JP2008303953A - 直動装置およびその異常判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】直動装置の運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の異常の有無を確実に判定する手段を提供する。
【解決手段】レール2と、これに複数のボール9を介して移動可能に支持されたスライダ6と、ボール9で形成された複数の転動体列14とを備えた直動装置としてのリニアガイド装置1の、エンドキャップの左右の袖部の転動体列14の一部が通過する方向転換路12の壁面となる部位の端面に、それぞれのボール9の動作状態を検出する力センサ16a、16bを設けると共に、この2つの力センサ16a、16bからの出力信号の差分を計算する差分計算手段21を設け、これら2つの力センサ16a、16bからの出力信号から運転状態の影響を相殺により除去した差分Sを用いて異常の有無を判定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リニアガイド装置やボールねじ装置等の工作機械や精密機械、半導体製造装置、射出成形機等の機械装置の送り機構等に用いられる直動装置およびその異常判定方法に関する。
リニアガイド装置やボールねじ装置等の直動装置は、レールやボールねじ軸等の固定体に、スライダやボールナット等の移動体を、ボール等の転動体を介して直線移動可能に支持して構成されており、稼動中に生じた繰返し応力による軌道溝等の剥離や循環路を形成する部品の損傷、潤滑不良による軌道溝等の磨耗、異物の混入等による摺動抵抗の増大等の異常を放置しておくと、直動装置が破損して直動装置を用いた機械装置にも損傷を与えることがあり、稼動中における異常の早期発見が求められている。
従来の直動装置の異常判定方法としては、スライダに設けた戻り路と、エンドキャップに設けた方向転換路と、レールに設けたレール軌道溝とスライダに設けたスライダ軌道溝とを対向させて形成した負荷路とを連通した循環路に複数のボールを装填して転動体列を形成し、循環路の負荷路を転動するボールによりレールを直線的に移動するスライダを支持して直動装置としてのリニアガイド装置を構成し、エンドキャップの左右の袖部の端面にそれぞれ転動体列の摺動抵抗により生ずる変形を検出する力センサを設け、評価ユニットに入力された出力信号が臨界値に達したことにより、異常の発生を判定して管理者に報知している(例えば、特許文献1参照。)。
また、同様のリニアガイド装置、またはボールねじ軸の外周面に螺旋状に形成した軸軌道溝と、ボールナットの内周面に形成した軸軌道溝に対向するナット軌道溝と、対向配置されたナット軌道溝と軸軌道溝とにより形成される負荷路をナットに設けたリターンチューブにより連通して形成された循環路と、この循環路に装填された複数のボールからなる転動体列とを備え、循環路の負荷路を転動するボールによりボールナットをボールねじ軸に直線移動可能に支持した直動装置としてのボールねじ装置において、その移動体または固定体に、直動装置内を転動体が循環する際に弾性的に発生する波動(AE:アコースティックエミッション)を検出するAEセンサを設け、AEセンサの出力信号の実効値を予め設定された閾値と比較して異常の有無および異常の種類を判定し、判定結果を表示部に表示しているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
更に、上記と同様のリニアガイド装置およびボールねじ装置等の直動装置において、固定体に設けられた転動体の軌道面を監視するカラーセンサを設け、軌道面に被覆された潤滑剤の色を検出し、カラーセンサが検出した潤滑剤の色を、予め入力された潤滑剤の種類等のデータと比較して直動装置の部品の寿命を判定しているものもある(例えば、特許文献3参照。)。
特表2006−518830号公報(第6頁段落0020−0027、第1図、第5図) 特開2004−263775号公報(主に第10頁段落0043−第12頁段落0058、第4図、第6図、第7図) 特開2002−106785号公報(主に第3頁段落0015−0030、第1図、第6図、第7図)
しかしながら、上述した従来の各特許文献の技術においては、直動装置の移動体または固定体に、転動体の動作状態を検出する1または2つのセンサ(力センサ、AEセンサ、カラーセンサ等)を設け、その出力信号を予め設定した閾値等と比較して異常の有無を判定しているため、様々な運転パターンで駆動と停止を繰り返し、運転状態が絶えず変化する直動装置においては、運転状態の変化と、異常の発生とを区別することが難しく、運転状態による変化を異常の発生と判定してしまう虞があるという問題がある。
具体的には、摺動抵抗は運転速度や軌道溝と転動体との潤滑状態に依存し、潤滑状態は潤滑剤の種類のみならず温度に依存する。AEは軌道溝と転動体との潤滑状態等によって大きく変化する。潤滑剤の色は周囲温度等に依存する。固定体や移動体の温度は、運転速度の変化や停止時間の長短、周囲温度等によって大きく変化する。
このため、運転状態が絶えず変化する直動装置においては、センサからの出力信号を予め設定した閾値等と比較して異常の有無を判定すると、運転状態による変化を異常の発生と判定してしまう可能性がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の異常の有無を確実に判定する手段を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、固定体と、該固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された移動体と、前記転動体で形成された複数の転動体列とを備えた直動装置において、前記転動体列の少なくとも2つに、それぞれの前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段を設けると共に、2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことを特徴とする。
これにより、本発明は、2つの動作状態検出手段からの出力信号から運転状態の影響を相殺により除去した差分を用いて異常の有無を判定することができ、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができるという効果が得られる。
以下に、図面を参照して本発明による直動装置およびその異常判定方法の実施例について説明する。
図1は実施例1のリニアガイド装置を示す斜視図、図2は実施例1の異常判定装置を示すブロック図である。
図1において、1は直動装置としてのリニアガイド装置である。
2は直動装置の固定体としてのレールであり、合金鋼等の鋼材で製作された長尺の柱状部材であって、その上面には機械装置の基台等にレール2を固定するための段付ボルト孔であるレール設置孔3が所定のピッチで複数設けられている。
5は固定体の転動体ガイド面としてのレール軌道溝であり、レール2の両方の側面の長手方向に沿って形成された円弧状断面の溝である。
6は直動装置の移動体としてのスライダであり、合金鋼等の鋼材で製作された略コの字状の断面形状を有する鞍状部材であって、その上面には取付ねじ穴7が設けられており、この取付ねじ穴7を用いて機械装置の移動テーブル等がボルト等により締結される。
8は移動体の転動体ガイド面としてのスライダ軌道溝であり、スライダ6の両方の袖壁6aの内側にレール軌道溝5に対向して設けられた円弧状断面の溝である。
9は直動装置の転動体としてのボールであり、合金鋼等の鋼材で製作された球体である。
10は戻り路であり、スライダ6の袖壁6aに形成されたボール9を循環させるためのボール9の直径より大きい直径を有し、スライダ6の移動方向(スライダ移動方向という。)にスライダ6を貫通する貫通穴であって、それぞれのスライダ軌道溝8に対応して設けられている。
11はエンドキャップであり、樹脂材料等で製作され、スライダ6のスライダ移動方向の前後端部に配置されている。
12はエンドキャップ11のスライダ6側に設けられた方向転換路であり、対向配置されたスライダ軌道溝8とレール軌道溝5とにより形成される負荷路とスライダ6の戻り路10とをそれぞれ接続するU字状に湾曲した通路であって、それぞれの負荷路に対応して設けられており、ボール9を案内してその循環方向を転向させる機能を有している。
上記の負荷路の両端部は、エンドキャップ11の方向転換路12とスライダ6の戻り路10とで形成される連通路によりそれぞれ連通されてリニアガイド装置1の循環路が形成され、この循環路に装填された複数のボール9により転動体列14が形成される。
また、スライダ6の移動に伴ってボール9が循環路を循環し、負荷路を転動するボール9がスライダ6に加えられた荷重を往復動自在に支持し、スライダ6がレール2の長手方向に沿った直線往復移動可能に支持される。これによりリニアガイド装置1が直動装置として機能する。
本実施例のリニアガイド装置1には、片側に2つ、両側で4つの転動体列14が形成されている。
16a、16bは動作状態検出手段としての力センサであり、取付けられた面の歪量を検出する歪ゲージ等であって、エンドキャップ11の両側の袖部11aの転動体列14の一部が通過する方向転換路12の壁面となる部位の端面にそれぞれ貼付等により取付けられており、方向転換路12を移動するボール9の衝突により生ずる端面の変形を検出して、循環するボール9の動作状態(力センサ16a、16bを用いた場合は摩擦抵抗)を間接的に検出する機能を有している。
なお、力センサ16bは、図1において手前側のエンドキャップ11の袖部11aの端面に力センサ16aと同様に取付けられているが、図1の図示の都合上、省略してある。
18はリード線であり、力センサ16a、16bの出力信号をそれぞれ異常判定装置20へ導く機能を有している。
異常判定装置20は、図2に示すように、力センサ16a、16bからの出力信号Va、Vbがリード線18に導かれて、2つの出力信号Va、Vbの差分を計算する差分計算手段21に入力され、差分計算手段21で計算された差分S(=Va−Vb)は異常判定手段22へ入力される。
異常判定手段22は、入力された差分Sの絶対値を、予め設定した閾値と比較し、差分Sの絶対値が閾値を超えた場合に、異常判定出力Jを出力する。
この異常判定出力Jは、表示灯やブザー等の視覚や聴覚等で外部から認識可能な報知手段を有する異常報知手段23に入力され、異常報知手段23は異常判定出力Jが入力されると、リニアガイド装置1に異常が生じたことを外部に報知するために、表示灯の点灯やブザーによる警報等の報知動作を行う。
この場合に、異常判定出力Jを、本実施例のリニアガイド装置1を用いている機械装置の制御装置に直接出力するようにして、機械装置を直ちに停止するようにしてもよい。
上記の差分計算手段21、異常判定手段22および異常報知手段23は、電気回路、またはパーソナルコンピュータにインストールされたプログラムで構成されている。
上記の構成の作用について説明する。
図3はスライダ6の移動速度を変更したときの力センサ16a、16bの出力信号Va、Vbの時間経過に対する変化を示したグラフである。
なお、図3(a)は力センサ16aの出力信号Vaを示し、図3(b)は力センサ16bの出力信号Vbを示す。
図3に示すように、力センサ16a、16bからの出力信号Va、Vbは、スライダ6の移動速度の増大に伴って大きくなることが判る。
このことは、力センサ16a、16bからの出力信号Va、Vbは、スライダ6の移動速度(直動装置の運転速度)の影響を受けて変化することを示しており、運転状態の変化による影響を除去することが重要になる。
本実施例では、これら2つの出力信号Va、Vbの差分S=Va−Vbを計算することにより、運転状態の影響を相殺して、運転状態の変化による影響を除去している。
つまり、図3に示したスライダ6の移動速度の影響は、図4に示すように、2つの出力信号Va、Vbの差分Sを差分計算手段21により求めることにより相殺され、移動速度が大きい場合も、小さい場合も同様の差分Sが出力されるので、異常判定手段22において、移動速度に関らず、同じ閾値を用いて異常の有無を判定することが可能になる。
異常が発生した場合、例えば、力センサ16aが取付けられた側の2列の転動体列14の少なくとも一つに異物が混入し、循環路を循環するボール9の摩擦抵抗が増加した場合の力センサ16a、16bの出力信号Va、Vbの波形を図5に示す。
なお、図5(a)は力センサ16aの出力信号Va(破線は異常がないときの出力信号Vaを示す。)を示し、図5(b)は力センサ16bの出力信号Vbを示す。
図5(a)に示すように、異常発生時の出力信号Vaは、破線で示す異常がない場合(正常時)の出力信号Vaに較べて増大しており、正常に運転されている側に取付けられた力センサ16bの出力信号Vbとの差分Sを差分計算手段21により求めると、図6に示すように、破線で示した正常運転の場合の差分Sの絶対値に較べて、異常発生時の差分Sが大きくなり、異常判定手段22における閾値を用いた異常の有無の判定が容易になる。
このように、1または2つのセンサの出力信号のみを用いて判定する場合には、運転時における出力信号の増加が、スライダ6の移動速度の増加に伴うものか、摩擦抵抗の増加に伴うものかが区別できないのに対して、本実施例における運転時の異常の判定は、本来同様の出力を発生させると想定される2つの部位に取付けた力センサ16a、16bの出力信号Va、Vbの差分Sを差分計算手段21により求めて運転状態の影響を相殺し、この差分Sを用いて異常判定手段22により異常の有無を判定するので、運転状態の変化の影響を受けることなく、リニアガイド装置1の運転時における異常の有無を確実に、かつ容易に判定することができる。
なお、本実施例では、差分Sの絶対値を直接、閾値と比較するとして説明したが、出力信号Va、Vb、または差分Sに、ローパスフィルタやハイパスフィルタ等によるフィルタリングや、平均値、RMS(Root Mean Square)値、積分値、ピーク値等の演算を行った後に、閾値と比較するようにしてもよい。
また、異常判定手段22により異常が判定されたときに異常報知手段23により異常を報知するとして説明したが、異常判定手段22や異常報知手段23を設けずに、オシロスコープ等の差分Sの波形が観察できる機器を設置して、人により異常の有無を判定するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施例では、レールと、このレールに、複数のボールを介して移動可能に支持されたスライダと、ボールで形成された複数の転動体列とを備えたリニアガイド装置の、転動体列の少なくとも2つ(本実施例では、エンドキャップの左右の袖部の転動体列の一部が通過する方向転換路の壁面となる部位の端面に1つずつ)に、それぞれのボールの動作状態を検出する力センサを設け、この2つの力センサからの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことによって、2つの力センサからの出力信号から運転状態の影響を相殺により除去した差分を用いて異常の有無を判定することができ、運転状態の変化の影響を受けることなく、リニアガイド装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができる。
図7は実施例2のリニアガイド装置の外観を示す斜視図、図8は実施例2の異常判定装置を示すブロック図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例のリニアガイド装置1には、図7に示すように、エンドキャップ11の両側の袖部11aの方向転換路12の壁面となる部位の端面のそれぞれに、上記実施例1の力センサ16a、16bに代えて、取付けられた面の変位における加速度を検出する加速度ピックアップ等の動作状態検出手段としての振動センサ26a、26bが取付けられている。
これにより、ボール9が循環する循環路に剥離等の損傷や異物の混入等がある場合のボール9の動作状態を間接的に検出することができる。
また、本実施例の異常判定装置20には、振動センサ26a、26bの出力信号Va、Vbのそれぞれの所定の時間間隔(例えば、1秒間)における二乗平均値の平方根であるRMS値Xa、Xbを演算する演算手段28が振動センサ26a、26bと差分計算手段21との間にそれぞれ設けられている。
振動センサ26a、26bの出力信号Va、VbをRMS値Xa、Xbにするのは、振動センサ26a、26bからの出力信号Va、Vbの差分Sを直接計算すると、2つの出力信号Va、Vbの波形によっては互いを強め合って差分Sが元の出力信号より大きくなる場合があり、異常の有無を判定できなくなる虞があるからである。
なお、上記の演算手段28は、パーソナルコンピュータにインストールされたプログラムで構成されている。
上記の構成の作用について説明する。
異常が発生した場合、例えば、振動センサ26aが取付けられた側の2列の転動体列14が循環する循環路の少なくとも一つに剥離等の損傷が発生し、循環路を循環するボール9によるエンドキャップ11の振動が増加した場合の振動センサ26a、26bの出力信号Va、Vbの波形を図9に、その出力信号Va、Vbの演算手段28による演算結果のRMS値Xa、Xbを図10に示す。
なお、図9(a)は振動センサ26aの出力信号Va(破線は異常がないときの出力信号Vaを示す。)を示し、図9(b)は振動センサ26bの出力信号Vbを示す。
また、図10(a)は振動センサ26aの出力信号VaのRMS値Xa(破線は異常がないときの出力信号VaのRMS値Xaを示す。)を示し、図9(b)は振動センサ26bの出力信号VbのRMS値Xbを示す。
図9(a)に示すように、異常発生時の出力信号Vaは、破線で示す異常がない場合(正常時)の出力信号Vaに較べてその振幅が増大している。
この振幅が増大した出力信号VaのRMS値Xaを演算手段28により演算すると、図10(a)に示すように、破線で示す正常時の出力信号VaのRMS値Xaに較べて大きな値となり、正常に運転されている側に取付けられた振動センサ26bの出力信号VbのRMS値Xbとの差分Sを差分計算手段21により求めると、図11に示すように、破線で示した正常運転の場合の差分Sの絶対値に較べて、異常発生時の差分Sが大きくなり、異常判定手段22における閾値を用いた異常の有無の判定が容易になる。
このように、出力信号が、正の値と負の値により構成される波形の場合には、RMS値を演算することにより、出力信号を正の値に変換することが可能になり、これにより得られた出力信号を用いて差分計算手段21により差分Sを計算すれば、運転状態の影響を相殺することができ、この差分Sを用いて異常判定手段22により異常の有無を判定するので、運転状態の変化の影響を受けることなく、リニアガイド装置1の運転時における異常の有無を確実に、かつ容易に判定することができる。
以上説明したように、本実施例では、レールと、このレールに、複数のボールを介して移動可能に支持されたスライダと、ボールで形成された複数の転動体列とを備えたリニアガイド装置の、転動体列の少なくとも2つ(本実施例では、エンドキャップの左右の袖部の転動体列の一部が通過する方向転換路の壁面となる部位の端面に1つずつ)に、それぞれのボールの動作状態を検出する振動センサを設け、この2つの振動センサからの出力信号のRMS値の差分を計算する差分計算手段を設けたことによって、2つの振動センサからの出力信号から運転状態の影響を相殺により除去した差分を用いて異常の有無を判定することができ、運転状態の変化の影響を受けることなく、リニアガイド装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができる。
なお、上記実施例1および本実施例においては、各転動体列のボールの動作状態検出手段は力センサまたは振動センサであるとして説明したが、動作状態検出手段は前記に限らず、渦電流センサや静電容量センサ等の変位センサや、カラーセンサであってもよい。
この場合に、変位センサをスライダからレールの両側面に形成されたレール軌道溝に向けてそれぞれ設置すれば軌道溝の剥離を直接検出することができ、カラーセンサをレールの両側面に形成されたレール軌道溝に向けてそれぞれ設置すれば、レール軌道溝が磨耗した場合の磨耗粉の潤滑剤への混入を検出することが可能になる。
図12は実施例3の直動装置の外観を示す斜視図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の直動装置は、平行に配置された2つのレール2に、それぞれボール9を介して移動可能に支持された2つのスライダを装着した2台のリニアガイド装置1で構成されており、図示しない移動テーブルが4つのスライダ6のそれぞれの取付ねじ穴7を用いて固定されている。
また、それぞれの転動体列14の一部が通過するスライダ6の袖壁6aの外側の側面には、取付けられた面の温度を検出する熱電対やサーミスタ等の動作状態検出手段としての温度センサ30a〜30dが取付けられている。
これにより、ボール9が循環する循環路に異物が混入した場合の摩擦抵抗の増大による温度上昇を検出して、ボール9の動作状態を間接的に検出することができる。
なお、本実施例の異常判定装置20としては、上記実施例1の異常判定装置20の力センサ16a、16bに代えて、4つの温度センサ30a〜30dが接続され、差分検出手段21の前段に、4つの温度センサ30a〜30dからの出力信号Va〜Vdを2つずつ選択して合計6通りの組合せのそれぞれの差分S、つまりVa−Vb、Va−Vc、Va−Vd、Vb−Vc、Vb−Vc、Vc−Vdを計算することができるように、図示しないスイッチング回路からなるスイッチング手段が設けられている。
また、各組合せにおける差分Sの絶対値は、組合せた出力信号のコードに対応させて、パーソナルコンピュータの図示しない記憶装置に一時保存される。
上記の構成の作用について説明する。
異常が発生した場合、例えば、温度センサ30aが取付けられたスライダ6の循環路の少なくとも一つに異物が混入し、その循環路を循環するボール9の摩擦抵抗が増加して温度が増加した場合の温度センサ30a〜30dの出力信号Va〜Vdを図13に示す。
なお、図13における実線は、異常が生じた場合を示し、破線は異常が生じない場合(正常時)を示す(図14において、同じ。)。
図13に示すように、異常発生時の温度センサ30aの出力信号Vaは、破線で示す異常がない場合(正常時)の出力信号Vaに較べて増大しており、正常に運転されている他の温度センサ30b〜30dが取付けられたスライダ6との6通りの組合せにおける差分Sをスイッチング手段により切替ながら差分計算手段21により求めると、図14に示すように、破線で示した正常運転の場合の各組合せの差分Sの絶対値はほぼ「0」になり、異常が生じていないことが判る。
一方、温度センサ30aが取付けられたスライダ6に異常が発生した場合は、異常が発生した温度センサ30aを一方とした組合せの差分Sが、正常に運転されているスライダ6に取付けられた他の温度センサ30b〜30d同士の組合せに較べて大きくなり、異常判定手段22においては、一時保存した各組合せの差分Sを読出して、それぞれを閾値と比較し、閾値を超えた差分Sに共通する出力信号のコードを抽出して温度センサ30aが取付けられたスライダ6に異常が発生したことを判定する。
なお、図13に示すように、温度センサ30bから出力される温度が、他の温度センサ30c、30dに較べて僅かに上昇しているが、これは温度センサ30aが取付けられたスライダ6の発熱が、レール2を介して温度センサ30bが取付けられたスライダ6に伝導したためである。
このような場合においても、図14に示すように、温度センサ30bを一方とした組合せの差分Sは、温度センサ30aとの組合せを除き、明らかに温度センサ30aを一方とした組合せの差分Sに較べて小さくなっており、熱伝導による影響があった場合においても、正常に運転されているスライダ6を区別して、運転時の異常を正確に判定することが可能になる。
このことは、1つのレール2に2以上のスライダ6を装着し、それぞれのスライダ6に上記と同様に温度センサ30を取付ければ、異常が生じたスライダ6を区別することか可能であることを示している。
このように、1または2つのセンサの出力信号のみを用いて判定する場合には、運転時における出力信号の増加が、移動テーブルの移動速度や移動量、停止時間等の運転パターンに伴うものか、積載重量の増加に伴うものか、摩擦抵抗の増加に伴うものかが区別できないのに対して、本実施例における運転時の異常の判定は、本来同様の出力を発生させると想定される各スライダ6に取付けた各温度センサ30の出力信号を2つずつ組合せて差分計算手段21により求めた差分Sをそれぞれ比較するので、運転状態の影響を相殺して異常判定手段22により異常の有無を容易に判定することができ、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の運転時における異常の有無を確実に、かつ容易に判定することができる。
以上説明したように、本実施例では、平行に配置された2つのレールに、それぞれ複数のボールを介して移動可能に支持された2つのスライダを備えた直動装置の、2つのレールにそれぞれ支持された1以上のスライダ(本実施例では、各スライダの側壁の側面に1つずつ)に、それぞれのボールの動作状態を検出する温度センサを設け、この2つの温度センサからの出力信号の組合せ毎に差分を計算する差分計算手段を設けたことによって、出力信号から運転状態の影響を相殺により除去した差分を用いて異常の有無を判定することができ、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができる。
なお、本実施例においては、2つのレール2にそれぞれ装着されるスライダ6の各スライダ6にそれぞれ温度センサ30を取付るとして説明したが、図15に示すように、それぞれのレール2の一方の端部に、AEセンサ35a、35bを取付るようにしてもよい。
このように、平行に配置された複数のレール2と、それぞれのレール2に、複数のボールを介して移動可能に支持された1以上のスライダとを備えた直動装置のレール2の少なくとも2つに、それぞれのボール9の動作状態を検出する動作状態検出手段としてのAEセンサ35a、35bを設け、この2つのAEセンサ35a、35bからの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことによっても、AEセンサ35a、35bからの出力信号の差分を求めて運転時の異常の有無の判定を行えば、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができる。
なお、上記実施例1ないし本実施例においては、転動体としてボールを用いたリニアガイド装置を例に説明したが、転動体としてころを用いたリニアガイド装置においても同様の効果を得ることができる。この場合に負荷路を形成するレールの転動体ガイド面とスライダの転動体ガイド面はころが転動するレール軌道面とスライダ軌道面とで構成される。
図16は実施例4のボールねじ装置を示す断面図、図17は実施例4の直動装置の上面を示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図16において、41は直動装置としてのボールねじ装置である。
42は直動装置の固定体としてのボールねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された柱状部材であって、機械装置の基台等に支持ベアリング等を介して回転可能に固定されており、その外周面には固定体の転動体ガイド面としての円弧状断面の軸軌道溝43が所定のリードで螺旋状に形成されている。
45は直動装置の移動体としてのボールナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には軸軌道溝43と対向する移動体の転動体ガイド面としての円弧状断面のナット軌道溝46が軸軌道溝43と同じリードで形成されている。
47は直動装置の転動体としてのボールであり、合金鋼等の鋼材で製作された球体である。
上記のナット軌道溝46とこれに対向する軸軌道溝43とでボールねじ装置41の負荷路が形成され、負荷路を転動する複数のボール47がボールねじ軸42とボールナット45を螺合させる。
48はフランジ部であり、ボールナット45の外周部に設けられ、フランジ部48に設けられたボルト穴49により機械装置の移動テーブル50(図17参照)にボルト等で固定される。
上記の負荷路の両端部は、図示しないリターンチューブにより連通されてボールねじ装置41の循環路が形成され、この循環路には、複数のボール47と所定の量のグリース等の潤滑剤が封入され、この循環路に装填された複数のボール47により転動体列14が形成され、ボールねじ軸42の回転に伴なってボール47が循環路を循環し、負荷路を転動するボール47がボールナット45に加えられた荷重を往復動自在に支持してボールナット45がボールねじ軸42の長手方向に沿った直線往復移動可能に支持される。これによりボールねじ軸42の回転運動がボールナット45の直線運動に変換される。
本実施例の直動装置は、図17に示すように、2点鎖線で示した移動テーブル50の中央部を、上記実施例3と同様に平行に配置された2つのレール2に、それぞれ2つずつスライダ6を装着した2台のリニアガイド装置1により直線移動可能に支持し、この移動テーブル50のスライダ移動方向に沿った両端部に、レール2と平行に配置されたボールねじ軸42に移動可能に支持されたボールナット45をフランジ部48を用いて取付けた2台のボールねじ装置41により移動テーブル50を直線的に駆動して構成されている。
また、転動体列14の一部が通過するボールナット45の外周面には、上記実施例2と同様の動作状態検出手段としての振動センサ51a、51bが取付けられている。
このような構成の直動装置においても、振動センサ51a、51bからの出力信号の差分を求めて運転時の異常の有無の判定を行えば、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができる。
以上説明したように、本実施例では、平行に配置された複数のボールねじ軸と、それぞれのボールねじ軸に、複数のボールを介して移動可能に支持された1以上のボールナットとを備えた直動装置のボールねじ軸の少なくとも2つに、それぞれ支持された1以上のボールナットに、それぞれのボールの動作状態を検出する振動センサを設け、この2つの振動センサからの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことによって、2つの振動センサからの出力信号から運転状態の影響を相殺により除去した差分を用いて異常の有無を判定することができ、運転状態の変化の影響を受けることなく、直動装置の運転時における異常の有無を確実に判定することができる。
なお、本実施例においては、2台のリニアガイド装置で支持した移動テーブルを2台のボールねじ装置で駆動する直動装置を例に説明したが、複数の循環路を有するボールねじ装置を単独で直動装置として機能させる場合には、上記実施例1と同様に、複数の循環路に形成された転動体列のそれぞれに動作状態検出手段を設ければ、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施例においては、リターンチューブを連通路としてボールを循環させるチューブ式の循環方式を用いたボールねじ装置を例に説明したが、連通路は前記に限らず、連通路をこま式やエンドキャップ式、デフレクタ式等とした循環方式のボールねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
上記各実施例においては、リニアガイド装置またはボールねじ装置を単独用いる直動装置、またはこれらを組合せた直動装置を例に説明したが、直動装置は前記に限らず、固定体としてのスプライン軸に転動体としてのボールを介して直線移動可能に支持された移動体としてのナットを有するスプラインボール装置等を単独または組合せたものであってもよい。
実施例1のリニアガイド装置を示す斜視図 実施例1の異常判定装置を示すブロック図 スライダの移動速度の変更に伴う力センサの出力信号の波形を示すグラフ 図3の2つの出力信号の差分を示すグラフ 実施例1の異常発生時の力センサの出力信号の波形を示すグラフ 図5の2つの出力信号の差分を示すグラフ 実施例2のリニアガイド装置の外観を示す斜視図 実施例2の異常判定装置を示すブロック図 実施例2の異常発生時の振動センサの出力信号の波形を示すグラフ 実施例2の振動センサのRMS値の波形を示すグラフ 図10の2つの出力信号の差分を示すグラフ 実施例3の直動装置の外観を示す斜視図 実施例3の異常発生時の力センサの出力信号の波形を示すグラフ 図13の6つの組合せの出力信号の差分を示すグラフ 実施例3の直動装置の他の形態を示す斜視図 実施例4のボールねじ装置の断面を示す説明図 実施例4の直動装置の上面を示す説明図
符号の説明
1 リニアガイド装置
2 レール
3 レール取付穴
5 レール軌道溝
6 スライダ
6a 袖壁
7 取付ねじ穴
8 スライダ軌道溝
9、47 ボール
10 戻り路
11 エンドキャップ
11a 袖部
12 方向転換路
14 転動体列
16a、16b 力センサ
18 リード線
20 異常判定装置
21 差分計算手段
22 異常判定手段
23 異常報知手段
26a、26b、51a、51b 振動センサ
28 演算手段
30a〜30d 温度センサ
35a、35b AEセンサ
41 ボールねじ装置
42 ボールねじ軸
43 軸軌道溝
45 ボールナット
46 ナット軌道溝
47 フランジ部
48 ボルト穴
50 移動テーブル

Claims (8)

  1. 固定体と、該固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された移動体と、前記転動体で形成された複数の転動体列とを備えた直動装置において、
    前記転動体列の少なくとも2つに、それぞれの前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段を設けると共に、2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことを特徴とする直動装置。
  2. 1つの固定体と、該固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された複数の移動体とを備えた直動装置において、
    前記移動体の少なくとも2つに、それぞれの前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段を設けると共に、2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことを特徴とする直動装置。
  3. 平行に配置された複数の固定体と、それぞれの固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された1以上の移動体とを備えた直動装置において、
    前記固定体の少なくとも2つに、それぞれの前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段を設けると共に、2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことを特徴とする直動装置。
  4. 平行に配置された複数の固定体と、それぞれの固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された1以上の移動体とを備えた直動装置において、
    前記固定体の少なくとも2つに、それぞれ支持された1以上の前記移動体に、それぞれの前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段を設けると共に、2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算する差分計算手段を設けたことを特徴とする直動装置。
  5. 固定体と、該固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された移動体と、前記転動体で形成された複数の転動体列と、該転動体列の少なくとも2つに、それぞれ設けられた前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段とを備えた直動装置の異常判定方法において、
    2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算するステップと、
    該計算された差分の大きさによって、異常の有無を判定するステップと、を有することを特徴とする直動装置の異常判定方法。
  6. 1つの固定体と、該固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された複数の移動体と、該移動体の少なくとも2つに、それぞれ設けられた前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段とを備えた直動装置の異常判定方法であって、
    2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算するステップと、
    該計算された差分の大きさによって、異常の有無を判定するステップと、を有することを特徴とする直動装置の異常判定方法。
  7. 平行に配置された複数の固定体と、それぞれの固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された1以上の移動体と、前記固定体の少なくとも2つに、それぞれ設けられた前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段とを備えた直動装置の異常判定方法であって、
    2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算するステップと、
    該計算された差分の大きさによって、異常の有無を判定するステップと、を有することを特徴とする直動装置の異常判定方法。
  8. 平行に配置された複数の固定体と、それぞれの固定体に、複数の転動体を介して移動可能に支持された1以上の移動体と、前記固定体の少なくとも2つに、それぞれ支持された1以上の前記移動体に、それぞれ設けられた前記転動体の動作状態を検出する動作状態検出手段とを備えた直動装置の異常判定方法であって、
    2つの前記動作状態検出手段からの出力信号の差分を計算するステップと、
    該計算された差分の大きさによって、異常の有無を判定するステップと、を有することを特徴とする直動装置の異常判定方法。
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