JP2008290633A - 操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】操舵操作性に優れた操舵装置を提供すること
【解決手段】運転者が操舵操作を行う際に操作面10s上で移動させる操作部材12及び当該操作部材12の移動量を操舵操作量(操舵角θST)として検出する操舵操作量検出手段14が設けられた操舵入力手段10と、操舵操作量検出手段14により検出された操舵操作量に基づいて操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを設定する目標転舵角設定手段(電子制御装置30)と、操舵入力手段10との機械的な連結無しに目標転舵角θreqとなるよう操舵輪を転舵させる車輪転舵角付与手段20と、操舵入力手段10を振動させることによって操舵輪WL,WRの転舵動作に伴う操舵反力の存在を運転者に伝える操舵反力伝達手段40と、を備えること。
【選択図】 図2

Description

本発明は、運転者が操舵操作を行う際に使用する操舵入力手段と車輌の左右の操舵輪との間に機械的な接続が無い所謂ステアバイワイヤ方式の操舵装置に関する。
従来、車輌には、運転者が操舵操作を行う際(即ち、操舵輪を転舵させる際)に使用する操舵入力手段としてのステアリングホイールが配備されている。このステアリングホイールとは、一般的に、環状の操作部を有し、その操作部と直交すべく中央部分に連結された回転軸を中心にして自在に回転させることのできるものであり、運転席と対峙するインスツルメンタルパネルに着脱不可(整備時等を除く)の状態で取り付けられている。例えば、下記の特許文献1には、この種のステアリングホイールを操舵入力手段として利用する操舵装置について開示されている。
特開2004−196044号公報
ところで、上述したステアリングホイールは、運転者による操舵入力を受け入れる入力部材としての機能を主目的としているが、これとは別に、腕を介して運転者の上半身を支える運転席へのホールド性向上という役割も持っている。
しかしながら、近年においては、運転席やシートベルトの性能向上に伴って、必ずしもステアリングホイールが上半身を支えなくても済むようになってきており、ステアリングホイールの本来の機能である操舵入力の操作性等を改善する余地が出てきた。例えば、従来は、車庫入れや交差点での右左折時などのように低速で車輌を大きく旋回させる、即ち操舵輪を大きく転舵させる際に、運転者が両腕を交差させながらステアリングホイールを持ち直して操舵角を大きくしている。このような大きな操舵操作が求められているときには、運転者の各々の腕が不自然な動きを強いられるので、長時間の継続運転時における運転者の疲労の原因となり、また、所望の正確な操舵操作を行い難い原因ともなっている。また、このような大きな操舵操作を行う為には上半身を乗り出さなければならないときもあり、運転席への密着性が低くなってホールド性の低下を招く可能性がある。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、操舵操作性に優れた操舵装置を提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、運転者が操舵操作を行う際に操作面上で移動させる操作部材及び当該操作部材の移動量を操舵操作量として検出する操舵操作量検出手段が設けられた操舵入力手段と、その操舵操作量検出手段により検出された操舵操作量に基づいて操舵輪の目標転舵角を設定する目標転舵角設定手段と、操舵入力手段との機械的な連結無しに目標転舵角となるよう操舵輪を転舵させる車輪転舵角付与手段と、操舵入力手段を振動させることによって操舵輪の転舵動作に伴う操舵反力の存在を運転者に伝える操舵反力伝達手段と、を備えている。
また、上記目的を達成する為、請求項2記載の発明では、運転者が操舵操作を行う際に触れる操作面及び当該操作面上における運転者による接触点の位置を検出する接触点検出手段が設けられた操舵入力手段と、その接触点検出手段により検出された接触点の変位に基づいて当該接触点の変位量を求め、この接触点の変位量を運転者による操舵操作量として設定する操舵操作量設定手段と、この操舵操作量設定手段により設定された操舵操作量に基づいて操舵輪の目標転舵角を設定する目標転舵角設定手段と、操舵入力手段との機械的な連結無しに目標転舵角となるよう操舵輪を転舵させる車輪転舵角付与手段と、操舵入力手段を振動させることによって操舵輪の転舵動作に伴う操舵反力の存在を運転者に伝える操舵反力伝達手段と、を備えている。
これら請求項1又は2に記載の操舵装置においては、車室内の特定の場所に配置することなく車室内の好みの場所で運転者に操舵操作させることのできる操舵入力手段が用意されている。これが為、この操舵装置では、従前のステアリングホイールとは異なる操舵操作に重点を置いた操舵操作性の良好な操舵入力手段によって操舵入力を行わせることができる。また、これら請求項1又は2に記載の操舵装置においては、操舵反力の存在を運転者に対して振動で知らせることができるので、路面の状態や路面に対する操舵輪の状態を運転者に把握させ、その状態に応じた対応を運転者に行わせることができる。
例えば、その操舵反力伝達手段は、請求項3記載の発明の如く、車輌の挙動が不安定になる可能性のあるときに操舵入力手段を振動させるよう構成する。これにより、運転者は、その可能性があることを知ることができるので、これを回避すべく対応することができるようになる。
より具体的に、その操舵反力伝達手段は、請求項4記載の発明の如く、路面からの入力に伴う操舵輪の転舵動作があったときに操舵入力手段を振動させるよう構成する。これにより、運転者は、例えば、操舵輪WL,WRが路面の凹凸を乗り降りしたこと、また、操舵輪WL,WRが路面の段差に接触したことを把握することができ、それに対しての修正操舵を行うことができるようになる。
また、その操舵反力伝達手段は、請求項5記載の発明の如く、舵抜け現象が発生した際に当該舵抜け現象固有の振動を起こさせるよう構成する。これにより、運転者は、その振動から舵抜け現象を感じ取ることができ、これに対しての適切な対応(操舵角を減らすなど)を採ることができるようになる。
更に、その操舵反力伝達手段は、請求項6記載の発明の如く、車輪転舵角付与手段への負荷が高くなるときに操舵入力手段を振動させるよう構成してもよい。これにより、運転者は、自らの据え切り操作によって車輪転舵角付与手段に対して過大な負荷を与えていると把握することができるので、これに対して据え切り操作の中止等で対応することができるようになる。
本発明に係る操舵装置によれば、その操舵入力手段によって運転者の操舵操作性を向上させることが可能になり、更に、これのみならず、運転席周りへの配置が望まれている操舵操作に直接的な関わりの少ない機能部品(例えば、運転席用エアバックやウインカーレバー等)の配置や設計の自由度、運転者の乗降性についても向上させることができるようになる。また、この操舵装置によれば、従前の操舵装置においてステアリングホイールを介して感じることのできた操舵反力の存在を振動で感じ取ることができるので、従前の操舵装置と同様に路面の状態や路面に対する操舵輪の状態を運転者に把握させることが可能になる。つまり、この操舵装置は、従前の操舵装置と同等の操舵操作性を運転者に対して与えることができるので、路面の状態等に応じた適切な対応を運転者に採らせることができるようになる。
以下に、本発明に係る操舵装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る操舵装置の実施例1を図1から図14に基づいて説明する。
図1の符号1は、本実施例1の操舵装置の全体構成を示している。この本実施例1の操舵装置1としては、運転者が操舵操作を行う際に使用する操舵入力手段10と車輌の左右の操舵輪WL,WRとの間に機械的な接続が無い所謂ステアバイワイヤ方式のものを表す。つまり、この操舵装置1における後述する車輪転舵角付与手段20は、その操舵入力手段10との機械的な連結無しに目標転舵角θreqとなるよう操舵輪WL,WRを転舵させる。
本実施例1の操舵入力手段10とは、所謂ステアリングホイールに取って代わるものであり、運転者の操舵操作に伴う操舵操作量(即ち、操舵角θST)の検出機能を有するものである。この操舵入力手段10については、後ほど詳述する。
この本実施例1におけるステアバイワイヤ方式の操舵装置1は、図1に示す如く、運転者による操舵操作量を検出する操舵入力手段10と、その操舵操作量に応じた目標転舵角θreqになるよう各操舵輪WL,WRに対して転舵力を発生させるアクチュエータ(以下、「車輪転舵角付与手段」という。)20と、を備えている。
また、この操舵装置1には、その目標転舵角θreqを求め、夫々の操舵輪WL,WRがその目標転舵角θreqとなるように車輪転舵角付与手段20を駆動制御する操舵制御装置が設けられている。その操舵制御装置は、かかるステアバイワイヤ方式の操舵装置の技術分野において周知の演算処理機能を有するものである。例えば、本実施例1の操舵制御装置は、図1に示す電子制御装置(ECU)30の一機能として用意されており、運転者の操舵入力手段10への操舵操作量と車輌の走行状態(車速V、ヨーモーメントやヨーレート、横加速度等)とに応じた目標転舵角θreqを求めて設定する目標転舵角設定手段と、車輪転舵角付与手段20を駆動制御して目標転舵角θreqとなるように各操舵輪WL,WRを転舵させる車輪転舵制御手段と、が備えられている。
その電子制御装置30は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory),そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory),予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
ここで、本実施例1の車輪転舵角付与手段20としては、車輪転舵制御手段からの目標転舵角θreqの指令値に基づき電動モータ21を駆動し、その駆動力によりシャフト22を車輌の左右方向に直動させて操舵輪WL,WRを転舵させるものを用いる。即ち、この車輪転舵角付与手段20においては、その電動モータ21が夫々の操舵輪WL,WRに対しての転舵力を発生させる転舵力発生手段として利用される。例えば、本実施例1の電動モータ21は、図示しないが、管状のロータや当該ロータの外周側に覆設されたステータ等を備えており、そのロータの内部にシャフト22が挿通されている。
また、本実施例1の車輪転舵角付与手段20には、その電動モータ21の転舵力をシャフト22に伝達する転舵力伝達機構23が設けられている。この転舵力伝達機構23としては、例えば、図示しない、電動モータ21におけるロータの内周面に形成された又は当該ロータに取り付けられたボールネジナット,シャフト22の外周面に形成された螺旋状のボールネジ部,及びこれらボールネジナットとボールネジ部との間に配設された複数のボールで構成されたボールネジ機構を用いることができる。この種の転舵力伝達機構23は、電動モータ21の駆動(即ち、ロータの回転)に伴ってボールネジナットが周方向に回転し、その回転方向に応じてシャフト22を車輌の左方向又は右方向に直動させ、これにより、そのシャフト22の両端に連結された操舵輪WL,WRを転舵させるものである。
更に、この車輪転舵角付与手段20には、操舵輪WL,WRの実際の転舵角(以下、「実転舵角」という。)θrealの検出を行う転舵角センサ24が設けられている。例えば、この転舵角センサ24としては、シャフト22の外周面近傍に配置され、このシャフト22の回転角又は軸線方向(車輌の左右方向)への移動量を検出するものを用いる。この種の転舵角センサ24の場合、車輪転舵制御手段は、その検出した回転角又は移動量に基づいて実転舵角θrealが目標転舵角θreqになっているのか否かを判断することができる。
尚、本実施例1の車輪転舵角付与手段20は、操舵入力手段10で検出された操舵操作量(操舵角θST)を契機にして駆動動作を行うものとして例示するが、これのみならず、車輌挙動制御等の車輌からの要求に応じた目標転舵角θreqに基づいて駆動動作を行うことも可能である。
以下、本実施例1の操舵入力手段10について詳述する。
本実施例1の操舵入力手段10は、図1に示す如く、運転者が操舵操作を行う際に使用する操作部10aと、この操作部10aを収納する筐体10bと、を備えている。例えば、その筐体10bは、額状に成形され、更に少なくともその内の1つの面に方形の開口部が形成される。本実施例1においては、その開口部から操作部10aの図2及び図3に示す操作面10sを外部に露出させ、その操作面10sを運転者が操舵操作を行う際に実際に触れることができるように構成している。
ここで、本実施例1の操作部10aは、方形の板状に成形された操作部主体11と、運転者による操舵操作量(操舵角θST)の検知を行う操舵操作量検知部と、を備えている。本実施例1においては、その操作部主体11の一方の面に方形の上述した操作面10sが形成され、この操作面10sに操舵操作量検知部が配される。
本実施例1の操舵操作量検知部は、車輌を所望の方向へと旋回させる為に運転者が操作面10s上で直接操作して移動させる操作部材12と、この操作部材12の移動を案内するガイド部13と、その操作部材12の移動量を操舵操作量(操舵角θST)として検出する操舵操作量検出手段14と、で構成する。
例えば、本実施例1においては、その操作部材12を円盤状に成形し、図4に示すように、その一方の面(運転者が直接触れることのない面)から一体的に垂設させるが如く操舵操作量検出手段14を操作部材12に固定する。従って、本実施例1の操舵操作量検知部においては、運転者が操作部材12を移動させることによって、操舵操作量検出手段14も操作部材12と一緒になって移動する。
また、本実施例1の操舵操作量検出手段14としては、例えば多回転式ポテンションメータ等の回転角センサを利用する。これが為、操舵操作量検知部においては、操作部主体11の操作面10sに形成した溝若しくはスリット又はその操作面10sに立設した壁部をガイド部13とし、更にこのガイド部13に沿って操舵操作量検出手段14を配置し、これにより、この操舵操作量検出手段14が操作部材12の移動に伴いガイド部13の壁面に接しながら回転して操舵操作量(操舵角θST)の検出を行うように構成しておく。本実施例1においては、操作部主体11の操作面10sに環状のスリットを形成してこれをガイド部13とする。
例えば、ここでは、図4に示す如く、一方の面が操作面10sを成す方形の平板部材11Aと、この平板部材11Aを貼り合わせて内部に空間部を形成する凹状部材11Bと、によって操作部主体11を構成する。つまり、この操作部主体11は、平板部材11Aの外郭部分と凹状部材11Bの外郭部分(突出部分)とを当接させた状態で固着させたものであり、これにより内部に空間部が形成されている。ここでは、その平板部材11Aに双方の面を貫く環状のスリットがガイド部13として形成されており、このガイド部13と空間部とが連通状態にある。尚、その空間部については、少なくともガイド部13に対応する位置にのみ設けておけばよい。
本実施例1においては、操舵操作量検出手段14をガイド部13に挿入し、その操舵操作量検出手段14における操作部材12とは反対側の端部に固定された係止部材15を操作部主体11の空間部に配置する。その係止部材15は、例えば円盤状のものであり、その直径をガイド部13のスリット幅よりも大きく成形する。これが為、その操舵操作量検出手段14とこれに固定された操作部材12については、ガイド部13からの抜け落ちが回避されるようになり、そのガイド部13に沿って自在に移動できる状態で操作部主体11に保持される。
ここで、そのガイド部13は、操作部材12の安定した移動に寄与するのみならず、その形状如何で運転者の操舵操作性を向上させることができる。つまり、そのガイド部13の形状次第では、運転者にとって操作部材12を移動させ易くなる場合もあれば、移動させ難い場合もある。これが為、そのガイド部13の形状は、運転者の腕(特に手首から先)の動きに合わせた形状を採ることが望ましい。
ところで、操舵操作量検知部は、ここで例示しているもの以外に、ガイド部13に沿って配置したロータリエンコーダ等のセンサを用いて構成してもよい。
更に、ガイド部13は、環状のものとしてその形状を例示したが、その環状の上半分(即ち、図2の紙面における上半分のみ)等の如き弧状にしてもよい。例えば、この種の弧状のガイド部13は、その長さ(操作部材12の案内経路長さ)を短くすれば、操作部材12の操作範囲を小さくしてロックトゥロックさせることができるので、運転者による操舵操作性が向上する。他方、そのような案内経路長さの短いガイド部13は、単位操舵操作量当たりの操舵輪WL,WRの転舵角が大きくなり、従前のステアリングホイールで言うところのステアリングギヤ比がクイックになるので、その比率の程度如何では転舵角の微調整を図り難くなってしまう可能性がある。これが為、このガイド部13の長さ、つまり、環状にするのか弧状にするのか、弧状にするのであればどの程度の長さにするかについては、この操舵装置1が適用される車輌において適切なステアリングギヤ比となるように設定すればよい。尚、本実施例1の操舵装置1においては、そのステアリングギヤ比が電子制御装置30の目標転舵角設定手段によって適宜可変される。
また、本実施例1の操作部10aにおいては、少なくともその操作面10sにおける操作部材12の移動軌跡上に湾曲形状部又は凹形状部を設け、操舵輪WL,WRの非転舵位置(即ち、直進状態等の操舵輪WL,WRの中立位置)を運転者に対して知らしめるようにしている。例えば、湾曲形状部を適用する場合には、操作面10sを操作部10aの内方に撓ませ、その操作面10sの操作部材12の移動軌跡上における一直線上の底部10S1を操舵輪WL,WRの中立位置として設定しておく。一方、凹形状部については、極端な落差のある凹形状にすると操作部材12の滑らかな案内が阻害される虞があるので、なだらかな凹形状(例えば、弧状等)とすることが好ましい。つまり、本実施例1の操作部10aに当て嵌めた凹形状部とは上記の湾曲形状部と実質的に同義となり、その操作部材12の移動軌跡上における底部10S1を操舵輪WL,WRの中立位置として設定する。本実施例1においては、操作部10a全体(つまり、操作部主体11全体)を図3に示す如く撓ませることによって、操作面10sに湾曲形状部を設けている。そして、その湾曲した操作面10s上を沿いながら移動できるように、操作部材12は、柔軟性のある材料(樹脂等)を用いて成形することが望ましい。
従って、本実施例1の操作部10aにおいては、その湾曲形状部(凹形状部)の一直線上の底部10S1が操作面10sを左右に二分することとなる。そして、この操作部10aにおいては、ガイド部13における底部10S1に操作部材12が位置していれば、従前のステアリングホイールで言うところのステアリングセンタとなり、操舵輪WL,WRが中立位置になることを表す。ここでは、操作部材12がガイド部13における図2の紙面上方側の底部10S1に存在しているときのみを中立位置として認識させる。これが為、この操作部10aにおいては、その底部10S1から操作面10sの左側の領域へと(つまり、反時計回りに)操作部材12を移動させることによって車輌の左旋回方向への操舵操作となり、その底部10S1から操作面10sの右側の領域へと(つまり、時計回りに)操作部材12を移動させることによって車輌の右旋回方向への操舵操作となるよう設定しておく。また、ここでは、右旋回方向への操舵操作であれば操舵角θSTを正の値として出力させる一方、左旋回方向への操舵操作であれば操舵角θSTを負の値として出力させるよう操舵操作量検出手段14の設定を行っておく。
ここで、その操作部材12の左右双方への最大移動量(換言すればロックトゥロック)は、操舵角θSTの最大の範囲が「−180°<θST<180°」となるように設定してもよく、「−360°<θST<360°」や「θST≧360°で且つθST≦−360°」となるように設定してもよい。
尚、操作部材12がガイド部13における図2の紙面下方側の底部10S1に存在しているときを中立位置として認識させる場合には、上記の例示と同じ操作部材12の移動方向で車輌の旋回方向(つまり、操舵輪WL,WRの転舵方向)を定義してもよく、その例示とは逆の定義を行ってもよい。
以下、本実施例1の操舵装置1による操舵輪WL,WRの転舵動作について図5のフローチャートを用いて説明する。
先ず、本実施例1の電子制御装置30は、イグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行い(ステップST5)、ここで検出されていなければ本処理を一端終了してかかるステップST5の判定を繰り返す一方、検出されていれば次のステップST10に進む。
この電子制御装置30は、そのステップST5にてイグニッションON信号検出との判定を為した場合、その目標転舵角設定手段が操舵操作量検出手段14からの検出信号に基づいて運転者による操舵操作量(操舵角θST)を検出する(ステップST10)。
このステップST10においては、操作部材12が操作面10sの底部10S1(即ち、操舵輪WL,WRの中立位置に対応させた部分)に位置していれば操舵角θST=0と検出され、その操作部材12が例えば図2の2点鎖線で示す位置まで操舵操作されていればその際の左旋回方向への操舵角θSTが検出される。
続いて、その目標転舵角設定手段は、検出した操舵角θSTの情報と車輌の走行状態(車速センサ51から検出した車速V等)の情報とに基づいて操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを求める(ステップST15)。
例えば、その目標転舵角θreqについては、操舵角θSTと車輌の走行状態をパラメータとするマップデータから導き出す。このマップデータは、予め行った実験やシミュレーションに基づき設定されたものであり、例えば、図6に示す如く車輌の走行状態毎のものとして用意しておく。尚、本実施例1においては、右旋回方向への操舵操作であれば正の値の目標転舵角θreqが求められる一方、左旋回方向への操舵操作であれば負の値の目標転舵角θreqが求められる。
しかる後、本実施例1の電子制御装置30の車輪転舵制御手段は、操舵輪WL,WRをその目標転舵角θreqへと転舵させるべく車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21の駆動を開始させる(ステップST20)。これにより、本実施例1の操舵装置1においては、操舵輪WL,WRが転舵し始める。
その際、その操舵輪WL,WRの転舵速度が速過ぎると、つまり操舵輪WL,WRを一気に目標転舵角θreqまで転舵させると、車速Vにも依るが、急激な横加速度、ロールモーメントやヨーモーメントの変化が車輌に働いて、車輌の挙動を不安定にし、更に運転者に不安感や不快感を与えてしまう可能性がある。これが為、かかる不都合が生じないように、目標転舵角θreqまでの操舵輪WL,WRの転舵速度をマップデータ等で用意しておくことが好ましい。
そして、その車輪転舵制御手段は、転舵角センサ24から操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを検出し(ステップST25)、これと目標転舵角θreqの差の絶対値(|θreq−θreal|)を所定値と比較する(ステップST30)。その所定値は、「0」又は限りなく「0」に近い値を設定しておく。
この車輪転舵制御手段は、その絶対値と所定値との差が大きくステップST30で肯定判定が為された場合、上記ステップST5に戻ってその差が小さくなるまで(つまり、ステップST30で否定判定が為されるまで)電動モータ21の駆動を継続させる。そして、この車輪転舵制御手段は、そのステップST30で否定判定が為された際に、操舵輪WL,WRが目標転舵角θreqまで転舵されたとして電動モータ21の駆動を停止させる(ステップST35)。
ここで、本実施例1の操舵入力手段10は、運転者が自らの手元で操作できるよう例えばインスツルメンタルパネル等に対して着脱自在に固定しておくことが好ましい。更に、この操舵入力手段10は、電子制御装置30に対して有線又は無線(周知の近距離通信技術等)で接続するが、有線接続するのであれば、そのような手元での操作を可能にすべく通信ケーブル(図示略)の長さに余裕を持たせておく。
このように、本実施例1の操舵装置1においては、車室内で不都合の生じる場所に配置せずともよく、且つ車室内の好みの場所にて運転者が手元で操舵操作することのできる操舵入力手段10が用意されている。つまり、この操舵装置1の操舵入力手段10は、操舵操作に直接的な関わりの少ない別の事柄の設計要件の影響を受けることのない、そして、操舵操作に特化させたものとして構成することができる。具体的に、その操舵入力手段10は、従前のステアリングホイールとは異なり運転者が上半身を支える際に使用させないので、操舵操作性の良好な上記の例示の如き構造を採ることができる。また、従前のステアリングホイールにおいてはその回転位置に左右されないよう中央部分に運転席用エアバックを配置しなければならなかったが、その操舵入力手段10へと置き換えることによって、運転席用エアバックは、インスツルメンタルパネル等の設計自由度の高い場所に配置することができるようになる。このことは、従前のステアリングホイールの近くに集約されている方向指示器操作手段(つまり、ウインカーレバー)等についても同様のことが言える。また、その運転席用エアバックに言及するならば、従前のステアリングホイールでは、切り返し時に腕が運転席用エアバックの前に出てくることがあるので、その際に運転席用エアバックが正しく機能しなくなる可能性は否めない。しかしながら、その操舵入力手段10へと置き換えた場合には、如何様な操舵操作が行われていたとしても必要時に運転席用エアバックを適切に機能させることができる。更に、運転者の目の前に配置されている従前のステアリングホイールは乗降時に脚に当たってしまう等、乗降性の悪化の一因になっているが、その操舵入力手段10では、乗降時に邪魔にならない位置に置いておくことができるので、乗降性を向上させることもできる。従って、この本実施例1の操舵装置1においては、その操舵入力手段10によって運転者の操舵操作性を向上させることが可能になり、更に、これのみならず、運転席周りへの配置が望まれている操舵操作に直接的な関わりの少ない機能部品の配置や設計の自由度、乗降性についても向上させることができるようになる。
ところで、従前の操舵装置においては、ステアバイワイヤ方式でなければセルフアライニングトルクによる操舵輪WL,WRの中立位置への戻り方向の力等によって、また、ステアバイワイヤ方式であれば電動モータを作動させる等することによって、操舵操作に伴う操舵反力がステアリングホイールを介して運転者に伝えられるようになっている。
ここで、従前の操舵装置の場合、運転者は、その操舵反力によって路面の状態や路面に対する操舵輪WL,WRの状態を知ることができるので、その状態に応じた修正操舵を従前のステアリングホイールから行うことができる。つまり、操舵輪WL,WRは、轍等のような凹凸のある路面を走行していればその凹凸への乗り降りに伴って、また、縁石等の段差に接触したときであればその接触に伴って、運転者による操舵操作とは無関係に転舵する。そして、その際には、かかる操舵輪WL,WRの転舵動作の程度如何で車輌の挙動を乱してしまう可能性がある。その際、従前の操舵装置においては、そのような操舵輪WL,WRの転舵動作に応じた操舵反力が従前のステアリングホイールを介して運転者に伝えられるので、その操舵反力から運転者が路面の凹凸や段差、そのときの操舵輪WL,WRの転舵状態を把握することができる。従って、従前の操舵装置においては、その操舵反力とは逆方向に向けてその大きさに応じた操舵操作力でステアリングホイールを運転者に操舵操作(即ち、修正操舵)させ、車輌の挙動の乱れを修正させることができる。しかしながら、上述した本実施例1の操舵装置1の構成においては、凹凸や段差等の路面からの入力が操舵輪WL,WRに対してあったとしても運転者に操舵反力が伝わらないので、その路面の状態や路面に対する操舵輪WL,WRの状態を把握することができず、これが為に修正操舵を運転者に行わせることができない。
また、車庫入れや縦列駐車、狭い場所での方向転換などを行うときには、停車中の操舵操作、所謂据え切り操作が行われる。その据え切り操作時には、走行中よりも数倍大きな操舵操作力が必要になる。従って、ステアバイワイヤ方式の操舵装置においては、据え切り操作が長時間繰り返されると、車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20に過大な負荷が掛かり、これに伴って車輪転舵角付与手段20の発熱や発火、作動不良を引き起こしてしまう。従前の操舵装置においては、操舵操作時に伝わる操舵反力の大きさから過剰な据え切り操作を繰り返し行わないよう運転者に認識させることができる。しかしながら、上述した本実施例1の操舵装置1の構成においては、操舵反力が運転者に伝わらないので、車輪転舵角付与手段20の発熱等を引き起こす可能性がある。
そこで、車輌の挙動が不安定になる可能性のあるとき(即ち、操舵輪WL,WRが凹凸を乗り降りしているときや段差に接触したとき)、また、据え切り操作を行っているときの不都合を解消すべく、本実施例1の操舵装置1には、運転者に操舵反力の存在を伝える操舵反力伝達手段40を設ける。具体的に、本実施例1の操舵反力伝達手段40とは、図1に示す如く電動モータ40aと当該電動モータ40aの出力軸に偏心させて取り付けた偏心ウエイト40bを操舵入力手段10に配備し、操舵輪WL,WRの転舵動作に伴う操舵反力の存在を操舵入力手段10に発生させた振動で伝えるものである。つまり、この操舵反力伝達手段40は、電動モータ40aの駆動に伴い偏心ウエイト40bが発生させた振動を操舵入力手段10から運転者に伝え、その振動によって操舵反力の存在を運転者に認識させるバイブレータとして構成されている。その電動モータ40aは、電子制御装置30の操舵反力制御手段の指示により駆動制御させる。
例えば、その操舵反力伝達手段40は、操舵入力手段10の操作面10sを振動させるように構成する。この場合、その操舵反力伝達手段40は、操作面10s側に取り付けてもよいが、操舵操作の邪魔になる可能性もあるので、図2及び図3に示す如く操作部主体11の内部に配備しておくことが好ましい。具体的に、ここでは、図7に示す如く、平板部材11Aの内側の面(操作面10sとは反対側の面)に取付部材40cを介して電動モータ40aを固定し、この電動モータ40aの出力軸に偏心ウエイト40bを取り付ける。従って、この操舵反力伝達手段40は、その電動モータ40aを駆動させることによって平板部材11Aを振動させ、その振動を操作面10sを介して運転者の手のひらに伝えることができる。
また、その操舵反力伝達手段40は、操作部材12を振動させるように構成してもよい。この場合、その操舵反力伝達手段40は、操舵操作性を考慮し、図8に示す如く操作部主体11の内側から操作部材12を振動させるように構成する。具体的に、ここでは、上述した図4に示す係止部材15の直径を大きくした円盤状の係止部材40dに取付部材40cを介して電動モータ40aを固定し、この電動モータ40aの出力軸に偏心ウエイト40bを取り付ける。従って、この操舵反力伝達手段40は、その電動モータ40aを駆動させることによって係止部材40dを振動させ、その振動を操舵操作量検出手段14を介して操作部材12に伝達させて運転者の指先に伝える。
ここで、操舵反力は、操舵輪WL,WRの中立位置への戻り方向の力、換言すればシャフト22において転舵方向とは逆の軸線方向に働く力(以下、「シャフト軸力」という。)Foに比例して大きくなるものと考えられる。そして、そのシャフト22には、路面の凹凸や段差が大きいほど、また、据え切り操作を行っているときに大きなシャフト軸力Foが働く。従って、シャフト軸力Foが小さいときには、凹凸や段差のある路面を走行している可能性が低く、また、据え切り操作を行っている可能性も低いので、そのような路面の走行時や据え切り操作時における上述した不都合が生じていないものと判断することができる。これが為、ここでは、そのシャフト軸力Foが所定値以下の小さいときにまで操舵反力伝達手段40を駆動させないようにして、必要とされるときにのみ修正操舵や据え切り操作の抑制を促すようにする。
その所定値としては、例えば、上述した不都合が生じない最大のシャフト軸力Foを設定しておけばよい。つまり、ここでは、走行中であれば、凹凸や段差によって操舵輪WL,WRが転舵させられた際のシャフト軸力Foであって、車輌の挙動が乱れることのない最大のシャフト軸力Foを所定値として設定することができる。一方、停車中のときの所定値としては、据え切り操作に伴い働くシャフト軸力Foであって、多少の繰り返し操作では車輪転舵角付与手段20にとって過大な負荷とならない状況下での最大のシャフト軸力Foを設定することができる。従って、ここでは、車輌が走行中のときの所定値(以下、「所定値A」という。)と停車中のときの所定値(以下、「所定値B」という。)を用意しておいて、これらを車速に応じて使い分けるようにする。
また、シャフト22には、その軸線方向(車輌の左右方向)に働くシャフト軸力Foを検出させる図1に示すシャフト軸力検出手段25が配設されている。例えば、そのシャフト軸力検出手段25としては、シャフト22の軸線方向の歪みを検出する歪み計、シャフト22と車体との間で軸線方向(車輌の左右方向)に働く圧力を検出する圧力センサ等が考えられる。
例えば、ここで例示する電子制御装置30の操舵反力制御手段は、図9のフローチャートに示す如く、イグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行う(ステップST50)。
このステップST50にてイグニッションON信号検出との判定を為した場合、その操舵反力制御手段は、次に車速センサ51から車速Vを検出すると共に(ステップST55)、シャフト軸力検出手段25からシャフト軸力Foを検出する(ステップST60)。そして、この操舵反力制御手段は、その車速Vが「0」よりも大きくなっているのか否か、即ち車輌が走行中であるのか停車中であるのかについての判定を行う(ステップST65)。
ここで、この操舵反力制御手段は、V>0であり走行中との判定を行った場合であれば、検出したシャフト軸力Foが上記の所定値Aを超えているのか否かについての判定を行う一方(ステップST70)、V=0であり停車中との判定を行った場合であれば、そのシャフト軸力Foが上記の所定値Bを超えているのか否かについての判定を行う(ステップST75)。
この操舵反力制御手段は、そのステップST70にてシャフト軸力Foが所定値Aを超えているとの判定を行った場合、路面の凹凸や段差によって車輌の挙動が乱される可能性があると判断し、操舵反力伝達手段40の電動モータ40aを駆動させる(ステップST80)。
従って、この場合には、その駆動に伴う振動が運転者に伝えられ、この運転者に対して、路面に凹凸や段差があり、その凹凸の乗り降りや段差への接触によって操舵輪WL,WRが転舵していると把握させることができる。そして、この場合には、車輌の挙動が乱される可能性があると運転者に判断させ、修正操舵を実行させることができるので、車輌の挙動の乱れの抑制が可能になる。
一方、この操舵反力制御手段は、そのステップST75にてシャフト軸力Foが所定値Bを超えているとの判定を行った場合、据え切り操作が行われていると判断し、上記ステップST80に進んで操舵反力伝達手段40の電動モータ40aを駆動させる。
従って、この場合には、その駆動に伴う振動が伝えられた運転者に対して、据え切り操作によって車輪転舵角付与手段20に過大な負荷が掛かってしまうと把握させることができる。そして、この場合には、車輪転舵角付与手段20の負荷が過大になる前に運転者に対して据え切り操作の中止を判断させることができ、その車輪転舵角付与手段20の発熱や発火、作動不良の抑制が可能になる。
また、この操舵反力制御手段は、上記ステップST50にてイグニッションON信号未検出と判定した場合、上記ステップST70にてシャフト軸力Foが所定値A以下と判定した場合、上記ステップST75にてシャフト軸力Foが所定値B以下と判定した場合、上述した不都合が生じていないと判断して、操舵反力伝達手段40の電動モータ40aが駆動しないよう停止指令を実行する(ステップST85)。従って、その電動モータ40aは、既に停止状態にあればかかる状態が継続され、駆動中であれば停止させられる。これが為、運転者にとっては、無駄な修正操舵を行わずとも済む。
以上示した如く、操舵反力伝達手段40を設けた本実施例1の操舵装置1においては、操舵反力の存在を運転者に対して知らせることができるので、路面の状態や路面に対する操舵輪WL,WRの状態を従前の操舵装置と同様に運転者に把握させ、その状態に応じた適切な対応を運転者に行わせることができるようになる。つまり、この操舵装置1は、操舵反力伝達手段40を設けることによって、自らの意思に反した操舵輪WL,WRの転舵動作が起きたときに、修正操舵を行うよう運転者に対して促すことができる。また、この操舵装置1は、自らの据え切り操作によって車輪転舵角付与手段20に対して過大な負荷を与えているときに、その据え切り操作の中止を運転者に促すことができる。従って、この場合には、運転者がその促された対応を採ることによって、車輌の挙動の安定化や車輪転舵角付与手段20の耐久性向上を図ることができるようになる。
ここで、本実施例1の操舵入力手段10には、例えば従前のステアリングホイールと対比した操舵操作性の感覚的なずれに伴う違和感を補うべく、図10に示す如き操舵角θST、目標転舵角θreqや実転舵角θrealの内の少なくとも1つを表示させる表示部10cを設けてもよい。その感覚的なずれとしては、例えば、操作部材12をどれだけ移動させれば従前のステアリングホイールと同程度の操舵角θSTを与えたことになるのか、という本実施例1と従来との感覚的な違いが考えられる。従って、運転者は、従前のステアリングホイールであれば感覚的に推定できたであろう操舵輪WL,WRの転舵角について、操作部材12をどれだけ移動させれば操舵輪WL,WRがどの程度転舵するのか、という視覚では得られないことによる違和感を改めて覚える。
例えば、その表示部10cには、図11−1に示すように操舵角(又は転舵角)を計器の如き形で表示させる。この場合には、その計器の針の絵を操作部材12の移動に合わせて動かす。また、その表示部10cには、図11−2に示すようにステアリングホイールSTの絵を表示させてもよい。この場合には、そのステアリングホイールSTの絵を操作部材12の移動に合わせて回転させる。その回転角度は、操作部材12の操舵操作に伴い設定された目標転舵角θreqとなったときの従前のステアリングホイールの操舵角に合わせることが感覚的なずれを解消する上で望ましい。これにより、運転者は、その表示部10cを見ることによって、操作部材12の移動量と従前のステアリングホイールの回転量との違いによる操舵輪WL,WRの転舵角についての違和感が補われる。
更に、本実施例1の操舵装置1においては、従前のステアリングホイールから上述した操舵入力手段10への置き換えを行ったことによってステアリングコラムも不要になるので、このステアリングコラムに取り付けられていた方向指示器操作手段(ウインカーレバー)やワイパー操作手段(ワイパーレバー)等を何処に置くかが問題になる。そこで、その方向指示器操作手段等は、操舵入力手段10の筐体10b、インスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置する。
また、その方向指示器操作手段については、図12及び図13に示す如く運転席Sの座面の下に配置してもよい。例えば、ここの例示では、その方向指示器操作手段としての左折方向指示器(図示略)用のウインカーレバー61Lと右折方向指示器(図示略)用のウインカーレバー61Rを用意し、これらを運転者が着座状態で視認できるよう突出させて運転席Sの座面の下に配設する。その各々のウインカーレバー61L,61Rは、その突出端とは逆の夫々の端部に個別に取り付けた回転軸62と、これら回転軸62の回転に伴ってスイッチON/OFFが切り替わる回転軸62毎の開閉器63と、を介して床FLに支持されている。
例えば、この方向指示器操作手段においては、左折(又は右折)する際に運転者がウインカーレバー61L(又はウインカーレバー61R)を手又は脚で回転させて開閉器63をスイッチONにする。これによりスイッチON信号が開閉器63から電子制御装置30に送信され、この電子制御装置30の方向指示器制御手段は、左折方向指示器(又は右折方向指示器)を作動させる。一方、運転者は、その左折方向指示器(又は右折方向指示器)の動作を停止させたいときに、ウインカーレバー61L(又はウインカーレバー61R)をスイッチON時とは逆方向に手又は脚で回転させて開閉器63をスイッチOFFにする。これによりスイッチOFF信号が開閉器63から電子制御装置30に送信され、その方向指示器制御手段は、左折方向指示器(又は右折方向指示器)の動作を停止させる。
ここで、その左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させる際の利便性を考慮し、この例示においては、その動作の停止を実行させる為の方向指示解除手段を用意しておいてもよい。例えば、その方向指示解除手段は、インスツルメンタルパネル等に配設した方向指示解除釦64として用意することができる。ここでは、その方向指示解除釦64を運転席Sとペダル類(アクセルペダルAP,ブレーキペダルBP,フットレストFR等)との間の床FLの上に配置する。運転者は、左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させる際に左足で方向指示解除釦64を踏む。これにより停止信号が方向指示解除釦64から電子制御装置30に送信され、その方向指示器制御手段は、左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させる。
また、従前のステアリングホイールにおいては、左折方向指示器や右折方向指示器が作動しているときにその際の旋回方向に対して逆方向へとステアリングホイールを回転させると、図示しない開閉器がスイッチOFFになり、左折方向指示器や右折方向指示器の動作が停止される。従って、ここでは、これと同様の機能を持たせて運転者の利便性を図ることにする。
例えば、操舵輪WL,WRが所定の転舵角よりも小さくなったときに左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させるよう方向指示器制御手段を構成しておく。この場合、その方向指示器制御手段には、図14に示すマップデータを利用して左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させる。このマップデータによれば、左旋回時の実転舵角θrealが所定の転舵角(左折指示解除閾値θL0real)よりも小さくなったときに左折方向指示器の動作が停止され、右旋回時の実転舵角θrealが所定の転舵角(右折指示解除閾値θR0real)よりも小さくなったときに右折方向指示器の動作が停止される。
また、方向指示器制御手段は、操作部材12が所定の操舵角θSTまで戻されたときに左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させるよう構成してもよい。例えば、その場合のマップデータは、図14に示す如く、左旋回時の操舵角θSTが所定の操舵角(左折指示解除閾値θL0ST)よりも小さくなったときに左折方向指示器の動作を停止させ、右旋回時の操舵角θSTが所定の操舵角(右折指示解除閾値θR0ST)よりも小さくなったときに右折方向指示器の動作を停止させるよう構成する。
このように方向指示器制御手段を構成することによって、本実施例1の操舵装置1は、運転者が操作部材12を操作して又はセルフアライニングトルクによって操舵輪WL,WRが中立位置へと戻るときに、左折方向指示器や右折方向指示器の動作を停止させることができる。従って、この操舵装置1においては、従前のステアリングホイールと同等の利便性を確保することができるので操舵操作性が向上する。
ところで、操舵入力手段10の外観形状は、必ずしも上述した例示に限定するものではない。例えば、従前のステアリングホイールの形状に合わせて筐体10bや操作面10sを円形にしてもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例2を図15から図19に基づいて説明する。
前述した実施例1の操舵入力手段10においては、操作部材12を操作面10s上の底部10S1へと運転者がガイド部13に沿って移動させ、これにより操舵輪WL,WRを中立位置へと戻すことができる。本実施例2においては、その中立位置への戻しを行う際の運転者の利便性が高まるような構成に操舵装置を構築する。
本実施例2の操舵装置1は、前述した実施例1の構成において操舵入力手段10の操作部10aを図15及び図16に示す操作部110aへと変更したものである。具体的に、この操作部110aは、基にした実施例1の操作部10aの操作面10s上に転舵角解除手段16を追加したものである。従って、本実施例2の操舵装置1は、基にした実施例1と同様の作用効果を得ることができ、更に、その転舵角解除手段16による下記の効果を奏することができる。
ここで、その転舵角解除手段16とは、操舵輪WL,WRを中立位置(即ち、ニュートラルな状態)へと戻す為に運転者に操作させる手段のことであり、例えば、本実施例2においては、操作面10s上で運転者に押下させるべく配設した転舵角解除釦(ニュートラルスイッチ)として用意する。以下においては、この転舵角解除手段16を「転舵角解除釦16」という。運転者は、操舵輪WL,WRを中立位置へと戻したいときに、その転舵角解除釦16を押下してスイッチON状態にする。これによりニュートラルスイッチON信号が電子制御装置30に送信され、この電子制御装置30の車輪転舵制御手段は、操舵輪WL,WRを中立位置に戻す。
以下、本実施例2の操舵装置1による操舵輪WL,WRの転舵動作について図17のフローチャートを用いて説明する。尚、その転舵動作の多くは前述した実施例1と同じであるので、以下においては、実施例1の転舵動作との相違点を中心にして詳述する。
先ず、本実施例2の電子制御装置30は、イグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行い(ステップST5)、ここで検出されていなければ本処理を一端終了してかかるステップST5の判定を繰り返す一方、検出されていればニュートラルスイッチON信号が検出されているのか否か(つまり、転舵角解除釦16が押下されたか否か)についての判定を行う(ステップST6)。
本実施例2の電子制御装置30は、そのステップST6にてニュートラルスイッチON信号未検出との判定が行われた場合、実施例1と同様に、その目標転舵角設定手段に運転者による操舵操作量(操舵角θST)を検出させ(ステップST10)、これに基づいて操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを算出させる(ステップST15)。
一方、この電子制御装置30は、そのステップST6にてニュートラルスイッチON信号検出との判定が行われた場合、その目標転舵角設定手段に操舵輪WL,WRが中立位置となるような目標転舵角θreqを求めさせる。つまり、その目標転舵角設定手段は、操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを「0」と算出する(ステップST16)。
本実施例2の電子制御装置30の車輪転舵制御手段は、操舵輪WL,WRが上記ステップST15又はステップST16で求めた目標転舵角θreqとなるように、車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させ始める(ステップST20)。この車輪転舵制御手段は、実施例1と同じく、操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを検出して(ステップST25)、これと目標転舵角θreqの差の絶対値(|θreq−θreal|)を所定値と比較し(ステップST30)、その差が小さくなるまで(ステップST30で否定判定が為されるまで)電動モータ21の駆動を継続させた後に停止させる(ステップST35)。
ここで、転舵角解除釦16が押下されたときに操舵輪WL,WRを一気に中立位置まで戻してしまうと、旋回時に転舵角を急激に増やしていくときと同様に、車輌の挙動を不安定にし、更に運転者に不安感や不快感を与えてしまう可能性がある。
そこで、ここでは、中立位置へと戻るまでの操舵輪WL,WRの転舵速度をマップデータに既定しておく。例えば、ここでは、操舵輪WL,WRの実転舵角θrealに対する転舵角戻し量θrereqを設定した図18や図19に示すマップデータを用意しておき、その時々の実転舵角θrealに応じた転舵角戻し量θrereqで操舵輪WL,WRの転舵角を「0」にまで戻していく。
その図18には、実転舵角θrealが「0」へと近づくにつれて転舵角戻し量θrereqを同一係数で小さくしていくマップデータについて例示している。つまり、この図18のマップデータによれば、同じ転舵速度で操舵輪WL,WRが中立位置へと戻されていく。この図18のマップデータにおいては、実転舵角θrealと転舵角戻し量θrereqとの間の比例係数が操舵輪WL,WRの転舵速度を表すので、車輌の挙動を安定させ且つ運転者に不安感や不快感を与えることのない操舵速度(比例係数)を実験やシミュレーションで求めて設定している。
また、その図19には、実転舵角θrealが大きければ大きな転舵角戻し量θrereqで操舵輪WL,WRを戻させ、実転舵角θrealが小さいときに少量の転舵角戻し量θrereqで操舵輪WL,WRを戻させるマップデータについて例示している。尚、この場合においても、車輌の挙動を安定させ且つ運転者に不安感や不快感を与えることのない操舵速度を実験やシミュレーションで求め、これに合わせて実転舵角θrealと転舵角戻し量θrereqとの対応関係を定める。
以上示した如く、本実施例2の操舵装置1は、運転者の操舵操作性、運転席周りへの配置が望まれている操舵操作に直接的な関わりの少ない機能部品の配置や設計の自由度、乗降性について実施例1と同様に向上させ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例1と同様に行わせることができるのみならず、更に、転舵角解除釦16の押下操作のみで操舵輪WL,WRを中立位置へと戻すことができるようになるので運転者にとっての操舵操作の利便性が向上する。
ところで、本実施例2においては転舵角解除手段(転舵角解除釦)16を操作部10aの操作面10s上に配置したが、その配置は、必ずしもこれに限定するものではない。例えば、この転舵角解除手段(転舵角解除釦)16は、筐体10bやインスツルメンタルパネル等の別に場所に配置してもよい。
また、本実施例2においては転舵角解除手段16を釦式のもの(転舵角解除釦)として例示したが、この転舵角解除手段16については、それ以外に、所定の支点を中心に動いてスイッチON/OFFが切り替わるレバー式、感圧センサによってニュートラルスイッチONの検出を行う感圧式等の別の構造で構成してもよい。
更に、本実施例2の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cを設けてもよい。また、本実施例2の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例3を図20から図25に基づいて説明する。
前述した実施例1や実施例2の操舵入力手段10においては、操作部材12がガイド部13を何周でも自在に移動することができる。従って、操作部材12の左右双方への移動範囲が拡がる(即ち、操舵角θSTの範囲が大きくなる)と、運転者は、手首だけでなく腕全体を動かさなければ操作部材12を移動させることができなくなる。そして、運転者の操舵操作の利便性を考えるならば、操作部材12の左右双方への移動範囲は、手首のみで移動させることの可能な範囲、又は拡がったとしても肘よりも先(肘から指先にかけてまで)のみで移動させることの可能な範囲に抑えておくことが好ましい。
そこで、本実施例3にあっては、ガイド部13に沿って移動している操作部材12を係止する操作部材係止手段17L,17Rを設け、これにより運転者の操舵操作の利便性を向上させる。ここでは、左旋回時用の操作部材係止手段17Lと右旋回時用の操作部材係止手段17Rを各々別個に配設する。
本実施例3の操舵装置1は、前述した実施例1又は実施例2の構成において操舵入力手段10の操作部10a又は操作部110aを図20及び図21に示す操作部210aへと変更したものである。具体的に、この操作部210aは、実施例1の操作部10a又は実施例2の操作部110aの操作面10s上に操作部材係止手段17L,17Rを追加したものである。従って、本実施例3の操舵装置1は、基にした実施例1又は実施例2と同様の作用効果を得ることができ、更に、その操作部材係止手段17L,17Rによる下記の効果を奏することができる。尚、以下においては、実施例1の構成を基にした操舵装置1について代表して例示する。
本実施例3の操作部材係止手段17L,17Rは、図20から図23に示す如くスリット状のガイド部13上で操作面10sよりも突出させて配設したものであり、操作部材12又は操舵操作量検出手段14が当接した際にそれ以上の移動を規制するものである。ここで例示する操作部材係止手段17L,17Rは、三角柱の形状に成形し、その高さ方向とガイド部13のスリット幅方向を対応させ、且つ、近づいてきた操作部材12の側面又は下面(ここでは、運転者が触れる面を上面としている。)が夫々の傾斜面17aと向かい合うよう当該ガイド部13内に操作面10sよりも突出させて配置する。つまり、この操作部材係止手段17L,17Rは、その傾斜面17aに操作部材12又は操舵操作量検出手段14を当接させて操作部材12の移動を係止するものとなっている。
ここで、本実施例3の操作部材係止手段17L,17Rは、ガイド部13上を移動できないよう当該ガイド部13に固定してもよいが、ここでは自在にガイド部13上を移動できるように配設する。つまり、人それぞれに手の大きさや腕の長さが異なるので、操作部材12の左右双方への移動範囲(操舵角θSTの範囲)を平均的な一態様に固定してしまった場合には、平均的な人と大きく体格の異なる運転者に対して適切な操舵操作性を提供することができない可能性がある。これが為、ここでは、様々な体格の運転者に適した操舵操作が行われるように、操作部材係止手段17L,17Rの配設位置をガイド部13に沿って移動できるように構成する。
具体的に、この操作部材係止手段17L,17Rは、ガイド部13に沿った移動が可能になるようガイド部13のスリット幅よりも三角柱の高さを低くし、その三角柱の3つの側面の内の一辺を操作部主体11の凹状部材11Bの平板部材11Aとの対向面に当接させてガイド部13内に配置する。そして、この操作部材係止手段17L,17Rは、その対向面との当接面を起点にした高さがその対向面から操作面10sよりも高くなるように成形しておき、その操作面10sから突出させる。尚、この操作部材係止手段17L,17Rは、ガイド部13と同じ曲率半径を有するよう成形したのであれば、その厚み(三角柱で言うところの高さ)をガイド部13のスリット幅よりも僅かに薄くすればよい。
一方、この操作部材係止手段17L,17Rは、このままではガイド部13から抜け落ちてしまう。これが為、本実施例3の操作部材係止手段17L,17Rは、上記の当接面側の両面(三角柱における上面と下面)に図23に示す突出部17bを設け、これら突出部17bが平板部材11Aと凹状部材11Bとの間の空間部で当該平板部材11Aに引っ掛かってガイド部13から抜け落ちないようにする。
ここで、この操作部材係止手段17L,17Rは、その傾斜面17aに当接した操作部材12(又は操舵操作量検出手段14)に対して運転者が更なる力を加えると、その係止位置から動いてしまう可能性がある。これが為、ここでは、その係止位置を確固たるものとすべく、その係止位置に操作部材係止手段17L,17Rを保持する係止手段保持部材を用意しておく。例えば、この係止手段保持部材としては、上述した突出部17bを襟要してもよい。つまり、その突出部17bの高さ(平板部材11Aと凹状部材11Bの対向する平面間における高さ)をその平面間の距離と略同等にし、所定以上の力が働いたときにのみ操作部材係止手段17L,17Rが移動できるよう突出部17bを平板部材11Aと凹状部材11Bとで挟持させる。また、この係止手段保持部材としては、操作部材係止手段17L,17Rとは別個独立した部材や手段を利用してもよい。
ところで、その操作部材係止手段17L,17Rは、上述したように操作部材12の係止のみを目的とするものであってもよいが、操作部材12が引っ掛かった際に作用する圧力Pに基づいた目標転舵角θreqの設定に利用してもよい。つまり、この場合の操舵装置1においては、操作部材12が操作部材係止手段17L,17Rで係止されるまでと係止された後とで目標転舵角θreqの算出の基準となる条件を変更する。
具体的に、この場合の電子制御装置30の目標転舵角設定手段は、図24のマップデータに示す如く、操作部材12が係止されるまでは操作部材12の移動に伴う操舵角θSTの変化を利用して目標転舵角θreqの算出を実行させる一方で、操作部材12が係止された後は操作部材係止手段17L,17Rに働く運転者による圧力(以下、「操舵操作圧力」という。)Pの変化を利用して目標転舵角θreqの算出を実行させるように構成する。そして、かかる操舵操作圧力Pを検知する為に、操作部材係止手段17L,17Rには圧力検出手段を設けておく。この圧力検出手段は、操作部材12が操作部材係止手段17L,17Rに触れるまで何らの検出信号も電子制御装置30へと送信させないものとする。
例えば、ここでは、その夫々の傾斜面17aに図22及び図23に示す圧力検出手段18を配設する。この圧力検出手段18としては、例えば、圧電素子等のような薄膜状の圧力センサを利用することができ、傾斜面17aに貼り付けて使用する。ここで、圧電素子たる薄膜のPVDF(PolyVinylidine DiFluoride:ポリフッ化ビニリデン)を圧力検出手段18として利用する場合には、その表面に蒸着させている電極としてのアルミニウム等の剥離を回避する為に、樹脂等からなる柔軟性のある別の薄膜部材で覆って保護しておくことが望ましい。
以下、本実施例3の操舵装置1による操舵輪WL,WRの転舵動作について図25のフローチャートを用いて説明する。尚、その転舵動作の多くは基となる実施例1と同じであるので、以下においては、実施例1の転舵動作との相違点を中心にして詳述する。
先ず、本実施例3の電子制御装置30は、イグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行い(ステップST5)、ここで検出されていなければ本処理を一端終了してかかるステップST5の判定を繰り返す。一方、イグニッションON信号が検出されていれば、本実施例3の電子制御装置30の目標転舵角設定手段は、操舵操作量検出手段14と圧力検出手段18からの夫々の検出信号に基づいて、運転者による操作部材12の操舵操作量(操舵角θST)と操作部材12を介した操作部材係止手段17L(17R)への運転者による操舵操作圧力Pとを各々検出する(ステップST11)。尚、その操舵操作圧力Pについては、上述したように操作部材12が操作部材係止手段17L,17Rに接触しなければ検出されない。
その目標転舵角設定手段は、そのステップST5にてイグニッションON信号検出との判定が行われた場合、そのステップST11の操舵操作圧力Pが「0」よりも大きくなっているのか否か、即ち、そのステップST11で操舵操作圧力Pが検出されたのか否かについての判定を行う(ステップST12)。このステップST12の判定は、換言するならば、操作部材12が操作部材係止手段17L(17R)に係止されるまで移動させられているのか否かについての判定であるとも言える。
ここで、そのステップST12にて操舵操作圧力Pが検出されていない、即ち、操作部材12が操作部材係止手段17L(17R)に係止されるまで移動させられていないとの判定が為された場合、本実施例3の目標転舵角設定手段は、実施例1のときと同様に、操舵角θSTに基づいて操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを算出する(ステップST15)。
一方、そのステップST12にて操舵操作圧力Pが検出されている、即ち、操作部材12が操作部材係止手段17L(17R)に係止されているとの判定が為された場合、本実施例3の目標転舵角設定手段は、操舵操作圧力Pに基づいて操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを算出する(ステップST17)。
本実施例3の電子制御装置30の車輪転舵制御手段は、操舵輪WL,WRが上記ステップST15又はステップST17で求めた目標転舵角θreqとなるように、車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させ始める(ステップST20)。この車輪転舵制御手段は、実施例1と同じく、操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを検出して(ステップST25)、これと目標転舵角θreqの差の絶対値(|θreq−θreal|)を所定値と比較し(ステップST30)、その差が小さくなるまで(ステップST30で否定判定が為されるまで)電動モータ21の駆動を継続させた後に停止させる(ステップST35)。
このように、本実施例3の操舵装置1においては、運転者が手首又は肘よりも先(肘から指先にかけてまで)だけを動かして操作部材12をガイド部13に沿って移動させ、その際の操舵操作量(操舵角θST)に応じた目標転舵角θreqへと操舵輪WL,WRを転舵させることができる。また、この操舵装置1においては、操作部材12が操作部材係止手段17L,17Rに係止された後でも、その夫々の間の圧力変化(運転者による操舵操作圧力Pの変化)に応じた目標転舵角θreqへと操舵輪WL,WRを転舵させることができる。つまり、この操舵装置1によれば、上述した操舵角θSTと操舵操作圧力Pという2種類の目標転舵角設定基準値を用いて目標転舵角θreqの設定を行うことができるので、運転者は、小さな腕の動きで操舵輪WL,WRを転舵させることができるようになり、大きな動きが強いられないので操舵操作性が向上する。
以上示した如く、本実施例3の操舵装置1は、運転者の操舵操作性等の効果について基となる実施例1又は実施例2と同様に向上させ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例1と同様に行わせることができるのみならず、更に、手首又は肘よりも先(肘から指先にかけてまで)だけを動かして操作部材12を移動させることができるので運転者にとっての操舵操作の利便性が向上する。
ここで、本実施例3の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cや実施例2において例示した転舵角解除手段16を設けてもよい。また、本実施例3の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例4を図26に基づいて説明する。
前述した実施例1〜3の操舵装置1においては、シャフト軸力Foが所定値A(所定値B)を超えていれば、操舵反力伝達手段40を作動させ、凹凸を乗り降りしたとき等における操舵反力の存在を運転者に対して振動で伝えている。しかしながら、これら実施例1〜3の操舵装置1においては、操舵反力伝達手段40の作動要否をシャフト軸力Foの大きさで判断しているので、凹凸の乗り降り等に伴い車輌の挙動を不安定にさせる可能性のある不都合発生時のみならず、通常の操舵操作時であっても操舵反力伝達手段40を作動させてしまう。従って、本実施例4においては、その不都合発生時のみに絞り込んで操舵反力伝達手段40を作動させるように、つまり、警報としての意味合いを持たせた振動のみが運転者に伝えられるように構成する。
具体的に、本実施例4の操舵装置1は、前述した実施例1〜3の内の何れか1つの構成において、凹凸の乗り降り等に伴う不都合発生時にのみ操舵反力伝達手段40を作動させるように電子制御装置30の操舵反力制御手段を変更したものである。従って、本実施例4の操舵装置1は、その変更された操舵反力制御手段に係る部分を除いて、基にした実施例1〜3の内の何れかと同様の作用効果を得ることができる。
例えば、前述した実施例1〜3の操舵装置1においてはシャフト軸力Foの大きさを観て操舵反力伝達手段40の作動要否を判断させたが、本実施例4においては、そのシャフト軸力Foの微分値を観て操舵反力伝達手段40の作動要否を判断させるように操舵反力制御手段を構成する。
つまり、シャフト軸力Foの微分値とはシャフト軸力Foの時間当たりの変化度合いを表すものであり、例えば、凹凸を乗り降りしたときや段差に接触したときには瞬間的にシャフト軸力Foが増加するので、その変化度合いを通常の操舵操作時のものと比べることによって違いが明らかになる。また、据え切り操作時においては、瞬時にシャフト軸力Foの増加する据え切り操作が行われたときの方が車輪転舵角付与手段20の負荷の増加に繋がり易い。従って、本実施例4の操舵装置1においては、そのシャフト軸力Foの変化度合いを観ながら操舵反力伝達手段40の作動要否を判断する。
例えば、本実施例4の電子制御装置30の操舵反力制御手段は、図26のフローチャートに示す如く操舵反力伝達手段40の制御動作を行う。尚、ここで例示する制御動作は、実施例1で説明したものと略同じにしているので、その相違点に重きを置いて説明する。
本実施例4の操舵反力制御手段は、実施例1で説明したときと同様に、イグニッションON信号が検出されなければ、操舵反力伝達手段40の電動モータ40aの停止指令を実行し(ステップST85)、イグニッションON信号が検出されれば、車速V及びシャフト軸力Foを検出して(ステップST55,ST60)、車輌が走行中であるのか停車中であるのか判定する(ステップST65)。
本実施例4の操舵反力制御手段は、そのステップST65にてV>0であり走行中との判定を行った場合、検出したシャフト軸力Foの微分値が所定値Cを超えているのか否かについての判定を行う(ステップST76)。その際の所定値Cとしては、例えば、凹凸を乗り降りしたときや段差に接触したときのシャフト軸力Foの微分値の最小値を設定しておけばよい。
この操舵反力制御手段は、そのステップST76にてシャフト軸力Foの微分値が所定値Cを超えているとの判定を行った場合、路面の凹凸や段差によって車輌の挙動が乱される可能性があると判断し、操舵反力伝達手段40の電動モータ40aを駆動させる(ステップST80)。
従って、この場合には、その駆動に伴う振動が運転者に伝えられ、この運転者に対して、路面に凹凸や段差があり、その凹凸の乗り降りや段差への接触によって操舵輪WL,WRが転舵していると把握させることができる。そして、この場合には、車輌の挙動が乱される可能性があると運転者に判断させ、修正操舵を実行させることができるので、車輌の挙動の乱れの抑制が可能になる。
また、この操舵反力制御手段は、そのステップST76にてシャフト軸力Foの微分値が所定値C以下と判定した場合、通常の操舵操作時であると判断し、上記ステップST85に進んで操舵反力伝達手段40の電動モータ40aが駆動しないよう停止指令を実行する。
つまり、本実施例4の操舵反力制御手段は、走行中であれば、通常の操舵操作時に振動させず、その凹凸の乗り降り等に伴う警報としての振動のみが運転者に伝えられるようにしている。
一方、この操舵反力制御手段は、そのステップST65にてV=0であり停車中との判定を行った場合、検出したシャフト軸力Foの微分値が所定値Dを超えているのか否かについての判定を行う(ステップST77)。その際の所定値Dとしては、例えば、瞬時にシャフト軸力Foの増加する据え切り操作が行われたときのシャフト軸力Foの微分値の最小値を設定しておけばよい。
この操舵反力制御手段は、そのステップST77にてシャフト軸力Foの微分値が所定値Dを超えているとの判定を行った場合、据え切り操作が行われていると判断し、上記ステップST80に進んで操舵反力伝達手段40の電動モータ40aを駆動させる。
従って、この場合には、その駆動に伴う振動が伝えられた運転者に対して、据え切り操作によって車輪転舵角付与手段20に過大な負荷が掛かってしまうと把握させることができる。そして、この場合には、車輪転舵角付与手段20の負荷が過大になる前に運転者に対して据え切り操作の中止を判断させることができ、その車輪転舵角付与手段20の発熱や発火、作動不良の抑制が可能になる。
また、この操舵反力制御手段は、そのステップST77にてシャフト軸力Foの微分値が所定値D以下と判定した場合、車輪転舵角付与手段20の負担が少ないと判断し、上記ステップST85に進んで操舵反力伝達手段40の電動モータ40aが駆動しないよう停止指令を実行する。
つまり、本実施例4の操舵反力制御手段は、停車中であれば、車輪転舵角付与手段20への負荷が小さいときに振動させず、その負荷が過大となるときにのみ警報としての振動が運転者に伝えられるようにしている。
以上示した如く、本実施例4の操舵装置1は、運転者の操舵操作性等の効果について基となる実施例1〜3の内の何れかと同様に向上させることができるのみならず、更に、警告が必要とされるときにのみ操舵反力伝達手段40からの振動によって路面状態等を把握させ、その路面状態等に応じた対応を的確に運転者に実行させることができるようになる。
ここで、本実施例4の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cや実施例2において例示した転舵角解除手段16を設けてもよい。また、本実施例4の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例5を図27に基づいて説明する。
前述した実施例1〜4の操舵装置1においては、シャフト軸力Fo又はシャフト軸力Foの微分値が所定の条件を満たしていれば、その大きさに拘わらず同じ大きさ(つまり、振幅)の振動が働くように操舵反力伝達手段40を作動させている。しかしながら、通常、シャフト軸力Foが大きくなるにつれて操舵反力も大きくなり、その大きさに合わせて修正操舵の必要性や据え切り操作の中止の必要性が高くなるものと考えられる。つまり、走行中においては、シャフト軸力Foが大きくなるほどに大きな操舵操作力や操舵角θSTで修正操舵を行わなければ、適切に車輌の挙動の安定化を図ることができない。また、停車中においては、シャフト軸力Foが大きくなるほどに車輪転舵角付与手段20への負荷が高くなっていると考えられる一方、そのシャフト軸力Foが小さければ、早急に据え切り操作を中止しなくても車輪転舵角付与手段20の発熱等を防ぐことができる。
更に、前述した実施例1〜3の操舵装置1においては、或る程度の大きさのシャフト軸力Foが発生しているときにのみ操舵反力の存在を運転者に伝えるよう構成されている。つまり、シャフト軸力Foが所定値A(所定値B)以下のときには、操舵反力伝達手段40を作動させないようにしている。また、前述した実施例4の操舵装置1においては、車輌の挙動が不安定になる等の不都合の生じる可能性があるときにのみ操舵反力の存在を運転者に伝えるよう構成されている。しかしながら、従前の操舵装置においては、操舵輪WL,WRの転舵角が大きくなるほど運転者に大きな操舵反力がステアリングホイールから伝わるので、シャフト軸力Foの大小に拘わらず、また、通常の操舵操作時であればその操舵角θSTに応じて、その運転者には操舵反力が伝えられる。これが為、前述した実施例1〜4の操舵装置1においては、従前の操舵装置との操舵操作時の感覚的な差異を運転者に感じさせてしまう。尚、走行中のシャフト軸力Foは、自ら操舵操作を行って操舵輪WL,WRを転舵させているときでも、路面の凹凸等によって操舵輪WL,WRが転舵させられているときでも、その転舵角が同じであれば同等の大きさになっているものと考えられる。
そこで、本実施例5においては、操舵輪WL,WRの転舵角(即ち、シャフト軸力Fo)の大きさに対応した振動を発生させ、その操舵輪WL,WRの転舵角(シャフト軸力Fo)に応じた大きさの操舵反力の存在を運転者に知らせることができるように構成する。
つまり、従前の操舵装置を使う運転者は、走行中に自ら操舵操作していれば、その操舵操作に応じた大きさの操舵反力をステアリングホイールから感じ取ることができる一方で、操舵操作していないにも拘わらず走行中に操舵反力を感じたならば、その操舵反力が凹凸や段差を原因とするものであると判断する。また、その運転者は、操舵操作中であっても、その操舵操作によるもの以上の大きさの操舵反力を感じたならば、その増加分については凹凸や段差を原因とするものであると判断する。更に、その運転者は、停車中に操舵操作しているならば、そのときに操舵反力を感じ取りさえすれば車輪転舵角付与手段20に対して与えている負荷を考えることができる。従って、走行中であるのか停車中であるのか、また、通常の操舵操作時の操舵反力であるのか凹凸等を原因とする操舵反力であるのかについて区別せずとも、その操舵反力の大きさを認識させることができさえすれば、これに基づいて自らの判断で運転者が適切な対応を採ることができるので、ここでは、操舵輪WL,WRの転舵角(シャフト軸力Fo)に応じた大きさの操舵反力の存在を知らせるのみとする。
具体的に、本実施例5の操舵装置1は、前述した実施例1〜3の内の何れか1つの構成において、操舵輪WL,WRの転舵角(シャフト軸力Fo)に応じた振動を操舵反力伝達手段40に発生させるように電子制御装置30の操舵反力制御手段を変更したものである。従って、本実施例5の操舵装置1は、その変更された操舵反力制御手段に係る部分を除いて、基にした実施例1〜3の内の何れかと同様の作用効果を得ることができる。
先ず、本実施例5の電子制御装置30の操舵反力制御手段は、図27のフローチャートに示す如く、実施例1で説明したときと同様に、イグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行う(ステップST50)。尚、ここでイグニッションON信号未検出と判定した場合には、実施例1で説明したものと同様に、ステップST85に進んで操舵反力伝達手段40の電動モータ40aが駆動しないよう停止指令を実行する。
そして、ここでイグニッションON信号検出と判定した場合、本実施例5の操舵反力制御手段は、シャフト軸力Foを検出し(ステップST60)、そのシャフト軸力Foに応じたバイブレータ振幅電圧Voを下記の式1から求める(ステップST62)。
Vo=Fo×C … (1)
そのバイブレータ振幅電圧Voとは、操舵反力伝達手段40の電動モータ40aへの供給電圧の指令値であり、電圧値が高くなるほどに電動モータ40aを高回転で駆動させる。従って、本実施例5の操舵反力伝達手段40は、バイブレータ振幅電圧Voが高くなるにつれて振幅の大きな振動を発生させるようになる。尚、その式1の「C」は、定数であって、シャフト軸力Foを電圧値に変更する為の変換係数である。
その操舵反力制御手段は、そのバイブレータ振幅電圧Voを電動モータ40aに印加するよう例えば当該電子制御装置30の電源供給回路等に指示を与え、これによりその電動モータ40aを駆動させる(ステップST80)。
従って、本実施例5においては、シャフト軸力Fo(操舵輪WL,WRの転舵角)が大きくなるにつれて振幅の大きな振動が発生する。これが為、運転者は、走行中に自ら操舵操作していれば、従前の操舵装置と同様に、その操舵操作に応じた大きさの操舵反力の存在を振動から感じ取ることができるようになる。また、運転者は、操舵操作していないにも拘わらず走行中に振動から操舵反力の存在を知ったならば、又は操舵操作中でもその操舵操作によるもの以上の大きさの操舵反力の存在を知ったならば、凹凸の乗り降り等により操舵輪WL,WRが自らの意思に反して転舵していると把握することができ、その操舵反力の大きさに応じた修正操舵を行うことができる。更に、運転者は、停車中であれば、その操舵反力の大きさに応じて、据え切り操作を継続して良いものなのか中止すべきなのかを判断することができる。
以上示した如く、本実施例5の操舵装置1は、運転者の操舵操作性等の効果について基となる実施例1〜3の内の何れかと同様に向上させることができるのみならず、更に、操舵輪WL,WRの転舵角(シャフト軸力Fo)に応じた大きさの操舵反力の存在を運転者に知らせ、通常操舵操作時や凹凸等の乗り降り時等の如く、その時々に応じた適切な対応を運転者に実行させることができるようになる。また更に、この本実施例5の操舵装置1によれば、運転者は、従前の操舵装置と同様の操舵操作時の感覚を得ることができるようになる。
ここで、本実施例5の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cや実施例2において例示した転舵角解除手段16を設けてもよい。また、本実施例5の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例6を図28及び図29に基づいて説明する。
一般に、操舵操作時には、操舵角θSTを増加させていくにつれて操舵輪WL,WRの転舵角(シャフト軸力Fo)も増加していき、更に、操舵反力についても増加していく。一方、操舵輪WL,WRの転舵角が或る程度まで増加していった場合には、操舵輪WL,WRが横滑り角の増加に伴って所謂コーナリングフォースの限界点にまで近づいていき、或る時点から操舵角θSTを増やしていっても操舵反力が小さくなっていく所謂舵抜け現象が生じる。そして、その舵抜け現象を運転者に感じ取らせることができない場合には、更に操舵角θSTを増やしていき、これに伴い車輌がアンダーステア状態に陥ってしまう可能性があるので、走行安定性の観点からして好ましくない。
そこで、本実施例6においては、車輌の挙動を不安定にさせる可能性のある舵抜け現象を運転者に知らせることができるように構成する。具体的に、本実施例6の操舵装置1は、前述した実施例1〜3の内の何れか1つの構成において、舵抜け現象を検知させると共に、これを検知した際に運転者へと知らせるよう電子制御装置30の操舵反力制御手段を変更する。従って、本実施例6の操舵装置1は、その変更された操舵反力制御手段に係る部分を除いて、基にした実施例1〜3の内の何れかと同様の作用効果を得ることができる。
例えば、操舵輪WL,WRの転舵角が一定又は増加しているときにシャフト軸力Foが減少していれば、舵抜け現象が生じていると判断することができる。これが為、本実施例6においては、操舵輪WL,WRの転舵角の状態を判定させる。そして、本実施例6においては、その転舵角が一定又は増加していれば、次にシャフト軸力Foの状態を判定させ、図28に示す如く、そのシャフト軸力Foが減少していれば舵抜け現象との判断を行わせる。
また、本実施例6においては、操舵反力伝達手段40の発生させる振動パターンを変えることによって舵抜け現象が生じていることを運転者に伝えるようにする。つまり、本実施例6においては、舵抜け現象固有の振動を起こさせる。例えば、ここでは、通常の振動パターン(以下、「振動パターンA」という。)と舵抜け現象発生時の振動パターン(以下、「振動パターンB」という。)とで振動周波数を変えてもよく、また、一方を連続的な振動とし、他方を断続的な振動としてもよい。
先ず、本実施例6の電子制御装置30の操舵反力制御手段は、図29のフローチャートに示す如く、実施例1で説明したときと同様に、イグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行う(ステップST50)。尚、ここでイグニッションON信号未検出と判定した場合には、実施例1で説明したものと同様に、ステップST85に進んで操舵反力伝達手段40の電動モータ40aが駆動しないよう停止指令を実行する。
そして、ここでイグニッションON信号検出と判定した場合、本実施例6の操舵反力制御手段は、シャフト軸力Foを検出し(ステップST60)、そのシャフト軸力Foが所定値を超えているのか否かについての判定を行う(ステップST71)。例えば、その所定値としては、走行安定性や操舵操作性等の観点から観て、運転者に対して操舵反力の存在を以て注意を喚起すべきと考えられる操舵角θSTに応じたシャフト軸力Foを設定すればよい。
ここで、その操舵反力制御手段は、シャフト軸力Foが所定値以下であれば運転者への警告は不要と判断し、ステップST85に進んで電動モータ40aの停止指令を実行する。つまり、この場合には、図28に示す振動OFFの領域となり、運転者への警告が実行されない。
また、そのステップST71にてシャフト軸力Foが所定値を超えている(つまり、図28に示す振動ONの領域になっている)との判定を行った場合、操舵反力制御手段は、転舵角センサ24から操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを検出し(ステップST72)、転舵角が一定に保たれている又は増加しているのか、それとも減少しているのかについての判定を行う(ステップST73)。
そして、転舵角が減少していると判定した場合、操舵反力制御手段は、運転者への警告は不要と判断し、ステップST85に進んで電動モータ40aの停止指令を実行する。
また、この操舵反力制御手段は、そのステップST73にて転舵角が一定に保たれている又は増加しているとの判定を行った場合、次にシャフト軸力Foが一定に保たれている又は増加しているのか、それとも減少しているのかを判定する(ステップST74)。
ここでシャフト軸力Foが一定に保たれている又は増加していると判定した場合、操舵反力制御手段は、保舵状態にあり操舵反力が一定に保たれている又は操舵反力が増加していると判断し、振動パターンAで振動させるように操舵反力伝達手段40の電動モータ40aを駆動させる(ステップST81)。
一方、そのステップST74にてシャフト軸力Foが減少していると判定した場合、操舵反力制御手段は、舵抜け現象が発生したものと判断し、振動パターンBで振動させるように電動モータ40aを駆動させる(ステップST82)。これにより、運転者は、舵抜け現象の発生を知ることができるので、アンダーステア状態とならないように操舵角θSTを減少させる等の適切な対応を採ることができるようになり、走行安定性を高めることができる。
以上示した如く、本実施例6の操舵装置1は、運転者の操舵操作性等の効果について基となる実施例1〜3の内の何れかと同様に向上させることができるのみならず、更に、舵抜け現象を運転者に知らせ、安定性の高い走行状態(具体的には、旋回状態)を保たせる適切な操舵操作を実行させることができるようになる。
ところで、上述した舵抜け現象は、図28の振動OFFの領域においても発生する。これが為、その振動OFFの領域で且つシャフト軸力Foが減少している場合についても、振動パターンBの振動が実行されるように構成してもよい。
ここで、本実施例6の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cや実施例2において例示した転舵角解除手段16を設けてもよい。また、本実施例6の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例7を図30から図36に基づいて説明する。
前述した実施例1〜6の操舵装置1においては、実際に視認可能な操作部材12を動かすことによって操舵輪WL,WRを転舵させている。本実施例7においては、これらで例示した操作部材12等のような機構部材や構造部材を用いずに操舵操作させることが可能な操舵装置を構築する。
本実施例7の操舵装置1は、前述した実施例1〜6の内の何れか1つの構成において操舵入力手段10の操作部10a(操作部110a,210a)を図30に示す操作部310aへと変更したものである。つまり、本実施例7の操舵入力手段10は、実施例1〜6のときと同様に筐体10bの中に操作部310aを収納して構成されている。
具体的に、本実施例7の操作部310aとしては、運転者による接触(入力)を検知する為の素子(即ち、操作面310s上での運転者による接触点の位置を検出する接触点検出手段)を例えば格子状に配置した所謂タッチパネルや、そのタッチパネルを搭載した所謂タッチスクリーン等のディスプレイ装置が考えられる。ここで、その素子としては圧力の変化を感知するものや静電容量の変化を感知するもの等があり、この素子は、その変化に基づき位置情報に変換して電気信号を送る。従って、その電気信号を受け取った電子制御装置30は、操作部310aの操作面310s上で運転者により触れられた場所を把握することができる。また、この種のディスプレイ装置としてはそのような素子に替えて赤外線を接触点検出手段として利用するものもあり、この赤外線により運転者が接触(実際に接触している必要はない)した場所の位置情報を検知可能なディスプレイ装置を操作部310aとして利用してもよい。更に、この操作部310aには、タッチパッド(タッチセンサ)を利用してもよい。例えば、この種の操作部310aとしては、静電容量の変化を感知する素子(接触点検出手段)が格子状に配置された静電パッドが知られている。
本実施例7においては、その操作部310aにて検出された接触点の変位に基づいて当該接触点の変位量(運転者による操作面310s上での指先の摺動量)を求め、この接触点の変位量を運転者による操舵操作量(操舵角θST)として設定する操舵操作量設定手段が電子制御装置30に用意されている。従って、本実施例7の目標転舵角設定手段は、その操舵操作量設定手段により設定された操舵操作量に基づいて操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqの設定を行う。
また、本実施例7の操作部310aについては、前述した実施例1〜6と同様に、その操作面310sに湾曲形状部又は凹形状部を設け、操舵輪WL,WRの非転舵位置(即ち、直進状態等の操舵輪WL,WRの中立位置)を運転者に対して知らしめるようにしている。例えば、湾曲形状部を適用する場合には、操作面310sを左右に二分するが如く撓ませ、これにより形成される一直線上の底部を操舵輪WL,WRの中立位置として設定しておく。また、凹形状部については、例えば、湾曲形状部の底部に相当する操作面310s上の位置へ凹形状の溝を形成することによって構築可能である。つまり、その操作面310sは、可視、不可視に拘わらず分割線(車輌前後方向中心軸に相当する線)によって左右に二分されており、その分割線の部分が操舵輪WL,WRの中立位置に対応するようになっている。
従って、本実施例7の操作部310aにおいては、その底部で後述する第2接触点Tc2が検知された場合、従前のステアリングホイールで言うところのステアリングセンタとなり、操舵輪WL,WRが中立位置になることを表す。これが為、この操作部310aにおいては、その底部から操作面310sの左側の領域へと(つまり、反時計回りに)第2接触点Tc2を摺動させることによって車輌の左旋回方向への操舵操作となり、その底部から操作面310sの右側の領域へと(つまり、時計回りに)第2接触点Tc2を摺動させることによって車輌の右旋回方向への操舵操作となるよう設定しておく。また、ここでは、右旋回方向への操舵操作であれば操舵角θSTを正の値として出力させる一方、左旋回方向への操舵操作であれば操舵角θSTを負の値として出力させるよう接触点検出手段の設定を行っておく。
尚、湾曲形状部又は凹形状部を有するからといって必ずしもその底部を操舵輪WL,WRの中立位置とする必要はなく、操作面310sと運転者の手の位置の関係に基づいて、つまり、操作面310s上での後述する第1接触点Tc1及び第2接触点Tc2の位置関係の検出頻度等に応じて、操舵輪WL,WRの中立位置に対応する操作面310s上の中立位置(所謂ステアリングセンタ)を設定してもよい。
また、本実施例7においても、その操作部310aを振動させる操舵反力伝達手段40を用意している。例えば、ここで例示する操舵反力伝達手段40は、図30に示す如く、その操作部310aの裏面(操作面310sとは反対側の面)に取付部材40cを介して電動モータ40aを固定し、この電動モータ40aの出力軸に偏心ウエイト40bを取り付けることによって構成している。
この種の操作部310aを用いる本実施例7の操舵装置1においては、以下に示すように目標転舵角θreqの設定が行われて操舵輪WL,WRの転舵が実行される。また、操舵反力伝達手段40については、実施例1〜6の内の何れかと同様にして電子制御装置30の操舵反力制御手段に動作させる。従って、ここでは、この操舵反力伝達手段40の動作についての説明を省略する。尚、図30においては、後述する第2接触点Tc2が「Tc2(0)」、「Tc2(1)」、「Tc2(2)」の順に移り変わっていくものを例に挙げて図示している。
例えば、本実施例7の電子制御装置30は、図31のフローチャートに示す如くイグニッションON信号が検出されているのか否かについての判定を行う(ステップST100)。そして、このステップST100にてイグニッションON信号検出との判定が為された場合、この電子制御装置30の操舵操作量設定手段は、操作部310aの操作面310s上における運転者による接触点の有無を確認する為の変数(以下、「接触点有無フラグ」という。)Fが立てられているのか否か(つまり、F=1となっているのか否か)についての判断を行う(ステップST105)。
この操舵操作量設定手段は、そのステップST105にて接触点有無フラグFが立てられている(即ち、運転者による接触点が操作面310s上に確認されている)との判断を行った場合に後述するステップST130に進む。
一方、そのステップST105にて接触点有無フラグFが立てられていない(即ち、運転者による接触点が操作面310s上に確認されていない)との判断を行った場合、この操舵操作量設定手段は、転舵角センサ24から操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを検出し(ステップST110)、第1接触点Tc1の座標(X1,Y1)、第2接触点Tc2の座標(X2,Y2)、最初の接触点L1の仮座標(XL1,YL1)、2番目の接触点L2の仮座標(XL2,YL2)について原点(0,0)への初期化を行う(ステップST115)。
ここで、その第1接触点Tc1とは、運転者の手のひらにおける手首側での接触点のことを示しており、運転者による操舵操作の支点となる基準点を表している。一方、その第2接触点Tc2とは、運転者の手のひらにおける指先側での接触点のことを示しており、運転者による操舵操作時の接触点の変位量(つまり、操舵操作量)を測定する為の操舵操作量測定点を表している。つまり、ここでは、手首側が基準点となる一方で指先側が操舵操作量測定点となるので、運転者による操作面310s上での弧状の操舵操作を容易に行うことができる。また、最初の接触点L1や2番目の接触点L2とは、各々操作部310aの操作面310s上で1番初めに検知された接触点、2番目に検知された接触点のことを示しており、その操作面310sに運転者が手のひらの何処で触れたのかについては認識されていない接触点である。
本実施例7の操作部310aは、その第1接触点Tc1を支点にし、第2接触点Tc2を操作面310s上で移動させることによって運転者に操舵操作を実行させるものである。つまり、この操作部310aにおいては、片手の手のひらの手首側を支点にして五指の内の何れか1本の指先を操作面310s上で摺動させ、これを正規の操作方法として規定している。
続いて、この操舵操作量設定手段は、操作面310s上に接触点が存在しているのか否か(即ち、操作部310aの接触点検出手段によって接触点が検知されたのか否か)の判定を行う(ステップST120)。
この操舵操作量設定手段は、そのステップST120にて接触点無しと判定した場合、接触点有無フラグFを「0」にすると共に、第1接触点Tc1が確定しているか否かを確認する為の変数(以下、「Tc1確定フラグ」という。)FTc1を「0」にして(ステップST125)、上記ステップST115に戻る。
一方、この操舵操作量設定手段は、そのステップST120にて接触点有りと判定した場合、Tc1確定フラグFTc1が「0」になっているのか否かについての判定を行う(ステップST130)。つまり、このステップST130においては、運転者が本操作部310aを扱う際に操舵操作の支点として働く第1接触点Tc1が確定していないのか、それとも既に確定しているのかについての判断が為される。
そして、そのステップST130でTc1確定フラグFTc1が「0」になっている(即ち、第1接触点Tc1が確定していない)と判定された場合、操舵操作量設定手段は、接触点有無フラグFを立て(ステップST135)、検出された接触点個数Nに基づきカウント処理を行う(ステップST140)。このステップST140においては、接触点が1箇所だけ(N=1)であれば変数Kを「1」にし、2箇所以上接触点があった(N≧2)ならば変数Kを「2」にする。
そして、この操舵操作量設定手段は、その変数Kを観て(ステップST145)、「K=1」であればその際の最初の接触点L1K=1の仮座標(XL1K=1,YL1K=1)をセットし(ステップST150)、上記ステップST140に戻る。一方、そのステップST145にて「K≠1」と判定した場合、この操舵操作量設定手段は、最初に検知された接触点とその次に検知された接触点を各々第1接触点Tc1又は第2接触点Tc2の内の何れかに確定させる(ステップST155)。また、そのステップST155の確定処理は、上記ステップST30でTc1確定フラグFTc1が「0」になっていない(即ち、Tc1確定フラグFTc1が立っており、第1接触点Tc1が確定している。)との判定が為された場合にも実行される。
具体的に、かかるステップST155の確定処理は、図32のフローチャートに示す如く実行される。
先ず、操舵操作量設定手段は、変数K=1回目の2番目の接触点L2K=1の仮座標(XL2K=1,YL2K=1)をセットし(ステップST155A)、その直前のK=1回目の接触点(最初の接触点L1K=1)の仮座標(XL1K=1,YL1K=1)もセットする(ステップST155B)。
続いて、この操舵操作量設定手段は、その最初の接触点L1K=1から2番目の接触点L2K=1までのベクトル(以下、文中においては「ベクトル(L1K=1,L2K=1)」と記す。)を求めた後(ステップST155C)、操作面310s上で定義された車輌前方方向のベクトル(以下、文中においては「車輌前方方向ベクトルFR」と記す。)に対するベクトル(L1K=1,L2K=1)の成す角度∠Aを求める(ステップST155D)。
この操舵操作量設定手段は、その角度∠Aが90°よりも大きくなっているのか否かについての判定を行う(ステップST155E)。
そして、その角度∠Aが90°以下の場合には、最初の接触点L1K=1が操作面310s上の車輌前方方向ベクトルFRから観て2番目の接触点L2K=1よりも車輌後方寄りに位置していることが明らかになり、手首側、指先側の順に運転者が操作面310sを触れていったことが判る。これが為、この場合の操舵操作量設定手段は、その最初の接触点L1K=1を第1接触点Tc1として確定すると共にその2番目の接触点L2K=1を第2接触点Tc2として確定し、更に、その第2接触点Tc2の選択状態を表したフラグ「以下、「Tc2選択状態フラグ」という。」FTc2Sを「1」にする(ステップST155F)。
一方、その角度∠Aが90°よりも大きい場合には、最初の接触点L1K=1が操作面310s上の車輌前方方向ベクトルFRから観て2番目の接触点L2K=1よりも車輌前方寄りに位置していることが明らかになり、指先側、手首側の順に運転者が操作面310sを触れていったことが判る。これが為、この場合の操舵操作量設定手段は、その最初の接触点L1K=1を第2接触点Tc2として確定すると共にその2番目の接触点L2K=1を第1接触点Tc1として確定し、更に、Tc2選択状態フラグFTc2Sを「2」にする(ステップST155G)。
つまり、本実施例7の操舵操作量設定手段は、車輌前方方向ベクトルFRに対して車輌後方側の接触点を第1接触点Tc1として確定する。この操舵操作量設定手段は、そのようにして第1接触点Tc1と第2接触点Tc2を確定させた後にTc1確定フラグFTc1を立てる(ステップST155H)。
そして、この操舵操作量設定手段は、図31のフローチャートに示す如く、その第1接触点Tc1から第2接触点Tc2までのベクトル(以下、文中においては「ベクトル(Tc1,Tc2)」と記す。)の絶対値、即ち第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間の距離が所定値以上か否かについての判定を行う(ステップST160)。
このステップST160は、運転者が本操作部310aの正規の操作方法で操作しているかどうかを確認する為の判定処理であり、片手の手のひらの手首側を支点にして五指の内の何れか1本の指先を操作面310s上で摺動させる正規の操作方法以外の状態を排除すべく行う判定処理である。その正規の操作方法以外の状態とは、例えば、両手で操作面310sに触れている状態等を指す。従って、このステップST160で用いる所定値には、例えば、平均的な大人の手の大きさ(つまり、手首から指先までの長さ)等を用いることができる。
操舵操作量設定手段は、このステップST160においてその絶対値が所定値以上になっていれば、即ち正規の操作方法以外の状態になっているとの判断を為した場合、上記ステップST140に戻る。
一方、この操舵操作量設定手段は、そのステップST160においてその絶対値が所定値よりも小さければ、即ち正規の操作方法で操作部310aが操作されているとの判断を為した場合、次に、操作部310aにおいて第1接触点Tc1が検知されなくなったか否かの判定を行う(ステップST165)。つまり、このステップST165においては、操舵操作時の支点となる運転者の手のひらの手首側が操作面310s上から一時的にでも離れてしまったのか否かを判断する。
そして、この電子制御装置30の目標転舵角設定手段は、第1接触点Tc1検知との判定が行われた場合、操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを算出する(ステップST170)。
具体的に、この目標転舵角θreqの演算処理は、図33のフローチャートに示す如く実行される。
先ず、目標転舵角設定手段は、上記ステップST155F又は上記ステップST155GのTc2選択状態フラグFTc2Sに基づいて第2接触点Tc2の初期値Tc2(0)をセットする(ステップST170A)。この際、Tc2選択状態フラグFTc2Sが「2」であればその初期値Tc2(0)は「(XL1K=1,YL1K=1)」となり、Tc2選択状態フラグFTc2Sが「1」であればその初期値Tc2(0)は「(XL2K=1,YL2K=1)」となる。また、この際、第2接触点Tc2のカウンタ「以下、「Tc2カウンタ」という。」CTc2を1つインクリメントする(CTc2=CTc2+1)。
続いて、この目標転舵角設定手段は、現時点での第2接触点Tc2(n)の座標(X2n,Y2n)を読み込む(ステップST170B)。その「n」は、Tc2カウンタCTc2の値を表している。
そして、この目標転舵角設定手段は、第1接触点Tc1から1つ前の第2接触点Tc2(n−1)までの図34に示すベクトル(以下、文中においては「ベクトル(Tc1,Tc2(n−1))」と記す。)を求めると共に(ステップST170C)、その第1接触点Tc1から現時点の第2接触点Tc2(n)までの図34に示すベクトル(以下、文中においては「ベクトル(Tc1,Tc2(n))」と記す。)を求める(ステップST170D)。その図34は、第2接触点Tc2(n−1)、第2接触点Tc2(n)の順に運転者が指先側を操作面310sで摺動させたときの状態を表している。
しかる後、この目標転舵角設定手段は、そのベクトル(Tc1,Tc2(n−1))とベクトル(Tc1,Tc2(n))の挟み角θSTを求め(ステップST170E)、これに基づいて下記の式2から目標転舵角θreqの算出を行う(ステップST170F)。その挟み角θSTは、本操作部310aにおいての運転者による操舵角θSTを表している。また、その式2の「γ」は、その操舵角θSTと目標転舵角θreqとの間の変換係数であり、車輪転舵角付与手段20のギヤ比等により定められる。
θreq=θST×γ … (2)
本実施例7の電子制御装置30の車輪転舵制御手段は、そのようにして目標転舵角θreqを設定した後、操舵輪WL,WRがその目標転舵角θreqになるまで車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させる(ステップST175)。
一方、上記ステップST165にて第1接触点Tc1未検知との判定を行った場合、操舵操作量設定手段は、上記ステップST130へと戻る。この場合のステップST130においては、Tc1確定フラグFTc1が「0」になっていない(即ち、Tc1確定フラグFTc1が立っている)との判定が行われて上記ステップST155へと進む。従って、その際のステップST155においては、先の第1接触点Tc1と同じ座標の第1接触点Tc1が確定される。つまり、本実施例7においては、第2接触点Tc2が操作面310sに接している状態のまま第1接触点Tc1が操作面310sから離れた場合、その離れる前の第1接触点Tc1が保持される。これが為、例えば、僅かな時間だけ手首側が浮いてしまった等の状況が生じたときでも、継続した操舵操作及びそれに伴う転舵動作の実行が可能になる。
尚、ステップST100にてイグニッションON信号未検出との判定が為された場合、操舵操作量設定手段は、接触点有無フラグF、Tc1確定フラグFTc1、Tc2カウンタCTc2を各々「0」にする(ステップST180)。
以上示した如く、本実施例7の操舵装置1は、運転者が第1接触点Tc1を支点にして第2接触点Tc2を摺動させることによって、その摺動量(即ち、操舵角θST)に応じた目標転舵角θreqの設定を行い、この目標転舵角θreqとなるように操舵輪WL,WRを転舵させる。
ここで、操作面310s上には、運転者による第2接触点Tc2の摺動軌跡を表示させてもよい。
このように、本実施例7の操舵装置1においても、操舵操作に直接的な関わりの少ない別の事柄の設計要件の影響を受けることなく、その操舵操作に特化させた操舵入力手段10が用意されている。つまり、本実施例7の操舵入力手段10についても、基となる前述した実施例1〜6と同様に、従前のステアリングホイールとは異なり運転者が上半身を支える際に使用させないので、操舵操作に重点を置いた上記の例示の如き構造を採ることができる。また、従前のステアリングホイールにおいてはその回転位置に左右されないよう中央部分に運転席用エアバックを配置しなければならなかったが、その操舵入力手段10へと置き換えることによって、運転席用エアバックは、インスツルメンタルパネル等の設計自由度の高い場所に配置することができるようになる。このことは、従前のステアリングホイールの近くに集約されている方向指示器操作手段(つまり、ウインカーレバー)等についても同様のことが言える。また、その運転席用エアバックに言及するならば、従前のステアリングホイールでは、切り返し時に腕が運転席用エアバックの前に出てくることがあるので、その際に運転席用エアバックが正しく機能しなくなる可能性は否めない。しかしながら、その操舵入力手段10へと置き換えた場合には、如何様な操舵操作が行われていたとしても必要時に運転席用エアバックを適切に機能させることができる。更に、運転者の目の前に配置されている従前のステアリングホイールは乗降時に脚に当たってしまう等、乗降性の悪化の一因になっているが、その操舵入力手段10では、乗降時に邪魔にならない位置に置いておくことができるので、乗降性を向上させることもできる。従って、この本実施例7の操舵装置1においては、その操舵入力手段10によって運転者の操舵操作性を向上させることが可能になり、更に、これのみならず、運転席周りへの配置が望まれている操舵操作に直接的な関わりの少ない機能部品の配置や設計の自由度、乗降性についても向上させることができるようになる。
また、本実施例7の操舵装置1においても操舵反力伝達手段40を設けているので、この操舵装置1は、基となる前述した実施例1〜6と同様に、操舵反力の存在を運転者に対して知らせ、路面の状態や路面に対する操舵輪WL,WRの状態を運転者に把握させることができる。つまり、この操舵装置1は、操舵反力伝達手段40からの振動によって修正操舵や据え切り操作の中止を運転者に促すことができる。従って、この操舵装置1は、路面の状態等に応じた修正操舵等の対応を運転者に行わせることができる。
ところで、本実施例7の操舵装置1においては、第1接触点Tc1の確定後当該第1接触点Tc1が検知されなくなったときに、第2接触点Tc2の検出値(座標)を無かったものとみなすように構成してもよい。これにより、そのようなときに第2接触点Tc2が検出されたとしても当該第2接触点Tc2は無効になるので、運転者の意思に反して目標転舵角θreqが設定され、これに伴い操舵輪WL,WRが転舵させられることを回避することができる。つまり、支点となる第1接触点Tc1が無いときには第2接触点Tc2がずれ易くなるので、そのような状態での操舵輪WL,WRの転舵は運転者の望むものではない。これが為、そのようなときには、操舵輪WL,WRが転舵させられないようにしておくことが望ましい。そして、その際には、現状の転舵角が保たれるように、第1接触点Tc1が検知されなくなる直前の当該第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の位置情報を保持させるようにしておくことが好ましい。
ここで、本実施例7の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cや実施例2において例示した転舵角解除手段16を設けてもよい。
また、本実施例7の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。
尚、上記においては第1接触点Tc1が操作面310s上の任意の場所に設定されるが、その第1接触点Tc1は、操作面310s上の所定の位置又は領域に予め設定しておいてもよい。つまり、この場合、運転者には、その所定の位置又は領域に手のひらの手首側を触れさせるよう操作方法を指定しておく。
ところで、本実施例7においては、上述した方向指示器操作手段を用意して運転者に右左折時の方向指示を実行させてもよいが、操作面310s上で所定の操作を行わせることによって方向指示をさせてもよい。
例えば、本実施例7においては、操作面310s上の仮想の又は実際に表示された図35に示す車輌前後方向中心軸VLを中心にして当該操作面310sを左右二分し、その操作面310s上での車輌左側の領域に運転者の指が触れたのであれば左折指示と方向指示器制御手段に認識させる一方、その操作面310s上での車輌右側の領域に運転者の指が触れたのであれば右折指示と方向指示器制御手段に認識させる。その車輌前後方向中心軸VLとは、図35に示す如く、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2とを通る直線のことであり、予め設定されておいたものであってもよく、操舵輪WL,WRが中立位置にあるときの第1接触点Tc1と第2接触点Tc2に応じてその都度設定してもよい。
ここで、単にその何れかの領域に接触点が見いだされたのみでは、方向指示と操舵操作指示の区別を付けることができない。これが為、本実施例7においては、方向指示と認識させる為に特定の操作を運転者に行わせる。例えば、その特定の操作としては、所定時間内に所望の領域を連打させる。つまり、ここでの方向指示器制御手段には、所定時間内に新たな接触点の検出、非検出が繰り返されていれば、換言するならば所定よりも短い周期で新たな接触点が検出されたならば方向指示と認識させる。
以下、その方向指示器制御手段の方向指示器制御動作について図36のフローチャートを用いて説明する。
先ず、本実施例7の電子制御装置30は、操作部310aが新たな接触点Tcnewの座標(Xnew,Ynew)を検出した際に(ステップST200)、その新たな接触点Tcnewの検出、非検出が繰り返されたか否かの判定を行う(ステップST205)。
ここで、この電子制御装置30は、そのステップST205で新たな接触点Tcnewの検出、非検出が繰り返されたとの判定を行った場合、その新たな接触点Tcnewを方向指示器制御手段によって第3接触点Tc3に設定させる(ステップST210)。そして、その方向指示器制御手段は、上述した車輌前後方向中心軸VLに対する第3接触点Tc3の位置を判断する(ステップST215)。この方向指示器制御手段は、その判断の結果、車輌前後方向中心軸VLに対して車輌左側で第3接触点Tc3が検知されたのであれば左折用方向指示器を駆動させ(ステップST220)、その車輌前後方向中心軸VLに対して車輌右側で第3接触点Tc3が検知されたのであれば右折用方向指示器を駆動させる(ステップST225)。
一方、上記ステップST205で新たな接触点Tcnewが継続して検出され続けている(つまり、新たな接触点Tcnewが連打されていない)場合、この電子制御装置30は、その新たな接触点Tcnewを最新の第2接触点Tc2(n)に設定させる(ステップST230)。この電子制御装置30は、このようにして設定された最新の第2接触点Tc2(n)を用いて上述したが如く目標転舵角θreqの設定を行う。
本実施例7の操舵装置1は、このような方向指示器制御手段を用意しておくことで、運転者の容易な操作で方向指示させることができるようになる。
また、この場合には、方向指示解除手段も用意しておく。その方向指示解除手段としては、前述した方向指示解除釦64であってもよく、操作面310s上の所定の領域を方向指示解除用として設定したものであってもよい。そして、その何れであっても、この操舵装置1は、運転者の容易な操作で方向指示を解除させることができるようになる。
更に、ここでは第3接触点Tc3が所定よりも短い周期で検出されたときに方向指示器を作動させるよう構成しているが、単にその第3接触点Tc3が検出されたことのみを以て検出された領域の方向指示器を駆動させてもよく、これによっても容易に方向指示器を作動させることができる。尚、この場合には、操舵操作指示と区別させる為、方向指示用の所定の領域を操作面310s上に設定しておくことが望ましい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例8を図37から図39に基づいて説明する。
前述した実施例7の操舵入力手段10においては、第1接触点Tc1を支点にして第2接触点Tc2を操作面310s上の底部へと摺動させることによって又は転舵角解除手段16を操作することによって、操舵輪WL,WRを中立位置へと戻すことができる。本実施例8においては、これら以外の手法を以て操舵輪WL,WRの中立位置への戻しを実行させることが可能な操舵装置について例示する。
本実施例8の操舵装置1は、前述した実施例7の構成において電子制御装置30に転舵角解除制御手段を設けたものであり、従って基にした実施例7と同様の作用効果を得ることができる。
その転舵角解除制御手段とは、運転者が操作面310s上の所定の領域(以下、「中立位置指示領域」という。)を触れた際に、操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを「0」に設定して、操舵輪WL,WRが中立位置へと戻るよう車輪転舵角付与手段20に対して指示を行う制御手段である。例えば、その中立位置指示領域は、図37に示す如く、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間に設定される領域であり、その第1接触点Tc1を中心にして所定距離Thを半径とする円弧からなる線(以下、「中立位置境界線」という。)により囲まれた内側の領域のことを指す。その所定距離Thは、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間の距離よりも短く設定される。この所定距離Thは、予め設定しておいた距離であってもよく、また、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間の距離は運転者毎に異なるので、運転者に合わせて設定できるようにしてもよい。つまり、ここでは、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間の距離が所定値(所定距離Th)以下のときに、転舵角解除制御手段が操舵輪WL,WRを中立位置へと戻させるように指示する。
ここで、転舵角解除制御手段は、その中立位置指示領域や中立位置境界線を操作面310s上に表示させるように構成しておくことが好ましく、これにより運転者の誤操作を回避することができる。
以下、本実施例8の操舵装置1における転舵角解除動作(操舵輪WL,WRを中立位置へと戻す動作)について図38のフローチャートを用いて説明する。
先ず、本実施例8においては、電子制御装置30の転舵角解除制御手段が最新の第2接触点Tc2(n)の座標の検出を行う(ステップST250)。その際、転舵角解除制御手段は、操舵操作量設定手段が確定した第2接触点Tc2(n)の内の最新のものの座標の情報をRAM等の記憶領域から取得する。
そして、その転舵角解除制御手段は、第1接触点Tc1から最新の第2接触点Tc2(n)までのベクトル(以下、文中においては「ベクトル(Tc1,Tc2(n))」と記す。)の絶対値、即ち第1接触点Tc1と最新の第2接触点Tc2(n)との間の距離が上述した所定距離Th以下か否かについての判定を行う(ステップST255)。つまり、このステップST255においては、運転者が転舵角解除指示を行ったのか否かについて判断される。
ここで、このステップST255にてその距離が所定距離Thよりも長いと判定されて転舵角解除指示が行われていないとの判断が為された場合、転舵角解除制御手段は、本演算処理を一端終了する。
一方、そのこのステップST255にてその距離が所定距離Th以下と判定されて図37や図39に示す如く転舵角解除指示が行われたとの判断が為された場合、電子制御装置30は、その転舵角解除制御手段に操舵輪WL,WRの目標転舵角θreqを「0」に設定させ(ステップST260)、その操舵輪WL,WRが中立位置へと戻るよう車輪転舵制御手段に車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させる(ステップST265)。例えば、その際には、前述した図18や図19に示すマップデータを用いて、その時々の実転舵角θrealに応じた転舵角戻し量θrereqで操舵輪WL,WRの転舵角を「0」にまで戻していく。
以上示した如く、本実施例8の操舵装置1は、運転者の操舵操作性、運転席周りへの配置が望まれている操舵操作に直接的な関わりの少ない機能部品の配置や設計の自由度、乗降性について実施例7と同様に向上させ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例7と同様に行わせることができるのみならず、更に、運転者が操作面310s上の中立位置指示領域を指先側で触れることのみで容易に操舵輪WL,WRを中立位置へと戻すことができるようになるので運転者にとっての操舵操作の利便性が向上する。
ここで、本実施例8の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10cや実施例2において例示した転舵角解除手段16を設けてもよい。つまり、本実施例8の操舵装置1においては、操舵輪WL,WRを中立位置に戻す為の手段として、ここで例示した転舵角解除制御手段によるものと実施例2の転舵角解除手段16によるものとを併用してもよい。
また、本実施例8の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。更に、その方向指示器については、実施例7において例示した方向指示器制御手段で制御してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例9を図40から図44に基づいて説明する。
前述した実施例7,8の操舵装置1においては、操作部310aの操作面310sが運転者以外の者に触れられた場合にこれが電子制御装置30にて接触点と認識されてしまうので、運転者が意図していないにも拘わらず操舵輪WL,WRが転舵させられてしまう可能性がある。本実施例9は、かかる不都合を改善すべく運転者のみが操舵操作を行うことができるように操舵装置を構成する。
具体的に、本実施例9の操舵装置1は、前述した実施例7又は実施例8の構成において操舵入力手段10の操作部310aに操作者判別手段を設けたものである。従って、本実施例9の操舵装置1は、基にした実施例7又は実施例8と同様の作用効果を得ることができ、更に、その操作者判別手段による下記の効果を奏することができる。
その操作者判別手段とは、操舵入力手段10の操作者(運転者)と第三者とを判別することの可能な手段であり、操作者が使用する操作者情報発信手段と当該操作者情報発信手段から発信された操作者情報を受信する操作者情報受信手段とで構成する。例えば、ここでは、その判別を微弱電流の違いから検知する微弱電流検知手段を利用する。この微弱電流検知手段とは、運転者が操作指示を行う際に使用する操作者情報発信手段としての微弱電流発生手段と、その微弱電流発生手段からの微弱電流を検出する操作者情報受信手段としての微弱電流検出手段と、で構成され、その検出された微弱電流を以て操舵操作や方向指示等が為されたものと認識させる手段である。
例えば、本実施例9の操作部310aとしては、前述した静電容量の変化を感知する方式のものを適用する。この場合、この操作部310aは、微弱電流検出手段を備えており、人間の身体に流れている微弱な電流(約100μA〜200μA)を静電容量の変化として感知して操作状態を認識している。従って、この場合には、人間のものとは異なる大きさの微弱電流を発生させる又はそのような大きさの微弱電流として検知させる素材からなる微弱電流発生手段を用意すればよい。ここでは、その微弱電流発生手段として、図40に示す少なくとも1本の指に嵌める入力用指貫や入力用指サック、手に嵌める入力用グローブ等の入力用装着具311を用いる。また、この微弱電流発生手段は、これに替えてペン状の形態(所謂タッチペン)にしてもよい。
以下、本実施例9の操舵装置1における操作者判別動作について図41のフローチャートを用いて説明する。
先ず、本実施例9の電子制御装置30は、操作部310aが新たな接触点Tcnewを検出したか否かについて判定する(ステップST300)。
ここで、新たな接触点Tcnewが検出されたならば、この電子制御装置30の操作者判別手段は、その新たな接触点Tcnewについて監視中か否かを確認する為の変数(以下、「Tcnew監視中フラグ」という。)と、その新たな接触点Tcnewについて操舵操作を示すものとして利用させないことを確認する為の変数(以下、「Tcnew無効フラグ」という。)と、を立てる(ステップST305)。
本実施例9においては、新たな接触点Tcnewが運転者によるものであるのか明らかになるまで監視対象にするので、その新たな接触点Tcnewが監視対象の間はTcnew監視中フラグを「1」とし、監視対象から外れたときにはTcnew監視中フラグを「0」とする。また、その新たな接触点Tcnewが監視対象になっているときは、その新たな接触点Tcnewについて操舵操作を示すもの(即ち、操舵角θSTを表すもの)として利用すべきか否か明らかでない。これが為、ここでは、Tcnew無効フラグを立てておく。
一方、上記ステップST300で新たな接触点Tcnewが検出されなければ、操作者判別手段は、Tcnew監視中フラグが立っているのか否か、即ち監視中の新たな接触点Tcnewが既に存在しているのか否かについて判定する(ステップST310)。
そして、この操作者判別手段は、そのステップST310にてTcnew監視中フラグが立っていないとの判定結果であれば、本演算処理を一端終了して上記ステップST300に戻り、別の新たな接触点Tcnewの有無を監視する。また、そのステップST310にてTcnew監視中フラグが立っている(即ち監視中の新たな接触点Tcnewが存在している)との判定結果の場合、この操作者判別手段は、その新たな接触点Tcnewが継続して検出され続けているのか否かについての判定を行う(ステップST315)。このステップST315の判定対象たる新たな接触点Tcnewは、操作面310s上の或る一点で検出され続けたもののみならず、操作面310s上から離れることなく検出され続けたまま移動したものについても含む。
この操作者判別手段は、そのステップST315にて新たな接触点Tcnewが継続して検出され続けていない(例えば、その新たな接触点Tcnewについて、操舵操作を示すものとして利用してもよいと確認されるまでに検出されなくなった等が該当する。)との判定結果であれば、Tcnew監視中フラグとTcnew無効フラグを「0」にし(ステップST320)、本演算処理を一端終了して上記ステップST300に戻り、別の新たな接触点Tcnewの有無を監視する。つまり、ここでは、監視対象となっていた新たな接触点Tcnewについて、監視対象のみならず操舵操作を示すものとしての利用対象からも外される。このときの新たな接触点Tcnewとしては、運転者自身によるものもあれば、第三者によるものもある。
本実施例9においては、新たな接触点Tcnewが検出された場合、また、新たな接触点Tcnewが検出されずとも既に監視中の新たな接触点Tcnewが存在し続けていた場合、操作者判別手段によりタイマ経過時間ΔTが所定時間を超えたか否かの判定を行う(ステップST325)。
そのタイマ経過時間ΔTとは、新たな接触点Tcnewが最初に検出された時点から操作者判別手段に計り始めさせた時間のことであり、その新たな接触点Tcnewを継続して検出され続けた時間と同じである。また、その所定時間については、一度の操舵操作で移動可能な接触点(第2接触点Tc2)の最大移動量を計ることができるだけの時間を設定しておけばよい。
そのステップST325にてタイマ経過時間ΔTが所定時間を超えていないとの判定が為された場合、操作者判別手段は、本演算処理を一端終了して上記ステップST300に戻り、別の新たな接触点Tcnewの有無の監視又は監視中の新たな接触点Tcnewの検出状態の監視を行う。
一方、この操作者判別手段は、そのステップST325にてタイマ経過時間ΔTが所定時間を超えたとの判定が為された場合、既に有効な(つまり、既に操舵操作を示すものとして利用してもよいと確認されている)運転者によるものとしての採用順位1番目の有効接触点Tcvaの移動ベクトル(Tcva(T),Tcva(T+ΔT))と、新たな接触点Tcnewの移動ベクトル(Tcnew(T),Tcnew(T+ΔT))と、の挟み角θoutを求める(ステップST330)。
その移動ベクトル(Tcva(T),Tcva(T+ΔT))とは、採用順位1番目の有効接触点Tcvaが操作面310s上においてタイマ経過時間ΔTの間に移動したベクトルのことであり、新たな接触点Tcnewの最初の検出時の有効接触点Tcva(T)からタイマ経過時間ΔT経過後の有効接触点Tcva(T+ΔT)までのベクトル、又は過去にタイマ経過時間ΔTの間で移動した際のベクトルを表している。また、移動ベクトル(Tcnew(T),Tcnew(T+ΔT))とは、新たな接触点Tcnewが操作面310s上においてタイマ経過時間ΔTの間に移動したベクトルのことであり、その最初の検出時における接触点Tcnew(T)からタイマ経過時間ΔT経過後における接触点Tcnew(T+ΔT)までのベクトルを表している。尚、これらの移動ベクトルの表記は、文中のみのものである。
ここで、採用順位1番目の有効接触点Tcvaとは、複数個の接触点の中から運転者によるものであると認識され、更にその中でも例えば最初に検出されたものを示している。例えば、有効接触点Tcvaは、図42に示す如く採用順位が設定されるが、その中でも採用順位1番目のもののみが操舵操作を示すものとして(即ち、目標転舵角θreqを設定する為に)利用させる。また、最初に検出された接触点(1番目接触点)であっても、操作面310s上から離れた等により検出されなくなった場合には、これが消滅したものとして次に検出された接触点(2番目接触点)を採用順位1番目の有効接触点Tcvaと設定する。つまり、本実施例9の操舵操作量設定手段は、例えば、第1接触点Tc1が既に確定していると仮定した場合、次に検出された順に有効接触点Tcvaの中から第2接触点Tc2として確定させていく。従って、その確定された第2接触点Tc2が検出されなくなったときには、これの次に検出された有効接触点Tcvaが第2接触点Tc2として確定される。
操作者判別手段は、その挟み角θoutが所定値以下なのか否かについて判定する(ステップST335)。
このステップST335は、検出されている新たな接触点Tcnewが運転者によるものであるのか第三者によるものであるのかについての判断を行う判定である。つまり、運転者が採用順位1番目の有効接触点Tcvaを第2接触点Tc2として操舵操作を行っている又は行っていたと仮定して、新たな接触点Tcnewが運転者自身によるものであれば、指の移動領域は所定の領域に特定されるので、その挟み角θoutは、大きな角度にはならない。一方、新たな接触点Tcnewが第三者によるものである場合、その挟み角θoutは、大きな角度となる。従って、ここでは、挟み角θoutが所定値以下であれば運転者自身によるものと判断させ、所定値よりも大きくなっていれば第三者によるものと判断させる。尚、この仮定においては、第1接触点Tc1が大幅に移動していないものとし、また、運転者が第三者の悪戯を把握し易い状態(即ち、操作面310s上で運転者が手を置いている部分の近くに第三者が触れる状態)について除外している。
ここで、そのステップST335の一度の判定のみで新たな接触点Tcnewが有効なものか破棄すべき無効なものかを判断すると、例えば、誤検出された新たな接触点Tcnewに対して有効と判断してしまい、操舵輪WL,WRを誤って転舵させてしまう可能性がある。これが為、この操作者判別手段は、そのステップST335で所定値以下と判定して運転者自身によるものと判断した場合、新たな接触点Tcnewを有効にする可能性があることを示すカウンタ(以下、「Tcnew有効カウンタ」という。)Cvaをインクリメントし(ステップST340)、このTcnew有効カウンタCvaが所定値よりも大きいか否かについて判定する(ステップST345)。
そして、そのステップST345にて所定値よりも大きくないと判定した場合、この操作者判別手段は、本演算処理を一端終了して上記ステップST300に戻り、別の新たな接触点Tcnewの有無の監視又は監視中の新たな接触点Tcnewの検出状態の監視を行う。
また、この操作者判別手段は、そのステップST345にて所定値よりも大きいと判定した場合、新たな接触点Tcnewについて操舵操作を示すものとして利用させることを確認する為の変数(以下、「Tcnew有効フラグ」という。)を立てると共にTcnew監視中フラグを「0」にする(ステップST350)。これにより、その運転者による新たな接触点Tcnewが目標転舵角θreqを設定する為のものの候補として設定される。例えば、図42に示す新たな接触点Tcnewの2番目接触点や3番目接触点の如く有効になって採用順位が設定される。
一方、上記ステップST335で挟み角θoutが所定値よりも大きいと判定して第三者によるものと判断した場合、新たな接触点Tcnewを破棄する可能性があることを示すカウンタ(以下、「Tcnew破棄カウンタ」という。)Ccaをインクリメントし(ステップST355)、このTcnew破棄カウンタCcaが所定値よりも大きいか否かについて判定する(ステップST360)。
そして、そのステップST360にて所定値よりも大きくないと判定した場合、この操作者判別手段は、本演算処理を一端終了して上記ステップST300に戻り、別の新たな接触点Tcnewの有無の監視又は監視中の新たな接触点Tcnewの検出状態の監視を行う。
また、この操作者判別手段は、そのステップST360にて所定値よりも大きいと判定した場合、新たな接触点Tcnewが破棄対象であることを確認する為の変数(以下、「Tcnew破棄フラグ」という。)を立てると共にTcnew監視中フラグを「0」にする(ステップST365)。これにより、その第三者によるものと認識された新たな接触点Tcnewが目標転舵角θreqを設定する為のものから除外される。例えば、図42に示す新たな接触点Tcnewの1番目接触点の如く破棄される。
以上示した如く、本実施例9の操舵装置1は、基にした実施例7や実施例8と同様の効果を奏することができ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例7や実施例8と同様に行わせることができるのみならず、更に、運転者以外の第三者による入力を無効にすることが可能になるので、第三者による誤操作を回避することができるようになると共に、操舵輪WL,WRを運転者の意思により適切に転舵させることができるようになる。
ここで、本実施例9の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10c、実施例2において例示した転舵角解除手段16や実施例8において例示した転舵角解除制御手段を設けてもよい。
また、本実施例9の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。更に、その方向指示器については、実施例7において例示した方向指示器制御手段で制御してもよい。
ところで、ここで例示した操舵装置1においては微弱電流検知手段(静電容量変化感知式の操作部310aと微弱電流を発生させる又はそのような大きさの微弱電流として検知させる素材からなる入力用装着具311)によって操作者の判別を行わせたが、その操作者の判別は、これとは別の手法で実行してもよい。
例えば、運転者毎に身体を流れる電流の大きさが微妙に異なる。これが為、操作部310aを上記と同じ静電容量変化感知式とすると共に、電流値を登録した運転者以外の入力を検知しても無効にするように構成すればよい。
また、例えば、図43に示す如く操作部310aの裏面(操作面310sとは反対の面)にCCD(Charge Coupled Device)カメラ等の撮像装置312を配備しておき、登録した指紋や掌紋に合致したときのみ入力を受け付けるようにしてもよい。この場合、操作部310a(操作面310s)は透明なガラスやアクリル等の材料で成形し、撮像装置312が操作面310s上の指や手のひらを映すことができるようにしておく。
具体的に、これらの場合には、電子制御装置30が図44のフローチャートに示す如くイグニッションON信号を検出した際に(ステップST400)、その運転者認証制御手段により運転者認証を開始するのか否かを判断する(ステップST405)。
この運転者認証は、イグニッションON信号の検出後初めて操作部310aが入力(接触点)を検知した際に自動的に実行させるようにしてもよく、また、筐体10b等に配備した認証釦(図示略)が操作されたことを契機にして実行させるようにしてもよい。
その運転者認証制御手段は、そのステップST405で運転者認証開始と判断しなければ本演算処理を一端終える一方、運転者認証開始と判断した場合にはかかる運転者認証を実行する(ステップST410)。
この運転者認証は、上述した電流値感知式の場合、操作部310aの検知した電流値が予め登録されている電流値と合致しているのか否かを観ることで実行する。また、上述した指紋や掌紋感知式の場合には、撮像装置312からの画像情報を利用し、その画像内の指紋や掌紋が予め登録されている指紋や掌紋と合致しているのか否かを観ることで実行する。
そして、運転者認証制御手段は、その結果に基づいて正規の運転者として認証されたか否かを判定し(ステップST415)、正規の運転者として認証したならば、その者が内燃機関等の原動機を始動させる権限があることを示す変数(始動許可フラグ)を立てると共に、本操作部310aから操舵操作を行う権限があることを示す変数(操舵操作許可フラグ)も立てる(ステップST420)。
一方、この運転者認証制御手段は、そのステップST415で正規の運転者として認証できなければ、タイムアウトカウンタCtoutをインクリメントし(ステップST425)、このタイムアウトカウンタCtoutが所定値を超えたか否かについての判定を行う(ステップST430)。つまり、例えば、指の操作面310s上に置く角度如何で正しく指紋認証されない可能性もあるので、一度正規の運転者として認証されなかったからといって即座にその者を除外してしまわず、このタイムアウトカウンタCtoutによって正しく認証操作を行うよう使用者に猶予を与える。
この運転者認証制御手段は、そのステップST430で所定値を超えていなければ上記ステップST405に戻って再度運転者認証を実行させ、そのステップST430で所定値を超えていれば、正規の運転者ではないとの判断を確定して、その者が原動機を始動させる権限が無いことを示す変数(始動禁止フラグ)を立てると共に、本操作部310aから操舵操作を行う権限が無いことを示す変数(操舵操作禁止フラグ)も立てる(ステップST435)。
このように構成した操舵装置1は、登録された正規の運転者でなければ原動機を始動させることすらできないので、運転中に第三者が操作面310sを触れたとしても、これによる誤動作を効果的に回避することができる。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例10を図45に基づいて説明する。
一般に、車体には、路面からの入力がタイヤやサスペンション等を介して伝わる。そして、その車体に伝わった入力は、運転席を介して運転者に伝えられる。従って、特に悪路等においてはその入力が大きくなるので、操作部310aには、運転者が意図せずに操作面310sを触れてしまう可能性があり、これに伴って運転者の意図しない操舵輪WL,WRの転舵が実行されてしまう虞がある。
そこで、本実施例10の操舵装置1は、前述した実施例7〜9の内の何れか1つの構成において路面入力による誤操作が回避されるように構成する。従って、本実施例10の操舵装置1は、基にした実施例7〜9の内の何れかと同様の作用効果を得ることができる。
具体的に、本実施例10においては、その路面入力を検知すべく上下方向の車体入力加速度の検出が可能な図1に示す車体入力加速度検出手段(加速度センサ等の入力検知手段)52を車体に設け、その車体入力加速度が運転者の身体に作用するものとする。つまり、ここでは、その車体への入力を運転者の身体に作用する入力として検知させる。また、シミュレーションや台上実験等によって悪路走行中等の操舵操作に悪影響を与える車体入力加速度が予め分かる。これが為、その車体入力加速度の最小値(後述する所定値とする)を超えたときには、その際の車体入力加速度の周波数成分を操舵操作の入力信号からフィルタを介して除去させるように操舵装置1を構成する。
例えば、本実施例10の電子制御装置30の誤操作制御手段は、図45のフローチャートに示す如く、車体入力加速度検出手段52から車体入力加速度を検出し(ステップST450)、この車体入力加速度が所定値以下なのか否かについて判定する(ステップST455)。
ここで所定値よりも大きいとの判定結果の場合、この誤操作制御手段は、操舵操作の入力信号(つまり、操作部310aが接触点として検知した際の電気信号)にフィルタを掛けて、その入力信号から車体入力加速度の周波数成分を除去させる(ステップST460)。そのフィルタとしては、その車体入力加速度の周波数成分や周波数帯域を通さないLPF(Low Pass Filter)やBPF(Band Pass Filter)等を利用する。つまり、車体入力加速度が所定値よりも大きいときには、その車体入力加速度の大きさに応じて操舵操作量(操舵角θST)を操舵操作量設定手段の設定値よりも小さくする。これにより、この場合には、運転者が意図していない操作面310sへの入力を排除することができるので、運転者の意図を反映した適切な操舵輪WL,WRの転舵動作が実行されるようになる。
一方、上記ステップST455で車体入力加速度が所定値以下との判定結果の場合、この誤操作制御手段は、上記の如きフィルタを介することなく操舵操作の入力信号がそのまま使用されるよう通常制御を選択する(ステップST465)。尚、ここで言う通常制御とは、操舵操作の入力信号に手を加えることなく、そのまま利用して目標転舵角θreqの設定等を実行させる制御を表す。
以上示した如く、本実施例10の操舵装置1は、基にした実施例7〜9と同様の効果を奏することができ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例7〜9と同様に行わせることができるのみならず、更に、路面入力による運転者の誤操作をも回避させることができるようになる。
ここで、本実施例10の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10c、実施例2において例示した転舵角解除手段16や実施例8において例示した転舵角解除制御手段を設けてもよい。
また、本実施例10の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。更に、その方向指示器については、実施例7において例示した方向指示器制御手段で制御してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例11を図46に基づいて説明する。
前述した各実施例7〜10の操舵装置1は、運転者が或る位置で操舵輪WL,WRの転舵角を一定に保ちたいと考える場合に、運転者が意図的に第2接触点Tc2を操作面310s上の同じ位置に保持していなければ、新たな目標転舵角θreqを設定して操舵輪WL,WRを転舵させる。しかしながら、これら各実施例7〜10の操舵入力手段10は、従前のステアリングホイールとは異なり僅かな第2接触点Tc2の移動をも操舵操作量(操舵角θST)として検知してしまうので、操舵輪WL,WRの転舵角を一定に保ちたいと考えているにも拘わらず転舵させられてしまう。
そこで、本実施例11の操舵装置1は、前述した実施例7〜10の内の何れか1つの構成において、或る一定の操作が運転者により行われたときに操舵操作量(操舵角θST)を一定に保つ保舵状態と認識させ、これによって操舵輪WL,WRの転舵角がそのままの状態で保持されるように構成する。従って、本実施例11の操舵装置1は、基にした実施例7〜11の内の何れかと同様の作用効果を得ることができる。
具体的に、本実施例11の操舵装置1においては、図46のフローチャートに示す如く保舵制御動作が実行される。尚、ここでの保舵状態への条件は、数ある中での一例である。
ここで、その図46のステップST100〜ST130まで及びステップST180は前述した実施例7と同じであるので(図31)、ここでの説明は省略する。尚、そのステップST130で肯定判定(Tc1確定フラグFTc1=0との判定)が為された場合、ここでは、その実施例7と同じように図31のステップST135へと進ませてもよく、図46に示すように本演算処理を一端終了させてもよい。
本実施例11の電子制御装置30は、そのステップST130で否定判定(Tc1確定フラグFTc1≠0との判定)が為された場合、その保舵制御手段により第1保舵状態が要求されている状況(第1保舵状態ON)なのか否かについての判定を行う(ステップST500)。その第1保舵状態とは、第1接触点Tc1のみが検出されている状態で保舵要求が為されたときの保舵状態を示している。
その保舵制御手段は、そのステップST500で第1保舵状態でないとの判定を行った場合、続いて第2保舵状態が要求されている状況(第2保舵状態ON)なのか否かについての判定を行う(ステップST505)。その第2保舵状態とは、第1接触点Tc1も第2接触点Tc2も検出されていない状態で保舵要求が為されたときの保舵状態を示している。
そのステップST505で第2保舵状態でないとの判定を行った場合、つまり、何れの保舵状態も要求されていない場合、保舵制御手段は、操作部310aで検知されている接触点が如何様なものであるのかの判定を行う(ステップST510)。
この保舵制御手段は、そのステップST510で第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の双方が検知されている又は第2接触点Tc2のみが検知されているとの判定を行った場合、その処理を目標転舵角設定手段に渡して目標転舵角θreqの算出を実行させ(ステップST515)、ステップST175に進んで操舵輪WL,WRがその目標転舵角θreqになるまで車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させる。ここで、そのステップST515の演算処理は、例えば、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の双方が検知されているならば、図31のステップST135以降の処理を行うことによって実行させる。一方、第2接触点Tc2のみが検知されている場合には、検知されなくなった第1接触点Tc1の位置情報を保持させておく。そして、その第2接触点Tc2が移動したときには、この新たな第2接触点Tc2と保持されている第1接触点Tc1とから目標転舵角θreqを求めさせる。その際、新たに第1接触点Tc1が検知された場合には、この新たな第1接触点Tc1と第2接触点Tc2とを用いて目標転舵角θreqの算出を行わせる。
また、そのステップST510で第1接触点Tc1のみが検知されているとの判定を行った場合、この保舵制御手段は、第1保舵状態ONにして(ステップST520)、現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう車輪転舵制御手段に処理を渡す。そして、その車輪転舵制御手段は、ステップST175に進んで現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう電動モータ21に指示を与える。例えば、これにより電動モータ21が停止して操舵輪WL,WRの転舵角が一定に保持される。
また、そのステップST510で第1接触点Tc1も第2接触点Tc2も検知(確定)されていないとの判定を行った場合、この保舵制御手段は、第2保舵状態ONにして(ステップST525)、現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう車輪転舵制御手段に処理を渡す。そして、その車輪転舵制御手段は、ステップST175に進んで現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう電動モータ21に指示を与える。
更に、この保舵制御手段は、上記ステップST500で第1保舵状態であるとの判定を行った場合にも、操作部310aで検知されている接触点が如何様なものであるのかの判定を行う(ステップST530)。
このときの保舵制御手段は、そのステップST530で第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の双方が検知されている又は第2接触点Tc2のみが検知されているとの判定を行った場合、第1保舵状態OFFにし(ステップST535)、その処理を目標転舵角設定手段に渡して目標転舵角θreqの算出を実行させる(ステップST540)。そして、その後ステップST175に進んで、車輪転舵制御手段により操舵輪WL,WRがその目標転舵角θreqになるまで電動モータ21を駆動させる。そのステップST535の演算処理についても、例えば、図31のステップST135以降の処理を行うことによって実行させる。
また、そのステップST530で第1接触点Tc1のみが検知されているとの判定を行った場合、この保舵制御手段は、第1保舵状態ONにする(ステップST545)。この場合、車輪転舵制御手段は、ステップST175に進み、現状と同じ転舵角に操舵輪WL,WRを保持させ続けるよう電動モータ21に指示を与える。
また、そのステップST530で第1接触点Tc1も第2接触点Tc2も検知(確定)されていないとの判定を行った場合、この保舵制御手段は、第1保舵状態OFFにすると共に第2保舵状態ONにして(ステップST550)、現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう車輪転舵制御手段に処理を渡す。そして、その車輪転舵制御手段は、ステップST175に進んで現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう電動モータ21に指示を与える。
また更に、この保舵制御手段は、上記ステップST505で第2保舵状態であるとの判定を行った場合にも、操作部310aで検知されている接触点が如何様なものであるのかの判定を行う(ステップST555)。
このときの保舵制御手段は、そのステップST555で第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の双方が検知されているとの判定を行った場合、第2保舵状態OFFにし(ステップST560)、その処理を目標転舵角設定手段に渡して目標転舵角θreqの算出を実行させる(ステップST565)。そして、その後ステップST175に進んで、車輪転舵制御手段により操舵輪WL,WRがその目標転舵角θreqになるまで電動モータ21を駆動させる。そのステップST565の演算処理についても、例えば、図31のステップST135以降の処理を行うことによって実行させる。
また、そのステップST555で第1接触点Tc1も第2接触点Tc2も検知(確定)されていないとの判定を行った場合、第1接触点Tc1のみが検知されているとの判定を行った場合、第2接触点Tc2のみが検知されているとの判定を行った場合の何れかのとき、保舵制御手段は、第2保舵状態ONにして(ステップST570)、現時点での転舵角で操舵輪WL,WRが保持されるよう車輪転舵制御手段に処理を渡す。そして、その車輪転舵制御手段は、ステップST175に進んで現時点での転舵角に操舵輪WL,WRを保持させるよう電動モータ21に指示を与える。
このように、本実施例11の操舵装置1によれば、第2接触点Tc2が検知されなくなり、第1接触点Tc1のみが検知されるようになった場合、再び第2接触点Tc2が検知されるまでは、その時点での転舵角に操舵輪WL,WRが保持されるようになる。また、第1接触点Tc1も第2接触点Tc2も検知されなくなった場合、再びその双方が検知されるまでは、その時点での転舵角に操舵輪WL,WRが保持されるようになる。
以上示した如く、本実施例11の操舵装置1は、基にした実施例7〜10と同様の効果を奏することができ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例7〜10と同様に行わせることができるのみならず、更に、運転者の所望の位置で操舵輪WL,WRの転舵角を保持させることができるようになる。
ここで、本実施例11の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10c、実施例2において例示した転舵角解除手段16や実施例8において例示した転舵角解除制御手段を設けてもよい。
また、本実施例11の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。更に、その方向指示器については、実施例7において例示した方向指示器制御手段で制御してもよい。
次に、本発明に係る操舵装置の実施例12を図47から図49に基づいて説明する。
本実施例12は、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の内の何れか一方又は双方が検知されなくなったときの制御の一例について示したものである。従って、本実施例12の操舵装置1は、前述した実施例7〜11の内の何れか1つの構成において電子制御装置30の制御態様に変更を加える。従って、本実施例12の操舵装置1は、基にした実施例7〜11の内の何れかと同様の作用効果を得ることができる。
例えば、本実施例12の操舵装置1は、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の双方が確定された後、操舵操作を行う際の支点となる第1接触点Tc1が検知されなくなった場合に、図47のフローチャートに示す如く操舵輪WL,WRを中立位置まで戻す転舵角制御を行う。
ここで、その図47で示す制御動作は、基本的に前述した実施例7と同じであるので(図31)、その相違点のみについて説明を行う。つまり、ここでは、ステップST165にて第1接触点Tc1が検知されなくなったとの判定が行われた場合の制御動作についてのみ説明する。
例えば、本実施例12の電子制御装置30は、そのステップST165にて第1接触点Tc1未検知との判定が行われた場合、その転舵角解除制御手段によってそのときの操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを転舵角センサ24から検出させる(ステップST166)。そして、その転舵角解除制御手段は、その実転舵角θrealを前述した図18や図19に示すマップデータに当て嵌めて、この実転舵角θrealに応じた転舵角戻し量θrereqを算出する(ステップST167)。しかる後、ステップST175に進み、車輪転舵制御手段は、その時々の実転舵角θrealに応じた転舵角戻し量θrereqで操舵輪WL,WRの転舵角を「0」にまで戻していくように、車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させる。
つまり、ここでは、操舵操作を行う際の支点となる重要な第1接触点Tc1が検知されなくなったときに、従前のステアリングホイールで言うところの手放し状態と認識させ、セルフアライニングトルクによる操舵輪WL,WRの戻しを実現させる。このことを別の視点から見れば、第1接触点Tc1が検知されなければ操舵操作が行われていないものと認識させていることを表している。従って、この場合には、運転者に正しい操作を行うように喚起されることとなり、運転者の注意散漫による不用意な転舵又は保舵が行われなくなる。
また、これとは別に、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2の内の何れか一方又は双方が検知されなくなったときの制御を次の図48のフローチャートに示す如く実行させてもよい。この場合、操舵入力手段10やインスツルメンタルパネル等の何れかの場所に運転者への注意を喚起する警告手段(図示略)を用意しておくと共に、電子制御装置30にはその警告手段を作動させる警告制御手段を設けておく。その警告手段としては、例えば、音や音声を出力するもの、点滅等の視覚に訴えるものを使用する。
ここで、その図48で示す制御動作についても基本的に前述した実施例7と同じであるので(図31)、その相違点のみについて説明を行う。
先ず、ステップST120で操作面310s上に接触点が存在していないとの判定が為された場合、本実施例12の電子制御装置30は、車速センサ51から車速Vを検出し、この車速Vが「0」か否か、つまり、車輌が停車しているのか否かについての判定を行う(ステップST121)。
ここで、車輌が停車しているとの判定が為された場合には、実施例7のときと同様にステップST125へと進む。
一方、車輌が走行中であると判定した場合、電子制御装置30の警告制御手段は、警告手段を作動させて手放しである旨の警告を行う(ステップST122)。つまり、従前のステアリングホイールにおいても言えることではあるが、手放し運転は走行時の安全面から好ましくないので、これを運転者に対して警告させることにする。
また、ステップST165にて第1接触点Tc1検知との判定が行われた場合、電子制御装置30は、続けて第2接触点Tc2が検知されなくなったのか否かについて判定する(ステップST600)。
そして、そのステップST600で第2接触点Tc2も検知との判定が行われた場合、実施例7のときと同様にステップST170へと進んで目標転舵角θreqの算出を実行させる。
ここで、電子制御装置30は、そのステップST165で第1接触点Tc1未検知との判定が行われた場合、又はステップST600で第2接触点Tc2未検知との判定が行われた場合、車速センサ51から車速Vを検出し、この車速Vが「0」か否か(車輌が停車しているのか否か)についての判定を行う(ステップST605)。
そして、この電子制御装置30は、そのステップST605で車輌が停車していると判定した場合、ステップST130に戻させる。
一方、車輌が走行中であると判定した場合、この電子制御装置30は、そのときの操舵輪WL,WRの実転舵角θrealを転舵角センサ24から検出する(ステップST610)。そして、この電子制御装置30は、その実転舵角θrealの絶対値と車速Vを図49に示すマップデータに当て嵌めて、手放し警告領域か、それとも転舵角戻し領域かを判定する(ステップST615)。このマップデータは、車速Vが高速になるほど実転舵角θrealが小さくても操舵輪WL,WRを中立位置まで戻させるように設定したものである。
ここでの電子制御装置30は、そのステップST615で手放し警告領域との判定が為された場合、その警告制御手段に警告手段を作動させて手放しである旨の警告を実行させ(ステップST620)、その後ステップST130に戻させる。
また、そのステップST615で手放し警告領域ではない(つまり、転舵角戻し領域である)との判定が為された場合、電子制御装置30の転舵角解除制御手段は、上記ステップST610で検出した実転舵角θrealを前述した図18や図19に示すマップデータに当て嵌めて、この実転舵角θrealに応じた転舵角戻し量θrereqを算出する(ステップST625)。そして、ステップST175に進み、車輪転舵制御手段は、その時々の実転舵角θrealに応じた転舵角戻し量θrereqで操舵輪WL,WRの転舵角を「0」にまで戻していくように、車輪転舵角付与手段(アクチュエータ)20の電動モータ21を駆動させる。
つまり、ここでは、車輌の走行中に操作面310s上に1つも接触点が無ければ(換言すれば、運転者が操作面310sに触れていなければ)、操作面310s上に手を置いて操舵操作(転舵角を与える操作のみならず操舵輪WL,WRを中立位置に保持する操作も含む)を正しく実行させるように注意を喚起する。また、車輌の走行中に第1接触点Tc1又は第2接触点Tc2の内の何れか一方が検知されなくなった場合、ここでは、そのときの車速Vと実転舵角θrealに応じて、手放し警告又は操舵輪WL,WRを中立位置へと戻す動作を実行する。従って、ここで示した操舵装置1は、運転者の注意散漫による不用意な転舵又は保舵が行われなくなる。
以上示した如く、本実施例12の操舵装置1は、基にした実施例7〜11と同様の効果を奏することができ、且つ、操舵反力伝達手段40に基づき把握した路面状態等に応じた対応を実施例7〜11と同様に行わせることができるのみならず、更に、運転者の意図していない操舵輪WL,WRの転舵又は保舵を回避することができるので、走行中の安全性を高めることができる。
ところで、本実施例12の操舵装置1は、第2接触点Tc2が検出されなくなったときに目標転舵角θreqを「0」に設定して操舵輪WL,WRを中立位置まで戻させるよう転舵角解除制御手段を構成してもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
また、本実施例12においては、車輌が停車中か否か(つまり、V=0か否か)によって手放し警告の有無を判断させ、車輌が走行中であれば手放し警告を行わせるようにしている。しかしながら、その手放し警告は、例えば低速走行中の場合、運転者にとって煩わしさを感じさせるのみで却って注意散漫となり、更に安全面からの弊害も少ないと考えられるので、そのような場合には実行させないよう構成してもよい。
また、第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間の距離が所定値(例えば、前述した所定距離Th)以下で且つ第2接触点Tc2が検出されなくなったときに操舵輪WL,WRを中立位置へと戻させるよう転舵角解除制御手段を構成し、更に、その第1接触点Tc1と第2接触点Tc2との間の距離が所定値(例えば、前述した所定距離Th)よりも長く且つ第2接触点Tc2が検出されなくなったときに運転者に対する手放し警告を警告手段から実行させるよう警告制御手段を構成してもよい。これにより、操舵輪WL,WRを中立位置へと戻すときに不要な手放し警告が行われなくなり、安全面から手放し警告が必要とされる状況下でのみ手放し警告が実行されるようになるので、無用な手放し警告による運転者の注意散漫を回避することができる。
ここで、本実施例12の操舵装置1には、実施例1において例示した操舵角θSTや転舵角(目標転舵角θreq又は実転舵角θreal)の表示部10c、実施例2において例示した転舵角解除手段16や実施例8において例示した転舵角解除制御手段を設けてもよい。
また、本実施例12の方向指示器操作手段やワイパー操作手段は、実施例1において例示したようにインスツルメンタルパネルやセンターコンソール等の空いている場所に配置すればよい。また、その方向指示器操作手段については、同じく実施例1において例示したような運転席Sの下へと配置したものを適用することも可能であり、この場合には方向指示解除手段(方向指示解除釦64)を設けてもよく、従前のステアリングホイールと同様の利便性を得るべく構成した方向指示器制御手段を適用してもよい。更に、その方向指示器については、実施例7において例示した方向指示器制御手段で制御してもよい。
以上のように、本発明に係る操舵装置は、従前のステアリングホイールに取って代わる操舵入力手段の提供に有用である。
本発明に係る操舵装置の全体構成を示す図である。 実施例1の操作部の構成について示す正面図である。 図2の矢印Aの方向から見た実施例1の操作部の側面図である。 図2のX1−X1線で切った実施例1の操作部の断面図である。 実施例1の操舵装置の操舵輪転舵動作について説明するフローチャートである。 操舵角から目標転舵角を求める為のマップデータの一例を示す図である。 図2のX2−X2線で切った実施例1の操作部の断面図であって、操舵反力伝達手段の一例について示す図である。 図2のX1−X1線で切った実施例1の操作部の断面図であって、操舵反力伝達手段の他の例について示す図である。 実施例1の操舵装置の操舵反力伝達動作について説明するフローチャートである。 実施例1の操舵入力手段の構成について示す正面図であって、表示部を設けたものの一例を示す図である。 操舵入力手段の表示部に表示される内容の一例を示す図である。 操舵入力手段の表示部に表示される内容の他の例を示す図である。 方向指示器操作手段と方向指示解除手段の配置の一例を示す図であって、車輌の側面から見た図である。 図12の方向指示器操作手段と方向指示解除手段を車輌の上面側(矢印B)から見た図である。 操舵角や実転舵角に応じて右折方向指示器の動作を停止させるマップデータの一例について示す図である。 実施例2の操作部の構成について示す正面図である。 図15の矢印Cの方向から見た実施例2の操作部の側面図である。 実施例2の操舵装置の操舵輪転舵動作について説明するフローチャートである。 実転舵角から転舵角戻し量を求める為のマップデータの一例を示す図である。 実転舵角から転舵角戻し量を求める為のマップデータの他の例を示す図である。 実施例3の操作部の構成について示す正面図である。 図20の矢印Dの方向から見た実施例3の操作部の側面図である。 図20のY−Y線で切った実施例3の操作部の断面図である。 図20のZ−Z線で切った実施例3の操作部の断面図である。 実施例3の操作部を用いる際に操舵角及び操舵操作圧力から目標転舵角を求める為のマップデータの一例を示す図である。 実施例3の操舵装置の操舵輪転舵動作について説明するフローチャートである。 実施例4の操舵装置の操舵反力伝達動作について説明するフローチャートである。 実施例5の操舵装置の操舵反力伝達動作について説明するフローチャートである。 実施例6の操舵装置における実転舵角とシャフト軸力に対する振動パターンの関係について示す図である。 実施例6の操舵装置の操舵反力伝達動作について説明するフローチャートである。 実施例7の操作部の構成について示す斜視図である。 実施例7の操舵装置の操舵輪転舵動作について説明するフローチャートである。 実施例7の操舵輪転舵動作における第1接触点と第2接触点の確定処理動作について説明するフローチャートである。 実施例7の操舵輪転舵動作における目標転舵角の演算処理動作について説明するフローチャートである。 実施例7の操作部においての操舵操作量(操舵角)の概念について説明する図である。 実施例7の操作部を用いた際の方向指示器制御動作について説明する操作部の斜視図である。 実施例7の操作部を用いた際の方向指示器制御動作について説明するフローチャートである。 実施例8の操作部の構成について示す斜視図である。 実施例8の操作部を用いて操舵輪を中立位置まで戻す際の動作について説明するフローチャートである。 実施例8の操作部において操舵輪を中立位置まで戻す際に運転者が行う操作の概念について説明する図である。 実施例9の操作部の構成について示す斜視図である。 実施例9の操舵装置の操作者判別動作について説明するフローチャートである。 実施例9の操舵装置の操作者判別動作を行う際の接触点の採用順位の考え方について説明する図である。 実施例9の操作部の他の構成について示す斜視図である。 実施例9の操作部の他の構成を用いたときの操舵装置の操作者判別動作について説明するフローチャートである。 実施例10の操舵装置の誤操作回避動作について説明するフローチャートである。 実施例11の操舵装置の保舵制御動作について説明するフローチャートである。 実施例12の操舵装置の操舵輪転舵動作について説明するフローチャートである。 実施例12の操舵装置の他の操舵輪転舵動作について説明するフローチャートである。 車速と実転舵角に応じて手放し警告領域又は転舵角戻し領域を選択させるマップデータの一例を示す図である。
符号の説明
1 操舵装置
10a,110a,210a,310a 操作部
10 操舵入力手段
10c 表示部
10s,310s 操作面
10S1 底部
12 操作部材
13 ガイド部
14 操舵操作量検出手段
16 転舵角解除釦(転舵角解除手段)
17a 傾斜面
17L,17R 操作部材係止手段
18 圧力検出手段
20 車輪転舵角付与手段
21 電動モータ
22 シャフト
24 転舵角センサ
25 シャフト軸力検出手段
30 電子制御装置
40 操舵反力伝達手段
40a 電動モータ
40b 偏心ウエイト
51 車速センサ
52 車体入力加速度検出手段(入力検知手段)
61L,61R ウインカーレバー(方向指示器操作手段)
63 開閉器
64 方向指示解除釦(方向指示解除手段)
311 入力用装着具
312 撮像装置
S 運転席
WL,WR 操舵輪
θST 操舵角
θreq 目標転舵角

Claims (6)

  1. 運転者が操舵操作を行う際に操作面上で移動させる操作部材及び当該操作部材の移動量を操舵操作量として検出する操舵操作量検出手段が設けられた操舵入力手段と、
    前記操舵操作量検出手段により検出された操舵操作量に基づいて操舵輪の目標転舵角を設定する目標転舵角設定手段と、
    前記操舵入力手段との機械的な連結無しに前記目標転舵角となるよう操舵輪を転舵させる車輪転舵角付与手段と、
    前記操舵入力手段を振動させることによって操舵輪の転舵動作に伴う操舵反力の存在を運転者に伝える操舵反力伝達手段と、
    を備えたことを特徴とする操舵装置。
  2. 運転者が操舵操作を行う際に触れる操作面及び当該操作面上における運転者による接触点の位置を検出する接触点検出手段が設けられた操舵入力手段と、
    前記接触点検出手段により検出された接触点の変位に基づいて当該接触点の変位量を求め、該接触点の変位量を運転者による操舵操作量として設定する操舵操作量設定手段と、
    この操舵操作量設定手段により設定された操舵操作量に基づいて操舵輪の目標転舵角を設定する目標転舵角設定手段と、
    前記操舵入力手段との機械的な連結無しに前記目標転舵角となるよう操舵輪を転舵させる車輪転舵角付与手段と、
    前記操舵入力手段を振動させることによって操舵輪の転舵動作に伴う操舵反力の存在を運転者に伝える操舵反力伝達手段と、
    を備えたことを特徴とする操舵装置。
  3. 前記操舵反力伝達手段は、車輌の挙動が不安定になる可能性のあるときに前記操舵入力手段を振動させるよう構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操舵装置。
  4. 前記操舵反力伝達手段は、路面からの入力に伴う操舵輪の転舵動作があったときに前記操舵入力手段を振動させるよう構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操舵装置。
  5. 前記操舵反力伝達手段は、舵抜け現象が発生した際に当該舵抜け現象固有の振動を起こさせるよう構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操舵装置。
  6. 前記操舵反力伝達手段は、車輪転舵角付与手段への負荷が高くなるときに前記操舵入力手段を振動させるよう構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操舵装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2528372A (en) * 2014-05-30 2016-01-20 Jaguar Land Rover Ltd Providing oscillatory feedback through a vehicle steering system
JP2020084702A (ja) * 2018-11-30 2020-06-04 コベルコ建機株式会社 建設機械の遠隔操作装置

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