本発明は移動体通信機器などに使用される高周波デバイスの製造方法に関するものである。
近年、携帯電話等の移動体通信機器に使用される弾性表面波フィルタなどの高周波フィルタに対して、小型・軽量で、通過帯域内では低損失であり、通過帯域外での減衰量が大きく、かつ通過帯域から通過帯域外にかけての特性変化が急峻であるという特性を満たすことへの要求が強くなっている。
また、送信側周波数帯(例えば比較的低周波側の周波数帯)の信号と受信側周波数帯(例えば比較的高周波側の周波数帯)の信号とを分離するデュプレクサに対しても、小型・軽量で、デュプレクサに用いられる送信用フィルタにおいては送信帯域では低損失でかつ受信帯域では高減衰であり、受信用フィルタにおいては受信帯域では低損失でかつ送信帯域では高減衰であることが求められている。また、デュプレクサに対しては、送信信号が送信端子から受信端子へ漏れるのを防ぐために、送信端子から受信端子へのアイソレーション特性が良好なことが求められている。また、デュプレクサとして、送信用高周波フィルタである例えば低周波数帯域側高周波フィルタ及び受信用高周波フィルタである例えば高周波数帯域側高周波フィルタが一体化された、さらに小型の素子が要求されている。
前記要求を満たさない高周波デバイスを通信機器に用いれば、不要な無線信号を送信したり、又は受信したりすることとなり、受信した無線信号の品質が低下したり、他の無線通信機器への妨害等の問題が発生したりする可能性がある。
その中でデュプレクサには、従来、誘電体を用いたものが使用されてきた。しかし、誘電体分波器は現状の通信規格の周波数帯では原理的に小型にすることができなかった。
そこで近年、弾性表面波素子を用いたフィルタをデュプレクサに利用する試みがなされている。
弾性表面波素子は通常、圧電基板上に櫛歯状電極を有する複数の励振電極が形成されて構成される。櫛歯状電極の電極指の周期は、圧電基板の圧電材料の音速と弾性表面波素子が使用される周波数帯とによってほぼ決定される。例えば、タンタル酸リチウム単結晶を圧電基板として用いて800MHz帯で使用される弾性表面波フィルタを作製する場合であれば、電極指の周期は約4μmとなり、櫛歯状電極の電極指の1本当りの幅及び隣接する電極指との距離(ギャップ)は共に約1μm程度となる。
従来から、櫛歯状電極の電極材料には、製造上の扱い易さ及び導電率の高さからアルミニウムを主体とする材料が使用されていた。これに対し、近年では、アルミニウムへの添加元素の種類を工夫したり、アルミニウムを主体とした材料と他の導体材料との積層構造としたりすることによって、細くてもデュプレクサに必要な耐電力性を有している電極指を実現することができるようになった。
一方、弾性表面波素子の小型化・軽量化も進められている。従来は、パッケージ本体の凹部の中に弾性表面波デバイスを実装し、ワイヤボンディング技術により弾性表面波デバイスの電極パターンとパッケージの端子部とを接続した後、その凹部をキャップ等により気密封止することにより弾性表面波素子を作製することが一般的であった。これに対し、近年さらに小型化・軽量化を進めるためにCSP(Chip Size Package:チップサイズパ
ッケージ)技術を積極的に活用し、弾性表面波デバイスを回路基板上にフリップチップ実装することにより、従来のワイヤボンディングに必要なスペースや高さを削減することも提案されている。
以上のような弾性表面波フィルタやデュプレクサ等の高周波デバイスの特性を評価するためには、実際にそれら高周波デバイスを搭載する携帯電話等に使用される回路基板において帯域外減衰特性やアイソレーション特性を満たさなければならないため、それら高周波デバイスを評価用の実装基板に搭載して、所望の特性が得られているかどうかを測定し評価することが行なわれる。そして、そのための高周波デバイス実装基板には、所望の特性の測定・評価に当たって、その実装基板に起因して正しく測定・評価が行なえなくなるような影響を与えるものでないことが要求されている。
測定・評価は正確に行なわれなければならないので、通常、高周波デバイスと高周波デバイス実装基板との間の接続や、高周波デバイス実装基板と測定器に接続された同軸ケーブルとを接続するための同軸コネクタと高周波デバイス実装基板との間は半田を用いて強固に確実な導電性を確保して接続される必要がある。
図10に、一般的な高周波デバイス実装基板と、それに接続された高周波デバイス及び同軸コネクタとの概略斜視図を示す。
高周波デバイス実装基板1は複数の絶縁体層12(図示せず)が積層され内部に接地導体層(図示せず)が形成された回路基板10の表面に必要な電気回路を導体で形成したものである。
この電気回路は、評価したい高周波デバイス11を実装するための端子電極(図示せず)と、測定器に接続されたケーブルと高周波デバイス実装基板1とを接続するために取り付ける同軸コネクタを接続するための信号電極3及び接地電極4と、高周波デバイス11の端子電極と信号電極3とを接続する信号線6とによって構成される。
また、回路基板10の絶縁体層を貫通する貫通孔17を設け、貫通孔17の内面にも導体層を設けることにより内部の接地導体層を互いに電気的に接続し、接地電極4の寄生インダクタンスを小さくすることにより接地効果を大きくすることもある。
同軸コネクタは通常、信号を伝えるための中心導体14と、これを取り囲み接地される外周導体15と、これらを絶縁する絶縁部材とからなり、中心導体14は高周波デバイス実装基板1の信号電極3と接続できるよう、絶縁部材から突出した形状となっており、信号電極3の幅に合わせた太さのものが用いられる。
それぞれの部材を図10のように組み立てるには、まず、回路基板10上に形成された端子電極にクリーム半田を塗布し、その上に端子電極に対応する位置に電極を設けた高周波デバイス11を搭載し、リフローすることにより高周波デバイス実装基板1と高周波デバイス11とを接続した後、信号電極3及び接地電極4と、同軸コネクタの中心導体14及び外周導体15とを、それぞれ糸半田及び半田ごてを用いて半田で接続する。
そして、同軸コネクタを測定器に接続された同軸ケーブルに接続し、高周波デバイス11の特性を測定する。
特開2002−257878号公報
ところで、図10に示す例で用いた同軸コネクタの導体部分(中心導体14,外周導体15)の表面は、酸化してしまうとその分電気抵抗が増加してしまうため高周波デバイス11の特性を実際より悪く見せてしまうので、通常は金メッキすることによって酸化を防いでいる。このためこのような部品は高価であり、1度測定が終わっても使い捨てにせずに高周波デバイス実装基板から取り外し、破損するまで再利用したいという要求があった。
また、高周波デバイス実装基板1は通常、搭載する高周波デバイス11の特性に合わせて電気的な設計がなされているが(例えば、特許文献1を参照)、より高周波デバイス11の特性を引き出すために異なる設計の高周波デバイス実装基板1を評価する必要がある場合には、高周波デバイス11の特性ばらつきが評価結果に影響を与えないようにするために高周波デバイス11を取り外して高周波デバイス実装基板1を使い回したいという要求があった。
また逆に、異なる設計の高周波デバイス11の特性差を高周波デバイス実装基板1の特性ばらつきに影響されずに評価したい場合には、同じく高周波デバイス11を取り外して高周波デバイス実装基板1を使い回したいという要求があった。
これらの要求を実施するためには、高周波デバイス実装基板1を半田が溶融する温度(200℃〜300℃)にまで加熱し、ピンセット等で高周波デバイス11を取り外す必要がある。このとき同軸コネクタが高周波デバイス実装基板1に接続された状態のままであると、高周波デバイス11を取り外すためには図10で示した構成全体を半田が溶融する温度にまで加熱する必要があり、作業の安全性に問題がある。また、高周波デバイス11が外れる温度では同軸コネクタの接続も非常に不安定になってしまい、作業性が悪い。
従って、通常、高周波デバイス11を高周波デバイス実装基板1から取り外す際には、一旦同軸コネクタを半田ごてを用いて取り外し、その後、高周波デバイス実装基板1をホットプレート等の上で半田が溶融する温度まで加熱し、ピンセット等で高周波デバイス11を取り外すという作業が行なわれる。
ここで、同軸コネクタを高周波デバイス実装基板1から半田ごてを用いて取り外す際に長い時間がかかってしまったり、半田ごての先端が高周波デバイス11の近傍に近づいたりすると、高周波デバイス11に熱が伝わってしまい、望ましくないエージングがなされてしまうことになる。
例えば高周波デバイス11が弾性表面波素子である場合は、前述のような細い電極指が狭いギャップで多数配置されてなる櫛歯状電極を使用しているため、加熱によって櫛歯状電極の電極材料であるアルミニウムがマイグレーションを起こし、アルミニウム原子が結晶粒界を移動して電極に突起(ヒロック)及び空隙(ボイド)を発生させるため、IDT電極の櫛歯状電極間で短絡不良を発生させる場合があった。また、マイグレーションが起こるほどではなくとも、アルミニウムは融点が低い材料であるため、半田の溶融温度程度でも長時間の加熱により再結晶化やアルミニウムと接触する材料との合金化が進み、予期しなかった抵抗の増大や耐電力性の低下が起こる場合があった。
また、圧電基板は焦電性を伴うため、半田ごてが接近したことにより急激な温度変化があると、狭い電極指間でスパークが発生し素子を破壊してしまう場合があった。特に弾性表面波素子などの高周波デバイス11自体に半田ごてが接近しなくとも、高周波デバイス11の端子電極は半田ごてが直接接する信号電極3と信号線6とを介して接続されているため、導電率が高いため熱伝導率が高い信号線6を熱が伝搬し、さらに高周波デバイス11内の接続導体を伝搬した熱が圧電基板上の電極に至り、その電極と周りとの間に温度差が生じ焦電効果によってスパークが発生してしまう場合があった。
また、近年、高周波デバイス11、特に弾性表面波素子は小型化・軽量化が進められており、それに伴いデバイス自体の熱容量が小さくなるため、より耐熱性が劣化してしまうという問題があることから、前述のように同軸コネクタを取り外す必要があるときには、従来の作業時間に比べてより短時間の加熱時間で取り外しを完了したいという要求があった。
このように高周波デバイス実装基板1に搭載した高周波デバイス11に対してなるべく熱による影響を与えないようにして、高周波デバイス実装基板1に接続していた同軸コネクタを取り外したいという要求があった。しかし、高周波デバイス実装基板1と同軸コネクタとは、図10に示したとおり高周波デバイス実装基板1の主面と同軸コネクタの外周導体15とがほぼ垂直に接するように接続されるため、接続箇所には溶融した半田は流れ込むが半田ごてが届き難い部分があり、その部分には半田ごての温度を伝えにくいためにどうしても長時間その近辺を加熱する必要があった。
また、同軸コネクタの外周導体15と高周波デバイス実装基板1との接続を確実に取ることにより接触抵抗を小さくするためや、長時間バイアスを印加して高周波デバイス11の特性変化を見るような測定をする際に同軸コネクタと高周波デバイス実装基板1とが測定中に外れることがないようにするために、高周波デバイス実装基板1の裏面にも接地電極を設け、この部分も同軸コネクタの外周導体15と半田で接合することにより強固で確実な接続を確保する必要があることがある。
このような場合には、同軸コネクタを取り外す際には高周波デバイス実装基板1の主面(表面)と裏面との両面の半田を除去しなければならない。しかし、主面の接地電極4と裏面の接地電極との間には熱伝導率の小さい絶縁体層があるため両面の半田を同時に除去することができず、片方の面の半田を除去した後、もう片方の面の半田を除去しようとすると、もう片方の面の半田を除去する時に、溶融した半田が同軸コネクタと高周波デバイス実装基板1の外周部の接触部分との隙間から先に半田を除去した面に流れ込み、その面の接地電極4と同軸コネクタの外周導体15とが再び接続されてしまう場合があった。特に、測定のために同軸コネクタと高周波デバイス実装基板1とを最初に接続した際に前記隙間に半田が流れ込んでいると、片方の面の半田を除去しようとしてももう片方の面の半田がじわじわと供給され続けることとなり、同軸コネクタを取り外すのに非常に長い時間がかかってしまう場合があった。これらのような場合、何度も高周波デバイス実装基板1を裏返して取り外し作業を行なうことになるが、その際には片方の面の接続はわずかな量の半田で接続された不安定な状態であるため同軸コネクタの細い中心導体14に負荷がかかることとなるので、中心導体14が折れてしまったり、高周波デバイス実装基板1の信号電極3が中心導体14に引っ張られて剥がれてしまったりする場合があった。
さらに、前記のように測定・評価を行う場合のみならず、高周波デバイス実装基板を基地局や端末などの通信機器に搭載して、実運用する場合でも、高周波デバイス実装基板と他の回路部品とを接続するための同軸コネクタと高周波デバイス実装基板との間は、半田を用いて強固に接続することが要求されている。接続が弱いと、導電性の確実性が失われ、高周波デバイスの動作の信頼度が低下してしまう。
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、実装基板に搭載された高周波デバイスに過度のエージングを与えたり高周波デバイス実装基板の信号電極や同軸コネクタの中心導体にダメージを与えたりすることなく短時間に同軸コネクタを取り外すことができ、かつ、測定中は強固な接続を確保することができる高周波デバイスの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、同軸コネクタとの強固な接続を確保することができ、かつ取り外すときには、簡単に同軸コネクタを取り外すことができる高周波デバイスの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記高周波デバイス実装基板に実装された高周波デバイスの特性を、高い信頼度で評価することのできる高周波デバイスの製造方法を提供することにある。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、回路基板と、前記回路基板の表面に設置された、高周波デバイスを搭載するための端子電極と、前記回路基板の表面に設置され、前記端子電極につながる信号線と、前記回路基板の表面の周辺部に配置され、前記信号線につながり、同軸コネクタの中心導体が接続された信号電極と、前記回路基板の表面の周辺部に配置され、前記同軸コネクタの外周導体と半田を介して接続された接地電極であって、前記半田が付着する領域に、前記回路基板を貫通するとともに内面に導体層が被着された貫通孔が形成された接地電極と、を具備する、同軸コネクタ付の高周波デバイス実装基板を用意する工程と、高周波デバイスを前記端子電極に接続し、前記高周波デバイスの特性を評価する工程と、前記高周波デバイスを前記端子電極から取り外す工程と、を含むものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記高周波デバイスと前記端子電極との接続は、前記端子電極に配置されたコンタクトピンを介して行われる。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記高周波デバイスと前記端子電極との接続は、前記高周波デバイスと前記端子電極との間に介在された半田により行われる。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記回路基板は、複数の絶縁体層が積層された積層基板であり、その内部に内部導体層が形成され、前記貫通孔の内面に形成された導体層は、前記内部導体層に接続されているものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記回路基板は、その裏面の前記接地電極と対応する部位に第2の接地電極が形成され、前記第2の接地電極は、前記貫通孔の内面に形成された前記導体層を介して前記回路基板の表面の前記接地電極に接続されているものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記貫通孔は、前記接地電極の、前記回路基板の外周に沿った部位に複数配置されているものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記貫通孔は、前記接地電極の前記信号線と反対側の部位に、前記回路基板の外周から中央部に向かって配置されているものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、前記接地電極に、前記回路基板の表面に前記信号線に沿って形成された表面接地導体層が接続されているものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、上記構成において、前記高周波デバイスが、圧電基板上に形成された複数の櫛歯状電極を有する弾性表面波素子を含んで構成されるものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、前記同軸コネクタの中心導体を前記信号電極から、前記同軸コネクタの外周導体を前記接地導体からそれぞれ取り外す工程をさらに含むものである。
本発明の高周波デバイスの製造方法によれば、絶縁体層の裏面又は内部に導体層を有する回路基板と、前記回路基板の表面に設置された、高周波デバイスを搭載するための端子電極と、前記回路基板の表面に設置され、前記端子電極につながる信号線と、前記回路基板の表面の周辺部に配置され、前記信号線につながり、同軸コネクタの中心導体が接続される信号電極と、前記回路基板の表面の周辺部に配置され、前記同軸コネクタの外周導体を、半田を用いて接続するための接地電極とを備え、前記接地電極には、前記半田が付着する領域に、前記回路基板を貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔の内面には導体層が被着されているものである。
この高周波デバイスの製造方法によれば、同軸コネクタの外周導体を、半田を用いて取り付ける際に、接地電極に形成された貫通孔内に半田が流入する。これによって、同軸コネクタの外周導体を、回路基板の接地電極に対して強固に接合することができる。
また、従来の図10のように回路基板10のより高周波デバイス11に近い部分に貫通孔17を設けるよりも、より寄生インダクタンスが小さい状態で内部の接地導体層を測定器の接地電位と接続することができるため、より正確に高周波デバイスの特性を測定することができる。
同軸コネクタを短時間で取り外すことができるため、取り外しの際に高周波デバイスに加わる熱の影響を少なくして、特性に優れた高周波デバイスを製造することができる。
前記回路基板は、複数の絶縁体層が積層された積層基板であり、その内部に内部導体層が形成され、前記貫通孔の内面に形成された導体層は、前記内部導体層に接続されていてもよい。
また、前記回路基板の裏面の前記接地電極と対応する部位に第2の接地電極が形成されており、該第2の接地電極は、前記貫通孔の内面に形成された前記導体層を介して前記接地電極に接続されていることが好ましい。
この構造では、前述のように回路基板の裏面の第2の接地電極も同軸コネクタの外周導体と接続する場合に、表面の接地電極と裏面の第2の接地電極とのそれぞれ上部に存在する半田と接地電極間を貫通している貫通孔内の半田が連続に存在して同軸コネクタの外周導体と接続された状態とすることができるため、同軸コネクタがより強固に接続される。それとともに、半田接続する際に、貫通孔内の半田を介して半田ごての熱が片方の面(例えば表面)に存在する半田からもう片方の面(例えば裏面)に存在する半田へと速やかに伝搬するため両面の半田を同時に溶融することができ、このため、貫通孔を介して両面の半田量が均等化されるため、同軸コネクタの中心導体や高周波デバイス実装基板の信号電極にかかる負荷を小さくすることができる。
また、同軸コネクタを取り外す際も同様に両面の半田を同時に溶融することができるため、従来のような様々な問題を生じさせることなく、短時間で容易に取り外し作業を完了することができる。従って、搭載された高周波デバイスをその特性を劣化させることなく取り外すことができる。また、同軸コネクタや高周波デバイス実装基板に熱によるダメージを与えることなくこれらを再利用するこができる。
また、接地電極と接地導体層とを導体層を介して接続する貫通孔が、接地電極の半田が付着する領域の回路基板の外周側の部位に回路基板の外周に沿って複数配置されている場合には、半田によって接続される同軸コネクタの外周導体−貫通孔内の導体層−内層導体という電気的経路を最も短くすることができるので、貫通孔内の導体層に起因する寄生インダクタンスを最も小さくすることができる。加えて、接地電極の貫通孔内から同軸コネクタの外周導体まで半田が連続して存在する状態にできるため、より強固に高周波デバイス実装基板と同軸コネクタとを接続することができ、測定中に同軸コネクタが高周波デバイス実装基板から外れる確率を非常に小さくすることができる。
また、前記貫通孔が、前記接地電極の前記信号線と反対側の部位に前記回路基板の外周から中央部に向かってさらに配置されているときには、次のような効果がある。
従来の高周波デバイス実装基板では同軸コネクタの接続に際して強固な接合とするために半田量を多くすると、接近して配置されている信号電極と接地電極とが半田を介して短絡する場合があったが、本発明の高周波デバイスの製造方法によれば、前記貫通孔が、前記接地電極の前記信号線と反対側の部位に前記回路基板の外周から中央部に向かってさらに配置されているときには、同軸コネクタを接合する際に、表面の接地電極に対する余分な半田がそのさらに配置された貫通孔を通して裏面の第2の接地電極に流動するため、半田の形状がやや接地電極の信号線と反対側寄りとなる。このため、使用される半田を信号電極側に流れ難くすることができるので、信号電極と接地電極とが半田を介して短絡するのを有効に防止することができる。
さらに、前記接地電極に、前記回路基板の表面に前記信号線に沿って形成された表面接地導体層が接続されている場合は、表面接地導体層を寄生インダクタンスが最も小さい状態で測定器の接地電極と接続することができるので、高周波デバイスの信号端子のうち、接地される電極の電位をより測定器の接地電位に近づけることができる。
本発明の高周波デバイスの製造方法は、高周波デバイスが圧電基板上に形成された複数の櫛歯状電極を有する弾性表面波素子を含んで構成されるデュプレクサである場合において特に有効である。
以上説明したような本発明の高周波デバイスの製造方法における同軸コネクタを高周波デバイス実装基板に取り付ける際の効果は、同軸コネクタと高周波デバイス実装基板とを一時的に接続し、測定後に同軸コネクタを取り外す場合はもちろんのこと、恒久的な接続を必要とするいわゆるマザーボード(メインボード)と、このマザーボードと外部回路とを接続するコネクタとを接続する際にも有効であり、本発明の技術的範囲内である。また、同軸コネクタを高周波デバイス実装基板から取り外す際の効果についても、恒久的な接続を必要とするそのマザーボードとコネクタとの接続において、リペアが必要なときに有効である。
以下に、本発明の高周波デバイス実装基板の実施の形態の例を、模式的に図示した図面に基づき詳細に説明する。なお、以下に説明する図面においては、同一部品及び同一部分には同じ符号を付すものとする。
<実施の形態の例1>
図1は本発明の高周波デバイスの製造方法において使用される実装基板の一例を示す上面図である。また、図2は図1のA−A′線で切断した要部断面図である。
高周波デバイス実装基板1は、絶縁体層12,19及び21と、接地導体層13及び20とが積層された構造の回路基板10の表面(上面)の中央部に、高周波デバイスが実装される端子電極2を設けている。また、回路基板10の表面には、抵抗、コンデンサ、集積回路などの電子部品30が搭載されている。
回路基板10の表面の周辺部には、同軸コネクタの中心導体(図示せず)が接続される信号電極3及び同軸コネクタの外周導体(図示せず)が半田を用いて接続される接地電極4が形成されている。
端子電極2と信号電極3とは、回路基板10の中央部から放射状に延びた信号線によって接続されている。
ここで、接地電極4の回路基板10の外周側の部位には、回路基板10の外周に沿って貫通孔5が形成されている。貫通孔5の内面は、図2に示したとおり、導体層7が被着されている。導体層7は接地電極4と接地導体層13,20とを電気的に接続している。
また、端子電極2のうち、接地される所定の端子は、その直下の接地導体層13に導体を充填したビア導体(図示せず)を形成して接続している。
このような本発明の高周波デバイス実装基板1を用いて、高周波デバイス(図示せず)の特性を測定する場合は、まず、端子電極2にクリーム半田等を塗布し、これに高周波デバイスの対応する端子(図示せず)を接触させ、クリーム半田の溶融温度以上に加熱する。これによって、高周波デバイスは高周波デバイス実装基板1上に実装される。
その次に、同軸コネクタ(図示せず)を糸半田及び半田ごてを用いて、同軸コネクタの中心導体を信号電極3に、同軸コネクタの外周導体を接地電極4に接合する。
その際、貫通孔5の存在により、溶融した半田は接地電極4から貫通孔5内に流動し、貫通孔25内に入り込む。このようにして、貫通孔5の内部から同軸コネクタの外周導体15に至って、半田が連続して形成される。
このため、高周波デバイス実装基板1と同軸コネクタとの強固な接続を確保することができるため、測定中に接続したケーブル等から物理的な負荷がかかっても同軸コネクタの中心導体と信号電極3とが外れる確率を極めて小さくすることができる。
また、高周波デバイス実装基板1の中で接地電極4及び貫通孔5内の導体層7を介して、測定器の接地電極と最も近い位置で同軸コネクタの外周導体と接地導体層13とを接続することができるため、測定器の接地電極から接地導体層13との間の物理的な距離に起因する寄生インダクタンスを小さくでき、従って、より正確に高周波デバイスの特性を測定することができる。
<実施の形態の例2>
次に、本発明の高周波デバイスの製造方法において使用される実装基板のさらに他の例を説明する。本例では、高周波デバイス実装基板1の上面図は図1と同様であるが、回路基板10の裏面の接地電極4と対応する部位に第2の接地電極8を設けたものである。
図3に本例の高周波デバイス実装基板1の裏面の上面図を示す。また、本例について図1のA−A′線で切断した要部断面図を図4に示す。図4と図2との相違は、図4では、高周波デバイス実装基板1の裏面に、第2の接地電極8が設けられていることである。
この裏面の第2の接地電極8は、貫通孔5の内面の導体層7を介して、主面(表面)の接地電極4及び内部の接地導体層13と電気的に接続されている。
また、本例の高周波デバイス実装基板1と同軸コネクタとを半田で接続した場合の図1のB−B′線で切断した要部断面図を図5に示す。
図5に示すように、同軸コネクタの外周導体(図示せず)に対して高周波デバイス実装基板1の裏面側から貫通孔5を通って主面側の外周導体にまで連続して半田16を存在させることができるため、より強固に高周波デバイス実装基板1の接地電極4と同軸コネクタの外周導体とを接続することができる。
また、接地電極4と同軸コネクタの外周導体とを半田16で接続する際、貫通孔5内の半田16を介して半田ごての熱が、片方の面に存在する半田16からもう片方の面に存在する半田16へと速やかに伝搬するため、両面の半田16を同時に溶融することができる。これによって両面の半田量が均等化されるため、同軸コネクタの中心導体14や高周波デバイス実装基板1の信号電極3にかかる応力・負荷を小さくすることができる。
また、同軸コネクタを取り外す際も同様に両面の半田16を同時に溶融することができるため、短時間で容易に取り外し作業を完了することができる。従って、搭載された高周波デバイスを、その特性を劣化させることなく取り外すことができる。また、同軸コネクタや高周波デバイス実装基板1にダメージを与えることなくこれらを再利用することができる。
また、高周波デバイス実装基板1の中で接地電極4,第2の接地電極8及び貫通孔5内の導体層7を介して、測定器の接地電極と最も近い位置で同軸コネクタの外周導体と接地導体層13とを接続することができるため、測定器の接地電極から接地導体層13との間の物理的な距離に起因する寄生インダクタンスを小さくでき、従って、より正確に高周波デバイスの特性を測定することができるのは実施の形態の例1と同様である。
<実施の形態の例3>
次に、本発明の高周波デバイスの製造方法において使用される実装基板のさらに他の例を説明する。
図6(a)及び図6(b)に本例の高周波デバイス実装基板1の主面の上面図(平面図)を示す。図6(a)の本例では、高周波デバイス実装基板1の表面の接地電極4の回路基板10の外周側の部位に、貫通孔5を形成するとともに、接地電極4の信号線6と反対側の部位に、回路基板10の外周から中央部に向かってさらに貫通孔5′を配置した。図6(b)の本例では、貫通孔5を形成せず、それに代えて、接地電極4の信号線6と反対側の部位に、回路基板10の外周から中央部に向かって貫通孔5′を配置した。
また、本例の高周波デバイス実装基板1に同軸コネクタを強固な接続を行なうため多めの半田16で接続した場合の図6(a),図6(b)のC−C′線で切断した要部断面図を図7に示す。
さらに、比較例として貫通孔5′を設けない場合の、図7と同様の要部断面図を図8に示す。
接地電極4に対して貫通孔5′を設けない場合は、図8に示すように接地電極4の上面と信号電極3の上面とに存在する半田16のそれぞれの分布が半田16の表面張力のために接近しており、半田量によっては短絡する場合がある。
これに対して、本例の場合は、半田16の分布が図7に示すように、貫通孔5′に半田16が流れ込むため、接地電極4の上面に存在する半田16を信号電極3からやや遠ざかるように分布させることができ、信号電極3と接地電極4とを半田16を介して短絡し難くすることができる。
なお、ここでは裏面の第2の接地電極8が無い場合を示したが、図3〜5に示す例と同様に、高周波デバイス実装基板1の裏面に第2の接地電極8を設けても構わない。
<実施の形態の例4>
次に、本発明の高周波デバイスの製造方法において使用される実装基板のさらに他の例を説明する。
図9は、回路基板10の主面(表面)の信号線6に沿って表面接地導体層9を設け、これと接地電極4とを接続した本例の高周波デバイス実装基板1の主面の上面図(平面図)である。
このような構成とすることにより、表面接地導体層9を寄生インダクタンスが最も小さい状態で測定器の接地電極と接続することができるので、高周波デバイスの信号端子の内、接地される端子の電位を、より寄生インダクタンスの小さい状態で測定器の接地電位に近づけることができる。
本発明の高周波デバイスの製造方法において使用される実装基板1は、通信機器に適用することができる。すなわち、受信回路又は送信回路の一方又は両方を備える通信機器において、本発明の高周波デバイス実装基板1を用いることができる。前記送信回路は、例えば、送信信号をミキサでキャリア周波数にのせて、不要信号をバンドパスフィルタで減衰させ、その後、パワーアンプで送信信号を増幅して、デュプレクサを通ってアンテナより送信する回路である。前記受信回路は、受信信号をアンテナで受信し、デュプレクサを通った受信信号をローノイズアンプで増幅し、その後、バンドパスフィルタで不要信号を減衰して、ミキサでキャリア周波数から信号を分離し、この信号を取り出す回路である。前記デュプレクサやバンドパスフィルタを本発明の高周波デバイス実装基板1に実装し、通信機器に組み込むことにより、本発明の高周波デバイス実装基板1が搭載された、優れた特性を有する通信機器が実現できる。
次に、高周波デバイス実装基板1を用いて高周波デバイスを評価する方法を説明する。
この高周波デバイス実装基板1は、高周波デバイスの量産工程の特性検査工程にて良品判定を行う目的や、開発品の特性を評価する目的のために使用される。
具体的には、高周波デバイスとして圧電体フィルタを用いたデュプレクサである場合には、圧電体から成るウェハ上に多数の圧電体フィルタを一括して形成した後、圧電体フィルタをそれぞれ個片に切断し、個々の圧電体フィルタを所定の回路基板にフェースダウンでフリップチップ実装してデュプレクサを得、得られたデュプレクサを高周波デバイス実装基板1に実装して良品判定する。前記良品判定をするための特性検査工程では、デュプレクサを高周波デバイス実装基板1に半田で接着することができないため、デュプレクサと高周波デバイス実装基板1との接続は、高周波デバイス実装基板1上の端子電極に配置されたコンタクトピンなどを介して行なわれる。この場合、安定して特性を測るために、高周波デバイス実装基板1は、コンタクトピンを固定する治具やデュプレクサの搭載位置を固定するガイドと共に真鍮やアルミなどの台座上に固定され、デュプレクサの上部より一定の圧力で押さえつけることによって、コンタクトピンとの接続を一定にする。
この状態で、上に説明したように、高周波デバイス実装基板1の信号電極23及び接地電極24に、半田付けにより同軸ケーブルを接続して、高周波デバイスの特性評価を行う。
上述した本発明の高周波デバイスの特性評価方法によれば、高周波デバイス実装基板1に同軸コネクタを確実に接続して、高周波デバイスの特性評価を行うことができるとともに、高周波デバイスを取り外すときも、簡単に取り外すことができる。
<第1の実施例>
次に、本発明の高周波デバイスの製造方法の第1の実施例について説明する。
高周波デバイス実装基板1の信号線6や信号電極3や接地電極4の位置と形状は図9に示す例と同様である。すなわち、信号線6は端子電極2から放射状に延びており、同軸コネクタを接続する領域Dの構造も、図9に示すとおりである。なお、貫通孔5の数及び位置は図11に示したものとした。図11は図9の破線で示した領域Dの拡大図である。同軸コネクタを接続する部分は、図9に示すとおり領域Dを含み3箇所あるが、その全てについて図11に示した形状とした。
また、回路基板10の図11に対応する部位の裏面の拡大図を図12に示す。表面の2つの接地電極4に対応する部位の第2の接地電極8は、一続きのものとして形成した。図12において9′は回路基板10の裏面に形成された裏面接地導体層である。なお、本実施例では高周波デバイス実装基板1に同軸コネクタを接続する部分を図9に示すとおり3箇所設けたが、その全てについて図11に示した形状とした。また、要部断面図は図4と同様である。
回路基板10の絶縁体層12,19,21の材料としては、FR−4(ガラスエポキシ樹脂)を、接地導体層13,20、接地電極4、第2の接地電極8、及び裏面接地導体層9′の材料としては銅を用いた。
絶縁体層12及び絶縁体層21の厚みはそれぞれ0.1mmであり、絶縁体層19の厚みは1mmである。また、接地導体層13及び接地導体層20の厚みはそれぞれ0.035mmである。接地電極4及び第2の接地電極8の厚みはそれぞれ0.06mmである。回路基板10の主面の信号線6の幅は0.13mm、同軸コネクタの中心導体14が接続される信号電極3の幅w1は0.6mm、接地電極4の横幅w2は5mm、信号電極3と接地電極4とのギャップw3は0.85mmとした。
なお、信号線6の特性インピーダンスは50Ωとなるように設計した。接地電極4の縦幅w4は3mmとした。また、回路基板10の裏面の第2の接地電極8の横幅w5は13mm、縦幅w6は3mmとした。また、接地電極4に、回路基板10と回路基板10の裏面の第2の接地電極8とを貫通する半径0.3mmの貫通孔5を、接地電極4の内側から0.6mm、接地電極4の外周部(回路基板10の外周側)から0.3mmの位置から、0.8mmの間隔で6個設けた。各貫通孔5には内面に銅からなる導体層7を設け、接地電極4に接続されている表面接地導体層9及び第2の接地電極8に接続されている表面接地導体層9′の接地電位の安定化を図った。
また、比較例として、貫通孔5を設けないこと以外の設計が全て本実施例と同じである従来の高周波デバイス実装基板を作製した。
このようにして作製した本発明の実施例と比較例について、それぞれ高周波デバイスを搭載し、同軸コネクタを取り付けた後、信号線6を介して高周波特性を測定し、次いで同軸コネクタを取り外した後、再び高周波特性を測定した。
このときの測定は、高周波デバイスの端子電極に直接、高周波プローブ(GGB社製、商品名:ピコプローブ40A−GS−600−DP)を接触させることにより行なった。
なお、高周波デバイスとしては、端子電極2と接続される面のサイズが2.5mm×2.0mmであり、高さが0.6mmである小型の高周波フィルタ(弾性表面波フィルタ)を用いた800MHz帯デュプレクサを用いた。
まず、実施例と比較例に対してともに、端子電極2にクリーム半田を塗布し、この高周波デバイスを搭載した。そして、ホットプレートを用いてクリーム半田を溶融させ、高周波デバイスの端子と端子電極2とを接続した。
次に、同軸コネクタを取り付けた。実施例と比較例に対してともに信号電極3と接地電極4と第2の接地電極8とに糸半田(Sn−Cu−Ag:融点217℃)を、半田ごてを用いて溶融させ、高周波デバイス実装基板1に同軸コネクタを取り付けた。
比較例を用いた場合は、糸半田に同じ時間だけ熱を加えても溶融する量が一定ではなく、また、接地電極4と第2の接地電極8との半田が直接流動できないため、接地電極4と接地電極8との半田の量を均一にすることは非常に困難であった。
それに対し、実施例では、信号電極3と接地電極4との半田16を、半田ごてを用いて溶融させると、貫通孔5を介して第2の接地電極8上にある半田16にも熱が伝導するため、第2の接地電極8上の半田16も同時に溶融させることができ、また溶融した半田16が貫通孔5を通ってお互いに流動するため、接地電極4と第2の接地電極8とにおける半田量の偏りをなくすことができた。
次に、高周波デバイス実装基板1に接続した同軸コネクタと測定器とをケーブルによって接続し、高周波デバイスの高周波特性を測定した。
この測定中に、比較例では同軸コネクタと測定装置とをつなげるケーブルによって加わる力によって同軸コネクタが外れたものがあったが、実施例では、図5に示したように、同軸コネクタの外周導体に対して高周波デバイス実装基板1の裏面の第2の接地電極8側から貫通孔5を通って主面の接地電極4側の外周導体にまで連続して半田16を存在させることができたため、強固に高周波デバイス実装基板1と同軸コネクタを接続することができ、同軸コネクタが外れることはなかった。
次に、同軸コネクタを高周波デバイス実装基板1から取り外した。
比較例の場合は、同軸コネクタを取り外すためには、まず第2の接地電極8の半田を半田吸い取り器(製造元:ハッコー社製、商品名:半田除去ステーション24V474)を用いて除去し、同軸コネクタと高周波デバイス実装基板1との接合が信号電極3及び接地電極4上の半田のみによって保持される状態とした後に、信号電極3と接地電極4との半田を溶融して同軸コネクタを高周波デバイス実装基板1から取り外した。
これに対して実施例の場合は、信号電極3と接地電極4との半田16を、半田ごてを用いて溶融させると、貫通孔5を介して第2の接地電極8上にある半田16にも熱が伝導するため、第2の接地電極8上の半田16も同時に溶融させることができた。このため、比較例に比べて非常に容易に短時間で同軸コネクタを取り外すことができた。
このように、実施例は比較例に比べて、半田吸い取り器を使用する必要がなく、片面の半田16に半田ごてを用いて熱を加えるだけでもう片面の半田16も溶融させて同軸コネクタを取り外すことができ、高周波デバイス実装基板1及び高周波デバイスに熱が加わる時間を極めて短くすることができた。
次に、高周波デバイスを取り外した。実施例と比較例とをともにホットプレート上に載置し、加熱することによりクリーム半田を溶融させ、ピンセットを用いて高周波デバイスを取り外した。
その後に、取り外された高周波デバイスの高周波特性を測定した。その結果、本発明の実施例の高周波デバイス実装基板1を用いた場合では上記の一連の作業の前後で特性の劣化した高周波デバイスは無かったが、比較例の高周波デバイス実装基板を用いた場合には同軸コネクタの取り付け及び取り外し時に加えられた熱によって、高周波特性の劣化した高周波デバイスが発生した。
<第2の実施例>
次に、本発明の高周波デバイスの製造方法の第2の実施例について説明する。高周波デバイス実装基板1の主面の上面図は第1の実施例と同様であるが、図13に図11と同様の拡大図で示すように、接地電極4の信号電極3と反対側の端部に位置する貫通孔5Aから、回路基板10の外周部から中央部に向かって貫通孔5と同様の寸法の2個の貫通孔5′を設置した点が異なっている。また、断面図は第1の実施例と同様である。
第1の実施例では、図8に示すように、接地電極4の上面と信号電極3の上面とに存在する半田16の分布が半田16の表面張力のために接近しており、半田量によってはこれら半田16を介して短絡する場合があった。
本実施例のように、接地電極4に貫通孔5′を設けることで、半田16が図7に示すように貫通孔5′に流れ込むため、接地電極4の上部に存在する半田16を信号電極3からやや遠ざかるように分布させることができたため、信号電極3と接地電極4とが半田16を介して短絡することがなかった。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。また、本発明の範囲は、各請求項の構成を任意に組み合わせたものにも及ぶ。
例えば、回路基板の絶縁体層の材料としては、実施例に挙げた材料に限定されるものではなく、例えばテトラフルオロエチレンやBTレジン等の有機材料や、アルミナ等のセラミックス、あるいはアルミナを主成分とするガラスセラミックス等の無機材料を用いてもよい。
また、絶縁体層、絶縁体層の裏面を覆う導体層及び接地導体層の積層数は任意でよい。以上の例では接地導体層13の他にも裏面側にさらに接地導体層20を設けた例を示したが、この接地導体層20は省略しても構わない。
また、貫通孔5の形状は図1等では円形で示したが、形状は任意でよい。また、位置についても回路基板10の外周から中心部に向かって中心部側に多少入った領域に設けたが、回路基板10の外周に貫通孔を長さ方向に開口させて形成し、その内面に導体層7を被着していわゆるキャスタレーション導体として、回路基板10の外周側面を介して接地電極4と接地導体層13,20及び第2の接地電極8とを接続するようにしてもよい。
また、信号線6の特性インピーダンスとしては50Ωに限定されるものではなく、高周波デバイスを用いるシステムの特性インピーダンスに合わせて設定すればよい。
また、以上の説明では信号線6は高周波デバイス実装基板1の表面に配置されている場合を示したが、図14に示すように、信号線のうち何本かが絶縁体層の内部に配置されていても構わない。この場合には、互いに異なる層に信号線を設けることにより、厚み方向にも信号線が対向しなくなるので、それら信号線間のアイソレーション特性をより向上させることができ、それによって、高周波デバイスの特性への影響をより低減でき、あるいはその特性をより良好に発揮させることができる。
また、説明に用いた図では高周波デバイス実装基板1と同軸コネクタとが接続される端子(信号電極3と接地電極4との組)が3組ある場合を示したが、その数は高周波デバイスの端子数に合わせて任意でよい。
また、高周波デバイス実装基板1の表面のうち、半田と接触する必要がない部分をソルダーレジスト等で保護しても構わない。このようにすることにより、半田を接触させたい部分のみに半田を存在させることができるとともに、信号線6等の導体同士が余分な半田を介して短絡することを防止することができる。
さらに、高周波デバイスとしては、圧電体フィルタやデュプレクサに限定されるものではなく、移動体通信機器や無線LAN,ETC等の高周波信号処理用途やメインボード(マザーボード)で用いられる高周波デバイスの全てに適用が可能である。
本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板の一例を示す平面図である。
図1に示す例のA−A′線で切断した要部断面図である。
本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板の他の例を示す裏面図である。
図3に示す例の、図1のA−A′線で切断した要部断面図である。
図3に示す例を同軸コネクタと半田で接続した場合の、図1のB−B′線で切断した要部断面図である。
(a),(b)は、本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板のさらに他の例を示す主面の上面図である。
図6に示す例のC−C′線で切断した要部断面図である。
比較例の高周波デバイス実装基板の図7と同様の要部断面図である。
本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板のさらに他の例を示す平面図である。
従来の一般的な高周波デバイス実装基板と、それに接続された高周波デバイス及び同軸コネクタとの概略斜視図である。
図9における領域Dの拡大図である。
本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板の例における領域Dの裏面の拡大図である。
本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板の例における領域Dの拡大図である。
回路基板の中に信号線を形成した本発明の高周波デバイスの製造方法に使用される実装基板を示す断面図である。
符号の説明
1:高周波デバイス実装基板
2:端子電極
3:信号電極
4:接地電極
5,5′,5A:貫通孔
6:信号線
7:導体層
8:第2の接地電極
9:表面接地導体層
9′:裏面接地導体層
10:回路基板
11:高周波デバイス
12,19,21:絶縁体層
13,20:接地導体層
14:同軸コネクタの中心導体
15:同軸コネクタの外周導体
16:半田
17:貫通孔
23:信号電極
24:接地電極
25:貫通孔
30:電子部品