JP2008249019A - 転がり軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】昇温に伴うハウジングと軸との寸法変化の差が大きくても予圧を維持することができる転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】転がり軸受11の外輪15の軸方向一方側の端面15bとこれに対向するハウジング13の内端面13aとの間に、外輪15と同軸にシム部材18が配設されている。シム部材18は、ハウジング13の内端面13aと接触し且つ軸5の第3の線膨張係数よりも大きい第4の線膨張係数を有する環状の第一シム部材19と、外輪15の軸方向一方側の端面15bと接触し且つ第4の線膨張係数よりも小さい第5の線膨張係数を有する環状の第二シム部材20とからなる。第一シム部材19及び第二シム部材20の少なくとも一方に傾斜面19b,20bが設けられ、第一シム部材19と第二シム部材20とが当該傾斜面19b,20bにおいてスライド移動可能に当接している。
【選択図】図1

Description

この発明は、円すいころ軸受、アンギュラ玉軸受等の予圧をかけて使用する転がり軸受を組み込んだ転がり軸受装置に関する。
自動車等の車両に使用されるギヤ式駆動伝達ユニット、例えばトランスミッションユニットでは、回転軸をハウジングの内周に2つの円すいころ軸受を介して支持している。
近年、軽量化のために鉄系金属に替えて軽合金(例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)で前記ハウジングを形成することが行われているが、回転軸は、強度や剛性の関係から鉄系金属で製作されるのが一般的である。
回転軸の支持に用いられる円すいころ軸受に予圧が付与されている場合、ハウジングと回転軸との線膨張係数の差が大きいため、運転中にトランスミッションユニットの温度が上昇すると、回転軸に比べてハウジングの寸法変化が大きくなることから、転がり軸受に付与された予圧が低下し、これにより予圧が抜けてしまうという問題が発生する。
このような予圧抜けを防止するため、回転軸を支持する鋼製軸受と軽合金製ケースとの間に形成される軸方向隙間に熱可塑性耐熱樹脂製のシムを介在させることが提案されている(特許文献1参照)。
特開平7−145814号公報
特許文献1の熱可塑性耐熱樹脂製のシムを用いれば、当該シムの熱膨張率は軽合金製ケースの熱膨張率よりも大きいため、ギヤボックスの昇温により生じる鋼製軸受と軽合金製ケースとの間の軸方向隙間(寸法変化の差)の増加を軽減して予圧抜けが生じるのを抑制することができる。しかし、より高温になり前記軸受と前記ケースとの寸法変化の差が大きくなった場合、前記シムでは軸方向への熱膨張しか利用できないとともに、スペース的に軸方向幅を大きくすることができないので、軸方向への熱膨張量が足りなくなり、十分な予圧を付与することができなくなるおそれがあった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、昇温に伴うハウジングと軸との寸法変化の差が大きくても予圧を維持することができる転がり軸受装置を提供することを目的としている。
本発明の転がり軸受装置は、転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備え、且つ、第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、前記外輪の外周面が嵌合する内周面を備え、且つ、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有するハウジングと、前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する軸と、前記外輪の軸方向一方側の端面とこれに対向する前記ハウジングの内端面との間に配設されるシム部材と、を備え、前記ハウジングに対して前記軸を相対回転可能に支持した転がり軸受装置であって、前記シム部材は、前記外輪の軸方向一方側の端面及び前記ハウジングの内端面のうちの一方と接触し且つ前記第3の線膨張係数よりも大きい第4の線膨張係数を有する環状の第一シム部材と、前記外輪の軸方向一方側の端面及び前記ハウジングの内端面のうちの他方と接触し且つ前記第4の線膨張係数よりも小さい第5の線膨張係数を有する環状の第二シム部材とからなり、前記第一シム部材及び前記第二シム部材の少なくとも一方に前記外輪の軸線に垂直な面に対して傾斜する傾斜面が設けられ、前記第一シム部材と前記第二シム部材とが当該傾斜面においてスライド移動可能に当接していることを特徴としている。
本発明の転がり軸受装置によれば、転がり軸受装置の昇温により第一シム部材が軸より大きく熱膨張するときに、軸方向への変位に加えて、径方向への熱膨張変化を利用することができる。すなわち、第一シム部材の熱膨張に伴って、その径方向に生じる力を傾斜面によって軸方向に変換し、第二シム部材を軸方向へスライド移動させることで、外輪をハウジングに対して軸方向他方側へ押圧移動させることができる。ここで、前記第一シム部材が環状のものであるので、その軸方向幅に比べて径方向長さ及び周方向長さを十分に大きくすることができる。このため、前記第一シム部材の径方向の熱膨張量を軸方向の熱膨張量よりも十分大きくすることができる。この結果、第二シム部材の軸方向へのスライド移動量を大きくすることができるので、昇温に伴うハウジングと軸との寸法変化の差が大きくても予圧を維持することができる。
また、本発明の転がり軸受装置は、転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備え、且つ、第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、前記外輪の外周面が嵌合する内周面を備え、且つ、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有するハウジングと、前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する軸と、前記内輪の軸方向他方側の端面とこれに対向する前記軸の段部との間に配設されるシム部材と、を備え、前記ハウジングに対して前記軸を相対回転可能に支持した転がり軸受装置であって、前記シム部材は、前記内輪の軸方向他方側の端面及び前記軸の段部のうちの一方と接触し且つ前記第3の線膨張係数よりも大きい第4の線膨張係数を有する環状の第一シム部材と、前記内輪の軸方向他方側の端面及び前記軸の段部のうちの他方と接触し且つ前記第4の線膨張係数よりも小さい第5の線膨張係数を有する環状の第二シム部材とからなり、前記第一シム部材及び前記第二シム部材の少なくとも一方に前記内輪の軸線に垂直な面に対して傾斜する傾斜面が設けられ、前記第一シム部材と前記第二シム部材とが当該傾斜面においてスライド移動可能に当接していることを特徴としている。
本発明の転がり軸受装置によれば、転がり軸受装置の昇温により第一シム部材が軸より大きく熱膨張するときに、軸方向への変位に加えて、径方向への熱膨張変化を利用することができる。すなわち、第一シム部材の熱膨張に伴って、その径方向に生じる力を傾斜面によって軸方向に変換し、第二シム部材を軸方向へスライド移動させることで、軸に対して内輪を軸方向一方側へ押圧移動させることができる。ここで、前記第一シム部材が環状のものであるので、その軸方向幅に比べて径方向長さ及び周方向長さを十分に大きくすることができる。このため、前記第一シム部材の径方向の熱膨張量を軸方向の熱膨張量よりも十分大きくすることができる。この結果、第二シム部材の軸方向へのスライド移動量を大きくすることができるので、昇温に伴うハウジングと軸との寸法変化の差が大きくても予圧を維持することができる。
上記転がり軸受装置において、前記第一シム部材及び前記第二シム部材の両方に前記傾斜面が設けられており、当該両方の傾斜面が面接触していることが好ましい。この場合、第一シム部材と第二シム部材とが面で摺動することができるため、各シム部材の耐久性を十分確保することができる。
本発明の転がり軸受装置によれば、昇温に伴うハウジングと軸との寸法変化の差が大きくても予圧を維持することができる。
以下、本発明の第1実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下においては、本発明の転がり軸受装置を自動車のトランスミッションに適用した場合を例示して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る転がり軸受装置を適用したトランスミッション1の横断面説明図である。トランスミッション1は、ケース2と、このケース2の内部に組み込まれたギヤボックス3と、このギヤボックス3を貫通するように互いに平行に設けられた回転体である入力軸4及び出力軸5とを備えている。入力軸4及び出力軸5は鉄系金属(鋼)製であり、この線膨張係数(第3の線膨張係数)は約12×10−6〜13×10−6/℃であり、ギヤボックス3内に設けられた変速ギヤ6により連動して回転するように構成されている。
変速ギヤ6は、マニュアルタイプであり、入力軸4に互いに歯数の異なる複数枚の入力ギヤ7を設けるとともに、出力軸5に互いに歯数の異なる出力ギヤ8を設け、得るべき変速比又は前進/後退の区別に応じて、入力軸4上の入力ギヤ7と出力軸5上の出力ギヤ8との噛み合いの組み合わせを切り替えることによって変速可能となっている。これら入力ギヤ7及び出力ギヤ8にはスパーギヤやヘリカルギヤが用いられる。なお、変速ギヤ6は、遊星ギヤ機構等を用いたオートマチックタイプであってもよい。
入力軸4の両端は、ケース2内の内側に固定された円筒ころ軸受9及び玉軸受10によりそれぞれ回転可能に支持されている。出力軸5の両端は、一対の転がり軸受である円すいころ軸受11,12によりそれぞれ支持されている。軸方向一方側(図1において左側)の円すいころ軸受11は、ケース2と一体のハウジングとしての軸受ハウジング13に嵌合されており、軸方向他方側(右側)の円すいころ軸受12は、ケース12と一体の軸受ハウジング14に当て止め固定されている。双方の円すいころ軸受11,12には、定位置予圧方式によって予圧が付与されている。なお、ケース2、軸受ハウジング13,14は、軽量化のためにアルミニウム合金にて形成され、この線膨張係数(第2の線膨張係数)は約23×10−6〜24×10−6/℃である。
図2は、図1に示されるトランスミッション1の要部の拡大断面説明図である。左側の円すいころ軸受11は、外輪15と、内輪16と、これら外輪15及び内輪16の間に転動自在に配設された複数の転動体としての円すいころ17とを備えている。外輪15の外周面は、軸受ハウジング13の内周面に嵌合され、外輪15の内周面には、円すいころ17が斜接して転動する内周軌道面15aが形成されている。一方、内輪16の外周面には、円すいころ17が斜接して転動する外周軌道面16aが形成され、当該内輪16の内周面には出力軸5が嵌合されている。ここで、外輪15と、内輪16及び円すいころ17は、いずれも鉄系金属(鋼)製であり、この線膨張係数(第1の線膨張係数)は約12×10−6〜13×10−6/℃である。内輪16と円すいころ17との接触角および円すいころ17と外輪15との接触角は、軸方向他方側(右側)から軸方向一方側(左側)に向けて拡径するように設定されている。なお、ここで接触角は、JISB0104−1991に規定された呼び接触角に準じる。
これらの構成は、右側の円すいころ軸受12(図1)についても、軸方向一方側が右側に、軸方向他方側が左側になる点以外は同様であるため、その説明を省略する。
外輪15の軸方向一方側(図2において左側)の端面15bと、この端面15bに対向する軸受ハウジング13の内端面13aとの間には、シム部材18が配置されている。このシム部材18は、環状の第一シム部材19と環状の第二シム部材20とからなり、それぞれ外輪15と同軸に配設されている。
第一シム部材19は、断面が直角三角形をしており、その径方向に延びる面19aが軸受ハウジング13の内端面13aと接触している。そして、外輪15の軸線に垂直な面に対して傾斜している傾斜面19bと軸方向に延びる面19cとを有している。また、第一シム部材19は環状のものであるので、軸方向よりも径方向の長さ及び周方向の長さが長くなっている。第一シム部材19は、出力軸5の線膨張係数(第3の線膨張係数)よりも大きい第4の線膨張係数を有している。本実施形態では、第一シム部材19は軸受ハウジング13と同じアルミニウム合金製であり、この線膨張係数(第4の線膨張係数)は約23×10−6〜24×10−6/℃である。
第二シム部材20は、断面が直角三角形をしており、その径方向に延びる面20aが外輪15の軸方向一方側の端面15bと接触し、外輪15の軸線に垂直な面に対して傾斜している傾斜面20bを有している。そして、軸受ハウジング13の内周面との間に隙間を有して軸方向に延びる面20cが設けられている。また、第二シム部材20も環状のものであるので、軸方向よりも径方向の長さ及び周方向の長さが長くなっている。第二シム部材20は、第一シム部材19の線膨張係数(第4の線膨張係数)よりも小さい第5の線膨張係数を有している。本実施形態では、第二シム部材20は出力軸5と同じ鉄系金属(鋼)製であり、この線膨張係数(第5の線膨張係数)は約12×10−6〜13×10−6/℃である。
第一シム部材19の傾斜面19bと、第二シム部材20の傾斜面20bとが面接触しており、その当接面全周は円すい面となっている。第一シム部材19と第二シム部材20とが面で摺動できるため、各シム部材19,20の耐久性を十分確保することができる。ここで、第一シム部材19の傾斜面19bと軸方向に延びる面19cとの傾斜角αは、45°〜60°に設定されている。傾斜角αが45°より小さくなると第一シム部材19の径方向の膨張力によって第一シム部材19の傾斜面19bと第二シム部材20の傾斜面20bとの接触面の面圧が大きくなってスライド効果が低減し、傾斜角αが60°よりも大きくなると軸方向へ変換されるベクトルが少なくなってスライド効果が低減するので、上記範囲とすることが好ましい。この傾斜角αを変えることにより所定の温度における適切な押圧量を調整することができる。
次に、第1実施形態に係るトランスミッション1の動作を説明する。
エンジンが始動して運転状態になると、ギヤシャフト間の噛み合い摩擦やギヤオイルの攪拌等によりトランスミッション1の温度は徐々に上昇する。すると、出力軸5の線膨張係数(第3の線熱膨張係数)と軸受ハウジング13の線膨張係数(第2の線熱膨張係数)の違いにより、出力軸5より軸受ハウジング13の方が大きく膨張するため、予め付与されていた予圧が減少して変化することになる。ところが、第一シム部材19は出力軸5の線熱膨張係数(第3の線熱膨張係数)より大きい線熱膨張係数(第4の線熱膨張係数)を有しているので、出力軸5より大きく熱膨張する。このとき、軸方向への熱膨張に加えて、径方向へも熱膨張するが、第一シム部材19は軸方向よりも径方向の長さが長いので、径方向の熱膨張量が軸方向の熱膨張量よりも十分大きくなる。そこで、この第一シム部材19の熱膨張に伴ってその径方向に生じる力を傾斜面19bによって軸方向他方側に変換し、この傾斜面19bと傾斜面20bで面接触している第二シム部材20を軸方向他方側へスライド移動させることができる。よって、第一シム部材19の軸方向他方側への変位に加え、第二シム部材20を軸方向他方側へ押圧移動させることにより外輪15を軸方向他方側(内輪側)に移動させることができる。
なお、上記第1実施形態においては、第一シム部材19の径方向に延びる面19aが軸受ハウジング13の内端面13aと接触するとともに、第二シム部材20の径方向に延びる面20aが外輪15の軸方向一方側の端面15bと接触する構成であったが、第一シム部材19の径方向に延びる面19aが外輪15の軸方向一方側の端面15bと接触するとともに、第二シム部材20の径方向に延びる面20aが軸受ハウジング13の内端面13aと接触する構成(図2において、シム部材18のみ軸方向に反転させ、シム部材18のみ軸方向一方側と軸方向他方側とを反転させた構成)であってもよい。この場合にも、シム部材18は上記第1実施形態と同様に第一シム部材19の径方向の膨張によって、外輪15を軸方向他方側(内輪側)に移動させることができることはもちろんである。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るトランスミッション1の要部の拡大断面説明図である。
本発明の第2実施形態に係るトランスミッション1においては、シム部材18が、内輪16の軸方向他方側(図3において右側)の端面16bと、この端面16bに対向する出力軸5の段部5aとの間に、内輪16と同軸に配設されている、
環状の第一シム部材19は、断面が直角三角形をしており、その径方向に延びる面19aが出力軸5の段部5aと接触している。また、内輪16の軸線に垂直な面に対して傾斜している傾斜面19bを有しており、出力軸5の外周面との間に隙間を有して軸方向に延びる面19cが設けられている。環状の第二シム部材20は、断面が直角三角形をしており、その径方向に延びる面20aが内輪16の軸方向他方側の端面16bと接触し、内輪16の軸線に垂直な面に対して傾斜している傾斜面20bと軸方向に延びる面20cが設けられている。第一シム部材19の傾斜面19bは第二シム部材20の傾斜面20bと当接しており、第一シム部材19の傾斜面19bと軸方向に延びる面19cとの傾斜角αは45°〜60°に設定されている。これ以外は、上述した第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
次に、第2実施形態に係るトランスミッション1の動作を説明する。
エンジンが始動して運転状態になると、ギヤシャフト間の噛み合い摩擦やギヤオイルの攪拌等によりトランスミッション1の温度は徐々に上昇する。すると、出力軸5の線膨張係数(第3の線熱膨張係数)と軸受ハウジング13の線膨張係数(第2の線熱膨張係数)の違いにより、出力軸5より軸受ハウジング13の方が大きく膨張するため、予め付与されていた予圧が減少して変化することになる。ところが、第一シム部材19は出力軸5の線熱膨張係数(第3の線熱膨張係数)より大きい線熱膨張係数(第4の線熱膨張係数)を有しているので、出力軸5より大きく熱膨張する。このとき、軸方向への熱膨張に加えて、径方向へも熱膨張するが、第一シム部材19は軸方向よりも径方向の長さが長いので、径方向の熱膨張量が軸方向の熱膨張量よりも十分大きくなる。そこで、この第一シム部材19の熱膨張に伴ってその径方向に生じる力を傾斜面19bによって軸方向一方側に変換し、この傾斜面19bと傾斜面20bで面接触している第二シム部材20を軸方向一方側へスライド移動させることができる。よって、第一シム部材19の軸方向一方側への変位に加え、第二シム部材20を軸方向一方側へ押圧移動させることにより内輪16を軸方向一方側(外輪側)に移動させることができる。
なお、上記第2実施形態においては、第一シム部材19の径方向に延びる面19aが出力軸5の段部5aと接触するとともに、第二シム部材20の径方向に延びる面20aが内輪16の軸方向他方側の端面16bと接触する構成であったが、第一シム部材19の径方向に延びる面19aが内輪16の軸方向他方側の端面16bと接触するとともに、第二シム部材20の径方向に延びる面20aが出力軸5の段部5aと接触する構成(図3において、シム部材18のみ軸方向に反転させ、シム部材18のみ軸方向一方側と軸方向他方側とを反転させた構成)であってもよい。この場合にも、シム部材18は上記第2実施形態と同様に第一シム部材19の径方向の膨張によって、内輪16を軸方向一方側(外輪側)に移動させることができることはもちろんである。
このように、本発明の転がり軸受装置であるトランスミッション1によれば、トランスミッション1の昇温により第一シム部材19が軸である出力軸5より大きく熱膨張するときに、軸方向への変位に加えて、径方向への熱膨張変化を利用することができる。すなわち、すなわち、第一シム部材19の熱膨張に伴って、その径方向に生じる力を傾斜面19bによって軸方向に変換し、第二シム部材20を軸方向へスライド移動させることで、外輪15を軸方向他方側へ又は内輪16を軸方向一方側へそれぞれ押圧移動させることができる。ここで、前記第一シム部材19が環状のものであるので、その軸方向幅に比べて径方向及び周方向長さを十分に大きくすることができる。このため、前記第一シム部材19の径方向の熱膨張量を軸方向の熱膨張量よりも十分大きくすることができる。この結果、第二シム部材20の軸方向へのスライド移動量を大きくすることができるので、昇温に伴うハウジング(軸受ハウジング)13と軸(出力軸)5との寸法変化の差が大きくても予圧を維持することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜変更することが可能である。上記第1実施形態においては、第一シム部材19及び第二シム部材20の両方に傾斜面19b,20bを形成し、両傾斜面19b,20bを面接触させているが、傾斜面は第一シム部材19及び第二シム部材20の少なくとも一方に形成すればよく、例えば、図4(a)のように、第一シム部材19を、傾斜面19bを有する断面直角三角形に形成し、第二シム部材20を断面矩形に形成してその曲面に面取りされた角部20dを傾斜面19bに当接させてもよいし、図4(b)のように、第二シム部材20を、傾斜面20bを有する断面直角三角形に形成し、第一シム部材19を断面矩形に形成してその曲面に面取りされた角部19dを傾斜面20bに当接させてもよい。また、これらの当接面全周は円すい面以外の他の曲面であってもかまわない。
このような第一シム部材19及び第二シム部材20の変形は、上記第2実施形態において同様に行うことが可能である。また、上記第2実施形態においては、第一シム部材19を出力軸5の段部5aに接触させているが、出力軸5にバックアップ部材を固定し、そのバックアップ部材に接触させてもよい。
上記実施形態では、トランスミッションに用いられる転がり軸受装置を示しているが、四輪駆動車の駆動分配軸用のギヤユニット等、他の装置にも適用することができる。転がり軸受としては、円すいころ軸受に限らずアンギュラ玉軸受、深溝玉軸受等の予圧を使用する他の転がり軸受を使用してもよい。また、ハウジング(軸受ハウジング)13をアルミニウム合金で形成しているが、その線膨張係数(第2の線膨張係数)が軸(出力軸)5の線膨張係数(第3の線膨張係数)よりも大きければよいのであって、他の軽合金、例えばマグネシウム合金で形成することが可能である。さらに、上記実施形態では、第一シム部材19を軸受ハウジング13と同じアルミニウム合金で形成し、第二シム部材20を軸である出力軸5と同じ鉄系金属で形成しているが、第一シム部材19の線膨張係数(第4の線膨張係数)が軸(出力軸)5の線膨張係数(第3の線膨張係数)よりも大きく、第二シム部材20の線膨張係数(第5の線膨張係数)が第一シム部材19の線膨張係数(第4の線膨張係数)よりも小さければよいのであって、第一シム部材19とハウジング(軸受ハウジング)13とが、そして第二シム部材20と軸(出力軸)5とが必ず同じ金属で形成されていなければならないというわけではない。例えば、第二シム部材20を樹脂によって形成することもできる。
本発明の第1実施形態に係る転がり軸受装置であるトランスミッションの横断面説明図である。 図1に示されるトランスミッションの要部の拡大断面説明図である。 本発明の第2実施形態に係るトランスミッションの要部の拡大断面説明図である。 (a)及び(b)は、第一シム部材と第二シム部材の形状の変形例を示す模式説明図である。
符号の説明
1 トランスミッション(転がり軸受装置)
5 出力軸(軸)
11 円すいころ軸受(転がり軸受)
13 軸受ハウジング(ハウジング)
15 外輪
16 内輪
18 シム部材
19 第一シム部材
20 第二シム部材

Claims (3)

  1. 転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備え、且つ、第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、
    前記外輪の外周面が嵌合する内周面を備え、且つ、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有するハウジングと、
    前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する軸と、
    前記外輪の軸方向一方側の端面とこれに対向する前記ハウジングの内端面との間に配設されるシム部材と、を備え、前記ハウジングに対して前記軸を相対回転可能に支持した転がり軸受装置であって、
    前記シム部材は、前記外輪の軸方向一方側の端面及び前記ハウジングの内端面のうちの一方と接触し且つ前記第3の線膨張係数よりも大きい第4の線膨張係数を有する環状の第一シム部材と、前記外輪の軸方向一方側の端面及び前記ハウジングの内端面のうちの他方と接触し且つ前記第4の線膨張係数よりも小さい第5の線膨張係数を有する環状の第二シム部材とからなり、前記第一シム部材及び前記第二シム部材の少なくとも一方に前記外輪の軸線に垂直な面に対して傾斜する傾斜面が設けられ、前記第一シム部材と前記第二シム部材とが当該傾斜面においてスライド移動可能に当接していることを特徴とする転がり軸受装置。
  2. 転動体と、この転動体が転動する軌道面を外周に備えた内輪と、前記転動体が転動するとともに前記転動体からの径方向荷重と軸方向一方側へ向く荷重とを受ける軌道面を内周に備え、且つ、第1の線膨張係数を有する外輪と、を備えた転がり軸受と、
    前記外輪の外周面が嵌合する内周面を備え、且つ、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有するハウジングと、
    前記内輪の内周面に嵌合し、且つ、前記第2の線膨張係数よりも小さい第3の線膨張係数を有する軸と、
    前記内輪の軸方向他方側の端面とこれに対向する前記軸の段部との間に配設されるシム部材と、を備え、前記ハウジングに対して前記軸を相対回転可能に支持した転がり軸受装置であって、
    前記シム部材は、前記内輪の軸方向他方側の端面及び前記軸の段部のうちの一方と接触し且つ前記第3の線膨張係数よりも大きい第4の線膨張係数を有する環状の第一シム部材と、前記内輪の軸方向他方側の端面及び前記軸の段部のうちの他方と接触し且つ前記第4の線膨張係数よりも小さい第5の線膨張係数を有する環状の第二シム部材とからなり、前記第一シム部材及び前記第二シム部材の少なくとも一方に前記内輪の軸線に垂直な面に対して傾斜する傾斜面が設けられ、前記第一シム部材と前記第二シム部材とが当該傾斜面においてスライド移動可能に当接していることを特徴とする転がり軸受装置。
  3. 前記第一シム部材及び前記第二シム部材の両方に前記傾斜面が設けられており、当該両方の傾斜面が面接触している請求項1又は2に記載の転がり軸受装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017009052A (ja) * 2015-06-23 2017-01-12 日本精工株式会社 ボールねじの予圧回復装置
JP2017009053A (ja) * 2015-06-23 2017-01-12 日本精工株式会社 ボールねじの予圧回復装置

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