JP2008291645A - 調湿建材 - Google Patents
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Abstract
【課題】オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート(ALC)廃材を有効利用し、低比重で高強度の調湿建材を提供する。
【解決手段】ALC廃材を乾式で微粉砕し、その微粉砕されたALC微粉末に無機質水硬性結合材、必要に応じてけい酸質粉体、補強繊維材等を乾式で混合分散させ、該分散混合無機質粉体材料を加圧成形し、該成形体を養生することにより得られる調湿建材。
【効果】本発明によれば、白色で非常に外観の良好な、かつ比重1.2前後あるいはそれ以下の非常に軽量で、しかもその低比重に対して曲げ破壊強度の高い調湿建材が得られる。なおかつ本発明の調湿建材においては、中・高湿度域において、良好な調湿性を有し、居住者にとって快適で健康的な住環境を与えることができる。
【選択図】図2
【解決手段】ALC廃材を乾式で微粉砕し、その微粉砕されたALC微粉末に無機質水硬性結合材、必要に応じてけい酸質粉体、補強繊維材等を乾式で混合分散させ、該分散混合無機質粉体材料を加圧成形し、該成形体を養生することにより得られる調湿建材。
【効果】本発明によれば、白色で非常に外観の良好な、かつ比重1.2前後あるいはそれ以下の非常に軽量で、しかもその低比重に対して曲げ破壊強度の高い調湿建材が得られる。なおかつ本発明の調湿建材においては、中・高湿度域において、良好な調湿性を有し、居住者にとって快適で健康的な住環境を与えることができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート(以下、ALCと称す)廃材を再利用した調湿建材に関するものである。より詳しくは、ALC製造工場、ALC建設現場、ALC建築物解体現場等から発生するALCの残材、端材、粉末等のALC廃材を主原料として再利用した調湿建材に関するものである。
建築物の修理や撤去等によって生ずるALC廃材、あるいはALCの製造工程から排出されるトリミング屑等のALC廃材を以前は粉砕して埋設処理するか、ALCを製造する際に原料の一部として添加して再利用することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。またALCを粉砕してALC用補修材として再使用することも行われている。
さらに、ALC廃材をALCの原料として回収再使用することも行なわれているが、ALC廃材を原料に添加できる量には限りがある。その理由としては、ALC廃材をALCの主原料に添加した場合、そのALC廃材はALC成型時のスラリーの増粘作用を引き起こし、その添加量が多い場合は、発泡工程や養生工程において悪影響を与えるからである。したがって、ALC製造時のリサイクル増量剤としてはALC廃材を原料中に10%程度しか添加することが出来ず、ALC廃材の再利用率は低いものであった。
さらに、近年の建築物においては、高気密・高断熱化が進められているが、そこで用いられている建材には、吸放湿性、防露性などの調湿特性が十分でないために、湿度変化に伴い次のような弊害が発生している。
1)湿度上昇による湿気によりカビ、ダニが発生し、人体へ悪影響を与える。
2)湿度低下による乾燥によりウイルスの発生や粘膜損傷を起こし、居住者へ健康被害を与える。
1)湿度上昇による湿気によりカビ、ダニが発生し、人体へ悪影響を与える。
2)湿度低下による乾燥によりウイルスの発生や粘膜損傷を起こし、居住者へ健康被害を与える。
これらの問題を解決するためには、建材自体に吸放湿性能を持たせた調湿建材が開発されており、例えば、ゼオライト系建材(特許文献2参照)やALCの粉末を利用した床下調湿材(特許文献3参照)などが挙げられる。
特開平11−147738号公報
特開平3−93662号公報
特開平6−99063号公報
しかしながら、ゼオライトは吸湿しやすく放湿しにくいため、上記湿度変化に対する問題を解決できる調湿建材であるとは言い難い。また、ALCを利用した床下調湿剤においては、ALCの吸放湿能力が充分ではないために、これも問題に対する調湿建材であるとは言えなかった。
本発明の課題は、前記の従来技術における問題点を解決することのできる、ALC廃材を有効利用した高機能調湿建材を提供することである。
すなわち、本発明は、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート微粉末のプレス硬化成型体からなる調湿建材である。
以下、本発明について具体的に説明する。まず、ALC微粉末とは、ALC製造工場、ALC建設現場、ALC建築物解体現場等から発生するALCの残材、端材及び粉末等のALC廃材から補強材を取り除き、微粉砕したものである。本発明において、使用するALC微粉末の粒子径は小さいことが望まれるが、平均粒子径が5μm未満に粉砕することは、コスト的に不利であり、プレスに過大な圧力を要する。さらには、密度が上がることにより気体透過性が低下し、単位時間あたりの吸放湿量、つまり吸放湿速度が小さくなりやすい。
また、平均粒子径が200μmを越えると、プレス直後の成形体の強度が低下し、成型性を損ね、同時に単位体積あたりのALC微粉末の量が減るために吸放湿速度が低下しやすい。したがって、プレス時の加圧力が少ない、すなわち、軽量なることを特徴とする無機質ボード及び吸放湿速度の大きい調湿建材を効率よく製造するためには、平均粒子径(50%径)が5〜200μmであることが望ましく、軽量かつ高強度で吸放湿速度の大きい調湿建材を得るためには10〜150μmであるとさらに好ましい。
ALC部粉末を結合させるために使用する無機質水硬性結合材としては、水と反応し硬化する材料であれば特に限定はされず、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、早強セメント、中庸熱セメント、ジェットセメント、アルミナセメント等の水硬性結合材を用いることが出来る。けい酸質原料を加えても良く、その例としては、反応性のよいシリカヒューム、微粉砕された珪石、微粉砕したフライアッシュなどである。
また、補強繊維を添加した場合には、例えば地震等により調湿建材に曲げ亀裂が発生した場合でも直ちに破損に至らず、安全性が格段に増加する。補強繊維材としては、例えば一般的に用いられるビニロン、ナイロン、パルプ等の有機繊維、カーボンファイバー等の無機繊維、ステンレスファーバー等の金属繊維などを用いることができ、養生方法にオートクレーブ養生を採用する場合は、オートクレーブ養生に耐久性のある無機質繊維、金属繊維、耐熱性有機繊維を用いることが望ましい。また、必要であればラス網、鉄筋マット等の補強鉄筋も使用できる。
本発明の調湿建材の製造方法としては、ALC微粉末と無機質水硬性結合材を必須成分とする粉体に、必要であれば補強繊維、けい酸質粉末、更には顔料粉末等を加えた原材料粉体を混合分散させて得られる無機質粉体材料を調整し、この無機質粉体材料をプレス成形した後、養生硬化させる。プレスの方式としては、養生後の調湿建材の特性に悪影響を与えなければ特に限定されるものではなく、例えば一般に行われている成型プレス、抄造脱水プレス、乾式プレスおよび真空脱水プレスなどの方法がある。
特に、軽量で高強度の調湿建材を得るためには、粉体材料に水を添加しない乾式プレスが好ましい。吸放湿の応答性が高めるための薄化と実形状の小口のような立体形状を得るために、片面より押し付け型で押圧しながらもう一方の片面より減圧して水を抜く真空脱水プレス成型がより好ましい。プレス後のプレス成形体を養生硬化させることにより高強度の調湿建材が得られるが、このときの養生方法は水硬性結合材を硬化させる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば一般に行われている水中養生や常圧蒸気養生およびオートクレーブ養生が使用できる。
特に、高温高圧のオートクレーブ養生を行うことにより、高強度のボードが得られ、かつ、中・高湿度域(相対湿度40〜90%)における吸放湿速度が向上するため、養生方法はオートクレーブ養生が好ましい。ALC微粉末と水硬性結合材を含む無機質粉体材料に前述したけい酸質粉末が添加されていると、調湿建材の強度がさらに増加する。
ALC廃材の有効利用技術とは異なるが、セメント板廃材を微粉砕し高圧プレスをしたのち、オートクレーブ養生をすることによってセメント板を得る手法が考案されている(特開平09-193117)。この技術では、硬化反応を促進させるためにセメント板廃材を微粉砕するが、セメント板廃材は硬度が著しく高くまた通常補強繊維が含まれているため、微粉砕は困難である。このため篩い分けによる粗粉および繊維の除去が必要である。そのため、セメント板廃材を用いたセメント板を製造する時の製造コストが高くなってしまうという欠点がある。ALC廃材の場合、補強繊維がなく、微粉砕が容易であり、篩い分けの必要がないので安価に調湿建材を製造できる。
また、セメント板廃材を用いたセメント板は、表面がセメント色(灰色)になり、顔料を用いた着色が困難である。また、プレスにより調湿建材を製造した場合、そのセメント板はALC微粉末で作成した調湿建材と比較すると非常に高比重になり、比重に対する曲げ強度が低くなるという欠点がある。したがって、比重を低下させるためにはパルプのような有機質の軽量化材が多量に必要となり、無機質材料という特質が失われるという欠点がある。
本発明においては、見掛け比重の低いALCの微粉末が容易に得られることにより、セメント板より低比重な調湿建材を得ることができるため、パルプなどの軽量化材を必要とせず、比重が低い割に強度が強い調湿建材を低コストで提供できるものである。また、本発明ではALC微粉末を主原料とするため、寸法安定性が良く、耐久性が優れた調湿建材が得られるため、上記のセメント板廃材を利用したものとは本質的に異なるものである。
本発明の調湿建材は、ALC微粉末を主原料としているが、従来のALCを原料とした調湿材(現在、市販のALCボード)とは全く異なるものである。例えば、図1における本発明の調湿建材と従来の市販ALCの25℃における平行含湿率曲線の比較図より明らかなように、本発明の調湿建材においては、40〜90%の中・高湿度域において、市販ALCよりも多くの吸湿量を有し、さらには、湿度変化に対する吸湿量の変化も市販ALCより大きく、吸放湿量が多いといえる。この傾向は、快適な住環境を与える相対湿度40〜70%において、特に顕著である。この吸放湿量と調湿性には密接な相関関係があり、吸放湿量が多いほど優れた調湿建材であるといえる。以上のように、本発明の調湿建材は、その優れた調湿性により、居住者にとって快適で健康的な住環境を与えることができる。
本発明によれば、ALC廃材を主原料とした新しい建材として再利用することが出来るため、ALC廃材の有効利用が出来る。本発明によれば、比重1.2前後あるいはそれ以下の非常に軽量な調湿建材を製造することが出来る。本発明によれば、白色で非常に外観の良好な調湿建材を得ることが出来、そして、着色が容易である調湿建材を得ることが出来る。
本発明によれば、比重に対して曲げ破壊強度の高い調湿建材を製造することが出来る。本発明によれば、中・高湿度域において、良好な吸放湿性を有する調湿建材を得ることができ、居住者にとって快適で健康的な住環境を与えることができる。
以下、実施例により本発明の詳細について説明する。なお、実施例および比較例において、各種性能試験は次のとおり行った。まず粉末の粒度分布の測定は、レーザー式粒度分布測定器マイクロトラック9320HRAで行い、体積平均粒子径として50%径、すなわちメジアン径を採用した。
強度試験は、供試体寸法を2cm×4cm×16cmとし、20℃、相対湿度60%の部屋で乾燥し、約10%の含水状態として、2等分点1線裁荷の曲げ試験を行った。乾燥収縮率の測定は、供試体を飽水状態にしてこれを基長とし、20℃、相対湿度60%の部屋で長さ変化が一定となるまで乾燥し、その長さ変化を収縮率とした。
粉末X線回折測定は、通常の粉末X線回折装置を用い成分を同定した。さらに、調湿建材の調湿性については以下のように測定した。得られた調湿建材を200×200×10mmの寸法に切り出し、200×200mmの1面以外の5面をアルミニウムテープでシールしたものを試験体とする。この試験体を25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽に入れて、恒量となるまで放置する。恒量後、雰囲気湿度を90%に変え24時間保持し、その後、再び相対湿度50%で24時間保持する。その間、経時的に秤量し吸放水量を測定し、単位面積あたりの吸放湿量とする。
[実施例1〜6]
ALC微粉末は、ALC製造工場におけるALC切削工程から発生するALC端材をジョウクラッシャーで粗粉砕し、高速回転のハンマーミルで微粉砕することにより容易に得られた。微粉末としての回収率は、ほぼ100%であった。ALC微粉末を用いて表1に示す組成の無機質粉体材料を調整、プレス成型を行ったうえ、オートクレーブ養生を行った。得られた調湿建材板の表面の色を観察した後、強度試験、乾燥収縮試験及び粉末X線回折測定を行った。その結果を表1に示した。
ALC微粉末は、ALC製造工場におけるALC切削工程から発生するALC端材をジョウクラッシャーで粗粉砕し、高速回転のハンマーミルで微粉砕することにより容易に得られた。微粉末としての回収率は、ほぼ100%であった。ALC微粉末を用いて表1に示す組成の無機質粉体材料を調整、プレス成型を行ったうえ、オートクレーブ養生を行った。得られた調湿建材板の表面の色を観察した後、強度試験、乾燥収縮試験及び粉末X線回折測定を行った。その結果を表1に示した。
[比較例1〜3]
比較例2、3に使用するセメント板廃材微粉末を次のようにして得た。微粉砕した石灰岩粉末にセメント、ビニロン短繊維を混合し、さらに水を添加し、脱水プレスし、常温で24時間硬化させた後脱型し、蒸気養生(80℃、24時間)で硬化させてセメント板を得た。そして、そのセメント板を廃材として粉砕したが、セメント板廃材はうまく微粉砕が出来ないため粉砕後、300μm以下の粒径の粉体を篩別し、微粉末とした。この場合、微粉末としての回収率は70%以下であった。
比較例2、3に使用するセメント板廃材微粉末を次のようにして得た。微粉砕した石灰岩粉末にセメント、ビニロン短繊維を混合し、さらに水を添加し、脱水プレスし、常温で24時間硬化させた後脱型し、蒸気養生(80℃、24時間)で硬化させてセメント板を得た。そして、そのセメント板を廃材として粉砕したが、セメント板廃材はうまく微粉砕が出来ないため粉砕後、300μm以下の粒径の粉体を篩別し、微粉末とした。この場合、微粉末としての回収率は70%以下であった。
実施例と同様のALC微粉末又は篩別したセメント板廃材微粉を用いて、表2に示す組成の無機質粉体材料を調整した。そして、プレス型枠に投入した無機質粉体材料を調整、プレス成型をおこなったうえ、オートクレーブ養生をおこない、比較例1〜3を得た。得られた調湿建材板の表面の色を観察した後、強度試験、乾燥収縮試験及び粉末X線回折測定を行った。その結果を表2に示した。
表1によれば、実施例1および2は、比較例1と比べて、調湿建材の曲げ強度が高くなっている。すなわち、本発明ではALC微粉末に水硬性結合材を加えたことにより低比重で高強度な調湿建材が得られることがわかる。実施例1および2は、比較例2、3と比べて、調湿建材の表面の色が白くなり、比重が低くなった。すなわち、本発明によればALC微粉末を使用することにより白色美麗な調湿建材が得られることがわかる。
また、X線回折結果より、実施例1〜6はALC微粉末を使用していることにより、トバモライトが主成分であるのに対して、比較例2、3ではゲルおよび炭酸化カルシウムが主成分であった。また乾燥収縮率は、実施例1〜6では約5×10-6となっており、比較例2、3と比較して、小さい値となっている。すなわち、本発明では寸法安定性の良いトバモライトが主成分であるので寸法安定性が良好であることがわかる。
さらに、実施例1および2は、比較例2、3と比べて、調湿建材の比重に対する曲げ破壊強度の比がほぼ2倍に向上している。すなわち、本発明ではALC微粉末と無機質結合材料を用いるため、著しく曲げ比強度が高い調湿建材が得られることがわかる。また、実施例3は、調湿建材の曲げ破壊(亀裂時)時、調湿建材に破断が見られなかった。すなわち、本発明では繊維材料を加えることにより、無機質ボードの曲げ破壊に対する安全性が向上していることがわかる。
さらに、実施例2は、実施例1と比べて、調湿建材の曲げ破壊強度が高くなった。すなわち、本発明では無機質粉体材料にけい酸質粉体を添加することに、より強度を向上させることができることがわかる。なお、表1には記載していないが、本発明のALC微粉末の平均粒子径が200μmを越えるとプレス時の加圧力を増加させなくてはならず、このため大がかりなプレス機が必要となるためコスト高となってしまう。
さらに、調湿性の特性については、前記した方法により測定した。その結果は次のとおりである。まず図1は、本発明の実施例5の調湿建材と市販のALCの25℃における平行含湿率曲線を示したものである。図1から明らかなように、本発明の調湿建材においては、40〜90%の中・高湿度域において、市販ALCよりも多くの吸湿量を有し、更には、湿度変化に対する吸湿量の変化も市販ALCより大きく、吸放湿量が多いといえる。この傾向は、快適な住環境を与える相対湿度40〜70%において、特に顕著である。
次に図2には、単位面積当たりの吸放湿量の変化(本発明の実施例6、その比較として厚さ10mmの市販ALCボードおよび厚さ12mmの石膏ボード)を示している。図2から明らかなように、本発明の実施例6においては、相対湿度90%、24時間後の吸湿量が210g/m2 と、市販ALCの1.75倍、石膏ボードの3.8倍の値を示し、なおかつその後、相対湿度50%、24時間において、ほぼ完全に放湿しており、良好な吸放湿性を有していることがわかる。
Claims (1)
- オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート微粉末のプレス硬化成形体からなる、調湿建材。
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