JP2008285560A - 熱可塑性エラストマー組成物および成形品 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、耐候性(耐光性)、熱溶融性、透明性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を提供すること、および組成物を成形してなる成形品を提供することにある。
【解決手段】 メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体(B)と、酸化セリウム粒子(D)と、を含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物とする
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐候性(耐光性)、透明性、熱溶融性に優れる熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。また、その組成物を用いた成形品に関するものである。
アクリル系ブロック共重合体は、自動車内装部材などの種々の表皮材、内装材、その他直接人手に触れる部材の材料への用途展開が期待されている(特許文献1)。
この表皮材、内装材などの成形方法として、たとえば、パウダースラッシュ成形がある。この成形法は、設計自由度が大きく、意匠性が良好である等の利点から、インストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮の成形に広く採用されている。
パウダースラッシュ成形とは、原料となる樹脂パウダーを成形金型に流し込み、溶融成形させ、ある一定時間経過後に冷却固化された成形体を取り出す方法である(特許文献2)。このため、ここで用いられるパウダーには、複雑な金型形状の細部に充填されるための良好な粉流れ性が求められる。また、それと同時に、金型に付着したパウダーが溶融して無加圧下でも流動して皮膜を形成する必要から、成形温度で速やかに溶融する熱溶融性と、低い溶融粘度も求められる。
このようにして得られる表皮材などに求められる特性としては、機械特性、耐擦り傷性、耐熱性、耐候性、歪回復性、などに加え接触可能性のある薬剤に対する耐性、さらに表皮と基材とを直接接着させる場合には表皮と基材との接着性、表皮と基材との間に緩衝材を設ける場合には表皮と緩衝材との接着性などがある。
この中でも、耐候性(耐光性)は、自動車内装材など太陽光や紫外線に暴露される部材にとって重要であり、アクリル系ブロック共重合体の材料開発において、耐候性(耐光性)の改良が求められている。
しかし、アクリルブロック共重合体の耐候性(耐光性)を改良するために酸化チタンなどの添加剤を配合すると、成形時の熱溶融性が損なわれる、特定の色への調色が困難になるなどの問題があり、耐候性(耐光性)を付与しながらもパウダーの熱溶融性、成形体の透明性を両立することはこれまで困難であった。
特開2006−249173号公報 特開平06−182789号公報
本発明者らは、耐候性(耐光性)、透明性、熱溶融性に優れるアクリル系ブロック共重合体樹脂組成物について鋭意検討した結果、所定のフィラーを含むアクリル系ブロック共重合体樹脂組成物が、優れた耐候性(耐光性)と透明性および熱溶融性を両立しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体(B)と、酸化セリウム粒子(D)からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対し、酸化セリウム粒子(D)を0.01から20重量部含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、酸無水物基および/またはカルボキシル基が、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に存在し、酸無水物基が一般式(1):
Figure 2008285560
(式中、R1は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表されることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)成分であるアクリル系ブロック共重合体が、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)10〜60重量%と、アクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)90〜40重量%とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体50〜0重量%とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)成分であるアクリル系ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、酸化セリウム粒子(D)が、酸化セリウムを含む平均粒子径50μm未満の微粒子であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、酸化セリウム(D)が、表面を被覆されていることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、上記の組成物を含むことを特徴とするパウダースラッシュ成形に用いられる組成物に関する。
また本発明は、上記の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とするパウダースラッシュ成形品に関する。
好ましい実施態様としては、上記の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮に関する。
本発明によれば、耐候性(耐光性)および透明性、熱溶融性に優れたアクリル系ブロック共重合体樹脂組成物とその成形体を得ることが可能である。本発明にかかる組成物は、たとえば自動車等の内装用表皮を作製することができる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明は、耐候性(耐光性)と透明性および熱溶融性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物とその成形体であって、 メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体(B)と、酸化セリウム粒子(D)からなることを特徴とする。
酸無水物基および/またはカルボキシル基と反応性官能基(C)は、通常成形時に反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化、もしくは架橋する。
また、酸化セリウム(D)は光遮蔽剤として働き、組成物の耐候性(耐光性)を向上させる。
なお、本願において、耐候性(耐光性)とは特に光に対する耐性を意味する。
また、透明性とは可視光が樹脂を透過する性質であり、透明性の高い樹脂組成物は顔料を添加した際に良好な発色を示すため、着色された成形品を得るために必要な性質である。
また、熱溶融性とは樹脂が過熱時に溶融する性質であり、良好な成形性を実現するためには成形温度での良好な熱溶融性が必要である。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)は、ハードセグメントであるメタアクリル系重合体ブロック(a)と、ソフトセグメントであるアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)により成形時の形状保持性を、アクリル系重合体ブロック(b)により、エラストマーとしての弾性及び成形時の溶融性を付与する。このような目的のため、アクリル系ブロック共重合体(A)において、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合を10〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(b)の割合を90〜40重量%とする。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が10重量%より小さく、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が90重量%より大きいと、成形時に形状が保持されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が60重量%より大きく、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が40重量%より小さいと、エラストマーとしての弾性および成形時の溶融性が低下することとなる。
また、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと硬度が小さくなり、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと、硬度が高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、エラストマー組成物の必要とされる硬度を考慮して、適宜設定する必要がある。また、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと、粘度が低く、また、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと、粘度が高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、必要とする加工特性も考慮して、適宜設定する必要がある。
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000となるように調整する。分子量が30,000より小さいと、エラストマーとして十分な機械特性を発現出来ない場合があり、分子量が200,000より大きいと、加工特性が低下する場合がある。特に、パウダースラッシュ成形を行う場合は、無加圧下でも樹脂が流動する必要があるため、分子量が大きいと、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなる傾向にある。
アクリル系ブロック共重合体(A)は、線状ブロック共重合体であっても、分岐状(星状)ブロック共重合体であっても、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択されるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
なお、線状ブロック共重合体は、いずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)型、b−(a−b)型および(a−b)−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体からなることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や組成物の物性の点から、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgbとすると、機械強度やゴム弾性発現等の点で下式の関係を満たすことが好ましい。
Tga>Tgb
なお、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%からなることが好ましい。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である耐候性などが損なわれる場合がある。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステルなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン基を有する不飽和化合物などをあげることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステルなどをあげることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
ハロゲン基を有する不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
ビニル系単量体として挙げられたこれらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、後述するメタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度や、アクリル系ブロック体(b)との相溶性などを考慮して適宜選択される。
メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、50〜130℃となるように調整する。これにより、良好な溶融流動性を示す組成物が得られることとなる。パウダースラッシュ成形では、樹脂が無加圧下でも流動する必要があるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)の凝集力やガラス転移温度Tgaが高くなると、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなる傾向がある。一方、ガラス転移温度Tgaが低すぎる場合には、樹脂組成物が常温でも流動性を有し、粉体としての性状を保持することが出来なくなるため、ガラス転移温度は適切に設定する必要がある。
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸エステルを主成分とする。アクリル系重合体ブロック(b)は、上記アクリル酸エステル50〜100重量%と、これと共重合可能な上記以外のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体0〜50重量%とからなるのが好ましい。
アクリル酸−n−ブチルを用いた場合、本発明により得られる組成物から作製された成形体は、良好なゴム弾性および低温特性を示すようになる。アクリル酸エチルを用いた場合、良好な耐油性および引張強度等の機械特性を示すようになる。また、アクリル酸−2−メトキシエチルを用いた場合、良好な低温特性と耐油性を示し、また、樹脂の表面タック性が改善されることとなる。これらは、要求特性に応じて単独で又は2種以上を組み合わせて使用する。なお、これらのアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチル以外のアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン基を有する不飽和化合物、ケイ素基を有する不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられる単量体成分として前述したものと同様のものをあげることができる。これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するとよい。
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、組成物のゴム弾性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、0℃以下であるのがより好ましく、−20℃以下であるのがさらに好ましい。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より高いと、柔軟性やゴム弾性が発現されにくくなる。
<酸無水物基およびカルボキシル基>
本発明ではカルボキシル基から誘導される酸無水物を酸無水物基とする。
メタアクリル系重合体ブロック(a)および/またはアクリル系重合体ブロック(b)に存在する酸無水物基およびカルボキシル基は、通常、ブロック共重合体(A)が高分子量化または架橋されるための反応点または架橋点として作用する。酸無水物基およびカルボキシル基は、酸無水物基およびカルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、酸無水物基およびカルボキシル基の前駆体となる形でブロック共重合体に導入し、そののちに従来公知の化学反応で酸無水物基およびカルボキシル基を生成させることもできる。
酸無水物基およびカルボキシル基の含有数は、酸無水物基およびカルボキシル基の凝集力、反応性、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度によって変化させ、その数は必要に応じて適宜設定する必要があるが、好ましくはブロック共重合体1分子あたり1.0個以上、より好ましくは2.0個以上とする。これは、1.0個より少なくなると、ブロック共重合体の高分子量化や架橋による耐熱性向上が不十分となる傾向があるためである。
ただし、酸無水物基やカルボキシル基を導入することによりメタアクリル系重合体ブロック(a)やアクリル系重合体ブロック(b)の凝集力やガラス転移温度が上昇すると、柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化する傾向にある。このため、酸無水物基やカルボキシル基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化しない範囲で導入するのが好ましい。具体的には、酸無水物基やカルボキシル基をアクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合は、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度が25℃以下になるような範囲で導入するのが好ましく、0℃以下になるように導入するのがより好ましく、−20℃以下になるように導入するのが更に好ましい。酸無水物基やカルボキシル基をアクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合は、良好な溶融流動性を確保するために、ガラス転移温度が130℃以下になるように調整することが好ましい。
以下に、酸無水物基およびカルボキシル基のそれぞれについて更に詳細に説明する。
<酸無水物基>
組成物中に活性プロトンを有する化合物を含む場合、酸無水物基はエポキシ基等の反応性官能基と容易に反応する。酸無水物基の導入位置は、特に限定されるものではなく、酸無水物基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)の主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良いが、導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。酸無水物基はカルボキシル基の無水物基であり、具体的には一般式(1)で表される基をいう。
一般式(1):
Figure 2008285560
(式中、R1は水素またはメチル基で、2つのR1は互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)。
一般式(1)中のnは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。nが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
酸無水物基の導入方法としては、酸無水物基の前駆体の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに環化させることが好ましい。特に、一般式(2):
Figure 2008285560
(式中、R2は水素またはメチル基を表わす。R3は水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのR3のうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれ、3つのR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を溶融混練して、環化導入することが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)への一般式(2)で表される単位の導入は、一般式(2)に由来するアクリル酸エステル、またはメタアクリル酸エステル単量体を共重合することによって行なうことができる。単量体としては、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどがあげられるが、これらに限定するものではない。これらのなかでも、入手性や重合容易性、酸無水物基生成容易性などの点から(メタ)アクリル酸−t−ブチルが好ましい。なお、本願において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタアクリル酸を意味する。
酸無水物基の形成は、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を高温下で加熱することにより行うのが好ましく、180〜300℃で加熱することが好ましい。180℃より低いと酸無水物基の生成が不十分となる傾向があり、300℃より高くなると、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体自体が分解することがある。
<カルボキシル基>
カルボキシル基は、エポキシ基等の反応性官能基と容易に反応する。カルボキシル基の導入位置は、特に限定されるものではなく、カルボキシル基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)の主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良いが、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)への導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒を失活させることがない場合は、重合により直接導入することにより行うのが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させるおそれがある場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法により行うのが好ましい。
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法では、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののち従来公知の化学反応で官能基を生成させることができる。
カルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)の合成方法としては、たとえば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法(特開平10−298248号公報、特開2001−234146号公報)や、一般式(2):
Figure 2008285560
(式中、R2は水素またはメチル基を表わす。R3は水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのR3のうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれ、3つのR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を、溶融混練して導入する方法がある。一般式(2)で示される単位は、高温下でエステルユニットが分解してカルボキシル基を生成し、そのカルボキシル基の一部が環化することにより生成する。これを利用して、一般式(2)で示される単位の種類や含有量に応じて、加熱温度や時間を適宜調整することでカルボキシル基を導入することができる。
また、上述の酸無水物基を加水分解することにより、カルボキシル基を導入することも可能である。
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
前記アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法は、とくに限定するものではないが、開始剤を用いた制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合法、近年開発されたリビングラジカル重合法があげられる。なかでも、アクリル系ブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から、リビングラジカル重合法により製造するのが好ましい。
リビングラジカル重合法は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合法である。リビング重合法とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合法は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、第116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合法が好ましい。
原子移動ラジカル重合法は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(たとえば、マティジャスツェウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、第117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、7901頁、サイエンス(Science)、1996年、第272巻、866頁、または、澤本(Sawamoto)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、1721頁参照)。
これらの方法によると、一般的に、非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合法でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量を単量体と開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、1官能性、2官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、開始剤の入手のしやすさの点から1官能性化合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から2官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から多官能性化合物を使用するのが好ましい。
また、開始剤として、高分子開始剤を用いることも可能である。高分子開始剤とは、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物のうち、分子鎖末端にハロゲン原子の結合した重合体からなる化合物である。このような高分子開始剤は、リビングラジカル重合法以外の制御重合法でも製造することが可能であるため、異なる重合法で得られる重合体を結合したブロック共重合体が得られるという特徴がある。
1官能性化合物としては、たとえば、
−CHX、
−C(H)(X)−CH
−C(X)(CH
−C(H)(X)−COOR
−C(CH)(X)−COOR
−C(H)(X)−CO−R
−C(CH)(X)−CO−R
−C−SO
で示される化合物などがあげられる。
式中、Cはフェニル基、Cはフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表わす。Rは炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
1官能性化合物の具体例としては、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチルが、アクリル酸エステル単量体の構造と類似しているために重合を制御しやすい点から好ましい。
2官能性化合物としては、たとえば、
X−CH−C−CH−X、
X−CH(CH)−C−CH(CH)−X、
X−C(CH−C−C(CH−X、
X−CH(COOR)−(CH)n−CH(COOR)−X、
X−C(CH)(COOR)−(CH)n−C(CH)(COOR)−X
X−CH(COR)−(CH)n−CH(COR)−X、
X−C(CH)(COR)−(CH)n−C(CH)(COR)−X、
X−CH−CO−CH−X、
X−CH(CH)−CO−CH(CH)−X、
X−C(CH−CO−C(CH−X、
X−CH(C)−CO−CH(C)−X、
X−CH−COO−(CH)n−OCO−CH−X、
X−CH(CH)−COO−(CH)n−OCO−CH(CH)−X、
X−C(CH−COO−(CH)n−OCO−C(CH−X、
X−CH−CO−CO−CH−X、
X−CH(CH)−CO−CO−CH(CH)−X、
X−C(CH−CO−CO−C(CH−X、
X−CH−COO−C−OCO−CH−X、
X−CH(CH)−COO−C−OCO−CH(CH)−X、
X−C(CH−COO−C−OCO−C(CH−X、
X−SO−C−SO−X
で示される化合物などがあげられる。
式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数の6〜20アリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。C、C、Xは、前記と同様である。
の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例は、Rの炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例と同じである。
2官能性化合物の具体例としては、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが、原料の入手性の点から好ましい。
多官能性化合物としては、たとえば、
−(CH−X)
−(CH(CH)−X)
−(C(CH−X)
−(OCO−CH−X)
−(OCO−CH(CH)−X)
−(OCO−C(CH−X)
−(SO−X)
で示される化合物などがあげられる。
式中、Cは三価のフェニル基(3つの結合手の位置は1位〜6位のいずれであってもよく、その組み合わせは適宜選択可能である)、Xは前記と同じである。
多官能性化合物の具体例としては、たとえば、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモエチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼンなどがあげられる。これらのうちでは、トリス(ブロモメチル)ベンゼンが、原料の入手性の点から好ましい。
なお、重合を開始する基以外に、官能基をもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端または分子内に重合を開始する基以外の官能基が導入された重合体が得られる。このような重合を開始する基以外の官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
原子移動ラジカル重合法の触媒として用いられる遷移金属錯体としては、とくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、ならびに、2価のニッケルの錯体があげられる。
これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。その中でも塩化第一銅、臭化第一銅が、重合の制御の観点から好ましい。1価の銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジル、その誘導体(たとえば4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルなど)などの2,2′−ビピリジル系化合物;1,10−フェナントロリン、その誘導体(たとえば4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンなど)などの1,10−フェナントロリン系化合物;テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。
使用する触媒、配位子および活性化剤の種類は、使用する開始剤、単量体および溶媒や、必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
同様に、使用する触媒、配位子の量は、使用する開始剤、単量体および溶媒の量や、必要とする反応速度の関係から決定すればよい。たとえば、分子量の高い重合体を得ようとする場合には、分子量の低い重合体を得る場合よりも、開始剤/単量体の比を小さくしなければならないが、そのような場合には、触媒、配位子を多くすることにより、反応速度を増大させることができる。また、ガラス転移点が室温より高い重合体が生成する場合、系の粘度を下げて撹拌効率を上げるために適当な有機溶媒を添加した場合には、反応速度が低下する傾向があるが、そのような場合には、触媒、配位子を多くすることにより、反応速度を増大させることができる。
原子移動ラジカル重合法は、無溶媒中で(塊状重合)、または、各種の溶媒中で行なうことができる。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において、重合を途中で停止させることもできる。
溶媒としては、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。
重合は、20℃〜200℃の範囲で行うことができ、50〜150℃の範囲で行なうのが好ましい。
アクリル系ブロック共重合体を重合させる方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法はいずれを用いてもよく、目的に応じて適宜選択する。なお、製造工程の簡便性の点からは単量体の逐次添加による方法が好ましい。
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボキシル基、もしくは、スルホニル基を有する有機酸を添加して金属錯体と金属塩を生成させ、生成した金属錯体を濾過などにより、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体吸着処理により溶液中に残存する酸などの不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去して、アクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横型蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横型蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
<アクリル系重合体(B)>
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系重合体(B)は、一分子中に1.1個以上の反応性官能基(C)を有する重合体である。アクリル系重合体(B)は、組成物の成形時に可塑剤として成形流動性を向上させると同時に、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基と反応性官能基(C)によって反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化あるいは架橋させる。なお、ここでいう反応性官能基(C)の個数は、アクリル系重合体(B)に存在する反応性官能基(C)の平均の個数を表す。
アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(C)の数は、アクリル系重合体(B)中に1.1個以上、好ましくは1.5個以上、更に好ましくは2.0個以上である。その数は、反応性官能基(C)の反応性、反応性官能基(C)の含有される部位および様式、アクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基および/またはカルボキシル基の含有される数や部位および様式に応じて変化させる。反応性官能基(C)の含有数が1.1個より少なくなると、ブロック共重合体の高分子量化反応剤あるいは架橋剤としての効果が低くなり、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性向上が不十分になる傾向がある。
アクリル系重合体(B)は、1種若しくは2種以上のアクリル系単量体を重合させるか、又は1種若しくは2種以上のアクリル系単量体とアクリル系単量体以外の単量体とを重合させることにより得られたものであることが好ましい。
アクリル系単量体としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)の項において記載したアクリル酸エステルやメタアクリル酸エステルが挙げられる。このうち、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルのいずれか又はこれらの2種以上を組み合わせて用いるのが、入手性の点から好ましい。
アクリル系単量体以外の単量体としては、アクリル系単量体と共重合可能な単量体である限りにおいては特に制限はなく、例えば酢酸ビニル、スチレン等を用いることができる。
なお、アクリル系重合体(B)を構成する全単量体成分に対するアクリロイル基を有する単量体成分の割合は、70重量%以上であることが好ましい。その割合が70重量%未満の場合、耐候性が低下し、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性も低下する傾向にある。また、その成形物に変色が生じやすくなる。
アクリル系重合体(B)の分子量は、特に制限はないが、重量平均分子量で30,000以下の低分子量のものが好ましく、500〜30,000のものがさらに好ましく、500〜10,000のものが特に好ましい。重量平均分子量が500未満の場合、成形体にべたつきが生じる傾向があり、一方、重量平均分子量が30,000を超えた場合、成形物の可塑化が不十分になりやすい。
アクリル系重合体(B)の粘度は、25℃においてコーン・プレート型の回転粘度計(E型粘度計)で測定した時、35,000mPa・s以下であるのが好ましく、10,000mPa・s以下であるのがより好ましく、5,000mPa・s以下であるのが特に好ましい。粘度が35,000mPa・sより高いと、組成物の可塑化効果が低下する傾向にある。好ましい粘度の下限は特にないが、アクリル系重合体の通常の粘度は10mPa・s以上である。
アクリル系重合体(B)のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した場合に100℃以下であるのが好ましく、25℃以下であるのがより好ましく、0℃以下であるのが更に好ましく、−30℃以下であるのが特に好ましい。ガラス転移温度Tgが100℃を超えると、可塑剤として成形性を向上させる効果が不十分になる傾向があり、また、得られる成形体の柔軟性が低下する傾向にある。
アクリル系重合体(B)は、従来公知の方法で重合させることにより得られる。重合方法は必要に応じて適宜選択すればよく、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いる重合およびリビングラジカル重合法等の制御重合法等の方法により行なうことができるが、耐候性や耐熱性が良好で比較的低分子量かつ分子量分布の小さい重合体が得られる制御重合が好ましく、以下に記載の高温連続重合を用いる方法がコスト面などの点でより好ましい。
アクリル系重合体(B)は、180〜350℃の温度での重合反応により得るのが好ましい。この重合温度では、重合開始剤や連鎖移動剤を使用することなく、比較的低分子量のアクリル系重合体が得られる。このため、そのアクリル系重合体は優れた可塑剤となり、耐候性も良好である。具体的には、特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報及び国際公開第01/083619号パンフレットに記載された高温連続重合による方法、すなわち、所定の温度及び圧力に設定された反応器内に上記の単量体の混合物を一定の供給速度で連続して供給し、その供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が例示される。
<反応性官能基(C)>
反応性官能基(C)としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を用いるのが望ましい。これらの官能基のうち、アクリル系ブロック共重合体(A)に含まれる酸無水物基やカルボキシル基との反応性およびアクリル系重合体(B)への官能基の導入のしやすさから、エポキシ基がより好ましい。
アクリル系重合体(B)への反応性官能基(C)の導入は、例えば、アクリル系重合体を構成する単量体と共重合可能な反応性官能基(C)を有するビニル系単量体等を共重合することにより行うことが出来る。
反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体(B)としては、具体的には東亞合成(株)のARUFON(登録商標)XG4000、ARUFON UG4000、ARUFON XG4010、ARUFON UG4010、ARUFON UG4012、ARUFON XD945、ARUFON XD950、ARUFON UG4030、ARUFON UG4070などが好適に使用できる。これらは、オールアクリル、アクリレート/スチレン等のアクリル系重合体であって、エポキシ基を1分子中に1.1個以上含む重合体である。
<酸化セリウム粒子(D)>
本発明で用いる酸化セリウム粒子(D)は、樹脂中で光を吸収または一部散乱することで光遮蔽剤として働き、樹脂組成物を構成する成分の光劣化を低減または防止して耐候性(耐光性)を向上させる。また、酸化セリウムは酸化チタンなどの無機系紫外線吸収剤と比較して可視光透過率が高いため、酸化セリウム粒子(D)を配合することで透明性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
本発明で用いる酸化セリウム粒子(D)は酸化セリウムを少なくとも含む粒子であるならばよく、酸化セリウムからなる粒子であってもよいし、酸化セリウムに加えて他の成分を含むものや、基材となる他成分の粒子を酸化セリウム含む成分が被覆しているものであってもよい。
酸化セリウム粒子(D)に含まれる他の成分としては、本発明の効果を阻害するものでない限り特に制限されるものではないが、たとえば、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、ベントナイト、セリサイトなどが挙げられる。中でも無色で、表面の触媒活性が少なく樹脂などに対して影響の小さい酸化ケイ素、タルクが好ましい。
また、本発明で用いる酸化セリウム粒子(D)は単独であるいは複数種を組み合わせて用いることができる。
また、酸化セリウム粒子(D)はレーザー法による平均粒子径が50μm未満の微粒子であることが好ましく、レーザー法による平均粒子径が10μm以下であることがより好ましい。また、酸化セリウム粒子(D)がシリカやタルクなどの基材を有していない場合は電子顕微鏡(TEM)観察における平均粒子径が100nm以下であることが更に好ましい。酸化セリウム粒子(D)の平均粒子径が大きくなると、粒子の可視光に対する散乱が大きくなり、可視光波長領域の透明性が低下することがある。
また、酸化セリウム粒子(D)は、表面を他の物質で被覆されていることが好ましい。酸化セリウム粒子の表面を被覆すると、酸化セリウムが有する触媒活性が抑えられ、樹脂や同時に配合された他の添加剤の劣化が抑制される。被覆する物質としては特に限定されないが、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタンなどから選ばれる一種又は二種以上の酸化物が好ましく、この中でも透明性やパウダーの熱溶融性に影響を与えにくい酸化ケイ素が好ましい。
上記の酸化セリウム粒子(D)としては、たとえば、セリガードS−3018−02、セリガードT−3018−02、セリガードSC―4060、セリガードSC−6832、セリガードW−500−S(以上、日本電工(株)製)などがあげられる。ただしこれらに限られない。
アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計と酸化セリウム粒子(D)との配合比は、好ましくはアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、酸化セリウム粒子(D)0.01〜20重量部であり、より好ましくはアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、酸化セリウム粒子(D)0.1〜15重量部であり、さらに好ましくはアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、(D)1〜10重量部である。酸化セリウム粒子(D)が0.01重量部より少ない場合には、耐候性(耐光性)が十分に得られない場合があり、20重量部より多い場合には、透明性、熱溶融性の低下などが起こる場合がある。また、この配合比は、(a)と(b)の重量比、(A)の分子量、可塑剤量、コストなどに応じて適宜設定する。
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、成形を行う際は溶融粘度が低く、溶融流動性(成形性)に優れる一方、加熱時にブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基と、アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(C)とが反応して、アクリル系ブロック共重合体(A)が高分子量化あるいは架橋することが好ましい。なお、耐熱性向上の点では、架橋することがより好ましい。
成形時の反応を促進させるために、熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、触媒を添加しても良い。たとえば、酸二無水物などの酸無水物系、アミン系、イミダゾール系等のエポキシ樹脂に一般に用いられる硬化剤を用いることが可能である。
また、その他にも本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて充填剤、滑剤、安定剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などを配合してもよい。
上記、充填剤としては、本発明の効果に影響を与えない限り特に限定はなく、機械特性の改善や補強効果、コスト面等から、無機充填剤がより好ましく、カーボンブラック、シリカ、タルクがより好ましい。 充填剤を用いる場合、その添加量は、本発明の効果に影響を与えない範囲で添加すればよい。なお、充填剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の滑剤としては、たとえば、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどのワックス類、低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレンなどの低分子量ポリオレフィン、ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン、オクタデシルアミン、リン酸アルキル、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミドなどのアミド系滑剤、4フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリカ、シリコーンオイルなどを用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミドがコスト面や成形性に優れており好ましい。これらの滑剤により、金型からの離型性、得られる成形体の表面の低摩擦化が期待できる。
滑剤を用いる場合、その添加量は、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲とするのが好ましく、0.2〜10重量部の範囲とするのがより好ましい。添加量が0.1重量部未満の場合には、離型性の改善効果や得られる成形体の低摩擦化が不充分となることがあり、20重量部を超えると、得られる成形体の機械特性や耐薬品性などが悪化する傾向にある。滑剤は、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の安定剤としては、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などがあげられ、工業製品としては、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、サノールLS770(三共ライフテック株式会社)、アデカスタブLA−57(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブLA−68(旭電化工業株式会社製)、Chimassorb944(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、サノールLS765(三共ライフテック株式会社)、アデカスタブLA−62(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN144(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−63(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN622(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−32(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブLA−36(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN571(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、TINUVIN234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN1130(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブAO−20(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブAO−50(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブ2112(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブPEP−36旭電化工業株式会社製)、スミライザーGM(住友化学工業株式会社)、スミライザーGS(住友化学工業株式会社)、スミライザーTP−D(住友化学工業株式会社)などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでもアクリル系ブロック体の熱や光による劣化防止効果やコストなので点で、サノールLS770、Irganox1010、スミライザーGS、TINUVIN234が好ましい。
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されることがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、アクリル系ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザーO−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。これら以外の高分子量の可塑剤としては、アクリル系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリテトラヒドロフラン系重合体、ポリイソブチレン系重合体などがあげられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱による減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、などが好ましい。
<パウダースラッシュ成形に用いられる組成物の製造方法>
本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物は種々の方法で成形でき、パウダースラッシュ成形、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などに適用可能であるが、パウダースラッシュ成形がより好適に使用される。パウダースラッシュ成形に用いられる組成物の製造方法には特に限定はないが、バッチ式混錬装置や連続混錬装置を用いることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得た後にこれを各種方法により粉砕することなどで得ることができる。
バッチ式混練装置としては、例えば、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーを使用できる。また、連続混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いることができる。さらに、機械的に混合し、ペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。
熱可塑性エラストマー組成物を製造するための混練時の温度は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが反応し、成形性が低下しない温度が好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが反応して成形性が悪化する温度は、酸無水物基やカルボキシル基、アクリル系重合体(B)の官能基の種類、導入量、アクリル系ブロック共重合体(A)やアクリル系重合体(B)の組成、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の相溶性などによって適宜設定する。ここで、組成物を得た後、その組成物の成形を可能とするため、混練時の温度は200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。混練時の温度が200℃を超えると、混練中に高分子量化や架橋反応が起こり、成形性が低下する傾向にある。ただし、一部に高分子量化や架橋が起こるような条件であっても、成形が可能な程度の温度であればよい。
この熱可塑性エラストマー組成物を粉砕する方法としては、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル、遠心ミル等の衝撃型微粉砕機、固定刃と回転刃による剪断作用を用いた粉砕機等を用いる方法がある。さらに、粉砕は常温で行うこともできるが、液体窒素等の冷媒や冷却設備を使用して機械粉砕することもできる。
熱可塑性エラストマー組成物を粉砕する際は、本発明の効果に影響を与えないに限り粉砕前の組成物ペレット等の表面に、互着防止用の各種粉末を粉砕助剤として付着させてもよい。粉砕助剤としては、シリカ、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、金属石鹸等を用いることができる。これらは単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。また、その量は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、2〜20重量部程度とするとよい。2重量部未満では、効果が十分ではなく、また20重量部より多いと、得られるパウダースラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物の機械特性に悪影響を与える恐れがある。用いる粉砕助剤の粒子径に関しては特に制限されるものではないが、粒子径が大きすぎる場合には、互着防止能力が低く、微細な場合はハンドリング性が低下することとなるため、平均粒子径0.5〜15μmのものを用いるのが好ましい。なお、粉砕助剤は、粉砕により得られる熱可塑性エラストマー組成物粉体に大部分が残留するものの、一部は粉砕工程で脱離し、粉砕機内で分離する。
上記熱可塑性エラストマーを含むパウダースラッシュ成形に用いられる組成物を得る際は、必ずしも粉砕工程を経なくてもよい。例えば、熱可塑性エラストマー組成物を連続式押し出し機で得る際、特殊なダイスを取り付けることで、パウダースラッシュ成形に用いることができる熱可塑性エラストマー含む組成物をマイクロペレットとして直接得ることができる。また、アクリル系ブロック共重合体(A)を有機溶剤中に溶融させたアクリル系ブロック共重合体溶液へアクリル系重合体(B)を溶解させた後に、水と混合して撹拌し、所定の大きさのアクリル系ブロック共重合体溶液の液滴を形成させ、そのまま加熱することで有機溶剤を蒸発させ、適当な粒度分布を持った粉体を得ることができる。この時、アクリル系ブロック共重合体溶液に、予め上記の架橋促進用の添加剤や触媒、充填剤、滑剤、安定剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤、酸化セリウム粒子(D)等を溶解・分散させておいてもよい。また、所定の大きさの液滴を安定して得るために、乳化剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体、メチルセルロースなどを添加してもよい。
これらの結果得られた粉体は、ふるい等を用いて、粒径1〜1000μmのものだけを分取するのが好ましく、10〜710μmのものだけを分取するのがより好ましく、30〜710μmのものだけを分取するのがさらに好ましく、75〜500μmのものだけを分取するのが最も好ましい。1μmより粒径の小さいものを含んだ粉体は、粉体同士の凝集を促進させる原因となり、ハンドリング性が低下すると共に粉体流動性が悪化する。このため、パウダースラッシュ成形に用いたときに、金型の端部まで粉体が十分に届かず、成形体の意匠性が損なわれる。また、1000μmより大きな粒径のものを含んだ粉体は、パウダースラッシュ成形に用いたときに、粒径の大きな粉体が十分に溶融しないため、成形体の意匠性が損なわれることとなる。
<成形体の用途および使用方法>
本発明の組成物は耐候性(耐光性)と共に良好な透明性と熱溶融性を有している。本発明の組成物の成形方法としてはパウダースラッシュ成形、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などが適用可能であるが、パウダースラッシュ成形がより好適に使用される。
本発明の組成物を成形して得られた成形体は、耐熱性、耐候性、透明性、耐薬品性、接着性、柔軟性、耐磨耗性等に優れることから、たとえば、表皮材料や、触感が求められる材料(以下、「触感材料」とする)、良好な外観と耐侯性が求められる材料(以下、「外観材料」とする)として好適に用いることができ、その他に、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として、形状としてはシート、平板、フィルム、小型成型品、大型成型品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。この中でも、自動車内装用表皮に好適に使用される。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中に記載した分子量や重合反応の転化率、各物性評価は、以下の方法に従って行った。
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製ShodexK−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムSupelcowax−10、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度60℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約3倍に希釈し、酢酸ブチルを内部標準物質とした。
<耐候性(耐光性)試験>
実施例および比較例にて得られた革シボ模様が転写された3号ダンベル試験片1を用いて、キセノンウェザーメーター(スガ試験機製)による耐候性(耐光性)試験を以下の条件にて行った。その後、オートグラフ(島津製作所製)を用いて以下の条件にて引っ張り試験を実施して評価した。
(耐候性(耐光性)試験条件)
使用機器:キセノンウェザーメーター(スガ試験機製)
BPT:83℃
湿度:50%RH
放射照度:150W/m2
積算放射照度:150MJ
回転速度:12rpm
(引張試験条件)
試験片:3号ダンベル
温度:23℃
湿度:50%
引張試験速度:200mm/min
チャック間:30mm
標線間:10mm
評価基準は、比較例1に対して標線間伸びが15%以上向上したものを◎、10%以上15%未満向上したものを○、5%以上10%未満向上したものを△、5%未満向上したものを×とした。
<透明性測定>
実施例および比較例にて得られた鏡面の成形体シート2の吸光度を、400〜800nmの波長領域に関して分光光度計(日本分光製)を用いて測定した。
評価基準は400nm,500nm,600nm,700nm,800nmにおける吸光度の平均値が0以上1未満を◎、1以上2未満を○、2以上3未満を△、3以上を×とした。
<熱溶融性試験>
実施例および比較例にて得られた試験用パウダー1、3mgを200℃に熱したホットプレート(井内盛栄堂製)上に落下させ、液体状に溶融するまでの時間を測定した。この操作を1種類のサンプルにつき5回繰り返し、溶融するまでにかかった時間の平均値を溶融時間とした。溶融したかどうかの判断は目視にて行い、評価基準は溶融時間が14秒以下のものを◎、14秒より長く16秒以下のものを○、16秒よりも長く18秒以下のものを△、18秒よりも長いものを×とした。
(製造例1)
アクリル系ブロック共重合体の合成
アクリル系ブロック共重合体を得るために以下の操作を行なった。
耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅0.89重量部、アクリル酸−n−ブチル100重量部及びアクリル酸−t−ブチル4.46重量部を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.24重量部をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)9.18重量部に溶解させた溶液を仕込み、溶液温度を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。溶液温度が75℃に到達した時点で、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、サンプリング溶液のガスクロマトグラフィー分析によりアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチルの転化率を測定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計0.21重量部)添加した。
アクリル酸−n−ブチルの転化率が99.0%、アクリル酸−t−ブチルの転化率が99.1%の時点で、メタアクリル酸メチル63.76重量部、アクリル酸−エチル10.38重量部、塩化銅0.61重量部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部及びトルエン(窒素バブリングしたもの)137.41重量部を加えて、メタクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
メタアクリル酸メチル、アクリル酸−エチルを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてメタアクリル酸メチル、アクリル酸−エチルの転化率を測定した。メタアクリル酸メチル、アクリル酸−エチルを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計0.64重量部)添加した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.0%の時点でトルエン212.77重量部を加え、反応器を冷却して反応を終了させた。得られたアクリル系ブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは72,100、分子量分布Mw/Mnは1.48であった。
上記のアクリル系ブロック共重合体を含む反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度を25重量%とした。この溶液100重量部にp−トルエンスルホン酸を0.41重量部加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。
反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、固体塩基として昭和化学工業製ラヂオライト#3000を0.50重量部添加した。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体を含む溶液100重量部に対し、安定剤としてイルガノックス1010を0.15重量部添加した後、反応器内を窒素置換し、耐圧反応器中で、150℃で4時間攪拌することで酸によりt-ブチルエステル基をカルボキシル基に変性した。30℃に冷却した反応液に濾過助剤としてキョーワード500SH1.75重量部を加えた後、反応器内を窒素置換して、2時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル系ブロック共重合体を含む重合体溶液を得た。
この重合体溶液を80℃で真空乾燥することにより、アクリル系ブロック共重合体(以下、「重合体1」とする)を得た。なお、本製造例1で得られた重合体1のメタクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度を上記Fox式に従って計算したところ、101℃であった。
(製造例2)
乳化重合ラテックス(A−1)の合成
水200重量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.28重量部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0015重量部、エチレンジアミン四酢酸0.006重量部およびソジウムホルムアルデヒドスルフォキシレート0.5重量部を撹拌器付反応器に仕込み、窒素置換後、60℃まで昇温した。これにメタアクリル酸メチル90重量部、アクリル酸−n−ブチル10重量部、ターシャリ・ドデシルメルカプタン0.8重量部およびクメンハイドロパーオキサイド(純度82%)1重量部の混合液を6時間かけて添加し、添加開始から2時間後にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.33重量部を、4時間後に0.39重量部を加えた。添加終了後、ソジウムホルムアルデヒドスルフォキシレートを0.05重量部添加して、1時間重合を行い、重合転化率99%、ガラス転移温度92℃、固形分濃度33%のアクリル酸エステル系ラテックス(A−1)を得た。
(製造例3)
アクリル系ブロック共重合体組成物粉体の製造
耐圧攪拌装置に純水200重量部及びポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名KH−17)0.7重量部(3%水溶液として23.3重量部)を仕込み、製造例1で得られた重合体溶液400重量部(固形分濃度25重量%)、1分子あたり1.1個以上(概算値4個(カタログより))のエポキシ基を持つアクリル系重合体であるARUFON(登録商標)UG4010(東亞合成(株)製)10重量部、ポリエーテルエステル系可塑剤であるRS700(旭電化工業(株)製)10重量部、エステル系滑剤である牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)1重量部、カーボンブラックを主成分とする黒色粉末顔料0.3重量部を添加した。撹拌翼として2段4枚傾斜パドルを用いて攪拌して、撹拌槽の底部より蒸気を導入した。撹拌槽上部に接続したコンデンサで溶剤ガス及び蒸気を凝縮し、系外で逐次溶剤及び水を回収した。発泡に注意しながら蒸気流量を加減し、100℃到達後5分後に蒸気を停止し、撹拌槽のジャケットを用いて冷却を行い、重合体粒子、水及び分散剤を含むスラリーを得た。得られた重量体粒子について標準ふるいでふるい分けし、それぞれの粒径範囲に属する画分の重量を個別に計量して、重量基準による平均値を求めた結果、得られた重合体粒子の平均粒子径は200μmであった。
このようにして得られた重合体粒子と水と分散剤を含むスラリーを1時間静置し、スラリー重量の72%相当分の上澄み液を取り除いた後、スラリー濃度が20重量%になるまで水を加え、撹拌器付反応器に仕込み、60℃に加熱した。製造例2の乳化重合により製造した重合体ラテックスA−1を12.6重量部(固形分基準で4.2重量部)添加し、引き続き15%硫酸ナトリウム溶液37.3重量部を5分間かけて連続的に添加した。添加終了から5分後、この分散液を90℃まで加熱し、5分間90℃で保持した後冷却して、ラテックスが重合体粒子の表面に付着した重合体スラリーを得た。このスラリーをバッチ式遠心ろ過機で脱水し、バッチ式流動乾燥機で樹脂温度最大50℃の条件で乾燥し、水分が0.4%の重合体粉体を得た。
このようにして得た重合体粉体3,000gを、ヘンシェル型ミキサー((株)カワタ製、スーパーミキサー SMV−20)に投入し、低速回転で攪拌しながら水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、X−22−4015)9.0gおよびカルボキシル基変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、FZ−3703)3.0g添加した後、高速回転で5分混合した。終了時の槽内の粉体温度は24℃であった。停止後、PMMA微粒子(MA1002、日本触媒製)を60g添加し、高速回転で1分混合することで、粉体組成物1を得た。
<耐光性試験>
(実施例1)
表1に従い、製造例3で得られた粉体組成物1、酸化セリウムとしてSC−4060(日本電工(株)製)、紫外線吸収剤としてTINUVIN234(チバスペシャリティーケミカルズ)を、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて100℃で10分間、溶融混練し、さらに、設定温度200℃で8分間、熱プレス成形し、革シボで修飾されたプレス板にて革シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体シート1を得た。この成形体シート1を打ち抜き機にて3号ダンベル試験片1に打ち抜き、耐光性試験を実施した。
以上のようにして得られた成形体の耐光性試験後の引張機械物性の測定結果を表1に示す。
(実施例2)
酸化セリウムとしてSC−4060の代わりに、S−3018―02(日本電工(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、耐光性試験を実施した。耐光性試験後の引張機械物性測定の結果を表1に示す。
(比較例1)
酸化セリウムを使用しなかったほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、耐光性試験を実施した。耐光性試験後の引張機械物性測定の結果を表1に示す。
(比較例2)
酸化セリウムの代わりに、炭酸カルシウム(ブリリアント1500)(白石カルシウム(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、耐光性試験を実施した。耐光性試験後の引張機械物性測定の結果を表1に示す。
(比較例3)
酸化セリウムの代わりに酸化チタン(FTR700)(堺化学工業(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、耐光性試験を実施した。耐光性試験後の引張機械物性測定の結果を表1に示す。
(比較例4)
酸化セリウムの代わりに、酸化亜鉛(NANOFINE)(堺化学工業(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、耐光性試験を実施した。耐光性試験後の引張機械物性測定の結果を表1に示す。
<透明性測定>
(実施例1)
表2に従い、製造例1で得られた重合体1、酸化セリウムとしてSC―4060(日本電工(株)製)を、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて100℃で20分間、溶融混練し、さらに、設定温度200℃で8分間、熱プレス成形し、鏡面プレス板にて厚さ2mmの評価用の成形体シート2を得た。この成形体シート2について、可視・紫外光分光光度計を用いて可視光の吸光度を測定した。結果を表2に示す。
(実施例2)
酸化セリウムとしてSC−4060の代わりに、S−3018−02(日本電工(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、吸光度を測定した。吸光度の測定結果を表2に示す。
(比較例1)
酸化セリウムを使用しなかったほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、吸光度を測定した。吸光度の測定結果を表2に示す。
(比較例2)
酸化セリウムの代わりに炭酸カルシウム(ブリリアント1500)(白石カルシウム(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、吸光度を測定した。吸光度の測定結果を表2に示す。
(比較例3)
酸化セリウムの代わりに酸化チタン(FTR700)(堺化学工業(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、吸光度を測定した。吸光度の測定結果を表2に示す。
(比較例4)
酸化セリウムの代わりに酸化亜鉛(NANOFINE)(堺化学工業(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、吸光度を測定した。吸光度の測定結果を表2に示す。
<熱溶融性測定>
(実施例1)
表1に従い、製造例3で得られた粉体組成物1、酸化セリウムとしてSC−4060(日本電工(株)製)、紫外線吸収剤としてTINUVIN234(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、を、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて100℃で10分間、溶融混練した。得られた樹脂組成物1gを小型粉砕器(共立理工製)で粉砕後、目の開きが710μmの篩に通し試験用パウダー1を得た。得られたパウダーを用いて溶融性評価試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例2)
酸化セリウムとしてS−4060の代わりに、S−3018(日本電工(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にしてパウダーを作製し、溶融性を測定した。溶融性の測定結果を表1に示す。
(比較例1)
酸化セリウムを使用しなかった他は、実施例1と同様にしてパウダーを作製し、溶融性を測定した。溶融性の測定結果を表1に示す。
(比較例2)
酸化セリウムの代わりに炭酸カルシウム(ブリリアント1500)(白石カルシウム(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にしてパウダーを作製し、溶融性を測定した。溶融性の測定結果を表1に示す。
(比較例3)
酸化セリウムの代わりに酸化チタン(FTR700)(堺化学工業(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にしてパウダーを作製し、溶融性を測定した。溶融性の測定結果を表1に示す。
(比較例4)
酸化セリウムの代わりに酸化亜鉛(NANOFINE)(堺化学工業(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にしてパウダーを作製し、溶融性を測定した。溶融性の測定結果を表1に示す。
さらに、各種測定方法による、フィラーの粒子径を示す。
SC−4060:50L×10Φnm(電子顕微鏡観察)日本電工(株)のカタログより
S−3018−02:1.5μm(レーザー法)日本電工(株)のカタログより
ブリリアント1500:0.20μm(BET比表面積換算値)白石工業のカタログより
FTR700:0.2μm(電子顕微鏡観察)堺化学工業のデータより
NANOFINE:0.02μm(BET比表面積換算値)堺化学工業のデータより
Figure 2008285560
Figure 2008285560
以上のことから、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、耐候性(耐光性)、透明性、熱溶融性全てに優れていることがわかる。

Claims (11)

  1. メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上の反応性官能基(C)を有するアクリル系重合体(B)と、酸化セリウム粒子(D)からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物
  2. アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対し、酸化セリウム粒子(D)を0.01から20重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 酸無水物基および/またはカルボキシル基が、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に存在し、酸無水物基が一般式(1):
    Figure 2008285560
    (式中、R1は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. (A)成分であるアクリル系ブロック共重合体が、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)10〜60重量%と、アクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)90〜40重量%とからなることを特徴とする請求項1から3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体50〜0重量%とからなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. (A)成分であるアクリル系ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、30,000〜200,000であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 酸化セリウム粒子(D)が酸化セリウムを含む平均粒子径50μm未満の微粒子であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. 酸化セリウム粒子(D)が、表面処理により被覆されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含むことを特徴とするパウダースラッシュ成形に用いられる組成物。
  10. 請求項1から8のいずれかに記載の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とするパウダースラッシュ成形品。
  11. 請求項1から8のいずれかに記載の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP4716149B2 (ja) * 2008-12-25 2011-07-06 Dic株式会社 ポリイミド樹脂、硬化性ポリイミド樹脂組成物及び硬化物
JP2017209850A (ja) * 2016-05-25 2017-11-30 日産自動車株式会社 繊維強化樹脂成形品および繊維強化樹脂成形品の製造方法

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