JP2008240757A - スラストころ軸受 - Google Patents

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真司 大石
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Abstract

【課題】潤滑油の通油性を向上することができるスラストころ軸受を提供する。
【解決手段】スラストころ軸受21aは、ころ31を保持する環状の保持器11aとを備える。外輪22aおよび内輪22bの間には、潤滑油が供給される第一のすき間30aと、潤滑油が排出される第二のすき間30bとが形成されている。保持器11aは、径の異なる一対の環状部13a、13bを含む。ここで、保持器11aの回転軸線20bと平行であって回転軸線20bを含む平面で切断した断面において、第一のすき間30aが位置する側の環状部13bの面積は、第二のすき間30bが位置する側の環状部13aの面積よりも大きい。
【選択図】図1

Description

この発明は、スラストころ軸受に関し、特に、その内部に潤滑油が供給されるスラストころ軸受に関するものである。
自動車用オートマチックトランスミッションにおいて、スラスト荷重が負荷される部分については、スラスト荷重を支持するスラストころ軸受が配置される。昨今は、スラストころ軸受が要求される特性として、スラストころ軸受の破損の恐れの低減や発熱の防止等の他、低燃費化の観点から、スラストころ軸受の低トルク化が要求されている。
スラストころ軸受は、一般的には、外輪や内輪といった軌道輪と、複数のころと、ころを保持する保持器とから構成される。ここで、従来におけるスラストころ軸受の構成について説明する。図10は、従来におけるスラストころ軸受の一部を示す断面図である。図10を参照して、スラストころ軸受101は、外輪102aと、内輪102bと、外輪102aおよび内輪102bの間に配置される複数の針状ころ103と、複数の針状ころ103を保持する保持器104とからなる。針状ころ103を保持する保持器104は、その断面がW字形状となるように、保持器104の回転軸方向に複数回屈曲されている。外輪102aと内輪102bとの間に、針状ころ103を保持する保持器104が配置される。
上記と同様の構成のスラストころ軸受に関する技術が、特開2006−170369号公報(特許文献1)や特開2006−170370号公報(特許文献2)、特開2006−170371号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献1、特許文献2および特許文献3によると、スラストころ軸受は、一対の軌道輪と、各軌道輪間に配置される針状ころと、針状ころを保持する保持器とを備える。保持器は、軸方向に複数回屈曲させ、断面W字形に形成されている。そして、外輪鍔部と保持器との接触面積を小さくすることにより、径方向の接触時における摩擦を低減し、低トルク化を図っている。
また、特開2006−118562号公報(特許文献4)や特開2006−189133号公報(特許文献5)によると、スラストころ軸受に備えられる保持器は、断面コの字形で全体を円環状に造られた一対の素子を、最中状に組み合わせて構成されている。特許文献4においても、軌道輪と保持器との径方向での接触面積を小さくして摩擦を低減し、低トルク化を図っている。特許文献5においては、接触部に耐摩耗性等の優れた表面硬化処理を施し、摩耗を低減させることにしている。
特開2006−170369号公報 特開2006−170370号公報 特開2006−170371号公報 特開2006−118562号公報 特開2006−189133号公報
スラストころ軸受101には、その内部に潤滑油が供給される。潤滑油は、例えば、回転軸が配置されるスラストころ軸受101の内径側から供給される。供給された潤滑油は、スラストころ軸受101内部を通過し、外径側から排出される。具体的には、図10を再び参照して、外輪102aおよび内輪102bの間の内径側のすき間106aから図10中の矢印Zで示す方向に潤滑油が供給される。潤滑油は、スラストころ軸受101内を通過した後、外輪102aおよび内輪102bの間の外径側のすき間106bから図10中の矢印Zで示す方向に排出される。このようにして、スラストころ軸受101内に潤滑油が供給される。
ここで、潤滑油がスラストころ軸受101内に長時間滞留すると、スラストころ軸受101の発熱を防止することができない恐れがある。また、潤滑油の攪拌抵抗が増大し、低トルク化を図ることが困難となる。
特許文献1、特許文献2および特許文献3によると、保持器は、板厚の薄い平板状部材を断面W形状となるように複数回屈曲させた形状である。また、特許文献4および特許文献5によると、保持器は、軸方向に屈曲された2枚の薄板上の素子から構成されている。これらのような形状の保持器は、形状が複雑であるため、保持器内に潤滑油がより滞留しやすい。そうすると、上記した問題が顕著になる。
この発明の目的は、潤滑油の通油性を向上することができるスラストころ軸受を提供することである。
この発明に係るスラストころ軸受は、一対の軌道輪と、一対の軌道輪間に配置される複数のころと、ころを保持する環状の保持器とを備える。一対の軌道輪間には、潤滑油が供給される第一のすき間と、潤滑油が排出される第二のすき間とが形成されている。保持器は、径の異なる一対の環状部と、一対の環状部を連結し、ころを収容するポケットを形成するように径方向に延びる複数の柱部とを含む。ここで、保持器の回転軸線と平行であって回転軸線を含む平面で切断した断面において、第一のすき間が位置する側の環状部の面積は、第二のすき間が位置する側の環状部の面積よりも大きい。
このように構成することにより、スラストころ軸受内において、潤滑油が排出される第二のすき間側に位置する環状部付近の空間を、潤滑油が供給される第一のすき間側に位置する環状部付近の空間よりも広くすることができる。そうすると、保持器の環状部による潤滑油の排出の阻害を低減し、潤滑油を円滑に排出することができる。したがって、潤滑油のスラストころ軸受の内部での滞留を低減することができ、潤滑油の通油性を向上することができる。
好ましくは、第一のすき間が位置する側の環状部の回転軸方向の厚みは、第二のすき間が位置する側の環状部の回転軸方向の厚みよりも大きい。こうすることにより、スラストころ軸受内において、第二のすき間側に位置する環状部と軌道輪とのすき間を、第一のすき間側に位置する環状部と軌道輪とのすき間よりも広くすることができる。そうすると、第二のすき間側の回転軸方向の空間を、第一のすき間側の回転軸方向の空間よりも広くすることができる。したがって、より確実に潤滑油の滞留を低減することができる。
さらに好ましくは、各柱部は、第一の領域と、径方向において第一の領域よりも第二のすき間側に位置する第二の領域とを含む。ここで、第一の領域の回転軸方向の厚みは、第二の領域の回転軸方向の厚みよりも大きい。こうすることにより、スラストころ軸受内において、さらに第二のすき間側の回転軸方向の空間を、第一のすき間側の回転軸方向の空間よりも広くすることができる。したがって、さらに潤滑油の滞留を低減することができる。
さらに好ましくは、保持器は、回転軸方向に折曲げられておらず、平板状である。このような保持器は、単純な形状であるため、保持器内での潤滑油の滞留は低減する。したがって、さらに潤滑油の滞留を低減することができる。
さらに好ましくは、上記した断面において、保持器の径方向の少なくとも一方側の端面は、径方向に突出する凸形状部を含む。こうすることにより、保持器の端面を潤滑油が円滑に流すことができる。したがって、さらに潤滑油の滞留を低減することができる。
この発明によると、スラストころ軸受内において、潤滑油が排出される第二のすき間側に位置する環状部付近の空間を、潤滑油が供給される第一のすき間側に位置する環状部付近の空間よりも広くすることができる。そうすると、保持器の環状部による潤滑油の排出の阻害を低減し、潤滑油を円滑に排出することができる。したがって、潤滑油のスラストころ軸受の内部での滞留を低減することができ、潤滑油の通油性を向上することができる。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる軌道輪としての外輪の構成について説明する。図2は、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる外輪を、板厚方向から見た図である。図3は、図2に示す外輪を、図2中のIII−III断面で切断した場合の断面図である。
図2および図3を参照して、軌道輪としての外輪22aは、その中央に貫通穴28を有し、環状である。外輪22aは、その表面に外輪軌道面24aを有する外輪円板部23aと、外輪円板部23aの外径側端部から回転軸方向に延びる外輪鍔部25aとを含む。スラストころ軸受の運転状態において、外輪22aは、回転軸線20aを中心に回転する。外輪鍔部25aは、回転軸方向の端部が内径側に若干折曲げられたステーキング部27aを含む。ステーキング部27aは、円周方向に約90度間隔で4つ設けられている。ステーキング部27aにより、スラストころ軸受を構成する各構成部材の分離を防止している。
次に、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる保持器の構成について説明する。図4は、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる保持器を、板厚方向から見た図である。図5は、図4に示す保持器のうち、図4中のVで示すポケット部分の拡大図である。図6は、図4に示す保持器を、図4中のVI−VI断面で切断した場合の断面図である。図7は、図6に示す保持器のポケット部分を、図6中のVII−VII断面で切断した場合の断面図である。図8は、図6に示す保持器のポケット部分を、図6中のVIII−VIII断面で切断した場合の断面図である。
図4〜図8を参照して、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる保持器の構成について説明する。スラストころ軸受の保持器11aは、板厚方向に折曲げられておらず、環状である。保持器11aは、板厚方向に貫通する貫通穴12をその中央部に有する。保持器11aは、ころを収容する複数のポケット14aを有する。ポケット14aは、略放射状に配置される。保持器11aは、径の異なる一対の環状部、ここでは外径側の環状部13aおよび内径側の環状部13bと、ポケット14aを形成するようにそれぞれの環状部13a、13bを連結する複数の柱部15aとを含む。スラストころ軸受の運転状態において、保持器11aは、回転軸線20bを中心に回転する。
ここで、図5に示す断面、すなわち、保持器11aの回転軸線20bと平行であって回転軸線20bを含む平面で切断した断面において、一対の環状部13a、13bのうち、内径側に位置する環状部13bの面積は、外径側に位置する環状部13aの面積よりも、大きく構成されている。この場合、径方向の長さはほぼ同じであり、環状部13bの厚みLが、環状部13aの厚みLよりも大きく構成されている。
保持器11aには、ポケット14a内に収容するころの脱落を防止する第一および第二のころ止め部16a、16bと、ころを案内する第一および第二のころ案内部17a、17bが設けられている。第一のころ止め部16aにより、図6中の矢印Aで示す方向と逆の方向へのころの脱落を防止する。第二のころ止め部16bにより、図6中の矢印Aで示す方向へのころの脱落を防止する。
保持器11aは、第一および第二のころ案内部17a、17bによって案内される。第一および第二のころ案内部17a、17bは、その断面が円弧状である(図7、図8参照)。第一および第二のころ止め部16a、16b、第一および第二のころ案内部17a、17bは、冶具によるコイニング加工等により設けられる。
図6に示す断面、すなわち、保持器11aの回転軸線20bと平行であって回転軸線20bを含む平面で切断した断面において、保持器11aの外径側端面および内径側端面は、径方向に突出する凸形状部18a、18bを含む。凸形状部18a、18bは、略円弧形状である。この場合、凸形状部18a、18bの全体が、略円弧形状である。
次に、上記した外輪22aおよび保持器11aを備え、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受の構成について説明する。この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受は、例えば、自動車のオートマチックトランスミッションのうち、スラスト荷重が負荷される箇所に配置される。図1は、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受の一部を示す断面図であり、図3中のIで示す部分に対応する。
図1〜図8を参照して、スラストころ軸受21aは、外輪22aと、内輪22bと、外輪22aおよび内輪22bの間に配置される複数のころ31と、複数のころ31を保持する保持器11aとを備える。スラストころ軸受21aは、保持器11aの板厚方向に負荷されるスラスト荷重を支持する。スラストころ軸受21aの運転状態において、スラストころ軸受21aには、潤滑油が供給される。
軌道輪としての内輪22bは、その中央に貫通穴を有し、環状である。内輪22bは、その表面に内輪軌道面24bを有する内輪円板部23bと、内輪円板部23bの内径側端部から回転軸方向に延びる内輪鍔部25bとを含む。内輪鍔部25bにも、回転軸方向の端部が外径側に若干折曲げられたステーキング部(図示せず)が設けられている。
ころ31は、外輪軌道面24aおよび内輪軌道面24b上を転動する。ポケット14a内にころ31を収容した保持器11aは、外輪22aおよび内輪22b間に配置される。この場合、保持器11aの径方向外側には、外輪22aの外輪鍔部25aが位置し、径方向内側には、内輪22bの内輪鍔部25bが位置する。
外輪22aと内輪22bとの間には、潤滑油が供給される第一のすき間30aおよび潤滑油が排出される第二のすき間30bが形成される。具体的には、内輪鍔部25bおよび外輪円板部23aの間に第一のすき間30aが形成され、外輪鍔部25aおよび内輪円板部23bの間に第二のすき間30bが形成される。すなわち、内輪鍔部25bおよび外輪円板部23aは、第一のすき間30aの形成に関与し、外輪鍔部25aおよび内輪円板部23bは、第二のすき間30bの形成に関与する。第一のすき間30aを利用して、スラストころ軸受21a内に潤滑油が供給され、第二のすき間30bを利用して、スラストころ軸受21a外に潤滑油が排出される。ここでは、内径側となる第一のすき間30aから図1中の矢印Cに示す方向に潤滑油が供給される。そして、外径側となる第二のすき間30bから図1中の矢印Dに示す方向に潤滑油が排出される。このようにしてスラストころ軸受21a内を潤滑油が通過する。
ここで、スラストころ軸受21aに備えられる保持器11aを上記した構成とすることにより、スラストころ軸受21a内において、潤滑油が排出される第二のすき間30b側に位置する環状部13a付近の空間を、潤滑油が供給される第一のすき間30a側に位置する環状部13b付近の空間よりも広くすることができる。そうすると、保持器11aの環状部13aによる潤滑油の排出の阻害を低減し、潤滑油を円滑に排出することができる。したがって、スラストころ軸受21aの内部での潤滑油の滞留を低減することができ、潤滑油の通油性を向上することができる。
また、環状部13bの回転軸方向の厚みは、環状部13aの回転軸方向の厚みよりも大きいため、スラストころ軸受21a内において、環状部13aと外輪22aおよび内輪22bとのすき間を、環状部13bと外輪22aおよび内輪22bとのすき間よりも広くすることができる。そうすると、第二のすき間30b側の回転軸方向の空間を第一のすき間30a側の回転軸方向の空間よりも広くすることができる。したがって、より確実に潤滑油の滞留を低減することができる。
この場合、第二のすき間30bは、第一のすき間30aよりも広く構成されている。具体的には、図1に示す断面、すなわち、外輪22aの回転軸線20aと平行であって回転軸線20aを含む断面において、第二のすき間30bの長さをLとし、第一のすき間の長さをLとすると、LをLよりも長くする。この場合、第二のすき間30bを形成する外輪鍔部25aの回転軸方向の長さをLとし、第一のすき間30aを形成する内輪鍔部25bの回転軸方向の長さをLとすると、LをLよりも短くしている。こうすることにより、潤滑油のスラストころ軸受21aの内部での滞留を低減することができる。なお、内輪円板部23bの径方向の長さを、外輪円板部23aの径方向の長さよりも短くすることにより、第二のすき間30bを、第一のすき間30aよりも広くする構成としてもよい。
さらに、スラストころ軸受21aに備えられる保持器11aは、板厚方向に折曲げられておらず、単純形状であるため、保持器11a内での潤滑油の滞留を低減することができる。そうすると、このような保持器11aを備えるスラストころ軸受21aは、潤滑油を円滑に流すことができる。したがって、さらに潤滑油の滞留を低減することができる。
また、保持器11aの凸形状部18a、18bは、略円弧形状であるため、凸形状部18a、18bを潤滑油が通過する際に、潤滑油を円滑に流すことができる。したがって、さらに潤滑油の滞留を低減することができる。
なお、スラストころ軸受21aの運転時においては、保持器11aが外輪22aまたは内輪22bと接触し、外輪22aまたは内輪22bから径方向、すなわち、図1中の矢印Bの方向または逆の方向に荷重を負荷される場合がある。しかし、外輪22aまたは内輪22bと保持器11aが接触した場合、具体的には、外輪鍔部25aの内径側の面26aまたは内輪鍔部25bの外径側の面26bと保持器11aが接触した場合においても、保持器11aの外径側および内径側端面は、径方向に突出する略円弧形状の凸形状部18a、18bを含むため、外輪22aまたは内輪22bと保持器11aとの接触面積を小さくすることができる。そうすると、接触状態において発生する摩擦を小さくして、低トルクとすることができる。したがって、このような構成の保持器11aは、破損の恐れを低減し、低トルク化を図ることができる。この場合、凸形状部18a、18bは、略円弧形状であるため、外輪22aまたは内輪22bと保持器11aとが接触する際に、線接触することになる。したがって、接触面積をさらに小さくすることができるため、低トルク化を図ることができる。
ここで、スラストころ軸受21aに備えられるころ31について、その端面をころ31の軸線方向に突出する凸曲面を含む構成とすることにしてもよい。具体的には、例えば、ころ31の端面32a、32bを、ころ31の軸線方向に突出する丸面形とする。こうすることにより、スラストころ軸受21aの運転状態において、ころ31の端面32a、32bを潤滑油が通過する際に、円滑に流すことができる。また、ころ31の端面32a、32bが保持器11aのポケット14aの壁面19a、19bと接触した場合においても、接触面積を小さくすることができる。したがって、さらにスラストころ軸受21aの低トルク化を図ることができる。
また、スラストころ軸受21aに備えられるころ31について、その転動面33にフルクラウニングを設けることにしてもよい。フルクラウニングとは、ころ31の軸線方向の中心部の径が最大となるよう転動面33の全体に設けられたクラウニングをいう。こうすることにより、ころ31と外輪22aまたは内輪22bとの接触面積を小さくすることができ、外径側と内径側の周速差による滑りを低減することができる。また、潤滑油を円滑に流すこともできる。したがって、さらにスラストころ軸受21aの低トルク化を図ることができる。
また、各柱部15aは、第一の領域と、径方向において第一の領域よりも第二のすき間30b側に位置する第二の領域とを含み、第一の領域の回転軸方向の厚みは、第二の領域の回転軸方向の厚みよりも大きくなるよう構成してもよい。
図9は、この場合におけるスラストころ軸受の一部を示す断面図であり、図1に対応する。図9を参照して、スラストころ軸受21cは、外輪22cと、内輪22dと、複数のころ31と、保持器11cとを備える。外輪22cは、その表面に外輪軌道面24cを有する外輪円板部23cと、外輪円板部23cの外径側端部から回転軸方向に延びる外輪鍔部25cとを含む。また、内輪22dは、その表面に内輪軌道面24dを有する内輪円板部23dと、内輪円板部23dの内径側端部から回転軸方向に延びる内輪鍔部25dとを含む。内輪鍔部25dおよび外輪円板部23cの間に第一のすき間30cが形成され、外輪鍔部25cおよび内輪円板部23dの間に第二のすき間30dが形成される。
保持器11cは、外径側の環状部13cおよび内径側の環状部13dと、ポケット14cを形成するようにそれぞれの環状部13c、13dを連結する複数の柱部15cとを含む。環状部13dの厚みが、環状部13cの厚みよりも大きく構成されている。スラストころ軸受21cの運転状態において、保持器11cは、回転軸線20cを中心に回転する。スラストころ軸受21cの基本的な構成については、図1に示すスラストころ軸受21aと同様であるため、その説明を省略する。
ここで、柱部15cは、第一の領域35aと、径方向において第一の領域35aよりも第二のすき間30b側に位置する第二の領域35bとを含む。第一の領域35aの回転軸方向の厚みは、第二の領域35bの回転軸方向の厚みよりも大きくなるよう構成されている。こうすることにより、スラストころ軸受21c内において、さらに第二のすき間30d側の回転軸方向の空間を、第一のすき間30c側の回転軸方向の空間よりも広くすることができる。したがって、さらに潤滑油の滞留を低減することができる。
なお、上記の実施の形態においては、外輪および内輪がそれぞれ円板部および鍔部を含む構成としたが、これに限らず、例えば、鍔部を含まない外輪または内輪を備えるスラストころ軸受についても適用される。また、外径側から潤滑油を供給し、内径側から潤滑油を排出する構成のスラストころ軸受についても適用される。
なお、上記の実施の形態においては、保持器の外径側および内径側端面は、径方向に突出する凸形状部を含むことにしたが、これに限らず、外径側および内径側端面のうち、いずれか一方について、径方向に突出する凸形状部を含む構成としてもよい。
また、上記においては、凸形状部は、上記した断面形状において、略円弧形状としたが、これに限らず、R面形状等、他の断面形状であってもよい。さらに、複数の曲線から構成される断面形状であってもよい。こうすることにより、凸形状部をより適切な形状とすることができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係るスラストころ軸受は、自動車のオートマチックトランスミッションに有効に利用される。
この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受の一部を示す断面図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる外輪を板厚方向から見た図である。 図2に示す外輪を、図2中のIII−III断面で切断した場合の断面図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受に備えられる保持器を板厚方向から見た図である。 図4に示す保持器のポケット部分を、板厚方向から見た拡大図である。 図4に示す保持器を、図4中のVI−VI断面で切断した場合の断面図である。 図6に示す保持器のポケット部分を、図6中のVII−VII断面で切断した場合の断面図である。 図6に示す保持器のポケット部分を、図6中のVIII−VIII断面で切断した場合の断面図である。 この発明の他の実施形態に係るスラストころ軸受の一部を示す断面図である。 従来におけるスラストころ軸受の一部を示す断面図である。
符号の説明
11a,11c 保持器、12,28 貫通穴、13a,13b,13c,13d 環状部、14a,14c ポケット、15a,15c 柱部、16a 第一のころ止め部、16b 第二のころ止め部、17a 第一のころ案内部、17b 第二のころ案内部、18a,18b 凸形状部、19a,19b 壁面、20a,20b,20c 回転軸線、21a,21c スラストころ軸受、22a,22c 外輪、22b,22d 内輪、23a,23c 外輪円板部、23b,23d 内輪円板部、24a,24c 外輪軌道面、24b,24d 内輪軌道面、25a,25c 外輪鍔部、25b,25d 内輪鍔部、26a,26b 面、27a ステーキング部、30a,30c 第一のすき間、30b,30d 第二のすき間、31 ころ、32a,32b 端面、33 転動面、35a 第一の領域、35b 第二の領域。

Claims (5)

  1. 一対の軌道輪と、
    前記一対の軌道輪間に配置される複数のころと、
    前記ころを保持する環状の保持器とを備えるスラストころ軸受であって、
    前記一対の軌道輪間には、潤滑油が供給される第一のすき間と、潤滑油が排出される第二のすき間とが形成されており、
    前記保持器は、径の異なる一対の環状部と、前記一対の環状部を連結し、前記ころを収容するポケットを形成するように径方向に延びる複数の柱部とを含み、
    前記保持器の回転軸線と平行であって前記回転軸線を含む平面で切断した断面において、前記第一のすき間が位置する側の環状部の面積は、前記第二のすき間が位置する側の環状部の面積よりも大きい、スラストころ軸受。
  2. 前記第一のすき間が位置する側の環状部の回転軸方向の厚みは、前記第二のすき間が位置する側の環状部の回転軸方向の厚みよりも大きい、請求項1に記載のスラストころ軸受。
  3. 前記各柱部は、第一の領域と、径方向において前記第一の領域よりも前記第二のすき間側に位置する第二の領域とを含み、
    前記第一の領域の回転軸方向の厚みは、前記第二の領域の回転軸方向の厚みよりも大きい、請求項1または2に記載のスラストころ軸受。
  4. 前記保持器は、板厚方向に折曲げられておらず、平板状である、請求項1〜3のいずれかに記載のスラストころ軸受。
  5. 前記断面において、前記保持器の径方向の少なくとも一方側の端面は、径方向に突出する凸形状部を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のスラストころ軸受。
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