JP2008301132A - 通話装置 - Google Patents

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【課題】熱や経年変化、振動によるマイクロホンの感度劣化を抑制でき、ハウリングの防止効果が低減しない通話装置を提供する。
【解決手段】通話装置Aの通話モジュールMJは、外部から伝達された音声情報を出力するスピーカSPと、音声を集音して音声信号を出力するマイクロホンM1,M2と、マイクロホンM1,M2が出力する各音声信号を信号処理して外部へ伝達する音声処理部10とを設けたハウジングA1を備え、マイクロホンM1は、マイクロホンM2よりスピーカSPに近い位置に配置されて、音声処理部10は、マイクロホンM1が出力する音声信号を用いて、マイクロホンM2が出力する音声信号からスピーカSPが発した音を低減させる処理を行い、マイクロホンM1,M2は、シリコン薄膜と電極との間にバイアス電圧を印加するシリコンマイクロホンである。
【選択図】図1

Description

本発明は、インターホン等に用いる通話装置に関するものである。
従来、インターホンシステム等で屋内に設置される通話装置があり、他の場所に設置された通話装置からの音声を出力するスピーカや、他の通話装置へ伝達する音声を入力するマイクロホン等を備えている。
そして、スピーカから発生した音声がマイクロホンに回り込むとハウリングが生じることになるから、様々なハウリング防止対策が採られている。例えば、第1の従来例として、スピーカとマイクロホンを含むループ回路が通話装置内で形成され、このループゲインが1を越えるとハウリングが発生するから、ループ回路内に設けた可変損失回路での損失量を調節することにより、ループゲインが1以下となるようにしてハウリングを防止するものがある。ここで、送話信号と受話信号とのうち信号レベルが小さいほうは重要ではないとみなし、信号レベルが小さいほうの伝送路に挿入された可変損失回路の伝送損失を大きくするようにしている。
しかし、上記第1の従来例では、マイクロホンとスピーカとの距離が近いと、スピーカからマイクロホンに回り込む受話音声のレベルが大きくなり、受話信号よりも送話信号が大きくなり、スピーカから音声が出ている受話状態であるにもかかわらず制御回路は送話状態に切り換えてしまい、スピーカから出るべき音が出なくなるという状態が発生していた。
そこで、第2の従来例として、一対のマイクロホンと、両マイクロホンとスピーカとの距離の差に相当する音波の遅延時間だけスピーカに近いほうのマイクロホンの出力を遅延させる遅延回路と、両マイクロホンとスピーカとの距離の差に相当するレベル調整を行なってスピーカからの音声に対する両マイクロホンの出力レベルを一致させるレベル調整増幅回路と、遅延回路とレベル調整増幅回路とを通った両マイクロホンの出力を両入力とする差動増幅回路とを設け、差動増幅回路の出力を送話信号とする通話装置が提案された。
この通話装置では、一対のマイクロホンでスピーカからの音声を拾った後、遅延およびレベル調整を行なって両マイクロホンに入力されるスピーカからの音声成分を差動増幅回路で相殺するようにしているから、スピーカからの音声成分のみを除去して受話ブロッキングが生じない状態で送話音声を伝送することができる。(例えば、特許文献1参照)。
特許第2607257号公報(2頁左欄第13行〜右欄第3行,4頁右欄第26行〜第49行、第1図,第5図)
従来の通話装置では、マイクロホンとして、図17に示すようなエレクトレットコンデンサマイクロホンMpを用いていた。エレクトレットコンデンサマイクロホンMpは、プリント基板100上に配置したリング101が金属板からなる電極102を支持し、電極102とプリント基板100との間には真鍮リング103が設けられる。さらに、電極102に対向して振動板104が配置され、振動板104は真鍮リング105によって支持されている。電極102と振動板104との間に形成された30μm程度のエアーギャップにはスペーサ106が配置されている。そして、プリント基板100上のケース107が上記各部を覆うことによって、エレクトレットコンデンサマイクロホンMpの外郭が構成される。
上記構成を有するエレクトレットコンデンサマイクロホンMpは、電極102に近接して平行に振動板104が配置されており、振動板104は。電荷が閉じ込められた(つまり、帯電した状態)ポリカーボネート、テフロン(登録商標)等の高分子膜で構成されている。そして、外部からの音響信号が振動板104を振動させることで、振動板104と電極102との間の距離が変動するので、電極102の帯電状況が変化して、音響信号を電気量の変動として取り出すことができる。なお、振動板104には、コロナ放電等によって電荷注入が為されている。
しかしながら、エレクトレットコンデンサマイクロホンMpは、振動板104を帯電させる必要があるため、熱や経年変化等による振動板104の電荷量低下や、振動による振動板104の電荷量変動によって、感度が劣化してしまう。したがって、特許文献1のように一対のマイクロホンを用いてスピーカ音をキャンセルする構成では、マイクロホンの感度が熱や経年変化、振動によって劣化することで、ハウリングの防止効果が低減してしまう。
さらに、エレクトレットコンデンサマイクロホンMpは、静電気によって破壊しやすいという問題もある。
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱や経年変化、振動によるマイクロホンの感度劣化を抑制でき、ハウリングの防止効果が低減しない通話装置を提供することにある。
請求項1の発明は、外部から伝達された音声情報を出力するスピーカと、音声を集音して音声信号を出力する第1,第2のマイクロホンと、第1,第2のマイクロホンが出力する各音声信号を信号処理して外部へ伝達する音声処理部とを設けたハウジングを備え、第1のマイクロホンは、第2のマイクロホンよりスピーカに近い位置に配置されて、音声処理部は、第1のマイクロホンが出力する音声信号を用いて、第2のマイクロホンが出力する音声信号からスピーカが発した音を低減させる処理を行い、第1,第2のマイクロホンは、シリコン薄膜と電極との間にバイアス電圧を印加するシリコンマイクロホンであることを特徴とする。
この発明によれば、熱や経年変化、振動によるマイクロホンの感度劣化を抑制でき、ハウリングの防止効果が低減しない。
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1,第2のマイクロホンは、無指向性であることを特徴とする。
この発明によれば、第1,第2のマイクロホンを小型に構成できる。
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記第1,第2のマイクロホンは、同一基板上に実装されることを特徴とする。
この発明によれば、第1,第2のマイクロホンへの給電や、ハウジング外面への取り付けが容易になる。
請求項4の発明は、請求項3において、前記スピーカは、ハウジング内に配置されて、外部から伝達された音声情報を一方面側から出力し、スピーカの一方面側とハウジングの内面とで囲まれた前気室を形成し、前気室を形成するハウジングの面には、ハウジングの外面に沿って配置された前記基板上に実装された前記第1のマイクロホンを挿通させる開口を設けることを特徴とする。
この発明によれば、第1のマイクロホンをスピーカに向けて取り付けることができる。
請求項5の発明は、請求項3または4において、前記スピーカは、ハウジング内に配置されて、外部から伝達された音声情報を一方面側から出力し、スピーカの一方面側とハウジングの内面とで囲まれた前気室を形成し、前気室を形成するハウジングの面には、ハウジングの外面に沿って配置された前記基板上に実装された前記第2のマイクロホンを収納する凹部を設けることを特徴とする。
この発明によれば、第2のマイクロホンをハウジングに収めることができる。
請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかにおいて、前記音声処理部は、前記第2のマイクロホンと同一のパッケージ内に収納されることを特徴とする。
この発明によれば、通話装置の小型化および薄型化を図ることができる。
請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかにおいて、前記第1,第2のマイクロホンの感度差は3dB以内であることを特徴とする。
この発明によれば、音声処理部によるスピーカ音のキャンセル量のバラツキを抑制している。
請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、前記第1,第2のマイクロホンの各出力は、前記音声処理部で増幅されることを特徴とする。
この発明によれば、音声処理部でのスピーカ音のキャンセル量が周波数によって変動せず、ハウリング防止効果が広い周波数帯域で安定する。
以上説明したように、本発明では、熱や経年変化、振動によるマイクロホンの感度劣化を抑制でき、ハウリングの防止効果が低減しないという効果がある。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態)
本実施形態の通話装置Aは図1〜図3に示され、音声スイッチSW1を設けた矩形函状の装置本体A2に通話モジュールMJを収納して構成される。なお、装置本体A2は、例えば2つの樹脂成形部材を接合して形成され、通話モジュールMJを収納した後、各接合部材を嵌合手段または接着剤等によって接合する。
通話モジュールMJは、前面に開口を形成した函状のベースA11と、ベースA11の開口に覆設した平面状のプレートA10とでハウジングA1を構成し、ハウジングA1に、スピーカSP、マイクロホン基板MB1、音声処理部10を備える。そして、ハウジングA1の後述する音孔12が、装置本体A2の前面に穿設した複数の音孔60に対向するように配置される。
音声処理部10は、図3に示すように、通信部10a、音声スイッチ部10b,10c、増幅部10d、信号処理部10eを備えたICで構成され、ハウジングA1内に配置される。他の部屋等に設置されている通話装置Aから情報線Lsを介して送信された音声信号は、通信部10aで受信され、音声スイッチ部10bを介して増幅部10dで増幅された後、スピーカSPから出力される。また、通話スイッチSW1を操作することで通話可能状態となり、マイクロホン基板MB1上のマイクロホンM1(第1のマイクロホン),マイクロホンM2(第2のマイクロホン)から入力された各音声信号は信号処理部10eで後述する信号処理を施された後、音声スイッチ部10cを通過し、通信部10aから情報線Lsを介して他の部屋等に設置されている通話装置Aへ送信される。すなわち、部屋間で双方向の通話が可能なインターホンとして機能するものである。なお、通話装置Aの電源は、設置場所の近傍に設けたコンセントから供給されるか、あるいは情報線Lsを介して供給されてもよい。
スピーカSPは、鉄系材料で形成されて一端を開口した円筒状のヨーク20(冷間圧延鋼板(SPCC,SPCEN)、電磁軟鉄(SUY)等の厚み0.8mm程度の鉄系材料)を具備し、ヨーク20は、その開口端から外側に向かって円形の支持体21が延設されている。ヨーク20の筒内には円柱型永久磁石22(円柱型のネオジウム磁石、残留磁束密度1.39T〜1.43T)を配置し、ドーム型の振動板23(PEN(ポリエチレンナフタレート)またはPEI(ポリエーテルイミド)等の熱可塑性プラスチック(例えば、厚み35μm〜50μm))の外周側の縁部が支持体21の縁端面に固定されている。振動板23の背面には筒状のボビン24が固定されており、このボビン24の後端にはボイスコイル25(クラフト紙の紙管にポリウレタン銅線を巻回したもの)が設けられている。ボビン24およびボイスコイル25は、ボイスコイル25がヨーク20の開口端に位置するように設けられており、ヨーク20の開口端近傍を前後方向に自在に移動する。そして、ボイスコイル25のポリウレタン銅線に音声信号を入力すると、この音声信号の電流と永久磁石22の磁界とにより、ボイスコイル25に電磁力が発生するため、ボビン24が振動板23を伴なって前後方向に振動させられる。このとき、振動板23から音声信号に応じた音が発せられる。
そして、スピーカSPの振動板23が対向するプレートA10の前面内側にはリブ11が形成されており、スピーカSPの円形の支持体21の外周端部から前面側に突出した凸部21aの端面およびガスケット26をリブ11上に載置する。そして、スピーカSPの支持体21の四隅に設けた取付孔27が、プレートA10の内面に等間隔に形成された4箇所の図示しないボスに各々載置され、取付孔27を介してねじ留めされると、ガスケット26がボス11に密着し、振動板23がプレートA10の内面に対向する状態でスピーカSPが固定される。また、振動板23に対向するプレートA10の箇所には複数の音孔12が穿設されている。
ハウジングA1内にスピーカSPが固定されると、ハウジングA1の前面内側とスピーカSPの表面側(振動板23側)とで囲まれた空間である前気室Bf、ハウジングA1の後面内側および側面内側とスピーカSPの裏面側(ヨーク20側)とで囲まれた空間である後気室Brが形成される。前気室Bfは、プレートA10の前面に複数設けた音孔12を介して外部に連通している。後気室Brは、スピーカSPの支持体21のガスケット26とハウジングA1の内面のリブ11とが密着することで、前気室Bfとは絶縁した(連通していない)空間となる。
さらに、ハウジングA1は、図1、図4に示すように、スピーカSP裏面の後気室Brを包囲するベースA11の内壁面に沿って、一端を内壁面から離し、他端を内壁面に連続させた壁部41が立設されており、この壁部41の端面がプレートA10の裏面に当接することで、この壁部41とベースA11の内壁面とプレートA10の裏面とで中空の音響管40が形成され、この音響管40が小容量の後気室Br内に配置されている。音響管40は、後気室Brの内壁面に沿って屈曲した矩形の断面形状を有する中空の閉管で、一端を開口し(開口端40a)、他端を閉塞して(閉塞端40b)形成され、管内は開口端40aを介して後気室Br内に連通している。音響管とは、閉管の共振周波数(管の全長が略1/4波長の奇数倍に一致する周波数)で入力インピーダンスが極めて小さくなることを利用したもので、共振周波数の音波が入射すると、その反射波は入射波に対して位相が反転した波形となり、入射波と反射波とが互いに打ち消しあうことで、開口端40aから外部へ伝播する音波を低減させている。
このような音響管40は、スピーカSPの最低共振周波数を低周波数側に移行させ、さらにはスピーカSPの音圧レベルを増加させるために設けられており、音響管40の全長を、音圧レベルを増大させたい低周波数(本実施形態では700〜800Hz付近)の略1/4波長に設定することで、後気室Brが小容量であってもスピーカSPの音質および効率が向上する。
また、音響管40を後気室Brの複数の内壁面に亘って連続して形成することで、小容量の後気室Br内に設けられる音響管40を必要に応じて長くすることができ、さらに音響管40を屈曲した形状に形成することで、小容量の後気室Br内に音響管40を配置することができる。
次に、マイクロホン基板MB1は、図5に示すように、両面2a,2bを有するモジュール基板2を備え、マイクロホンのベアチップBC1とICKa1との対、マイクロホンのベアチップBC2とICKa2との対をモジュール基板2の一面2aに各々実装し、ベアチップBC1、ICKa1、モジュール基板2上の配線パターン(図示無し)の各間、およびベアチップBC2、ICKa2、モジュール基板2上の配線パターン(図示無し)の各間をワイヤWで各々接続(ワイヤボンティング)した後、ベアチップBC1とICKa1の対を覆うようにシールドケースSC1を実装し、ベアチップBC2とICKa2の対を覆うように、シールドケースSC2を実装することで、ベアチップBC1、ICKa1、シールドケースSC1で構成されるマイクロホンM1、ベアチップBC2、ICKa2、シールドケースSC2で構成されるマイクロホンM2を備えている。
ベアチップBC(ベアチップBC1またはBC2)は、MEMS技術を用いて形成され、図6に示すように、シリコン基板1bに穿設した孔1cを塞ぐようにシリコン基板1bの一面側にシリコン薄膜1dが形成され、このシリコン薄膜1dとの間にエアーギャップ1e(例えば、3μm)を介して電極1fが形成され、さらに音声信号を出力するパッド1gが設けられており、コンデンサ型のシリコンマイクロホンを構成している。そして、シリコン薄膜1d−電極1f間には外部からバイアス電圧が印加されており、外部からの音響信号がシリコン薄膜1dを振動させることで、シリコン薄膜1dと電極1fとの間の静電容量が変化して電荷量が変化し、この電荷量の変化に伴ってパッド1g,1gから音響信号に応じた電流が流れる。このベアチップBCは、シリコン基板1bをモジュール基板2上にダイボンディングし、特にベアチップBC2のシリコン薄膜1dは、モジュール基板2に穿設した音孔F2に対向している。このようなシリコンマイクロホンは、エレクトレットコンデンサマイクロホンと異なり、振動板を帯電させる必要がないため、熱や経年変化、振動による感度劣化が少なく、静電気によっても破壊され難い。
そして、マイクロホンM1は、音孔F1を穿設したシールドケースSC1の底面側を集音面とし、マイクロホンM2は、音孔F2を穿設したモジュール基板2への実装面側を集音面として、互いに逆方向となるモジュール基板2の両面方向に集音面を有するものになる。このように構成されたマイクロホン基板MB1は、モジュール基板2の一面2aにマイクロホンM1,M2の両方を実装しているので、マイクロホン基板MB1の厚さを薄くできる。
図7(a)は、マイクロホン基板MB1を、モジュール基板2の一面2a側から見た平面図であり、モジュール基板2は、マイクロホンM1を配置する矩形部2fと、マイクロホンM2を配置する矩形部2gと、矩形部2f,2g間を連結する連結部2hとで構成され、矩形部2gは矩形部2fより大きく形成される。そして、矩形部2gの縁部に沿って、負電源パッドP1,正電源パッドP2,出力1パッドP3,出力2パッドP4が設けられている。
そして、図7(b)に示すように、負電源パッドP1には外部から供給される電源電圧の負側、正電源パッドP2には電源電圧の正側が接続されて、モジュール基板2上の配線パターンを介してマイクロホンM1,M2に電源電圧を供給している。また、出力1パッドP3からは、マイクロホンM1が集音した音声信号がモジュール基板2上の配線パターンを介して出力され、出力2パッドP4からは、マイクロホンM2が集音した音声信号がモジュール基板2上の配線パターンを介して出力される。なお、出力パッドP3,P4から出力される音声信号のグランドは、負電源パッドP1で兼用される。
このように、マイクロホンM1,M2の電源電圧を共通の負電源パッドP1、正電源パッドP2から供給し、さらにマイクロホンM1,M2の各出力のグランドを負電源パッドP1で兼用することで、パッドの数を減らすことができ、構成が簡単になる。
次に、マイクロホン基板MB1の動作について説明する。
まず、集音した音響信号に応じてベアチップBC1,BC2から流れる各電流は、ICKa1,Ka2によってインピーダンス変換されるとともに電圧信号に変換され、音声信号として出力1パッドP3、出力2パッドP4から各々出力される。
ICKa(ICKa1またはICKa2)は、図8の回路構成を備えており、電源パッドP1,P2から供給される電源電圧+V(例えば5V)をバイアス電圧Vr(例えば12V)に変換するチップICからなる定電圧回路Kbを備えており、ベアチップBCのシリコン薄膜1d−電極1f間(図6参照)には抵抗R11を介してバイアス電圧Vrが印加され、抵抗R11とベアチップBCとの接続中点はコンデンサC11を介してジャンクション型のJ−FET素子S11のゲート端子に接続される。J−FET素子S11のドレイン端子は電源電圧+Vに接続され、ソース端子は抵抗R12を介して電源電圧の負側に接続される。ここで、J−FET素子S11は電気インピーダンスの変換用であり、このJ−FET素子S11のソース端子の電圧が音声信号として出力される。なお、ICKaのインピーダンスの変換回路は、上記構成に限定されるものではなく、例えばオペアンプによるソースフォロワ回路の機能を有する回路であってもよく、または必要に応じてICKa内に音声信号の増幅回路を設けてもよい。
そして、マイクロホン基板MB1は、上記のようにモジュール基板2上の配線パターンを介して信号伝達、給電を行うことで、信号線、給電線を効率よく構成できるとともに、ハウジングA1の外面に取付可能となる。本実施形態では、熱硬化性の接着剤またはホットメルトのような熱可塑性の接着剤によって、モジュール基板2の一面2aをハウジングA1の前面外側に沿って固定する。
マイクロホンM1,M2は無指向性であり、小型に構成されているが、マイクロホンM1はハウジングA1前面の開口13を挿通して集音面を前気室Bfに向けており、シールドケースSC1の底面に穿設したマイクロホンM1の音孔F1はスピーカSPの振動板23の中央に対向して、音孔F1を介して伝達されるスピーカSPからの音声を集音する。さらに、マイクロホンM1の集音面をスピーカSPの振動板23の中心に対向させることで、マイクロホンM1は、スピーカSPの発する音を位相の正しい状態で容易に集音できる。
また、マイクロホンM2は、ハウジングA1の前面に設けた凹部14に嵌合し、モジュール基板2に穿設したマイクロホンM2の音孔F2はスピーカSPの出力方向に向かってハウジングA1の外部(前方)に面しているので、音孔F2を介して伝達される、通話装置Aの前方に位置する話者からの音声を集音する。なお、スピーカSPの中心から各マイクロホンM1,M2の中心までの距離をそれぞれX1,X2とすると、X1<X2となる。
また、スピーカSPの裏面が面する後気室Brは、ハウジングA1内で密閉されるので、スピーカSPの裏面から放射される音声は後気室Brから漏れ難くなり、スピーカSPとマイクロホンM2との音響結合を低減させている。さらにスピーカSPの裏面(振動板23の裏面)から放射される音は、スピーカSPの表面(振動板23の表面)から放射される音と位相が反転しており、このスピーカSPの裏面から放射される音が前方に回り込むと、スピーカSPの表面から放射される音と互いに打ち消しあって、スピーカSPの放射音圧が低下し、前方にいる話者にはスピーカSPが発する音声が聞こえ難いものとなるが、上記のようにスピーカSPの裏面から放射される音はハウジングA1の外部に漏れ難いので、上記回り込みによるスピーカSPの放射音圧の低下を防いでいる。
また、マイクロホンM2を収納した凹部14は後気室Brと連通していない分離された空間であるので、マイクロホンM2はスピーカSPの発する音声をさらに集音し難くなり、スピーカSPとマイクロホンM2との音響結合をさらに低減させている。すなわち、上記構成によって、スピーカSPが発する音声と話者の発する音声とをマイクロホンM1,M2で分離して集音しているのである。
また、マイクロホン基板MB1をハウジングA1内に配置すると前気室Bfと後気室Brとの間の空間的な絶縁を維持することが困難であるが、本実施形態のようにマイクロホン基板MB1をハウジングA1の外面に取り付けることで、前気室Bfと後気室Brとの間の空間的な絶縁を維持することができる。
そして、本実施形態では、スピーカSPの音声出力をマイクロホンM1,M2が拾うことで発生するハウリングを防止するために、以下の構成を備えている。
まず、音声処理部10に収納されている信号処理部10eは、図9に示すように、マイクロホンM1の出力を非反転増幅する増幅回路30と、増幅回路30の出力から音声帯域(300〜4000Hz)以外の周波数のノイズを除去するバンドパスフィルター31と、バンドパスフィルター31の出力を遅延させる遅延回路32と、マイクロホンM2の出力を反転増幅する増幅回路33と、増幅回路33の出力から音声帯域(300〜4000Hz)以外の周波数のノイズを除去するバンドパスフィルター34と、遅延回路32とバンドパスフィルター34の各出力を加算する加算回路35とを備える。
図10〜図13は、スピーカからの音声をマイクロホンM1,M2で各々集音した場合における信号処理部10の各部の音声信号波形を示す。まず、スピーカSPの中心から各マイクロホンM1,M2の中心までの距離をそれぞれX1,X2とすると、X1<X2となる。したがって、スピーカSPからの音声をマイクロホンM1,M2で拾った場合、スピーカSPとマイクロホンM1,M2との距離、およびマイクロホンM1,M2の向きによってマイクロホンM2の出力Y21のほうがマイクロホンM1の出力Y11よりも振幅が小さく、さらに両マイクロホンM1,M2とスピーカSPとの距離の差(X2−X1)に相当する音波の遅延時間[Td=(X2−X1)/Vs](Vsは音速)だけマイクロホンM2の出力Y21の位相が遅れている(図10(a)(b)参照)。
そして、増幅回路30が出力Y11を非反転増幅した出力Y12を生成し、増幅回路33が出力Y21を反転増幅して位相を180°反転させた出力Y22を生成する。このとき、両マイクロホンM1,M2とスピーカSPとの距離の差(X2−X1)に相当するレベル調整を行ない、スピーカSPからの音声に対する両マイクロホンM1,M2の出力レベルを一致させる(図11(a)(b)参照)。なお、本実施形態では、増幅回路30の増幅率は略1としており、増幅回路30は省略してもよい。
そして、バンドパスフィルター31,34は、出力Y12,Y22から音声帯域以外の周波数のノイズを除去した出力Y13,Y23を生成する(図12(a)(b)参照)。
次に、遅延回路32は、時間遅延素子またはCR位相遅延回路で構成されており、上記遅延時間TdだけスピーカSPに近いほうのマイクロホンM1の出力を遅延させることで、遅延回路32の出力Y14とバンドパスフィルター34の出力Y23との位相を一致させ、伝達する音声信号にのるノイズを低減させる。
そして、出力Y14に含まれるスピーカSPからの音声成分と、出力Y23に含まれるスピーカSPからの音声成分とは、上記増幅処理,遅延処理によって同一振幅、同一位相となり、加算回路35において出力Y14とY23とを加算することで、スピーカSPからの音声に対応する音声信号が打ち消された出力Yaが生成される(図13(a)〜(c)参照)。すなわち、出力Yaでは、スピーカSPからの音声成分が低減しているのである。
一方、マイクロホンM1,M2前方の話者Hが発する音声に対しては、前方に向かって配置されたマイクロホンM2の出力Y21の振幅が、マイクロホンM1の出力Y11の振幅よりも大きくなる。さらに、増幅回路33の増幅率は増幅回路30の増幅率より大きいので、出力Y23に含まれる話者Hからの音声成分は、出力Y14に含まれる話者Hからの音声成分よりさらに大きくなる。すなわち、出力Y14に含まれる話者Hからの音声成分と、出力Y23に含まれる話者Hからの音声成分との振幅差は大きくなり、加算回路35で上記加算処理を施しても、出力Yaには、話者Hが発する音声に応じた信号が十分な振幅を維持した状態で残る。
以上のようにして加算回路35の出力YaではスピーカSPからの音声成分が低減されて、通話装置A前方の話者Hからマイクロホン基板MB1に向って発した音声成分は残っており、出力Yaでは、残したい話者Hからの音声成分と、低減したいスピーカSPからの音声成分との相対的な差が大きくなる。すなわち、話者Hからの音声とスピーカSPからの音声とが同時に発生している場合でも、話者Hからの音声成分は十分な振幅を維持しながらスピーカSPからの音声成分のみが低減されるので、スピーカSPの音声出力をマイクロホンM1,M2が拾うことで発生するハウリングを防止することができるのである。
このように、信号処理部10eは、マイクロホンM1,M2が集音した各スピーカ音の位相、振幅を互いに一致させてからキャンセルしてハウリングを防止しているが、本実施形態では、マイクロホンM1,M2として、振動板を帯電させる必要がない上述のシリコンマイクロホン(図6参照)を用いることで、熱や経年変化、振動によるマイクロホンの感度劣化を抑制し、ハウリングの防止効果が低減しないようにしている。また、静電気によるマイクロホンM1,M2の破壊が生じ難く、信頼性にも優れている。
また、人間の可聴音圧レベルは、0dB〜140dB(音圧:0.00002〜200Pa)であり、人間は約6dB(1/2倍あるいは2倍)より大きい音の変化でないと明確に音の大きさの違いを認識できない。図14は、マイクロホンM1,M2の感度差(マイクロホンM1の感度―マイクロホンM2の感度)に対するスピーカ音のキャンセル量を示しており、マイクロホンM1,M2の感度差が3db以内であれば(図14中の範囲Z1)、信号処理部10eによるスピーカ音のキャンセル量が6dB以上となり、人間が明確にスピーカ音のキャンセル量の違いを認識可能になる。
そこで、本実施形態では、マイクロホンM1,M2の感度差を3dB以内に維持している。したがって、スピーカ音のキャンセル量が6dB以下に低減することなく、当該キャンセル量のばらつきを抑制できる。
さらに、図15に示すように、プリアンプ内蔵マイクロホンの出力特性Ybは、周波数に応じて利得および位相が変化するため、信号処理部10eでのスピーカ音のキャンセル量が周波数によってばらつき、ハウリング防止効果が低下してしまう。一方、プリアンプを内蔵していないマイクロホンの出力特性Yaは、利得および位相が周波数に対して略一定になるため、信号処理部10eでのスピーカ音のキャンセル量が周波数によって変動せず、ハウリング防止効果が広い周波数帯域で安定している。そこで、本実施形態では、マイクロホンM1,M2自体には、集音した音声信号を増幅するためのプリアンプを内蔵せず、信号処理部10eに設けた増幅回路30,33によって音声信号の増幅を行っている。
さらに、音声処理部10では、音声スイッチ部10bが受信した信号の伝送線路上に配置され、音声スイッチ部10cが送信する信号の伝送線路上に配置されており(図3参照)、音声スイッチ部10b,10cは互いの入力信号のレベルを比較し、入力信号のレベルが小さいほうの音声スイッチ部は、内部に具備した可変損失手段によって伝送線路上に損失量(例えば、48dBの損失量)を付与する。したがって、受信した信号と送信される信号とのうち、いずれかレベルの小さい信号は減衰し、ハウリングマージンがさらに増加するので(例えば、48dBの増加)、一層のハウリング防止が図られている。
また、上記音声処理部10は、ハウジングA1内に配置しているが(図1参照)、図16に示すように、マイロホン基板MB1上で、マイクロホンM2のシールドケースSC2内に実装してもよく、さらに通話装置Aの小型化、薄型化を図ることができる。
また、スピーカSPからの音声に対するマイクロホンM1,M2の各出力の位相差、振幅差は周波数依存性を有するが、信号処理部10eは、マイクロホンM1,M2の各出力を複数の周波数帯域に分離し、周波数帯域毎にスピーカ音をキャンセルする構成でもよい。なお、マイクロホンM1,M2の各出力を複数の周波数帯域に分離する手段としては、複数のバンドパスフィルタを用いる構成や、ある周波数帯域の信号から他の周波数帯域の信号を推測する構成等がある。
また、信号処理部10eは、遅延回路32によって、スピーカ音に対するマイクロホンM1,M2の各出力の位相を一致させているが、マイクロホンM1,M2の各出力に設けたA/D変換手段のA/D変換タイミングを上記遅延時間Tdだけずらすことによって、マイクロホンM1,M2の各出力の位相を一致させる構成にしてもよい。
なお、本実施形態では、情報線Lsを介した有線通信方式を用いて、通話装置A間における音声信号の授受を行っているが、通話装置Aに周知の無線通信手段を設けることで、無線通信方式による音声信号の授受を行ってもよい。
実施形態の構成を示す側面断面図である。 (a)(b)同上の斜視図である。 同上の回路構成図である。 同上の通話モジュールの一部分解斜視図である。 同上のマイクロホン基板の構成を示す側面断面図である。 同上のベアチップの構成を示す側面断面図である。 同上のマイクロホン基板の構成を示す(a)簡略化した平面図、(b)簡略化した回路図である。 同上のインピーダンス変換回路の回路図である。 同上の信号処理部の回路構成図である。 (a)(b)同上の信号処理部の信号波形図である。 (a)(b)同上の信号処理部の信号波形図である。 (a)(b)同上の信号処理部の信号波形図である。 (a)〜(c)同上の信号処理部の信号波形図である。 同上の信号処理部によるスピーカ音のキャンセル量を示す図である。 同上のマイクロホンの出力特性を示す図である。 同上のマイクロホン基板の別の構成を示す側面断面図である。 従来のエレクトレットコンデンサマイクロホンの概略構成を示す側面断面図である。
符号の説明
A 通話装置
MJ 通話モジュール
A1 ハウジング
SP スピーカ
M1,M2 マイクロホン
10 音声処理部

Claims (8)

  1. 外部から伝達された音声情報を出力するスピーカと、音声を集音して音声信号を出力する第1,第2のマイクロホンと、第1,第2のマイクロホンが出力する各音声信号を信号処理して外部へ伝達する音声処理部とを設けたハウジングを備え、
    第1のマイクロホンは、第2のマイクロホンよりスピーカに近い位置に配置されて、音声処理部は、第1のマイクロホンが出力する音声信号を用いて、第2のマイクロホンが出力する音声信号からスピーカが発した音を低減させる処理を行い、
    第1,第2のマイクロホンは、シリコン薄膜と電極との間にバイアス電圧を印加するシリコンマイクロホンである
    ことを特徴とする通話装置。
  2. 前記第1,第2のマイクロホンは、無指向性であることを特徴とする請求項1記載の通話装置。
  3. 前記第1,第2のマイクロホンは、同一基板上に実装されることを特徴とする請求項1または2記載の通話装置。
  4. 前記スピーカは、ハウジング内に配置されて、外部から伝達された音声情報を一方面側から出力し、スピーカの一方面側とハウジングの内面とで囲まれた前気室を形成し、前気室を形成するハウジングの面には、ハウジングの外面に沿って配置された前記基板上に実装された前記第1のマイクロホンを挿通させる開口を設けることを特徴とする請求項3記載の通話装置。
  5. 前記スピーカは、ハウジング内に配置されて、外部から伝達された音声情報を一方面側から出力し、スピーカの一方面側とハウジングの内面とで囲まれた前気室を形成し、前気室を形成するハウジングの面には、ハウジングの外面に沿って配置された前記基板上に実装された前記第2のマイクロホンを収納する凹部を設けることを特徴とする請求項3または4記載の通話装置。
  6. 前記音声処理部は、前記第2のマイクロホンと同一のパッケージ内に収納されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の通話装置。
  7. 前記第1,第2のマイクロホンの感度差は3dB以内であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の通話装置。
  8. 前記第1,第2のマイクロホンの各出力は、前記音声処理部で増幅されることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の通話装置。
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