JP2006104419A - 熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐候性、耐薬品性、接着性、柔軟性、耐磨耗性、成形時の溶融流動性、耐熱性およびスクラッチ性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得る。
【解決手段】 所定のアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上のエポキシ基を有するアクリル系重合体(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物とする。アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、これらの重合体ブロックのうち少なくとも一方に酸無水物基および/またはカルボキシル基を有する。また、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−2−メトキシエチルとからなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、成形性、耐熱性、耐候性、耐薬品性、接着性、柔軟性、耐磨耗性、スクラッチ性に優れた熱可塑性エラストマー組成物に関する。また、パウダースラッシュ成形に好適な組成物およびその組成物を用いたパウダースラッシュ成形品に関する。
メタアクリル酸メチルなどをハードセグメント、アクリル酸ブチルなどをソフトセグメントに有するアクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとしての特性を有することが知られている。ブロック体を構成する成分を適宜選択することで、スチレン系ブロック体などの他の熱可塑性エラストマーに比べて極めて柔軟なエラストマーを与えることも可能である。特許文献1には、イニファーター法で製造したメタアクリルブロックとアクリルブロックを有するアクリル系ブロック共重合体の機械特性が開示されている。
また、アクリル系ブロック共重合体は、耐候性、耐熱性、耐久性、耐油性、耐磨耗性に優れるという特徴を有している。
このようなアクリル系ブロック共重合体の特性を活かした用途として、種々の表皮材、内装材、その他触感を生かして直接人手に触れる部材用途の材料があり、これらの用途における展開が期待されている。
これら表皮材などに必要な物性としては、上記機械特性(引張り強度や伸び等)、耐擦り傷性、耐熱性、歪回復性などに加えて、接触可能性のある薬剤に対する耐性がある。さらに、表皮と基材とを直接接着させる場合には、表皮と基材との接着性、表皮と基材との間に緩衝材を設ける場合には、表皮と緩衝材との接着性が挙げられる。
この表皮材の成形方法として、軟質の粉末材料を用いた、粉末成形法であるパウダースラッシュ成形法がある。この方法は、インストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮の成形に広く採用されている。これは、この成形法によれば、ソフトな感触の製品が得られ、皮シボやステッチを製品に設けることができること、および設計自由度が大きいことや意匠性が良好なこと等による。この成形方法は、他の成形方法である射出成形や圧縮成形とは異なり、成形の際に賦形圧力をかけない。このため、成形時に粉末材料を複雑な形状の金型に均一付着させる必要があり、粉体流動性に優れることが要求される。それと同時に、金型に付着した粉体が溶融して無加圧下でも流動して皮膜を形成する必要から、溶融粘度が低いことも要求される。
このような材料として、従来、十分な使用表面硬度を有し、柔軟性に優れたポリ塩化ビニルシートが幅広く使用されている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は、分子中に塩素を多量に含むため、環境に対する負荷が大きいことが懸念されており、有効な代替材料が求められている(特許文献2)。
そのため、近年、ポリ塩化ビニル樹脂の代替として、熱可塑性エラストマーのシート成形物の開発がなされて来た(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂や、スチレン系エラストマーを用いたシートでは、耐磨耗性や柔軟性や耐油性が不足している。また、熱可塑性ポリウレタンを用いたシートでは、成形性が悪く、コスト面でも問題があった。
特開平1−26619号公報 特開平5−279485号公報 特開平7−82433号公報 特開平10−30036号公報 特開平2000−103957号公報
本発明の目的は、アクリル系ブロック共重合体の特徴である、耐候性、耐薬品性、接着性、柔軟性及び耐磨耗性を保持しつつ、成形時の溶融流動性(成形性)や耐熱性、スクラッチ性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を得ることである。
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、成形時に、所定の方法でアクリル系ブロック共重合体を高分子量化または架橋することにより、上記課題を効果的に解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち本発明は、アクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上のエポキシ基を有するアクリル系重合体(B)からなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関し、アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなり、これらの重合体ブロックのうち少なくとも一方に酸無水物基および/またはカルボキシル基を有し、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−2−メトキシエチルとからなるブロック共重合体である。
好ましい実施態様としては、酸無水物基および/またはカルボキシル基が、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に存在し、酸無水物基が一般式(1):
Figure 2006104419
(式中、R1は水素またはメチル基で、2つのR1は互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表されることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)10〜60重量%と、アクリル系重合体ブロック(b)90〜40重量%とからなることを特徴と熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルとアクリル酸エチルからなるブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度が、25〜130℃であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよび、アクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体50〜0重量%とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、30,000〜200,000であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.8以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が30,000以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が100℃以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体(B)の粘度が35,000mPa・s以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、さらに充填剤を5〜200重量部添加したことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、さらに滑剤を0.1〜20重量部添加したことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、上記の組成物を含有することを特徴とするパウダースラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物に関する。
また、本発明の別の実施態様としては、上記の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする成形品に関する。
更に別の実施態様としては、上記の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮に関する。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、アクリル系ブロック共重合体の特徴である耐候性、耐薬品性、接着性、柔軟性及び耐磨耗性を有するばかりでなく、さらに、成形性や耐熱性に優れている。このため、本発明の組成物は、パウダースラッシュ成形に好適に使用することができる。また、良好なスクラッチ性を示すことから、内装用材料として好適に使用できる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、アクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上のエポキシ基を有するアクリル系重合体(B)から成る。ここで、アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに酸無水物基および/またはカルボキシル基を有している。また、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび、アクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリル酸エステル単量体とからなるブロック共重合体である。
酸無水物基および/またはカルボキシル基とエポキシ基は、通常、成形時に反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化もしくは架橋させる。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体、分岐状(星状)ブロック共重合体のいずれか、またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択されるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
前記線状ブロック共重合体は、いずれの構造のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性および組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体からなることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や組成物の物性の点から、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)には、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)の少なくとも一方の重合体ブロックに、少なくとも1つ、酸無水物基および/またはカルボキシル基が導入される。その数が2つ以上である場合には、無水物基および/またはカルボキシル基を含有する単量体が重合されている様式は、ランダム共重合またはブロック共重合であることができる。すなわち、a−b−a型のトリブロック共重合体を例にとって表わすと、(a/z)−b−a型、(a/z)−b−(a/z)型、z−a−b−a型、z−a−b−a−z型、a−(b/z)−a型、a−b−z−a型、a−z−b−z−a型、(a/z)−(b/z)−(a/z)型、z−a−z−b−z−a−z型などのいずれであってもよい。ここでzとは、酸無水物基および/またはカルボキシル基を含む単量体または重合体ブロックを表し、(a/z)とは、メタアクリル系重合体ブロック(a)に酸無水物基および/またはカルボキシル基を含む単量体が共重合されていることを表し、(b/z)とは、アクリル系重合体ブロック(b)に酸無水物基および/またはカルボキシル基を含む単量体が共重合されていることを表す。
また、メタアクリル系重合体ブロック(a)あるいはアクリル系重合体ブロック(b)中で、zの含有される部位と含有される様式は適宜設定してよく、目的に応じて適宜選択される。
アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されず、所望の特性を得る上で、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体系ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から適宜決定される。ただし、分子量が小さい場合には、エラストマーとして充分な機械特性を発現出来ない場合があり、逆に分子量が必要以上に大きいと、加工特性が低下する場合がある。特に、パウダースラッシュ成形を行う場合は、無加圧下でも流動する必要があるが、分子量が大きいと、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなる傾向にある。このような観点から、アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は、30,000〜200,000とするのが好ましく、より好ましくは35,000〜150,000、さらに好ましくは40,000〜100,000とする。
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も、とくに限定はされないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとアクリル系ブロック共重合体の均一性が悪化する場合がある。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、ブロック(a)が5〜90重量%、ブロック(b)が95〜10重量%である。成形時の形状の保持およびエラストマーとしての弾性の観点から、組成比の好ましい範囲は、(a)が10〜60重量%、(b)が90〜40重量%であり、さらに好ましくは、(a)が15〜50重量%、(b)が85〜50重量%である。(a)の割合が5重量%より少ないと、成形時に形状が保持されにくくなり、(b)の割合が10重量%より少ないと、エラストマーとしての弾性および成形時の溶融性が低下する傾向がある。また、(a)の割合が少ないと硬度が低くなり、(b)の割合が少ないと、エラストマー組成物の硬度が高くなる傾向がある。このため、ブロック(a)とブロック(b)の組成比は、エラストマー組成物の必要とされる硬度を考慮して、適宜設定する必要がある。更に、(a)の割合が少ないと粘度が低く、また、(b)の割合が少ないと粘度が高くなる傾向がある。このため、ブロック(a)とブロック(b)の組成比は、必要とする加工特性も考慮して、適宜設定する必要がある。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgbとして、機械強度やゴム弾性発現等の点で下式の関係を満たすことが好ましい。
Tga>Tgb
前記重合体(メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b))のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2 /Tg2)+…+(Wm/Tgm
1+W2+…+Wm=1
式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは各重合単量体のガラス転移温度を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各重合単量体の重量比率を表わす。
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989)記載の値を用いればよい。
なお、前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の極性が近すぎたり、ブロックの単量体の連鎖数が少なすぎると、それら測定値と、前記Fox式による計算式とがずれる場合がある。
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−2−メトキシエチルとからなる。ただし、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、酸無水物基および/またはカルボキシル基を有する単量体を含んでいても良い。なお、アクリル系重合体ブロック(b)に引き続きメタアクリル系重合体ブロック(a)を重合した場合には、アクリル系重合体ブロック(b)を構成する単量体の未重合物が一部、共重合される場合があり、本発明においては、メタアクリル系重合体ブロック(a)として、このようなものも含む。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸メチルは、耐候性や、低コスト、入手容易性などの特長を有しており、メタアクリル系重合体ブロック(a)中に50〜100重量%含まれることが好ましい。メタアクリル酸メチルが50重量%未満であると、得られる熱可塑性エラストマーの機械特性やゴム弾性が低下する傾向にある。
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル系重合体ブロック(a)の高温での分解抑制や、メタアクリル系重合体ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整のために、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリル酸エステル単量体が共重合される。これらは、コスト、入手容易性、メタアクリル酸メチルとの共重合容易性およびメタアクリル酸メチルとの相溶性に優れている。メタアクリル酸メチルとの相溶性の点で、アクリル酸エチルがより好ましい。
特に、パウダースラッシュ成形の場合は無加圧下でも流動する必要があり、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の凝集力やガラス転移温度Tgaが向上すると、溶融粘度が高くなり成形性が悪化する傾向にある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点および、成形性の観点から、25〜130℃が好ましく、より好ましくは40〜110℃、さらに好ましくは50〜100℃である。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のTgaの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%およびこれと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体50〜0重量%とからなることが好ましい。アクリル酸−n−ブチルは、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で好ましい。アクリル酸エチルは、耐油性および機械特性の点で好ましい。また、アクリル酸−2−メトキシエチルは、低温特性と耐油性の付与、及び樹脂の表面タック性の改善の点で好ましい。更に、耐油性および低温特性のバランスが必要な場合は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルを組み合わせて使用するのが好ましい。また、酸無水物基および/またはカルボキシル基を有する単量体をアクリル酸エステルとして含んでいても良い。なお、アクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、アクリル酸エステルを用いる場合の特徴である組成物の物性、とくに柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチル以外のアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
不飽和カルボン酸化合物としては、たとえば、メタアクリル酸、アクリル酸などをあげることができる。
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その際、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するとよい。
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より高いと、柔軟性やゴム弾性が発現されにくくなる。
以上述べた観点から、アクリル系重合体ブロック(b)は、酸無水物基、カルボキシル基または酸無水物基、カルボキシル基の前駆体を有する単量体および、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする単量体を重合してなるブロックであることが好ましい。
アクリル系重合体ブロック(b)のTgbの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
<酸無水物基およびカルボキシル基>
本発明において、アクリル系ブロック共重合体(A)の酸無水物基およびカルボキシル基は、アクリル系重合体(B)との反応点として作用すればよく、ブロック共重合体が高分子量化または架橋されるための反応点または架橋点として作用することが好ましい。
酸無水物基およびカルボキシル基は、アクリル系ブロック共重合体(A)中、いずれかが含有されていても良いし、共に含有されていてもよく、これらは、反応の容易性、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性、コストなどの点から、適宜選択すれば良い。
酸無水物基およびカルボキシル基は、酸無水物基およびカルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、酸無水物基およびカルボキシル基の前駆体となる形でブロック共重合体に導入し、そののちに公知の所定の化学反応で酸無水物基およびカルボキシル基を生成させることもできる。
また、酸無水物基およびカルボキシル基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のいずれか一方のブロックのみに含有されていてもよいし、両方のブロックに含有されていてもよい。これらは、アクリル系ブロック共重合体(A)の反応点や、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロック(メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b))の凝集力やガラス転移温度、さらには、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性など、所望の物性等に応じて適宜選択する。たとえば、酸無水物基およびカルボキシル基と反応性を有するアクリル系重合体(B)を用い、酸無水物基および/またはカルボキシル基を反応点として、メタアクリル系重合体ブロック(a)やアクリル系重合体ブロック(b)を選択的に反応させたい場合には、酸無水物基および/またはカルボキシル基を反応させたいブロックに導入すればよい。
また、酸無水物基および/またはカルボキシル基をメタアクリル系重合体ブロック(a)に導入することにより、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性や耐熱分解性向上させることが可能である。更に、アクリル系重合体ブロック(b)に酸無水物基および/またはカルボキシル基を架橋点として導入することにより、アクリル系ブロック共重合体(A)に耐油性や更なるゴム弾性、圧縮永久歪み特性を付与することが可能である。
前記酸無水物基およびカルボキシル基の含有数は、酸無水物基およびカルボキシル基の凝集力、反応性、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度によって変化させ、その数は必要に応じて適宜設定する必要があるが、好ましくはブロック共重合体1分子あたり1.0個以上、より好ましくは2.0個以上とする。これは、1.0個より少なくなるとブロック共重合体の2分子間反応による高分子量化や架橋による耐熱性向上が不充分になる傾向があるためである。
また、パウダースラッシュ成形を行う場合は、無加圧下でもエラストマー組成物が流動する必要があるが、酸無水物基および/またはカルボキシル基導入により(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の凝集力やガラス転移温度Tgaが向上すると、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなる傾向にある。このため、酸無水物基および/またはカルボキシル基を導入後の(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度Tgaは、130℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下になるような範囲で酸無水物基および/またはカルボキシル基を導入することが好ましい。
同様に、酸無水物基および/またはカルボキシル基導入によりアクリル系重合体ブロック(b)の凝集力やガラス転移温度Tgbが向上すると、柔軟性、ゴム弾性、低温特性が悪化する傾向にある。このため、酸無水物基および/またはカルボキシル基を導入後のアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度Tgbは、25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下になるような範囲で酸無水物基および/またはカルボキシル基を導入することが好ましい。
以下に、酸無水物基およびカルボキシル基について説明する。
<酸無水物基>
組成物中に活性プロトンを有する化合物を含有する場合、酸無水物基はエポキシ基と容易に反応する。酸無水物基の導入位置は、特に限定されるものではなく、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても、側鎖に導入されていても良い。ここで、酸無水物基はカルボキシル基の無水物基であり、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から主鎖中へ導入されていることが好ましく、具体的には一般式(1)で表される。一般式(1):
Figure 2006104419
(式中、R1は水素またはメチル基で、2つのR1は互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表される形で含有される。
一般式(1)中のnは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。nが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
前記酸無水物基の導入方法としては、酸無水物基の前駆体となる形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに環化させることが好ましい。特に、一般式(2):
Figure 2006104419
(式中、R2は水素またはメチル基を表わす。R3は水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのR3のうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれ、3つのR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を、溶融混練して環化導入することが好ましい。
アクリル系ブロック共重合体への一般式(2)で表される単位の導入は、一般式(2)に由来するアクリル酸エステル、またはメタアクリル酸エステル単量体を共重合することによって行なうことができる。単量体としては、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。これらのなかでも、入手性や重合容易性、酸無水物基生成容易性などの点から(メタ)アクリル酸−t−ブチルが好ましい。
前記酸無水物基の形成は、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を高温下で加熱することにより行うのが好ましく、180〜300℃で加熱することが好ましい。これは、180℃より低いと酸無水物基の生成が不充分となる傾向があり、300℃より高くなると、酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体自体が分解する傾向があるためである。
<カルボキシル基>
カルボキシル基はエポキシ基と容易に反応する。カルボキシル基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても、側鎖に導入されていても良いが、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒を被毒することがない場合は、直接重合により導入することが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させる場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入するのが好ましい。
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法では、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることができる。この方法により、カルボキシル基を導入することができる。
例えば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法(特開平10−298248号公報、特開2001−234146号公報)や、一般式(2):
Figure 2006104419
(式中、R2は水素またはメチル基を表わす。R3は水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのR3のうち少なくとも2つはメチル基および/またはフェニル基から選ばれ、3つのR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる単位を少なくとも1つ有するアクリル系ブロック共重合体を、溶融混練する方法により導入することができる。一般式(2)で示される単位は、高温下でエステルユニットが分解してカルボキシル基を生成し、そのカルボキシル基の一部が環化することにより生成する。これを利用して、一般式(2)で示される単位の種類や含有量に応じて、加熱温度や時間を適宜調整することで、カルボキシル基を導入することができる。
また前記酸無水物基を加水分解することによりカルボキシル基を導入することもできる。
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
前記アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法は、とくに限定されないが、開始剤を用いた制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられる。なかでも、リビングラジカル重合が、アクリル系ブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)」)、1994年、第116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合が好ましい。
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(たとえば、マティジャスツェウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、第117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、7901頁、サイエンス(Science)、1996年、第272巻、866頁、または、澤本(Sawamoto)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻、1721頁参照)。
これらの方法によると、一般的に、非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量を単量体と開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、1官能性、2官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて適宜選択すればよく、ジブロック共重合体を製造する場合は、開始剤の入手のしやすさの点から1官能性化合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から、2官能性化合物を使用するのが好ましい。また、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から、多官能性化合物を使用するのが好ましい。
開始剤としては、高分子開始剤を用いることも可能である。高分子開始剤とは、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物のうち、分子鎖末端にハロゲン原子の結合した重合体からなる化合物である。このような高分子開始剤は、リビングラジカル重合法以外の制御重合法でも製造することが可能であるため、異なる重合法で得られる重合体を結合したブロック共重合体が得られるという特徴がある。
1官能性化合物としては、たとえば、
65−CH2X、
65−C(H)(X)−CH3
65−C(X)(CH32
4−C(H)(X)−COOR5
4−C(CH3)(X)−COOR5
4−C(H)(X)−CO−R5
4−C(CH3)(X)−CO−R5
4−C64−SO2
で示される化合物などがあげられる。
式中、C65はフェニル基、C64はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。R4は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表わす。R5は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
4として、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)の具体例としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソボルニル基などがあげられる。炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、たとえば、フェニル基、トリイル基、ナフチル基などがあげられる。炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、たとえば、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
5である炭素数1〜20の1価の有機基の具体例としては、たとえばR4と同様の基などがあげられる。
1官能性化合物の具体例としては、たとえば、臭化トシル、2−臭化プロピオン酸メチル、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチル、2−臭化イソ酪酸メチル、2−臭化イソ酪酸エチル、2−臭化イソ酪酸ブチルなどがあげられる。これらのうちでは、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチルが、アクリル酸エステル単量体の構造と類似しているために重合を制御しやすい点から好ましい。
2官能性化合物としては、たとえば、
X−CH2−C64−CH2−X、
X−CH(CH3)−C64−CH(CH3)−X、
X−C(CH32−C64−C(CH32−X、
X−CH(COOR6)−(CH2n−CH(COOR6)−X、
X−C(CH3)(COOR6)−(CH2n−C(CH3)(COOR6)−X
X−CH(COR6)−(CH2n−CH(COR6)−X、
X−C(CH3)(COR6)−(CH2n−C(CH3)(COR6)−X、
X−CH2−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH32−CO−C(CH32−X、
X−CH(C65)−CO−CH(C65)−X、
X−CH2−COO−(CH2n−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−(CH2n−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH32−COO−(CH2n−OCO−C(CH32−X、
X−CH2−CO−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH32−CO−CO−C(CH32−X、
X−CH2−COO−C64−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−C64−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH32−COO−C64−OCO−C(CH32−X、
X−SO2−C64−SO2−X
で示される化合物などがあげられる。
式中、R6は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または、炭素数7〜20アラルキル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。C65、C64、Xは、前記と同様である。
6の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例は、R4の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例と同じである。
2官能性化合物の具体例としては、たとえば、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモエチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼン、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,3−ジブロモコハク酸ジブチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジメチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジブチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジブチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジメチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジブチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジメチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジエチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジブチルなどがあげられる。これらのうちでは、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが、原料の入手性の点から好ましい。
多官能性化合物としては、たとえば、
63−(CH2−X)3
63−(CH(CH3)−X)3
63−(C(CH32−X)3
63−(OCO−CH2−X)3
63−(OCO−CH(CH3)−X)3
63−(OCO−C(CH32−X)3
63−(SO2−X)3
で示される化合物などがあげられる。
式中、C63は三価のフェニル基(3つの結合手の位置は1位〜6位のいずれであってもよく、その組み合わせは適宜選択可能である)、Xは前記と同じである。
多官能性化合物の具体例としては、たとえば、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモエチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼンなどがあげられる。これらのうちでは、トリス(ブロモメチル)ベンゼンが、原料の入手性の点から好ましい。
なお、重合を開始する基以外に、官能基をもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端または分子内に重合を開始する基以外の官能基が導入された重合体が得られる。このような重合を開始する基以外の官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
前記開始剤として用いることができる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲン基(ハロゲン原子)が結合している炭素がカルボニル基またはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするアクリル系ブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体とのモル比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、アクリル系ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては、とくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、ならびに、2価のニッケルの錯体があげられる。
これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。その中でも塩化第一銅、臭化第一銅が、重合の制御の観点から好ましい。1価の銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジル、その誘導体(たとえば4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルなど)などの2,2′−ビピリジル系化合物;1,10−フェナントロリン、その誘導体(たとえば4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンなど)などの1,10−フェナントロリン系化合物;テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。
また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も、触媒として好ましい。
使用する触媒、配位子および活性化剤は、とくに限定されず、使用する開始剤、単量体および溶媒と、必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。たとえば、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合には、開始剤としては有機臭化物または臭化スルホニル化合物、溶媒としてはアセトニトリル、金属錯体触媒としては臭化銅、好ましくは臭化第一銅に含まれる銅を中心金属とする触媒、配位子としてはペンタメチルジエチレントリアミンなどを用いることが好ましい。これは、高分子鎖の成長末端が炭素−臭素結合をもつことが重合の制御の点から好ましいことによる。また、メタアクリル酸エステルなどのメタアクリル系単量体の重合には、開始剤としては有機塩化物または塩化スルホニル化合物、溶媒としてはアセトニトリル、必要に応じてトルエンなどとの混合溶媒、金属錯体触媒としては、塩化銅、好ましくは塩化第一銅に含まれる銅を中心金属とする触媒、配位子としてはペンタメチルジエチレントリアミンなどを用いることが好ましい。これは、高分子鎖の成長末端が炭素−塩素結合をもつことが重合の制御の点から好ましいことによる。
使用する触媒、配位子の量は、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から決定すればよい。たとえば、分子量の高い重合体を得ようとする場合には、分子量の低い重合体を得ようとする場合よりも、開始剤/単量体の比を小さくしなければならないが、そのような場合には、触媒、配位子を多くすることにより、反応速度を増大させることができる。また、ガラス転移点が室温より高い重合体が生成する場合、系の粘度を下げて撹拌効率を上げるために適当な有機溶媒を添加した場合には、反応速度が低下する傾向があるが、そのような場合には、触媒、配位子を多くすることにより、反応速度を増大させることができる。
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒中で(塊状重合)、または、各種の溶媒中で行なうことができる。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において、重合を途中で停止させることもできる。
前記溶媒としては、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどをあげることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどをあげることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどをあげることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどをあげることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどをあげることができる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどをあげることができる。カーボネート系溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどをあげることができる。
上記の溶媒は、それぞれ単独で、又は二以上組み合わせて用いることができる。
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率の関係から適宜決定すればよい。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において重合を途中で停止させる場合においても、反応を停止させる点での単量体の転化率は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率の関係から適宜決定すればよい。
前記重合は、23℃〜200℃の範囲、好ましくは50〜150℃の範囲で行なうことができる。
アクリル系ブロック共重合体を重合させる方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法はいずれを用いてもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。なお、製造工程の簡便性の点からは単量体の逐次添加による方法が好ましい。
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボキシル基、もしくは、スルホニル基を含有する有機酸を添加して金属錯体との塩を生成させ、生成した金属錯体との塩を濾過などにより、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体吸着処理により溶液中に残存する酸などの不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去する。これにより、アクリル系ブロック共重合体を単離することができる。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横型蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横型蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
<アクリル系重合体(B)>
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物を構成するアクリル系重合体(B)は、一分子中に少なくとも1.1個以上のエポキシ基を含有する重合体である。アクリル系重合体(B)は、組成物の成形時に可塑剤として成形流動性を向上させると同時に、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基および/またはカルボキシル基と反応して、アクリル系ブロック共重合体(A)を2分子間反応による高分子量化、あるいは架橋する。ここでいう個数はアクリル系重合体(B)全体中に存在するエポキシ基の平均の個数を表す。
エポキシ基は、アクリル系重合体(B)中に1.1個以上、好ましくは1.5個以上、より好ましくは2.0個以上含有させる。その数は、エポキシ基の反応性、エポキシ基の含有される部位および様式、アクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基および/またはカルボキシル基の含有される数や部位および様式に応じて変化させる。エポキシ基の含有数が1.1個より少なくなると、ブロック共重合体の2分子間反応のための高分子量化反応剤、あるいは架橋剤としての効果が低くなり、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性向上が不充分になる傾向がある。
アクリル系重合体(B)は1種または2種以上のアクリル系単量体を重合させるか、又は、1種または2種以上のアクリル系単量体とアクリル系単量体以外の単量体との混合物を重合させることにより得られたものであることが好ましい。
アクリル系単量体としては、アクリロイル基含有単量体及びメタクリロイル基含有単量体が挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。尚、本明細書において(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを意味する。前記アクリル系単量体以外の単量体としては、アクリル系単量体と共重合可能な単量体、例えば酢酸ビニル、スチレン等を用いることができる。
アクリル系重合体(B)は、アクリロイル基含有単量体単位を含む。アクリル系重合体(B)中の全単量体単位に対するアクリロイル基含有単量体単位の割合は70質量%以上であることが好ましい。その割合が70質量%未満の場合、そのような重合体の耐候性は比較的低く、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性も低下する傾向にある。また、その成形物に変色が生じやすくなる。
アクリル系重合体(B)は、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体50〜0重量%からなるものが好ましい。ビニル系単量体としては、スチレンが好ましい。
また、アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、特に制限はないが、30,000以下の低分子量のものが好ましく、500〜30,000のものがさらに好ましく、500〜10,000のものが特に好ましい。重量平均分子量が500未満の場合、成形体にべとつきが生じる傾向があり、一方、重量平均分子量が30,000を越えた場合、成形物の可塑化が不十分になる傾向がある。
好ましくは、アクリル系重合体(B)の粘度は、25℃においてコーン・プレート型の回転粘度計(E型粘度計)で測定した時、35,000mPa・s以下である。より好ましい粘度は、10,000mPa・s以下である。特に好ましい粘度は、5,000mPa・s以下である。粘度が35,000mPa・sより高いと、組成物の可塑化効果が低下する傾向にある。好ましい粘度の下限は特にないが、アクリル系重合体の通常の粘度は10mPa・s以上である。
示差走査熱量測定法(DSC)で測定される、アクリル系重合体(B)のガラス転移温度Tgは、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは25℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下であり、特に好ましくは−30℃以下である。ガラス転移温度Tgが100℃を超える場合、可塑剤として成形性を向上させる効果が不十分になる傾向があり、また、得られる成形体の柔軟性が低下する傾向にある。
前記アクリル系重合体(B)は、公知の方法で重合させることにより製造される。重合方法は必要に応じて適宜選択すればよく、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いる重合およびリビングラジカル重合等の制御重合等により行なうことができるが、耐候性や耐熱性が良好で比較的低分子量かつ分子量分布の小さい重合体が得られる制御重合が好ましく、以下に記載の高温連続重合を用いる方法がコスト面などの点でより好ましい。
アクリル系重合体(B)は180〜350℃の温度での重合反応により得ることが好ましい。この重合温度では、重合開始剤や連鎖移動剤を使用することなく、比較的低分子量のアクリル系重合体が得られることから、そのアクリル系重合体は優れた可塑剤であり、耐候性も良好である。具体的には、特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報及びWO01/083619号公報に開示される高温連続重合による方法が例示される。すなわち、所定の温度及び圧力に設定された反応器内に上記の単量体の混合物を一定の供給速度で連続して供給し、その供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法である。
アクリル系重合体(B)としては、具体的には東亞合成(株)のARUFON(登録商標)XG4000、ARUFON UG4000、ARUFON XG4010、ARUFON UG4010、ARUFON XD945、ARUFON XD950、ARUFON UG4030、ARUFON UG4070などが好適に使用できる。これらは、オールアクリル、アクリレート/スチレン等のアクリル系重合体であって、エポキシ基を1分子中に1.1個以上含む。
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形時に溶融粘度が低く成形性に優れる一方で、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の酸無水物基および/またはカルボキシル基と、アクリル系重合体(B)中のエポキシ基とが反応して、アクリル系ブロック共重合体(A)が高分子量化あるいは架橋することが好ましく、耐熱性向上の点で、成形時に架橋することがより好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、成形時の反応を促進させるために、種々の添加剤や触媒を添加しても良い。例えば、酸二無水物などの酸無水物系、アミン系、イミダゾール系等のエポキシ樹脂に一般に用いられる硬化剤を用いることが可能である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて充填剤を配合し、好適に使用することができる。充填材としては、特に限定されないが、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、カーボンブラックのような補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、べんがら、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛およびシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバーなどのような繊維状充填材などがあげられる。これら充填材のうちでは機械特性の改善や補強効果、コスト面等から無機充填剤がより好ましく、酸化チタン、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、タルクがより好ましい。
ここで、シリカとしては、その表面がオルガノシランやオルガノシラザン、ジオルガノポリシロキサンなどの有機ケイ素化合物で予め疎水処理されたシリカを用いてもよい。また、炭酸カルシウムとしては、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルなどの有機物や各種界面活性剤、および、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤などの各種カップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理を施したものを用いてもよい。
充填材を用いる場合の添加量は、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、充填材を5〜200重量部の範囲で使用するのが好ましく、10〜100重量部の範囲で使用するのがより好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、得られる成形体の補強効果が不充分となることがあり、200重量部を越えると得られる組成物の成形性が低下する傾向にある。充填材は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて成形性や金型からの離型性、得られる成形体の表面の低摩擦化のために、各種滑剤を配合してもよい。
滑剤としては、たとえば、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどのワックス類、低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレンなどの低分子量ポリオレフィン、ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン、オクタデシルアミン、リン酸アルキル、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミドなどのアミド系滑剤、4フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリカなどを用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミドがコスト面や成形性の点で優れており好ましい。
滑剤を用いる場合の添加量は、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、滑剤を0.1〜20重量部の範囲で使用するのが好ましく、0.2〜10重量部の範囲で使用するのがより好ましい。配合量が0.1重量部未満の場合には、成形性の改善効果や得られる成形体低摩擦化が不十分となることがあり、20重量部を越えると得られる成形体の機械特性や耐薬品性などが悪化する傾向にある。滑材は少なくとも1種用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、熱可塑性エラストマー組成物および得られる成形体の諸物性の調整を目的として、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、安定剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などがあげられる。
上記の安定剤としては、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などがあげられる。例えば、老化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、オクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPN)、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン誘導体、ジアリル−p−フェニレンジアミン混合物、アルキル化フェニレンジアミン、4,4’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロプロピル)−p−フェニレンジアミン、ジアリルフェニレンジアミン混合物、ジアリル−p−フェニレンジアミン混合物、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン誘導体などのアミン系老化防止剤、2−メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)などのイミダゾール系老化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピネート]などのフェノール系老化防止剤、ニッケルジエチル−ジチオカーバメイトなどのリン酸塩系老化防止剤、トリフェニルホスファイトなどの2次老化防止剤、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートなどがあげられる。また、光安定剤や紫外線吸収剤としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−2−シアノ−3,3‘−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、モノグリコールサリチレート、オキザリック酸アミド、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどがあげられる。
工業製品としては、Irganox(登録商標)1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、サノール(登録商標)LS770(三共ライフテック株式会社)、アデカスタブ(登録商標)LA−57(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブLA−68(旭電化工業株式会社製)、Chimassorb(登録商標)944(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、サノールLS765(三共ライフテック株式会社)、アデカスタブLA−62(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN(登録商標)144(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−63(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN622(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−32(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブLA−36(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN571(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、TINUVIN234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業株式会社製)、TINUVIN1130(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、アデカスタブAO−20(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブAO−50(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブ2112(旭電化工業株式会社製)、アデカスタブPEP−36旭電化工業株式会社製)、スミライザー(登録商標)GM(住友化学工業株式会社)、スミライザーGS(住友化学工業株式会社)、スミライザーTP−D(住友化学工業株式会社)などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでもアクリル系ブロック体の熱や光による劣化防止効果やコスト点で、サノールLS770、Irganox1010、スミライザーGS、TINUVIN234が好ましい。
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、アクリル系ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザー(登録商標)O−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。これら以外の高分子量の可塑剤としては、アクリル系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリテトラヒドロフラン系重合体、ポリイソブチレン系重合体などがあげられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱による減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、などが好ましい。
上記の柔軟性付与剤としては、特に限定はなく、プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分などが挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、トール油等が例示でき、これらの柔軟性付与剤は少なくとも1種用いることができる。
上記の難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合わせて用いてもよい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法には特に制限はなく、バッチ式混錬装置や連続混錬装置を用いることにより、熱可塑性エラストマー組成物を製造することができる。例えばバッチ式混練装置としては、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーが使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。
熱可塑性エラストマー組成物を製造するための混練時の温度はアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが反応し、成形性が低下しない温度が好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが反応することにより成形性が悪化する温度は、酸無水物基やカルボキシル基やエポキシ基の種類、導入量、アクリル系ブロック共重合体(A)やアクリル系重合体(B)の組成、アクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)の相溶性などによって決まる。このため、これらの条件を適宜変更して、所望の温度で反応が行われるようにする。ここで、反応温度は、得られる組成物が成形可能である成形可能である必要から、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
高分子量化や架橋が起こり、かつ、成形も可能な温度で加工することが好ましいが、一部高分子量化や部分的に架橋が起こっても成形可能な程度であればよい。
パウダースラッシュ成形の場合は、熱可塑性エラストマー組成物を粉体として得ることが好ましい。粉体を得る方法としては、上記の方法で加工したブロック状態またはペレット状態の熱可塑性エラストマー組成物を、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル、遠心ミル等の衝撃型微粉砕機を用いて、微粉砕する方法がある。粉砕は、通常は常温で行うが、冷媒や冷却設備を使用して機械粉砕することもできる。
<熱可塑性エラストマー組成物の成形方法>
前記、熱可塑性エラストマーの製造方法の項で得られた組成物は、種々の方法で成形でき、パウダースラッシュ成形、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などに適用可能であるが、パウダースラッシュ成形がより好適に使用される。パウダースラッシュ成形とは、組成物パウダーを高温に加熱された成形金型に流し込み、溶融成形させ、ある一定時間経過後に冷却固化された成形体を取り出す方法である。パウダースラッシュ成形では、無加圧下でも流動して溶融成形される必要がある。一方、成形後の成形体は100℃以上の使用環境に曝されることから、成形性と耐熱性とのバランスをとることが困難である。しかし、本発明の組成物においては、成形前はアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)が未反応の状態であり、(B)が可塑剤として効果的に働くため、金型内において優れた溶融性を示す。また、冷却固化されるまでの一定時間内にアクリル系ブロック共重合体(A)とアクリル系重合体(B)が反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)が高分子量化あるいは架橋されることによって成形後の耐熱性が向上する。このことから、パウダースラッシュ成形に好適な材料であるといえる。
パウダースラッシュ成形において、成形時、アクリル系ブロック共重合体(A)の高分子量化によって耐熱性を付与する場合には、成形後のアクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量を100,000以上とするのが好ましく、150,000以上とするのがより好ましく、200,000以上とするのがさらに好ましい。これは、数平均分子量が100,000より小さいと耐熱性の改善効果が低くなるためである。
また、成形時、架橋によって耐熱性を付与する場合には、成形後の成形体の不溶分率(重量%)を50重量%以上とするのが好ましく、70重量%以上とするのがより好ましく、80重量%以上とするのがさらに好ましい。これは、不溶分率が50重量%より低いと耐熱性の改善効果が低くなるためである。一方、成形前の不溶分率は、30重量%以下とするのが好ましく、10重量%以下とするのがより好ましく、5重量%以下とするのがさらに好ましい。これは、30重量%以上とすると成形性が悪化する傾向にあるためである。
上記の不溶分率(重量%)は、熱可塑性エラストマー組成物1gを350メッシュ金網に包み、80℃のトルエンまたは60℃のアセトン中で24時間浸漬したのち(トルエンかアセトンかは、アクリル系ブロック共重合体が可溶な方を選択する)、トルエンまたはアセトン可溶分を分別し、残留固形分を80℃で真空乾燥し、乾燥後の残留固形分の重量を測定して、熱可塑性エラストマー組成物1gに対する残留固形分の重量を表すことにより行う。
<用途>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られる成形体は、耐熱性、耐候性、耐薬品性、接着性、柔軟性、耐磨耗性等に優れる。このことから、表皮材料、タッチパネル等の触感材料、外観が重要視される材料、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として、形状としてはシート、平板、フィルム、小型成型品、大型成型品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。この中でも、自動車内装用表皮に好適に使用される。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例におけるBA、EA、MEA、TBA、MMA、TBMAはそれぞれ、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸−t−ブチルを表わす。また、実施例中に記載した分子量や重合反応の転化率、各物性評価は、以下の方法に従って行った。
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムSupelcowax−10、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度60℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、酢酸ブチルまたはアセトニトリルを内部標準物質とした。
<耐エタノール性試験>
本実施例および比較例に示す耐エタノール性は以下に示す条件で測定した。
実施例および比較例にて作成した、シボ模様のシートを平面に設置し、ピペットにてエタノール(和光純薬(株)製)を1滴滴下し、24時間室温で放置した。その後表面を目視で観察し、跡のないものを◎、極僅かに跡がみとめられるが白化はないものを○、跡がみとめられるが白化はないものを△、白化がみとめられるものを×で評価した。
<耐油性試験>
本実施例および比較例に示す耐油性は以下に示す条件で測定した。
実施例および比較例にて作成した、シボ模様のシートを平面に設置し、ピペットにて流動パラフィン(ナカライテスク(株)製)を1滴滴下し、24時間室温で放置した。その後、流動パラフィンをキムワイプ(登録商標)((株)クレシア製)でふき取り、表面を目視で観察し、跡のないものを◎、極僅かに跡がみとめられるが白化はないものを○、跡がみとめられるが白化はないものを△、白化がみとめられるものを×で評価した。
<耐熱性試験>
本実施例および比較例に示す耐熱性は以下に示す条件で測定した。
実施例および比較例にて作成した、シボ模様のシートを24時間120℃で放置した。その後、表面を目視で観察し、シボ模様の変化が認められないものを◎、シボ模様の変化は明確でないものの、初期に比べ表面光沢が極僅かに増したものを○、シボ模様の変化は明確でないものの、初期に比べ表面光沢が増したものを△、シボ模様の変化が認められるものを×とした。
<ウレタン接着性試験>
実施例に従って組成物をプレス成型して表皮材を作成した。主成分が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるカートリッジタイプポリウレタン(エアータイト(株)製)を金属板上に塗布し、すぐにその発泡体上に表皮材を乗せ接着させた。12時間以上経過した後(完全に発泡体が硬化している状態)で、発泡ウレタンから表皮材を手で剥離させて破壊の状態を観察し、ウレタン材料で破壊が起こっているものを◎、極一部シートとウレタンの界面で破壊が起こっているものを○、一部シートとウレタンの界面で破壊が起こっているものを△、シートとウレタンの界面で破壊が起こっているものを×とした。
<パウダースラッシュ性試験>
本実施例および比較例に示すパウダースラッシュ性は、以下に示す方法で評価した。
実施例または比較例に従って作製したブロック状態サンプルを、粉砕機((株)朋来鉄工所製VC210KW2.2)を用いて粉砕し、粗粒状サンプルを得た。次いで、得られた粗粒状サンプル、または実施例若しくは比較例で得られたペレット100重量部にシリカ粉末(株式会社龍森製、マイクロ結晶性ソフトシリカA−10)を6重量部ドライブレンドし、粉砕機(三井鉱山株式会社製UCM150(ディスク径300mm、モーター出力3.7kW))のディスク回転数を10000rpmに設定して、粉砕処理を実施し、パウダー状サンプルを得た。得られたパウダーをさらにステンレス製のメッシュ(22メッシュ、710μm)を用いて篩い、均一なパウダーを得た。
得られたパウダーを260℃に加熱した皮シボ金属板上に置き、10秒間経てから前記金型を反転して余剰の粉末を落とし、熱溶融しているパウダーをさらに30秒間保持した。次いで、前記金型を60℃まで水冷した後、シートを剥がし、成形シートを得た。
評価指標:得られた成形シートを目視にて、シボ転写性が良好で、ピンホール/気泡がないもの:◎、シボ転写性が良好で、ピンホール/気泡がないがシート裏面が平滑でないもの:○、シボ転写性が良好でないか、ピンホール/気泡があるもの:△、シボ形成不良個所有りかつピンホール/気泡有るもの:×として評価した。
<スクラッチ試験>
実施例に従って組成物をプレス成型して表皮材を作成した。そこからサンプルを切り出し、台紙に貼り付けて、測定サンプルとした。以下の条件にて、スクラッチ試験を行った。
使用機器:テーバースクラッチテスタ(東洋精機製)
回転数:0.5rpm
カッター:タングステンカーバイド、4.8mm角x19mm長、刃先半径12.7mm
カッターの向き:カッターの刃側が上になるように、カッターの長い面が下になるように取り付けた。
荷重:1N〜3Nで変化させた
サンプル寸法:10cm角
評価指標:得られた成形シートを目視にて、シートにほとんど傷がなく、シートをいずれの角度からみても白くみえないもの:◎、シートに傷があり、シートを斜めから見ると白く見えるもの○、シートに傷があり、シートを正面から見ても僅かに白く見えるもの:△、シートを正面から見ても白く見え、表面が削りとられているもの:×として評価した。
(製造例1)
(MMA−co−MEA−)−b−(BA−co−TBA)−b−(MMA−co−MEA)型アクリル系ブロック共重合体−1(以下「前駆体1」と記載する)の合成
前駆体1を得るために以下の操作を行なった。15Lの耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅8.61g(60ミリモル)、BA968g(7.6モル)およびTBA43g(0.34モル)を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル12.0g(33ミリモル)をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)88.7gに溶解させた溶液を仕込み、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。内温が75℃に到達した時点で、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン1.04g(6ミリモル)を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、TBAの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計3回(合計3.12g)添加した。
BAの転化率が99.0%、TBAの転化率が98.7%の時点で、MMA637g(6.4モル)、MEA73g(0.56モル)、塩化銅5.94g(60ミリモル)、ペンタメチルジエチレントリアミン1.04g(6ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)1303gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
アクリル系重合体ブロック重合時と同様にして、MMA、BAの転化率を決定した。MMA、BAを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてMMA、BAの転化率を決定した。MMA、BAを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタアクリル系重合体ブロック重合時に合計4回(合計4.16g)添加した。MMAの転化率が94.5%の時点でトルエン2400gを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
得られた反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度が25重量%になるように希釈した。この溶液に p−トルエンスルホン酸一水和物24.0gを加えて室温で3時間撹拌し、析出した固形分を濾過で除いた。
得られたポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学(株)製)を34.7g加えて室温でさらに1時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のアクリル系ブロック共重合体前駆体1を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体前駆体1のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnは74057、分子量分布Mw/Mnは1.45であった。
<前駆体1の酸無水物化反応>
上記で得られた前駆体1;700gとイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4.2gと酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)7.0gを配合し、260℃に設定したDS1−5MHB−E型ニーダー(株式会社モリヤマ製)を用いて、約50rpmで50分間溶融混練して、目的の酸無水物基およびカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを以下「重合体1」と記載する)を得た。t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C(1H)−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm-1あたりに酸無水物基に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C(1H)−NMRでは、変換後には、t−ブチル基の4級炭素由来の82ppmのシグナルとメチル炭素由来の28ppmシグナルが消失し、新たに酸無水物基のカルボニル炭素由来の172〜173ppm(m)のシグナルと、カルボキシル基のカルボニル炭素由来の176〜179ppm(m)のシグナルが出現することから確認できた。
(製造例2)
(MMA−co−EA−)−b−(BA−co−TBA)−b−(MMA−co−EA)型アクリル系ブロック共重合体−1(以下「前駆体2」と記載する)の合成
前駆体2得るために以下の操作を行った。
窒素置換した500L反応器に、アクリル酸n−ブチル70.19kg、アクリル酸t−ブチル4.81kg、及び臭化第一銅0.625kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.872kgをアセトニトリル6.59kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン75.5gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合の際は、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計3回(合計226.5g)添加した。
転化率が97.4%に到達したところで、トルエン101.7kg、塩化第一銅0.431kg、メタアクリル酸メチル45.54kg、アクリル酸エチル9.26kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン75.5gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。メタアクリル酸メチルの転化率が91.1%に到達したところでトルエン220kgを加え、反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは73700、分子量分布Mw/Mnは1.39であった。
得られたブロック共重合体溶液に対しトルエン30kgを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を1.74kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.48kg添加した。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体溶液約450kgに対し、キョーワード500SH1.86kgを加え反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液にイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)737gを添加、溶解した。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た。このようにして目的のアクリル系ブロック共重合体前駆体2のペレットを作製した。
<前駆体2の酸無水物化反応>
上記で得られた前駆体2、100重量部に対して、酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)1重量部を配合し、ベント付二軸押出機(44mm、L/D=42.25)(日本製鋼所(株)製)を用い、150rpmの回転数、ホッパー設置部分のシリンダー温度を100℃とし、その他は全て260℃に温度設定で押出混練して、目的の酸無水物基およびカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを以下「重合体2」と記載する)を得た。押出し時は、ベント口は塞いた。また、この時、二軸押出機の先端に水中カットペレタイザー(GALA INDUSTRIES INC.製CLS−6−8.1 COMPACT LAB SYSTEM)を接続し、水中カットペレタイザーの循環水中に防着剤としてアルフロー(登録商標)H−50ES(日本油脂株式会社製)を添加することで、防着性のない球形状のペレットを得た。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変換は、製造例1と同様にして確認した。
(製造例3)
(MMA−co−EA−)−b−(BA−co−TBA)−b−(MMA−co−EA)型アクリル系ブロック共重合体−2(以下「前駆体3」と記載する)の合成
前駆体3得るために以下の操作を行った。
窒素置換した500L反応器にアクリル酸n−ブチル71.83kg、アクリル酸t−ブチル3.23kg、及び臭化第一銅0.804kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.12kgをアセトニトリル6.59kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン97.1gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合の際は、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計3回(合計291.3g)添加した。
転化率が99.1%に到達したところで、トルエン97.6kg、塩化第一銅0.555kg、メタアクリル酸メチル45.29kg、アクリル酸エチル7.36kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン97.1gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.8%に到達したところでトルエン220kgを加え、反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは62400、分子量分布Mw/Mnは1.44であった。
得られたブロック共重合体溶液に対しトルエン30kgを加え、重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を2.24kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.44kg添加した。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体溶液約450kgに対し、キョーワード500SH2.44kgを加え反応器内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液にイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)728gを添加、溶解した。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た。このようにして目的のアクリル系ブロック共重合体前駆体3のペレットを作製した。
<前駆体3の酸無水物化反応>
上記で得られた前駆体3、100重量部に対して、酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)1重量部を配合し、ベント付二軸押出機(44mm、L/D=42.25)(日本製鋼所(株)製)を用い、150rpmの回転数、ホッパー設置部分のシリンダー温度を100℃とし、その他は全て260℃に温度設定で押出混練して、目的の酸無水物基およびカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを以下「重合体3」と記載する)を得た。押出し時は、ベント口は塞いた。また、この時、二軸押出機の先端に水中カットペレタイザー(GALA INDUSTRIES INC.製CLS−6−8.1 COMPACT LAB SYSTEM)を接続し、水中カットペレタイザーの循環水中に防着剤としてアルフローH−50ES(日本油脂株式会社製)を添加することで、防着性のない球形状のペレットを得た。 t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変換は、製造例2と同様にして確認した。
(製造例4)
(MMA−co−EA−)−b−(BA−co−TBA)−b−(MMA−co−EA)型アクリル系ブロック共重合体−4(以下「前駆体4」と記載する)の合成
前駆体4得るために以下の操作を行った。
窒素置換した500L反応器にアクリル酸n−ブチル73.40kg、アクリル酸t−ブチル1.61kg、及び臭化第一銅0.638kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.12kgをアセトニトリル6.59kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン77.1gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合の際は、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計154.2g)添加した。
転化率が99.2%に到達したところで、トルエン97.6kg、塩化第一銅0.441kg、メタアクリル酸メチル45.27kg、アクリル酸エチル7.36kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン77.1gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。メタアクリル酸メチルの転化率が95.4%に到達したところで、トルエン220kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは60400、分子量分布Mw/Mnは1.49であった。
得られたブロック共重合体溶液に対してトルエン30kgを加え、重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を2.03kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を6.10kg添加した。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体溶液約450kgに対し、キョーワード500SH2.44kgを加え反応器内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液にイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)728gを添加、溶解した。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し、重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た。このようにして、目的のアクリル系ブロック共重合体前駆体4のペレットを作製した。
<前駆体4の酸無水物化反応>
上記で得られた前駆体4、100重量部に対して、酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)1重量部を配合し、ベント付二軸押出機(44mm、L/D=42.25)(日本製鋼所(株)製)を用い、150rpmの回転数、ホッパー設置部分のシリンダー温度を100℃とし、その他は全て260℃に温度設定で押出混練して、目的の酸無水物基およびカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを以下「重合体4」と記載する)を得た。押出し時は、ベント口は塞いた。また、この際、二軸押出機の先端に水中カットペレタイザー(GALA INDUSTRIES INC.製CLS−6−8.1 COMPACT LAB SYSTEM)を接続し、水中カットペレタイザーの循環水中に防着剤としてアルフローH−50ES(日本油脂株式会社製)を添加することで、防着性のない球形状のペレットを得た。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変換は、製造例2と同様にして確認した。
(製造例5)
(MMA−co−BA)−b−BA−b−(MMA−co−BA)型アクリル系ブロック共重合体(以下「重合体5」と記載する)の合成
重合体5を得るために以下の操作を行なった。
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅5.7g(40ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)59gを加えた。30分間70℃で加熱攪拌したのち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル8.0g(22ミリモル)およびBA671g(5.2モル)を加えた。85℃で加熱攪拌し、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン0.69g(4.0ミリモル)を加えて重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が94.5%の時点で、MMA391g(3.9モル)、BA61g(0.47モル)、塩化銅4.0g(40ミリモル)、ペンタメチルジエチレントリアミン0.69g(4.0ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)841gを加えた。同様にして、MMA、BAの転化率を決定した。MMAの転化率が90.5%、MMA/BA添加直後のBA濃度を基準としたBAの転化率が67.1%の時点で、トルエン1500gを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
反応溶液をトルエン700gで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物16.0gを加えて室温で3時間撹拌し、析出した固形分を濾過で除いた。得られたポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学(株)製)を16.0g加えて室温でさらに1時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的の重合体5を得た。
得られた重合体5のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnは62600、分子量分布Mw/Mnは1.44であった。
(製造例6)
(MMA−co−BA)−b−BA−b−(MMA−co−BA)型アクリル系ブロック共重合体−2(以下「重合体6」と略称する)の合成
重合体6を得るために以下の操作を行なった。
5lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅11.3g(78.5モル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブス3Aで乾燥後窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.7モル)、アクリル酸−n−ブチル804.6g(900.0ml)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりアクリル酸ブチルの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸−n−ブチルの転化率が95%の時点で、メタアクリル酸メチル345.7g(369.3ml)、塩化銅7.8g(78.5mモル)、ペンタメチルジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)、トルエン(モレキュラーシーブス3Aで乾燥後窒素バブリングしたもの)1107.9mlを加えた。同様にして、メタアクリル酸メチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチルの転化率が85%、アクリル−n−酸ブチルの転化率が98%の時点で、トルエン1500mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。反応中常に重合溶液は緑色であった。
反応溶液をトルエン4000mLで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物22.1gを加えて23℃で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いたのち、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SHを9.7g加えて23℃でさらに3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的の重合体6を得た。
得られた重合体6のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnは119200、分子量分布Mw/Mnは1.51であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、BA/MMA=72/28(重量%)であった。
(製造例7)
(MMA−co−BA−)−b−(BA−co−TBA)−b−(MMA−co−BA)型アクリル系ブロック共重合体(以下「前駆体7」と記載する)の合成
前駆体7を得るために以下の操作を行った。
窒素置換した500L反応器にアクリル酸n−ブチル68.57kg、アクリル酸t−ブチル6.40kg、及び臭化第一銅0.625kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.872kgをアセトニトリル6.59kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン75.5gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合の際は、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計3回(合計226.5g)添加した。
転化率が97%に到達したところで、トルエン101.7kg、塩化第一銅0.431kg、メタアクリル酸メチル44.40kg、アクリル酸ブチル10.07kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン75.5gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。転化率が91%に到達したところで、トルエン220kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが74900、分子量分布Mw/Mnが1.39であった。
得られたブロック共重合体溶液に対しトルエン30kgを加えて、重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を1.74kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.48kg添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体溶液約450kgに対し、キョーワード500SH1.86kgを加え反応器内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応器を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液にイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)730gを添加、溶解した。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た。このようにして目的のアクリル系ブロック共重合体前駆体7のペレットを作製した。
<前駆体7の酸無水物化反応>
上記で得られた前駆体7、100重量部に対して、酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)1重量部を配合し、ベント付二軸押出機(44mm、L/D=42.25)(日本製鋼所(株)製)を用い、150rpmの回転数、ホッパー設置部分のシリンダー温度を100℃とし、その他は全て260℃に温度設定で押出混練して、目的の酸無水物基およびカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを以下「重合体7」と記載する)を得た。押出し時は、ベント口は塞いた。また、この時、二軸押出機の先端に水中カットペレタイザー(GALA INDUSTRIES INC.製CLS−6−8.1 COMPACT LAB SYSTEM)を接続し、水中カットペレタイザーの循環水中に防着剤としてアルフローH−50ES(日本油脂株式会社製)を添加することで、防着性のない球形状のペレットを得た。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変換は、製造例1と同様にして確認した。
(実施例1)
製造例1で得られた重合体1;100重量部(700g)に対し、オールアクリルで、エポキシ基を1分子中に1.1個以上(概算値4個(カタログより))含有するアクリル系重合体であるARUFON XG4010(東亞合成(株)製)10重量部、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、ソフトン3200)43重量部、 カーボンブラック(旭カーボン(株)製、旭#15)1.4重量部の割合で、100℃に設定したDS1−5MHB−E型ニーダー(株式会社モリヤマ製)を用いて、約50rpmで約30分間溶融混練して、ブロック状サンプルを得た。この際、樹脂温度が130℃を超えそうになった時点で、適宜回転数を低下させた。
得られたサンプルを、皮シボ金属板を用い、設定温度200℃で5分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、皮シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、スクラッチ試験を実施した。結果を表1に示す。また、上記で得られたブロック状サンプルを粉砕したパウダーにて、パウダースラッシュ性試験を実施した。さらに、パウダースラッシュ性試験にて得られたシートを用いて、耐エタノール性、耐油性、ウレタン接着性、耐熱性試験を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
製造例2で得られた重合体2;100重量部に対し、アクリル系重合体であるARUFON XG4010(東亞合成(株)製)10重量部、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、ソフトン3200)43重量部、 カーボンブラック(旭カーボン(株)製、旭#15)1.4重量部の割合で、ベント付二軸押出機LABOTEX30HSS(日本製鋼所(株)製)を用い、100rpmの回転数、シリンダー温度をすべて80℃として押出混練して、ペレット状サンプルを得た。
得られたサンプルを、皮シボ金属板を用い、設定温度200℃で5分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50))成形し、皮シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、スクラッチ試験を実施した。結果を表1に示す。また、上記で得られたブロック状サンプルを粉砕したパウダーにてパウダースラッシュ性試験を実施した。さらに、パウダースラッシュ性試験にて得られたシートを用いて、耐エタノール性、耐油性、ウレタン接着性、耐熱性試験を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2の重合体2を重合体3に変更した以外は、実施例2と同様に操作を行って、ペレット状サンプルおよび成形体を得て、これらを用いて同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例2の重合体2を重合体4に変更した以外は、実施例2と同様に操作を行って、ペレット状サンプルおよび成形体を得て、これらを用いて同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
製造例5で得られた重合体2;100重量部(38g)に対し、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、旭#15)1.4重量部、irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))0.6重量部、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、ソフトン3200)43重量部の割合で、190℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機(株)製)を用いて100rpmで15分間、溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。
得られたサンプルを、皮シボ金属板を用いて、設定温度200℃で5分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50))成形し、皮シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、耐エタノール性、耐油性、ウレタン接着性、耐熱性、スクラッチ性試験を測定した。結果を表1に示す。また、上記で得られたブロック状サンプルを粉砕したパウダーにてパウダースラッシュ性試験を実施した。結果を表1に示す。表1からわかるように、アクリル系ブロック共重合体(A)中に酸無水物基等を含有しない組成物は、パウダースラッシュ成形性は優れるが、耐熱性、ウレタン接着性、スクラッチ性は劣ることがわかる。
(比較例2)
比較例1の重合体5に替えて重合体6を用いた以外は比較例1と同様に操作を行ってブロック状サンプルおよび成形体を得て、これらを用いて同様に評価を行った。結果を表1に示す。表1からわかるように、アクリル系ブロック共重合体(A)中に酸無水物基等を含有しない組成物は、耐熱性は優れるが、パウダースラッシュ成形性、ウレタン接着性、スクラッチ性は劣ることがわかる。
(比較例3)
実施例2の重合体2を製造例7の重合体1に変更した以外は、実施例1と同様に操作を行って、ブロック状サンプルおよび成形体を得て、これらを用いて同様に評価を行った。結果を表1に示す。表1からわかるように、アクリル系ブロック共重合体(A)のメタアクリル系重合体ブロック(a)にアクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルを含有しない組成物は耐エタノール性、耐油性、耐熱性、パウダースラッシュ成形性、ウレタン接着性は優れるが、スクラッチ性は劣ることがわかる。
(比較例4)
実施例4のARUFON XG4010(東亞合成(株)製)に替えて、オールアクリルで、分子中にエポキシ基を含まないアクリル系重合体であるARUFON UP−1000(東亞合成(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様に操作を行ってブロック状サンプルを得、評価した。結果を表1に示す。エポキシ基を含まないアクリル系重合体を用いた場合は、パウダースラッシュ成形性は優れるが、耐エタノール性、耐油性、耐熱性、ウレタン接着性、スクラッチ性は劣ることがわかる。
Figure 2006104419
表1(実施例1〜4および比較例1〜4)から明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、パウダースラッシュ成形性に優れるばかりでなく、得られた成形体の耐熱性が、ブロック体だけのものに比べて向上していることがわかる。また、耐エタノール性や耐油性、スクラッチ性にも優れることがわかる。さらに、適宜、可塑剤や滑剤を添加したり、フィラー種を変更することにより、成形性やスクラッチ性等をより改善することができることがわかる。さらに、得られたシートを自動車用表皮材として用いる場合、一般的には、基材として用いられているポリウレタン等にシートを接着する必要があるが、本発明に係る組成物は、良好な接着性を示すことがわかる。

Claims (18)

  1. 下記のアクリル系ブロック共重合体(A)と、1分子中に少なくとも1.1個以上のエポキシ基を有するアクリル系重合体(B)とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
    アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなり、これらの重合体ブロックのうち少なくとも一方に酸無水物基および/またはカルボキシル基を有し、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルと、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−2−メトキシエチルとからなるブロック共重合体である。
  2. 酸無水物基および/またはカルボキシル基が、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に存在し、酸無水物基が一般式(1):
    Figure 2006104419
    (式中、R1は水素またはメチル基で、2つのR1は互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表されることを特徴とする請求項1熱可塑性エラストマー組成物。
  3. アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)10〜60重量%と、アクリル系重合体ブロック(b)90〜40重量%とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルとアクリル酸エチルからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度が、25〜130℃であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な異種のアクリル酸エステルおよび/又はビニル系単量体50〜0重量%とからなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、30,000〜200,000であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.8以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が、30,000以下であることを特徴とする請求1から9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  11. アクリル系重合体(B)のガラス転移温度が、100℃以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  12. アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が、500〜10,000であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  13. アクリル系重合体(B)の粘度が、35,000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  14. アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、さらに充填剤を5〜200重量部添加したことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  15. アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、さらに滑剤を0.1〜20重量部添加したことを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  16. 請求項1から15のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とするパウダースラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。
  17. 請求項1から16のいずれかに記載の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする成形品。
  18. 請求項1から16のいずれかに記載の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮。
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