JP2008288718A - 音響エコーキャンセラ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ユーザにより発言がなされる前に、電源立ち上げ音などの音で音響エコーキャンセラ27が設置された音響空間においてフィルタ係数を更新する処理を複数のタップ数について行い、フィルタ係数が予め定められた閾値以下に収束する最も短いタップ数を決定する。そしてエコーサプレッサ12は、決定されたタップ数と対応付けられたパラメータを用いて音響処理を行う。
【選択図】図2
Description
拡声通話を実現する際に最も問題となるのが音響エコーである。音響エコーは、自分の声が相手側のスピーカから放音されて相手側のマイクロホンに入り、自分の側に戻ってスピーカから放音され、その結果自分の声が発声に遅れて知覚される現象である。音響エコーの程度によっては、不快感のために話し続けるのが困難になったり、ハウリングを引き起こしたりして通話不能となったりする。
上記のフィルタは、音響エコーキャンセラが設置された音響空間ごとに特有の最適な設定にして使用する必要がある。従って、端末が設置された空間の音響特性に基づいてフィルタを設定することが必要である。
なお、上記の構成において、前記測定手段は、前記室内の残響時間を測定しても良い。
また、上記いずれかの構成において、前記再生手段は、前記受信手段が前記第1の音声信号を受信していない時に前記電子音データを再生しても良い。
一方音響エコーは、スピーカから放音された音がマイクロホンに回り込む音響帰還により生じる。スピーカからマイクロホンへのエコーの伝播には、直接伝播する経路以外に、室内の壁や話者で反射する経路がある。音響エコーは、継続時間が長く話者やスピーカやマイクロホンの移動など音響空間の変化により急激に特性が変化することが特徴である。
以下、本発明の実施形態である音響エコーキャンセラが搭載された会議端末を用いて構成された会議システムについて説明する。
図1は、遠隔会議を行うための会議システムの構成を示した図である。同じ構成からなる会議端末100Aおよび100Bは、音響空間200Aおよび200Bに設置されており、両者はインターネットなどの通信網300により接続されている。
会議端末100Aは音響エコーキャンセラ27A、音響エコーキャンセラ27Aに接続されたスピーカ15Aおよびマイクロホン16Aを有し、会議端末100Bは音響エコーキャンセラ27B、音響エコーキャンセラ27Bに接続されたスピーカ15Bおよびマイクロホン16Bを有する。スピーカ15A、15Bは、受取った音声信号をアナログ信号に変換し、音声を放音する。マイクロホン16A、16Bは、収音した音声を表す音声信号を生成し、該音声信号をデジタル信号に変換し出力する。
次に音響エコーキャンセラ27の動作について説明する。
(B−1;初期設定処理)
本実施形態に係る音響エコーキャンセラ27は、会議を開始するにあたって、設置された音響空間200の残響特性を評価し各種パラメータの初期設定処理を行う。
該電源立ち上げ音は、音響空間200においてエコーを生じる。マイクロホン16は、該エコーを表す音声信号(以下、エコーY)を生成する。制御部20は、このエコーYを用いて、ステップSA200において設定されたフィルタ係数の更新を行う(ステップSA400)。簡単には、フィルタ処理部7は、リファレンス信号X(この場合、電源立ち上げ音を表す音声信号)とステップSA200において設定されたフィルタ係数とから擬似エコーZを生成する。第2の誤差計算処理部10は、生成された擬似エコーZとエコーYとの差分信号を生成する。フィルタ係数更新部11は、該差分信号に基づき所定のアルゴリズムに従ってフィルタ係数蓄積部6に蓄積されたフィルタ係数を更新する。
ステップSA800において、制御部20は、それぞれのタップ数におけるフィルタ係数の収束状況を比較し、最も遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数の絶対値が所定の値を下回ったフィルタの中で最も小さいタップ数を選択する。また、制御部20は、該選択したタップ数において最適化されたフィルタ係数をフィルタ係数蓄積部6に蓄積する。
なお、上記最も遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数の絶対値に代えて、最も遅延が大きいタップ位置から遅延の小さい側へ複数(例えば10)のタップ位置におけるフィルタ係数の絶対値の平均値を算出し、該平均値を上記所定の値と比較するなどしても良い。
以下では、上述した初期設定処理によって各種パラメータが最適化された音響エコーキャンセラ27により行われるエコーキャンセリング処理について説明する。
図7は、エコーキャンセリング処理の流れを示すフローチャートである。まず、相手側の会議端末100から音声信号(リファレンス信号X)が送信されてくると、リファレンス信号Xの表す音声はスピーカ15から音響空間200に向けて放音される。また、該リファレンス信号Xはリファレンス信号蓄積部5に蓄積される(ステップSB100)。
また、上記周波数領域におけるスペクトル同士の乗算に代えてまたは併せて、音圧レベルが所定の閾値を下回る周波数成分については該周波数成分をカットする処理を行っても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように種々の態様で実施することができる。
非常にエコーを生じやすい音響空間内に設置されたマイクロホンに向かって発声すると、音響空間において生じたエコーも該マイクロホンに対して吹き込まれるため、エコーを含んで聞き取りづらい音声信号が生成される。そのように、スピーカなどから放音された音声ではない音声によるエコーについても、本音響エコーキャンセラの構成を利用することでキャンセルすることができる。その場合、発声の前に予め記憶部30に記憶された電子音データを再生して、収音された電子音をリファレンス信号Xとして利用し、上記実施形態と同様の初期設定処理を行っておけば良い。
従って、会議端末100のように相互に音声を通信するような通信装置だけはなく、一方的に音声信号を送信する放送局、サーバ、音声信号配信装置などにも本発明は適用できる。なお、その場合音声信号を通信端末から受信する受信手段(リファレンス信号入力端子1)は不要である。また、音声信号の送受信を行わない、例えばレコーダーなどの音声信号生成装置にも同様に本発明は適用できるが、その場合には音声信号を通信網から受信する受信手段(リファレンス信号入力端子1)に加え、音声信号を通信網に出力する出力手段(送話信号出力端子4)も不要である。
タップ数は、会議端末100が設置された音響空間200の音響特性、特に残響時間に基づいて設定するのが好適である。具体的には、残響時間が長い場合により大きいタップ数が設定されれば良い。従って、所定の音(例えば、上記実施形態における電子音データ)を音響空間200において放音し、生じた音響エコーの残響時間を測定する残響時間測定手段を設け、該残響時間測定手段により測定された残響時間に応じたタップ数をフィルタ処理部7に設定するようにしても良い。その場合、長い残響時間に対して大きいタップ数を対応付けたテーブルを予め記憶部30に記憶させておけば良い。
なお、上記残響時間の測定において、音圧レベルの時間経過を示す残響曲線が所定の割合(例えば60dB)減衰するのに要する時間を測定しても良い。
また、上記残響時間の測定において、EDT(Early Decay Time)を測定しても良い。EDTとは、特に初期減衰を重視したパラメータであり、残響曲線のうち最初の10dB減衰した領域の回帰直線において60dB減衰するのに要する時間である。
また、所定のインパルス音などの音圧レベルが所定の閾値を下回るのに要する時間を用いても良い。
さて、各タップ位置におけるフィルタ係数をグラフ表示した場合、図6に示されるようにフィルタ係数は、タップ位置が大きくなるほどフィルタ係数が小さくなるという傾向に加え、隣接するタップ位置間で小さな変動が見られるのが一般的である。その結果、遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数が0に漸近している場合でも、該小さな変動により、最も遅延が大きいタップ位置(例えば、1024)におけるフィルタ係数の絶対値が大きくなったり、遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数が0に漸近していない場合でも、最も遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数が偶然0に近似した値を示したりする可能性がある。そのような場合、最も遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数のみに基づいて上記判定を行うと、フィルタ係数の収束状況について不適切な判定を下してしまう可能性がある。そこで、以下のような方法を用いても良い。
例えば、各タップ位置におけるフィルタ係数のグラフ(例えば、図6)に対してローパスフィルタをかけ、フィルタリングされた結果生成されたグラフにおいて最も遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数について、上記の判定を行っても良い。
また、上記各タップ位置におけるフィルタ係数の値のグラフにおいて、エンベロープ(包絡線)を算出し、該エンベロープにおいて最も遅延が大きいタップ位置におけるフィルタ係数について、上記の判定を行っても良い。
以上のような処理を行うことにより、上記フィルタ係数の小さな変動によって不適切な判断をしてしまうことを抑制することができる。
C値(Clarity[dB])は、初期反射音と後期残響音のエネルギ比を表し、次式(1)で定義される。なお、p(t)は、インパルス応答波形を表す。
(式1)
なお、式(1)において、tは初期反射音と後続残響音の境界を示す時間である。t=80msとしたときのC値はC80などと呼ばれ一般的に用いられているが、tの値は適宜設定して用いれば良い。
D値(Definition or Deutlichkeit[%])は、全体のエネルギに対する初期のエネルギ比を表し、次式(2)で定義される。
(式2)
なお、式(2)においても、tは初期反射音と後続残響音の境界を示す時間である。t=50msとしたときのD値はD50などと呼ばれ一般的に用いられるが、tの値は適宜設定して用いれば良い。
また、上述のように音響空間において実際に音を発生させて音響特性を測定する方法の他に、音響空間の平均吸音率を算出して音響特性を見積もる方法がある。平均吸音率とは、音響空間の内装材の吸音率と該内装材が使用されている面積との積を、音響空間の内面(壁や天井、床など)全ての領域について足し合わせ、該足し合わせた値を音響空間の内表面積で除した値である。平均吸音率は、音響空間における残響時間と強い相関関係を有し、音響空間の響きの程度を見積もるパラメータとして利用されている。
以上に説明した各種音響特性に対して、タップ数およびエコーサプレッサ12のパラメータを対応付けるテーブルを記憶部30に記憶させておき、該テーブルにおいて、測定された音響特性と対応するタップ数およびパラメータが設定されるようにしても良い。
音響エコーキャンセラ27は、適応FIRフィルタのタップ数とエコーサプレッサ12のパラメータとが、各種の音響特性と対応付けられて書き込まれたテーブルを記憶部30に記憶する。上記各種の音響特性としては、例えば、「ホール」、「無響室」、「会議室」など音響空間の種別でも良いし、残響の度合いが「高い」、「中程度」、「低い」など音響特性の記載でも良いし、上記適応FIRフィルタに設定されるタップ数の値そのものでも良い。音響エコーキャンセラ27は、該各種の音響特性に関する選択肢を表示する表示手段、および該表示手段に表示された選択肢をユーザが選択するための選択手段を更に有し、ユーザは、該表示手段に表示された選択肢から、音響空間200の音響特性を最も良く反映していると考えられる選択肢を選択する。そして、音響エコーキャンセラ27は、上記テーブルにおいて、ユーザにより選択された音響特性の選択肢と対応付けられたタップ数とパラメータとを、適応FIRフィルタおよびエコーサプレッサ12に設定しても良い。
なお、上記テーブルにおいて、適応FIRフィルタのタップ数とエコーサプレッサ12のパラメータとが関連付けられて書き込まれていても良い。その場合、ユーザがタップ数を選択することにより、選択されたタップ数が適応FIRフィルタに設定されると共に、テーブルにおいて、選択されたタップ数に対応するパラメータ値がエコーサプレッサ12に設定されるようにしても良い。
Claims (5)
- 通信網から第1の音声信号を受信する受信手段と、
電子音データを記憶する記憶手段と、
前記受信手段が受信した第1の音声信号および前記記憶手段に記憶された電子音データを再生する再生手段と、
音を収音し、該音に対応する第2の音声信号を生成する入力手段と、
前記受信手段が受信した第1の音声信号をフィルタ係数を用いてフィルタリングし、前記第1の音声信号から第3の音声信号を生成するフィルタと、
前記入力手段が生成した第2の音声信号と前記フィルタが生成した第3の音声信号との差分が最小となるように前記フィルタ係数を設定するフィルタ係数設定手段と、
前記入力手段によって生成された前記第2の音声信号から前記第3の音声信号を減算して第4の音声信号を生成する減算手段と、
前記減算手段が生成した第4の音声信号に対して、パラメータに基づいて音響処理を施し第5の音声信号を生成する音響処理手段と、
前記音響処理手段が生成した第5の音声信号を前記通信網に出力する出力手段と、
室内の音響特性を測定する測定手段と、
前記フィルタのタップ数および前記音響処理手段のパラメータとが、室内の音響特性と対応付けて書き込まれたテーブルを記憶する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されたテーブルにおいて、前記測定手段により測定された室内の音響特性と対応するタップ数を前記フィルタに設定すると共に、前記測定手段により測定された室内の音響特性と対応するパラメータを前記音響処理手段に設定する設定手段と
を有することを特徴とする音響エコーキャンセラ。 - 前記測定手段は、前記室内の残響時間を測定することを特徴とする請求項1に記載の音響エコーキャンセラ。
- 前記パラメータは、周波数に対して利得(ゲイン)が対応付けられたゲインスペクトルであり、
前記音響処理手段は、前記第4の音声信号を周波数領域の信号に変換すると共に、該変換された周波数領域の信号の各周波数成分に対し、前記ゲインスペクトルにおいて対応する周波数と対応付けられた利得を乗算する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の音響エコーキャンセラ。 - 前記再生手段は、前記受信手段が前記第1の音声信号を受信していない時に前記電子音データを再生することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の音響エコーキャンセラ。
- 通信網から第1の音声信号を受信する受信手段と、
電子音データを記憶する記憶手段と、
前記受信手段が受信した第1の音声信号および前記記憶手段に記憶された電子音データを再生する再生手段と、
音を収音し、該音に対応する第2の音声信号を生成する入力手段と、
前記受信手段が受信した第1の音声信号をフィルタ係数を用いてフィルタリングし、前記第1の音声信号から第3の音声信号を生成するフィルタと、
前記入力手段が生成した第2の音声信号と前記フィルタが生成した第3の音声信号との差分が最小となるように前記フィルタ係数を設定するフィルタ係数設定手段と、
前記入力手段によって生成された前記第2の音声信号から前記第3の音声信号を減算して第4の音声信号を生成する減算手段と、
前記減算手段が生成した第4の音声信号に対して、パラメータに基づいて音響処理を施し第5の音声信号を生成する音響処理手段と、
前記音響処理手段が生成した第5の音声信号を前記通信網に出力する出力手段と、
前記フィルタのタップ数と前記音響処理手段のパラメータとが対応付けられて書き込まれたテーブルを記憶する第2の記憶手段と、
前記フィルタのタップ数を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたタップ数を前記フィルタに設定するとともに、前記テーブルにおいて、前記選択手段により選択されたタップ数と対応するパラメータを前記音響処理手段に設定する設定手段と
を有することを特徴とする音響エコーキャンセラ。
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