JP2008007639A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、特に、貯蔵安定性および成形時の溶融流動性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を得ることである。
【解決手段】 メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、水酸基(c)及び/またはカルボキシル基(d)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、一部またはすべてのイソシアネート基が熱解離性ブロック剤で封鎖されているブロックイソシアネート化合物(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、成形性、耐熱性、および貯蔵安定性に優れた熱可塑性エラストマー組成物に関する。また、パウダースラッシュ成形に好適な組成物およびその組成物を用いたパウダースラッシュ成形品に関する。
メタアクリル酸メチルなどをハードセグメント、アクリル酸ブチルなどをソフトセグメントに有するアクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとしての特性を有することが知られている。ブロック体を構成する成分を適宜選択することで、スチレン系ブロック体などの他の熱可塑性エラストマーに比べて極めて柔軟なエラストマーを与えることも可能である。
また、アクリル系ブロック共重合体は、耐候性、耐熱性、耐油性、に優れるという特徴を有している。さらに、特許文献1には、イニファーター法で製造したメタアクリルブロックとアクリルブロックを有するアクリル系ブロック共重合体が優れた機械特性(引張強度や伸び等)を示すことが記載されている。
このようなアクリル系ブロック共重合体の特性を活かした用途として、種々の表皮材や内装材がある。また、その他触感を活かした用途として、直接人手に触れる部材用途の材料がある。
これら表皮材などに必要な物性としては、機械特性(引張強度や伸び等)、耐擦り傷性、耐熱性、歪回復性などに加えて、接触可能性のある薬剤に対する耐性がある。さらに、表皮と基材とを直接接着させる場合には、表皮と基材との接着性、表皮と基材との間に緩衝材を設ける場合には、表皮と緩衝材との接着性が挙げられる。
この表皮材の成形方法として、軟質の粉末材料を用いた、粉末成形法であるパウダースラッシュ成形法がある。この方法は、インストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮の成形に広く採用されている。これは、パウダースラッシュ成形法によれば、ソフトな感触の製品が得られ、皮シボやステッチを製品に設けることができることや、設計自由度が大きいこと、意匠性が良好なこと等による。この成形方法は、射出成形や圧縮成形といった他の成形方法とは異なり、成形の際に賦形圧力をかけない。このため、成形時に粉末材料を複雑な形状の金型に均一に付着させる必要があり、粉体は流動性に優れることが要求される。それと同時に、金型に付着した粉体が溶融した際、無加圧下でも流動して皮膜を形成する必要がある。一方、成形された表皮材は、例えば自動車用材料の場合には100℃付近の高温でも、シボ模様が変形しないなどの耐熱性が要求される。このような材料として、アクリル系ブロック共重合体にカルボキシル基や酸無水物基を導入し、成形時に高分子量化または架橋反応させることで、溶融流動性と耐熱性の両立させた組成物が報告されている(特許文献2、3)。
しかし、従来のアクリル系ブロック共重合体を用いた組成物では、貯蔵時に反応が進行し、経時的に溶融流動性が悪化しやすく、良好な貯蔵安定性を伴うことが困難であった。
特開平1−26619号公報 特開2006−104410号公報 特開2006−104419号公報
本発明の目的は、貯蔵安定性および成形時の溶融流動性に優れ、さらには耐熱性や耐油性、耐薬品性、接着性、柔軟性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を得ることである。
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、所定の構造を有するアクリル系ブロック共重合体と、所定のイソシアネート化合物とを含有し、成形時に高分子量化または架橋させることが可能な組成物とすることにより、上記課題を効果的に解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち本発明は、 メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、水酸基(c)及び/またはカルボキシル基(d)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、一部またはすべてのイソシアネート基が熱解離性ブロック剤で封鎖されているブロックイソシアネート化合物(B)を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、成形性や耐熱性、貯蔵安定性に優れる。このため、本発明の組成物は、パウダースラッシュ成形に好適に使用でき、安定した品質の成形体を得ることが可能である。さらに、アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量や単量体成分、化合物(B)の種類等を適宜選択することにより、耐候性、耐油性、耐薬品性、接着性、柔軟性及び耐磨耗性に優れる組成物とすることが可能である。
本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物は、アクリルブロック共重合体(A)および一部またはすべてのイソシアネート基が熱解離性ブロック剤で封鎖されているブロックイソシアネート化合物(B)を含有する。アクリルブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなり、水酸基及び/またはカルボキシル基を有する。ブロックイソシアネート基を有する化合物(B)は、加熱することによりブロック剤が解離して、イソシアネート基が生成する。
本組成物においては、アクリル系ブロック共重合体(A)の水酸基やカルボキシル基と、ブロックイソシアネート基を有する化合物(B)のイソシアネート基は、通常、成形時に加熱することにより反応して架橋する。その結果、成形体の耐熱性が向上することとなる。ここで、成形前の貯蔵時に反応が進行してしまうと、溶融流動性が低下し、成形性が悪化することになる。ところが、本組成物においては、イソシアネート基がブロック剤でブロックされているため、常温での反応性が低い。従って、優れた貯蔵安定性を示すこととなる。
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、特に問うものではなく、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択すれば良いが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。また、線状ブロック共重合体はいずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や、組成物の物性の点からa−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
水酸基またはカルボキシル基は、メタアクリル系重合体ブロック(a)、アクリル系重合体ブロック(b)のいずれか一方、または両方の重合体ブロックに、一分子当たり1つ以上導入される。その数が2つ以上である場合には、水酸基(c)を有する単量体またはカルボキシル基(d)を有する単量体が重合されている様式はランダム共重合またはブロック共重合であることができる。a−b−a型のトリブロック共重合体を例にとって表すと、(a/z)−b−a型、(a/z)−b−(a/z)型、z−a−b−a型、z−a−b−a−z型、a−(b/z)−a型、a−b−z−a型、a−z−b−z−a型、(a/z)−(b/z)−(a/z)型、z−a−z−b−z−a−z型などのいずれであってもよい。ここでzとは、水酸基(c)またはカルボキシル基(d)を有する単量体単位、あるいは水酸基(c)またはカルボキシル基(d)を有する単量体単位が重合されてなる重合体ブロックを表し、(a/z)とは、メタアクリル系重合体ブロック(a)に単量体単位(c)または(d)が共重合されていることを表し、(b/z)とは、アクリル系重合体ブロック(b)に水酸基(c)またはカルボキシル基(d)を有する単量体単位が共重合されていることを表す。
また、メタアクリル系重合体ブロック(a)あるいはアクリル系重合体ブロック(b)中でzの含有される部位と含有される様式は、目的に応じて適宜設定することができる。
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は、とくに制限されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体系ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。なお、分子量が小さい場合には、エラストマーとして十分な機械特性を発現出来ない場合があり、逆に分子量が必要以上に大きいと、加工特性が低下する場合がある。パウダースラッシュ成形の場合は、無加圧下でも流動する必要があるが、分子量が大きいと溶融粘度が高くなり、成形性が悪くなる場合がある。このような観点から、アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は、数平均分子量で30,000〜200,000が好ましく、より好ましくは35,000〜150,000、さらに好ましくは40,000〜100,000である。
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も、とくに制限はないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとアクリル系ブロック共重合体の均一性が悪化し、機械強度が低下する場合がある。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、メタアクリル系重合体ブロック(a)が5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜10重量%であるのが好ましい。成形時の形状の保持およびエラストマーとしての弾性の観点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)が10〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜40重量%であるのがより好ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)が15〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が85〜50重量%であるのが更に好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと、成形時に形状が保持されにくい傾向があり、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が10重量%より少ないと、エラストマーとしての弾性や柔軟性および成形時の溶融性が低下する傾向がある。
エラストマー組成物の硬度の観点からは、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が少ないと硬度が高くなる傾向があり、エラストマー組成物の必要とされる硬度に応じて適宜組成を設定する。また加工の観点からは、(a)の割合が少ないと粘度が低く、また、(b)の割合が少ないと粘度が高くなる傾向があり、必要とする加工特性に応じて適宜組成を設定する。
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、エラストマー特性およびゴム弾性を付与する点で、どちらか一方の重合体ブロックのガラス転移温度が他方の重合体ブロックのガラス転移温度より高いことが好ましく、ガラス転移温度の調整の容易性から、各ブロックのガラス転移温度(メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgbとする)が下式の関係を満たすことがより好ましい。
Tga>Tgb
重合体(メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b))のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm
1+W2+…+Wm=1
式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表し、Tg1,Tg2,…,Tgmは各重合単量体のガラス転移温度を表す。また、W1,W2,…,Wmは各重合単量体の重量比率を表す。
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989年)記載の値を用いればよい。
なお、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の極性が近すぎたり、ブロックの単量体の連鎖数が少なすぎると、それら測定値と、上記Fox式による計算式とがずれる場合がある。
<<メタアクリル系重合体ブロック(a)>>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。また、水酸基(c)またはカルボキシル基(d)を有する単量体をメタアクリル酸エステルとして含んでいても良い。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である、耐候性などが損なわれる場合がある。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系ブロック体(b)との相溶性などの観点から好ましいものを選択する。
特に、パウダースラッシュ成形の場合は無加圧下でも樹脂が流動する必要があるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)の凝集力やガラス転移温度Tgaが上昇すると、溶融粘度が高くなり、成形性が悪くなる傾向にある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形性の観点および成形性の観点から、25〜130℃が好ましく、より好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは70〜100℃である。この点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルを主成分とするのが望ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度を調整する目的で、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合することが好ましい。このうち、メタアクリル酸メチルとの相溶性の点でアクリル酸エチルが特に好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(a)のTgaの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
<<アクリル系重合体ブロック(b)>>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、アクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。アクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、アクリル酸エステルを用いた場合の特徴である組成物の物性、とくに柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。また、アクリル系重合体ブロック(b)は水酸基またはカルボキシル基(d)を有する単量体をを有する単量体をアクリル酸エステルとして含んでいても良い。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。耐油性と機械特性が必要な場合は、アクリル酸エチルが好ましい。また、低温特性と耐油性の付与、および樹脂の表面タック性の改善が必要な場合は、アクリル酸−2−メトキシエチルが好ましい。また、耐油性および低温特性のバランスが必要な場合は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルを組み合わせて用いるのが好ましい。
アクリル系重合体ブロック(b)は、コストや物性バランスの点で、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよび、アクリル酸−2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/又は他のビニル系単量体50〜0重量%からなることがより好ましい。
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられる前記のものと同様のものをあげることができる。
これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するとよい。
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の柔軟性や、ゴム弾性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より高いと、柔軟性や、ゴム弾性が発現されにくい。
アクリル系重合体ブロック(b)のTgbの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
<<水酸基>>
水酸基は、ブロックイソシアネート化合物(B)のブロック剤が脱離して生成するイソシアネート基と容易に反応する。水酸基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても、側鎖に導入されていても良いが、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から、側鎖中へ導入されていることが好ましい。さらには、導入が容易である点で、水酸基(c)を有する単量体単位をアクリル系ブロック共重合体(A)に導入するのが好ましく、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形体に耐薬品性やゴム弾性を付与しつつ、高温での機械特性を保持させるために、メタアクリル系重合体ブロック(a)および/またはアクリル系重合体ブロック(b)に、一分子当たり1つ以上導入するのが好ましい。
本発明において、水酸基は、ブロックイソシアネート化合物(B)との反応点として作用すればよく、ブロック共重合体が高分子量化または架橋されるための反応点または架橋点として作用することが好ましい。
水酸基の含有数は、ブロックイソシアネート化合物(B)との反応性、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度によって変化させる。その数は必要に応じて適宜設定する必要があるが、ブロック共重合体1分子あたり1.0個以上であるのが好ましく、より好ましくは2.0個以上とする。これは、1.0個より少なくなると、ブロック共重合体の高分子量化や架橋による耐熱性向上が不十分になる場合があるためである。
水酸基のブロック共重合体(A)への導入方法は、特に限定されないが、水酸基を含有する(メタ)アクリルモノマーをブロック共重合体(A)の重合時に直接重合してもよく、ブロック共重合体(A)を重合した後に、ジオール成分にてエステル化反応やエステル交換反応を利用して導入しても良い。反応が容易である点から、水酸基を含有する(メタ)アクリルモノマーをブロック共重合体(A)の重合時に直接重合することが好ましい。ここで、本願において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタアクリルを意味する。
具体的な(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、ブレンマーEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーP(日本油脂(株))、ブレンマーPPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPEPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAEPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPETシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAETシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPPTシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAPTシリーズ(日本油脂(株))などが例示される。
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルが重合が容易である点や、入手容易性の点で好ましい。さらには、得られる熱可塑性エラストマー組成物の長期保存時に水酸基とブロックイソシアネート基のブロック剤が熱解離して生成するイソシアネート基が反応して、成形性が悪化することを抑制する(長期にわたる貯蔵安定性を良好に保つ)観点から、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルがより好ましい。
また、水酸基(c)を有する単量体単位をメタアクリル系重合体ブロック(a)に含む場合は、水酸基含有メタアクリル酸エステル誘導体であることが好ましく、アクリル系重合体ブロック(b)に含む場合は、水酸基含有アクリル酸エステル誘導体であることが好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)に含む場合に水酸基含有アクリル酸エステル誘導体である場合や、アクリル系重合体ブロック(b)に含む場合に水酸基含有メタアクリル酸エステル誘導体である場合は、アクリル系ブロック共重合体(A)の重合操作が煩雑になったり、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の差が小さくなり、アクリル系ブロック共重合体(A)のゴム弾性が低下する傾向にある。
<<カルボキシル基>>
カルボキシル基はブロックイソシアネート化合物(B)のブロック剤が脱離して生成するイソシアネート基と容易に反応する。カルボキシル基は、アクリル系ブロック共重合体(A)の主鎖中に導入されていても、側鎖に導入されていても良いが、アクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易性から、主鎖中へ導入されていることが好ましい。
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒を被毒することがない場合は、直接重合により導入することが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させる場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入するのが好ましい。
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法では、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに公知の化学反応でカルボキシル基を生成させることができる。
例えば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法(特開平10−298248号公報、特開2001−234146号公報)や、例えば、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどの単位量を含むアクリル系ブロック共重合体を合成し、溶融混練する方法(特開2006−104419号公報)により導入する方法により導入することができる。
<<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>>
アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、とくに限定されないが、開始剤を用いた制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられる。なかでも、リビングラジカル重合が、アクリル系ブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、第116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、第27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合が好ましい。
原子移動ラジカル重合の具体例としては、特開2004−107447号公報に記載されている方法があり、本発明で用いられるアクリル系ブロック共重合体(A)も同様にして重合を行うことが可能である。
<ブロックイソシアネート化合物(B)>
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物を構成するブロックイソシアネート化合物(B)は、一部またはすべてのイソシアネート基が熱解離性ブロック剤で封鎖されている。ブロックイソシアネート化合物(B)は、成形時にブロック化剤が熱解離してイソシアネート基が生成する。また生成と同時に、アクリル系ブロック共重合体(A)中の水酸基またはカルボキシル基と反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)を高分子量化あるいは架橋させることが可能である。
イソシアネート基は、1分子あたり、平均して1.1個以上存在しているのが好ましく、より好ましくは1.5個以上、さらに好ましくは2.0個以上存在させる。その数は、イソシアネート基の反応性、イソシアネート基の含有される部位および様式、ブロック化剤の種類、ブロック化剤により封鎖される数、アクリル系ブロック共重合体(A)1分子当たりの水酸基またはカルボキシル基の含有数や部位および様式に応じて変化させる。イソシアネート基の含有数が1.1個より少なくなると、ブロック共重合体を高分子量化、あるいは架橋が不十分になり、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性が不十分になる傾向がある。
また、貯蔵安定性の観点からは、少なくとも1つのイソシアネート基、特に実質的にすべてのイソシアネート基が熱解離性ブロック剤で封鎖されているブロックイソシアネート化合物を用いるのがより好ましく、なかでも熱解離性ブロック基の熱解離温度が100〜200℃、特に120〜180℃のブロックイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。熱解離温度が200℃を超えると、成形時のアクリル系ブロック共重合体(A)との反応性が低下する傾向にある。また、100℃より低いと貯蔵安定性が悪化する傾向にある。
本発明に使用されるブロック化ポリイソシアネート化合物(B)のブロック化前のイソシアネート化合物としては、たとえばジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のポリイソシアネート類、各種ポリオール類とポリイソシアネート化合物等から得られるイソシアネートプレポリマー類等が好適に使用できる。なかでも耐光性の観点からは、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましく、入手性およびアクリル系ブロック共重合体との相溶性の観点からは、ジフェニルメタンジイソシアネート(なかでも4,4‘―ジフェニルメタンジイソシアネート)、入手性および耐光性の観点からは、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
本発明に使用されるブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の熱解離性ブロック化剤は特に限定されないが、熱解離温度及びアクリル系ブロック共重合体(A)との反応性、コストの点から、エチレンイミン、メチルエチルケトオキシム、ε―カプロラクタムから選ばれる1種以上の化合物、特にエチレンイミン及び/又はメチルエチルケトオキシム、特にメチルエチルケトオキシムを少なくとも用いるのがより好ましい。
好適なブロックイソシアネート化合物(B)の具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアネート基をεカプロラクタム及び/又はエチレンイミンで封鎖してなるブロックイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート基をメチルエチルケトオキシムで封鎖してなるブロックイソシアネート、イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基をメチルケトオキシムで封鎖してなるブロックイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートをエチレンイミンで封鎖してなるブロックイソシアネート等が挙げられる。
なかでも、入手性や、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート基をメチルエチルケトオキシムで封鎖してなるブロックイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートをエチレンイミンで封鎖してなるブロックイソシアネート<すなわちジフェニルメタンービス(4,4’―エチレンイミン)>及び/又はメチルエチルケトオキシムで封鎖してなるブロックイソシアネート<すなわちジフェニルメタン−ビス−4,4’−メチルエチルケトオキシカルバメート>であるのが好ましい。特にジフェニルメタン−ビス−4,4’−メチルエチルケトオキシカルバメートは好適に使用できる。
ブロックイソシアネート化合物(B)は、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.5〜50重量部の範囲で使用するのが好ましく、1〜30重量部の範囲で使用するのがより好ましく、1.5〜20重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が0.5重量部未満の場合には、成形性や得られる成形体の耐熱性が十分でないことがあり、50重量部を超えると得られる組成物の機械特性や耐候性が低下する傾向にある。
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、溶融粘度が低く成形性に優れる一方、成形時にアクリル系ブロック共重合体(A)中の水酸基またはカルボキシル基と、ブロックイソシアネート化合物(B)中のブロック化剤が熱解離して生成したイソシアネート基とが反応して、アクリル系ブロック共重合体(A)が高分子量化あるいは架橋することが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱材可塑性エラストマー組成物および得られる成形体の諸物性の調整を目的として、必要に応じて、添加剤として、充填材、滑材、安定剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などを配合しても良い。また、アクリル系ブロック共重合体(A)とブロックイソシアネート化合物(B)との反応を促進するためにアミン類や錫類等の硬化触媒を添加しても良い。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
熱可塑性エラストマー組成物は、その製造方法には特に制限はなく、バッチ式混錬装置や連続混錬装置を用いることにより、製造することができる。バッチ式混練装置としては、例えば、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーを使用できる。また、連続混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いることができる。さらに、機械的に混合し、ペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。
熱可塑性エラストマー組成物を製造するための混練時の温度は、アクリル系ブロック共重合体(A)とブロックイソシアネート化合物(B)との反応による成形性低下が生じない温度が好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)およびブロックイソシアネート化合物(B)が反応して成形性が悪化する温度は、熱解離ブロック化剤の解離温度、水酸基またはカルボキシル基の種類、ブロックイソシアネート化合物(B)の種類、導入量、アクリル系ブロック共重合体(A)やブロックイソシアネート化合物(B)の組成、アクリル系ブロック共重合体(A)とブロックイソシアネート化合物(B)の相溶性などによって決まる。このため、これらの条件を変更することにより、所望の温度で反応するように設定する。ここで、水酸基またはカルボキシル基が反応する温度は、得られる組成物の成形を可能とするため、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
なお、高分子量化や架橋が起こらない温度で混練することが好ましいが、一部高分子量化や部分的に架橋が起こっても、成形可能な程度であればよい。
また、パウダースラッシュ成形の場合は、熱可塑性エラストマー組成物を粉体として得ることが好ましい。粉体を得る方法としては、上記の方法で加工したブロック状態またはペレット状態の熱可塑性エラストマー組成物を、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル、遠心ミル等の衝撃型微粉砕機を用いて、微粉砕する方法がある。粉砕は、通常は常温で行うが、冷媒や冷却設備を使用して機械粉砕することもできる。
<熱可塑性エラストマー組成物の成形方法>
熱可塑性エラストマーの製造方法の項で得られた組成物は、種々の方法で成形できる。例えば、パウダースラッシュ成形、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出ブロー成形、押出成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形などに適用可能であるが、パウダースラッシュ成形がより好適に使用される。ここで、パウダースラッシュ成形とは、組成物パウダーを高温に加熱された成形金型に流し込み、溶融成形させ、ある一定時間経過後に冷却固化された成形体を取り出す方法である。パウダースラッシュ成形では、組成物が無加圧下でも流動して溶融成形される必要がある一方、成形後の成形体は100℃以上の使用環境に曝される。このことから、成形性と耐熱性とのバランスをとることが困難である。
しかし、本発明の組成物は、成形前はアクリル系ブロック共重合体(A)とブロックイソシアネート化合物(B)が未反応の状態であるため、金型内での溶融性に優れる一方、冷却固化されるまでの一定時間内に、ブロックイソシアネート化合物(B)のブロック化剤が熱解離してイソシアネート基を生成し、生成したイソシアネート基をアクリル系ブロック共重合体(A)とが反応し、アクリル系ブロック共重合体(A)が高分子量化あるいは架橋されて成形後の耐熱性が向上する。このことから、パウダースラッシュ成形に好適な材料であるといえる。
なお、パウダースラッシュ成形において、アクリル系ブロック共重合体(A)が高分子量化あるいは架橋されることによって成形後の耐熱性が向上するが、アクリル系ブロック共重合体(A)の高分子量化によって耐熱性を付与する場合には、成形後のアクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量が100,000以上となるようにすることが好ましく、150,000以上とすることがより好ましく、200,000以上とすることがさらに好ましい。数平均分子量が100,000より低いと耐熱性の改善効果が低くなる。このような点からは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、数平均分子量40,000以上のアクリル系ブロック共重合体(A)を用いることが好ましい。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例におけるBA、EA、HEA、AA、MMAはそれぞれ、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタアクリル酸メチルを表す。また、実施例中に記載した分子量や重合反応の転化率、各物性評価は、以下の方法に従って行った。
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムSupelcowax−10、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度60℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、酢酸ブチルまたはアセトニトリルを内部標準物質とした。
<耐油性試験>
本実施例および比較例に示す耐油性は、以下に示す条件で測定した。
実施例および比較例にて作製したシボ模様のシートを平面に設置し、ピペットにて流動パラフィン(ナカライテスク(株)製)を1滴滴下し、24時間室温で放置した。その後、流動パラフィンをキムワイプ(登録商標)((株)クレシア製)でふき取り、表面を目視で観察し、跡のないものを○、白化がみとめられるものを×で評価した。
<耐熱性試験>
本実施例および比較例に示す耐熱性は以下に示す条件で測定した。
実施例および比較例にて作製したシボ模様のシートを24時間120℃で放置した。その後、表面を目視で観察し、シボ模様の変化が認められないものを○、シボ模様の変化が認められるものを×とした。
<ウレタン接着性試験>
実施例に従って組成物をプレス成型して表皮材を作成した。主成分が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであるカートリッジタイプポリウレタン(エアータイト(株)製)を金属板上に塗布し、すぐにその発泡体上に表皮材を載せ接着させた。12時間以上経過した後(完全に発泡体が硬化している状態)で、発泡ウレタンから表皮材を手で剥離させて破壊の状態を観察し、ウレタン材料で破壊が起こっているものを○、シートとウレタンの界面で一部破壊が起こっていたり、完全に破壊が起こっているものを×とした。
<パウダースラッシュ性試験>
本実施例および比較例に示す成形時の樹脂の溶融流動性(パウダースラッシュ性)は以下に示す方法で評価した。
実施例および比較例に従って、組成物の塊を作成した。ドライアイスで冷却した小型粉砕機SK−M2(協立理工(株)製)に組成物の塊を投入し、ドライアイスを加えつつ粉砕した。得られたパウダーを、以下の条件にて評価した。得られたパウダーを200℃に加熱した皮シボ金属板上に薄く広げて載せ、溶融状態を目視にて観察した。
評価指標:パウダーが完全に溶融するもの:○、パウダーに一部溶け残りがあるもの:△、パウダーが溶融しないもの:×として評価した。
<貯蔵安定性試験>
本実施例および比較例に示す組成物の貯蔵安定性は以下に示す方法で評価した。
組成物を80℃オーブン中に放置し、経時(6日、12日)での溶融流動性(MFR)を測定することにより評価した。MFR(g/10min)は(株)島津製作所製の高化式フローテスターCFT−500C型を用いて180℃、余熱時間30秒で加熱された組成物を荷重20kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出したときに、10分間に押出される樹脂量(本測定器においてはMFRと表示される)とした。この際、比重は1.0として算出した。貯蔵安定性は、MFRの初期値を100%として、12日放置後のMFRの値が初期値に対して50%以上の場合を○、50%以下の場合を×とした。
(製造例1)
(MMA−co−EA)−b−(BA−co−HEA)−b−(MMA−co−EA)型アクリル系ブロック共重合体−1(以下「重合体1」と記載する)の合成
重合体1を得るために以下の操作を行なった。
5Lの耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅5.38g(37ミリモル)、BA608g(4.75モル)およびHEA24g(211ミリモル)を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル7.5g(21ミリモル)をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)55gに溶解させた溶液を仕込み、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。内温が75℃に到達した時点で、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン0.65g(4ミリモル)を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液約0.2mLをサンプリングし、これをガスクロマトグラム分析することによりBA、HEAの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計1.3g)添加した。
BAの転化率が99.0%の時点で、MMA385g(3.85モル)、EA63g(0.63モル)、塩化銅3.71g(37ミリモル)、ペンタメチルジエチレントリアミン0.65g(4ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)830gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
アクリル系重合体ブロック重合時と同様にして、MMAの転化率を決定した。MMAを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてMMAの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタアクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計3.9g)添加した。MMAの転化率が94.4%の時点でトルエン1030gを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
得られた反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度が25重量%になるように希釈した。この溶液に p−トルエンスルホン酸一水和物17.1gを加えて室温で3時間撹拌し、析出した固形分を濾過で除いた。
得られたポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学(株)製)を15.6g加えて室温でさらに1時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的の重合体1を得た。一分子当たりの水酸基数は平均10個である(仕込み量から計算)。得られた重合体2のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnは74110、分子量分布Mw/Mnは1.53であった。
(製造例2)
(MMA−co−EA)−b−(BA−co−AA)−b−(MMA−co−EA)型アクリル系ブロック共重合体(以下、重合体2と記載する)の合成
重合体中へのカルボキシル基の導入は、WO2003/068836を参考に行なった。
500Lの耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅639g(4.45モル)、BA71,831g(560モル)およびTBA3,203g(25.0モル)を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル891g(2.47モル)をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)6588gに溶解させた溶液を仕込み、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。内温が75℃に到達した時点で、配位子ペンタメチルジエチレントリアミン77.2g(0.445モル)を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液を約100mLサンプリングし、これをガスクロマトグラム分析することによりBA、TBAの転化率を決定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはアクリル系重合体ブロック重合時に合計2回(合計154g)添加した。
BAの転化率が98.9%、TBAの転化率が99.0%の時点で、MMA45,779g(457モル)、EA7,432g(74.2モル)、塩化銅441g(4.45モル)、ペンタメチルジエチレントリアミン77.2g(0.445モル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)98641gを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
MMA、EAを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてMMA、EAの転化率を決定した。MMA、EAを投入後、内温を85℃に設定した。重合の際、ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。なお、ペンタメチルジエチレントリアミンはメタアクリル系重合体ブロック重合時に合計6回(合計463g)添加した。MMAの転化率が95.9%の時点でトルエン220,000gを加え、反応器を冷却して反応を終了させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは77,400、分子量分布Mw/Mnは1.44であった。得られた反応溶液にトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を1,779g加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を6,116g添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。
得られた濾液に対して、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)750gを添加し、さらに内部標準物質としてTBMAを濾液100wt%に対して0.1wt%を添加した。この溶液を150℃で4時間加熱攪拌した。4時間後、溶液をサンプリングし、GC測定にてTBMAが消失していることを確認して反応終了とし、冷却した。
得られた溶液に対し、キョーワード500SH、9,275gを加え反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。溶液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液にイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)750gと、酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)1,325gを添加した。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た。このようにして重合体2ペレットを作製した。一分子当たりのカルボキシル基数は平均約10個である(仕込み量から計算)。
t−ブチルエステル部位のカルボキシル基への変換効率測定は、280℃熱分解反応によりt−ブチル基から発生するイソブチレン量を定量することにより行った。測定の結果、得られた樹脂の変換効率は95%以上であった。
(実施例1)
製造例1で得られた重合体1をトルエンに溶解し、重合体1;100重量部(40g)に対し、ブロックイソシアネート化合物であるデュラネートE402−B80T(旭化成ケミカルズ(株)製);3.76重量部(有効NCO量:6wt%(カタログ値))を添加、攪拌して溶解した。得られた溶液を80℃で24時間真空乾燥して塊状サンプルを得た。得られた塊状サンプルを用いて、貯蔵安定性を評価した。また、得られた塊状サンプルを粉砕したパウダーにて、パウダースラッシュ性を評価した。さらに、得られたサンプルを、皮シボ金属板を用い、設定温度150℃で8分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、皮シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、耐油性、ウレタン接着性、耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
(比較例1)
製造例1で得られた重合体1をトルエンに溶解し、重合体1;100重量部(40g)に対し、イソシアネート化合物であるジイソシアン酸4、4’−ジフェニルメタン(和光純薬工業(株)製);2.4重量部(イソシアネート基:2個/分子)を添加、攪拌して溶解した。得られた溶液を80℃で24時間真空乾燥して塊状サンプルを得た。得られた塊状サンプルを用いて、貯蔵安定性を評価した。また、得られた塊状サンプルを粉砕したパウダーにて、パウダースラッシュ性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
製造例2で得られた重合体2をトルエンに溶解し、重合体2;100重量部(40g)に対し、オールアクリルで、エポキシ基を1分子中に1.1個以上(概算値4個(カタログより))含有するアクリル系重合体であるARUFON UG4010(東亞合成(株)製)10重量部を添加、攪拌して溶解した。得られた溶液を80℃で24時間真空乾燥して塊状サンプルを得た。得られた塊状サンプルを用いて、貯蔵安定性を評価した。また、得られた塊状サンプルを粉砕したパウダーにて、パウダースラッシュ性を評価した。さらに、得られたサンプルを、皮シボ金属板を用い、設定温度200℃で8分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、皮シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、耐油性、ウレタン接着性、耐熱性試験を実施した。結果を表1に示す。
Figure 2008007639
表1(実施例1および比較例1〜2)からわかるように、比較例1では、イソシアネート基を有する化合物を配合する時点において反応が進行することで、80℃貯蔵前に溶融流動性が失われ、パウダースラッシュ性も有さなかった。80℃貯蔵前に溶融流動性が失われており、良好な成形シートが得られなかったことから、耐油性、ウレタン接着性、耐熱性試験は評価できなかった。比較例2では、80℃貯蔵前の溶融流動性は良好であったが、貯蔵時に反応が進行して溶融流動性が低下していた。
一方、本発明にかかる組成物であるブロックイソシアネート化合物を用いたサンプルは、溶融流動性および貯蔵安定性に優れるばかりでなく、得られた成形体の耐熱性や耐油性にも優れることがわかる。さらに、得られたシートを自動車用表皮材として用いる場合、一般的には、基材として用いられているポリウレタン等にシートを接着する必要があるが、本発明に係る組成物は、良好な接着性を示すことがわかる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、配合や構成単量体成分等を調整することにより、耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐油性、接着性、柔軟性に優れたものとすることができる。
このような組成物は、表皮材料、タッチパネル等の良好な触感が求められる材料、外観が重要視される材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような材料として使用することができる。また、その形状としてはシート状、平板状、フィルム状、小型成形体、大型成形体その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材粘着剤として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。この中でも、自動車内装用表皮に好適に使用される。

Claims (12)

  1. メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、水酸基(c)及び/またはカルボキシル基(d)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)と、一部またはすべてのイソシアネート基が熱解離性ブロック剤で封鎖されているブロックイソシアネート化合物(B)を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 熱解離性ブロック剤がエチレンイミン、メチルエチルケトオキシム、ε―カプロラクタムから選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)10〜60重量%と、アクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)90〜40重量%からなることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が40,000〜100,000であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度が25〜130℃であることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、ブロックイソシアネート化合物(B)を1〜30重量部含有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とするパウダースラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする成形品。
  11. 請求項1から9のいずれかに記載の組成物をパウダースラッシュ成形して成ることを特徴とする自動車内装用表皮。
  12. 請求項1から8のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
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