JP2008291131A - アクリル系ブロック共重合体組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、長期にわたる耐熱性や耐光性、外観保持性に優れ、更には揮発成分が少ないアクリル系ブロック共重合体組成物およびそれよりなる自動車用内装材を得ることである。
【解決手段】 メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体に、特定構造を有するフェノール系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物を所定量含有する組成物とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐熱性や耐光性、外観保持性が長期にわたって優れ、さらには揮発成分が少ないアクリル系ブロック共重合体組成物およびそれよりなる自動車用内装材に関する。
近年、メタアクリル酸メチルなどをハードセグメント、アクリル酸ブチルなどをソフトセグメントに有するアクリル系ブロック共重合体が、スチレン系ブロック共重合体などの他の熱可塑性エラストマーに比べて耐候性や耐油性、柔軟性等に優れる材料として検討されている(引用文献1)。
このようなアクリル系ブロック共重合体の特性を活かした用途として、種々の表皮材や内装材が検討されている(引用文献2)。なかでも、自動車用内装材の場合は、100℃付近での耐候性(耐熱性や耐光性)など非常に過酷な条件下でも、材料が着色したり、機械特性が悪化したりしないことが要求される。このような耐光性や耐熱性を改良する場合、樹脂中に酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加することが一般的に行われている。
一方、自動車内装材は勿論、建築用内装材などにおいても、部材から揮発する種々の有機化合物が人体に与える影響が懸念されており、揮発成分を低減することが強く要求されている。しかしながら、前記のように、これまで、アクリル系ブロック共重合体の耐候性を改良すべく、種々の検討はなされてきているものの(特許文献3)、耐候性、外観および低揮発性は伴っておらず、早期の解決が求められているのが現状である。
WO2003/068836号公報 特開2005−154637号公報 特開2004−359738号公報
本発明は、耐熱性や耐光性、外観保持性が長期にわたって優れ、さらには揮発成分が少ないアクリル系ブロック共重合体組成物およびそれよりなる自動車用内装材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らはメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体に、特定の構造を有するフェノール系化合物およびベンゾトリアゾール系化合物を所定量添加することにより解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち本発明は、
(I).メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)100重量部と、20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であるフェノール系化合物(B)0.5〜2.0重量部と、20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であるベンゾトリアゾール系化合物(C)0.5〜2.0重量部からなることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物、
(II).フェノール系化合物(B)が、分子中に下記一般式(1);
[式中、Rは水素原子または1価の炭化水素基、Rは1価の置換基または結合手(−)を示し、pは0〜4の整数であり、pが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよい。]
で表される構造を有することを特徴とする(I)記載のアクリル系ブロック共重合体組成物、
(III).ベンゾトリアゾール系化合物(C)が、分子中に下記一般式(2);

[式中、Rは1価の置換基、Rは1価の置換基または結合手(−)を示し、mおよびnはそれぞれ0〜4の整数であり、mが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよく、nが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよい。]
で表される構造を有することを特徴とする(I)または(II)記載のアクリル系ブロック共重合体組成物、
(IV).窒素雰囲気下、ブロック共重合体(A)を260℃で10分加熱した際の揮発減量が2重量%以下であることを特徴とする(I)〜(III)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物、
(V).窒素雰囲気下、260℃で10分加熱した際の揮発減量が2重量%以下であることを特徴とする(I)〜(IV)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物、
(VI).メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−2−メトキシエチルとからなるブロック共重合体であることを特徴とする(I)〜(V)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物、
(VII).(I)〜(VI)のいずれかに記載の組成物より得られる建築用内装材、
(VIII).(I)〜(VII)のいずれかに記載の組成物より得られる自動車用内装材、
(IX).(I)〜(VIII)のいずれかに記載の組成物より得られるインストルメントパネル用表皮材、
を特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
本発明に関るアクリル系ブロック共重合体組成物は、長期にわたる耐熱性や耐光性、外観保持性に優れ、さらには揮発成分が少ないことから、意匠性に優れ、人体への影響の少ない自動車用内装材を提供することが可能である。
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、特に問うものではなく、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択すれば良いが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
また、線状ブロック共重合体はいずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)型、b−(a−b)型および(a−b)−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や、組成物の物性の点からa−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量はとくに制限されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体系ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。なお、分子量が小さい場合には、エラストマーとして十分な機械特性を発現出来ない場合があり、逆に分子量が必要以上に大きいと、加工特性が低下する場合がある。このような観点から、アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は数平均分子量で30,000〜200,000が好ましく、より好ましくは35,000〜150,000、さらに好ましくは50,000〜130,000である。
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も、とくに制限はないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとアクリル系ブロック共重合体の均一性が悪化し、機械強度や伸び等の機械特性が低下する場合がある。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、メタアクリル系重合体ブロック(a)が5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜10重量%であるのが好ましい。成形時の形状の保持およびエラストマーとしての弾性の観点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)が10〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜40重量%であるのがより好ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)が15〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が85〜50重量%であるのが更に好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと、成形時に形状が保持されにくい傾向があり、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が10重量%より少ないと、エラストマーとしての弾性や柔軟性および成形時の溶融性が低下する傾向がある。
アクリル系ブロック共重合体の硬度の観点からは、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと硬度が高くなる傾向があり、アクリル系ブロック共重合体の必要とされる硬度に応じて適宜組成比を設定する。また加工の観点からは、(a)の割合が少ないと粘度が低く、また、(b)の割合が少ないと粘度が高くなる傾向があり、必要とする加工特性に応じて適宜組成比を設定する。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、エラストマー特性およびゴム弾性を付与する点で、どちらか一方の重合体ブロックのガラス転移温度が他方の重合体ブロックのガラス転移温度より高いことが好ましく、ガラス転移温度の調整の容易性から、各ブロックのガラス転移温度(メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTg、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgとする)が下式の関係を満たすことがより好ましい。
Tg>Tg
重合体(メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b))のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
1/Tg=(W/Tg)+(W/Tg)+…+(W/Tg
+W+…+W=1
(式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表し、Tg,Tg,…,Tgは各重合単量体のガラス転移温度を表す。また、W,W,…,Wは各重合単量体の重量比率を表す。)
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989年)記載の値を用いればよい。
なお、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の極性が近すぎたり、ブロックの単量体の連鎖数が少なすぎると、それら測定値と、上記Fox式による計算式とがずれる場合がある。
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である、耐候性や透明性などが損なわれる場合がある。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系ブロック体(b)との相溶性などの観点から好ましいものを選択する。
メタアクリル系重合体ブロック(a)の凝集力やガラス転移温度Tgが上昇すると、耐熱性が上昇する傾向にある。
メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、アクリル系ブロック共重合体の耐熱性(耐熱変形性)の観点および成形性の観点から、25〜250℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃である。ガラス転移温度が250℃より高くなると、成形性が低下する傾向にあり、25℃より低くなると、熱変形性が悪化する傾向にある。
この点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルを主成分とするのが望ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度を調整する目的で、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合することが好ましい。このうち、メタアクリル酸メチルとの相溶性の点でアクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)のTgの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、アクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。アクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、アクリル酸エステルを用いた場合の特徴である組成物の物性、とくに柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、柔軟性、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。耐油性と機械特性が必要な場合は、アクリル酸エチルが好ましい。
また、低温特性と耐油性の付与が必要な場合は、アクリル酸−2−メトキシエチルが好ましい。また、耐油性および低温特性のバランスが必要な場合は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルを組み合わせて用いるのが好ましい。さらには、コストや物性バランスの点で、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/又は他のビニル系単量体50〜0重量%からなることがより好ましい。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられる前記のものと同様のものをあげることができる。
これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するのが好ましい。
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、アクリル系ブロック共重合体の柔軟性や、ゴム弾性、粘着特性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より高いと、柔軟性や、ゴム弾性が発現されにくい。
アクリル系重合体ブロック(b)のTgの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
本発明においては、必要に応じて、アクリル系ブロック共重合体(A)が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を、1分子中に少なくとも1個以上有していても良い。官能基を導入することにより、得られる成形体に耐熱性や相溶性、反応性を付与することができる場合がある。
本発明において官能基は、耐熱性、相溶性、反応性の付与やアクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易さ、コストなどの点から、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらの官能基は、官能基を適当な保護基で保護した形、または、官能基の前駆体となる形でアクリル系ブロック共重合体(A)に導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることもできる。
これらの官能基は2種以上併用することもできるが、2種以上を併用する場合には、お互いに反応しない官能基を選ぶことが好ましい。
官能基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のどちらか一方のブロックのみに含有していてもよいし、両方のブロックに含有していてもよく、アクリル系ブロック共重合体(A)の反応点や、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロック(メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b))の凝集力やガラス転移温度、さらには必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性など、目的に応じ官能基の導入条件が好適になるよう使いわけることができる。
たとえば、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性や耐熱分解性向上の点では、官能基をメタアクリル系重合体ブロック(a)に導入すればよく、アクリル系ブロック共重合体(A)に耐油性や、圧縮永久歪み特性等を付与する観点では官能基をアクリル系重合体ブロック(b)に導入すればよい。特に限定されないが、反応点の制御や、耐熱性、ゴム弾性、機械強度、柔軟性などの点では、メタアクリル系重合体ブロック(a)あるいはアクリル系重合体ブロック(b)のどちらか一方のブロックに導入されることが好ましい。
前記官能基の含有数は、官能基の凝集力、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度、ならびに、官能基の含有される部位および様式によって変化する。そのため、必要に応じて設定すればよく、好ましくはアクリル系ブロック共重合体(A)1分子あたり1.0個以上であり、より好ましくは2.0個以上である。1.0個より少なくなるとアクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性向上や反応性等が不充分となる傾向がある。
官能基を、メタアクリル系重合体ブロック(a)に導入する場合、アクリル系ブロック共重合体(A)の成形性が低下しない範囲で導入することが好ましい。
具体的には官能基を導入後のメタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度Tgが250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下になるような範囲で導入することが好ましい。
官能基を、アクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合、アクリル系ブロック共重合体(A)の柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化しない範囲で導入することが好ましい。官能基の導入によりアクリル系重合体ブロック(b)の凝集力やガラス転移温度Tgが向上すると、柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化する傾向にある。具体的には官能基を導入後のアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度Tgが25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下になるような範囲で導入することが好ましい。
以下に、前記官能基の好ましい例示として、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基について説明する。
<水酸基>
水酸基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても、側鎖に導入されていても良いが、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から、側鎖中へ導入されていることが好ましい。
水酸基のブロック共重合体(A)への導入方法は、特に限定されないが、水酸基を含有する(メタ)アクリルモノマーを、ブロック共重合体(A)の重合時に直接重合してもよく、ブロック共重合体(A)を重合した後に、ジオール成分にてエステル化反応やエステル交換反応を利用して導入しても良い。反応が容易である点から、水酸基を含有する(メタ)アクリルモノマーを、ブロック共重合体(A)の重合時に直接重合することが好ましい。なお、本願においては、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタアクリルを意味する。
具体的な(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、ブレンマーEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーP(日本油脂(株))、ブレンマーPPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPEPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAEPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPETシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAETシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPPTシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAPTシリーズ(日本油脂(株))などが例示される。
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルが、重合が容易である点や、入手容易性の点で好ましい。また、特に限定されないが、メタアクリル系重合体ブロック(a)中に導入する場合は水酸基含有メタアクリル酸エステル誘導体であることが好ましく、アクリル系重合体ブロック(b)中に導入する場合は、水酸基含有アクリル酸エステル誘導体であることが好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)中に導入する場合に水酸基含有アクリル酸エステル誘導体である場合や、アクリル系重合体ブロック(b)中に導入する場合に水酸基含有メタアクリル酸エステル誘導体である場合は、アクリル系ブロック共重合体(A)の重合操作が煩雑になったり、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の差が小さくなり、アクリル系ブロック共重合体(A)のゴム弾性や柔軟性が低下する傾向にある。
<カルボキシル基>
カルボキシル基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても、側鎖に導入されていても良いが、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒が失活することがない場合は、直接重合により導入することが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させる場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入するのが好ましい。
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法では、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることができる。この方法により、カルボキシル基を導入することができる。
例えば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法(特開平10−298248号公報、特開2001−234146号公報)や、例えば、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどの単位量を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、溶融混練する方法(特開2006−104419号公報)により導入することができる。
<酸無水物基>
酸無水物基は、特に限定されないが、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良い。酸無水物基はカルボキシル基の無水物基であり、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から主鎖中へ導入されていることが好ましく、具体的には一般式(3)で表される構造を有する。一般式(3):
(式中、Rは水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。rは0〜3の整数、qは0または1の整数)
一般式(3)中のrは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。rが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
酸無水物基の導入方法については、酸無水物基を有する単量体が重合条件下で触媒を被毒することがない場合は、直接重合により導入することが好ましく、酸無水物基を有する単量体が重合時に触媒を失活する場合には、官能基変換により酸無水物基を導入する方法が好ましい。特に限定されないが、(メタ)アクリル酸−t−ブチルなどの、酸無水物基の前駆体となる形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに溶融混練する方法(WO2004/013192公報)により導入することができる。
<エポキシ基>
エポキシ基は、エポキシ環を含有する有機基であれば特に限定されないが、例えば、1,2−エポキシエチル基、2,3−エポキシプロピル基(すなわちグリシジル基)、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基などのエポキシ環を有する脂肪族炭化水素(例えばアルキル)基;3,4−エポキシシクロヘキシル基などのエポキシ環を有する脂環式炭化水素基などを挙げることができる。これらは、必要に応じて、反応性、反応速度、入手の容易性、コストなどから選択すれば良い。特に制限されないが、これらの中では入手容易性からグリシジル基が好ましい。
エポキシ基の導入方法については、エポキシ基を有する単量体を直接重合により導入することが好ましい。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸とエポキシ環を含有する有機基含有アルコールとのエステル;4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2エポキシドなどのエポキシ基含有不飽和化合物などを挙げることができる。これらは、必要に応じて、反応性、反応速度、入手の容易性、コストなどから選択すれば良く、特に限定されないが、これらの中では、入手容易性の点から、(メタ)アクリル酸グリジシルが好ましい。
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、とくに限定されないが、開始剤を用いた制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法や連鎖移動剤を用いるラジカル重合法、近年開発されたリビングラジカル重合法があげられる。なかでも、リビングラジカル重合法が、アクリル系ブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
リビングラジカル重合法は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合法である。リビング重合法とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合法も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合法は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、第116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合法が好ましい。
原子移動ラジカル重合法の具体例としては、特開2004−107447号公報に記載されている方法をあげることができる。
<フェノール系化合物(B)>
本発明のブロック共重合体組成物は、フェノール系化合物(B)を必須成分とする。
フェノール系化合物(B)は、20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であり、分子中に下記の一般式(1);
[式中、Rは水素原子または1価の炭化水素基、Rは1価の置換基または結合手(−)を示し、pは0〜4の整数であり、pが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよい。]
で表される構造を有することが必要である。
ここで、フェノール系化合物(B)は、酸化防止能を有し、これにより、アクリル系ブロック共重合体組成物の耐候性を改良することができる。
上記のフェノール系化合物(B)に関して、「分子中に一般式(1)で表される構造を有するフェノール系化合物」とは、フェノール系化合物自体が上記の一般式(1)で表される化合物である場合、および上記の一般式(1)で表される構造(フェノール構造)部分が分子の一部に含まれている化合物である場合の両方を包含するものである。
上記の一般式(1)におけるRは水素原子または1価の炭化水素基であり、Rが1価の炭化水素基である場合の例としては、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、アラルキル基などを挙げることができる。そのうちでも、Rはアルキル基、置換機を有するアルキル基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、ベンジル基などであるのが好ましい。
また、一般式(1)におけるRは1価の置換基または結合手(−)であり、フェノール系化合物(B)の耐候性向上補助機能を失わせない基などであればいずれでもよく、例えば、アルキル基、置換基を有するアルキル基、ハロゲン原子、結合手(−)などを挙げることができる。pは0〜4の整数であればいずれでもよく、そのうちでも、0、1、2または3であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。特に、フェノール系化合物(B)におけるフェノール性水酸基に対して2と6の位置にアルキル基または置換基を有するアルキル基が結合し且つ2と6の位置以外の位置(特に4の位置)に1価の置換基が結合しているか結合手(−)となっているフェノール系化合物(B)[すなわちRがアルキル基または置換基を有するアルキル基で、pが2で、2個のRのうちの1個が2または6の位置に結合したアルキル基または置換基を有するアルキル基であり、もう1個のRが2および6以外の位置に結合した1価の置換基または結合手(−)であるフェノール系化合物(B)]が好ましく用いられる。
フェノール系化合物(B)の具体的な例としては、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2−チオ[ジエチルビス−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオン酸−n−オクタデシル、N,N’−ビス3−(3’5’ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステルのカルシウム塩、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
上記したフェノール系化合物(B)のうちでも、アクリル系ブロック共重合体と相溶性が良い点や入手が容易である点から、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が好ましい。
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物におけるフェノール系化合物(B)は20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であることが必要である。蒸気圧が9×10−7Paより大きくなると、得られるアクリル系ブロック共重合体組成物を成形する際にシート表面に気泡が発生したり、成形して得られる内装シートからの揮発成分が大きくなり、人体への影響が大きくなったりする。また、フェノール系化合物(B)の添加量はアクリル系ブロック共重合体100質量部に対して0.5重量部〜2.0重量部であることが必要である。0.5重量部より少ないと耐熱性と耐候性の改善効果が少なくなり、2.0重量部より多くなると得られる成形体表面からブリードアウトしたり、耐候性や耐熱性試験後にシートの変色が大きくなる傾向にある。
<ベンゾトリアゾール系化合物(C)>
本発明のブロック共重合体組成物は、ベンゾトリアゾール系化合物(C)を必須成分とする。
ベンゾトリアゾール系化合物(C)は20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であり、分子中に下記の一般式(2);

[式中、Rは1価の置換基、Rは1価の置換基または結合手(−)を示し、mおよびnはそれぞれ0〜4の整数であり、mが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよく、nが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよい。]
で表される構造を有することが必要である。
ここで、ベンゾトリアゾール系化合物(C)は紫外線吸収能を有し、これによりアクリル系ブロック共重合体組成物の耐候性を改良することができる。
ここで、本発明でいう「分子中に一般式(2)で表される構造を有するベンゾトリアゾール系化合物」とは、ベンゾトリアゾール系化合物自体が上記の一般式(2)で表される化合物である場合、および上記の一般式(2)で表される構造(ベンゾトリアゾール構造)部分が分子の一部に含まれている化合物である場合の両方を包含するものである。
上記の一般式(2)におけるRは、ベンゾトリアゾール系化合物(C)の紫外線吸収能を失わせない基であればいずれでもよく、例えばアルキル基、置換されたアルキル基、置換または非置換のフェニル基、ハロゲン原子などを挙げることができる。また、mは0〜4の整数のいずれでもよいが、入手容易性から、0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。
また、Rはベンゾトリアゾール系化合物(C)の紫外線吸収能を失わせない基または結合手(−)のいずれであってもよい。何ら限定されるものではないが、Rの例としてはアルキル基、置換基を有するアルキル基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基、結合手(−)などを挙げることができ、そのうちでもアルキル基、置換基を有するアルキル基または結合手(−)であることが好ましい。nは0〜4の整数であればいずれでもよいが、0、1または2であることが好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物(B)の具体的な例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
上記したベンゾトリアゾール系化合物(C)のうちでも、アクリル系ブロック共重合体と相溶性が良い点や入手が容易である点から、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールが好ましい。
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物におけるベンゾトリアゾール系化合物(C)は20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であることが必要である。蒸気圧が9×10−7Paより大きくなると、得られるアクリル系ブロック共重合体組成物を成形する際にシート表面に気泡が発生したり、成形して得られる内装シートからの揮発成分が大きくなり、人体への影響が大きくなったりする。また、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の添加量はアクリル系ブロック共重合体100質量部に対して0.5重量部〜2.0重量部であることが必要である。0.5重量部より少ないと耐熱性と耐候性の改善効果が少なくなり、2.0重量部より多くなると得られる成形体表面からブリードアウトしたり、耐候性や耐熱性試験後にシートの変色が大きくなる傾向にある。
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、アクリル系ブロック共重合体組成物および得られる成形体の諸物性の調整を目的として、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤として、充填剤、滑剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
アクリル系ブロック共重合体組成物は、その製造方法には特に制限はなく、バッチ式混錬装置や連続混錬装置を用いることにより、製造することができる。また、この際、アクリル系ブロック共重合体を溶媒に溶解させた後、各種添加剤を混合、溶媒を除去することで組成物を作製しても良く、アクリル系ブロック共重合体に直接、各種添加剤を溶融混合しても良い。バッチ式混練装置としては、例えば、撹拌槽や、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーを使用できる。また、連続混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いることができる。さらに、機械的に混合し、ペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。
溶融混練にてアクリル系ブロック共重合体組成物を製造するための混練時の温度は、アクリル系ブロック共重合体(A)が分解したり、種々の添加剤と反応して成形性低下が生じない温度が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)が反応して成形性が悪化する温度は、化合物(B)の種類、化合物(C)の種類、その他添加剤の種類、アクリル系ブロック共重合体(A)の組成、アクリル系ブロック共重合体(A)と化合物(B)、化合物(C)、その他添加剤との相溶性などによって決まる。このため、これらの条件を変更することにより、所望の温度で反応するように設定する。前記観点から、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の成形方法>
アクリル系ブロック共重合体組成物の製造方法の項で得られた組成物は、種々の方法で成形できる。例えば、パウダースラッシュ成形、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などに適用可能であるが、パウダースラッシュ成形がより好適に使用される。ここで、パウダースラッシュ成形とは、組成物パウダーを高温に加熱された成形金型に流し込み、溶融成形させ、ある一定時間経過後に冷却固化された成形体を取り出す方法である。上記成形方法において、加熱成形時にアクリル系ブロック共重合体組成物からの揮発分があると、成形体に気泡が発生し、機械特性が低下したり、外観が悪くなる傾向がある。
しかし、本発明の組成物は、窒素雰囲気下260℃で10分加熱した際の揮発減量が2重量%以下であることから、成形体中や表面に気泡が発生せず、好適な材料であるといえる。
また、揮発分が少ないことから、人体への影響も少ない。さらに、成形時に安定剤として添加しているフェノール系化合物(B)やベンゾトリアゾール系化合物(C)は蒸気圧が低いことから、成形時に揮発してしまい、耐候性改良効果を損なうこともない。
以上のことから、本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、本発明は、揮発成分が少なく、外観に優れ、耐熱性や耐候性にも優れることから、種々の内装材として好適に使用でき、耐熱性が必要とされる自動車内装材としてより好適に使用でき、太陽光が直接当たることから、より耐熱、耐候性が必要とされるインストルメントパネル表皮として特に好適に使用できる。
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物を成形して得られた成形体は、柔軟性、耐油性、耐摩耗性、長期にわたる耐熱性や耐光性、外観保持性に優れ、さらには揮発成分が少ないことから、屋内用内装材や自動車用内装材として使用することができる。特に、耐熱性に優れることから自動車用内装材として、なかでもインストルメントパネル表皮として好適に使用することができる。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例におけるBA、EA、AA、MMAはそれぞれ、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタアクリル酸メチルを表す。また、実施例中に記載した分子量や重合反応の転化率、各物性評価は、以下の方法に従って行った。
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムSupelcowax−10、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度60℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、酢酸ブチルまたはアセトニトリルを内部標準物質とした。
<引張り特性>
耐光性や耐熱性試験での引張り特性は、JIS K6251に記載の方法に準じて、n=3で測定した値の平均値を採用した。
試験片は3号形の形状にて、試験は23℃にてチャック間距離30mm、試験速度200mm/分で行った。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
伸びの保持率(%)は耐光性試験後の破断伸び/耐光性試験前の破断伸び×100(%)にて計算した。弾性率の変化率は耐熱性試験後の弾性率/耐光性試験前の弾性率×100(%)にて計算した。
<グロス測定>
5cm×5cmに切り取ったシボ模様付シートのシボ面をグロスメータVG2000(日本電色工業(株)製)を用い60°で測定した。耐光性および耐熱性での変化値は、耐光性および耐熱性試験前後でのグロス値の差から求めた。
<パウダースラッシュ成形方法およびパウダースラッシュ性試験>
成形性は29.4cm×20.4cmのシボ付平板(スラッシュ成形用金型、グレインF)とパウダーボックスからなる箱型スラッシュ成形機を用いて評価した。条件は、アクリル系ブロック共重合体組成物のパウダー2Kgをパウダーボックスに投入し、280℃に加熱したスラッシュ成形用金型をスラッシュ成形機にセットした後、金型が250℃となった時点で、反転させ後、6秒間保持し、その後、反転させた。60秒間経過した時点で金型を冷却水で40秒冷却した。さらに空冷を行い、シート温度が30℃まで達した時点で、シートを金型から剥がし、成形シート(厚み約1.0mm)を得た。得られた成形体シートの成型性は以下のように評価した。
成型シートの裏面が平滑で、溶融ムラが無く、コーナー部にも凹凸が認められない:成型性○
成型シートの裏面で熱可塑性エラストマー組成物粉体の溶融が不十分であり、成型シートの裏面の前面が凸凹である:成型性×
<ブリードアウト評価>
実施例および比較例に従って作製したシートを23℃で一週間保存した後、表面を目視にて観察した。表面が変化していないものを○、表面がブリードアウト物により白化しているものを×とした。
<ウレタン接着性試験およびウレタンフォーム接着方法>
実施例および比較例に従い、スラッシュ成形して作製したシボ模様付シートを、あらかじめ40℃に設定したウレタン発泡型(縦140mm×横200mm×高さ10mmの蓋付容器、SUS304製)にシートのシボ面を下にしてセットした。ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製 CEI−264)17gおよびポリオール(三洋化成工業(株)製、HC−150)34gを室温で10秒ハンドミキサーによる攪拌を行い、表皮材がセットされたウレタン発泡型に注入後、蓋をして、2.5分間発泡させた。発泡終了後、発泡型からサンプルを取り出し、24時間室温で養生の後、発泡ウレタンからシートを手で剥離させて破壊の状態を観察し、以下の規準で評価した。
ウレタン材料で破壊が起こっているもの:○
一部シートとウレタンの界面で破壊が起こっているもの:△
シートとウレタンの界面で破壊が起こっているもの:×
耐光性試験および耐熱性試験には、3号形の形状に打ち抜いたシボ模様付シートにウレタンフォームを接着させて実施した。初期の引張り特性はウレタンフォーム接着方法に従ってフォームを接着させた後、フォームから引き剥がして測定した。
耐光性および耐熱性は試験後にフォームから引き剥がして測定した。光沢変化も5cm×5cmに切り取ったシボ模様付シートを用いて同様にウレタンフォームを接着させて実施した。
<耐光性試験>
実施例および比較例に従って作製したシボ模様付シート(ウレタンフォーム付き)をスーパーキセノンウエザーメーターSX75-AP(スガ試験機(株)製)で暴露し、暴露前後での引張り特性およびグロス(光沢)変化を測定した。スーパーキセノンウエザーメーターはブラックパネル温度、83℃、150W/m、フィルタ内側;石英、フィルタ外側;#320、資料枠回転数;12rpm、300MJにて実施した。
<耐熱性試験>
実施例および比較例に従って作製したシボ模様付シート(ウレタンフォーム付き)を110℃オーブン中に1200Hr放置した。放置前後での、引張り特性およびグロス(光沢)変化およびを測定した。
<スクラッチ試験>
スラッシュ成形により得られたシートから10cm×10cmのサンプルを切り出し、台紙に貼り付けて、測定サンプルとした。以下の条件にて、スクラッチ試験を行った。
使用機器:テーバースクラッチテスタ(東洋精機(株)製)
回転数:0.5rpm
カッター:タングステンカーバイド、4.8mm角×19mm長、刃先半径12.7mm
カッターの向き:カッターの刃側が下になるように、カッターの長い面が上になるように取り付けた(図1参照)。
荷重1Nで試験を行い、目視で観察し、以下の基準で評価した。
正面から見て傷がよく分からないもの:○
正面から見て若干でも傷が認められるもの:×
<重量減少測定>
実施例および比較例に従って作製したシボ模様付シートを窒素存在下、260℃で10分加熱した時の重量減少(wt%)を測定した。測定は示差熱熱重量同時測定装置DTG−50(島津製作所製)を用い、アルミセルにて測定した。260℃まで50℃/分で昇温した後、260℃で10分ホールドし、10分ホールド中の重量減少(wt%)を測定した。
(製造例1)
(MMA−co−EA)−b−(BA−co−AA)−b−(MMA−co−EA)型アクリル系ブロック共重合体(以下、「重合体1」と記載する)の合成
重合体中へのカルボキシル基の導入はWO2003/068836号公報を参考に行なった。
500Lの耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅639g(4.45モル)、BA71,831g(560モル)およびTBA3,203g(25.0モル)を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル891g(2.47モル)をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)6588gに溶解させた溶液を仕込み、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。内温が75℃に到達した時点で、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン77.2g(0.445モル)を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液を約100mLサンプリングし、これをガスクロマトグラム分析することによりBA、TBAの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計154g)添加した。
BAの転化率が98.9%、TBAの転化率が99.0%の時点で、MMA45,779g(457モル)、EA7,432g(74.2モル)、塩化銅441g(4.45モル)、ペンタメチルジエチレントリアミン77.2g(0.445モル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)98,641gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
MMA、EAを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてMMA、EAの転化率を決定した。MMA、EAを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタアクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計463g)添加した。MMAの転化率が95.9%の時点でトルエン220,000gを加え、反応器を冷却して反応を終了させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは77,400、分子量分布Mw/Mnは1.44であった。
得られた反応溶液にトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を1,779g加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を6,116g添加した。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m)を用いて固体分を分離した。
得られた濾液に対して、内部標準物質としてTBMAを濾液100wt%に対して0.1wt%を添加した。この溶液を150℃で4時間加熱攪拌した。4時間後、溶液をサンプリングし、GC測定にてTBMAが消失していることを確認して反応終了とし、冷却した。
得られた溶液に対し、キョーワード500SH、9,275gを加え反応器内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。溶液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。 引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。溶媒の蒸発は80℃、減圧下で行った。得られた重合体1の一分子当たりのカルボキシル基数は平均約10個であった。
tert−ブチルエステル部位のカルボキシル基への変換効率測定は、280℃熱分解反応によりtert−ブチル基から発生するイソブチレン量を定量することにより行った。測定の結果、得られた樹脂の変換効率は95%以上であった。
(実施例1)
50L攪拌装置(槽径D=300mm、邪魔板4枚)に、純水7Lと分散剤(ポリビニルアルコール 日本合成化学工業(株)製、商品名ゴーセノールKH−17)4.4gを添加したのち、製造例1の(メタ)アクリル系ブロック共重合体のトルエン溶液3500g(固形分濃度25%)、さらに、前記アクリル系ブロック共重合体100部に対し、反応性可塑剤として、エポキシ基を有するアクリル系重合体であるARUFON(登録商標)UG4010(東亞合成(株)製)、可塑剤としてRS700(旭電化工業(株)製)、触媒としてラウリン酸亜鉛(日本油脂(株)製、ジンクラウレートGP)、滑剤として牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)、無機物として黒色顔料(カーボンブラックI 大日精化製)、フェノール性化合物として、20℃における蒸気圧が1.3×10−10PaであるIRGANOX1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ベンゾトリアゾール系化合物として20℃における蒸気圧が2.0×10−10PaであるTINUVIN234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、を表1に記載した量を添加した。
H型撹拌翼、500rpmで攪拌しながらスチームを槽内に吹き込んだ。揮発する溶剤ガスは、攪拌装置内に溜まらないようパージし続けた。内温が100℃に到達して5分経過した後にスチームを停止して冷却を開始し、内温が60℃まで低下するのを待って攪拌を停止した。撹拌槽内に生成した樹脂スラリーを脱水し、40℃で真空乾燥することでアクリル系ブロック共重合体組成物のパウダーを得た。得られたアクリル系ブロック共重合体パウダーにて、パウダースラッシュ成形を実施し、パウダースラッシュ性を評価した。さらに、パウダースラッシュ成形にて得られた約1mm厚の皮シボ模様のシートを用いてブリードアウト試験、重量減少測定およびウレタン接着性試験、スクラッチ試験を実施した。さらにウレタン接着性試験を実施したウレタンフォーム付シートにて耐光性試験、耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2〜4)
実施例1におけるIRGANOX1010とTINUVIN234の添加部数を表1に記載した量に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
(実施例5)
実施例1におけるTINUVIN234に換えて、20℃における蒸気圧が7.5×10−7PaであるTINUVIN326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
(比較例1〜4)
実施例1におけるIRGANOX1010とTINUVIN234の添加部数を表1に記載した量に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
(比較例5〜7)
実施例1におけるTINUVIN234に換えて、20℃における蒸気圧が1.5×10−4PaであるTINUVIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
(比較例8)
アクリル系ブロック共重合体組成物パウダーに換えて、市販のパウダースラッシュ成形用のPVCパウダーであるTZ609、201BM2(ゼオン化成(株)製)を用い、実施例1と同様に評価を行った。
比較例1〜3の結果から、フェノール系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物を含有していない組成物は、耐光性試験後の機械特性に劣り、シート外観も変化(グロス値の変化より)することがわかる。また、比較例4の結果から、ベンゾトリアゾール系化合物を多量に添加する(3重量部)と耐光性は良好なものの、シートからブリードアウトすることで白化し、外観特性に劣ることがわかった。
更に、比較例5〜7の結果から、蒸気圧が高い化合物を用いると、成形時に揮発してしまい耐光性の改良効果に劣ること(伸び保持率、耐光試験後のグロス上昇)や、加熱時の重量減少が大きくなり環境への影響が大きくなることがわかった。比較例8の結果から、市販のPVCでは、耐光性、耐熱性、重量減少に劣ることがわかった。
一方、実施例1〜5の結果から、本発明の組成物は、柔軟性(弾性率から)および傷つき性(スクラッチ試験から)に優れること。さらに自動車用内装材として用いる場合に、基材として一般的に利用されているウレタンフォームへの接着性が良好であること。また、パウダースラッシュ成形性も良好であること。パウダースラッシュ成形は開放系で成形することから、安定剤が揮発しやすいが、得られた成形シートは良好な耐熱性および耐光性を有すること。などがわかった。
以上、表1(実施例1〜5および比較例8)からわかるように、本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物を成形して得られた成形体は、従来のPVC系の成形体に比べ、耐光性や耐熱性に優れ、低揮発性であることから、屋内用内装材や自動車用内装材として使用することができる。特に、耐熱性に優れることから自動車用内装材として、なかでもインストルメントパネル表皮として好適に使用することができる。
スクラッチ試験方法の模式図

Claims (9)

  1. メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)100重量部と、20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であるフェノール系化合物(B)0.5〜2.0重量部と、20℃における蒸気圧が9×10−7Pa以下であるベンゾトリアゾール系化合物(C)0.5〜2.0重量部からなることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物。
  2. フェノール系化合物(B)が、分子中に下記一般式(1);
    [式中、Rは水素原子または1価の炭化水素基、Rは1価の置換基または結合手(−)を示し、pは0〜4の整数であり、pが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよい。]
    で表される構造を有することを特徴とする請求項1記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  3. ベンゾトリアゾール系化合物(C)が、分子中に下記一般式(2);
    [式中、Rは1価の置換基、Rは1価の置換基または結合手(−)を示し、mおよびnはそれぞれ0〜4の整数であり、mが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよく、nが2以上の整数のときに2個以上のRは同じであってもまたは異なっていてもよい。]
    で表される構造を有することを特徴とする請求項1または2記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  4. 窒素雰囲気下、ブロック共重合体(A)を260℃で10分加熱した際の揮発減量が2重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  5. 窒素雰囲気下、260℃で10分加熱した際の揮発減量が2重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  6. メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−2−メトキシエチルとからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の組成物より得られる建築用内装材。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の組成物より得られる自動車用内装材。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の組成物より得られるインストルメントパネル用表皮材。
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