JP2008243739A - 電子放出素子、表示装置、放電発光装置およびx線放出装置 - Google Patents

電子放出素子、表示装置、放電発光装置およびx線放出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電子放出効率が高く、製造が容易な電子放出素子、および、この電子放出素子を使用する表示装置、放電発光装置およびX線放出装置を提供する。
【解決手段】第1の電極3と、第1の電極3上に設けられ、その上面側に少なくとも一つの段差部7を備え、段差部7の下段部に下段側平面部8と、段差部の上段部に上段側平面部9とを備える絶縁性膜4と、下段側平面部8に、段差部7と離隔して設けられた第2の電極5と、上段側平面部9に、段差部7と離隔して設けられた第3の電極6と、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子放出素子、および、この電子放出素子を使用する表示装置、放電発光装置およびX線放出装置に関する。
表示装置等に使用される電子放出素子については、以前から多くの方式が提案されている。その中の一つに、金属電極、絶縁性膜、金属電極が順次積層された構造を有するMIM(metal-insulator-metal)型と呼ばれる電子放出素子がある。MIM型の電子放出素子は、電極間に電圧を印加して電子を放出する。すなわち、印加電圧で一方の電極から絶縁性膜に注入された電子が、電極間の電界で加速され、もう一方の電極を貫通して外部へ放出される仕組みを利用している。なお、絶縁性膜としては、Al(アルミニウム)の陽極酸化膜が多く用いられるが、各種成膜法、構成が試みられている。また、電子が貫通する電極側に使用される金属は、電子の貫通を容易にするため薄くする必要があり、その厚さは数nm(ナノメートル)〜数10nmが一般的である。
しかしながら、加速された電子は、その大部分が電極内でエネルギーを損失してしまうため、電極を貫通して放出される電子はごくわずかである。電子が電極から放出されずそのまま電極に流れ込むことにより発生する電流値(電極から放出されずそのまま電極に流れ込む電子の数)と、電子が電極から放出され、放出先にある別の電極に到達することにより発生する電流値(電極から放出され、放出先にある別の電極に到達する電子の数)との比は、電子放出効率として定義されている。そして、通常のMIM型の電子放出素子の場合、電子放出効率は最も高い素子でも3%程度であり、その特性は不十分である。また、電子放出効率は、電子が貫通する電極の膜厚に大きく依存するため、膜厚を厳密にコントロールする必要があり、良品の製造が難しいという問題もある。
この問題を解決するため、例えば、特許文献1では、電子が貫通する電極に微細な孔(開口部)を形成し、この微細な孔から電子を放出することで電子放出効率を向上させる方法が提案されている。
特開2000−251618号公報
しかしながら、この方法の場合、開口部での等電位面が電子放出素子の外側に広がるように分布するため、開口部の電界強度が低下してしまい、この結果、開口部からの電子放出は少なくなってしまうという問題がある。なお、この問題に対して、開口部の大きさを相対的に小さくすれば、開口部での電界強度低下を低減することが可能である。しかしながら、電子放出効率が均一になるように、開口部を高精度かつ均一に微細加工するのは難しいという問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、開口部の電界強度の低下を抑制し、開口部の絶縁性膜表面からの電子放出を増大させることにより、電子放出効率が向上する電子放出素子、および、この電子放出素子を使用する表示装置、放電発光装置およびX線放出装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1の電極と、前記第1の電極上に設けられ、その上面側に少なくとも一つの段差部を備え、前記段差部の下段部に第1の面と、前記段差部の上段部に第2の面とを備える絶縁性膜と、前記第1の面に、前記段差部と離隔して設けられた第2の電極と、前記第2の面に、前記段差部と離隔して設けられた第3の電極と、を備えること、を特徴とする。
また、本発明は、基板と、前記基板上に設けられた第1の電極と、前記基板上の前記第1の電極と異なる領域に設けられた第2の電極と、前記第1の電極上に設けられた絶縁性膜と、前記絶縁性膜上に設けられた第3の電極とを備え、前記第3の電極が、前記絶縁性膜の上面の端部より内側にあり、前記端部の前記絶縁性膜の上面が露出していること、を特徴とする。
本発明によれば、電子放出素子の電子放出効率が向上するという効果を奏する。
また、本発明によれば、電子放出素子の製造が容易になるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電子放出素子の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下において示す図面では、説明の便宜上、図面の各部材の縮尺を異ならせて記載してある場合がある。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる電子放出素子の上面図と側面断面図である。
電子放出素子1は、基板2、第1の電極3、絶縁性膜4、第2の電極5、および、第3の電極6を備えて構成されている。基板2は、ガラスやシリコンなどからなる。第1の電極3は、基板2の上に形成され、電子を絶縁性膜4へ注入する。第1の電極3は、電子放出性の高い導電性材料であれば金属や半導体等のいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではAl(アルミニウム)からなる。
絶縁性膜4は、第1の電極3の上に形成される。ここで、絶縁性膜4は、段差部7、下段側平面部8、および、上段側平面部9を備える。段差部7は、絶縁性膜4に設けられた複数の段差部であり、下段露出部10と上段露出部11をさらに備える。下段露出部10は、段差部7の下段の部分であり、第2の電極5が形成されておらず、絶縁性膜4が外部に露出している構造となっている。上段露出部11は、段差部7の上段の部分であり、第3の電極6が形成されておらず、絶縁性膜4が外部に露出している構造となっている。下段側平面部8は、下段露出部10と同一面上にある平面部であり、上段側平面部9は、上段露出部11と同一面上にある平面部である。絶縁性膜4は、絶縁性がある材料であればいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではSiOx(酸化シリコン)からなる。
第2の電極5は、絶縁性膜4の下段側平面部8の上に形成される。よって、第2の電極5は、絶縁性膜4の下段露出部10には形成されていない。第3の電極6は、絶縁性膜4の上段側平面部9の上に形成される。よって、第3の電極6は、絶縁性膜4の上段露出部11には形成されていない。従って、絶縁性膜4の段差部7には、第2の電極5および第3の電極6が存在せず、絶縁性膜4が外部に露出しており、いわゆる開口構造となっている。第2の電極5および第3の電極6は、導電性材料であれば金属や半導体等のいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではAu(金)からなる。
このように構成されている電子放出素子1が電子を放出する仕組みは、以下の通りである。第1の電極3と、第2の電極5および第3の電極6との間に電源12を接続し、電圧Vgを印加すると、電子は、第1の電極3から絶縁性膜4へ注入され、絶縁性膜4内で第1の電極3と、第2の電極5および第3の電極6の間の電界で加速され、第2の電極5、第3の電極6、下段露出部10、および、上段露出部11から放出される。
ここで、電子放出素子1が、上述のように構成されている理由について、図2の電子放出素子と比較して説明する。図2は、比較例の電子放出素子の上面図と側面断面図である。
比較例の電子放出素子21は、基板22、第1の電極23、絶縁性膜24、および、第2の電極25を備えて構成されている。第1の電極23は、基板22の上に形成され、電子を絶縁性膜24へ注入する。絶縁性膜24は、第1の電極23の上に形成され、本実施の形態にかかる電子放出素子1のような段差部はなく、平坦な形状をしている。
第2の電極25は、絶縁性膜24の上に形成されるが、絶縁性膜24を全て覆う構造ではなく、絶縁性膜24には、その上面が外部へ露出している露出部26が形成される。従って、絶縁性膜24の露出部26では、第2の電極25が存在せず、いわゆる開口構造となっている。ここで、基板22、第1の電極23、絶縁性膜24、および、第2の電極25の材質は、それぞれ、基板2、第1の電極3、絶縁性膜4、および、第2の電極5の材質と同じである。そして、第1の電極23と第2の電極25との間に電源12を接続し、電圧Vgを印加すれば、第2の電極25および露出部26から電子が放出される。
図3は、電子放出素子の断面形状と電位分布の関係を表す図面である。ここで、図中の等電位面27は、電極間に電圧を印加した場合に電位が一定である面を表す。また、図中の矢印は電子が放出される方向を表す。なお、電子の放出は、電極を貫通して放出される場合と、電極の開口部(絶縁性膜24の露出部)から放出される場合とが考えられるが、ここでは、電極の開口部から放出される場合のみを考える。
図3の(a)は、比較例の電子放出素子21において、第1の電極23と第2の電極25との間に電圧Vgが印加された場合の開口部(露出部26)付近の電位分布を示す。図をみると、第2の電極25の露出部26から、電子放出素子21の外側へ等電位面27がしみ出すように広がっている。このことは、電界計算等で容易に求めることが可能である。このように、等電位面27が電子放出素子21の外側へ広がると、露出部26での絶縁性膜24表面の電界強度が低下し、電子に加わる加速度が小さくなるので、露出部26から放出される電子の数は少なく、電子放出効率は低くなる。
図3の(b)は、本実施の形態にかかる電子放出素子1において、第1の電極3と、第2の電極5および第3の電極6との間に電圧Vgが印加された場合の段差部7付近の電位分布を示す。ここで、第1の電極3と第3の電極6との間の距離は、比較例の電子放出素子21における第1の電極23と第2の電極25との間の距離と同じである。
図をみると、第2の電極5は、第1の電極3に対して第3の電極6より近い位置にあり、結果として、第2の電極5は、比較例の電子放出素子21において等電位面27が広がる方向と逆の方向に移動していることになる。このため、第2の電極5と第3の電極6との間にある開口部(下段露出部10と上段露出部11とを合計した部分)から、電子放出素子1の外側へ等電位面27が広がることを抑える効果が発生し、等電位面27は図のようになる。
この結果、第3の電極6の開口部(上段露出部11)での絶縁性膜4表面の電界強度は低下せず、電子に加わる加速度は第3の電極6がある部分と変わらないので、上段露出部11から放出される電子の数は比較例の電子放出素子21と比べて多くなり、電子放出効率は向上する。
従って、必要な電子放出効率によっては、第2の電極5および第3の電極6を貫通して電子が放出される必要もなくなる。この場合、第2の電極5の膜厚および第3の電極6の膜厚を厚くすることが可能となり、製造が容易となる。
なお、下段露出部10からも電子は放出されるが、電子は等電位面に対して垂直の方向に放出されるため、下段露出部10から放出された電子は図中の矢印の方向に対して右側へ進む。そのため、下段露出部10から放出された電子は、この電子の到達が必要な距離や範囲により、電子放出効率の向上に寄与するか否かが決まる。
(作製例)
次に、電子放出素子1の作製例について、図1を使用して説明する。洗浄したガラス基板2上にAlを100nmスパッタリングで成膜し、第1の電極3を形成した。次に、絶縁性膜4としてSiOxを300nm成膜し、SiOxをスリット状に150nmほどRIE(反応性イオンエッチング)で除去し、段差部7(下段側平面部8、下段露出部10、上段側平面部9、および、上段露出部11)を形成した。続いて、Auを50nmスパッタリングで成膜し、第2の電極5および第3の電極6をパターニングした。そして、第1の電極3の端部と、スリット状に形成された第2の電極5および第3の電極6の端部に電源12を接続すれば容易に各電極に電圧Vgを印加することができる。
本作製例では、Auの膜厚を50nmと厚くしたため、第2の電極5および第3の電極6に到達した電子は、そのまま電極に流れ込んでしまい、第2の電極5および第3の電極6を貫通して放出されることはない。しかし、第3の電極6の開口部(上段露出部11)から高効率で電子が放出されるため、第2の電極5および第3の電極6の膜厚を厚くして、第2の電極5および第3の電極6を貫通する電子放出経路を遮断しても、電子放出素子全体としての電子放出効率にはほとんど影響しない。むしろ、Auの膜厚を50nmに設定することで製造上十分な膜厚分布が得られ、電子放出特性の均一性は向上する。もちろん、Auの膜厚を10nm以下にして、第2の電極5および第3の電極6を貫通する電子放出経路を確保してもよい。
ここで、電子放出効率は、段差部7の段差(深さ)寸法、第2の電極5および第3の電極6のスリット形状、第2の電極5および第3の電極6と段差部7との相対位置等によっても変動するが、通常の微細加工プロセスで制御できる範囲であり、特殊な製造プロセスを用いる必要がない。
本条件で作製した電子放出素子1を1×10−5Torr(トル)の真空下に設置し、第1の電極3と、第2の電極5および第3の電極6との間に、電源12で電圧Vgを印加し、電子放出特性を評価した。具体的には、電子放出素子1に対向してITO(インジウムスズ酸化物)を成膜した基板を設置し、電子放出素子1と対向基板との間に高電圧を印加して放出電流Iaを測定した。この結果、電圧Vg=100Vで放出電流Ia=10mA/cmが得られ、電子放出効率は3%となった。
この結果から、電子放出素子1の製造を容易にするため、第2の電極5の膜厚および第3の電極6の膜厚を厚くしたために、第2の電極5および第3の電極6を貫通しての電子放出がなくても、従来の電子放出素子で最も高い電子放出効率と同等の電子放出効率を達成することができることがわかる。
このように、第1の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、絶縁性膜に段差部を設け電極の開口部をこの段差部の上に形成したので、開口部の電界強度が低下せず電子に加わる加速度を強くすることができ、開口部から放出される電子の数が多くなり、電子放出効率を向上させることが可能となる。
さらに、第1の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、絶縁性膜の上面側に形成された電極から電子を放出する必要がないので、電極の膜厚を厚くすることが可能となり、電子放出素子の製造が容易となる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、第1の電極が第3の電極の開口部(絶縁性膜の段差部の上面露出部)がある部分に対応して形成されている点が異なっている。第2の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態にかかる電子放出素子の構成について、第1の実施の形態と異なる部分を説明する。他の部分については第1の実施の形態と同様であるので、同一の符号が付された箇所については、上述した説明を参照し、ここでの説明を省略する。
図4は、第2の実施の形態にかかる電子放出素子の上面図と側面断面図である。電子放出素子31は、基板2、第1の電極33、絶縁性膜34、第2の電極5、および、第3の電極6を備えて構成されている。
第1の電極33は、基板2の上に形成され、電子を絶縁性膜34へ注入する。具体的には、第1の電極33は、上段露出部11がある部分に対応する絶縁性膜34の下側の部分に形成され、その他の部分には形成されていない。第1の電極33は、電子放出性の高い導電性材料であれば金属や半導体等のいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではAlからなる。
絶縁性膜34は、基板2と第1の電極33の上に形成される。ここで、絶縁性膜34は、段差部7、下段側平面部8、および、上段側平面部9を備える。段差部7は、下段露出部10と上段露出部11とをさらに備える。絶縁性膜34は、絶縁性がある材料であればいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではSiOxからなる。
このように構成されている電子放出素子31が電子を放出する仕組みは、以下の通りである。第1の電極33と、第2の電極5および第3の電極6との間に電源12を接続し、電圧Vgを印加すると、電子は、第1の電極33から絶縁性膜34へ注入され、絶縁性膜34内で第1の電極33と、第2の電極5および第3の電極6との間の電界で加速され、上段露出部11から放出される。
ここで、電子放出素子31が、上述のように構成されている理由について、再び図3を用いて説明する。第1の実施の形態にかかる電子放出素子1の構造では、図3の(b)のように、第1の電極3と第2の電極5の間隔が、第1の電極3と第3の電極6の間隔より狭いため、第1の電極3と第2の電極5の間の電界強度は、第1の電極3と第3の電極6の間の電界強度より、高くなっている。このため、電子の多くが、第1の電極3から第2の電極5へ絶縁性膜4を通って流れてしまう場合があり、電子放出の効率を向上させる妨げとなる。
図3の(c)は、本実施の形態にかかる電子放出素子31において、第1の電極33と、第2の電極5および第3の電極6との間に電圧Vgが印加された場合の段差部7付近の電位分布を示す。
電子放出素子31では、電子が第1の電極33から第2の電極5へ絶縁性膜34を通って流れてしまうのを防ぐため、第2の電極5の下側には第1の電極33が形成されていない(第1の電極33が開口した形状となっている)。第1の電極33と第2の電極5の間は、電圧が印加されていればよく、電子が流れなくても問題ないためである。
さらに、電子放出素子31では、電子が第1の電極33から第3の電極6へ絶縁性膜34を通って流れてしまうのを防ぐため、第3の電極6の下側にも第1の電極33が形成されていない(第1の電極33が開口した形状となっている)。第1の電極33と第3の電極6の間も、電圧が印加されていればよく、電子が流れなくても問題ないためである。
さらに、電子放出素子31では、第1の実施の形態で説明したように、下段露出部10から図中の矢印の方向に対して右側へ進む電子の放出を防ぐため、下段露出部10の下側にも第1の電極33が形成されていない(第1の電極33が開口した形状となっている)。
このような構造であっても、等電位面27は電子放出素子31の外側へは広がらない。この結果、第3の電極6の開口部(上段露出部11)での絶縁性膜34表面の電界強度は低下せず、第1の実施の形態にかかる電子放出素子1と比べて電子に加わる加速度は変わらない。
さらに、このような構造にすることにより、第1の電極33から第2の電極5へ絶縁性膜34を通って流れる電子と、第1の電極33から第3の電極6へ絶縁性膜34を通って流れる電子が少なくなる。この結果、第1の電極33から絶縁性膜34に注入される全ての電子のうち、電子放出素子31から放出されずにそのまま第2の電極5または第3の電極6へ流れ込む電子の数に対する上段露出部11から放出される電子の数の割合は高くなり、第1の実施の形態にかかる電子放出素子1と比べて電子放出効率はさらに向上する。
さらに、電子放出素子31では、第1の電極33と第2の電極5、および、第1の電極33と第3の電極6が重なっている部分がない構造(第2の電極5および第3の電極6に対応する部分の第1の電極33が開口した構造)になっているので、第1の電極33と第2の電極5の間の静電容量、および、第1の電極33と第3の電極6の間の静電容量が大幅に低減している。これは、電子源駆動部からみると負荷容量が大幅に低減することを意味するので、多数の電子放出素子を駆動する場合、例えば、電子放出素子を表示装置に適用する場合に有効である。
(作製例)
次に、電子放出素子31の作製例について、図4を使用して説明する。洗浄したガラス基板2上にAlを100nmスパッタリングで成膜し、その後スリット状にパターンニングし、第1の電極33を形成した。次に、絶縁性膜34としてSiOxを300nm成膜し、SiOxをスリット状に150nmほどRIEで除去し、段差部7(下段側平面部8、下段露出部10、上段側平面部9、および、上段露出部11)を形成した。続いて、Auを50nmスパッタリングで成膜し、第2の電極5および第3の電極6をパターニングした。そして、スリット状に形成された第1の電極33の端部と、スリット状に形成された第2の電極5および第3の電極6の端部に電源12を接続すれば、容易に各電極に電圧Vgを印加することができる。
本作製例では、Auの膜厚を50nmと厚くしたため、第2の電極5および第3の電極6に到達した電子は、そのまま電極に流れ込んでしまい、第2の電極5および第3の電極6を貫通して放出されることはない。しかし、第3の電極6の開口部(上段露出部11)から高効率で電子が放出されるため、第2の電極5および第3の電極6の膜厚を厚くして、第2の電極5および第3の電極6を貫通する電子放出経路を遮断しても、電子放出素子全体としての電子放出効率にはほとんど影響しない。むしろ、Auの膜厚を50nmに設定することで製造上十分な膜厚分布が得られ、電子放出特性の均一性は向上する。もちろん、Auの膜厚を10nm以下にして、第2の電極5および第3の電極6を貫通する電子放出経路を確保してもよい。
ここで、電子放出効率は、段差部7の段差(深さ)寸法、第2の電極5および第3の電極6のスリット形状、第2の電極5および第3の電極6と段差部7との相対位置等によっても変動するが、通常の微細加工プロセスで制御できる範囲であり、特殊な製造プロセスを用いる必要がない。
本条件で作製した電子放出素子31を1×10−5Torrの真空下に設置し、第1の電極33と、第2の電極5および第3の電極6との間に、電源12で電圧Vgを印加し、電子放出特性を評価した。具体的には、電子放出素子31に対向してITOを成膜した基板を設置し、電子放出素子31と対向基板との間に高電圧を印加して放出電流Iaを測定した。この結果、電圧Vg=100Vで放出電流Ia=10mA/cmが得られ、電子放出効率は6%となり、第1の実施の形態にかかる電子放出素子1の2倍の電子放出効率が得られた。
また、本作製例では、第1の電極33と第2の電極5、および、第1の電極33と第3の電極6が重なっている部分がない構造(第2の電極5および第3の電極6に対応する部分の第1の電極33が開口した構造)になっているため、第1の電極33と第2の電極5の間の静電容量、および、第1の電極33と第3の電極6の間の静電容量を大幅に低減できる。
このように、第2の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、絶縁性膜の上面側に形成された電極部分に対応する、絶縁性膜の下面側に形成された電極部分を全て除去したので、下面側の電極から上面側の電極へ絶縁性膜を通って流れる電子を少なくすることができ、電極開口部から放出される電子の数の割合が高くなるので、電子放出効率を向上させることが可能となる。
さらに、第2の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、段差部の下段部の絶縁性膜露出部分に対応する、絶縁性膜の下面側に形成された電極部分を全て除去したので、電極開口部から放出される電子のうち、垂直に放出されず放出先の電極に到達しない電子をなくすことができるので、電子放出効率を向上させることが可能となる。
さらに、第2の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、絶縁性膜の上面側に形成された電極と、絶縁性膜の下面側に形成された電極とが重なる部分がないので、電極間の静電容量を大幅に低減することが可能となる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第1の電極の上に絶縁性膜および第3の電極が形成され、第2の電極が第1の電極と同じ面に形成されている構造となっている。第3の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態にかかる電子放出素子の構成について、第1の実施の形態と異なる部分を説明する。他の部分については第1の実施の形態と同様であるので、同一の符号が付された箇所については、上述した説明を参照し、ここでの説明を省略する。
図5は、第3の実施の形態にかかる電子放出素子の上面図と側面断面図である。電子放出素子41は、基板2、第1の電極43、絶縁性膜44、第2の電極45、および、第3の電極46を備えて構成されている。
第1の電極43は、基板2の上に形成され、電子を絶縁性膜44へ注入する。その形状は、スリット状をしている。第1の電極43は、電子放出性の高い導電性材料であれば金属や半導体等のいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではAlからなる。
絶縁性膜44は、第1の電極43の上に形成される。絶縁性膜44は、絶縁性がある材料であればいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではSiOxからなる。
第2の電極45は、基板2の上に形成される。従って、第1の電極43と第2の電極45とは、同じ基板2の上に形成される。具体的には、第2の電極45は、スリット状をしており、第1の電極43と並行に配置されている。第2の電極45は、導電性材料であれば金属や半導体等のいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではAlからなる。
第3の電極46は、絶縁性膜44の上に形成される。そして、第3の電極46は、絶縁性膜44の端部付近には形成されておらず、その面積は、絶縁性膜44の面積より一回り小さい。このため、絶縁性膜44には、上面が外部へ露出している露出部47が形成される。第3の電極46は、導電性材料であれば金属や半導体等のいずれの材料も使用することができるが、本実施の形態ではAuからなる。
このように構成されている電子放出素子41が電子を放出する仕組みは、以下の通りである。第1の電極43と、第2の電極45および第3の電極46との間に電源12を接続し、電圧Vgを印加すると、電子は、第1の電極43から絶縁性膜44へ注入され、絶縁性膜44内で第1の電極43と第3の電極46の間(第2の電極45)の電界で加速され、第3の電極46と露出部47から放出される。
ここで、電子放出素子41が、上述のように構成されている理由について、再び図3を用いて説明する。図3の(d)は、本実施の形態にかかる電子放出素子41において、第1の電極43と、第2の電極45および第3の電極46との間に電圧Vgが印加された場合の露出部47付近の電位分布を示す。
このように、第1の電極43と第2の電極45とが同一の層に形成されている構造であっても、第1の実施の形態にかかる電子放出素子1および第2の実施の形態にかかる電子放出素子31と同様に、等電位面27は電子放出素子41の外側へは広がらない。この結果、第3の電極46の開口部(露出部47)での絶縁性膜44表面の電界強度は低下せず、第1の実施の形態にかかる電子放出素子1と比べて電子に加わる加速度は変わらない。
さらに、第1の電極43と第2の電極45の間の距離は、実際には、第1の電極43と第3の電極46の間の距離に比べて離れているため、第1の電極43から第2の電極45へは、電子は流れない。この結果、第1の電極43から絶縁性膜44に注入される全ての電子のうち、電子放出素子41から放出されずにそのまま第3の電極46へ流れ込む電子の数に対する露出部47から放出される電子の数の割合は多くなり、第1の実施の形態にかかる電子放出素子1と比べて電子放出効率はさらに向上する。
さらに、絶縁性膜44に段差部を設ける必要がないため、第2の実施の形態にかかる電子放出素子31と比べて、製造が容易となる。
(作製例)
次に、電子放出素子41の作製例について、図5を使用して説明する。洗浄したガラス基板2上にAlを100nmスパッタリングで成膜し、その後スリット状にパターンニングし、第1の電極43を形成し、同時に、その両側に第2の電極45を形成した。次にSiOxを300nm成膜し、SiOxをスリット状にRIEで選択除去し、絶縁性膜44を形成した。図では絶縁性膜44が第1の電極43と同一形状に形成されているが、第1の電極43を被覆するように形成されてもよく、また第1の電極43の周辺が露出するようにパターニングしてもよい。続いて、Auを50nmスパッタリングで成膜し、第3の電極46をパターニングした。そして、スリット状に形成された第1の電極43の端部と、スリット状に形成された第2の電極45および第3の電極46の端部に電源12を接続すれば、容易に各電極に電圧Vgを印加することができる。
本作製例では、Auの膜厚を50nmと厚くしたため、第3の電極46に到達した電子は、そのまま電極に流れ込んでしまい、第3の電極46を貫通して放出されることはない。しかし、第3の電極46の開口部(露出部47)から高効率で電子が放出されるため、第3の電極46の膜厚を厚くして、第3の電極46を貫通する電子放出経路を遮断しても、電子放出素子全体としての電子放出効率にはほとんど影響しない。むしろ、Auの膜厚を50nmに設定することで製造上十分な膜厚分布が得られ、電子放出特性の均一性は向上する。もちろん、Auの膜厚を10nm以下にして、第3の電極46を貫通する電子放出経路を確保してもよい。
ここで、電子放出効率は、第3の電極46のスリット形状、第1の電極43と第2の電極45との相対位置等によっても変動するが、通常の微細加工プロセスで制御できる範囲であり、特殊な製造プロセスを用いる必要がない。
本条件で作製した電子放出素子41を1×10−5Torrの真空下に設置し、第1の電極43と、第2の電極45および第3の電極46との間に、電源12で電圧Vgを印加し、電子放出特性を評価した。具体的には、電子放出素子41に対向してITOを成膜した基板を設置し、電子放出素子41と対向基板との間に高電圧を印加して放出電流Iaを測定した。この結果、電圧Vg=100Vで放出電流Ia=10mA/cmが得られ、電子放出効率は6%となり、第2の実施の形態にかかる電子放出素子31と同等の特性が得られた。
なお、本作製例では、第2の電極45を第1の電極43と同一の工程で形成したが、第3の電極46と同一の工程で形成してもよいし、第1の電極43および第3の電極46の形成工程とは別の工程で形成してもよい。
このように、第3の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、電子を絶縁性膜に注入する電極と、この電極との間で電界を発生させる電極の一部とを同一面に形成したので、絶縁性膜の露出部の電界強度が低下せず電子に加わる加速度を強くすることができ、開口部から放出される電子の数が多くなり、電子放出効率を向上させることが可能となる。
さらに、第3の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、電子を絶縁性膜に注入する電極と、この電極との間で電界を発生させる電極の一部との間の距離が離れているため、これらの電極間では電子は流れず、絶縁性膜の露出部から放出される電子の数の割合が高くなるので、電子放出効率を向上させることが可能となる。
さらに、第3の実施の形態にかかる電子放出素子によれば、絶縁性膜に段差部を設ける必要がないため、絶縁性膜にRIEで段差部を設ける工程が不要となり、電子放出素子の製造が容易となる。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態は、本発明の電子放出素子を表示装置に適用したものである。図6は、第3の実施の形態で説明した電子放出素子が適用された表示素子の一例を示す上面図とA−A矢視断面図であり、図7は、この表示素子をマトリクス状に配置した表示装置の一例を示す図である。
表示素子51は、入力画像信号に応じた画像を表示する。この表示素子51は、基板52、第1の電極53、絶縁性膜54、第2の電極55、第3の電極56、走査線57、信号線58、および、透明基板(図示せず)を備えて構成されている。基板52は、ガラスからなる。第1の電極53は、基板52の上に形成され、電子を絶縁性膜54へ注入し、Alからなる。絶縁性膜54は、第1の電極53の上に形成され、SiOxからなる。第2の電極55は、第1の電極53と同じく基板52の上に形成され、第1の電極53と並行に配置されており、Auからなる。
第3の電極56は、絶縁性膜54の上に形成される。そして、第3の電極56は、絶縁性膜54の端部付近には形成されておらず、その面積は、絶縁性膜54の面積より一回り小さい。このため、絶縁性膜54には、上面が外部へ露出している露出部59が形成される。第3の電極56は、Auからなる。ここで、基板52、第1の電極53、絶縁性膜54、第2の電極55、および、第3の電極56は、第3の実施の形態にかかる電子放出素子の各部分に相当する。走査線57と信号線58とが交差する交差部60には、配線間が短絡しないように走査線57と信号線58の間に絶縁層を積層する。絶縁層は絶縁性膜54と同時に成膜、パターニングして形成してもよいし、別途成膜およびパターニングにより形成しても良い。
走査線57および信号線58は、図示しない処理部から入力画像信号に応じた信号を受信する。走査線57はAlからなり、信号線58はAuからなる。透明基板は、基板52と一定距離離れて対向して配置されており、その表面には蛍光体が塗布されている。
このように構成されている表示素子51が、図7の表示装置61に入力画像信号に応じた画像を表示する仕組みは、以下の通りである。あらかじめ、第1の電極53と透明基板との間に電圧を印加しておく。そして、走査線57および信号線58が入力画像信号に応じた信号を受信し、その信号により第2の電極55および第3の電極56から第1の電極53の方向へ電圧が印加される。すると、電子が、第1の電極53から絶縁性膜54へ注入され、絶縁性膜54内で第1の電極53と第3の電極56の間の電界で加速され、第3の電極56と露出部59から透明基板へ向かって放出される。そして、放出された電子が透明基板へ到達すると、電子が到達した部分にある蛍光体が発光する。表示装置61には、表示素子51がマトリクス状に配置されており、表示装置61の各々の表示素子51が入力画像信号に応じて発光することにより、表示装置61が画像を表示する。
(作製例)
次に、表示素子51の作製例について、図6を使用して説明する。洗浄したガラス基板52上にAlを100nmスパッタリングで成膜し、通常のフォトリソグラフィ工程により走査線57と、走査線57に接続された第1の電極53とを形成した。ここで、第1の電極53の幅は20ミクロン、間隔は20ミクロンとした。続いて、SiOxをスパッタ装置で300nm成膜し、第1の電極53を覆うようにパターニングし、絶縁性膜53を形成した。次にAuをスパッタで100nm成膜し、信号線58、第2の電極55、および、第3の電極56をパターニングで形成した。ここで、第2の電極55の幅は10ミクロン、第3の電極56の幅は10ミクロンとした。
なお、第3の電極56を貫通しての電子放出を活用する場合は、第3の電極56の膜厚を10nm以下にすることが望ましい。この場合、第3の電極56と信号線58とを同時に形成すると、信号線の抵抗が高くなるため好ましくないので、第3の電極56の形成と信号線58の形成とを別工程とし、信号線58の膜厚を厚くして信号線58の抵抗を下げるようにする。この時、第2の電極55は、第3の電極56の形成工程と信号線58の形成工程のどちらの工程で形成されても構わない。
本条件で作製した表示素子51を1×10−5Torrの真空下に設置し、第1の電極53と透明基板の間に1kVの加速電圧を印加した。そして、走査線57および信号線58に入力画像信号に応じた信号を送信すると、透明基板の蛍光体を発光させることができた。
このように、第4の実施の形態にかかる表示素子によれば、電子放出効率が高いので受信した入力画像信号の振幅値が小さくても、透明基板の蛍光体を発光させることができ、表示素子がマトリクス状に配置されている表示装置の消費電力を低下させることが可能となる。
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態は、本発明の電子放出素子を放電発光装置に適用したものである。図8は、第1の実施の形態で説明した電子放出素子が適用された放電発光装置の一例を示す側面断面図である。
放電発光装置71は、ガラス管72内に微量の水銀73と不活性ガスであるアルゴン(Ar)74とを封入し、ガラス管72の内壁には、紫外線により可視光を発生する蛍光体からなる蛍光膜75をさらに形成している。そして、このガラス管72の片端部に、電子放出素子1を備えている。放電開始時には、放電発光装置71内の電子放出素子1に、引き出しリード76を介して外部から直流電圧Vsを印加し、第1の電極3と、第2の電極5および第3の電極6との間に電界を発生させ、第2の電極5、第3の電極6、下段露出部10、および、上段露出部11から加速された電子77を放出させる。さらに、この電子77が加速されてアルゴン74の原子に衝突し、アルゴン74はイオン化する。そして、封入された水銀73は、電子77やイオン化したアルゴン74との衝突により励起され、紫外線78を発生する。この紫外線78が蛍光膜75の蛍光体を励起し、放電発光装置71から可視光79が発生する。放電開始後は、電子放出素子1から電子を放出させる必要は無く、第2の電極5および第3の電極6と、対向電極(アノード電極)80との間に直流電圧Vaを印加すれば放電は維持される。
また、イオン化したアルゴン74は電子放出素子1の第2の電極5および第3の電極6に衝突し、第2の電極5および第3の電極6をスパッタする問題がある。従来構造では第2の電極5および第3の電極6の厚さが10nm程度と薄く、放電中に第2の電極5および第3の電極6がスパッタ除去されてしまう。本発明の電子放出素子1は第2の電極5および第3の電極6の膜厚を厚くすることが可能であり、しかも第2の電極5および第3の電極6の膜厚の影響を受けにくいので、放電発光装置の寿命を大幅に伸ばすことが可能となる。
なお、本実施の形態では、第2の電極および第3の電極と、対向電極(アノード電極)との間は、直流電圧が印加されているが、交流電圧が印加されてもよい。放電開始後は、電子放出素子から電子を放出させる必要は無く、第2の電極および第3の電極と、対向電極(アノード電極)との間に交流電圧を印加すれば放電は維持される。
このように、第5の実施の形態にかかる放電発光装置によれば、放電開始時に電子放出素子から電子を供給することが出来るので放電開始が容易になり、結果的に放電開始電圧を下げることができる。
さらに、第5の実施の形態にかかる放電発光装置によれば、電子放出素子の上部にある電極の膜厚を厚くすることが可能となり、放電により電極がスパッタ除去されてしまうことによる電子放出素子の電子放出効率の低下を防ぐことができるので、放電発光装置の寿命を大幅に伸ばすことが可能となる。
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態は、本発明の電子放出素子をX線放射装置に適用したものである。図9は、第1の実施の形態で説明した電子放出素子が適用されたX線放射装置の一例を示す側面断面図である。
X線放射装置81は、気密容器となる管体82内に収束管83と、電子放出素子1と、ターゲット84と、陽極85と、を備えている。管体82は、放射窓86を備えている。電子放出素子1は、収束管83内に配置されている。ターゲット84は、タングステンや銅などの金属を用いている。そして、電子放出素子1から真空中に放出された電子は、陽極85による電界により加速して、ターゲット84に衝突する。この衝突によりX線が発生する。発生したX線は、放射窓86から管体82外に放射される。
このように、第6の実施の形態にかかるX線放射装置によれば、電子放出効率が高い電子放出素子を使用しているので、X線放射装置の消費電力を低下させることが可能となる。
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではない。各実施の形態では、絶縁性膜にSiOxを使用しているが、Al(酸化アルミニウム)やSiO(二酸化シリコン)、多結晶シリコン層を電解液中で電気化学的に酸化する工程で形成されたシリコンのナノ結晶層、または、導電性材料のナノ微粒子を含む絶縁層を使用してもよい。
また、各実施の形態では、第1の電極は金属であるが半導体でもよく、すなわち、上部電極を金属、下部電極を半導体としたMOS(Metal-Insulator-Semiconductor)型の電子放出素子に適用することも可能である。
また、第1〜3の実施の形態では、第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧と、第1の電極と第3の電極の間に印加される電圧とは同じであるが、互いに異なる電圧を印加してもよく、同様の効果を実現することが可能である。
また、第1〜3の実施の形態では、第2の電極は開口部(上面露出部または露出部)における等電位面の広がりを抑制する目的で配置されたものであるから、その目的を損なわない範囲で、電位は自由に設定することができる。さらには、電子放出素子の駆動条件等に応じて第2の電極の電位を調節し、電子放出効率を制御することも可能である。
また、第4の実施の形態では、第3の実施の形態にかかる電子放出素子を表示装置に適用しているが、第1の実施の形態にかかる電子放出素子、または、第2の実施の形態にかかる電子放出素子を、表示装置に適用してもよい。
同様に、第5の実施の形態では、第1の実施の形態にかかる電子放出素子を放電発光装置に適用しているが、第2の実施の形態にかかる電子放出素子、または、第3の実施の形態にかかる電子放出素子を、放電発光装置に適用してもよい。
同様に、第6の実施の形態では、第1の実施の形態にかかる電子放出素子をX線放射装置に適用しているが、第2の実施の形態にかかる電子放出素子、または、第3の実施の形態にかかる電子放出素子を、X線放射装置に適用してもよい。
本発明は、第1の電極から注入された電子が絶縁性膜中で高電界により加速されて第2の電極あるいは絶縁性膜表面から放出される型の電子源全般と、この電子源を使用する全ての装置に有効である。
第1の実施の形態にかかる電子放出素子の上面図と側面断面図である。 比較例の電子放出素子の上面図と側面断面図である。 電子放出素子の形状と電界強度の関係を表す図面である。 第2の実施の形態にかかる電子放出素子の上面図と側面断面図である。 第3の実施の形態にかかる電子放出素子の上面図と側面断面図である。 第3の実施の形態で説明した電子放出素子が適用された表示素子の一例を示す上面図とA−A矢視断面図である。 表示素子をマトリクス状に配置した表示装置の一例を示す図である。 第1の実施の形態で説明した電子放出素子が適用された放電発光装置の一例を示す側面断面図である。 第1の実施の形態で説明した電子放出素子が適用されたX線放射装置の一例を示す側面断面図である。
符号の説明
1、21、31、41 電子放出素子
2、22、52 基板
3、23、33、43、53 第1の電極
4、24、34、44、54 絶縁性膜
5、25、45、55 第2の電極
6、46、56 第3の電極
7 段差部
8 下段側平面部
9 上段側平面部
10 下段露出部
11 上段露出部
12 電源
26、47、59 露出部
27 等電位面
51 表示素子
57 走査線
58 信号線
60 交差部
61 表示装置
71 放電発光装置
72 ガラス管
73 水銀
74 アルゴン
75 蛍光膜
76 引き出しリード
77 電子
78 紫外線
79 可視光
80 対向電極
81 X線放射装置
82 管体
83 収束管
84 ターゲット
85 陽極
86 放射窓

Claims (21)

  1. 第1の電極と、
    前記第1の電極上に設けられ、その上面側に少なくとも一つの段差部を備え、前記段差部の下段部に第1の面と、前記段差部の上段部に第2の面とを備える絶縁性膜と、
    前記第1の面に、前記段差部と離隔して設けられた第2の電極と、
    前記第2の面に、前記段差部と離隔して設けられた第3の電極と、を備えること、
    を特徴とする電子放出素子。
  2. 前記第1の電極は、少なくとも一つの開口部を備え、
    前記開口部は、前記絶縁性膜の下面における前記第2の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における前記第3の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項2に記載の電子放出素子。
  4. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における位置であって前記第1の面の前記第2の電極が設けられていない部分に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項2または3に記載の電子放出素子。
  5. 基板と、
    前記基板上に設けられた第1の電極と、
    前記基板上の前記第1の電極と異なる領域に設けられた第2の電極と、
    前記第1の電極上に設けられた絶縁性膜と、
    前記絶縁性膜上に設けられた第3の電極とを備え、
    前記第3の電極が、前記絶縁性膜の上面の端部より内側にあり、前記端部の前記絶縁性膜の上面が露出していること、
    を特徴とする電子放出素子。
  6. 前記絶縁性膜は、酸化シリコン、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、多結晶シリコン層を電解液中で電気化学的に酸化する工程で形成されたシリコンのナノ結晶、または、導電性材料のナノ微粒子を含む絶縁層のいずれかであること、
    を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子放出素子。
  7. 電子を放出する電子放出素子と、
    前記電子放出素子に入力画像信号を伝達する走査線および信号線と、
    前記電子放出素子と一定距離離れた場所に対向して配置され、その表面に蛍光体が設けられた透明基板と、
    を備え、
    前記電子放出素子は、
    第1の電極と、
    前記第1の電極上に設けられ、その上面側に少なくとも一つの段差部を備え、前記段差部の下段部に第1の面と、前記段差部の上段部に第2の面とを備える絶縁性膜と、
    前記第1の面に、前記段差部と離隔して設けられた第2の電極と、
    前記第2の面に、前記段差部と離隔して設けられた第3の電極と、を備えること、
    を特徴とする表示装置。
  8. 前記第1の電極は、少なくとも一つの開口部を備え、
    前記開口部は、前記絶縁性膜の下面における前記第2の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項7に記載の表示装置。
  9. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における前記第3の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項8に記載の表示装置。
  10. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における位置であって前記第1の面の前記第2の電極が設けられていない部分に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項8または9に記載の表示装置。
  11. 電子を放出する電子放出素子と、
    前記電子放出素子に入力画像信号を伝達する走査線および信号線と、
    前記電子放出素子と一定距離離れた場所に対向して配置され、その表面に蛍光体が設けられた透明基板と、
    を備え、
    前記電子放出素子は、
    基板と、
    前記基板上に設けられた第1の電極と、
    前記基板上の前記第1の電極と異なる領域に設けられた第2の電極と、
    前記第1の電極上に設けられた絶縁性膜と、
    前記絶縁性膜上に設けられた第3の電極とを備え、
    前記第3の電極が、前記絶縁性膜の上面の端部より内側にあり、前記端部の前記絶縁性膜の上面が露出していること、
    を特徴とする表示装置。
  12. 電子を放出する電子放出素子と、
    前記電子放出素子を内部に備え、蛍光体が内壁に形成された外囲器と、
    前記外囲器に封入された不活性の気体と、
    を備え、
    前記電子放出素子は、
    第1の電極と、
    前記第1の電極上に設けられ、その上面側に少なくとも一つの段差部を備え、前記段差部の下段部に第1の面と、前記段差部の上段部に第2の面とを備える絶縁性膜と、
    前記第1の面に、前記段差部と離隔して設けられた第2の電極と、
    前記第2の面に、前記段差部と離隔して設けられた第3の電極と、を備えること、
    を特徴とする放電発光装置。
  13. 前記第1の電極は、少なくとも一つの開口部を備え、
    前記開口部は、前記絶縁性膜の下面における前記第2の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項12に記載の放電発光装置。
  14. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における前記第3の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項13に記載の放電発光装置。
  15. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における位置であって前記第1の面の前記第2の電極が設けられていない部分に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項13または14に記載の放電発光装置。
  16. 電子を放出する電子放出素子と、
    前記電子放出素子を内部に備え、蛍光体が内壁に形成された外囲器と、
    前記外囲器に封入された不活性の気体と、
    を備え、
    前記電子放出素子は、
    基板と、
    前記基板上に設けられた第1の電極と、
    前記基板上の前記第1の電極と異なる領域に設けられた第2の電極と、
    前記第1の電極上に設けられた絶縁性膜と、
    前記絶縁性膜上に設けられた第3の電極とを備え、
    前記第3の電極が、前記絶縁性膜の上面の端部より内側にあり、前記端部の前記絶縁性膜の上面が露出していること、
    を特徴とする放電発光装置。
  17. 気密容器と、
    電子を放出する電子放出素子と
    前記電子放出素子との間に電圧を印加し、前記電子を加速してターゲットに衝突させる陽極と、
    を備え、
    前記電子放出素子は、
    第1の電極と、
    前記第1の電極上に設けられ、その上面側に少なくとも一つの段差部を備え、前記段差部の下段部に第1の面と、前記段差部の上段部に第2の面とを備える絶縁性膜と、
    前記第1の面に、前記段差部と離隔して設けられた第2の電極と、
    前記第2の面に、前記段差部と離隔して設けられた第3の電極と、を備えること、
    を特徴とするX線放出装置。
  18. 前記第1の電極は、少なくとも一つの開口部を備え、
    前記開口部は、前記絶縁性膜の下面における前記第2の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項17に記載のX線放出装置。
  19. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における前記第3の電極に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項18に記載のX線放出装置。
  20. 前記開口部は、さらに前記絶縁性膜の下面における位置であって前記第1の面の前記第2の電極が設けられていない部分に対向する位置に設けられていること、
    を特徴とする請求項18または19に記載のX線放出装置。
  21. 気密容器と、
    電子を放出する電子放出素子と
    前記電子放出素子との間に電圧を印加し、前記電子を加速してターゲットに衝突させる陽極と、
    を備え、
    前記電子放出素子は、
    基板と、
    前記基板上に設けられた第1の電極と、
    前記基板上の前記第1の電極と異なる領域に設けられた第2の電極と、
    前記第1の電極上に設けられた絶縁性膜と、
    前記絶縁性膜上に設けられた第3の電極とを備え、
    前記第3の電極が、前記絶縁性膜の上面の端部より内側にあり、前記端部の前記絶縁性膜の上面が露出していること、
    を特徴とするX線放出装置。
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