JP2008266387A - 熱伝導性ホットメルト接着剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】
熱伝導性、耐熱性に優れ、直接的に発熱体或いは放熱体に塗布できるため生産性の向上を達成させ、さらに線膨張率が異なる異種材料のシール材として適応する当該組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と熱伝導付与剤(B)を必須成分とし、動的粘弾性試験法によって測定されるゴム状態からガラス状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が−15〜−35℃であり、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mm以下であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
【選択図】なし
熱伝導性、耐熱性に優れ、直接的に発熱体或いは放熱体に塗布できるため生産性の向上を達成させ、さらに線膨張率が異なる異種材料のシール材として適応する当該組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と熱伝導付与剤(B)を必須成分とし、動的粘弾性試験法によって測定されるゴム状態からガラス状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が−15〜−35℃であり、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mm以下であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱伝導性、耐熱性に優れ、直接的に発熱体或いは放熱体に塗布できるため生産性の向上を達成させ、さらに線膨張率が異なる異種材料のシール材として適応する熱伝導性ホットメルト組成物に関する。
近年、電子部品の高集積化、高密度化に伴って、電力消費量も増大の一途にあり、発生した熱を効率良く放熱し、電子部品素子の温度上昇を少なくすることが重要な課題になっている。例えば、電子部品(例えばパーソナルコンピュータ、携帯電話等の中央演算素子等の各種デバイス、パワートランジスタなど)、表示装置(例えばプラズマディスプレイパネルや有機ELを用いた表示装置等)では、熱を取り除いたり、均熱化することが重要な課題となっている。なぜなら、発熱する電子部品や表示装置は温度が上昇するにつれて部品の劣化、誤動作、故障などにつながる、あるいは温度の不均化により破損するためである。そのためこれらの発熱する部品や表示装置から熱を取り除いたり、あるいは同一部品内や装置内での温度差をなくす均熱化するため各種ヒートシンクや放熱板、あるいはハウジング等に熱を伝える熱伝導性組成物がシート状に加工され使用されている。この熱伝導性組成物に求められる性能は熱伝導性の他にも柔軟性、密着性、耐久性、耐熱性、難燃性などがあげられる。
さらに、線膨張率の異なる異種材料が貼着された表示装置(例えば、アルミニウムとガラスが貼着された装置)は、低温時に熱変形量の差により発生した歪みを緩和出来ず湾曲することが問題となっている。そのため、同じ線膨張率の材料で貼着を行うことや貼着部で応力を緩和させるために低温時でも柔軟性を備えたシール材を使用することが行われている。
このような熱伝導性組成物として様々なものが提案されており、例えば特許文献1や特許文献2ではプラズマディスプレイパネル用の放熱性シール材や組成物が開示されているが、低温時に柔軟性が低下するため異種材料のシール材として使用するときに湾曲する問題がある。特許文献3では水酸化アルミニウムを用いて難燃性と熱伝導性を付与しているが、180℃以上に加温すると水が生成され発泡してホットメルトとして扱うことが出来ない。特許文献4ではスチレン系熱可塑性エラストマーを使用して高温特性且つ低温特性を兼ね備えたホットメルト接着剤が開示されているが、熱伝導性がないため、放熱材として使用できない。
特開2000−219852号公報
特開2000−290615号公報
特開2003−313431号公報
特開2001−81277号公報
本発明は高熱伝導性、耐熱性を有し、さらに常温から低温時にかけて柔軟性を有し、しかも、電子部品や表示装置等へ直接溶融塗布可能な熱伝導性ホットメルト接着剤を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の熱可塑性エラストマー組成物をマトリックスとし、このマトリックス中にファインセラミックスの粉末を分散させた放熱性エラストマー組成物が、その目的を達成しうることを見出した。本発明は以下に示す。
[1]スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と熱伝導付与剤(B)を必須成分とし、動的粘弾性試験法によって測定されるゴム状態からガラス状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が−15〜−35℃であり、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mm以下であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
[2]熱伝導付与剤(B)を熱伝導性ホットメルト接着剤組成物全体中の20〜60vol%含有することを特徴とする[1]記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
[3]スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対し、粘着付与剤(C)50〜1000質量部と可塑剤(D)50〜1000質量部含有することを特徴とする[1]または[2]記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
[4]スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対してポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂が0.1〜100質量部である[1]または[2]または[3]記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
本発明によれば上記目的を達成することが出来る。すなわち、スチレン系熱可塑性エラストマーと熱伝導付与剤を必須成分とし、動的粘弾性試験法によって測定されるゴム状態からガラス状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が−15〜−35℃であり、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mm以下であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を用いると、高熱伝導性、高耐熱性と直接溶融塗布が可能な点から幅広い用途に使え、さらに高耐寒性の点から線膨張率が異なる異種材料間を貼着しても低温環境下で湾曲しないシール材としてのホットメルトとしても適応できる。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は動的粘弾性試験法によって測定されるゴム状態からガラス状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が−15〜−35℃であり、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mm以下である。本発明では必須成分としてスチレン系熱可塑性エラストマーを用いるため常温付近では、スチレン相のみがガラス化して擬似架橋点となりホットメルト接着剤全体がゴム状態となる。しかし、温度の低下に伴いスチレン相以外の相もガラス化をするために、ホットメルト接着剤全体は低温域では硬くてもろいガラス状態となる。このゴム状態からガラス状態への転移もしくはガラス状態からゴム状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が耐寒性に起因する。tanδのピーク温度が−15℃以下である場合において、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mmより高いと耐寒性が得られず湾曲し、当該応力が10N/10mm×25mm以下である場合においても当該tanδのピーク温度が−15℃より高いと耐寒性が得られず湾曲する。当該tanδのピーク温度が−35℃未満であると耐寒性は向上するが耐熱性が低下する。特に当該tanδのピーク温度が−20〜−30℃で、且つ引張剪断ずり試験が8N/10mm×25mm以下であるときが耐寒性と耐熱性を兼ね備えられる点から好ましい。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、熱伝導付与剤(B)が高充填され熱伝導性を有する。熱伝導率は少なくとも0.5W/mKである。好ましくは、0.6W/mK以上である。0.5W/mK未満であると発熱体からの放熱・灼熱作用が実用的に不足する。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、熱伝導付与剤(B)、粘着付与樹脂(C)、可塑剤(D)を含有する組成物である。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物はスチレン系熱可塑性エラストマー(A)を必須成分とする。スチレン系熱可塑性エラストマー(A)はスチレンから誘導されるポリスチレンブロックと、ゴム弾性を付与できるゴム中間ブロックとを有するものであって、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体(SIS)、SBSに水素添加したものスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、SISに水素添加したものスチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(MAH−SEBS)、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(MAH−SEPS)、無水マレイン酸変性スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(MAH−SIS)、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(MAH−SBS)が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーはシール材の弾性、凝集性、基材への密着性を確保するために配合される。弾性、凝集力を確保するために平均分子量を30000〜500000のものが適合している。塗工安定性、軟化剤ブリード性の点からと、耐熱性、耐久性、基材への接着性・密着性の点から平均分子量が60000〜300000のSEBS、SEPS、SEEPS、MAH−SEBS、MAH−SEPSが好ましい。これらは単独あるいは2種以上合わせて用いられる。
熱伝導付与剤(B)の含有割合は、熱伝導性ホットメルト接着剤組成物全体中の20〜60vol%の範囲に設定されていることが好ましく、特に好ましくは30〜50vol%の範囲である。すなわち、20vol%未満であると、熱伝導性が不充分となり、60vol%を超えると硬くなり、粘着性や基材への密着性、耐寒性が低下する。
本発明で使用される熱伝導付与剤(B)は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、シリカ、有機ポリマー焼成物、炭化窒素、カーボン、金属の粉体である。これを例示すると、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリンクレー、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、炭化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、銀等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上合わせて用いられる。これらの中でも良好な熱伝導性を付与でき、かつ汎用性やコストといった観点からアルミナや酸化マグネシウムやグラファイトが好ましい。
また、本発明で使用される粘着付与剤(C)としては、特に限定するものではなく従来公知の液状から固形のものが用いられる。例えば、ロジン系樹脂(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジン・グリセリンエステル等)、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂(α−ピネン主体、β−ピネン主体、ジペンテン主体等)、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂(脂肪族系、脂環族系、芳香族系等)、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂(スチレン系、置換スチレン系等)、フェノール系樹脂(アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等)、キシレン樹脂等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
また、本発明で使用される可塑剤(D)とは、樹脂組成物の溶解粘度を低下させる機能を有する成分である。例えば、流動パラフィン、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等のプロセスオイル、液状ポリイソプレン等の液状ゴム、エステル系可塑剤、植物性油、液状ポリブテン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸無水物変性ポリブテン、酸無水物変性液状ポリイソプレン、酸無水物変性ポリエチレンワックス、酸無水物変性ポリプロピレンワックス等が挙げられる。これらの中でも、流動性の向上効果が大きい流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブテンから選ばれた少なくとも1種が特に好ましい。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物において、各成分の含有割合は、(A)成分100質量部に対して、(C)成分50〜1000質量部の範囲に、(D)成分50〜1000質量部の範囲に設定することが好ましい。すなわち、このような含有割合になっておれば、実使用温度の-15〜80℃で特に良好な粘着性と放熱性と柔軟性を発揮する。さらに、(B)成分の配合量が50質量部未満であると、熱伝導性接着剤の粘着性が不充分となり、1000質量部を超えると、粘着力と凝集力のバランスが崩れ、目的とする効果が得られない。さらに、(C)成分の配合量が50質量部未満であると、塗布性(流動性)が悪くなる傾向があり、1000重量部を超えると、実使用時の温度で熱伝導性接着剤が軟化・溶融したり、あるいは滲み出しが生じたりする。なお、上記接着剤組成物において、より好適な含有割合は、(A)成分100質量部に対して、(C)成分70〜300質量部の範囲内、(D)成分200〜900質量部の範囲内である。
ポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有割合は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.5〜100質量部の範囲に設定されていることが好ましく、特に好ましくは1〜50質量部の範囲である。ポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量は、0.5質量部未満では熱変形温度若しくはスチレン相のガラス転移温度が高くならず所望する耐熱性は得られないと同時に各基材との剥離性が著しく低下するため好ましくない。一方100質量部を越えると配合物の軟化点が高くなりすぎて、ホットメルト組成物として溶融させて使用する目的にそぐわない。
また、本発明で使用されるポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量1000以上の公知のものを用いることができ、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4フェニレンエーテル)、ポリ(2,6ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニレン−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4フェニレンエーテル)などや、2,6−ジメチルフェノールと1価のフェノール類との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体も用いることが出来る。変性ポリフェニレンエーテル樹脂とは該ポリフェニレンエーテル樹脂に加工性、その他の理由で、スチレン樹脂、ナイロン樹脂等をブレンドしたもので、市販品では旭化成工業(株)製のザイロン500H、日本GEプラスチックス(株)製ノリルSA−120等がある。
ポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂を添加することにより、接着性の無いポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂がスチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン相に相溶することから、スチレン系熱可塑性エラストマーの耐熱性を決定しているスチレン相の軟化する温度を上昇させ、耐熱性を付与することができる。従って、添加するポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂の熱変形温度若しくはガラス転移温度が、スチレン樹脂のガラス転移温度である90〜100℃を上回っていれば耐熱性付与の目的を達せられる。しかし、耐熱性を少ない添加量で容易に得るためには、熱変形温度が120℃以上であることが望ましく、特に80℃以上の耐熱性を要望される場合は、熱変形温度が150℃以上のものを使用することにより、少ない添加量で容易に剥離性及び耐熱性を得ることができる。なお、市販品のポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂は熱変形温度120℃以上のタイプが比較的容易に入手できる。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物には、上記成分に加えて老化防止剤等を適宜に配合することができる。
上記老化防止剤として、例えばアルデヒド類、アミン類、フェノール類等の各種のものを単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができるが、なかでもヒンダート・フェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、ジラウリル・チオジブロビオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−第三ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(混合モノ−およびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛を単独あるいは2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
そして、上記老化防止剤の含有割合は、ホットメルト接着剤の耐老化性向上の観点から、上記ポリマー(A)成分100質量部に対して、0.2〜10質量部の範囲に設定されていることが好ましい。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の各成分及び所望により用いられる添加剤成分を加熱混練機、例えば、ロール、バンバリーミキサー、プラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー、一軸押出機、二軸押出機などを用いて溶融混練りし、熱伝導性付与剤がマトリックス(熱可塑性ホットメルト組成物)中に均一に分散した耐熱性・熱伝導性ホットメルト接着剤を容易に製造することができる。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、電子部品や半導体装置の発熱する部分と放熱部品や放熱板などの間に挟むことにより効率的に発生した熱を放出し、電子部品、半導体装置や表示装置の熱劣化などを低減し、故障を減らし、寿命を延ばすことができる。具体的な電子部品あるいは半導体装置としては、特に限定はないが、コンピュータのCPU(中央演算素子)、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、有機EL素子、二次電池あるいはその周辺機器(ハイブリッド電気自動車などにおいて二次電池と放熱体の間に記載熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を設け温度制御を行ない電池特性を安定化させる装置)、同じく電動機の放熱器、ペルチェ素子、インバータ、(ハイ)パワートランジスタなどが挙げられる。
特にプラズマディスプレイパネルは放電に伴う発熱や大きいパネルのために熱の不均一化が生じやすい。そのため放熱・均熱させるための構造が必要である。プラズマディスプレイパネルは、パネル自体の面積が比較的広く、また発光させる色・明るさによってパネル内での温度差が発生しやすい。この温度差が激しい場合、ガラス製であるパネルが割れる危険性もある。よってこの温度差を解消させるために均熱も必要である。本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は熱伝導性と粘着性を有しているので、パネルと放熱板を貼着するのに最適である。またパネルや放熱板は完全には平坦ではなく、わずかな凹凸が存在し、そのため密着性を高めるために接着剤組成物には柔軟性が要求される。当該熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は熱伝導性、耐熱性、接着性、耐寒性以外にも、粘着性、柔軟性、密着性、難燃性、耐久性に優れ、プラズマディスプレイパネル用の接着剤として最適である。
さらに、本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤は線膨張率の異なる異種材料のシール材として使用される。線膨張率の小さい材質からなる一方の部材と、線膨張率の大きい材質からなる他方の部材により構成された複合材パネルはこの線膨張率の違いにより、温度変化で線膨張率の大きい部材の変形に引張られて歪みが発生し湾曲する。たとえばアルミニウムとガラスを貼着したものの温度を下げていくと、ガラスと比較してアルミニウムの方が線膨張率が大きいために、より大きな収縮をしてガラスを引張る様に応力が加わる。このためアルミニウム側を内側として湾曲するように応力が加わる。その逆に温度を上げていくとアルミニウム側を外側として湾曲するように応力が加わる。貼着部のシール材として本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤を使用することで、温度変化により発生する複合材パネルの応力を緩和することができる。本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤は低温時の柔軟性・接着性に優れているため異種材料のシール材として最適である。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を発熱体と放熱体のシール材として使用する方法として、押出機や溶剤法で作製した熱伝導性ホットメルト接着剤組成物シートを放熱体へ貼り発熱体を貼着する方法、前記方法で作製したシートを発熱体へ貼り放熱体を貼着する方法、放熱体へ直接的に熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を溶融塗布して発熱体を貼着する方法、発熱体へ直接的に熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を溶融塗布して放熱体を貼着する方法等がある。シートを作製して貼着する方法ではシートを作製する工程と貼り合せる工程の二段階に分割されるため、生産性にも時間的にも効率的でない。発熱体或いは放熱体へ直接的に溶融塗布する貼着方法では工程数が少ないため連続生産性、生産時間の短縮の観点から特に好ましい。
溶融塗布による熱伝導性ホットメルト接着剤組成物の形状としては、通常公知の形状を適用することができる。例えば、スジ状、シート状、スパイラルスプレー状、カーテンスプレー状、ドット状等の形状に形成することが挙げられる。
以下に本発明の実施例、比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
実施例、及び、比較例において用いた評価方法は次のとおりである。
熱伝導率:プローブ法にて測定した装置は京都電子工業株式会社製迅速熱伝導率計QTM−500を用いた。試験片は幅70mm、長さ150mm、厚さ20mmのプレスシートを使用した。測定環境温度は20.0±1.0℃であった。
動的粘弾性試験:TA Instruments社製ARESレオメーターを用いた。周波数0.5Hzの動的粘弾性試験法において、−70〜20℃の低温域に現れるゴム状態からガラス状態への転移に対応するtanδのピーク温度を読み取った。
引張剪断ずり試験:ガラス板とアルミニウム板を1mm厚のホットメルト接着剤で貼り合わせたものを試験片とする。ホットメルト接着剤の接着面積は25×10mmであった。引張試験機を用いてこの試験片のガラス板を固定しアルミニウム板を剪断方向(ホットメルト接着剤の厚みに対して垂直方向)に引っ張る。試験条件は引張速度が0.1mm/min、測定環境温度を−25℃で、変位が0.05mmに達したときの応力を読み取った。
耐熱性:SAFT(剪断接着破壊温度)試験によって評価した。ガラス板へホットメルト接着剤を1mm厚に塗工したものを試験片とした。試験条件は、先程の試験片の幅25mm、長さ25mm部分をアルミ板に貼付け、2kgのローラを1往復させ圧着する。この貼り合わせたものに500g荷重をかけて2℃/5分のペースで昇温させ、貼着が破壊されて錘が落下したときの温度を測定する。測定は室温から180℃まで行った。
湾曲性:600mm×60mm×7mm厚のガラス板と600mm×60mm×2mm厚のアルミニウム板を1mm厚のホットメルト接着剤で貼り合わせたものを試験片とした。この試験片を−25℃ 中に放置し、6時間後の反りの度合いを湾曲性として目視で評価した。湾曲したものを「×」、湾曲しなかったものを「○」とした。
実施例及び比較例において用いた成分は下記のとおりである。
成分(A)−1:スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製、商標名:セプトン4055、スチレン−エチレン/エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン付加量含有量 30質量%)、(A)−2:スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製、商標名:セプトン4033、スチレン−エチレン/エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン付加量含有量 30質量%)、成分(A)−3:スチレン系熱可塑性エラストマー(クレイトンポリマージャパン(株)製、商標名:クレイトンFG−1924X、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸付加量1.0%)、成分(B):熱伝導性付与剤(神島化学工業(株)製、商標名:電融マグネシアA25、酸化マグネシウム)、成分(C):粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、商標名:クリアロンP−150)、成分(D):可塑剤(出光興産(株)製、商標名:プロセスオイルPW−90、パラフィン系オイル)、成分(E):ポリフェニレンエーテル樹脂(日本GEプラスチックス(株)製、商標名:ノリルSA−120)、(F)酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標名:イルガノックス1010F)
成分(A)−1:スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製、商標名:セプトン4055、スチレン−エチレン/エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン付加量含有量 30質量%)、(A)−2:スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ(株)製、商標名:セプトン4033、スチレン−エチレン/エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン付加量含有量 30質量%)、成分(A)−3:スチレン系熱可塑性エラストマー(クレイトンポリマージャパン(株)製、商標名:クレイトンFG−1924X、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸付加量1.0%)、成分(B):熱伝導性付与剤(神島化学工業(株)製、商標名:電融マグネシアA25、酸化マグネシウム)、成分(C):粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、商標名:クリアロンP−150)、成分(D):可塑剤(出光興産(株)製、商標名:プロセスオイルPW−90、パラフィン系オイル)、成分(E):ポリフェニレンエーテル樹脂(日本GEプラスチックス(株)製、商標名:ノリルSA−120)、(F)酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標名:イルガノックス1010F)
実施例1〜4、比較例1〜4
上記各成分を下記の表1に示す割合で配合してなる接着剤組成物を用いて、熱伝導率、耐熱性、動的粘弾性試験、引張剪断ずり試験、湾曲性を上記の方法に従って評価した。得られた結果を表1に示した。
上記各成分を下記の表1に示す割合で配合してなる接着剤組成物を用いて、熱伝導率、耐熱性、動的粘弾性試験、引張剪断ずり試験、湾曲性を上記の方法に従って評価した。得られた結果を表1に示した。
上記の結果から実施例1〜4は熱伝導率0.5W/mK以上で、耐熱性・耐寒性が良好なものが得られた。比較例1は動的粘弾性試験の結果が−15℃以上であり引張剪断ずり試験の結果が10N/10mm×25mm以上であったため湾曲した。また、比較例2は引張剪断ずり試験の結果が10N/10mm×25mm以上であったため湾曲した。比較例3は熱伝導付与剤の配合量が少ないために湾曲しなかったが、熱伝導率が低下した。比較例4は熱伝導付与剤の配合量が多いために引張剪断ずり試験の結果が10N/10mm×25mm以上となり湾曲した。
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は熱伝導性、耐熱性に優れ、更に直接的に発熱体或いは放熱体に塗布できるため生産性の向上を達成することが出来た。また、本発明の組成物を、発熱体と放熱体との間に設けた電子部品、半導体装置或いは表示装置を製造することにより、従来に比較して、より高負荷に耐えうる高性能の装置を構成することが可能となり、さらにはプラズマディスプレイパネルに最適である。
Claims (4)
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と熱伝導付与剤(B)を必須成分とし、動的粘弾性試験法によって測定されるゴム状態からガラス状態への転移に対応する低温域のtanδのピーク温度が−15〜−35℃であり、厚みを1mmとしたシートの−25℃環境下での引張剪断ずり試験において変位が0.05mmに達した時の応力が10N/10mm×25mm以下であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
- 熱伝導付与剤(B)を熱伝導性ホットメルト接着剤組成物全体中の20〜60vol%含有することを特徴とする請求項1記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対し、粘着付与剤(C)50〜1000質量部と可塑剤(D)50〜1000質量部含有することを特徴とする請求項1または2記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
- スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対してポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂が0.1〜100質量部である請求項1または2または3記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
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