JP2008281184A - 遊星ローラねじ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遊星ローラねじ装置の作動効率を向上させて、遊星ローラねじ装置の寿命の延長を図る手段を提供する。
【解決手段】中央ねじ軸2と、ナット4と、遊星ピニオンギア8を有し、軸ねじ3とナットねじ5とに噛合うローラねじ9を形成した複数の遊星ローラ6と、遊星ピニオンギア8に噛合うリングギア13とを備え、リングギア13がナット4に固定され、リングギア13が固定されない側の中央ねじ軸2が遊星ローラ6と交差噛合である場合に、軸ねじ3のねじ面を円弧にして、ローラねじ9と交差噛合する軸ねじ3のねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量をΔZsを小さくする。
【選択図】 図9
【解決手段】中央ねじ軸2と、ナット4と、遊星ピニオンギア8を有し、軸ねじ3とナットねじ5とに噛合うローラねじ9を形成した複数の遊星ローラ6と、遊星ピニオンギア8に噛合うリングギア13とを備え、リングギア13がナット4に固定され、リングギア13が固定されない側の中央ねじ軸2が遊星ローラ6と交差噛合である場合に、軸ねじ3のねじ面を円弧にして、ローラねじ9と交差噛合する軸ねじ3のねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量をΔZsを小さくする。
【選択図】 図9
Description
本発明は、遊星ローラねじ装置全般に関するが、特に射出成形機やプレス成形機等の高負荷用途、およびブレーキ機構やステアリング機構等の自動車用アクチュエータに用いられる遊星ローラねじ装置に関する。
従来の遊星ローラねじ装置は、外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面に多条のナットねじを形成した円筒状のナットとの間に、これらのねじと噛合うローラねじを有する複数の遊星ローラの突起軸部を保持器に保持させて配置し、遊星ローラの両側に設けた歯車をナットに固定したリングギアに噛合わせて遊星ローラの中央ねじ軸周りの公転を案内し、ナットねじとローラねじのねじ面傾斜角を同一とし、軸ねじの溝形状をV字状としたV字溝としてこれに接触する遊星ローラのねじ山のねじ面を遊星ローラの軸芯を中心とした円弧面として構成している。
また、外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面に軸ねじと同じ捻れ方向を有するナットねじを形成した円筒状のナットとの間に、これらのねじと噛合う軸ねじと逆の捻れ方向を有するローラねじを形成した複数の遊星ローラを配置し、遊星ローラの両側に設けた歯車を中央ねじ軸に形成したリングギアに噛合わせて遊星ローラの中央ねじ軸周りの公転を案内しているものもある(例えば、特許文献1参照。)。
このような遊星ローラねじ装置は、遊星ローラのスピン滑りによる摩擦損失が一つの要因となって、ボールねじ装置に較べて作動効率が低下することが一般に知られている(例えば特許文献2参照。)。
なお、特許文献1の遊星ローラねじ装置は、上段に示した内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置の場合においては、リード精度を確保するために、ナットねじとローラねじおよび軸ねじの捩れ方向を全て同じ方向にすると、ローラねじと軸ねじとの接触部においては溝筋が交差する交差噛合の状態になり、下段に示した外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置の場合においては、軸ねじとナットねじとの捩れ方向を同じにし、軸ねじとローラねじとの捩れ方向を逆にしているために、ナットねじとローラねじとの間で交差噛合の状態になるので、交差噛合の接触部におけるねじ山同士の干渉が生じ、そのHerzの接触理論による接触楕円の面積が狭くなって、ねじ面の摩耗が促進され、耐久性が低下するという問題が生ずる。
なお、特許文献1の遊星ローラねじ装置は、上段に示した内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置の場合においては、リード精度を確保するために、ナットねじとローラねじおよび軸ねじの捩れ方向を全て同じ方向にすると、ローラねじと軸ねじとの接触部においては溝筋が交差する交差噛合の状態になり、下段に示した外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置の場合においては、軸ねじとナットねじとの捩れ方向を同じにし、軸ねじとローラねじとの捩れ方向を逆にしているために、ナットねじとローラねじとの間で交差噛合の状態になるので、交差噛合の接触部におけるねじ山同士の干渉が生じ、そのHerzの接触理論による接触楕円の面積が狭くなって、ねじ面の摩耗が促進され、耐久性が低下するという問題が生ずる。
このため、発明者は、未公開ではあるが、特願2006−286534(以下、前の出願という。)において、リングギアを設けていない側のねじ呼び有効径を修正して、交差噛合に伴うねじ面同士の干渉を修正する方法、および接触中心をねじ呼び有効径に保ったまま、交差噛合に伴うねじ面同士のねじ面傾斜角の角度誤差を修正する方法により、交差噛合のねじ面同士の接触部における干渉量を許容範囲にして遊星ローラねじ装置の耐久性を向上させる手段を提案している。
米国特許第2683379号明細書(第2欄−第7欄、第1図、第5図、第10図)
大塚二郎他2名、「遊星ねじの基礎的研究−その構造と見掛け摩擦計数−」、精密工学会誌、社団法人精密工学会、1986年1月、第52巻、第1号、p.176〜180
しかしながら、上述した従来の特許文献1の遊星ローラねじ装置は、特許文献2に示されるように、ボールねじ装置に較べて作動効率が低下するため、接触部における滑りにより、接触部の温度が上昇して潤滑不良が生ずる結果として遊星ローラねじ装置の寿命が早期に失われるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、遊星ローラねじ装置の作動効率を向上させて、遊星ローラねじ装置の寿命の延長を図る手段を提供することを目的とする。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、遊星ローラねじ装置の作動効率を向上させて、遊星ローラねじ装置の寿命の延長を図る手段を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、少なくとも1箇所に遊星ピニオンギアを有し、外周面に軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを形成した複数の遊星ローラと、前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアとを備え、前記リングギアが、前記中央ねじ軸および前記ナットのいずれか一方に固定され、前記リングギアが固定されない側のナット、または中央ねじ軸が遊星ローラと交差噛合である場合に、前記軸ねじの軸ねじ呼び有効径をDs、前記ナットねじのナットねじ呼び有効径をDn、前記ローラねじのローラねじ呼び有効径をDr、前記軸ねじの軸条数をJs、前記ナットねじのナット条数をJn、前記ローラねじのローラ条数をJr、前記遊星ピニオンギアの歯数をZp、前記リングギアの歯数をZr、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの呼び有効径をDc、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの条数をJcとしたときに、Dn=2Dr+Ds、Dc/Dr=Zr/Zp=Jc/Jr=N(Nは正の整数)なる関係を有する遊星ローラねじ装置において、前記ローラねじと交差噛合する軸ねじ、またはナットねじとのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量を100μm以内としたことを特徴とする。
これにより、本発明は、遊星ローラねじ装置の交差噛合における接触中心のZ方向の座標位置を、ねじ呼び有効径同士の接点位置である座標原点に近づけることができ、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減して、遊星ローラねじ装置の作動効率を向上させることができ、潤滑剤の寿命を延長させることができると共に、遊星ローラねじ装置の寿命の延長を図ることができるという効果が得られる。
以下に、図面を参照して本発明による遊星ローラねじ装置の実施例について説明する。
まず、本説明に用いる主な用語について、以下に説明する。
1)接触中心:遊星ローラねじ装置の組立て状態において、遊星ローラの互いの位置および角度を変えないで、一方のねじ面の表面を他方のねじ面の表面に接触させたときに形成される接触楕円の中心をいう。
まず、本説明に用いる主な用語について、以下に説明する。
1)接触中心:遊星ローラねじ装置の組立て状態において、遊星ローラの互いの位置および角度を変えないで、一方のねじ面の表面を他方のねじ面の表面に接触させたときに形成される接触楕円の中心をいう。
2)ねじ呼び有効径:ねじの捩れ方向に直交する方向の断面、つまり図1に示すリード角に直交する方向の断面(溝筋直角断面という。)において、ねじ部を、その軸芯に中心線が一致する円筒面で切断した場合に実部と空間部の距離が等しくなる円筒面の直径をいう。
この場合に、特許文献1の上段に示したナットに設けたリングギアに遊星ローラの遊星ピニオンギアが噛合う内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置においては、遊星ピニオンギアを有する遊星ローラのローラねじのローラねじ呼び有効径Drと、リングギアが設けられたナットのナットねじのナットねじ呼び有効径Dnとは、遊星ピニオンギアとリングギアとの噛合におけるそれぞれの有効径と同一になり、リングギアが設けられていない中央ねじ軸の軸ねじの軸ねじ呼び有効径Dsは、
Ds=Dn−2Dr ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
で求められる。
この場合に、特許文献1の上段に示したナットに設けたリングギアに遊星ローラの遊星ピニオンギアが噛合う内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置においては、遊星ピニオンギアを有する遊星ローラのローラねじのローラねじ呼び有効径Drと、リングギアが設けられたナットのナットねじのナットねじ呼び有効径Dnとは、遊星ピニオンギアとリングギアとの噛合におけるそれぞれの有効径と同一になり、リングギアが設けられていない中央ねじ軸の軸ねじの軸ねじ呼び有効径Dsは、
Ds=Dn−2Dr ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
で求められる。
また、特許文献1の下段に示した、中央ねじ軸に設けたリングギアに遊星ローラの遊星ピニオンギアが噛合う外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置においては、遊星ピニオンギアを有する遊星ローラのローラねじ呼び有効径Drと、リングギアが設けられた中央ねじ軸の軸ねじ呼び有効径Dsとは、遊星ピニオンギアとリングギアとの噛合におけるそれぞれの有効径と同一になり、リングギアが設けられていないナットのナットねじ呼び有効径Dnは、
Dn=Ds+2Dr ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
で求められる。
Dn=Ds+2Dr ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
で求められる。
3)交差噛合:噛合う2つのねじの溝筋が並行でない噛合をいう。
この場合に、雄ねじ同士の嵌合、つまり中央ねじ軸の軸ねじと遊星ローラのローラねじとの嵌合の場合は、捻れ方向が逆方向でリード角の絶対値が同一の場合を除く全ての組合せで生じ、雄ねじと雌ねじとの嵌合、つまり遊星ローラのローラねじとナットのナットねじとの嵌合の場合は、捻れ方向が同方向でリード角が同一の場合を除く全ての組合せで生じる。
この場合に、雄ねじ同士の嵌合、つまり中央ねじ軸の軸ねじと遊星ローラのローラねじとの嵌合の場合は、捻れ方向が逆方向でリード角の絶対値が同一の場合を除く全ての組合せで生じ、雄ねじと雌ねじとの嵌合、つまり遊星ローラのローラねじとナットのナットねじとの嵌合の場合は、捻れ方向が同方向でリード角が同一の場合を除く全ての組合せで生じる。
4)遊星ローラねじ形状定数α:
α=Dn/Dr=Ds/Dr+2=N(Nは、正の整数) ・・・・(3)
で定義され、軸ねじのリードをLs、ナットねじのリードをLn、ローラねじのリードをLrとすると、
Ls=Ln=α・Lr ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
の関係にある。
α=Dn/Dr=Ds/Dr+2=N(Nは、正の整数) ・・・・(3)
で定義され、軸ねじのリードをLs、ナットねじのリードをLn、ローラねじのリードをLrとすると、
Ls=Ln=α・Lr ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
の関係にある。
以下に、図2、図3を用い、本説明で用いる遊星ローラねじ装置の構成について説明する。
図2は実施例1の内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置を示す断面図、図3は実施例1の外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置を示す断面図である。
図2において、1は内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置であり、遊星ローラ6と中央ねじ軸2とが交差噛合となる遊星ローラねじ装置の例を示すものである。
図2は実施例1の内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置を示す断面図、図3は実施例1の外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置を示す断面図である。
図2において、1は内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置であり、遊星ローラ6と中央ねじ軸2とが交差噛合となる遊星ローラねじ装置の例を示すものである。
2は遊星ローラねじ装置1の中央ねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その外周面には1条または多条の軸ねじ3が所定のピッチPおよびリードで螺旋状に形成されている。
4は遊星ローラねじ装置1のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には多条のナットねじ5が所定のリードで軸ねじ3と同じピッチPに形成されている。
4は遊星ローラねじ装置1のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には多条のナットねじ5が所定のリードで軸ねじ3と同じピッチPに形成されている。
6は遊星ローラであり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、両端部に円柱状の突起軸部7が形成されており、両方の突起軸部7の内側に隣接して遊星ローラ6と同軸に歯車を形成した遊星ピニオンギア8が設けられており、両方の遊星ピニオンギア8の間の外周面には軸ねじ3とナットねじ5とに嵌合する1条または多条のローラねじ9が所定のリードで軸ねじ3と同じピッチPに形成されている。
上記の軸ねじ3、ナットねじ5およびローラねじ9の捩れ方向はいずれも同じ方向であり、右捩れまたは左捩れで各ねじが形成されている。
また、ナットねじ5とローラねじ9とは同じリード角に形成され、その噛合において交差噛合が生じないように構成され、ローラねじ9と軸ねじ3との噛合は、交差噛合となっている。
また、ナットねじ5とローラねじ9とは同じリード角に形成され、その噛合において交差噛合が生じないように構成され、ローラねじ9と軸ねじ3との噛合は、交差噛合となっている。
10は保持器であり、樹脂材料や金属材料で製作された円環状部材であって、遊星ローラ6の突起軸部7が嵌合する保持孔11が所定の角度ピッチで複数設けられており、遊星ローラ6の突起軸部7を保持孔11で保持して中央ねじ軸2とナット4の間に複数の遊星ローラ6を所定の角度ピッチで配置する。
12はC型輪止め等の抜止部材であり、保持器10の外側でナット4の内周面に配置され、保持器10の軸方向の移動を制限する。
12はC型輪止め等の抜止部材であり、保持器10の外側でナット4の内周面に配置され、保持器10の軸方向の移動を制限する。
13はリングギアであり、保持器10に保持された小径の歯車である遊星ピニオンギア8に噛合う内歯の歯車であって、ナット4の内周面に嵌合して固定され、遊星ピニオンギア8がリングギア13に噛合うことにより遊星ローラ6の公転を案内する。
上記の中央ねじ軸2の軸ねじ3とナット4のナットねじ5とに、保持器10に保持されてリングギア13と遊星ピニオンギア8により公転を案内された遊星ローラ6のローラねじ9が嵌合し、ナット4を回転させることによって遊星ローラ6が中央ねじ軸2の周りを自転しながら公転して中央ねじ軸2を軸方向に移動させる。これによりナット4の回転運動が中央ねじ軸2の直線運動に変換される。
上記の中央ねじ軸2の軸ねじ3とナット4のナットねじ5とに、保持器10に保持されてリングギア13と遊星ピニオンギア8により公転を案内された遊星ローラ6のローラねじ9が嵌合し、ナット4を回転させることによって遊星ローラ6が中央ねじ軸2の周りを自転しながら公転して中央ねじ軸2を軸方向に移動させる。これによりナット4の回転運動が中央ねじ軸2の直線運動に変換される。
図3において、21は外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置であり、遊星ローラ6とナット24とが交差噛合となる遊星ローラねじ装置の例を示すものである。
なお、上記内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
22は遊星ローラねじ装置21の中央ねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その1箇所の外周面には遊星ローラ6の遊星ピニオンギア8間のローラねじ10に噛合う1条または多条の軸ねじ33が所定のピッチPおよびリードで螺旋状に形成されている。
なお、上記内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
22は遊星ローラねじ装置21の中央ねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その1箇所の外周面には遊星ローラ6の遊星ピニオンギア8間のローラねじ10に噛合う1条または多条の軸ねじ33が所定のピッチPおよびリードで螺旋状に形成されている。
24は遊星ローラねじ装置21のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された上記実施例1のナット4より長い長さの円筒状部材であって、その内周面には多条のナットねじ25が所定のリードで軸ねじ33と同じピッチPに形成されている。
本実施例の遊星ローラ6は、上記内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1の遊星ローラ6と同様の遊星ローラであるが、そのローラねじ9の捩れ方向が軸ねじ33と逆方向で、軸ねじ33と同じピッチPおよび絶対値が同じリード角に形成されており、軸ねじ33との嵌合において交差噛合が生じないように構成されている。
本実施例の遊星ローラ6は、上記内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1の遊星ローラ6と同様の遊星ローラであるが、そのローラねじ9の捩れ方向が軸ねじ33と逆方向で、軸ねじ33と同じピッチPおよび絶対値が同じリード角に形成されており、軸ねじ33との嵌合において交差噛合が生じないように構成されている。
また、ナットねじ25の捩れ方向は、軸ねじ33と同じ方向であり、それぞれ右捩れまたは左捩れで各ねじが形成されており、ローラねじ9とナットねじ25との噛合は交差噛合となっている。
30は保持器であり、上記実施例1の保持器10と同様に、遊星ローラ6の突起軸部7が嵌合する複数の保持孔11が設けられており、中央ねじ軸22とナット24の間に複数の遊星ローラ6を所定の角度ピッチで配置する。
30は保持器であり、上記実施例1の保持器10と同様に、遊星ローラ6の突起軸部7が嵌合する複数の保持孔11が設けられており、中央ねじ軸22とナット24の間に複数の遊星ローラ6を所定の角度ピッチで配置する。
32はC型輪止め等の抜止部材であり、保持器30の外側の中央ねじ軸22の外周面に設けられた係止溝32aに係止され、保持器30の軸方向の移動を制限する。
33はリングギアであり、保持器30に保持された小径の歯車である遊星ピニオンギア8に噛合う外歯の歯車であって、中央ねじ軸22の外周面の保持器30と軸ねじ33との間に固定され、遊星ピニオンギア8がリングギア33に噛合うことにより遊星ローラ6の公転を案内する。
33はリングギアであり、保持器30に保持された小径の歯車である遊星ピニオンギア8に噛合う外歯の歯車であって、中央ねじ軸22の外周面の保持器30と軸ねじ33との間に固定され、遊星ピニオンギア8がリングギア33に噛合うことにより遊星ローラ6の公転を案内する。
上記の中央ねじ軸22の軸ねじ33とナット24のナットねじ25とに、保持器30に保持されてリングギア33と遊星ピニオンギア8により公転を案内された遊星ローラ6のローラねじ9が嵌合し、ナット24を回転させることによって遊星ローラ6が中央ねじ軸22の周りを自転しながら公転して、中央ねじ軸22をナット24の長さの範囲で軸方向に移動させる。これによりナット24の回転運動が中央ねじ軸22の直線運動に変換される。
以下に、図4、図5を用い、図2に示す内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1の場合、つまり遊星ローラ6と中央ねじ軸2とが交差噛合となる場合の差動滑りを減少させるための手段について説明する。
図4は実施例1の遊星ローラと中央ねじ軸とが交差噛合となる場合の差動滑りの作用を示す説明図、図5は実施例1の遊星ローラと中央ねじ軸との点Qにおける速度三角形を示す説明図である。
図4は実施例1の遊星ローラと中央ねじ軸とが交差噛合となる場合の差動滑りの作用を示す説明図、図5は実施例1の遊星ローラと中央ねじ軸との点Qにおける速度三角形を示す説明図である。
なお、図4は、溝筋直角断面におけるローラねじ9のねじ面(ローラねじ面という。)の形状が円弧、軸ねじ3のねじ面の形状が略直線の場合を示し、軸ねじ呼び有効径Dsとローラねじ呼び有効径Drとの接点を座標原点として示したものである。
発明者は、図4に示す交差噛合における接触中心のYZ方向のずれが遊星ローラねじ装置1の作動効率にどの様な影響をもたらすかについて考察し、以下の知見を得た。
発明者は、図4に示す交差噛合における接触中心のYZ方向のずれが遊星ローラねじ装置1の作動効率にどの様な影響をもたらすかについて考察し、以下の知見を得た。
作動効率が最もよい位置は、座標原点に対するY方向のずれ量ΔYs=0の点であり、ΔYsの値が大きくなるほど差動滑りが増えて作動効率が低下する。この差動滑りが遊星ローラねじ装置1の作動効率を低下させる一つの大きな要因と考えられる。
ここに、差動滑りとは、各ねじに形成された接触楕円の回転中心からの半径位置の相違に伴って生ずる周方向速度成分の差による滑りをいう。
ここに、差動滑りとは、各ねじに形成された接触楕円の回転中心からの半径位置の相違に伴って生ずる周方向速度成分の差による滑りをいう。
しかしながら、遊星ローラねじ装置1における交差噛合では、中央ねじ軸2の軸ねじ3と遊星ローラ6のローラねじ9とのリード角の相違に起因したY方向への接触中心のずれは幾何学的に決まり、ΔYsが「0」より大きい値になることは避けられない。
このため、Y方向のずれは止むを得ないとして、Z方向のずれと差動滑りの関係を検討した結果、交差噛合においては差動滑りが極小となるZ位置は、任意のY座標においてZ=0となる位置であることが判った。
このため、Y方向のずれは止むを得ないとして、Z方向のずれと差動滑りの関係を検討した結果、交差噛合においては差動滑りが極小となるZ位置は、任意のY座標においてZ=0となる位置であることが判った。
すなわち、遊星ローラねじ装置1の基本的な設計として、図4に示すように、ローラねじ呼び有効径Drと、ナットねじ呼び有効径Dnと、軸ねじ呼び有効径Dsとはそれぞれ接しており、式(1)に示す関係を有している。
また、遊星ローラねじ形状定数α=Dn/Drとすると(式(3)参照、)、式(1)は次式に変換され、
Ds=Dr(α−2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
なる関係が得られる。
また、遊星ローラねじ形状定数α=Dn/Drとすると(式(3)参照、)、式(1)は次式に変換され、
Ds=Dr(α−2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
なる関係が得られる。
図4に示すように、中央ねじ軸2の回転中心(軸中心という。)と遊星ローラ6の回転中心(ローラ中心という。)とを結ぶ線をZ軸とし、軸ねじ呼び有効径Dsとローラねじ呼び有効径Drとの接点(座標原点(0,0))を通るZ軸に直交する方向をY軸としたY−Z平面上において、図4に白丸で示す任意の点Q(ΔYs、ΔZb)とローラ中心とを結ぶ直線とZ軸とのなす角をθr、点Qと軸中心とを結ぶ直線とZ軸とのなす角をθs、ローラ中心と点Qとの距離をdr、軸中心と点Qとの距離をdsすると、
また、遊星ローラ6の自転数Nrと、中央ねじ軸2の自転数Nsとは、中央ねじ軸2とナット4が相対的に1回転するとき、
dVz=Vrz−Vsz=ΔYs・α/2 ・・・・・・・・・・(14)
となる。
また、点Qにおける遊星ローラ6と中央ねじ軸2のY方向の速度成分をそれぞれVry、Vsyとすると、
dVy=Vry−Vsy=ΔZ・α/2 ・・・・・・・・・・・(17)
となる。
差動滑りは、dVzとdVyのベクトル和であるから、任意のY座標Ysにおける接触中心が、図4に黒丸で示す点C、つまりΔZ=0のとき極小となる。
このことは、図3に示す外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置21におけるナット24と遊星ローラ6との交差噛合においても同様である。
このため、以下に示す各実施例においては、遊星ローラねじ装置1または21の交差噛合におけるの接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを「0」に近づける方法について説明する。
このことは、図3に示す外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置21におけるナット24と遊星ローラ6との交差噛合においても同様である。
このため、以下に示す各実施例においては、遊星ローラねじ装置1または21の交差噛合におけるの接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを「0」に近づける方法について説明する。
図2に示す内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1において、遊星ローラねじ装置1を回転−直動変換手段として用いる場合には、以下の条件を満足させる必要があることが、一般に知られている。
中央ねじ軸2、ナット4、遊星ローラ6を図2に示す状態に配置するためには、上記したように、軸ねじ3の軸ねじ呼び有効径Ds、ナットねじ5のナットねじ呼び有効径Dn、ローラねじ9のローラねじ呼び有効径Drの間に、式(1)の幾何学的な条件を満足させることが必要である。
中央ねじ軸2、ナット4、遊星ローラ6を図2に示す状態に配置するためには、上記したように、軸ねじ3の軸ねじ呼び有効径Ds、ナットねじ5のナットねじ呼び有効径Dn、ローラねじ9のローラねじ呼び有効径Drの間に、式(1)の幾何学的な条件を満足させることが必要である。
また、遊星ピニオンギア8と噛合うリングギア13が固定されたナット4に対する遊星ローラ6の自転と公転の関係は、遊星ローラ6の遊星ピニオンギア8とナット4に設けられたリングギア13との歯数比によって決められているため、ナットねじ5とローラねじ9のねじ呼び有効径の比、つまり上記式(3)に示した遊星ローラねじ形状定数αは、遊星ピニオンギア8の歯数をZp、リングギア13の歯数をZr、ローラねじ9のローラ条数をJr、ナットねじ5のナット条数をJnとしたときに、
α=Dn/Dr=Zr/Zp=Jn/Jr=N(Nは、正の整数)・・・(3a)
を満足させる必要がある。
α=Dn/Dr=Zr/Zp=Jn/Jr=N(Nは、正の整数)・・・(3a)
を満足させる必要がある。
この遊星ローラねじ形状定数αを正の整数とすれば、ローラねじ9の回転に伴うナットねじ5とローラねじ9との間の相対的な軸方向の移動をなくすことができるからである。
また、ナット4を回転させたときに、中央ねじ軸2を軸方向に移動させるために、遊星ピニオンギア8に噛合うリングギア13が設けられていない側のねじ、本実施例では中央ねじ軸2の軸ねじ3とローラねじ9とのリード角が異なるように、つまり交差噛合となるように設定する必要がある。
また、ナット4を回転させたときに、中央ねじ軸2を軸方向に移動させるために、遊星ピニオンギア8に噛合うリングギア13が設けられていない側のねじ、本実施例では中央ねじ軸2の軸ねじ3とローラねじ9とのリード角が異なるように、つまり交差噛合となるように設定する必要がある。
例えば、上記特許文献1に示される従来技術では、遊星ローラ6のねじ面を円弧に、中央ねじ軸2とナット4のねじ面を直線形状としている(特許文献1の第5欄の1−5行、第5図、第6図参照)。
この例における軸ねじ3とローラねじ9とのねじ面の形状が交差噛合となっている状態を図6に、図6のA部における接触部の状態を図7に、Z方向から見たコンピュータシミュレーション結果を図8に示す。
この例における軸ねじ3とローラねじ9とのねじ面の形状が交差噛合となっている状態を図6に、図6のA部における接触部の状態を図7に、Z方向から見たコンピュータシミュレーション結果を図8に示す。
なお、図8は、理解が容易なように網掛けで示す接触部が予圧により圧縮変形した状態で示してある。
また、図8に丸印を付して示したイ〜ヘの記号は、図1に示すイ〜ヘの記号と対応している。
図7に示すように、交差噛合では互いのリード角が異なるので、ねじ面の左右の図7に網掛けで示す接触部の接触中心がY方向にずれていおり、図8に示すシミュレーション結果を参照すれば、接触中心がY方向のずれ量ΔYsは1.5mmとなっている。
また、図8に丸印を付して示したイ〜ヘの記号は、図1に示すイ〜ヘの記号と対応している。
図7に示すように、交差噛合では互いのリード角が異なるので、ねじ面の左右の図7に網掛けで示す接触部の接触中心がY方向にずれていおり、図8に示すシミュレーション結果を参照すれば、接触中心がY方向のずれ量ΔYsは1.5mmとなっている。
図9は実施例1の内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置の遊星ローラと中央ねじ軸との交差噛合を示す説明図である。
なお、図9は図6に示すA部をX方向から見たY−Z座標系で示してある。また図9は、交差噛合する1組のねじ面(本実施例では軸ねじ3とローラねじ9とのねじ面)のそれぞれの回転中心を結ぶ線を座標上のZ軸(Y=0)とし、それぞれのねじ呼び有効径の接点(本実施例では、ローラねじ呼び有効径Drと軸ねじ呼び有効径Dsとの接点)を座標原点Y=0、Z=0として示している。
なお、図9は図6に示すA部をX方向から見たY−Z座標系で示してある。また図9は、交差噛合する1組のねじ面(本実施例では軸ねじ3とローラねじ9とのねじ面)のそれぞれの回転中心を結ぶ線を座標上のZ軸(Y=0)とし、それぞれのねじ呼び有効径の接点(本実施例では、ローラねじ呼び有効径Drと軸ねじ呼び有効径Dsとの接点)を座標原点Y=0、Z=0として示している。
図9において、軸ねじ3とローラねじ9との接触中心は点Qで示されるように、略ローラ呼び有効径Dr上で、Y方向にずれ量ΔYs、Z方向にずれ量ΔZbずれた位置となる。
これは、軸ねじ3のねじ面は直線形状なのでリード角のずれに対し接触中心が自由に移動可能であることに対し、ローラねじ9は円弧であるので接触中心は円弧の円周上を移動するからである。
これは、軸ねじ3のねじ面は直線形状なのでリード角のずれに対し接触中心が自由に移動可能であることに対し、ローラねじ9は円弧であるので接触中心は円弧の円周上を移動するからである。
交差噛合するねじ面の形状の一方が直線、他方が円弧の場合の接触中心のY方向のずれ量ΔYとZ方向のずれ量ΔZを一般化して示すと、ねじ面の形状が円弧となる側の接触中心直径(ねじ面の形状が円弧となる側のねじ呼び有効径に一致)をCd[単位:mm]とすれば、
ΔY:軸ねじ3の溝筋直角断面における接触中心のY方向のずれ量 [単位:mm]
ΔZ:軸ねじ3の溝筋直角断面における接触中心のZ方向のずれ量 [単位:mm]
この場合に、交差噛合するローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量ΔYs(=ΔY)は変わらないので、図10の第1欄に示す遊星ローラねじ装置1についての上記計算は、接触中心直径Cdが、ねじ面の形状が円弧であるローラねじ9のローラねじ呼び有効径Dr=20mmとなり、ΔY=ΔYs=1.5mmより、ΔZ=0.113mmとなる。
これにより、図9に示す点QにおけるZ方向のずれ量ΔZb(=ΔZ)は0.113mmとなる。
これに対し、本実施例では、ねじ面の形状を軸ねじ3を円弧、ローラねじ9を直線とするので、接触中心直径Cd=軸ねじ呼び有効径Ds=59.701mmとなり、ΔYの値はΔYs=1.5mmと変らないが、ΔZ=0.038mmに縮小する。
これに対し、本実施例では、ねじ面の形状を軸ねじ3を円弧、ローラねじ9を直線とするので、接触中心直径Cd=軸ねじ呼び有効径Ds=59.701mmとなり、ΔYの値はΔYs=1.5mmと変らないが、ΔZ=0.038mmに縮小する。
これにより、図9に示す点CにおけるZ方向のずれ量ΔZs(=ΔZ)は0.038mmとなり、ローラねじ面が円弧の場合に較べて、Z方向の座標原点からのずれ量ΔZsを縮小することができる。
このように、交差噛合となっているねじの捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい側のねじ面の曲率半径を、ねじ呼び有効径の小さい側のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことにより、本実施例では交差噛合となっている軸ねじ3の捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい中央ねじ軸2のねじ面を円弧とし、ねじ呼び有効径の小さい遊星ローラ6のねじ面を直線(例えば三角ねじ)として、中央ねじ軸2のねじ面の曲率半径を遊星ローラ6のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことによって、交差噛合するローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを座標原点に近づけることが可能になり、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減して、遊星ローラねじ装置1の作動効率を向上させることができ、潤滑剤の寿命を延長させることができると共に、遊星ローラねじ装置1の寿命の延長を図ることができる。
このように、交差噛合となっているねじの捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい側のねじ面の曲率半径を、ねじ呼び有効径の小さい側のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことにより、本実施例では交差噛合となっている軸ねじ3の捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい中央ねじ軸2のねじ面を円弧とし、ねじ呼び有効径の小さい遊星ローラ6のねじ面を直線(例えば三角ねじ)として、中央ねじ軸2のねじ面の曲率半径を遊星ローラ6のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことによって、交差噛合するローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを座標原点に近づけることが可能になり、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減して、遊星ローラねじ装置1の作動効率を向上させることができ、潤滑剤の寿命を延長させることができると共に、遊星ローラねじ装置1の寿命の延長を図ることができる。
この場合に、接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを100μm以内とすることが望ましく、更に望ましくは一般的な工作機械の加工精度で成し得る値として20μm以内とするのがよい。
この範囲に設定すれば、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減してねじ面の伝達効率を改善できるからである。
この範囲に設定すれば、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減してねじ面の伝達効率を改善できるからである。
図11は実施例2の外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置の遊星ローラとナットとの交差噛合を示す説明図である。
なお、図11は交差噛合する1組のねじ面(本実施例ではナットねじ25とローラねじ9とのねじ面)のそれぞれの回転中心を座標上のY=0とし、それぞれのねじ呼び有効径の接点(本実施例では、ローラねじ呼び有効径Drとナットねじ呼び有効径Dnとの接点)を座標原点Y=0、Z=0として示している。
なお、図11は交差噛合する1組のねじ面(本実施例ではナットねじ25とローラねじ9とのねじ面)のそれぞれの回転中心を座標上のY=0とし、それぞれのねじ呼び有効径の接点(本実施例では、ローラねじ呼び有効径Drとナットねじ呼び有効径Dnとの接点)を座標原点Y=0、Z=0として示している。
本実施例は、図3に示す内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置21に、上記実施例1を適用した場合の実施例である。
図11において、ナットねじ25のねじ面の形状が直線でありローラねじ面の形状が円弧である場合は、その接触中心は点Qで示されるように、略ローラ呼び有効径Dr上で、Y方向にずれ量ΔYnずれた位置となる。
図11において、ナットねじ25のねじ面の形状が直線でありローラねじ面の形状が円弧である場合は、その接触中心は点Qで示されるように、略ローラ呼び有効径Dr上で、Y方向にずれ量ΔYnずれた位置となる。
このときのZ方向のずれ量ΔZを、上記式(18)を用いて計算すると、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量ΔYn(=ΔY)は変わらないので、接触中心直径Cdが、ねじ面の形状が円弧であるローラねじ9のローラねじ呼び有効径Dr=20mmとなり、ΔY=ΔYn=1.5mmより、ΔZ=0.113mmとなる。
これにより、図11に示す点QにおけるZ方向のずれ量ΔZb(=ΔZ)は0.113mmとなる。
これに対し、本実施例では、ねじ面の形状をナットねじ25を円弧、ローラねじ9を直線とするので、接触中心直径Cd=ナットねじ呼び有効径Dn=100.515mmとなり、ΔYの値はΔYn=1.5mmと変らないが、ΔZ=0.022mmに縮小する。
これに対し、本実施例では、ねじ面の形状をナットねじ25を円弧、ローラねじ9を直線とするので、接触中心直径Cd=ナットねじ呼び有効径Dn=100.515mmとなり、ΔYの値はΔYn=1.5mmと変らないが、ΔZ=0.022mmに縮小する。
これにより、図11に示す点CにおけるZ方向のずれ量ΔZn(=ΔZ)は0.022mmとなり、ローラねじ面が円弧の場合に較べて、Z方向の座標原点からのずれ量ΔZnを縮小することができる。
このように、交差噛合となっているねじの捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい側のねじ面の曲率半径を、ねじ呼び有効径の小さい側のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことにより、本実施例では交差噛合となっているナットねじ25の捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きいナット24のねじ面を円弧とし、ねじ呼び有効径の小さい遊星ローラ6のねじ面を直線(例えば三角ねじ)として、ナット24ねじ面の曲率半径を遊星ローラ6のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことによって、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減して、遊星ローラねじ装置21の作動効率を向上させることができ、潤滑剤の寿命を延長させることができると共に、遊星ローラねじ装置21の寿命の延長を図ることができる。
このように、交差噛合となっているねじの捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい側のねじ面の曲率半径を、ねじ呼び有効径の小さい側のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことにより、本実施例では交差噛合となっているナットねじ25の捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きいナット24のねじ面を円弧とし、ねじ呼び有効径の小さい遊星ローラ6のねじ面を直線(例えば三角ねじ)として、ナット24ねじ面の曲率半径を遊星ローラ6のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことによって、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減して、遊星ローラねじ装置21の作動効率を向上させることができ、潤滑剤の寿命を延長させることができると共に、遊星ローラねじ装置21の寿命の延長を図ることができる。
この場合に、接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを100μm以内とすることが望ましく、更に望ましくは一般的な工作機械の加工精度で成し得る値として20μm以内とするのがよい。
この範囲に設定すれば、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減してねじ面の伝達効率を改善できるからである。
この範囲に設定すれば、接触中心におけるZ方向の差動滑りを低減してねじ面の伝達効率を改善できるからである。
本実施例は、例えば図2に示す遊星ローラねじ装置1の設計者が、発明者が提案した前の出願等の手段によって、交差噛合によって生じるローラねじ9と軸ねじ3のねじ面の干渉と接触中心のねじ面の角度誤差に対して、付帯するリングギア13、および遊星ピニオンギア8の有効径と一致させた、ナット4および遊星ローラ6のそれぞれのねじ呼び有効径に実機の接触中心の直径を合致させるべく、遊星ピニオンギア8とリングギア13により回転拘束されない側の中央ねじ軸2のねじ面のねじ呼び有効径の修正、および/またはねじ面のねじ面傾斜角の誤差の修正を行った遊星ローラねじ装置1について、本発明の遊星ローラ6と中央ねじ軸2の接触中心のZ方向(中央ねじ軸2の軸ねじ呼び有効径Dsの法線方向)の位置をねじ呼び有効径位置に近づけるためのねじ面傾斜角の補正量を求め、その値で中央ねじ軸2のねじ面傾斜角を再設定する場合の実施例である。
本実施例では、ローラねじ面の形状が円弧であり、軸ねじ3のねじ面の形状が直線となっている。
上記の補正は、下記の手順により行う。
<1> 接触中心のY方向のずれ量ΔYsの導出
<2> 中央ねじ軸と遊星ローラの接触中心のZ方向のずれ量ΔZsの算出
<3> 軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´の算出
<4> 補正後のねじ面の形状の決定
まず、接触中心のY方向のずれ量ΔYsの導出過程について説明する。
<1> 接触中心のY方向のずれ量ΔYsの導出
本実施例のローラねじ9の形状は、ローラねじ9の捩れ方向と直交する座標系、つまりローラねじ9の溝筋直角断面のX´−Z座標系において、図12のように定義されている。
上記の補正は、下記の手順により行う。
<1> 接触中心のY方向のずれ量ΔYsの導出
<2> 中央ねじ軸と遊星ローラの接触中心のZ方向のずれ量ΔZsの算出
<3> 軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´の算出
<4> 補正後のねじ面の形状の決定
まず、接触中心のY方向のずれ量ΔYsの導出過程について説明する。
<1> 接触中心のY方向のずれ量ΔYsの導出
本実施例のローラねじ9の形状は、ローラねじ9の捩れ方向と直交する座標系、つまりローラねじ9の溝筋直角断面のX´−Z座標系において、図12のように定義されている。
図12に示すPは遊星ローラ6のねじピッチであり、ローラねじ9の条数であるローラ条数Jrが1条の場合はローラねじ9のリードLrに一致する。
ローラねじ面の形状が直線の場合に、ローラねじ面のX´−Z座標上の点(U´,T´)は次式によって表される。
この場合に、X−Z座標におけるローラねじ面上の点(U,T)をX´−Z座標上では(U´,T´)として変換した。
ローラねじ面の形状が直線の場合に、ローラねじ面のX´−Z座標上の点(U´,T´)は次式によって表される。
この場合に、X−Z座標におけるローラねじ面上の点(U,T)をX´−Z座標上では(U´,T´)として変換した。
ローラねじ9のリード角をローラリード角βrとすると、X´−Y−Z座標で定義されたローラねじ面の形状(U´,T´)は次式、
ここで、軸ねじ呼び有効径Ds(=Dn−2Dr)、ローラねじ9のねじれ方向定数をir=1(右ねじ=1、左ねじ=−1とする。)、軸ねじ3のねじれ方向定数をis=1(右ねじ=1、左ねじ=−1とする。)、接触条件定数をc=−1(図13(a)に示す外接接触をc=−1、図13(b)に示す内接接触をc=1とする。)とし、ローラねじ9の軸芯を通る平面における断面形状(U,T)の軸ねじ3への転写形状を(X,Z)=(S,R)とすると、式(24)〜(26)に示す螺旋関数が接点を持つので、
ここに、「接点を持つ」とは「共通の座標を持つ」ことであり、式(24)〜(26)の左辺と右辺が等号で結ばれる」ことを意味する。
この連立方程式から導き出した解のY座標がY方向のずれ量ΔYsである。
<2> 中央ねじ軸と遊星ローラの接触中心のZ方向のずれ量ΔZsの算出
ΔZsは、図14で示される幾何的関係より次式(27)にて計算される。
<2> 中央ねじ軸と遊星ローラの接触中心のZ方向のずれ量ΔZsの算出
ΔZsは、図14で示される幾何的関係より次式(27)にて計算される。
Δγs´は、図15に示す幾何的関係により上式の解ΔZsとローラねじ面傾斜角γr、ローラねじ9の溝筋直角断面におけるローラねじ面の円弧半径(曲率半径)Rrから、次式で計算される。
<4> 補正後のねじ面の形状の決定
軸ねじ面傾斜角γsは、ローラねじ面傾斜角γrに対し、前の出願の軸ねじ面傾斜角修正量Δγsと式(28)の軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´とで補正する。
γs=γr+Δγs+Δγs´ ・・・・・・・・・・・・・・・(30)
以上が本実施例の補正であるが、前の出願と本実施例の補正後の接触中心のZ方向のずれ量ΔZsを、図10の第1欄と第3欄に、そのシミュレーション結果を図16と図17に示す。
図10の第1欄および図16に示す前の出願は、基本仕様であるローラねじ面傾斜角γr=40度に対し前の出願の式(10)を用いて求められたねじ面傾斜角修正量Δγs=−0.219度で中央ねじ軸2の軸ねじ面傾斜角γsを修正したもの、図10の第3欄および図17に示す本実施例の場合は、これに対し軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´=0.408度により更に補正したものである。
以上が本実施例の補正であるが、前の出願と本実施例の補正後の接触中心のZ方向のずれ量ΔZsを、図10の第1欄と第3欄に、そのシミュレーション結果を図16と図17に示す。
図10の第1欄および図16に示す前の出願は、基本仕様であるローラねじ面傾斜角γr=40度に対し前の出願の式(10)を用いて求められたねじ面傾斜角修正量Δγs=−0.219度で中央ねじ軸2の軸ねじ面傾斜角γsを修正したもの、図10の第3欄および図17に示す本実施例の場合は、これに対し軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´=0.408度により更に補正したものである。
図10の第3欄および図17から判るように、接触中心のZ方向のずれ量ΔZsが0.113mmから0.009mmに減少し、接触中心が座標原点に近づいている。
なお、図16、図17に示す干渉量は、シミュレーションのために接触中心に圧力を印加したことによるねじ面同士の干渉を示したものである。
また、図16と図17の接触中心の位置の相違をY−Z座標系で示したのが図4であり、図4に白丸で示した点Qが前の出願、黒丸で示した点Cが本実施例である。
なお、図16、図17に示す干渉量は、シミュレーションのために接触中心に圧力を印加したことによるねじ面同士の干渉を示したものである。
また、図16と図17の接触中心の位置の相違をY−Z座標系で示したのが図4であり、図4に白丸で示した点Qが前の出願、黒丸で示した点Cが本実施例である。
図4に示すように、ローラねじ9とナットねじ5とのねじ面の接触中心からローラ中心までの距離よりも、ローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面の接触中心(点C)からローラ中心までの距離の方が大きくなっていることが判る。
なお、本実施例では、中央ねじ軸2と遊星ローラ6間の接触中心のZ方向の位置を「0」に近づけるために、中央ねじ軸2の軸ねじ面傾斜角γsを補正したが、これに代えて<2>に記載の式(27)で求めたΔZsの値だけ接触中心がローラ中心から遠くなる様にローラねじ面の形状を補正してもよい。
なお、本実施例では、中央ねじ軸2と遊星ローラ6間の接触中心のZ方向の位置を「0」に近づけるために、中央ねじ軸2の軸ねじ面傾斜角γsを補正したが、これに代えて<2>に記載の式(27)で求めたΔZsの値だけ接触中心がローラ中心から遠くなる様にローラねじ面の形状を補正してもよい。
このように、リングギア13が、ナット4に固定され、中央ねじ軸2が遊星ローラ6と交差噛合である場合に、ローラねじ9の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ面の曲率半径が、軸ねじ3のねじ面の曲率半径よりも小さいときに、ローラねじ面とナットねじ5のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも、ローラねじ面と軸ねじ3のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離の方を大きくしたことによって、交差噛合するローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
この場合に、ローラねじ面と軸ねじ3のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離を、ローラねじ面とナットねじ5のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも大きくする量は、交差噛合をする遊星ローラねじ装置1のねじ面の一方であるローラねじ9が円弧で他方である軸ねじ3が略直線形状の場合において、略直線側の軸ねじ3の軸ねじ面傾斜角γsを軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´に対し、±50%の範囲内で、ローラねじ9の接触中心の半径位置を増加させるように補正するとよい。
補正量を±50%の範囲内でとすれば、一般的な加工精度で、従来品に対し差動滑りの減少が遊星ローラねじ装置1の作動効率向上として具現化されるからである。
また、図16の仕様で軸ねじ3のリードLsが変化した場合のΔZsの変化を図18に示す。なお図18に付した丸印は、図16に示したシミュレーション計算の位置を示したものである。
また、図16の仕様で軸ねじ3のリードLsが変化した場合のΔZsの変化を図18に示す。なお図18に付した丸印は、図16に示したシミュレーション計算の位置を示したものである。
図18に示すように、ΔZsはリードLsが大きくなるにつれて増大する。ここでは中央ねじ軸2の軸ねじ呼び有効径Dsを固定しているので、リードLsの変化とは軸リード角βsの変化を意味する。
本実施例において、遊星ローラねじ形状定数α、ローラねじ面傾斜角γrを変更した場合に、軸ねじ3の軸リード角βsの変化に対する軸ねじ呼び有効径DsとY方向のずれ量ΔYsとの比ΔYs/Dsの変化量のシミュレーション結果を図19に示す。
本実施例において、遊星ローラねじ形状定数α、ローラねじ面傾斜角γrを変更した場合に、軸ねじ3の軸リード角βsの変化に対する軸ねじ呼び有効径DsとY方向のずれ量ΔYsとの比ΔYs/Dsの変化量のシミュレーション結果を図19に示す。
遊星ローラねじ装置1は、そのサイズが変わっても、遊星ローラねじ形状定数αの値と軸リード角βs、ローラねじ面傾斜角γrが同一であれば、Y方向のずれ量ΔYsの軸ねじ呼び有効径Dsに対する比、Z方向のずれ量ΔZsの軸ねじ呼び有効径Dsに対する比は変わらない。
図19にパラメータ、α=7、γr=50度を上限として示したのは、例えば遊星ローラねじ形状定数αをこれより大きくすると、軸ねじ3の軸条数Js、およびナットねじ5のナット条数Jnを増やさなければならず、小リード化が困難になると共に、中央ねじ軸2の直径に対して遊星ローラ6の直径が小さくなるので、同じ中央ねじ軸2の直径で比較した場合に負荷容量が小さくなって高負荷用途に適さなくなり、ローラねじ面傾斜角γrを50度より大きくすると負荷容量が小さくなって高負荷用途に適さないからである。
図19にパラメータ、α=7、γr=50度を上限として示したのは、例えば遊星ローラねじ形状定数αをこれより大きくすると、軸ねじ3の軸条数Js、およびナットねじ5のナット条数Jnを増やさなければならず、小リード化が困難になると共に、中央ねじ軸2の直径に対して遊星ローラ6の直径が小さくなるので、同じ中央ねじ軸2の直径で比較した場合に負荷容量が小さくなって高負荷用途に適さなくなり、ローラねじ面傾斜角γrを50度より大きくすると負荷容量が小さくなって高負荷用途に適さないからである。
また、α=3,γr=35度を下限として示したのは、例えば遊星ローラねじ形状定数αをこれより小さくすると、ナット条数Jnよりもローラ条数Jrを小さくしなければならず、幾何学的に適さなくなり、軸ねじ面傾斜角γsを35度より小さくすると軸ねじ3の頂部が鋭利になりすぎ、強度が低下するからである。
更に、ローラねじ9のねじ面の円弧半径Rrを、図10の第1欄、第3欄のRr=21mmから図10の第2欄、第4欄のRr=15mmに変えた場合のシミュレーション結果を図20と図21に示すが、図10の第4欄および図21から判るように、上記と同様に、接触中心のZ方向のずれ量ΔZsが0.111mmから0.007mmに減少し、接触中心が座標原点に近づいている。
更に、ローラねじ9のねじ面の円弧半径Rrを、図10の第1欄、第3欄のRr=21mmから図10の第2欄、第4欄のRr=15mmに変えた場合のシミュレーション結果を図20と図21に示すが、図10の第4欄および図21から判るように、上記と同様に、接触中心のZ方向のずれ量ΔZsが0.111mmから0.007mmに減少し、接触中心が座標原点に近づいている。
本実施例は、例えば図3に示したローラねじ装置21の設計者が、発明者が提案した前の出願等の手段によって、交差噛合によって生じるローラねじ9とナットねじ25のねじ面の干渉と接触中心のねじ面の角度誤差に対して、付帯するリングギア33、および遊星ピニオンギア8の有効径と一致させた、中央ねじ軸22および遊星ローラ6のそれぞれのねじ呼び有効径に実機の接触中心の直径を合致させるべく、遊星ピニオンギア8とリングギア33により回転拘束されない側のナット24のねじ面のねじ呼び有効径の修正、および/またはねじ面のねじ面傾斜角の誤差の修正を行ったローラねじ装置21について、本発明の遊星ローラ6とナット24の接触中心のZ方向(ナット24のナットねじ呼び有効径Dnの法線方向)の位置をねじ呼び有効径位置に近づけるためのねじ面傾斜角の補正量を求め、その値でナット24のねじ面傾斜角を再設定する場合の実施例である。
本実施例では、ローラねじ面の形状が円弧であり、ナットねじ25のねじ面の形状が直線となっている。
この場合の補正は、上記実施例3と同様の手順により行う。
<1> 接触中心のY方向のずれ量ΔYnの導出
上記実施例3と同様の方法により導かれるので、詳細は省略する。
この場合の補正は、上記実施例3と同様の手順により行う。
<1> 接触中心のY方向のずれ量ΔYnの導出
上記実施例3と同様の方法により導かれるので、詳細は省略する。
この場合に、式(24)〜(26)の各値は、軸ねじ3のリードLsをナットねじ25のリードLn、軸ねじ呼び有効径Dsをナットねじ呼び有効径Dn(=Ds+2Dr)にそれぞれ置換し、ねじれ方向定数is=1(実施例3の軸ねじ3に対し本実施例のナットねじ25も右ねじなので変更なし。)、ローラねじ9のねじれ方向定数ir=−1(実施例3に対し本実施例のローラねじ9は左ねじ)、接触条件定数c=1(図13b参照)として導出する。
・ ナットと遊星ローラの接触中心のZ方向のずれ量ΔZnの算出
Z方向のずれ量Znは、図14に示す中央ねじ軸2がナット24に変わることより、その曲率方向が遊星ローラ6と同一方向となるが、計算方法は実施例3と同様であり次式(31)にて計算される。
・ ナットと遊星ローラの接触中心のZ方向のずれ量ΔZnの算出
Z方向のずれ量Znは、図14に示す中央ねじ軸2がナット24に変わることより、その曲率方向が遊星ローラ6と同一方向となるが、計算方法は実施例3と同様であり次式(31)にて計算される。
ナットねじ面傾斜角補正量Δγn´も同様に、図15に示す中央ねじ軸2がナット24に変わることより、その曲率方向が遊星ローラと同一方向となるが、計算方法は実施例3と同様であり次式にて計算される。
<4>補正後のねじ面の形状の決定
ナットねじ面傾斜角γnは、ローラねじ面傾斜角γrに対し、前の出願のナットねじ面傾斜角修正量Δγnと式(32)のナットねじ面傾斜角補正量Δγn´とで補正する。
γn=γr+Δγn+Δγn´ ・・・・・・・・・・・・・・・(34)
本実施例の計算結果を、図22の第1欄に示す。
本実施例の接触中心の位置の相違をY−Z座標系で示したのが図23であり、白丸で示した点Qが前の出願、黒丸で示した点Cが本実施例である。
図23に示すように、ローラねじ9と軸ねじ23のねじ面の接触中心からローラ中心までの距離よりも、ローラねじ9とナットねじ25のねじ面の接触中心(点C)からローラ中心までの距離の方が大きくなっていることが判る。
本実施例の計算結果を、図22の第1欄に示す。
本実施例の接触中心の位置の相違をY−Z座標系で示したのが図23であり、白丸で示した点Qが前の出願、黒丸で示した点Cが本実施例である。
図23に示すように、ローラねじ9と軸ねじ23のねじ面の接触中心からローラ中心までの距離よりも、ローラねじ9とナットねじ25のねじ面の接触中心(点C)からローラ中心までの距離の方が大きくなっていることが判る。
本実施例において、遊星ローラねじ形状定数α、ローラねじ面傾斜角γrを変更した場合に、軸ねじ3の軸リード角βsの変化に対する軸ねじ呼び有効径DsとY方向のずれ量ΔYnとの比ΔYn/Dsの変化量のシミュレーション結果を図24に示す。
なお、上記実施例3および本実施例におけるねじ面の形状は遊星ローラ6が円弧、実施例3の中央ねじ軸2と、本実施例のナット24とは直線として式(28)、式(32)を用いたが、それぞれ中央ねじ軸2も円弧、またはナット24も円弧によって形成されている場合においては、軸ねじ3のねじ面の円弧半径Rs、またはナットねじ25のねじ面の円弧半径Rnとして、以下に示す式(35)または(36)により等価半径Rを求め、この等価半径Rをローラねじ面の円弧半径Rrの代わりに用いて、軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´、またはナットねじ面傾斜角補正量Δγnr´を算出すればよい。
なお、上記実施例3および本実施例におけるねじ面の形状は遊星ローラ6が円弧、実施例3の中央ねじ軸2と、本実施例のナット24とは直線として式(28)、式(32)を用いたが、それぞれ中央ねじ軸2も円弧、またはナット24も円弧によって形成されている場合においては、軸ねじ3のねじ面の円弧半径Rs、またはナットねじ25のねじ面の円弧半径Rnとして、以下に示す式(35)または(36)により等価半径Rを求め、この等価半径Rをローラねじ面の円弧半径Rrの代わりに用いて、軸ねじ面傾斜角補正量Δγs´、またはナットねじ面傾斜角補正量Δγnr´を算出すればよい。
1/R=1/Rr+1/Rs ・・・・・・・・・・・・・・・・(35)
1/R=1/Rr+1/Rn ・・・・・・・・・・・・・・・・(36)
このように、リングギア33が、中央ねじ軸22に固定され、ナット24が遊星ローラ6と交差噛合である場合に、ローラねじ9の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ面の曲率半径が、ナットねじ25のねじ面の曲率半径よりも小さいときに、ローラねじ面と軸ねじ23のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも、ローラねじ面とナットねじ25のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離の方を大きくしたことによって、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
1/R=1/Rr+1/Rn ・・・・・・・・・・・・・・・・(36)
このように、リングギア33が、中央ねじ軸22に固定され、ナット24が遊星ローラ6と交差噛合である場合に、ローラねじ9の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ面の曲率半径が、ナットねじ25のねじ面の曲率半径よりも小さいときに、ローラねじ面と軸ねじ23のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも、ローラねじ面とナットねじ25のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離の方を大きくしたことによって、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
この場合に、ローラねじ面とナットねじ25のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離を、ローラねじ面と軸ねじ23のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも大きくする量は、交差噛合をする遊星ローラねじ装置21のねじ面の一方であるローラねじ9が円弧で他方であるナットねじ25が略直線形状の場合において、略直線側のナットねじ25のナットねじ面傾斜角γnをナットねじ面傾斜角補正量Δγn´に対し、±50%の範囲内で、ローラねじ9の接触中心の半径位置を増加させるように補正するとよい。
補正量を±50%の範囲内でとすれば、一般的な加工精度で、従来品に対し差動滑りの減少が遊星ローラねじ装置21の作動効率向上として具現化されるからである。
図25は実施例5のローラねじ面傾斜角の補正方法を示す説明図である。
上記実施例4がナット24のナットねじ面傾斜角γnを補正したことに対し、本実施例は、同じことをナット24と交差噛合をする側の遊星ローラ6のローラねじの形状変更により補正した場合の例である。
通常、遊星ローラ6のねじ面は、中央ねじ軸22とナット24との両方と噛合うので、交差噛合側のみの接触中心を補正することは出来ないが、本実施例は、軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される1方向にのみ荷重が大きい用途において、その荷重状態での作動効率の向上を実現するものである。
上記実施例4がナット24のナットねじ面傾斜角γnを補正したことに対し、本実施例は、同じことをナット24と交差噛合をする側の遊星ローラ6のローラねじの形状変更により補正した場合の例である。
通常、遊星ローラ6のねじ面は、中央ねじ軸22とナット24との両方と噛合うので、交差噛合側のみの接触中心を補正することは出来ないが、本実施例は、軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される1方向にのみ荷重が大きい用途において、その荷重状態での作動効率の向上を実現するものである。
具体的には、図25に示すように、ナット24が図において左方向からの荷重Fを受けるとローラねじ9の左側のねじ面はナットねじ25のねじ面と接触し、右側のねじ面は軸ねじ23のねじ面と接触するので、ローラねじ9の左側のねじ面について、ナットねじ25のねじ面との接触中心の半径位置が大きくなる様に形状補正を行い、遊星ローラ6のローラねじ面の形状、またはローラねじ面傾斜角を左右非対称とする。
本実施例における前の出願における修正例を以下に示す。
遊星ローラ6のねじ呼び有効径Dr=20mm、遊星ローラねじ形状定数α=Dn/Dr=100/20=5、ローラねじ面傾斜角γr=40度とすると、
中央ねじ軸のリード角βsは、βs=tan−1(Ls/πDs)= tan−1(20/π/60(180/π)=6.06度となり、
ナットねじ有効径修正率ΔXnは、前の出願の式(20)より、
ΔXn=0.0140βs2+0.0003βs−0.0007=0.515%
ナットねじ面傾斜角修正量Δγnは、前の出願の式(19)より、
γn=0.0066βs2+0.0070βs−0.0096=0.276度
となり、これらを上記実施例4の式(31)に代入すれば、接触中心のZ方向のずれ量ΔZn=0.319mmとなる。
遊星ローラ6のねじ呼び有効径Dr=20mm、遊星ローラねじ形状定数α=Dn/Dr=100/20=5、ローラねじ面傾斜角γr=40度とすると、
中央ねじ軸のリード角βsは、βs=tan−1(Ls/πDs)= tan−1(20/π/60(180/π)=6.06度となり、
ナットねじ有効径修正率ΔXnは、前の出願の式(20)より、
ΔXn=0.0140βs2+0.0003βs−0.0007=0.515%
ナットねじ面傾斜角修正量Δγnは、前の出願の式(19)より、
γn=0.0066βs2+0.0070βs−0.0096=0.276度
となり、これらを上記実施例4の式(31)に代入すれば、接触中心のZ方向のずれ量ΔZn=0.319mmとなる。
このずれ量ΔZnをローラねじ面形状補正量として、その値だけローラねじ面のナットねじ25のねじ面との接触中心の半径位置を大きくした場合のシミュレーション結果を図22の第2欄および図26に示す。
図22の第2欄と図26に示すように、Z方向のずれ量ΔZnが2μmになり、Z方向の座標原点からのずれ量ΔZnを縮小することができる。
図22の第2欄と図26に示すように、Z方向のずれ量ΔZnが2μmになり、Z方向の座標原点からのずれ量ΔZnを縮小することができる。
このように、遊星ピニオンギア8に噛合うリングギア33が中央ねじ軸22に固定され、ナット24が遊星ローラ6と交差噛合となっている場合に、ローラねじのローラねじ面と軸ねじ23のねじ面との接触中心からローラ中心までの距離を大きくする方向で、遊星ローラのねじ面の形状を補正するようにしたことことによって、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
また、1方向からの荷重が大きい場合においては、その荷重を受ける側のローラねじ面のみを補正し、非対称とすることで、ローラねじ9の一方のローラねじ面を軸ねじ23との係合用、他方のローラねじ面をナット24との係合用として最適化することができ、軸ねじ23やナットねじ25の補正をせずにねじ面の伝達効率を改善することができる。
図27は実施例6のローラねじ面の補正方法を示す説明図である。
上記実施例1において、ローラねじ面を軸ねじ3のねじ面よりも直線状にした場合を説明したが、このような内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1に対しても更に交差噛合の接触中心をZ=0に近づけるべく、補正をすることができる。
すなわち、ローラねじ9の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ面の形状が略直線形状である場合に、軸ねじ3のねじ面のローラねじ面とのZ方向の接触中心を、上記実施例3の式(27)で計算される、接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsに対し、ローラねじ9の接触中心の半径位置を減少させる方向で補正する。
上記実施例1において、ローラねじ面を軸ねじ3のねじ面よりも直線状にした場合を説明したが、このような内歯リングギア式の遊星ローラねじ装置1に対しても更に交差噛合の接触中心をZ=0に近づけるべく、補正をすることができる。
すなわち、ローラねじ9の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ面の形状が略直線形状である場合に、軸ねじ3のねじ面のローラねじ面とのZ方向の接触中心を、上記実施例3の式(27)で計算される、接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsに対し、ローラねじ9の接触中心の半径位置を減少させる方向で補正する。
この場合に、上記実施例3と同様の理由により、補正量を±50%の範囲内とするとよい。
また、中央ねじ軸2の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ9のねじ面の形状が略直線形状である場合に、軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、ローラねじ面の形状を左右非対称とすることにより、ローラねじ面のナット4のねじ面との接触中心の位置を変えないで、軸ねじ3のねじ面との接触中心の位置を補正するときに、
ローラねじ9のローラねじ面傾斜角γrを、上記実施例3の式(29)で計算される、Z方向のずれ量ΔZsを補正するためのローラねじ面傾斜角補正量Δγs´に対し、ローラねじ9の接触中心の半径位置を減少させる方向で補正する。
また、中央ねじ軸2の捩れ方向と直交する溝筋直角断面におけるローラねじ9のねじ面の形状が略直線形状である場合に、軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、ローラねじ面の形状を左右非対称とすることにより、ローラねじ面のナット4のねじ面との接触中心の位置を変えないで、軸ねじ3のねじ面との接触中心の位置を補正するときに、
ローラねじ9のローラねじ面傾斜角γrを、上記実施例3の式(29)で計算される、Z方向のずれ量ΔZsを補正するためのローラねじ面傾斜角補正量Δγs´に対し、ローラねじ9の接触中心の半径位置を減少させる方向で補正する。
この場合に、上記実施例3と同様の理由により、補正量を±50%の範囲内とするとよい。
このような補正をした場合のY−Z座標系における接触中心の相違を図27に示す。図27に白丸で示した点Qが補正前、黒丸で示した点Cが補正後である。
このようにしても、交差噛合するローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
このような補正をした場合のY−Z座標系における接触中心の相違を図27に示す。図27に白丸で示した点Qが補正前、黒丸で示した点Cが補正後である。
このようにしても、交差噛合するローラねじ9と軸ねじ3とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZsを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施例では、中央ねじ軸2と遊星ローラ6との間の接触中心のZ方向の位置を「0」に近づけるために、遊星ローラ6の片側のローラねじ面について、ローラねじ面傾斜角γrを補正するとして説明したが、これに代えて次式(27a)により求めたΔZsの値の±50%の範囲内だけローラねじの接触中心の半径位置を減少させる方向で、中央ねじ軸2の軸ねじ3のねじ面の形状を補正するようにしてもよい。
図28は実施例7のローラねじ面の補正方法を示す説明図である。
上記実施例2において、ローラねじ面をナットねじ25のねじ面よりも直線状にした場合を説明したが、このような外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置21においては、ナットねじ25のナットねじ呼び有効径Dnがローラねじ9のローラねじ呼び有効径Drに較べ大きいことより接触中心のZ方向補正を行わなくてもその誤差は一般的に小さいが、更に交差噛合の接触中心をZ=0に近づけるべく、上記実施例6と同様に、実施例4の式(31)、(33)を用いて、その補正をすることができる。
上記実施例2において、ローラねじ面をナットねじ25のねじ面よりも直線状にした場合を説明したが、このような外歯リングギア式の遊星ローラねじ装置21においては、ナットねじ25のナットねじ呼び有効径Dnがローラねじ9のローラねじ呼び有効径Drに較べ大きいことより接触中心のZ方向補正を行わなくてもその誤差は一般的に小さいが、更に交差噛合の接触中心をZ=0に近づけるべく、上記実施例6と同様に、実施例4の式(31)、(33)を用いて、その補正をすることができる。
この場合に、上記実施例4と同様の理由により、補正量を±50%の範囲内とするとよい。
このような補正をした場合のY−Z座標系における接触中心の相違を図28に示す。図28に白丸で示した点Qが補正前、黒丸で示した点Cが補正後である。
このようにしても、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
このような補正をした場合のY−Z座標系における接触中心の相違を図28に示す。図28に白丸で示した点Qが補正前、黒丸で示した点Cが補正後である。
このようにしても、交差噛合するローラねじ9とナットねじ25とのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量ΔZnを座標原点に近づけることが可能になり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施例では、ナット24と遊星ローラ6との間の接触中心のZ方向の位置を「0」に近づけるために、遊星ローラ6の片側のローラねじ面について、ローラねじ面傾斜角γrを補正するとして説明したが、これに代えて次式(31a)により求めたΔZnの値の±50%の範囲内だけローラねじの接触中心の半径位置を減少させる方向で、ナット24のナットねじ25のねじ面の形状を補正するようにしてもよい。
また、通常の軸ねじやナットねじ、ローラねじのねじ面には、その端部に逃げを設けるためのクラウニングが用いられているが、本発明のΔγs´、 Δγn´を導入するローラねじにおいてローラねじ面にクラウニングを施す場合は、ローラねじ呼び有効径Drの位置より外側に接触中心が移動するので、図29に示すように、クラウニングの開始位置を導入前よりも外側にΔZ(=ΔZsまたは ΔZn )だけずらして接触範囲を大きく確保するとよい。このようにすれば、高負荷が作用した場合に接触楕円がねじ面の端部に掛ることによる応力集中を緩和することができる。
更に、通常の遊星ローラねじ装置は、中央ねじ軸、ナット、遊星ローラの内、交差噛合する少なくとも一方のねじ面が図1に示すような円弧形状となっている。これらの噛合うねじ面の両方を直線形状とする場合には、僅かな傾斜角のずれにより接触中心がねじ面の先端側、又は根元側に移動して応力集中や滑りによる不具合を引起すからであるが、一方ねじ面の曲率半径が小さくなる程、接触中心での応力が高くなる欠点もある。
この場合に、ねじ面の形状が両方共直線の状態から湾曲の曲率半径が小さくなるに従って、この特性が次第に顕著になるが、本発明の数値範囲は目安として、動定格荷重の1/4の軸方向荷重が印加された状態における接触楕円の長径が、ねじ面の谷から山までの長さの1/4〜2/3となる場合に、特に有効となるように考慮したものである。
なお、上記した実施例3ないし実施例7は、交差噛合となる遊星ローラと中央ねじ軸、または遊星ローラとナットのねじ面同士の干渉と、その接触中心におけるねじ面の角度誤差について、遊星ピニオンギアとリングギアにより回転拘束されない側のナットまたは中央ねじ軸のねじ面を前の出願の方法を用いて修正し、その修正後に、この干渉、および/または角度誤差を本発明により更に補正することで、差動滑りを抑制して、遊星ローラねじ装置の作動効率を改善したものである。
なお、上記した実施例3ないし実施例7は、交差噛合となる遊星ローラと中央ねじ軸、または遊星ローラとナットのねじ面同士の干渉と、その接触中心におけるねじ面の角度誤差について、遊星ピニオンギアとリングギアにより回転拘束されない側のナットまたは中央ねじ軸のねじ面を前の出願の方法を用いて修正し、その修正後に、この干渉、および/または角度誤差を本発明により更に補正することで、差動滑りを抑制して、遊星ローラねじ装置の作動効率を改善したものである。
1、21 遊星ローラねじ装置
2、22 中央ねじ軸
3、23 軸ねじ
4、24 ナット
5、25 ナットねじ
6 遊星ローラ
7 突起軸部
8 遊星ピニオンギア
9 ローラねじ
10、30 保持器
11 保持孔
12、32 抜止部材
13、33 リングギア
32a 係止溝
2、22 中央ねじ軸
3、23 軸ねじ
4、24 ナット
5、25 ナットねじ
6 遊星ローラ
7 突起軸部
8 遊星ピニオンギア
9 ローラねじ
10、30 保持器
11 保持孔
12、32 抜止部材
13、33 リングギア
32a 係止溝
Claims (15)
- 外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、少なくとも1箇所に遊星ピニオンギアを有し、外周面に軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを形成した複数の遊星ローラと、前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアとを備え、
前記リングギアが、前記中央ねじ軸および前記ナットのいずれか一方に固定され、前記リングギアが固定されない側のナットのナットねじ、または中央ねじ軸の軸ねじが遊星ローラのローラねじと交差噛合である場合に、
前記軸ねじの軸ねじ呼び有効径をDs、前記ナットねじのナットねじ呼び有効径をDn、前記ローラねじのローラねじ呼び有効径をDr、前記軸ねじの軸条数をJs、前記ナットねじのナット条数をJn、前記ローラねじのローラ条数をJr、前記遊星ピニオンギアの歯数をZp、前記リングギアの歯数をZr、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの呼び有効径をDc、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの条数をJcとしたときに、
Dn=2Dr+Ds
Dc/Dr=Zr/Zp=Jc/Jr=N(Nは正の整数)
なる関係を有する遊星ローラねじ装置において、
前記ローラねじと交差噛合する軸ねじ、またはナットねじとのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するZ方向のずれ量を100μm以内としたことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、少なくとも1箇所に遊星ピニオンギアを有し、外周面に軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを形成した複数の遊星ローラと、前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアとを備え、
前記リングギアが、前記中央ねじ軸および前記ナットのいずれか一方に固定され、前記リングギアが固定されない側のナットのナットねじ、または中央ねじ軸の軸ねじが遊星ローラのローラねじと交差噛合である場合に、
前記軸ねじの軸ねじ呼び有効径をDs、前記ナットねじのナットねじ呼び有効径をDn、前記ローラねじのローラねじ呼び有効径をDr、前記軸ねじの軸条数をJs、前記ナットねじのナット条数をJn、前記ローラねじのローラ条数をJr、前記遊星ピニオンギアの歯数をZp、前記リングギアの歯数をZr、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの呼び有効径をDc、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの条数をJcとしたときに、
Dn=2Dr+Ds
Dc/Dr=Zr/Zp=Jc/Jr=N(Nは正の整数)
なる関係を有する遊星ローラねじ装置において、
交差噛合となっているねじの捩れ方向と直交する断面形状における、ねじ呼び有効径の大きい側のねじ面の曲率半径を、ねじ呼び有効径の小さい側のねじ面の曲率半径よりも小さくしたことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、少なくとも1箇所に遊星ピニオンギアを有し、外周面に軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを形成した複数の遊星ローラと、前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアとを備え、
前記リングギアが、前記中央ねじ軸および前記ナットのいずれか一方に固定され、前記リングギアが固定されない側のナットのナットねじ、または中央ねじ軸の軸ねじが遊星ローラのローラねじと交差噛合である場合に、
前記軸ねじの軸ねじ呼び有効径をDs、前記ナットねじのナットねじ呼び有効径をDn、前記ローラねじのローラねじ呼び有効径をDr、前記軸ねじの軸条数をJs、前記ナットねじのナット条数をJn、前記ローラねじのローラ条数をJr、前記遊星ピニオンギアの歯数をZp、前記リングギアの歯数をZr、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの呼び有効径をDc、前記リングギアが固定されている側の前記中央ねじ軸、または前記ナットねじの条数をJcとしたときに、
Dn=2Dr+Ds
Dc/Dr=Zr/Zp=Jc/Jr=N(Nは正の整数)
なる関係を有する遊星ローラねじ装置において、
軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、前記ローラねじのローラねじ面の形状、またはローラねじ面傾斜角を左右非対称とすることにより、前記ローラねじの交差噛合をしない側のねじ面の接触中心の位置を変えないで、交差噛合する軸ねじ、またはナットねじとのねじ面同士の接触中心の位置を補正したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、少なくとも1箇所に遊星ピニオンギアを有し、外周面に軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを形成した複数の遊星ローラと、前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアとを備え、
前記リングギアが、前記ナットに固定され、前記中央ねじ軸の軸ねじが遊星ローラのローラねじと交差噛合である場合に、
前記軸ねじの軸ねじ呼び有効径をDs、前記ナットねじのナットねじ呼び有効径をDn、前記ローラねじのローラねじ呼び有効径をDr、前記ナットねじのナット条数をJn、前記ローラねじのローラ条数をJr、前記遊星ピニオンギアの歯数をZp、前記リングギアの歯数をZrとしたときに、
Dn=2Dr+Ds
Dn/Dr=Zr/Zp=Jn/Jr=N(Nは正の整数)
なる関係を有し、ローラねじの捩れ方向と直交する断面における前記ローラねじのローラねじ面の曲率半径が、前記軸ねじの軸ねじ面の曲率半径よりも小さい遊星ローラねじ装置において、
前記ローラねじ面と前記ナットねじのナットねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも、前記ローラねじ面と軸ねじ面との接触中心からローラ中心までの距離の方が大きいことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 請求項2に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアが前記ナットに固定され、前記軸ねじがローラねじと交差噛合となっている場合に、
前記ローラねじのローラねじ面と、前記軸ねじの軸ねじ面との接触中心からローラ中心までの距離を小さくする方向で、前記ローラねじおよび/または軸ねじのねじ面の形状および/またはねじ面傾斜角を補正したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、少なくとも1箇所に遊星ピニオンギアを有し、外周面に軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを形成した複数の遊星ローラと、前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアとを備え、
前記リングギアが、前記中央ねじ軸に固定され、前記ナットのナットねじが遊星ローラのローラねじと交差噛合である場合に、
前記軸ねじの軸ねじ呼び有効径をDs、前記ナットねじのナットねじ呼び有効径をDn、前記ローラねじのローラねじ呼び有効径をDr、前記軸ねじの軸条数をJs、前記ローラねじのローラ条数をJr、前記遊星ピニオンギアの歯数をZp、前記リングギアの歯数をZrとしたときに、
Dn=2Dr+Ds
Ds/Dr=Zr/Zp=Js/Jr=N(Nは正の整数)
なる関係を有し、前記ローラねじの捩れ方向と直交する断面における前記ローラねじのローラねじ面の曲率半径が、前記ナットのナットねじ面の曲率半径よりも小さい遊星ローラねじ装置において、
前記ローラねじ面と軸ねじの軸ねじ面との接触中心からローラ中心までの距離よりも、前記ローラねじ面と前記ナットねじのナットねじ面との接触中心からローラ中心までの距離の方が大きいことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 請求項2に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記遊星ピニオンギアに噛合うリングギアが前記中央ねじ軸に固定され、前記ナットねじがローラねじと交差噛合となっている場合に、
前記ローラねじのローラねじ面と、前記ナットのナットねじ面との接触中心からローラ中心までの距離を大きくする方向で、前記ローラねじおよび/またはナットねじのねじ面の形状および/またはねじ面傾斜角を補正したことを特徴とする遊星ローラねじ装置。 - 請求項4に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記軸ねじの捩れ方向と直交する断面における前記軸ねじの軸ねじ面の形状が略直線形状である場合に、
軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、
前記ローラねじのローラねじ面の形状を左右非対称とすることにより、前記ローラねじ面の前記ナットねじ面との接触中心の位置を変えないで、前記軸ねじ面との接触中心の位置を補正するときに、
前記ローラねじ面の前記軸ねじ面とのZ方向の接触中心を、交差噛合するローラねじと軸ねじとのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYsとして、
- 請求項5に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記ローラねじの捩れ方向と直交する断面における前記ローラねじのローラねじ面の形状が略直線形状である場合に、
前記軸ねじ面の前記ローラねじ面とのZ方向の接触中心を、交差噛合するローラねじと軸ねじとのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYsとして、
- 請求項6に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記ナットねじの捩れ方向と直交する断面における前記ナットねじのナットねじ面の形状が略直線形状である場合に、
軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、
前記ローラねじ面の形状を左右非対称とすることにより、前記ローラねじ面の前記軸ねじ面との接触中心位置を変えないで、前記ナットねじ面との接触中心の位置を補正するときに、
前記ローラねじ面の前記ナットねじ面とのZ方向の接触中心を、交差噛合するローラねじとナットねじのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYnとして、
- 請求項7に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記ローラねじの捩れ方向と直交する断面における前記ローラねじのローラねじ面の形状が略直線形状である場合に、
前記ナットねじ面のナットねじ面の前記ローラねじ面とのZ方向の接触中心を、交差噛合するローラねじとナットねじのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYnとして、
- 請求項4に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記軸ねじの捩れ方向と直交する断面における前記軸ねじの軸ねじ面の形状が略直線形状である場合に、
軸ねじの軸ねじ面傾斜角を、前記ローラねじのローラねじ面の曲率半径をRr、前記ローラねじのローラねじ面傾斜角をγr、交差噛合するローラねじと軸ねじとのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYsとして、
- 請求項5に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記中央ねじ軸の捩れ方向と直交する断面における前記ローラねじのローラねじ面の形状が略直線形状である場合に、
軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、
前記ローラねじのローラねじ面の形状を左右非対称とすることにより、前記ローラねじ面の前記ナットねじ面との接触中心の位置を変えないで、前記軸ねじ面との接触中心の位置を補正するときに、
前記ローラねじのローラねじ面傾斜角を、前記軸ねじの軸ねじ面の曲率半径をRs、前記軸ねじの軸ねじ面傾斜角をγs、交差噛合するローラねじと軸ねじとのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYsとして、
- 請求項6に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記ナットねじの捩れ方向と直交する断面における前記ナットねじのナットねじ面の形状が略直線形状である場合に、
前記ナットねじのナットねじ面傾斜角を、前記ローラねじのローラねじ面の曲率半径をRr、前記ローラねじのローラねじ面傾斜角をγr、交差噛合するローラねじとナットねじのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYnとして、
- 請求項7に記載の遊星ローラねじ装置において、
前記ナットねじの捩れ方向と直交する断面における前記ローラねじのローラねじ面の形状が略直線形状である場合に、
軸方向荷重の大きさが非対称であり、最大負荷となる荷重が印加される方向において、
前記ローラねじのローラねじ面の形状を左右非対称とすることにより、前記ローラねじ面の前記軸ねじ面との接触中心の位置を変えないで、前記ナットねじ面との接触中心の位置を補正するときに、
前記ローラねじのローラねじ面傾斜角を、前記ナットねじのナットねじ面の曲率半径をRn、前記ナットねじのナットねじ面傾斜角をγn、交差噛合するローラねじとナットねじのねじ面同士の接触中心の座標原点に対するY方向のずれ量をΔYnとして、
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- 2007-05-14 JP JP2007128476A patent/JP2008281184A/ja active Pending
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