JP2008274428A - 金属薄膜の製造方法、素子、積層体の製造方法、および有機el素子 - Google Patents

金属薄膜の製造方法、素子、積層体の製造方法、および有機el素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 導電性と可視光透過性とを両立させる導電性と可視光透過性とを両立させる金属薄膜の製造方法とその金属薄膜を用いた素子、および、導電性と可視光透過性とを両立させる金属薄膜の層を含む2以上の層からなる積層体の製造方法とその金属薄膜を用いた有機EL素子を提供する。
【解決手段】
基板の表面をプラズマ処理によって清浄化し、その後スパッタリングにより金属薄膜を成膜した。プラズマ処理時間が2分の場合(Dc1)、表面抵抗率が急激に増大する臨界膜厚Dcは非常に大きくなったが、プラズマ処理時間を5分とすると(Dc2)、膜厚極限まで薄くすることができた。さらにプラズマ処理時間を10分とすると(Dc3)、表面粗さが増大し、Dcは大きくなった。
【選択図】図3

Description

本発明は基体上に成膜される金属薄膜の製造方法とその金属薄膜を用いた素子、および、金属薄膜の層を含む2以上の層からなる積層体の製造方法とその金属薄膜を用いた有機EL素子に関する。
透明性と導電性とを併せ持つ透明導電性薄膜は、表示素子用透明電極、太陽電池電極、タッチパネル電極、調光膜電極、熱線遮蔽膜、電磁波遮蔽膜、帯電防止膜、等の機能膜として広く用いられている。こうした機能膜に求められる透明性等の光学的特性および導電性等の電気的特性はその適用分野、適用部品、デバイス、等により千差万別である。
透明導電性薄膜としては公知のIn2O3 、SnO2、およびそれらの複合酸化物ITO、Alを添加したZnO、および、Au, Ag, Pd, 等の金属薄膜などがある。
上述した透明導電性薄膜のうち、透明性、導電性、加工性、等の観点から実用されているのはITO膜がほとんどでありその作製法はあらゆる成膜手段で検討されている。具体的には、スパッタリング法、真空蒸着法、化学的気相成長法(CVD法)、ゾルーゲル法等により詳細に検討され、基板温度300℃で1x10-4Ωcm程度のITO成膜条件が開示されている(非特許文献1参照)。
一方、上述のITO等の透明導電性薄膜は、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display、FPD)の高精細化、低消費電力化大面積化にともなう需要の拡大が予想されており、主な材料となるInの価格高騰、資源枯渇などが懸念される。こうした背景からごく最近新しい透明導電性薄膜材料系の研究に関連し複数の報告がなされている(非特許文献2、非特許文献3参照)。
ところで、有機EL(Organic Light Emitting Diode ,OLED)は、液晶と異なるいくつかの特徴を有し次世代のFPDの本命として国内外で研究開発が盛んに行われてきた。これらの応用製品はすべて従来型のガラス基板上に形成された反射型有機EL素子である。その典型的な構造を図6に示す。
発光層は、Mg-Al,Al等の金属陰極から注入される電子を輸送し同時に発光機能を有する層であって、Al錯体(Alq3)等が用いられる。また正孔輸送層は、In2O3-SnO2(ITO)等の酸化物透明導電膜(陽極)から注入される正孔を発光層に輸送する機能を持つ。このように陽極、陰極から注入された正孔と電子が発光層内で結合しそのエネルギーが発光材Alq3を励起し自発光が得られる。
上述したような素子を構成する膜の厚さは非常に薄く、また、液晶に比し自発光、直流駆動可能などの特性があり、極限まで薄く形成したFPDの製造が可能となる。図7に典型的な反射型有機EL素子の発光特性を示す。
近年、有機ELの更に多様な応用を狙った試みが行われている。その一つに、超薄ガラスや透明樹脂フィルムを基板とした透過型有機EL素子や透過型フレッキシブル有機ELを用いたFPDのニーズも高まっている。これらを実現するためには、図6に示す反射板を兼ね電子供給源として機能する不透明なMg-Al,Al等の金属膜を可視光透過性にする必要がある。
従って、現在研究開発中の透過型有機EL素子の電子供給陰極電極には、正孔供給陽極電極として使われているITO等の酸化物透明導電膜が使われている。
Thin Solid Films, 226,104(1993) H.Hosono,"Current status and perspective of transparent conductive Oxides", Seramikkusu 42, 2(2007) H. Hitotsugi, et al,"Ta doped anatase TiO2 Epitaxial film as transparent conducting oxides, J.J.Appl.Phys. 86, 252101(2005)
しかし、ITOでは面内の導電性は確保できるが発光機能を有するAl錯体(Alq3)への電子注入障壁が大きく効率の良い電子注入が出来ない。
この電子注入障壁は有機EL素子を構成する薄膜物質固有のバンド構造に起因するものである。仕事関数5eVのITOから3eVの発光層Alq3に電子を供給するさまざまな工夫が行われている。最もよく知られている中間層は銅フタロシアニン(CuPc)でありその仕事関数はおおよそ3.7eVである。
しかしながら、こうした工夫にもかかわらず現在の透過型有機EL素子の可視光透過率は電子供給陰極電極の透過率に支配されることになり、実際の可視光透過率は30%以下と低く、透過型素子としての機能不足によりその新しい用途も見定められない状態にある。
また、上述したように、ITOはInの価格高騰、資源枯渇などの問題がある。
本発明の目的は、導電性と可視光透過性とを両立させる金属薄膜の製造方法とその金属薄膜を用いた素子、および、導電性と可視光透過性とを両立させる金属薄膜の層を含む2以上の層からなる積層体の製造方法とその金属薄膜を用いた有機EL素子を提供することである。
本発明の発明者らは、フィルム基板にも適用可能な分光透過率の高い透明導電性薄膜の製造方法を検討し、導電膜として金属膜を用いることとした。前述のように、金属膜は一般に薄くすれば光を透過するようになるが同時に導電性を失うことになる。このパラドックスは金属薄膜の宿命と考えられていた。
薄膜の成長様式の一つにFrank- van der MerWe モデル(FMモデル)がある。これは一層一層膜が成長するタイプである。また、金属原子がクラスター状となり積み重なる成長モデルはVolmer-Weber モデル(VWモデル)と呼ばれている。後者の成長モデルでは導電性は期待できずまた、膜厚の増加とともに可視光透過性も急速に失われる。これらの成長モデルは多くの薄膜成長観察結果を経験的に分類したものである。
今膜を構成する金属原子同士の結合エネルギーをEM-M、金属原子と基板との結合エネルギーをEM-Sとすると、FMモデルではEM-S>EM-M、VWモデルではEM-S<EM-Mが必要条件と考えられる。もし、金属薄膜の成長堆積過程でこのEM-S、EM-Mを自在に制御することが出来れば従来のパラドックスを破り新しい次元の薄膜を作製することが可能となると考えられる。
上述したコンセプトに基づき、上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、基体上に金属の薄膜を成膜する金属薄膜の製造方法であって、前記金属の金属原子同士の結合エネルギーと、前記金属原子と前記基体との結合エネルギーと、の相対的な大きさの比率を調整した状態で、前記基体に金属薄膜を成膜することを特徴とする金属薄膜の製造方法である。
基体上に金属薄膜を成膜させる際、その成長モデルは、金属原子同士の結合エネルギーEM-Mと、金属原子と基体との結合エネルギーEM-Sとの相対的な大きさの比率によって定まるため、これらのエネルギーを調整することで、成長モデルを制御することができる。
金属薄膜は、その成長モデルに応じて、金属薄膜が同じ膜厚であっても導電性が変化する。具体的には、EM-S>EM-Mであると、金属原子が基板上に膜状に(上述したFMモデルが支配的となって)形成されるため、同じ膜厚であれば、他の成長モデルよりも高い導電性を示すようになる。
よって、上述した金属薄膜の製造方法であれば、可視光透過性が高くなるように膜厚を小さくしても、高い導電性を維持することができるため、導電性と可視光透過性とを両立させた金属薄膜を製造することができる。
ところで、上述した金属原子同士の結合エネルギーと、金属原子と基体との結合エネルギーと、の大小関係の調整は、請求項2に記載したように、前記基体の表面の清浄化により実現するとよい。
このような金属薄膜の製造方法であれば、基体の表面の清浄化により、金属原子と基板との結合エネルギーを大きくすることができるため、上述したFMモデルが支配的となる結果、導電性と可視光透過性とを両立させた金属薄膜を製造することができる。
請求項3に記載の発明は、基体上に金属の薄膜を成膜する金属薄膜の製造方法であって、前記基体の表面を清浄化し、次いで前記基体に金属薄膜を成膜することを特徴とする金属薄膜の製造方法である。
このような金属薄膜の製造方法では、基体の表面を適切に清浄化することで、成膜された金属薄膜の導電性を向上させることができるため、可視光透過性が高くなるように膜厚を小さくしても、高い導電性を維持することができ、導電性と可視光透過性とを両立させた金属薄膜を製造することができる。
ところで、上記請求項2または請求項3に記載の金属薄膜の製造方法において、前記清浄化は、請求項4に記載のように、前記基体に対し、プラズマ照射、ラジカル照射、イオン照射、電子照射、レーザ照射、加熱のいずれかを行うことで実現することとしてもよい。
このような金属薄膜の製造方法であれば、金属薄膜の導電性を調整することに適した基体表面の清浄化を行うことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法において、前記金属薄膜が、可視光透過率が70%以上であることを特徴とする。
このような金属薄膜の製造方法にて製造された金属薄膜は、高い可視光透過率を有するため、高い可視光透過性が必要とされる箇所、例えば透過性の積層体における一つの層として利用することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法において、前記金属薄膜が、表面抵抗率が100(Ω/□)以下であることを特徴とする。
このような金属薄膜の製造方法にて製造された金属薄膜は、高い可視光透過率を有するため、高い導電性が必要とされる分野、例えば表面帯電防止素子や選択遮蔽膜として利用することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法において、前記金属が、銅、銀、金、パラジウム、白金、コバルト、タングステン、ニッケル、モリブデン、チタンからなる群から選ばれる純金属または2種以上の金属の合金であることを特徴とする。
このような金属薄膜の製造方法であれば、上記金属を用いることで、導電性および可視光透過性に優れた金属薄膜を製造することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法であって、前記成膜が、スパッタリングにより実現されることを特徴とする。
このような金属薄膜の製造方法であれば、スパッタリングにより、導電性と可視光透過性とを両立させることに適した金属薄膜の製造を行うことができる。
請求項9に記載の発明は、基体と、請求項1から請求項8のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法にて前記基体に製造された金属薄膜と、からなることを特徴とする素子である。
このような素子であれば、金属薄膜の導電性および可視光透過性を利用して、表面帯電防止素子、液晶ディスプレイにおける電極、電磁遮蔽膜や熱線遮蔽膜などの選択遮蔽膜、などとして使用することができる。
請求項10に記載の発明は、金属薄膜の層を含む2以上の層からなる積層体の製造方法であって、前記金属薄膜が、スパッタリングにより成膜され、前記スパッタリングにおける成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2Torrであり、前記スパッタリングにおけるスパッタ電力が10〜80Wであることを特徴とする積層体の製造方法である。
このような積層体の製造方法であれば、導電性と可視光透過性とを両立させた金属薄膜を製造することができる。
なお、前記金属薄膜が成膜されるベースとなる層は、請求項11に記載の積層体の製造方法のように、有機薄膜の層であってもよい。
このように構成された積層体の製造方法であれば、有機薄膜上に導電性と可視光透過性とを備える金属薄膜を成膜することができる。有機薄膜としては、例えばAlq3などの発光材料が考えられる。このような発光材料に対して金属薄膜を成膜すると、発光材料への電子の注入を促進することができ、かつ、透過性を維持することができるため都合がよい。
請求項12に記載の発明は、少なくとも、陽極層と、正孔輸送層と、発光層と、陰極層とをこの順に配設してなる有機EL素子であって、前記陰極層は透明導電性膜であり、前記陰極層と前記発光層との間に、透明金属薄膜の層が配置されることを特徴とする有機EL素子である。
このように構成された有機EL素子であれば、素子全体として透過性を有することとなるため、表示機能と可視光透過機能とを備えるディスプレイを製造することができるようになる。
なお、上述した有機EL素子における透明金属薄膜は、請求項13に記載のように、スパッタリングにより成膜され、前記スパッタリングにおける成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2Torrであり、前記スパッタリングにおけるスパッタ電力が10〜80Wであることとしてもよい。
このように構成された有機EL素子は、金属薄膜が高い可視光透過性および導電性を有しているため、有機EL素子全体の透過性を高く保ち、かつ、陰極層から発光層への電子の移動を促進させることができる。
また、上述した有機EL素子における前記陰極層は、請求項14に記載のように、ITO膜を用いることとしてもよい。
このように構成された有機EL素子は、高い透過性を有するため、高い透過性を必要とする様々な分野において使用することができる。
以下に、本発明の実施形態を説明する。
本実施例では、スパッタリングにより基板(本発明における基体)への金属薄膜の成膜を行い、可視光透過性と導電性とを評価した。
スパッタリングによる金属薄膜の成膜条件としては、基板表面処理条件、ターゲット2/基板3間距離、スパッタ電力、スパッタガス圧、膜成長速度、等が挙げられる。ここでは、金属原子同士の結合エネルギーEM-M、金属原子と基板との結合エネルギーEM-Sに強い影響を与える因子として基板表面処理条件を選択し、最適な基板表面処理条件を検討した。
[基体への金属薄膜の製造方法]
(1)プラズマによる基板表面処理(プラズマ処理)
膜と基板との密着性が不十分な場合、成膜に先立ち基板表面をプラズマにさらしイオンや電子による表面吸着汚染層の除去による清浄化が行われる。本実施例では、EM-MとEM-Sとを調整するためにプラズマ処理を用いた。プラズマ処理の処理条件を以下に示す。
基板:ガラス
RF電力:100W
処理ガス:アルゴン
処理時間:2分(表面処理条件1)、5分(同条件2)、10分(同条件3)
(2)スパッタリングによる金属薄膜の成膜
本実施例では、金属薄膜の成膜をスパッタリング法により実施した。図1は代表的なスパッタ成膜装置である。成膜チャンバー1内は、膜として堆積させる金属材料(出発材料)からなるターゲット2と膜を堆積させる基板3で構成される。通常、成膜チャンバー1内は高真空に排気され、その後Ar等の不活性ガスまたはArと反応ガスO2、N2、等との混合ガス等を5x10-1Pa程度まで導入し、ターゲット2に直流または高周波電力を印加すると、プラズマ放電が始まりスパッタ成膜が開始される。
本実施例におけるスパッタリングの処理条件を以下に示す。
ターゲット:Cu
成膜圧力:3.75×10-2Torr
スパッタ電力:40W
基板-ターゲット間距離:12cm
基板:ガラス(プラズマ処理済)
上述したスパッタリングの条件は、洗浄前の基板の状態、成膜チャンバー1にセットする間に基板に付着した汚れなどにより最適な値が変化する。
スパッタリングの条件としては、成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2Torr、スパッタ電力が10〜80W、基板-ターゲット間距離が8〜15cmの間にて設定可能である。さらに、成膜圧力が2.25×10-2〜3.75×10-2Torr、スパッタ電力が30〜50W、基板-ターゲット間距離が10〜12cmの間に設定されることで、より高品質の金属薄膜を製造することができた。
[評価]
(1)基板表面評価
上述したプラズマによる基板表面処理後の基板の表面清浄度を、水に対する接触角により評価した。また、基板表面の状態評価を光電子分光法(XPS)による表層2nm程度の組成評価により行った。
基板の表面処理時間と接触角との関係を図2に示す。Arプラズマ処理時間と共に接触角は急激に変化し約5分の処理により4度まで低下するがその後さらに長時間の処理により接触角は斬減を続けることがわかる。
また、XPSによる表面組成の評価結果から、5分の処理により汚染層はほぼ完全に除去されていることが判った。プラズマ処理により表面が清浄化された後も接触角が減少を続けることは、表面の粗さの増大によるものであることが原子間力顕微鏡(AFM)により確認された。この現象は古くからよく知られたWenzelの理論により解釈することが出来る。
(2)金属薄膜の可視光透過性および導電性の評価
(2−1)評価手法
成膜された金属薄膜の膜厚は通常表面粗さ計、原子間力顕微鏡(AFM)または干渉膜厚計、等により計測することが出来るが、本実施例ではAFMにより計測した。成膜速度は成膜時間と膜厚との関係から求めた。
薄膜の可視光透過率は分光光度計により500nmの波長域で評価した。また、導電性については通常の4端子法により表面抵抗率(Ω/ □)を計測した。また、膜厚による補正により表面抵抗率を体積抵抗率(Ω・cm)に換算した。
(2−2)導電性の評価
スパッタ成膜されたCuの膜厚と表面抵抗(Ω/ □)との関係を図3に示す。
同図から、プラズマ処理条件により、表面抵抗率が100(Ω/ □)を超えて急激に増大する臨界膜厚Dc(Dc1=18nm、Dc2=8nm、Dc3=10nm、それぞれ処理条件1〜3に対応)が著しく影響を受けることが判る。表面抵抗の増大点に相当するDcは導電性連続膜と絶縁性不連続膜の境界を示す膜厚であり、このDcより薄い膜厚となると、表面抵抗が増大し、導電性が低下することとなる。
図3の結果は以下のように理解することが出来る。
・表面処理条件1
基板表面の清浄化が不十分で堆積するCu同士の結合エネルギーEM-MがCuと基板原子との結合エネルギーEM-Sより大きくVWモデル成長が10nm以上の膜厚領域で支配的になる結果、Dcが非常に大きくなる。
・表面処理条件2
基板表面処理の最適化によりEM-Mと EM-Sとのバランスが保たれ3〜4nmの膜厚極限まで薄く且つ導電性の連続膜としてFMモデル成長板と考えられる。
・表面処理条件3
基板表面処理時間をさらに長くすることにより逆にDcは増大するため、上記表面処理条件2と比較して、高い導電性を有する薄い膜厚の金属薄膜を形成することができなくなる。この現象は長時間の表面処理により表面粗さが増大したことにより、表面処理条件2より厚いDcにおいて絶縁性不連続膜になったと推定される。
(2−3)可視光透過率の評価
可視光透過率を測定した結果、表面処理条件1では可視光透過率は約40%(膜厚18nm)であるが表面処理条件2では約70%(膜厚8nm)、表面処理条件3では約75%(膜厚10nm)であった。
[効果]
図3から、基板表面処理条件、つまりEM-M、EM-Sを最適化することにより、数nm以下の膜厚まで導電性を保ったまま可視光透過率70%以上を実現できることがわかった。本発明の金属薄膜の製造方法の進歩性、有用性を端的に示す好例である。
[本実施例のその他の態様]
可視光透過性および導電性を有する金属薄膜の製造は、前述の手法によりガラス基板上で実現できることが実証された。基板としてはガラスのほかにプラスチック、セラミックス、フィルムを用いることが考えられるが、いずれの場合もEM-Mと EM-Sとの整合を取る表面処理条件の検討により、可視光透過性および導電性を有する金属薄膜の製造が実現できる。その際には、上述したプラズマ照射のほか、ラジカル照射、イオン照射、電子照射、レーザ照射、加熱などの手法を採ることができる。
また、金属材料の選定においては、酸化物生成の標準自由エネルギー、金属の凝集エネルギー、金属の電気抵抗率、金属の消衰係数、等を考慮して決めることができる。金属材料としては、上述した銅のほか、銀、金、パラジウム、白金、コバルト、タングステン、ニッケル、モリブデン、チタンなどを用いることができる。
なお、より低抵抗の導電性薄膜を作製する場合には、すでに開示されている方法による膜構成により対応することが出来る。例えば、特開平9−57892、特開平10−278159、特開平11−38428、特開平9−11390、特開平5−98420、特開2001−164382、特開2003−115393、等がある。
本実施例では、金属薄膜の層を有する有機EL素子を製造し、その有機EL素子の性能(発光輝度、可視光透過率)を評価した。
[有機EL素子の製造方法]
(1)製造手順の概要
以下の手順(A)〜(E)により有機EL素子を製造した。
(A)ガラス基板上にAr中でスパッタ法によりITO膜を120nm成膜
(B)上記ITO膜上に1X10-7Torrの真空下で蒸着によりトリフェニルジアミン(TPD;正孔輸送層)を約50nm成膜
(C)上記TPD上に1X10-7Torrの真空下で蒸着によりAlq3(発光層)を約50nm成膜
(D)上記Alq3上にAr中でスパッタ法により金属薄膜を成膜(詳細な処理条件は後述)
(E)上記金属薄膜上にAr中でスパッタ法によりITO膜を50nm成膜
なお、上記手順にて製造した有機EL素子構造を図4に示す。なお、金属薄膜を成膜せず(上記Dを行わず)ITOだけを陰極としたものが従来構造である。その場合のITO膜厚はおおよそ100nmである。
(2)金属薄膜の成膜処理の詳細
上述した手順(D)の処理条件(スパッタリング処理条件)を以下に示す。なお、上述した(A)〜(C)、(E)の手順は、一般的な手法であるため詳細は割愛する。
(2−1)スパッタリング処理条件
ターゲット:Ag,Cu,Au,W
成膜圧力:3.75×10-2Torr
スパッタ電力:40W
基板-ターゲット間距離:12cm
上述したスパッタリングの条件は、Alq3の成膜状況により最適な値が変化する。
スパッタリングの条件としては、成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2Torr、スパッタ電力が10〜80W、基板-ターゲット間距離が8〜15cmの間にて設定可能である。さらに、成膜圧力が2.25×10-2〜3.75×10-2Torr、スパッタ電力が30〜50W、基板-ターゲット間距離が10〜12cmの間に設定されることで、より高品質の金属薄膜を製造することができた。
[有機EL素子の評価]
上記手順にて製造した有機EL素子にDC電圧を印加しミノルタ輝度計T-10により発光輝度(cd/m2)を評価した。また、成膜された金属薄膜の膜厚をAFMにより計測し、可視光透過率を分光光度計により評価した。
電圧−輝度特性を図5に示す。同図から金属薄膜を挿入しないITOのみの従来構造に比べ、Ag,Au,Cuの挿入により発光開始電圧が低減されていることがわかる。また逆にWの場合は電圧上昇が見られる。
また、これらの素子の可視光透過率を挿入した金属薄膜の膜厚とともに表1に示す。
本発明による金属薄膜を含む素子の500nmの光の透過率が55%以上であるのに対し、従来の方法で作製した導電性Ag膜、Cu膜の透過率が著しく低く30%以下であることが判る。
なお、従来の方法による成膜条件を以下に示す。
スパッタガス:アルゴン
成膜圧力:5×10-3Torr
スパッタ電力:400W
基板-ターゲット間距離:10cm
有機EL素子の可視光透過率はそのままディスプレイの輝度となり表示機能を大きく左右する。図5および表1に示す実施例、比較例の結果は本発明の金属薄膜の有機ELの電子注入成陰極電極(電子注入機能を持つ陰極)としての進歩性を示すものである。特に、導電性を有し且つ50%以上の可視光透過率を有する金属薄膜の挿入が透過型有機EL素子の実現に重要な役割をすることが示された。
本発明の金属薄膜の作用効果は膜物質の持つ固有の仕事関数によるものと考えている。つまりITOおよびAlq3の仕事関数はそれぞれおおよそ5evおよび3evである。今回このITO(陰極)と Alq3間に挿入した金属薄膜の仕事関数は大方3〜5eV間に存在し透明導電性薄膜(ITO膜)中の電子が効率よくAlq3膜に注入されることにより低電圧発光が実現されたと考えられる、但しWの場合逆に高電圧化しているがこれは膜の一部が酸化等によりその仕事関数が変化している可能性がある。
本実施例では、上記実施例1の製造方法を用いた表面帯電防止素子の製造例と、その表面帯電防止効果を説明する。
樹脂製品等の帯電防止効果はその表面抵抗により決まる。樹脂の帯電列として塩化ビニール、アクリル、ポリエステル、ビニロン、アセテート等は負にまたナイロン、レーヨン、等は正に帯電することが知られている。また、その帯電量は2〜6kVにもなる。
本実施例では塩ビ板を用い帯電防止効果を確認した。金属薄膜はいずれもアルゴン雰囲気中でスパッタ法により塩ビ上に形成した、特に、膜とフィルムとの密着性を確保すべくフィルム表面処理を最適化した。以下に、詳細な処理条件を示す。
(3−1)プラズマ表面処理条件
RF電力:100W
処理ガス:アルゴン
処理時間:2分
(3−2)スパッタリング処理条件
ターゲット:Ag,Cu,Au,W
成膜圧力:3.75×10-2Torr
スパッタ電力:40W
基板-ターゲット間距離:12cm
スパッタリングの条件としては、成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2Torr、スパッタ電力が10〜80W、基板-ターゲット間距離が8〜15cmの間にて設定可能である。さらに、成膜圧力が2.25×10-2〜3.75×10-2Torr、スパッタ電力が30〜50W、基板-ターゲット間距離が10〜12cmの間に設定されることで、より高品質の金属薄膜を製造することができた。
表面帯電はシシド静電気株式会社製スタチロン-DZ3により評価した。また、可視光透過率は分光光度計により評価した。
フィルム上での最適化された表面抵抗値およびそのときの可視光透過率をまとめて表2に示す。また比較例としてITO膜を示す。
本発明の透明導電性薄膜の表面抵抗は低く、また帯電電圧も0.5〜4.1KVと十分低く、帯電防止効果が確認された。なお、比較例として示したITOにおいても十分の帯電防止効果が確認されたがその構成成分のInが希少金属として今後入手が困難になると懸念される事から本発明の透明導電性薄膜はその代替としての価値がある。
[金属薄膜の液晶ディスプレイへの適用]
本実施例では、上記実施例1の製造方法を用いて、液晶ディスプレイにおける電極を製造した。すなわち、従来は、液晶ディスプレイの電極は、ITO透明導電膜であったが、その代替として、実施例1の製造方法にて製造した透明導電膜を用いた。
実施例1の製造方法を用いて製造した透明導電膜に含まれる金属薄膜のような金属超薄膜のみでは、厚膜に比して電気抵抗は大きいことから大面積デイスプレイでは均一な電圧印加が難しいため、金属超薄膜 / ZnO系透明導電性酸化膜の2層構造電極として用いた。
この2層にするメリットとしてすでに指摘されているZnO系薄膜の保護機能がある。つまり、ZnO系膜膜と液晶分子との直接接触による劣化を妨げることが出来た。
[金属薄膜の選択遮蔽膜への適用]
本実施例では、上記実施例1の製造方法を用いて電磁遮蔽膜、熱線遮蔽膜などの選択遮蔽膜を製造した。これらは、他の薄膜と組み合わせることにより優れた特性を実現した。特に、電磁遮蔽膜はIT時代の安全性、信頼性向上にまた、熱線遮蔽機能は冷暖房負荷の低減にいずれも重要な役割をすることから関連産業分野からの期待は大きい。
代表的なスパッタ成膜装置 基板の表面処理時間と接触角との関係を示すグラフ スパッタ成膜されたCuの膜厚と表面抵抗(Ω/ □)との関係をを示すグラフ 透過型有機EL素子の構造を示す断面図 電圧−輝度特性を示すグラフ 従来の反射型有機EL素子の構造を示す断面図 従来の反射型有機EL素子の発光特性を示すグラフ
符号の説明
1…成膜チャンバー、2…ターゲット、3…基板

Claims (14)

  1. 基体上に金属の薄膜を成膜する金属薄膜の製造方法であって、
    前記金属の金属原子同士の結合エネルギーと、前記金属原子と前記基体との結合エネルギーと、の相対的な大きさの比率を調整した状態で、前記基体に金属薄膜を成膜する
    ことを特徴とする金属薄膜の製造方法。
  2. 前記調整は、前記基体の表面の清浄化により実現する
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の製造方法。
  3. 基体上に金属の薄膜を成膜する金属薄膜の製造方法であって、
    前記基体の表面を清浄化し、次いで前記基体に金属薄膜を成膜する
    ことを特徴とする金属薄膜の製造方法。
  4. 前記清浄化は、前記基体に対し、プラズマ照射、ラジカル照射、イオン照射、電子照射、レーザ照射、加熱のいずれかを行うことで実現する
    ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金属薄膜の製造方法。
  5. 前記金属薄膜は、可視光透過率が70%以上である
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法。
  6. 前記金属薄膜は、表面抵抗率が100(Ω/□)以下である
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法。
  7. 前記金属は、銅、銀、金、パラジウム、白金、コバルト、タングステン、ニッケル、モリブデン、チタンからなる群から選ばれる純金属または2種以上の金属の合金である
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法。
  8. 前記成膜は、スパッタリングにより実現する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法。
  9. 基体と、
    請求項1から請求項8のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法にて前記基体に製造された金属薄膜と、からなる
    ことを特徴とする素子。
  10. 金属薄膜の層を含む2以上の層からなる積層体の製造方法であって、
    前記金属薄膜は、スパッタリングにより成膜され、
    前記スパッタリングにおける成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2(Torr)であり、
    前記スパッタリングにおけるスパッタ電力が10〜80(W)である
    ことを特徴とする積層体の製造方法。
  11. 前記金属薄膜が成膜されるベースとなる層は、有機薄膜の層である
    ことを特徴とする請求項10に記載の積層体の製造方法。
  12. 少なくとも、陽極層と、正孔輸送層と、発光層と、陰極層とをこの順に配設してなる有機EL素子であって、
    前記陰極層は透明導電性膜であり、
    前記陰極層と前記発光層との間に、透明金属薄膜の層が配置される
    ことを特徴とする有機EL素子。
  13. 前記金属薄膜は、スパッタリングにより成膜され、
    前記スパッタリングにおける成膜圧力が7.5×10-3〜7.5×10-2(Torr)であり、
    前記スパッタリングにおけるスパッタ電力が10〜80(W)である
    ことを特徴とする請求項12に記載の有機EL素子。
  14. 前記陰極層は、ITO膜である
    ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の有機EL素子。
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