JP2008266234A - グリセリンの還元方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1−プロパノール、および2−プロパノールから選択された一種以上からなるグリセリン還元化合物を高収率で得ることができるグリセリンの還元方法の提供。
【解決手段】窒素ガス流量10ml/分、昇温速度5K/分、雰囲気温度418Kの条件で測定したSO2濃度が、1eq当たり10×106ppm以下であるイオン交換樹脂を、グリセリン、水素、およびRuと共存させてグリセリンの還元を行う。
【選択図】なし
【解決手段】窒素ガス流量10ml/分、昇温速度5K/分、雰囲気温度418Kの条件で測定したSO2濃度が、1eq当たり10×106ppm以下であるイオン交換樹脂を、グリセリン、水素、およびRuと共存させてグリセリンの還元を行う。
【選択図】なし
Description
本発明は、グリセリン還元化合物を高収率で得ることができるグリセリンの還元方法に関するものである。
バイオディーゼルは、植物油をエステル交換することによって製造され、この製造過程ではグリセリンが副生することが知られている。そして、バイオディーゼルは、石油の代替燃料として需要の増大が見込まれており、グリセリンの副生量の増大が予想されるので、グリセリンを有効に利用することが望まれる。
グリセリンを還元して得られるグリセリン還元化合物である1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1−プロパノール、および2−プロパノールは、溶剤として使用される他、合成樹脂や界面活性剤原料等の化学品原料として使用される。つまり、グリセリンを還元することがグリセリンを有効利用することになるのである。
触媒を使用してグリセリンを還元することが既に公知となっている。例えば、Ruを担持している活性炭(以下、「Ru/C」という)と、Amberlyst15の商品名で市販されている陽イオン交換樹脂とを触媒に使用して、グリセリンの還元を行うことが非特許文献1〜3に開示されている。これら文献に開示されている方法よりも、グリセリン還元化合物を高収率で得られる方法の提供が望まれる。
Keiichi Tomishige,et al.,Highly active metal-acid bifunctional catalyst system for hydrogenolysis of glycerol under mild reaction condition, Catalysis Communications 6 (2005) 645-649 Keiichi Tomishige,et al.,Glycerol conversion in the aqueous solution under hydrogen over Ru/C + an ion-exchange resin and its reaction mechanism, Journal of Catalysis 240 (2006) 213-221 Keiichi Tomishige,et al., Development of a Ru/C catalyst for glycerol hydrogenolysis in combination with an ion-exchange resin, Applied Catalysis A (2006)
Keiichi Tomishige,et al.,Highly active metal-acid bifunctional catalyst system for hydrogenolysis of glycerol under mild reaction condition, Catalysis Communications 6 (2005) 645-649 Keiichi Tomishige,et al.,Glycerol conversion in the aqueous solution under hydrogen over Ru/C + an ion-exchange resin and its reaction mechanism, Journal of Catalysis 240 (2006) 213-221 Keiichi Tomishige,et al., Development of a Ru/C catalyst for glycerol hydrogenolysis in combination with an ion-exchange resin, Applied Catalysis A (2006)
本発明は、上記事情に鑑み、収率良くグリセリン還元化合物を製造できるグリセリンの還元方法の提供を目的とする。
本発明は、グリセリン、水素、イオン交換樹脂およびRuの共存下で行われるグリセリンの還元方法であって、前記イオン交換樹脂として、該イオン交換樹脂の雰囲気温度418Kにおける窒素ガスに含まれる前記イオン交換樹脂1eq当たりのSO2濃度が、前記窒素ガスの流量10ml/分、前記雰囲気温度の昇温速度5K/分の条件で、10×106ppm以下であるものを使用することを特徴とする。本発明の還元方法における還元反応温度は、393〜473Kであると好ましい。
前記共存させるRuとイオン交換樹脂との量比は、Ru:イオン交換樹脂=0.75mg:100×10-6〜300×10-6eqであることが好適である。
前記共存させるRuとグリセリンとの量比は、Ru:グリセリン=0.40〜1.6mg:4〜5gであることが好適である。
前記Ruは、活性炭に担持されていると好適である。
本発明のグリセリンの還元方法は、グリセリン還元化合物誘導体の製造方法におけるグリセリンの還元工程に使用できる。ここで、「グリセリン還元化合物誘導体」とは、グリセリン還元化合物を原料にする化合物を意味する。1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールを原料とする場合、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成樹脂がグリセリン還元化合物誘導体に該当する。
本発明によれば、RuだけではなくSO2濃度が所定範囲のイオン交換樹脂も使用してグリセリンの還元を行うので、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1−プロパノール、および2−プロパノールから選択された一種以上からなるグリセリン還元化合物を高収率で製造できる。また、本発明に係る方法は、1,2−プロパンジオールの選択率に優れる。
本発明を実施形態に基づき以下に説明する。本実施形態のグリセリンの還元方法は、グリセリンと水素とを共存させるグリセリンの還元方法において、グリセリン還元用触媒としてイオン交換樹脂およびRuを共存させることを特徴としている。
本実施形態におけるイオン交換樹脂は、樹脂母体と、当該表面に固定されたイオン交換基とを有する樹脂である。イオン交換基には対立イオンが結合しており、その対立イオンは、H+であることが好ましい。つまり、H形のイオン交換樹脂を選択することが好適である。また、イオン交換樹脂は、塩素化処理されたものであると好適である。
本還元方法において一種または二種以上のイオン交換樹脂を使用しても良いが、少なくともその一種に、雰囲気温度418Kにおける窒素ガスに含まれるSO2濃度が1eq当たり10×106ppm以下(SO2濃度測定方法については次述)であるイオン交換樹脂を使用する。このような濃度のイオン交換樹脂をRuと共にグリセリン還元反応系に共存させることで、グリセリン還元化合物の選択率を高めると共に、グリセリンの転化率を高めることができる。これらの結果、グリセリン還元化合物を高収率で製造できる。SO2濃度は、438Kで10×106ppm以下であることが好ましく、458Kで10×106ppm以下であることがより好ましい。このSO2濃度を満たすイオン交換樹脂は市販されており、市販品としてはRohm and Hass社が販売するAmberlyst70がある。
SO2濃度を測定する場合、所定量のイオン交換樹脂を所定温度雰囲気において加熱することにより当該樹脂から脱離するSO2濃度を測定する方法を採用する。先ず、SO2濃度測定で使用するイオン交換樹脂の質量は、55.3mg程度である。当該質量は、例えば1000gのイオン交換樹脂のイオン交換容量が2.55eqであれば、141×10-6eqに相当する質量(2.55eq/1000g×55.3g/1000=141×10-6eq)である。ここでイオン交換容量は、イオン交換樹脂のイオン交換基数をモル数で表した値であり、例えば完全にH形にした陽イオン交換樹脂の場合、その樹脂が有するイオン交換可能なH原子のモル数(単位:eq)を意味する。イオン交換樹脂のイオン交換容量は、Rohm and Hass社のマスターメソッドMTM0265に準拠して求めることができる。次に、SO2濃度測定におけるイオン交換樹脂雰囲気の昇温は、自動昇温脱離装置を使用して行われる。このときの昇温条件は、装置の測定室への窒素ガス流量が10ml/分、昇温速度が5K/分である。そして、イオン交換樹脂から脱離したSO2濃度を、自動昇温脱離装置から排出される100μl程度のガスを分析し、この分析結果から算出された前記排出ガス中のSO2濃度を、イオン交換樹脂から脱離したSO2濃度として採用する。
イオン交換樹脂の使用量は、特に限定されない。グリセリン還元化合物の収率の観点からRuとイオン交換樹脂との量比を表わした場合、Ru:イオン交換樹脂=0.75mg:100×10-6〜300×10-6eqが好ましく、0.75mg:120×10-6〜290×10-6eqがより好ましい。1,2−プロパンジオールの選択率を高める観点からは、Ru:イオン交換樹脂=0.75mg:100×10−6〜220×10−6eqが好ましく、0.75mg:120×10−6〜200×10−6eqがより好ましい。
上記イオン交換樹脂における樹脂母体は、三次元網目状の高分子を主構成とした多孔質樹脂である。当該樹脂は、モノマー、架橋剤、および重合開始剤等を樹脂母体原料に使用し、懸濁重合法等によりモノマーを共重合させて製造される。使用されるモノマーおよび架橋剤は、特に限定されない。モノマーとしては、スチレン、アクリル酸、およびメタクリル酸から選択された一種または二種以上であると良く、スチレンが好適である。また、架橋剤は、ジビニルベンゼンが好適である。
イオン交換基は、一種または二種以上のイオン交換基であって良い。但し、−SO3 -基が必須である。樹脂母体表面への−SO3 -基の固定は、樹脂母体表面のスルホン化反応で実現できる。
本方法においては、Ru単体および/またはRuを担持した担体として、Ruを使用できる。Ruの平均粒径は、10nm以下であると好ましく、1〜5nmであるとより好ましい。
Ruの使用量は、特に限定されない。グリセリン還元化合物の収率の観点からRuとグリセリンとの量比を表わした場合、Ru:グリセリン=0.40〜1.6mg:4〜5gが好ましく、0.45〜1.0mg:4〜5gがより好ましい。1,2−プロパンジオールの選択率を高める観点からは、Ru:グリセリン=0.36〜1.4mg:4〜5gが好ましく、0.40〜0.70mg:4〜5gがより好ましい。
Ruを担持している担体を使用する場合、その担体は特に限定されないが、活性炭が好適である。
上記Ru担持触媒を製造するには、担体にRu含有液を含浸させた後、乾燥、次に焼成すれば良い。なお、触媒製造におけるRu含有液の量が多量である場合には、前記含浸および乾燥を繰り返し行うIncipient wetness法により触媒を製造しても良い。また、前記グリセリン還元用触媒の製造過程における担体を含浸するときの温度および乾燥するときの温度は、特に限定されるものではない。上記焼成の温度は、特に限定されないが、600〜1000Kが好ましく、700〜800Kがより好ましい。また、上記焼成時の雰囲気も、大気雰囲気;窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気;水素等の還元性ガス雰囲気;等、特に限定されない。当該焼成時の雰囲気として好ましいのは、不活性ガス雰囲気、および還元性ガス雰囲気である。
本方法においては、Mo、Re、およびW等から選択された一種または二種以上の金属元素を、Ruおよびイオン交換樹脂と共存させても良い。この場合、当該金属元素がグリセリンの還元反応系に共存している限り、その共存態様は特に限定されない。共存態様は、例えば、金属元素が金属単体、金属塩、若しくは錯体として共存している態様;金属元素が担体に担持されている態様;が挙げられる。グリセリンの還元反応において高収率でグリセリン還元化合物を得るためには、Mo等を担持している担体を共存させることが好ましい。この場合の担体は、特に限定されず、例えば、活性炭、SiO2、Al2O3が挙げられる。
なお、グリセリンの水素化においてMo、Re、およびW等から選択された一種または二種以上の金属元素を共存させることは、上記所定のSO2濃度を満足するイオン交換樹脂を使用する場合だけでなく、上記所定のSO2濃度を満足しないイオン交換樹脂を使用する場合も有効である。
Moを共存させた場合、グリセリン還元化合物を高収率で得るためには、MoとRuとのモル比([Mo]/[Ru])が3/5以下であることが好ましく、1/40〜1/3であることがより好ましく、1/20〜1/8であることが更に好ましい。また、1,2−プロパンジオールの選択率を高めるためには、[Mo]/[Ru]が1/3以上であると良い。
Reを共存させた場合、ReとRuのモル比([Re]/[Ru])に係わらず、グリセリンの転化率が向上し、かつ、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールの収率が高まる。これら転化率および収率をより高めるためには、[Re]/[Ru]は、1/20以上であることが好ましく、さらに好ましくは1/12以上、より好ましくは1/2以上である。一方で、[Re]/[Ru]の上限値は、2であると良い。Reを多量に共存させてもグリセリン還元用触媒の活性を低下させることがなく、Re共存量が多いほどグリセリン還元化合物の選択率が高まる傾向があるものの、[Re]/[Ru]が2を超えても前記選択率が大幅に向上することがないからである。なお、Reを共存させた場合、1−プロパノールおよび2−プロパノールの選択率は、大きな変動を伴うことはない。
また、Wを共存させた場合、グリセリン還元化合物の収率を高めるためには、WとRuのモル比([W]/[Ru])は、1/4未満であることが好ましく、1/5以下であればより好ましい。また、1,2−プロパンジオールの選択率を高めるためには、[W]/[Ru]が1/5以上であると良い。なお、Wを共存させた場合、その量が多量([W]/[Ru]が1/4以上)であるとグリセリンの転化率が極端に低くなる傾向がある。
Mo等の金属元素を担持している担体を調製する方法には、公知の担持方法を使用すると良い。例としては、(1)Mo、Re、およびW等から選択された一種または二種以上の金属元素含有液を担体(当該担体は、Ruを担持させる担体とは異なる)に含浸させ、乾燥、焼成する方法、(2)Ru含有液を含浸させた後に乾燥した担体に、Mo、Re、およびW等から選択された一種または二種以上の金属元素含有液を含浸させた後、乾燥および焼成する方法、が挙げられる。
本実施形態におけるグリセリンの還元方法は、グリセリンを接触還元する方法であれば、グリセリン溶液を使用する三相系還元反応、およびグリセリンガスを使用する二相系還元反応のいずれであっても良いが、グリセリン分子の炭素−炭素間結合が切断されて分子骨格炭素数が2以下となったエチレングリコール、エタノール、メタノール、メタン等のグリセリン分解化合物の生成量が少ない三相系還元反応が好ましい。
グリセリンの還元反応においては、下記反応経路によりグリセリン還元化合物、およびグリセリン分解化合物が生成すると考えられる。
Ruだけでなくイオン交換樹脂を還元反応系に共存させる反応においては、イオン交換樹脂がグリセリンの分子内脱水反応を促進することにより、アセトール生成を促進し、このアセトールがRuの水素化促進効果により1,2−プロパンジオールに転化すると考えられる。このような反応経路(上記反応経路の上段経路)を採ることにより、1,2−プロパンジオールの収率が高まると考えられる。
還元反応を行うときの温度は、高温であるほど触媒自体の活性が高まることになるので好ましい。しかし、473Kを超えると、グリセリン分解化合物の選択率が非常に高くなって、グリセリン還元化合物を収率良く製造することができない。そのため、反応温度の上限値は、473Kが好ましく、463Kがより好ましい。反応温度の下限値は、393Kであると良く、好ましくは413K、さらに好ましくは433Kである。また、還元反応において、水素圧は概ね8MPa程度、グリセリン溶液のグリセリン濃度は20質量%以下であると良い。なお、還元反応において、水素圧が高いほどグリセリン還元化合物の選択率および収率が高まり、グリセリン濃度が低いほどグリセリン還元化合物の選択率および収率が高まる一般的な傾向がある。
グリセリンの還元方法は、回分形式、半回分形式、連続流通形式等を任意に選択した形式により実施することができる。また、所定量のグリセリンから得られるグリセリン還元化合物の量を増加させたい場合には、還元方法実行後の未反応グリセリンを分離回収して還元するリサイクルプロセスを採用しても良い。このリサイクルプロセスは、例えば、1,2−プロパンジオールの選択率が高いグリセリンの還元方法で、所定量の使用グリセリンに対する1,2−プロパンジオール生成量を高めたい場合に好適である。
製造されたグリセリン還元化合物は、蒸留等の適宜な分離手段により、その成分となっている1,2−プロパンジオール等に分離することができ、既に公知となっている通り、グリセリン還元化合物誘導体の製造原料として使用することができる。従って、上記グリセリン還元化合物の製造方法は、この化合物誘導体の製造工程中に取り入れることが当然可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
イオン交換樹脂およびRu/Cを使用し、実施例および比較例に従って、グリセリンの還元を行った。使用したイオン交換樹脂、Ru/C、実施例、および比較例の詳細は、以下の通りである。
(イオン交換樹脂)
商品名が「Amberlyst15」であるイオン交換樹脂または商品名が「Amberlyst70」であるイオン交換樹脂を使用した(以下において、「Amberlyst15」を「A15」、「Amberlyst70」を「A70」ということがある)。A15およびA70は共に−SO3 -基をイオン交換基として備え、A15のイオン交換容量は4.70eq/kgであり、A70のイオン交換容量は、4.78eq/kgである。
商品名が「Amberlyst15」であるイオン交換樹脂または商品名が「Amberlyst70」であるイオン交換樹脂を使用した(以下において、「Amberlyst15」を「A15」、「Amberlyst70」を「A70」ということがある)。A15およびA70は共に−SO3 -基をイオン交換基として備え、A15のイオン交換容量は4.70eq/kgであり、A70のイオン交換容量は、4.78eq/kgである。
(SO2濃度の測定)
測定試料であるイオン交換樹脂量を141×10−6eqとし、この測定試料雰囲気を昇温させることにより当該測定試料からSO2を脱離させて、SO2濃度を測定した。測定試料の雰囲気温度昇温には、自動昇温脱離装置を使用した。測定試料雰囲気温度の昇温条件は、測定試料の雰囲気昇温速度を5K/分、測定試料の雰囲気最高温度を523K、該最高温度保持時間を2時間、とした。そして、自動昇温脱離装置内に窒素ガスを10ml/分の流量で流入させ、SO2濃度測定のために自動昇温脱離装置の排気口から流出するガス100μlをガスクロマトグラフ(GC)で分析した。ここで使用したGCは、発光光度検出器、および信和化工社製カラム「β,β'−Oxydi-Propionitrile(ODPN)」を備える島津製作所社製「GC−14B」である。
測定試料であるイオン交換樹脂量を141×10−6eqとし、この測定試料雰囲気を昇温させることにより当該測定試料からSO2を脱離させて、SO2濃度を測定した。測定試料の雰囲気温度昇温には、自動昇温脱離装置を使用した。測定試料雰囲気温度の昇温条件は、測定試料の雰囲気昇温速度を5K/分、測定試料の雰囲気最高温度を523K、該最高温度保持時間を2時間、とした。そして、自動昇温脱離装置内に窒素ガスを10ml/分の流量で流入させ、SO2濃度測定のために自動昇温脱離装置の排気口から流出するガス100μlをガスクロマトグラフ(GC)で分析した。ここで使用したGCは、発光光度検出器、および信和化工社製カラム「β,β'−Oxydi-Propionitrile(ODPN)」を備える島津製作所社製「GC−14B」である。
なお、SO2濃度測定で使用した自動昇温脱離装置の試料セルの概略構成は、図3に表される通りである。SO2濃度測定では、ガラス製セル内を昇温させた。従って、試料設置位置から窒素ガス流通方向のガラス製セル内が試料雰囲気容量となり、その容量は、概ね8.5cm3(0.3mm×0.3mm×3.14×30cm)であった。
上記SO2濃度の分析の結果、検出された硫黄含有化合物は、SO2のみであった。イオン交換樹脂量1eqに換算したSO2濃度結果を表1に示す。また、SO2濃度結果を表すグラフを図1、および図2に示す。
表1に示す通り、418KのSO2濃度は、A15では10×106ppmを超えているが、A70では10×106ppm以下であったことを確認することができる。
(h−Ru/C)
比表面積が254m2/gである活性炭(Cabot社製「Vulcan-XC72」)にRu(NO)(NO3)3水溶液を含浸させ、水を蒸発させた。その後、活性炭を温度393Kで12時間乾燥した。このRu担持活性炭をアルゴン流通下、温度773Kで2時間焼成してRu/C(当該Ru/Cを「h−Ru/C」という)を調製した。h−Ru/CにおけるRu量は、5質量%であった。
比表面積が254m2/gである活性炭(Cabot社製「Vulcan-XC72」)にRu(NO)(NO3)3水溶液を含浸させ、水を蒸発させた。その後、活性炭を温度393Kで12時間乾燥した。このRu担持活性炭をアルゴン流通下、温度773Kで2時間焼成してRu/C(当該Ru/Cを「h−Ru/C」という)を調製した。h−Ru/CにおけるRu量は、5質量%であった。
(c−Ru/C)
和光純薬工業社製の比表面積485m2/gのRu担持活性炭を使用した(当該Ru/Cを「c−Ru/C」という)。c−Ru/CにおけるRu量は、5質量%であった。
和光純薬工業社製の比表面積485m2/gのRu担持活性炭を使用した(当該Ru/Cを「c−Ru/C」という)。c−Ru/CにおけるRu量は、5質量%であった。
(実施例a1〜a4、実施例b1〜b4、比較例a1〜a4、比較例b1〜b4)
15mgのc−Ru/Cまたはh−Ru/C、イオン交換容量が141×10-6eq相当量のA15またはA70、および20質量%グリセリン水溶液20ml(グリセリン量4.2g)が仕込まれ、99.99%の水素でパージされた内容積70mlのオートクレーブ中において、グリセリン水溶液を攪拌しながらグリセリンの還元を行った。この還元反応における反応温度は、393K、413K、433K、または453Kとした。その他の反応条件は、反応温度到達時の初期圧力が8.0MPa、反応時間を10時間であった。なお、反応温度については、温度制御機に接続した熱伝対をオートクレーブ内に挿入して監視した。反応終了後、ガス相生成物をガスバッグ内に収集し、一方、濾過により液相生成物から触媒を分離した。
15mgのc−Ru/Cまたはh−Ru/C、イオン交換容量が141×10-6eq相当量のA15またはA70、および20質量%グリセリン水溶液20ml(グリセリン量4.2g)が仕込まれ、99.99%の水素でパージされた内容積70mlのオートクレーブ中において、グリセリン水溶液を攪拌しながらグリセリンの還元を行った。この還元反応における反応温度は、393K、413K、433K、または453Kとした。その他の反応条件は、反応温度到達時の初期圧力が8.0MPa、反応時間を10時間であった。なお、反応温度については、温度制御機に接続した熱伝対をオートクレーブ内に挿入して監視した。反応終了後、ガス相生成物をガスバッグ内に収集し、一方、濾過により液相生成物から触媒を分離した。
(実施例c1〜c4、比較例c)
Ru/Cに15mgのh−Ru/Cを使用した。イオン交換樹脂にA70を使用し、その量は、イオン交換容量0eq、71×10-6eq、141×10-6eq、212×10-6eq、または282×10-6eqとした。また、反応温度は、453Kとした。これら以外の条件は、実施例a1と同様にして、グリセリンの還元反応を行った。
Ru/Cに15mgのh−Ru/Cを使用した。イオン交換樹脂にA70を使用し、その量は、イオン交換容量0eq、71×10-6eq、141×10-6eq、212×10-6eq、または282×10-6eqとした。また、反応温度は、453Kとした。これら以外の条件は、実施例a1と同様にして、グリセリンの還元反応を行った。
(実施例d1〜d5)
Ru/Cにh−Ru/Cを使用し、その使用量を3.75mg(Ru0.19mg含有)、7.5mg(Ru0.38mg含有)、10mg(Ru0.50mg含有)、15mg(Ru0.75mg含有)、または30mg(Ru1.5mg含有)とした。イオン交換樹脂にA70を141×10-6eq使用した。また、反応温度は、453Kとした。これら以外の条件は、実施例a1と同様にして、グリセリンの還元反応を行った。
Ru/Cにh−Ru/Cを使用し、その使用量を3.75mg(Ru0.19mg含有)、7.5mg(Ru0.38mg含有)、10mg(Ru0.50mg含有)、15mg(Ru0.75mg含有)、または30mg(Ru1.5mg含有)とした。イオン交換樹脂にA70を141×10-6eq使用した。また、反応温度は、453Kとした。これら以外の条件は、実施例a1と同様にして、グリセリンの還元反応を行った。
以上の実施例および比較例においては、ガス相生成物および液相生成物の分析をガスクロマトグラフ(GC)により行った。使用したGCには、島津製作所社製「GC−17A」を使用した。このGC分析において、検出器には水素炎イオン化検出器を使用し、GCカラムには内径0.25mm、長さ20mのキャピラリーカラム「PONA RT−1」を使用し、カラム温度は503Kとした。
また、GC−MS(島津製作所社製「GCMS−QP5050」、GCカラム:Stabilwax)を使用して、上記各生成物を同定した。その結果、グリセリンの還元生成物である1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、アセトール、1−プロパノール、および2−プロパノールを同定した。また、グリセリンの炭素−炭素間結合が切断されて生じるエチレン、エチレングリコール、エタノール、メタノール、およびメタンを同定した。
表2に、実施例a1〜a4、実施例b1〜b4、比較例a1〜a4、および比較例b1〜b4の結果を示す。ここで、表2における「転化率」とは、グリセリンの転化率を意味し、下記式(1)に基づいて算出した値である。「収率」とは、グリセリン還元化合物の収率を意味し、下記式(2)に基づいて算出した値である。「分解率」とは、グリセリン分解化合物の生成率を意味し、下記式(3)に基づいて算出した値である。また、「選択率」は、グリセリンが転化することによって生じた各化合物の生成率を意味し、下記式(4)に基づいて算出した値である。
表2の実施例a1〜a4と比較例a1〜a4との比較、および実施例b1〜b4と比較例b1〜b4との比較より、反応温度が同じである場合、イオン交換樹脂の雰囲気温度418KにおけるSO2濃度が10×106ppm以下である実施例a1〜a4および実施例b1〜b4の方がグリセリン還元化合物の収率が高かったことを確認できる。反応温度が393K以上の実施例a1〜a4および実施例b1〜b4においては、温度が上昇するにつれてグリセリン還元化合物の収率が向上していたことを確認できる。
表3に、比較例c、および実施例c1〜c4の結果を示す。
表3において、A70を使用しなかった比較例cとA70を使用した実施例c1〜c4との比較より、実施例c1〜c4の方がグリセリン還元化合物の収率が高かったことを確認できる。また、Ru:イオン交換樹脂=0.75mg:100×10-6〜300×10-6eqを満たす実施例c2〜c4の収率は、特に高かったことを確認できる。
表4に、実施例d1〜d5の結果を示す。
表4において、実施例d1〜d5の収率値を比較すると、Ru:グリセリン=0.40〜1.6mg:4〜5gを満たす実施例d3〜d5の値が特に高い。
上記実施例とは別に、実施例b4で使用したh−Ru/CおよびA70を室温で乾燥後、実施例b4と同様にして、2度目のグリセリンの還元を行った。その後、更に、h−Ru/CおよびA70を室温で乾燥後、実施例b2と同様にして、3度目のグリセリンの還元を行った。
表5において、h−Ru/CおよびA70を再度グリセリンの還元に使用した場合であっても、グリセリン還元化合物の収率の低下は小さかったことを確認できる。
Claims (6)
- グリセリン、水素、イオン交換樹脂およびRuの共存下で行われるグリセリンの還元方法であって、
前記イオン交換樹脂として、該イオン交換樹脂の雰囲気温度418Kにおける窒素ガスに含まれる前記イオン交換樹脂1eq当たりのSO2濃度が、前記窒素ガスの流量10ml/分、前記雰囲気温度の昇温速度5K/分の条件で、10×106ppm以下であるものを使用することを特徴とするグリセリンの還元方法。 - 還元反応温度が、393〜473Kである請求項1に記載のグリセリンの還元方法。
- 前記共存させるRuとイオン交換樹脂との量比が、Ru:イオン交換樹脂=0.75mg:100×10-6〜300×10-6eqである請求項1または2に記載のグリセリンの還元方法。
- 前記共存させるRuとグリセリンとの量比が、Ru:グリセリン=0.40〜1.6mg:4〜5gである請求項1〜3のいずれかに記載のグリセリンの還元方法。
- 前記Ruが活性炭に担持されている請求項1〜4のいずれかに記載のグリセリンの還元方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のグリセリンの還元方法を使用する工程を有するグリセリン還元化合物誘導体の製造方法。
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2007
- 2007-04-23 JP JP2007113073A patent/JP2008266234A/ja not_active Withdrawn
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