を帯電させる。イオンを放射する機構は、積層面帯電部22と同様の機構を用いることができる。すなわち、ワイヤー状の中心電極の三方をフレームで囲って、中心電極とフレームとの間に高い電圧を印加することによって、中心電極からイオンを放出する。このとき放出されるイオンの極性は、中心電極およびフレームに印加する電圧の極性によって、プラスにもマイナスにも切り換えることができる。図8に示した例では、このような構成を有する粉体膜帯電部29を用いてマイナスのイオンを放射することによって、転写ベルト26cの表面に形成された粉体膜を帯電させている様子が示されている。
次いで、こうして帯電させた粉体膜を、積層面帯電部22を用いて逆極性に帯電させた積層面上に転写することによって、粉体層として積層させる。こうした第3の変形例では、粉体の摩擦によって粉体膜を帯電させるのではなく、予め形成した粉体膜を積極的に帯電させているので、粉体膜を確実に帯電させることが可能である。加えて、中心電極とフレームとの間に印加する電圧によってイオンの放射量(あるいはイオンの飛行速度)を制御することができるので、粉体膜の帯電量(あるいは帯電深さ)を制御することが可能となる。このため、粉体膜を積層面に適切に転写して、粉体層を積層することができる。
D−4.第4の変形例 :
また、転写面(転写ローラ26あるいは転写ベルト26cの表面)上に粉体膜を安定して形成可能なように、転写面を適切な形状にしても良い。図9は、第4の変形例において粉体膜が形成される転写面の断面形状を拡大して例示した説明図である。図中に斜線を付した部分は、転写ローラ26あるいは転写ベルト26cの断面を表しており、白い丸印は、粉体の粒子を表している。図示されているように、例えば転写ローラ26あるいは転写ベルト26cの表面(転写面)に、粉体粒子の大きさと同程度のビッチの凹凸を設けておけば、転写面に粉体が付着し易くなる。このため、例えば規制ブレード28(あるいは伸展ローラ28rなど)で余分な粉体が除かれる時に、転写面に付着した粉体が脱落することを回避できるので、極めて薄い粉体膜であっても転写面上に安定して形成することが可能となる。
尚、転写面に形成する凹凸のピッチは、粉体粒子の平均直径の半分から2倍の範囲の大きさにしておけば、同様の効果を得ることができる。例えば、凹凸のピッチが粉体粒子直径の半分以下であれば、粉体微粒子を凹凸にしっかりと保持することができないので、凹凸のピッチは、粉体粒子の平均的な直径の半分以上は必要である。また、凹凸のピッチが粉体粒子直径の3倍近くあった場合には、凹部に3つの粉体粒子が収まることになり、このとき真ん中の粉体粒子をしっかりと保持しておくことができなくなる。従って、凹凸のピッチは、粉体粒子の平均的な直径の3倍未満としておく必要がある。このことから、転写面の表面に形成する凹凸のピッチは、粉体の粒子の平均直径の半分から2倍の範囲の大きさにしておけば、粉体をしっかりと保持しておくことが可能となる。
また、粉体膜を転写する際に、転写面上から粉体膜が離れないのでは、粉体層の積層に支障が生じてしまう。しかし、粉体膜は積層面との間に働く静電気力によって転写され、そして静電気力の方向は転写面の方向に略垂直なので、転写面上に設けられた凹凸が粉体膜の転写の妨げになることはない。このため、転写面上に凹凸(特に、粉体粒子の大きさと同程度のピッチを有する凹凸)を設けておけば、粉体膜を形成する際には粉体をしっかりと保持して粉体膜の脱落を回避するとともに、粉体膜を転写する際には、簡単に粉体膜を転写させて、積層面上に粉体層を形成することが可能となる。
D−5.第5の変形例 :
また、上述した実施例では、中心電極の三方をフレームで囲って、中心電極から放出されるイオンを、フレームの開口部から放射することによって、積層面(あるいは粉体膜)を帯電させるものとして説明した。しかし、フレームの開口部にメッシュ状の電極を設けることによって、開口部から放射されるイオンを制御可能としても良い。
図10は、第5の変形例の積層面帯電部22を例示した説明図である。図10(a)は、積層面帯電部22の断面構造を表しており、図10(b)は積層面帯電部22の全体構造を表している。図示されているように、フレーム22fの開口部には、メッシュ状の電極22gが設けられており、電極22gとフレーム22fとの間には、中心電極22cとは別に電圧を印加することが可能となっており、印加する電圧によって、開口部からのイオンの放射を制御することが可能となっている。例えば、図10に示した例では中心電極22cからはプラスのイオンが放出されているから、メッシュ状の電極22gにプラスの電圧を印加すれば、開口部から放出されるイオン量(あるいはイオンの非拘束度)を制御することができる。また、メッシュ状の電極22gに非常に大きなプラスの電圧を印加してやれば、開口部からイオンが放射されないようにすることもできる。更には、メッシュ状の電極22gにマイナスの電圧を印加してやれば、中心電極22cから放出されたプラスのイオンがメッシュ状の電極22gに引き寄せられるので、イオンの放射量を増やすことができるとともに、イオンをより加速して放射することも可能となる。
以上に説明したように、第5の変形例においては、放射されるイオンを制御することによって、積層面(粉体層の表面)あるいは粉体膜の帯電を制御することができるので、粉体層を適切に積層することが可能となる。
D−6.第6の変形例 :
また、上述した実施例では、中心電極からイオンを放出することで、粉体層の表面(積層面)あるいは粉体膜の表面を、均一に帯電させるものとした。しかし、細い針状電極22nに電圧を印加してイオンを放出することで、針状電極22nの先端付近の領域を帯電させるようにしても良い。
図11は、第6の変形例において針状電極22nを用いて粉体層の表面を帯電させている様子を示した説明図である。第6の変形例の積層面帯電部22の内部には、複数本の細い針状電極22nが列状に配列した状態で搭載されており、それぞれの針状電極22nにはプラスの電圧が印加されている。針状電極22nの先端は尖っているため、電圧を印加することで、先端からは比較的容易にイオンが放出され、粉体層の表面(積層面)を帯電させることができる。このため、各針状電極22nに均一に電圧を印加しながら、積層面帯電部22を移動させることで、図11に示すように積層面を均一に帯電させることが可能となる。また、積層面帯電部22を移動させながら、それぞれの針状電極22nに印加する電圧を切り換えてやれば、電圧を印加した部分だけを帯電させることも可能である。
図12は、第6の変形例において粉体層の表面(積層面)を部分的に帯電させている様子を示す説明図である。図示した例では、各針状電極22nはスイッチ回路を介して電圧が印加されており、個々の針状電極22n毎に電圧を印加するか否かを切り換えることが可能となっている。従って、積層面帯電部22を移動させながら、スイッチ回路を制御して個々の針状電極22nに印加する電圧を切り換えることで、帯電している部分と、帯電していない部分とを、自由に、しかも正確な位置に形成することができる。そして、このように積層面を部分的に帯電させておけば、転写ローラ26あるいは転写ベルト26cの表面に形成した粉体膜を、帯電させた部分にだけ転写することができる。その結果、積層面の所望の部分だけに、粉体層を積層することが可能となる。加えて、こうした第6実施例の積層方法を利用することで、領域毎に粉体の種類を変更しながら、複数種類の粉体を用いて粉体層を積層することも可能である。
図13は、領域毎に粉体の種類を変えながら、複数種類の粉体を用いて粉体層を積層する様子を概念的に示した説明図である。先ず初めは、図13(a)に示されるように、粉体層を積層しようとする部分だけを帯電させる。図12を用いて前述したように、針状電極22nを列状に配列した積層面帯電部22を用いて、電圧を印加する針状電極22nを切り換えることにより、図13(a)に示すような帯電パターンを、粉体層の表面(積層面)容易に得ることができる。
次いで、転写ローラ26(あるいは転写ベルト26c)の表面(転写面)に形成した粉体膜を転写する。粉体膜は静電気力で引き付けられることによって積層面に転写されるから、積層面の帯電した部分にだけ粉体膜が転写されて、粉体層として積層される。図13(b)は、このようにして種類Aの粉体による粉体層が積層された様子を表している。
尚、転写ローラ26(あるいは転写ベルト26c)の表面(転写面)に粉体膜を形成する際に、粉体膜全体を一様に帯電させるのではなく、積層面が帯電している部分に相当する箇所だけを帯電させるようにしてもよい。例えば、図8に示したように、転写ベルト26cの表面に粉体膜を形成した後、図12に示した方法で粉体膜を帯電させることにより、積層面の帯電パターンと同じパターンで粉体膜を帯電させることができる。こうして積層面の帯電パターンに合わせて、粉体膜の対応する箇所を逆の極性で帯電させておけば、帯電させた部分だけに、確実に粉体膜を転写して粉体層を積層することが可能となる。
こうして種類Aの粉体による粉体層を積層したら、その部分に結合液を吐出して粉体層を硬化させる。前述したように結合液は、いわゆるインクジェットプリンタでインク滴を吐出する技術を用いて吐出しているので、正確な位置に正確な分量で結合液を吐出することが可能であり、従って、粉体層を積層した部分に正確に結合液を吐出して粉体層を硬化させることができる。
次いで、図13(c)に示すように、種類Aの粉体層を積層しなかった部分を帯電させる。そして、今度は種類Bの粉体による粉体膜を形成しておき、この粉体膜を、帯電した部分に転写する。その結果、種類Aの粉体層を積層しなかった部分に、今度は種類Bの粉体層が積層されることになる。図13(d)には、このようにして、種類Aの粉体の領域と、種類Bの粉体の領域とが明確に区分された状態で積層された粉体層が示されている。以上のような方法を用いれば、領域毎に粉体の種類を切り換えることによって複雑なパターンを形成しながら、粉体層を積層することも可能となる。
以上、本実施例の三次元造形装置100について説明したが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
例えば、粉体層(あるいは粉体膜)の表面を帯電させた後、その表面に逆極性のイオンや電子のビームを照射して、部分的に帯電を消滅させることにより、所望の帯電パターンを得るようにしても良い。
本実施例の三次元造形装置の大まかな構成を示した説明図である。 三次元物体の形状データから各断面での断面データを生成する様子を概念的に示した説明図である。 粉体層に結合液を吐出して断面部材を形成している様子を概念的に示した説明図である。 極めて薄い粉体層を積層可能とするための基本的な考え方を示す説明図である。 本実施例の三次元造形装置に搭載された粉体層形成部が粉体層を積層する様子を概念的に示した説明図である。 第1の変形例の粉体層積層部を例示した説明図である。 第2の変形例の粉体層積層部を例示した説明図である。 第3の変形例の粉体層積層部を例示した説明図である。 第4の変形例の転写面の断面形状を拡大して例示した説明図である。 第5の変形例の積層面帯電部を例示した説明図である。 第6の変形例において針状電極を用いて粉体層の表面を帯電させる様子を示した説明図である。 第6の変形例において粉体層の表面を部分的に帯電させる様子を示す説明図である。 領域毎に粉体の種類を変えながら複数種類の粉体を用いて粉体層を積層する様子を概念的に示した説明図である。
符号の説明
10…造形部、 12…枠体、 14…底面部、 16…底面駆動部、
20…粉体層形成部、 22…ホッパー、 24…粉体供給ローラ、
26…伸展ローラ、 28…吸引ポンプ、 30…結合液供給部、
32…結合液供給ヘッド、 33…光硬化液吐出ヘッド、
34…結合液収容部、 35…光硬化液収容部、 36…硬化液供給ヘッド、
38…硬化液収容部、 40…演算処理部、 42…断面データ生成部、
44…制御部、 50…光照射部、 100…三次元造形装置

Claims (7)

  1. 粉体によって形成された粉体層に結合液を供給して、該結合液が供給された部分の粉体を結合させ、その粉体層の上に新たな粉体層を形成して結合液を供給する操作を繰り返すことにより、三次元物体を造形する三次元造形装置であって、
    前記結合液によって粉体が結合していない部分の前記粉体層よりも少なくとも変形し難く形成された転写面上に、粉体を供給する粉体供給手段と、
    前記供給された粉体が付着した前記転写面と、該転写面に対向させて設けられ、該転写面上に所定厚さ以上に付着した粉体の通過を規制する規制部材とを、該転写面の方向に沿って相対的に移動させることにより、帯電した粉体による該所望厚さの粉体膜を、該転写面上に形成する粉体膜形成手段と、
    前記粉体層を積層しようとする表面たる積層面を、前記帯電した粉体の極性とは逆の極性に帯電させる積層面帯電手段と、
    前記転写面上に形成された前記粉体膜を、静電気力によって前記積層面上に転写することにより、前記粉体層として積層する粉体層積層手段と
    を備える三次元造形装置。
  2. 請求項1に記載の三次元造形装置であって、
    前記粉体膜形成手段は、粉体同士の摩擦によって帯電した粉体を用いることにより、帯電した前記粉体膜を前記転写面上に形成する手段である三次元造形装置。
  3. 請求項1に記載の三次元造形装置であって、
    前記粉体膜形成手段は、前記転写面上に前記粉体膜を形成した後、該粉体膜を帯電させることによって、該転写面上に帯電した該粉体膜を形成する手段である三次元造形装置。
  4. 前記転写面の表面には、粉体の粒子の平均直径の半分から2倍の範囲のピッチで凹凸が形成されている請求項1に記載の三次元造形装置。
  5. 請求項1に記載の三次元造形装置であって、
    前記粉体供給手段は、回転可能なローラの側表面に形成された前記転写面上に粉体を供給する手段であり、
    前記粉体膜形成手段は、前記ローラを回転させることにより、前記規制部材の位置を通過した前記転写面上に、前記所望厚さの粉体膜を形成する手段である三次元造形装置。
  6. 請求項1に記載の三次元造形装置であって、
    前記積層面帯電手段は、前記積層面上の所望の領域だけを帯電可能な手段であり、
    前記粉体層積層手段は、前記転写面上の前記粉体膜を静電気力によって前記積層面上に転写することにより、該積層面の帯電している領域だけに、前記粉体層を積層可能な手段である三次元造形装置。
  7. 粉体によって形成された粉体層に結合液を供給して、該結合液が供給された部分の粉体を結合させ、その粉体層の上に新たな粉体層を形成して結合液を供給する操作を繰り返すことにより、三次元物体を造形する三次元造形方法であって、
    前記結合液によって粉体が結合していない部分の前記粉体層よりも少なくとも変形し難く形成された転写面上に、粉体を供給する粉体供給工程と、
    前記供給された粉体が付着した前記転写面と、該転写面に対向させて設けられ、該転写面上に所定厚さ以上に付着した粉体の通過を規制する規制部材とを、該転写面の方向に沿って相対的に移動させることにより、帯電した粉体による該所望厚さの粉体膜を、該転写面上に形成する粉体膜形成工程と、
    前記粉体層を積層しようとする表面たる積層面を、前記帯電した粉体の極性とは逆の極性に帯電させる積層面帯電工程と、
    前記転写面上に形成された前記粉体膜を、静電気力によって前記積層面上に転写することにより、前記粉体層として積層する粉体層積層工程と
    を備える三次元造形方法。
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