JP2008251723A - パルスレーザ光源 - Google Patents

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Abstract

【課題】全ての発振縦モードの絶対周波数を安定化することができるパルスレーザ光源を提供する。
【解決手段】モード同期レーザ光源1の共振器内にモードホップ抑制回路7を備え、クロック抽出器51及びPLL回路6からの繰り返し周波数調整用信号を、再生モード同期回路内におけるマイクロ波の位相制御回路5に負帰還して、該レーザの発振縦モードの周波数間隔を安定化し、光フィルタ2及び周波数基準セル3及び位相敏感検波回路(光位相変調器41、発振器42、光検出器43、位相比較器44、低域通過型フィルタ45)からの絶対周波数調整用信号を励起電力8に負帰還して、該レーザの発振縦モードのうちその一本の発振周波数を安定化することによって、全ての発振縦モードを同時に絶対周波数安定化する。
【選択図】図3

Description

本発明は、発振周波数を安定化したモード同期パルスレーザ光源に係り、特に、光通信用光源において発振周波数やパルスの繰り返し周波数が正確に固定された周波数安定化モード同期パルスレーザ光源に関するものである。
モード同期パルスレーザの周波数スペクトルは、出力光パルスの繰り返し周波数で一定間隔に並び、かつモード間の位相が揃った多数の離散スペクトル(縦モード)で構成される。周波数間隔が正確に固定された「光のものさし」は、周波数計測や時間標準に利用することができるため、モード同期レーザの周波数安定化技術に近年高い関心が寄せられている(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
一般にモード同期ファイバレーザは、共振器にファイバを利用するため、他のレーザに比べて共振器長が数mから数百mと長くなり、このためわずかな温度変化や機械的振動によって繰り返し周波数が変動しやすいという課題があった。そこで繰り返し周波数を長期にわたって安定に保つために、例えば、高調波再生モード同期ファイバレーザからクロック信号を抽出し、クロック周波数と外部信号発生器(シンセサイザ)の周波数との差を位相比較器により検出し、その誤差信号をレーザの共振器長に負帰還することで、レーザの繰り返し周波数を外部基準シンセサイザに同期させる方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法により、モード間隔を高い精度で一定にすることができる。
一方、モード同期レーザを「光のものさし」として応用するためには、その繰り返し周波数だけでなく、各縦モードの発振周波数の絶対値を正確に安定化する必要がある。すなわち「光のものさし」の間隔が一定でも、それらが左右に動いては確度(絶対精度)が出ない。そこで、例えば、波長可変モード同期ファイバレーザの縦モード一本を抜き出し、この単色光の周波数が分子の共鳴周波数に一致するよう発振波長を制御することで、絶対周波数が確定した安定なレーザを実現する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2の方法では、抜き出した特定の縦モード一本の周波数は安定化できるものの、キャリヤ・エンベロープオフセット(Carrier−Envelope Offset:CEO)周波数の揺らぎにより、その他の縦モードの周波数が揺らいでしまい、スペクトル全体で見ると全ての縦モードに対しては周波数が安定化できないという課題がある。
CEO周波数fCEOとは、図1に示すように、レーザ共振器内の光パルスの位相速度と群速度との違いに由来する縦モード全体のオフセット周波数である。モード同期レーザの各縦モード(N次モード)の周波数fは、繰り返し周波数frepだけではなくCEO周波数fCEOにも依存し、2つのパラメータを用いて
=Nfrep+fCEO (1)
と表すことができる。ここで、Nは整数で、モードの次数を表す。
図2に示すように、光パルスのピークにおける搬送波の位相が共振器を周回するごとにΔΦCEOだけシフトしていくとすると、fCEOは、
CEO=(ΔΦCEO/2π)frep (2)
と表される。ここでΔΦCEOは、搬送波周波数ω、共振器長l、共振器内の群速度vおよび位相速度vを用いて
ΔΦCEO=ω(1/v−1/v) (3)
で与えられる。
ファイバレーザにおいては、共振器に群速度分散が存在することによって、共振器内の群速度vと位相速度vとに差が生じ、その差は温度や圧力によってランダムに変化するため、CEO周波数の揺らぎが生じる。したがって、特許文献2に記載の方法では、ある一本の縦モードの周波数が安定化できたとしても、その他の縦モードの周波数はCEO周波数の揺らぎによって変動するため、スペクトル全体の周波数を安定化することが不可能であることがわかる。また、特許文献2には、繰り返し周波数をも同時に制御する技術に関しては何ら記述されていない。
一般にモード同期レーザでは、縦モード周波数が突然他の周波数に変化してしまうモードホップという現象がある。このモードホップfhopが生じると、fCEOにはfhopも含まれることになる。そしてこのfhopも温度によって変化する。そこで、例えば、レーザの励起電力と共振器長とをそれぞれ独立に制御することにより、レーザの発振縦モードスペクトルの周波数間隔と該縦モードスペクトルのうちその一本の縦モードの発振周波数とを同時に安定化し、その結果として全ての縦モードの絶対周波数を安定化する方法が開示されている(特許文献3参照)。
Th. Udem, J. Reichert, R. Holzwarth, and T. W. Hansch,"Absolute optical frequency measurement of the cesium D-1 line with a mode-locked laser", Phys. Rev. Lett., 1999, vol. 82, pp.3568-3571 A. Onae, T. Ikegami, K. Sugiyama, F. Hong, K. Minoshima, H. Matsumoto, K. Nakagawa, M. Yoshida, and S. Harada,"Optical frequency link between an acetylene stabilized laser at 1524 nm and an Rb stabilized laser at 778 nm using a two-color mode-locked fiber laser", Opt. Commun., Sept. 2000, vol. 183, pp.181-187 D. J. Jones, S. A. Diddams, J. K. Ranka, A. Stent, R. S. Windeler, J. L. Hall, and S. T. Cundiff,"Carrier-envelope phase control of femtosecond mode-locked laser and direct optical frequency synthesis", Science, 2000, vol. 288, pp.635-639 特許3350874号公報 特開2001−168438号公報 特開2006−179779号公報
しかしながら、特許文献3の方法では、共振器長を変化させると発振縦モードスペクトルの間隔と縦モードの絶対周波数とが同時に変化してしまうため、それら周波数間隔(繰り返し周波数)と絶対周波数との同時制御が難しい。また、特許文献3では、レーザ共振器を構成するファイバの一部の温度を同時に制御する方法を開示しているが、モードホップはレーザ共振器全体の温度変化に依存するため、この方法ではモードホップを完全に抑制することは困難である。
本発明は、以上の点に鑑み、モードホップを抑制する機構と、ある縦モード一本の絶対周波数fと繰り返し周波数frepとをそれぞれ独立に安定化する新しい二重の周波数安定化負帰還機構とを設け、それらを同時に動作させることで、全ての縦モードの絶対周波数を安定化するモード同期パルスレーザ光源を提供することを目的とする。
本発明の主な特徴は、再生モード同期レーザからの出力光パルスの繰り返し周波数とその光パルスを構成する縦モードの絶対周波数を同時に安定化した二重周波数安定化モード同期パルスレーザ光源において、レーザ共振器内にモードホップを抑制する回路並びに再生モード同期用PLL回路内にマイクロ波の位相制御回路を挿入することにより、高安定にパルスの繰り返し周波数と縦モードの絶対周波数とを安定化した周波数安定化モード同期パルスレーザ光源を提供することである。
また、本発明は、パルスレーザ光源において、モードホップ抑制回路として共振器内に挿入したエタロン素子の透過ピーク周波数とレーザの発振縦モードの周波数との差を誤差信号として用いて該エタロン素子に負帰還する機構を用いることができる。
また、本発明は、パルスレーザ光源において、モードホップの抑制回路として前記エタロン素子の代わりに、多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子を使用することができる。
また、本発明は、パルスレーザ光源において、再生モード同期用PLL回路で検出した繰り返し周波数制御用信号をマイクロ波の位相制御回路に負帰還すると同時に、前記レーザの出力光パルスから1本の縦モード周波数を狭帯域光フィルタにより抽出し、該周波数が分子の共鳴周波数からずれた場合に発生する誤差信号をレーザの励起光源のパワーに負帰還することができる。
また、本発明は、パルスレーザ光源において、マイクロ波の位相制御回路として再生モード同期回路の一部を構成する光ファイバの長さを圧電素子で制御する機構を用いることができる。
また、本発明は、パルスレーザ光源において、マイクロ波の位相制御回路として電圧制御型マイクロ波移相器を用いることができる。
また、本発明は、パルスレーザ光源において、分子の共鳴線からの誤差信号をレーザ共振器の温度制御用信号として利用することにより、温度を超高精度に制御することができる。
本発明によって、その絶対周波数が安定化された高安定な縦モード周波数スペクトル(光コム)を一台の光源で容易に得ることができる。このように周波数が正確に制御された光コムは、周波数標準に利用できるだけでなく、高純度マイクロ波発生や光周波数の高精度位相制御、位相を用いた光通信用光源などにも応用することができる。
1.第1の実施の形態
図3は、第1の実施形態のパルスレーザ光源の概略構成を示すブロック図である。なお、図中実線は光信号、点線は電気信号をそれぞれ示す(以下同様)。
図3において、パルスレーザ光源は、モード同期レーザ光源1、光フィルタ2、周波数基準セル3、光位相変調器41、発振器42、光検出器43、位相比較器44、低域通過型フィルタ45、負帰還制御回路46、マイクロ波の位相制御回路5、クロック抽出回路51、PLL(Phase Locked Loop)回路6、モードホップ抑制回路7、モード同期レーザ光源1の励起光源8、光強度変調器又は光位相変調器9を備える。
モード同期レーザ光源1には、例えば、エルビウムなどの希土類添加ファイバを利得媒質としたファイバレーザを用いることが有効である。モード同期レーザ光源1は、再生モード同期回路内にマイクロ波の位相制御回路5を有し、これにより出力光パルスの繰り返し周波数をチューニングさせることができる。また、モード同期レーザ光源1は、出力が可変な励起光源8を有し、これにより、発振周波数をチューニングさせることができるレーザ光源である。
光フィルタ2は、モード同期レーザ光源1の出力光から透過特性で定められる縦モード一本を抽出するために用いられる。光フィルタ2は、例えば、ファイバブラッググレーティング等の狭帯域透過特性を有する光フィルタを用いることが特に有効である。
モード同期レーザ光源1は、例えば、GHz帯での高繰り返し動作が可能であり、周波数間隔が例えば、10〜40GHzと広いため、狭帯域光フィルタ2により縦モード1本を抽出でき、高安定な周波数標準光を容易に得ることができるという特徴を有する。
光位相変調器41は、発振器42で駆動され、光信号の位相を変調する。周波数基準セル3は、光周波数において経時変動のない安定な共鳴吸収線をもつ原子・分子を適当な圧力で容器に封入したもので、例えば光通信に用いられる波長1.5μm帯で安定な吸収線をもつアセチレン(C)あるいはシアン化水素(HCN)分子を用いることができる。光検出器43は、周波数基準セル3から出力される光信号を電気信号に変換する。位相比較器44は、光検出後の電気信号と発振器42からの参照信号とから、周波数基準セル3の吸収スペクトルの一次微分信号を出力し、負帰還用信号を発生する。低域通過型フィルタ45は、位相比較器44からの出力信号のうち負帰還制御に必要なDC成分付近の信号のみ抽出する。さらに、負帰還制御回路46は、位相比較器44からの出力信号により励起光源8を制御するために使用し、例えば比例積分制御回路が有効である。
再生モード同期回路は、図4に示すように、該回路を構成するファイバの一部を巻き付けたPZT(圧電素子)52、クロック抽出回路51、増幅器53、電圧制御型移相器54から成り、PZT52および電圧制御型移相器54によりその回路長が可変である特徴を有する。ここで、図3におけるマイクロ波の位相制御回路5として、PZT52又は電圧制御型移相器54を用いる。クロック抽出回路51は、モード同期レーザ光源1の出力パルス列から、繰り返し周波数に等しいクロック信号を出力する。ここでは、クロック信号は、一例として、時間的なオン・オフ波形ではなく、正弦波電気信号を指す。すなわちクロック抽出回路51によって、例えば、10GHzの繰り返しの光パルス列から、周波数が10GHzのマイクロ波信号を得ることができる。モード同期レーザ光源1内部では、図4に示すように、得られたクロック信号で光強度変調器又は光位相変調器9を直接駆動する。PLL回路6は、シンセサイザ61、位相比較器62、負帰還回路63を備える。シンセサイザ61は、セシウムやルビジウムなどの原子時計や水素メーザにロックしてさらに高安定化させておくことができる。
モードホップ抑制回路7は、図4に示すように、エタロン素子又は多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子71、該素子71の透過ピーク周波数を変化させるために該素子71に付与されたPZT711又はペルチェ素子712(温度制御回路)、該透過ピーク周波数とモード同期レーザ光源1の発振縦モードの周波数との差を検出するための位相敏感検波回路(光検出器72、位相比較器73、発振器74、低域通過型フィルタ75)、該位相敏感検波回路からの出力信号により該透過ピーク周波数を制御するための負帰還制御回路76、該負帰還制御回路76からの制御信号と発振器74の信号とを加算するための加算器77から構成される。エタロン素子としては、バルク型のエタロン結晶の両端に光ファイバを取り付けたものや、光ファイバの端面にミラーを蒸着した全ファイバ型構成のものが有効である。一方、多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子としては、短い周期および長い周期の2種類の屈折率周期を光ファイバに書き込んだSuperstructure Fiber Bragg Gratingが有効である。
図4は、モード同期レーザ光源1の構成の一例を示す図である。
このモード同期レーザ光源1は、ファイバレーザを用いたものであり、再生モード同期回路(クロック抽出回路51、PZT52、増幅器53、電圧制御型移相器54)、モードホップ抑制回路(エタロン素子又は多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子71、該素子71に付与されたPZT711又はペルチェ素子712、光検出器72、位相比較器73、発振器74、低域通過型フィルタ75、負帰還制御回路76、加算器77)、励起光源8、光強度変調器又は光位相変調器9、ペルチェ(温度制御回路)付ファイバ10、エルビウムファイバ11、WDMカプラ12、カップラ13〜15を備える。モード同期レーザ光源1は、再生モード同期により光パルスを発生している。発振縦モードの周波数間隔の負帰還制御には、再生モード同期回路におけるPZT52又は電圧制御型移相器54を用いる。発振縦モードのうち一本の発振周波数の負帰還制御には、励起光源部8、ペルチェ付ファイバ10を用いる。
次に、モード同期レーザ光源1の動作を説明する。
励起光源8で発生した励起光をWDMカップラ12を介してエルビウムファイバ11に入射するとエルビウムイオンが励起され、連続したレーザ光が発振する。このレーザ光は、カップラ13〜15により出力される。クロック抽出回路51は、出力光からクロック信号を出力する。この正弦波のクロック信号は、増幅器53で増幅された後、光強度変調器又は光位相変調器9に供給される。光強度変調器又は光位相変調器9は、クロック抽出回路51で抽出されたクロック信号で駆動され、その繰り返し周波数のパルスを発生させる役割を果たしている。従って、モード同期レーザ光源1は、正弦波のクロック信号に同期した周波数で、レーザ光が強度変調又は位相変調されている。
次に、本実施の形態によるモードホップ抑制の原理および周波数安定化の原理について説明する。
まず、モードホップの抑制原理について説明する。エタロン素子又は多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子71は、等周波数間隔に複数本の透過バンドを有する光フィルタである。ここで、各透過バンドの周波数間隔をモード同期レーザ光源1の発振縦モードの周波数間隔と一致させることにより、レーザ発振可能な縦モードは、該透過バンドのピーク周波数付近のものに制限される。レーザ共振器長を短くすることにより、共振縦モードの周波数間隔fFSRを広げ、また該透過バンドの3dB帯域fFilterを狭めることにより、該透過バンド内に存在する共振縦モードの本数が減り、その結果、該透過バンド内で一本の縦モードのみが発振可能なレーザ共振器を構成することができる。このような共振器において、該透過バンドのピーク周波数をレーザ発振周波数と常に一致するように負帰還制御すれば、モードホップを完全に抑制することができる。この負帰還制御には位相敏感検波法が有効である。
図6は、モードホップ抑制回路の一例として、エタロン素子71の透過ピーク周波数をPZT711により制御することにより、該透過ピーク周波数とレーザ発振周波数とのずれ量を、位相敏感検波により誤差信号として検出する方法を説明する図である。ペルチェ素子712を用いる場合、および多波長反射型ブラッググレーティング光フィルタ素子を用いる場合もその動作原理は同様である。
位相敏感検波は、主に、光検出器72、位相比較器73、発振器74、低域通過型フィルタ75により行われる。
図6のように、繰り返し周波数がfの発振器74の出力電圧信号を、エタロン素子71のピーク周波数を可変するPZT711に印加することにより、前記透過ピーク周波数がfの周波数で変調される。そのため、該エタロン素子71を通過する光の強度がfの繰り返し周波数で変調を受け、その結果、レーザ出力光にAM変調成分が付加される。このとき、該透過ピーク周波数がレーザ発振周波数と一致する場合には、該AM変調成分のうち周波数fの成分がゼロとなり、該透過ピーク周波数がレーザ発振周波数とずれた場合には、そのずれ量に比例した大きさで、その周波数ずれの方向に対応した符号のf成分がレーザ出力光に付与される。したがって、光検出器72、位相比較器73および低域通過型フィルタ74を用いて、レーザ出力強度に付加されたAM変調成分のうち発振器74の出力周波数fに同期した成分を抽出することにより、該透過ピーク周波数とレーザ発振周波数とのずれ量を検出することができる。このようにして検出した誤差信号を、加算器76を介して該PZT711の印加電圧に負帰還することにより、該透過ピーク周波数がレーザ発振周波数に一致するように変化する。以上の動作により、モードホップが完全に抑制される。
次に、レーザの発振周波数および発振縦モードの周波数間隔の安定化動作の原理について説明する。モード同期レーザ光源1は、光波およびマイクロ波に対する2つの共振器回路を有している。図7は、これら2つの共振回路を説明した図である。光共振回路は、光ファイバのみで構成され、その共振器長をl、光の位相速度をvとすると、その共振条件は次式で与えられる。
Figure 2008251723
ここで、fはレーザの発振周波数、mは整数である。一方、マイクロ波共振器回路は、前期光共振回路を構成する光ファイバの一部および再生モード同期回路で構成され、光ファイバで構成される部分の長さをlopt、マイクロ波ケーブルで構成される部分の長さをlmicrowaveとすると、その共振条件は次式で与えられる。
Figure 2008251723
ここで、frepはレーザ出力パルスの繰り返し周波数、vは光の群速度、vmirowaveはマイクロ波の位相速度、Nは整数である。ここで、(数1)式は、レーザ発振周波数fを決定する共振条件であり、(数2)式は、レーザ出力パルスの繰り返し周波数frepを決定する共振条件に対応している。
特許文献3で開示されている方法では、周波数安定化動作時にレーザ共振器を構成するファイバ長をPZTにより制御するため、そのとき(数1)式および(数2)式におけるlとloptとが同時に変化し、すなわち発振周波数fと繰り返し周波数frepとが同時に変化してしまう。このことは、発振周波数fと繰り返し周波数frepとを独立に制御することを困難なものにしている。
一方、繰り返し周波数frepの安定化において、図4におけるPZT52又は電圧制御型移相器54を用いて(数2)式のlopt又はlmicrowaveを負帰還制御すれば、(数1)式の共振条件に影響を及ぼすことなく、frepを独立に制御することができる。この負帰還制御の方法は、以下のとおりである。
クロック抽出回路51によって共振器内の光パルスからクロック信号を抽出し、PLL回路6に入力する。次に、PLL回路6において該クロック信号の周波数とシンセサイザ61の発振周波数との誤差信号を検出し、PZT52又は電圧制御型移相器54への印加電圧に負帰還し、クロック周波数が該シンセサイザ61の周波数に一致する方向に負帰還することにより、モード同期レーザ光源1の繰り返し周波数を変化させる。すなわち、繰り返し周波数frepを安定化させる。
また、繰り返し周波数frepの安定化と同時に、発振縦モードうち一本の発振周波数の安定化を行なう。その安定化の方法は、以下のとおりである。
光フィルタ2によってその透過特性で定められる一本の縦モードを抽出し、光位相変調器41を介して周波数基準セル3に入力する。次に、光検出器43、位相比較器44および低域通過型フィルタ45によって、該縦モードの周波数と分子の共鳴周波数との誤差信号を検出し、励起光源8の励起電流に負帰還し、発振周波数が分子の共鳴周波数に一致する方向に負帰還することにより、モード同期レーザ光源1の発振周波数を変化させる。すなわち、該縦モード一本の絶対周波数fを安定化させる。なお、ここで励起光源8のパワー変化により、ファイバレーザの増幅媒質であるエルビウムファイバ11中でのクラマース・クローニッヒの関係から媒質の屈折率が変化し、周波数が変化する原理を用いている。これにより、繰り返し周波数frepとは独立に発振周波数fを安定化させることができる。このように、適当な縦モードを光フィルタ2で抽出すれば、その周波数を吸収線の周波数に安定化することができる。光フィルタ2は、ある程度の波長可変性を有しているので、所望のモードを抽出することが可能である。
以上の結果、モード同期レーザ光源1の一本の縦モードの絶対周波数fが周波数基準セル3内の分子の共鳴周波数に一致し、かつ光パルスの繰り返し周波数frepがPLL回路6内の外部シンセサイザ61の発振周波数に一致した、高安定な縦モードスペクトル群を得ることができる。すなわち、モード同期レーザ光源1のスペクトルを構成する全ての縦モードの絶対周波数が同時に安定化される。
なお、本技術は、ファイバレーザの他にも、半導体を用いたモード同期レーザに、再生モード同期回路の回路長と励起パワーあるいは温度とを制御することにより、同様に適用できる(以下の実施の形態においても同様)。
2.第2の実施の形態
図5は、第2の実施の形態のパルスレーザ光源の概略構成の一例を示すブロック図である。
モード同期レーザ光源1における発振周波数変化の殆どは微小な温度変化によるため、誤差信号は温度変化を反映している。そこで、周波数基準セル3から誤差信号をレーザ共振器内のペルチェ付ファイバ9に負帰還する方法もある。励起光源8のみ用いた負帰還制御では、共振器内の温度変動が大きい場合、周波数安定化動作に伴いその励起パワーが大きく変化するため、その結果レーザ出力強度が大きく変動してしまう。そのため、この誤差信号を共振器温度に負帰還し、その誤差信号の一部を減衰器47を介して励起光源8に同時に負帰還することにより、出力強度変動の少ない発振周波数の安定化が実現できる。また、この共振器温度制御の応答速度は、数秒程度と低速である。そのため、共振器温度の制御時に(数2)式のloptも同時に変化してしまうが、その変化は低速であり、PZT52又は電圧制御型移相器54による比較的高速応答が可能な負帰還制御には影響が少ない。
本発明のパルスレーザ光源は、光通信波長帯における超高安定光パルス光源として、超高速光時分割多重伝送、波長分割多重伝送、光の位相を利用したコヒーレント伝送など光通信技術への幅広い用途が考えられる。また、これらのほかにも、本レーザ光源を光周波数標準や高純度マイクロ波発生に利用することが可能である。すなわち、縦モードの周波数間隔が正確に固定され、かつ全ての縦モードの発振周波数が常に一定であるスペクトル列を出力することから、光のものさしとして高精度な光周波数標準技術への応用が可能である。また、高調波再生モード同期パルスファイバレーザは、繰り返し周波数が数十GHz程度であり、マイクロ波からTHz波帯の周波数であることから、異なる二つの縦モードのビートを発生させることにより、高安定なマイクロ波を発生させることが可能となる。
モード同期レーザ光源の光スペクトルを模式的に示すグラフである。 モード同期レーザの出力パルスにおけるキャリヤ・エンベロープオフセット位相を説明する波形図である。 本発明の第1の実施の形態のパルスレーザ光源の概略構成を示すブロック図である。 図3に示すパルスレーザ光源のモード同期レーザ光源の構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態のパルスレーザ光源の概略構成を示すブロック図である。 図3に示すパルスレーザ光源のモードホップ抑制回路の動作原理を説明する原理図である。 図3に示すパルスレーザ光源のモード同期レーザ光源の2つの共振回路を示すブロック図である。
符号の説明
1 モード同期レーザ光源
2 光フィルタ
3 周波数基準セル
41 光位相変調器
42 発振器
43 光検出器
44 位相比較器
45 低域通過型フィルタ
46 負帰還制御回路
47 減衰器
5 マイクロ波の位相制御回路
51 クロック抽出回路
52 PZT
53 増幅器
54 電圧制御型移相器
6 PLL回路
61 シンセサイザ
62 位相比較器
63 負帰還制御回路
7 モードホップ抑制回路
71 エタロン素子又は多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子
711 PZT
712 ペルチェ素子
72 光検出器
73 位相比較器
74 発振器
75 低域通過型フィルタ
76 負帰還制御回路
77 加算器
8 励起光源
9 光強度変調器又は光位相変調器
10 ペルチェ付ファイバ
11 エルビウムファイバ
12 WDMカップラ
13 カップラ
14 カップラ
15 カップラ

Claims (9)

  1. 光パルスを発生させる再生モード同期レーザと、前記レーザの発振を安定化するための回路とを備え、前記回路が、前記レーザに対して、そのレーザの発振の縦モードスペクトルの間隔と該縦モードスペクトルのうちその一本の縦モードの発振周波数とをそれぞれ独立に安定化することによって、全ての発振縦モードを同時に絶対周波数安定化することを特徴とする二重周波数安定化モード同期パルスレーザ光源において、
    レーザ共振器内にモードホップを抑える回路並びに再生モード同期用PLL回路内にマイクロ波の位相制御回路を挿入することを特徴とするパルスレーザ光源。
  2. 請求項1に記載のパルスレーザ光源において、該レーザの共振器内に、エタロン素子と、該エタロン素子の透過ピーク周波数を該レーザの発振縦モード周波数にトラッキングするための位相敏感検波系を用いた制御回路から成るモードホップ抑制回路とを挿入することを特徴とするパルスレーザ光源。
  3. 請求項2に記載のモードホップ抑制回路において、前記位相敏感検波系で検出した誤差信号を前記エタロン素子の温度に負帰還することにより該エタロン素子の透過ピーク周波数を制御することを特徴とするパルスレーザ光源。
  4. 請求項2に記載のモードホップ抑制回路において、前記エタロン素子を構成するファブリー・ペロー共振器の長さを圧電素子で制御する機構を備え、前記位相敏感検波系で検出した誤差信号を該圧電素子への印加電圧に負帰還することにより前記エタロン素子の透過ピーク周波数を制御することを特徴とするパルスレーザ光源。
  5. 請求項2乃至4に記載の前記エタロン素子の代わりに、多波長反射型ファイバブラッググレーティング光フィルタ素子を用いることを特徴とするパルスレーザ光源。
  6. 請求項1に記載のパルスレーザ光源において、前記再生モード同期用PLL回路で検出した繰り返し周波数制御用信号を前記マイクロ波の位相制御回路に負帰還すると同時に、前記レーザの出力光パルスから1本の縦モード周波数を狭帯域光フィルタにより抽出し、該周波数が分子の共鳴周波数からずれた場合に発生する誤差信号を絶対周波数制御用信号として用いて前記レーザの励起光源のパワーに負帰還させることにより、全ての発振縦モードを同時に絶対周波数安定化することを特徴とするパルスレーザ光源。
  7. 請求項1に記載のマイクロ波の位相制御回路において、前記再生モード同期用PPL回路の一部を構成する光ファイバの長さを圧電素子で制御する機構を備え、前記再生モード同期用PLL回路で検出した繰り返し周波数制御用信号を該圧電素子への印加電圧に負帰還することにより、前記レーザの繰り返し周波数を安定化することを特徴とするパルスレーザ光源。
  8. 請求項1に記載のマイクロ波の位相制御回路において、前記再生モード同期用PPL回路に電圧制御型マイクロ波移相器を挿入し、前記再生モード同期用PLL回路で検出した繰り返し周波数制御用信号を該電圧制御型マイクロ波移相器の駆動電圧に負帰還することにより前記レーザの繰り返し周波数を安定化することを特徴とするパルスレーザ光源。
  9. 請求項6に記載のパルスレーザ光源において、前記絶対周波数制御用信号をレーザ共振器の温度制御用信号として利用することにより、温度を超高精度に制御することを特徴とするパルスレーザ光源。
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