JP2008306775A - 共振回路から生成される直流電圧を安定化する帰還回路の構成法 - Google Patents

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Abstract

【課題】共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる直流電圧を広い範囲の負荷に対して安定化する簡単な帰還回路の構成とその回路定数を与える。
【解決手段】出力電圧が共振回路を駆動する搬送波の周波数へ安定に帰還される条件を明らかにするために等価電源を導入する。等価電源において共振回路に対応する仮想共振回路は周波数変調された搬送波を入力とし、振幅変調された搬送波ではなく、振幅変調された搬送波のエンベロープを出力する。整流回路に相当する仮想整流平滑回路はこのエンベロープに一次遅れのフィルタとして働き、等価電源の出力電圧を生成する。等価電源を連立微分方程式系により記述し、これを数理的に解析することにより等価電源が安定となる十分条件を明らかにする。この十分条件を基に安定な帰還を実現する回路を構成し、シミュレーションにより安定であることを示す。
【選択図】図12

Description

本発明は共振回路を利用して電圧を発生する安定化直流電圧電源において、電源の出力である直流電圧の安定化に関するものであり、電源の出力である広い範囲の直流電圧を広い範囲の負荷に対して安定化するものである。
共振回路を利用して電圧を発生する電源として、たとえば圧電トランスの共振回路を利用して直流高電圧を発生する電源がある。この圧電トランスを用いた電源は比較的高圧の出力を必要とする用途に用いられていた。それらの用途においては、出力電圧に高精度な安定性が必要とされておらず、したがってこのような圧電トランスを用いた電源では、入力電圧あるいは負荷電流の変動に対する出力電圧の安定性が悪く、このためこの種の電源の用途は固定入力・固定負荷の条件を満たす用途に限られる欠点があった。
特開2002-359967 特開2005-137085 特願2006-130906
特許文献1は、安定化された高電圧を提供する、効率のよい直流高電圧電源装置の簡単な回路の構成を提供することを課題とし、直流高電圧電源に、通常の電磁トランスではなく、圧電トランスによる高電圧発生手段を採用することにより効率の向上を計り、しかも高電圧を安定化するために圧電トランスの共振特性の周波数依存性を利用することにより、回路の簡素化と部品点数の減少を計ることにより課題を解決する。
特許文献2は直流高電圧電源装置に関するもので、当該装置の出力電圧を安定化する帰還について、高電圧の発生に伴う遅れの大きい帰還とは独立な遅れの少ない帰還を実装することにより、出力電圧の安定化の精度の向上と応答の高速化を実現する。
特許文献3は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振回路における共振の周波数依存性を利用する安定化において、共振回路を駆動する搬送波の周波数に出力電圧を帰還する伝達関数に原点に位置する極の導入された電源の構成とその回路定数を与える。
共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる直流電圧を広い範囲の負荷に対して安定化する簡単な帰還回路の構成とその回路定数とを与える方法。
共振回路における共振の周波数依存性を利用して、共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる直流電圧を共振回路を駆動する搬送波の周波数に帰還することにより直流電圧を安定化する電源において、
原点に位置する極を持たない簡単な伝達関数を備えた帰還回路により出力である直流電圧を共振回路を駆動する搬送波の周波数に帰還することにより直流電圧を安定化する回路の構成と回路定数を与える。
共振回路が、局所的に一定な振幅を持つ共振周波数に近い周波数の搬送波によって駆動される時、共振回路から出力される高周波交流を復調(整流)することにより得られる直流電圧は、搬送波の周波数に依存する。直流電圧を搬送波の周波数に帰還することにより、直流電圧を安定化する。
電源は、一定な振幅を持つ搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される共振回路と、共振回路の出力である振幅変調された搬送波を整流することにより直流電圧として取り出す整流平滑回路とを備える電圧発生回路と、整流平滑回路の出力である直流電圧をこの電源の出力電圧を設定するためにあらかじめ与えられている参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路を備える帰還回路とを含み、周波数変調器の出力は前記ドライバー回路の入力となりドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、直流電圧を搬送波の周波数に帰還することにより出力直流電圧を安定化にする手段を備える。
この直流安定化電源を近似する数理解析的手段により解析することが可能な等価電源を構成し、等価電源から出力される直流電圧が参照電圧の近傍にあるとき帰還が安定である十分条件を数理解析的手段により明らかにし、出力である直流電圧と参照電圧との誤差の搬送波の周波数への帰還がこの十分条件を満たすように回路定数を求めることにより課題を解決する。
等価電源は仮想電圧発生回路と帰還回路からなる。この仮想電圧発生回路はドライバー回路と仮想共振回路と仮想整流平滑回路とからなる。仮想共振回路は、共振回路と同様に周波数変調された搬送波を入力とし、振幅変調された搬送波ではなく、そのエンベロープを出力する。また仮想整流平滑回路はこのエンベロープを入力とし、エンベロープに対して一次遅れのフィルタとして作用し、整流平滑回路の出力と近似的に同等の結果を出力する。
等価電源は、一定振幅を持つ搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される仮想共振回路と、その出力が入力される仮想整流平滑回路とからなる仮想電圧発生回路と、仮想整流平滑回路の出力である直流電圧を参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路を備える帰還回路とを含み、周波数変調器の出力は前記ドライバー回路に入力され、ドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、仮想整流平滑回路の出力である直流電圧を搬送波の周波数に帰還することにより出力直流電圧を一定にする。
この等価電源は連立微分方程式系によりその動作を記述することができるので、安定性の数理的な解析が可能となる。微分方程式系を導出し、これから等価電源の出力電圧が参照電圧の近傍で安定となる十分条件を明らかにする。この十分条件を基にして安定な帰還を実現する実際の回路を構成し、回路定数を与える方法を示す。
出力電圧の安定化
共振回路は鋭い周波数特性や大きな負荷依存性などの共振特性を示す。周波数変調された一定の振幅を持つ搬送波が共振回路に入力されると、その搬送波は振幅変調されて出力される。共振回路の出力に負荷抵抗を接続し、入力された搬送波と出力された搬送波の振幅電圧の比である昇圧比を駆動周波数の関数として見ると、共振回路は共振を示し、共振周波数の付近で大きな昇圧比を示す。共振回路を用いた電源はこの昇圧比を利用して電圧を発生する。また昇圧比が搬送波の周波数に依存することを利用して、周波数を制御することにより出力電圧を安定化する。
共振回路を駆動する搬送波の周波数が、たとえば図 1に示すように共振回路の共振周波数より高くなるように選ばれている場合、出力電圧が参照電圧より低いときには周波数を下げて共振周波数に近づき、また出力電圧が参照電圧よ高いときには周波数を上げて共振周波数より遠ざかることにより電圧を安定化する。
搬送波の周波数が共振周波数より低くなるように選ばれている場合、出力電圧が参照電圧より低いときには周波数を上げて共振周波数に近づき、また出力電圧が参照電圧より高いときには周波数を下げて共振周波数より遠ざかることにより電圧を安定化する。
周波数変調
周波数変調器は入力される電圧によって周波数変調された搬送波を出力する。出力される搬送波の周波数は入力された電圧の関数である。 u(t)を出力の搬送波とし次のように書く。
ここでwは搬送波の時間的に不変な振幅を表し、共振回路に入力される搬送波は数式70の実部であるとする。φを次式により定義する。
周波数変調器への入力電圧をvとしたときの出力周波数がωc+φとなるので、
が成り立つ。ここでfself
は周波数変調器の自走周波数を表し、kはφとvとの間の比例定数を表す。また今後の計算の簡便のためにωc
= ω0を仮定する。ただしω0は数式77で定義される。ここでφC
と定義すると、数式72は
と書くことができる。
共振回路
負荷RLに接続された状態で共振回路がしめす共振は、そのQ値、共振周波数および共振周波数における電圧の昇圧比によって近似的に次式のように書くことができる。
ここでa, b, cは次の条件を満たす正の数である。
Qは共振のQ値であり、γはQ値の逆数、ωrは共振周波数における角速度であり、またgrは共振 周波数における共振回路の昇圧比である。
伝達関数の分母から作られ方程式s2+as+b=0の根をαとβとする。αとβとをδとω0とを使って次のように書くことができる。
また数式76と数式77から

このときδとω0とは正の数である。 またQ値は数十程度であり、共振が鋭いのでω0は近似的にωrに等しい。
Q値が30、昇圧比が100、共振周波数が 120 kHzである伝達関数h0(s)は次のように書ける。
h0(s)のδとωとをそれぞれδ0とω0とすると、その値は次のようになる。
以下に展開される議論では、共振回路の伝達関数h(s)を一つ固定して、この伝達関数を持つ共振回路から生成される直流電圧が安定である条件を求める。
共振周波数近傍での伝達関数
数式75の伝達関数は、共振周波数の近傍では複素数の極を持つ一次遅れで近似出来ることをしめす。共振回路の入力を数式70のu、出力をfとして演算子法で計算すると、

ここで

搬送波の周波数は共振周波数の近傍にあるので、数式72の左辺からから ある正の定数Mが存在して、任意のt (0≦t)にたいして 次の条件を満たすことが判る。
このとき次の評価が成り立つ。

同様に

Aについて積分を実行する。

これからAを求めると、

Aは次のように評価することができる。

同様にして、Bについて積分を実行する。

Bは次のように評価することができる。

周波数変調器が出力の周波数を変調する帯域の上限がMである。 Mはδと同程度か、高々数倍の大きさである。 一方、共振周波数ω0はδの数十倍である。 また|α|=|β|である。これからBを無視しても、 誤差は高々数%であることがわかる。 Bを無視した伝達関数hTは次のようになる。
このとき共振回路のの出力gを次のように定義する。
共振回路の出力fとgとの差は高々数%である。これから共振周波数の付近では、共振回路の伝達関数はhTで近似できることがわかる。
伝達関数h0(s)とその近似であるhT 0(s)との比較
数式80で与えられる伝達関数h0(s)に対してこれを近似するhT 0(s)を求め、h0(s)とhT 0(s)とを比較する。図 2において昇圧比、図 3において位相のそれぞれについてh0(s)とhT 0(s)とを同時にプロットする。この図から分かるように、hT 0(s)はh0(s)のよい近似になっている。
共振周波数近傍での微分方程式と共振のエンベロープ
gは数式104からわかるように 次の微分方程式を満たす。

ここでgを実数を取る変数pとqとにより 数式108のように変換する。 定数rr, riを数式109によって定義する。

ここwを実数とすると、rr, riは次のようになる。
このときpとqとは次の方程式を満たすことがわかる。

ここでθは周波数変調器から出力される搬送波の位相である。
また数式107と数式71から次式を得る。
この式を数式111と数式112とに代入すると次のような正規な微分方程式系を得る。

共振回路の出力gの絶対値がエンベロープとなり、これをyとするとyは次式で与えられる。

共振回路からの定常出力の振幅
ここでφは一定であるとする。またp(t)とq(t)とを数式114, 数式115の解とする。すると

ここでrを次のように定義する。
共振回路から出力される搬送波の定常振幅は
によって与えられる。 このことから定常振幅はφ=0において最大となり、その振幅は
によって与えられることが分かる。
φの変化に対する定常振幅の変化
共振回路から出力される搬送波の定常振幅は
と表すことができるので、これをφで微分することによりφがΔφだけ変化したことにより定常振幅に引き起こされる振幅の変化は
と表すことができる。
定数rの評価
数式109から
すなわち、rは数式70で与えられている搬送波の振幅|w|に依存する。この依存性を強調するときには、rではなくr|w|と書くことにする。すると、任意のaに対して
が成り立つ。
数式80により与えられたh0(s)に対して定義されるhT 0(s)に対してrを評価すると

となる。 これから
であることが従う。
共振回路のQ値
共振回路のQ値は共振回路の出力に接続されている負荷により変化する。負荷が軽くなればQ値は大きくなる。多くの共振回路では、共振周波数における出力の振幅がこのQ値に近似的に比例する。つまり、共振周波数における昇圧比が近似的のQ値に比例する。また多くの共振回路では共振周波数も負荷により変化する。すなわち共振周波数もQ値に依存する。しかし多くの共振回路でこの依存は小さい。
昇圧比が図 4に示す周波数特性を備えた圧電トランスについて、共振周波数における昇圧比とその共振周波数とについてQ値に対する依存を調べる。図 5に昇圧比のQ値依存性を、また図 6に共振周波数の負荷依存性を示す。図 5から昇圧比がほぼQ値に比例していることが分かる。図 6から、負荷が150 kΩから300 kΩまで変化すると、共振周波数は600 Hz程度シフトする。このシフトは共振周波数の120 kHzに対して十分に小さい。
ある負荷が接続された共振回路の伝達関数を数式75に示すようにh(s)とかくと、その係数cは数式76から次のように与えられる。
ここでgrは共振周波数における共振回路の昇圧比であり、近似的にQ値に比例する。またωrは共振周波数における角速度であり、負荷に依らず近似的に一定であると考える。これから係数cがQ値に近似的に依存しないことが分かる。つまりcは共振回路に固有であり、負荷に依らず近似的に一定であると考えることができる。
共振回路からδとrの抽出
数式124と数式110とから

Qは数十はあるので、
係数cは共振回路に固有な定数でありwは搬送波の振幅であるので、rはQしたがってδにほとんど依存しない数であることがわかる。このrは共振回路からの出力を測定することにより次のように直接的に求めることができる。
共振のQ値を測定することは広く行われている。一定の振幅を持つ共振周波数の搬送波によって共振回路が駆動されている場合の共振のQ値をQとする。角速度ωrを共振周波数とすると数式78から
によδを求めることができる。 また共振回路から出力される搬送波の振幅の最大値をRとすると数式121から
となり、これからrを求めることができる。このrは数式132からほとんδには依存しない。
エンベロープによる等価電源の構成
ここで安定性の解析の対象となる電源は、局所的に一定な振幅を持つ搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される共振回路と、共振回路の出力である振幅変調された搬送波を整流することにより直流電圧として取り出す整流平滑回路を備える電圧発生回路と、整流平滑回路の出力である直流電圧をこの電源の出力電圧を参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路を備える帰還回路を含み、周波数変調器の出力はドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、整流平滑回路の出力である直流電圧を搬送波の周波数に帰還することにより出力直流電圧を一定にする。この電源の構成を図 7に示す。
仮想共振回路と仮想整流平滑回路
共振回路の出力は、図 8に示すように共振回路により振幅変調された搬送波であり、この搬送波が整流平滑回路により直流電圧に変換される。解析を容易にするために、仮想共振回路と仮想整流平滑回路を導入し、これにより共振回路と整流平滑回路を近似する。仮想共振回路は共振回路とおなじ周波数変調された搬送波を入力とし、共振回路の出力する振幅変調された搬送波ではなく、図 9に示すようにそのエンベロープを出力する。このエンベロープは仮想整流平滑回路に入力される。仮想整流平滑回路は、その出力が整流平滑回路の出力と同等なるような伝達関数を備えている。仮想整流平滑回路の入力がこの伝達関数により変換されることにより、整流平滑回路の出力と同等な出力が実現される。
仮想整流平滑回路の伝達関数
整流平滑回路は、振幅変調された搬送波を整流・平滑する事により直流電圧を生成する。このため直流電圧の生成には大きな遅れを伴う。すなわち搬送波の振幅の変化が生成される直流電圧に反映されるまでの遅れが大きい。このように遅れが大きい場合、伝達関数は一次遅れで近似できる。そこで一次遅れの伝達関数を仮想整流平滑回路に仮定する。
一次遅れの時定数μとする。整流平滑回路が、入力である高周波交流の振幅のν倍の直流電圧を生成する場合、これに対応する仮想整流平滑回路の伝達関数は
となる。 整流・平滑された整流平滑回路の出力を微分回路に入力することにより一次遅れの伝達関数をキャンセルすると、この微分回路からの出力は仮想共振回路から出力されるエンベロープそのものであると考えられる。
共振回路が整流平滑回路を充放電する過程を記述するためのあたらしいパラメータとして、共振回路が整流平滑回路を充放電する際の時定数μと、出力インピーダンスと負荷と整流回路の倍圧に依存して決まる乗数νを導入した。ここでμもνも出力電圧と出力電流の関数であるが、出力電圧、出力電流の変化に対して緩やかに変化するので、ある指定された出力電圧、出力電流の近傍では定数と近似することができる。
等価電源
等価電源は電源の等価回路であり、ドライバー回路と仮想共振回路と仮想整流平滑回路とからなる仮想電圧発生回路と、誤差増幅器と周波数変調器とからなる帰還回路から構成される。仮想電圧発生回路によって発生された直流電圧が等価電源の出力であり、帰還回路はこの直流電圧を搬送波の周波数に帰還する。誤差増幅器は、引き算回路と位相補償回路からなる。出力電圧と参照電圧の電圧差を検出する引き算回路の出力は位相補償回路に入力される。この位相補償回路の出力が誤差増幅器の出力である。周波数変調回路は、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、この周波数を持つ矩形波を出力する。周波数変調器の出力はドライバー回路に入力されドライバー回路の発生する搬送波の周波数を制御する。等価電源の模式図を図 10に示す。
等価電源の負荷について
等価電源の負荷は仮想共振回路のδに反映される。負荷が重くなると、共振回路のQが小さくなり、δが大きくなる。また逆に、負荷が軽くなると、Qが大きくなり、したがってδは小さくなる。そこで等価電源の安定性を解析する場合、その負荷を駆動する仮想共振回路のδLによって負荷Lを指定する。つまり、ある負荷Lが接続された等価電源の安定性は、仮想共振回路のδがその負荷に対応したδLにある時の電源の安定性と理解する、
シンプル電源の安定性
仮想整流平滑回路の伝達関数が数式135で与えられるとき、その等価電源をシンプル電源と呼ぶ。シンプル電源ついて帰還の安定性を考察する。シンプル電源では、出力電圧が仮想共振回路を駆動する搬送波の周波数へ帰還される。帰還の安定性を考察するために、出力電圧のわずかなズレを考え、このズレの帰還による変化を調べる。帰還が安定であれば、ズレは縮小する方向に変化する。ズレが拡大する方向に変化すれば、帰還は不安定である。この出力電圧のわずかなズレの帰還を考える際には、そのズレが微少であるので、δ, μ, νは一定であると仮定する。
シンプル電源の一例とその微分方程式系
誤差増幅器は引き算回路と位相補償回路からなる。引き算回路は分割抵抗と増幅器からなり、増幅器がその入力の電圧差を出力する。位相補償回路は増幅器とその周辺回路からなり、引き算回路の出力から誤差増幅器の出力を生成する。仮想共振回路あるいは仮想整流平滑回路の動作に比べて増幅器は十分に速く動作するので、誤差増幅器による遅れはすべてこの位相補償回路によると仮定することができる。シンプル電源の一例を図 11に示す。 図 11の電源について、仮想共振回路の出力をy、仮想整流平滑回路の出力をzとすると、

またzを分割抵抗で分割した電圧dzと参照電圧nとが引き算回路の増幅器に入力される。ここでdは分割抵抗の分割比であり、位相補償回路への入力をvとすると、

と書くことができる。図 11の位相補償回路への入力をv、その出力をvoとすると、vとvo
の関係で結ばれている。
これは次式のように書き直すことができる。
ここで

数式137から、
これから

数式146に数式74を適用すると、

このφを数式114, 数式115に代入することにより、このシンプル電源は次の微分方程式系で記述されることがわかる。


シンプル電源と微分方程式系
仮想整流平滑回路の伝達関数は次のように与えられる。
従って仮想共振回路の出力yと仮想整流平滑回路の出力zとは微分方程式
を満たす。そこでこの仮想共振回路による遅れを相殺するゼロ点を考慮したシンプル電源の模式図を図 12に示す。 このシンプル電源についてフィードバックの安定性を考察する。誤差増幅器は引き算回路と位相補償回路からなる。
駆動周波数が共振周波数より高い場合
共振回路を駆動する搬送波の周波数が共振周波数より高い場合、すなわちφ≧0の場合には、位相補償回路の入力から周波数変調器の出力までの伝達関数は次のように書ける。
ここでAおよびBはそれぞれ正の定数である。 数式154は
を代入することにより数式147がしたがう。 これからシンプル電源は数式149, 数式150, 数式151からなる微分方程式系で記述されることがわかる。
平衡点近傍での安定性
数式149, 数式150, 数式151からなる微分方程式系の平衡点では
が成り立つので、平衡点は次の連立一次方程式の解である。

結局、平衡点は次の連立一次方程式の解である。

そこで φe
と定義して、次の連立方程式を解くことにより平衡点pe, qe, zeおよびλをφeの関数として求める。

pe, qe,
zeおよびλは、φeの関数として次にように書ける。

Lyapunovの方法により平衡点の近傍での微分方程式系の安定性を調べる。 p, q, zをそれぞれpe, qe, zeの近傍で次のように展開する。

この式を数式149, 数式150, 数式151からなる微分方程式系に代入し、高次の項を無視することによりΔp, Δq, Δzに関する次のような正規かつ線形な微分方程式系を得る。
ここで
Mの固有多項式をm(h)とし、
と書く。係数a0,
a1, a2, a3は以下のようにφeの関数となる。

ここでrは次にように定義されている。

駆動周波数が共振周波数より低い場合
共振回路を駆動する搬送波の周波数が共振周波数より低い場合、すなわちφ≦0の場合、φを-φと置くと、位相補償回路の入力から周波数変調器の出力までの伝達関数は次のようになる。
数式114, 数式115においてφを-φと置くと次のようになる。

数式185のφを数式186、数式187に代入してφを消去すると数式149, 数式150に帰着することがわかる。
シンプル電源は、駆動周波数が共振周波数よりも高い場合も低い場合もともにφ≧0として次の微分方程式系によって記述されることがわかる。


固有多項式の再定義
数式180〜数式183において、項k, d, ν, rはまとまってA, Bとともに現れるので、
と置き、さらに

と表し、さらにこのB´を再びBと書き、また
と置き換えると、数式180〜数式183は次のように再定義される。

数式179において定義されたMの固有多項式m(h)を、数式194〜数式197において再定義された係数a0,
a1, a2, a3を用いて再び次のように定義する。

シンプル電源のループゲイン
仮想共振回路の出力をy、仮想整流平滑回路の出力をzとすると、
またzを分割抵抗で分割した電圧dzと参照電圧nとが引き算回路の増幅器に入力される。ここでdは分割抵抗の分割比であり、位相補償回路への入力をvとすると、

と書くことができる。
このとき、仮想整流平滑回路の出力zがz+Δzに変化したとすると、誤差増幅器への入力はΔvだけ変化する。ここでΔvは
である。誤差増幅器のゲインをLとすると、誤差増幅器の出力は-Lδv (=-Ldδz)だけ変化する。この結果、周波数変調器から出力される搬送波の周波数はΔφだけ変化する。ここでΔφは
と書くことができる。
このとき仮想的共振回路から出力される振幅は数式123から
だけ変化し、これから仮想的整流平滑回路の出力は
だけ変化することが分かる。つまりループゲインは
となる。
Aが誤差増幅器の直流ゲインの場合、数式191に従い
と置くと、直流的ループゲインは
と表される。帰還回路としての安定化直流電源には、出力電圧の安定性を高めるために一般に大きな直流的ループゲインが実装される。
δの近傍
図 13に直流的ループゲインをφの関数として示す。これから分かるようにループゲインはφ
= δ/√2において最大値となり、φ=3δで最大値のほぼ1/4となる。またδの近傍では
が成り立つ。
共振回路の遅れと整流平滑回路の遅れ
シンプル電源における共振回路の遅れと整流平滑回路の遅れを考える。共振回路の極の遅れをf sec, 整流平滑回路の極の遅れをμ secとすると、
である。共振回路の遅れはδによって
と評価することができる。これから
が成り立つことが分かる。
固有多項式の根
シンプル電源を記述する微分方程式系において、出力電圧が参照電圧の付近にある場合、言い換えると平衡点の近傍での出力電圧の振る舞いはこの微分方程式系の極によって与えられる。シンプル電源を記述する微分方程式系 数式188〜数式190の極は固有多項式 数式198の根によって与えられる。
帰還の安定性は固有多項式の根によって決まる。微分方程式系がLyapunovの意味で安定であるためには、固有多項式のすべての根の実部の負であることが必要十分条件である。
電源を記述する微分方程式系がLyapunovの意味で安定であることは、電源の満たすべき必要条件である。Lyapunovの意味での安定性は電源の安定性としては十分ではない。例えばLyapunovの意味で安定な電源の出力電圧が振動する場合が存在する。また出力電圧が参照電圧で設定された出力電圧の近傍で振動する場合、あるいはまた長い時間をかけてに振動しながらゆっくり安定する場合もある。
電源としての望ましい特性は、固有多項式の適切な根の配置によって実現される。つまり電源のδ, μ, νの値に応じてB, Nの値を選び、適切な根の配置を実現することにより、望ましい特性が実現される。固有多項式の根のなかでその実部の絶対値が最小である根を特性代表根と呼ぶ。特性代表根は多項式の根のうちで実部が一番原点に近い根である。帰還により安定化された電源の出力電圧の特性はこの特性代表根に強く依存する。
後ほど述べるように、特性代表根が虚根から分離された実根である場合に電源は望ましい特性を実現する。次節では実用的な仮定の下で特性代表根が虚根から分離された実根となる条件を求める。
根の実部が負
固有多項式は3次方程式であるので少なくとも1個の実根h0をもつ。固有多項式m(h)=0が3個の実根を持つ場合、方程式m(h)=0の係数a0, a1,
a2, a3はすべて正であることから正の実根を持ち得ないので、これらの実根はすべて負となる。
固有多項式m(h)=0が1個の実根h0と2個の虚根h1, h2を持つ場合を考える。 方程式の根と係数の関係から
が成りたち、2個の虚根h1, h2について

が成りたつので、
によりhrを定義すると、数式213は
となり、これから虚根の実部が負となるためには、
であることが必要充分であることがわかる。つまり
が成り立つ。
特性代表根が実根
固有多項式は3次方程式であるので少なくとも1個の実根h0をもつ。固有多項式m(h)=0が3個の実根を持つ場合、方程式m(h)=0の係数a0, a1,
a2, a3はすべて正であることから正の実根を持ち得ないので、これらの実根はすべて負となる。絶対値の最小の特性代表根h0は実根となり、h0について
と評価できる。
固有多項式m(h)=0が1個の実根h0と2個の虚根h1, h2を持つ場合を考える。 2個の虚根h1, h2の実部をhrとすると 数式213は
となり、これから実根h0が特性代表根であるためには、
であることが必要充分であることがわかる。つまり
が成り立つ。
固有多項式m(h)
固有多項式m(h)は数式198により
となる。
Zeを数式193により置き換えると

となる。
またm(h)は次のように書くことができる。
これから特にφe=0の場合には次のように書ける。
固有多項式-m(h)のh=-δにおける値は
となる。
固有多項式-m(h)のh=-1/μにおける値は
と簡単になる。
関数のグラフy = -m( h )
関数-m(h)のグラフy = -m( h )は3次曲線である。従ってグラフは変曲点に関して対象である。ところが変曲点はφeに依らないことが次のようにして分かる。

となり、変曲点hτ
となる。グラフy =
-m( h )のh軸との交点を考えると、-m(hτ)>0のとき区間[-hτ 0]に実根を持ち、虚根の実部はhτより小さくなる。つまりφeに依らず-m(hτ)>0の成り立つとき固有多項式の特性代表根は虚根から分離された実根となる。
固有関数m(h)のh=-a1/σにおける値
hが、σ<2μδ+1を満たすσによりh=-a1/σと書けるとき固有関数-m(h)を次のように計算する。hτにおける-m(h)の値はσ=3の場合に当たる。


(2δμB+B-σμ)≧0の場合
数式233において、σは
を満たすので
である。したがって
(2δμB+B-σμ)≧0の場合、φeによらず
が成り立つ。
(2δμB+B-σμ)<0の場合
数式233の右辺をφeの関数と考えEσe)と表す。まずEσ(x)のxに関する微分を計算する。

ここでx=0におけるEσ´ (x)を求めると、仮定から
であるので
であることがわかる。またxが大きいところでは明らかに
となるので、
を満たすxの存在することがわかる。
ここでEσ(x)のxに関する二階微分を計算すると

となる。
この式と仮定からx ≧ 0において
がなりたつ。これからEσ(x)はxの関数として下に凸であることがわかる。数式239と数式240とから、数式241を満たすxがただ一つ存在する。数式241を満たすxをφσと書くと、関数Eσ(x)はx=φσにおいて最小値を持つ。Eσ´´(φσ)=0
から
これからφσを使ってNを
と表すことができる。
Nはφσ≧0においてφσの単調増加関数である。 数式245を使って最小値Eσσ)を求めると、

となる。
これからEσσ)が正となるφσがφσ>0を満たすためには
が必要十分条件であることがわかる。仮定からσ≧3であり、数式212からμδ≧1であるので、数式247の条件が満たされ、最小値Eσσ)が正となるφσ>0の変域が存在する。最小値Eσσ)が正となるφσの変域は次のように求めることができる。
Gσ
と定義する。ただしgσ(x)は次のように定義する。
ここで数式249は数式246の右辺の部分項である。
Gを
と定義する。 gσ(x)はx ≧ 0においてxの単調減少関数である。gσ(x)のx=δ/√2における値を計算すると
これから 任意のσ(≧3)に対して
の成り立つことがわかる。ここでφσ s
と定義する。また
と定義すると
が成り立つ。
関数gσ(xσ)の値を計算し、その値が正であることを示す。
であり、ここでσ≧3かつδμ≧6であれば
であることからgσ(xσ)>0であることがわかる。
φが小さいところでのEσ
Eσは固有多項式m(h)におけるh=-a1/σにおける値であり、固有多項式の定義198から分かるようにm(h)のh=-a1/σにおける値は駆動周波数φeの関数となる。この関数がEσe)と表されている。Eσ(x)は

である。
2δμB+B-σμ<0であるので、数式258はNが大きいときに小さいxにおいてEσ(x)が負となる可能性がある。Nが大きくなればなるほど負となる可能性は高くなる。一方、xが大きくなると数式258の括弧の中の第1項が急速に大きくなるので、xが大きところではNに依らずEσ(x)>0となる。これからEσ(x)>0を実現するNはxが小さいときにEσ(x)>0となるNを求めることに帰着する。
Nの上限
微分方程式系 数式188〜数式190においてはφeの変域はφe≧0であるが、実際の回路で駆動周波数として使用される周波数の範囲の下限は
となる。そこで駆動周波数の範囲についてFTとFPをそれぞれ

と定義する。φeによらずEσ≧0となる条件を明らかにするためにφeの変域についてFTとFPとを分けて議論する。
x がFTに含まれる場合、Eσ(x)はφσにおいて最小値を取るのですべてのFTに含まれるxたいしてEσ(x)≧0となることとEσσ)≧0となることとは同値であり、これからφσがGσに含まれることが従う。一方、Nはφσの単調増加関数であり、φσ≦φσ s<δ/√2であり、数式245からNの最大値について

となることが分かる。
x がFPに含まれる場合には、φσについてφσがFPに含まれる場合とφσがFPに含まれない場合とがある。
φσがFPに含まれる場合、Eσ(x)はφσにおいて最小値を取る。FPに含まれるすべてのxたいしてEσ(x)≧0となるためにはEσσ)≧0となることが必要である。しかしδ/√2 ≦ φσであるので、Eσσ)≦0となり、φσ はFPに含まれないことが分かる。
φσ がFPに含まれない場合、Eσ(x)は、x=δ/√2において最小値をとるのでFPに含まれるxに関して単調に増加する。したがってすべてのFPに含まれるxたいしてEσ(x)≧0となるためには、x=δ/√2においてEσ(x)≧0となることが必要十分である。
すなわち
が成りたつことが必要であり、これから
であることが分かる。
以上の結果から、(2δμB+B-σμ)<0の場合には、φeに依らずEσe)>
0がなりたつためにはNの大きさに上限があり、上限の大きさはσのほかφeの変域に依存することが分かる。
これをσ=3の場合についてまとめると、(2δμB+B-3μ)≧0ならば φeとNとに依らず-m(hτ)>0が成り立ち、(2δμB+B-3μ)<0ならば φeに依らず-m(hτ)>0が成りたつためにはNに上限があり、上限の大きさはφeの変域に依存することが分かる。
φσのφ3による表現
(2δμB+B-3μ)<0の場合、σについてσ=3のときφσをφ3と表すとNは φ3により
と表される。一方、Nはσに依らないことから、φ3とφσ
により結ばれているので、φ3からφσは一意的に決まる。
(2δμB+B-3μ)≧0 かつ (2δμB+B-σμ)<0であるσの場合には、適当に決められたNがσに依らないことからNとφσ
により結ばれているので、Nからφσは一意的に決まる。このようにして決まる φσにたいして
であれば、すべてのφeに対して
となることがわかる。
これから(2δμB+B-3μ)<0が成り立つが、しかしすべてのφeに対して
はなりたたない場合、条件
を満たすηに対して、φ3から決まるφη
を満たすならばすべてのφeに対して
となることが分かり、したがってm(h)=0は3個の実根を持ち、これから3個の実根を持たないならば特性代表根は虚根と分離した実根となることが分かる。
上の議論では下に有界なφeの変域だけを考えたが、実際の電源では φeの変域は上にも有界であるうえに、δ, μ, μは負荷により変化する。このため特性代表根が虚根から分離した実根となる条件は、数式225をもとに数値的に求めることが必要になる。
整流平滑回路の充電と放電
シンプル電源では、出力電圧は整流平滑回路により生成される。整流平滑回路は内部にキャパシタを含み、その出力電圧はこのキャパシタによってバッファされる。このバッファリングにより出力電圧に含まれるリップルが減少する。たとえば出力電圧が正である場合、整流平滑回路は電荷をキャパシタに汲み上げ出力電圧を上昇させることはできるが、キャパシタから電荷をくみ出し電圧を下げることはできない。整流平滑回路の出力電圧は,おもに負荷抵抗と平滑回路のキャパシタンスによって決まる時定数より早く降下することができない。整流回路に入力される電圧がこの時定数より早く降下した場合、整流回路の出力は平滑回路のキャパシタンスを充電することができない。つまり整流平滑回路に電流は流れ込まない。
通電状態
そこで整流平滑回路に電流が流れている通電状態と電流が流れ込まない切断状態を区別する。 切断状態では出力電圧の低下を伴う。一定の負荷のもとで一定の電圧を出力する状態は通電状態である。一定の負荷のもとで参照電圧で指定された一定の電圧を出力する状態では、出力電圧の上昇を実現する整流平滑回路へ流れる電流の増加、また下降を実現する電流の減少は、整流平滑回路に流れる平衡電流の変化に帰着するので、通電状態での電源の動作は微分方程式系数式149 数式151で記述するこが可能となり、この微分方程式系のμはこの平衡状態を実現する電流が流れたときの整流平滑回路の時定数である。このことから電圧が上昇するときの時定数と下降するときの時定数が第一近似で一致することがわかる。
通電状態では帰還が有効に働くので、定常状態では出力電圧と参照電圧の差は微少に保たれる。通電状態では帰還が有効に働くので、微分方程式系の安定性と電源の安定性は等価である。電源が安定となる条件は、微分方程式系が安定となる条件から、特性代表根の実部が負であり、実部がその虚部に較べて絶対値において同程度あるいは大きいことである。
切断状態
出力電圧がたとえば参照電圧より高くなり、整流平滑回路に流れる電流をゼロまで減らしても出力電圧が参照電圧より高い場合に切断状態となる。切断状態では帰還が有効に働かないために出力電圧と参照電圧の差は有限な値となる。切断状態ではキャパシタに蓄えられた電荷を負荷の抵抗を通して放電することにより出力電圧は下降する。放電する場合の時定数は、キャパシタと負荷の抵抗によって決まる時定数より小さくなることはない。
切断状態は、出力電圧が参照電圧より低くなった時点で整流平滑回路に電流が流れ始めるので、通電状態に切り替わる。
切断状態から通電状態へ切り替わり
通電状態に切り替わると、出力電圧が上昇する。出力電圧が上昇するためには、共振回路が整流平滑回路のキャパシタを充電し、かつ負荷に電流を供給することが必要である。充電する場合の時定数は負荷が軽くなるに伴い小さくなり、負荷に依存する。しかし通電状態では帰還が有効に働くので、出力電圧の立ち上がりの時定数は帰還によって制御され、固有多項式の特性代表根によって決まる。
出力電圧の立ち上がりにおけるオーバーシュート
この時の出力電圧の立ち上がりにおいて、出力電圧のオーバーシュートが引き起こされると、出力電圧が参照電圧より高くなり再び切断状態が引き起こされる。この結果、切断状態と通電状態を繰り返す断通振動が立ち上がる。
断通振動が立ち上がらないためには、切断状態から通電状態への切り替わりに伴う出力電圧の上昇がオーバーシュートを引き起こさないことが必要であり、またオーバーシュートが引き起こされなければ帰還は出力電圧を上げる方向に働くので、帰還の安定性は微分方程式で記述された電源の安定性に帰着する。
特性代表根が実根でない場合、出力電圧の立ち上がりはオーバーシュートを伴うため、切断状態と通電状態を繰り返す断通振動が立ち上がる。
特性代表根が実根の場合微分方程式は安定であり、従ってこの微分方程式系で記述された電源は安定となる。
たとえばノイズにより偶発的に出力電圧が帰還の求める出力電圧より低くなった場合は出力電圧と参照電圧の電圧差が微少であるために、微分方程式系で記述されるように出力電圧を下げる帰還が有効に働いて出力電圧が降下すると考えても、整流平滑回路は出力電圧を下げることが出来ないので整流平滑回路は切断状態になると考えても、切断状態と通電状態を繰り返す断通振動の立ち上がらない限り実質的な違いはない。
固有多項式の根とオーバーシュート
固有多項式m(h)は3次多項式であるので、m(h)=0の根はすべて実根である場合と、1根が実根で他の2根が虚根である場合とがある。それぞれの場合についてステップ応答を考察する。
すべての根が実根である場合には、これらの根が単項であれば ステップ応答は単調に変化する。重根となるのは時定数が短い場合に限られるので、急速な減衰によりオーバーシュートを無視できる。1根が実根、2根が虚根である場合には、実根が特性代表根となり、かつ虚根の実部が特性代表根から十分に離れているので、ステップ応答に現れる虚根に起因するオーバーシュートは無視できる。
整流平滑回路によるリップル
数式188〜数式190からなる微分方程式系で記述される電源では、仮想的整流平滑回路の出力にリップルは重畳していない。しかし実際の整流平滑回路の出力には整流に伴う高周波の周期的なリップルが重畳している。特性代表根ξが虚根から分離された実根であるとき、 たとえば出力電圧の時間的経過は1-exp(-ξt)と表される。出力電圧の安定化に関する信号の立ち上がりの時定数は1/ξとなり、整流に伴う高周波の周期的なリップルの周波数に比べて十分に低い。帰還が有効となる周波数帯域の外側にあるリップルをフィルタで減衰させることにより、リップルによるフィードバックブレイクダウンを防ぎ、大きな直流的ループゲインを実現することが可能となる。
回路定数の選定
誤差増幅器の伝達関数を
と仮定し、帰還が安定となる実用的な十分条件を求めた。共振回路を記述するパラメータには、共振周波数、共振周波数におけるゲイン、共振の半値幅がある。共振回路が整流平滑回路を充電する過程を記述するために、整流平滑回を一次遅れで近似することにより時定数μを、また出力インピーダンスと負荷と整流回路における電圧の倍圧に依存して決まる乗数νを導入した。共振回路を固定すると、その共振回路が負荷に対して実現する昇圧比からδの大まかな値が決まる。負荷の範囲からδの変域を[Δmin, Δmax]と求める。 また共振回路の出力インピーダンスから、整流平滑回路のキャパシタンスを充電する時定数μを見積もることが可能となる。キャパシタンスを充電する時定数μは負荷とキャパシタンスによって大幅に変化する。
帰還がかかっている場合の出力電圧の立ち上がりの時定数μFを見積もる。多くの場合帰還により立ち上がり時間は少なくとも一桁程度は改善されるので、たとえば
と選ぶ。時定数μFにたいして、σを
を満たすように選ぶ。 このとき(2δμB+B-σμ)≧0 が成り立つならば
が成り立つ。
(2δμB+B-σμ)<0ならば、数式62、数式63、数式64に従いNを決めることにより
が成り立つ。
電源が安定であるためには、特性代表根が虚根から分離れた実根となることが必要であるが、このときBの選び方には自由度がある。B > 0と選ぶことによりNしたがって直流的ループゲイン制御することができる。
数式188〜数式190からなる微分方程式系では考慮されていないリップルについて、Bはリップルの微分を帰還するする係数でもある。したがってB = 0と選べるように直流的ループゲイン従ってNの値を定めることも選択肢の一つである。おもに特性代表根によってきまる帰還が有効となる周波数帯域の外側にあるリップルを減衰させるフィルタを組み込むことによりリップルの影響を抑えることができる。リップルの減衰は帰還が有効な周波数帯域に反比例するが、帰還に有効な帯域が狭くなる帰還における応答も遅くなる。
すべてのσ(3≦σ<2μδ+1)に対して2δμB+B-σμ≧0ようにBをが選ばれている場合には
が成り立ち、また数式229から
のとき
がNによらず成り立つ。
この場合、整流平滑回路による極-1/μを伝達関数1+Bsが補償するので、Nに依らず安定となる。しかしこのような大きなBは実際の回路では現実的でない可能性がある。Bはリップルの微分を帰還するする係数でもあるのでNを大きくしていくとリップルの影響を無視できなくなる場合がある。
搬送波の周波数の穏やかな変化
電源の動作を記述する微分方程式系は搬送波の周波数が共振周波数より高い場合も低い場合も、ともに数式188〜数式190となる。従ってこの 微分方程式系から導かれる帰還が安定な条件は搬送波の周波数が共振周波数より高いか低いかに依存しない。一方、文献3では出力電圧を搬送波の周波数に帰還して出力電圧を安定化する帰還において、搬送波の周波数が共振周波数より低い場合により安定になることが述べられている。搬送波の周波数が共振周波数より低い場合に帰還がより安定になる条件を
微分方程式系 数式188 数式190は定式化してないことがわかる。この微分方程式系は、負荷が変化したときの搬送波の周波数の変化が出力電圧に引き起こす電圧の変化を考慮していない。つまり出力電圧が変化したときの搬送波の周波数の変化が穏やかであれば、帰還の安定性は搬送波の周波数が共振周波数より高いか低いかに依存しなくなる。たとえば誤差増幅器の出力あるいはその微分を振幅に帰還することにより搬送波の周波数の変化を穏やかにすれば、搬送波の周波数の変化による出力電圧の変化は、出力電圧を安定化する帰還により安定化することができる。
特許文献2に示されているバッファー回路の出力電圧をバッファー回路のオフセット電圧へ帰還する出力電圧の安定化は、整流平滑回路のグランド側の入力を駆動する高速電力増幅器を導入することにより実現される。誤差増幅器の出力が高速電力増幅器を通してグランド側の入力のオフセット電圧へ帰還される。整流平滑回路の出力電圧のそのオフセット電圧へのこのローカルな帰還は、出力電圧の搬送波の駆動周波数への帰還にくらべて高速であるので、ローカルな帰還は誤差増幅器の出力に対して低域通過フィルタとして働き、搬送波の周波数の変化を穏やかにする。つまり特許文献2に示されているバッファー回路の出力電圧のバッファー回路のオフセット電圧へ帰還は、搬送波の周波数の変化を穏やかにする帰還の一例である。
本発明の実施例として、共振回路として圧電トランスを使用した高圧発生回路とその帰還回路からなる直流安定化高圧電源について、高圧発生回路のパラメータから本発明の方法に従い位相補償回路の伝達関数を決定し、帰還が安定であることを示す。
直流安定化高圧電源
圧電トランスを共振回路として使用した直流安定化高圧電源は高圧発生回路と帰還回路から構成される。高圧発生回路はドライバー回路、共振回路として使用される圧電トランス、整流平滑回路から構成される。帰還回路は誤差増幅器および周波数変調回路から構成される。ドライバー回路は外部の電源よりドライバー回路に供給される直流電圧を、周波数変調回路の出力する矩形波と同一の周波数を持つ高周波交流に変換し、この高周波交流により圧電トランスを駆動する。圧電トランスはこの高周波交流を高電圧の高周波交流に昇圧する。整流平滑回路は、圧電トランスの出力を直流の高電圧に変換し、これを高圧電源の出力として負荷に供給するとともに、帰還回路に入力する。誤差増幅器は帰還回路に入力された出力電圧と参照電圧を比較することによりズレを検出し、このズレを周波数変調回路に入力する。周波数変調回路は入力に比例した周波数を持つ矩形波をドライバー回路に出力する。このようにして出力電圧は圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数にフィードバックされ、安定化される。
図 1に示すように圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数は、圧電トランスの共振周波数より高くなるように選ばれている。したがって、出力電圧が参照電圧より高い場合には、周波数を上げて共振周波数から遠ざかり、また逆の場合には周波数を下げて共振周波数に近づく。
この直流安定化高圧電源について、図 15を参照しながら説明する。次に、この高圧電源のシミュレーションを行うシミュレーション用回路を構成する。さらに、このシミュレーションをもとにしたパラメータの測定から、高圧電源の安定な動作を実現する回路定数を求める。最後に、この回路定数の電源が広い範囲の負荷と出力電圧に対して安定に動作することシミュレーションによって示す。
圧電トランス
圧電素子に外力を加えて変形させれば電圧が発生し、逆に電圧を加えれば応力が発生し変形する。圧電トランスではこの効果を利用して、1次側で電気振動をいったん機械振動に変換して二次側に伝送し、二次側でこれを再び電気振動に戻すことにより、電気エネルギーを伝送する。二次側はキャパシタンスであり、ここに機械的振動を通して電荷が注入されることにより電圧が発生する。
圧電トランスは内部に共振回路を含む。このため圧電トランスは、通常の電磁トランスと異なり、鋭い周波数特性や大きな負荷依存性を示す。この圧電トランスが高圧発生回路に使用されている。圧電トランスの出力に負荷抵抗を接続し、入力電圧と出力電圧の比である昇圧比を考える。図 16には、それぞれの負荷抵抗に対して昇圧比を周波数の関数として実歳に測定したグラフが示されている。このグラフから圧電トランスは共振周波数の付近で大きな昇圧比を示すことが分かる。
整流平滑回路
整流平滑回路は、図 15に示すようにキャパシタとダイオードをカスケードに接続した3段コックロフト・ウォルトン回路からなる昇圧整流回路とリップルの低減を目的とする出力キャパシタンスから構成される。出力される高電圧はコックロフト・ウォルトン回路により生成される。コックロフト・ウォルトン回路の出力に接続されている負荷の値がきわめて大きいとき、n段の理想的なコックロフト・ウォルトン回路は振幅Eの交流が入力に加えられているとき、電圧2nEの直流を出力する。この昇圧整流における電圧の昇圧比は負荷に依存するが、コックロフト・ウォルトン回路の出力に接続されている負荷をコックロフト・ウォルトン回路の入力から見ると、負荷の大きさはこの昇圧比の2乗に反比例することを意味する。つまりコックロフト・ウォルトン回路は昇圧整流回路とともに抵抗変換器としても働く。
ドライバー回路
圧電トランスを入力端子から見るとキャパシタンスが見える。キャパシタンスを効率的に駆動するためには正弦波を使用することが不可欠であり、インダクタンスと共振させることにより、ドライバー回路は近似的な正弦波を作り出している。
ドライバー回路は、2個のインダクタンスL1、L2と2個のMOSFETQ1、Q2とからなる2組の共振回路とFET駆動回路とからなる。周波数変調回路の出力はFET駆動回路に入力される。FET駆動回路は二組のFETを周波数変調回路の出力であるパルス波に同期して交互にオン・オフする。インダクタンスの値は、このインダクタンスと圧電トランスのキャパシタンスとによって決まる共振周波数が圧電トランスの共振周波数とほぼ等しくなるように決められている。この結果、FETのオン・オフの遷移は、FETに印加されている電圧がほぼ0 Vのときに行なわれる、いわゆるゼロボルトスイッチングが実現される。
誤差増幅器
誤差増幅器は分割抵抗と引き算回路と位相補償回路とから構成される。引き算回路は、分割抵抗により分割され端子Xに入力される出力電圧と、出力電圧を設定するために外部より端子Yに供給される参照電圧を比較し、この電圧の差に端子Zに入力された基準動作電圧を加えて出力する。
分割抵抗の分割比は数式138で定義されている。従ってこの分割抵抗の分割比をd0とすると、次のようになる。
位相補償回路は基準動作電圧を接地電位とした反転増幅器である。この出力はダイオードD1により基準動作電圧から限られた範囲の電圧にクランプされている。
周波数変調回路
周波数変調回路は電圧制御発振器と分周器から構成される。タイマーとして用いられるTLC555が電圧制御発振器として使用されている。端子Aに入力される電圧によって決まる周波数をもつ矩形波が端子Bより出力される。この矩形波はフリップフロップ74HC73からなる分周器の端子CLKに入力され、1/2に分周されたデューティ比50%の矩形波が端子Qおよび-Qより出力される。分周器より出力される100 kHzから200 kHzまでの矩形波が周波数変調回路の出力であり、これが駆動回路に入力される。
端子Aに入力される電圧が1 V変化すると、端子Qおよび-Qより出力される周波数は約40 kHz変化する。数式72で定義されるkを計算し、これをk0とすると、

補助電源
補助電源は、誤差検出回路に基準動作電圧を供給するための安定化電源である。
シミュレーション用回路
この直流安定化高圧電源のシミュレーション用回路を図 17に示す。直流安定化高圧電源をシミュレーションすることによりパラメータの測定を行い、これをもとに安定な帰還を実現するNおよびBを求め、さらに帰還が安定であることをシミュレーションにより示す。
シミュレーション用回路における高電圧発生回路は、圧電トランスがその等価回路に置き換えられていることを除けば、直流安定化高圧電源の回路が忠実に再現されている。シミュレーション用回路における帰還回路は基本的には線形な回路である。このため帰還回路の入力と出力の関係を再現する簡単な回路がシミュレーション用回路に採用されている。
圧電トランスの等価回路
この高圧電源で使用されている圧電トランスの等価回路とそのパラメータを図 18に示す。 圧電トランスの等価回路には理想トランスが含まれている。図 19のような、1次側コイルと2次側コイルの巻き線比がnである理想トランスを考える。1次側電圧E1と1次側電流I1、2次側電圧E2と2次側電流I2は次の関係式を満たす。この理想トランスのシミュレーションには、電圧制御電圧源と電流制御電流源とを使用して理想トランスを実現した図 20に示す回路を使用する。
周波数変調回路のモデル
入力と出力の関係を数学的関係式を用いて指定できるビヘービアモデルと呼ばれる回路素子をシミュレーションに使用することができる。周波数変調回路のシミュレーション用回路は、2個のビヘービアモデルA, Bと振幅制限器を組み合わせて図 21に示すように構成される。振幅制限器には振幅の上限HIと下限LOおよび利得GAINを指定することができる。ビヘービアモデルAは、入力の積分を出力する。ビヘービアモデルBには数式70に相当する式が設定されている。この結果、ビヘービアモデルAに入力される電圧(すなわち誤差増幅器の出力)に比例した周波数を持つサイン波がビヘービアモデルBから出力される。振幅制限器はこのサイン波を増幅して、その振幅をクリップする。こうして、入力電圧に比例する周波数を備えたデューティ50%の矩形波が出力される。
誤差増幅器のシミュレーション用回路
誤差増幅器のシミュレーション用回路を図 22に示す。誤差増幅器は引き算回路と位相補償回路から構成される。引き算回路は2入力1出力のビヘービアモデルと増幅器からなる。ビヘービアモデルは入力の差が出力となるように設定されている。ビヘービアモデルの出力は増幅器によって増幅され、位相補償回路に入力される。
位相補償回路は、ゲイン1の増幅器とこれにに付属する積分回路、微分器とこれに付属する積分回路、さらに2入力の加算器1個とから構成される。微分器はゲインBの増幅器とビヘービアモデルとから構成される。関数DDT(x)の設定されビヘービアモデルは入力の時間微分を出力する。このビヘービアモデルからの出力がゲインBの増幅器に入力され、この増幅器からの出力が微分器の出力となる。微分器のゲインをBとするとき、位相補償回路の伝達関数は
によって与えられる。ゲイン1の増幅器および微分器に付属する積分回路は、帰還が有効となる周波数帯域の外側にある高周波のノイズを積分することにより減衰させることを目的としている。この図においてSは参照電圧を生成する電圧源である。引き算回路の増幅器に設定されたゲインはCである。引き算回路の増幅器に設定されたゲインを変えることにより直流的ループゲインを制御することが可能となる。図 17のシミュレーション用回路ではB=0.0005, C=30に設定されている。
共振特性の近似
直流安定化高圧電源の共振回路に入力される搬送波の振幅等の共振回路の諸要素が固定されているので、これから共振回路のパラメータrが決まる。共振回路のパラメータδは電源に接続される負荷に依って決まる。この負荷が接続された共振回路の共振周波数における出力電圧は
で与えられる。負荷が軽いとδは小さくなり、したがって共振周波数における出力電圧は高くなる。負荷がδに対応するとき、出力電圧φの関数となる。φがφeのとき出力電圧は
で与えられる。φeが小さくなると出力電圧が高くなり、大きくなると低くなる。
帰還が有効に働いている回路では、特性はおもに帰還によって決まる。直流安定化高圧電源に帰還が有効に働いている場合、電源の特性は高圧発生回路あるいは整流平滑回路の特性に大幅に依存することはない。この意味では電源の特性は、たとえば高圧発生回路のrあるいは整流平滑回路μあるいはνに敏感には依存しない。そこでおおまかにrを見積もる簡単な方法を考える。
おおまかなrの見積もり
負荷の接続された整流平滑回路について、その入力電圧から出力電圧への伝達関数を
で近似した場合、μ,
νは負荷あるいは出力電圧に依存する。負荷の変化は共振回路のδに反映され、また出力電圧はφによって制御される。この意味でμ, νはδ, φの関数と考えられる。しかしながらこれらの関数の具体的な表現を求めることは容易ではない。
そこで圧電トランスと整流平滑回路とから構成される高圧発生回路を考える。高圧発生回路の出力にあらかじめ与えられた負荷が接続されている場合、出力される高電圧は高圧発生回路に入力される搬送波の周波数に依存する。周波数に対して出力される高電圧をプロットすると、このグラフは共振特性を示す。またこの共振特性の第一近似は数式120から
によって与えられることが分かる。
この近似により共振特性の周波数に関する半値幅を求めることができる。この半値幅を角速度に書き直すことによりδを、また高電圧の最大値をvmaxとするとき
からrを求めることができる。なおこのように高圧発生回路の出力から直接rを求めた場合、ν=1なることは明かである。
高圧発生回路のパラメータの測定
共振特性の測定回路を図 23に示す。この測定から得られる共振特性は、ドライバー回路、圧電トランス、整流平滑回路から構成された高圧発生回路の共振特性である。負荷抵抗を変えて1 kHzステップで測定された共振特性を以下に示す。それぞれの負荷の共振特性から数式290に従い、rを計算する。このrは負荷に応じてきまる。以下の共振特性から計算したrが、荒い近似ではあるが、負荷に依らず狭い範囲の値をとるのは、共振特性の第一近似が数式289によって表されるためであろう。
負荷20 MΩの共振特性
共振周波数における出力電圧は7.5 kV,
半値幅は周波数で980 Hzとするとδは6158であり、これからr20は0.46×108と見積もることができる。
負荷30 MΩの共振特性
共振周波数における出力電圧は8.5 kV,
半値幅は周波数で930 Hzとするとδは5843であり、これからr30は0.49×108と見積もることができる。
負荷40MΩの共振特性
共振周波数における出力電圧は9.1 kV,
半値幅は周波数で910 Hzとするとδは5718であり、これからr40は0.52×108と見積もることができる。
負荷50MΩの共振特性
共振周波数における出力電圧は9.4 kV,
半値幅は周波数で900 Hzとするとδは5655であり、これからr50は0.51×108と見積もることができる。
直流的ループゲイン
誤差増幅器の引き算回路のゲインをCと書くと、Nは数式207により
と書ける。ここでν=1であり、r, k, dをそれぞれ0.5×108, k0,
d0で置き換えると、
となる。このとき、直流的ループゲインの最大値は図 13からわかるように
で与えられる。C=1かつδ=6000のときのこの値は105となる。
安定な帰還のシミュレーション例
このようにして構成された帰還が安定であることを、シミュレーション用回路 17を用いて示す。負荷抵抗20MΩに電圧2.5 kVを出力する場合と、負荷抵抗50MΩに電圧3 kVを出力する場合について、シミュレーションの結果を図 28と図 29とに示す。それぞれの図には誤差増幅器の出力、引き算回路の出力、参照電圧の時間的経過が、横軸を時間軸として、縦軸1を誤差増幅器の出力、縦軸2を引き算回路の出力、縦軸3参照電圧として示されている。
本発明は、共振回路の出力である高周波交流を整流することにより生成される直流電圧を共振回路を駆動する搬送波の周波数へ帰還する簡単な帰還回路の構成とその回路定数を与える。本発明では、出力電圧のずれを共振回路を駆動する搬送波の周波数に帰還する伝達関数に
を仮定し、帰還が安定となる実用的な十分条件を求めた。この結果圧電トランスを共振回路として使用した直流電源において、簡単な帰還回路により入力電圧の変動に対して、また負荷電流の変化に対して安定な出力電圧が実現され、さらに広い範囲の負荷に対して可変な出力電圧の供給が可能となる。
共振周波数と駆動周波数の範囲 伝達関数h0(s)とその近似であるhT 0(s)の昇圧比の比較 伝達関数h0(s)とその近似であるhT 0(s)の位相の比較 昇圧比の周波数依存性 昇圧比のQ値依存性 共振周波数の負荷依存性 電源 共振回路と整流平滑回路 仮想共振回路と仮想整流平滑回路 等価電源 シンプル電源の一例 シンプル電源の模式図 直流的ループゲインのφ依存性 圧電トランスを使った直流安定化高圧電源のブロック図 圧電トランスを使った直流安定化高圧電源 測定による昇圧比の周波数依存性 シミュレーション用回路 圧電トランスの等価回路 理想トランス 理想トランスのシミュレーション用回路 周波数変調回路のシミュレーション用回路 誤差増幅器のシミュレーション用回路 共振特性の測定回路 負荷20MΩの共振特性 負荷30MΩの共振特性 負荷40MΩの共振特性 負荷50MΩの共振特性 負荷20MΩに3.5 kVを出力する場合 負荷200MΩに3.5 kVを出力する場合

Claims (5)

  1. 共振回路の共振周波数をωr、Q値をQ、共振周波数における昇圧比をgrとするときδ, ω0およびcを

    と定義し、また定数wを振幅として時間の関数ψを位相として周波数変調された搬送波を
    と書いたとき、搬送波の変調帯域が共振回路の共振周波数に較べて十分に狭い共振回路の伝達関数を
    によって近似し、数式4のψからφを
    と定義することにより数式4に記載された周波数変調された搬送波の周波数を
    と表し、また rr
    および ri


    により定義するとき、伝達関数が数式5で与えられる共振回路に数式4で与えられる搬送波を入力したとき共振回路から出力される搬送波の振幅は
    連立微分方程式

    を満たすp, qにより
    と表すことが出来るので、共振回路から出力される搬送波を整流平滑して生成される直流電圧を、整流平滑回路の時定数をμまた整流平滑回路における振幅の乗数をνとした一次遅れを表すzに関する微分方程式
    の解として求め、さらに整流平滑回路からの出力電圧zを参照電圧λと比較し、電圧の誤差を搬送波の周波数φに帰還する帰還回路の伝達関数が数式6に定義されたφと数式13のzと参照電圧λと正数k, d, A, BとφC とを使って、φ≧0の場合
    と表せる場合、数式14は
    と表すことができ、また数式13は
    となり、数式15、数式16とによりφは
    と表すことができるので、数式17により数式10, 数式11を

    と書き換え、数式18、数式19を数式16と連立させることにより次の正規な微分方程式系を導き、

    この微分方程式系の平衡点を(pe, qe, ze)とするとき、 pe, qe,
    zeおよびλはφeの関数として

    と表すことができ、この平衡点の近傍で線形化された微分方程式の固有多項式をm(h)とし、m(h)を
    と表すと
    として、係数 a0,
    a1, a2, a3

    となり、またφ≦0の場合、電圧の誤差を搬送波の周波数に帰還する帰還回路の伝達関数は数式17においてφを-φと置くことにより
    となり、また 数式10, 数式11はφを-φと置くことにより

    となり、数式34、数式35においてφを数式33に置き換えて得られ式は数式18、数式19と一致するので、このようにして導かれた正規な微分方程式は数式20、数式21、数式22からなる微分方程式系と同一となり、いずれの場合にも微分方程式の固有多項式は数式27および数式29、数式30、数式31、数式32によって与えられることがわかり、数式29、数式32において項k,d,ν,rはまとまってAまたはBとともに現れるので、
    と置き、さらに
    と表し、さらにこのB´を再びBと書くと、数式29〜数式32は次のように

    と再定義され、 数式27において定義されたMの固有多項式m(h)を、数式38〜数式41において再定義された係数a0,
    a1, a2, a3を用いて
    と定義すると、あらかじめあたえられたφeの変域のすべてのφeに対してm(h)=0の根の実部が負となり、かつ特性代表根が虚根から分離された実根となるようにBとNとを決めることにより安定な帰還を実現することを特徴とする方法。
  2. 請求項1の数式42で定義されたm(h)のグラフy = m( h )の変曲点hτ
    で与えられ、すべてのφeに対してm(h)=0の根の実部が負であり、かつ特性代表根が虚根から分離された実根となるためには
    が必要条件であることから、条件
    を満たすσにたいして Eσ
    により定義し、これをφeの関数と考えこれをEσe)と表すと、

    となり、これから

    ならばすべてのφeに対して
    となることがわかり、とりわけBがすべてのσ(3≦σ<2μδ+1)にたいして条件

    を満たす場合には
    となり、σ, μ,
    δ, N, φeに関係なくEσ≧0が実現し、数式42の固有多項式m(h)の特性代表根ξは
    を満たし、固有多項式の根がすべて実根でない場合には特性代表根は虚根から分離された実根となることが分かり、
    条件

    を満たす場合にはφσを次式
    により定義すると、Nはφσを使って
    と表すとき、Eσe)はφeσにおいて最小値Eσσ)すなわち

    を実現し、ここで最小値Eσが正となる条件
    はσ≧3かつμδ≧1であることから満たされ、したがってGσ

    により定義するとGσは空集合ではなく、さらにGを
    と定義すると、
    であることが分かり、
    σ=3の場合は、(2δμB+B-3μ)≧0ならば φeとNとに依らず-m(hτ)>0が成り立ち、(2δμB+B-3μ)<0ならば φeに依らず-m(hτ)>0が成りたつためにはNに上限があり、上限の大きさはφeの変域に依存し、σ=3のときのφσをφ3と表すとφ3とφσ (σ >3)の関係は
    (2δμB+B-3μ)<0の場合、Nは φ3により
    と表され、Nはσに依らないことからφ3とφσ
    により結ばれているのでφ3からφσは一意的に決まり、
    (2δμB+B-3μ)≧0 かつ (2δμB+B-σμ)<0であるσの場合には、適当に決められたNがσに依らないことからNとσは
    により結ばれNからφσは一意的に決まるので、
    を満たすηが存在し、
    あるいは
    を満たすようにNを決めることにより数式42の固有多項式m(h)の特性代表根ξは、このように選ばれたNにたいして
    を満たすので、固有多項式の根のすべてが実根でない場合特性代表根が虚根から分離された実根となるようにφeの変域に応じたNを選ぶにより安定な帰還を実現することを特徴とする方法。
  3. 安定化直流電源は、共振回路を駆動する搬送波を生成するドライバー回路とこの搬送波を入力とする共振回路と共振回路の出力である高周波交流を整流することにより当該電源の出力となる直流電圧を生成する整流平滑回路とにより構成された電圧発生回路と、電圧発生回路の出力電圧と参照電圧とを入力とする誤差増幅器と共振回路を駆動する搬送波の周波数を発生する周波数変調器とによって構成された帰還回路とから構成され、誤差増幅器の出力を入力とする周波数変調器はドライバー回路の発生する搬送波の周波数を制御する手段を持ち、電圧発生回路の出力である直流電圧を共振回路を駆動する搬送波の周波数に帰還することにより出力電圧を安定化する当該電源において、誤差増幅器に入力される電圧発生回路の出力電圧をzまた参照電圧の電圧差をλとするとき誤差増幅器の出力電圧がBを正数として
    と書けるとき、請求項1の固有多項式数式42の根がすべて実根となる根の配置あるい特性代表根が虚根から十分に分離された実根となる根の配置を実現する帰還により当該電源に接続された広い範囲の負荷に対して出力電圧を安定化することを特徴とする電源。
  4. 請求項3で与えられた安定化直流電源において、数式42により定義される固有多項式m(h)の特性代表根から決まる帰還が有効になる帯域にくらべて整流平滑回路の出力に重畳する整流に伴うリップルの周波数が高いので、帰還が有効となる周波数帯域より高い周波数成分をフィルタにより減衰させることにより直流的ループゲインの大きい安定な帰還を実現することを特徴とする電源。
  5. 安定化直流電源は、共振回路を駆動する搬送波を生成するドライバー回路とこの搬送波を入力とする共振回路と共振回路の出力である高周波交流を整流することにより当該電源の出力となる直流電圧を生成する整流平滑回路を含む電圧発生回路と、電圧発生回路の出力電圧とこの出力電圧を設定する参照電圧とを入力とする誤差増幅器と共振回路を駆動する搬送波の周波数を発生する周波数変調器を含む帰還回路とから構成され、誤差増幅器の出力により制御される周波数変調器はドライバー回路の生成する搬送波の周波数を制御する手段を備え、出力電圧の搬送波の周波数への帰還よる出力電圧の安定化において搬送波の周波数の急速な変化を抑制する帰還により出力電圧の搬送波の周波数へ帰還を安定化することを特徴とする電源
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