JP2008265311A - 感熱転写受像シートの製造方法およびそれによって製造された感熱転写受像シート - Google Patents

感熱転写受像シートの製造方法およびそれによって製造された感熱転写受像シート Download PDF

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Abstract

【課題】高濃度の印画特性を有し、かつ高い平滑性ゆえに優れた画像形成を達成できるような感熱転写受像シートの製造方法およびそれによって製造された感熱転写受像シートを提供することにある。
【解決手段】支持体上に中空ポリマーを少なくとも1種類含む断熱層を少なくとも1層有し、ポリマーラテックスを少なくとも1種含む受容層を少なくとも1層有する感熱転写受像シートの製造方法であって、塗布される層のうち少なくとも1層の塗布液中に硬膜剤を含有し、かつ塗布される層のうち少なくとも1層の塗布液中に水溶性ポリマーを含有し、該製造工程は、少なくとも、2層以上の同時重層塗布工程、乾燥工程、巻取り工程、シーズニング工程、および加工工程を含み、該巻取り工程は、15℃〜35℃で50%RH〜70%RHの雰囲気に調湿され、該シーズニング工程におけるシーズニングが15℃〜35℃で24時間以上480時間以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、感熱転写受像シートの製造方法及びその製造方法で製造された感熱転写受像シートに関する。特に、感熱転写受像シート使用環境の温湿度が変化しても、感熱転写シートとの剥離ムラが少なく、光沢性に優れた画像を与える感熱転写受像シートを製造方法及びその製造方法で製造された感熱転写受像シートに関する。
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも染料拡散転写記録方式は、銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。しかも、銀塩写真に比べて、ドライであること、デジタルデータから直接可視像化できること、複製作りが簡単であることなどの利点を持っている。
この染料拡散転写記録方式では、色素を含有する感熱転写シート(以下、インクシートともいう)と感熱転写受像シート(以下、受像シートともいう)を重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによって感熱転写シートを加熱することで感熱転写シート中の色素を受像シートに転写させ画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を転写記録することができる。
水溶性ポリマーから構成されるハロゲン化銀写真感光材料においては、現像工程において各種の処理液中に感光材料を浸して画像形成を行うため、この現像工程で水溶性ポリマーが吸水することから、塗布膜が軟らかくなり傷が付きやすくなるのを防ぐ目的で、あるいは処理液が高温の場合に膜自体が処理液中に溶出してしまうことを避ける目的で、硬膜剤を用いて水溶性ポリマーの吸水を抑制することが行なわれている。しかしながら、染料拡散転写記録方式による画像形成方法においては、液中に記録材料を浸す過程を含まないため、硬膜剤で水溶性ポリマーを架橋する必要はない。
一方、水溶性ポリマーを使用する感熱転写受像シートは、溶剤系塗布の感熱転写受像シートに比べて、画像形成時の環境の湿度に依存してその性能が大きく変動し易いという欠点があった。
更に、記録材料に水溶性ポリマーと硬膜剤を併用した場合においても、塗布時に硬膜剤を添加するだけでは前記画像形成時の環境湿度に対する性能依存性が依然として大きい場合があり、特に保護層転写に関しては更なる改善が望まれていた。しかも、水系塗布により得られた感熱転写受像シートを用いて印画を行ったところ、高濃度部分において微妙な濃度差が存在する部分(例えば髪の毛)において低濃度部分では見られない微小な凹凸状の転写ムラが発生し、鑑賞上問題であった。
熱現像カラー感光材料と組み合わせて好ましく用いられる感熱転写受像シートにおいて、剥離性、現像ムラの改善、高濃度発色を可能とする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、該発明の感熱転写受像シートは、硬膜させることで剥離性、現像ムラ、および転写ムラを改善するとともに、高濃度発色を可能にすることを目的としたものである。且つ、感熱転写受像シート中に発色剤を含み150℃で75秒間の加熱現像する記録方式での発明であり、サーマルヘッドによって感熱転写シートを250℃以上の高温で数秒間という短時間で加熱することで感熱転写シート中の色素を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録を行う本発明の方式とは技術的に異なるものである。したがって、本発明の方式において、剥離時の離型性に起因する感熱転写シートの剥離ムラ、平滑性に起因する光沢性に関しては更なる改良が望まれていたものの、特許文献1に記載の発明は前記課題の解決に結びつくものではなかった。更に、特許文献1には具体的な製造方法および製造工程について記載されていない。
水系同時重層塗布により中空ポリマーの空隙を活かし高濃度の印画特性を達成し、さらに重層塗布の液界面での界面混合による凹凸を解消することで高い平滑性を保ち、白抜けを改善するような感熱転写受像シートおよびその製造方法の例が開示されているが(例えば、特許文献2参照)、高濃度印画時の光沢性及び感熱転写シートとの剥離ムラ性能については記載が無く、更なる改善が望まれていた。また、光沢性及び感熱転写シートの剥離ムラ性能が巻取り工程の詳細およびその後のシーズニング工程に左右されること、及びその解決をする方法に関する記載はない。
あらゆる環境下で保存しても画像性能を劣化させず、安定な画像形成材料を提供することを目的とした感熱転写受像シートおよびその製造方法の例が開示されている(例えば、特許文献3参照)。塗工後の経時による画像性能を劣化させないという発明ではあるが、網点、黒ポチ、折り返しムラ、およびカールの改善を目的としたもので、高濃度印画字の光沢性、感熱転写シートの剥離ムラの改善に関しては記載されていない。更に、製造方法は水系同時重層塗布によるものではない。
特開平4−107548号公報 特開2006−88691号公報 特開平11−78262号公報 「情報記録(ハードコピー)とその材料の新展開」,(株)東レリサーチセンター発行,1993年,241頁−285頁 「プリンター材料の開発」,(株)シーエムシー発行,1995年,180頁
本発明の目的は、上記課題を鑑み、塗布方式の利点を活かしながら、中空ポリマーを用いた断熱層を最大限に利用することで高濃度の印画特性を有し、かつ高い平滑性ゆえに優れた画像形成を達成でき、更には高濃度部分の凹凸状の転写ムラを発生しないような感熱転写受像シートおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、塗布工程、乾燥工程、巻取り・シーズニング工程、加工工程からなる感熱転写受像シートの製造工程において、シーズニング時の製造条件を制御することにより、画像形成時の諸性能の環境温湿度依存性が改善されることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
上記課題は下記の手段により達成された。
<1> 支持体上に中空ポリマーを少なくとも1種類含む断熱層を少なくとも1層有し、ポリマーラテックスを少なくとも1種含む受容層を少なくとも1層有する感熱転写受像シートの製造方法であって、塗布される層のうち少なくとも1層の塗布液中に硬膜剤を含有し、かつ塗布される層のうち少なくとも1層の塗布液中に水溶性ポリマーを含有し、該製造工程は、少なくとも、2層以上の同時重層塗布工程、乾燥工程、巻取り工程、シーズニング工程、および加工工程を含み、該塗布工程は、該巻取り工程は、15℃〜35℃で50%RH〜70%RHの雰囲気に調湿され、該シーズニング工程におけるシーズニングが15℃〜35℃で24時間以上480時間以下であることを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
<2> 前記乾燥工程における乾燥温度が、前記受容層に含まれるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)より低い温度であることを特徴とする<1>に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
<3> <1>または<2>に記載の感熱転写受像シートの製造方法によって製造された感熱転写受像シート。
本発明の感熱転写受像シートの製造方法により、高濃度印画時の光沢性の向上および印画時のインクシートと感熱転写受像シートとの剥離ムラ、転写ムラの低減が達成される。
以下、本発明の感熱転写受像シートの製造方法について説明する。
本発明の感熱転写受像シートは、支持体上に、中空ポリマーを少なくとも1種類含む断熱層を少なくとも1種有し、ポリマーラテックスを少なくとも1種含む受容層を少なくとも1層有し、少なくとも塗布工程、乾燥工程、巻取り工程、シーズニング工程、および加工工程を含む製造工程からなる製造方法で製造されるものである。
<塗布工程>
受容層および断熱層がそれぞれ2層以上もしくは一方が2層以上の場合も好ましい態様であるが、少なくとも隣接する構成層が、いずれも水系塗布するものであれば、これらを同時重層塗布することが好ましい。
支持体上に複数の機能の異なる複数の層(気泡層、断熱層、中間層、受容層など)からなる多層構成の感熱転写受像シートを製造する場合、特開2004−106283号、同2004−181888号、同2004−345267号等の各公報に示されている如く各層を順次塗り重ねていくか、あらかじめ各層を支持体上に塗布したものを張り合わせることにより製造することが知られている。一方、ハロゲン化銀を使用する一般の写真業界では各層にゼラチンをバインダーとして使用していることから、例えば複数の層を同時に重層塗布することが行われている。
本発明では、少なくとも2層以上を同時重層塗布することにより、インクシートと重ね合わせて印画するときの走行性に優れた感熱転写受像シートを得ることができる。また、塗布層間の密着性が優れ、膜剥れの起きにくい感熱転写受像シートを得ることができる。これらの優れた特性は、本発明の効果をより大きくするものである。さらに、同時重層塗布によって生産性を大幅に向上させることができると同時に、画像欠陥を大幅に減少させることができる。
同時重層塗布においては、均質な塗膜形成および良好な塗布性の点で、各層を構成する塗布液の粘度および表面張力を調整する必要がある。塗布液の粘度は、公知の増粘剤や減粘剤を他の性能に影響を与えない範囲で使用することにより容易に調整できる。また、塗布液の表面張力は各種の界面活性剤により調整可能である。
塗布液の作製工程は、塗布液に使用される各種乳化物、添加剤などを準備し計量する工程と、これらを添加し混合して塗布液を調製する工程からなる。
乳化物および添加剤などの計量には、重量計量、容量計量などの方法があるが、いずれの方法も用いることができる。
塗布液を調製する方法は、連続調液方式とバッチ調液方式の2つに大別される。感熱転写インクシートおよび感熱転写受像シートの作製には、いずれの方法も用いることができる。連続調液方式は、基準と成る液を一定流量で流すところに必要な添加物を順次又は同時に基準液に対して一定比率で添加することを特徴とした塗布液の調製方法である。連続調液方式のメリットとして塗布液の経時時間が一律で製品性能が安定化することが挙げられるが、一方、デメリットとして定常状態になるまでのロスが大きいことが挙げられる。
また、調製時に反応、吸着などの反応待ち時間が必要な処方には不向きである。
バッチ調液方式は、より一般的な方法であって、釜等の容器中で分散液と添加剤を攪拌・混合装置を用いて混ぜ合わせるバッチ式の方法である。この方式には、反応、吸着などに対応した時間設定がし易く、また、攪拌強化、調製サイクル短縮などの対応策が取りやすいというメリットがある。逆に、デメリットとしては、塗布液の経時時間が一定化しないことが挙げられる。
バッチ調液方式では、塗布液を調製する調製タンクの他に、ストックタンク、液物性を測定するユニット、移液ポンプおよび濾過装置、液レベルの測定ユニット等が備えられることがある。液面レベル計としては、差圧電送器、超音波レベル計、追随式レベル計、ロードセルなど各種方式が知られているが、液量が測定可能であればどの方式も採用可能である。液物性を測定するユニットはストックタンクに備えられることが多い。さらに、塗布液を塗布工程に送るためのバッファータンクを備えることもある。ストックタンク中の調製液の物性に異常が無い事を確認後移液される。調製液ストックタンクとバッファータンクとの間には濾過装置を設けることもある。これらのタンクはスケール変更が可能な場合もある。
調製タンクでは、その対象とする塗布液に必要なもの(乳化物、各種薬品など)が、塗布液処方に従ってシーケンシャルに添加される。
調製タンクは、温度調節可能なジャッケットを有ることが多く、添加される薬品を攪拌機により均一に混合する。攪拌羽根としてはプロペラ型、パドル型、ジェット型、アンカー型など市販されている各種攪拌羽根が適用可能である。攪拌流れはダウンフロー型でもアップフロー型でも可能である。
調製液の各スケールにおいて、同一の攪拌混合効率が得られる様に塗布液調製タンクの攪拌機の回転数を制御する装置、および、液量が少ない場合に発生する渦流が攪拌羽根に到達して発生する泡を防止するためにタンク内面及び攪拌羽根の少なくとも一方の周辺にバッフルが設けられることもある。これらにより実用攪拌領域が広くなる。
(ゼラチン溶解)
ゼラチンを添加する場合には、あらかじめゼラチンを溶解しておくことが好ましい。ゼラチンの溶解方法としては、1)常温の水に分散・浸漬して粉体全体を膨潤させた後、昇温して溶解を行う膨潤溶解法,2)温水中にゼラチンを投入、直ちに昇温・高速攪拌を行い溶解する高温溶解法,その他の方法があるが、いずれの方法も特別な制限なしに用いることができる。
塗布方式としては、多くの方式が知られている。ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、順転ロール塗布、逆転ロール塗布、グラビア塗布、ロッド塗布、スピン塗布、スロット塗布、カーテン塗布、又はスライド塗布等である。これらの中で、カーテン塗布、スライド塗布は、ポンプなどによる送液流量で塗布膜厚が決まる方式であり、多層同時塗布が可能である。
感熱転写受像シートの製造においては、上記の方式の中から適宜選択して用いることができるが、均一な塗布膜厚が得られることと、多層同時塗布が可能であることから、カーテン塗布およびスライド塗布が好ましい。
スライド塗布方法のための装置としては、Russell等により米国特許第2,761,791号明細書に提案された多層スライドビード装置がある。この装置は、スライド面を流下する複数の塗布液が、スライド面先端において連続走行されている支持体と出会う間隙部にビードを形成するようにし、このビードを介して塗布液を支持体面に塗布するものである。従って、この種の装置は、ビードを安定に形成できることが重要である。スライドコーターの形状の例は、Stephen F.Kistler、PetertM.Schweizer著「LIQUID FILM COATING」(CHAPMAN&HALL社刊、1997年)にも記載されている。
カーテン塗布は、自由落下する液膜の下を一定の速度で連続走行している支持体に塗布する方法である。エクストルージョン型、スライド型等、いくつかの方式がある。スライド型コーターでは、スライド面上に作製された多層液膜がスライド端より自由落下する。
そのため、スライド面終端には、落下液膜がスムーズに形成されるよう形状の工夫がなされる。
液濃度、粘度、表面張力、pH等の物性値が適切な値となるように調製された塗布液を塗布部に送液するには、泡や異物の除去を行いながら連続的に行う必要がある。
一定流量で塗布液を連続的に供給するには、各種の方法が考えられるが、精度・信頼性の点から定量ポンプを用いるのが好ましい。例として、プランジャーポンプ,ダイヤフラム型ポンプを挙げることができる。ダイヤフラム型では、プランジャーと送液される液体が2枚のダイヤフラムで隔離されており、駆動オイルおよび2枚のダイヤフラム間の純水を経由してプランジャーの動作が送液される液体に伝えられる。送液ポンプの流量変動は塗布膜厚の変動に結びつくものであり、十分な精度が必要とされる。
ポンプの脈動の影響を低減する必要がある場合には、脈動を吸収するための補助装置が用いられる。いくかの方式が公知であるが、一例としてパイプライン型の脈動吸収装置を挙げることができる(例えば、特開平1−255793号公報参照)。
異物の除去のため、塗布液の濾過を行うのが好ましい。濾材としては各種のものを用いることができるが、例としてカートリッジ濾材を挙げることができる。使用にあたっては、濾材の空孔中に保持されている空気が気泡の形で塗布液に混入するのを防ぐために、前もって処理しておくことが好ましい。いくつかの方法が公知であるが、一例として、界面活性剤を含む液体等で処理しておくこと(例えば、米国特許第5,096,602号明細書参照)を挙げることができる。
異物と並んで、気泡も塗布面状故障の原因となる。そのため、塗布液中に混入している気泡および液体表面に浮遊している泡沫を脱法・消泡することが好ましい。そのための手法としては、気泡の液体からの分離、あるいは気泡の液体への溶解がある。分離の方法としては、減圧脱泡、超音波脱泡、遠心脱泡などが公知である。液体への溶解の方法としては、超音波パイプライン脱泡が挙げられる。
塗布液に添加することによって塗布液の経時安定性が悪化するような添加物を用いる場合には、添加してから塗布までの経時時間を短くするために、送液工程内で、塗布部の直前で添加を行う方式が好ましく、このための混合器としては、静的混合器、動的混合器を使用する。
スライドビード塗布装置は、主として塗布ヘッドと、連続走行する支持体を巻き掛け支持するバックアップローラとで構成される。塗布ヘッドを形成するブロック内部には、送液ラインから送液された塗布液を支持体の幅方向に拡流する液溜りが形成され、この液溜りに連通して狭隘なスリットがスライド面まで開口して形成される。このスライド面は塗布ヘッド上面に形成され、バックアップローラ側に向かって下方に傾斜している。
それぞれの液溜りに供給された塗布液は、各スリットからスライド面に押し出され、スライド面を流下しながら順次重畳して複層塗布膜を形成し、互いに混ざり合うことなくスライド面下端の先端部に達する。先端部に達した塗布液は、先端部と、バックアップローラに巻き掛けられて走行する支持体面との隙間に塗布液ビードを形成し、この塗布液ビードを介して支持体面に塗布される。ビードを安定化させるために下部を減圧される。そのため、バックアップローラの下方に減圧室が形成される。この減圧室は、ビードの下側を負圧にしてビードを安定化させると共に、ウエブに塗布されなかった余剰の塗布液を減圧室に流れ落ち易くする働きがある。
塗布の開始は、スライド面上で層流を形成させた状態で、塗布ヘッドを待機位置から支持体側に移動させて塗布ヘッドと支持体の間のギャップを適当な大きさにすることによって行われる。
多量の塗布を行う場合には、接合した支持体を用いる場合がある。塗布ヘッドと支持体の間のギャップが狭いために、接合部の僅かな段差でビードが乱され、塗布故障となることがある。接合直後に凹凸を設けたり(例えば、特開昭50−43140号公報参照)、ギーサを微小待避する方法(例えば、特開昭63−80872号公報参照)がある。
<乾燥工程>
塗布された後、セットゾーン(冷却固化する場合のみ)、乾燥ゾーン、調湿ゾーン、巻取りを経て、塗布済み品はいったん貯蔵される。
ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ジェランガム等の各種公知のゲル化剤を添加された塗布液は、セットゾーンにおいて冷却によりゲル化・固化される。この段階で水分蒸発も起こる。乾燥ゾーンでは、乾燥速度が一定で、材料温度とほぼ湿球温度が等しい恒率乾燥期間と、乾燥速度が遅くなり、材料温度が上昇する減率乾燥期間を経て乾燥が進む。恒率乾燥期間では、外部から与えられた熱はすべて水分の蒸発に使われる。減率乾燥期間では、材料内部での水分拡散が律速になり、蒸発表面の後退等により乾燥速度が低下し、与えられた熱は材料温度上昇にも使われるようになる。
セットゾーンおよび乾燥ゾーンにおいては、各塗布膜の間および支持体と塗布膜の間で水分移動が起こり、また塗布膜の冷却と水分蒸発による固化が起こる。このため、製品の品質・性能には乾燥途中での膜面温度・乾燥時間等の履歴が大きく影響し、要求品質に応じた条件の設定が必要とされる。
代表的な乾燥装置としては、エアループ方式、つるまき方式等がある。エアループ方式は、ローラーで支持された塗布済み品に乾燥風噴流を吹き付ける方式であり、ダクトは縦に配置する方式と、横に配置する方式がある。乾燥機能と搬送機能は基本的に分離されていて、風量等の自由度が大きい。しかし、多くのローラーを使うため、寄り・シワ・スリップ等のベースの搬送不良が発生しやすい。つる巻き方式は、円筒状のダクトに塗布済み品をつる巻き状に巻きつけて乾燥風で浮上させて(エアフローティング)搬送・乾燥する方式で、基本的にローラー支持がいらない(例えば、特公昭43−20438号公報参照)。その他、上下互いにダクトを設置して搬送する乾燥方式があり、乾燥分布はつる巻き式に比べ良いが、浮上能力が劣る。
本発明の乾燥温度としては、5℃〜50℃が好ましく、5℃〜40℃がより好ましく、10℃〜35℃がさらに好ましい。また、本発明においては、乾燥工程における乾燥温度は、受容層に含有するポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)より低い温度に調整することが好ましく、複数のポリマーラテックスを使用する場合は、このうちの最も低いガラス転移温度(Tg)より低い温度が好ましい。受容層に含有するポリマーラテックスのTgより高い温度で乾燥を行なった場合、印画時に感熱転写シートの剥離ムラの悪化および感熱転写シートの保護層転写不良による光沢性の低下を招く。詳細は不明だが、感熱転写シートの剥離ムラ悪化は受容層表面が造膜することにより感熱転写シートとの接触面積が増大しているためと考えられる。また、保護層転写不良は受容層表面の摩擦力が低下しているためと考えられる。また、本発明の乾燥時間としては、10分以下であることが好ましい。10分以上になると、同時重層塗布後の層間に滞留が起きてしまい、塗布ムラや膜表面に凹凸が生じてしまう。本発明での乾燥時間は、乾燥ゾーンにおける乾燥時間であり、厳密にはセットゾーンでも乾燥されるがこの時間を含まない。
<巻取り工程>
塗布工程及び乾燥工程で水分を蒸発させ、皮膜形成させた感熱転写受像シートを、ワインダー装置を介し巻取り長を調整し、巻取り速度、巻取りテンション、巻取り環境湿度を調整し巻取りコアに巻取る(以後バルクロールと呼ぶ)。
乾燥された塗布済み品は、一定の含水率に調整され巻き取られるが、含水率によって硬膜進行が影響される。
硬膜反応は高湿条件ほど進行しやすいため、15℃〜35℃で40%RH以下では硬膜反応が遅く、ゼラチンをバインダーとした場合には膨潤が大きくなり、感熱転写受像シート使用環境の温湿度の影響を受けやすくなる。また、15℃〜35℃で80%RH以上のような高湿条件で巻き取ると、塗布膜の含水率が高くなり、硬膜反応はより進むがシーズニング中にバルクロール中で受容層と基材裏面の接着が起こるため好ましくない。従って、巻取りエリアまたは巻取りロール周辺の湿度を15℃〜35℃で50%RH〜70%RHの範囲になるようにコントロールすること、すなわち意図的に調整する必要がある。
具体的には、乾燥機と加湿器を組み合わせた空調装置で所望の温湿度に調整されたエアーを配管等で、巻取りエリアまたは巻取りロール周辺に導くのが好ましい。必要に応じファン等でエアーを攪拌させても良い。
<シーズニング工程>
巻き取られたバルクロールを、温度コントロールされた貯蔵庫でシーズニングする。シーズニング時の貯蔵条件は、硬膜進行、塗布層のバインダーの均一な架橋に大きな影響を与える。10℃以下だと、硬膜反応時間を要するため製造効率が落ち、未反応の硬膜剤が残ることで膜強度が劣り、接着性が悪化するため好ましくない。一方、40℃以上の貯蔵条件でシーズニングすると、バルクロール中での接着やカール等が発生する。感熱転写受像シートのカールは、印画及び給排紙におけるトラブルの大きな原因となる。例えば、印画前カールが大きい場合には、プリンター内部の搬送ロールやガイドに感熱転写受像シートが引っ掛かり搬送トラブルとなる。また、プリンタ−への装着性も悪い。更に、印画の際には、サーマルヘッドとの密着性に影響を与え光沢性に影響を及ぼし、面状故障の原因となるおそれもある。また、シーズニング時間が24時間未満だと硬膜反応が不十分なまま加工に入ることになり、膨潤が大きいため感熱転写受像シート使用環境の温湿度の影響を受けやすく、感熱転写シートとの剥離ムラが生じる。逆にシーズニング工程が480時間を超えると、巻き癖が強くなりすぎ次の加工工程に支障を来たす上、プリント中の搬送に影響するため光沢性が悪化する恐れがある。
シーズニング条件は、一定の温湿度条件下で行うことが好ましい。例えば、35℃で10時間貯蔵した後、15℃20時間で貯蔵するなど、シーズニング期間の途中で条件を変更した場合、ロールの表面付近と巻き芯付近の環境がシーズニング期間中に一定とならないため性能のバラつきが出るので好ましくない。
従って、シーズニング時の貯蔵温度条件を、15℃〜35℃の範囲になるように温度をコントロールし、その温度を一定に保った上で24時間以上480時間以下シーズニングするのが好ましい。なお、相対湿度は、特に限定されるものではないが、好ましくは50%RH〜70%RHの範囲である。
具体的には、空調装置で所望の温度とし、バルクロールの貯蔵庫またはバルクロール巻取りロール周辺に導くのが好ましい。本発明の目的を達成できるものであれば、空調設備の種類は問わない。必要に応じファン等でエアーを攪拌させても良い。
なお、本発明における巻取り工程、シーズニング工程における温度、湿度は、調整されたものであって、成り行き放置でないことは明らかである。
<加工工程>
シ−ズニングされたバルクロールは、プリンターでの使用に適した形態に加工される必要がある。感熱転写受像シートの製品形態は、枚葉状受像シートとロール状の受像シートに大別される。ロール状の感熱転写受像シートでは、プリンター内でシートが2枚重ねで送られるような問題がなく、一定の範囲で印画面積を選択することが可能である。
製造装置での塗布幅は、プリンターで必要とされるシート幅に比べて通常は大きいために、受像シートの塗布物をスリッターに供し、塗布物の長手方向に小幅スリットする必要がある。このための裁断方式としては、公知の方式の中から適宜選択して用いることができるが、例としては、シャーカット方式、レザーカット方式、又はスコアカット方式などが挙げられる。シャーカット方式は、回転する上下刃の噛み合う部分で裁断する方式であり、レザーカット方式は1枚の刃のみで裁断する方式であって、空中切方式と溝切方式がある。
また、スコアカット方式は、円筒状の下刃に上刃を押し付けて切る方式である。刃の材質は公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
枚葉状の感熱転写受像シートの場合には、スリットされた感熱転写受像シートのロールを一定の長さに切断し、必要枚数を積葉する。スリット幅と切断長によって最大印画面積が決められる。
ロール状の感熱転写受像シートの場合には、プリンターに応じた長さにスリットされた感熱転写受像シートを巻取りシリンダーに巻きつけた後切断し、小巻ロールを作製する。
巻取りシリンダーとしては、紙、プラスチック、金属、木材及びそれらの複合体等いずれの材質であってもよい。巻き癖の点からはシリンダー外径の大きい巻取りシリンダーが好ましいが、これが過大であるとロール状受容シートの外径も過大となり、これをと貯蔵条件はプリンター内部に収納するのに大きな容積が必要となる。なお、巻取りシリンダーを使うのが一般的であるが、用いない場合もある。受容層面はロールの外向きであっても内向きであっても良い。
切断方式には、被切断物を間欠送りして停止した時点で切断する方式、カッタが被切断物の流れ方向に対して前後に揺動し、両者の速度が同じになった時点で切る方式など、公知の方式が多くあるが、これらの中から適宜選択して用いることができる。
スリット、小巻といった加工工程および包装工程における温湿度条件を調整し、感熱転写受像シートのカール状態を制御することができる。
<記録装置による記録>
熱転写画像形成の際に、上述した本発明の感熱転写受像シートと併せて使用される感熱転写シートは支持体上に拡散転写染料を含む色素層を設けたものであり、任意のインクシートを使用することができる。熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンタ−(例えば、ASK−2000富士フイルム(株)製)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、0mJ/mm〜50mJ/mm程度の熱エネルギーを付与することによって所期の目的を十分に達成することができる。
また、本発明の感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作製用シート等の各種用途に適用することもできる。
本発明は、感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。以下、本発明の感熱転写受像シートの構成について説明する。
<受容層>
受容層は、感熱転写シートから移行してくる染料を受容し、形成された画像を維持する役割を果たす。本発明の感熱転写受像シートにおいて、受容層はポリマーラテックスを含有する。
<ポリマーラテックス>
本発明に用いられるポリマーラテックスについて説明する。
本発明に用いられるポリマーラテックスは、感熱転写シートから移行してくる染料を受容するために使用される。受容層に使用するポリマーラテックスは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。なおポリマーラテックスについては、奥田平,稲垣寛編集,「合成樹脂エマルジョン」,高分子刊行会発行(1978年)、杉村孝明,片岡靖男,鈴木聡一,笠原啓司編集,「合成ラテックスの応用」,高分子刊行会発行(1993年)、室井宗一著,「合成ラテックスの化学」,高分子刊行会発行(1970年)、三代澤良明監修,「水性コーティング材料の開発と応用」,シーエムシー出版(2004年)および特開昭64−538号公報などに記載されている。分散粒子の平均粒径は1nm〜50000nm、より好ましくは5nm〜1000nm程度の範囲が好ましい。
分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
ポリマーラテックスとしては通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。本発明のポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、−30℃〜130℃が好ましく、0℃〜120℃がより好ましい。このなかでも、ガラス転移温度は40℃以上(好ましくは40℃〜120℃)が好ましく、70℃以上(70℃〜100℃)がさらに好ましい。
本発明に用いられるポリマーラテックスの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリエステル類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル類、ポリ酢酸ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリオレフィン類等のポリマーラテックスを好ましく用いることができる。これらポリマーラテックスとしてはポリマーが、直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜500000がよい。分子量が小さすぎるものはラテックスを含有する層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラテックスも好ましく使用される。
本発明で使用できるポリマーラテックスは市販もされており、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、ダイセル化学工業(株)製セビアンA−4635,4718,4601、日本ゼオン(株)製Nipol Lx811、814、821、820、85 5(P−17:Tg36℃)、857x2(P−18:Tg43℃)、大日本インキ化学(株)製Voncoat R3 370(P−19:Tg25℃)、4280(P−20:Tg15℃)、日本純薬(株)製ジュリマーET−410(P−21:Tg44℃)、JSR(株)製AE116(P−22:Tg50℃)、AE119(P−23:Tg55℃)、AE1 21(P−24:Tg58℃)、AE125(P−25:Tg60℃)、AE134(P−26:Tg48℃)、AE137(P−27:Tg48℃)、AE140(P−28:Tg53℃)、AE173(P−29:Tg60℃)、東亞合成(株)製アロンA−104(P−30:Tg45℃)、高松油脂(株)製NS−600X、NS−620X、日信化学工業(株)製ビニブラン2580、2583、2641、2770、2770H、2635、2886、5202C、及び2706などが挙げられる(いずれも商品名)。
ポリエステル類の例としては、大日本インキ化学(株)製FINETEX ES650、611、675、850、イーストマンケミカル製WD−size、WMS、高松油脂(株)製A−110、A−115GE、 A−120、A−21、A−124GP、A−124S、A−160P、A−210、A−215GE、A−510、A−513E、A−515G E、A−520、A−610、A−613、A−615GE、A−620、WAC−10、WAC−15、WAC−17XC、WAC−20、S −110、S−110EA、S−111SL、S−120、S−140、S−140A、S−250、S−252G、S−250S、S−320、S−680、DNS−63P、NS−122L、NS−122LX、NS−244LX、NS−140L、NS−141LX、NS−282LX、東亞合成(株)製アロンメルトPES−1000シリーズ、PES−2000シリーズ、東洋紡(株)製バイロナールMD−1100、MD−1200、MD−1220、MD−1245、MD−1250、MD−1335、MD−1400、MD−1480、MD−1500、MD−1930、MD−1985、及び住友精化(株)製セポルジョンESなどが挙げられる(いずれも商品名)。
ポリ塩化ビニル類の例としては、日本ゼオン(株)製G351、G576、日信化学工業(株)製ビニブラン240、ビニブラン270、ビニブラン277、ビニブラン375、ビニブラン386、ビニブラン609、ビニブラン550、ビニブラン601、ビニブラン602、ビニブラン630、ビニブラン660、ビニブラン671、ビニブラン683、ビニブラン680、ビニブラン680S、ビニブラン681N、ビニブラン685R、ビニブラン277、ビニブラン380、ビニブラン381、ビニブラン410、ビニブラン430、ビニブラン432、ビニブラン860、ビニブラン863、ビニブラン865、ビニブラン867、ビニブラン900、ビニブラン900GT、ビニブラン938、及びビニブラン950などが挙げられる(いずれも商品名)。ポリ塩化ビニリデン類の例としては、旭化成工業(株)製L502、L513、及び大日本インキ化学(株)製D−5071など挙げられる(いずれも商品名)。ポリオレフィン類の例としては、三井 石油化学(株)製ケミパールS120、SA100、V300(P−40:Tg80℃)、大日本インキ化学(株)製Voncoat2830、2210、2960、住友精化(株)製ザイクセン、セポルジョンG、共重合ナイロン類の例としては、住友精化(株)製セポルジョンPAなどが挙げられる(いずれも商品名)。
ポリ酢酸ビニル類の例としては、日信化学工業(株)製ビニブラン1080、1082、1085W、1108W、1108S、1563M、1566、1570、1588C、A22J7−F2、1128C、1137、1138、A2 0J2、A23J1、A23J1、A23K1、A23P2E、A68J1N、1086A、1086、1086D、1108S、1187、1 241LT、1580N、1083、1571、1572、1581、4465、4466、4468W、4468S、4470、4485L L、4495LL、1023、1042、1060、1060S、1080M、1084W、1084S、1096、1570K、1050、 1050S、3290、1017AD、1002、1006、1008、1107L、1225、1245L、GV−6170、GV−6181、4468W、及び4468Sなどが挙げられる(いずれも商品名)。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
本発明では受容層の少なくとも1層を水系の塗布液で塗布するものであるが、複数の受容層を有する場合、これらの全ての受容層を水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。
塗布液の水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、又はオキシエチルフェニルエーテルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。
ポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。
本発明に用いられるポリマーラテックスの好ましい例としては、ポリ乳酸エステル類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリアセタール類、SBR類、ポリ塩化ビニル類を挙げることができ、この中でも、ポリエステル類、ポリ塩化ビニル類を含むことが最も好ましい。
上述のポリマーラテックスのなかでも本発明においては、ポリ塩化ビニル類が好ましい。ポリ塩化ビニル類、すなわち塩化ビニルから得られる繰り返し単位を少なくとも含むポリマーラテックスのなかでも、該塩化ビニルから得られる繰り返し単位を50モル%以上含むポリマーラテックスが好ましく、さらに好ましくは共重合のポリマーラテックスである。
このような共重合のポリマーラテックスとしては、塩化ビニルと共重合するモノマーとしては、アクリルまたはメタクリル酸もしくはこのエステル、酢酸ビニル、エチレンが好ましく、アクリルまたはメタクリル酸もしくはこのエステルがさらに好ましく、アクリル酸エステルがより好ましい。アクリル酸エステルのエステル部のアルコール部分は炭素数1〜10が好ましく、1〜8がより好ましい。
このようなポリ塩化ビニル類としては、前述のものが挙げられるが、なかでもビニブラン240、ビニブラン270、ビニブラン276、ビニブラン277、ビニブラン375、ビニブラン380、ビニブラン386、ビニブラン410、ビニブラン430、ビニブラン432、ビニブラン550、ビニブラン601、ビニブラン602、ビニブラン609、ビニブラン619、ビニブラン680、ビニブラン680S、ビニブラン681N、ビニブラン683、ビニブラン685R、ビニブラン690、ビニブラン860、ビニブラン863、ビニブラン685、ビニブラン867、ビニブラン900、ビニブラン938、ビニブラン950(以上いずれも日信化学工業(株)、SE1320、S−830(以上いずれも住友ケムテック(株))が好ましい(いずれも商品名)。
受容層には、上記ポリマーラテックスとともに、いかなるポリマーも併用してもよい。
併用することのできるポリマーとしては、染料を受容するために使用されてもよいが、上記ポリマーラテックスを保持するためのバインダーとして使用することもできる。
このようなポリマーとしては透明又は半透明で、無色であることが好ましく、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリビニルピロリドン類、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸類、ポリメチルメタクリル酸類、ポリ塩化ビニル類、ポリメタクリル酸類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン類、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリ酢酸ビニル類、ポリオレフィン類、又はポリアミド類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
感熱転写シートから移行する染料を受容することを目的として使用する前記ポリマーラテックス以外に、主に上記のバインダーとして使用するポリマーラテックスを使用する場合、該ポリマーラテックスとしては、加工脆性と画像保存性の点でガラス転移温度(Tg)が−30℃〜70℃の範囲のものが好ましく、より好ましくは−10℃〜50℃の範囲、さらに好ましくは0℃〜40℃の範囲である。バインダーとして2種以上のポリマーをブレンドして用いることも可能で、この場合、組成分を考慮し加重平均したTgが上記の範囲に入ることが好ましい。また、相分離した場合やコア−シェル構造を有する場合には加重平均したTgが上記の範囲に入ることが好ましい。
このガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。
Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。
尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は「Polymer Handbook(3rd Edition)」(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用できる。
<水溶性ポリマー>
本発明においては、いずれかの層に水溶性ポリマーを含有するが、受容層が水溶性ポリマーを含有することも好ましい態様の一つである。
ここで、水溶性ポリマーとは、20℃における水100gに対し0.05g以上溶解すればよく、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上、特に好ましくは1g以上である。また、ポリマーラテックスは、ポリマー微粒子が分散媒体で分散されたものであり、本発明に用いられる水溶性ポリマーとは異なる。
本発明に用いることのできる水溶性ポリマーは、天然高分子(多糖類系、微生物系、動物系)、半合成高分子(セルロース系、デンプン系、アルギン酸系)および合成高分子系(ビニル系、その他)であり、以下に述べるポリビニルアルコールを始めとする合成ポリマーや、植物由来のセルロース等を原料とする天然あるいは半合成ポリマーが本発明で使用できる水溶性ポリマーに該当する。
これらの水溶性ポリマーは、添加された硬膜剤で架橋される。
なお、硬膜剤で架橋されるには、水溶性ポリマーが硬膜剤と反応しうるものである必要があり、硬膜剤の二重結合や活性ハライド(求核反応を受け、ハライドを放出)と反応する基(例えば、−OH基、>NH基、−SH基を部分構造として有する基、いわゆる活性水素を有する基)を有することが好ましい。
本発明において、水溶性ポリマーを前記ポリマーラテックスと区別するためにバインダーと表記することもある。
本発明に用いることのできる水溶性ポリマーのうち、天然高分子および半合成高分子について詳しく説明する。植物系多糖類としては、アラビアガム、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、グアガム(Squalon製Supercolなど)、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガント、トウモロコシデンプン(National Starch & Chemical Co.製Purity−21など)、リン酸化デンプン(National Starch & Chemical Co.製National 78−1898など)など、微生物系多糖類としては、キサンタンガム(Kelco製KeltrolTなど)、デキストリン(National Starch&Chemical Co.製Nadex360など)など、動物系天然高分子としては、ゼラチン(Croda製Crodyne B419など)、カゼイン、及びコンドロイチン硫酸ナトリウム(Croda製Cromoist CSなど)などが挙げられる(いずれも商品名)。
セルロース系としては、エチルセルロース(I.C.I.製Cellofas WLDなど)、カルボキシメチルセルロース(ダイセル製CMCなど)、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル製HECなど)、ヒドロキシプロピルセルロース(Aqualon製Klucelなど)、メチルセルロース(Henkel製Viscontranなど)、ニトロセルロース(Hercules製Isopropyl Wetなど)、カチオン化セルロース(Croda製Crodacel QMなど)などが挙げられる(いずれも商品名)。デンプン系としては、リン酸化デンプン(National Starch&Chemical製National 78−1898など)、アルギン酸系としては、アルギン酸ナトリウム(Kelco製Keltoneなど)、アルギン酸プロピレングリコールなど、その他の分類として、カチオン化グアガム(Alcolac製Hi−care1000など)、ヒアルロン酸ナトリウム(Lifecare Biomedial製Hyalureなど)が挙げられる(いずれも商品名)。
本発明においてはゼラチンが好ましい態様の一つである。本発明に用いるゼラチンは分子量10,000から1,000,000までのものを用いることが出来る。本発明に用いられるゼラチンはCl、SO 2−等の陰イオンを含んでいてもよいし、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Sn2+、又はZn2+などの陽イオンを含んでいても良い。ゼラチンは水に溶かして添加することが好ましい。
本発明に用いることのできる水溶性ポリマーのうち、合成高分子について詳しく説明する。アクリル系としてはポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド共重合体、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩またはその共重合体など、ビニル系としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコールなど、その他としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸又はその共重合体、ナフタレンスルホン酸縮合物塩、ポリビニルスルホン酸又はその共重合体、ポリアクリル酸又はその共重合体、アクリル酸又はその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸又はその共重合体、など)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライドまたはその共重合体、ポリアミジンまたはその共重合体、ポリイミダゾリン、ジシアンシアミド系縮合物、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン縮合物、ポリアクリルアミドのホフマン分解物、水溶性ポリエステル(互応化学(株)製プラスコートZ−221、Z−446、Z−561、Z−450、Z−565、Z−850、Z−3308、RZ−105、RZ−570、Z−730、又はRZ−142(いずれも商品名))などである。
また、米国特許第4,960,681号明細書、特開昭62−245260号公報等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマーの共重合体(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、住友化学(株)製のスミカゲルL−5H(商品名))も使用することができる。
本発明に用いることのできる水溶性合成高分子のうちポリビニルアルコール類が好ましい。ポリビニルアルコールとしては、完全鹸化物、部分鹸化物、変性ポリビニルアルコールなど、公知のものが使われる。
変性ポリビニルアルコールについては、長野浩一ら共著,「ポバール」(高分子刊行会発行)に記載のものが用いられる。カチオン、アニオン、−SH化合物、アルキルチオ化合物、又はシラノールによる変性がある。
ポリビニルアルコールは、その水溶液に添加する微量の溶剤あるいは無機塩類によって粘度調整をしたり粘度安定化させたりすることが可能であって、詳しくは上記文献、長野浩一ら共著,「ポバール」,高分子刊行会発行,144頁〜154頁記載のものを使用することができる。その代表例としてホウ酸を含有させることで塗布面質を向上させることができ、好ましい。ホウ酸の添加量は、ポリビニルアルコールに対し0.01質量%〜40質量%であることが好ましい。
好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゴム類、ポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリビニルピロリドン類、デンプン、ポリアクリル酸類、ポリメチルメタクリル酸類、ポリ塩化ビニル類、ポリメタクリル酸類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン類、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリ酢酸ビニル類、ポリオレフィン類、セルロースエステル類、又はポリアミド類であって水溶性のものである。
本発明においては、水溶性ポリマーがポリビニルアルコール類、ゼラチンが好ましく、ゼラチンが最も好ましい。
受容層における水溶性ポリマーの添加量は、当該受容層全体の1質量%〜25質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましい。また、水溶性ポリマーを使用しないことも好ましい態様の一つである。
なお、本発明においては活性水素を有する水溶性ポリマーが好ましく、ここで活性水素とは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基のような−OH、−SHにおける水素原子やアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基のような>NHにおける水素であり、後述の硬膜剤と反応して架橋し得る原子に結合する水素原子である。
<バインダー用ポリマー>
本発明でバインダーに用いられる、水溶性ポリマー以外のポリマーは、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、アニオン重合法、カチオン重合等により容易に得ることができるが、ラテックスとして得られる乳化重合法が最も好ましい。また、ポリマーを溶液中で調製し、中和するか乳化剤を添加後に水を加え、強制的に撹拌により水分散体を調製する方法も好ましい。乳化重合法は、例えば、水、或いは、水と水に混和し得る有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン等)との混合溶媒を分散媒とし、分散媒に対して5質量%〜150質量%のモノマー混合物と、モノマー総量に対して乳化剤と重合開始剤を用い、30℃〜100℃程度、好ましくは60℃〜90℃で3時間〜24時間、攪拌下重合させることにより行われる。分散媒、モノマー濃度、開始剤量、乳化剤量、分散剤量、反応温度、モノマー添加方法等の諸条件は、使用するモノマーの種類を考慮し、適宜設定される。また、必要に応じて分散剤を用いることが好ましい。
<紫外線吸収剤>
また、本発明では耐光性を向上するために受容層に紫外線吸収剤を添加してもよい。このとき、紫外線吸収剤を高分子量化することで受容層に固定でき、インクシートへの拡散や加熱による昇華・蒸散などを防ぐことができる。
紫外線吸収剤としては、情報記録分野において広く知られている各種紫外線吸収剤骨格を有する化合物を使用することができる。具体的には、2−ヒドロキシベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾトリアジン型紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン型紫外線吸収剤骨格を有する化合物を挙げることができる。紫外線吸収能(吸光係数)・安定性の観点では、ベンゾトリアゾール型、トリアジン骨格を有する化合物が好ましく、高分子量化・ラテックス化の観点ではベンゾトリアゾール型、ベンゾフェノン型の骨格を有する化合物が好ましい。具体的には、特開2004−361936号公報などに記載された紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤は、紫外域に吸収をもち、可視領域に吸収端がかからないことが好ましい。
具体的には、受容層に添加して感熱転写受像シートを形成したとき、370nmの反射濃度がAbs0.5以上になることが好ましく、380nmの反射濃度がAbs0.5以上になることが更に好ましい。また、400nmの反射濃度がAbs0.1以下であることが好ましい。なお、400nmを超える範囲での反射濃度が高いと画像が黄ばむため好ましくない。
本発明では、紫外線吸収剤は高分子量化され、質量平均分子量10000以上が好ましく、質量平均分子量100000以上が更に好ましい。高分子量化する手段としては、紫外線吸収剤をポリマーにグラフトすることが好ましい。主鎖となるポリマーとしては、併用する受容ポリマーより色素の染着性が劣るポリマー骨格を有することが好ましい。また、製膜した際に十分な皮膜強度を有することが好ましい。ポリマー主鎖に対する紫外線吸収剤のグラフト率は、5質量%〜20質量%が好ましく、8質量%〜15質量%がより好ましい。
また、紫外線吸収剤をグラフトしたポリマーはラテックス化することが更に好ましい。
ラテックス化することにより水分散系の塗布液を塗布製膜することにより受容層を形成することができ、製造コストを軽減することが可能である。ラテックス化する方法は例えば特許第3450339号明細書などに記載された方法を用いることができる。ラテックス化された紫外線吸収剤としては、例えば一方社油脂工業(株)製ULS−700、ULS−1700、ULS−1383MA、ULS−1635MH、XL−7016、ULS−933LP、ULS−935LH、新中村化学製New Coat UVA−1025W、New Coat UVA−204W、New Coat UVA−4512M(いずれも商品名)など市販の紫外線吸収剤を使用することもできる。
紫外線吸収剤をグラフトしたポリマーをラテックス化する場合、前記の染着性受容ポリマーのラテックスと混合してから塗布することで紫外線吸収剤が均一に分散した受容層を形成することができる。
紫外線吸収剤をグラフトしたポリマー又はそのラテックスを添加する場合の添加量は、受容層を形成する染着性受容ポリマーラテックスに対して5質量部〜50質量部が好ましく、10質量部〜30質量部がより好ましい。
<離型剤>
また、受容層には、画像形成時に感熱転写シートとの熱融着を防ぐために、離型剤を配合することもできる。離型剤は、シリコーンオイル、リン酸エステル系可塑剤フッ素系化合物を用いることができるが、特にシリコーンオイルが好ましく用いられる。シリコーンオイルとしては、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが好ましく用いられるが、中でもビニル変成シリコーンオイルとハイドロジェン変成シリコーンオイルとの反応物が良い。離型剤の添加量は、受容ポリマーに対して0.2質量部〜30質量部が好ましい。
下記の乳化物の項で説明する滑剤は、ここで説明する離型剤とほぼ同等の効果が認められ、ほぼ同義である。本発明では、便宜上分散物として用いられるものは、滑剤乳化物として、それ以外のものをここで説明する離型剤とした。
<乳化物>
滑剤、酸化防止剤などの疎水性添加剤は米国特許第2,322,027号明細書に記載の方法などの公知の方法により受像シートの層(例えば、受容層、断熱層、下塗層など)中に導入することができる。この場合には、米国特許第4,555,470号、同第4,536,466号、同第4,536,467号、同第4,587,206号、同第4,555,476号、同第4,599,296号、特公平3−62256号の公報または明細書などに記載のような高沸点有機溶媒を、必要に応じて沸点50℃〜160℃の低沸点有機溶媒と併用して用いることができる。またこれら滑剤や酸化防止剤、高沸点有機溶媒などは2種以上併用することができる。
滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類;シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他当該技術分野で公知の離型剤を使用することができる。各種ワックス類、フッ素系界面活性剤等に代表されるフッ素系化合物、シリコーン系界面活性剤、シリコーンオイル及び/又はその硬化物等のシリコーン系化合物が好ましく用いられる。
<硬膜剤>
本発明の効果を奏するため、硬膜剤を添加することが必要である。架橋剤として本発明に用いられる硬膜剤は、感熱転写受像シートの塗設層(例えば、受容層、断熱層、下塗層など)中に添加することができる。本発明では、硬膜剤で架橋されるポリマーは、前述の水溶性ポリマーであり、硬膜剤は、硬膜されるポリマーと同じ層に添加されてもかまわないし、硬膜されるポリマーと別の層に添加されてもかまわない。また、複数の層に添加してもかまわない。
本発明で用いることができる硬膜剤としては、特開平1−214845号公報17頁のH−1,4,6,8,14,米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表わされる化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報8頁右下の式(6)で表わされる化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物などが好ましく用いられる。
硬膜剤の例としては米国特許第4,678,739号明細書の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、特開平4−218044号の公報または明細書等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N’−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(例えば、特開昭62−234157号公報などに記載の化合物)が挙げられる。好ましくはビニルスルホン系硬膜剤やクロロトリアジン類が挙げられる。
本発明においてさらに好ましいビニルスルホン系硬膜剤は下記一般式(A)または(B)で表される化合物である。
一般式(A)
(CH=CH−SO)n−L
一般式(B)
(X−CH−CH−SO)n−L
一般式(A)、(B)中、Xはハロゲン原子を表し、Lはn価の有機連結基を表す。一般式(A)または(B)で表される化合物が低分子化合物である場合nは1ないし4の整数を表す。高分子化合物である場合Lはポリマー鎖を含む有機連結基であり、このときnは10〜1000の範囲である。
一般式(A)、(B)中、Xは好ましくは塩素原子または臭素原子で、臭素原子がより好ましい。nは1ないし4の整数であるが、好ましくは2ないし4の整数、より好ましくは2ないし3の整数、最も好ましくは2である。
Lはn価の有機基を表し、好ましくは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ環基であり、これらの基がエーテル結合、エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、ウレア結合、ウレタン結合等でさらに連結していてもよい。また、これらの基は置換基を有していてもよく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイルオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基、カルボキシル基、及びスルホ基等が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシルオキシ基が好ましい。
一般式(A)または(B)で表される化合物の具体的な例として下記(VS−1)〜(VS−27)を挙げるが、本発明における硬膜剤は、これらに限定されるものではない。
これらの硬膜剤は、米国特許第4,173,481号明細書等に記載の方法等で容易に合成することができる。
また、クロロトリアジン系硬膜剤としては、少なくとも1個のクロル原子が、2位、4位または6位に置換した1,3,5−トリアジン化合物が好ましい。
クロル原子は、2位、4位または6位に、2個または3個置換したものもがより好ましい。2位、4位または6位に、少なくとも1個のクロル原子が置換して、残りの位置に、クロル原子以外の基が置換してもよく、これらの基としては、水素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケノキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルオキシもしくはアリールオキシカルボニル基などが挙げられる。
クロロトリアジン系硬膜剤の具体的な例は、4,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンもしくはこのNa塩、2−クロロ−4,6−ジフェノキシトリアジン、2−クロロ−4,6−ビス〔2,4,6−トリメチルフェノキシ〕トリアジン、2−クロロ−4,6−ジグリシドキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(n−ブトキシ)−6−グリシドキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)−6−グリシドキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−クロロエトキシ)−6−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−ブロモエトキシ)−6−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−ジ−n−ブチルホスファトエトキシ)−6−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−(2−ジ−n−ブチルホスファトエトキシ)−6−(2,6−キシレノキシ)−1,3,5−トリアジン等であるが、本発明においてこれらに限定されない。
このような化合物は、塩化シアヌル(すなわち2,4,6−トリクロロトリアジン)を、複素環上の置換基に対応するヒドロキシ化合物、チオ化合物またはアミノ化合物等と反応させることによって容易に製造できる。
これらの硬膜剤は、水溶性ポリマー1gあたり好ましくは0.001g〜1g、より好ましくは0.005g〜0.5gが用いられる。
受容層の塗布量は、0.5g/m〜10g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましい。
本発明で使用する硬膜剤の効果は、ゼラチンを使用するハロゲン化銀写真感材における現像工程での現像液浸漬における膜面改良とは異なり、特に溶剤系塗布の感熱転写受像シートに比べて劣る画像形成時の環境の湿度依存性を含めた本発明の効果を効果的に奏するものである。
受容層の塗布量は、0.5g/m〜10g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましい。受容層の膜厚は1μm〜20μmであることが好ましい。
<断熱層>
断熱層は、サーマルヘッド等を用いた加熱転写時における熱から支持体を保護する役割を果たす。また、高いクッション性を有するので、支持体として紙を用いた場合であっても、印字感度の高い感熱転写受像シートを得ることができる。断熱層は1層でも2層以上でも良い。断熱層は、受容層より支持体側に設けられる。
<中空ポリマー>
本発明の感熱転写受像シートにおいて、断熱層は中空ポリマーを含有する。
本発明における中空ポリマーとは粒子内部に独立した気孔を有するポリマー粒子であり、好ましくはポリマーラテックスであり、例えば、1)ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水が入っており、塗布乾燥後、粒子内の水が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空ポリマー粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれか又はそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、3)上記の2)をあらかじめ加熱発泡させて中空ポリマーとしたマイクロバルーンなどが挙げられる。
これらの中空ポリマーの平均粒子径は0.1μm〜5.0μmであることが好ましく、0.2μm〜3.0μmであることがさらに好ましく、0.3μm〜1.0μmであることが特に好ましい。このサイズが小さすぎると、中空率が下がる傾向があり望まれる断熱性が得られなくなり、サイズが大きすぎると、断熱層の粗大粒子以外の面状故障が発生する頻が高くなる。
また、中空ポリマーは、中空率が20%〜70%のものが好ましく、20%〜50%のものが特に好ましい。中空率が小さすぎると望まれる断熱性が得られなくなり、大きすぎると割れやすい中空ポリマー粒子および不完全な中空粒子の比率が増えて、印画欠陥が生じ、また、十分な膜強度が得られない。
中空ポリマーは必要に応じて2種以上混合して使用することができる。前記1)具体例としてはローアンドハース社製ローペイク1055、大日本インキ社製ボンコートPP−1000、JSR社製SX866(B)、日本ゼオン社製ニッポールMH5055(いずれも商品名)などが挙げられる。前記2)の具体例としては松本油脂製薬社製のF−30、F−50(いずれも商品名)などが挙げられる。前記3)の具体例としては松本油脂製薬社製のF−30E、日本フェライト社製エクスパンセル461DE、551DE、551DE20(いずれも商品名)が挙げられる。断熱層に用いられる中空ポリマーはラテックス化されていてもよい。
本発明に用いる中空ポリマーのとしては、非発泡型の中空ポリマー粒子が好ましく、中でもガラス転移温度が前記ラテックスポリマーのガラス転移温度よりも10℃以上高い中空ポリマーが好ましい。ガラス転移温度が低いと、塗布・乾燥工程後に十分な空隙率の中空ポリマー粒子が得られない。より具体的には、ガラス転移温度が90℃以上である中空ポリマーが更に好ましく、110℃以上(好ましくは200℃以下)のものが特に好ましい。
ここで、少なくとも1種の中空ポリマー(ガラス転移温度Tg)と受容層中の少なくとも1種の染料を受容するためのポリマーラテックス(Tg)との互いのガラス転移温度の関係が、Tg+10≦Tgの関係にある場合が、本発明の効果の点で好ましい。
中空ポリマーを含む断熱層中には中空ポリマー以外にポリマーラテックスまたは水溶性ポリマーをバインダーとして含有することが好ましい。本発明で使用されるバインダーとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セルロース誘導体、カゼイン、デンプン、又はゼラチンなどの公知の樹脂を用いることができる。これらは、受容層で記載した水溶性ポリマーが好ましい。これらバインダーのなかで、ポリマーラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、ウレタン樹脂が好ましく、水溶性ポリマーとしてはゼラチン、ポリビニルアルコールが好ましい。
これらのバインダーでさらに好ましくはゼラチン、ポリビニルアルコールである。
また、これらの樹脂は単独又は混合して用いることができる。
断熱層における中空ポリマーの固形分含有量は、バインダー樹脂の固形分含有量を100質量部としたとき5質量部〜2000質量部の間であることが好ましい。また、中空ポリマーの固形分の塗工液に対して占める質量比は、1質量%〜70質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。
中空ポリマー粒子の粒子サイズは0.1μm〜20μmが好ましく、0.1μm〜2μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが特に好ましい。
断熱層の上記バインダーの塗工液に占める量は0.5質量%〜14質量%が好ましく、1質量%〜6質量%が特に好ましい。また、断熱層における前記中空ポリマーの塗布量は1g/m〜100g/mが好ましく、5g/m〜20g/mがより好ましい。
中空ポリマーを含む断熱層の厚みは5μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜40μmであることがより好ましい。
また、中空ポリマーは中空ポリマーラテックスである場合が最も好ましい。
<中間層>
受容層と支持体との間には中間層が形成されていてもよく、例えば白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層、下塗層が形成される。これらの層については、例えば特許第3585599号明細書、特許第2925244号明細書などに記載されたものと同様の構成とすることができる。
これらの中間層は、水溶性ポリマーやポリマーラテックスをバインダーとして使用することが好ましく、特に水溶性ポリマーを使用する際は、硬膜剤で架橋されることが好ましい。
<支持体>
本発明では、支持体として耐水性支持体を用いることが好ましい。耐水性支持体を用いることで支持体中に水分が吸収されるのを防止して、受容層の経時による性能変化を防止することができる。耐水性支持体としては例えばコート紙やラミネート紙を用いることができる。なかでもラミネート紙が表面平滑性の点で好ましい。銀塩写真分野で印画紙に用いられているポリエチレンラミネート紙(WP紙と略称されることがある)類似のもの、すなわち、セルロースを主成分とする支持体であって、少なくとも受容層が塗布される面がポリオレフィン樹脂で被覆された支持体を好適に用いることができる。
−コート紙−
前記コート紙は、原紙等のシートに、各種の樹脂、ゴムラテックス又は高分子材料を片面又は両面に塗工した紙であり、用途に応じて、塗工量が異なる。このようなコート紙としては、例えば、アート紙、キャストコート紙、ヤンキー紙等が挙げられる。
前記原紙等の表面に塗工する樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用することが適当である。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下の(イ)〜(チ)の熱可塑性樹脂を例示することができる。
(イ)ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂や、エチレンやプロピレン等のオレフィンと、他のビニルモノマーとの共重合体樹脂や、アクリル樹脂等が挙げられる。
(ロ)エステル結合を有する熱可塑性樹脂である。例えば、ジカルボン酸成分(これらのジカルボン酸成分にはスルホン酸基、カルボキシル基等が置換していてもよい)と、アルコール成分(これらのアルコール成分には水酸基などが置換されていてもよい)との縮合により得られるポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリブチルアクリレート等のポリアクリル酸エステル樹脂又はポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレンアクリレート樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂等が挙げられる。
具体的には、特開昭59−101395号公報、同63−7971号公報、同63−7972号公報、同63−7973号公報、同60−294862号公報などに記載のものを挙げることができる。
また、市販品としては、東洋紡(株)製のバイロン290、バイロン200、バイロン280、バイロン300、バイロン103、バイロンGK−140、バイロンGK−130;花王(株)製のタフトンNE−382、タフトンU−5、ATR−2009、ATR−2010;ユニチカ(株)製のエリーテルUE3500、UE3210、XA−8153、KZA−7049、KZA−1449;日本合成化学(株)製のポリエスターTP−220、R−188;星光化学工業(株)製のハイロスシリーズの各種熱可塑性樹脂(いずれも商品名)等が挙げられる。
(ハ)ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
(ニ)ポリアミド樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
(ホ)ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
(ヘ)ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。
(ト)ポリビニルブチラール等の、ポリオール樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂等が挙げられる。
(チ)ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
なお、前記熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記熱可塑性樹脂には、増白剤、導電剤、填料、酸化チタン、群青、又はカーボンブラック等の顔料や染料等を必要に応じて含有させておくことができる。
−ラミネート紙−
前記ラミネート紙は、原紙等のシートに、各種の樹脂、ゴム又は高分子シート又はフィルム等をラミネートした紙である。前記ラミネート材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、及びトリアセチルセルロース等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ポリオレフィンは、一般に低密度ポリエチレンを用いて形成することが多いが、支持体の耐熱性を向上させるために、ポリプロピレン、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンド等を用いるのが好ましい。特に、コストや、ラミネート適性等の点から、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドを用いるのが最も好ましい。
前記高密度ポリエチレンと、前記低密度ポリエチレンとのブレンドは、例えば、ブレンド比率(質量比)1/9〜9/1で用いられる。該ブレンド比率としては、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましい。該支持体の両面に熱可塑性樹脂層を形成する場合、支持体の裏面は、例えば、高密度ポリエチレン、或いは高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドを用いて形成されるのが好ましい。ポリエチレンの分子量としては、特に制限はないが、メルトインデックスが、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンのいずれについても、1.0〜40g/10分の間のものであって、押出し適性を有するものが好ましい。
尚、これらのシート又はフィルムには、白色反射性を与える処理を行ってもよい。このような処理方法としては、例えば、これらのシート又はフィルム中に酸化チタンなどの顔料を配合する方法が挙げられる。これは銀塩写真分野において、印画紙用の支持体として一般的に用いられている(WP紙と略称されることがある)。
前記支持体の厚みとしては、25μm〜300μmが好ましく、50μm〜260μmがより好ましく、75μm〜220μmが更に好ましい。該支持体の剛度としては、種々のものがその目的に応じて使用することが可能であり、写真画質の感熱転写受像シート用の支持体としては、カラー銀塩写真印画紙用の支持体に近いものが好ましい。
<カール調整層>
支持体がそのまま露出していると環境中の湿度・温度により感熱転写受像シートがカールしてしまうことがあるため、支持体の裏面側にカール調整層を形成することが好ましい。
カール調整層は、感熱転写受像シートのカールを防止するだけでなく防水の役割も果たす。カール調整層には、ポリエチレンラミネートやポリプロピレンラミネート等が用いられる。具体的には、例えば特開昭61−110135号公報、特開平6−202295号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
<筆記層および帯電調整層>
筆記層および帯電調整層には、無機酸化物コロイドやイオン性ポリマー等を用いることができる。帯電防止剤として、例えば第四級アンモニウム塩、ポリアミン誘導体等のカチオン系帯電防止剤、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤、脂肪酸エステル等のノニオン系帯電防止剤など任意のものを用いることができる。具体的には、例えば特許第3585585号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
参考例
(インクシートの作製)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を基材フィルムとして用いた。そのフィルム背面側に耐熱スリップ層(厚み1μm)を形成し、かつ表面側に下記組成のイエロー、マゼンタ、シアン組成物を、それぞれ単色に塗布(乾膜時の塗布量1g/m)した。
イエロー組成物
染料(マクロレックスイエロー6G、商品名、バイエル社製) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX−1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
マゼンタ組成物
マゼンタ染料(ディスパーズレッド60) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX−1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
シアン組成物
シアン染料(ソルベントブルー63) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX−1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量
(感熱転写受像シート用支持体の作製)
アカシアからなるLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を50質量部及びアスペンからなるLBKPを50質量部をそれぞれディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mLに叩解しパルプスラリーを調製した。
次いで、上記で得られたパルプスラリーに、対パルプ当り、カチオン変性でんぷん(日本NSC(株)製、商品名、CAT0304L)1.3質量%、アニオン性ポリアクリルアミド(星光PMC(株)製、商品名、DA4104)0.15質量%、アルキルケテンダイマー(荒川化学(株)製、商品名、サイズパインK)0.29質量%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.29質量%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(荒川化学(株)製、商品名、アラフィックス100)0.32質量%を加えた後、消泡剤0.12質量%を加えた。
(保護層シートの作製)
インクシートの作製に使用したものと同じポリエステルフィルムに、以下に示す組成の保護層および接着層を塗布した。乾膜時の塗布量は保護層1g/m、接着層0.7g/m)した。なお接着層の塗布は、保護層を塗布乾燥後、その上に行った。
保護層
アクリル樹脂 20質量部
ダイヤナールBR−80、商品名、三菱レーヨン(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 80質量部
接着層
ポリエステル樹脂 30質量部
(バイロン220、商品名、東洋紡(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 70質量部
前記のようにして調製したパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙し、ウェッブのフェルト面をドラムドライヤーシリンダーにドライヤーカンバスを介して押し当てて乾燥する工程において、ドライヤーカンバスの引張り力を1.6kg/cmに設定して乾燥を行なった後、サイズプレスにて原紙の両面にポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名、KL−118)を1g/m塗布して乾燥し、カレンダー処理を行った。なお、原紙の坪量は157g/mで抄造し、厚さ160μmの原紙(基紙)を得た。
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側に、コロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いてMFR(メルトフローレート;以下同様)16.0g/10分、密度0.96g/cmの高密度ポリエチレン(ハイドロタルサイト(商品名:DHT−4A、協和化学工業(株)製)250ppmと、二次酸化防止剤(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、商品名:イルガフォス168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、200ppmを含有)と、MFR4.0g/10分、密度0.93g/cmの低密度ポリエチレンと、を75/25(質量比)の割合で配合した樹脂組成物を、厚さ21g/mとなるようにコーティングし、マット面からなる熱可塑性樹脂層を形成した(以下、この熱可塑性樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の熱可塑性樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製、商品名、アルミナゾル100)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製、商品名、スノーテックスO)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/mとなるように塗布した。続いて表面にコロナ処理し10質量%の酸化チタンを有するMFR4.0g/10分、密度0.93g/mの低密度ポリエチレンを27g/mになるように溶融押出機を用いてコーティングし、鏡面からなる熱可塑性樹脂層を形成した。
実施例1
(感熱転写受像シート1の作製)
上記のように作製した支持体上に下塗層1を塗設し、この層の上に、下層から順に下塗層2、断熱層、受容層を同時重層塗布により塗布して感熱転写受像シート1を作製した。塗工液の組成と塗布量を以下に示す。
塗布は、前述したスライドコーティング法で行い、塗布後6℃のセットゾーンを30秒通過させて液の流動性をなくした後、25℃で下記の表1の相対湿度になるように調整した乾燥風を乾燥工程全体で2分間、塗布面に吹き付けて乾燥させた後、2400mのバルクロールに巻取り、表1に示す条件でシーズニングを行った。
下塗層1塗工液
(組成)
ゼラチン3質量%水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1質量%加えた水溶液。NaOHでpHを8に調節。
(塗布量) 11mL/m
下塗層2塗工液
(組成)
スチレンブタジエンラテックス 60質量部
(日本エイアンドエル(株)製 SR103)
ポリビニルアルコール(PVA) 6質量%水溶液 40質量部
フッ素系界面活性剤1質量%水溶液 2質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 11mL/m
断熱層1塗工液
(組成)
予め調製した乳化物A 21質量部
中空ポリマー 48質量部
(日本ゼオン(株)製 MH5055)
10質量%ゼラチン水溶液 28質量部
水 3質量部
防腐剤(式PR−1で示す化合物) 0.2質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 50mL/m
(塗布液粘度) 45cp
受容層1塗工液
(組成)
予め調製した乳化物B 4質量部
塩化ビニル系ポリマーラテックス 53質量部
(日信化学(株)製 ビニブラン900 Tg73℃)
塩化ビニル系ポリマーラテックス 10質量部
(日信化学(株)製 ビニブラン276 Tg33℃)
マイクロクリスタリンワックス 6質量部
(日本製蝋(株)製 EMUSTAR−42X)
水 22質量部
フッ素系界面活性剤1質量%水溶液 4質量部
マット剤 1質量部
(メラミン−シリカ樹脂 比重1.65(オプトビーズ3500M 日産化学工業(株)製))
防腐剤(式PR−1で示す化合物) 0.1質量部
VS−7で示す化合物 0.3質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 18mL/m
(塗布液粘度) 7cp
なお、上記におけるフッ素系界面活性剤はいずれも下記の化合物である。
また、断熱層と受容層の各塗工液には2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−トリアジンをそれぞれ0.1質量部加えた。
(乳化物の作製)
乳化物Aを以下の手順で調製した。化合物EB−9を高沸点溶媒(Solv−5)42g及び酢酸エチル20mLに溶解し、この液を1gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む20質量%ゼラチン水溶液250g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて380gの乳化物Aの調製を行った。
ここで、化合物EB−9の添加量は乳化物A中に30mmolとなるよう調整した。
(乳化物Bの作製)
高沸点溶媒(Solv−5)11.0g、KF−96(信越化学(株)製ジメチルシリコーン)9g、(EB−9)15.5g、KAYARAD DPCA−30(日本化薬(株)製)7.5g、及び酢酸エチル20mLに溶解し、この液を1gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む20質量%ゼラチン水溶液250g中に高速撹拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて380gの乳化物Bの調製を行った。ただし、実際の実験においては、必要量に応じて作製スケールを変更した。この際、各添加物および各溶媒の比率は上記と同じになるようにした。
上記感熱転写受像シート1を、巻き取り時の湿度、シーズニング時の貯蔵温度条件をかえ試料101〜128を作製した。
画像記録時の環境条件として、低温低湿(15℃、20%RH)および高温高湿(30℃、80%RH)の条件で出力した。
(画像形成)
感熱転写シートと、感熱転写受像シートを装填可能なように加工し、昇華型熱転写プリンターASK2000(富士フイルム(株)製)を用いて、高速プリントモードで出力した。このとき、1枚目が排出されてから、2枚目が排出されるまでの時間は8秒間であった。出力画像は、マックスグレー(黒ベタ)を用い、それぞれの条件で連続20枚出力し、5人の評価者の目視評価を行った。
(性能評価)
感熱転写受像シートについて、下記判断を基準に性能評価試験を行った。そのときの結果を表2に示す。評価試料は、2400mに巻き取ったバルクロールの外側から100mの場所のサンプルを外側サンプルとし、巻き芯から100mの場所のサンプルを内側サンプルとした。試料番号126、127については外側サンプルと内側サンプルの両方の評価結果を記載したが、それ以外のものについては外側と内側で性能が同等であったためロールの内側の評価結果のみを記載した。
感熱転写シートの剥離ムラの評価はマックスグレー(黒ベタ)の画像を用い、下記判断基準で行った。
5:画像中、濃度ムラが全く認められず、実用上問題ない。
4:画像中、一部に軽微な濃度ムラが認められるが、実用上問題ない。
3:画像中、全面に軽微な濃度ムラが認められ、実用上問題である。
2:画像中、全面に軽微な濃度ムラが認められ、一部に明らかなムラあり実用上問題である。
1:画像中、全面に明らかな濃度ムラがあり、実用上問題である。
光沢性の評価はマックスグレー(黒ベタ)の階調画像を用い、下記判断基準で行った。
5:画像中、保護層転写不良が全く認められず、実用上問題ない。
4:画像中、一部に軽微な保護層転写不良が認められるが、実用上問題ない。
3:画像中、全面に軽微な保護層転写不良が認められ、実用上問題である。
2:画像中、全面に軽微な保護層転写不良が認められ、一部に明らかな保護層転写不良ムラあり実用上問題である。
1:画像中、全面に明らかな保護層転写不良があり、実用上問題である
上記結果より、本発明の試料は、感熱転写受像シート使用環境の温湿度が変化しても、感熱転写シートの剥離ムラが減少し、光沢性に優れた画像形成を達成できることが分かった。
シーズニング中に環境を変化させた試料126、127は、巻きの外側と内側で性能が一定しなかった。一方、シーズニング時の貯蔵温度条件を、15℃〜35℃の範囲になるように温度をコントロールし、その温度を一定に保った上で24時間以上480時間以下シーズニングした本発明の試料103,104,106,112,114〜120は、巻きの外側と内側で性能が一定の優れた結果を示した。
実施例2(比較例)
実施例2は、本願に於ける硬膜剤の効果を明らかにするための比較実験例である。
(感熱転写受像シート2の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液からVS−7で表される化合物を除き、それ以外は同様の処方として感熱転写受像シート2を作製した。
(シーズニング、及び性能評価)
感熱転写受像シート2を用いて、巻き取り環境およびシーズニング条件を表3に示すように変更し、試料201〜205を作製し、実施例1と同様の評価を行った。得られた試料について実施例1と同様に15℃、20%RH及び30℃、80%RHの2条件でインク剥離ムラと光沢性の評価を行った。得られた結果を表4に示した。試料201〜205のいずれも剥離ムラ、光沢性に劣っていた。
実施例3
(感熱転写受像シート3の作製)
感熱転写受像シート1の断熱層1塗工液および受容層1塗布液を、以下の断熱層2塗工液及び受容層2塗工液に変更した以外は感熱転写受像シート1と同様の処方として感熱転写受像シート3を作製した。
断熱層塗工液
(組成)
中空ポリマー 48質量部
(日本ゼオン(株)製 MH5055)
10質量%ゼラチン水溶液 28質量部
水 3質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 50mL/m
(塗布液粘度) 45cp
受容層塗工液
(組成)
塩化ビニル系ポリマーラテックス 65質量部
(日信化学(株)製 ビニブラン690 Tg46℃)
10質量%ゼラチン水溶液 5質量部
下記構造式EW−1で表される化合物 6質量部
水 60質量部
フッ素系界面活性剤1%水溶液 4質量部
防腐剤(式PR−1で示す化合物) 0.1質量部
4,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン 0.3質量部
NaOHでpHを8に調節
(塗布量) 18mL/m
(塗布液粘度) 7cp
感熱転写受像シート3を用いて、試料301〜310を作製し、感熱転写受像シート1と同様の評価を行った。試料作製環境については下記表5に、評価については下記表6にそれぞれ記載した。
上記表6から明らかなように、本発明の試料は、感熱転写受像シート使用環境の温湿度が変化しても、感熱転写シートの剥離ムラが減少し、光沢性に優れた画像形成を達成できることが分かった。シーズニング中に環境を変化させた試料309、310は、ロール中の温度環境が一定とならなかったために巻きの外側と内側で性能が一定しなかった。
一方、シーズニング時の貯蔵温度条件を、15℃〜35℃の範囲になるように温度をコントロールし、その温度を一定に保った上で24時間以上480時間以下シーズニングした本発明の試料303〜307は、巻きの外側と内側で性能が一定の優れた結果を示した。

Claims (3)

  1. 支持体上に中空ポリマーを少なくとも1種類含む断熱層を少なくとも1層有し、ポリマーラテックスを少なくとも1種含む受容層を少なくとも1層有する感熱転写受像シートの製造方法であって、塗布される層のうち少なくとも1層の塗布液中に硬膜剤を含有し、かつ塗布される層のうち少なくとも1層の塗布液中に水溶性ポリマーを含有し、該製造工程は、少なくとも、2層以上の同時重層塗布工程、乾燥工程、巻取り工程、シーズニング工程、および加工工程を含み、該巻取り工程は、15℃〜35℃で50%RH〜70%RHの雰囲気に調湿され、該シーズニング工程におけるシーズニングが15℃〜35℃で24時間以上480時間以下であることを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
  2. 前記乾燥工程における乾燥温度が、前記受容層に含まれるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)より低い温度であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の感熱転写受像シートの製造方法によって製造された感熱転写受像シート。
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