JP2008291000A - 徐放性歯科用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水混和性多官能性ラジカル重合性単量体、水、ラジカル重合開始剤、粘度調整剤、ならびに歯周組織に対する薬効剤、殺菌剤および消毒剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を含有する徐放性歯科用組成物。
【選択図】なし
Description
これら薬剤による化学療法の投与方法には、薬剤の経口投与あるいは患部への直接塗布があげられるが、全身的な副作用を惹起せずに、局所に必要な薬効濃度を得ることができることから、直接塗布の方法が好ましく用いられる。しかしながら、健全組織、とりわけ口腔粘膜に対するこれら薬剤の感作性などの悪影響が懸念され、適用部周囲からの薬剤の流出などが問題とされ、治療現場においては、ラバーダム、綿球などにより不必要な部分への流出を防ぐ方法が用いられるが、根本的解決に至っていない。また常に唾液の流れがある口腔内という環境においては、必要な薬剤を局所に滞留させることは困難を極める。
また、特許文献2には疎水性軟膏基材、多価アルコール、およびアルミニウムからなる徐放性軟膏組成物が提案されているが、軟膏組成物であるため、組成物適用後の口腔内に不快感が残る点では、患者に不都合を与える結果となり、さらなる改良が求められている。
(A)水混和性多官能性ラジカル重合性単量体、
(B)水、
(C)ラジカル重合開始剤、
(D)粘度調整剤、および
(E)歯周組織に対する薬効剤、殺菌剤および消毒剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤、
を含有することを特徴とする徐放性歯科用組成物により達成されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の徐放性歯科用組成物は、上述の構成により、水性ペースト状の形態であり、例えば、遮光性のシリンジに充填した本組成物を治療を要する部分に直接絞り出して塗布し、硬化させることにより配合する薬剤を患部に効果的に滞留させうるとともに、必要量の有効成分を組織へ徐放させることが可能である。さらに塗布した組成物が不必要な部分に広がるような流動性は有していないこと、塗布後容易な操作で硬化するような重合性を有していること、固化物である硬化ゲルが容易に変形することがなく、固化した組成物が容易に除去できること、加えて歯肉などに対して為害性がないこと、などの特性を有している。
本発明の徐放性歯科用組成物における(A)成分は水混和性多官能性ラジカル重合性単量体である。本明細書において、水混和性単量体とは25℃において該単量体を5重量%含む水との混合物が均一となる単量体を指し、好ましくは20重量%含む水との混合物が均一となるものを示す。均一とは、両者が均質な溶液となるか、あるいは、コロイドとなり、混合後24時間、好ましくは1年間、さらに好ましくは3年間経ても沈殿を生じないことを意味する。コロイドの粒子径は、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。また、多官能性とは、分子内にラジカル重合性基を少なくとも2つ、好ましくは2〜4つ含む単量体を示す。さらに重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、好ましい具体例としては、ビニル基、シアン化ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアマイド基などをあげることができる。
また、重合して(B)水を包含してゲル状になるのに差し支えなければ、エチレングリコール以外のアルキレングリコール(−(CH2)n−O−、n=1、3、4等)やウレタン構造(−NH−CO−O−)やアミド構造(−NH−CO−)等のその他の置換基や分子鎖構造を、その式量が該単量体の分子量を基準に好ましく50%以下、さらに好ましくは15%以下にて有する単量体であってもよい。また分子の両末端部近傍に重合性基を有することが好ましい。但し、前記その他の置換基や分子鎖構造として、芳香環やシクロ環等の疎水性が高いものや、カルボキシル基等の保存安定性が低いものは好ましくないことがある。(メタ)アクリレート以外のエステルも好ましくないことがある。
本発明の徐放性歯科用組成物は、上記のように(A)水混和性多官能重合性単量体を含有するものであるが、組成物の操作性や硬化後の硬さを調整するなどの目的で所望により上記の(A)水混和性多官能重合性単量体以外の重合性単量体(M)を含有していてもよい。(M)成分は、(A)水混和性多官能重合性単量体と(B)水の混合物に溶解して均一な組成物を形成できるものであれば特に限定されない。このような重合性単量体には、単官能重合性単量体(M1)と水混和性でない多官能重合性単量体(M2)とがある。
2−ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ハイドロキシブチル(メタ)アクリレート等のハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;
1,2−または2,3−ジハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリハイドロキシ)アルキル(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;
(テトラハイドロフラン−2−イル)(メタ)アクリレートなどの複素環を有する(メタ)アクリレート;
パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート等の酸性基を含有する(メタ)アクリレート;
3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートなどの (メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;
4−スチレンスルホン酸等の酸性基を含有するビニル化合物;
メチル(メタ)アクリルアマイド、2,3−ジハイドロキシプロピル(メタ)アクリルアマイド、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアマイド−2−メチルプロパンスルホン酸等の上記(メタ)アクリレートに代えて(メタ)アクリルアマイドである化合物
等をあげることができる。
ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン単量体;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのエチレングリコールから誘導される繰り返し単位を平均して1〜4個、特に好ましくは1〜3個有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、メソ−エリスリトールジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタントリオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、ヘキサントリオールのジ(メタ)アクリレート、ヘキサンテトラオールのジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート;
あるいは下記式(1)
下記式(3)で示される脂肪族、脂環族または芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート
さらに下記式(5)で表される分子内にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート
などを挙げることができる。
かかる化合物(Mz)としては、例えば12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、ベンジルビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ドデシルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ドデシルアンモニウムクロライドおよびポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートに10−ウンデセニルアルコールがエーテル付加した化合物などを挙げることができる。
これらの(M)成分は単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の徐放性歯科用組成物における(B)成分は、蒸留水、脱イオン水等、医薬上許容できる水であれば、いずれのものも使用しうる。
本発明の徐放性歯科用組成物における(B)成分の使用量は、組成物の全量を基準に、好ましくは3.98〜49.3重量%、より好ましくは8〜40重量%、さらに好ましくは12〜30重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、配合する薬剤の保持能力が低くなるおそれがあるばかりか、操作性に影響を与え、また、上回ると、組成物の流動性が著しく高くなったり、組成物が硬化しないために、薬剤が局所へ徐放されないおそれがあることから、ともに好ましくない。
本発明の徐放性歯科用組成物において、所望により使用される(Bo)成分の配合量は、組成物の全量を基準に、好ましくは2〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは6〜15重量%の範囲であり、かつ、(B)成分との合計を基準に50重量%を超えない範囲が好ましい。この数値範囲を下回ると、配合の効果が現れず、また、上回ると操作性への悪影響や硬化が著しく劣るおそれがあり、ともに好ましくない。
本発明の徐放性歯科用組成物における(C)成分としては、有機過酸化物、無機過酸化物、α−ジケトン化合物、ホスフィンオキサイド、有機アミン化合物、有機スルホン酸、有機スルフィン酸、無機硫黄化合物、有機リン化合物およびバルビツール酸類をあげることができる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の徐放性歯科用組成物における(C)成分のうち常温化学重合タイプでは、過酸化物(C1)を使用することができる。具体的な(C1)の例として、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドおよびp,p’−ジニトロジベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、ならびに、過硫酸アンモニウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物をあげることができる。
本発明の徐放性歯科用組成物における(C)成分の配合量は、組成物の全量を基準に、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、口腔内での硬化が著しく劣るおそれがあり、上回ると、保存安定性に影響を及ぼすばかりか、硬化時に組成物が高熱を発するおそれがあり、ともに好ましくない。
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジハイドロキシメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリンなどのほか、下記式(6)
で表わされる化合物および/または下記式(7)
で表わされる化合物をあげることができる。
N,N−ジメチルアミノベンズアルデハイド、N,N−ジエチルアミノベンズアルデハイド、N,N−ジプロピルアミノベンズアルデハイド、N−イソプロピル−N−メチルアミノベンズアルデハイドなどで代表される脂肪族アルキルアミノベンズアルデハイド;
N,N−ジメチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジエチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピル−N−メチルアミノアセチルベンゼンなどで代表される脂肪族アルキルアミノアセチルベンゼンおよび脂肪族アルキルアミノアシルベンゼンなどをあげることができる。
これら化合物は単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の徐放性歯科用組成物における(D)成分は、粘度調整剤である。(D)成分を用いることにより、口腔内への適用時操作性が向上し、さらに硬化後の除去が容易となる効果を持つ。
(D)成分としては、例えば無機フィラー(D1a)、有機無機複合フィラー(D1b)、有機フィラー(D1c)および水混和性ポリマー(D2)をあげることができる。
有機フィラー(D1c)の例としては、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、ポリ(プロピル(メタ)アクリレート)などの(A)成分および/または(M)成分に列挙したモノマーの単独あるいは共重合体をあげることができる。
これらフィラーは粒子径が小さいほど少量の添加で粘度の調整が可能になるが、そのほかに徐放性歯科用重合性組成物の塗布感や塗布時の伸びなどの調整も可能である。好ましくは5nm〜50μm、より好ましくは5nm〜5μmの範囲内にある平均粒子径のフィラーの使用が好ましい。
本発明の徐放性歯科用組成物における(D)成分の配合量は、組成物の全量を基準に、好ましくは1〜45重量%、より好ましくは3〜32重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、適用時の粘度が著しく低くなったり、硬化後の組成物の除去が難しくなり、上回ると、適用時の粘度が著しく高くなるおそれがあり、ともに好ましくない。
歯周組織に対する薬効剤としては、例えば抗生物質、抗炎症剤、鎮痛剤、止血剤、血行促進剤、抗ヒスタミン剤をあげることができる。
抗炎症剤としては、例えばβ−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、インドメタシン、イブプロフェン、エピジハイドロコレステリン、ジハイドロコレステロール、ヒノキチオール、セラペプターゼ、プロナーゼ、オウバクエキス、アラントインなどがあげられる。
止血剤としては、例えばルチン、アスコルビン酸、トラネキサム酸、トロンビンなどがあげられる。
血行促進剤としては、例えばビタミンE、塩化ナトリウム、ニコチン酸−dl−α−トコフェロールなどがあげられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えばシメチジン、マレイン酸クロルフェラミン、塩酸プロメタジン、塩酸ジフェンヒドラミンなどをあげることができる。
殺菌剤としては、例えば塩酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、グリチルリチン酸ジカリウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化ベンゼトニウムなどをあげることができる。
消毒剤としては、過酸化水素、ヨードグリセリン、ヨードチンキ、クロラミン、アクリノール、ポピドンヨードなどをあげることができる。
また、組織への放出速度をコントロールする目的で、あるいは安定性を付与する目的で、所望により、これら化合物を従来公知の方法、例えば、マイクロカプセル化、ポリマーコーティング、多孔質への吸着等の前処理を行った後に配合しても構わない。
本発明の徐放性歯科用組成物における(E)成分の配合量は、組成物の全量を基準に、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.02〜15重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。この範囲を下回ると薬効が期待できず、上回る場合には副作用が懸念され、ともに好ましくない。
4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;
アミラーゼ、ムタナーゼ、デキストラナーゼ、プロテアーゼなどのプラーク溶解剤;
ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の発泡剤;
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマー;
キシリトール、ソルビトール、アスパルテーム、スクラロース、ステビアなどの甘味料;
ソルビトール、l−メントール、リモネンなどの香料;
雲母チタン、酸化チタン、オキシ塩化ビスマス、合成金雲母、マイカ、酸化鉄などの無機顔料;
青色1号、青色404号、赤色106号、赤色201号、赤色220号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、黄色4号、グンジョウ、コンジョウなどの口腔内での組成物の識別を容易にするための着色料;
塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等の金属塩;
レチノール類、リボフラビン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール類、ニコチン酸類などのビタミン類;
アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびこれらの塩および/または水酸化物のほか、トラネキサム酸、タウリン等のアミノ酸類ないしはその類縁体などを挙げることができる。
(2)(A)成分、(B)成分、(D)成分と(E)成分とを含むシリンジ1と(C)成分を含むシリンジ2との2筒式ミックスシリンジに保存し、これら成分を必要時、混合し絞り出すかあるいは筆やスポンジ等を用いて直接患部に塗布する方法、
(3)(A)成分、(B)成分、(D)成分を含むシリンジ1と、(C)成分と(E)成分を含むシリンジ2との2筒式ミックスシリンジに保存し、これら成分を必要時、混合し絞り出すかあるいは筆やスポンジ等を用いて直接患部に塗布する方法、
(4)(A)成分、(B)成分とを含むシリンジ1と(C)成分、(D)成分と(E)成分とを含むシリンジ2との2筒式ミックスシリンジに保存し、これら成分を、必要時、混合し絞り出すかあるいは筆やスポンジ等を用いて直接患部に塗布する方法、
(5)(A)成分を含むシリンジ1と、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分を含むシリンジ2との2筒式ミックスシリンジに保存し、これら成分を、必要時混合し絞り出すかあるいは筆やスポンジ等を用いて直接患部に塗布する方法。
直径6mm、厚さ3mmの円形をくりぬいたテフロン(登録商標)製モールドに組成物を填入し、両面にセロファンをのせ、さらにガラス板にて圧接した。ついで歯科用可視光照射器(キャンデラックスLV−5、モリタ製作所製)にて片面に10秒間可視光を照射し、組成物を硬化させた。ガラス板とセロファンを取り外した後、未硬化物を取り除いて硬化物(硬化ゲル)の厚さを測定した。
経験3年以上の臨床歯科医10人に、以下の操作を行わせた上で所見をアンケートした。
37℃飽和湿度下に設置したブタ下顎の舌側臼歯2本の歯茎部および歯肉に対し、約0.1gの組成物を直接絞り出して塗布した。つづいて歯科用可視光照射器(キャンデラックスLV−5、モリタ製作所製)にて可視光を10秒間照射し、組成物を硬化させ、37℃飽和湿度下で30分間放置後に歯科用エキスカベーター(YDM製、ポピュラータイプ1)を用いて、塗布した組成物を除去するかあるいは、コンポジット錬成充填インスツルメント(ヒューフレッド社製、AB1)のナイフ部分を用いて硬化したゲルを切削した。
経験3年以上の臨床歯科医に絞り出し性能、塗布性能、操作中および硬化・放置中の組成物のたれ、硬化組成物の取り外し性能、硬化組成物の切削・トリミング性能につき、次に示す基準の6段階で判定を行わせ、アンケートを実施した。これにより各性能の最高点を50点、最低点を0点とする評価を行い、各性能につき40点以上を合格とした。評価結果を表1に示す。
絞り出し性能 0:組成物は容易に絞り出すことができなかった。
塗布性能 5:組成物は塗布しやすい。
塗布性能 0:組成物は非常に塗布しにくい。
たれ 5:組成物は操作中および放置中のいずれかにたれを生じなかった。
たれ 0:組成物は操作中および放置中のいずれかにたれを生じた。
除去性能 5:組成物の除去は簡便だった。
除去性能 0:組成物の除去が著しく難しかった。
切削・トリミング性能 5:組成物の切削・トリミング性能は簡便だった。
切削・トリミング性能 0:組成物の切削・トリミング性能は著しく難しかった。
チオペンタールナトリウムにて全身麻酔を施した6週齢Sprague−Dawley系ラットの上顎第一臼歯から第三臼歯にかけての口蓋側歯肉に組成物を塗布、組成物に歯科用可視光照射器(キャンデラックスLV−5、モリタ製作所製)にて可視光を10秒間照射し、組成物を硬化させ、1時間後に口腔内から硬化した組成物を除去した。除去直後、除去より6時間後、除去より1日後、除去より3日後にラットを屠殺、パラホルムアルデハイドにより灌流固定した。上顎を摘出し、通法に従い、脱灰、パラフィン包埋し、厚さ3μmの前頭断切片を得た。切片にヘマトキシリン・エオジン重染色を施し、組成物を適用した部位の光学顕微鏡観察を行い、処置を行わない、正常組織と比較した。
上述の光硬化性評価にて作製したものと同じ硬化物を作製し、ただちにリン酸緩衝生理食塩水5mlに浸漬、37℃にて放置した。浸漬より10分、30分、1時間および6時間経過後にデカンテーションにてリン酸緩衝生理食塩水を取り出し、次に示す分析条件の溶離液にて希釈、リン酸緩衝生理食塩水中に溶出した塩酸クロルヘキシジンを定量し、(徐放された塩酸クロルヘキシジン量)/(組成物に配合した塩酸クロルヘキシジン)による溶出率を算出した。
検出装置本体:LC−10ATvp(島津製作所製)、検出器:紫外分光光度計SPD−10A(島津製作所製)、カラム:Wakosil−II5C18RS(4.6mmID×150mm、和光純薬製)、溶離液:メタノール/イオン交換水/酢酸/ドデシル硫酸ナトリウム=830/170/4/1.36、流速1.0ml/min、測定波長260nm。
ノナエチレングリコールジメタアクリレート60.6g、蒸留水26.2g、カンファーキノン20mg、ジメチルアミノ安息香酸2−nーブトキシエチル20mg、シラン処理済み微粒子シリカ(平均粒径10nm、日本アエロジル製)12.1g、塩酸クロルヘキシジン1gより組成物Aを得た。得られた組成物をメタフィルflo(商品名、歯科用流動性コンポジットレジン、サンメディカル製)のシリンジに充填し、上述の光硬化性評価、操作性評価、歯肉への為害性評価、薬剤溶出試験を行った。結果を表1に示す。
テトラデカエチレングリコールジメタアクリレート62.5g、蒸留水24.0g、カンファーキノン20mg、ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル20mg、シラン処理済み微粒子シリカ(平均粒径10nm、日本アエロジル製)12.5g、塩酸クロルヘキシジン1gより組成物Bを得た。得られた組成物をメタフィルflo(商品名、歯科用流動性コンポジットレジン、サンメディカル製)のシリンジに充填し、上述の光硬化性評価、操作性評価、歯肉への為害性評価、薬剤溶出試験を行った。結果を表1に示す。
トリコサエチレングリコールジメタアクリレート63.3g、蒸留水19.0g、カンファーキノン20mg、ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル20mg、シラン処理済み微粒子シリカ(平均粒径10nm、日本アエロジル製)16.7g、塩酸クロルヘキシジン1gより組成物Cを得た。得られた組成物をメタフィルflo(商品名、歯科用流動性コンポジットレジン、サンメディカル製)のシリンジに充填し、上述の光硬化性評価、操作性評価、歯肉への為害性評価、薬剤溶出試験を行った。結果を表1に示す。
Claims (7)
- (A)水混和性多官能性ラジカル重合性単量体、
(B)水、
(C)ラジカル重合開始剤、
(D)粘度調整剤、および
(E)歯周組織に対する薬効剤、殺菌剤および消毒剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤、
を含有することを特徴とする徐放性歯科用組成物。 - 上記(C)ラジカル重合開始剤が光重合開始剤である請求項1に記載の徐放性歯科用組成物。
- 上記(A)水混和性多官能単量体がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートでありかつ該ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがエチレングリコールから誘導される繰り返し単位を平均して5〜30個有する請求項1に記載の徐放性歯科用組成物。
- 上記(D)粘度調整剤がシリカおよび/または水混和性ポリマーである請求項1に記載の徐放性歯科用組成物。
- 上記(E)薬剤がテトラサイクリン系抗生物質およびその塩、アクリジン化合物、クロルヘキシジン系化合物、クロラムフェニコール、ペニシリンおよびその塩、ヨード化合物、塩化ベンザルコニウムならびに塩化ベンゼトニウムからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の徐放性歯科用組成物。
- 上記徐放性歯科用組成物が遮光性容器に収容されている請求項1〜5のいずれかに記載の徐放性歯科用組成物。
- さらに(F)フッ化化合物を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の徐放性歯科用組成物。
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JP (1) | JP5087316B2 (ja) |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS63115829A (ja) * | 1986-11-04 | 1988-05-20 | Mitsui Petrochem Ind Ltd | 歯科用徐放性薬剤用硬化性組成物 |
JP2002370914A (ja) * | 2001-04-11 | 2002-12-24 | Sun Medical Co Ltd | 歯科用重合性組成物 |
-
2007
- 2007-05-28 JP JP2007140917A patent/JP5087316B2/ja active Active
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JPS63115829A (ja) * | 1986-11-04 | 1988-05-20 | Mitsui Petrochem Ind Ltd | 歯科用徐放性薬剤用硬化性組成物 |
JP2002370914A (ja) * | 2001-04-11 | 2002-12-24 | Sun Medical Co Ltd | 歯科用重合性組成物 |
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