JPWO2009063719A1 - 熱可塑性エラストマー組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなり、ブロック(a)およびブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに、カルボキシル基、水酸基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に1.1個以上の反応性官能基(c)を有するアクリル系重合体(B)と、無機亜鉛化合物(C)とからなる熱可塑性エラストマー組成物を使用する。

Description

本発明は、成形時の溶融流動性(成形性)に優れ、得られる成形体が耐フォギング性、低臭気性、耐熱性および耐摩耗性のバランスに優れる熱可塑性エラストマー組成物、およびその組成物からなるパウダースラッシュ材料に関するものである。また、その組成物を用いた成形品に関するものである。
アクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとしての特性を有しており、その耐油性、耐候性、柔軟性(触感の良さ)などに優れるという特徴を生かす用途して、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックスなどの自動車内装部材、表皮材への展開が期待されている材料である(特許文献1)。
上記自動車内装部材、表皮材の成形方法としては、ソフトな触感の製品が得られること、皮シボやステッチを製品に設けることができること、設計自由度が大きいこと、意匠性が良好な製品が得られることなどから、パウダースラッシュ成形法が広く用いられている。
ここで、パウダースラッシュ成形法とは、原料となる粉末樹脂を加熱した金型に流し込み、溶融成形させ、ある一定時間経過後に冷却固化した成形体を取り出す方法である(特許文献2)。したがって、パウダースラッシュ成形法に用いられる粉末樹脂は、金型の細部まで充填する必要性から良好な粉体特性と、成形温度で容易に溶融し所望の形状となる溶融流動性(成形性)が求められる。
また、上記自動車内装部材、表皮材に求められる物性としては、機械特性、耐擦り傷性、耐熱性、耐候性、歪回復性、接触可能性のある薬剤に対する耐性、表皮と基材とを直接接着させる場合には表皮と基材との接着性、表皮と基材との間に緩衝材を設ける場合には表皮と緩衝材との接着性などがある。
上記パウダースラッシュ成形法に必要とされる特性、自動車内装部材、表皮材に必要とされる特性を兼ね備えた材料として、アクリル系ブロック共重合体からなる樹脂粉体が提案されている(特許文献3)。この材料は、アクリル系ブロック共重合体樹脂組成物に触媒と架橋剤を含有させ、成形時にブロック体の官能基と、架橋剤とを反応させて架橋を導入することで、成形体の耐熱性を著しく向上させるものである。
上記材料は、自動車内装部材向けパウダースラッシュ材料として優れている材料であるが、近年、富に要求が厳しくなった、自動車の安全性に関わる耐フォギング性、車内の快適性に関わる低臭気性(特許文献4)、については改善の余地を残すものであった。
なお、上記耐フォギング性とは、車内の温度上昇、太陽光の照射などにより、内装部材からの揮発成分が蒸発または昇華し窓ガラスに付着することで、窓ガラスが曇る(フォギング)ことに対する耐性をいい、揮発成分による汚染のみならず、汚染により空気中のごみや埃が付着しやすくなるため、運転者の視界を妨げる原因となる可能性があり、運転の安全性に関わる重要な特性である。
特開2006−249173号公報 特開平06−182789号公報 特開2007−182482号公報 特開2007−70487号公報
本発明の目的は、成形時の溶融流動性(成形性)に優れ、成形体が耐フォギング性、低臭気性、耐熱性および耐摩耗性のバランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物、およびその成形品を得ることである。
上記課題を解決するため、本発明者は、耐フォギング性、低臭気性を悪化させる原因として、従来から触媒として使用されていた有機亜鉛化合物、可塑剤として使用されていたポリエーテルエステル化合物を特定し、これに代わる材料について鋭意検討を行った。その結果、従来充填材としてや、硫黄加硫の分野等で架橋促進剤(触媒)としての使用が知られていたが、架橋促進助剤を配合していない単独系では架橋促進能が劣ること、重合溶剤に不溶でその取扱いに困難性が伴うこと、樹脂への分散不良が起こりやすいこと等から、これまで単独の触媒として使用が困難であった所定の無機亜鉛化合物を選定することで、成形時の溶融流動性(成形性)、得られる成形体の耐熱性および耐摩耗性を損なうことなく、大幅でしかも安価に耐フォギング性と低臭気性が改善されること、従来の有機亜鉛化合物に比べて触媒使用量を大幅に低減できること、所定の無機亜鉛化合物とトリメリット酸エステル系化合物および/またはピロメリット酸エステル系化合物からなる可塑剤を組み合わせることで耐フォギング性と低臭気性が更に改善されること等を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、メタアクリル系単量体を主成分とし、ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなり、ブロック(a)およびブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに、カルボキシル基、水酸基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000であるアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に1.1個以上の反応性官能基(c)を有するアクリル系重合体(B)と、無機亜鉛化合物(C)からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対し、無機亜鉛化合物(C)を0.01〜3重量部含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、無機亜鉛化合物(C)が、酸化亜鉛および/または炭酸亜鉛であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、トリメリット酸エステル系化合物および/またはピロメリット酸エステル系化合物からなる可塑剤(D)をさらに含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対し、上記の可塑剤(D)を10〜20重量部含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、反応性官能基(c)が、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基よりなる群より選ばれる少なくとも1種である熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、反応性官能基(c)が、エポキシ基である熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.8以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、上記の熱可塑性エラストマー組成物を含むことを特徴とするパウダースラッシュ成形用粉体に関する。
好ましい実施態様としては、上記の熱可塑性エラストマー組成物を含むことを特徴とする成形体に関する。
また本発明は、上記の粉体をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成形時の溶融流動性に優れるため、パウダースラッシュ成形に好適に使用できる。また、得られる成形体は、耐フォギング性、低臭気性、耐熱性、耐摩耗性に優れるため、自動車内装材に好適に使用できる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明は、成形時の溶融流動性(成形性)に優れ、成形体が、耐フォギング性、低臭気性、耐熱性、耐摩耗性のバランスに優れるアクリル系ブロック共重合体組成物とその成形体であって、メタアクリル系単量体を主成分とし、ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなり、ブロック(a)およびブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに、カルボキシル基、水酸基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000であるアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に1.1個以上の反応性官能基(c)を有するアクリル系重合体(B)と、無機亜鉛化合物(C)からなることを特徴とする。
ここで、アクリル系ブロック共重合体(A)中のカルボキシル基、水酸基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基と、アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(c)は、通常成形時に反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化、もしくは架橋する。その結果、得られる成形体は耐熱性が向上し、自動車内装材等に好適に使用されるものとなる。
なお、本発明ではカルボキシル基から誘導される酸無水物を酸無水物基と定義し、具体的には一般式(1)で表される基をいう。
一般式(1):
Figure 2009063719
(式中、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を表わす。nは0〜3の整数、mは0または1の整数を表わす。)
また、無機亜鉛化合物(C)はアクリル系ブロック共重合体(A)中のカルボキシル基、水酸基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基と、アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(c)との架橋反応を促進する役割を担う。
なお、本発明において、溶融流動性(成形性)に優れるとは、成形温度で速やかに溶融する熱溶融性と、パウダースラッシュ成形のような無加圧条件下でも所定形状の皮膜を形成できる低い溶融粘度を両立する特性をいう。
また、耐フォギング性とは、成形体からの揮発物質が窓ガラスなどを汚染しにくい性質のことである。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)は、ハードセグメントであるメタアクリル系重合体ブロック(a)と、ソフトセグメントであるアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)により成形時の形状保持性を、アクリル系重合体ブロック(b)により、エラストマーとしての弾性及び成形時の溶融性を付与する。このような目的のため、アクリル系ブロック共重合体(A)において、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合を15〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)の割合を85〜50重量%と設定することが必要である。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が15重量%より小さく、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が85重量%より大きいと、成形時に形状が保持されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が50重量%より大きく、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が50重量%より小さいと、エラストマーとしての弾性および成形時の溶融性が低下することとなる。
また、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと硬度が小さくなり、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと、硬度が高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、エラストマー組成物の必要とされる硬度を考慮して、上記範囲内で適宜設定することが好ましい。さらに、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと、粘度が低く、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと、粘度が高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、必要とする加工特性も考慮して、上記範囲内で適宜設定することが好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000となるように調整することが必要である。数平均分子量が30,000より小さいと、エラストマーとして十分な機械特性を発現出来ない場合があり、数平均分子量が200,000より大きいと、加工特性が低下する場合がある。特に、パウダースラッシュ成形を行う場合は、無加圧下でも樹脂が流動する必要があるため、数平均分子量の上限である200,000は重要である。
また、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとアクリル系ブロック共重合体(A)の均一性が悪化する場合がある。
アクリル系ブロック共重合体(A)は、線状ブロック共重合体であっても、分岐状(星状)ブロック共重合体であっても、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択されるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
なお、線状ブロック共重合体は、いずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体からなることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や組成物の物性の点から、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgbとすると、機械強度やゴム弾性発現等の点で下式の関係を満たすことが好ましい。
Tga>Tgb
なお、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%からなることが好ましい。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である耐候性などが損なわれる場合がある。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有メタアクリル酸エステルなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン基を有する不飽和化合物などをあげることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有アクリル酸エステルなどをあげることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
ハロゲン基を有する不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
ビニル系単量体として挙げられたこれらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、後述するメタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度や、アクリル系ブロック体(b)との相溶性などを考慮して適宜選択される。
メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、50〜130℃となるように調整することが必要である。これにより、良好な溶融流動性を示す組成物が得られることとなる。パウダースラッシュ成形では、樹脂が無加圧下でも流動する必要があるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)の凝集力やガラス転移温度Tgaが高くなると、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなる傾向がある。一方、ガラス転移温度Tgaが低すぎる場合には、樹脂組成物が常温でも流動性を有し、粉体としての性状を保持することが出来なくなるため、上記範囲内でガラス転移温度は適切に設定することが好ましい。
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸エステルを主成分とする。アクリル系重合体ブロック(b)は、上記アクリル酸エステル50〜100重量%と、これと共重合可能な上記以外のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体0〜50重量%とからなるのが好ましい。
アクリル酸−n−ブチルを用いた場合、本発明により得られる組成物から作製された成形体は、良好なゴム弾性および低温特性を示すようになる。アクリル酸エチルを用いた場合、良好な耐油性および引張強度等の機械特性を示すようになる。また、アクリル酸−2−メトキシエチルを用いた場合、良好な低温特性と耐油性を示し、また、樹脂の表面タック性が改善されることとなる。これらは、要求特性に応じて単独で又は2種以上を組み合わせて使用する。なお、これらのアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチル以外のアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン基を有する不飽和化合物、ケイ素基を有する不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられる単量体成分として前述したものと同様のものをあげることができる。これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するとよい。
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、組成物のゴム弾性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、0℃以下であるのがより好ましく、−20℃以下であるのがさらに好ましい。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より高いと、柔軟性やゴム弾性が発現されにくくなる。
<カルボキシル基、水酸基、および酸無水物基>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)は分子中に必須成分としてカルボキシル基、水酸基、および酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基を含む。なお、本発明ではカルボキシル基から誘導される酸無水物を酸無水物基とする。
メタアクリル系重合体ブロック(a)および/またはアクリル系重合体ブロック(b)に存在するカルボキシル基、水酸基、または酸無水物基は、通常、ブロック共重合体(A)が高分子量化または架橋されるための反応点または架橋点として作用する。それら官能基は、適当な保護基で保護した形、またはそれら官能基の前駆体となる形でブロック共重合体に導入し、その後に従来公知の化学反応でそれら官能基を生成させることもできる。
カルボキシル基、水酸基、または酸無水物基の含有数は、それら官能基の凝集力、反応性、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度によって変化させ、その数は必要に応じて適宜設定する必要があるが、好ましくはブロック共重合体1分子あたり1.0個以上、より好ましくは2.0個以上とする。これは、1.0個より少なくなると、ブロック共重合体の高分子量化や架橋による耐熱性向上が不十分となる傾向があるためである。
ただし、カルボキシル基、水酸基、または酸無水物基を導入することによりメタアクリル系重合体ブロック(a)やアクリル系重合体ブロック(b)の凝集力やガラス転移温度が上昇すると、柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化する傾向にある。このため、それら官能基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化しない範囲で導入するのが好ましい。具体的には、それら官能基をアクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合は、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度が25℃以下になるような範囲で導入するのが好ましく、0℃以下になるように導入するのがより好ましく、−20℃以下になるように導入するのが更に好ましい。それら官能基をアクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合は、良好な溶融流動性を確保するために、ガラス転移温度が130℃以下になるように調整することが好ましい。
以下に、酸無水物基およびカルボキシル基、水酸基のそれぞれについて更に詳細に説明する。
<酸無水物基>
組成物中に活性プロトンを有する化合物を含む場合、酸無水物基はエポキシ基等の反応性官能基(c)と容易に反応する。酸無水物基の導入位置は、特に限定されるものではなく、酸無水物基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)の主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良いが、導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。酸無水物基はカルボキシル基の無水物基であり、具体的には一般式(1)で表される基をいう。
一般式(1):
Figure 2009063719
(式中、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を表わす。nは0〜3の整数、mは0または1の整数を表わす。)
一般式(1)中のnは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。nが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
酸無水物基の導入方法としては、酸無水物基の前駆体の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに環化させることが好ましい。特に、一般式(2):
Figure 2009063719
(式中、Rは水素またはメチル基を表わす。Rはそれぞれ独立に水素、メチル基またはフェニル基を表わす。但し、3つのRのうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれる。)で表される単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を溶融混練して、環化導入することが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)への一般式(2)で表される単位の導入は、一般式(2)に由来するアクリル酸エステル、またはメタアクリル酸エステル単量体を共重合することによって行うことができる。単量体としては、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどがあげられるが、これらに限定するものではない。これらのなかでも、入手性や重合容易性、酸無水物基生成容易性などの点から(メタ)アクリル酸−t−ブチルが好ましい。なお、本願において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタアクリル酸を意味する。
酸無水物基の形成は、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を高温下で加熱することにより行うのが好ましく、180〜300℃で加熱することが好ましい。180℃より低いと酸無水物基の生成が不十分となる傾向があり、300℃より高くなると、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体自体が分解することがある。
<カルボキシル基>
カルボキシル基は、エポキシ基等の反応性官能基(c)と容易に反応する。カルボキシル基の導入位置は、特に限定されるものではなく、カルボキシル基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)の主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良いが、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)への導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒を失活させることがない場合は、重合により直接導入することにより行うのが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させるおそれがある場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法により行うのが好ましい。
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法では、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、その後に従来公知の化学反応で官能基を生成させることができる。
カルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)の合成方法としては、たとえば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法(特開平10−298248号公報、特開2001−234146号公報)や、一般式(2):
Figure 2009063719
(式中、Rは水素またはメチル基を表わす。Rはそれぞれ独立に水素、メチル基またはフェニル基を表わす。但し、3つのRのうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれる。)で表わされる単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を、溶融混練して導入する方法がある。一般式(2)で示される単位は、高温下でエステルユニットが分解してカルボキシル基を生成する。これを利用して、一般式(2)で示される単位の種類や含有量に応じて、加熱温度や時間を適宜調整することでカルボキシル基を導入することができる。
また、上述の酸無水物基を加水分解することにより、カルボキシル基を導入することも可能である。
<水酸基>
水酸基は、エポキシ基等の反応性官能基(c)と容易に反応する。水酸基の導入位置は、特に限定されるものではなく、水酸基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)の主鎖中に導入されていても良いし、側鎖に導入されていても良い。
水酸基の導入は、水産基を有する単量体が重合条件下で触媒を失活させることがない場合は、重合により直接導入することにより行うのが好ましく、水酸基を有する単量体が重合時に触媒を失活させるおそれがある場合には、官能基変換により水酸基を導入する方法により行うのが好ましい。
官能基変換により水酸基を導入する方法としては、ブロック共重合体(A)を重合した後に、ジオール成分にてエステル化反応やエステル交換反応を利用して導入する方法などがある。ただし、これに限られない。
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法は、とくに限定するものではないが、開始剤を用いた制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法や連鎖移動剤を用いるラジカル重合法、近年開発されたリビングラジカル重合法があげられる。なかでも、アクリル系ブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から、リビングラジカル重合法により製造するのが好ましい。
リビングラジカル重合法は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合法である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。なお、本発明での定義も後者に相当する。
リビングラジカル重合法としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、第116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから国際公開第2004/13192号パンフレットなどに記載された原子移動ラジカル重合法を用いる方法が好ましい。
<アクリル系重合体(B)>
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系重合体(B)は、一分子中に1.1個以上の反応性官能基(c)を有することが必要である。アクリル系重合体(B)は、組成物の成形時に可塑剤として成形流動性を向上させると同時に、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基、水酸基と反応性官能基(c)によって反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化あるいは架橋させる役割を担う。なお、ここでいう反応性官能基(c)の個数とは、アクリル系重合体(B)1分子中に存在する反応性官能基(c)の平均の個数を表す。
アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(c)の数は、1.1個以上が必要であり、好ましくは1.5個以上、更に好ましくは2.0個以上である。その数は、反応性官能基(c)の反応性、反応性官能基(c)の含有される部位および様式、アクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基、水酸基の含有される数や部位および様式に応じて上記範囲内で適宜変化させる。反応性官能基(c)の含有数が1.1個より少なくなると、ブロック共重合体の高分子量化反応剤あるいは架橋剤としての効果が低くなり、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させる効果が不十分となる場合がある。
アクリル系重合体(B)は、1種若しくは2種以上のアクリル系単量体を重合させるか、又は1種若しくは2種以上のアクリル系単量体とアクリル系単量体以外の単量体とを重合させることにより得られたものであることが好ましい。
アクリル系単量体としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)の項において記載したアクリル酸エステルやメタアクリル酸エステルが挙げられる。このうち、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルのいずれか又はこれらの2種以上を組み合わせて用いるのが、入手性の点から好ましい。
アクリル系単量体以外の単量体としては、アクリル系単量体と共重合可能な単量体である限りにおいては特に制限はなく、例えば酢酸ビニル、スチレン等を用いることができる。
なお、アクリル系重合体(B)を構成する全単量体成分に対するアクリロイル基を有する単量体成分の割合は、70重量%以上であることが好ましい。その割合が70重量%未満の場合、耐候性が低下し、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性も低下する傾向にある。また、その成形物に変色が生じやすくなる。
アクリル系重合体(B)の分子量は、特に制限はないが、重量平均分子量で30,000以下の低分子量のものが好ましく、500〜30,000のものがさらに好ましく、500〜10,000のものが特に好ましい。重量平均分子量が500未満の場合、成形体にべたつきが生じる傾向があり、一方、重量平均分子量が30,000を超える場合、成形物の可塑化が不十分になりやすい。
アクリル系重合体(B)の粘度は、25℃においてコーン・プレート型の回転粘度計(E型粘度計)で測定した時、35,000mPa・s以下であるのが好ましく、10,000mPa・s以下であるのがより好ましく、5,000mPa・s以下であるのが特に好ましい。粘度が35,000mPa・sより高いと、組成物の可塑化効果が低下する傾向にある。好ましい粘度の下限は特にないが、アクリル系重合体の通常の粘度は10mPa・s以上である。
アクリル系重合体(B)のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した場合に100℃以下であるのが好ましく、25℃以下であるのがより好ましく、0℃以下であるのが更に好ましく、−30℃以下であるのが特に好ましい。ガラス転移温度Tgが100℃を超えると、可塑剤として成形性を向上させる効果が不十分になる傾向があり、また、得られる成形体の柔軟性が低下する傾向にある。
アクリル系重合体(B)は、従来公知の方法で重合させることにより得られる。重合方法は必要に応じて適宜選択すればよく、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、リビングアニオン重合法や連鎖移動剤を用いる重合およびリビングラジカル重合法等の制御重合法等の方法により行うことができるが、耐候性や耐熱性が良好で比較的低分子量かつ分子量分布の小さい重合体が得られる制御重合法が好ましく、以下に記載の高温連続重合法を用いるのがコスト面などの点でより好ましい。
アクリル系重合体(B)は、180〜350℃の温度での重合反応により得るのが好ましい。この重合温度では、重合開始剤や連鎖移動剤を使用することなく、比較的低分子量のアクリル系重合体が得られる。このため、そのアクリル系重合体は優れた可塑剤となり、耐候性も良好である。具体的には、特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報及び国際公開第01/083619号パンフレットに記載された高温連続重合法、すなわち、所定の温度及び圧力に設定された反応器内に上記の単量体の混合物を一定の供給速度で連続して供給し、その供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が例示される。
<反応性官能基(c)>
反応性官能基(c)としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を用いるのが望ましい。これらの官能基のうち、アクリル系ブロック共重合体(A)に含まれる酸無水物基やカルボキシル基、水酸基との反応性およびアクリル系重合体(B)への官能基の導入のしやすさから、エポキシ基がより好ましい。
アクリル系重合体(B)への反応性官能基(c)の導入は、例えば、アクリル系重合体を構成する単量体と共重合可能な反応性官能基(c)を有するビニル系単量体等を共重合することにより行うことが出来る。
反応性官能基(c)を有するアクリル系重合体(B)としては、具体的には東亞合成(株)のARUFON(登録商標)XG4000、ARUFON UG4000、ARUFON XG4010、ARUFON UG4010、ARUFON UG4012、ARUFON XD945、ARUFON XD950、ARUFON UG4030、ARUFON UG4070などが好適に使用できる。これらは、オールアクリル、アクリレート/スチレン等のアクリル系重合体であって、エポキシ基を1分子中に1.1個以上含む重合体である。
<無機亜鉛化合物(C)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、無機亜鉛化合物(C)を必須成分とする。
本発明で用いる無機亜鉛化合物(C)は、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基、水酸基と、アクリル系重合体(B)中の反応性官能基(c)との架橋反応を促進する触媒としての役割を担う。なお、架橋構造を導入することで得られる成形体の耐熱性が向上し、自動車内装部材など耐熱性が必要とされる用途に好適に使用することが可能となる。架橋反応は、脂肪酸亜鉛などの有機物と金属からなる化合物などでも促進されるが、化合物中の有機成分が成形体から揮発して耐フォギング性・低臭気性を悪化させることがあるため、本発明では無機亜鉛化合物(C)を触媒として使用する。
本発明でいう無機亜鉛化合物(C)とは、炭素原子を含まない亜鉛化合物と、炭酸亜鉛、炭酸水素亜鉛、チオシアン酸亜鉛、シアン化亜鉛からなる群を言い。蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛などのカルボン酸亜鉛や、上記以外の炭素原子を含む亜鉛化合物は除外される。
無機亜鉛化合物(C)としては、特に限定されるものではないが、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、水酸化亜鉛、亜燐酸亜鉛、燐酸亜鉛、二燐酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、過塩素酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、シアン化亜鉛、酸化鉄亜鉛、酸化モリブデン亜鉛、チタン酸亜鉛、テルル化亜鉛、アンチモン化亜鉛などが例示される。
本発明で用いる無機亜鉛化合物(C)は単独、または複数種を組み合わせて用いられても良い。
この中でも、反応性や入手性の点から酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましく、具体例としては、微細酸化亜鉛、酸化亜鉛1種(以上、酸化亜鉛、堺化学工業(株)製)、炭酸亜鉛、(以上、炭酸亜鉛、正同化学工業(株)製)などがあげられる。
無機亜鉛化合物(C)の熱可塑性エラストマー組成物に対する添加量は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.01重量部から3重量部であることが好ましい。添加量が3重量部より多いと、成形時の溶融流動性が低下したり、常温の組成物中で架橋反応が促進されて貯蔵安定性が低下したりする場合があり、0.01重量部より少ないと充分な反応促進能が得られない場合がある。
<トリメリット酸エステル系化合物および/またはピロメリット酸エステル系化合物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、溶融性の向上および低温特性改善を目的として、可塑剤(D)を含むことが好ましい。
可塑剤(D)の添加量はアクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、10〜20重量部の範囲で使用するのが好ましい。10重量部より少ない場合は、熱可塑性エラストマー組成物の溶融性及び低温特性が不十分な場合があり、20重量部より多い場合は組成物の耐熱性や機械物性が不足する場合がある。
可塑剤(D)の種類は特に限定されないが、耐フォギング性と低臭気性の観点から、トリメリット酸エステル系化合物、ピロメリット酸エステル系化合物が好ましい。
トリメリット酸エステル系化合物としては、特に限定されず、例えば、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−n−アルキル(C6 〜C10)エステル、トリメリット酸トリ−n−アルキル(C8 〜C10)エステル、トリメリット酸トリイソデシル等が例示される。
また、ピロメリット酸エステル系化合物としては、特に限定されず、例えば、ピロメリット酸テトラヘキシル、ピロメリット酸テトラオクチル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキル(C7 〜C9 )エステル等が例示される。
また、これらエステル系可塑剤(D)のアルコール成分は単独、または複数種を組み合わせて用いられても良い。
上記、トリメリット酸エステル系化合物としては、より具体的に、アデカサイザーC−810PS、C−880、C−8、C−8NB((株)ADEKA製)などが挙げられる。また、ピロメリット酸エステル系化合物としては、より具体的に、アデカサイザーUL−80、UL−100((株)ADEKA製)などが挙げられる。
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形を行う際は溶融粘度が低く、溶融流動性(成形性)に優れる一方、加熱時にアクリル系熱可塑性エラストマー組成物のブロック共重合体(A)中の酸無水物基やカルボキシル基、水酸基と、アクリル系重合体(B)中の官能基(c)との架橋反応が、無機亜鉛化合物(C)を用いることで促進される。
熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、溶融性の向上および低温特性改善を目的として、上記トリメリット酸エステル系化合物、ピロメリット酸エステル系化合物以外の可塑剤(D)を含んでいてもよい。これらの可塑剤(D)としては、具体的にはフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸誘導体;ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル等の安息香酸誘導体、イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;N−アルキルベンゼンスルホンアミド等のスルホン酸誘導体;トリメチルフォスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルフォスフェート等のリン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。
さらに、得られる成形体の表面の摩擦を下げるために、熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、各種滑剤を配合してもよい。ただし、一部の滑剤は大量に用いると、揮発して耐フォギング性を悪化させる場合があるため、使用量は問題の無い範囲に抑え、本発明の効果を阻害しないようにする必要がある場合がある。滑剤としては、エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルが好ましいものとして挙げられるが、特に限定はなく、さらに、モンタン酸系ワックス、ステアリン酸などの有機脂肪酸、ステアリン酸アミドなどの有機酸アミドが例示できる。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。なお、ここでいうポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤には、それぞれ、酸化ポリエチレン系滑剤、酸化ポリプロピレン系滑剤が含まれる。
このような滑剤としては、さらに具体的には、牛脂45硬化油(融点45℃;日本油脂(株)製、以下同じ)、牛脂51硬化油(融点51℃)、牛脂54硬化油(融点54℃)、牛脂極度硬化油(融点60℃)、LicowaxE(滴点79〜85℃;クラリアントジャパン(株)製、滴点は同社カタログより引用、以下同じ)などを挙げることが出来る。
熱可塑性エラストマー組成物には、熱可塑性エラストマー組成物及び得られる成形体の諸物性の調整を目的として、安定剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、離型剤、抗菌抗カビ剤などをさらに添加してもよい。このうち、安定剤としては、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。充填材を配合してもよい。充填材としては、特に限定されないが、機械特性の改善や補強効果、コスト面等から、無機充填材がより好ましく、酸化チタン、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、タルクがより好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、バッチ式混錬装置や連続混錬装置を用いることにより得ることができる。
バッチ式混練装置としては、例えば、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーを使用できる。また、連続混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いることができる。さらに、機械的に混合し、ペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。
熱可塑性エラストマー組成物を製造するための混練時の温度は、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが反応することにより、成形性が低下することのない温度が好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが反応して成形性が悪化する温度は、酸無水物基やカルボキシル基、水酸基、官能基(c)の種類、導入量、共存する無機亜鉛化合物(C)の種類、導入量、アクリル系ブロック共重合体(A)やアクリル系重合体(B)の組成、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の相溶性などによって変化する。このため、上記のような要素に応じて、混練温度を適宜設定する必要がある。一般的には、組成物を得た後、その組成物の成形を可能とするため、混練時の温度は200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。混練時の温度が200℃を超えると、混練中に高分子量化や架橋反応が起こり、成形性が低下する傾向にある。ただし、一部に高分子量化や架橋が起こるような条件であっても、成形が可能な程度の温度であればよい。
この熱可塑性エラストマー組成物を粉砕して粉体を得る場合、その方法としては、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル、遠心ミル等の衝撃型微粉砕機、固定刃と回転刃による剪断作用を用いた粉砕機等を用いる方法がある。さらに、粉砕は常温で行うこともできるが、液体窒素等の冷媒や冷却設備を使用して機械粉砕することもできる。
熱可塑性エラストマー組成物を粉砕して粉体を得る際は、粉砕前の組成物ペレット等の表面に、互着防止用の各種粉末を粉砕助剤として付着させてもよい。粉砕助剤としては、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、シリカ、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、金属石鹸等を用いることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、その量は、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、1〜40重量部程度とするとよい。1重量部未満では、効果が十分ではなく、また40重量部より多いと、得られる組成物粉末の機械特性に悪影響を与える恐れがある。用いる粉砕助剤の粒子径に関しては特に制限されるものではないが、粒子径が大きすぎる場合には、互着防止能力が低く、微細な場合はハンドリング性が低下することとなるため、平均粒子径0.5〜15μm(光分散法により測定)のものを用いるのが好ましい。なお、粉砕助剤は、粉砕により得られる熱可塑性エラストマー組成物粉体に大部分が残留するものの、一部は粉砕工程で脱離し、粉砕機内で分離する。
熱可塑性エラストマー組成物から粉体を得る際は、必ずしも粉砕工程を経なくてもよい。例えば、熱可塑性エラストマー組成物を連続式押し出し機で得る際、特殊なダイスを取り付けることで、組成物粉末をマイクロペレットとして直接得ることができる。また、アクリル系ブロック共重合体(A)を有機溶剤中に溶解させたアクリル系ブロック共重合体溶液へアクリル系重合体(B)を溶解させた後に、水と混合して撹拌し、所定の大きさのアクリル系ブロック共重合体溶液からなる液滴を形成させ、そのまま加熱することで有機溶剤を蒸発させ、適当な粒度分布を持った粉体を得ることができる。この時、アクリル系ブロック共重合体溶液に、予め上記の架橋促進用の添加剤や触媒、充填材、滑材、安定剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤等を溶解・分散させておいてもよい。また、所定の大きさの液滴を安定して得るために、乳化剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体、メチルセルロースなどを添加してもよい。
これらの結果得られた粉体は、ふるい等を用いて粒径1〜1,000μmのものだけを分取するのが好ましい。1μmより粒径の小さいものを含んだ粉体は、粉体同士の凝集を促進させる原因となり、ハンドリング性が低下すると共に粉体流動性が悪化する。このため、パウダースラッシュ成形に用いたときに、金型の端部まで粉体が十分に届かず、成形体の意匠性が損なわれることとなる。また、1,000μmより大きな粒径のものを含んだ粉体は、パウダースラッシュ成形に用いたときに、粒径の大きな粉体が十分に溶融しないため、成形体の意匠性が損なわれることとなる。
熱可塑性エラストマー組成物をパウダースラッシュ成形に用いる場合は、成形体の色調や、スラッシュ成形において重要な金型離型性および粉体特性を改良するために、上記方法により得られた粉体に、必要に応じて、通常一般的に用いられる顔料、離型剤、ブロッキング防止用粉体などを混合・分散することで粉体特性を改良することが可能である。
本発明の組成物の成形方法としては、パウダースラッシュ成形が例示されるが、それ以外にも、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などに適用可能である。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中に記載した分子量は、以下の方法に従い行った。
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex(登録商標)K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
<成形性試験>
成形性は29.4cm×20.4cmのシボ付平板(スラッシュ成形用金型)とパウダーボックスからなる箱型スラッシュ成形機を用いてスラッシュ成形を行うことにより評価した。条件は、熱可塑性エラストマー組成物粉体を2Kg投入し、280℃に加熱したスラッシュ成形用金型をスラッシュ成形機にセットした後、金型が240℃となった時点で、反転させた後、6秒間保持し、その後、反転させた。60秒間経過した時点で金型を冷却水で40秒冷却した。さらに空冷を行い、シート温度が30℃まで達した時点で、シートを金型から剥がし、成形シート(厚み1.0mm)を得た。得られた成形体シートの成形性は以下のように評価した。
成形体にピンホールや欠陥が認められない;成形性 ○
成形体にピンホールや欠陥が認められる ;成形性 ×
<熱プレス成形性試験>
塊状樹脂組成物を、皮シボ金属板を用い、設定温度200℃で8分間熱プレス((株)神藤金属工業所製圧縮成形機NSF−50)成形し、皮シボ模様が転写された成形体シート(厚み1.0mm)を得た。得られた成形体シートの成形性は以下のように評価した。
成形シートが平滑で、歪みが無い ;熱プレス成形性 ○
成形シートの一部に歪みがある ;熱プレス成形性 △
成形シートに厚みにむらや、穴がある;熱プレス成形性 ×
<耐熱性試験>
スラッシュ成形により、下記測定条件におけるシボ面の初期光沢度が1.0〜2.0のシートを作製した。得られたシートから5cm×5cmのサンプルを切り出し、130℃オーブンに24時間放置した。シボ面の光沢度変化を測定し、以下の基準で評価した。
使用機器:光沢計(日本電色工業(株)製、VG−2000)
入射角:60°
試験前後の光沢度変化が1未満のもの;○
試験前後の光沢度変化が1以上のもの;×
また、熱プレス成形により得られた初期光沢度2.0〜4.0のシートに関しては、同様の操作を行って、以下の基準で評価した。
試験前後の光沢度変化が15未満のもの;○
試験前後の光沢度変化が15以上のもの;×
<耐フォギング性試験>
成形により得られたシートから5cm×5cmのサンプルを切り出し、以下の方法にて試験し、以下の基準で評価した。
使用機器:光沢計(日本電色工業(株)製 VG−2000)
入射角:60°
黒色板:初期光沢度4.0
試験瓶:φ65×170mmの円筒形で内容量約500cm3のガラス製容器、瓶上部が内径40mm、外径50mmの平滑面でスリ構造のもの(第一理化(株)製)。
試験温度:100℃
試験時間:3時間
試験瓶底部にサンプルを2枚重ねて入れ、瓶を100℃に加熱されたオイルバスに浸けた。瓶上部に50mm×50mm厚さ4.5mmのガラス板を載せ、ガラスの上に100cm3の水が入ったφ70mm×40mmのアルミ製容器を載せてガラス板を冷却しながら、3時間試験した。試験終了後、ガラス板を1時間デシケータ内に放置して余分な水分を乾燥した。乾燥後、ガラス板裏面に黒色板を置いた状態でガラス表面の光沢度を測定した。
試験後の光沢度保持率が90%以上のもの ;◎
試験後の光沢度保持率が60%以上、90%未満のもの;○
試験後の光沢度保持率が60%未満のもの ;×
<臭気試験>
成形によって得られたシートを5cm×5cmに切り出し、ガラス瓶に投入して10時間常温で放置して臭気を抽出した。その後、以下の基準にて判定を行った。
臭気が感じられない、または弱い臭気が感じられる:◎
臭気が感じられる :○
強い臭気が感じられる :△
刺激臭が感じられる :×
<摩耗性評価試験>
成形により得られたシートから3cm×10cmのサンプルを切り出し、摩耗試験機にて、摩耗試験を行った。
使用機器:ヘイドン式摩耗試験機14DR(新東科学(株)製)
移動速度:6,000mm/分
移動長さ:5cm
移動回数:5往復
荷重重さ:1kg
摩耗ジグ:ASTM式ジグを、ジグがサンプルに対して常に平行になるように軸に固定した。ASTMジグの下側に、アルミニウム製、直径2.5cm、長さ1cmの円柱を半分に切断した半円柱を接着した。その上から、金巾3号の布を4重巻きにて取り付け、ASTMジグの止め具にて固定した。
試験を行い、目視で観察し、以下の基準で評価した。
正面から見て傷がよく分からないもの ;○
正面から見て若干でも傷が認められるもの;×
(製造例1)
<カルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体の合成>
アクリル系ブロック共重合体を得るために以下の操作を行った。耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅0.89重量部、アクリル酸−n−ブチル100重量部及びアクリル酸−t−ブチル4.46重量部を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤として2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.24重量部をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)9.18重量部に溶解させた溶液を仕込み、溶液温度を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。溶液温度が75℃に到達した時点で、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、サンプリング溶液のガスクロマトグラフィー分析によりアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチルの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計0.21重量部)添加した。
アクリル酸−n−ブチルの転化率が99.0%、アクリル酸−t−ブチルの転化率が99.1%の時点で、メタアクリル酸メチル63.76重量部、アクリル酸エチル10.38重量部、塩化銅0.61重量部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.11重量部及びトルエン(窒素バブリングしたもの)137.41重量部を加えて、メタクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてメタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチルを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計0.64重量部)添加した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.0%の時点でトルエン212.77重量部を加え、反応器を冷却して反応を終了させた。得られたアクリル系ブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは72,100、分子量分布Mw/Mnは1.48であった。
上記のアクリル系ブロック共重合体を含有する反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度を25重量%とした。この溶液100重量部にp−トルエンスルホン酸を0.41重量部加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。
反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、濾過助剤として昭和化学工業製ラヂオライト#3000を0.50重量部添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体含有溶液100重量部に対し、酸化防止剤としてイルガノックス1010を0.15重量部添加した後、反応機内を窒素置換し、耐圧反応機中で、150℃で4時間攪拌し、ポリマー中のt−ブチル基をカルボキシル基に変性した。カルボキシル基の生成は、13C−NMRにて確認した。30℃に冷却した反応液に固体塩基としてキョーワード500SH 1.75重量部を加えた後、反応機内を窒素置換して、2時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル系ブロック共重合体を含有する重合体溶液を得た。
この重合体溶液を80℃で真空乾燥することにより、アクリル系ブロック共重合体(以下、「重合体1」とする)を得た。なお、本製造例1で得られた重合体1のメタクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度を上記Fox式に従って計算したところ、101℃であった。
(製造例2)
<水酸基含有アクリル系ブロック共重合体の合成>
アクリル系ブロック共重合体を得るために以下の操作を行なった。5Lの耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅5.02g(35ミリモル)、アクリル酸−n−ブチル545g(4.25モル)およびアクリル酸−2−ヒドロキシエチル46g(395ミリモル)を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル7.0g(19ミリモル)をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)51gに溶解させた溶液を仕込み、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。内温が75℃に到達した時点で、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン0.61g(3ミリモル)を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液約0.2mLをサンプリングし、これをガスクロマトグラム分析することによりアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計1.2g)添加した。
アクリル酸−n−ブチルの転化率が98.8%の時点で、メタアクリル酸メチル360g(3.59モル)、アクリル酸エチル59g(0.59モル)、塩化銅3.46g(35ミリモル)、ペンタメチルジエチレントリアミン0.61g(3ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)775gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
アクリル系重合体ブロック重合時と同様にして、メタアクリル酸メチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチルを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてメタアクリル酸メチルの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタアクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計3.7g)添加した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.1%の時点でトルエン2000gを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
得られた反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度が25重量%になるように希釈した。この溶液に p−トルエンスルホン酸一水和物16.0gを加えて室温で3時間撹拌し、析出した固形分を濾過で除いた。
得られたポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学(株)製)を14.5g加えて室温でさらに1時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的の重合体2を得た。一分子当たりの水酸基数は平均20個である(仕込み量からの計算値)。得られた重合体2のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnは84880、分子量分布Mw/Mnは1.53であった。
(製造例3)
<乳化重合ラテックス(A−1)の合成>
水200部、アルカンスルホン酸ナトリウム0.16部、過硫酸カリウム0.25部を、撹拌基付反応器に仕込み、窒素置換後、70℃まで昇温した。これにメチルメタアクリレート95部、ブチルアクリレート5部、チオグリコール酸2エチルヘキシル0.65部の混合液を6時間かけて追加し、追加開始から2時間後にアルカンスルホン酸ナトリウム0.1893部を、4時間後に0.2007部を加えた。追加終了後、過硫酸カリウムを0.05部添加して、1時間の重合を行い、重合転化率99%、ガラス転移温度92℃、重量平均分子量64,000、固形分濃度33%の重合体ラテックス(A−1)を得た。
(製造例4)
<アクリル系ブロック共重合体組成物粉体の製造>
耐圧攪拌装置に純水200重量部及びポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名KH−17)0.7重量部(3%水溶液として23.3重量部)を仕込み、製造例1で得られた重合体溶液400重量部(固形分濃度25重量%)、エポキシ基を持つアクリル系重合体であるARUFON(登録商標)UG4010(東亞合成(株)製)10重量部、ポリエーテルエステル系可塑剤であるRS800K((株)ADEKA製)10重量部、エステル系滑剤である牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)0.1重量部、カーボンブラックを主成分とする黒色粉末顔料0.3重量部、酸化亜鉛微粒子である微細酸化亜鉛0.3重量部(堺化学工業(株)製)を添加した。撹拌翼として2段4枚傾斜パドルを用いて攪拌して、撹拌槽の底部より蒸気を導入した。撹拌槽上部に接続したコンデンサで溶剤ガス及び蒸気を凝縮し、系外で逐次溶剤及び水を回収した。発泡に注意しながら蒸気流量を加減し、100℃到達後5分後に蒸気を停止し、撹拌槽のジャケットを用いて冷却を行い、重合体粒子、水及び分散剤を含むスラリーを得た。得られた重合体粒子について標準ふるいでふるい分けし、それぞれの粒径範囲に属する画分の重量を個別に計量して、重量基準による平均値を求めた。得られた重合体粒子の平均粒子径は200μmであった。
このようにして得られた重合体粒子と水と分散剤を含むスラリーを1時間静置し、スラリー重量の72%相当分の上澄み液を取り除いた後、スラリー濃度が20重量%になるまで水を加え、撹拌器付反応器に仕込み、60℃に加熱した。製造例3の乳化重合法により製造した重合体ラテックス(A−1)を固形分基準で3.7重量部添加し、引き続き15%硫酸ナトリウム溶液固形分基準5.6重量部を5分間かけて連続的に添加した。添加終了から5分後、この分散液を85℃まで加熱し、5分間85℃で保持した後冷却して、ラテックスが重合体粒子の表面に付着した重合体スラリーを得た。このスラリーをバッチ式遠心濾過機で脱水し、バッチ式流動乾燥機で樹脂温度最大50℃の条件で乾燥し、水分が0.4%の重合体粉体を得た。
得られた重合体粉体100重量部をヘンシェル型ミキサー((株)カワタ製、スーパーミキサー SMV−20)に投入し、低速回転で攪拌しながら水酸基変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、X−22−4015)0.05重量部添加した後、高速回転で1分間混合し、この後、ポリメタクリル酸メチル微粒子((株)日本触媒製、MA1002)1重量部を添加して5分間混合して、粉体B−1を得た。
(製造例5)
製造例1で得られた重合体1;100重量部(30g)に対し、オールアクリルで、エポキシ基を1分子中に1.1個以上(概算値4個(カタログより))含有するアクリル系重合体であるARUFON UG4010(東亞合成(株)製)8重量部、トリメリット酸エステル系可塑剤であるアデカサイザーC−810PS((株)ADEKA製)12重量部、エステル系滑剤である牛脂極度硬化油(融点60℃:日本油脂(株)製)0.1重量部、カーボンブラックを主成分とする黒色粉末顔料0.3重量部、酸化亜鉛微粒子である微細酸化亜鉛0.3重量部(堺化学工業(株)製)の割合で、100℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 (株)東洋精機製作所製)を用いて100rpmで15分間、溶融混練し、塊状の樹脂組成物1を得た。
(製造例6)
製造例2で得られた重合体2;100重量部(30g)に対し、オールアクリルで、エポキシ基を1分子中に1.1個以上(概算値4個(カタログより))含有するアクリル系重合体であるARUFON UG4010(東亞合成(株)製)10重量部、カーボンブラックを主成分とする黒色粉末顔料0.1重量部、酸化亜鉛微粒子である微細酸化亜鉛3重量部(堺化学工業(株)製)の割合で、100℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 (株)東洋精機製作所製)を用いて100rpmで15分間、溶融混練し、塊状の樹脂組成物2を得た。
<成形性評価>
(実施例1)製造例4で得られた粉体B−1を用いて成形性試験を実施し、得られた成形体C−1を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)製造例4の酸化亜鉛の代わりに炭酸亜鉛(正同化学工業(株)製)を用いた以外は製造例4と同様の操作によって得られた粉体B−2を用いて成形性試験を実施し、得られた成形体C−2を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)製造例4のRS800Kの代わりにトリメリット酸エステル系可塑剤であるC−810PS((株)ADEKA製)を12重量部用い、UG4010を8重量部用いた以外は製造例4と同様の操作によって得られた粉体B−3を用いて成形性試験を実施し、得られた成形体C−3を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)製造例4の酸化亜鉛を添加しなかった以外は製造例4と同様の操作によって得られた粉体B−4を用いて成形性試験を実施し、得られた成形体C−6を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)製造例4の酸化亜鉛の代わりにラウリン酸亜鉛(日本油脂(株)製)を用いた以外は製造例4と同様の操作によって得られた粉体B−5を用いて成形性試験を実施し、得られた成形体C−7を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
<熱プレス成形性評価>
(実施例4)製造例5で得られた塊状樹脂組成物1を、熱プレス成形試験し、得られた成形体C−4を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)製造例6で得られた塊状樹脂組成物2を、熱プレス成形試験し、得られた成形体C−5を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)製造例5の酸化亜鉛の代わりに酢酸亜鉛(和光純薬工業(株)製)を用いた以外は製造例5と同様の操作によって得られた塊状樹脂組成物3を熱プレス成形試験し、得られた成形体C−8を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
(比較例4)製造例6の酸化亜鉛の代わりにラウリン酸亜鉛(日本油脂(株)製)を用いた以外は製造例6と同様の操作によって得られた塊状樹脂組成物4を熱プレス成形試験し、得られた成形体C−9を上記基準にて評価した。結果を表1に示す。
<耐フォギング性評価>
(実施例1)成形体C−1を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2)成形体C−2を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例3)成形体C−3を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)成形体C−4を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例5)成形体C−5を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例1)成形体C−6を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例2)成形体C−7を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例3)成形体C−8を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例4)成形体C−9を用いて上記方法にて耐フォギング性試験を実施した。結果を表1に示す。
<臭気評価>
(実施例1)成形体C−1を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2)成形体C−2を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例3)成形体C−3を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)成形体C−4を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例5)成形体C−5を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例1)成形体C−6を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例2)成形体C−7を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例3)成形体C−8を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例4)成形体C−9を用いて上記方法にて臭気試験を実施した。結果を表1に示す。
<耐熱性評価>
(実施例1)成形体C−1を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2)成形体C−2を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例3)成形体C−3を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)成形体C−4を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例5)成形体C−5を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例1)成形体C−6を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例2)成形体C−7を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例3)成形体C−8を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例4)成形体C−9を用いて上記方法にて耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
<耐磨耗性評価>
(実施例1)成形体C−1を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2)成形体C−2を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例3)成形体C−3を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)成形体C−4を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例1)成形体C−6を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例2)成形体C−7を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例3)成形体C−8を用いて上記方法にて耐磨耗性試験を実施した。結果を表1に示す。
Figure 2009063719
以上のことから、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、成形時の溶融流動性(成形性)に優れ、成形体が耐フォギング性、低臭気性、耐熱性および耐摩耗性のバランスに優れていることがわかる。
得られた成形体は、たとえば、表皮材料や、触感材料(人形などの玩具類などの材料)、外観材料(自動車のハンドル、グリップ、シフトノブ、電化製品でのスイッチ類などの材料)として好適に用いることができ、その他に、耐摩耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として用いることができる。形状としては、シート、平板、フィルム、小型成形品、大型成形品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。この中でも、自動車内装用表皮に好適に使用される。

Claims (12)

  1. メタアクリル系単量体を主成分とし、ガラス転移温度が50〜130℃であるメタアクリル系重合体ブロック(a)15〜50重量%と、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)85〜50重量%とからなり、ブロック(a)およびブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに、カルボキシル基、水酸基、および一般式(1)で表される酸無水物基
    一般式(1):
    Figure 2009063719
    (式中、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を表わす。nは0〜3の整数、mは0または1の整数を表わす。)からなる群より選択される少なくとも1種類の官能基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜200,000であるアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に1.1個以上の反応性官能基(c)を有するアクリル系重合体(B)と、無機亜鉛化合物(C)とからなる熱可塑性エラストマー組成物。
  2. アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対し、無機亜鉛化合物(C)を0.01〜3重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 無機亜鉛化合物(C)が、酸化亜鉛および/または炭酸亜鉛であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. トリメリット酸エステル系化合物および/またはピロメリット酸エステル系化合物からなる可塑剤(D)をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計100重量部に対し、可塑剤(D)を10〜20重量部含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 反応性官能基(c)が、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基よりなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 反応性官能基(c)が、エポキシ基である請求項1から6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.8以下である請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体である請求項1から8のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含むことを特徴とするパウダースラッシュ成形用粉体。
  11. 請求項1から9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体。
  12. 請求項10に記載の粉体をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮。
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