JP2008282592A - 膜・電極接合体、その製造方法、および固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 発電効率が高く且つ安価に製造し得る円筒状のMEA、その製造方法、および固体高分子形燃料電池を提供する。
【解決手段】 ガス拡散電極18は、炭素繊維が導電性ポリマーで接合されることから体積抵抗値が0.02(Ω・cm)程度の高い導電性を有し、且つその炭素繊維が熱硬化性樹脂によっても接合されることから十分に高い機械的強度を有する。しかも、ガス拡散電極18の厚み方向におけるガス透過率P1に対して軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2が十分に大きいため、そのガス拡散電極18に導かれた気体は、その内部を軸心方向に沿った方向にも多量に流れ、その外周側に設けられた電解質層12に導かれる。そのため、厚み方向におけるガス拡散性の高い支持体を用いなくとも、ガス拡散電極18に気体を導くように構成するだけで、高い導電性を有することと相俟って高い発電効率が得られる。
【選択図】図7
【解決手段】 ガス拡散電極18は、炭素繊維が導電性ポリマーで接合されることから体積抵抗値が0.02(Ω・cm)程度の高い導電性を有し、且つその炭素繊維が熱硬化性樹脂によっても接合されることから十分に高い機械的強度を有する。しかも、ガス拡散電極18の厚み方向におけるガス透過率P1に対して軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2が十分に大きいため、そのガス拡散電極18に導かれた気体は、その内部を軸心方向に沿った方向にも多量に流れ、その外周側に設けられた電解質層12に導かれる。そのため、厚み方向におけるガス拡散性の高い支持体を用いなくとも、ガス拡散電極18に気体を導くように構成するだけで、高い導電性を有することと相俟って高い発電効率が得られる。
【選択図】図7
Description
本発明は、膜・電極接合体、その製造方法、およびその膜・電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池は、燃料として水素、メタノール、化石燃料からの改質水素等の還元剤を用い、空気や酸素を酸化剤として、電池内で燃料を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すものである。そのため、内燃機関に比較して効率が高く、静粛性に優れると共に、大気汚染の原因となるNOx、SOx、粒子状物質(PM)等の排出量が少ないことから、近年、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。例えば、自動車用エンジンの代替、住宅用等の分散型電源や熱電供給システムとしての利用が期待されている。
このような燃料電池は、用いる電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、固体高分子形等に分類される。これらのうちプロトン伝導性の電解質を用いるリン酸形および固体高分子形は、熱力学におけるカルノーサイクルの制限を受けることなく高い効率で運転できるものであり、その理論効率は、25(℃)において83(%)にも達する。特に、固体高分子形燃料電池は、近年電解質膜や触媒技術の発展により性能の向上が著しくなり、低公害自動車用電源や高効率発電方法として注目を集めている。
上記の固体高分子形燃料電池は、板状や円筒状等の高分子電解質層の両面に一対の触媒層を介してガス拡散電極を設けた構造を備えるものであり、通常は、このような膜・電極接合体(Membrane Electrode Assembly:以下、MEA)をセパレータを介して積層したスタック構造で用いられる。上記ガス拡散電極は、触媒層および電解質層表面に燃料ガスや空気を導くと共に、発生した電流を取り出すために、高いガス拡散性能と高い導電性とが共に要求される。従来、このようなガス拡散電極としては、炭素繊維紙(すなわちカーボンペーパー)と称されるものが一般的に用いられている。炭素繊維紙は、カーボンファイバーにポリビニルアルコールやセルロース等をバインダーとして加えて抄紙し、これにフェノール樹脂を含浸させて加圧し、硬化後、窒素雰囲気中において2000(℃)前後の温度で焼成処理を施して樹脂を炭化させたものである(例えば特許文献1を参照。)。
また、炭素繊維紙に代えて、炭素繊維を織った炭素繊維織物(すなわちカーボンクロス)を用いること(例えば特許文献2を参照。)、カーボンクロスにカーボンブラックを塗り込み、触媒層を介して電解質に貼り付けてホットプレスした後に剥がすことにより、炭素短繊維と炭素粒子とが絡み合った電極を得ること(例えば特許文献3を参照。)、アクリロニトリル系耐炎繊維を主成分とする不織布に熱硬化性樹脂を含浸して不活性雰囲気中で炭化させた多孔質シートを用いること(例えば特許文献4を参照。)等が提案されている。また、円筒状のローター内面に網または発泡体を配置し、更にガス拡散電極用分散液を入れて高速回転させることにより、ローター内壁に固形分を分離固着させて、集電体と一体化したガス拡散電極を得ることも提案されている(例えば特許文献5を参照。)。
特開平09−157052号公報
特開平07−105957号公報
特開平08−007897号公報
特開2001−240477号公報
特開2004−143582号公報
ところで、前記MEAは、実用的な規模での使用を考慮すると筒状や管状、例えば円筒形状とすることが好ましい(例えば前記特許文献4を参照。)。筒状エレメントは、平板積層構造のものに比べてシールや大型化が比較的容易である。また、複数個を密接させて束ねて構成することもできるため、装置を小型化できる点でも有利である。
しかしながら、前記炭素繊維紙は、焼成温度が高いため高価であることに加え、全体が炭素で構成されることから硬く且つ脆いので取り扱い性に劣るため円筒状のMEAの電極に適用することは困難である。また、前記炭素繊維織物は、炭素繊維紙に比較すれば柔軟性が高いものの、円筒状のMEAに適用できるほどの柔軟性は備えておらず、繊維が相互に接触しているのに留まる厚み方向では導電性も低い問題がある。また、前記特許文献3に記載の電極もこれらと同様に柔軟性に劣る。
しかも、前記のような円筒状のMEAは、一般に、円筒状の多孔質支持体を用い、その外周面にそれぞれ円筒状のガス拡散電極、触媒層、固体高分子電解質層、触媒層、およびガス拡散電極を順次に積層して構成される。内周側のガス拡散電極には多孔質支持体を通して燃料ガスが供給されるので、可及的に高い発電効率を得るためには、その多孔質支持体の厚み方向におけるガス拡散性が可及的に高いことが望まれる。そのため、多孔質支持体のガス流路形成に精密な設計や製作技術が要求されることから、その製造コストが増大し、延いては固体高分子形燃料電池の製造コストが増大する問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、発電効率が高く且つ安価に製造し得る円筒状のMEA、その製造方法、および固体高分子形燃料電池を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明のMEAの要旨とするところは、円筒状の固体高分子電解質層の内外周に内周側ガス拡散電極および外周側ガス拡散電極がそれぞれ同軸的に備えられた円筒状のMEAであって、(a)前記内周側ガス拡散電極は、炭素繊維と、その炭素繊維を相互に接合する導電性ポリマーおよび熱硬化性樹脂とを含み、厚み方向におけるガス透過率P1と軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2との比P1/P2が1.5以下であることにある。
また、前記目的を達成するための第2発明のMEAの製造方法の要旨とするところは、円筒状の固体高分子電解質層の内外周に内周側ガス拡散電極および外周側ガス拡散電極がそれぞれ同軸的に備えられた円筒状のMEAの製造方法であって、(a)炭素繊維と導電性ポリマーと熱硬化性樹脂とを含む電極用スラリーに円筒状の外周面を有する支持体を浸漬し且つその軸心方向に沿って引き上げることによってその外周面にその電極用スラリーを塗着する製膜工程と、(b)前記電極用スラリーが塗着された前記支持体をその軸心回りに回転させつつその電極用スラリーを乾燥させることによって前記内周側ガス拡散電極を形成する乾燥工程とを、含むことにある。
また、前記目的を達成するための第3発明の固体高分子形燃料電池の要旨とするところは、(a)前記第1発明のMEAと、(b)前記内周側ガス拡散電極の軸心方向における一端部に燃料ガスを供給するための燃料供給路とを、含むことにある。
前記第1発明によれば、MEAを構成する内周側ガス拡散電極は、炭素繊維が導電性ポリマーで接合されることから十分に高い導電性を有し、且つその炭素繊維が熱硬化性樹脂によっても接合されることから十分に高い機械的強度を有する。すなわち、導電性ポリマーで導電性を確保できることから熱硬化性樹脂を炭化させる必要がないので、安価に製造でき且つ機械的強度を確保しつつ導電性を十分に高めることができる。しかも、内周側ガス拡散電極の厚み方向におけるガス透過率P1に対して軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2が十分に大きくP1/P2比が1.5以下であるため、その内周側ガス拡散電極に導かれた気体は、その内部を軸心方向に沿った方向にも多量に流れ、その外周側に設けられた固体高分子電解質層に導かれる。そのため、厚み方向におけるガス拡散性の高い支持体を用いなくとも、内周側ガス拡散電極に気体を導くように構成するだけで、上記のように高い導電性を有することと相俟って十分に高い発電効率が得られる。したがって、発電効率が高く且つ安価に製造し得るMEAが得られる。なお、P1/P2が1.5を越えると、十分な機械的強度が保たれる範囲ではガス透過率P2が小さくなるので高い発電効率が得られない。
また、前記第2発明によれば、製膜工程において、支持体の外周面に炭素繊維、導電性ポリマー、熱硬化性樹脂を含む電極用スラリーがディップコートによって塗着され、乾燥工程において、その支持体を軸心回りに回転させつつその電極用スラリーが乾燥させられる。そのため、この乾燥過程において、炭素繊維が導電性ポリマーおよび熱硬化性樹脂で相互に接合させられるが、軸心回りの回転によって電極用スラリー中の炭素繊維が不規則的に並び、その電極用スラリーの支持体の軸心方向に沿った方向における気孔径が大きくなる。したがって、この電極用スラリーから生成される内周側ガス拡散電極は、炭素繊維が導電性ポリマーで接合されることから十分に高い導電性を有し、且つその炭素繊維が熱硬化性樹脂によっても接合されることから十分に高い機械的強度を有する。しかも、上記のように気孔径が拡大されることによって、内周側ガス拡散電極の軸心方向に沿った方向におけるガス透過率が大きくなるので、その内部を気体が多量に流れ、その外周側に設けられた固体高分子電解質層に容易に導かれる。上記により、厚み方向におけるガス拡散性の高い支持体を用いなくとも、内周側ガス拡散電極に気体を導くように構成するだけで、上記のように高い導電性を有することと相俟って十分に高い発電効率が得られるので、発電効率が高く且つ安価に製造し得るMEAが得られる。
また、前記第3発明によれば、固体高分子形燃料電池は、前記第1発明のMEAの内周側ガス拡散電極の一端部に燃料ガスを供給するための燃料供給路が備えられることから、その燃料ガスは、その内周側ガス拡散電極に好適に導かれ、その内周側ガス拡散電極内をMEAの軸心方向に沿った方向に流れて、その外周側に設けられた固体高分子電解質層に導かれる。そのため、径方向におけるガス拡散性能の高い円筒状の支持体で内周側ガス拡散電極を支持しなくとも、内周側ガス拡散電極内に容易に燃料ガスを供給できることから、その内周側ガス拡散電極が前記のように高い導電性を有することと相俟って、発電効率が高く且つ安価に製造し得る固体高分子形燃料電池が得られる。
因みに、前記特許文献1〜3,5に記載されているガス拡散電極は、平板形の各層を積層して厚み方向に加圧することによって相互に密着させたもので、平板形燃料電池に用いられ、支持体は必須では無く、また、層相互の高い密着性に基づいて円筒形に比較して高い発電特性を有する。そのため、ガス拡散電極の厚み方向におけるガス拡散性能にはある程度の配慮が払われているものの、これに垂直な面に沿った方向におけるガス拡散性能は特に考慮されていない。また、前記特許文献4に記載されているガス拡散電極は、円筒形状の支持体に巻回して用いられるものであるが、このような事情の下に立つ上記各特許文献に記載の発明では、厚み方向に加圧される結果として、面に沿った方向におけるガス拡散性は著しく低くなっているので、円筒形状のMEAに用いられる多孔質支持体には高いガス拡散性能が要求されることになる。
なお、本願において、「円筒状のMEA」は、固体高分子電解質層が円筒形状を成し、その内周側および外周側にそれぞれガス拡散電極が備えられた構造を有するものを意味する。すなわち、後述するように内周部が内周側ガス拡散電極や支持体で中実に構成されることによって全体として円柱状を成す場合も含まれる。また、「円筒状の外周面」というときには、完全な円筒形状を意味するものではなく、気体流通用の貫通孔が備えられる等によってその外周面に凹凸が備えられる場合にも、巨視的に見て円筒状と認められるものであれば含まれる。また、ガス拡散電極と固体高分子電解質層との間には、固体高分子形燃料電池において通常行われているように、適宜の触媒層を備えることができる。また、前記熱硬化性樹脂は炭素繊維を直接的に接合していても、導電性ポリマーを覆う状態で炭素繊維を間接的に接合していてもよいが、直接的に接合されている部分では、接合部の強度が一層高められ、間接的に接合されている部分では、接合部の強度が一層高められると共に導電性ポリマーが露出しないためその耐水性が高められる利点がある。
ここで、好適には、前記第1発明において、前記内周側ガス拡散電極の前記厚み方向におけるガス透過率P1は2500(ml・mm/cm2/min/kPa)以上である。このようにすれば、軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2が1600(ml・mm/cm2/min/kPa)以上と十分に高くなるため、内周側ガス拡散電極の端部に供給された気体が一層多量に固体高分子電解質層に送られるので、発電効率が一層高められる。
また、好適には、前記第2発明において、前記乾燥工程は前記支持体をその軸心回りに1500rpm以上の回転速度で回転させるものである。このようにすれば、回転速度が十分に高いため、軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2が十分に大きくなり、P1/P2を1.5以下にできる。
また、好適には、前記第2発明において、前記電極用スラリーには可塑剤およびフッ化樹脂が含まれる。このようにすれば、炭素繊維や導電性ポリマーの分散性に優れ、十分な耐水性能および撥水性能を有する内周側ガス拡散電極を形成できる。
また、好適には、前記外周側ガス拡散電極は前記内周側ガス拡散電極と同程度の特性を有する。従来から提案されているガス拡散電極においても、厚み方向のガス拡散性能は十分に高いことから、外周側ガス拡散電極の特性や形成方法は特に限定されない。しかしながら、内周側ガス拡散電極と同様な特性を有するものを用いること、同様な方法で形成したものを用いることもでき、そのようにすることが特性面では好ましい。
なお、前記のように構成される内周側ガス拡散電極を製造するに際しては、熱硬化性樹脂が硬化する程度の温度で加熱すれば足りる。そのため、高温の焼成処理が無用であることから、外周側ガス拡散電極を内周側ガス拡散電極と同様に構成する場合において、その内周側ガス拡散電極の外周側に触媒層や高分子電解質層を積層し、その上に外周側ガス拡散電極を構成するための電極用スラリーを塗着して加熱処理を施しても、それら触媒層および高分子電解質層は変質せず、或いは特性上の支障が無い程度の変質に留まる。
また、好適には、前記導電性ポリマーはポリアニリン系またはポリチオフェン系の高導電性ポリマーである。このようにすれば、これらは特に高い導電性を有するため、MEA延いては燃料電池の発電効率が一層高められる。中でも、ポリエチレンジオキシチオフェンが特に高い導電性を有することから好ましい。なお、このような高導電性ポリマーは水溶性のものが多く、耐水性や撥水性に劣る傾向があるが、熱硬化性樹脂で覆われることによってこのような特性が好適に補われる。
また、上記導電性ポリマーの割合は、炭素繊維100(重量部)に対して、2〜20(重量部)の範囲が好ましい。2(重量部)以上であれば抵抗値が十分に低くなり、20(重量部)以下であればガス透過性が十分に高くなる。これらの観点から、導電性ポリマーの割合は、4(重量部)以上が一層好ましく、10(重量部)以下が一層好ましい。
また、好適には、前記第1発明において、前記内周側ガス拡散電極は円筒状の外周面を有する支持体上に備えられる。このようにすれば、ガス拡散性能を何ら要求されない支持体によって内周側ガス拡散電極の機械的強度が補われるので、MEAおよびこれを用いた固体高分子形燃料電池の取り扱い性が高められる。なお、第1発明のMEAは、内周側ガス拡散電極が軸心方向における高いガス拡散性能を有することから、厚み方向に気体が容易に透過する多孔質支持体をその内周側に設けることは必須ではない。例えば、内周側ガス拡散電極を円柱形状に構成し、その端面に燃料ガスを供給するように構成することもできる。しかしながら、多孔質の内周側ガス拡散電極の機械的強度を取り扱いが容易になる程度まで十分に高くすることは困難であるため、その機械的強度を補うための支持体が設けられることが一層好ましい。
また、好適には、上記支持体は、円筒状を成し且つ厚み方向に貫通する多数の気体流路を備えたものである。このようにすれば、支持体の内周側に送り込まれ且つこれを厚み方向に透過する燃料ガスも固体高分子電解質層に供給されるので、内周側ガス拡散電極の端面のみから燃料ガスが供給される場合に比較して、発電効率が一層高められる。
また、好適には、前記内周側ガス拡散電極は軸心方向に沿って伸びる複数本の凹所を外周面に備えた支持体上に備えられる。このようにすれば、内周側ガス拡散電極と支持体との間にそれらの軸心方向に沿って伸びる空隙が形成されるので、その空隙に供給された燃料ガスも内周側ガス拡散電極を透過して固体高分子電解質層に導かれる。したがって、支持体によって内周側ガス拡散電極の機械的強度が補われると共に、固体高分子電解質層に燃料ガスの一層容易に導き得るので、発電効率が高められる利点がある。
また、好適には、前記支持体は集電体として機能するものである。このようにすれば、支持体とは別に集電体を用意する必要がないので、MEAの構造が簡単になる。
また、前記炭素繊維は特に限定されないが、例えば、ポリアクリルニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等を用いることができる。但し、内周側ガス拡散電極の機械的強度を可及的に高くしたい場合には、ポリアクリルニトリル系炭素繊維を用いることが好ましい。一方、電気伝導性を可及的に高くしたい場合には、ピッチ系炭素繊維を用いることが好ましい。
また、好適には、前記炭素繊維は5〜10(μm)の平均直径を有するものである。平均直径が5(μm)以上であれば、繊維が十分に太く折れ難いことから、十分に高い機械的強度が得られる。また、平均直径が10(μm)以下であれば、導電性ポリマーや溶剤との混合が容易である。また、平均直径が10(μm)以下の炭素繊維は製造も容易である。
また、好適には、前記炭素繊維は、平均繊維長が数(μm)〜数百(μm)の範囲内のものが好ましい。炭素繊維相互の絡み合いを十分に多くして機械的強度を高くするためには平均繊維長が長いほど好ましいが、少なくとも数(μm)の平均繊維長が好ましい。一方、平均繊維長が長くなるほど炭素繊維の分散性が低下し、組織にムラのあるガス拡散電極が形成されるので、良好な分散性を得るためには数百(μm)以下の平均繊維長が好ましい。
また、前記熱硬化性樹脂は特に限定されず、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、シリコーン樹脂等の適宜のものを用い得る。これらの樹脂は、耐熱性、機械的強度、柔軟性等を考慮して用途に応じて選択されるが、例えば、機械的強度および耐熱性の点では特にフェノール樹脂が好ましい。
また、熱硬化性樹脂の割合は、炭素繊維100(重量部)に対して1〜10(重量部)の範囲が好ましい。熱硬化性樹脂は、ガス拡散電極の機械的強度や耐水性を確保するための構成成分であるが、自身が導電性を有しておらず、ガス拡散電極の空隙を塞ぐものでもある。そのため、ガス拡散電極の機械的強度や耐水性等を十分に高くするためには、熱硬化性樹脂を1(重量部)以上とすることが好ましい。また、ガス拡散電極のガス透過性や導電性を十分に高くするためには、熱硬化性樹脂を10(重量部)以下に留めることが好ましい。なお、機械的強度や耐水性等を確保する観点からは、熱硬化性樹脂を5(重量部)以上とすることが一層好ましい。
また、好適には、前記ガス拡散電極は、撥水剤を含むものである。このようにすれば、ガス拡散電極に接した水や水蒸気がその内部に侵入することが抑制されるので、耐水性および耐水蒸気性が一層高められる。撥水剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
また、前記固体高分子電解質の種類は特に限定されず、種々のものが用いられ得る。例えば、イオン交換基(-SO3H基等)を有するモノマーの単独重合体または共重合体、イオン交換基を有するモノマーとそのモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、加水分解等の後処理によりイオン交換基に転換し得る官能基(すなわちイオン交換基の前駆的官能基)を有するモノマーの単独重合体、または共重合体(プロトン伝導性高分子前駆体)に同様な後処理を施したもの等が挙げられる。
上記高分子電解質の具体例としては、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂等のパーフルオロ型のプロトン伝導性高分子、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂膜、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体膜、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE共重合体膜、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)スルホン酸膜、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ATBS)膜、炭化水素系膜等が例示される。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例であるMEA10の全体を示す斜視図である。MEA10は全体が円柱状を成すもので、図2にその軸心方向に垂直な断面を示す。これら図1、図2において、MEA10は、薄い円筒状を成す電解質層12と、その内外周両面に設けられた触媒層14,16と、触媒層14の内周面に設けられた内周側のガス拡散電極18と、触媒層16の外周面に設けられた外周側のガス拡散電極20とを備えている。また、ガス拡散電極18の内周にはこれに密着した状態で集電体22が備えられている。この集電体22は、例えば直径が2(mm)程度で導電性の高い金属から成るものである。
上記の電解質膜12は、例えばNafion(デュポン社の登録商標)等のプロトン導電性電解質から成るもので、例えば200(μm)程度の厚さ寸法を備えている。
また、上記の触媒層14,16は、例えば球状の炭素粉末に白金等の触媒を担持させたPt担持カーボンブラックから成るものである。これは、例えば田中貴金属工業(株)から市販されているものを用い得る。触媒層14,16の厚さ寸法は、例えば50(μm)程度である。
また、上記のガス拡散電極18は例えば1(mm)程度、ガス拡散電極20は100(μm)程度の厚さ寸法をそれぞれ備え、その表面と裏面(すなわち触媒層14,16側の一面)との間、およびMEA10の軸心方向に沿って、何れも容易に気体が流通し得るように構成された多孔質層である。
上記のガス拡散電極18,20は、例えば、炭素繊維と、導電性ポリマーと、熱硬化性樹脂と、撥水剤とから構成されている。炭素繊維は、例えば、直径10〜20(μm)程度の範囲内、例えば10(μm)程度で、繊維長が50〜200(μm)程度の範囲内、例えば120(μm)程度のものである。また、導電性ポリマーは、例えばポリエチレンジオキシチオフェン等から成るものである。また、熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂から成るものである。また、撥水剤は例えばPTFEである。
また、ガス拡散電極18,20内において、炭素繊維は、各繊維が相互に絡み合い、それらの接触点において導電性ポリマーおよび熱硬化性樹脂によって接合されている。ある部分においては導電性ポリマーのみで接合され、他の部分においては、導電性ポリマーで接合されると共にその導電性ポリマーが熱硬化性樹脂で覆われた状態で接合され、また、更に他の部分においては、熱硬化性樹脂のみで接合されている。導電性ポリマーで接合されている部分はガス拡散電極18,20の全体に亘って存在し、この結果、ガス拡散電極18,20は、厚み方向および面方向の何れにおいても、例えば体積抵抗値が0.02(Ω・cm)程度の高い導電性を備えている。
なお、導電性ポリマーが熱硬化性樹脂で覆われてる部分では、耐水性および耐水蒸気性が不十分な導電性ポリマーが水が水蒸気から保護されることになる。そのため、ガス拡散電極18,20の耐水性および耐水蒸気性が高められている。また、熱硬化性樹脂のみで炭素繊維が直接接合された部分では、導電性に劣るものの接合部分の高い機械的強度が得られるため、ガス拡散電極18,20の機械的強度が高められることになる。
また、図3に400倍に拡大した電子顕微鏡写真を示すように、ガス拡散電極18,20は、炭素繊維が不規則に並んだ組織を備えている。図3の左右方向がMEA10の軸心方向に一致し、炭素繊維は概ねその軸心方向に沿って伸びる向きとなっているが、異なる向きのものも散在すると共に、密度も不均一である。この結果、このガス拡散電極18,20は、図3の上下方向に一致する厚み方向において高いガス透過率を有するだけでなく、左右方向に一致するMEA10の軸心方向にも比較的高いガス透過率を有する。厚み方向のガス透過率P1は、例えば2500〜3000(ml・mm/cm2/min/kPa)の範囲内、例えば2690(ml・mm/cm2/min/kPa)程度で、軸心方向のガス透過率P2は、例えば1600〜3000(ml・mm/cm2/min/kPa)の範囲内、例えば2480(ml・mm/cm2/min/kPa)程度である。したがって、本実施例においては、R=P1/P2=1.08程度になっている。
上記のMEA10は、例えば図4に示されるようにガス拡散電極18,20が形成される。混合工程S1では、先ず、炭素繊維と、導電性ポリマーと、フェノール系熱硬化性樹脂と、PTFEと、可塑剤と、溶媒とを用意し、例えばスターラ等の適宜の攪拌装置を用いて、30時間程度混合する。これらの構成割合は、例えば、炭素繊維を100(重量部)とすると、導電性ポリマーが2〜10(重量部)の範囲内、例えば5(重量部)、熱硬化性樹脂が1〜10(重量部)の範囲内、例えば3(重量部)、PTFEが1〜5(重量部)の範囲内、例えば1(重量部)、可塑剤が20〜30(重量部)の範囲内、例えば30(重量部)、溶媒が600〜700(重量部)の範囲内、例えば600(重量部)である。なお、可塑剤は例えばエチレングリコールを、溶媒は例えば1-プロパノールを用いる。次いで、混合した原料に例えば30分程度の超音波分散処理を施す。次いで、例えばスターラ等を用いて更に30分程度混合する。これにより、電極用スラリーが得られる。この混合工程S1は、炭素繊維を折損しないように弱い混合であることが好ましく、ボールミル等を用いた強い混合は不適当である。
次いで、製膜工程S2においては、前記集電体22を構成するための金属支持体を用意し、上記のようにして調製した電極用スラリーにディッピングして、その外周面に製膜する。電極用スラリーからの引き上げ速度は、例えば3(cm/s)程度である。また、電極用スラリーからの引き上げ方向は鉛直方向である。
次いで、回転乾燥工程S3では、電極用スラリーが塗着された金属支持体すなわち集電体22をその軸心方向が水平方向となる向きでその軸心回りに回転させつつ乾燥処理を施す。回転速度は例えば2500rpm程度で、乾燥温度は150(℃)程度、乾燥時間は3時間程度である。これら乾燥温度および乾燥時間は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜変更される。これにより、熱硬化性樹脂が硬化してガス拡散電極18が形成される。
上記のようにして内周側のガス拡散電極18を形成した後、触媒層14、電解質層12、触媒層16を順次に形成する。これらの形成は、例えばスラリーをそれぞれ用意して、これにディッピングしてスラリーを塗着し、乾燥処理を施すことを繰り返すことで行われる。その後、ガス拡散電極18の場合と同様にして、外周側のガス拡散電極20を形成することにより、前記MEA10が得られる。
下記の表1は、上記のようにして形成したガス拡散電極18,20(実施例1)と対比する目的で、前記回転乾燥工程S3に代えて集電体22を回転させない乾燥工程を実施した比較例1のガス透過特性を評価した結果を示したものである。比較例1は、乾燥時に回転をさせなかった他は実施例1と同様な工程でガス拡散電極18を形成した。表1において、「横方向ガス透過率P2」は、前記MEA10の軸心方向におけるガス透過率で、集電体22上に内周側のガス拡散電極18のみを形成した状態で、その外周面を熱収縮チューブで塞ぎ、そのガス拡散電極18の端面から水素ガスを供給して反対側の端面に透過する速度を測定した。また、「厚み方向ガス透過率」は、ガス拡散電極18の外周面が露出した状態で、一端面を封止し、他端面から水素ガスを供給して外周面に透過する速度を測定した。
上記の測定結果に示されるように、回転乾燥を行った実施例1では、横方向ガス透過率P2が2480(ml・mm/cm2/min/kPa)、厚み方向ガス透過率P1が2690(ml・mm/cm2/min/kPa)で、比P1/P2が1.08と小さい値であったのに対し、回転乾燥を行わなかった比較例1では、横方向ガス透過率P2が1200(ml・mm/cm2/min/kPa)に留まり、厚み方向ガス透過率P1が実施例と同程度であったので、P1/P2は2.35と大きな値になった。
上記比較例1のガス拡散電極の電子顕微鏡写真を図5に示す。前記図3と対比すれば明らかなように、比較例1では炭素繊維の向きが揃い且つ略均一に分布して、大きな空隙は形成されていない。このような相違が横方向ガス透過率P2に影響を及ぼしたものと考えられる。なお、下記の表2は、従来から平板形燃料電池に用いられているカーボンクロス(参考例1)およびカーボンペーパー(参考例2)から成るガス拡散電極について、同様に厚み方向のガス透過率とこれに垂直な面方向に沿った方向のガス透過率(横方向ガス透過率)とを比較したものである。この評価結果に示されるように、従来から用いられているこれらのガス拡散電極では、横方向のガス透過率は極めて小さい値に留まる。
下記の表3は、繊維長が400(μm)の炭素繊維を前記の繊維長が120(μm)の炭素繊維に代えて用いると共に、導電性ポリマーを4(重量部)とした他は、前記実施例1と同様にして前記ガス拡散電極18,20を形成した実施例2と、その実施例2に対して乾燥時に回転を施さない他は同様にガス拡散電極を形成した比較例2とを評価した結果を示したものである。このように、繊維長が400(μm)の炭素繊維を用いた場合にも、120(μm)の炭素繊維を用いた場合と略同等の結果が得られており、少なくとも100〜500(μm)程度の繊維長の範囲では同様な結果を期待できる。
図6は、前記MEA10を用いた燃料電池30の構成を模式的に示す図である。図6において、燃料電池30は、燃料供給源32から燃料として例えば水素がアノード側加湿槽34を経由してアノード側のガス拡散電極18に供給される。特に、この構成では、燃料供給路42がガス拡散電極18の端面に接続されており、そのガス拡散電極18の端面から直に水素が供給されるようになっている。すなわち、前記図2に断面が示されるように、MEA10はガス拡散電極18の内周側に燃料供給路が設けられていないため、その端面から水素が供給される。
このようにして水素が供給されると、ガス拡散電極18は、前述したように軸心方向におけるガス透過率が極めて高いことから、水素は、ガス拡散電極18内をその軸心方向に速やかに流れる。そして、触媒が存在する三相界面において、ガス拡散電極18上では下記(1)式の酸化反応が生じ、プロトンH+と電子e-が発生する。プロトンは電解質層12内を通ってカソード側のガス拡散電極20に向かって流れ、電子は電極18に接続された図示しない端子から取り出され、外部回路を経由して負荷36に流れる。負荷36に供給された電子は、更に外部回路を経由してカソード側のガス拡散電極20に向かう。そして、そのガス拡散電極20上において、プロトンおよび電子が、酸素供給源(或いは空気供給源)38からカソード側加湿槽40を経由して供給された酸素との間で下記(2)式の還元反応を発生させる。なお、燃料側は水素に代えてメタノールを供給してもよく、その場合の酸化反応を下記(3)式に示す。
3H2 → 6H+ + 6e- ・・・(1)
3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2O ・・・(2)
CH3OH + H2O → 6H+ + CO2 + 6e- ・・・(3)
3H2 → 6H+ + 6e- ・・・(1)
3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2O ・・・(2)
CH3OH + H2O → 6H+ + CO2 + 6e- ・・・(3)
図7は、上記のように構成される燃料電池30の電流密度および電圧を、前記P1/P2(=R)が1.1〜2.0の範囲で異なるガス拡散電極18,20を形成して、それぞれについて評価した結果をまとめたものである。ガス拡散電極18,20のR値は、前記回転乾燥工程S3における回転速度を変更することで変化させた。回転数が高くなるほどR値が小さくなる傾向にある。
図7に示す評価結果によれば、R=1.7、2.0の試験体を用いた燃料電池では、電流密度を増大させると急激にセル電圧が低下し、出力が得られない。これに対して、R=1.5以下の試験体では、電流密度が300(mA/cm2)程度に増大するまで緩やかにセル電圧が低下し、例えば、0.6(V)のセル電圧で50(mA/cm2)程度の電流密度が得られる。したがって、高い発電効率を得るためには、R≦1.5となるようにガス拡散電極18,20を形成する必要がある。
上述したように、本実施例によれば、MEA10を構成するガス拡散電極18は、炭素繊維が導電性ポリマーで接合されることから体積抵抗値が0.02(Ω・cm)程度の高い導電性を有し、且つその炭素繊維が熱硬化性樹脂によっても接合されることから十分に高い機械的強度を有する。しかも、ガス拡散電極18の厚み方向におけるガス透過率P1に対して軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2が十分に大きくP1/P2比が1.5以下であるため、そのガス拡散電極18に導かれた気体は、その内部を軸心方向に沿った方向にも多量に流れ、その外周側に設けられた電解質層12に導かれる。そのため、厚み方向におけるガス拡散性の高い支持体を用いなくとも、ガス拡散電極18に気体を導くように構成するだけで、上記のように高い導電性を有することと相俟って高い発電効率が得られる。
また、本実施例のMEA10は、製膜工程S2において、集電体22の外周面に炭素繊維、導電性ポリマー、熱硬化性樹脂を含む電極用スラリーがディップコートによって塗着され、回転乾燥工程S3において、その集電体22を軸心回りに回転させつつその電極用スラリーが乾燥させられる。そのため、軸心回りの回転によって電極用スラリー中の炭素繊維が不規則的に並び、その電極用スラリーの支持体の軸心方向に沿った方向における気孔径が大きくなるので、形成されるガス拡散電極18は、その方向におけるガス透過率が大きくなり、その内部を気体が多量に流れ、その外周側に設けられた電解質層12に容易に導かれる。そのため、厚み方向におけるガス拡散性の高い支持体を用いなくとも、ガス拡散電極18に気体を導くように構成するだけで、高い導電性を有することと相俟って十分に高い発電効率が得られるので、発電効率が高く且つ安価に製造し得るMEA10が得られる。
また、本実施例の燃料電池30によれば、MEA10のガス拡散電極18の一端部に水素を供給するための燃料供給路42が備えられることから、水素はそのガス拡散電極18に導かれ、そのガス拡散電極18内をMEA10の軸心方向に沿った方向に流れて、その外周側に設けられた電解質層12に導かれる。そのため、径方向におけるガス拡散性能の高い円筒状の支持体でガス拡散電極18を支持しなくとも、ガス拡散電極18内に容易に水素を供給できることから、そのガス拡散電極18が高い導電性を有することと相俟って、発電効率が高く且つ安価に製造し得る燃料電池30が得られる。
図8は、他のMEA50の断面構造を模式的に示した図である。図8において、MEA50には、前記MEA10の円柱状の集電体22に代えて集電体52が備えられたものであるが、他の構成要素はMEA10と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。集電体52は、略円柱形状を成すもので、その外周面には軸心方向に沿って伸びる例えば6本の溝(すなわち凹所)54が周方向に一様な間隔で設けられている。そのため、集電体52と内周側のガス拡散電極18との間には、それらの軸心方向に沿って伸びる空隙56が形成されている。
上記のように構成されたMEA50も、前記図6に示されるような燃料電池を構成して用いられる。このとき、MEA50においては、上述したようにガス拡散電極18の内周側に空隙56が形成されていることから、前記図6に示されるように燃料ガスを供給するに際して、その燃料ガスは、端面からガス拡散電極18内部に導かれるだけでなく、その空隙56内にも導かれ軸心方向の他端に向かう過程において、ガス拡散電極18の内周面からその内部に導かれる。そのため、前記のように円柱状の集電体22が用いられたMEA10に比較して、電解質層12に導かれる燃料ガス量が多くなるので、一層高い発電効率が得られる。
なお、上記のようなMEA50を製造するに際しては、例えば、集電体52の外周面の溝54を昇華性の高い有機物やパラフィン等を充填して、外周面を略円筒面と成してから前記製膜工程S2を実施する。乾燥後、或いは乾燥過程でその有機物を消失させ或いはパラフィン等の場合は軟化させて溝54から排出すれば、空隙56を備えた膜形成状態を得ることができる。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
10:MEA、12:電解質膜、14,16:触媒層、18,20:ガス拡散電極、22:集電体、30:燃料電池、32:燃料供給源、34:アノード側加湿槽、36:負荷、38:酸素供給源、40:カソード側加湿槽、42:燃料供給路
Claims (5)
- 円筒状の固体高分子電解質層の内外周に内周側ガス拡散電極および外周側ガス拡散電極がそれぞれ同軸的に備えられた円筒状の膜・電極接合体であって、
前記内周側ガス拡散電極は、炭素繊維と、その炭素繊維を相互に接合する導電性ポリマーおよび熱硬化性樹脂とを含み、厚み方向におけるガス透過率P1と軸心方向に沿った方向におけるガス透過率P2との比P1/P2が1.5以下であることを特徴とする膜・電極接合体。 - 前記内周側ガス拡散電極の前記厚み方向におけるガス透過率P1は2500(ml・mm/cm2/min/kPa)以上である請求項1の膜・電極接合体。
- 円筒状の固体高分子電解質層の内外周に内周側ガス拡散電極および外周側ガス拡散電極がそれぞれ同軸的に備えられた円筒状の膜・電極接合体の製造方法であって、
炭素繊維と導電性ポリマーと熱硬化性樹脂とを含む電極用スラリーに円筒状の外周面を有する支持体を浸漬し且つその軸心方向に沿って引き上げることによってその外周面にその電極用スラリーを塗着する製膜工程と、
前記電極用スラリーが塗着された前記支持体をその軸心回りに回転させつつその電極用スラリーを乾燥させることによって前記内周側ガス拡散電極を形成する乾燥工程と
を、含むことを特徴とする膜・電極接合体の製造方法。 - 前記乾燥工程は前記支持体をその軸心回りに1500rpm以上の回転速度で回転させるものである請求項3の膜・電極接合体の製造方法。
- 前記請求項1に記載の膜・電極接合体と、
前記内周側ガス拡散電極の軸心方向における一端部に燃料ガスを供給するための燃料供給路と
を、含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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