JP2008250064A - トナー供給ロール及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナーへ与えるストレスが小さいトナー供給ロールを提供する。
【解決手段】軟質ポリウレタンフォーム層の表面を改質し、下記式(1)より算出される窒素原子存在率:α(%)が5<α<50とした。
Figure 2008250064

【選択図】なし

Description

本発明は、トナー供給ロール及びその製造方法に係り、特に、複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置において、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像坦持体上に形成した静電潜像を現像して、可視化するのに使用される現像装置に内蔵され、所定のトナー(現像剤)を供給して、静電潜像が形成されている感光体の如き像坦持体の表面において、目的とするトナー像を形成するために用いられるトナー供給ロールと、それを有利に製造し得る方法に関するものである。
従来から、複写装置や画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置においては、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像坦持体上に形成した静電潜像を、現像装置の現像ロールから供給されるトナー(現像剤)により現像して、トナー像として可視化することが行なわれている。ここで、そのような現像装置においては、ホッパー内に収容された所定のトナーを、現像ロールに供給し、更に像坦持体側に供給するための、軟質の弾性ロールからなるトナー供給ロールが内蔵せしめられているのであり、かかるトナー供給ロールとしては、耐久性、非汚染性及び柔軟性等の観点より、軟質ポリウレタンフォーム(スポンジ)からなる弾性ロールが、従来より広く用いられている。
ところで、トナー供給ロールには、その機能として、現像ロールに対してトナーを供給し(トナー供給性)、またその不要分を掻き取り(トナー掻き取り性)、現像ロール上に均一にトナーを供給することが本来的に求められているところ、近年、複写装置等の小型化や高画質化等の要望が高まるにつれ、より優れたトナー供給性とトナー掻き取り性を発揮し得るトナー供給ロールの開発が望まれている。
そのような状況の下、従来より、優れたトナー供給性とトナー掻き取り性を発揮し得るトナー供給ロールとして、様々なものが提案されている。例えば、特許文献1(特開2006−64773号公報)においては、各種高分子物質の発泡体を材質とする円筒状弾性体と、この円筒状弾性体の中心軸方向に延在する軸部材とからなり、ローラやベルト等の摺接対象物に回転自在に摺接させられるトナー供給ロールであって、前記円筒状弾性体の外周面に線状体を存在させることにより、その外周面にトナーの攪拌を許容する空間を形成するようにしたことを特徴とするトナー供給ローラ、及びその製造法が、提案されている。
しかしながら、かかる特許文献1にて提案されているトナー供給ローラにあっては、非常に複雑な工程を経て製造される得るものであった。即ち、特許文献1において開示されているように、円筒状弾性体の外周面に線状体を存在させるためには、軸部材の一方の突出軸部に、端部を固定した線状体を円筒状弾性体の外周面において軸方向に延在させた後、軸部材の他方の突出軸部に巻き掛け、次いで、線状体を、円筒状弾性体の周方向へ所要角度だけ変位させた後、再び外周面に折り返して軸方向に延在させ、一方の突出軸部に巻き掛ける手順を反復する必要があったのであり、必然的にその製造コストが高くなるという問題を内在していた。
また、軟質ポリウレタンフォーム層の表面に凹凸形状を設けるべく、軟質ポリウレタンフォーム層を発泡成形にて作製する場合に、成形キャビティの内面に凹凸形状を設けた成形型を用いる手法等も提案されているが、そこにおいて用いられる成形型は、その内面(キャビティ面)形状の複雑さ・緻密さに起因して、一般に高価なものであり、また、そのメンテナンスにも費用が嵩むことから、特許文献1において提案されているトナー供給ローラと同様に、製造コストが高くなるという問題を内在している。
一方、トナー供給ロールのトナー掻き取り性を向上させることを目的として、軟質ポリウレタンフォーム層の高硬度化を図ることも考えられるところ、そのような高硬度化が図られたロールとして、特許文献2(特許第3072799号公報)においては、芯金表面に、導電性ウレタン弾性体層が形成されている画像形成装置用表面改質ロールにおいて、該導電性ウレタン弾性体層の表面が、イソシアネート含有化合物を含む溶液に前記弾性体層を浸漬させ加熱することによって改質されたイソシアネート処理表層であることを特徴とする表面改質ロールが、提案されている。
しかしながら、特許文献2において開示されている表面改質ロールについて、本発明者等が詳細に検討したところ、そこにおいて開示の手法により得られる表面改質ロール、具体的には、導電性ウレタン弾性体層を表面処理液(イソシアネート含有化合物を含む溶液)内に所定時間、浸漬する手法等に従って得られる表面改質ロールにあっては、その表面の硬度が高くなり過ぎるため、それをトナー供給ロールとして用いると、トナーへ与えるストレス(トナーストレス)が増大し、トナー劣化等の不具合を引き起こす恐れがあることが、判明したのである。
特開2006−64773号公報 特許第3072799号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、トナーへ与えるストレスが小さく、且つトナー掻き取り性にも優れたトナー供給ロールを提供することにある。また、本発明は、そのような優れた特性を有するトナー供給ロールを、煩雑な工程を要することなく、容易に且つ有利に製造し得る方法を提供することをも、その課題とするところである。
そして、そのような課題を解決するために、本発明は、ロール軸となる長手棒状の芯金と、該芯金の周りに一体的に形成された軟質ポリウレタンフォーム層とを有し、且つ該軟質ポリウレタンフォーム層の表面がイソシアネート溶液によって改質されて、該軟質ポリウレタンフォーム層が、下記式(1)より算出される窒素原子存在率:α(%)が5<α<50である表層部を有していることを特徴とするトナー供給ロールを、その要旨とするものである。
Figure 2008250064
また、本発明は、そのようなトナー供給ロールを有利に製造し得る方法として、ロール軸となる長手棒状の芯金と、該芯金の周りに一体的に形成された軟質ポリウレタンフォーム層とを有するウレタンスポンジロールを準備する工程と、溶媒が乾燥していない状態のイソシアネート溶液の塗膜を準備する工程と、該ウレタンスポンジロールを、回転させながら、該塗膜上を移動せしめることにより、該ウレタンスポンジロールにおける該軟質ポリウレタンフォーム層の表面にイソシアネート溶液を付着させる工程と、表面に付着したイソシアネート溶液によって該軟質ポリウレタンフォーム層の表面を改質する工程とを、含むことを特徴とするトナー供給ロールの製造方法をも、その要旨とするものである。
このように、本発明に従うトナー供給ロールにあっては、その軟質ポリウレタンフォーム層が、イソシアネート溶液を用いた改質処理によって形成されたものであって、所定の計算式より算出される窒素原子存在率:α(%)が5<α<50を満たす表層部を有するものであるところから、軟質ポリウレタンフォーム層が本来的に有する特性(トナーストレスが小さいこと等)を維持しつつ、トナー掻き取り性能に優れたものとなっているのである。
また、かかるトナー供給ロールは、その表面(軟質ポリウレタンフォーム層の表面)におけるトナーの出入りがスムーズなものであるため、現像ロールへのトナー供給性に優れていると共に、現像ロールにおけるトナーフィルミングの発生も効果的に抑制し、更には、トナーの帯電性をも有利に向上せしめ得る。
一方、本発明に従うトナー供給ロールの製造方法に従えば、上述したような優れた特性を発揮するトナー供給ロールを、煩雑な工程を要することなく、容易に且つ有利に製造することが可能である。
ところで、本発明に従うトナー供給ロールは、上述したように、ロール軸となる長手棒状の芯金と、かかる芯金の周りに一体的に形成された軟質ポリウレタンフォーム層とを有し、且つ、軟質ポリウレタンフォーム層が、その表面に対するイソシアネート溶液による改質処理によって形成された、下記式(1)より算出される窒素原子存在率:α(%)が5<α<50である表層部を有するものである。このような所定の表層部を存在せしめることによって、本発明のトナー供給ロールは、トナーへ与えるストレスが小さく、且つトナー掻き取り性にも優れたものとなっているのである。
Figure 2008250064
ここで、上記式(1)より算出される窒素原子存在率:α(%)は、イソシアネート溶液による改質処理の程度を示す指標となるものであって、その数値が大きいほど、軟質ポリウレタンフォーム層表面から深い部位にまでイソシアネート溶液が浸漬し、イソシアネートによる改質が進行している(イソシアネートとポリウレタンとの反応によって高硬度化されている)ことを意味するものである。本発明においては、かかる窒素原子存在率:α(%)が5%以下では、トナー掻き取り性が十分ではなく、一方、50%以上では、トナー供給性に悪影響を与える恐れがあることから、窒素原子存在率:α(%)は、5<α<50、好ましくは7<α<30とされる。
なお、かかる窒素原子存在率:α(%)を算出する際に用いられる3つの測定値(上記式(1)中のA、B及びC)は、何れも、X線光電子分光法(ESCA)によって測定された窒素原子の存在割合(atom%)であり、Aにあってはイソシアネート溶液により改質された軟質ポリウレタンフォーム層の表面を、Bにあってはイソシアネート溶液により改質された軟質ポリウレタンフォーム層における表面から深さ:1.5mmの部位を、Cにあっては改質に用いられたイソシアネートを、それぞれ測定することによって得られる数値である。
そのような本発明に係るトナー供給ロールは、以下に詳述する方法に従って有利に製造され得るものである。そこにおいては、先ず、芯金の周りに軟質ポリウレタンフォーム層が一体的に形成されてなるウレタンスポンジロールが作製されることとなるが、かかるウレタンスポンジロールは、従来と同様に、軟質ポリウレタンフォーム層を与えるポリウレタン原料を発泡成形せしめることによって、有利に製造される。
ここで、ポリウレタン原料としては、従来と同様な液状のものであって、成形型内にて発泡硬化する、従来から公知の反応性原料(ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合物)の何れもが、特に限定されることなく、適宜に選択使用されることとなる。
例えば、そのような液状のポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられている、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等の公知のポリオール類の何れもが用いられ得る。また、ポリイソシアネート成分としては、公知の少なくとも2官能以上のポリイソシアネートの全てが用いられ得、例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びカーボジイミド変性MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は併用して使用され得る。
また、これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には、更に、従来と同様に、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物質、ガス体等)、界面活性剤、触媒等が、目標とするトナー供給ロールにおける軟質ポリウレタンフォーム層の構造を生ぜしめ易い公知の配合となるように、適宜に添加されて、反応性の発泡原料とされる。更に、そのような原料には、必要に応じて難燃剤や充填剤、トナー供給ロールに所望の導電性を付与するための導電性付与剤や、帯電防止剤等も、従来と同様に添加せしめられる。
このような液状のポリウレタン原料は、所定の成形型内にて発泡成形せしめられることとなるが、かかる発泡成形の際に用いられる成形型としては、パイプ形状を呈する型構造を有する成形型、所謂パイプ型が有利に用いられることとなる。なお、パイプ型とは、具体的に、トナー供給ロールの軟質ポリウレタンフォーム層の軸方向長さに略等しい長さのパイプと、かかるパイプの両端に取り付けられて、それぞれの端部を閉塞する2つのキャップとから構成されており、パイプ内に長手棒状の芯金をセットせしめた状態下において、パイプの両端を2つのキャップにて閉塞すると共に、それら2つのキャップにて芯金を支持せしめることによって、パイプ内に、目的とするトナー供給ロールの最終ロール形状(外径)を与える成形キャビティが形成されるようになっているものである。
そして、かかるパイプ型を用いる場合には、その両端のキャップにて芯金を支持せしめた状態において、上述した液状のポリウレタン原料が成形キャビティ内に注入されて、従来と同様にして、発泡成形せしめられることとなる。その際の発泡倍率は、一般に、5〜20倍程度とされる。
なお、このような軟質ポリウレタンフォーム層の発泡成形後に、公知のクラッシングを適宜実施しても良く、例えば、所定の圧力の圧縮空気等を吹き付ける方法が、有利に採用される。また、独立気泡型の軟質ポリウレタンフォーム層を成形する場合には、発泡方法として機械発泡が望ましいと共に、そのようなクラッシング時の空気圧を小さくすることが望まれる。
以上のようにしてウレタンスポンジロールが準備される一方で、軟質ポリウレタンフォーム層の表面を処理するためのイソシアネート溶液が調製される。
ここで、かかるイソシアネート溶液の溶質たるイソシアネートとしては、軟質ポリウレタンフォーム層と反応し得るイソシアネートであれば、特に限定されることなく使用可能であり、例えば、上述した、ポリウレタン原料に配合し得るポリイソシアネート等を挙げることが出来る。
また、イソシアネート溶液の溶媒としては、イソシアネートを溶解せしめ得るものであれば、何れも使用可能であり、従来より公知の各種溶媒の中から、用いるイソシアネートに応じたものが適宜に選択され、使用される。具体的には、n−ヘキサン等の直鎖飽和炭化水素系溶媒;トルエン、メチルエーテルケトン等の有機溶媒等を例示することが出来るが、それら溶媒の中でも、直鎖飽和炭化水素系溶媒等の軟質ポリウレタンフォーム層への膨潤性が低いものが、特に有利に用いられ得る。
さらに、イソシアネート溶液中のイソシアネート濃度が低過ぎると、最終的に得られるトナー供給ロールのトナー掻き取り性が不十分なものとなる恐れがあり、その一方、高過ぎると、軟質ポリウレタンフォーム層表面の改質が必要以上に進行し、その結果、トナー供給ロールのトナー供給性を悪化させる恐れがあるところから、5〜50重量%程度の濃度となるように、イソシアネート溶液は調製される。
次いで、そのようにして調製されたイソシアネート溶液を用いて、ウレタンスポンジロールにおける軟質ポリウレタンフォーム層表面の改質を実施するに当たり、溶媒が乾燥していない状態のイソシアネート溶液の塗膜が準備される。具体的には、平滑な台や板等の上にイソシアネート溶液を塗布することによって準備される。なお、かかる塗布によって得られる未乾燥の塗膜が薄過ぎると、軟質ポリウレタンフォーム層表面の十分な改質が図れない恐れがあり、その一方、厚過ぎると、フォーム層表面の改質が必要以上に進行する恐れがあるところから、通常、40〜200μm程度の厚さとなるようにイソシアネート溶液が塗布される。
さらに、かかる塗布の後、溶媒が乾燥する前のイソシアネート溶液の塗膜上において、先に準備したウレタンスポンジロールを回転させながら移動せしめる(転がす)ことによって、かかるウレタンスポンジロールの軟質ポリウレタンフォーム層の表面に、イソシアネート溶液を付着せしめる。この際、ウレタンスポンジロールの移動速度が遅すぎると、イソシアネート溶液が必要以上にフォーム層表面に付着し、フォーム層表面が改質されて、最終的に得られるトナー供給ロールのトナー掻き取り性能を悪化させる恐れがあり、一方、移動速度が速すぎると、フォーム層表面の十分な改質が図れない恐れがあるところから、通常、ウレタンスポンジロールの周速が50〜600mm/sec程度となるような移動速度にて、ウレタンスポンジロールは回転移動せしめられる。なお、このような移動速度でウレタンスポンジロールを移動せしめた場合、イソシアネート溶液は、通常、軟質ポリウレタンフォーム層の表面から深さ:100μm程度の部位にまでしか達しない。
そして、軟質ポリウレタンフォーム層の表面にイソシアネート溶液を付着せしめた後、ウレタンスポンジロールを乾燥し、軟質ポリウレタンフォーム層を構成するポリウレタンとイソシアネートとを反応せしめて、フォーム層表面を改質することによって、目的とする所定の表層部を有するトナー供給ロールが得られるのである。なお、ウレタンスポンジロールの乾燥に際しては、必要に応じて加熱処理を施すことも可能である。
このようにして得られたトナー供給ロールにあっては、その軟質ポリウレタンフォーム層が、イソシアネート溶液を用いた改質処理によって形成された、窒素原子存在率:α(%)が所定の範囲内にある表層部を有するものであるところから、トナー供給ロールに本来的に要求されるトナー供給性に優れ、またトナーへ与えるストレスも小さく、更にはトナー掻き取り性にも優れたものとなるのである。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、ポリエーテルポリオール(三井化学株式会社製、商品名:EP-828、OH価:28)の90重量部と、ポリマーポリオール(三井化学株式会社製、商品名:POP-31-28 、OH価:28)の10重量部と、ジエタノールアミンの2重量部と、シリコン整泡剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:L-5309)の3重量部と、水の2重量部と、第3級アミン触媒(花王株式会社製、商品名:カオライザーNo.31 )の0.5重量部と、第3級アミン触媒(東ソー株式会社製、商品名:トヨキャットHX-35 )の0.1重量部と、ジブチル錫ジラウレートの0.1重量部と、イソシアネート(住友バイエルウレタン株式会社製、商品名:スミジュールVT-80 、NCO(%):45(%))の30.5重量部とを配合して、軟質ポリウレタンフォーム層形成用のポリウレタン原料を調製した。
別途準備したパイプ型内に、直径:5mmのSUM22製丸棒を配置し、パイプ型の両端をキャップにて閉塞すると共に丸棒を支持し、その状態において、成形キャビティ内に調製したポリウレタン原料の所定量を注入し、60℃×30分間の条件にて発泡硬化させ、芯金(直径:5mm)の周りに軟質ポリウレタンフォーム層(厚さ:5.5mm)が一体的に形成されてなるウレタンスポンジロール(外径:16mm)を作製した。なお、成形キャビティ内へのポリウレタン原料の注入量を変えることによって、軟質ポリウレタンフォーム層の硬度が異なる2種類のウレタンスポンジロール(スポンジロールA、B)を、それぞれ複数本ずつ作製した。
一方、イソシアネート溶液として、下記表1及び表2に提示したイソシアネートを用い、且つそこに示した濃度のものを、それぞれ調製した。尚、かかる調製に際しては、溶媒として、ピュアMDIについてはメチルエーテルケトンを用い、それ以外のイソシアネートについてはn−ヘキサンを用いた。そして、調製したイソシアネート溶液の何れかを用いて、ウレタンスポンジロールにおける軟質ポリウレタンフォーム層に所定の表層部を形成せしめた。
具体的には、平滑な台上にイソシアネート溶液を塗布(厚さ:約150μm程度)して未乾燥の塗膜を形成せしめた後、直ちにその塗膜上において、スポンジロールAを周速:約300mm/secにて回転させながら移動せしめることにより、軟質ポリウレタンフォーム層の表面にイソシアネート溶液を付着させた。その後、ウレタンスポンジロールを23℃×50%RHの環境下に一晩、放置して、ポリウレタンとイソシアネートとを反応せしめると共に溶媒を除去することにより、目的とするトナー供給ロール(本発明例1〜6、比較例1〜2)を得た。なお、比較例3のトナー供給ロールは、TDI(液体)を用いた以外は同様の手法に従って作製されたものであり、また、比較例4のトナー供給ロールは、イソシアネート溶液による改質処理が為されていないスポンジロールAであり、比較例5のトナー供給ロールは、イソシアネート溶液による改質処理が為されていないスポンジロールBである。
そのようにして得られた各トナー供給ロールについて、以下の測定及び評価を行なった。
−窒素原子存在率:α(%)の算出−
イソシアネート溶液により改質された軟質ポリウレタンフォーム層の表面、イソシアネート溶液により改質された軟質ポリウレタンフォーム層における表面から深さ:1.5mmの部位、及び、イソシアネート溶液の溶質として用いたイソシアネートについて、X線光電子分光法に従って窒素原子の存在割合(窒素原子の存在割合A〜C[atom%])を測定した。具体的には、ESACシステム(アルバックファイ株式会社製、商品名:PHI5600システム )を用いて、Alモノクロメータ(14kV、150W)を使用してX線を対象物に照射し、電子中和銃により帯電補正を行ないながら、測定領域:φ800μm、光電子取り出し角:45deg、解像度:18.75passenergy、0.8eV/step、20time/stepの条件にて、測定を行なった。それにより得られた窒素原子の存在割合(A〜C)を下記式(1)に導入することにより、各トナー供給ロールの窒素原子存在率(%)を算出した。測定した窒素原子の存在割合A〜C、及び算出した窒素原子存在率を、下記表1及び表2に併せて示す。
Figure 2008250064
−初期複写画像の濃度評価−
各トナー供給ロールのトナー供給性を評価すべく、トナー供給ロールを市販されているプリンタの現像装置に組み込み、画像出しを行なった。得られた初期複写画像を目視で観察して、濃度ムラがなく画像が良好なものを「○」と、多少の濃度ムラはあるが軽微なものを「△」と、実用に供し難いレベルの画像ムラがあるものを「×」と、それぞれ評価した。その評価結果を、下記表1及び表2に併せて示す。
−初期・耐久後複写画像のゴースト評価−
各トナー供給ロールのトナー掻き取り性を、以下のようにして評価した。トナー供給ロールを市販されているプリンタの現像装置に組み込み、所定の画像出しを行ない、得られた初期複写画像を目視で観察した。ゴーストがなく画像が良好なものを「○」と、多少のゴーストはあるが軽微なものを「△」と、実用に供し難いレベルのゴーストが存在するものを「×」と、それぞれ評価した。その評価結果を、初期複写画像のゴースト評価として、下記表1及び表2に併せて示す。
一方、各トナー供給ロールを市販されているプリンタの現像装置に組み込み、トナー濃度が5%となる程度の文字列を10000枚、出力した。その後、更に所定の画像出しを行ない、得られた複写画像(耐久複写画像)を目視で観察した。ゴーストがなく画像が良好なものを「○」と、多少のゴーストはあるが軽微なものを「△」と、実用に供し難いレベルのゴーストが存在するものを「×」と、それぞれ評価した。その評価結果を、耐久複写画像のゴースト評価として、下記表1及び表2に併せて示す。
−耐久複写画像のトナーフィルミング評価−
各トナー供給ロールにおけるトナーへ与えるストレスの程度を、以下のようにして評価した。即ち、各トナー供給ロールを市販されているプリンタの現像装置に組み込み、トナー濃度が5%となる程度の文字列を10000枚、出力した。その後、更に所定の画像出しを行ない、得られた複写画像(耐久複写画像)を目視で観察した。トナーフィルミングによる色抜け等の画像不具合がなく、画像が良好なものを「○」と、多少の画像不具合は認められるものの軽微なものを「△」と、実用に供し難いレベルの画像不具合が存在するものを「×」と、それぞれ評価した。その評価結果を、下記表1及び表2に併せて示す。
−ロール硬度の測定−
図1に示される如く、トナー供給ロールを、芯金の両端部分において支持し、そしてその軟質ポリウレタンフォーム層を、50mm幅(厚さ:7mm)の板状押圧面を有する治具にて、10mm/minの速度で押圧した時の、1mm変位(圧縮)の荷重(g)を測定した。図1に示されているように、測定ポイントは、軸方向の2ヶ所×周方向の90°毎に4ヶ所の、計8ヶ所とし、その平均値をロール硬度(単位:gf)とした。なお、この数値が大きくなる程、軟質ポリウレタンフォーム層の硬さが高い、即ち硬いことを示している。その測定結果を、下記表1及び表2に併せて示す。
Figure 2008250064
Figure 2008250064
かかる表1及び表2の結果からも明らかなように、本発明に従うトナー供給ロール(本発明例1〜6)にあっては、トナー供給性に優れていると共に、トナー掻き取り性にも優れ、更にはトナーへ与えるストレスも小さいものであることが、認められたのである。
一方、イソシアネート溶液による改質処理が為されていないトナー供給ロール(比較例4)や、低濃度のイソシアネート溶液を用いて改質処理が為されたもの(比較例2)にあっては、トナー掻き取り性に劣ることが、また、イソシアネート単独で改質処理が為されたもの(比較例3)や高濃度のイソシアネート溶液にて改質処理が為されたもの(比較例1)にあっては、トナー供給性に劣ることが、それぞれ確認された。更に、軟質ポリウレタンフォーム層の硬度が高いトナー供給ロール(比較例5)にあっては、耐久後複写画像のゴースト評価が低いことから、トナーへ大きなストレスを与え得るものであることが確認されたのである。
実施例における、トナー供給ロールにおける軟質ポリウレタンフォーム層の硬度の測定手法を示す説明図であって、(a)は平面説明図であり、(b)は左側面説明図である。

Claims (2)

  1. ロール軸となる長手棒状の芯金と、該芯金の周りに一体的に形成された軟質ポリウレタンフォーム層とを有し、且つ該軟質ポリウレタンフォーム層の表面がイソシアネート溶液によって改質されて、該軟質ポリウレタンフォーム層が、下記式(1)より算出される窒素原子存在率:α(%)が5<α<50である表層部を有していることを特徴とするトナー供給ロール。
    Figure 2008250064
  2. ロール軸となる長手棒状の芯金と、該芯金の周りに一体的に形成された軟質ポリウレタンフォーム層とを有するウレタンスポンジロールを準備する工程と、
    溶媒が乾燥していない状態のイソシアネート溶液の塗膜を準備する工程と、
    該ウレタンスポンジロールを、回転させながら、該塗膜上を移動せしめることにより、該ウレタンスポンジロールにおける該軟質ポリウレタンフォーム層の表面にイソシアネート溶液を付着させる工程と、
    表面に付着したイソシアネート溶液によって該軟質ポリウレタンフォーム層の表面を改質する工程とを、
    含むことを特徴とするトナー供給ロールの製造方法。
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