JP2008304368A - ステンレス鋼の非金属介在物評価方法 - Google Patents

ステンレス鋼の非金属介在物評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ステンレス鋼中の有害な介在物を迅速に且つ精度よく評価することができる介在物の評価方法を提供する。
【解決手段】 ステンレス鋼材から採取した試料を非酸化性雰囲気中にてアークで溶解することにより試料中の非金属介在物を浮上させ、冷却後表面に浮上・集積した非金属介在物の全介在物面積率を算出し、該全介在物面積率を用いてステンレス鋼材中における有害な非金属介在物を評価することを特徴とする。また、前記非金属介在物の評価が、予め作成した溶解前試料中のCaO濃度が25質量%以上の非金属介在物の質量率と溶解後試料表面の全介在物面積率との相関を示す検量線を用いてステンレス鋼材中における有害な非金属介在物の介在物質量率を推定するものであることを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、ステンレス鋼中の一定以上の大きさの介在物を迅速に且つ精度よく検出して該ステンレス鋼の品質評価を簡易に行えるようにするステンレス鋼の非金属介在物評価方法に関する。
ステンレス鋼中に含まれる酸化物などの非金属介在物(以下、単に「介在物」という。)のうち、比較的粒径の大きなもの(例えば10μm以上、特に100μm以上)では、成形時の割れや疲労破壊の起点となり、成形性や疲労寿命の劣化を惹き起こす等、製品品質に多大な影響を及ぼす。このため、ステンレス鋼中の介在物を正確に評価することはステンレス鋼の製造に際して極めて重要となる。
近年、ステンレス鋼の清浄度に対する品質要求は益々厳格化しており、製造技術の進歩によって介在物の個数密度が低減されてきた。それに伴って従来の介在物評価方法では正確な介在物の評価が困難となってきており、ステンレス鋼中の介在物を迅速に評価する新たな方法が求められている。
この点について詳述すると、従来より、ステンレス鋼の介在物評価方法として、供試試料の表面や断面を顕微鏡で観察し介在物の数を測定する顕微鏡観察法などが用いられてきたが、上述のようにステンレス鋼の清浄度が向上した結果、かかる方法では試料表面など限られた被検面積の観察から代表性のある介在物情報を得ることが困難になっていた。このため、統計的に有意なデータを得ようとした場合、観察する面積を増やさなければならず、評価に要する時間や労力が増加するという問題が生じていた。
このような問題を解決するため、試料を再溶融して表面に集積した介在物を評価するエレクトロンビーム(以下、「EB」という。)法(例えば、特許文献1参照。)やコールドクルーシブル法(例えば、非特許文献1参照。)などのいわゆる融解抽出法が検討されている。
これらの技術によれば、鋼全体に存在する介在物を試料の表面に集積するようにしているので、従来の顕微鏡観察法に比べて被検面積を低減することができ、鋼中の介在物を迅速に評価することができる。
特開平10−213579号公報 近藤裕之、他7名,「コールドクルーシブル浮揚溶解法を用いた鋼中介在物迅速評価」,鉄と鋼,社団法人日本鉄鋼協会,2003年,第89巻,第9号,p.120−124
しかしながら、上述の融解抽出法には、ステンレス鋼の介在物を評価する上でそれぞれ以下のような問題があった。すなわち、EB法は、比較的迅速に鋼中の介在物分析を行えるが、高温・高真空における溶解によって、介在物が浮上・集積するだけでなく、酸化物系介在物の分解が生じるため、ステンレス鋼中の介在物を適切に評価するのが困難であった。
一方、コールドクルーシブル法は、溶解温度が低いため、介在物の分解は生じにくいが、介在物が試料表面まで浮上し難いという問題があった。すなわち、上記「非特許文献1」によると、コールドクルーシブル法では、介在物の70%が試料表層から70μmの層に集中するため、試料外観を観察するだけでは介在物質量を定量的に評価することができない。そのため、介在物質量を定量評価するためには、溶解後試料を電解溶液中で電解し、試料表層の介在物を抽出する必要があった。このため、介在物評価の迅速性に問題があった。
それゆえ、本発明の主たる課題は、ステンレス鋼の品質に悪影響を及ぼす一定以上の大きさの介在物を迅速に且つ精度よく検出して該ステンレス鋼の品質評価を簡易に行えるステンレス鋼の非金属介在物評価方法を提供することである。
請求項1に記載した発明は、「ステンレス鋼材から採取した試料を非酸化性雰囲気中にてアークで溶解することにより試料中の非金属介在物を浮上させ、冷却後表面に浮上・集積した非金属介在物の全介在物面積率を算出し、該全介在物面積率を用いてステンレス鋼材中における有害な非金属介在物を評価する」ことを特徴とするステンレス鋼の非金属介在物評価方法であり、また、請求項2に記載した発明は、「前記非金属介在物の評価が、予め作成した溶解前試料中のCaO濃度が25質量%以上の非金属介在物の質量率と溶解後試料表面の全介在物面積率との相関を示す検量線を用いてステンレス鋼材中における有害な非金属介在物の介在物質量率を推定するものである」ことを特徴とする。
ここで、「アーク」とは、電気の放電現象(すなわちアーク放電)のことであり、「アークで溶解」とは、試料と電極との間にアークを発生させ、このアークによってもたらされる高熱で試料を溶解することである。溶解された試料中の介在物は、粒径10μm以上のものは試料表面に浮上するが、粒径10μm以下のものはアーク溶解による高熱で母相中へ溶解し浮上しない。この点は後で詳述する。
また、冷却後表面に浮上した非金属介在物の「全介在物面積率(mm2/g−steel)を算出」するとは、冷却後表面に浮上・集積した非金属介在物の全介在物の試料底面に投影した投影面積(以下、「全介在物面積」と云う。)を試料質量で除することで、その具体的方法は、走査型電子顕微鏡又は実体顕微鏡で得たアーク溶解後の試料表面の像を画像解析装置に取り込み、この画像解析装置で試料表面の全介在物面積を測定し、得られた全介在物面積をアーク溶解に供した試料の質量で除する。
この発明では、試料を溶解する際に、例えばArのような非酸化性雰囲気中でアークを用いて溶解するので、高温・高真空の条件下で行われるEB法と異なりステンレス鋼を試料とした場合であっても酸化物系介在物の分解を介在物評価に影響を及ぼさない範囲に止めることができる。
また、アーク溶解を用いることによって、約100g程度の試料を短時間で溶解させることができるので、1回の作業で得られる試料の測定結果も代表性が高いものとなる。
さらに、試料をアークで溶解することによって、ステンレス鋼中の無害な粒径約10μm未満の介在物は分解するため、試料表面にはステンレス鋼の品質に大きな影響を及ぼす粒径約10μm以上の介在物のみを浮上させることができる。そのため、有害な介在物のみ評価でき、精度の高い品質評価が可能である。この点については後で詳述する。
そして、ステンレス鋼の品質に大きな影響を及ぼす粒径10μm以上の介在物質量率の推定に際しては、アーク溶解によって表面に浮上・集積した介在物の全介在物面積率を算出し、この全介在物面積率を検量線(図5参照)に当て嵌めるだけでよく、当該介在物質量率の推定を極めて簡易に行うことができる。
本発明によれば、ステンレス鋼中の介在物、とりわけ製品品質に多大な影響を及ぼす粒径10μm以上の介在物を、迅速に且つ選択的に精度よく試料表面に浮上・集積させてその量(質量率)を推定することができる介在物の評価方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。図1は、本発明におけるステンレス鋼の介在物評価方法の概要を示す説明図である。本発明のステンレス鋼の介在物評価方法では、まず始めに、(詳細については後述するが、)アーク溶解後のステンレス鋼表面の全介在物面積率(単位:mm2/g−steel)と未溶解のステンレス鋼中におけるCaO濃度が25質量%以上の介在物の質量率(単位:g/g−steel)との関係に基づいて予め検量線(図5参照)を作成しておく。また、このような検量線を作成した後に、或いはこのような検量線を作成すると共に、ステンレス鋼材から100g程度の試料(10)を切り出す。この試料(10)中には、図1(a)に示すように様々な粒径・組成の介在物(10a)が含まれている。
続いて、切り出した試料(10)をArのような非酸化性雰囲気中でアーク(12)で溶解し、試料(10)中の介在物(10a)を試料(10)表面に浮上させる。具体的には、真空チャンバー内の銅ハース(14)上に切り出した試料(10)を載置し、チャンバー内が所定の真空状態となるまで排気する。その後、チャンバー内をArガスなどの不活性ガスを常圧まで充填し、非酸化性雰囲気の略大気圧条件下で試料(10)と電極(16)との間にアーク(12)を発生させ、このアーク(12)によってもたらされる高熱で試料(10)を溶解する(図1(b)参照)。
例えば、アーク(12)としてプラズマアークを使用した場合、約100gの試料(10)を概ね190秒程度の時間で完全に溶解させることができる。このようにアーク(12)を用いて試料(10)を完全に溶解させると、試料(10)はその表面張力によってボタン形状になると共に、介在物が溶解した試料(10)の上表面に浮上・集積するようになる(図1(c)参照)。
未溶解のステンレス鋼中における介在物は図2に示すように、粒径によって組成が異なり、特に介在物粒径とCaO(酸化カルシウム)濃度との間には高い相関が認められる。すなわち、粒径の大きな介在物ほどCaO濃度が高く、CaO濃度が25質量%以上の介在物(CaO−SiO2系介在物)は、その粒径が凡そ10μm以上となる。また、介在物中のCaO濃度が25質量%以上になると、その介在物はアーク溶解では溶け難くなる。これに対し、CaO濃度が25質量%未満で且つ粒径10μm未満の介在物では、MnOやMnSの量が多く、粒径も小さいことと相俟ってアーク溶解で溶融試料母相に溶解・消失し、溶解した試料(10)の上表面に浮上・集積しない。もっとも、溶融試料が再凝固すると10μm以下の介在物(SiO2−MnO系介在物)として母相中に析出するが、表面への浮上・集積はない。換言すれば、アーク溶解では品質を左右する粒径10μm以上の介在物のみを選択的に浮上させることが出来る。
この点について、更に熱力学的に説明すると、介在物は、CaO,SiO2,MnOなどの酸化物である。そこで、一般的に金属をM、酸素をO、酸化物をMmOnと表示すると、介在物の生成・分解反応は以下の式1で表わされる。また、式1の平衡定数を式2に示す。
Figure 2008304368
式2より、平衡定数Kの値が高いほど金属が安定である。つまり、酸化物である介在物は分解され、金属と酸素になり、鋼材マトリックス(母相)中に溶け込んでしまう。逆に、Kが低い場合には、酸化物が安定となる。
図3に、それぞれの元素に関する平衡定数Kの文献値を示す。ここで、文献値として以下のもの[文献(A)及び(B)]を使用した。
(A) KCa;伊藤裕恭、他2名,「溶鉄のCa脱酸平衡」,鉄と鋼,社団法人日本鉄鋼協会,1997年,第83巻,p.695−700
(B) KMn,KSi,KAl;「製鋼反応の推奨平衡値 改訂増補」,日本学術振興会製鋼第19委員会編,1984年
この図が示すように、全ての元素において温度が高いほど平衡定数Kが高くなっており、また、各元素を比較すると、Mn>Si>Al>Caの順となっている。このため、アーク溶解によって試料温度が上昇すると、酸化物である介在物は分解される傾向になるが、CaOは安定であるため、温度が上がっても分解され難いことが分かる。一方、MnOやSiO2は比較的不安定な酸化物であり、温度が上がると分解され易いことが分かる。
以上のような理由により、CaO濃度が低い介在物は、アーク溶解によって試料温度が上昇すると、試料表面に浮上する前に分解され消失してしまう。一方、CaO濃度が高い介在物は、温度が上昇しても分解され難いため、試料表面に浮上・集積する。このような機構により、CaO濃度が25質量%以上の組成を持つ介在物のみがアーク溶解によって試料表面に浮上・集積するものと考えられる。つまり、このCaO濃度が25質量%以上と云う数値範囲は臨界的意義を有する。
アーク溶解による介在物の浮上・集積が終わると、試料(10)と電極(16)との間に発生させたアーク(12)を止め、溶解した試料(10)を急冷する。すると、試料(10)が銅ハース(14)側の下表面から上表面側及び中心に向けて凝固を開始し、浮上した介在物の表面中央付近への集積が行われ、溶解した試料(10)の凝固が完了することにより介在物評価用の試料(10)が完成する(図1(d)参照)。
続いて、得られた試料(10)の表面に浮上・集積した全介在物(10a)の全介在物面積率(mm2/g−steel)を算出する。具体的には、試料(10)表面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は実体顕微鏡で観察し、表面の画像を得る。得られた試料(10)表面の像を画像解析装置に取り込み、この画像解析装置で試料表面の介在物面積を測定し、介在物面積をアーク溶解に供した試料の質量で除することによって全介在物面積率を算出する。
そして、上述したように予め作成した溶解前試料中のCaO濃度が25質量%以上の非金属介在物の質量率と溶解後試料表面の全介在物面積率との相関を示す検量線を用いてステンレス鋼材中における粒径10μm以上の介在物質量率を推定する。
上述のように、アーク溶解によってステンレス鋼材の表面に浮上・集積する介在物は、CaO濃度が25質量%以上であり、又、粒径が10μm以上のものである。したがって、CaO濃度が25質量%以上の介在物の質量率が既知のステンレス鋼材をアーク溶解し、表面に浮上・集積した全介在物面積率を算出して、CaO濃度が25質量%以上の非金属介在物の質量率と溶解後試料表面の全介在物面積率との相関を示す検量線を作成しておけば、算出した全介在物面積率を検量線(図5参照)に当て嵌めるだけで、ステンレス鋼の品質に大きな影響を及ぼす粒径が凡そ10μm以上の介在物の質量率を極めて簡易に推定することができる。
次に、上述のような介在物評価方法(熱源としてアークを用いた融解抽出法)がステンレス鋼の介在物評価に極めて有効であることの根拠、すなわち本発明の根拠を実施例に基づいて説明する。
介在物評価用試料の調製
ロットの異なるSUS304ステンレス鋼スラブ(サンプル数=8)のそれぞれから約100gの試料を2個ずつ切り出し、切り出した各ロットのサンプルについて、一方をアーク溶解後の介在物調査用試料(以下、「アーク溶解試料」と云う。)とし、他方をアーク溶解前の介在物調査用試料(以下、「未溶解試料」と云う。)とした。
このうち、アーク溶解試料は、以下のような方法でアーク溶解を行った。すなわち、試料を真空チャンバー内の水冷銅ハース上に載置し、該チャンバー内が1×10-3Torrの真空状態となるように排気した。その後、真空チャンバー内を超高純度Arガスで充填して非酸化性雰囲気の略大気圧条件にすると共に、真空チャンバー内に配置した電極に電圧を印加し、該電極と試料との間にプラズマアークを発生させ、このプラズマアークで試料を溶解した。溶解した試料はそのままボタン状に凝固させて介在物評価用の試料とした。なお、試料の溶解(すなわちアークの照射)は6回に分けて行い、試料が完全に溶解するまでの時間は190秒程度であった。
アーク溶解試料中の介在物の介在物評価方法
上述のように調製したアーク溶解試料の表面を実体顕微鏡で観察し、観察された介在物の直径を測定し、この直径に基づいて介在物面積を算出すると共に、得られた介在物面積の和、すなわち全介在物面積をアーク溶解に供した試料の質量で除して全介在物面積率(単位:mm2/g−steel)を算出した。また、SEMを用いてEDS(エネルギー分散型X線分光)分析を行い介在物の組成も同定した。
続いて、アーク溶解により表面に浮上・集積させた介在物を含まないようにアーク溶解試料を切断し、得られた試料切断面を鏡面研磨し、当該研磨面をSEMで観察して介在物個数密度(単位:個/mm2)を測定すると共に、EDS分析を行い介在物の組成を同定した。
未溶解試料中の介在物の介在物評価方法
ステンレス鋼スラブから切り出したままの未溶解試料の表面を鏡面研磨し、当該研磨面をSEMで観察して介在物個数密度(単位:個/mm2)を測定すると共に、観察された介在物の直径を測定し、この直径に基づいて介在物面積を算出した。そして、SEMで観察した視野面積に占める介在物面積の割合、すなわち介在物面積占有率が介在物体積率に等しいと仮定して、介在物の比重(具体的には2.8g/cm3)及びステンレス鋼材の比重(具体的には7.9g/cm3)を用いて各粒径の介在物の質量率(10-5g/g−steel)を算出した。
また、EDS分析を行い全介在物の組成を同定した。なお、未溶解試料における介在物のEDS分析結果は既出の図2にて示した通りである。
アーク溶解前後におけるステンレス鋼材内部の介在物粒径分布の比較
図4は、未溶解試料表面とアーク溶解試料断面の介在物個数密度、すなわちアーク溶解前後のステンレス鋼材内部の介在物個数密度を各粒径範囲毎にプロットしたものである。アーク溶解前後におけるステンレス鋼材内部の介在物粒径分布を比較すると、粒径10μm未満の介在物個数密度は溶解前後で明確な差が認められないのに対し、溶解前(未溶解試料)には存在していた粒径が10μm以上の比較的大きな介在物が溶解後の試料(アーク溶解試料)断面中には全く認められない。これは、アーク溶解によって粒径が10μm以上の介在物のほぼ全量が表面に浮上したためであると考えられる。逆に、10μm以下の介在物は一旦アーク溶解によって溶け、その後、アーク溶解試料の凝固時に母相に10μm以下の介在物として再析出していることがうかがえる。
アーク溶解後試料表面の全介在物面積率と溶解前鋼材中の介在物量との関係
図5は、8ロットのステンレス鋼スラブについて、アーク溶解試料表面の全介在物面積率(単位:mm2/g−steel)と未溶解試料(すなわち、溶解前の鋼材)中のCaO濃度が25質量%以上の介在物の質量率(単位:g/g−steel)との関係をプロットしたものである。この図が示すように両者には極めて高い相関関係が認められる。したがって、アーク溶解によって試料表面に浮上・集積した介在物の全介在物面積率から溶解前鋼材中のCaO濃度が25質量%以上の組成を持つ介在物(換言すれば、粒径が10μm以上の有害な介在物)の質量率を推定することができる。つまり、図5において破線で示した回帰直線を検量線として使用することができる。
アーク溶解を用いたステンレス鋼中の介在物評価の有用性
以上をまとめると、試料をアーク溶解することによって、試料中の介在物のうち、ステンレス鋼の品質に影響を与える粒径が10μm以上の比較的大きな介在物のほぼ全てを試料表面に選択的に浮上・集積させることができる。したがって、アーク溶解によって表面に浮上・集積させた介在物を評価するだけで、試料全体における比較的粒径が大きく製品品質に多大な影響を及ぼす介在物の量を推定することが可能となる。
また、図5に示すようなCaO濃度が25質量%以上の非金属介在物の質量率と溶解後試料表面の全介在物面積率との相関を示す検量線(回帰直線)を作成しておけば、算出した全介在物面積率を検量線に当て嵌めるだけで、ステンレス鋼の品質に大きな影響を及ぼす粒径が凡そ10μm以上の介在物の質量率を極めて簡易に推定することができる。
このように、本発明のステンレス鋼の非金属介在物評価方法によれば、ステンレス鋼中の介在物、とりわけ製品品質に多大な影響を及ぼす比較的粒径が大きな(概ね10μm以上の)介在物のほとんど全てを試料表面に浮上・集積させることができるので、当該介在物を迅速に且つ精度よく評価することができ、ステンレス鋼の品質決定が迅速に行える。
本発明におけるステンレス鋼の介在物評価方法の概要を示す説明図である。 スラブ(溶解前試料)中における介在物粒径と組成との関係を示すグラフである。 各金属元素における温度と平衡定数との関係(文献値)を示すグラフである。 アーク溶解試料断面における介在物粒径分布とスラブ(未溶解試料)中の介在物粒径分布との関係を示すグラフである。 アーク溶解試料表面の全介在物面積率とスラブ(未溶解試料)中のCaO濃度が25質量%以上の介在物の質量率との関係を示すグラフである。
符号の説明
(10)…試料
(12)…アーク
(14)…銅ハース
(16)…電極

Claims (2)

  1. ステンレス鋼材から採取した試料を非酸化性雰囲気中にてアークで溶解することにより試料中の非金属介在物を浮上させ、冷却後表面に浮上・集積した非金属介在物の全介在物面積率を算出し、該全介在物面積率を用いてステンレス鋼材中における有害な非金属介在物を評価することを特徴とするステンレス鋼の非金属介在物評価方法。
  2. 前記非金属介在物の評価が、予め作成した溶解前試料中のCaO濃度が25質量%以上の非金属介在物の質量率と溶解後試料表面の全介在物面積率との相関を示す検量線を用いてステンレス鋼材中における有害な非金属介在物の介在物質量率を推定するものであることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼の非金属介在物評価方法。
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