以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.第1の構成例
図1に本実施形態の受信回路の第1の構成例を示す。なお本実施形態の受信回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図1の受信回路は、アッテネータ40、DCレベルシフタ50、増幅部60、制御回路70を含む。またスイッチング信号生成回路78や復調回路90を含むことができる。
コイル(LC共振回路)等で構成されるアンテナ部10からの受信信号INはアッテネータ40に入力される。アッテネータ40(フィルタ回路)は、受信信号INのアッテネーションを行う。スマートエントリシステムを例にとれば、搬送波の振幅を入力デジタル信号に対応させて変化させるASK(Amplitude Shift keying)変調されたLF(LowFrequency)帯域の受信信号INが、アッテネータ40に入力される。そしてアッテネータ40は、制御回路70からの制御電圧VC(制御信号)に基づいて、ASK変調(振幅変調)された例えば120〜140KHzのLF帯域の受信信号INの振幅を減衰させる。
アッテネータ40は、受信信号INの入力ノードNA0とアッテネータ40の出力ノードNA1との間に設けられたアッテネーション用のキャパシタCA1と、出力ノードNA1とVSS(広義には第1の電源)との間に設けられ、そのゲートに制御回路70からの制御電圧VCが入力されるアッテネーション用のN型のトランジスタTA1を含む。このアッテネータ40は例えばハイパスフィルタの周波数特性を有する。即ちキャパシタCA1の容量とトランジスタTA1のオン抵抗によりハイパスフィルタが構成される。なおアッテネータ40にローパスフィルタの特性を持たせ、ローパスフィルタのカットオフ周波数を制御して減衰量を制御してもよい。
DCレベルシフタ50は、アッテネーション後の信号VS1のDCレベルシフトを行って、DCレベルシフト後の信号VS2を出力する。即ちDCレベルシフタ50は、増幅部60の小信号増幅の動作点(増幅中心)に信号VS2のDCレベルが設定されるようにレベルシフト変換を行う。このDCレベルシフタ50は、VSS(第1の電源)とその出力ノードNA2との間に設けられ、そのゲートにアッテネータ40からの信号VS1が入力されるN型のトランジスタTB1と、VDD(第2の電源)とその出力ノードNA2との間に設けられる電流源IS1を含む。
増幅部60はDCレベルシフト後の信号VS2を増幅し、増幅後の信号VS6を出力する。この増幅部60は例えばバンドパスフィルタの周波数特性を有する。具体的には受信信号INの搬送波(所望信号)の周波数帯域(例えば120〜140KHz)を中心周波数とするバンドパスフィルタ特性を有する。
復調回路90は、増幅部60からの信号VS6に基づいて復調処理を行う。即ちASK変調された信号から入力デジタル信号を得るため復調処理を行う。
制御回路70は、増幅部60の出力信号VS6の振幅(振幅の大きさ)に応じて、アッテネータ40の減衰量を変化させる。例えば信号VS6の振幅を検出し、振幅検出結果に基づいてアッテネータ40の減衰量を変化させる自動ゲイン調整を行う。
具体的にはアッテネータ40のフィルタ特性(カットオフ周波数)を変化させることで、受信信号INの振幅が変動した場合にも増幅部60の出力信号VS6の振幅が一定(ほぼ一定を含む)になるように、アッテネータ40の減衰量を制御する。例えばアッテネータ40がハイパスフィルタの特性を有する場合には、制御回路70は、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を信号VS6の振幅(振幅検出結果)に基づいて変化させることで、アッテネータ40における減衰量を制御する。例えば増幅部60の出力信号VS6の振幅が大きくなるにつれてハイパスフィルタのカットオフ周波数を高くして、受信信号の搬送波の周波数帯域での減衰量を大きくする制御を行う。
即ちスマートエントリシステムでは、車載機からの信号は無線でスマートキーの携帯機(電子機器)に送信されるため、車載機と携帯機との間の距離に応じて受信信号の振幅が、例えば1mV〜数百mVというように大きく変動する。従って受信信号の振幅が変動した場合にも、増幅部60の出力信号VS6の振幅が一定になるようにゲインを自動調整する必要がある。このような自動ゲイン調整を行うことで、復調回路90には一定の振幅の信号VS6が入力されるようになり、復調回路90での復調処理が容易になる。
この場合に比較例の手法として、増幅部60自体のゲイン(増幅率)を自動調整して信号VS6の振幅を一定にする手法が考えられる。
しかしながら、この比較例の手法によると、増幅部60に自動ゲイン調整機能を持たせる必要があり、増幅部60の回路構成が複雑化したり、増幅部60を構成するオペアンプに流れるバイアス電流が増加し、低消費電力化の実現が難しくなる。特にスマートエントリシステムでは、携帯機は車載機からの送信信号を常時受信する必要があるため、増幅部60での消費電流の増加は無視できない。
この点、本実施形態では、アッテネータ40での減衰量を調整することで、自動ゲイン調整を実現している。従って、増幅部60自体には自動ゲイン調整機能を持たせなくても済むため、増幅部60を構成するオペアンプの設計を簡素化できる。従って、増幅部60のオペアンプに流れるバイアス電流の低減も容易になり、受信回路の消費電力を大幅に低減でき、スマートエントリシステム等に最適な受信回路を提供できる。
即ち図1では、受信信号INの振幅が最小の場合(例えば1mV)に、アッテネータ40での減衰量は最小になり、その時の信号振幅で適正な信号増幅ができると共に消費電流を最小限に抑えられるように、増幅部60のオペアンプが最適設計される。そして受信信号INの振幅の増加に応じて、アッテネータ40の減衰量も増加し、受信信号INの振幅が最大の場合(例えば数百mV)に減衰量は最大になる。従って、受信信号INの振幅が最大である場合にも、振幅が最小の時とほぼ同じ振幅の信号が増幅部60に入力されるため、振幅が最小の場合を想定して最適設計されたオペアンプを用いて信号増幅を行うことが可能になる。
また本実施形態では、増幅部60は、図2のA1に示すようなバンドパスフィルタの特性を持つ。具体的には搬送波の周波数fdの帯域が中心周波数に設定され、低周波数側のカットオフ周波数がfc1に設定され、高周波数側のカットオフ周波数がfc2に設定されたバンドパスフィルタの特性を持つ。
このようなバンドパスフィルタ特性を増幅部60に持たせれば、搬送波(所望信号)の周波数成分を通過させ、不要信号の周波数成分を除去できるようになる。これにより、ノイズ信号などの不要信号を増幅部60のバンドパスフィルタ特性により除去できるため、S/N比を改善でき、後段の復調回路90の安定動作等を実現できる。またDC成分をカットできるため、いわゆるDCオフセットフリーの実現が容易になる。
一方、アッテネータ40は、図2のA2に示すようなハイパスフィルタの特性を持つ。そして制御回路70は、このハイパスフィルタのカットオフ周波数fcを振幅検出結果に基づき変化させることで、アッテネータ40の減衰量を制御する。
具体的には、例えば受信信号INの振幅が小さい場合には、アッテネータ40のカットオフ周波数fcは図2のA3に示すようになり、ハイパスフィルタ特性はA4に示すような特性になる。
即ちアッテネータ40のキャパシタCA1の容量をCAとし、トランジスタTA1のオン抵抗をRAとすると、アッテネータ40のカットオフ周波数はfc=1/(2π×CA×RA)となる。そして受信信号INの振幅が小さい場合には、制御回路70からの制御電圧VCが低くなるため(例えばVC=0V)、VCがそのゲートに入力されるトランジスタTA1のオン抵抗RAは大きくなる。従って、カットオフ周波数fc=1/(2π×CA×RA)は小さくなり、図2のA3に示すようにfc<fdになる。そしてfc<fdになると、搬送波の周波数fdでのハイパスフィルタのゲインが例えば1になるため、アッテネータ40の減衰量は小さくなる(ほぼ零になる)。
一方、受信信号INの振幅が大きくなると、アッテネータ40のカットオフ周波数fcは図2のA5に示すようになり、ハイパスフィルタ特性はA6に示すような特性になる。即ち受信信号INの振幅が大きくなると、制御回路70からの制御電圧VCが高くなり(例えばVC=VDD)、トランジスタTA1のオン抵抗RAは小さくなる。従って、カットオフ周波数fc=1/(2π×CA×RA)は大きくなり、図2のA5に示すようにfc>fdになる。そしてfc>fdになると、周波数fdでのハイパスフィルタのゲインが1よりも小さくなるため、アッテネータ40の減衰量は大きくなる。従って、受信信号INの振幅が変動した場合にも、ほぼ一定の振幅の信号が増幅部60に入力されるようになる。
そして図1では、アッテネータ40はキャパシタCA1とトランジスタTA1により構成されているため、回路規模の増加を最小限に抑えることができる。また減衰量の調整にオペアンプ等を用いていないため、消費電力の増加も最小限に抑えることができる。従って増幅部60での省電力化と相まって、受信回路の消費電力を大幅に削減できる。
2.データ転送期間での減衰量の制御
図3に受信信号INの信号波形例を示す。図3のF1に示すように、受信回路は、バースト期間と呼ばれる期間TBにおいて、車載機から所与のパルス数のバースト信号を受信信号INとして受信する。このバースト期間TBはプリアンブル期間に相当し、バースト期間TBにおいてはASK変調されていないバースト信号が受信される。このバースト期間TB内において受信信号INの自動ゲイン調整が行われる。
一方、図3のF2に示すように、バースト期間TBに続く転送期間T0、T1において、デジタル信号の論理レベル0、1に相当するASK変調された信号が送信される。この期間T0とT1の長さは異なっており(例えばT0<T1)、この期間の長さを検出することで、車載機から論理レベル0、1のいずれのデジタル信号が送信されたのかを検知できる。なお図3ではT0<T1となっているが、T0>T1としてもよい。
さて、受信回路での復調処理などの受信処理を確実なものとし、受信エラーを防止するためには、復調処理の対象となる信号の振幅は、できる限り大きいことが望ましい。一方、バースト期間TBでは、増幅部60の出力信号VS6の振幅を一定にできれば十分であり、バースト期間TBの後は、減衰量を変化させても、それほど問題が生じない。
そこで本実施形態では図3に示すように、バースト期間TBでは、受信信号INの振幅が変化した場合にも増幅部60の出力信号VS6の振幅が一定になるようにアッテネータ40の減衰量を設定する。一方、バースト期間TBに続くデータ転送期間T0、T1では、バースト期間TBにおいて設定された減衰量を小さくする。
このようにすれば、バースト期間TBにおいて一定の振幅に設定された信号VS6が、バースト期間TBの後のデータ転送期間T0、T1では、アッテネータ40の減衰量が小さくなることで、その振幅が増加する。従って、後段の復調回路90等が、振幅が増加した信号VS6を用いて、安定した復調処理を行うことが可能になる。これにより、受信エラーの発生等を低減でき、その振幅が変動する受信信号の安定した受信処理を実現できる。
具体的には図1の第1の構成例では、制御回路70は、充電ノードNCとVSS(第1の電源)との間に設けられた充電用キャパシタCD1と、充電ノードNCとVDD(広義には第2の電源)との間に設けられた充電用トランジスタTD1を含む。そして増幅部60の出力信号VS6と基準電圧VREFの比較処理を行い、比較結果に基づいて充電用トランジスタTD1により充電用キャパシタCD1を充電する。そして充電ノードNCの電圧を制御電圧VCとしてアッテネータ40に出力する。
そして制御回路70は、バースト期間に続くデータ転送期間では、制御電圧VCを、バースト期間において設定された電圧よりも低い電圧に設定する。例えばバースト期間の開始時の電圧と終了時の電圧の間の電圧に設定する。
更に具体的には図1に示すように制御回路70は、充電ノードNCとVSS(第1の電源)との間に直列に設けられた制御用スイッチング素子SWD1及び制御用キャパシタCD2を含む。そしてバースト期間では制御用スイッチング素子SWD1をオフ状態にし、データ転送期間では制御用スイッチング素子SWD1をオン状態にする。
このように制御用スイッチング素子SWD1がオン状態になると、充電用キャパシタCD1に充電された電荷が制御用キャパシタCD2に再分配され、ノードNCの制御電圧VCが低下する。これにより、制御電圧VCがそのゲートに入力されるアッテネーション用トランジスタTA1のオン抵抗が上昇する。従って、バースト期間において図2のA6に示すように設定されていたアッテネータ40のハイパスフィルタ特性が、A8に示すように変化する。この結果、周波数fdでのアッテネータ40の減衰量が小さくなり、これにより増幅部60の出力信号VS6の振幅が増加する。
例えばアッテネーション用のキャパシタCA1の容量をCAとし、トランジスタTA1のオン抵抗をRAとすると、アッテネータ40の伝達関数は下式のように表される。
S=VS1/IN=jω×CA×RA/(1+jω×CA×RA) (1)
従って、アッテネータ40のハイパスフィルタのカットオフ周波数fcは下式のように表される。
fc=1/(2π×CA×RA) (2)
またトランジスタTA1のオン抵抗RAは下式のように表される。
RA=1/{μ×Cox×(W/L)×Vgs} (3)
ここでμはトランジスタの移動度であり、Coxはゲート容量であり、W、Lはトランジスタのゲート幅、ゲート長であり、Vgsはゲート・ソース間電圧である。
バースト期間では、制御電圧VCが上昇し、これによりVgsが大きくなるため、上式(3)から明らかなようにオン抵抗RAが低下する。そして上式(2)から明らかなように、オン抵抗RAが低下すると、図2のA5、A6に示すようにハイパスフィルタのカットオフ周波数fcが上昇する。これにより周波数fdでのアッテネータ40の減衰量が増加し、アッテネータ40による自動ゲイン調整が実現される。
一方、データ転送期間では、バースト期間で上昇した制御電圧VCが低下し、Vgsが小さくなるため、上式(3)から明らかなようにオン抵抗RAが増加する。そして上式(2)から明らかなように、オン抵抗RAが増加すると、図2のA7、A8に示すように、バースト期間において上昇したハイパスフィルタのカットオフ周波数fcが低下する。これにより周波数fdでのアッテネータ40の減衰量が小さくなり、増幅部60の出力信号VS6の振幅が増加する。従って、後段の復調回路90等の安定した復調処理等が可能になる。
なおスイッチング素子SWD1のオン・オフを制御するためのスイッチング信号SCは、スイッチング信号生成回路78により生成される。具体的にはスイッチング信号生成回路78は、バースト期間でのバースト信号のパルス数が所定数以上になったことが検出され、且つ、受信信号INの復調データ信号が例えばHレベル(広義には第1の電圧レベル)からLレベル(広義には第2の電圧レベル)に変化した場合にアクティブになるスイッチング信号SCを生成する。そして制御回路70は、このスイッチング信号SCに基づいて、バースト期間において設定された減衰量を小さくする制御を行う。
3.第2の構成例
図4に本実施形態の受信回路の第2の構成例を示す。この第2の構成例では、アッテネータ40がアッテネーション用抵抗回路42を含む。或いはアッテネーション用キャパシタCA1は、その容量が可変に制御されるようになっている。
そして制御回路70は、データ転送期間では、アッテネーション用抵抗回路42の抵抗及びアッテネーション用キャパシタCA1の容量の少なくとも一方を、バースト期間で設定された抵抗、容量よりも大きくする制御を行う。具体的にはスイッチング信号生成回路78がスイッチング信号SCを出力し、アッテネータ40は、このスイッチング信号SCの電圧レベルが変化した場合に、アッテネーション用抵抗回路42の抵抗やアッテネーション用キャパシタCA1の容量を大きくする。
即ち上式(2)に示すように、アッテネータ40のカットオフ周波数はfc=1/(2π×CA×RA)と表される。従って、データ転送期間において、アッテネーション用抵抗回路42の抵抗RAや、キャパシタCA1の容量CAを大きくすることで、カットオフ周波数fcが小さくなる。これによりアッテネータ40のハイパスフィルタ特性が図2のA6からA8のように変化し、アッテネータ40の減衰量が小さくなる。
図5に図4の第2の構成例の詳細例を示す。図5はアッテネーション用抵抗回路42の抵抗を制御する場合の例である。
図5では、アッテネーション用抵抗回路42は、アッテネーション用トランジスタTA1の他に、アッテネータ40の出力ノードNA1とVSSとの間に直列に設けられた制御用スイッチング素子SWA1及び制御用トランジスタTA3を含む。ここで制御用トランジスタTA3のゲートには制御電圧VCが入力されている。
そして制御回路70は、バースト期間では制御用スイッチング素子SWA1をオン状態にする一方で、データ転送期間ではSWA1をオフ状態にする。このようにすれば、アッテネーション用トランジスタTA1のゲート幅Wを実質的に小さくしたのと同等になり、アッテネーション用抵抗回路42の抵抗RAが、バースト期間での抵抗よりも上昇する。即ち上式(3)に示すように、抵抗はRA=1/{μ×Cox×(W/L)×Vgs}と表されるため、ゲート幅Wが小さくなることで、抵抗RAは上昇する。これにより、カットオフ周波数fc=1/(2π×CA×RA)は小さくなり、アッテネータ40のハイパスフィルタ特性が図2のA6からA8のように変化し、アッテネータ40の減衰量を低下させることができる。
4.詳細な構成例
図6に図1の第1の構成例に対応する詳細な構成例を示す。なお図4、図5の第2の構成例についても、図6に示す増幅部60、制御回路70、基準電圧生成回路80の構成を適用できる。また本発明では第1、第2の構成例を組み合わせた実施も可能である。
アッテネータ40は、キャパシタCA1、トランジスタTA1に加えて、プルダウン用トランジスタTA2を含む。このプルダウン用のトランジスタTA2は、アッテネータ40の出力ノードNA1とVSS(第1の電源)との間に設けられ、出力ノードNA1のプルダウンを行う。具体的にはN型のプルダウン用トランジスタTA2は、そのゲートにバイアス電圧BA1が入力されてVSS側に定電流を流す。またアッテネーション用トランジスタTA1よりも、その電流供給能力が低くなっている。例えばプルダウン用トランジスタTA2は、そのW/L(ゲート幅/ゲート長)が、アッテネーション用トランジスタTA1の例えば1/10〜1/50程度になっている。
このようなプルダウン用トランジスタTA2を設ければ、車載機と携帯機の距離が離れており、受信信号INが入力されていない場合に、ノードNA1を例えば0V(VSS)にプルダウンできる。即ちアッテネータ40にはDCカット用のキャパシタCA1が設けられているため、受信信号INが到来していない場合には、ノードNA1はフローティング状態になる。従ってプルダウン用トランジスタTA2が設けられていないと、ノードNA1の電位が安定せず、ノイズ耐性が悪化する可能性がある。
この点、図6ではプルダウン用トランジスタTA2が設けられている。従って、受信信号INが到来しておらず、制御電圧VCが例えば0Vである場合にも、ノードNA1の電位がプルダウンされて、安定化されるため、ノイズ耐性を向上できる。
DCレベルシフタ50は、そのゲートに信号VS1が入力されるN型のトランジスタTB1と、そのゲートにバイアス電圧BB1が入力されるP型のトランジスタTB2を含む。このトランジスタTB2は図1の電流源IS1として機能する。なおトランジスタTB2の代わりに電流源として機能する抵抗等を設けてもよい。
増幅部60はカスケード接続された複数の増幅回路61、62を含む。具体的には増幅回路61は、DCレベルシフタ50からの出力信号VS2を増幅し、増幅後の信号VS4を増幅回路62に出力する。また増幅回路62は、増幅回路61からの出力信号VS4を増幅し、増幅後の信号VS6を復調回路90、制御回路70に出力する。なお増幅部60に、1個のみの増幅回路を設けてもよいし、3個以上のカスケード接続された増幅回路を設けてもよい。
増幅回路61は第1、第2のオペアンプOPC1、OPC2を含む。また増幅回路61のゲインを設定するためのゲイン設定部として機能するキャパシタCC1、CC2を含む。
オペアンプOPC1は、その非反転入力端子(広義には第1の入力端子)に、DCレベルシフタ40からの入力信号VS2が入力される。オペアンプOPC2は、その非反転入力端子(第1の入力端子)にオペアンプOPC1の出力が入力され、その出力がその反転入力端子(広義には第2の入力端子)及びオペアンプOPC1の反転入力端子(第2の入力端子)に入力される。即ちOPC2はボルテージフォロワ接続のオペアンプとなっている。なお増幅回路62の構成も増幅回路61と同様であるため、その説明を省略する。またオペアンプOPC2にゲイン調整機能を持たせる変形実施も可能である。
基準電圧生成回路80は基準電圧VREFを生成して出力する。
制御回路70は、充電ノードNCとVSS(第1の電源)との間に設けられた充電用キャパシタCD1と、充電ノードNCとVDD(広義には第2の電源)との間に設けられた充電用トランジスタTD1を含む。制御回路70が含む比較回路72(充電制御回路)は、増幅部60の出力信号VS6と基準電圧VREFの比較処理を行い、比較結果に基づいて充電用トランジスタTD1により充電用キャパシタCD1の充電を制御する。これにより充電ノードNCの電圧が制御電圧VCとしてアッテネータ40に出力される。
図7に受信回路の動作を説明するための信号波形例を示す。図7のB1に示すように、受信回路は、バースト期間TBにおいて、車載機から所与のパルス数のバースト信号を受信する。図7のB2に示すように、バースト期間TBに続く転送期間T0、T1において、デジタル信号の論理レベル0、1に相当するASK変調された信号を受信する。
図7のB3では、受信信号INは0Vを中心とした信号になっている。B4に示すようにDCレベルシフタ50は、この受信信号INのDCレベルを、増幅部60の小信号増幅の動作点(増幅中心)の電圧レベル(VM)にシフトする。そしてB5に示すように増幅部60の増幅回路61は、DCレベルシフト後の信号VS2を増幅して、増幅後の信号VS4を出力する。またB6に示すように増幅回路62は、信号VS4を増幅して、増幅後の信号VS6を出力する。
増幅部60の出力信号VS6の振幅が、基準電圧生成回路80からの基準電圧VREFよりも大きい場合には、比較回路72が含むコンパレータの出力信号が変化し、信号VS7がLレベルになる。具体的には信号VS6のパルス出力の振幅が基準電圧VREFを上回る毎に、信号VS7がLレベルになり、P型のトランジスタTD1がオン状態になる。すると充電用トランジスタTD1を介して充電用キャパシタCD1への充電が行われ、図7のB7に示すように制御電圧VCが上昇する。これにより、アッテネーション用のトランジスタTA1のオン抵抗が減少する。
これによりアッテネータ40のハイパスフィルタのカットオフ周波数fcが上昇して、減衰量が増加し、自動ゲイン調整が実現される。
そして自動ゲイン調整が行われると、図7のB8に示すようにバースト期間TB内において増幅部60の出力信号VS6の振幅がほぼ一定になる。このように信号VS6の振幅が一定になることで、この信号VS6を受けた復調回路90は、バースト期間TBの後の期間T0、T1でのASK変調された信号を安定して復調できる。
そして所与のパルス数の搬送が送信されるバースト期間が終了すると、スイッチング信号生成回路78がスイッチング信号SCをHレベル(アクティブ)にする。すると制御回路70の制御用スイッチング素子SWD1がオン状態になり、充電ノードNCの電荷が制御用キャパシタCD2が再分配される。これにより図7のB9に示すように制御電圧VCが低下し、アッテネータ40のアッテネーション用トランジスタTA1のオン抵抗RAが上昇する。すると図2のA7、A8に示すようにアッテネータ40のハイパスフィルタのカットオフ周波数fc=1/(2π×CA×RA)が低くなり、アッテネータ40の減衰量が、バースト期間での減衰量に比べて小さくなる。これにより、B10に示すように、増幅部60の出力信号VS6の振幅が、バースト期間で調整された振幅よりも大きくなり、後段の復調回路90等の安定動作を実現できる。
なお制御回路70は、充電ノードNCとVSS(第1の電源)との間に設けられ、VSS側に定電流を流す放電用トランジスタTD2を含む。この放電用のトランジスタTD2は、充電用トランジスタTD1に比べて例えば電流供給能力が低いトランジスタになっている。例えば放電用トランジスタTD2のW/L(ゲート幅/ゲート長)はTD1のW/Lよりも小さくなっている。
更に具体的には、放電用トランジスタTD2に流れる定電流と充電用キャパシタCD1の容量により設定される放電期間は、ASK変調される受信信号の論理レベル1(広義には第1の論理レベル)の転送期間T1よりも長くなっている。即ち放電用トランジスタTD2のゲートにはバイアス電圧BD1が入力され、これにより定電流が流れる。放電用トランジスタTD2による放電期間は、この定電流の大きさと充電用キャパシタCD1の容量により設定される。そしてこの放電期間が、論理レベル1の転送期間T1よりも十分に長い期間(例えばT1の10倍以上の期間)になるように、放電用トランジスタTD2に流れる定電流が設定される。具体的にはバイアス電圧BD1の大きさや放電用トランジスタTD2のW/Lが設定される。
即ち受信信号INの振幅は、車載機と携帯機との距離が離れると小さくなるため、本実施形態の受信回路では、微少な振幅の受信信号INについても検知できるように、受信回路の回路定数が設定されている。従って、ノイズ信号についても受信信号INとして検知してしまい、これにより制御電圧VCが上昇してしまうおそれがある。そしてノイズ信号により制御電圧VCが上昇し、アッテネーション用トランジスタTA1のオン抵抗が小さくなると、本来の受信信号INが入力される前に、アッテネータ40の減衰量が大きな値に設定されてしまう。そして減衰量がそこから戻らなくなり、適正な減衰制御を実現できなくなるおそれがある。
この点、図6では、放電用トランジスタTD2により、微少な定電流がVSS側に常に流れる。従って、ノイズ信号により制御電圧VCの電位が上昇したとしても、その電位が放電用トランジスタTD2によりVSS側に戻される。この結果、ノイズ信号に起因してトランジスタTA1のオン抵抗が小さくなり、本来の受信信号INの入力前にアッテネータ40の減衰量が大きな値に設定されてしまう事態を防止できる。
また、この時、放電用トランジスタTD2による放電期間は、長い方の転送期間である論理レベル1の転送期間T1よりも十分に長くなるように設定されている。従って、本来のデータ転送期間においては、放電用トランジスタTD2による放電についてはほとんど無視できるようになり、適正なデータ転送を実現できる。
また図6では、ウェイクアップ用のトランジスタTD3も設けられている。このN型のトランジスタTD3は、そのゲートに制御電圧VCが入力され、そのソースはVSSに接続され、そのドレインにウェイクアップ信号WAKEを出力する。従って、制御電圧VCが上昇し、例えばトランジスタTD3のしきい値電圧よりも大きくなると、ウェイクアップ信号WAKEがアクティブになる(HレベルからLレベルに変化する)。これにより、受信回路や、受信回路を含む集積回路装置の他の回路に対して、バースト期間TBでのバースト信号が検出され、ウェイクアップすべきことを伝えることが可能になる。
更に図6では、リセット用のトランジスタTD9も設けられている。このN型のトランジスタTD9は、そのゲートにリセット信号が入力され、そのソースはVSSに接続される。そしてリセット信号がHレベル(アクティブ)になると、充電ノードNCをVSSレベルにリセットする。
5.復調回路
図8に復調回路90の構成例を示し、図9のその動作を説明するための信号波形例を示す。復調回路90は、基準電圧生成回路92、コンパレータCPF1、CPF2(比較回路)、チャージポンプ回路94(SCF回路)を含む。
図9のD1に示すように増幅部60からの出力信号VS6が入力されると、コンパレータCPF1は、信号VS6の電圧レベルと基準電圧生成回路92からの第1の基準電圧VREF1との比較処理を行う。これによりD2に示すように2値化されたクロック信号VS11がコンパレータCPF1から出力され、このクロック信号VS11がチャージポンプ回路94に入力される。するとチャージポンプ回路94は、このクロック信号VS11に基づいて、図示しないポンピング・キャパシタやバックアップ・キャパシタを用いたチャージポンプ動作を行う。これにより図9のD3に示すように信号VS12の電圧レベルが上昇する。すると、コンパレータOPF2は、信号VS12の電圧レベルと基準電圧生成回路92からの第2の基準電圧VREF2との比較処理を行う。そして信号VS12の電圧レベルがVREF2を上回った場合にHレベル(アクティブ)になる復調後の信号VS13を出力する。これにより車載機からの信号の復調が実現される。
なお図8の復調回路90は一例であり、本発明の復調回路90は図8の構成に限定されるものではない。例えば信号VS6の包絡線を検波する手法を採用するなどの種々の変形実施が可能である。
6.スイッチング信号生成回路
図10(A)にスイッチング信号生成回路78の構成例を示す。このスイッチング信号生成回路78は、バースト期間でのバースト信号のパルス数(搬送波のパルス数)が所定数以上(バースト期間の終了を表す数)になったか否かを検出する。また復調データ信号が例えばHレベル(第1の電圧レベル)からLレベル(第2の電圧レベル)に変化したか否かを検出する。そしてこれらの両方が検出された場合に、スイッチング信号SCをアクティブにする。
具体的には、図10(B)に示すように、復調回路90からクロック信号CLK(図9のVS11に相当する信号)と復調データ信号DATA(VS13に相当する信号)がアンド回路AND1に入力される。そしてAND1の出力がカウンタクロック信号CKとしてカウンタ120に入力される。また復調データ信号DATAの反転信号がリセット信号RSとしてカウンタ120に入力される。
カウンタ120は、カウンタクロック信号CKに基づいてカウント値のカウントアップを行う。そして図10(B)に示すようにカウント値が所定パルス数N以上になると、カウント完了信号CTCMPをHレベル(アクティブ)にする。また復調データ信号DATAがHレベルからLレベルになると、カウント値をリセットする。なおバースト期間の長さをTBLとし、搬送波の周波数をfdとするとN=TBL/fdと表すことができる。
信号生成回路122は、カウント完了信号CTCMPがHレベルになり、且つ、復調データ信号DATAがHレベルからLレベルに変化するエッチが検出されると(信号RSのHレベルが検出されると)、スイッチング信号SCをHレベル(アクティブ)にする。これにより、図1のスイッチング素子SWD1がオン状態になったり、図5のスイッチング素子SWA1がオフ状態になり、アッテネータ40の減衰量が小さくなる。
即ち、前述したように車載機と携帯機との距離が離れると、受信信号の振幅は小さくなるため、本実施形態の受信回路は微少振幅の受信信号についても検出できるようになっている。従って、ノイズ信号についても増幅してしまい、このノイズ信号に基づくカウンタクロック信号CKにより、カウンタ120がカウント値のカウントアップを行ってしまう可能性がある。従って、長期間に亘ってノイズ信号が入力された場合に、パルス数Nだけを検出する手法では、バースト信号が入力されていないのにスイッチング信号SCがアクティブになってしまうおそれがある。
この点、図10(A)、図10(B)では、パルス数Nの検出だけではなく、復調データ信号DATAがHレベルからLレベルに変化したか否かも検出し、両方が検出された場合にスイッチング信号SCをアクティブにしている。従って、ノイズ信号に基づくカウントアップにより誤動作が生じてしまう事態を効果的に防止できる。
7.増幅回路
本実施形態では、増幅部60は図6に示すような接続構成の増幅回路61(62)を含んでいる。即ち増幅回路61は、第1のオペアンプOPC1と、第2のオペアンプOPC2と、キャパシタCC1、CC2により構成されるゲイン設定部を含む。
そして本実施形態では、オペアンプOPC1に流れる第1のバイアス電流をIB1とし、オペアンプOPC2に流れる第2のバイアス電流をIB2とした場合に、IB1>IB2に設定する。即ちオペアンプOPC1として、高周波数帯域でも動作する高速なオペアンプを採用し、オペアンプOPC2として、低周波数帯域でしか動作しない低速なオペアンプを採用する。このようにすることで、増幅回路61にバンドパスフィルタの周波数特性を持たせることが可能になる。
例えば図11において、E1は増幅回路61のバンドパスフィルタ特性を表し、E2はオペアンプOPC2のローパスフィルタ特性を表す。オペアンプOPC2は、バイアス電流IB2が小さい低速なオペアンプであり、E2に示すようなローパスフィルタの特性を有する。従ってオペアンプOPC2は、そのカットオフ周波数fc3よりも低い周波数帯域では、そのゲインがG2=1のボルテージフォロワ接続のオペアンプとして機能するが、fc3よりも十分に高い周波数帯域では、ボルテージフォロワ接続のオペアンプとして機能しなくなる。
カットオフ周波数fc3よりも低い周波数帯域では、OPC2がボルテージフォロワ接続のオペアンプとして機能する。従って、オペアンプOPC1の出力信号VS4が、ボルテージフォロワ接続のオペアンプOPC2を介して、入力信号VS3としてOPC1の反転入力端子にフィードバックされる。従って、結局、OPC1もボルテージフォロワ接続のオペアンプとして機能し、増幅回路61のゲインG1はほぼ1に設定される。
そして信号周波数が高くなり、図11のE3のようにオペアンプOPC2のゲインG2が下がって行くと、OPC2がボルテージフォロワ接続のオペアンプとしては徐々に機能しなくなる。これによりE4に示すように増幅回路61のゲインG1は徐々に上昇する。
そして信号周波数がオペアンプOPC2のカットオフ周波数fc3よりも十分に高くなると、OPC2はボルテージフォロワ接続のオペアンプとしては全く機能しなくなり、OPC2はその存在が無いものと同然になる。すると、増幅回路61は、オペアンプOPC1とキャパシタCC1、CC2とで構成される回路と同等になる。従って、キャパシタCC1、CC2の容量をC1、C2とすると、増幅回路61のゲインはG1=C1/C2に設定される。即ち図11のE5に示すバンドパスのピークである搬送波の周波数fdにおけるゲインは、G1=C1/C2に設定される。そして信号周波数が周波数fdよりも高くなると、E6に示すように増幅回路61のゲインG1は徐々に減少する。このようにして、E4、E5、E6に示すバンドパスのフィルタ特性が設定される。
このように、増幅回路61のバンドパスフィルタの低周波数側のカットオフ周波数fc1は、オペアンプOPC2の出力インピーダンスと、OPC2の出力ノードNA3の負荷容量により設定される。即ち図11のE3に示すオペアンプOPC2のローパスフィルタの減衰特性は、OPC2の出力インピーダンスとノードNA3の負荷容量により決まる。そしてE4に示す増幅回路61のバンドパスフィルタの減衰特性は、E3に示すオペアンプOPC2のローパスフィルタの減衰特性により決まる。従って、バンドパスフィルタの低周波数側のカットオフ周波数fc1はオペアンプOPC2の出力インピーダンスと負荷容量により決まることになる。
なおオペアンプOPC2の出力インピーダンス(電流供給能力)は、OPC2のバイアス電流や、OPC2を構成するトランジスタのゲート長などにより決まる。例えばバイアス電流が大きくなるほど、或いはゲート長が短くなるほど、出力インピーダンスは小さくなる。またノードNA3の負荷容量は、キャパシタCC1、CC2の容量や、オペアンプOPC1の反転入力端子のゲート容量や、オペアンプOPC2自身のトランジスタのドレイン容量や、ノードNA3の配線の寄生容量などにより決まる。
一方、バンドパスフィルタの高周波数側のカットオフ周波数fc2は、オペアンプOPC1の出力インピーダンスと、OPC1の出力ノードNA4の負荷容量により設定される。即ち図11のE7に示すローパスフィルタの減衰特性は、オペアンプOPC1の出力インピーダンスとノードNA4の負荷容量により決まる減衰特性である。そしてE6に示す増幅回路61のバンドパスフィルタの減衰特性は、E7に示すオペアンプOPC1のローパスフィルタの減衰特性により決まる。従って、バンドパスフィルタの高周波数側のカットオフ周波数fc2は、オペアンプOPC1の出力インピーダンスと、ノードNA4の負荷容量により決まることになる。
なおオペアンプOPC1の出力インピーダンスは、OPC1のバイアス電流や、OPC1を構成するトランジスタのゲート長などにより決まる。またノードNA4の負荷容量は、キャパシタCC1の容量や、オペアンプOPC2の非反転入力端子のゲート容量や、オペアンプOPC1自身のトランジスタのドレイン容量や、ノードNA4の配線の寄生容量などにより決まる。
このように本実施形態では、オペアンプOPC1としてそのバイアス電流が大きな高速のオペアンプを使用し、オペアンプOPC2としてそのバイアス電流が小さな低速のオペアンプを使用しているため、図11に示すようなバンドパスフィルタ特性を実現できる。これにより、搬送波の周波数fdの帯域の信号だけを通過させ、ノイズ信号等の他の周波数帯域の信号を除去できるため、S/N比等を向上できる。また増幅回路61(62)に対して、増幅機能とバンドパスフィルタ機能の両方を持たせることができる。従って、増幅回路61の他にバンドパスフィルタを別途設ける必要がないため、回路の小規模化を図れると共に、回路要素を減らすことで低消費電力化も図れる。
8.レール・ツー・レール
図12に増幅回路61(62)の具体的な構成例を示す。本実施形態では増幅回路61のオペアンプOPC2としてレール・ツー・レール型のオペアンプを採用している。
具体的にはオペアンプOPC1は差動部(差動段)により構成され、出力部(出力段)を含まない構成になっている。またオペアンプOPC2は、第1、第2の差動部66、68により構成され、各々の差動部は出力部を含まない構成になっている。
そしてオペアンプOPC1の差動部64の出力(NA4、VS4)は、オペアンプOPC2の差動部66、68の非反転入力端子(広義には第1の入力端子)に接続される。具体的には例えば差動対トランジスタの一方のトランジスタのゲートに接続される。また差動部66の出力と差動部68の出力は共通接続されると共に、差動部66、68の出力(NA3、VS3)は、差動部66、68の反転入力端子(広義には第2の入力端子)に接続される。具体的には差動対トランジスタの一方とは異なる他方のトランジスタのゲートに接続される。
このように、オペアンプOPC1、OPC2として、出力部を設けずに、差動部64、66、68だけにより構成されるオペアンプを採用することで、低消費電力化を図れる。即ち一般的なオペアンプに設けられている出力部では、バイアス電流が流れるため、そのバイアス電流の分だけオペアンプの消費電流が増えてしまう。この点、図12のように出力部を設けない構成とすれば、出力部に流れるバイアス電流を節約でき、低消費電力化を図れる。
特に本実施形態では、差動部66、68に流れるバイアス電流IB2を極力小さくすることで、図11のE3に示すようなオペアンプOPC2のローパスフィルタの減衰特性を実現し、これによりE4に示すような増幅回路61のバンドパスフィルタの減衰特性を実現している。即ち高周波数帯域においてボルテージフォロワ接続のオペアンプOPC2の存在を無くすことで、バンドパスフィルタの周波数特性を実現しているため、差動部66、68に流れるバイアス電流は例えば数nA程度に絞られており、非常に小さい。従って、これらの差動部66、68の出力をショート接続しても、それにより生じる貫通電流も数nA程度であり、無視できる。
一方、本実施形態では、差動部64に流れるバイアス電流IB1については、差動部66、68に流れるバイアス電流IB2よりも大きくすることで、図11のE7に示すようなオペアンプOPC1のローパスフィルタの減衰特性を実現し、これによりE6に示すような増幅回路61のバンドパスフィルタの減衰特性を実現している。従ってバイアス電流IB1が大きいため、差動部64に出力部を設けなくても、その出力の負荷容量については十分に駆動できる。
従って図12の構成によれば、増幅回路61に対して増幅機能とバンドパスフィルタ機能の両方を持たせることができると共に、低消費電力化も実現できるという効果がある。
図13に差動部64、66、68の更に詳細な構成例を示す。なお差動部64、66、68は図13の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり他の構成要素を追加する等の種々の変形実施が可能である。
図13に示すようにオペアンプOPC1の差動部64は、トランジスタTC1、TC2により構成されるカレントミラー回路を含む。また一方のトランジスタTC3のゲートに入力信号VS2が入力され、他方のトランジスタTC4のゲートに第1、第2の差動部66、68の出力(NA3)が接続される差動対トランジスタTC3、TC4を含む。またカレントミラー回路(TC1、TC2)及び差動対トランジスタTC3、TC4に流れるバイアス電流を供給する電流源トランジスタTC5を含む。
なお図13ではTC1、TC2はP型トランジスタになっており、TC3、TC4、TC5はN型トランジスタになっている。またトランジスタTC5のゲートにはバイアス電圧BC1が入力される。
オペアンプOPC2の第1の差動部66は、P型トランジスタTC6、TC7により構成される第1のカレントミラー回路を含む。また一方のN型トランジスタTC8のゲートに差動部64の出力(NA4)が接続され、他方のN型トランジスタTC9のゲートに第1及び第2の差動部66、68の出力(NA3)が接続される第1の差動対トランジスタTC8、TC9を含む。また第1のカレントミラー回路(TC6、TC7)及び第1の差動対トランジスタTC8、TC9に流れるバイアス電流を供給し、N型トランジスタにより構成される第1の電流源トランジスタTC10を含む。
オペアンプOPC2の第2の差動部68は、N型トランジスタTC11、TC12により構成される第2のカレントミラー回路を含む。また一方のP型トランジスタTC14のゲートに差動部64の出力(NA4)が接続され、他方のP型トランジスタTC13のゲートに第1及び第2の差動部66、68の出力(NA3)が接続される第2の差動対トランジスタTC13、TC14を含む。また第2のカレントミラー回路(TC11、TC12)及び第2の差動対トランジスタTC13、TC14に流れるバイアス電流を供給し、P型トランジスタにより構成される第2の電流源トランジスタTC15を含む。
図13によれば、差動部66、68によりレール・ツー・レール型のオペアンプを構成できる。
即ちノードNA4に出力される信号VS4は、その小信号増幅の動作点(増幅中心)が例えば0.8〜1.0Vに設定されている。従ってオペアンプOPC2に差動部66しか設けないと、動作点の下側の電圧範囲で、差動部66のN型トランジスタTC8がオフ状態になり、電源電圧範囲の下側に不感帯領域が形成されてしまうおそれがある。
この点、図13では差動部66の他に差動部68が設けられている。従ってノードNA4の電圧が低くなっても、差動部68のP型トランジスタTC14がオン状態になるため、差動部68を用いて信号VS4を増幅することが可能になる。従って、電源電圧範囲の下側に不感帯領域が形成されるのを防止できる。
一方、オペアンプOPC2に差動部68しか設けないと、動作点の上側の電圧範囲で、差動部68のP型トランジスタTC14がオフ状態になり、電源電圧範囲の上側に不感帯領域が形成されてしまうおそれがある。
この点、図13では差動部68の他に差動部66が設けられている。従ってノードNA4の電圧が高くてなっても、差動部66のN型トランジスタTC8がオン状態になるため、差動部66を用いて信号VS4を増幅することが可能になる。従って、電源電圧範囲の上側に不感帯領域が形成されるのを防止できる。
このように図13の構成によれば、電源電圧範囲の下側及び上側に不感帯領域が形成されるのを防止でき、レール・ツー・レール型のオペアンプを実現できる。
例えばオペアンプOPC2としてレール・ツー・レール型のオペアンプを用いないと、オペアンプOPC1の出力からOPC1の反転入力端子への信号のフィードバックにアンバランスが生じ、オペアンプOPC1による増幅後の信号VS4の中心レベルがシフトしてしまう現象が生じる。特に複数の増幅回路61、62をカスケード接続すると、このシフト量が更に増えてしまう。
この点、オペアンプOPC2としてレール・ツー・レール型のオペアンプを用いれば、動作点を中心に上側も下側もバランス良く増幅できる。従って、オペアンプOPC1の出力からOPC1の反転入力端子への信号のフィードバックのアンバランスを軽減でき、増幅後の信号VS4の中心レベルがシフトしてしまう現象を防止できる。この結果、復調回路90への出力信号の中心レベルがシフトして復調回路90の復調処理が困難になるという事態を防止できる。
また前述したように差動部66、68に流れるバイアス電流IB2は極力絞られている。具体的には電流源トランジスタTC10のW/L(ゲート幅/ゲート長)を極力小さくしている(例えばW/L=1/10〜1/30)。またトランジスタTC15のW/Lを小さくしたり、トランジスタTC15のバイアス電圧BC3を生成するN型トランジスタのW/Lを極力小さくしている。これによりバイアス電流IB2は例えば数nAに絞られる。
従って例えばVDDからトランジスタTC7、TC11を介してVSSに至る経路や、VDDからトランジスタTC15、TC13、TC9、TC10を介してVSSに至る経路などで貫通電流が流れても、その貫通電流は例えば数nA程度であり非常に小さい。従って、図13のように差動部66、68の出力をショート接続しても、貫通電流による悪影響はほとんど無視できる。そして差動部66、68の出力をショート接続することで、オペアンプOPC2に出力部等を設けなくても済むため、低消費電力化や回路の小規模化を図れる。
なおオペアンプOPC2として図14のような一般的なレール・ツー・レール型のオペアンプを採用してもよい。図14のオペアンプによれば、差動部の出力同士はショート接続されないため貫通電流は防止できるが、トランジスタTG15、TG16で構成される出力部や、トランジスタTG11、TG12、TG13、TG14等が必要になるため、消費電流が大きくなると共に回路が大規模化する。この点、図13の構成によれば図14に比べて低消費電力を低減できると共に回路を小規模化できる。
また本実施形態では、オペアンプOPC1のオフセット電圧をVOF1とし、オペアンプOPC2のオフセット電圧をVOF2とした場合に、VOF1>VOF2に設定している。具体的にはオペアンプOPC1を構成する差動対トランジスタTC3、TC4のゲート長をL1、ゲート幅をW1とし、オペアンプOPC2を構成する差動対トランジスタTC8、TC9のゲート長をL2、ゲート幅をW2とした場合に、L1×W1<L2×W2に設定している。
即ち図6では、複数の増幅回路61、62をカスケード接続することで、高い増幅率を得ている。この場合に、各増幅回路61、62のオフセット電圧が大きいと、DCレベルシフタ50によりせっかく設定した動作点がシフトしてしまい、適正な増幅動作を実現できなくなるおそれがある。
この場合に、例えば増幅回路61と62の間にDCカット用のキャパシタを設けて、オフセット電圧の影響を排除する手法も考えられる。しかしながら、この手法によると、DCカット用のキャパシタを充放電するために、オペアンプOPC1の電流供給能力を高める必要があり、消費電力が増加する。
従って、動作点のシフトの防止と低消費電力化を両立するためには、オペアンプOPC2(OPC4)の差動対トランジスタのL×W=L2×W2を大きくして、オフセット電圧を小さくすると共に、増幅回路61、62をDCカット用のキャパシタを介さずに直接接続することが望ましい。
ところが、本実施形態では、前述したように低消費電力化のために、オペアンプOPC1として高速なオペアンプを用い、オペアンプOPC2として低速なオペアンプを用いている。従って、オフセット電圧を小さくするためにオペアンプOPC1の差動対トランジスタTC4のL×W=L1×W1を大きくすると、TC4のドレイン容量も増えてしまい、オペアンプOPC1の高速化の妨げとなる。
一方、オペアンプOPC2については、オフセット電圧を小さくするために差動対トランジスタTC8、TC9のL×W=L2×W2を大きくしても、オペアンプOPC2は元々低速で動作すれば十分であるため、それほど問題が生じない。
そこで本実施形態では、オペアンプOPC2の差動対トランジスタTC8、TC9のL2×W2を大きくして、そのオフセット電圧VOF2を小さくする。一方、オペアンプOPC1の差動対トランジスタTC4のL1×W1については、L2×W2よりも小さくして、そのオフセット電圧をVOF1>VOF2に設定する。これにより、動作点のシフトの防止と低消費電力化を両立できる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源、第2の電源、第1の電圧レベル、第2の電圧レベル等)と共に記載された用語(VSS、VDD、Hレベル、Lレベル等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また受信回路、増幅回路の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。