JP2008285738A - 表面処理鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮膜中に6価クロムを全く含まず、優れた耐熱変色性、耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が得られる表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の表面に、チタン、ニッケル、アルミニウム及びフッ素を含有する皮膜厚が0.05〜1.0μmの表面処理皮膜を有し、この表面処理皮膜は、チタン付着量が0.01〜0.5g/mであり、且つチタン100質量部に対して、ニッケルを0.01〜5質量部、アルミニウムを0.1〜25質量部、フッ素を1〜500質量部含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、家電、建材用途に最適な表面処理鋼板に関するもので、特に、表面処理皮膜中に6価クロムを全く含まない環境適応型表面処理鋼板に関するものである。
家電用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸又はその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は、耐食性に優れかつ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するものであるが、この6価クロムは処理工程においてクローズドシステムで処理されること、また、上層に形成する有機皮膜によるシーリング作用によってクロメート皮膜中からのクロム溶出もほぼゼロにできることから、実質的には6価クロムによって人体や環境が汚染されることはない。しかしながら、近年の地球環境問題に対する関心の高まりとともに、従来の作業環境や排水処理を重視した法規制だけではなく、環境負荷や環境調和を重視した法規制もはじまりつつある。また、製造者を環境貢献度で評価する時代背景もあり、6価クロムを含めた重金属の使用を削減しようとする動きが高まりつつある。
このような背景の下で、6価クロムを用いない亜鉛系めっき鋼板の白錆抑制技術(クロメートフリー技術)が数多く提案されている。例えば、特許文献1,2には、Alとリン酸化合物とシリカと水系有機樹脂エマルジョンを含有した表面処理剤及びこれを被覆した金属材料が提案されている。また、特許文献3には、多価金属の第一リン酸塩と金属酸化物ゾルの混合水溶液を塗布・乾燥した非晶質皮膜を形成後、有機被覆層を形成した亜鉛系めっき鋼板が提案されている。さらに、特許文献4,5には、酸化物微粒子とリン酸及び/又はリン酸化合物とMg、Mn、Alの中から選ばれる1種以上の金属とを含有する複合酸化物皮膜層を下層とし、その上層に有機皮膜を形成した鋼板が提案されている。
特開平11−350157号公報 特開2000−26980号公報 特開2000−129460号公報 特開2002−53979号公報 特開2002−53980号公報
亜鉛系めっき鋼板が適用される用途の中で、亜鉛の融点以上の温度域(500〜600℃程度)で加熱を受ける部品が少なからず存在する。例えば、エアコン室外機内の熱交換器では、銅管とアルミニウム製エバポレーターをロウ付けする際に、ガスバーナーを用いた加熱によるアルミニウムの溶解を防ぐため、亜鉛系めっき鋼板を銅管とエバポレーター間に配置して、バーナーの火炎が直接アルミニウムに触れないようにしている。このような用途に上記従来技術の表面処理鋼板を適用すると、有機樹脂主体の皮膜であるために熱分解により黄色や茶褐色に変色し、外観不良を生じてしまう。このため従来技術の表面処理鋼板を適用することはほとんど不可能である。
このような課題を解決するため、耐熱変色性に優れるクロメートフリー技術が提案されている。例えば、特許文献6,7には、第一リン酸塩とコロイダルシリカを主成分とする無機リッチ皮膜が提案されている。また、特許文献8には、第一リン酸塩とコロイダルシリカを主成分とする無機リッチ皮膜を下層、シリケート皮膜及び/又はシリコン樹脂を上層に配した二層皮膜が提案されている。
特開2000−79370号公報 特開2001−348672号公報 特開2004−91826号公報
しかし、特許文献6,7の無機リッチ皮膜は、耐食性レベルが極めて低く、クロメート皮膜代替としての適用は困難である。一方、特許文献8の二層皮膜は、クロメート皮膜代替として適用可能な耐食性レベルであるが、高価なシリケートやシリコン樹脂を使用するため、コスト面で問題がある。また、これらの技術による皮膜は、湿潤環境下で黒色に変色する現象(黒変)が発生しやすいため、結露しやすい熱交換機での適用は困難であり、また、製品の輸送中の保管環境にも制約が生じ、実用的ではない。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、表面処理皮膜中に6価クロムを全く含まず、優れた耐熱変色性、耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性が得られる表面処理鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決し得る皮膜組成について検討を行い、その結果、亜鉛系めっき鋼板の表面に、チタン、ニッケル、アルミニウム及びフッ素を含有する表面処理皮膜を形成することにより、優れた耐熱変色性、耐食性、加工部耐食性及び耐黒変性を有する表面処理鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたので、以下を要旨とするものである。
[1]亜鉛系めっき鋼板の表面に、チタン、ニッケル、アルミニウム及びフッ素を含有する皮膜厚が0.05〜1.0μmの表面処理皮膜を有し、該表面処理皮膜は、チタン付着量が0.01〜0.5g/mであり、且つチタン100質量部に対して、ニッケルを0.01〜5質量部、アルミニウムを0.1〜25質量部、フッ素を1〜500質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
[2]上記[1]の表面処理鋼板において、表面処理皮膜が、さらに、ジルコニウムをチタン100質量部に対して2〜1000質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
[3]上記[1]又は[2]の表面処理鋼板において、表面処理皮膜が、さらに、リンをチタン100質量部に対して1〜300質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板において、表面処理皮膜が、さらに、バナジウムをチタン100質量部に対して1〜300質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
本発明の表面処理鋼板は、表面処理皮膜が加熱による発色や変色を伴わない無機成分を主体とするものであるため、耐熱変色性に優れるとともに、その無機成分が高度のバリア性を有するため、クロメート皮膜を有する表面処理鋼板に匹敵する優れた耐食性及び加工部耐食性と耐黒変性を有する。
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5mass%Al合金めっき鋼板、Zn−55mass%Al合金めっき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、さらには、これらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO分散めっき鋼板)などを用いることができる。また、上記のようなめっきのうち、同種又は異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
また、めっき鋼板としては、鋼板面に予めNiなどの薄目付めっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解又は非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法を採用することができる。
また、表面処理皮膜をめっき皮膜表面に形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理又は酸性の表面調整処理)などの処理を施しておくことができる。
また、使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じて予めめっき表面に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を含む酸性又はアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。
また、電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1質量ppm以上含有させておくことができる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に限定はない。
本発明の表面処理鋼板において、亜鉛系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜は、所定量のチタン、ニッケル、アルミニウム及びフッ素を含有する皮膜である。この表面処理皮膜は6価クロムを含有しない。
前記チタンは、チタン化合物を含む水性液をめっき鋼板に塗布し、乾燥または低温で加熱処理することにより、皮膜中に含有させることができる。このようにチタン化合物を含む水性液を用いることにより、緻密で密着性に優れ、且つ耐食性、バリア性を有する酸化チタン含有皮膜を形成することができる。なお、チタン化合物を含む水性液を塗布した後の加熱処理温度としては、200℃以下、特に150℃以下が好ましい。 表面処理皮膜中でのチタン付着量は、0.01〜0.5g/m、好ましくは0.03〜0.3g/mとする。チタン付着量が0.01g/m未満では、めっき鋼板の表面全体を緻密に被覆することが困難であり、耐食性、特に加工部の耐食性が劣る。一方、チタン付着量が0.5g/mを超えると、皮膜内部応力により、鋼板加工時に皮膜剥離が起きやすくなる。
前記ニッケルは、耐黒変性の向上に有効な成分であり、上記チタン化合物を含有する水性液にニッケル化合物を添加することにより、皮膜中に含有させることができる。
表面処理皮膜中でのニッケルの含有量は、チタン100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部とする。ニッケル含有量がチタン100質量部に対して0.01質量部未満では、黒変改善の効果が十分に得られず、一方、5質量部を超えると、黒変は十分に改善されるものの、耐食性の劣化が顕著となる。
前記アルミニウムは、耐食性の向上に有効な成分であり、前記チタン化合物を含有する水性液にアルミニウム化合物を添加することにより、皮膜中に含有させることができる。
表面処理皮膜中でのアルミニウムの含有量は、チタン100質量部に対して0.1〜25質量部、好ましくは0.5〜10質量部とする。アルミニウム含有量がチタン100質量部に対して0.1質量部未満では、耐食性の向上が不十分であり、一方、25質量部を超えるような過剰な添加量では耐食性が劣化する。これは、酸化チタンによるバリア性皮膜が適切に形成できなくなるためであると考えられる。
また、特に耐黒変性と耐食性を両立させるという観点から、表面処理皮膜中に含有されるニッケルとアルミニウムの質量比を1:1〜1:50、好ましくは1:5〜1:25の範囲とすることが望ましい。
前記フッ素は、耐食性、特に加工部耐食性と耐水付着変色性などの向上に有効な成分であり、前記チタン化合物を含有する水性液にフッ素含有化合物を添加することにより、皮膜中に含有させることができる。
表面処理皮膜中でのフッ素の含有量は、チタン100質量部に対して1〜500質量部、好ましくは10〜400質量部とする。フッ素含有量がチタン100質量部に対して1質量部未満では、耐食性の向上効果が見られず、一方、500質量部を超えると耐食性の向上効果が飽和するだけでなく、耐黒変性のために存在するニッケルの効果を阻害する。
表面処理皮膜中には、さらに、ジルコニウム、リン、バナジウムなどの1種以上を含有させることができる。
前記ジルコニウムは、アルカリ脱脂後の耐食性の向上に有効な成分であり、前記チタン化合物を含有する水溶液にジルコニウム化合物を添加することにより、皮膜中に含有させることができる。
表面処理皮膜中でのジルコニウムの含有量は、チタン100質量部に対して2〜1000質量部、好ましくは30〜1000質量部とするのがよい。ジルコニウム含有量がチタン100質量部に対して2質量部未満では、ジルコニウムを添加することによる効果が十分に得られず、一方、1000質量部を超えるような過剰な添加量では、アルカリ脱脂後の耐食性の向上効果が飽和するだけでなく、チタンの効果を阻害する。
前記リンは、前記チタン化合物を含有する水性液の貯蔵安定性の向上に有効な成分であり、同水性液にリン含有化合物を添加することにより、皮膜中に含有させることができる。
表面処理皮膜中でのリンの含有量は、チタン100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは10〜200質量部とするのが適当である。リン含有量がチタン100質量部に対して1質量部未満では、リンを添加することによる効果が十分に得られず、一方、300質量部を超えるような過剰な添加量では、リンの効果が飽和するだけでなく、チタンの効果を阻害する。
前記バナジウムは、耐熱変色性を若干劣化させるものの、耐水付着変色性の向上に有効な成分であり、前記チタン化合物を含有する水溶液にバナジウム化合物を添加することにより、皮膜中に含有させることができる。
表面処理皮膜中でのバナジウムの含有量は、チタン100質量部に対して1〜3000質量部、好ましくは5〜300質量部とするのが適当である。バナジウム含有量がチタン100質量部に対して1質量部未満では、バナジウムを添加することによる効果が十分に得られず、一方、300質量部を超えるような過剰な添加量では、バナジウムの効果が飽和するだけでなく、チタンの効果を阻害する。
以上述べたような表面処理皮膜の成分分析は、例えば、以下のような方法で行うことができる。まず、チタン、ジルコニウム、リン、バナジウム、ニッケルについては、皮膜面積が既知の表面処理鋼板の表面に濃硫酸を塗布してめっき層ごと溶解させ、それを蒸留水で洗い流してケルダールフラスコに集めて酸分解を行い、さらに濃塩酸を添加して未溶解物を全て溶解してICP分光分析装置を用いた検量線法にて分析することができる。フッ素については、波長分散型の蛍光X線分析装置を用い、濃度既知のフッ素化合物で作成した検量線から定量できる。アルミニウムについては、上記のようにめっき層ごと溶解させた酸分解液と、めっき層のみ溶解させた酸分解液のICPによる分析値の差を皮膜中のアルミニウム量とする。
以上のような本発明の表面処理皮膜は、水性処理液(表面処理組成物)をめっき鋼板表面に塗布し、乾燥または加熱焼き付けすることにより得ることができるが、各皮膜成分は、以下のような処理液成分により供給されることが好ましい。
チタンは、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを混合して得られるチタンを含む水性液(A)から供給される。
前記加水分解性チタン化合物は、チタンに直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタン化合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、チタンに結合する基の一部が加水分解性基であるものでもよい。
前記加水分解性基としては、上記したように水分と反応することにより水酸化チタンを生成させるものであれば特に制限はないが、例えば、低級アルコキシル基やチタンと塩を形成する基(例えば、塩素などのハロゲン原子、水素原子、硫酸イオンなど)などが挙げられる。
加水分解性基として低級アルコキシル基を含有する加水分解性チタン化合物としては、特に、一般式Ti(OR)(式中、Rは同一若しくは異なる炭素数1〜5のアルキル基を示す)で示されるテトラアルコキシチタンが好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタン化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンなどが代表的なものとして挙げられる。
また、加水分解性チタン化合物の低縮合物は、上記した加水分解性チタン化合物どうしの低縮合物である。この低縮合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、チタンに結合する基の一部が加水分解性であるものでもよい。
加水分解性基がチタンと塩を形成する基である加水分解性チタン化合物(例えば、塩化チタン、硫酸チタンなど)については、その加水分解性チタン化合物の水溶液とアンモニアや苛性ソーダなどのアルカリ溶液との反応により得られるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)も低縮合物として使用できる。
加水分解性チタン化合物の低縮合物及び水酸化チタンの低縮合物としては、縮合度が2〜30の化合物が使用可能であり、特に縮合度が2〜10の化合物を使用することが好ましい。縮合度が30を超えると、過酸化水素と混合した際に白色沈殿を生じ、安定なチタン含有水性液が得られない。
以上挙げた加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物は、1種又は2種以上を使用できるが、そのなかでも、上述した一般式で示される加水分解性チタン化合物であるテトラアルコキシチタンが特に好ましい。
チタン含有水性液(A)としては、上記したチタン化合物と過酸化水素水を混合することにより得られるチタンを含む水性液であれば、従来公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には、下記のものを挙げることができる。
(i)含水酸化チタンのゲル又はゾルに過酸化水素水を添加して得られるチタニルイオン過酸化水素錯体又はチタン酸(ペルオキソチタン水和物)水溶液(特開昭63−35419号公報、特開平1−224220号公報参照)。
(ii)塩化チタンや硫酸チタンの水溶液と塩基性溶液から製造した水酸化チタンゲルに過酸化水素水を作用させ、合成することで得られるチタニア膜形成用液体(特開平9−71418号公報、特開平10−67516号公報参照)。
このチタニア膜形成用液体を得る場合、チタンと塩を形成する基を有する塩化チタンや硫酸チタンの水溶液とアンモニアや苛性ソーダなどのアルカリ溶液とを反応させることによりオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させる。次いで、水を用いたデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離し、良く水洗し、さらに過酸化水素水を加え、余分な過酸化水素を分解除去することにより、黄色透明粘性液体を得ることができる。
沈殿した上記オルトチタン酸は、OHどうしの重合や水素結合によって高分子化したゲル状態にあり、そのままではチタンを含む水性液としては使用できない。このゲルに過酸化水素水を添加するとOHの一部が過酸化状態になり、ペルオキソチタン酸イオンとして溶解或いは高分子鎖が低分子に分断された一種のゾル状態になり、余分な過酸化水素は水と酸素になって分解し、無機膜形成用のチタンを含む水性液として使用できるようになる。
このゾルはチタン原子以外に酸素原子と水素原子しか含まないので、乾燥や焼成によって酸化チタンに変化する場合、水と酸素しか発生しないため、ゾルゲル法や硫酸塩などの熱分解に必要な炭素成分やハロゲン成分の除去が必要でなく、低温でも比較的密度の高い酸化チタン膜を形成することができる。
(iii)塩化チタンや硫酸チタンの無機チタン化合物水溶液に過酸化水素を加えてぺルオキソチタン水和物を生成させた後に、塩基性物質を添加して得られた溶液を放置又は加熱することによってペルオキソチタン水和物重合体の沈殿物を生成させ、次いで、少なくともチタン含有原料溶液に由来する水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られるチタン酸化物形成用溶液(特開2000−247638号公報、特開2000−247639号公報参照)。
チタン化合物として加水分解性チタン化合物及び/又はその低縮合物(以下、説明の便宜上「加水分解性チタン化合物a」という)を用いるチタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物aを過酸化水素水と反応温度1〜70℃で10分間〜20時間程度反応させることにより得ることができる。
この加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水とを反応させることにより、加水分解性チタン化合物aが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで、この水酸基含有チタン化合物に過酸化水素が配位するものと考えられ、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域での安定性が極めて高く、長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルは、Ti−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させたチタン含有水性液(A)とは組成及び安定性が本質的に異なる。
また、加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)を80℃以上で加熱処理又はオートクレーブ処理すると、結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。前記加熱処理又はオートクレーブ処理が80℃未満では、酸化チタンの結晶化が十分に進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の平均粒子径が10nm以下、好ましくは1〜6nm程度が望ましい。酸化チタン超微粒子の平均粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下する(塗布後乾燥して皮膜とした場合、膜厚1μm以上でワレを生じる)ので好ましくない。この酸化チタン分散液の外観は半透明状のものである。このような酸化チタン分散液も、チタン含有水性液(A)として使用することができる。
加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)を含む水性処理液(表面処理組成物)を、めっき鋼板表面に塗布・乾燥(例えば、低温で加熱乾燥)することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン含有皮膜(表面処理皮膜)を形成することができる。
水性処理液を塗布した後の加熱温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下が好ましく、このような温度で加熱乾燥することにより、水酸基を若干含む非晶質(アモルファス)の酸化チタン含有皮膜が形成できる。
また、上記したような80℃以上の加熱処理又はオートクレーブ処理を経て得られた酸化チタン分散液をチタン含有水性液(A)として用いた場合、水性処理液を塗布するだけで結晶性の酸化チタン含有皮膜が形成できるため、加熱処理できない材料のコーティング材として有用である。
また、チタン含有水性液(A)としては、酸化チタンゾルの存在下で、加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水とを反応させて得られるチタン含有水性液(A1)を使用することもできる。
前記酸化チタンゾルは、無定型チタニア微粒子又は/及びアナタース型チタニア微粒子が水(必要に応じて、例えばアルコール系、アルコールエーテル系などの水性有機溶剤を添加してもよい)に分散したゾルである。この酸化チタンゾルとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、(i)硫酸チタンや硫酸チタニルなどの含チタン溶液を加水分解して得られる酸化チタン凝集物、(ii)チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を加水分解して得られる酸化チタン凝集物、(iii)四塩化チタンなどのハロゲン化チタン溶液を加水分解又は中和して得られる酸化チタン凝集物、などの酸化チタン凝集物を水に分散した無定型チタニアゾル、或いは前記酸化チタン凝集物を焼成してアナタース型チタン微粒子とし、このものを水に分散したゾルを使用することができる。
前記無定形チタニアの焼成では、少なくともアナターゼの結晶化温度以上の温度、例えば、400℃〜500℃以上の温度で焼成すれば、無定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させることができる。この酸化チタンの水性ゾルとしては、例えば、TKS−201(商品名,テイカ社製,アナタース型結晶形,平均粒子径6nm)、TA−15(商品名,日産化学社製,アナタース型結晶形)、STS−11(商品名,石原産業社製,アナタース型結晶形)などが挙げられる。
チタン含有水性液(A1)において、上記酸化チタンゾルxとチタン過酸化水素反応物y(加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水との反応生成物)との質量比率x/yは、1/99〜99/1、好ましくは約10/90〜90/10の範囲が適当である。質量比率x/yが1/99未満では、安定性、光反応性などの点において酸化チタンゾルを添加した効果が十分に得られず、一方、99/1を超えると造膜性が劣るので好ましくない。
チタン含有水性液(A1)は、酸化チタンゾルの存在下で加水分解性チタン化合物aを過酸化水素水と反応温度1〜70℃で10分間〜20時間程度反応させることにより得ることができる。
チタン含有水性液(A1)の生成形態やその特性は、さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様であるが、特に、酸化チタンゾルを使用することにより、合成時に一部縮合反応が起きて増粘するのが抑えられる。その理由は、縮合反応物が酸化チタンゾルの表面に吸着され、溶液状態での高分子化が抑えられるためであると考えられる。
また、チタン含有水性液(A1)を80℃以上で加熱処理又はオートクレーブ処理すると、結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。この酸化チタン分散液を得るための温度条件、結晶化した酸化チタン超微粒子の粒子径、分散液の外観なども、さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様である。このような酸化チタン分散液も、チタン含有水性液(A1)として使用することができる。
さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様、チタン含有水性液(A1)を含む水性処理液(表面処理組成物)を、めっき鋼板表面に塗布・乾燥(例えば、低温で加熱乾燥)することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン含有皮膜(表面処理皮膜)を形成することができる。
水性処理液を塗布した後の加熱温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下が好ましく、このような温度で加熱乾燥することにより、水酸基を若干含むアナタース型の酸化チタン含有皮膜が形成できる。
以上述べたように、チタン含有水性液(A)の中でも、加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)やチタン含有水性液(A1)は、貯蔵安定性、耐食性などに優れた性能を有するので、本発明ではこれらを使用することが特に好ましい。
加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物に対する過酸化水素水の配合割合は、チタン化合物10質量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100質量部、望ましく1〜20質量部とすることが好ましい。過酸化水素水の配合割合が過酸化水素換算で0.1質量部未満では、キレート形成が十分でないため白濁沈殿が生じてしまう。一方、100質量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く、貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが、3〜30質量%程度であることが、取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
チタン含有水性液(A)には、必要に応じて、他のゾルや顔料を添加分散させることもできる。例えば、添加物としては、市販の酸化チタンゾルや酸化チタン粉末、マイカ、タルク、シリカ、バリタ、クレーなどが挙げられ、これらの1種以上を添加することができる。
水性処理液(表面処理組成物)中でのチタン含有水性液(A)の含有量は、固形分で1〜100g/L、好ましくは5〜50g/Lとすることが、処理液の安定性などの点から好ましい。
ニッケルは、例えば、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルなどの1種又は2種以上を水性処理液に添加することにより皮膜中に含有させることができる。なかでも酢酸ニッケルが、耐黒変性の点から好適である。
アルミニウムは、例えば、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミン酸塩などの1種又は2種以上を水性処理液に添加することにより皮膜中に含有させることができる。
フッ素は、例えば、ジルコン弗化アンモニウム、ジルコン弗化カリウム、ジルコン弗化水素酸、チタン弗化アンモニウム、弗化水素酸、弗化水素酸アンモニウムなどの1種又は2種以上を水性処理液に添加することにより皮膜中に含有させることができる。なかでもジルコン弗化アンモニウム、ジルコン弗化水素酸の1種以上が好適である。すなわち、ジルコニウム弗化アンモニウムはアルカリ脱脂後の耐食性、耐水付着変色性の点から、ジルコン弗化水素酸はアルカリ脱脂後の耐食性の点から、それぞれ好ましい。
リンは、有機リン酸化合物を水性処理液に添加することにより皮膜中に含有させるのが好ましい。有機リン酸化合物としては、例えば、1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸などのヒドロキシル基含有有機亜リン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのカルボキシル基含有有機亜リン酸、及びこれらの塩などが好適なものとして挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸の効果が大きく、特に好ましい。
バナジウムは、例えば、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、無水バナジン酸などの1種又は2種以上を水性処理液に添加することにより皮膜中に含有させることができる。なかでもメタバナジン酸アンモニウムが、耐水付着変色性などの点から好ましい。
ジルコニウムは、炭酸ジルコニウムのナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩の1種又は2種以上を水性処理液に添加することにより皮膜中に含有させることができる。なかでも炭酸ジルコニウムアンモニウムが、耐水付着変色性などの点から好ましい。
さらに、本発明の表面処理皮膜には、耐食性向上のために有機樹脂成分を含有させてもよい。皮膜に有機樹脂成分を含有させるには、水性処理液中に水溶性有機樹脂又は/及び水分散性有機樹脂を添加すればよい。
前記水溶性有機樹脂又は/及び水分散性有機樹脂は、水に溶解又は分散することのできる有機樹脂であり、有機樹脂を水溶化又は水分散化させる方法としては、従来公知の方法を適用することができる。具体的には、有機樹脂として、単独で水溶化や水分散化できる官能基(例えば、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ(イミノ)基、スルフィド基、ホスフィン基など)を含有するもの、及び必要に応じてそれらの官能基の一部又は全部を、酸性樹脂(カルボキシル基含有樹脂など)であればエタノールアミン、トリエチルアミンなどのアミン化合物;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物で中和したもの、また、塩基性樹脂(アミノ基含有樹脂など)であれば、酢酸、乳酸などの脂肪酸;リン酸などの鉱酸で中和したものなどを使用することができる。
水溶性又は水分散性有機樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン−カルボン酸系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオキシアルキレン鎖を有する樹脂、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
表面処理皮膜(又は皮膜形成用の水性処理液)には、さらに必要に応じて、例えば、シランカップリング剤、樹脂微粒子、本発明の成分以外の重金属化合物、増粘剤、界面活性剤、潤滑性付与剤(ポリエチレンワックス、フッ素系ワックス、カルナバワックスなど)、防錆剤、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、染料などを含有することができる。
表面処理皮膜の皮膜厚は、0.05〜1.0μm、好ましくは0.10〜0.70μm、さらに好ましくは0.15〜0.50μmとする。皮膜厚が0.05μm未満では耐食性、加工部耐食性およびアルカリ脱脂後耐食性が劣り、一方、1.0μmを超えると耐熱変色性、耐食性、加工部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性および耐水付着変色性が劣る。
本発明の表面処理鋼板を製造するには、亜鉛系めっき鋼板の表面に、さきに述べたような水性処理液を塗布した後、乾燥または加熱焼き付けすればよい。
水性処理液の塗布方法は、例えば、スプレー+ロール絞り、ロールコーターなど任意であり、また、塗布後の乾燥方式についても、例えば、熱風方式、誘導加熱方式、電気炉方式など任意である。
塗布した水性処理液の乾燥温度(鋼板温度)は60〜200℃程度とすることが好ましい。乾燥温度が60℃未満では、皮膜形成が不十分となり耐食性などが劣った皮膜となる。一方、200℃を超える板温で乾燥させても、乾燥温度に見合う耐食性の向上効果は得られず、却って耐食性が低下してしまう場合がある。これは、熱により皮膜にクラックが生じるためであると考えられる。
皮膜形成用の水性処理液(表面処理組成物)に用いたチタン含有水性液(A)と成分(B)〜(G)を以下に示す。
[チタン系水性液(A)の製造]
・製造例1(チタン系水性液T1)
四塩化チタン60質量%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30質量%溶液を10cc加えてかき混ぜ、チタンを含む黄色半透明の粘性のあるチタン系水性液T1を得た。
・製造例2(チタン系水性液T2)
テトラiso−プロポキシチタン10質量部とiso−プロパノール10質量部の混合物を30質量%過酸化水素水10質量部と脱イオン水100質量部の混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し、黄色透明の少し粘性のあるチタン系水性液T2を得た。
[ニッケル化合物(B)]
B1:酢酸ニッケル
B2:硝酸ニッケル
[アルミニウム化合物(C)]
C1:硝酸アルミニウム
C2:酢酸アルミニウム
[弗素含有化合物(D)]
D1:ジルコン弗化アンモニウム
D2:弗化水素酸
[有機リン酸化合物(E)]
E1:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
[バナジン酸化合物(F)]
F1:メタバナジン酸アンモニウム
F2:メタバナジン酸ナトリウム
[炭酸ジルコニウム化合物(G)]
G1:炭酸ジルコニウムアンモニウム
G2:炭酸ジルコニウムナトリウム
表面処理鋼板のベース鋼板としては、表1に示すめっき鋼板を用いた。
上記したチタン含有水性液(A)と成分(B)〜(G)を適宜配合した水性処理液(表面処理組成物)をめっき鋼板表面に塗布し、3秒後に最高到達板温が100℃となるように乾燥して供試材とした。これら供試材について、下記の方法で皮膜成分の分析と性能評価(耐熱変色性、耐食性、加工部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐黒変性、耐水付着変色性)を評価した。
その結果を、各供試材の皮膜組成及び水性処理液の添加成分などとともに、表2〜表5に示す。
[皮膜分析方法]
表面処理皮膜の成分分析は、次のようにして行った。
チタン、ジルコニウム、リン、バナジウム、ニッケルについては、皮膜面積が既知の表面処理鋼板の表面に濃硫酸を塗布してめっき層ごと溶解させ、それを蒸留水で洗い流してケルダールフラスコに集めて酸分解を行い、さらに濃塩酸を添加して未溶解物を全て溶解してICP分光分析装置を用いた検量線法にて分析した。フッ素については、波長分散型の蛍光X線分析装置を用い、濃度既知のフッ素化合物で作成した検量線から定量した。また、アルミニウムについては、上記のようにめっき層ごと溶解させた酸分解液と、めっき層のみ溶解させた酸分解液のICPによる分析値の差を皮膜中のアルミニウム量とした。
[性能評価方法]
(1)耐熱変色性
供試材を赤外線イメージ炉にて30秒で板温500℃に加熱し、30秒間保持した後、室温まで自然放冷した時の表面外観を目視観察した。その評価基準は以下の通りである。
◎:変色なし
○:わずかに変色
△:淡黄色に変色
×:黄色〜茶色に変色
(2)耐食性
端部と裏面をシールした供試材(50mm×150mm)をJIS−Z−2371−2000の中性塩水噴霧試験法に準拠した塩水噴霧試験に供し、白錆発生面積率が5%となる試験時間を測定した。その評価基準は以下の通りである。
◎:120時間以上
○:96時間以上、120時間未満
△:48時間以上、96時間未満
×:48時間未満
(3)加工部耐食性
端部と裏面をシールした供試材(50mm×100mm)について、供試面を外側にして2.5mmRで180度曲げを行った後、JIS−Z−2371−2000の中性塩水噴霧試験法に準拠した塩水噴霧試験に供し、曲げ先端部の幅方向50mm長さのうち白錆発生率が5%となる試験時間を測定した。その評価基準は以下の通りである。
◎:96時間以上
○:48時間以上、96時間未満
△:24時間以上、48時間未満
×:24時間未満
(4)アルカリ脱脂後耐食性
アルカリ脱脂剤「CLN−364S」(日本パーカライジング(株)製)を純水に2質量%の濃度で溶解して60℃に加温し、これを供試材(50mm×150mm)に2分間スプレーした後、端部と裏面をシールし、JIS−Z−2371−2000の中性塩水噴霧試験法に準拠した塩水噴霧試験に供し、白錆発生面積率が5%となる試験時間を測定した。その評価基準は以下の通りである。
◎:96時間以上
○:48時間以上、96時間未満
△:24時間以上、48時間未満
×:24時間未満
(5)耐黒変性
供試材を温度80℃、相対湿度95%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に24時間静置した際の白色度(L値)の変化(ΔL:試験前のL値−試験後のL値)を求めた。その評価基準は以下の通りである。
○:ΔL≧−5.0
△:−5.0>ΔL≧−10.0
×:−10.0>ΔL
(6)耐水付着変色性
供試材(50mm×50mm)にイオン交換水を10滴滴下し、100℃に加熱したオーブンにて10分間乾燥させ、乾燥直後の外観を目視判定した。その評価基準は以下の通りである。図1に“△”と“×”の基準となる見本板を示す。
○:変色なし
△:わずかに変色あり
×:変色あり
表2及び表4において、*1〜*8は以下の内容を示す。
*1 表1に記載のめっき鋼板No.1〜5
*2 明細書本文に記載のチタン含有水性液T1,T2
*3 明細書本文に記載のニッケル化合物B1,B2
*4 明細書本文に記載のアルミニウム化合物C1,C2
*5 明細書本文に記載のフッ素含有化合物D1,D2
*6 明細書本文に記載の有機リン酸化合物E1
*7 明細書本文に記載のバナジン酸化合物F1,F2
*8 明細書本文に記載の炭酸ジルコニウム化合物G1,G2
実施例における耐水付着変色性の評価基準となる見本板を示す図面

Claims (4)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の表面に、チタン、ニッケル、アルミニウム及びフッ素を含有する皮膜厚が0.05〜1.0μmの表面処理皮膜を有し、該表面処理皮膜は、チタン付着量が0.01〜0.5g/mであり、且つチタン100質量部に対して、ニッケルを0.01〜5質量部、アルミニウムを0.1〜25質量部、フッ素を1〜500質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 表面処理皮膜が、さらに、ジルコニウムをチタン100質量部に対して2〜1000質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 表面処理皮膜が、さらに、リンをチタン100質量部に対して1〜300質量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理鋼板。
  4. 表面処理皮膜が、さらに、バナジウムをチタン100質量部に対して1〜300質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理鋼板。
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