JP2008272863A - 気相合成ダイヤモンドチップおよびダイヤモンド工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】 気相合成法により超硬合金基台上に10〜1000μmの厚みでダイヤモンドを形成した気相合成ダイヤモンドチップおよびこのチップを設けたダイヤモンド工具で、耐摩耗性が高く、ダイヤモンドが基台や工具本体から剥離しにくく耐久性が高いダイヤモンドチップおよびダイヤモンド工具を提案する。
【解決手段】 超硬合金基台の少なくともダイヤモンドとの境界部は、WC粒子が溶融結合したWC集合体からなるものとする。超硬合金基台とダイヤモンドの境界部の少なくとも一部分は、WC集合体とダイヤモンドとが絡み合った形状とするのが好ましい。
【選択図】 図5
【解決手段】 超硬合金基台の少なくともダイヤモンドとの境界部は、WC粒子が溶融結合したWC集合体からなるものとする。超硬合金基台とダイヤモンドの境界部の少なくとも一部分は、WC集合体とダイヤモンドとが絡み合った形状とするのが好ましい。
【選択図】 図5
Description
本発明は、切削工具、耐摩耗工具及び耐摩耗部品などの耐摩耗性を向上させるために切刃部や摺動部に使用されるダイヤモンドチップおよびダイヤモンド工具に関するものである。
近年、ハイシリコンアルミニウム合金、金属基複合材料、硬質カーボン、CFRPなど難削材の切削加工の要求が増加しており、従来のハイスや超硬合金などの切削工具では著しく摩耗が進んで使用できないため、このような材料を加工する場合、耐摩耗性に極めて優れているダイヤモンド工具が一般的に用いられる。
ダイヤモンド工具の構造は様々なものがあり、大別するとダイヤモンド焼結体を工具本体にロー付けした後、ダイヤモンド焼結体に切れ刃や摺動部などの作用部位を設けたもの、合成または天然の単結晶ダイヤモンドの表面に特殊なメタライズ処理などを施し工具本体にロー付けした後、切れ刃や摺動部などの作用部位を設けたもの、あるいは超硬合金基材などを作用部位の形状に加工しておき、この表面に化学的気相合成法により膜状のダイヤモンドを形成したものなどに分けられる。なお、作用部位の形状に加工するには、ダイヤモンド砥石などによる研削加工、放電加工、またはレーザー加工などがある。
しかし、これらの従来の工具においては、各々のダイヤモンドの製法に起因する問題点があり、上記の難削材に工具を適用するには、多々問題があり更に改善された工具が必要になる。
第1に、ダイヤモンド焼結体を用いた工具においては、素材となるダイヤモンド焼結体はダイヤモンドの微粒子と焼結助剤となるCoなどの金属とを混合し、圧力が約5GPa、温度が1500℃の条件下で液相焼結法によって製造される。この時、基台となる超硬合金をダイヤモンドと焼結助剤の混合粉と同時焼結することによって、ダイヤモンドと超硬合金とが一体化した素材に仕上がり、必要に応じてこの素材をワイヤー放電加工などで切り出し、シャンクにロー付けした後に作用部位を所定形状に加工する。
このダイヤモンド焼結体ロー付け工具においては、超硬合金基台がダイヤモンドと一体化しているため、工具本体へのロー付けは容易であり、工具製造技術は確立されていると言える。しかし、焼結体の結合助剤としてCoなどの金属が混合されるため、アルミニウム合金やその他の非鉄金属の加工においては被削材の溶着を引き起こし、加工面の高精度加工やMQL加工などを行う場合には、課題が残る。
第2に、合成または天然の単結晶ダイヤモンドをロー付けした工具においては、合成ダイヤモンドは高温・高圧法で製造され、鉄・コバルト・ニッケルなどの金属溶媒を用い、炭素の相平衡図においてのダイヤモンド安定領域で結晶を成長させる温度差法で製造されるのが主流である。このような条件下で種結晶からの成長過程を経るため、素材となる単結晶ダイヤモンドの大きさは自ずと限られ、大型の工具を製造することは不可能である。また、天然ダイヤモンドは工業的に製造したものではないため、不純物などの影響による品質のばらつきが出やすく、大きさは制御できない。さらに、単結晶ダイヤモンドをシャンクにロー付けする場合に、ダイヤモンドは金属との濡れ性が極めて悪いため、ロー付け面に特殊なメタライズ処理等が必要となる点も改善が求められる課題である。
第3に、化学的気相合成法により薄膜状のダイヤモンドを形成する工具では、ダイヤモンドの製法はメタン、エタン、エタノールなどカーボン原子を含む原料ガスを水素で希釈し、これを分解することによって超硬合金基材に膜状のダイヤモンドを析出させる。高温・高圧法との大きな違いは、低圧かつ1000℃を下回る比較的低温でダイヤモンド合成が可能である点である。この工具の課題は、工具としての被膜の表面あらさにある。近年、気相合成技術の進歩で結晶粒の微細化が進み0.1μm程度のダイヤモンド粒子径の被覆が可能となり、非鉄金属を加工した時の溶着問題の解決に大きな進歩が見られた。しかし、溶着問題の解決とMQL加工の実現には表面あらさをさらに向上させる必要がある。また、薄膜状のダイヤモンドであるが故に、作用部位が摩耗した時に再研磨はほとんど出来ないため、ランニングコスト面でも課題が残る。
これらの問題を解決するものとして、特許文献1に記載の工具がある。この工具は、気相合成法により1〜1000μmの厚さに析出しているダイヤモンド膜を表面に有する析出基板(上記の基台に相当)が工具基体(上記の工具本体に相当)上にロー付けされたものである。このような構成の工具とすることで、バインダーを含有しない緻密な膜状ダイヤモンドのため耐摩耗性が高く、単結晶ダイヤモンドのような結晶の異方性がないので、刃付け加工などが容易で安定した加工ができるものとされている。
しかしながら、特許文献1の工具であっても、ハイシリコンアルミニウム合金、金属基複合材料、硬質カーボン、CFRPなど難削材の切削加工においては、依然として問題が残る。難削材の加工においては、作用部位への負荷が大きいため、摩耗しやすい上、ダイヤモンドと基台との接合力が不足し、境界部で剥離が起こるような問題が発生する。このようなことから、本発明では、耐摩耗性が高いとともに、ダイヤモンドが基台や工具本体から剥離しにくく耐久性が高いダイヤモンドチップおよびダイヤモンド工具を提案するものである。
本発明の気相合成ダイヤモンドチップの第1の特徴は、気相合成法により超硬合金基台上に10〜1000μmの厚みでダイヤモンドを形成した気相合成ダイヤモンドチップであって、前記超硬合金基台の少なくとも前記ダイヤモンドとの境界部は、WC粒子が溶融結合したWC集合体からなることである。これにより、超硬合金基台上に気相合成ダイヤモンドを積層した場合の最大の問題であるWC粒子が脱落することによるダイヤモンドの離脱を防止する効果がある。そして、超硬合金基台と気相合成ダイヤモンドとが一体化された構造となっていることで両者の接合力は大幅に向上するので、結果的に工具本体とダイヤモンドとの接合力も向上させて耐久性を高くすることができ、ダイヤモンドの作用部位の寿命を向上させることが可能になる。
従来、気相合成ダイヤモンドは超硬合金などの基材に薄膜として被覆を行ったものが一般的であり、超硬合金製のインサート、ドリル、エンドミル、タップなどの工具母材表面に気相合成ダイヤモンドを被覆し、長寿命化を目的とする使い方がなされてきた。しかし、薄膜のダイヤモンドを被覆した工具であるが故に、ダイヤモンドが摩耗した時の再研磨は基本的にできなかったが、本発明のダイヤモンドチップは気相合成ダイヤモンドの厚みが厚いため、再研磨は可能である。
一方、気相合成ダイヤモンドの厚みを厚くしたチップ素材を作り、工具本体にロー付けなどにより接合して使用する気相合成ダイヤモンドチップは、例えばSi基板に気相合成ダイヤモンドを積層し、酸処理などでSiを除去してダイヤモンド単体のチップを得るものとして一般的に知られている。しかし、この方法では、工具本体にロー付けする際に、単結晶ダイヤモンドと同様、金属との濡れ性が極めて悪いので、ロー付け面にメタライズなどの特殊な処理を施す必要があるため、汎用性の面では課題が残されていた。本発明のダイヤモンドチップは、ダイヤモンドの厚みを厚くして寿命を延ばすとともに、ダイヤモンドと強固に接合された超硬合金基台が工具本体と接合されるため、特別な表面処理なども必要とせずに接合強度を向上させることができる。
さらに、合成または天然の単結晶ダイヤモンドを使った工具では、ダイヤモンドの製造限界の制約により大きな作用部位を有する工具や部材の製造が困難であるが、本発明のダイヤモンドチップは、熱フィラメントの気相合成法などにより、約2000℃に加熱されたWフィラメントを2次元または3次元的に配置し、これによって原料ガスを分解して結晶成長させるので、大面積の超硬合金基台にCoなどの結合金属を含有しないダイヤモンドを形成したチップとすることができる。
第2の特徴は、前記超硬合金基台の表面付近は、前記ダイヤモンドの一部が前記WC集合体の前記超硬合金基台側に回り込むように存在することである。このような構造にすれば、ダイヤモンドと超硬合金基台との接合強度をより高めることができる。
第3の特徴は、前記超硬合金基台と前記ダイヤモンドの境界部の少なくとも一部分は、前記WC集合体と前記ダイヤモンドとが絡み合った形状であることである。このような構造にすれば、ダイヤモンドと超硬合金基台との境界部でアンカー効果が得られ、接合強度を高めることができる。超硬合金基台の表面に凹凸を形成する方法としては、放電加工やレーザー加工などにより行うことが効率的である。
第4の特徴は、前記ダイヤモンドの結晶構造は、前記超硬合金基台との境界面からダイヤモンド表面に向かい柱状をなすことである。ダイヤモンドの結晶の構造を超硬合金基台側からダイヤモンド表面に向かい柱状の組織にすることで超硬合金基台との境界面と平行な方向へのクラックの進展が抑制され、広範囲にわたるダイヤモンドの脱落を防止することが可能になる。
第5の特徴は、前記ダイヤモンドの断面の結晶構造は、前記超硬合金基台との境界面からダイヤモンド表面にかけて、ラマンピークにおけるダイヤモンドピーク(DI)が増加し、無定型炭素ピーク(GI)が減少する傾斜機能を有することである。このような構造にすることで、超硬合金基台と気相合成ダイヤモンドとの熱膨張係数の差によって生じる境界面の剪断応力を緩和させることができ、超硬合金基台と気相合成ダイヤモンドとの接合力を向上させることができる。
第6の特徴は、前記ダイヤモンドの表面あらさは、Ra0.01μm以下であることである。このような表面あらさにするには、例えばダイヤモンドの表面をダイヤモンド砥石などを使い研磨を行う。これにより、ダイヤモンド表面と金属などの被加工物との濡れ性が極めて悪くなるため、ダイヤモンド表面へ被加工物が溶着するのを防止でき、MQL(Minimum Quantity Lubrication)加工が実現できる。気相合成ダイヤモンドの表面側は最終の成長面となるため、ダイヤモンド結晶成長が進み、結晶粒子径が5〜20μm程度に成長する。このような構造のダイヤモンドを切削工具、耐摩耗工具、あるいは耐摩耗部材に使用すると、溶着したり摺動部材へ傷を付けるなどの問題が発生する。そのため、ダイヤモンド表面を研磨して表面あらさを小さくして、このような問題を防止する。また、ダイヤモンド焼結体を使ったものと比べ、ダイヤモンドにCoなどの結合助剤が含まれていないので、研磨などによりダイヤモンドの表面あらさを小さくすると、大幅に溶着を防止することが可能になる。
また本発明のダイヤモンド工具の特徴は、上記のような気相合成ダイヤモンドチップを工具本体に接合したことである。上記の気相合成ダイヤモンドチップは、超硬合金基台を有しているので工具本体は超硬合金基台と接合することになる。そのため、工具本体にダイヤモンドを直接接合するものに比べて、大幅に接合力を向上させることが可能になる。
以上のような構成の気相合成ダイヤモンドチップは、超硬合金基台とダイヤモンドとが強固に接合しているため、工具本体などとの接合は超硬合金基台を介して接合できるので接合力が向上する。またロー付などを行う際に加熱しても、熱膨張係数の差によるダイヤモンドの離脱を抑えることができ、再研磨を行う際の加工抵抗によるダイヤモンドの離脱も防止できる。さらに、切削加工や摺動によりダイヤモンドの作用部位に高い剪断力が発生してもダイヤモンドが離脱することがない。従って、様々な状況においても、ダイヤモンドと超硬合金基台や工具本体との接合力が高くなって耐久性が向上し、寿命も向上する。
本発明の気相合成ダイヤモンドチップについて、例をあげて説明する。図1は所定の大きさに加工した超硬合金基台であり、この超硬合金基台のダイヤモンドを形成する面に前処理を行い凹凸を形成する。図2は凹凸を形成した後の状態を表す模式図である。この凹凸を形成するには、放電加工やレーザー加工を用いて行うが、凹凸を形成するのと同時に放電やレーザーの熱エネルギーによって、超硬合金基台表面のWC粒子同士を一体化させてWC集合体を形成させる。これにより、超硬合金基台の表面は、多数のWC集合体からなりWC集合体が凹凸を形成している。超硬合金基台の材質は、気相合成ダイヤモンドの成長を阻害するCo含有量が3〜10wt%のものを使用するのが好ましく、中でも4〜6wt%のCo含有量のものが望ましい。
次に、凹凸を形成した超硬合金基台表面に熱フィラメントCVD法により、気相合成ダイヤモンドを10〜1000μmの厚みで形成し、気相合成ダイヤモンド上面をスカイフ盤によりRa0.01μm以下になるまで研磨を行う。図3は、気相合成ダイヤモンドを形成し、上面を研磨した後のダイヤモンドチップを表す模式図である。なお、超硬合金基台と気相合成ダイヤモンドとの間の界面残留応力を過大にしない点と生産性の点からダイヤモンドの厚みは50〜200μmとするのが好ましく、研磨加工によって厚みを20μm程度除去して表面あらさを向上させるのが望ましい。
以上のようにして製作したダイヤモンドチップを工具本体にロー付けして使用できるチップとしての汎用性を持たせるため、各種用途に応じた寸法や形状のチップに切断するが、その方法としてレーザー加工などを用いる。具体的な切断方法として、図4に示すように、ダイヤモンド上面を研磨加工した際に微小なチッピングが発生しやすい外周部分を切断し除去する。図5は切断後のチップを表したものであるが、切断した面には超硬合金基台の表面に形成した凹凸が認められる(図5の点線で囲んだ枠部分を参照)。図6は、図5の点線枠部分を示した拡大模式図であり、図11、12、13は実際に製作したダイヤモンドチップを切断して研磨を行い、ダイヤモンドと超硬合金基台との境界部を見たSEM写真である。図12は図11の一部分を拡大したものであり、図13は図11や12とは別の部分を見たものである。図6や図13に示すように、超硬合金基台とダイヤモンドの境界部の一部分はWC集合体とダイヤモンドとが絡み合った形状になっており、言い換えると超硬合金基台側の凸部の根元にダイヤモンドの一部が入り込むような形状になっている。ダイヤモンドと超硬合金基台との境界面がこのように絡み合った形状になっていることで、より接合強度が向上する。
次に、このダイヤモンドチップの仕上げ加工として、図7(a)および(b)に示すように四角形、三角形、総型形状などの所定形状にレーザーで切断し、図8に示すような気相合成ダイヤモンドチップを得る。上記の切断方法に関しては、レーザー加工以外のものとして、気相合成ダイヤモンドにボロンをドーピングさせて導電性を付加することによって、ワイヤー放電加工による切断が可能となる。
以上のようにして得られたダイヤモンドチップをシャンクや工具本体にロー付けし、ダイヤモンド工具とする。シャンクにロー付けしたダイヤモンド工具の例を図9に示す。図9(a)はロー付けした後の状態であり、これに切れ刃を形成するために図9(b)に示すようにダイヤモンドチップのすくい面となる上面や逃げ面となる側面を研磨し、刃付けを行う。また、図10はリーマのような回転工具を示しており、工具本体にダイヤモンドチップをロー付けする。このような工具では、ダイヤモンドチップの大きさが大きいものが必要となるが、本発明のダイヤモンドチップによれば、大きなサイズのチップを製作することも可能であり、このような工具でも寿命や耐久性を大幅に向上させることが可能になる。
実施例1として、本発明の気相合成ダイヤモンドチップおよび結合助剤を含有する焼結ダイヤモンドチップをロー付けしたインサートチップを作成し、ハイシリコン含有アルミニウム合金であるA390(18%Si含有AL合金)の旋削加工を実施した。
本発明1として、まず図1に示すような超硬合金基台(5mm×5mm×1.5t)を準備し、5mm×5mmの面を銅タングステン電極による放電加工により、Rmax8μmとなるように凹凸を形成し、図2に示すように粗面化処理を施した。この時、放電による加工熱を利用して、超硬合金基台の表層部に存在するWC粒子同士を一体化し、WC集合体を形成する処理も行った。次に、熱フィラメントCVD法によりH2=2000sccm、CH4=20sccmの混合比の原料ガスで約120時間のダイヤモンド合成処理を実施し、厚みが約100μmの気相合成ダイヤモンドを超硬合金基台の表面に積層した。この後、スカイフ盤によりダイヤモンド上面を研磨加工し、約20μmの厚みを除去して、残存するダイヤモンドの厚みを80μmとした。この時の研磨面の表面あらさはRa0.008μmとなっており、図3に示す形状のダイヤモンドチップになっている。
続いて、図4および図7(b)に示すように、レーザーによってダイヤモンドチップを切断し、図8(b)に示す三角柱状のダイヤモンドチップを作成した。これを図9(a)に示すように、超硬合金(K10相当)のシャンクに約500℃でロー付けし、ダイヤモンドチップの上面と側面を研削加工して、図9(b)に示すようにダイヤモンドチップの角の部分に0.8Rの曲面を形成するとともに上面と側面との境界部に切れ刃を形成して、インサートチップを製作した。
比較例1として、ダイヤモンドチップの材料にCoの結合助剤を含有するダイヤモンド焼結体を使用し、ワイヤー放電加工でダイヤモンドチップを所定の形状に切断して本発明1と同様のシャンクにロー付けし、図9(b)に示す形状のインサートチップを製作した。
これら本発明1と比較例1を使い、切削速度800m/min、径方向切り込み0.5mm、送り方向切り込み0.1mm/回転の条件で被削材A390(18%Si含有AL合金)の旋削加工を実施した。加工は湿式連続切削で行い、切削液は水溶性エマルジョンを使用した。
このような加工試験を行った結果、切削距離が2500mの時点で、比較例1は逃げ面摩耗が60μmに達すると同時にすくい面においては被削材の溶着したものが脱着を繰り返し、被削材の加工面粗さがRmax5μmであったのに対し、本発明1は、逃げ面摩耗が30μmにとどまり、すくい面で被削材の溶着が発生せず、被削材の加工面粗さもRmax2.5μmと安定した結果が得られた。
以上の結果は、ダイヤモンドチップの材料が本発明1では結合助剤を含有せず、ダイヤモンド成分の割合が100%に近いことによる耐摩耗性の高さと、耐溶着性の高さがもたらした結果と考えられる。
実施例2として、本発明の気相合成ダイヤモンドチップを回転工具の外周にロウ付けして製作した直刃エンドミルと、超硬合金製のスパイラルエンドミルに熱フィラメントCVD法で約10μmの厚みのダイヤモンド膜を形成したエンドミルを用い、ADC12(10%Si含有AL合金)のミーリング加工を実施した。
本発明2として、まず図1に示すような超硬合金基台(10mm×10mm×1.5t)を準備し、10mm×10mmの面をレーザー加工により、Rmax5μmとなるように凹凸を形成し、図2に示すように粗面化処理を施した。この時、レーザーの加工熱を利用して、超硬合金基台の表層部に存在するWC粒子同士を一体化し、WC集合体を形成する処理も行った。次に、熱フィラメントCVD法によりH2=2000sccm、CH4=20sccmの混合比の原料ガスで約60時間のダイヤモンド合成処理を実施し、厚みが約50μmの気相合成ダイヤモンドを超硬合金基台の表面に積層した。この後、スカイフ盤によりダイヤモンド上面を研磨加工し、約20μmの厚みを除去して、残存するダイヤモンドの厚みを30μmとした。この時の研磨面の表面あらさはRa0.005μmとなっており、図3に示す形状のダイヤモンドチップになっている。
続いて、図4および図7(a)に示すように、レーザーによってダイヤモンドチップを切断し、図8(a)に示す四角柱状のチップを作成した。これを図10に示すように、超硬合金(超微粒子超硬合金)のシャンクに約600℃でロー付けし、ダイヤモンドチップの上面と側面を研削加工して、これらの面の境界部に切れ刃を形成し、φ8.0の直刃エンドミルを製作した。
比較例2として、図10に示す工具と同形状の超硬合金製φ8.0のスパイラルエンドミルを用意し、熱フィラメントCVD法により、膜厚10μmの気相合成ダイヤモンド膜を切れ刃周辺に形成したものを製作した。
これら本発明2と比較例2を使い、切削速度380m/min、送り速度0.05mm/刃、径方向切り込み0.1mmの条件で被削材ADC12(10%Si含有AL合金)の切削加工を行った。加工方法は、ダウンカットとし、加工雰囲気は切削液を用いず、エアーブローによる乾式切削とした。
以上のような加工試験を行った結果、加工距離が2000mの時点で、比較例2はすくい面への被削材の溶着が激しく、連続加工が困難になったのに対し、本発明2はすくい面への被削材の溶着は全く認められず、その後も連続加工が可能であった。さらに、この時点で比較例2のすくい面に堆積した被削材の溶着を水酸化カリウムで除去した後、引き続き同条件で加工を継続すると、3000mを加工した時点でダイヤモンド膜が摩耗して下地の超硬合金が露出し、同時に切れ刃周辺で連鎖的にダイヤモンド膜の剥離が発生した。
一方、本発明2は2000mを加工した時点から、水酸化カリウム等での被削材の溶着除去処理を行わずに引き続き加工を継続したが、4000mを加工した時点でもすくい面への被削材の溶着はほとんど無く、外周2番逃げ面の摩耗幅も約25μm程度で、引き続き加工することが可能であった。
以上の加工を行った時点で、工具切れ刃の再生を行うため、外周2番逃げ面の再研磨を試みた結果、比較例2は切れ刃周辺のダイヤモンド膜が剥離しているため、再研磨は不可能であったのに対し、本発明2は気相合成ダイヤモンドがその厚みの範囲内で摩耗しているに留まっていたため、再研磨により刃付けを行い、切れ刃を再生することが可能であった。
従来、ダイヤモンド焼結体や単結晶ダイヤモンドのチップに切れ刃を形成し、シャンクや工具本体に接合している各種切削工具や耐摩耗工具、あるいは耐摩耗部材などに利用することができる。
1 ダイヤモンドチップ
2 ダイヤモンド
2a ダイヤモンド上面
2b ダイヤモンド側面
2c WC集合体と絡み合っているダイヤモンド
3 超硬合金基台
4 WC集合体
4a ダイヤモンドと絡み合っているWC集合体
5 切れ刃
6 インサート
7 レーザ光
8 切断線
2 ダイヤモンド
2a ダイヤモンド上面
2b ダイヤモンド側面
2c WC集合体と絡み合っているダイヤモンド
3 超硬合金基台
4 WC集合体
4a ダイヤモンドと絡み合っているWC集合体
5 切れ刃
6 インサート
7 レーザ光
8 切断線
Claims (7)
- 気相合成法により超硬合金基台上に10〜1000μmの厚みでダイヤモンドを形成した気相合成ダイヤモンドチップであって、
前記超硬合金基台の少なくとも前記ダイヤモンドとの境界部は、WC粒子が溶融結合したWC集合体からなる気相合成ダイヤモンドチップ。 - 前記超硬合金基台と前記ダイヤモンドの境界部の少なくとも一部分は、前記WC集合体と前記ダイヤモンドとが絡み合った形状である請求項1に記載の気相合成ダイヤモンドチップ。
- 前記超硬合金基台の表面は、Rmax2〜10μmの凹凸を有する請求項1または2に記載の気相合成ダイヤモンドチップ。
- 前記ダイヤモンドの結晶構造は、前記超硬合金基台との境界面からダイヤモンド表面に向かい柱状をなす請求項1〜3のいずれかに記載の気相合成ダイヤモンドチップ。
- 前記ダイヤモンドの断面の結晶構造は、前記超硬合金基台との境界面からダイヤモンド表面にかけて、ラマンピークにおけるダイヤモンドピーク(DI)が増加し、無定型炭素ピーク(GI)が減少する傾斜機能を有する請求項1〜4のいずれかに記載の気相合成ダイヤモンドチップ。
- 前記ダイヤモンドの表面あらさは、Ra0.01μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の気相合成ダイヤモンドチップ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の気相合成ダイヤモンドチップを工具本体に接合したダイヤモンド工具。
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