JP2008240642A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料カットを行うことで点火プラグに燻りが生じてしまうことを抑制可能な、内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】ECU80は、前サイクルにおける燃焼状態が良好でないと判定された場合、燃料カットを禁止する。また、ECU80は、吸気ポート22の燃料付着量が所定の判定付着量より少ないと判定された場合、燃焼状態が良好であるか否かに拘らず、燃料カットを許可すると共に点火カットを許可する。燃料カットを実行している時に吸気通路に付着していた燃料が剥離して気筒内に流入してもその量は少量であるため、点火カットを行っても気筒内に流入した燃料により点火プラグ66に燻りが生じることがない。燃料カットを行うことで内燃機関10としての燃費を低減すると共に、点火カットを行うことで点火プラグ66による電力消費を抑制する。
【選択図】図1
【解決手段】ECU80は、前サイクルにおける燃焼状態が良好でないと判定された場合、燃料カットを禁止する。また、ECU80は、吸気ポート22の燃料付着量が所定の判定付着量より少ないと判定された場合、燃焼状態が良好であるか否かに拘らず、燃料カットを許可すると共に点火カットを許可する。燃料カットを実行している時に吸気通路に付着していた燃料が剥離して気筒内に流入してもその量は少量であるため、点火カットを行っても気筒内に流入した燃料により点火プラグ66に燻りが生じることがない。燃料カットを行うことで内燃機関10としての燃費を低減すると共に、点火カットを行うことで点火プラグ66による電力消費を抑制する。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御に関し、詳細には、自動車に原動機として搭載される内燃機関の燃料噴射制御に関する。
従来から、自動車に原動機として搭載される内燃機関は、燃料消費の低減や車両の運転性を向上させるために、車両減速時に、燃料噴射装置による燃料供給を遮断する、いわゆる燃料カットを行うことが知られている。車両減速時に燃料カットを行うことで、燃料消費を節減できるだけでなく、燃料がカットされた内燃機関の抵抗により、車両の減速を良好なものにすることで、運転性の向上に寄与している。
また、内燃機関には、燃料噴射弁が吸気ポート等の吸気通路内に燃料を噴射するものが知られており、燃料噴射弁から噴射された燃料のうち一部は、吸気通路の内壁に付着する。吸気通路の内壁に付着する燃料量が多いと、噴射された燃料は、吸気通路の内壁において液膜を形成する。内壁に付着して液膜となった燃料の一部は、通路内壁の熱や通路内を流れる吸気の流れ等により剥離し、液滴に状態変化し、吸気弁の開弁期間に、吸気通路から気筒内に流入することとなる。
このように吸気通路内に燃料を噴射する内燃機関において、燃料カットを開始を行っている間、点火プラグは、一般的に、点火を停止せずに継続している。これにより、燃料カット開始後において、吸気通路の内壁に付着していた燃料がある程度、液膜の状態や液滴の状態で気筒内に流入しても、少量であれば、気筒内において点火プラグの点火により着火して燃焼させることができる。
このように気筒内で、燃料が十分に気化していない状態の燃料を燃焼させると、煤等の粒子状物質が生じ易く、生成された粒子状物質が点火プラグの火花放電部に付着し堆積して点火火花が生じにくくなる、いわゆる「点火プラグの燻り」が生じることがある。
このような、内燃機関における点火プラグの燻りを抑制するために、下記の特許文献1に記載の制御技術では、内燃機関の冷却水温度が所定の閾値である燃料カット禁止水温より低い場合には、燃料カットを禁止している。また、点火時期を遅角させて気筒内の温度を高温にすることで、点火プラグの燻りを抑制している。
特許文献1の制御技術では、冷却水温度が燃料カット禁止水温より低い場合には、常に燃料カットを禁止しているため、吸気通路の壁面への燃料の付着状態によっては、燃料カットの開始前に噴射されて吸気通路の壁面に付着していた燃料が、燃料カットの開始後に、十分に気化しないまま、大量に気筒内に流入することがある。このような場合、燃料カット開始後に点火プラグの点火が継続されていても、点火プラグの火花放電部(電極)がぬれてしまい点火プラグに燻りを生じさせることがある。また、燃料カット開始後に吸気通路から気筒内に流入する燃料量が小さくても、燃料カットを実行する前の燃焼サイクルの燃焼状態よっては、点火プラグに燻りが生じてしまうことがある。また、燃料カットの開始後に、吸気通路から気筒内に燃料が流入しないような場合には、燃料カットを行うと共に、点火プラグの点火の停止(以下、点火カットと記す)を行うことで、内燃機関における電力消費を抑制したいという要望もある。
本発明は、上記に鑑みてなされてものであって、燃料カットを行うことで点火プラグに燻りが生じてしまうことを抑制可能な、内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る内燃機関の制御装置は、吸気通路内に燃料を噴射可能な燃料噴射弁と、気筒内の混合気に点火可能な点火プラグを備える内燃機関に用いられ、燃料噴射弁の燃料噴射を停止する燃料カットを実行可能な、内燃機関の制御装置であって、前サイクルにおける燃焼状態が良好であるか否かを判定する燃焼状態判定手段を有し、燃焼状態が良好でないと判定された場合、燃料カットを禁止することを特徴とする。
本発明に係る内燃機関の制御装置において、当該制御装置は、点火プラグの点火を停止する点火カットを実行可能なものであり、吸気通路の壁面に付着している燃料量である燃料付着量を推定する燃料付着量推定手段と、燃料付着量が予め設定された判定付着量より少ないか否かを判定する燃料付着量判定手段と、を備えるものとすることができ、燃料付着量が判定付着量より小さいと判定された場合、燃焼状態が良好であるか否かに拘らず、燃料カット及び点火カットを許可するものとすることができる。
本発明に係る内燃機関の制御装置において、燃料付着量が判定付着量以上であると判定され、且つ前サイクルの燃料状態が良好であると判定された場合、燃料カットを許可するものとすることができる。
本発明に係る内燃機関の制御装置において、燃焼状態判定手段は、1サイクルあたりに気筒内で消費される空気量である筒内消費空気量を推定する筒内消費空気量推定手段を備え、推定された筒内消費空気量が予め設定された判定空気量より大きいことを以って、燃料状態が良好であると判定するものとすることができる。
本発明に係る内燃機関の制御装置において、筒内消費空気量推定手段は、1サイクルあたりに、気筒内から排気通路に排出された空気量と燃料量の比率である排気空燃比を推定する排気空燃比推定手段と、1サイクルあたりに、吸気通路から気筒内に流入する空気量と燃料量との比率である筒内空燃比を推定する筒内空燃比推定手段と、を備えるものとすることができ、排気空燃比と筒内空燃比との差分から筒内消費空気量を推定するものとすることができる。
本発明に係る内燃機関の制御装置において、筒内空燃比推定手段は、1サイクルあたりに、吸気通路から気筒内に流入する燃料量である筒内流入燃料量を推定する筒内流入燃料量推定手段を備えるものとすることができ、筒内流入燃料量推定手段は、燃料噴射弁が吸気通路に噴射する燃料噴射量と、燃料付着量推定手段により推定された燃料付着量の剥離分に基づいて、筒内流入燃料量を推定するものとすることができる。
本発明によれば、前サイクルにおける燃焼状態が良好でないと判定された場合、燃料カットを禁止するものとした。前サイクルの燃焼状態が良好でなく、燃料カットを行って燃料カット開始後に吸気通路に付着していた燃料が気筒内に流入すると、点火プラグに燻りが生じてしまうような場合に、燃料カットを禁止することとなる。これにより燃料カットを行うことで点火プラグに燻りが生じてしまうことを抑制することができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
本実施例に係る内燃機関の制御装置が適用される内燃機関及び車両システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、内燃機関及び車両システムの概略構成を示す模式図である。なお、図1において、内燃機関及び車両システムについては、本発明に関連する要部のみを模式的に示している。
内燃機関10は、燃料噴射弁60が吸気通路内に燃料(ガソリン)を噴射する、いわゆるポート噴射式のガソリン機関であり、気筒内に形成される混合気に点火プラグ66により点火を行う火花点火機関である。内燃機関10は、原動機として車両(図示せず)に搭載されるものであり、車両システム1には、各種センサ類からの信号を受けて内燃機関10を制御する制御手段として、電子制御装置80(以下、ECUと記す)が設けられている。以下、内燃機関10及びECU80を含む車両システム1の構成について説明する。なお、内燃機関10については、内燃機関10が有する複数の気筒のうち一つの気筒について説明する。
図1に示すように、内燃機関10には、内部に気筒が形成される機関本体系部品として、シリンダブロック12、ピストン16、及び図示しないコンロッド及びクランク軸が設けられている。シリンダブロック12には、シリンダボアが形成されており、ピストン16は、シリンダボアの内壁面14(以下、シリンダ壁と記す)に摺接して、シリンダボア内を往復運動する。
ピストン16の往復運動は、コンロッド及びクランク軸により回転運動に変換されて、クランク軸から出力される。クランク軸の近傍には、クランク軸の回転角位置(以下、クランク角と記す)を検出するクランク角センサ70が設けられている。クランク角センサ70は、検出したクランク角に係る信号をECU80に送出している。また、シリンダブロック12には、機関本体を循環する冷却液18の温度(以下、冷却液温と記す)を検出する冷却液温センサ72が設けられている。冷却液温センサ72は、冷却液温に係る信号をECU80に送出している。
また、シリンダブロック12には、ピストン16の頂面に対向してシリンダボアを塞ぐようにシリンダヘッド20が結合されている。シリンダヘッド20には、燃焼室が形成されており、燃焼室の形状を規定するシリンダヘッド20の壁面を、以下に「天井壁」と記す。また、シリンダヘッド20には、ボア軸心を挟んで、一方の側には、後述する吸気通路からの吸入空気を燃焼室に導く吸気ポート22が形成されており、他方の側には、燃焼室からの排気ガスを後述する排気通路に排出する排気ポート26が形成されている。
また、シリンダヘッド20のうち吸気ポート22及び排気ポート26の燃焼室側の開口には、それぞれ吸気弁24と排気弁28が設けられている。これら吸気弁24と排気弁28は、カムシャフト30から機械的動力を受けて駆動される。カムシャフト30は、図示しない可変動弁機構を介して、クランク軸からの機械的動力を受けて回転駆動される。カムシャフト30の近傍には、カムシャフト30の回転角位置(以下、カム角と記す)を検出するカム角センサ71が設けられている。カム角センサ71は、検出したカム角に係る信号をECU80に送出している。
以上に説明したように、シリンダブロック12のシリンダ壁14、シリンダヘッド20の天井壁、及びピストン16の頂面で囲まれた空間が「気筒」となる。内燃機関10は、吸気弁24が開弁すると、吸気ポート22と気筒内が連通し、吸気通路からの空気を、吸気ポート22から気筒内に吸入することが可能となっている。また、排気弁28を開弁すると、排気ポート26と気筒内が連通し、気筒内にある排気ガスを、排気ポート26から後述する排気通路に排出することが可能となっている。
なお、可変動弁機構は、吸気弁24及び排気弁28の開弁時間長さはそのままに開弁時期(閉弁時期)を連続的に変化させることが可能に構成されている。加えて、可変動弁機構は、吸気弁24及び排気弁28のリフト量を段階的に変化させることが可能に構成されている。ECU80は、内燃機関10の運転状態に応じて、吸気弁24及び排気弁28の開弁期間、及びリフト量を制御することが可能となっている。
また、内燃機関10には、外気から気筒に空気を導く吸気系部品として、外気から空気を導入する外気ダクト41と、吸入空気から塵芥を除去するエアクリーナ43と、吸入空気の流量(以下、吸入空気量と記す)を計側するエアフロメータ44と、吸入空気量を調整するスロットル弁46と、吸入空気を各気筒に分配する分岐管である吸気マニホールド48が設けられている。
吸気マニホールド48は、シリンダヘッド20に接続されており、そのブランチ通路48bが吸気ポート22に連通している。ブランチ通路48bの上流側には、これに連通するサージ室48a(共鳴室)が形成されている。また、吸気マニホールド48には、サージ室48a内における吸気圧を検出する吸気圧センサ78が設けられており、吸気圧に係る信号をECU80に送出している。
吸気マニホールド48の上流側には、吸気配管40が接続されており、サージ室48aは、この吸気配管40内に形成された通路40aに連通している。吸気配管40内の通路40aのうち、下流側にはスロットル弁46が配設されており、上流側にはエアフロメータ44が配設されている。吸気配管40の上流側の端には、エアクリーナ43が接続されており、吸気配管40内の通路40aは、エアクリーナ43を介して外気ダクト41内に連通している。
外気ダクト41から導入された空気は、エアクリーナ43を通過し、エアフロメータ44で吸入空気量が計測されて、スロットル弁46に流れる。スロットル弁46で流量を調整された空気は、吸気マニホールド48のサージ室48aに流入し、ブランチ通路48bから各気筒に分配されて、吸気ポート22から気筒内に流入する。エアフロメータ44は、吸気配管40内の通路40aで計量した吸入空気量に係る信号をECU80に送出している。スロットル弁46は、ECU80により制御されて、気筒内に流入する吸入空気量を調整可能となっている。
なお、「吸気通路」とは、上述の吸気系部品41〜48と吸気配管40により形成され、外気ダクト41から導入された空気が気筒内に流入するまでに通過する流路を意味している。本実施例において、吸気通路には、吸気配管40内の通路40aや、吸気マニホールド48のサージ室48a及びブランチ通路48bだけでなく、シリンダヘッド20の吸気ポート22が含まれている。
また、内燃機関10には、気筒からの排気ガスを外気に排出する排気系部品として、各気筒からの排気ガスを合流させる排気マニホールド52と、排気ガス中の酸素濃度を検出するA/Fセンサ76と、排気ガス中の有害成分を低減する排気浄化触媒55と、排気浄化触媒55を通過した排気ガスを外気に向けて導く排気管56が設けられている。
排気マニホールド52は、上流側がシリンダヘッド20に接続されており、排気マニホールド52内に形成された通路50aが排気ポート26に連通している。一方、排気マニホールド52の下流側には、排気浄化触媒55を収容する触媒コンバータ54が接続されている。触媒コンバータ54の下流側には、排気管56が接続されている。
気筒内から排気ポート26に排出された排気ガスは、排気マニホールド52内の通路50aから触媒コンバータ54内の通路54aを流れ、排気浄化触媒55を通過する。排気浄化触媒55を通過して有害成分が浄化された排気ガスは、排気管56内の通路56aを流れて外気に向けて流れる。
なお、「排気通路」とは、上述の排気系部品52〜54により形成され、気筒内から排気ポート26に排出された排気ガスが、排気浄化触媒55に至るまでに通過する流路を意味している。本実施例において、排気通路には、排気マニホールド52内の通路50a、触媒コンバータ54内の通路54aだけでなく、シリンダヘッド20の排気ポート26が含まれている。
排気通路のうち、排気浄化触媒55より上流側には、排気ガス中の酸素濃度を検出するA/Fセンサ76が設けられている。A/Fセンサ76は、排気ポート26から排出され排気浄化触媒55に到達する前の排気ガス中の酸素濃度に係る信号をECU80に送出している。
また、内燃機関10には、気筒内に燃料を供給する燃料噴射装置として、気筒ごとに燃料噴射弁60が設けられている。詳細には、燃料噴射弁60は、吸気マニホールド48に固定されており、燃料レール62から所定の燃圧で燃料の供給を受けて、吸気ポート22及び吸気弁24に向けて燃料を噴射する。このように燃料噴射弁60は吸気通路内に燃料を噴射する。燃料噴射弁60の燃料噴射期間及び燃料噴射量は、ECU80により制御される。
燃料噴射弁60から噴射された燃料は、大部分が吸気ポート22の内壁や吸気弁24に付着する。吸気ポート22等に付着した燃料は、吸気弁24が開弁期間に、吸入空気と共に吸気ポート22から気筒内に流入する。気筒内には、流入した燃料と空気が混合されて略均質な混合気が形成されることとなる。
また、内燃機関10のシリンダヘッド20には、気筒内に形成される混合気に点火する点火装置として、気筒ごとに点火プラグ66と点火コイル68が設けられている。詳細には、点火プラグ66及び点火コイル68は、シリンダヘッド20に装着されており、火花放電部(電極)が燃焼室、すなわち気筒内に突き出すよう配設されている。点火プラグ66は、点火コイル68から2次電流の供給を受けて火花放電部に点火火花を生じさせる。これにより点火プラグ66は、気筒内に形成された混合気を着火することが可能となっている。ECU80は、点火コイル68の1次電流を制御することにより、点火プラグ66が点火火花を生じさせるタイミングである点火時期を制御することが可能となっている。
また、車両システム1には、車両の速度(以下、車速と記す)を検出する車速センサ(図示せず)が設けられている。車速センサは、車速に係る信号をECU80に送出している。また、車両システム1には、運転者によるアクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ(図示せず)が設けられている。アクセルポジションセンサは、アクセル操作量に係る信号をECU80に送出している。
以上のように構成された車両システム1において、ECU80は、クランク角センサ70からのクランク角に係る信号と、カム角センサ71からのカム角に係る信号と、冷却液温センサ72からの冷却液温に係る信号と、吸気圧センサ78からの吸気圧に係る信号と、エアフロメータ44からの吸入空気量に係る信号と、A/Fセンサ76からの排気浄化触媒55より上流側における排気ガス中の酸素濃度に係る信号とを受けている。ECU80は、検出されたクランク角から内燃機関10のクランク軸の回転速度(以下、機関回転速度と記す)を算出しており、検出されたカム角から気筒がどの行程にあるかを判別している。また、ECU80は、検出された吸気圧、又は、検出された吸入空気量から内燃機関10がクランク軸から出力している機械的動力(以下、機関負荷と記す)を算出している。
ECU80は、算出された機関回転速度、機関負荷、冷却液温、及び排気ガス中の酸素濃度に基づいて、燃料噴射弁60の燃料噴射量及び点火プラグ66の点火時期を決定し、燃料噴射弁60及び点火コイル68への通電を制御することが可能となっている。このようにして、ECU80は、燃料噴射弁60への通電、及び点火コイル68への通電を制御することで、燃料噴射弁60の燃料噴射を、内燃機関の作動中に所定の期間、すなわち一時的に停止する「燃料カット」と、点火プラグ66の火花放電部における点火火花の発生を、内燃機関10の作動中に所定の期間、すなわち一時的に停止する「点火カット」を実行することが可能となっている。これら「燃料カット」及び「点火カット」は、内燃機関10の運転状態、内燃機関10が搭載されている車両の作動状態、及び運転者の操作に応じて、ECU80により実行される。
また、ECU80は、吸気ポート22等の内壁面に付着して気筒内に流入していない燃料の量(以下、燃料付着量と記す)を推定する機能である燃料付着量推定手段を有している。燃料付着量を推定する具体的な手法としては、例えば、本願出願人の特開2005−48712号公報の第0032段落から第0122段落に開示されている。ECU80は、吸気圧、吸気温度、吸気ポート22の壁面の温度、吸気ポート22における吸入空気の流速等を検出又は算出することで、各サイクルにおける燃料付着量を推定することが可能となっている。加えて、ECU80は、燃料付着量が予め設定された判定付着量より少ないか否かを判定する機能(燃料付着量判定手段)を有している。判定付着量は、予め適合実験等により求められており、制御定数としてECU80のROMに記憶されている。
また、ECU80は、気筒内における混合気の燃焼状態が良好であるか否かを判定する機能である燃焼状態判定手段を有している。燃焼状態が良好か否かを判定する具体的な手法としては、1サイクルあたりに気筒内で消費される空気(酸素)量(以下、筒内消費空気量と記す)を推定し、この筒内消費空気量が予め設定された判定空気量より大きいか否かで燃料状態が良好であるか緩慢であるかを判定することが可能となっている。筒内消費空気量が、判定空気量より大きい場合、ECU80は、気筒内における燃焼状態が良好であると判定する。
なお、燃焼状態が「良好」であるとは、混合気の燃焼により気筒内における熱発生が所定の基準値以上に急峻なものであることを意味している。これに対し、燃焼状態が良好でないものを「緩慢」と記す。つまり気筒内における燃焼状態は、熱発生が急峻な「良好」と、そうでない「緩慢」のいずれかに区分することができる。
筒内消費空気量は、排気空燃比と筒内空燃比との差分から算出することができる。なお、「排気空燃比」とは、1サイクルあたりに、気筒内から排気通路に排出された空気量(酸素量)と、気筒内から排気通路に排出された燃料量との比率である。排気空燃比は、A/Fセンサ76からの信号出力に基づいて算出することが可能となっている。つまりECU80は、排気空燃比を推定する機能(排気空燃比推定手段)を有している。
一方、「筒内空燃比」とは、1サイクルあたりに、吸気通路から気筒内に流入する空気量(酸素量)と、吸気通路から気筒内に流入する燃料量との比率である一方、筒内空燃比は、1サイクルあたりに気筒内に流入する空気量(以下、筒内流入空気量と記す)を、1サイクルあたりに気筒内に流入する燃料量(以下、筒内流入燃料量と記す)で除することで算出することが可能となっている。つまりECU80は、筒内空燃比を推定する機能(筒内空燃比推定手段)を有している。
筒内流入空気量は、エアフロメータ44により検出された吸入空気量に基づいてECU80により算出される。また、吸気圧センサ78により検出された吸気圧に基づいてECU80により算出することもできる。ECU80は、筒内流入空気量を、吸入空気量又は吸気圧と機関回転速度に基づいて算出することができる。このように、ECU80は、1サイクルあたりに気筒内に流入する空気量を推定する機能である筒内流入空気量推定手段を有している。
筒内流入燃料量は、燃料噴射量と、燃料付着量の「剥離分」から算出することができる。「剥離分」とは、前サイクルの燃料噴射において気筒内に流入することなく吸気ポート22に付着して現サイクルにおいて吸気ポート22から剥離して気筒内に流入する燃料量と、現サイクルにおいて吸気ポート22に付着して気筒内に流入しない燃料量との差分を意味しており、剥離分は、マイナスの値となる場合もある。筒内流入燃料量は、1サイクルあたりの燃料噴射量にポート付着燃料量の剥離分を加えた値となっている。このようにECU80は、1サイクルあたりに気筒内に流入する燃料量を推定する機能である筒内流入燃料量推定手段を有している。
なお、「現サイクル」とは、内燃機関の作動中において、ECUが、現在、燃料噴射量、燃料噴射期間及び点火時期を算出して、燃料噴射弁及び点火コイルの通電を制御しようとしているサイクルを意味している。これに対して「前サイクル」とは、既に燃料噴射量、燃料噴射期間及び点火時期が算出されており、これを実現するようECUが燃料噴射弁及び点火コイルの制御を既に実行したサイクルを意味している。つまり、前サイクルは、現在制御中の「現サイクル」以前の、1サイクルであっても良いし、所定の数サイクルであっても良い。
以上のようにして排気空燃比と筒内空燃比を算出し、排気空燃比から筒内空燃比を減ずることで、筒内消費空気量を推定することができる。このようにECU80は、1サイクルあたりに気筒内で消費される空気量(酸素量)を推定する機能(筒内消費空気量推定手段)を有している。そして、ECU80は、算出した筒内消費空気量が所定の判定空気量より大きい場合、気筒内の燃焼状態が良好であると判定する。なお。この判定空気量は、予め適合実験等により求められており、ECU80のROMに記憶されている。このようにECU80は、気筒内における燃焼状態を把握することが可能となっている。
また、ECU80は、車速センサからの車速に係る信号と、アクセルポジションセンサからのアクセル操作量に係る信号とを受けている。ECU80は、検出された車速に基づいて車両が減速しているか否かを判定すると共に、アクセル操作量に基づいて運転者が減速を意図しているか否かを判定することが可能となっている。車両が減速していると判定され、且つ運転者が減速を意図していると判定された場合、ECU80は、燃料カットを要求し、点火プラグ66の燻りの観点から、実際に燃料カット及び点火カットを許可するか禁止するかを判定する制御(以下、燃料カット可否判定制御と記す)を行う。
次に、本実施例に係る内燃機関の制御装置(ECU)が実行する燃料カット可否判定制御について、図1及び図2を用いて説明する。図2は、ECUが実行する燃料カット可否判定制御を示すフローチャートである。
図2に示すように、ECU80は、ステップS102において、燃料カット要求を受けて、各種制御変数を算出・推定する。具体的には、ECU80は、燃料付着量推定手段により、現サイクルにおける燃料付着量を推定する。また、ECU80は、ステップS102において、前サイクルにおける燃焼状態を把握する。具体的には、ECU80は、上述のように、燃料噴射量と燃料付着量の剥離分から筒内流入燃料量を算出すると共に、エアフロメータ44により検出された吸入空気量から筒内流入空気量を算出する。そして、算出された前サイクルにおける筒内流入燃料量と筒内流入空気量から筒内空燃比を算出すると共に、A/Fセンサ76の信号に基づき得られた前サイクルにおける排気空燃比を算出する。そして、排気空燃比と筒内空燃比の差分から筒内消費空気量を推定する。
そして、ステップS104において、ECU80は、現サイクルにおける燃料付着量が所定の判定付着量より少ないか否かを判定する。なお、判定付着量は、予め適合実験等により求められており、ECU80のROMに記憶されている。判定付着量より少ない(Yes)と判定された場合、ECU80は、燃料カットを許可すると共に、点火カットを許可する(S106)。
ECU80は、燃料噴射弁60が閉弁するよう、開弁電流をカットすると共に、点火プラグ66が点火しないよう、点火コイル68への1次電流をカットする。燃料カットの開始後に、吸気ポート22に付着していた燃料が剥離して気筒内に流入しても、燃料付着量そのものが少ないため、剥離して気筒内に流入する燃料量も少なくなっており、気筒内に流入した燃料により点火プラグ66に燻りが生じることがない。燃料カットに併せて点火カットも実行することで、点火コイル68から点火プラグ66に2次電流が流れることがなく、内燃機関10としての消費電力を抑制することができる。
一方、ステップS104において、現サイクルにおける燃料付着量が所定の判定付着量以上である(No)と判定された場合、ECU80は、気筒内におけるステップS110に進み、ECU80は、前サイクルの燃焼状態が良好であったか否かを判定する。具体的には、ステップS102において算出された筒内消費空気量が所定の判定空気量より大きいか否かを判定する。
ステップS110において、前サイクルの燃焼状態が良好であった(Yes)と判定された場合、すなわち筒内消費空気量が所定の判定空気量より大きいと判定された場合、ECU80は、燃料カットのみを許可する(S112)。すなわち燃料カットの開始後も点火プラグ66による点火は継続される。燃料カット開始後に、吸気ポート22等に付着していた燃料が気筒内に流入しても、前サイクルの燃焼状態が良好であるため気筒内の温度は高い状態となっており、燃料カット開始後に気筒内に流入した燃料によって点火プラグ66に燻りが生じることがない。
一方、ステップS110において、前サイクルの燃焼状態が良好ではなかった即ち燃焼状態が緩慢であった(No)と判定された場合、ECU80は、燃料カット開始後に吸気ポート22等に付着していた燃料が気筒内に流入すると、気筒内の温度が高くないため点火プラグ66に燻りを生じさせるものと判断して、燃料カットと点火カットの双方を禁止する(S114)。そして、燃料カット及び点火カットを実行することなく、ステップS102に戻る。
以上に説明したように本実施例に係る内燃機関の制御装置は、前サイクルにおける燃焼状態が良好であるか否かを判定する機能である燃焼状態判定手段を有し、燃焼状態が良好でないと判定された場合、燃料カットを禁止するものとした。前サイクルの燃焼状態が良好でないため、燃料カットを行って吸気通路に付着していた燃料が気筒内に流入させると点火プラグに燻りが生じてしまうような場合に、燃料カットを禁止する。これにより燃料カットを行うことにより点火プラグに燻りが生じてしまうことを抑制することができる。
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、吸気通路の燃料付着量が所定の判定付着量より少ないと判定された場合は、燃焼状態が良好であるか否かに拘らず、燃料カットを許可すると共に点火カットを許可するものとした。燃料カットを実行している時に吸気通路に付着していた燃料が剥離して気筒内に流入しても、その量は少量であるため、点火カットを行っても、気筒内に流入した燃料により点火プラグに燻りが生じることがない。点火プラグの燻りを抑制しつつ燃料カットを行って内燃機関としての燃費を低減すると共に、点火カットを行うことで点火プラグによる電力消費を抑制することができる。
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置において、吸気通路への燃料付着量が所定の判定付着量以上であると判定され、且つ前サイクルの燃焼状態が良好なものであると判定された場合には、燃料カットを許可するものとした。前サイクルの燃焼状態が良好である場合、燃料カット開始後に、吸気ポート等に付着していた燃料が気筒内に流入しても、前サイクルの影響で現サイクルにおける気筒内の温度は高く、気筒内に流入した燃料を良好に燃焼させることが可能であり、燃料カットを行っても点火プラグに燻りが生じることを抑制することができる。
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置において、燃焼状態判定手段は、1サイクルあたりに気筒内で消費される空気量である筒内消費空気量を推定する筒内消費空気量推定手段を含み、推定された筒内消費空気量が予め設定された判定空気量より大きいことを以って、燃料状態が良好であると判定するものとした。気筒内で消費される空気量を推定することで、気筒内における燃料酸化反応の程度、すなわち燃焼状態を推定することができる。
なお、上述した実施例において、燃焼状態が良好であるか否かを判定する燃焼状態判定手段は、1サイクルあたりに気筒内で消費される空気量(筒内消費空気量)が予め設定された判定空気量より大きいことを以って、燃焼状態が良好であると判定するものとしたが、燃焼状態が良好であるか否かの判定は、この態様に限定されるものではない。例えば、内燃機関の各種制御変数から、内燃機関の出力トルク、気筒内における燃焼圧、又は気筒内のガス温度等を推定し、これら推定値に基づいて燃焼状態が良好であるか否かを判定するものとしても良い。
なお、上述した実施例において、上記燃料カット可否判定制御(S102〜S114)は、車両が減速していると判定され、且つ運転者が減速を意図していると判定された場合に実行するものとしたが、燃料カット可否判定制御を実行する条件は、これに限定されるものではない。例えば、上述の条件に加えて、内燃機関の冷却液温が予め設定された判定冷却液温以下である場合、すなわち内燃機関が低温である場合に、上記燃料カット可否判定制御を行うものとしても良い。なお、内燃機関が低温でない場合には、吸気通路に付着した燃料は、良好に気化して気筒内に流入することができるため、上記燃料カット可否判定制御を行うことなく、車両減速時には燃料カット及び点火カットを行うことも好適である。
以上のように、本発明に係る内燃機関の制御装置は、吸気通路内に燃料を噴射可能な燃料噴射弁と、気筒内の混合気に点火可能な点火プラグを備えた内燃機関に有用であり、特に、原動機として自動車に搭載される内燃機関に適している。
1 車両システム
10 内燃機関
12 シリンダブロック
16 ピストン
20 シリンダヘッド
22 吸気ポート
24 吸気弁
26 排気ポート
28 排気弁
30 カムシャフト
40 吸気配管
44 エアフロメータ
46 スロットル弁
48 吸気マニホールド
52 排気マニホールド
55 排気浄化触媒
60 燃料噴射弁
66 点火プラグ
68 点火コイル
70 クランク角センサ
76 A/Fセンサ
78 吸気圧センサ
80 電子制御装置(ECU)
10 内燃機関
12 シリンダブロック
16 ピストン
20 シリンダヘッド
22 吸気ポート
24 吸気弁
26 排気ポート
28 排気弁
30 カムシャフト
40 吸気配管
44 エアフロメータ
46 スロットル弁
48 吸気マニホールド
52 排気マニホールド
55 排気浄化触媒
60 燃料噴射弁
66 点火プラグ
68 点火コイル
70 クランク角センサ
76 A/Fセンサ
78 吸気圧センサ
80 電子制御装置(ECU)
Claims (6)
- 吸気通路内に燃料を噴射可能な燃料噴射弁と、気筒内の混合気に点火可能な点火プラグを備える内燃機関に用いられ、燃料噴射弁の燃料噴射を停止する燃料カットを実行可能な内燃機関の制御装置であって、
前サイクルにおける燃焼状態が良好であるか否かを判定する燃焼状態判定手段を有し、
燃焼状態が良好でないと判定された場合、燃料カットを禁止することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
点火プラグの点火を停止する点火カットを実行可能なものであり、
吸気通路の壁面に付着している燃料量である燃料付着量を推定する燃料付着量推定手段と、
燃料付着量が予め設定された判定付着量より少ないか否かを判定する燃料付着量判定手段と、
を備え、
燃料付着量が判定付着量より小さいと判定された場合、燃焼状態が良好であるか否かに拘らず、燃料カット及び点火カットを許可することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
燃料付着量が判定付着量以上であると判定され、且つ前サイクルの燃料状態が良好であると判定された場合、燃料カットを許可することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
燃焼状態判定手段は、
1サイクルあたりに気筒内で消費される空気量である筒内消費空気量を推定する筒内消費空気量推定手段を備え、
推定された筒内消費空気量が予め設定された判定空気量より大きいことを以って、燃料状態が良好であると判定することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
筒内消費空気量推定手段は、
1サイクルあたりに、気筒内から排気通路に排出された空気量と燃料量の比率である排気空燃比を推定する排気空燃比推定手段と、
1サイクルあたりに、吸気通路から気筒内に流入する空気量と燃料量との比率である筒内空燃比を推定する筒内空燃比推定手段と、
を備え、
排気空燃比と筒内空燃比との差分から筒内消費空気量を推定することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
筒内空燃比推定手段は、1サイクルあたりに、吸気通路から気筒内に流入する燃料量である筒内流入燃料量を推定する筒内流入燃料量推定手段を備え、
筒内流入燃料量推定手段は、燃料噴射弁が吸気通路に噴射する燃料噴射量と、燃料付着量推定手段により推定された燃料付着量の剥離分に基づいて、筒内流入燃料量を推定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007082714A JP2008240642A (ja) | 2007-03-27 | 2007-03-27 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007082714A JP2008240642A (ja) | 2007-03-27 | 2007-03-27 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008240642A true JP2008240642A (ja) | 2008-10-09 |
Family
ID=39912286
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007082714A Pending JP2008240642A (ja) | 2007-03-27 | 2007-03-27 | 内燃機関の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008240642A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012021500A (ja) * | 2010-07-16 | 2012-02-02 | Mitsubishi Motors Corp | 内燃機関の吸気制御装置 |
-
2007
- 2007-03-27 JP JP2007082714A patent/JP2008240642A/ja active Pending
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