JP2008266689A - 基材に金属薄膜を形成する方法及び金属薄膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 比抵抗の小さい金属薄膜を形成することが可能な、金属薄膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の基材上に金属薄膜を形成する方法は、基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いて金属薄膜を形成する方法であって、上記還元剤として、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いる。
【選択図】なし
【解決手段】 本発明の基材上に金属薄膜を形成する方法は、基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いて金属薄膜を形成する方法であって、上記還元剤として、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いる。
【選択図】なし
Description
本発明は、基材に金属薄膜を形成する方法及び金属薄膜形成装置に関するものである。より詳細には、ガラス、樹脂、セラミックス、シリコン等の基材に、直接、金属の薄膜を形成可能な、基材に金属薄膜を形成する方法及び金属薄膜形成装置に関する。
TV、携帯電話、PC等の液晶ディスプレイを用いた商品の市場が拡大するに伴い、液晶ディスプレイの高性能化、高システム化が要求されている。これに対応して、より比抵抗の小さい銅メッキによる実装基板の配線等、実装技術の高度化も要求されている。
従来、配線として使用される金属薄膜を、基板上に形成する方法のひとつとして、無電解メッキが採用されている。無電解メッキでは、従来、還元剤及び錯化剤として、ホルムアルデヒド及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が使用されている(例えば特許文献1を参照)。
しかし、還元剤として使用されるホルムアルデヒドは発ガン性が指摘されている。また、錯化剤として用いられるEDTAは難分解性物質であるため、EDTAを含む排水の処理は困難であり、その使用は制限されつつある。従って、このような物質を使用しないメッキ方法が求められている。
近年、上記問題点をふまえて、発ガン性の物質やEDTA等の難分解性物質を使用しないメッキ方法が、多く提案されている。例えば酢酸銅、還元助剤及び緩衝剤水溶液からなるメッキ液を用いて、直接基板上に金属薄膜を形成するメッキ法が提案されている(非特許文献1を参照)。
特開2002−75913(2002年3月15日公開)
MES2006論文集 第79頁(2006)
しかし、上述した、発ガン性の物質や難分解性物質を使用しないメッキ方法では、形成される金属薄膜の比抵抗が高くなるという課題を有している。この理由を以下に具体的に説明する。
非特許文献1には、還元助剤の種類によって、金属が還元されて析出する過程が異なることが示されている。つまり、還元助剤には、金属の粒子の形成を主として行なうものと、金属の粒子の成長を主として行なうものとがある。金属の粒子の形成を主として行なう還元助剤としてはクエン酸が例示できる。また、金属の粒子の成長を主として行なう還元助剤としてはギ酸が例示できる。
そして、クエン酸等の還元助剤を用いて、粒子の形成を優先して行なわせた場合には、金属薄膜を構成する金属の粒子の径が小さくなるため、当該粒子同士の粒界が多くなり、比抵抗が高くなる。また、ギ酸等の還元助剤を用いて、金属の粒子の成長を優先して行なわせた場合には、基材表面上に少量の金属の粒子が点在した状態で、個々の粒子が大きくなるため、基材表面における当該粒子の分散が粗くなり、比抵抗が大きくなる。
このように従来の発ガン性の物質や難分解性物質を使用しないメッキ方法では、還元助剤の性質のために、比抵抗の小さい金属薄膜を得ることが極めて困難であった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材上に、比抵抗の小さい金属薄膜を形成することが可能な、金属薄膜を形成する方法及びその装置を提供することにある。
本発明に係る方法は、上記課題を解決するために、基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いて金属薄膜を形成する方法であって、上記還元剤として、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記第一の還元剤によって上記金属のイオンは還元されて粒子として析出する。そして、当該金属の粒子は、上記第二の還元剤によって成長して、基材表面を薄く広く被覆する。これにより、ギ酸のような還元剤のみを用いて金属薄膜を形成した場合に比べて、比較的多くの金属の粒子が基材上を被覆して、さらに、第二の還元剤がそれぞれの粒子を成長させる。そのため、クエン酸のような還元剤のみを用いた場合に形成される金属の粒子の径に比べて径の大きい金属の粒子が、均一に基材上を被覆する。従って、比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
本発明に係る方法では、上記基材上に、上記第一の還元剤を含むメッキ液を供給した後に、上記第二の還元剤を含むメッキ液を供給することがより好ましい。
基材上に上記第一の還元剤が供給された後に、上記第二の還元剤が供給されるため、上記第一の還元剤によって、ある程度金属の粒子が形成された後に、上記第二の還元剤による当該粒子の成長が起こるため、効率よく金属薄膜を形成することができる。つまり、先に上記第二の還元剤を供給すると、当該第二の還元剤によって径の大きな金属の粒子が形成されて、このために金属のイオンが消費させる。そこで、上記第一の還元剤を供給した後に上記第二の還元剤を供給して、これを防ぐことができる。よって、効率よく比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
本発明に係る方法では、上記第一の還元剤によって、上記基材上の、金属薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、0.5倍以上0.8倍以下の表面積が上記粒子で被覆された後に、上記第二の還元剤を含むメッキ液の供給を開始することがより好ましい。
上記基材上の金属薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、0.5倍以上0.8倍を被覆する程度の金属の粒子が形成されて、当該粒子を成長させることで、さらにムラなく基材の表面を金属薄膜で被覆することができる。よって、さらに比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
本発明に係る方法では、上記第一の還元剤はクエン酸であることがより好ましい。
クエン酸は、銅を安定して析出させて銅の微粒子を形成することができる。そのため、上記金属のイオンとして銅のイオンを用いたとき、より比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
本発明に係る方法では、上記第二の還元剤はギ酸であることがより好ましい。
ギ酸は、銅を安定して析出させて銅の微粒子を成長させることができる。そのため、上記金属のイオンとして銅のイオンを用いたとき、より比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
本発明に係る金属薄膜形成装置は、上記課題を解決するために、基材に対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成させる第一の還元剤を含む第一のメッキ液を上記基材に供給する第一のメッキ液供給部、及び基材に対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤を含む第二のメッキ液を上記基材に供給する第二のメッキ液供給部とを備えることを特徴としている。
本発明に係る金属薄膜形成装置では、上記第二のメッキ液供給部による上記第二のメッキ液の供給を制御する制御手段を備え、上記制御手段は、上記第一の還元剤によって、上記基材上の、金属薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、0.5倍以上0.8倍以下の表面積が上記粒子で被覆された後に、上記第二のメッキ液供給部による上記第二のメッキ液の供給を開始させる制御を行なうものであることがより好ましい。
本発明に係る方法は、以上のように、基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いて金属薄膜を形成する方法であって、上記還元剤として、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いるので、基材上に比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
<1.本発明に係る方法>
本発明に係る方法は基材上に、基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いればよく、上記還元剤として、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いればよい。これにより、ギ酸のような還元剤のみを用いて金属薄膜を形成した場合に比べて、比較的多くの金属の粒子が基材上を被覆して、さらに、第二の還元剤がそれぞれの粒子を成長させる。そのため、クエン酸のような還元剤のみを用いた場合に形成される金属の粒子の径に比べて径の大きい金属の粒子が、均一に基材上を被覆する。つまり、基材を被覆する金属の粒子の分散が粗くなることを防ぎ、かつ粒子の数が多すぎることによる粒界の増加を防ぐことができる。従って、基材上に比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
<1.本発明に係る方法>
本発明に係る方法は基材上に、基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いればよく、上記還元剤として、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いればよい。これにより、ギ酸のような還元剤のみを用いて金属薄膜を形成した場合に比べて、比較的多くの金属の粒子が基材上を被覆して、さらに、第二の還元剤がそれぞれの粒子を成長させる。そのため、クエン酸のような還元剤のみを用いた場合に形成される金属の粒子の径に比べて径の大きい金属の粒子が、均一に基材上を被覆する。つまり、基材を被覆する金属の粒子の分散が粗くなることを防ぎ、かつ粒子の数が多すぎることによる粒界の増加を防ぐことができる。従って、基材上に比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。
なお、本明細書において「メッキ液」とは、金属薄膜の形成に用いる金属のイオンや、還元剤等の試薬を含む溶液を意図する。また、メッキ液を用いる態様としては、基材上に当該メッキ液によって金属薄膜が形成される限り限定されるものではない。例えば、当該メッキ液を基材上に塗布したり、滴下したり、製膜したり、当該メッキ液を充填した浴槽に浸したりして、メッキ液を基材上に供給すればよい。
本発明に係る方法で、金属薄膜を形成させることが可能な基材とは、特に限定されるものではない。例えば、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板、シリコン基板等を挙げることができる。なお、樹脂基板としては、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等からなる樹脂基板を挙げることができる。
上記基材の表面は、後述の第一の還元剤によって形成される金属の微粒子が吸着しやすいように表面を改質しておくことが好ましい。基材の表面改質方法としては当該金属の微粒子が、吸着しやすいように改質できる方法であればよい。例えば、カップリング剤処理、アルカリ処理、紫外光処理、電子線照射処理、プラズマ処理等が挙げられる。これらは、単独又は2以上の組み合わせにより適用されうる。表面改質方法の中でも、アルカリ処理、紫外光処理、アルカリ処理と紫外光処理との併用が好ましい。本発明者らは後述する実施例において、紫外光処理とアルカリ処理とを併用してガラス基板の表面を改質した。
〔1−1.金属のイオン〕
本発明に係る方法では、基材上に金属のイオンを供給する。供給する金属のイオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、金、パラジウム、プラチナ、銀、銅、ニッケル、コバルト等のイオンが挙げられる。つまり、本発明に係る方法によれば、上述の基材上に様々な金属の薄膜を形成することができる。
本発明に係る方法では、基材上に金属のイオンを供給する。供給する金属のイオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、金、パラジウム、プラチナ、銀、銅、ニッケル、コバルト等のイオンが挙げられる。つまり、本発明に係る方法によれば、上述の基材上に様々な金属の薄膜を形成することができる。
金属のイオンを供給する形態は特に限定されるものではない。例えば、当該金属の酢酸塩、硫酸塩等の金属塩をイオン源として供給すればよい。中でも、水素イオン濃度の低下を抑制する観点から、当該金属の酢酸塩を供給することが好ましい。当該金属の酢酸塩の溶媒は、特に限定されるものではなく、従来公知の金属メッキ用の溶媒を用いればよいが、中でも水が好ましい。本発明者らは後述する実施例において、0.1mol/l酢酸銅水溶液を使用した。
また、金属のイオンは、当該イオンを含む水溶液等の溶液を基材上に供給してもよく、後述する第一の還元剤、第二の還元剤、又は第一の還元剤及び第二の還元剤を含むメッキ液に混合して供給してもよい。
金属のイオンとして、金属塩の溶液を供給するとき、当該溶液のpHは特に限定されるものではないが、2以上5以下であることが好ましい。なお、第一の還元剤及び第二の還元剤による還元に伴って、金属のイオンが減少してpHは低下しやすくなる。従って、予め、当該金属塩の溶液に緩衝液を混合しておくことが好ましい。本発明者らは後述する実施例において、pH4の酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液を、酢酸銅水溶液に混合して用いた。
〔1−2.第一の還元剤〕
本発明に係る方法では、上記金属のイオンに対して還元性を有し、当該金属の粒子を形成させる第一の還元剤を含むメッキ液を上記基材上に供給する。第一の還元剤によって金属のイオンは還元されて粒子として析出する。
本発明に係る方法では、上記金属のイオンに対して還元性を有し、当該金属の粒子を形成させる第一の還元剤を含むメッキ液を上記基材上に供給する。第一の還元剤によって金属のイオンは還元されて粒子として析出する。
本明細書において「第一の還元剤」とは、基材上に供給する金属のイオンに対して還元性を有し、当該金属の粒子を形成する還元剤を意図する。上述の非特許文献1に記載のように還元助剤には、金属の粒子を形成する機能を主とする還元助剤と金属の粒子を成長させる機能を主とする還元助剤とが存在する。そして、本発明ではこの還元助剤を還元剤として用いる。つまり、第一の還元剤は金属の粒子を成長させる機能よりも、金属の粒子を形成する機能を優先して発揮する還元剤であるといえる。
本発明に係る方法で用いる第一の還元剤としては、上述の金属のイオンを還元可能であって、当該金属の粒子を形成するものであれば限定されるものではない。例えば、メタノール、クエン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。特にクエン酸は、銅を安定して析出させて銅の微粒子を形成することができるため、金属として銅を用いるときに好ましい。
第一の還元剤を含むメッキ液の、第一の還元剤以外の組成は特に限定されるものではない。例えば、第一の還元剤の溶媒は特に限定されるものではなく、従来公知の金属メッキ用の溶媒を用いればよい。また、上述のようにpHの低下を防ぐための緩衝液を混合してもよく、上述した金属塩等のイオン源や、後述する第二の還元剤を含んでいてもよい。本発明者らは後述する実施例において、0.3mol/l Cu(CH3COO)2 10μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l クエン酸 30μlの混合物を用いた。このような混合物を基材に供給することによっても、基材に対して好適に金属のイオン及び第一の還元剤が供給される。
第一の還元剤としてクエン酸を用いる場合、クエン酸の水溶液を上記基材に供給すればよい。当該水溶液のクエン酸の濃度は特に限定されるものではないが、10wt%以上であることが好ましい。10wt%以上であれば、安定して金属が析出して、当該金属の粒子を形成することができる。
第一の還元剤を含むメッキ液を供給した後は、金属の粒子が所望の量だけ形成されるまで、上記基材の表面に紫外線を照射することが好ましい。
また、第一の還元剤としてメタノールやクエン酸を用いる場合は、第一の還元剤を基材に供給した後、紫外光を照射することが好ましい。紫外光による光励起反応で第一の還元剤から電子が発生して金属のイオンを還元する。このとき、メタノールからギ酸を生成する酸化反応や、クエン酸から二酸化炭素を生成する酸化反応が生じる。メタノールやクエン酸は、このような酸化反応を介して、光励起により生じる正孔のスキャベンジャーとしての役割も果たすと考えられる。これにより第一の還元剤による金属のイオンの還元速度が向上して、より効率的に金属の粒子を形成することができる。
第一の還元剤に紫外光を照射する場合、当該紫外光の光源としては特に限定されるものではないが、例えば、レーザー、発光ダイオード、紫外光ランプ等が挙げられる。紫外光の波長は特に限定されないが、380nm以下が好ましい。なお、本発明者らは後述する実施例において、金属のイオン及び第一の還元剤を含むメッキ液を、金属薄膜を形成するガラス基板上に供給した後、当該メッキ液を挟むようにして別のガラス基板を搭載して、紫外光を照射した。
〔1−3.第二の還元剤〕
本発明に係る方法では、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記第一の還元剤によって形成された金属の粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤を上記基材上に供給する。
本発明に係る方法では、上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記第一の還元剤によって形成された金属の粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤を上記基材上に供給する。
本明細書において「第二の還元剤」とは、基材上に供給する金属のイオンに対して還元性を有し、第一の還元剤によって形成された金属の粒子を成長させる還元剤を意図する。上述の非特許文献1に記載のように還元助剤には、金属の粒子を形成する機能を主とする還元助剤と金属の粒子を成長させる機能を主とする還元助剤とが存在する。そして、本発明ではこの還元助剤を還元剤として用いる。つまり、第二の還元剤は、金属の粒子を形成する機能よりも、金属の粒子を成長させる機能を優先して発揮する還元剤であるといえる。
本発明に係る方法で用いる第二の還元剤としては、本発明に係る方法に用いる金属のイオンに対して還元性を有しており、第一の還元剤によって形成された金属の粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させるものである限り限定されるものではない。例えば、ギ酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併せて用いてもよい。特にギ酸は、銅を安定して析出させて銅の微粒子を成長させることができるため、金属として銅を用いるときに好ましい。
第二の還元剤を含むメッキ液の、第二の還元剤以外の組成は特に限定されるものではない。例えば、第二の還元剤の溶媒は特に限定されるものではなく、従来公知の金属メッキ用の溶媒を用いればよい。また、上述のようにpHの低下を防ぐための緩衝液を混合してもよく、上述した金属塩等のイオン源を混合してもよく、後述する第二の還元剤を含んでいてもよい。本発明者らは後述する実施例において、0.3mol/l Cu(CH3COO)2 10μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l ギ酸 30μlの混合物を用いた。
第二の還元剤としてギ酸を用いる場合、ギ酸の水溶液を基材に供給すればよい。当該水溶液のギ酸の濃度は特に限定されるものではないが、10wt%以上であることが好ましい。10wt%以上であれば、安定して金属が析出して、当該金属の粒子を成長させることができる。
第二の還元剤を供給した後は、上記基材の表面に紫外線を照射することが好ましい。紫外光による光励起反応で第一の還元剤から電子が発生して金属のイオンを還元する。例えば第二の還元剤としてギ酸を用いたとき、ギ酸から二酸化炭素が生成される酸化反応が生じる。そして、第二の還元剤は、このような酸化反応を介して、光励起による正孔のスキャベンジャーとしての役割も果たすと考えられる。これにより第二の還元剤による金属のイオンの還元速度が向上して、より効率的に金属の粒子を成長させることができる。
第二の還元剤に照射する紫外光の光源としては特に限定されるものではない。詳細は第一の還元剤に紫外光を照射する場合の説明に準ずる。既に第一の還元剤を供給して、金属の粒子を形成していた場合は、紫外光の照射によって、当該粒子を核として、当該核の周囲にさらに金属が析出することで、当該粒子の成長効率がさらに向上する。
〔1−4.第一の還元剤及び第二の還元剤を供給する順序〕
第一の還元剤を含むメッキ液と第二の還元剤を含むメッキとを供給する順序は特に限定されるものではない。例えば、第二の還元剤を含むメッキ液を、第一の還元剤を含むメッキより先に供給しておいてもよく、第一の還元剤及び第二の還元剤を共に含むメッキ液を供給してもよく、第二の還元剤を含むメッキ液を第一の還元剤を含むメッキ液より後に供給してもよい。
第一の還元剤を含むメッキ液と第二の還元剤を含むメッキとを供給する順序は特に限定されるものではない。例えば、第二の還元剤を含むメッキ液を、第一の還元剤を含むメッキより先に供給しておいてもよく、第一の還元剤及び第二の還元剤を共に含むメッキ液を供給してもよく、第二の還元剤を含むメッキ液を第一の還元剤を含むメッキ液より後に供給してもよい。
中でも、上記基材上に、上記第一の還元剤を含むメッキ液を供給した後に、上記第二の還元剤を含むメッキ液を供給することが好ましい。第一の還元剤が供給された後に、第二の還元剤が供給されることで、当該第一の還元剤によって、ある程度金属の粒子が形成された後に、当該第二の還元剤による当該粒子の成長が起こる。これにより効率よく比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。仮に、先に第二の還元剤を供給すると、当該第二の還元剤によって径の大きな金属の粒子が形成されて、これに金属のイオンが消費される。そこで、第一の還元剤を供給した後に第二の還元剤を供給することで、これを防ぐことができる。よって、基材上にムラ無く金属薄膜を形成することができ、比抵抗を小さくすることができる。
第一の還元剤の後に第二の還元剤を供給する場合、金属のイオンは、全量のうち少なくとも一部が、第二の還元剤を供給する前に供給されていればよい。例えば第一の還元剤を含むメッキ液に、金属のイオンの全てを混合して供給してもよい。また、金属のイオン及び第一の還元剤を含むメッキ液を供給しておき、金属のイオンの残部を、第二の還元剤を含むメッキ液に混合して供給してもよい。つまり、金属のイオン及び第一の還元剤を含むメッキ液を供給した後に、金属のイオン及び第二の還元剤を含むメッキ液を供給してもよく、金属のイオン及び第一の還元剤を含むメッキ液を供給した後に、第二の還元剤を含みメッキ液を供給してもよい。本発明者らは、後述の実施例のように、まず、第一の還元剤(クエン酸)及び金属のイオン(銅イオン)を含むメッキ液を供給して、次に、第二の還元剤(ギ酸)及び金属のイオン(銅イオン)を含むメッキ液を供給した。
また、金属薄膜の形成を目的とする上記基材上の面の表面積に対して、0.5倍以上0.8倍以下の表面積が、上記第一の還元剤によって金属の粒子で被覆された後に、第二の還元剤の供給を開始することが、さらに好ましい。このように第二の還元剤の供給を開始することで、金属の粒子の形成及び当該粒子の成長の両機能が、基材上で好適に発揮される。つまり、粒子が多すぎて粒界が多くなることを防ぎ、粒子が大きすぎて基材上の粒子分布が粗くなることを、さらに効果的に防ぐことができる。よって、さらに比抵抗の小さい金属薄膜を形成することができる。特に、比抵抗値が20μΩ・cm以下の金属薄膜を容易に形成することができる。比抵抗値が20μΩ・cm以下であれば、TFTの配線としての使用も可能となる等、本発明に係る方法の用途が広がる。
以上のように、本発明に係る方法によれば、従来、無電解メッキに必ず使用されていた、EDTA等の錯化剤、過酸化水素等の還元剤を含まない。このような還元剤の代わりとして、第一の還元剤及び第二の還元剤が還元剤として機能する。
また、本発明に係る方法によって得られる金属薄膜の厚さは、所望の厚さに調整することができる。例えば、プロセス時間短縮のため、所望の厚さになるまで、本発明によって得られた金属薄膜に対して、さらに無電解メッキ又は電解メッキを施すことにより厚さを調整すればよい。また、第一の還元剤及び/又は第二の還元剤を供給した後、基材上にこれらの還元剤が接触している時間を調整したり、上述の紫外光を用いる場合は照射時間を調整したりすることで、所望の厚さの金属薄膜を形成することができる。
<2.本発明に係る金属薄膜形成装置>
本発明に係る金属薄膜形成装置の一実施形態について図1及び2に基づいて説明すると以下の通りである。図1及びはメッキ形成装置1(金属薄膜形成装置)の概略構成を示す図である。図1及び図2には、メッキ形成装置1によりメッキ(金属薄膜)が形成される基板15(基材)をも示している。また、図1ではメッキ形成装置1を、メッキが形成される基板15の側面方向から見た図であり、図2は、メッキ形成装置1を、基板15のメッキが形成される面の面方向に対して垂直に上方から見た図である。
<2.本発明に係る金属薄膜形成装置>
本発明に係る金属薄膜形成装置の一実施形態について図1及び2に基づいて説明すると以下の通りである。図1及びはメッキ形成装置1(金属薄膜形成装置)の概略構成を示す図である。図1及び図2には、メッキ形成装置1によりメッキ(金属薄膜)が形成される基板15(基材)をも示している。また、図1ではメッキ形成装置1を、メッキが形成される基板15の側面方向から見た図であり、図2は、メッキ形成装置1を、基板15のメッキが形成される面の面方向に対して垂直に上方から見た図である。
まず、メッキ形成装置1の概略構成について説明する。
図1及び2に示すようにメッキ形成装置1は、第一のメッキ液吐出装置2(第一のメッキ液供給部)、第一のメッキ浴2’、第二のメッキ液吐出装置3(第二のメッキ液供給部)、第二のメッキ浴3’、水洗槽4、5、基板待機台6、乾燥用リフロー炉7、基板搬送機8、基板搬送機ガイド9、メッキ浴移動ガイド10a、10b、装置制御部11(制御手段)を備えている。
第一のメッキ液吐出装置2は、基板15に対して第一のメッキ液を供給するための第一のメッキ液供給部として機能するものである。
また、第一のメッキ浴2’は、基板15に第一のメッキ液を供給する際に、基板15を搭載しておくための槽である。第一のメッキ浴2’は、後述するメッキ浴移動ガイド10aによって、矢印Y1方向に移動することが可能である。また、第一のメッキ液としては、上述の本発明に係る方法において説明した第一の還元剤を含むものを用いればよい。
第二のメッキ液吐出装置3は、基板15に対して第二のメッキ液を供給するための第二のメッキ液供給部として機能するものである。
また、第二のメッキ浴3’は、基板15に第二のメッキ液を供給する際に、基板15を搭載しておくための槽である。第二のメッキ浴3’は、後述するメッキ浴移動ガイド10bによって、矢印Y2方向に移動することが可能である。また、第二のメッキ液としては、上述の本発明に係る方法において説明した第二の還元剤を含むものを用いればよい。
第一のメッキ液吐出装置2及び第二のメッキ液吐出装置3は、領域A内に備えられている。また、領域A内には、基板15に、スペーサー付ガラス基板を搭載するための手段も備えられている。スペーサー付ガラス基板は、ガラス基板の端にスペーサーが設けられた構造をしている。当該スペーサーによって、当該ガラス基板と基板15との間には空間が形成される。そして、後述のように基板15上に各メッキ液が滴下された後に、スペーサー付ガラス基板が搭載されることで、基板15と当該ガラス基板との間に、各メッキ液が挟まれることとなる。
第一のメッキ浴2’及び第二のメッキ浴3’は、それぞれ移動することにより、後述の基板搬送機ガイド9の下、領域A内、領域B内に移動することができる。また領域Bには、各メッキ浴内の基板15に紫外線を照射するための光源が備えられている(図示せず)。なお、紫外線を照射するための光源としては、紫外線照射光源を用いればよい。
水洗槽4、5は、基板15から第一のメッキ液を洗浄除去するためのものである。水洗槽4、5内には水が充填されており、基板15を洗浄することができる。
基板待機台6は、基板15をメッキ形成装置1によるメッキに供する前に待機させておく間に搭載しておくためのものである。
乾燥用リフロー炉7は、メッキ形成装置1によるメッキ後に基板を乾燥させるためのものである。
基板搬送機8は、基板15を搬送するためのものである。基板搬送機8の先端は基板15を吸着して支持することが可能となっている。また、基板搬送機ガイド9は基板搬送機8の移動方向を規定するためのガイドである。これにより、基板搬送機8は、図1及び2に示す矢印X方向に、基板15を搬送させることが可能となる。
メッキ浴移動ガイド10a、10bは、それぞれ第一のメッキ浴2’及び第二のメッキ浴3’の移動方向を規定するためのガイドである。これにより、第一のメッキ浴2’及び第二のメッキ浴3’を、それぞれ矢印Y1、Y2方向に移動させることが可能となる。
装置制御部11は、基板15に、第二のメッキ液吐出装置3による第二のメッキ液の供給を制御するための制御手段として機能するものである。より、具体的には、装置制御部11は、第一のメッキ液に含まれる第一の還元剤によって、基板15上の、メッキ形成を目的とする面の表面積に対して、使用者が設定した割合の表面積が金属の粒子で被覆された後に、第二のメッキ液吐出装置3による第二のメッキ液の供給を開始させるためのものである。このような制御を行なうために、第二のメッキ浴3’の移動を制御するのみならず、第一のメッキ浴2’、基板搬送機8の移動をも制御する。また、図1及び2には示していないが、第一のメッキ浴2’の上方には基板15の表面を撮像するためのカメラを備えている。そして装置制御部11では、当該カメラによって撮像された基板15の表面を画像解析して、メッキの形成を目的とする基板15上の面のうち、金属粒子で被覆された面の面積の割合を計算することができる。つまり、装置制御部11は、基板15を第一のメッキ浴2’に搭載して、第一のメッキ液の滴下、紫外線の照射を行ない、さらにその間基板15上の金属粒子で被覆された面積の割合を計算する。当該割合が、使用者の設定した割合になったとき、装置制御部11は、基板15を水洗槽4に移動させて第一のメッキ液を除去するように基板15の移動を開始させる。そして第一のメッキ液を除去した後、第二のメッキ浴3’に搭載して、第二のメッキ液によるメッキを開始するように制御する。なお、上述のように、当該割合は0.5倍以上0.8倍以下とすることが好ましい。
次に、メッキ形成装置1の動作について説明する。
まず、基板待機台6上に、メッキをする対象の基板15を搬送する。次に、基板搬送機8が基板待機台6上の基板15を吸着する。ここで、予め第一のメッキ浴2’は基板搬送機ガイド9の下に設置されている。基板搬送機8は当該第一のメッキ浴2’まで基板15を搬送して、当該第一のメッキ浴2’内に基板15を搭載する。
基板15が搭載された第一のメッキ浴2’は、メッキ浴移動ガイド10aに沿って、領域A内の位置2aに移動する。位置2aでは、第一のメッキ液吐出装置2によって、基板15上に第一のメッキ液が滴下される。第一のメッキ液の滴下が終了した後は、基板15にスペーサー付ガラス基板が搭載される。当該スペーサー付ガラス基板が設置されることで、基板15と当該ガラス基板との間に第一のメッキ液が挟まれた状態になる。そして、第一のメッキ浴2’は領域B内の位置2bに移動する。
位置2bでは、基板15に紫外線が照射される。この間、上述のカメラによって、基板15上の金属粒子で被覆された面積が計測される。そして、当該面積が、基板15上のメッキ形成を目的とする面積に対して、使用者が設定した割合になったとき、装置制御部11によって、第一のメッキ浴2’の移動が開始されて、第一のメッキ浴2’は、位置2bから位置2aに移動する。位置2aでは基板15に搭載されていた、スペーサー付のガラス基板が取り外される。さらに、第一のメッキ浴2’は、基板搬送機ガイド9の下まで移動して、基板15が基板搬送機8に吸着される。
次に、基板15は基板搬送機8によって、矢印X方向に搬送されて、基板15が水洗槽4内に浸漬される。そして、第一のメッキ液が洗浄除去される。
第一のメッキ液が洗浄された後は、さらに基板15は搬送される。ここで、第二のメッキ浴3’は予め基板搬送機ガイド9の下に設置されている。そして、基板15は第二のメッキ浴3’に搭載される。
第二のメッキ浴3’は、メッキ浴移動ガイド10bに沿って領域A内の位置3aに移動する。位置3aでは、第二のメッキ液吐出装置3によって、基板15上に第二のメッキ液が滴下される。第二のメッキ液の滴下が終了した後は、スペーサー付ガラス基板を基板15上に搭載する。これにより、基板15と当該スペーサー付ガラス基板とで第二のメッキ液を挟んだ状態となる。そして、第一のメッキ浴2’は領域B内の位置3bに搬送される。
位置3bでは、基板15に紫外線が照射される。紫外線が照射された後、第二のメッキ浴3’は位置3aに移動して、スペーサー付のガラス基板が取り外される。さらに、第二のメッキ浴3’は、基板搬送機ガイド9の下まで搬送されて、基板15が基板搬送機8に吸着される。
次に、基板15は基板搬送機8によって、矢印X方向に搬送されて、基板15が水洗槽5内に浸漬される。そして、第二のメッキ液が洗浄除去される。
第二のメッキ液が洗浄された後は、基板15は乾燥用リフロー炉7内に搬送される。そして乾燥用リフロー炉7で基板15が乾燥される。
なお、ここで説明した基板15の搬送、各メッキ浴の移動、各メッキ液の吐出、紫外線の照射等は、装置制御部11によって制御されたものである。このように本発明に係る金属皮膜形成装置1の備える制御手段は、当該装置全体の制御をするものであることが好ましいが、これに限られるものではなく、基材上の金属粒子で被覆された面積の、基材上の金属皮膜を形成する面の面積に対する割合が、使用者の設定した割合になったときに、第二のメッキ液によるメッキを開始するように制御するものであればよい。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
以下に本発明に係る方法によって、ガラス基板上に銅薄膜を形成した実施例について説明する。
〔実施例1〕
本実施例におけるガラス基板(基材)上に銅薄膜を形成した方法図3を用いて説明する。図3は、ガラス基板上に銅薄膜を形成する様子を模式的に示した図である。
本実施例におけるガラス基板(基材)上に銅薄膜を形成した方法図3を用いて説明する。図3は、ガラス基板上に銅薄膜を形成する様子を模式的に示した図である。
本実施例では、図3に示すように、ガラス基板21上にメッキ液30を供給する。メッキ液30としては、後述するメッキ液A及びBを用いる。つまり、図1に示すメッキ液30はメッキ液A及びBが共に供給されて、混合された状態を示している。また、ガラス基板21上にはスペーサー22を介してガラス基板31を搭載する。紫外光照射装置23は、ガラス基板21上に紫外光を照射するためのものである。詳細を以下に述べる。
(ガラス基板表面の処理)
まず、ガラス基板21の表面に紫外光(波長254nm)を照射した。当該紫外光の照射は25℃で、120秒間行なった。次に、ガラス基板21を純水及び超音波(振動数400kHz)によって洗浄した。洗浄は25℃で行ない、超音波は30秒間当てた。次に、ガラス基板21を、NaOH(5wt%)水溶液を用いて、50℃で180秒間表面処理した。
まず、ガラス基板21の表面に紫外光(波長254nm)を照射した。当該紫外光の照射は25℃で、120秒間行なった。次に、ガラス基板21を純水及び超音波(振動数400kHz)によって洗浄した。洗浄は25℃で行ない、超音波は30秒間当てた。次に、ガラス基板21を、NaOH(5wt%)水溶液を用いて、50℃で180秒間表面処理した。
(銅微粒子の形成)
メッキ液Aをガラス基板21の表面に供給して銅微粒子を形成させた。
メッキ液Aをガラス基板21の表面に供給して銅微粒子を形成させた。
メッキ液Aの組成は次の通りである。0.3mol/l Cu(CH3COO)210μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l クエン酸 30μl。つまり本実施例では、本発明に係る方法における第一の還元剤としてクエン酸を用いた。メッキ液Aを、メッキ浴(図示せず)内に設置したガラス基板21上に供給した。
次に、ガラス基板21の端に樹脂製のスペーサー22を設置して、当該スペーサー22を介して、かつメッキ液Aに接触するようにガラス基板31を搭載した。スペーサー22としては、ガラス基板21とガラス基板31との間隔が60μmとなるものを用いた。
次に、25℃の環境下で、紫外光照射装置23を用いて、ガラス基板21に紫外光(波長365nm)を50分間照射した。
これにより、ガラス基板21の表面の表面積に対して0.7倍の表面積が、銅の微粒子で被覆された。
(銅微粒子の成長)
メッキ液Bをガラス基板21の表面に供給して銅微粒子を成長させた。
メッキ液Bをガラス基板21の表面に供給して銅微粒子を成長させた。
メッキ液Bの組成は次の通りである。0.3mol/l Cu(CH3COO)2 10μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l ギ酸 30μl。つまり、本実施例では本発明に係る方法における第二の還元剤としてギ酸を用いた。
ガラス基板31を取り外して、メッキ浴(図示せず)内に設置したガラス基板21上にメッキ液Bを供給した。
次に、ガラス基板31を再度搭載した。ガラス基板31は、スペーサー22を介してガラス基板21との距離が60μmとなるように、かつメッキ液Bに接触するように搭載した。ガラス基板31は取り外してから再度搭載するまでに洗浄して乾燥させた。なお、再度搭載するときは別のガラス基板を用いてもよい。
次に、25℃の環境下で、紫外光照射装置23を用いて、ガラス基板21に紫外光(波長365nm)を60分間照射した。その後、ガラス基板21を流水で洗浄して、銅薄膜が形成されたガラス基板を得た。
得られたガラス基板21の比抵抗は5μΩ・cmであり、銅の膜厚は0.6μmであった。
なお、ガラス基板21上に形成された銅の膜厚は、段差計(アルバック社製、品番Dectac8)を用いて銅薄膜を形成する前のガラス基板21の表面と、銅薄膜で被覆されたガラス基板21の表面との段差を測定することで算出した。また、形成された銅薄膜の電気抵抗を4端子法で測定した後、当該電気抵抗及び銅薄膜の膜厚から、比抵抗値を算出した。
〔比較例1〕
本比較例では、用いたメッキ液の組成以外は上記実施例1と同様の構成で、ガラス基板上に銅薄膜の形成を行なった。そこで、説明の便宜上、実施例1の説明で用いた図1に係る構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
本比較例では、用いたメッキ液の組成以外は上記実施例1と同様の構成で、ガラス基板上に銅薄膜の形成を行なった。そこで、説明の便宜上、実施例1の説明で用いた図1に係る構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
(ガラス基板表面の処理)
まず、ガラス基板21の表面に紫外光(波長254nm)を照射した。当該紫外光の照射は25℃で、120秒間行なった。次に、ガラス基板21を純水及び超音波(振動数400kHz)によって洗浄した。洗浄は25℃で行ない、超音波は30秒間当てた。次に、ガラス基板21を、NaOH(5wt%)水溶液を用いて、50℃で180秒間表面処理した。
まず、ガラス基板21の表面に紫外光(波長254nm)を照射した。当該紫外光の照射は25℃で、120秒間行なった。次に、ガラス基板21を純水及び超音波(振動数400kHz)によって洗浄した。洗浄は25℃で行ない、超音波は30秒間当てた。次に、ガラス基板21を、NaOH(5wt%)水溶液を用いて、50℃で180秒間表面処理した。
(銅薄膜の形成)
本比較例では、メッキ液として次の組成の溶液を用いた。0.3mol/l Cu(CH3COO)210μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l クエン酸 30μl。当該メッキ液を、メッキ浴(図示せず)内に設置したガラス基板21上に供給した。
本比較例では、メッキ液として次の組成の溶液を用いた。0.3mol/l Cu(CH3COO)210μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l クエン酸 30μl。当該メッキ液を、メッキ浴(図示せず)内に設置したガラス基板21上に供給した。
次に、ガラス基板21の端に樹脂製のスペーサー22を設置して、当該スペーサー22を介して、かつ当該メッキ液に接触するようにガラス基板31を搭載した。スペーサー22としては、ガラス基板21とガラス基板31との間隔が60μmとなるものを用いた。
次に、25℃の環境下で、紫外光照射装置23を用いて、ガラス基板21に紫外光(波長365nm)を122分間照射した。この照射時間は、ガラス基板21上に形成される銅の膜の厚さが実施例1と同じ厚さになるように調整したものである。
その後、ガラス基板21を流水で洗浄した。得られたガラス基板の比抵抗は41μΩ・cmであり、銅の膜厚は0.6μmであった。
〔比較例2〕
本比較例では、用いたメッキ液の組成以外は上記実施例1と同様の構成で、ガラス基板上に銅薄膜の形成を行なった。そこで、説明の便宜上、実施例1の説明で用いた図1に係る構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
本比較例では、用いたメッキ液の組成以外は上記実施例1と同様の構成で、ガラス基板上に銅薄膜の形成を行なった。そこで、説明の便宜上、実施例1の説明で用いた図1に係る構成要素と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
(ガラス基板表面の処理)
まず、ガラス基板21の表面に紫外光(波長254nm)を照射した。当該紫外光の照射は25℃で、120秒間行なった。次に、ガラス基板21を純水及び超音波(振動数400kHz)によって洗浄した。洗浄は25℃で行ない、超音波は30秒間当てた。次に、ガラス基板21を、NaOH(5wt%)水溶液を用いて、50℃で180秒間表面処理した。
まず、ガラス基板21の表面に紫外光(波長254nm)を照射した。当該紫外光の照射は25℃で、120秒間行なった。次に、ガラス基板21を純水及び超音波(振動数400kHz)によって洗浄した。洗浄は25℃で行ない、超音波は30秒間当てた。次に、ガラス基板21を、NaOH(5wt%)水溶液を用いて、50℃で180秒間表面処理した。
(銅薄膜の形成)
本比較例では、メッキ液として次の組成の溶液を用いた。0.3mol/l Cu(CH3COO)2 10μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l ギ酸 30μl。当該メッキ液を、メッキ浴(図示せず)内に設置したガラス基板21上に供給した。
本比較例では、メッキ液として次の組成の溶液を用いた。0.3mol/l Cu(CH3COO)2 10μl、1.0mol/l 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH4) 60μl、0.1mol/l ギ酸 30μl。当該メッキ液を、メッキ浴(図示せず)内に設置したガラス基板21上に供給した。
次に、ガラス基板21の端に樹脂製のスペーサー22を設置して、当該スペーサー22を介して、かつ当該メッキ液に接触するようにガラス基板31を搭載した。スペーサー22としては、ガラス基板21とガラス基板31との間隔が60μmとなるものを用いた。
次に、25℃の環境下で、紫外光照射装置23を用いて、ガラス基板21に紫外光(波長365nm)を105分間照射した。この照射時間は、ガラス基板21上に形成される銅の膜の厚さが実施例1と同じ厚さになるように調整したものである。
その後、ガラス基板21を流水で洗浄した。得られたガラス基板21の比抵抗は64μΩ・cmであり、銅の膜厚は0.6μmであった。
実施例1と比較例1及び2との比較によって、実施例1のように、金属の粒子を形成する還元剤と、当該粒子を核として、当該核の表面にさらに当該金属を析出させる還元剤とを用いることで、極めて低抵抗の銅薄膜を有するガラス基板が得られることが示された。
〔実施例2〕
実施例1では、銅微粒子の形成を行なったときに、ガラス基板21の銅薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、銅の微粒子で被覆された面の表面積が0.7倍となった後に、銅微粒子の成長を行なうための工程に移行した。本実施例では、この銅の微粒子で被覆された面の表面積を0.3倍から0.05倍毎に1.0倍まで変化させて同様の操作を行ない、銅薄膜を形成して、比抵抗値の測定を行なった。
実施例1では、銅微粒子の形成を行なったときに、ガラス基板21の銅薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、銅の微粒子で被覆された面の表面積が0.7倍となった後に、銅微粒子の成長を行なうための工程に移行した。本実施例では、この銅の微粒子で被覆された面の表面積を0.3倍から0.05倍毎に1.0倍まで変化させて同様の操作を行ない、銅薄膜を形成して、比抵抗値の測定を行なった。
比抵抗値の測定は、実施例1に記載の方法と同じ方法で行なった。
また、銅微粒子で被覆されたガラス基板21の表面の面積を測定する方法を、図4を用いて説明する。図4は、メッキ液A(第一の還元剤)により銅微粒子を形成した後のガラス基板21表面の状態を模式的に示す図である。
図4に示すように、ガラス基板21の表面は、様々な径の銅微粒子40で被覆されている。ここで、ガラス基板21自体の表面の色と、銅微粒子40の色とは異なる。そこで、このガラス基板21の表面をカメラで撮影して、ガラス基板21の色の面積と銅微粒子40の色と面積とを算出することで、銅微粒子で被覆された基材表面の面積を測定する。本実施例では、基材表面上の10000μm2(100μm×100μm)の領域5箇所で面積を測定してその平均を算出した。
この結果を図5に示す。図5は、銅薄膜を形成する目的とするガラス基板上の面の表面積に対して、第一の還元剤(クエン酸)によって形成された銅微粒子が被覆した表面積の割合(以下、説明簡単のため「銅微粒子被覆率」と表記する)と、得られた銅薄膜の比抵抗との関係を調査した結果を示す図であり、縦軸は比抵抗(μΩ・cm)を示し、横軸は、銅微粒子被覆率を示す。また、比較のため、比較例1及び2で得たガラス基板の比抵抗値を示している。図5では、黒丸が本実施例の得られた銅薄膜の比抵抗と、銅微粒子被覆率との関係を示しており、黒三角が比較例1、黒四角が比較例2で得られた銅薄膜の比抵抗の値を示している。なお、比較例1及び2においては、銅微粒子被覆率を変動させて比抵抗を調査したものではない。図5には、比較例1及び2で得られた銅薄膜の比抵抗を銅微粒子被覆率に関係なくプロットしている。つまり、横軸に示す値は、黒丸で示した本実施例に対してのみ対応している。
図5に示すように、銅の微粒子で被覆された面の表面積が、ガラス基板21の銅薄膜の形成を目的とする面の表面積の0.5倍以上0.8倍以下であるとき、極めて低い比抵抗値の銅薄膜を得ることができることが示された。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の基材上に金属薄膜を形成する方法は、比抵抗の小さい金属薄膜を、ガラス、樹脂、セラミックス、シリコン等の基材に形成することができるので、TV、携帯電話、PCをはじめとする液晶ディスプレイを用いた産業に好適に利用することができる。
1、21 メッキ形成装置(金属皮膜形成装置)
2 第一のメッキ液吐出装置(第一のメッキ液供給部)
3 第二のメッキ液吐出装置(第二のメッキ液供給部
4 シャッター(開閉手段)
11 装置制御部(制御手段)
2 第一のメッキ液吐出装置(第一のメッキ液供給部)
3 第二のメッキ液吐出装置(第二のメッキ液供給部
4 シャッター(開閉手段)
11 装置制御部(制御手段)
Claims (7)
- 基材上に、金属のイオンを還元するための還元剤を含むメッキ液を用いて金属薄膜を形成する方法であって、
上記還元剤として、
上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成する第一の還元剤と、
上記金属のイオンに対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤と、を用いることを特徴とする基材上に金属薄膜を形成する方法。 - 上記基材上に、上記第一の還元剤を含むメッキ液を供給した後に、上記第二の還元剤を含むメッキ液を供給することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 上記第一の還元剤によって、上記基材上の、金属薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、0.5倍以上0.8倍以下の表面積が上記粒子で被覆された後に、
上記第二の還元剤を含むメッキ液の供給を開始することを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 上記第一の還元剤はクエン酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 上記第二の還元剤はギ酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 基材に対して還元性を有し、上記金属の粒子を形成させる第一の還元剤を含む第一のメッキ液を上記基材に供給する第一のメッキ液供給部、及び
基材に対して還元性を有し、上記粒子を核として、当該核の表面にさらに上記金属を析出させる第二の還元剤を含む第二のメッキ液を上記基材に供給する第二のメッキ液供給部とを備えることを特徴とする金属薄膜形成装置。 - 上記第二のメッキ液供給部による上記第二のメッキ液の供給を制御する制御手段を備え、
上記制御手段は、上記第一の還元剤によって、上記基材上の、金属薄膜の形成を目的とする面の表面積に対して、0.5倍以上0.8倍以下の表面積が上記粒子で被覆された後に、上記第二のメッキ液供給部による上記第二のメッキ液の供給を開始させる制御を行なうものであることを特徴とする請求項6に記載の金属薄膜形成装置。
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