JP2008255444A - ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法 - Google Patents

ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008255444A
JP2008255444A JP2007100997A JP2007100997A JP2008255444A JP 2008255444 A JP2008255444 A JP 2008255444A JP 2007100997 A JP2007100997 A JP 2007100997A JP 2007100997 A JP2007100997 A JP 2007100997A JP 2008255444 A JP2008255444 A JP 2008255444A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
substrate
manufacturing
film
organic polymer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007100997A
Other languages
English (en)
Inventor
Masahiro Orita
政寛 折田
Takashi Narishima
隆 成島
Hiroaki Yanagida
裕昭 柳田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Corp filed Critical Hoya Corp
Priority to JP2007100997A priority Critical patent/JP2008255444A/ja
Publication of JP2008255444A publication Critical patent/JP2008255444A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】基板、特に、有機ポリマー製基板に(Zn1-xCux)Se薄膜を有する薄膜付き基板を提供する。
【解決手段】基板およびこの基板の表面の少なくとも一部に設けられた(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を含むことを特徴とする薄膜付き基板。基板を配設した真空蒸着器内において、ZnSeを加熱し、かつCuSeおよび/またはCu2Seを加熱し、前記基板の表面上に(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を形成することを特徴とする、薄膜付き基板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、蛍光体や半導体として用いられるZnCuSe化合物薄膜が形成された基板およびその製造方法に関する。
有機ポリマー基板を用いたフレキシブルデバイスは、ユビキタス社会における種々の携帯デバイスを作製する上で大切である。フレキシブルデバイスの中でも、特に光デバイスの実現には、透明半導体薄膜を有機ポリマー基板上に形成する技術が必要になる。従来、有機ポリマー基板上に室温成膜可能な透明半導体薄膜には、amorphous In2O3(非特許文献1参照)、amorphous In2O3-ZnO(非特許文献2参照)、amorphous InZnGaO4(非特許文献3参照)などが報告されているが、いずれもn型極性しか発現することができない。このため、透明電極膜として利用したり、FETを作製するにとどまっている。しかし、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)や太陽電池などpn接合に基づいて設計された機能デバイスを実現するには、有機ポリマー基板上に形成可能な透明p型半導体材料の設計が決定的に重要である。また、有機ELディスプレイ用正孔注入電極に透明p型半導体材を用いると、発光効率が向上する。
この点、Aliらの報告は大変意義深い(非特許文献4、5参照)。すなわち、CuまたはAgを用いた多結晶ZnSe薄膜p型導電性を示すというものである。ZnSeは結晶化温度が低いので、有機ポリマー基板上にp−nデバイスを作製できる可能性がある。ZnSeは禁制帯幅2.7eVの直接半導体であり、青色LED用半導体として単結晶膜について精力的な研究がなされてきた。可視域全域で透明性を付与するには3eV以上の禁制帯幅が必要であるが、MgやSを用いたバンドエンジニアリングに関してはよく調べられている。p型ドーパントとしては、LiやNが知られているが、いずれも単結晶性が少しでも劣化すると顕著に絶縁体化してしまう。これまで多結晶体がp型半導体特性を示したとする報告例は無い。CuやAgドープによりp-ZnSe多結晶膜が得られるとすれば革新的な発見である。
Aliらの報告では、蒸着法でガラス基板上に加熱成膜したZnSe薄膜をCuNO3-H2O溶液中に浸漬し、さらに400℃でアニールして、Cuを最大2.4%ドープした。この薄膜(膜厚400nmt)は波長500nm以上で平均70%の透過率を持ち、0.6Scm-1の導電率(1.6Ωcmの抵抗率)を示した。キャリアの極性はAgの場合について、熱プローブ法で確認された。しかし、予期しない不純物を取り除き、半導体特性を制御するためには、すべての元素を真空プロセスによって与えることが適当である。また、有機ポリマー基板上に成膜するためには、低温成膜プロセスを調べる必要がある。
ここで、ZnSe成膜法としては、標準的なものとして分子線エピタキシー(MBE)法、もう一つ広く利用されているものとして有機金属化学輸送(MOCVD)法、また、古くから産業的に使われている化学輸送(CVD)法が挙げられる。
J. R. Bellingham, W. A. Phillips, and C. J. Adkins, J. Phys. Condens. Matter. 2, 6207 (1990). A. Kaijo, K. Inoue, S. Matsuzaki, and Y. Shigesato, Proceedings of "The Forth Pacific Rim International Conference on Advanced Materials and Processing (PRICM-4)" 2, 1787 (2001). M. Orita, H. Ohta, M. Hirano, S. Narushima, H. Hosono, Philoso. Mag. B 81, 501 (2001). Z. Ali, A. K. S. Aqili, A. Maqsood and S. M. J. Akhtar, Vacuum 80, 302 (2005). Z. Ali, A. K. S. Aqili, S. M. J. Akhtar and A. Maqsood, J. Non-cryst. Solids 352, 409 (2006). A. Ashida, Y. Hachiuma, N. Yamamoto, T. Ito, and Y. Cho, Jpn. J. Appl. Phys. 32, Suppl. 32-3, 84 (1993).
従来は、透明p型半導体を成膜した有機ポリマー基板は存在しなかった。Aliらが見いだしたCuドープZnSeは多結晶膜でもp型導電性を示すので有用であるが、有機ポリマー基板上に形成する手段については、これまで検討されてきていない。本発明は、CuドープZnSe膜を有機ポリマー基板上に形成する方法を提供するものである。ここで有機ポリマー基板とは、広く有機ポリマー材料を用いて作製した物体であり、ブロック状でもよく、板状でもよく、フィルム状でも良い。フレキシブルデバイスを作製するためには、フィルム状基板が好適である。
上述してきたZnSe成膜法として、MBE法は、高純度Znと高純度Seのロッドを原料として用いており、Seフラックスを制御して化学量論的なZn/Se比を得ることは、Knudsenセルを用いても困難である。これは、Seの蒸気圧は150℃付近で急激に上昇するのであるが、150℃という低温を安定的に保持することが通常困難であるためである。そのため、化学量論組成は、基板を300℃付近に上昇させ、ZnSe結晶相を析出させ、過剰なSe成分を蒸発させて得るのが通常である。この方法は温度が高すぎて、有機ポリマー基板には適用できない。
有機金属化学蒸着(MOCVD)法は、ここでは、ジメチル亜鉛やジエチル亜鉛とセレン化水素と石英反応管中において300℃付近で反応させるとすると、加熱が必要であることによって有機ポリマー基板に適用できないだけでなく、セレン化水素は猛毒であることが問題となる。
化学蒸着(CVD)法は、Zn金属とセレン化水素を反応させるとすれば、基板は730℃まで昇温させなくてはならず、やはり有機ポリマー基板に適用できない。
ここで、ZnSe成膜法として蒸着法が挙げられる。蒸着法は有機ポリマーフィルム上の大面積成膜に適した方法で、タッチパネル用ITO膜の成膜などに利用されている。この蒸着法は、装置構造が単純で安価で、成膜スピードが大きく、量産性がある。しかしながら、ZnSe膜の場合、蒸着源にZnとSeを用いるならば、MBE法と同様に、Se蒸気圧を安定させにくいという問題がある。また、基板を加熱する必要があるため、やはり有機ポリマー基板を採用することができないという問題がある。
蒸着法における問題を解決する手法として、ZnSe化合物粉を用いた蒸着法が適用できる可能性がある。ここで、ZnSeを加熱した際の蒸気成分について、幾つか詳しい報告がある。これらによると、ZnSe(s)は分解してZn(g)とSe2(g)となり、ZnSe(g)の分圧は全圧の0.1%を超えず、したがって、蒸気はZn:Se=1:1の組成比を持ち、このガスが露出された基板上にそのまま堆積すれば、ZnSe膜が得られる。一方、Cuがドープされた構成とするために、蒸着法を用いたCu源としてSe化合物であるCu2Seを用いた報告例がある(非特許文献6参照)が、この報告例のCu2SeはCuInSe2化合物半導体薄膜の蒸着源として用いており、化学量論組成が得られにくいという課題がある。
そこで本発明の目的は、基板、特に、有機ポリマー製基板に(Zn1-xCux)Se薄膜を有する薄膜付き基板を提供することである。
本発明は、以下のとおりである。
[1]基板およびこの基板の表面の少なくとも一部に設けられた(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を含むことを特徴とする薄膜付き基板。
[2]xは、0.1以下である[1]に記載の薄膜付き基板。
[3]前記薄膜は、結晶性を有する[1]または[2]に記載の薄膜付き基板。
[4]前記薄膜はCu2Se結晶相を含まない[1]〜[3]のいずれかに記載の薄膜付き基板。
[5]前記薄膜は電気伝導率が、10-5〜100Scm-1の範囲である[1]〜[4]のいずれかに記載の薄膜付き基板。
[6]基板が透明基板である[1]〜[5]のいずれかに記載の薄膜付き基板。
[7]基板が有機ポリマー製である[1]〜[5]のいずれかに記載の薄膜付き基板。
[8]基板を配設した真空蒸着器内において、ZnSeを加熱し、かつCuSeおよび/またはCu2Seを加熱し、前記基板の表面上に(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を形成することを特徴とする、薄膜付き基板の製造方法。
[9]基板の温度を100℃以下に維持しながら前記薄膜形成を行う、[8]に記載の製造方法。
[10]真空蒸着器内の圧力は1×10-6〜1×10-10Torrの範囲である[8]または[9]に記載の製造方法。
[11](Zn1-xCux)Se薄膜にアニール処理を施すことをさらに含む[8]または[9]に記載の製造方法。
[12]アニール処理は、レーザー照射である[11]に記載の製造方法。
[13]前記レーザー照射は、前記薄膜の形成と並行して行なう、[12]に記載の製造方法。
[14]前記レーザー照射は、前記薄膜の形成後に行う、[12]に記載の製造方法。
本発明によれば、ZnCuSe[以下(Zn1-xCux)SeをZnCuSeと略記することがある]薄膜を有する基板、特に、有機ポリマー基板を提供することができる。、ZnCuSe前記ZnCuSe薄膜は、結晶性を有し、不純物としてのCu2Seを含有せず、さらには、10-5〜100Scm-1の範囲の電気伝導率を有する透明p型半導体である。大面積の有機ポリマー基板上に上記薄膜を形成することもできるので、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)や太陽電池等、pn接合に基づいて設計された機能デバイスを実現することが可能となる。また、有機ELディスプレイ用正孔注入電極に本発明の透明p型半導体薄膜を用いれば、発光効率の向上が期待できる。
また、本発明では、上記薄膜形成に蒸着法を採用し、これにより、基板温度を100℃以下の低温に維持しながらZnCuSe薄膜を形成でき、そのため、耐熱性に劣る有機ポリマー製の基板上においても、ZnCuSe薄膜を形成することが可能になった。
さらに、上記本発明の蒸着法においては、ZnCuSe薄膜にアニール処理を行なうことによってZnCuSe薄膜の結晶性を改善することもできる。結晶性を改善したZnCuSe薄膜は、透明性が向上し、半導体特性が向上する効果がある。このアニール処理は、ZnCuSe薄膜の蒸着と並行して行なうことによって結晶性が膜厚方向に均一な膜を作製できるという効果や、100nm厚以上の厚みを有する膜を作製できるという効果がある。
本発明は、基板およびこの基板の表面の少なくとも一部に設けられた(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を含むことを特徴とする薄膜付き基板である。xは、好ましくは0.1以下であり、下限は、好ましくは0.1である。(Zn1-xCux)Se薄膜において、ZnおよびCuとSeとは、実質的に化学量論比で含まれる。ここで化学量論比とは、Zn+CuとSeの原子比(Zn+Cu)/Seが0.99〜1.01の範囲であることを意味する。好ましくは原子比(Zn+Cu)/Seが1.00である。
本発明の薄膜付き基板が有する薄膜は、結晶性を有するものであり、多結晶性である。さらに本発明の前記薄膜は、実質的にCu2Se結晶相を含まないものであることが好ましい。Cu2Seは着色するため、Cu2Seを含まないことで、薄膜は、より透明性に優れる。さらに、前記薄膜は電気伝導率が10-5〜100Scm-1の範囲であることが適当である。10-5 Scm-1未満では高抵抗すぎて発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)や太陽電池等の用途には不向きである。10-5 Scm-1以上あれば有機ELの正極電極等として有用である。一方、100 Scm-1以上は物質の特性上得られにくい。薄膜の電気伝導率は、好ましくは10-3〜50Scm-1の範囲である。
基板は、例えば、透明基板であることができる。透明基板は、例えば、ガラス基板であること以外に、有機ポリマー製の基板であることもできる。有機ポリマー製の基板としては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリアミド、シリコーン等を挙げることができる。但し、これらに限定される意図ではない。後述するように、本発明の製造方法では、基板を加熱することなく薄膜を形成できることから、比較的耐熱性に劣る有機ポリマー製の基板であっても、薄膜を形成できる。
薄膜の膜厚は、特に制限はなく、本発明の薄膜付き基板の用途等に応じて適宜決定できる。薄膜の膜厚は、例えば、10nm〜1μmの範囲であることができ、好ましくは10nm〜500 nmの範囲、さらに好ましくは10〜300nmの範囲である。
本発明の薄膜付き基板の製造方法について、以下に説明する。
本発明の薄膜付き基板は、基板を配設した真空蒸着器内において、ZnSeを加熱し、かつCuSeおよび/またはCu2Seを加熱し、前記基板の表面上に(Zn1-xCux)Se(但し、0<x≦0.2)薄膜を形成することを特徴とする。
本発明の製造方法においては、蒸着源として、ZnSe、並びにCuSeおよび/またはCu2Seを用いる。これらの蒸着源を用いて真空蒸着することで、基板を外部から加熱することなく結晶性を有する(Zn1-xCux)Se薄膜を形成することができる。真空蒸着器内の圧力は、例えば、1×10-6〜1×10-10Torrの範囲であることができる。真空蒸着器内の圧力が1×10-6Torrを超えると、H2O分圧、O2分圧が高過ぎ、ZnSe相にO(酸素)が混入することがある。1×10-10Torr未満になると、装置が非常に高価、複雑になり取り扱いが難しくなる。
本発明の製造方法においては、成膜法として蒸着法を用い、Zn源としてZnSe、Cu源としてCu2Seを用いる。ZnSeを、例えば、BN坩堝に入れ加熱することによって「2ZnSe→2Zn+Se2」の反応が進行し、Zn蒸気とSe2蒸気が発生することによって、これら蒸気が基板上に達し、Zn:Se=1:1の組成比を有する膜が形成される。一方、Cu2Seを、例えば、BN坩堝に入れ加熱することによって、その蒸気が基板上に達し、Cu:Se≒1:1の組成比を有する膜が形成される。このように、ZnSeとCu2Seとを共蒸着させると、(Zn1-xCux)Se(但し、0<x≦0.2)薄膜をほぼ化学量論的に形成することができる。
なお、Cu源としては上述したCu2Seの他に、CuSeを用いることも可能であり、Cu2Seの場合と同様に、有機ポリマー基板には(Zn1-xCux)Se(但し、0.0<x≦0.20)膜が化学量論的に形成することができる。
基板の温度は、100℃以下に維持しながら前記薄膜形成を行うことが好ましく、基板の温度は、基板と蒸着源の距離を調整することで、100℃以下に維持することができる。基板の温度は、70℃以下、好ましくは50℃以下に維持することが、耐熱性に劣る有機ポリマー製基板を用いる場合、より好ましい。尚、必要により、基板は、外部から、冷却するなどして温度を上記範囲に維持することもできるが、通常は、基板と蒸着源の距離を調整することのみで100℃以下に維持ことは可能である。
蒸着源である、ZnSe、並びにCuSeおよび/またはCu2Seの加熱温度は、薄膜の組成、特にZnとCuの比率、並びに生産性(蒸気圧)等を考慮して適宜決定できる。ZnSeの加熱温度は、例えば、600〜1000℃の範囲、好ましくは700〜900℃の範囲、CuSeおよび/またはCu2Seの加熱温度は、例えば、800〜1200℃の範囲、好ましくは850〜1150℃の範囲、より好ましくは900〜1100℃の範囲とすることが適当である。
蒸着時間は、蒸着源の設定温度、薄膜の所望膜厚等を考慮して適宜決定できる。
また、基板は、真空蒸着器内に固定されたものであっても、真空蒸着器内に連続的に移送されるものであってもよい。有機ポリマー製基板がフィルムである場合、真空蒸着器内に有機ポリマー製基板のフィルムを連続的に移送することで、連続的に薄膜を形成することもできる。
本発明の製造方法においては、(Zn1-xCux)Se薄膜にアニール処理を施すことができる。アニール処理を施すことで、薄膜の結晶性を向上することがで、透明性を向上させることができる。但し、基板として有機ポリマー基板を用いる場合、例えば、電気炉中でのアニール処理は不適当である。そこで、有機ポリマー基板に適したアニール方法としてレーザー照射によってアニール処理を行なう方法を採用することが好ましい。レーザー照射によるアニール処理であれば、レーザー照射による昇温のダメージを有機ポリマー基板に与えることなく、薄膜のアニール処理を行なうことが可能である。
上記レーザー照射は、前記薄膜の形成と並行して行なっても、前記薄膜の形成後に行ってもよいが、薄膜の結晶性を効率的に向上させるこという観点からは、薄膜の形成と並行して行なうことが好ましい。
膜中への光の進入波長には限界があるので、例えば100nm厚以上の厚みを有する薄膜を作製する場合には、レーザー照射は成膜中に施すことが好ましい。なお、照射する光はレーザーでなくともよく、結晶性の向上に十分寄与する程度の強度を有する光であればよい。例えば、シンクロトロン光を照射しても良い。
レーザー照射によるアニール処理は、例えば、パルスレーザーを用いることが好ましく、パルスレーザーを用いるアニール処理では、基板温度が殆ど変化することなく、薄膜の結晶性を向上することができる。レーザー照射におけるエネルギーは、例えば、1mJ〜1J/mm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは、3〜10mJ/mm2の範囲である。
薄膜上の面積当たりの光のエネルギーは、1mJ/mm2以上であれば結晶化が進む。また、面積当たりの光のエネルギーは、1J/mm2以下であることが適当である。何故なら、1J/mm2を超えるエネルギーを有するレーザーを照射すると、アブレーション現象が発生し、薄膜が失われる恐れがあるからである。
本発明において、化学量論的とは、前記組成式において、有効数字が2桁であることを意味する。例えばICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)分析法を用いて本発明の薄膜を組成分析すれば、有効数字2桁以上の精度で組成式を表すことができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
蒸着器の真空容器として直径400mmのステンレス筒を横に寝かせ、一端にOリングでシールしたステンレス円盤を付けて開閉できるようにし、他端に排気速度1,500L/sのターボ分子ポンプを付け、到達真空度1×10-7Torrのものを作製した(Eiko Co.)。管の下側中央に、1ccの容量を持つBNるつぼを設置できる受け皿を置き、それぞれ100〜1,500℃の範囲で加熱できるように温度制御装置に接続したPtヒーターを備えた。坩堝受け皿の直上には、ロールに巻いた有機ポリマーフィルムの一端を引き出して水平に広げ、もう一つのロールに巻き取る構造の自転式基板ホルダーを置いた。坩堝と基板との間の距離は257mmである。
蒸着源として、一方の坩堝にはZnSe(フルウチ化学、99.99%)原料を充填し、他方の坩堝にはCu2Se(フルウチ化学、99.999%)原料を充填した。両坩堝を加熱してZn、CuおよびSeからなる蒸気を発生させるにおいて、ZnとCuが所定のモル比となるように両坩堝の温度を調整した。
両坩堝が設定温度で安定した後、両坩堝と有機ポリマーフィルムの間に置いたシャッターを開放し、10分間成膜した。巻き取り側のロールを回転させることにより、結晶化した透明p型半導体性ZnCuSe薄膜の形成された有機ポリマーフィルムが巻き取ることができる。基板温度は約50℃であった。
有機ポリマー基板上に得られた薄膜には、パルスYAGレーザー(Lintron, Nano-3)の3倍波を照射してアニール処理を加えた。
なお、アニール処理のためのレーザー照射は、成膜中に有機ポリマー上に走査することによって行なうこととしても良い。この場合、YAGレーザー光は波長355nmで行なった。
坩堝の温度設定に関しては、ZnSeをBN坩堝に入れ、800℃に加熱し、Cu2SeをBN坩堝に入れ、1,025〜1,150℃に加熱して蒸発させた。この場合、Cu2Seの坩堝温度に関わらず、(Zn+Cu)/Seの組成比はほぼ1となった(表1)。Cu2Se原料はCu/Se=2であるから、原料組成が薄膜に転写される場合には、Cu含有量が増えるにつれ、(Zn,Cu)Se膜の化学組成はSe不足になるはずである。しかし、Znの20%に相当するCu成分を加えた場合でさえも、(Zn+Cu)/Se≒1であることをICP分析結果は示している。
そこで、この原因はCu2Seの分解、蒸発機構にあると考え、試しにCu2Se坩堝のみを1,100℃または1,150℃に加熱して薄膜試料を作製した。得られた試料のCu/Se比は1.2〜1.3であった(表1)。成膜後の坩堝には、丸まったCu金属が残っていた。Cu2Seは加熱により分解し、蒸気となるが、Cu成分の一部は基板に達せず、非加熱基板上に堆積される成分はCu/Se≒1となっている。このため、ZnSeとCu2Seを共蒸着した場合、(Zn1-xCux)Seを0<x≦0.2の範囲でZnCuSe化合物薄膜試料の組成が化学量論量的になることを見出した。
as depos.:アニール処理無
P.A.:ポストアニール処理
L.A.:レーザアニール処理
図1に、便宜的にZnCuSe化合物薄膜をガラス基板上に形成した共蒸着膜のX線回折パターンを示す。Cu2Se坩堝温度が1,025℃および1,075℃にした場合には、(111)回折線は一本であった。偏析物(Cu2Se)に由来する構造は見あたらない。Cu2Se坩堝温度を1,125℃以上とした場合[Cu/(Zn+Cu)=0.20]には、図1のX線回折パターンに於いて、(111)回折線の低角側に新たなピークが生じ、第2相が形成された。そのピーク位置は26.5°であった。Cu2Se相が第2相として析出したことを示している。
なお、図1はガラス基板上に形成したZnCuSe化合物薄膜試料に関するものであるが、このX線回折パターンは有機ポリマー基板上に形成した場合についても基本的に同じ結果が得られている。
YAGレーザー光によるアニール処理を試みた際、1,075℃試料 (Cu/(Zn+Cu)=0.10) に0.45Scm-1の導電性が発現した。光透過スペクトルにはレーザー照射の効果が殆ど現れていないが(図2)、XRDパターンの(111)回折線強度は増大し、結晶性の向上が見られる(図3)。
なお、図2および図3についてもまた、ガラス基板上に形成したZnCuSe化合物薄膜試料に関するものであるが、これら光透過スペクトルは有機ポリマー基板上に形成した場合も基本的に同じ結果が得られている。レーザー照射条件を詳細に検討することにより、電気炉等の中でアニール処理を行なった試料が示す特性と同等程度まで、導電性と透明性を高めることが原理的に可能である。
比較例1
ZnSe + Cu の場合
表2にas deposited膜の化学組成を示す。Cu源に金属Cuを用い、Cuを入れたBN坩堝を1,000℃〜1,075℃の範囲で加熱すると、Cuの含有量は3.7%から10.3%まで増大した。このとき、ZnSe化合物ソースにより供給されるZnとSeの比率は1に保たれる。このため、金属対Seの比率はCuの分だけ過剰となり、(Zn,Cu)Seとしての化学量論量は本質的に得られないことが分かった。
as depos.:アニール処理無
P.A.:ポストアニール処理
L.A.:レーザアニール処理
比較例2
ZnSe + Cu + Se の場合
次に不足しているSe成分を補給するため、ZnSe、Cuの他に、第三の坩堝からSeを蒸発させた(表3)。Se坩堝は137.5 ℃で加熱した。Zn/Se比は「ZnSe+Cu+Se」を除いて0.67付近でほぼ安定している。ただし(Zn+Cu)/Se比は1を大きく下回った。組成比を合わせるためにSeフラックスを減らす制御を試みたが、うまくいかなかった。坩堝加熱温度が低くなりすぎ、使用した加熱機構では温度の安定化が困難であったからである。
as depos.:アニール処理無
P.A.:ポストアニール処理
L.A.:レーザアニール処理
本発明の製造方法により作製した透明p型半導体薄膜は、フレキシブル有機ELディスプレイ、フレキシブル電子ペーパーやフレキシブル太陽電池の透明電極等として利用できる。
実施例1で得られたアニール処理無しの薄膜(表1の3−1〜3−4)のX線回折パターンを示す。 実施例1で得られた薄膜(表1の3−2、アニール処理無し、レーザアニール処理、ポストアニール処理)光透過スペクトルを示す。 実施例1で得られた薄膜(表1の3−2、アニール処理無し、レーザアニール処理、ポストアニール処理)のX線回折パターンを示す。 実施例1で得られたレーザアニール処理の薄膜(表1の3−1〜3−4)のX線回折パターンを示す。 実施例1で得られたポストアニール処理の薄膜(表1の3−1〜3−4)のX線回折パターンを示す。

Claims (14)

  1. 基板およびこの基板の表面の少なくとも一部に設けられた(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を含むことを特徴とする薄膜付き基板。
  2. xは、0.1以下である請求項1に記載の薄膜付き基板。
  3. 前記薄膜は、結晶性を有する請求項1または2に記載の薄膜付き基板。
  4. 前記薄膜はCu2Se結晶相を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜付き基板。
  5. 前記薄膜は電気伝導率が、10-5〜100Scm-1の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜付き基板。
  6. 基板が透明基板である請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜付き基板。
  7. 基板が有機ポリマー製である請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜付き基板。
  8. 基板を配設した真空蒸着器内において、ZnSeを加熱し、かつCuSeおよび/またはCu2Seを加熱し、前記基板の表面上に(Zn1-xCux)Se薄膜(但し、0<x≦0.2)を形成することを特徴とする、薄膜付き基板の製造方法。
  9. 基板の温度を100℃以下に維持しながら前記薄膜形成を行う、請求項8に記載の製造方法。
  10. 真空蒸着器内の圧力は1×10-6〜1×10-10Torrの範囲である請求項8または9に記載の製造方法。
  11. (Zn1-xCux)Se薄膜にアニール処理を施すことをさらに含む請求項8または9に記載の製造方法。
  12. アニール処理は、レーザー照射である請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記レーザー照射は、前記薄膜の形成と並行して行なう、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記レーザー照射は、前記薄膜の形成後に行う、請求項12に記載の製造方法。
JP2007100997A 2007-04-06 2007-04-06 ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法 Pending JP2008255444A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007100997A JP2008255444A (ja) 2007-04-06 2007-04-06 ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007100997A JP2008255444A (ja) 2007-04-06 2007-04-06 ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008255444A true JP2008255444A (ja) 2008-10-23

Family

ID=39979319

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007100997A Pending JP2008255444A (ja) 2007-04-06 2007-04-06 ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008255444A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012190901A (ja) * 2011-03-09 2012-10-04 Osaka Gas Co Ltd 量産に適した方法で製造可能な亜鉛含有光電変換素子
JP2015225860A (ja) * 2014-05-27 2015-12-14 三星電子株式会社Samsung Electronics Co.,Ltd. 導電性材料およびこれを含む電子素子

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59145783A (ja) * 1983-02-09 1984-08-21 Konishiroku Photo Ind Co Ltd 薄膜の製造方法及びその装置
JPH07283430A (ja) * 1994-04-12 1995-10-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 太陽電池の製造方法
JPH08167479A (ja) * 1994-12-14 1996-06-25 Toppan Printing Co Ltd 透明導電膜及びその製造方法
JPH09266218A (ja) * 1996-03-28 1997-10-07 Nippon Steel Corp p型化合物半導体の低抵抗化方法
JPH11229120A (ja) * 1998-02-10 1999-08-24 Agency Of Ind Science & Technol 透明導電性薄膜の形成方法
WO2005076373A1 (ja) * 2004-02-06 2005-08-18 Hoya Corporation 半導体材料およびこれを用いた半導体素子
JP2005294415A (ja) * 2004-03-31 2005-10-20 Hoya Corp 正孔注入電極及び半導体素子

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59145783A (ja) * 1983-02-09 1984-08-21 Konishiroku Photo Ind Co Ltd 薄膜の製造方法及びその装置
JPH07283430A (ja) * 1994-04-12 1995-10-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 太陽電池の製造方法
JPH08167479A (ja) * 1994-12-14 1996-06-25 Toppan Printing Co Ltd 透明導電膜及びその製造方法
JPH09266218A (ja) * 1996-03-28 1997-10-07 Nippon Steel Corp p型化合物半導体の低抵抗化方法
JPH11229120A (ja) * 1998-02-10 1999-08-24 Agency Of Ind Science & Technol 透明導電性薄膜の形成方法
WO2005076373A1 (ja) * 2004-02-06 2005-08-18 Hoya Corporation 半導体材料およびこれを用いた半導体素子
JP2005294415A (ja) * 2004-03-31 2005-10-20 Hoya Corp 正孔注入電極及び半導体素子

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012190901A (ja) * 2011-03-09 2012-10-04 Osaka Gas Co Ltd 量産に適した方法で製造可能な亜鉛含有光電変換素子
JP2015225860A (ja) * 2014-05-27 2015-12-14 三星電子株式会社Samsung Electronics Co.,Ltd. 導電性材料およびこれを含む電子素子

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7323356B2 (en) LnCuO(S,Se,Te)monocrystalline thin film, its manufacturing method, and optical device or electronic device using the monocrystalline thin film
Fan et al. p-Type ZnO materials: Theory, growth, properties and devices
CN101058867A (zh) P型半导体氧化锌薄膜,其制备方法,和使用透明基片的脉冲激光沉积方法
US20020160539A1 (en) Method of producing Cu (In, Ga) (Se, S) 2 semiconductor film
US7744965B2 (en) Method and apparatus for manufacturing a zinc oxide thin film at low temperatures
Zhao-Yang et al. Effect of the variation of temperature on the structural and optical properties of ZnO thin films prepared on Si (1 1 1) substrates using PLD
CN102482797A (zh) 半导体基板、半导体基板的制造方法、半导体生长用基板、半导体生长用基板的制造方法、半导体元件、发光元件、显示面板、电子元件、太阳能电池元件及电子设备
Horng et al. Effects of Ga concentration and rapid thermal annealing on the structural, optoelectronic and photoluminescence properties of Ga-doped ZnO thin films
Guan et al. Influence of anneal temperature in air on surface morphology and photoluminescence of ZnO thin films
Kaur et al. Growth and properties of pulsed laser deposited Al-doped ZnO thin film
Weng et al. Structure, optical and electrical properties of ZnO thin films on the flexible substrate by cathodic vacuum arc technology with different arc currents
Liu et al. Improvement of crystal quality and UV transparence of dielectric Ga 2 O 3 thin films via thermal annealing in N 2 atmosphere
Al-Asedy et al. Properties of Al-and Ga-doped thin zinc oxide films treated with UV laser radiation
JP2007149746A (ja) 透明酸化物半導体接合
JP2008255444A (ja) ZnCuSe薄膜付き基板およびその製造方法
CN1483665A (zh) 一种硒化锌(ZnSe)粉末材料的制备方法
Hong et al. Control and characterization of structural and optical properties of ZnO thin films fabricated by thermal oxidation Zn metallic films
Bhuvana et al. Realization of p-type conduction in (ZnO) 1− x (AlN) x thin films grown by RF magnetron sputtering
Acharya Photocurrent spectroscopy of CdS/plastic, CdS/glass, and ZnTe/GaAs hetero-pairs formed with pulsed-laser deposition
Hussain et al. Photoluminescence comparison of different substrates on AlN: Cr thin films for optoelectronic devices
Kamaruddin et al. Surface morphological properties of CdxZn (1-x) S thin films deposited by low-cost atmospheric pressure metal organic chemical vapour deposition technique (AP-MOCVD)
Nakamura et al. Synthesis of ZnO Nanowire Heterostructures by Laser Ablation and Their Photoluminescence.
KR101040138B1 (ko) 은 및 iii족 원소에 의해 상호 도핑된 산화아연계 박막의 형성 방법 및 이를 이용하여 형성된 박막
Lee et al. Characteristic of Ga-doped ZnO films deposited by DC magnetron sputtering with a sintered ceramic ZnO: Ga target
Jun et al. P-type ZnO thin films prepared by in situ oxidation of DC sputtered Zn3N2: Ga

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091007

A977 Report on retrieval

Effective date: 20110224

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110823

A02 Decision of refusal

Effective date: 20120117

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02