JP2008298273A - ころ軸受、ころ軸受の保持器セグメントおよび風力発電機の主軸支持構造 - Google Patents

ころ軸受、ころ軸受の保持器セグメントおよび風力発電機の主軸支持構造 Download PDF

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Abstract

【課題】保持器セグメントの破損の恐れを低減させ、ころの円滑な転動を可能とするころ軸受を提供する。
【解決手段】円錐ころ軸受は、円錐ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部14b、およびこの複数の柱部14bを連結するように周方向に延びる連結部15a、15bを有し、外輪および内輪の間で周方向に順次連ねて配置される複数の樹脂製の保持器セグメント11aを備える。保持器セグメント11aは、ころ案内である。ここで、柱部14bの側壁面には、円錐ころと接触する接触部28を有する一つの案内爪18b、および接触部28の周方向内方側に位置に形成される凹部29が設けられている。
【選択図】図1

Description

この発明は、ころ軸受、ころ軸受の保持器セグメントおよび風力発電機の主軸支持構造に関し、特に、周方向に配置されて一つの保持器を形成するころ軸受の保持器セグメント、このようなころ軸受の保持器セグメントを含むころ軸受および風力発電機の主軸支持構造に関するものである。
ころ軸受は、一般的には、外輪と、内輪と、外輪および内輪の間に配置される複数のころと、複数のころを保持する保持器とから構成される。保持器は通常、一体型、すなわち、環状の一つの部品で構成されている。
風を受けるためのブレードが取り付けられた風力発電機の主軸を支持するころ軸受については、大きな荷重を受ける必要があるため、ころ軸受自体も大型となる。そうすると、ころや保持器等、ころ軸受を構成する各構成部材も大型となり、部材の生産や組み立てが困難となる。このような場合、各部材を分割可能とすると、生産や組み立てが容易となる。
ここで、ころ軸受に含まれる保持器を、軸受の回転軸線に沿う方向に延びる分割線によって分割した分割型の保持器に関する技術が、ヨーロッパ特許公報1408248A2(特許文献1)に開示されている。図12は、特許文献1に開示された分割型の保持器である保持器セグメントを示す斜視図である。図12を参照して、保持器セグメント101aは、ころを収容する複数のポケット104を形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部103a、103b、103c、103d、103eと、複数の柱部103a〜103eを連結するように周方向に延びる連結部102a、102bとを有する。また、各柱部103a〜103eには、ポケットに収容したころをガイドするガイド面106が設けられている。
図13は、図12に示した保持器セグメント101aを含む円錐ころ軸受の一部を示す断面図である。図12および図13を参照して、保持器セグメント101aを含む円錐ころ軸受111の構成を説明すると、円錐ころ軸受111は、外輪112と、内輪113と、複数の円錐ころ114と、複数の円錐ころ114を保持する複数の保持器セグメント101a、101b、101c等とを有する。複数の円錐ころ114は、最もころの挙動が安定する位置であるPCD(Pitch Circle Diameter)105付近において、複数の保持器セグメント101a等によって保持されている。複数の円錐ころ114を保持する保持器セグメント101aは、周方向において隣接する同一形状の保持器セグメント101b、101cと、周方向のもっとも外側にある柱部103a、103eが当接するように連なって配置されている。複数の保持器セグメント101a、101b、101c等が連なって、円錐ころ軸受111に組み込まれ、円錐ころ軸受111に含まれる一つの環状の保持器が形成される。
ヨーロッパ特許公報1408248A2
特許文献1に開示された保持器セグメントは、軌道輪案内である。これに対し、このような分割型の保持器セグメントをころ案内とすることにより、軌道輪との接触時における破損や衝突音等を低減することができる。
ここで、保持器セグメントをころ案内とするには、柱部の側壁面にころと接触する案内爪を設ける。図14は、案内爪を設けた保持器セグメントの一部を示す断面図であり、ポケットの内方側から見た状態を示している。図14を参照して、保持器セグメント121は、ポケットを形成する柱部122と、柱部122を連結する一対の連結部123a、123bとを備える。柱部122の側壁面には、二つの案内爪124a、124bが設けられている。各案内爪124a、124bは、ころ長さ方向に間隔を開けて配置されている。このような構成とすることにより、案内爪124a、124b間に設けられるすき間125を利用して潤滑油を通油させることができる。
一方、このような保持器セグメント121は、ころ軸受に複数備えられるため、大量に製造する必要がある。したがって、保持器セグメント121を樹脂製とし、射出成形等により製造することが好ましい。
しかし、上記した形状の保持器セグメント121を射出成形により製造すると、各案内爪124a、124bの先端において収縮ひけが発生し、案内爪124a、124bの中央部が凹んだ形状となる。これを、図15を用いて説明する。図15は、この場合の保持器セグメント121の一部を示す図である。なお、図15は、図14に示す保持器セグメントを、図14中の矢印XVで示す方向から見た図である。
図14および図15を参照して、保持器セグメント121の案内爪124a、124bのうち、ころ長さ方向の中央部127a、127bは射出成形時における収縮ひけにより凹んでいる。ここで、ころ131が転動を始める時には、案内爪124a、124bのうち、ころ長さ方向の両端に位置するエッジ部126a、126b、126c、126dところ131とが接触する。そうすると、エッジ部126a〜126dの摩耗が促進され、ころ131および保持器セグメント121の姿勢を安定させることができない。また、強化繊維が充填された樹脂製の保持器セグメント121の場合、樹脂部分の摩耗により強化繊維がその表面に露出し、これにより、ころ131が摩耗してしまう恐れもある。このような保持器セグメント121を備えるころ軸受は、ころを円滑に転動させることができない。なお、図16に示すように、各案内爪124c、124dにおける一方のエッジ部126e、126fが、ころ131と接触する場合も同様である。
また、上記した形状の保持器セグメント121は、複数の案内爪124a、124bが設けられているため、案内爪124a、124bのエッジ部126a〜126dが多くなる。そうすると、射出成形時において、樹脂材料の流動性が悪化し、内部欠陥が発生しやすい。また、特許文献1に示す保持器セグメントのようにころ大径側にのみ案内爪を有し、柱部の一部が径方向に突出する複雑な形状であれば、樹脂の収縮や膨張における問題のみならず、変形が発生し、設計寸法通りの形状を得られない恐れもある。
この発明の目的は、保持器セグメントの破損の恐れを低減し、ころを円滑に転動させることができるころ軸受を提供することである。
この発明の他の目的は、破損の恐れを低減し、ころを円滑に転動させることができるころ軸受の保持器セグメントを提供することである。
この発明のさらに他の目的は、長寿命化を図ることができる風力発電機の主軸支持構造を提供することである。
この発明に係るころ軸受は、外輪と、内輪と、外輪および内輪の間に配置される複数のころと、ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、外輪および内輪の間で周方向に順次連ねて配置される複数の樹脂製の保持器セグメントとを備える。保持器セグメントは、ころ案内である。ここで、柱部の側壁面には、ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および接触部の周方向内方側の位置に形成される凹部が設けられている。
このように、ころ案内の保持器セグメントにおいて、柱部の側壁面に設ける案内爪を一つとしているため、案内爪のエッジ部を少なくすることができる。このような形状の保持器セグメントは、単純な形状であるため、肉厚差を小さくして、射出成形時における内部欠陥や変形の発生を抑制することができる。また、案内爪の先端ところとの接触面積を多くして、接触時における面圧を低下させることができる。さらに、柱部、引いては保持器セグメントの剛性を高くすることができる。このような保持器セグメントを備えるころ軸受は、ころおよび保持器セグメントの姿勢を安定させることができる。また、接触部の周方向内方側に位置する凹部を形成しているため、凹部を利用して潤滑油を溜めることができる。そうすると、凹部から接触部に潤滑油を供給することができ、潤滑性を向上することができる。したがって、保持器セグメントの破損を防止し、ころを円滑に転動させることができる。
ここで、保持器セグメントとは、一つの環状の保持器を、少なくともころを収容する一つのポケットを有するように、軸受の回転軸線に沿う方向に延びる分割線によって分割した単位体である。複数の保持器セグメントが周方向に連なってころ軸受に組み込まれ、一つの環状の保持器を構成する。
好ましくは、案内爪は、柱部の側壁面のうち、ころ長さ方向の中央に設けられている。こうすることにより、ポケットに収容されるころと案内爪が、ころ長さ方向の中央で接するため、ころおよび保持器セグメントの姿勢をより安定させることができる。したがって、さらにころを円滑に転動させることができる。
さらに好ましくは、案内爪のころ長さ方向の長さは、ポケットのころ長さ方向の長さのほぼ全長である。こうすることにより、ころと案内爪との接触部を多くすることができるため、ころおよび保持器セグメントの姿勢をより安定させることができる。したがって、さらにころを円滑に転動させることができる。ここで、「ほぼ全長」とは、ポケットのころ長さ方向の長さに対して、少なくとも50%以上であると解釈すべきであり、好ましくは、75%以上とする。
さらに好ましくは、凹部は、保持器セグメントを成形する際に生ずる収縮ひけにより形成される。このような凹部は、案内爪の表面と滑らかに連なっているため、潤滑油の流出入が容易となる。また、このような形状の凹部は、応力集中が発生しにくいため、破損の恐れを低減することができる。
さらに好ましくは、案内爪を含み、軸受の回転軸線に直交する平面で保持器セグメントを切断した断面において、案内爪の先端に位置する角部の角度は、鈍角である。こうすることにより、ころの転動時において、案内爪の先端に位置する角部が、ころや保持器セグメントの案内爪付近の潤滑油を掻き取る量を低減することができる。そうすると、ころや案内爪付近の潤滑油はポケット内へ供給されやすくなり、潤滑不良を低減して、ころを円滑に転動させることができる。
さらに好ましくは、角部には、面取りが設けられている。こうすることにより、角部が潤滑油を掻き取る量をさらに低減することができる。したがって、さらにころを円滑に転動させることができる。
さらに好ましくは、面取りは、R面取りである。こうすることにより、角部を滑らかな面で構成することができるため、さらに潤滑油を掻き取る量を低減することができる。したがって、さらにころを円滑に転動させることができる。
この発明の他の局面においては、ころ軸受の保持器セグメントは、ころ軸受に備えられ、ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、外輪および内輪の間で周方向に順次連ねて配置され、樹脂製である。また、ころ案内である。ここで、柱部の側壁面には、ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および接触部の周方向内方側の位置に形成される凹部が設けられている。
このようなころ軸受の保持器セグメントは、柱部の側壁面に設ける案内爪を一つとしているため、案内爪のエッジ部を少なくすることができる。このような形状の保持器セグメントは、単純な形状であるため、肉厚差を小さくして、射出成形時における内部欠陥や変形の発生を抑制することができる。また、案内爪の先端ところとの接触面積を多くして、接触時における面圧を低下させることができる。さらに、柱部、引いては保持器セグメントの剛性を高くすることができる。このような保持器セグメントを備えるころ軸受は、ころおよび保持器セグメントの姿勢を安定させることができる。また、接触部の周方向内方側に位置する凹部を形成しているため、凹部を利用して潤滑油を溜めることができる。そうすると、凹部から接触部に潤滑油を供給することができ、潤滑性を向上することができる。したがって、破損を防止し、ころを円滑に転動させることができる。
好ましくは、凹部は、保持器セグメントを成形する際に生ずる収縮ひけにより形成される。このような凹部は、案内爪の表面と滑らかに連なっているため、潤滑油の流出入が容易となる。また、このような形状の凹部は、応力集中が発生しにくいため、破損の恐れを低減することができる。
この発明のさらに他の局面においては、風力発電機の主軸支持構造は、風力を受けるブレードと、その一端がブレードに固定され、ブレードとともに回転する主軸と、固定部材に組み込まれ、主軸を回転自在に支持するころ軸受とを含む。ころ軸受は、外輪と、内輪と、外輪および内輪の間に配置される複数のころと、ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、外輪および内輪の間で周方向に順次連ねて配置される複数の樹脂製の保持器セグメントとを備える。保持器セグメントは、ころ案内である。ここで、柱部の側壁面には、ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および接触部の周方向内方側の位置に形成される凹部が設けられている。
このような風力発電機の主軸支持構造は、保持器セグメントの破損の恐れが低減され、ころを円滑に転動させることができるころ軸受を含むため、長寿命化を図ることができる。
この発明によれば、ころ案内の保持器セグメントにおいて、柱部の側壁面に設ける案内爪を一つとしているため、案内爪のエッジ部を少なくすることができる。このような形状の保持器セグメントは、単純な形状であるため、肉厚差を小さくして、射出成形時における内部欠陥や変形の発生を抑制することができる。また、案内爪の先端ところとの接触面積を多くして、接触時における面圧を低下させることができる。さらに、柱部、引いては保持器セグメントの剛性を高くすることができる。このような保持器セグメントを備えるころ軸受は、ころおよび保持器セグメントの姿勢を安定させることができる。また、接触部の周方向内方側に位置する凹部を形成しているため、凹部を利用して潤滑油を溜めることができる。そうすると、凹部から接触部に潤滑油を供給することができ、潤滑性を向上することができる。したがって、保持器セグメントの破損を防止し、ころを円滑に転動させることができる。
また、このようなころ軸受の保持器セグメントは、柱部の側壁面に設ける案内爪を一つとしているため、案内爪のエッジ部を少なくすることができる。このような形状の保持器セグメントは、単純な形状であるため、肉厚差を小さくして、射出成形時における内部欠陥や変形の発生を抑制することができる。また、案内爪の先端ところとの接触面積を多くして、接触時における面圧を低下させることができる。さらに、柱部、引いては保持器セグメントの剛性を高くすることができる。このような保持器セグメントを備えるころ軸受は、ころおよび保持器セグメントの姿勢を安定させることができる。また、接触部の周方向内方側に位置する凹部を形成しているため、凹部を利用して潤滑油を溜めることができる。そうすると、凹部から接触部に潤滑油を供給することができ、潤滑性を向上することができる。したがって、破損を防止し、ころを円滑に転動させることができる。
また、このような風力発電機の主軸支持構造は、保持器セグメントの破損の恐れが低減され、ころを円滑に転動させることができるころ軸受を含むため、長寿命化を図ることができる。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施形態に係る円錐ころ軸受に備えられる円錐ころ軸受の保持器セグメント11aを示す斜視図である。図1は、図2に示す保持器セグメント11aを、図2中のI−Iで切断した場合の断面図である。図3は、図2に示す保持器セグメント11aを、図2中の線III−IIIを含み、軸受の回転軸線に直交する平面で切断した場合の断面図である。図4は、図2に示す保持器セグメント11aを、柱部14aの中央を通り、円周方向に直交する平面で切断した場合の断面図である。図5は、図3に示す保持器セグメント11aのポケット部分の拡大断面図である。なお、理解の容易の観点から、図3および図4において、保持器セグメント11aが保持する複数の円錐ころ12a、12b、12cを点線で、図1においては、実線で示している。また、図2および図3においては、後述する凹部の図示を省略している。また、一点鎖線でPCD22を示す。
図1〜図5を参照して、まず、円錐ころ軸受に含まれる保持器セグメント11aの構成について説明する。保持器セグメント11aは、一つの環状の保持器を、少なくともころを収容する一つのポケットを有するように、軸受の回転軸線に沿う方向に延びる分割線によって分割した形状である。保持器セグメント11aは、円錐ころ12a、12b、12cを保持するポケット13a、13b、13cを形成するように、軸受の回転軸線に沿う方向に延びる4つの柱部14a、14b、14c、14dと、軸方向の両端に位置し、4つの柱部14a〜14dを連結するように周方向に延びる一対の連結部15a、15bとを含む。ここで、保持器セグメント11aは、その周方向外側の端部に柱部14a、14dが位置するよう構成されている。
一対の連結部15a、15bは、複数の保持器セグメント11aが円錐ころ軸受に組み込まれた際に、周方向に連なって一つの環状の保持器を形成するように、周方向において所定の曲率半径を有している。一対の連結部15a、15bのうち、円錐ころ12a〜12cの小径側に位置する連結部15aの曲率半径は、円錐ころ12a〜12cの大径側に位置する連結部15bの曲率半径よりも小さく構成されている。
ポケット13aの周方向両側に位置する柱部14a、14bおよびポケット13cの周方向両側に位置する柱部14c、14dのうち、柱部14a〜14dの側壁面の内径側には、保持器セグメント11aの径方向外側への移動を規制する内径側の案内爪17a、17b、17c、17dが設けられている。案内爪17a〜17dは、ポケット13a、13cに収容された円錐ころ12a、12cと内径側で接触する。また、ポケット13bの周方向両側に位置する柱部14b、14cのうち、柱部14b、14cの側壁面の外径側には、保持器セグメント11aの径方向内側への移動を規制する外径側の案内爪18b、18cが設けられている。案内爪18b、18cは、ポケット13bに収容された円錐ころ12bと外径側で接触する。案内爪17a〜17d、18b、18cは、柱部14a〜14dの各側壁面に、一つずつ設けられている。各案内爪17a〜17d、18b、18cは、ポケット13a〜13c側に突出した形状である。また、図3に示す断面において、各案内爪17a〜17d、18b、18cの案内面は、断面円弧状であって、円錐ころ12a〜12cの転動面に沿う形状である。案内爪17a〜17d、18b、18cのころ長さ方向の長さは、ポケット13a〜13cのころ長さ方向の長さよりも若干短い程度であり、ポケット13a〜13cのころ長さ方向の長さのほぼ全長である。また、案内爪17a〜17d、18b、18cは、柱部14a〜14dの側壁面のうち、連結部15aまたは連結部15bの一方側に片寄った位置に設けられておらず、ころ長さ方向の中央に設けられている。なお、周方向外側に位置する柱部14a、14dの周方向外側の端面21a、21bは、平らである。
このように内径側および外径側の案内爪17a〜17d、18b、18cを設けることにより、保持器セグメント11aを案内爪17a〜17d、18b、18cの案内面の接触部28に接触させて、ころ案内とすることができる。
案内爪18bが設けられた柱部14bの側壁面には、円錐ころ12bと接触する接触部28の周方向内方側に位置し、保持器セグメント11aを成形する際に生ずる収縮ひけにより形成される凹部29が設けられている(図1、図5参照)。このような凹部29は、射出成形において、容易に、すなわち、後加工等を施すことなく、形成することができる。具体的には、接触部28に対応する部分の金型形状を、収縮ひけを考慮した凹形状とする。こうすることにより、接触部28は収縮ひけが生じて平坦となり、接触部28の周方向内方側には収縮ひけによる凹部29が形成される。このようにして、保持器セグメント11aを製造する。この場合、柱部14bの側壁面には、一つの案内爪18bのみが設けられているので、収縮ひけによる凹部29を上記した位置に形成することができる。なお、このようにして形成された凹部29は、射出成形後の削り加工等によって形成された凹部と、その表面粗さ等が異なるものである。また、内径側の案内爪17a〜17d、および外径側の案内爪18cが設けられた柱部14a〜14dの側壁面にも、円錐ころと接触する接触部の周方向内方側に位置する凹部29が設けられている。それらの構成は同様であるため、その説明を省略する。なお、理解の容易の観点から、図5において、凹部29の凹み量は誇張して大きく図示している。
このようなころ保持器セグメント11aは、柱部14a〜14dの側壁面に設ける案内爪17a〜17d、18b、18cを一つとしているため、案内爪17a〜17d、18b、18cのエッジ部を少なくすることができる。このような形状の保持器セグメント11aは、単純な形状であるため、肉厚差を小さくして、射出成形時における内部欠陥や変形の発生を抑制することができる。また、案内爪17a〜17d、18b、18cの先端と円錐ころ12a〜12cとの接触面積を多くして、接触時における面圧を低下させることができる。さらに、柱部14a〜14d、引いては、保持器セグメント11aの剛性を高くすることができる。このような保持器セグメント11aを備えるころ軸受は、円錐ころ12a〜12cおよび保持器セグメント11aの姿勢を安定させることができる。また、接触部28の周方向内方側に位置する凹部29を形成しているため、凹部29を利用して潤滑油を溜めることができる。そうすると、凹部29から接触部に潤滑油を供給することができ、潤滑性を向上することができる。したがって、保持器セグメント11aの破損を防止し、円錐ころ12a〜12cを円滑に転動させることができる。
また、このような凹部29は、案内爪17a〜17d、18b、18cの表面と滑らかに連なっているため、潤滑油の流出入が容易となる。また、このような形状の凹部29は、応力集中が発生しにくいため、破損の恐れを低減することができる。
また、案内爪17a〜17d、18b、18cのころ長さ方向の長さは、ポケット13a〜13cのころ長さ方向の長さのほぼ全長であるため、円錐ころ12a〜12cと案内爪17a〜17d、18b、18cとの接触部28を多くすることができ、円錐ころ12a〜12cおよび保持器セグメント11aの姿勢をより安定させることができる。したがって、円錐ころ12a〜12cを円滑に転動させることができる。さらに、案内爪17a〜17d、18b、18cは、柱部14a〜14dの側壁面のうち、ころ長さ方向の中央に設けられているため、ポケット13a〜13cに収容される円錐ころ12a〜12cと、ころ長さ方向の中央で接し、円錐ころ12a〜12cおよび保持器セグメント11aの姿勢をより安定させることができる。したがって、円錐ころ12a〜12cを円滑に転動させることができる。
ここで、外径側の案内爪18bの形状について、さらに詳細に説明する。図6は、図5においてVIで示す部分の拡大断面図である。図1〜図6を参照して、案内爪18bのポケット13b側に位置する角部23の角度は、鈍角となるよう構成されている。ここでは、具体的には、図6に示す断面、すなわち、案内爪18bを含み、軸受の回転軸線に直交する平面で切断した断面において、柱部14bの外径面24から角部23を形成するようにポケット13bの内方側に延びる面25を構成する線と、案内爪18bを構成する円弧状の案内面26のうち、角部23における接面27を構成する線とのなす角度θは、90°よりも大きく構成されている。
角部23の角度が鋭角であると、円錐ころ12bの転動時において、円錐ころ12bや案内爪18b付近にある潤滑油を大量に掻き取ってしまう。そうすると、保持器セグメント11aの外部側からポケット13b内へ潤滑油が供給されにくくなり、潤滑不良を引き起こして、円錐ころ12bの円滑な転動を阻害することになる。
しかし、案内爪18bの先端に位置する角部23は鈍角であるため、円錐ころ12bの転動時において、円錐ころ12bや案内爪18b付近の潤滑油を掻き取る量を低減することができる。そうすると、円錐ころ12bや案内爪18b付近の潤滑油はポケット13b内へ供給されやすくなり、潤滑不良となる恐れは低減する。したがって、円錐ころ12bを円滑に転動させることができる。なお、内径側の案内爪17a〜17d、および外径側の案内爪18cの形状についても同様の構成であるため、その説明を省略する。
次に、上記した保持器セグメント11aを含む円錐ころ軸受の構成について説明する。図7は、複数の保持器セグメント11a、11b、11c、11d等を周方向に配置させた円錐ころ軸受31を、軸方向から見た概略断面図である。また、図8は、図7中においてVIIIで示す部分の拡大断面図である。ここで、保持器セグメント11b、11c、11dは、保持器セグメント11aと同一形状であるため、その説明を省略する。なお、図7においては、保持器セグメント11a等に保持される円錐ころを省略し、図7および図8においては、柱部の側壁面に設けられた凹部を省略している。また、ここでは、複数の保持器セグメント11a〜11dのうち、最初に配置される保持器セグメントを保持器セグメント11aとし、最後に配置される保持器セグメントを保持器セグメント11dとする。
図7および図8を参照して、円錐ころ軸受31は、外輪32と、内輪33と、複数の円錐ころ34と、複数の保持器セグメント11a〜11dとを備える。保持器セグメント11a〜11dは、周方向において、順次連ねられて無間隙に配置される。ここでは、まず、最初に保持器セグメント11aが配置され、次に、保持器セグメント11bが保持器セグメント11aと当接するように、具体的には、保持器セグメント11aの端面21aと保持器セグメント11bの端面21cとが当接するように配置される。その後、保持器セグメント11cが保持器セグメント11bと当接するように、具体的には、保持器セグメント11bの端面21dと保持器セグメント11cの端面21eとが当接するように配置され、順次、保持器セグメントが配置されていき、最後に、保持器セグメント11dが配置される。このようにして、周方向に連ねられて、保持器セグメント11a〜11dが配置される。この場合、最初の保持器セグメント11aと最後の保持器セグメント11dとの間には、周方向のすき間39を有する。このようなすき間39は、保持器セグメント11a〜11dの熱膨張等を考慮して設けられている。
ここで、上記したように、柱部の側壁面に設けられる案内爪36、37の先端は、収縮ひけが少ないため、柱部の剛性は高く、また、案内爪36、37の先端と円錐ころ34との接触面積を多くして、接触時における面圧を低下させることができる。また、接触部の周方向内方側に位置する凹部から接触部に潤滑油を供給することができ、潤滑性を向上することができる。このような凹部は、案内爪36、37の表面と滑らかに連なっているため、潤滑油の流出入が容易となる。また、このような形状の凹部は、応力集中が発生しにくいため、破損の恐れを低減することができる。したがって、保持器セグメント11bの破損を防止し、円錐ころ34を円滑に転動させることができる。
さらに、保持器セグメント11bに設けられた案内爪36、37の先端に位置する角部の角度は、鈍角である。そうすると、円錐ころ34の転動時において、案内爪36、37の先端に位置する角部が、円錐ころ34や案内爪36、37付近にある潤滑油を掻き取る量を低減することができる。したがって、円錐ころ34や案内爪36、37付近の潤滑油はポケット内へ供給されやすくなり、潤滑不良となる恐れは低減する。
なお、案内爪36、37の角部に面取りを設けることにしてもよい。こうすることにより、角部が潤滑油を掻き取る量をさらに低減することができる。したがって、さらに円錐ころ34を円滑に転動させることができる。
さらに、図9に示すように、案内爪41の角部42に設けられた面取りは、R面取りとしてもよい。こうすることにより、角部42がより滑らかな面となるため、潤滑油を掻き取る量をさらに低減することができる。
なお、上記の実施の形態において、最初の保持器セグメント11aと最後の保持器セグメント11dとの間に、周方向のすき間39の寸法を調整する間座を、最後の保持器セグメント11dに当接するように配置することにしてもよい。この場合、間座と最初の保持器セグメント11aとの間にすき間39が生ずることになる。このように構成することにより、最初の保持器セグメント11aと最後の保持器セグメント11dと周方向のすき間39の寸法を調整とすることが、より容易になる。なお、この場合、間座は保持器セグメントと解釈すべきである。
図10および図11は、この発明の一実施形態に係るころ軸受を主軸支持軸受75として適用した、風力発電機の主軸支持構造の一例を示している。主軸支持構造の主要部品を支持するナセル72のケーシング73は、高い位置で、旋回座軸受71を介して支持台70上に水平旋回自在に設置されている。風力を受けるブレード77を一端に固定する主軸76は、ナセル72のケーシング73内で、軸受ハウジング74に組み込まれた主軸支持軸受75を介して、回転自在に支持されている、主軸76の他端は増速機78に接続され、この増速機78の出力軸が発電機79のロータ軸に結合されている。ナセル72は、旋回用モータ80により、減速機81を介して任意の角度に旋回させられる。
軸受ハウジング74に組み込まれた主軸支持軸受75は、この発明の一実施形態に係る円錐ころ軸受であって、外輪と、内輪と、外輪および内輪の間に配置される複数の円錐ころと、円錐ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、外輪および内輪の間で周方向に順次連ねて配置される複数の樹脂製の保持器セグメントとを備える。保持器セグメントは、ころ案内である。ここで、柱部の側壁面には、円錐ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および接触部の周方向内方側に位置に形成される凹部が設けられている。
主軸支持軸受75は、大きな風力を受けるブレード77を一端に固定する主軸76を支持するため、大きなモーメント荷重やスラスト荷重、ラジアル荷重等を受ける必要がある。ここで、ころを円錐ころとすることにより、大きなモーメント荷重等を受けることができる。
また、このような風力発電機の主軸支持構造は、保持器セグメントの破損の恐れが低減され、円錐ころを円滑に転動させることができる円錐ころ軸受を含むため、長寿命化を図ることができる。
なお、ころ案内の保持器セグメントにおいて、柱部の側壁面のうち、ころ長さ方向の中央に設ける案内爪を一つとし、案内爪の接触部の周方向内方側に位置する凹部を収縮ひけにより形成する構成としてもよい。また、ころ案内の保持器セグメントにおいて、柱部の側壁面のうち、ポケットのころ長さ方向の長さのほぼ全長とした案内爪を一つとし、案内爪の接触部の周方向内方側に位置する凹部を収縮ひけにより形成する構成としてもよい。また、ころ案内の保持器セグメントにおいて、柱部の側壁面のうち、その先端に位置する角部の角度を鈍角とした案内爪を一つとし、案内爪の接触部の周方向内方側に位置する凹部を収縮ひけにより形成する構成としてもよい。また、このような角部に面取りを設ける構成にしてもよいし、面取りをR面取りとする構成にしてもよい。
なお、上記の実施の形態においては、接触部の周方向内側の位置に形成される凹部を、収縮ひけを利用することにより設けることにしたが、これに限らず、接触部の周方向内側に形成される凹部は、削り加工等により設けることにしてもよい。
また、上記の実施の形態においては、保持器セグメントに収容されるころとして、円錐ころを用いたが、これに限らず、円筒ころや針状ころ、棒状ころ等を用いてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係るころ軸受は、保持器セグメントの破損の恐れを低減し、ころを円滑に転動させることができるため、長寿命化が要求される場合に有効に利用される。
また、この発明に係るころ軸受の保持器セグメントは、破損の恐れの低減、およびころの円滑な転動が要求される場合に、有効に利用される。
また、この発明に係る風力発電機の主軸支持構造は、長寿命化が要求される場合に、有効に利用できる。
この発明の一実施形態に係る円錐ころ軸受に含まれる保持器セグメントの一部をポケットの内方側から見た断面図である。 この発明の一実施形態に係る円錐ころ軸受に含まれる保持器セグメントの斜視図である。 図2に示す保持器セグメントを、図2中の線III−IIIを含み、軸に直交する平面で切断した場合の断面図である。 図2に示す保持器セグメントを、柱部の中央を通り、円周方向に直交する平面で切断した場合の断面図である。 図3に示す保持器セグメントのポケット部分の拡大断面図である。 保持器セグメントに設けられた案内爪の角部を示す拡大断面図である。 複数の保持器セグメントを周方向に配置した場合の円錐ころ軸受の概略断面図である。 隣接する保持器セグメントを示す拡大断面図である。 この発明の他の実施形態に係る保持器セグメントに備えられる案内爪の角部を示す拡大断面図である。 この発明に係る円錐ころ軸受を用いた風力発電機の主軸支持構造の一例を示す図である。 図10に示す風力発電機の主軸支持構造の図解的側面図である。 従来における保持器セグメントの斜視図である。 図12に示す保持器セグメントを、軸受の回転軸線に直交する平面で切断した場合の断面図である。 分割型の案内爪を設けた保持器セグメントの一部を示す図である。 図14に示す保持器セグメントを径方向から見た図である。 案内爪の一方のエッジ部でころと接触する場合の保持器セグメントを径方向から見た図である。
符号の説明
11a,11b,11c,11d 保持器セグメント、12a,12b,12c,34 円錐ころ、13a,13b,13c ポケット、14a,14b,14c,14d 柱部、15a,15b 連結部、17a,17b,17c,17d,18b,18c,36,37,41 案内爪、21a,21b,21c,21d,21e 端面、22 PCD、23,42 角部、24 外径面、25 面、26 案内面、27 接面、28 接触部、29 凹部、31 円錐ころ軸受、32 外輪、33 内輪、39 すき間、70 支持台、71 旋回座軸受、72 ナセル、73 ケーシング、74 軸受ハウジング、75 主軸支持軸受、76 主軸、77 ブレード、78 増速機、79 発電機、80 旋回用モータ、81 減速機。

Claims (10)

  1. 外輪と、内輪と、前記外輪および前記内輪の間に配置される複数のころと、前記ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、前記外輪および前記内輪の間で周方向に順次連ねて配置される複数の樹脂製の保持器セグメントとを備えるころ軸受であって、
    前記保持器セグメントは、ころ案内であり、
    前記柱部の側壁面には、前記ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および前記接触部の周方向内方側の位置に形成される凹部が設けられている、ころ軸受。
  2. 前記案内爪は、前記柱部の側壁面のうち、ころ長さ方向の中央に設けられている、請求項1に記載のころ軸受。
  3. 前記案内爪のころ長さ方向の長さは、前記ポケットのころ長さ方向の長さのほぼ全長である、請求項1または2に記載のころ軸受。
  4. 前記凹部は、前記保持器セグメントを成形する際に生ずる収縮ひけにより形成される、請求項1〜3のいずれかに記載のころ軸受。
  5. 前記案内爪を含み、前記軸受の回転軸線に直交する平面で前記保持器セグメントを切断した断面において、前記案内爪の先端に位置する角部の角度は、鈍角である、請求項1〜4のいずれかに記載のころ軸受。
  6. 前記角部には、面取りが設けられている、請求項5に記載のころ軸受。
  7. 前記面取りは、R面取りである、請求項6に記載のころ軸受。
  8. ころ軸受に備えられ、ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、外輪および内輪の間で周方向に順次連ねて配置される樹脂製のころ軸受の保持器セグメントであって、
    ころ案内であり、
    前記柱部の側壁面には、前記ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および前記接触部の周方向内方側の位置に形成される凹部が設けられている、ころ軸受の保持器セグメント。
  9. 前記凹部は、前記保持器セグメントを成形する際に生ずる収縮ひけにより形成される、請求項8に記載のころ軸受の保持器セグメント。
  10. 風力を受けるブレードと、
    その一端が前記ブレードに固定され、ブレードとともに回転する主軸と、
    固定部材に組み込まれ、前記主軸を回転自在に支持するころ軸受とを含む風力発電機の主軸支持構造であって、
    前記ころ軸受は、外輪と、内輪と、前記外輪および前記内輪の間に配置される複数のころと、前記ころを収容するポケットを形成するように軸受の回転軸線に沿う方向に延びる複数の柱部、およびこの複数の柱部を連結するように周方向に延びる連結部を有し、前記外輪および前記内輪の間で周方向に順次連ねて配置される複数の樹脂製の保持器セグメントとを備え、
    前記保持器セグメントは、ころ案内であり、
    前記柱部の側壁面には、前記ころと接触する接触部を有する一つの案内爪、および前記接触部の周方向内方側の位置に形成される凹部が設けられている、風力発電機の主軸支持構造。
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