JP2008241369A - 磁石構造体及びこれを用いた位置検出装置 - Google Patents

磁石構造体及びこれを用いた位置検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 磁極間領域において合成磁界の直線性(リニアリティ)を高めるとともに、十分な駆動力を確保する。
【解決手段】 磁束検出手段4が永久磁石1の磁極2,3間の境界領域6Aを横切って移動することによって位置検出が行われる。永久磁石1は、磁束検出手段4が移動する検出領域Aと、磁束検出手段4を永久磁石1に対して相対的に移動するための駆動機構5を駆動させる駆動領域Bとを有する。検出領域Bにおいては、境界領域6Aが磁束検出手段4の移動方向に対して斜めに形成されている。駆動領域Bにおいては、境界領域6Aが駆動機構5の移動方向に対して略直交して形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁石構造体及びこれを用いた位置検出装置に関するものであり、特に、多極着磁された永久磁石の隣接する磁極の境界領域における合成磁界の直線性(リニアリティ)を改善するための技術に関する。
相対運動する物体の運動を適当な信号に変換してその位置制御を正確に行う位置センサ(位置検出装置)の開発が進められており、例えば磁気検出手段と磁石とを用いた位置監視装置が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
特許文献1には、1部材が一定経路に沿い他部材に対して可動であるそれら1対の部材間の位置関係を監視するための位置監視装置において、前記1部材に固定された磁気装置であって前記経路とある角度をなして広がる一定の磁界強度をもった逆極性の隣接した磁界を発生するようになっておりそれによって該磁界の隣接箇所を横切って延長する経路上においてほぼ直線的に磁界強度を実現するようになっている前記磁気装置と、前記他部材に固定されていることにより前記両部材の相対運動に応答して前記延長経路に沿って運動しうるようになっている磁界強度センサ装置であって、該センサ装置が該両部材の該相対運動中に実質的に直線的な応答を行うようになっている前記磁界強度センサ装置と、を備えた位置監視装置が開示されている。
前記特許文献1記載の位置監視装置は、2極の永久磁石において、その境界に合成磁界の磁束密度が直線的に変化する領域を形成し、この領域を利用して位置制御を可能とするものである。この位置監視装置は、磁気センサ装置が電磁アクチュエータの制御要素の一部としての働きも有しており、例えば工作機械の制御系の他、AV機器やOA機器等、様々な分野への応用が期待されている。
ただし、前記特許文献1記載の方式を採用した場合、移動方向に対し、2極の永久磁石の境界領域が直角であるため、合成磁界の磁束密度が直線的に変化する範囲が狭く、位置検出機能を十分に発揮させることができず、微小な位置変化しか検出できない。各種電子機器の小型化に伴い、これら電子機器に搭載される部品についても小型化が進められているが、前記問題が大きな障害となり、用途が制約されているのが実情である。
このような状況から、磁束密度の直線的に変化する領域を拡大することが試みられている(例えば、特許文献2等を参照)。特許文献2には、隣接して配置されたS極とN極の磁石と、これら磁石に対して相対的に移動可能な部材に、初期状態で前記各磁石の間に位置するように固定され、前記部材の相対位置を検出する為の少なくとも1個以上の磁気検出手段とを備え、前記S極とN極の磁石の間には、これら磁石と前記部材の相対位置検出保証範囲に応じた大きさを持つ無磁極部分が設けられることを特徴とする位置検出装置が開示されている。
特許文献2記載の発明では、S極とN極の間に相対的位置検出保証範囲に応じた大きさを持つ無磁極部分を設け、例えば、ホール素子が変位する幅に応じてS極とN極の間の無磁極部分を広げたり、さらには複数のホール素子の出力の直線性の良い部分を切り換えて制御する方法が採られている。
あるいは、磁極を斜めに配置することで、比較的長いストロークでの位置検出を可能とする技術も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。特許文献3記載の発明では、2つのS極の間に長方形のN極領域を斜めに配置し、ホール素子をN極領域の長手方向に移動することによりN極領域の幅方向での位置が変化し、前記2つのS極の影響が変化することによる磁界強度の変化に基づいて位置検出を行うようにしている。
特開昭59−88602号公報 特開平8−136207号公報 特開平6−11303号公報
しかしながら、前記特許文献2記載の発明のように、S極とN極の間の無磁極部分を広げると、合成磁界の磁束密度において、連続的な変化は得られるものの、直線性を有する領域はさほど広がらないという問題が生ずるおそれがある。また、複数のホール素子の出力の直線性の良い部分を切り換えて制御する方法では、装置構成が煩雑になり、コスト上昇の要因となるおそれがある。
一方、特許文献3記載の発明のように、2つのS極の間に長方形のN極領域を斜めに配置し、磁束ガイドで磁極面に平行な方向へ磁束をホール素子に誘導し、当該ホール素子をN極領域の幅内で相対移動することで位置検出を行う構造では、3つの磁気媒体を用意する必要または3極の着磁が必要となり着磁操作が煩雑になるばかりか、2つのS極をバランス良く着磁する必要があり、また、磁束ガイドを別途必要とする等、やはり装置構成の煩雑化によるコスト上昇等が問題になる。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、互いに異なる磁極が隣接する境界領域において合成磁界の直線性(リニアリティ)を高めることが可能な磁石構造体を提供することを目的とし、これにより広範な位置検出が可能で、且つ十分な駆動磁界を得ることが可能な位置検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、複数の磁気検出手段(例えばホール素子)を用いることなく、且つ簡単な構成でありながら前記目的を達成することが可能な磁石構造体及び位置検出装置を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の磁石構造体は、複数極に着磁された永久磁石を有し、前記永久磁石に対向配置された磁束検出手段が前記永久磁石の互いに異なる磁極が隣接する境界領域を横切って相対的に移動し、前記永久磁石の磁極面に垂直な磁束密度成分を検出することによって位置検出が行われる磁石構造体であって、前記永久磁石は、磁束検出手段が移動する検出領域と、磁束検出手段を永久磁石に対して相対的に移動するための駆動機構を駆動させる駆動領域とを有し、前記検出領域においては、境界領域が前記磁束検出手段の移動方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする。
また、本発明の位置検出装置は、複数極に着磁された永久磁石と、前記永久磁石に対向配置され前記永久磁石の互いに異なる磁極が隣接する境界領域を横切って相対的に移動することによって位置検出を行う磁束検出手段と、前記永久磁石の磁力を利用して駆動され前記磁束検出手段の移動を行う駆動機構とを備えた位置検出装置であって、前記永久磁石は、磁束検出手段が移動する検出領域と、磁束検出手段を永久磁石に対して相対的に移動するための駆動機構を駆動させる駆動領域とを有し、前記検出領域においては、境界領域が前記磁束検出手段の移動方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする。
本発明の磁石構造体及び位置検出装置においては、磁束検出手段の移動により位置検出が行われる検出領域において、互いに異なる磁極が隣接する境界領域が磁束検出手段の移動方向に対して斜めに形成されていることが第1の特徴点である。
境界領域を斜めに形成することで、直線性(リニアリティ)の向上が実現される。直線性を向上するための構成としては、前記境界領域の方向の変更のみで済み、着磁も容易で着磁治具も簡単なもので済む。また、例えば傾斜角度を調整することにより、磁束検出素子の出力調整も容易に行える。
前述のように、直線性を有する領域が拡大された磁石構造体を用いることで、複数の磁気検出手段(例えばホール素子)を用いることなく位置検出可能範囲が拡大され、装置構成の簡略化や低コスト化等が実現される。
なお、磁極を斜めに配置する例としては、先の特許文献3記載の位置センサ装置を挙げることができるが、前述の通り、特許文献3記載の発明では、斜めに配置されるN極の両側にS極を配置することが必要であり、磁束ガイドで磁極面に平行な方向へ磁束をホール素子に誘導し、当該ホール素子をN極領域の長手方向に移動することによりN極領域の幅方向での位置が変化し、前記2つのS極の影響が変化することによる磁束ガイドで誘導される磁束密度の変化に基づいて位置検出を行うというのが基本原理である。これに対して、本発明では、互いに異なる磁極が隣接する磁極の境界領域を横切って磁束検出手段が移動し、永久磁石の磁極面に垂直な磁束密度成分を検出することが前提で、境界領域を挟んだ2極間の磁界変化を利用するというのが基本原理であり、本質的な技術思想が大きく異なる。
また、本発明の磁石構造体及び位置検出装置においては、磁力により駆動機構を駆動する駆動領域が、磁束検出手段により位置検出が行われる検出領域と一体に設けられていることが第2の特徴点である。
磁束検出手段の移動により位置検出を行う場合、磁束検出手段を移動するための駆動機構が必要である。通常、磁束検出手段の周囲にコイルを巻回する等して駆動機構を設け、磁束検出領域の磁力を利用して駆動機構及び磁束検出手段を駆動することが行われている。しかしながら、直線性の改善のために境界領域を前記移動方向に対して斜めに形成した場合、駆動領域で十分な駆動力を確保することが難しくなるおそれがある。そこで、本発明においては、前記駆動領域と検出領域を設け、位置検出は検出領域において位置検出手段を移動することにより行い、駆動力は駆動領域から得るようにしている。駆動領域では、前記直線性を考慮する必要がないので、任意に着磁することができ、例えば境界領域を駆動機構の移動方向に対して略直交して形成することで、十分な駆動力が得られる。
本発明の磁石構造体においては、検出領域において、互いに異なる磁極が隣接する境界領域を斜めに形成しているので、合成磁界の直線性(リニアリティ)を高めることが可能である。また、駆動領域を検出領域とは別に設けているので、十分な駆動磁界を得ることが可能である。したがって、本発明の磁石構造体を用いることで、位置検出可能な範囲を拡大することができ、且つ十分な駆動力を得ることが可能な位置検出装置を提供することが可能である。
また、本発明の位置検出装置では、位置検出可能な範囲が拡大されることから、例えば複数の磁気検出手段(ホール素子等)を用いる必要がなく、装置構成を簡略化することが可能であり、コストの低減を図ることも可能である。さらに、駆動領域において十分な駆動力を得ることが可能であることから、駆動機構の小型化、簡略化を図ることも可能であり、この点でもコストの削減が可能である。さらにまた、駆動領域と検出領域を一つの永久磁石に一体化して構成できるので、部品点数の削減が可能となり、更なるコストの削減を図ることができる。
以下、本発明を適用した磁石構造体及びこれを用いた位置検出装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の磁石構造体(永久磁石1)における着磁状態を示すものである。磁石構造体を構成する永久磁石1は、ここでは平板状の永久磁石であり、水平方向において多極着磁(2極着磁)されている。すなわち、図中左側部分の表面がN極2となるように着磁されるとともに、図中右側部分の表面がS極3となるように着磁されている。また、本実施形態の永久磁石1では、磁束検出手段4が移動し位置検出を行う検出領域(図中、上部領域)Aと、磁力を利用して駆動コイル等の駆動機構5の駆動が行われる駆動領域(図中、下部領域)Bとが一体化して設けられている。
多極着磁(2極着磁)の場合、前記N極2とS極3の境界部分には、いわゆるニュートラルゾーン(無着磁領域6)が発生するが、これはN極2とS極3の境界において不可避なものである。なお、前記N極2とS極3を複数個(2個)の永久磁石を組み合わせて構成することで、無着磁領域6を実質的に発生させなくすることも可能である。本実施形態の磁石構造体(永久磁石1)においては、検出領域Aと駆動領域Bのそれぞれにおいて着磁形態(無着磁領域6)の形態が最適化されており、位置検出における直線性の改善と、十分な駆動力の確保を両立するようにしている。前記検出領域Aでは、互いに異なる前記N極2とS極3がニュートラルゾーン(前記無着磁領域6)を挟んで隣接し、境界領域6Aを構成している。より具体的には、磁束密度測定によりN極のピーク値とS極のピーク値の間を示す。
先ず、検出領域Aであるが、前記磁束検出手段4による位置検出においては、磁束密度の直線変化領域の範囲が広いほど位置検出可能範囲Lが広くなる。また、磁束密度の直線変化領域の直線性(以下、リニアリティと称する。)が優れるほど、簡単な演算処理で正確な位置検出が可能になる。磁束密度の直線変化領域のリニアリティが低い場合、表面磁束密度波形に応じた煩雑な演算をしなければ正確な位置検出は難しい。さらに、例えば磁束検出手段4を設置した部材の移動を前記永久磁石1の磁力を利用して行う場合、前記永久磁石1から発生する磁束密度は大きい方が好ましい。
そこで本実施形態においては、図1に示すように、前記永久磁石1の検出領域Aにおいて、境界領域6Aを磁束検出手段4の移動方向に対して斜めに形成することで、永久磁石1の駆動領域B内の各磁極(N極2及びS極3)における発生磁界を低下させずに、磁束密度の直線変化領域の幅を広げるようにしている。
ここで、前記境界領域6Aの傾斜角度θは、位置検出可能範囲をLとした場合、前記磁束検出手段4の移動方向(図中、水平方向)に対して0.5≦L・tanθ≦6を満たすとすることが好ましく、1≦L・tanθ≦4とすることがより好ましい。L・tanθが0.5未満であると、境界領域6A上での磁束密度が低くなり、検出が困難になるおそれがある。逆に、前記L・tanθが6を越えると、リニアリティの向上が不十分なものとなるおそれがある。なお、式中Lは磁束密度測定における各極ピーク位置間距離の90%の長さを示す。傾斜角度θとしては、前記磁束検出手段2の移動方向(図中、水平方向)に対して3°〜45°とすることが好ましく、5°〜30°とすることがより好ましい。傾斜角度θが3°未満であると、無着磁領域6上での磁束が低くなり、検出が困難になるおそれがある。逆に、前記傾斜角度θが45°を越えると、リニアリティの向上が不十分なものとなるおそれがある。
前記無着磁領域6の幅wは、任意に設計することができるが、0.0mm〜2.5mmとすることが好ましく、0.5mm〜2.0mmとすることがより好ましい。前記無着磁領域6の幅wが2.5mmを越えると、発生する磁束が低下するおそれがある。
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、境界領域6Aを斜めに形成することが、磁束密度の直線変化領域の幅を広げる上で極めて有効であることを見出すに至った。具体的には、後述の実施例に記載するような実験を行い、前記境界領域6Aを斜めに形成することの効果を確認した。
一方、前記永久磁石1の駆動領域Bにおいては、検出領域Aのように無着磁領域6が斜めに形成されていると、駆動力を確保することが難しい。駆動コイル等の駆動機構5が駆動領域Bにおいて駆動力を確保するためには、N極2とS極3の境界での磁界反転が急峻であることが好ましい。
そこで、前記駆動領域Bにおいては、前記無着磁領域6を斜めに形成するのではなく、駆動機構5の移動方向(磁束検出手段2の移動方向)に対してほぼ直交するように形成している。このように駆動領域Bにおいて無着磁領域6を駆動機構5の移動方向と直交するように形成することで、N極2とS極3の境界領域での磁界反転が急峻なものとなり、永久磁石1の駆動領域Bと駆動機構5の相互作用により十分な駆動力を得ることが可能となる。
前述のように無着磁領域6が検出領域Aにおいて斜めに形成され駆動領域Bにおいて直交して形成された永久磁石1は、1枚の磁石を多極着磁することによって実現することができる。例えば、図2に示すように、永久磁石1との対向面において、斜めのギャップと直交方向のギャップとが形成されるような一組の着磁ヨーク7,8を用い、これら着磁ヨーク7,8に着磁コイル9を巻回した着磁装置を用いて着磁を行うことにより、図1に示すような着磁を行うことが可能である。あるいは、複数枚(2枚)の永久磁石を組み合わせて構成することも可能である。この場合には、隣接する永久磁石間のギャップが前記無着磁領域6に相当することになる。
本実施形態の磁石構造体を位置検出装置に用いる場合、駆動機構を(小型)マグネットの磁力で駆動させる必要があり、したがって使用する永久磁石1は、発生する磁力が大きい希土類磁石により形成されていることが好ましい。特に、高磁気特性であるR−T−B系(Rは希土類元素、Tは遷移金属元素、Bはホウ素である。)焼結磁石や、その他Sm−Co系焼結磁石等が好ましい。
図3は、前述の磁石構造体(永久磁石1)を用いた位置検出装置の構成を示すものである。位置検出装置は、前述の磁石構造体(永久磁石1)と、永久磁石1の磁界を検出する磁束検出手段4、及び前記磁束検出手段4を駆動(移動)する駆動機構5とを備えており、磁束検出手段4が永久磁石1の検出領域Aと対向して設置され、駆動機構5が永久磁石1の駆動領域Bと対向して設置されている。磁束検出手段4としては、ホール素子の他、MRセンサ等も用いることができる。ホール素子による検出では、直流電流を印加することで、磁束密度に比例した電圧を出力することができるため回路が簡単になり、また、停止された位置でも永久磁石1からの磁束によって検出が可能となる。
前記位置検出装置においては、磁束検出手段4が永久磁石1の検出領域Aにおいて相対移動し、各位置において検出される磁界強度に基づいて位置を算出する。この場合、前記永久磁石1を固定し磁束検出手段4を移動するようにしても良いし、逆に磁束検出手段4を固定し永久磁石1を移動するようにしてもよい。したがって前記相対移動のための駆動機構が必要であり、例えば図3に示すように、磁束検出手段4を基板10上に設置するとともに、磁束検出手段4に隣接して駆動コイル11を駆動機構として設置し、当該駆動コイル11と永久磁石1の駆動領域B間に働く磁気的相互作用を駆動力として利用して相対移動させる。この場合、磁束検出手段4が設置された基板10を可動部材として、あるいは永久磁石1の設置側を可動部材として互いに相対移動させればよい。また、図4に示す通り、永久磁石1における着磁の向きが固定されているため、永久磁石1に対して検出手段2を永久磁石辺に垂直または平行に一方向に移動させることで移動軸を一軸とするこができ、簡易な構造とすることができる。
以上の構成を有する位置検出装置においては、検出領域Aにおいて境界領域6Aを斜めに形成しているので、磁界強度を低下させることなく磁極間領域において合成磁界の直線性(リニアリティ)を高めることが可能であり、位置検出可能な範囲を拡大することが可能である。また、駆動領域Bにおいては、境界領域6Aを移動方向と直交して形成しているので、十分な駆動力を得ることが可能であり、俊敏な応答性を有するアクチュエータとして機能させることが可能である。
先ず、永久磁石として平板状のNdFeB系焼結磁石を用い、これを2極着磁した。用いた永久磁石は、検出領域Aにおける位置を検出する方向の長さが10mm、位置を検出する方向に垂直の方向の幅が5mm、厚さが2mmである。また、前記2極着磁に際しては、無着磁領域が斜めに形成されるようにした。無着磁領域幅は1.5mm、その傾斜角度θは10°である。これを永久磁石aとした。
同様の永久磁石に対して、無着磁領域が磁束検出手段の移動方向と直交して形成されるように2極着磁を行った。また、無着磁領域の幅を変えて2極着磁を行った。無着磁領域の幅が0.8mmである永久磁石を永久磁石b1、無着磁領域の幅が1.5mmである永久磁石を永久磁石b2、無着磁領域の幅が2.0mmである永久磁石を永久磁石b3、無着磁領域の幅が3.0mmである永久磁石を永久磁石b4、無着磁領域の幅が4.0mmである永久磁石を永久磁石b5とした。なお、前記無着磁領域の幅は、マグネットビュアにより確認し測定した値である。
前記永久磁石a及び永久磁石b1,b2,b3,b4,b5を磁石構造体とし、ホール素子を対向して配置し、ホール素子の移動による磁束密度の変化を調べた。永久磁石の無着磁領域の中心からの距離と磁束密度の関係を図5に示す。図5から明らかなように、無着磁領域を斜めに形成した永久磁石aにおいて直線性(リニアリティ)が格段に向上しており、中心からの距離が±3mm以上と広範囲に亘って直線性が維持されている。これに対して、無着磁領域を磁束検出手段の移動方向と略直交して形成した永久磁石b1,b2,b3,b4,b5では、直線性の得られる範囲が著しく低下している。また、無着磁領域の幅を3.0mm以上と大きくした場合には、中心からの距離が±3mmの範囲内で磁束密度の変曲点も見られる。
次に、同様の永久磁石に対して、無着磁領域が斜めに形成されるようにし、その傾斜角度を変えて2極着磁を行った。傾斜角度が5°である永久磁石をb6、傾斜角度が15°である永久磁石をb7、傾斜角度が45°である永久磁石をb8とした。なお、永久磁石aのL・tanθ=1.21であり、永久磁石b6ではL・tanθ=0.60、永久磁石b7ではL・tanθ=1.83、永久磁石b8ではL・tanθ=5.76である。傾斜角度θに対するL・tanθの値を表1に示す。
Figure 2008241369
さらに、傾斜角度を10°と固定して、無着磁領域の幅を変えて2極着磁を行った。無着磁領域の幅が0.8mmである永久磁石をb9、無着磁領域の幅が2.0mmである永久磁石をb10、無着磁領域の幅が3.0mmである永久磁石をb11とした。
図6に無着磁領域の傾斜角度を変えた場合の磁束密度の変化の様子を示す。図6から明らかなように、無着磁領域の傾斜角度を大きくすることで、発生する磁束が大きくなることがわかった。ただし、傾斜角度があまり大きくなりすぎるとリニアリティの低下が見られ、傾斜角度45°では直性性が得られる範囲が若干狭くなっている。また、図7に無着磁領域の幅を変えた場合の磁束密度の変化の様子を示す。図7から明らかなように、無着磁領域の無着磁領域の幅wが大きくなると発生する磁束が小さくなっており、無着磁領域の幅wをできる限り小さくすることが発生する磁束を確保する上で有利であることがわかった。
以上、本発明を適用した実施形態及び実施例について説明したが、本発明の磁石構造体及び位置検出装置がこれら実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
本発明を適用した磁石構造体(永久磁石)の一例を示す概略平面図である。 永久磁石を着磁するための着磁装置の一例を示す模式的な平面図である。 位置検出装置の構成例を示す概略斜視図である。 本発明を適用した磁石構造体(永久磁石)の他の例を示す概略平面図である。 無着磁領域の幅w=1.5mm、傾斜角度θ=10°とした場合における磁束密度の変化を、従来例に相当する傾斜角度θ=90°(w=0.8mm〜4.0mm)とした場合の磁束密度の変化と比較して示す特性図である。 無着磁領域の幅wを1.5mmに固定し、傾斜角度θを5°〜45°とした場合における磁束密度の変化を示す特性図である。 無着磁領域の傾斜角度θを10°に固定し、幅wを0.8mm〜3.0mmとした場合における磁束密度の変化を示す特性図である。
符号の説明
1 永久磁石、2 N極、3 S極、4 磁束検出手段、5 駆動機構、6 無着磁領域、6A 境界領域、7,8 着磁ヨーク、9 着磁コイル、10 基板、11 駆動コイル

Claims (10)

  1. 複数極に着磁された永久磁石を有し、前記永久磁石に対向配置された磁束検出手段が前記永久磁石の互いに異なる磁極が隣接する境界領域を横切って相対的に移動し、前記永久磁石の磁極面に垂直な磁束密度成分を検出することによって位置検出が行われる磁石構造体であって、
    前記永久磁石は、磁束検出手段が移動する検出領域と、磁束検出手段を永久磁石に対して相対的に移動するための駆動機構を駆動させる駆動領域とを有し、
    前記検出領域においては、境界領域が前記磁束検出手段の移動方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする磁石構造体。
  2. 前記検出領域において、境界領域の傾斜角度θが前記磁束検出手段の移動方向の位置検出可能範囲Lに対して0.5≦L・tanθ≦6なる関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の磁石構造体。
  3. 前記駆動領域においては、境界領域が駆動機構の移動方向に対して略直交して形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の磁石構造体。
  4. 前記磁束検出手段の移動方向において、磁束検出手段が横切る位置での境界領域の中心位置と、前記駆動領域の境界領域の中心位置とが略一致するように境界領域が形成されていることを特徴とする請求項3記載の磁石構造体。
  5. 前記永久磁石が前記検出領域と駆動領域が一体化した平板状の永久磁石であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の磁石構造体。
  6. 複数極に着磁された永久磁石と、前記永久磁石に対向配置され前記永久磁石の互いに異なる磁極が隣接する境界領域を横切って相対的に移動することによって位置検出を行う磁束検出手段と、前記永久磁石の磁力を利用して駆動され前記磁束検出手段の移動を行う駆動機構とを備えた位置検出装置であって、
    前記永久磁石は、磁束検出手段が移動する検出領域と、磁束検出手段を永久磁石に対して相対的に移動するための駆動機構を駆動させる駆動領域とを有し、
    前記検出領域においては、境界領域が前記磁束検出手段の移動方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする位置検出装置。
  7. 前記検出領域において、前記境界領域の傾斜角度θが前記磁束検出手段の移動方向の位置検出可能範囲Lに対して0.5≦L・tanθ≦6なる関係を満たすことを特徴とする請求項6記載の位置検出装置。
  8. 前記駆動領域においては、境界領域が駆動機構の移動方向に対して略直交して形成されていることを特徴とする請求項6または7記載の位置検出装置。
  9. 前記磁束検出手段の移動方向において、磁束検出手段が横切る位置での境界領域の中心位置と、前記駆動領域の境界領域の中心位置とが略一致するように境界領域が形成されていることを特徴とする請求項8記載の位置検出装置。
  10. 前記磁束検出手段がホール素子であることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項記載の位置検出装置。
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