JP2008247492A - エレベータの診断運転装置及び診断運転方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】診断運転を実施する直前に環境温度や地震発生前の走行状況等に応じた参照パターンを設定することにより、診断運転時における異常の検出精度を大幅に向上させることができるようにする。
【解決手段】地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって機器の異常の有無を判断する診断運転を実施する。なお、地震発生前に、上記機器に対応する参照パターンを、参照パターン記憶部3に予め記憶する。また、地震発生後の所定期間に、上記機器に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部3に記憶された時からの変動量を測定する。そして、地震発生前に参照パターン記憶部3に記憶された参照パターン、及び、地震発生後の所定期間に得られた上記変動量に基づいて、診断運転の開始前に、機器に対応する参照パターンを再設定する。
【選択図】図6

Description

この発明は、地震時管制運転を実施した後、エレベータの運転を再開させるために診断運転を実施するエレベータの診断運転装置、及び、エレベータの診断運転方法に関するものである。
地震感知器を備えたエレベータでは、地震の揺れを感知すると、その地震の規模(建築物の加速度の大きさ等)に応じて、最寄り階停止といった乗客を救出するための地震時管制運転が実施される。なお、地震の規模によっては、エレベータの昇降路内で、かごや釣合い重りがガイドレールから外れたり、ガイドレールの継目に歪みが生じたり、或いは、ロープ類やケーブル類が昇降路内の突起物に引っ掛かったりするといった何らかの異常が発生することがある。このため、従来では、地震の揺れによってエレベータに何らかの異常が発生している恐れがある場合、即ち、所定規模以上の地震が検出された場合には、上記構成のエレベータは、最寄り階停止後に運転休止状態にされ、エレベータの専門技術者(エレベータ保守員等)による点検作業が実施されるまで、上記運転休止状態が継続されていた。
このようなエレベータでは、地震により運転休止状態に陥ると、通常の運転が再開されるまでにかなりの時間を要し、サービスを大幅に低下させてしまう。そこで、最近では、上記問題を解決するため、また、地震発生後のエレベータ保守員の負担を軽減させるため、地震時管制運転後に、保守員の点検作業を必要としない診断運転を所定の条件下で実施し、かかる診断運転で異常が発見されない場合に、自動で復旧させるエレベータも実現されている。
上記診断運転では、例えば、地震時管制運転の終了後に余震対策のために数分程度更にその乗場でかごを待機させた後、先ず、地震感知器をリセットする。そして、通常の運転時よりも遅い速度(以下、「低速」という)でかごを走行させながら所定の機器類の動作判定を行い、異常を検出する。例えば、かごを低速走行させながらエレベータ巻上機のトルク電流を測定するとともに、トルク電流の測定値を所定の参照パターンと比較し、その比較結果に基づいて異常の有無を判断している。
なお、上記巻上機等には、エレベータ毎にそれぞれ個体差がある。このため、同じ動作条件であっても、巻上機のトルク電流等には、エレベータ毎に多少のばらつきが生じてしまう。かかる理由から、従来では、異常と判定するための参照パターンの幅を大きめに設定することにより、より多くのエレベータ(巻上機)に同一の参照パターンを適用させていた。
また、診断運転に関する従来技術として、地震発生後に運転休止状態のエレベータに対して監視センタから診断運転を開始させる指令を送信するようにしたものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。この診断運転では、かごを低速走行させながら音響を測定するとともに、音響の測定値を所定の3段階の参照レベルと比較し、その比較結果に基づいて異常の有無及び異常の状態を判断していた。
特開平6−247657号公報
従来のように、診断運転時に異常と判定するための参照パターンの幅が大きめに設定された場合、異常を検出する精度が悪化し、異常を検出できたとしてもその検知が遅れてエレベータの損傷が大きくなるといった問題があった。
また、診断運転時における異常の検出精度を向上させるため、機器毎に参照パターンを設定したり、定期的に参照パターンを学習させたりする方法も考えられている。しかし、ギアード式(例えば、ウォームギア)の巻上機等では、環境温度や地震発生前の走行状況等によってもトルク電流等に変動が生じてしまい、例えば、気温、エレベータ稼働率が共に低い夜間に診断運転を行う場合と、気温、稼働率の共に高い昼間に診断運転を行う場合では、そのトルク電流に大きな差が生じてしまう。このため、機器毎に参照パターンを設定したり、定期的に参照パターンを学習させたりしたとしても、参照パターンの幅を大きめに設定することが必要となり、診断運転時における異常の検出精度を向上させることは非常に困難なものになっていた。
なお、特許文献1記載の診断運転は、単に音響の測定値を所定の3段階の参照レベルと比較して異常の有無を判断するものであり、かかる記載から、上記問題を解決するための具体的な手段を導くことはできなかった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、診断運転を実施する直前に環境温度や地震発生前の走行状況等に応じた参照パターンを設定することにより、診断運転時における異常の検出精度を大幅に向上させることができるエレベータの診断運転装置及び診断運転方法を提供することである。
この発明に係るエレベータの診断運転装置は、地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転装置であって、地震発生前に、機器に対応する参照パターンが予め記憶された参照パターン記憶部と、地震発生後の所定期間に、機器に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を測定する参照パターン変動量測定部と、地震発生前に参照パターン記憶部に記憶された参照パターン、及び、地震発生後の所定期間に得られた変動量に基づいて、診断運転の開始前に、機器に対応する参照パターンを再設定する参照パターン再設定部と、を備えたものである。
また、この発明に係るエレベータの診断運転装置は、地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転装置であって、地震発生前に、機器に対応する参照パターンが予め記憶された参照パターン記憶部と、地震発生後の所定期間に、機器に対応する参照パターンの一部を測定することにより、機器に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を演算する参照パターン変動量測定部と、地震発生後の所定期間に得られた変動量に基づいて、地震発生前に参照パターン記憶部に記憶された参照パターンの全体を平行移動させることにより、診断運転の開始前に、機器に対応する参照パターンを再設定する参照パターン再設定部と、を備えたものである。
この発明に係るエレベータの診断運転方法は、地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転方法であって、地震発生前に、機器に対応する参照パターンを、参照パターン記憶部に予め記憶するステップと、地震発生後の所定期間に、機器に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を測定するステップと、地震発生前に参照パターン記憶部に記憶された参照パターン、及び、地震発生後の所定期間に得られた変動量に基づいて、診断運転の開始前に、機器に対応する参照パターンを再設定するステップと、を備えたものである。
また、この発明に係るエレベータの診断運転方法は、地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転方法であって、地震発生前に、機器に対応する参照パターンを、参照パターン記憶部に予め記憶するステップと、地震発生後の所定期間に、機器に対応する参照パターンの一部を測定することにより、機器に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を演算するステップと、地震発生後の所定期間に得られた変動量に基づいて、地震発生前に参照パターン記憶部に記憶された参照パターンの全体を平行移動させることにより、診断運転の開始前に、機器に対応する参照パターンを再設定するステップと、を備えたものである。
この発明によれば、診断運転を実施する直前に環境温度や地震発生前の走行状況等に応じた参照パターンを設定することにより、診断運転時における異常の検出精度を大幅に向上させることができるようになる。
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの診断運転装置を示す構成図である。なお、このエレベータには地震感知器が備えられており、所定規模の地震が感知されると、かご内の乗客をかご外に脱出させる地震時管制運転を行う機能を有している。また、感知された地震が所定の規模以上である場合には、地震時管制運転を実施した後、所定の条件下で診断運転を行い、かかる診断運転で異常が検出されなかった場合に、自動で復旧させる機能を有している。
上記診断運転では、例えば、地震感知器をリセットした後、かごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって上記機器の異常の有無を判断する。以下においては、診断運転の一例として、地震感知器のリセット後、かごを低速走行させながらエレベータ巻上機のトルク電流の測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較して、その差が所定の閾値を超えた場合に異常有りを検出するものについて説明する。
図1において、1はエレベータの全体制御を司る制御装置内のCPU、2は制御装置内の記憶装置である。記憶装置2には、上記参照パターンが記憶された参照パターン記憶部3と、上記閾値が記憶された閾値記憶部4とが備えられている。なお、参照パターンは、上述の通り、診断運転時に巻上機のトルク電流の正常及び異常を判断するためのものである。
上記参照パターン記憶部3には、地震発生前から、巻上機のトルク電流に対応する参照パターンが予め記憶されている(以下、地震発生前から参照パターン記憶部3に記憶されている参照パターンのことを「基準参照パターン」ともいう)。この基準参照パターン自体は、地震発生後の診断運転において、巻上機のトルク電流の測定値に対する比較対象とはならない。即ち、地震発生後、診断運転開始前の所定期間に、上記基準参照パターンに基づいて、巻上機のトルク電流に対応する参照パターンが新たに設定(再設定)される。そして、この再設定後の参照パターンに基づいて、診断運転が行われる。つまり、参照パターン記憶部3の参照パターンは、診断運転を開始する直前に、周囲の環境温度や地震発生前のエレベータの走行状況等に応じた最適なものに更新される。
上記基準参照パターンは、エレベータの据付時に学習運転を行うことによって得ることができる。学習運転では、例えば、実際に診断運転を行う区間(診断区間)を実際に診断運転を行う速度(診断速度)でかごを走行ながら巻上機のトルク電流を測定し、その測定値(トルク電流データ)を参照パターン記憶部3に記憶させる。また、基準参照パターンは、上記学習運転を実施しない場合であっても、例えば、所定の計算式によって導き出される計算値であっても良い。
一方、巻上機のトルク電流は、経年変化等によって据付後に変動することが知られている。例えば、据付後にガイドレールとガイドシューとの潤滑状態が徐々に向上することにより、走行時の摩擦抵抗が減少することによってトルク電流は減少する。また、季節の温度差によって上記潤滑状態は変化するため、夏季と冬季とでは走行時の摩擦抵抗が変化し、トルク電流が変動する。
このような理由から、参照パターン記憶部3に記憶させた基準参照パターンをエレベータの据付後から定期的に更新し、参照パターン記憶部3に記憶させておく基準参照パターンを、できるだけ現状のエレベータの状態に近づけておくことも有効である。なお、基準参照パターンの更新は、なるべく短いスパンで実施することが望ましいが、エレベータの運行状況も考慮し、実際には、夜間等の利用客が少ない時間帯に行われる。
制御装置のCPU1には、参照パターン変動量測定部5、参照パターン再設定部6、異常信号検出部7が備えられている。参照パターン変動量測定部5は、地震発生後診断運転開始前の所定期間に、巻上機のトルク電流に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部3に記憶された時からの変動量を測定する。即ち、地震発生前に参照パターン記憶部3に記憶された基準参照パターンと、地震発生後の上記所定期間に測定されるべき参照パターンとの変動量を測定する。
参照パターン再設定部6は、地震発生前に参照パターン記憶部3に記憶された基準参照パターンと、地震発生後の上記所定期間に得られた参照パターンの上記変動量とに基づいて、診断運転の開始前に、巻上機のトルク電流に対応する参照パターンを、周囲の環境温度や地震発生前のエレベータの走行状況等に応じた最適な状態(最新の状態)に再設定する。異常信号検出部7は、地震発生後に実施される診断運転において巻上機の異常を検出するためのものであり、例えば、かごの低速走行時における巻上機のトルク電流の測定値と、参照パターン再設定部6によって再設定された参照パターンとの差が、閾値記憶部4に記憶された閾値を超えた場合に、異常有りを検出する。なお、地震時管制運転を制御する制御部や診断運転を制御する制御部等は省略されている。
次に、エレベータ巻上機のトルク電流と参照パターンとの関係について具体的に説明する。図2はエレベータ巻上機のトルク電流波形を示す図、図3はエレベータ巻上機のトルク電流波形の変動例を示す図、図4は力行運転時のウォームギア効率を示す図、図5は回生運転時のウォームギア効率を示す図である。
図2はエレベータのかごを最下階から最上階まで一定速度で走行させた際の巻上機のトルク電流とかご位置との関係を示している。なお、上記最下階から最上階までを通常の診断区間としている。かごが一定速度で走行する際の巻上機のトルク電流は、主索に作用するかご側重量と釣合い重り側重量とのアンバランス分を打ち消すために必要なトルクに相当する。なお、このトルクは、主索に作用するかご側重量と釣合い重り側重量との変動にも影響を受けるし、ガイドレールの曲がり等による走行抵抗の変動にも影響を受ける。例えば、ガイドレールの据付精度が悪く、走行抵抗が一定ではない場合には、図2に示すように、トルク電流は診断区間において波打った波形となる。
図2では、実トルク電流(トルク電流の実際の値)と、学習運転で一定間隔毎にトルク電流を記憶することによって得られた参照パターンとを示している。トルク電流を記憶する間隔を短くすれば(メモリ点を増やせば)、参照パターンは実トルク電流に近づく。即ち、診断運転を実施した際の異常検出の精度は向上する。なお、図2に示すように、参照パターンを記録した直後であれば実トルク電流と参照パターンとの違いは殆ど生じない。したがって、参照パターンを定期更新するようにした場合には、更新直後の実トルク電流と参照パターンとには違いが殆どない。
一方、図3はかごを一定速度で上記通常診断区間を走行させた際の巻上機のトルク電流とかご位置との関係を示したものであり、環境温度の変化やエレベータの運行状況等によって実トルク電流が変動した場合を示したものである。即ち、図3は、巻上機の実トルク電流が、周囲の環境温度の変化やエレベータの運行状況の変化が生じることによって、実線で示すものから破線で示すものに変動したことを表している。なお、巻上機の実トルク電流の短期的な変動は、一般に波形自体が変化するのではなく、図3に示すように、単に波形の平行移動として現れる。これは、上記変動の主な原因が巻上機のギアの効率に起因するためである。
図4及び図5は、一般的なウォームギアの効率ηと摩擦係数μとの関係を示している。図4及び図5において、摩擦係数μはギアに使用されている潤滑油の粘性に影響を受ける。一般に、潤滑油の温度が上昇すれば摩擦係数μは減少し、潤滑油の温度が下降すれば摩擦係数μは増加する。図4に示す力行運転では、環境温度の上昇や運転回数の増加によって潤滑油の温度が上昇し、摩擦係数μが減少すると、ギアの効率ηは上昇する。なお、上記力行運転とは、巻上機のトルクの出力の方向と主索の巻き掛けられた駆動綱車が実際に回転する方向とが同じ場合を言う。例えば、かごに乗客がいない場合には、エレベータを下降させる運転が力行運転に相当する。そして、上記ギアの効率ηの変動が、図3に示すトルク電流の平行移動として現れる。
一方、図5に示す回生運転では、環境温度の上昇や運転回数の増加によって潤滑油の温度が上昇し、摩擦係数μが減少すると、ギアの効率ηは下降する。なお、上記回生運転とは、巻上機のトルクの出力の方向と駆動綱車が実際に回転する方向とが異なる場合を言う。例えば、かごに乗客がいない場合には、エレベータを上昇させる運転が回生運転に相当する。
図4及び図5からも分かるように、摩擦係数μの変動に対する効率ηの変動は、力行の場合と回生の場合とで異なっている。即ち、巻上機の実トルク電流は、環境温度や走行状況等に加え、運転方向によっても図3に示す変動の方向や幅が異なってくる。したがって、参照パターン変化量測定部5と参照パターン再設定部6とでは、これらのことを考慮して、診断運転の直前に参照パターンを再設定する必要がある。
次に、上記参照パターン変動量測定部5と参照パターン再設定部6の詳細な機能及び動作を、図6のフローチャートとともに説明する。なお、図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの診断運転装置の動作を示すフローチャートである。
図6において、上述の通り、参照パターン記憶部3には、予め参照パターンの基準となるもの(基準参照パターン)が記憶されている(S1)。かかる状態で所定規模の地震が発生すると(S2)、地震感知器によって地震が感知され、かご内の乗客を救出する地震時管制運転が実施される(S3)。地震時管制運転が終了すると、次に、参照パターン変動量測定部5による上記変動量の測定(S4)と、参照パターン再設定部6による参照パターンの再設定(S5)とが実施される。
具体的に、参照パターン変化量測定部5は、図3に示す巻上機のトルク電流波形の平行移動量を測定する。なお、巻上機のトルク電流波形は、環境温度の変化等によって単に平行移動するだけであるので、波形の少なくとも一点(参照パターンの一部)を測定して、そのかご位置における変動量を得ることができれば、変動後の波形全体(参照パターンの全体)を導くことが可能となる。
例えば、図4に示すように、地震時管制運転実施後の一定速区間を、上記変動量を得るための変動量測定区間と、診断運転を実施する診断区間とに分割し、変動量測定区間を診断区間の直前の極短い時間に設定する。そして、変動量測定区間の所定位置(かご位置)において、実トルク電流Trを測定し、参照パターン記憶部3に記憶されていた基準参照パターンのその位置(かご位置)のトルク電流Tmと比較して、変動量ΔTq=Tm−Trを演算する。
次に、参照パターン再設定部6は、参照パターン記憶部3に記憶されていた基準参照パターンの全体を上記変動量ΔTq分だけ平行移動させることによって得られた新たな参照パターンを、参照パターン記憶部3に記憶させる。そして、直後に開始される診断運転では、参照パターン記憶部3に新たに記憶された参照パターンに基づいて、巻上機のトルク電流の正常及び異常を判定する(S6、S7)。
なお、上記診断運転で異常が検出された場合には、かごを緊急停止させて、エレベータ保守員の点検作業が実施されるまで、運転を休止状態とする(S8)。また、診断運転で異常が検出されない場合には、自動でエレベータを復旧させ、通常運転を再開させる(S9)。
この発明の実施の形態1によれば、地震発生後診断運転を実施する直前に、環境温度や地震発生前の走行状況等に応じた参照パターンが再設定されるため、診断運転時における異常の検出精度を大幅に向上させることが可能となる。
なお、地震発生後に参照パターンを再設定するための期間、即ち、図3における変動量測定区間の長さは、トルク電流Trの測定、変動量ΔTの演算、基準参照パターンの平行移動に要する非常に短い時間が確保できれば良い。このため、変動量測定区間の後に設定される診断区間は、図2における通常の診断区間と実質的に変わりはなく、通常の診断区間とほぼ同じ領域の診断を実施することが可能となる。また、上記においては、実トルク電流の測定をTrの1点のみ実施する場合について説明したが、複数の点(かご位置)で測定を行い、これらの平均値を用いて変動量ΔTqを導いても良い。
また、実施の形態1では、上記変動量の測定等を容易にするため、診断運転を開始する直前の一定速区間で上記変動量を得る場合について説明したが、時間的に余裕のあるかごの加速中や、地震発生後の地震時管制運転時に上記トルク電流Trの測定を行っても良い。更に、常にエレベータの運転毎にある点のトルク電流を測定し、変動量をモニタするようにしても良い。また、上記変動はギアード式の巻上機が採用されている場合に顕著に現れるため、巻上機に使用されている潤滑油の温度を地震発生後に測定し、制御装置内で油温の測定値から効率を演算して上記変動量を求めるようにしても良い。なお、かかる場合には、地震発生後の所定期間に巻上機に使用される潤滑油の温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段によって測定された潤滑油の温度に基づいて、上記変動量を求める演算手段とを備える必要がある。
また、上述したように、上記変動量はエレベータの運転方向や運転速度によっても変化するため、診断運転と変動量測定時とで運転方向や運転速度が異なる場合には、それらの関係を予め制御装置内に記憶させておき、正確な変動量を演算するようにしても良い。
この発明の実施の形態1におけるエレベータの診断運転装置を示す構成図である。 エレベータ巻上機のトルク電流波形を示す図である。 エレベータ巻上機のトルク電流波形の変動例を示す図である。 力行運転時のウォームギア効率を示す図である。 回生運転時のウォームギア効率を示す図である。 この発明の実施の形態1におけるエレベータの診断運転装置の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
1 CPU
2 記憶装置
3 参照パターン記憶部
4 閾値記憶部
5 参照パターン変動量測定部
6 参照パターン再設定部
7 異常信号検出部

Claims (9)

  1. 地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって前記機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転装置であって、
    地震発生前に、前記機器に対応する参照パターンが予め記憶された参照パターン記憶部と、
    地震発生後の所定期間に、前記機器に対応する参照パターンの、前記参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を測定する参照パターン変動量測定部と、
    地震発生前に前記参照パターン記憶部に記憶された参照パターン、及び、地震発生後の前記所定期間に得られた前記変動量に基づいて、診断運転の開始前に、前記機器に対応する参照パターンを再設定する参照パターン再設定部と、
    を備えたことを特徴とするエレベータの診断運転装置。
  2. 地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって前記機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転装置であって、
    地震発生前に、前記機器に対応する参照パターンが予め記憶された参照パターン記憶部と、
    地震発生後の所定期間に、前記機器に対応する参照パターンの一部を測定することにより、前記機器に対応する参照パターンの、前記参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を演算する参照パターン変動量測定部と、
    地震発生後の前記所定期間に得られた前記変動量に基づいて、地震発生前に前記参照パターン記憶部に記憶された参照パターンの全体を平行移動させることにより、診断運転の開始前に、前記機器に対応する参照パターンを再設定する参照パターン再設定部と、
    を備えたことを特徴とするエレベータの診断運転装置。
  3. 診断運転において、かごを走行させながら巻上機のトルク電流を測定し、その測定値と参照パターンとを比較することによって、前記巻上機の異常の有無を判断するエレベータの診断運転装置であって、
    参照パターン変動量測定部は、地震発生後の所定期間に、前記かごの走行時における前記巻上機のトルク電流を測定することにより、前記巻上機のトルク電流に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を演算する
    ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの診断運転装置。
  4. 診断運転において、かごを走行させながらギアード式の巻上機のトルク電流を測定し、その測定値と参照パターンとを比較することによって、前記巻上機の異常の有無を判断するエレベータの診断運転装置であって、
    参照パターン変動量測定部は、
    地震発生後の所定期間に、前記巻上機で使用される潤滑油の温度を測定する温度測定手段と、
    前記温度測定手段によって測定された潤滑油の温度に基づいて、前記巻上機のトルク電流に対応する参照パターンの、参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を演算する演算手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの診断運転装置。
  5. 地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって前記機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転方法であって、
    地震発生前に、前記機器に対応する参照パターンを、参照パターン記憶部に予め記憶するステップと、
    地震発生後の所定期間に、前記機器に対応する参照パターンの、前記参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を測定するステップと、
    地震発生前に前記参照パターン記憶部に記憶された参照パターン、及び、地震発生後の前記所定期間に得られた前記変動量に基づいて、診断運転の開始前に、前記機器に対応する参照パターンを再設定するステップと、
    を備えたことを特徴とするエレベータの診断運転方法。
  6. 地震時管制運転を実施した後、エレベータのかごを走行させながら所定のエレベータ機器に対する測定を行い、その測定値と参照パターンとを比較することによって前記機器の異常の有無を判断する診断運転を行うエレベータの診断運転方法であって、
    地震発生前に、前記機器に対応する参照パターンを、参照パターン記憶部に予め記憶するステップと、
    地震発生後の所定期間に、前記機器に対応する参照パターンの一部を測定することにより、前記機器に対応する参照パターンの、前記参照パターン記憶部に記憶された時からの変動量を演算するステップと、
    地震発生後の前記所定期間に得られた前記変動量に基づいて、地震発生前に前記参照パターン記憶部に記憶された参照パターンの全体を平行移動させることにより、診断運転の開始前に、前記機器に対応する参照パターンを再設定するステップと、
    を備えたことを特徴とするエレベータの診断運転方法。
  7. 参照パターンの変動量を得る地震発生後の所定期間は、地震時管制運転中の所定期間であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のエレベータの診断運転方法。
  8. 参照パターンの変動量を得る地震発生後の所定期間は、地震時管制運転の実施後、診断運転の開始前の所定期間であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のエレベータの診断運転方法。
  9. 参照パターンの変動量を得る地震発生後の所定期間は、診断運転を開始する直前の一定速区間であることを特徴とする請求項8に記載のエレベータの診断運転方法。
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