JP2008245583A - 哺乳動物の神経細胞の精製培養方法とその保存方法 - Google Patents

哺乳動物の神経細胞の精製培養方法とその保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明は、哺乳動物から採取した細胞集団から機能的な神経細胞のみを、しかも物理的な精製などにより神経細胞に傷害を与えることなく、精製培養する技術を提供することをその目的とする。
【解決手段】
上記課題の解決のため、本発明は、神経細胞と非神経細胞が混在する細胞集団の培養において、神経成長因子及び抗がん剤の一種であるシトシンアラビノサイド(Cytosine arabinoside=AraC)を添加することによって、効率よく神経細胞を精製培養する方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、哺乳動物における中枢系神経細胞の純化・精製方法に関し、より詳しくは、非神経細胞と中枢系神経細胞が混在した細胞集団の培養において、特定の成分を含む培地による培養を行うことにより、中枢系神経細胞を効率よく精製することを可能とする培養方法とその保存方法に関する。
バイオテクノロジーの発展により、近年、傷害を受けた器官・組織の治療に際し生体外で培養した細胞を用いた「再生医療」の取り組みが試みられており、皮膚や血液など良好な結果を得られるものも増加の傾向にある。しかしながら、神経、特に中枢神経の再生は難度が高く、幾つかの例が提示されているものの(特許文献1−7)、例えば脊髄損傷による機能不全に対しうる中枢神経再生技術は未だ実用化には結びついていない。
この様な現状の下、ラットを用いた脊髄損傷モデルを用いた解析から、鼻粘膜の固有層に存在し、嗅神経を鼻粘膜から嗅球まで取り囲んでいるグリア細胞である嗅覚鞘性細胞(Olfactory ensheathing cells=OECs)を移植することにより、脊髄損傷によって全く動かなかった肢にわずかながら機能改善が見られたとの報告(非特許文献1,2)があり、中枢神経の再生に期待されている。
しかしながら、OECsを用いた運動機能の改善については、その機構の解明には至っていないのが現状である。特に、前記の例においては、鼻粘膜固有層から採取される細胞がOECsと非神経細胞(特に線維芽細胞)が混在する細胞集団であり、例えば特許文献8に記載された嗅神経鞘細胞の単離方法においても、初期培養においては線維芽細胞や内皮細胞が迅速に成長する旨記載されており、OECsの純化のために抗体と磁気ビーズを用いた物理的な精製方法を採る必要があった。物理的な精製には神経細胞を損傷するリスクや工程が複雑化するという問題点があり、また線維芽細胞は移植後において腫瘍化のリスクがあるが、培養過程における線維芽細胞の増殖の問題も未解決のままであった。
したがって、神経細胞と非神経細胞、特に線維芽細胞とが混在する細胞集団から、神経細胞を傷つけることなく、分離・精製及び培養可能な技術の開発が望まれていた。
特開2006−006249号公報 羊膜由来細胞の培養方法及びその利用 特表2005−521427号公報 神経細胞再生の刺激 特開2004−166893号公報 中枢神経組織の再生方法 特表2005−504716号公報 神経再生を促進し神経変性を防止するための修飾CNS由来ペプチドを含む医薬組成物 特表2004−528042号公報 T細胞誘導性組織修復および再生 特開2002−281962号公報 脊髄におけるシナプス形成ニューロンを誘導する中枢神経系前駆細胞 特公平07−017513号公報 哺乳動物中枢神経系の再生誘発方法および組成物 特表2003−533172号公報 固有層から単離した嗅神経鞘細胞 Feron F.et al.(2005) Brain 128:2951−2960. Collazos−Castro JE.et al.(2005) J.Neurosurgery−Spine 3(4):308−317.
上記課題の解決のため、本発明は、哺乳動物から採取した細胞集団から機能的な神経細胞のみを、しかも物理的な精製などにより神経細胞に傷害を与えることなく、精製培養する技術とその神経細胞を保存する技術を提供することをその目的とする。
上記課題の解決のため、本発明者は、中枢神経再生のために有効な効果を生じさせる嗅覚鞘性細胞を用い、その精製培養法を見出すため、培地に含まれる種々の成分について検討を行った。この中で本発明者は神経細胞と非神経細胞が混在する細胞集団の培養において、神経成長因子の添加によって神経細胞の増殖を促しつつ、かつここに抗がん剤の一種であるシトシンアラビノサイド(Cytosine arabinoside=AraC)を添加することによって、細胞集団に含まれる非神経細胞の増殖を効果的に抑制できることを見出し、抗体処理など物理的精製を行うことなく90%という極めて高い神経細胞の存在比率を実現して、本発明を完成させた。
すなわち、請求項1記載の発明では、脳由来神経栄養因子と、シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体を含む培地を用いることを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の精製培養方法を提供するものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法において、前記培地が無血清培地であるものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法において、シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体の濃度が5−25μMの範囲内の濃度であるものである。
請求項4に記載の発明は、脳由来神経栄養因子と、シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体を含む培地を用いることを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の保存方法を提供するものである。
請求項5に記載の発明は、下記工程を有することを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の精製培養方法を提供するものである。
(1)脳由来神経栄養因子及びシトシンアラビノサイドを含む培地を用い、生体由来の神経細胞と非神経細胞が混在した細胞集団を培養する工程
(2)工程(1)で培養した前記細胞集団を、脳由来神経栄養因子を含みかつシトシンアラビノサイドを含まない無血清培地で培養する工程
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法において、工程(1)及び(2)における前記脳由来神経栄養因子の濃度が、10−100ng/mlの範囲内の濃度であるものである。
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法において、工程(1)におけるシトシンアラビノサイドの濃度が、5−25μMの範囲内の濃度であるものである。
請求項8に記載の発明は、請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法において、前記細胞集団が鼻粘膜固有層に由来する細胞であって、神経細胞が嗅覚鞘性細胞であるものである。
本発明を実施することにより、哺乳動物の生体から採取された神経細胞を含む細胞集団から、神経再生、特に傷害を受けた中枢神経の再生に寄与する細胞を高純化することが可能となる。この純化された細胞は、線維芽細胞の比率が小さいため、移植後の腫瘍化リスクが低くなる。しがたって、本発明の神経細胞の精製培養方法は、他の神経系疾患、例えば脳機能傷害などの治療に用いるための神経細胞の培養にも適用可能である。
また、本発明によって、哺乳動物の神経細胞を適切に保存することができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態を述べる。本発明の第1の実施の形態は、脳由来神経栄養因子(Brain−derived neurotrophic factor=BDNF)及び、シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体を含む培地を用いることを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の精製培養方法を提供する。BDNFは神経成長因子の一種として知られる物質であり、OECsの培養にも用いうる因子ではあるが、本実施の形態はここに、抗がん剤という細胞培養には一見不向きな要素を新たに加えることによって、生体から採取した細胞集団から腫瘍化リスクのある線維芽細胞を効果的に排除し、神経細胞の精製培養を実現させるものである。
これは、本発明者が発見した、AraCが線維芽細胞の増殖には強い抑制的な作用を持つ一方、神経細胞に対してはほとんど抑制効果を持たず、神経栄養因子の効果も妨げないという新たな知見に基づくものである。
本発明の第2の実施の形態における神経細胞の精製培養においては、有効成分であるBDNF及びAraC以外の成分については特に制限は無く、通常哺乳動物の細胞を培養する際に用いられる培地を適宜用いれば良いが、その中でも下記実施例に示す様に無血清培地を用いた培養で良好な結果が得られており、本発明の実施においては好適である。
本発明の第3の実施の形態における神経細胞の精製培養において、線維芽細胞等の非神経細胞の抑制のために添加されるAraCまたはその薬理学上許容可能な誘導体については、その細胞の状態や起源、種類、構成比率などに応じて適宜変化させれば良く、本発明を限定するものではないが、例えば5−25μMの範囲内の濃度、より好適には10−20μMの範囲内の濃度が適している。AraCは抗がん剤であり、一般に細胞にとっては強い作用を示すことが多いため、あまり高濃度で添加すると神経細胞にとっても抑制作用を示す可能性があり、実施例で線維芽細胞の増殖抑制効果とOECsの非抑制効果が実証された10−20μMの範囲の濃度で用いるのが良い。
本発明の第4の実施の形態の提供する神経細胞の精製培養方法は、単に神経細胞を増殖させるという意味での培養のみならず、神経細胞を比較的長期間保存する保存培養にも適用可能である。OECsは培養が難しいとされる神経細胞の一種であるため、通常用いられる培養方法では2−3日で死滅してしまい、生体から細胞を単離してから間隔をおいて使用することは困難であったが、本発明の提供するBDNFとAraCを組み合わせた培地で培養することにより、1週間以上生存可能であることを本発明者は確認しており、これはOECsの利用に更なる幅を与えるものである。すなわち、本実施の形態に係る哺乳動物の神経細胞の精製培養方法は、哺乳動物の神経細胞の保存方法として用いることができる。
本発明の第5の実施の形態における神経細胞の精製培養方法は、より好ましくは神経細胞を次の2段階の工程、すなわち、
(1)脳由来神経栄養因子及びシトシンアラビノサイドを含む培地を用い、生体由来の神経細胞と非神経細胞が混在した細胞集団を培養する工程及び、
(2)工程(1)で培養した細胞を、脳由来神経栄養因子を含みかつシトシンアラビノサイドを含まない無血清培地で培養するのが適している。
下記実施例に示す通り、AraCの非神経細胞に対する抑制効果については、神経細胞/非神経細胞を含んだ細胞集団をAraCを含まない培地で培養し、2日後にAraCを添加するというプロトコルでは既に、培養開始時点からAraCを添加したプロトコルで見られる効果が現れず、培養初期に添加するのが適している。こうして非神経細胞を排除した後、BDNFを含みかつAraCを含まない培地で培養することによって、健康な状態の神経細胞(AraCによりある程度は神経細胞もダメージを受けると考えられる)を精製培養することが可能となる。
工程(1)と工程(2)の切り替えのタイミングとしては、例えば細胞比率に着目して全体の細胞中で神経細胞の比率が60%を超えた時点など、培養状態を観察しつつ適宜選択すれば良く、本発明を限定するものではないが、1つの目安として培養開始から2−5日、好ましくは4日間、工程(1)による培養を行い、ここで得られた細胞をBDNFを含んだ培地で1−3日間、好ましくは2日間、工程(2)による培養を行うというプロトコルが考えられる。
上記工程(1)及び(2)におけるBDNFは、神経細胞を増殖させるに足る分量が添加されていれば良く、その濃度などは培養する神経細胞種によって適宜選択すれば良いが、例えば嗅覚鞘性細胞の培養においては、10−100ng/mlの範囲内の濃度、より好ましくは50ng/ml前後の濃度で添加すれば、良い結果が得られる。またAraCについても、上記態様(1)において添加する場合には、第3の実施の形態で述べた通り、例えば5−25μMの範囲内の濃度、より好適には10−20μMの範囲内の濃度が適している。
本発明の第8の実施の形態は、生体から採取された神経細胞と非神経細胞が混在する細胞集団から、神経細胞を特異的に精製培養する方法を提供するものであり、神経細胞の種類、非神経細胞の種類、採取される組織などについては特に限定されるものではないが、好適な例としては細胞集団が鼻粘膜固有層に由来する細胞であって、神経細胞が嗅覚鞘性細胞という組み合わせが挙げられる。以下に本発明に係る実施例を示すが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
(イヌ)神経細胞採集用として、2匹のビーグル雄成犬と4匹の雌成犬を供した。それぞれの個体に0.02mg/kgのMedetomidine(商品名Domitor;Orion,FIN)及び0.3mg/kgのMitazoram(商品名Dormicum;Roche,CH)を筋肉注射し麻酔した。麻酔はイソフルランで維持した。鼻粘膜組織はバイオプシー鉗子を用いた手術により生体から直接採取し、採取後の組織は10%のウシ胎児血清(FCS)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS)を加えた氷冷Dulbecco’s Modified Eagle Medium/HAM F12培地(DMEM/HAM12,Gibco,JPN)に移し、その後2.4Units/ml DispaseII溶液(Roche)中で37℃、45分間処理した。酵素処理後、顕微鏡下で26G針を用い、組織からOECsを切り出して小片にした。小片にしたOECsを、8mg/mlのコラゲナーゼH(Sigma,USA)を含む溶液中で37℃、10分間処理し、その後DMEM/HAM12培養液を加えて酵素反応を止めた。処理後の組織片を、10%FCSと1%PSを含むDMEM/HAM12培養液に再懸濁し、ポリ−L−リジンでコートした35mm×10mm培養皿(BD Falcon,JPN)に蒔いた。
(AraC添加によるOECsの純化)OECsの純化培養に対するシトシンアラビノサイド(AraC)の効果を検証するため、採取した上記のOECsを次の4グループに分割した。シトシンアラビノサイドは抗がん剤の一種であり、神経細胞以外の増殖能の高い細胞、特にここでは線維芽細胞の増殖を抑制する目的で添加した。
1.対照群:1%PSを含むDMEM/HAM12培養液中で6日間培養
2.培養開始から2日間、対照群と同じ培地で培養。2日後から6日後までAraC添加培地による培養。6日後から8日後まで、対照群と同じ培地で培養。AraC濃度は10μMと20μMの2種類。
3.培養開始から4日間、AraC添加培地による培養。4日後から6日後まで、対照群と同じ培地で培養。AraC濃度は10μMと20μMの2種類。
4.培養開始から2日間、AraC添加培地による培養。2日後から4日後まで、対照群と同じ培地で培養。AraC濃度は10μMと20μMの2種類。
これらの培養の結果を、図1に示す。グラフ(A),(B),(C)はそれぞれの培養後における細胞数(縦軸;単位はCells)を、(D),(E),(F)は各細胞の比率(縦軸;単位は%)を表したものであり、グラフ横軸の10はAraC10μM添加の結果、20はAraC20μM添加の結果、Cは対照(AraC無添加)の結果をそれぞれ表す。エラーバー標準誤差を示す。さらに(A),(D)は上記グループ2,(B),(E)は上記グループ3,(C),(F)は上記グループ4の結果を示している。
グループ2の処理では、OECsの細胞数(A)は100細胞前後と、AraC無添加と添加であまり差が見られず、一方線維芽細胞の細胞数はAraC無添加では900細胞近い値であったのに対してAraC添加によって400細胞以下にまで減少し、効果が見られた。その細胞比率に着目すると(D)、対照群ではOECsの比率が無添加で10%以下であったのに対して、AraC添加によって25−35%にまで上昇し、AraC添加によりある程度の効果が確認された。
グループ3の処理では、OECsの細胞数(B)は300細胞以上に増加しており、反対に線維芽細胞は200細胞以下と顕著な抑制効果が見られた。その細胞比率に着目すると(E)、AraCの添加によりOECsの細胞比率が70−80%にまで上昇しており、この投与スケジュールの有効性を示すとともに、同じ4日間の処理でも培養開始からAraCを投与することが望ましいという事が示された。
グループ4の処理でも、OECsの細胞数(C)は300細胞以上に増加していたが線維芽細胞もグループ3に比べればその数が多く、細胞比率(F)もOECが60−70%であり、AraCの投与は4日間の方が2日間よりも良いという事が示された。
(AraCとBDNF添加によるOECsの純化)OECsの純化培養に対する添加薬剤の効果を検証するため、採取した上記のOECsを4つのグループに分割した。シトシンアラビノサイド(AraC)処理は神経細胞以外の細胞の増殖を抑制する目的で、脳由来神経栄養因子(BDNF)処理は神経細胞であるOECsの増殖を促す目的でそれぞれ行った。また各細胞の増殖に対する血清の有無の影響を検討するため、対照群については培地としてFCS含有培地と無血清培地の両方について行った。
1.対照群:1%PSを含むDMEM/HAM12培養液中で6日間培養
2.A4群:10μMのAraCを含む培養液で4日間培養、その後1%PSを含むDMEM/HAM12培養液に移し2日間培養。
3.B6群:50ng/mlのBDNFと1%PSを含むDMEM/HAM12培養液で6日間培養
4.A4B6群:10μMのAraCと50ng/mlのBDNFを含むDMEM/HAM12培養液で4日間培養、その後1%PS及び50ng/mlのBDNFを含むDMEM/HAM12培養液で2日間培養
培養開始3日目の時点で、OECsの細胞数は約250細胞、線維芽細胞は約400細胞であり、その比率は4:6程度であった。培養9日目における各細胞の動態を見ると、対照群のうちFCS含有培地ではOECsが70細胞程度にまで減少し、無血清培地でも50細胞程度にまで減少した。一方線維芽細胞では、FCS含有培地で約800程度と倍増しており、これは無血清培地の約200細胞に比べて際だって高い数値であった。すなわち、培養液への血清の添加は、OECsには効果がなく線維芽細胞をよく増やすという効果を示すことから、OECsの精製培養には無血清培地が適していることが示された。
2.から4.の培養については、後述の免疫染色により細胞種の特定とその割合のカウントを行い、下記表1に示す結果を得た。表中「細胞数の推移」については培養開始時からの変動を矢印の向きと数で可視化し、→はほぼ横ばいの推移を、↓は減少(↓↓↓は大幅な減少)を示している。また細胞比率については%で表している。表にあげたいずれの処理においても、OECsの細胞数は横ばいであるのに対して線維芽細胞は減少し、特に4.のA4B6群ではその減少が顕著であり、両者を組み合わせることで加算的ではない精製効果が得られる事が示された。この群ではOECsの細胞比率が90.6%と非常に高く、精製培養にはこの条件が適していることが明らかとなった。
これらの結果から、OECsの精製培養においては、培養液は血清を含まない無血清培地が適しており、培養開始から4日間程度のAraC処理と、培養開始から継続的なBDNF処理が精製培養には適していることが示された。
Figure 2008245583
(OECsと他種細胞の免疫染色による同定)培養した細胞がどの種類の細胞であるかを確認するために、各種細胞を特異的に認識する抗体を用いた細胞の免疫染色を行った。培養した細胞をスライドグラス上に取り、4%パラホルムアルデヒドで10分間、室温にて固定し、固定後スライドグラスをPhosphate buffered saline(PBS)で3回洗った。洗浄後、スライドグラスを10%ヤギ血清または10%BSAを含んだブロッキング溶液で1時間、室温条件下にて処理し、その後1次抗体処理を行った。抗体処理としては、(1)OECs特異的な抗体として抗p75抗体(1:200)及び抗GFAPポリクローナル抗体(1:1000,Chemicon,USA)による処理、(2)ミクログリア細胞特異的な抗体として抗LC1ポリクローナル抗体(1:8000,Zymed,USA)による処理、(3)サテライト細胞特異的な抗体として抗TrkAポリクローナル抗体(1:100,Santa Cruz,USA)による処理、(4)シュワン細胞特異的な抗体として抗erbB2ポリクローナル抗体(1:200,Upstate,USA)による処理、(5)オリゴデンドロサイト特異的な抗体として抗O1抗体(Chemicon)による処理、(6)ニューロン特異的な抗体として抗TuJ1抗体(1:100,Chemicon)による処理、及び(7)線維芽細胞特異的な抗体として抗Thy1.1抗体(1:100,Chemicon)による処理をそれぞれ行った。処理条件は4℃、終夜処理であった。1次抗体処理後、スライドグラスを洗浄した後2次抗体処理(セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗体またはアルカリフォスファターゼ結合抗体)を行い、発色反応(3,3’−ジアミノベンチジンまたはフクシン)で検出した。抗体処理、検出はそれぞれの抗体のプロトコルに従った。細胞はまたヘマトキシリンによる染色をあわせて行った。培養開始後1,4,6日後の各処理条件下における細胞サンプルを採取し、前記各抗体で染色してその抗体の認識する細胞種をカウントし、全細胞中における細胞の割合を算出した。
鼻粘膜細胞の培養1日目における各細胞種の割合を、下記表2に示した。採取したサンプル中では、OECsが最も多く半分以上(50.2%)を占め、次いでミクログリア細胞とサテライト細胞が20%、シュワン細胞が12%であり、線維芽細胞は8.5%であった。
Figure 2008245583
これらの細胞比率が精製培養によってどの様に推移したかを、下記表3に示した。表3も表1と同様、培養開始時からの細胞数の推移を矢印の向きと大きさで可視化したものであり、↑は増加、↓は減少、→は横ばいを表している。無血清培地では、全ての細胞種が大きく減少していた。FCSを加えた培地ではOECsが減少するのに対し線維芽細胞などが増加しており、血清の添加がOECsの精製培養には不向きであることが示された。反対にAraCとBDNFを添加した培養においては、OECs以外の全ての細胞種が減少しているのに対しOECsは増加しており、この条件がもっとも適していることが示された。
Figure 2008245583
(精製培養したOECsの移植による効果の検証)精製培養した神経細胞の神経再生に対する影響を検討するため、脊髄損傷モデルラットを作成して培養神経細胞を移植し、その効果を追跡した。モデルの作製には6−8週齢のヌードラット(F344/N Jcl−rnu,CLEA,JPN)を材料とし、ケタミン・キシラジン混合液の腹腔内投与による麻酔を実施し、麻酔下のラットに対し、T9からT10レベルでの椎弓切除および1−2mmの脊髄完全切除を実施した。作製した複数のモデルラットのうち、移植群(6個体)では、切除部位に対し純化されたOECsを移植(薬さじ小に一杯程度)し、ゲルフォーム(SpongelTM,Yamanouchi,JPN)にて移植部位を覆い、常法に従い閉創した。対照群(6個体)では、脊髄損傷手術を行った後、ただちに切除部位を常法に従って閉創した。手術後の動物には、感染症を防ぐ目的で抗生物質(10mg/kg Enrofloxacine,Baytryl,Bayer,JPN)を投与した。
(運動機能改善評価)移植手術後の運動機能改善の評価は、後肢の運動を数値化したBBB値(Basso,Beattie,Bresnahan Locomotor Rating Scale)を測定して評価した。BBB値は運動性を0から21までの数値で表すものであり、全く動かない状態を0、正常な状態(機能障害無し)を21として、傷害の程度やそこからの回復状況を数値で示すものである。それぞれの個体について、1日おきに手術の有無を知らない観測者が測定した。また運動の様子をビデオ撮影し、数値の評価が妥当かどうか計測期間終了後にチェックも行った。
これらの結果を図2にまとめた。グラフ縦軸はBBB値を、横軸は移植手術後の経過日数を表し、各経過日における点は検討した個体の平均値で表している。グラフの示す通り、移植群では7日目以降に運動機能の改善が見られ、20日経過以後には1.5から2.5の値を示したのに対して、対照群ではほとんど改善が見られなかった。このことは、精製培養したOECsが移植により中枢神経の機能を改善したという事を示しており、本発明の培養法の有効性が改めて確認された。
以上本実施例の全ての動物実験は、関係法令及び規則に則って行われた。なおこれら手術を行ったラットは全て、2−3週間後に死亡したが、この原因としては、異種動物に由来する細胞を移植したことによる拒絶反応的な原因や手術によるダメージ、ヌードラットという野生型に比べ”弱い”動物を使ったことなどが考えられる。実際に臨床では同種の動物から採取・培養した細胞を用いることが想定されているため、こういった現象は起こらないと考えられる。
AraC添加によるOECsと線維芽細胞の増殖への影響を示す。A−Cは各条件における細胞数を、D−Fは細胞の比率をそれぞれ表す。 本発明の精製培養法によって培養したOECsの移植実験の結果を、運動機能の指標BBB値の推移で示す。移植群は脊髄損傷モデル動物に培養OECsを移植したものの平均値を、対照群は移植しなかったものの平均値をそれぞれ示す。

Claims (8)

  1. 脳由来神経栄養因子と、シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体を含む培地を用いることを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
  2. 前記培地が無血清培地であることを特徴とする、請求項1に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
  3. 前記シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体の濃度が5−25μMの範囲内の濃度であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
  4. 脳由来神経栄養因子と、シトシンアラビノサイドまたはその薬理学上許容可能な誘導体を含む培地を用いることを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の保存方法。
  5. 下記工程を有することを特徴とする、哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
    (1)脳由来神経栄養因子及びシトシンアラビノサイドを含む培地を用い、生体由来の神経細胞と非神経細胞が混在した細胞集団を培養する工程
    (2)工程(1)で培養した前記細胞集団を、脳由来神経栄養因子を含みかつシトシンアラビノサイドを含まない無血清培地で培養する工程
  6. 工程(1)及び(2)における前記脳由来神経栄養因子の濃度が、10−100ng/mlの範囲内の濃度であることを特徴とする、請求項5に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
  7. 工程(1)におけるシトシンアラビノサイドの濃度が、5−25μMの範囲内の濃度であることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
  8. 前記細胞集団が鼻粘膜固有層に由来する細胞であって、前記神経細胞が嗅覚鞘性細胞であることを特徴とする、請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載の哺乳動物の神経細胞の精製培養方法。
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