上述のように、車両が発進したことで(従って、負圧増大要求があったことで)触媒暖機制御が中止されて負圧増大制御が行われる場合を考える。通常、負圧増大制御の開始から、ブレーキブースタ内に配設された負圧を蓄える負圧室の内部の圧力(負圧室圧力)が制動力を十分に増大可能な程度に低下するまでに要する時間は、比較的短い(例えば、1〜2秒程度)。換言すれば、制動力の不足を解消するという負圧増大制御の所期の目的は、この負圧増大制御を比較的短い時間だけ実行すれば達成され得る。
更には、負圧増大制御の実行期間が長いと触媒暖機制御の中止期間が長くなる。この場合、触媒の暖機が促進され得ないから触媒により排ガスが十分浄化され得ない期間が長くなる。以上より、負圧増大制御は比較的短い時間だけ実行された後に中止されることが好ましいと考えられる。
この場合、触媒の暖機促進のため、負圧増大制御が中止された後に上述した触媒暖機制御と同じ制御が再び実行されることが考えられる。このことは、スロットル弁下流圧力が再び同程度まで上昇することを意味する。ここで、ブレーキブースタでは、制動力増大作用が発揮される毎に負圧室圧力が上昇し得るから(負圧が消費され得るから)、制動力増大作用が発揮される毎にスロットル弁下流圧力を利用して負圧室圧力を繰り返し低下させる(負圧を補充する)必要がある。
しかしながら、上述した触媒暖機制御と同じ制御の再実行によりスロットル弁下流圧力が同程度まで十分に上昇していると、係る負圧の補充が十分になされ得ない。従って、負圧増大制御が中止された後の車両走行中において、ブレーキ操作が比較的頻繁になされるような場合、上述した差圧の減少に起因して制動力の不足が再び発生する可能性がある。
本発明は上述した課題に対処するためになされたものであって、その目的は、触媒の暖機の促進と車両の制動力の不足の解消とを効果的に両立し得ることが可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するため本発明に係る内燃機関の制御装置は、所定の駆動指示信号に応じて車両に搭載された内燃機関の吸気通路に配設されたスロットル弁を駆動するスロットル弁駆動手段と、前記吸気通路内の前記スロットル弁の下流にて発生する大気圧よりも低い圧力であるスロットル弁下流圧力を利用することによりブレーキ操作力を増大させて前記車両の制動力を増大させる制動倍力手段と、所定の点火指示信号に応じて前記内燃機関の燃焼室に供給される混合気に点火する点火手段と、前記内燃機関の排気通路に配設された排ガス浄化用触媒とを備える。
また、この制御装置は、前記触媒の暖機を促進する触媒暖機要求の有無を判定する暖機要求判定手段と、前記触媒暖機要求があると判定されている場合において前記スロットル弁下流圧力を低下させる負圧増大要求の有無を判定する増大要求判定手段とを備える。ここにおいて、前記触媒暖機要求は、例えば、前記触媒の温度が所定値未満の場合に「有」と判定される。また、前記負圧増大要求は、例えば、車両が発進したと判定された場合に「有」と判定される。
更に、この制御装置は、通常制御手段と、第1触媒暖機制御手段と、負圧増大制御手段とを備える。前記通常制御手段は、前記触媒暖機要求がないと判定されている場合(例えば、触媒の暖機終了後等)、前記点火手段に対して前記点火指示信号を送信することで前記点火手段による点火時期を前記内燃機関の運転状態に基づいて決定される時期である通常点火時期に制御するとともに、前記スロットル弁駆動手段に対して前記駆動指示信号を送信することで前記スロットル弁の開度を前記内燃機関の運転状態に基づいて決定される開度である通常スロットル弁開度に制御する。
前記第1触媒暖機制御手段は、前記触媒暖機要求があり且つ前記負圧増大要求がないと判定されている場合(例えば、冷間始動後且つ車両が停止している場合等)、前記点火手段に対して前記点火指示信号を送信することで前記点火時期を前記通常点火時期よりも遅角側の時期である第1点火時期に制御するとともに、前記スロットル弁駆動手段に対して前記駆動指示信号を送信することで前記スロットル弁の開度を前記通常スロットル弁開度よりも大きい開度である第1スロットル弁開度に制御する。この第1触媒暖機制御により、上述のごとく、内燃機関の出力トルクの低下を補償しながら触媒の温度を活性温度に迅速に近づけることができる。
前記負圧増大制御手段は、前記第1触媒暖機制御手段による制御実行中において(即ち、触媒暖機要求があって)前記負圧増大要求があると判定された場合(例えば、冷間始動後において車両が発進した場合等)、(前記第1触媒暖機制御手段による制御を中止して)、前記点火手段に対して前記点火指示信号を送信することで前記点火時期を前記第1点火時期よりも進角側の時期である第2点火時期に制御するとともに、前記スロットル弁駆動手段に対して前記駆動指示信号を送信することで前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル弁開度よりも小さい開度である第2スロットル弁開度に制御する。
ここにおいて、前記第2点火時期は、前記通常点火時期と等しい時期、或いは前記通常点火時期よりも遅角側の時期である。前記第2スロットル弁開度は、前記通常スロットル弁開度と等しい開度、或いは前記通常スロットル弁開度よりも大きい開度である。この負圧増大制御の開始により、上述のごとく、比較的短時間(例えば、1〜2秒程度)が経過した後には、制動倍力手段内における上記差圧の減少に起因する制動力の不足が解消され得る。即ち、車両発進直後から十分な制動力を発揮させることができる。
この制御装置の特徴は、第2触媒暖機制御手段を備えたことにある。この第2触媒暖機制御手段は、(触媒暖機要求があって且つ、)前記負圧増大制御手段による制御実行中において所定条件が成立したと判定された場合(例えば、負圧増大制御開始から1〜2秒が経過した場合)、前記負圧増大制御手段による制御を中止して(且つ、前記負圧増大要求を「無」として)、前記スロットル弁下流圧力が、前記スロットル弁の開度が前記第2スロットル弁開度に維持された場合に対応する圧力よりも高く且つ前記スロットル弁の開度が前記第1スロットル弁開度に維持された場合に対応する圧力よりも低い範囲内であって所定圧力以下に維持されるように、前記点火手段に対して前記点火指示信号を送信することで前記点火時期を前記第1点火時期と前記第2点火時期との間の時期である第3点火時期に制御するとともに、前記スロットル弁駆動手段に対して前記駆動指示信号を送信することで前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル弁開度と前記第2スロットル弁開度との間の開度である第3スロットル弁開度に制御する。
ここにおいて、前記所定条件としては、負圧増大制御の開始から、前記制動倍力手段が有する大気圧よりも低い圧力を有する空気を蓄える負圧室の内部の圧力(負圧室圧力)が前記制動力を適切に増大可能な程度に低下するまでに要する時間が経過したこと、が採用される。
このように負圧増大制御を中止して第2触媒暖機制御が開始・実行されると、負圧増大制御中よりも点火時期が遅角側に設定される。従って、負圧増大制御が継続される場合に比して、触媒の暖機を促進して触媒温度を活性温度に迅速に近づけることができる。加えて、第1触媒暖機制御中よりもスロットル弁開度が小さい開度に設定される。従って、負圧増大制御の中止後に第1触媒暖機制御が開始・実行される場合に比して、スロットル弁下流圧力を低い圧力(前記所定圧力以下)に維持することができる。即ち、負圧増大制御が中止された後の車両走行中においてブレーキ操作が比較的頻繁になされても、上述した「負圧の補充」が十分になされ得、上述した制動力の不足の発生を抑制することができる。
以上より、上述のごとく負圧増大制御を中止して第2触媒暖機制御を開始・実行することで、触媒の暖機の促進と車両の制動力の不足の解消とを効果的に両立することが可能となる。
上記本発明に係る制御装置において、前記車両に搭載されて前記内燃機関の動力により駆動される負荷装置を備える場合、前記負荷装置は、前記負圧増大制御手段による制御実行中は前記内燃機関による駆動が禁止され、且つ、前記第2触媒暖機制御手段による制御実行中は前記内燃機関による駆動が許可されるように構成されることが好適である。ここにおいて、前記負荷装置は、例えば、車両のエアー・コンディショナー(エアコン)である。
エアコン(より具体的には、そのコンプレッサ)が駆動されている間は、内燃機関の動力の一部がエアコンの駆動のために消費されるから、車両の駆動に使用され得る内燃機関の動力が減少する。従って、通常、エアコンの駆動中は、エアコンが駆動されていない場合に比してスロットル弁開度が大きくされて(即ち、燃焼エネルギーを増大させて)上記動力の減少が補償される。換言すれば、エアコンが駆動されていない場合、エアコンの駆動中に比して、スロットル弁下流圧力が低くなり、上述の「負圧の補充」がより迅速になされ得る。加えて、エアコンの駆動を比較的短時間(例えば、1〜2秒程度)だけ中断しても、車室内の空調制御に対して殆ど悪影響が及ぼされない。
上記構成は係る知見に基づく。これにより、負圧増大制御中においてエアコンの駆動禁止によりスロットル弁下流圧力が極力低下させられて、上述の「負圧の補充」がより確実に達成され得る。加えて、エアコンの駆動禁止期間が負圧増大制御が実行される比較的短時間に限定されるから、空調制御に対して悪影響が及ぼされることがなくて空調制御を良好に維持できる。
上記本発明に係る制御装置においては、前記内燃機関の運転速度を取得する運転速度取得手段と、前記内燃機関を冷却する冷却水の温度を取得する冷却水温取得手段とを備え、前記第2触媒暖機制御手段が、前記運転速度と前記冷却水温度の何れか一方又は両方に基づいて前記第3点火時期(及び、前記第3スロットル弁開度)を決定するように構成されることが好適である。ここにおいて、例えば、前記運転速度が大きいほど、又は前記冷却水温が高いほど、前記第3点火時期がより遅角側に設定され、前記第3スロットル弁開度がより大きい開度に設定される。
一般に、(スロットル弁開度が一定の条件下)内燃機関の運転速度が大きいほどスロットル弁下流圧力がより低くなる。このことは、運転速度が大きくなるにつれて点火時期をより遅角側に設定しても(従って、スロットル弁開度をより大きい値に設定しても)、スロットル弁下流圧力を「負圧の補充」が確実に達成され得るために必要な十分低い圧力(=前記所定圧力以下)に維持できることを意味する。
また、冷却水温が低い場合、内燃機関において各可動部材の運動に対する摩擦抵抗が大きくなる。従って、内燃機関の動力において係る摩擦抵抗により消費される分が大きくなって、車両の駆動に使用され得る内燃機関の動力が減少する。従って、通常、冷却水温が低い場合、スロットル弁開度が大きくされて(即ち、燃焼エネルギーを増大させて)上記動力の減少が補償される。換言すれば、冷却水温が高くなるにつれて、スロットル弁開度がより小さくされてスロットル弁下流圧力がより低くなる。このことは、冷却水温が高くなるにつれて点火時期をより遅角側に設定しても(従って、スロットル弁開度をより大きい値に設定しても)、スロットル弁下流圧力を「負圧の補充」が確実に達成され得るために必要な十分低い圧力(=前記所定圧力以下)に維持できることを意味する。
上記構成は係る知見に基づくものである。これによれば、例えば、第2触媒暖機制御中において、運転速度が大きいほど、又は冷却水温が高いほど、点火時期がより遅角側に設定され、スロットル弁開度がより大きい開度に設定される。これにより、スロットル弁下流圧力を十分低い圧力(=前記所定圧力以下)に維持しながら、点火時期を極力遅角側に設定して触媒の温度を極力早期に活性温度に近づけることができる。
また、上記本発明に係る制御装置においては、前記スロットル弁下流圧力を取得する圧力取得手段を備え、前記第2触媒暖機制御手段は、前記取得されたスロットル弁下流圧力が前記範囲内であって前記所定圧力以下の基準圧力に一致するように前記取得されたスロットル弁下流圧力に基づいて前記第3点火時期(及び、前記第3スロットル弁開度)をフィードバック制御するように構成されてもよい。
より具体的には、前記取得されたスロットル弁下流圧力が前記基準圧力よりも高い場合、前記第3点火時期が現在の点火時期より進角側に調整され、且つ、前記第3スロットル弁開度が現在の開度より小さい開度に調整される。一方、前記取得されたスロットル弁下流圧力が前記基準圧力よりも低い場合、前記第3点火時期が現在の点火時期より遅角側に調整され、且つ、前記第3スロットル弁開度が現在の開度より大きい開度に調整される。
これによれば、第2触媒暖機制御中において、スロットル弁下流圧力が十分低い圧力(=前記所定圧力以下)に直接且つ確実に調整され得る。従って、第2触媒暖機制御中の車両走行中においてブレーキ操作が比較的頻繁になされても、上述した「負圧の補充」が確実になされ得、上述した制動力の不足の発生を確実に抑制することができる。
また、上記本発明に係る制御装置においては、前記第2触媒暖機制御手段は、前記第3点火時期が前記通常点火時期よりも進角側にならないように前記第3点火時期を決定するように(且つ、前記第3スロットル弁開度が前記通常スロットル弁開度よりも小さい開度にならないように前記第3スロットル弁開度を決定するように)構成されることが好適である。これによれば、第2触媒暖機制御中において、点火時期が通常点火時期よりも進角側になって触媒の暖機が促進され得ない事態が発生することが回避される。
また、上記本発明に係る制御装置においては、前記内燃機関がアイドリング状態にあるか否かを判定するアイドリング判定手段を備え、前記第2触媒暖機制御手段は、前記第2触媒暖機制御手段による制御実行中において前記内燃機関がアイドリング状態にない場合、前記第3点火時期を、前記第1点火時期と等しい時期、又は前記第1点火時期よりも進角側の時期であって前記内燃機関がアイドリング状態にある場合における前記第3点火時期よりも遅角側の時期に設定するように(且つ、前記第3スロットル弁開度を、前記第1スロットル弁開度と等しい開度、又は前記第1スロットル弁開度よりも小さい開度であって前記内燃機関がアイドリング状態にある場合における前記第3スロットル弁開度よりも大きい開度に設定するように)構成されることが好適である。ここにおいて、アイドリング状態とは、運転者により操作される加速操作部材(アクセルペダル等)の操作量が「0」である状態、若しくは「0」に近い状態に対応する。
運転者が加速操作部材を操作している間(即ち、アイドリング状態でない場合)では、ブレーキ操作がなされる可能性が非常に低い。従って、第2触媒暖機制御中においてアイドリング状態でない場合、車両の制動力の不足の解消よりも触媒の暖機の促進を優先することが好ましいと考えることができる。上記構成は係る知見に基づく。これによれば、第2触媒暖機制御中においてアイドリング状態でない場合、点火時期が極力遅角側に設定されるから、触媒の温度を極力早期に活性温度に近づけることができる。
更には、上述のように前記車両が発進したと判定された場合に前記負圧増大要求があると判定するように構成される場合、上記本発明に係る制御装置においては、前記車両が停止したか否かを判定する停止判定手段を備え、前記第1触媒暖機制御手段は、前記第2触媒暖機制御手段による制御実行中において前記車両が停止したと判定された場合、前記第2触媒暖機制御を中止して、前記点火時期を前記第1点火時期に制御するとともに前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル弁開度に制御するように構成されることが好適である。
第2触媒暖機制御中において車両が停止した場合、その後においてスロットル弁下流圧力を十分低い圧力(=前記所定圧力以下)に調整する必要性が低くなる。従って、車両の制動力の不足の解消よりも触媒の暖機の促進を優先することが好ましい。上記構成は係る知見に基づく。これによれば、第2触媒暖機制御中において車両が停止した場合、第1触媒暖機制御が再び実行されて点火時期が極力遅角側に設定される。この結果、触媒の温度を極力早期に活性温度に近づけることができる。
<構成>
以下、本発明による内燃機関の制御装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態による内燃機関の制御装置を4サイクル火花点火方式により運転される多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
この内燃機関10は、車両に搭載されている。内燃機関10は、シリンダブロック、図示しないシリンダブロックロワーケース及び図示しないオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20に混合気(本例では、ガソリン混合気)を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50と、を含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これによりクランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21、ピストン22のヘッド及びシリンダヘッド部30は、燃焼室(気筒)25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともにインテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフトを含むとともにエキゾーストカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変排気タイミング装置36、可変排気タイミング装置36のアクチュエータ36a、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射することにより燃焼室25内に燃料を供給するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
点火プラグ37は、火花を発生することにより燃焼室25に供給される混合気に点火するように配設されている。イグナイタ38は、後述する電気制御装置80から送信される点火指示信号に応じて、点火プラグ37により火花を発生させるようになっている。なお、点火プラグ37及びイグナイタ38は点火手段を構成している。
吸気系統40は、各気筒の吸気ポート31にそれぞれ連通する独立した複数の通路からなるインテークマニホールド41、インテークマニホールド41のすべての通路に連通したサージタンク42、サージタンク42に一端が接続された吸気ダクト43、吸気ダクト43の他端部から下流(サージタンク42)に向けて順に吸気ダクト43に配設されたエアフィルタ44、スロットル弁45及びスロットル弁駆動手段としてのスロットル弁アクチュエータ45aを備えている。なお、吸気ポート31、インテークマニホールド41、サージタンク42及び吸気ダクト43は、内燃機関10の外部から取り込んだ空気を気筒内に導入する吸気通路を形成している。
スロットル弁アクチュエータ45aはDCモータからなる。スロットル弁アクチュエータ45aは、後述する電気制御装置80から送信される駆動指示信号に応じて、スロットル弁45を駆動するようになっている。なお、スロットル弁45及びスロットル弁アクチュエータ45aはスロットル弁駆動手段を構成している。
排気系統50は、各気筒の排気ポート34にそれぞれ連通する独立した複数の通路及びそれらの通路を下流にて集合させる集合部からなるエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51の集合部に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52に配設(介装)された三元触媒53(上流側触媒コンバータ又はスタート・キャタリティック・コンバータとも云うが、以下「第1触媒53」と称呼する。)及び第1触媒53の下流のエキゾーストパイプ52に配設(介装)された下流側の三元触媒54(車両のフロア下方に配設されるので、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータとも云うが、以下「第2触媒54」と称呼する。)を備えている。なお、排気ポート34、エキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52は、燃焼室25にて燃料と空気とを含む混合気が燃焼することにより生成された燃焼ガスである排ガスが通過する排気通路を形成している。
第1触媒53及び第2触媒54のそれぞれは、排ガス中の酸素を吸蔵するようになっている。更に、第1触媒53及び第2触媒54のそれぞれは、排ガス中の燃料の未燃成分と、排ガス中の酸素又は上記吸蔵された酸素と、の反応を促進することにより排ガス中の有害物質を浄化する(排ガスを浄化する)ようになっている。なお、第1触媒53及び第2触媒54は、排気浄化用触媒を構成している。
更に、内燃機関10は、負圧蓄圧部60を備えている。負圧蓄圧部60は、バイパス通路61と、バイパス流量制御弁62と、負圧導入用メイン通路63と、負圧導入用サブ通路64と、制動倍力手段としてのブレーキブースタ65と、を備えている。
バイパス通路61は、その一端がスロットル弁45の上流にて吸気ダクト43に接続され、他端がサージタンク42に接続されている。バイパス通路61は、一定の通路断面積を有し且つバイパス通路61の上流側端部を含む上流部61aと、上流部61aと同一の通路断面積であって一定の通路断面積を有し且つバイパス通路61の下流側端部を含む下流部61bと、上流部61aと下流部61bとの間に位置し且つ上流部61a及び下流部61bの通路断面積よりも小さい通路断面積を有する中央部61cと、からなる。
中央部61cには、バイパス通路61のうちの通路断面積が最小となる部分である絞り部61c1が形成されている。中央部61cのうちの絞り部61c1に隣接している部分は、中央部61cの長さ方向にて絞り部61c1から遠ざかるにつれて通路断面積が徐々に増大している。
このような構成により、バイパス通路61を空気が通過しているときのバイパス通路61内の空気の圧力は、絞り部61c1にて最も低くなる。
バイパス流量制御弁62は、バイパス通路61の上流部61aに配設されている。バイパス流量制御弁62は、開閉指示信号に応じて図示しない弁体を駆動することにより、バイパス通路61を連通状態と遮断状態とに切り替えるようになっている。
負圧導入用メイン通路63は、その一端がバイパス通路61の下流部61bに接続され、他端がブレーキブースタ65に接続されている。負圧導入用メイン通路63の両端部には、ブレーキブースタ65からバイパス通路61へ向かって空気が流れることを許容するとともに、その逆向きへ空気が流れることを阻止する逆止弁がそれぞれ配設されている。
負圧導入用サブ通路64は、その一端が絞り部61c1に接続され、他端が負圧導入用メイン通路63の中央部に接続されている。負圧導入用サブ通路64の中央部には、負圧導入用メイン通路63から絞り部61c1へ向かって空気が流れることを許容するとともに、その逆向きへ空気が流れることを阻止する逆止弁が配設されている。
ブレーキブースタ65は、一体型真空式の制動倍力装置である。ブレーキブースタ65は、その内部に図示しない2つの負圧室が形成されている。ブレーキブースタ65は、負圧室内の空気を負圧導入用メイン通路63及び負圧導入用サブ通路64を介してバイパス通路61へ排出することにより大気圧よりも低い圧力(負圧)を有する空気を負圧室内に蓄えるようになっている。
このような構成により、サージタンク42内の空気の圧力(スロットル弁下流圧力)が低下すると、ブレーキブースタ65の負圧室内の圧力(負圧室圧力)は、ほとんど遅れることなくスロットル弁下流圧力に一致する。更に、ブレーキブースタ65の負圧室圧力は、スロットル弁下流圧力よりも低い圧力である絞り部61c1の空気の圧力に比較的緩慢に近づく。即ち、ブレーキブースタ65の負圧室圧力は、常にサージタンク42内の空気の圧力(即ち、スロットル弁下流圧力)以下の圧力に維持される。
更に、ブレーキブースタ65は、ブレーキペダルBPが踏み込まれたとき、一方の負圧室に大気を導入するようになっている。ブレーキブースタ65は、一方の負圧室内の大気圧と、他方の負圧室内の空気の圧力(負圧)と、の差圧を利用することにより、ブレーキペダルBPが踏み込まれる力(ブレーキ操作力)を増大させて車両の制動力を増大させるようになっている。換言すると、ブレーキブースタ65は、前記他方の負圧室内の圧力が十分に低くない場合(即ち、スロットル弁下流圧力が十分に低くない場合)、ブレーキ操作力が十分に増大され得ず、従って、制動力の不足が発生し得る。
一方、このシステムは、スロットルポジションセンサ71、クランクポジションセンサ72、冷却水温度センサ73、第1触媒53の上流の排気通路(本例では、上記エキゾーストマニホールド51の集合部)に配設された空燃比センサ74(以下、「上流側空燃比センサ74」と称呼する。)、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流の排気通路に配設された空燃比センサ75(以下、「下流側空燃比センサ75」と称呼する。)、アクセル開度センサ76、車速検出手段としての車速センサ77及び電気制御装置80を備えている。
スロットルポジションセンサ71は、スロットル弁45の開度(スロットル弁開度)を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ72は、クランク軸24が10°回転する毎に生じる幅狭のパルスを有するとともにクランク軸24が360°回転する毎に生じる幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。冷却水温度センサ73は、シリンダ21の側壁内を循環する冷却水の温度(冷却水温度)を検出し、冷却水温度Twを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ74は、限界電流式の空燃比センサである。上流側空燃比センサ74は、検出対象ガス(本例では、第1触媒53の上流の排ガス)中の酸素濃度及び燃料の未燃成分(例えば、炭化水素)濃度に基づいて上流側空燃比を検出し、上流側空燃比A/Fを表す信号を出力するようになっている。
下流側空燃比センサ75は、起電力式(濃淡電池式)の空燃比センサである。下流側空燃比センサ75は、検出対象ガス(本例では、第1触媒53の下流の排ガス)中の酸素濃度に基づいて下流側空燃比を検出し、下流側空燃比A/Fを表す信号を出力するようになっている。
アクセル開度センサ76は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダルAPの操作量(アクセルペダル操作量)Accpを表す信号を出力するようになっている。なお、アクセルペダル操作量Accp及びエンジン回転速度NEは、機関10の運転状態を表す。
車速センサ77は、車輪WHの回転に伴って発生する所定の信号を出力するようになっている。後述する電気制御装置80は、この信号に基づいて車両が移動する速度である車速Vを算出するとともに、車両の発進、及び停止を判定するようになっている。例えば、車両の停止は、所定時間以上に亘って車輪WHの回転が検出されない場合に判定され得る。車両の発進は、車両の停止が判定されている状態において車輪WHの回転が検出された場合に判定され得る。
電気制御装置80は、互いにバスで接続されたCPU81、CPU81が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)及び定数等を予め記憶したROM82、CPU81が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM83、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM84並びにADコンバータを含むインターフェース85等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース85は、前記センサ71〜77と接続され、CPU81にセンサ71〜77からの信号を供給するとともに、CPU81の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、可変排気タイミング装置36のアクチュエータ36a、イグナイタ38、インジェクタ39、スロットル弁アクチュエータ45a及びバイパス流量制御弁62に指示信号を送信するようになっている。
また、電気制御装置80のインターフェース85は、車室内の空調を行うエアコンACとも接続されている。電機制御装置80は、車両の乗員が操作する図示しないエアコンスイッチがONの状態において内燃機関10によるエアコンACの駆動が実行される状態(駆動許可状態)と、エアコンスイッチがONの状態においてもエアコンACの駆動が禁止される状態(駆動禁止状態)とを選択的に切り替え可能となっている。なお、エアコンスイッチがOFFの状態では、エアコンACは内燃機関10により駆動されない。
インジェクタ39から噴射される燃料の量は、例えば、スロットル弁45の下流における吸気通路内の空気の圧力(スロットル弁下流圧力Pm)及びエンジン回転速度NEから推定される燃焼室25内に吸入される空気の量(筒内空気量Mc)と、目標空燃比と、から計算される。
ここで、スロットル弁下流圧力Pmは、例えば、吸気通路内の空気の挙動を物理法則に従って記述した空気モデルに基づいて推定され得る。この推定手法は、特開2003−184613号公報及び特開2001−41095号公報等に詳細に開示されているため、本明細書においては詳細な説明を省略する。また、スロットル弁下流圧力Pmは、スロットル弁45よりも下流の吸気通路に設けた圧力センサにより取得されてもよい。このようにスロットル弁下流圧力Pmを取得する手段が前記「圧力取得手段」に相当する。
<作動の概要>
次に、上記のように構成された内燃機関の制御装置の作動の概要について説明する(後述する図9を参照)。この制御装置は、第1触媒53及び第2触媒54(以下、単に「触媒」と総称することもある。)の暖機を促進する触媒暖機要求の有無を判定し、触媒暖機要求がないと判定した場合(具体的には、冷却水温度Twが所定の閾値温度α以上の場合)、点火プラグ37が燃焼室25内にて火花を発生する時期(点火時期)、及びスロットル弁45の開度(スロットル弁開度)についての通常制御を行う。一方、この制御装置は、冷間始動時等において触媒暖機要求があると判定した場合(具体的には、冷却水温度Twが閾値温度αよりも低い場合)、先ず、触媒の温度上昇(暖機の促進)を主目的とする、点火時期及びスロットル弁開度についての第1触媒暖機制御を行う。
この第1触媒暖機制御実行中(且つ、触媒暖機要求がある場合)において、この制御装置は、スロットル弁下流圧力を低下させる負圧増大要求の有無を判定し、負圧増大要求があると判定した場合(具体的には、車両が発進した場合)に、スロットル弁下流圧力を低下させて(負圧を増大させて)制動力の不足の解消を主目的とする、点火時期及びスロットル弁開度についての負圧増大制御を行う。
この負圧増大制御中(且つ、触媒暖機要求がある場合)において、所定の短時間が経過すると、この制御装置は、触媒の暖機促進と制動力の不足解消とが共に考慮された、点火時期及びスロットル弁開度についての第2触媒暖機制御を行う。
この第2触媒暖機制御実行中(且つ、触媒暖機要求がある場合)において、車両が停止した場合、この制御装置は、点火時期及びスロットル弁開度についての上記第1触媒暖機制御を再び行う。
そして、通常制御以外の上記の何れかの制御実行中において、触媒暖機要求がないと判定された場合(具体的には、冷却水温度Twが閾値温度α以上となった場合)、この制御装置は、点火時期及びスロットル弁開度についての上記通常制御を行う。上述した点火時期及びスロットル弁開度についての、通常制御、第1触媒暖機制御、負圧増大制御、及び第2触媒暖機制御については、次の<作動の詳細>の欄で詳述する。
<作動の詳細>
次に、電気制御装置80の実際の作動について、図2〜図8にフローチャートにより示した各ルーチン、及び、図9のタイムチャートを参照しながら説明する。図9は、冷間始動後(即ち、触媒暖機要求がある場合)において、時刻t1にてアイドリング状態(Accp=0)にて車両が発進し(クリープ走行又は降坂走行)、時刻t1〜t6までアイドリング状態にて車両が移動し続け、時刻t6にて車両が停止し、時刻t7にて冷却水温度Twが閾値温度αに達して触媒暖機要求がなくなった場合の例を示している。先ず、各種フラグの設定・変更について説明する。
電気制御装置80のCPU81は、図2に示した「触媒暖機判定」ルーチンを所定の演算周期(本例では、8ms)の経過毎に実行するようになっている。なお、図2のルーチンの処理が実行されることは、暖機要求判定手段の機能の一部が達成されることに対応している。
従って、所定のタイミングになると、CPU81は、ステップ200から処理を開始してステップ205に進み、冷却水温度センサ73により検出された冷却水温度Twが上記閾値温度αよりも低いか否かを判定する。CPU81は、ステップ205にて「Yes」と判定する場合、ステップ210に進んで暖機フラグXdを「1」に設定し、一方、「No」と判定する場合、ステップ215に進んで暖機フラグXdを「0」に設定し、併せて、負圧増大フラグXp、及び負圧保持フラグXkを「0」に設定し、エアコンフラグXaを「1」に設定し、ステップ295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ここで、暖機フラグXdは、その値が「1」のとき触媒暖機要求があることを示し、その値が「0」のとき触媒暖機要求がないことを示す。具体的には、図9では、時刻t7以前ではTw<αであるからXd=「1」に設定され、時刻t7以降ではTw≧αであるからXd=「0」に設定される。
負圧増大フラグXpは、その値が「1」のとき負圧増大制御中であることを示し、その値が「0」のとき負圧増大制御中でないことを示す。具体的には、図9では、負圧増大制御が実行される時刻t1〜t4だけXp=「1」に設定され、それ以外の期間ではXp=「0」に設定される。
負圧保持フラグXkは、その値が「1」のとき第2触媒暖機制御中であることを示し、その値が「0」のとき第2触媒暖機制御中でないことを示す。具体的には、図9では、第2触媒暖機制御が実行される時刻t4〜t6だけXk=「1」に設定され、それ以外の期間ではXk=「0」に設定される。
エアコンフラグXaは、その値が「1」のときエアコンACについて上述した「駆動許可状態」にあることを示し、その値が「0」のときエアコンACについて上述した「駆動禁止状態」にあることを示す。具体的には、図9では、負圧増大制御が実行される時刻t1〜t4だけXa=「0」に設定され、それ以外の期間ではXa=「1」に設定される。
ステップ215から理解できるように、暖機フラグXd=「0」のとき(触媒暖機要求がないとき)は、負圧増大フラグXp及び負圧保持フラグXkが「0」に固定され、エアコンフラグXaが「1」に固定される。
また、電気制御装置80のCPU81は、図3に示した「移動判定」ルーチンを図2のルーチンに続いて実行するようになっている。なお、図3のルーチンの処理が実行されることは、発進判定手段及び停止判定手段の機能の一部が達成されることに対応している。
従って、図2のルーチンの実行が終了すると、CPU81は、ステップ300から処理を開始してステップ305に進み、移動フラグXmが「0」であるか否かを判定する。ここで、移動フラグXmは、その値が「1」のとき車両が移動中であることを示し、その値が「0」のとき車両が停止中であることを示す。
ステップ305にて「Yes」と判定する場合(Xm=0)、CPU81はステップ310に進んで、車速センサ77の出力信号に基づいて車両が発進したか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ315に進み、移動フラグXmを「0」から「1」に変更する。一方、ステップ305にて「No」と判定する場合(Xm=1)、CPU81はステップ320に進んで、車速センサ77の出力信号に基づいて車両が停止したか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、ステップ325に進み、移動フラグXmを「1」から「0」に変更する。
具体的には、図9では、車両が発進する時刻t1にてXmが「0」から「1」に変更され、車両移動中(時刻t1〜t6)ではXm=「1」に維持され、車両が停止する時刻t6にてXmが「1」から「0」に変更され、車両停止中(時刻t1以前、及び時刻t6以降)ではXm=「0」に設定される。
また、電気制御装置80のCPU81は、図4に示した「アイドル判定」ルーチンを図3のルーチンに続いて実行するようになっている。なお、図4のルーチンの処理が実行されることは、アイドリング判定手段の機能の一部が達成されることに対応している。
従って、図3のルーチンの実行が終了すると、CPU81は、ステップ400から処理を開始してステップ405に進み、アクセル開度センサ76により検出されたアクセルペダル操作量Accpが「0」であるか否かを判定する。CPU81は、ステップ405にて「Yes」と判定する場合、ステップ410に進んでアイドルフラグXiを「1」に設定し、一方、「No」と判定する場合、ステップ415に進んでアイドルフラグXiを「0」に設定する。
ここで、アイドルフラグXiは、その値が「1」のときアイドリング状態にあることを示し、その値が「0」のときアイドリング状態にないことを示す。具体的には、図9では、終始アイドリング状態にあるから、Xi=「1」に維持されている。
また、電気制御装置80のCPU81は、図5に示した「負圧増大判定」ルーチンを図4のルーチンに続いて実行するようになっている。なお、図5のルーチンの処理が実行されることは、増大要求判定手段の機能の一部が達成されることに対応している。
従って、図4のルーチンの実行が終了すると、CPU81は、ステップ500から処理を開始してステップ505に進み、上述した負圧増大フラグXpが「0」であるか否かを判定する。ステップ505にて「Yes」と判定する場合、CPU81はステップ510に進んで、負圧増大制御開始条件の成立の有無を判定する。
負圧増大制御開始条件は、触媒暖機要求があり(Xd=「1」)、アイドリング状態であり(Xi=「1」)、且つ、車両が発進した場合(Xmが「0」から「1」に変化)に成立する。ここで、「アイドリング状態であること」が含まれているのは、アイドリング状態でない場合(即ち、アクセルペダルAPが踏み込まれている場合)、ブレーキ操作がなされる可能性が非常に低いからである。なお、この負圧増大制御開始条件に、「スロットル弁下流圧力Pmが所定圧力(例えば、後述する基準圧力Pref)よりも高いこと」を加えてもよい。
負圧増大制御開始条件が成立した場合(図9では、時刻t1)、CPU81はステップ515に進んで負圧増大フラグXpを「0」から「1」に変更するとともに、エアコンフラグXaを「0」に固定する。
一方、ステップ505にて「No」と判定する場合(Xp=1)、CPU81はステップ520に進んで、負圧増大制御終了条件の成立の有無を判定する。負圧増大制御終了条件は、負圧増大制御開始時点から時間T1が経過した場合(図9では、時刻t4)に成立する。ここで、時間T1は、後に詳述する第1触媒暖機制御から負圧増大制御に切り替えた時点(図9では、時刻t1)から、ブレーキブースタ65の前記負圧室圧力が制動力を適切に増大可能な程度に低下するまでに要する時間(例えば、1〜2秒程度)であり、実験、シミュレーション等により取得され得る。なお、この負圧増大制御終了条件を、「ブレーキブースタ65の負圧室圧力が所定圧力よりも低いこと」に置き換えてよい。
負圧増大制御終了条件が成立した場合(図9では、時刻t4)、CPU81はステップ525に進んで負圧増大フラグXpを「1」から「0」に変更するとともに、エアコンフラグXaを「1」に固定する。以上より、エアコンフラグXaは、負圧増大制御実行中(Xp=「1」)においてのみ「0」とされ(即ち、「駆動禁止状態」)、負圧増大制御実行中でない場合(Xp=「0」)には「1」とされる(即ち、「駆動許可状態」)。
また、電気制御装置80のCPU81は、図6に示した「負圧保持判定」ルーチンを図5のルーチンに続いて実行するようになっている。なお、図6のルーチンの処理が実行されることは、第2触媒暖機制御手段の機能の一部が達成されることに対応している。
従って、図5のルーチンの実行が終了すると、CPU81は、ステップ600から処理を開始してステップ605に進み、上述した負圧保持フラグXkが「0」であるか否かを判定する。ステップ605にて「Yes」と判定する場合、CPU81はステップ610に進んで、第2触媒暖機制御開始条件(前記「所定条件」に対応)の成立の有無を判定する。
第2触媒暖機制御開始条件は、触媒暖機要求があり(Xd=「1」)、且つ、ステップ520の負圧増大制御終了条件が成立した場合(Xpが「1」から「0」に変化)に成立する。第2触媒暖機制御開始条件が成立した場合(図9では、時刻t4)、CPU81はステップ615に進んで負圧保持フラグXkを「0」から「1」に変更する。
一方、ステップ605にて「No」と判定する場合(Xk=1)、CPU81はステップ620に進んで、第2触媒暖機制御終了条件の成立の有無を判定する。第2触媒暖機制御終了条件は、車両が停止した場合(Xmが「1」から「0」に変化)に成立する。第2触媒暖機制御終了条件が成立した場合(図9では、時刻t6)、CPU81はステップ625に進んで負圧保持フラグXkを「1」から「0」に変更する。
以上、各種フラグの設定・変更について説明した。次に、係るフラグの状態に基づいて行われる点火時期制御、及びスロットル弁開度制御について説明する。以下の説明において、MapX(a,b,…)と表記されるテーブルは、変数a、変数b、変数…と値Xとの関係を規定するテーブルを意味することとする。また、値XをテーブルMapX(a,b,…)に基づいて求めるとは、値Xを現時点の変数a、現時点の変数b、現時点の変数…と、テーブルMapX(a,b,…)と、に基づいて求める(決定する)ことを意味することとする。
電気制御装置80のCPU81は、図7に示した「点火時期制御」ルーチンを図6のルーチンに続いて実行するようになっている。なお、図7のルーチンの処理が実行されることは、通常制御手段、第1、第2触媒暖機制御手段、及び負圧増大制御手段の各機能の一部がそれぞれ達成されることに対応している。
従って、図6のルーチンの実行が終了すると、CPU81は、ステップ700から処理を開始してステップ702に進み、通常点火時期θ0を、テーブルMapθ0(Accp,NE)に基づいて求める。この通常点火時期θ0は、完全暖機状態において出力トルクと燃費の観点から、現時点の運転状態において最適な点火時期(例えば、MBT)に設定される。この通常点火時期θ0は、アイドリング状態においてMBTよりも遅角側に設定されてもよい。
続いて、CPU81はステップ704に進み、触媒暖機要求があるか否か(Xd=「1」or「0」)を判定し、触媒暖機要求がないと判定された場合(ステップ704にて「No」)、ステップ706に進んで、点火時期θを通常点火時期θ0と等しい時期に設定する(図9では、時刻t7以降を参照)。なお、図9における時刻t7の直後に示すように、触媒暖機要求がある状態(Xd=「1」)からない状態(Xd=「0」)に変更された直後の所定の短期間では、点火時期θが、現時点での値から通常点火時期θ0に向けて徐変されてもよい。このように、点火時期θが、通常遅角量θ0に設定される制御(後述するスロットル弁開度の制御を含む)を「通常制御」と称呼する。
以下、触媒暖機要求があると判定された場合(ステップ704にて「Yes」)について説明する(図9では、時刻t7以前を参照)。この場合、CPU81はステップ708に進んで、暫定遅角量θAを、テーブルMapθA(Tw)に基づいて求める。この暫定遅角量θAは、触媒の暖機促進の観点から決定される、点火時期θについての通常点火時期θ0からの遅角量である。なお、図9では、説明の便宜上、時間の経過に応じて冷却水温度Twが上昇していくにもかかわらず、暫定遅角量θAが一定に記載されている(後述する進角量θBも同様)。
次に、CPU81はステップ710に進み、負圧増大フラグXp=「0」且つ負圧保持フラグXk=「0」であるか否かを判定する。先ず、Xp=Xk=「0」である場合について説明する(図9では、時刻t1以前を参照)。この場合(ステップ710にて「Yes」)、CPU81はステップ712に進んで、遅角量θdelayを暫定遅角量θAと等しい値に設定する。この遅角量θdelayは、通常遅角量θ0に加算される最終的な遅角量である。
即ち、CPU81はステップ714に進んで、点火時期θを、通常遅角量θ0から遅角量θdelayだけ遅角側の時期に設定し、続くステップ716にて、点火時期θにて点火プラグ37に火花を発生させる指示をイグナイタ38に対して行う。
このように、点火時期θが、通常遅角量θ0から暫定遅角量θAだけ遅角側の時期(θ0+θA、前記「第1点火時期」に対応)に設定される制御(後述するスロットル弁開度の制御を含む)を「第1触媒暖機制御」と称呼する。以上、触媒暖機要求があって(Xd=「1」)、且つXp=Xk=「0」である限りにおいて、「第1触媒暖機制御」が繰り返し実行される(図9では、時刻t1以前を参照)。
次に、この「第1触媒暖機制御」の実行中において、図5のステップ510に示した負圧増大制御開始条件が成立した場合(Xpが「0」から「1」に変化、Xkは「0」に維持)について説明する(図9では、時刻t1を参照)。この場合、CPU81はステップ710に進んだとき、「No」と判定してステップ718に進み、Xp=「1」であるか否かを判定する。
この場合、Xp=「1」であるから、CPU81はステップ718にて「Yes」と判定してステップ720に進み、負圧増大制御の開始から時間T2(<T1)(図9を参照)が経過したか否かを判定する。
負圧増大制御の開始から時間T2が経過するまでの間(図9では、時刻t1〜t2を参照)、CPU81は、ステップ720にて「No」と判定し続け、ステップ722に進んで、遅角戻し量θadvを「0」に設定する。ここで、遅角戻し量θadvは、負圧増大の観点から決定される、点火時期θについての(θ0+θA)からの進角量である。
一方、時間T2が経過した後は(図9では、時刻t2以降を参照)、CPU81は、ステップ720にて「Yes」と判定し続け、ステップ724に進んで、遅角戻し量θadvを現時点での値から暫定遅角量θAに向けて徐変する。この結果、遅角戻し量θadvは、負圧増大制御の開始から時間T2が経過するまでの間は「0」に維持され(図9では、時刻t1〜t2を参照)、時間T2が経過した後の短期間において「0」から暫定遅角量θAに向けて徐々に増大していき(図9では、時刻t2以降を参照)、遅角戻し量θadvが暫定遅角量θAに達した後は暫定遅角量θAに維持される(図9では、時刻t3〜t4を参照)。
CPU81はステップ726に進むと、遅角量θdelayを(θA−θadv)に設定する。この結果、遅角量θdelayは、負圧増大制御の開始から時間T2が経過するまでの間はθAに維持され(時刻t1〜t2)、時間T2が経過した後の短期間においてθAから「0」に向けて徐々に減少していき(時刻t2以降)、θadvがθAに達した後は「0」に維持される(時刻t3〜t4)。即ち、ステップ714にて設定されステップ716にて点火指示される点火時期θ(=θ0+θdelay)は、負圧増大制御の開始から時間T2が経過するまでの間は継続して第1触媒暖機制御中と同じ(θ0+θA)に維持され(時刻t1〜t2)、時間T2が経過した後の短期間において(θ0+θA)から通常点火時期θ0に向けて徐々に進角側に移動していき(時刻t2以降)、θadvがθAに達した後は通常点火時期θ0に維持される(時刻t3〜t4)。
なお、負圧増大制御の開始から時間T2が経過するまでの間(図9では、時刻t1〜t2)において点火時期θを継続して第1触媒暖機制御中と同じ(θ0+θA)に維持するのは、以下の理由に基づく。即ち、後述するように負圧増大制御の開始時点(図9では、時刻t1)にてスロットル弁開度TAが(TA0+TAA)からTA0にステップ的に減少すると、スロットル弁下流圧力Pmは負圧増大制御の開始から遅れを伴って低下していく(図9を参照)。即ち、筒内空気量(及び、燃料量)も負圧増大制御の開始から遅れを伴って減少していく。従って、負圧増大制御の開始時点にて直ちに点火時期θを進角させると、負圧増大制御の開始からの短期間において出力トルクが過大となってトルク変動が発生する。このトルク変動の発生を抑制するため、筒内空気量がスロットル弁開度TA=TA0に対応する空気量に近づくまで点火時期θの進角開始時期を遅らせる(点火時期ディレイ処理)。
このように、点火時期θが、通常点火時期θ0(前記「第2点火時期」に対応)に設定(進角)される制御(後述するスロットル弁開度の制御を含む)を「負圧増大制御」と称呼する。以上、触媒暖機要求があって、且つXp=「1」、Xk=「0」である限りにおいて、「負圧増大制御」が繰り返し実行される(図9では、時刻t1〜t4を参照)。
次に、この「負圧増大制御」の実行中において、図5のステップ520に示した負圧増大制御終了条件が成立した場合、即ち、図6のステップ610に示した第2触媒暖機制御開始条件が成立した場合(Xpが「1」から「0」に変化、Xkが「0」から「1」に変化)について説明する(図9では、時刻t4を参照)。この場合、CPU81はステップ718に進んだとき、「No」と判定してステップ728に進み、アイドリング状態である否か(Xi=「1」or「0」)を判定する。
先ず、図9に示すように、終始アイドリング状態にある場合について説明する。この場合、Xi=「1」であるから、CPU81はステップ728にて「Yes」と判定してステップ730に進み、進角量θBを、テーブルMapθB(Tw,NE)に基づいて求める。この進角量θBは、後述するように、遅角戻し量θadvを徐変して近づけていく目標量である。これにより、進角量θBは、冷却水温度Twが高いほど、エンジン回転速度NEが大きいほど、より小さい値に設定される。また、進角量θBは、通常、暫定遅角量θAよりも小さい値に設定される。
続いて、CPU81はステップ734に進んで、遅角戻し量θadvを進角量θBに向けて徐変する。この結果、遅角戻し量θadvは、第2触媒暖機制御の開始(図9では、時刻t4)からの短期間においてθAからθBに向けて徐々に減少していき(図9では、時刻t4以降を参照)、θadvがθBに達した後はθBに維持される(図9では、時刻t5〜t6を参照)。
CPU81はステップ736に進むと、遅角戻し量θadvが暫定遅角量θAよりも大きい否かを判定し、「Yes」と判定する場合には、ステップ738に進んでθadvをθAと等しい値に制限する。
次いで、CPU81はステップ740に進んで、ステップ726と同様、遅角量θdelayを(θA−θadv)に設定する。この結果、遅角量θdelayは、第2触媒暖機制御の開始からの短期間において「0」から(θA−θB)に向けて徐々に減少していき(時刻t4以降)、θadvがθBに達した後は(θA−θB)に維持される(時刻t5〜t6)。即ち、ステップ714にて設定されステップ716にて点火指示される点火時期θ(=θ0+θdelay)は、第2触媒暖機制御の開始からの短期間において通常点火時期θ0から(θ0+θA−θB)に向けて徐々に遅角側に移動していき(時刻t4以降)、θadvがθBに達した後は(θ0+θA−θB)に維持される(時刻t5〜t6)。
このように、点火時期θが、(θ0+θA−θB)(前記「第3点火時期」に対応)に設定(遅角)される制御(後述するスロットル弁開度の制御を含む)を「第2触媒暖機制御」と称呼する。以上、触媒暖機要求があって、且つXp=「0」、Xk=「1」である限りにおいて、「第2触媒暖機制御」が繰り返し実行される(図9では、時刻t4〜t6を参照)。
次に、この「第2触媒暖機制御」の実行中において、図6のステップ620に示した第2触媒暖機制御終了条件が成立した場合(Xkが「1」から「0」に変化、Xpは「0」に維持)について説明する(図9では、時刻t6を参照)。この場合、CPU81はステップ710に進んだとき、「Yes」と判定して上述した第1触媒暖機制御を再び実行する。即ち、点火時期θが(θ0+θA−θB)から(θ0+θA)に変更(遅角)される。
なお、図9における時刻t6の直後に示すように、第2触媒暖機制御から第1触媒暖機制御に変更された直後の所定の短期間では、点火時期θが、現時点での値から(θ0+θA)に向けて徐変されてもよい。この第1触媒暖機制御は、触媒暖機要求がある限り(且つ、Xp=Xk=「0」である限り)において繰り返し実行される(図9では、時刻t6〜t7を参照。
次に、この「第1触媒暖機制御」の実行中において、触媒暖機要求がなくなった場合(Xdが「1」から「0」に変化)について説明する(図9では、時刻t7を参照)。この場合、CPU81はステップ704に進んだとき、「No」と判定して上述した通常制御を実行する。即ち、点火時期θが(θ0+θA)から通常点火時期θ0に変更(進角)される。この通常制御は、触媒暖機要求がない限り(Xd=「0」)において繰り返し実行される(図9では、時刻t7以降を参照)。
また、電気制御装置80のCPU81は、図8に示した「スロットル弁開度制御」ルーチンを図7のルーチンに続いて実行するようになっている。なお、図8のルーチンの処理が実行されることは、通常制御手段、第1、第2触媒暖機制御手段、及び負圧増大制御手段の各機能の一部がそれぞれ達成されることに対応している。
従って、図7のルーチンの実行が終了すると、CPU81は、ステップ800から処理を開始してステップ805に進み、通常スロットル弁開度TA0を、テーブルMapTA0(Accp,NE,Tw,Xa)に基づいて求める。この通常スロットル弁開度TA0は、スロットル弁開度をTA0に制御することで内燃機関10に要求されるトルク(Accpに応じたトルク)を発生するために必要な量の空気(混合気)が燃焼室25に供給されるように設定される。また、TA0は、冷却水温度Twが高いほどより小さい開度に設定される。加えて、TA0は、エアコンフラグXa=1の場合(駆動許可状態)、Xa=0の場合(駆動禁止状態)に比して大きい値に設定される。
ここで、TA0が、駆動禁止状態に比して駆動許可状態において大きい値に設定される理由は以下のとおりである。即ち、エアコンACが駆動されている間は、内燃機関10の動力の一部がエアコンACの駆動のために消費されるから、車両の駆動に使用され得る内燃機関10の動力が減少する。従って、エアコンACの駆動中(Xa=「1」)は、上記動力の減少を補償するため、エアコンACが駆動されていない場合(Xa=「0」)に比して、通常スロットル弁開度TA0(従って、スロットル弁開度TA)を大きく設定して燃焼エネルギーを増大させる。
また、TA0が、冷却水温度Twが高いほどより小さい開度に設定される理由は以下のとおりである。即ち、冷却水温度Twが低い場合、内燃機関10において各可動部材の運動に対する摩擦抵抗が大きくなる。従って、内燃機関10の動力において係る摩擦抵抗により消費される分が大きくなって、車両の駆動に使用され得る内燃機関10の動力が減少する。従って、冷却水温度Twが低いほど、通常スロットル弁開度TA0(従って、スロットル弁開度TA)が大きくされて、燃焼エネルギーを増大させる。
続いて、CPU81はステップ810に進んで、触媒暖機要求があるか否か(Xd=「1」or「0」)を判定し、触媒暖機要求がないと判定された場合(ステップ810にて「No」)、ステップ815に進んで、スロットル弁開度TAを通常スロットル弁開度TA0と等しい開度に設定する(図9では、時刻t7以降を参照)。なお、図9における時刻t7の直後に示すように、触媒暖機要求がある状態(Xd=「1」)からない状態(Xd=「0」)に変更された直後の所定の短期間では、スロットル弁開度TAが、現時点での値から通常スロットル弁開度TA0に向けて徐変されてもよい。
以下、触媒暖機要求があると判定された場合(ステップ810にて「Yes」)について説明する(図9では、時刻t7以前を参照)。この場合、CPU81はステップ820に進んで、負圧増大制御実行中か否か(Xp=「1」or「0」)を判定し、負圧増大制御実行中でない場合(図9では、時刻t1〜t4を除いた期間を参照)、ステップ820にて「Yes」と判定してステップ825に進んで、加算量TAaddを、テーブルMapTAadd(θdelay)に基づいて求める。この加算量TAaddは、触媒暖機促進の観点から点火時期θが通常点火時期θ0から遅角されることに起因する出力トルクの低下を補償するために通常スロットル弁開度TA0に加算される開度である。
これにより、負圧増大制御実行中でない場合、加算量TAaddは、遅角量θdelayの変化に連動するように決定される。具体的には、加算量TAaddは、θdelay=「0」のときに「0」に設定され、θdelay(>0)が大きいほどより大きい値(>0)に設定される。一方、負圧増大制御実行中である場合(図9では、時刻t1〜t4を参照)、CPU81はステップ820にて「No」と判定してステップ830に進んで、加算量TAaddを「0」に固定する。
次いで、CPU81はステップ835に進んで、スロットル弁開度TAを、通常スロットル弁開度TA0に加算量TAaddを加えた開度に設定し、続くステップ840にて、スロットル弁開度をTAに制御する指示をスロットル弁アクチュエータ45aに対して行う。
これにより、増大制御実行中でない場合(図9では、時刻t1〜t4を除いた期間を参照)、点火時期θが通常点火時期θ0から遅角される量が大きいほど、スロットル弁開度TAが通常スロットル弁開度TA0から加算される量が大きくなる。以下、このような点火時期とスロットル弁開度との関係を「点火時期とスロットル弁開度との連動」とも称呼する。具体的には、第1触媒暖機制御中(図9では、時刻t1以前、t6〜t7を参照)では、TA=(TA+TAA)(前記「第1スロットル弁開度」に対応)に制御され、第2触媒暖機制御中(図9では、時刻t4〜t6を参照)では、TA=(TA+TAB)(前記「第3スロットル弁開度」に対応)に制御される(TAA>TAB)。このような「点火時期とスロットル弁開度との連動」により、上述した出力トルクの低下が確実に補償され得る。
一方、負圧増大制御実行中である場合(図9では、時刻t1〜t4を参照)、スロットル弁開度TAが通常スロットル弁開度TA0と等しい開度(前記「第2スロットル弁開度」に対応)に設定される。これにより、負圧増大制御の開始時点(図9では、時刻t1を参照)にて、スロットル弁開度TAは、スロットル弁開度TAが(TA0+TAadd)からTA0にステップ的に減少する。即ち、上述した「点火時期ディレイ処理」に起因して、「点火時期ディレイ処理」に係わる期間(図9では、時刻t1〜t3)だけ「点火時期とスロットル弁開度との連動」が達成されていないが、負圧増大制御実行中における残りの期間(図9では、時刻t3〜t4)では「点火時期とスロットル弁開度との連動」が達成されている。
以上、図9に示すように、触媒暖機要求がある場合において、終始アイドリング状態(Xi=1)にある場合について説明した。次に、図9に対応する図10に示すように、触媒暖機要求がある場合において、途中でアクセルペダルAPが操作されることでアイドリング状態にない期間(Xi=0)が発生する場合について説明する。図10では、アイドリング状態にない期間が、負圧増大制御の途中の時刻tAから第2触媒暖機制御の途中の時刻tBまでの場合が示されている。
第2触媒暖機制御中(Xd=「1」、Xp=「0」、Xk=「1」)においてXi=「0」になっている場合、図7のルーチンを繰り返し実行しているCPU81は、ステップ728に進んだとき、「No」と判定してステップ732に進み、進角量θBを「0」に設定する。これにより、遅角戻し量θadvは「0」に向けて減少していく。図10では、時刻t4以降、遅角戻し量θadvは、「0」に向けて減少していき、θadvが「0」に達した後は「0」に維持される。
一方、第2触媒暖機制御中においてXiが「1」から「0」に変更されると、進角量θBがステップ730にて設定されるようになり、この結果、遅角戻し量θadvは、θB>0に向けて増大していく。図10では、時刻tB以降、遅角戻し量θadvは、θB>0に向けて増大していき、θadvがθBに達した後はθBに維持される。
即ち、図10では、時刻t4以降、点火時期θは、通常点火時期θ0から(θ0+θA)に向けて遅角側に移動していき、θadvが「0」に達した後は(θ0+θA)に維持される。時刻tB以降、点火時期θは、(θ0+θA)から(θ0+θA−θB)に向けて進角側に移動していき、θadvがθBに達した後は(θ0+θA−θB)に維持される。
点火時期θがこのように変化するから、スロットル弁開度TAは、「点火時期とスロットル弁開度との連動」により、時刻t4以降、通常スロットル弁開度TA0から(TA0+TAA)に向けて増大していき、θadvが「0」に達した後は(TA0+TAA)に維持される。時刻tB以降、スロットル弁開度TAは、(TA0+TAA)から(TA0+TAB)に向けて減少していき、θadvがθBに達した後は(TA0+TAB)に維持される。
このように、第2触媒暖機制御中において、アイドリング状態にない場合、点火時期θが、第1触媒暖機制御中における時期(θ0+θA)と等しい時期(従って、アイドリング状態にある場合における第2触媒暖機制御中の時期(θ0+θA−θB)よりも遅角側の時期)に設定され、スロットル弁開度TAが、第1触媒暖機制御中における開度(TA0+TAA)と等しい開度(従って、アイドリング状態にある場合における第2触媒暖機制御中の開度(TA0+TAB)よりも大きい開度)に設定される。
以上、説明したように、第1触媒暖機制御中(図9では、時刻t1以前、t6〜t7)では、点火時期θが通常点火時期θ0よりも大幅に遅角側の時期(θ0+θA)に設定され、スロットル弁開度TAが通常スロットル弁開度TA0よりも大きい開度(TA0+TAA)に設定される。この結果、スロットル弁下流圧力Pmが、TA=(TA0+TAA)に対応する比較的高い値Pm1(第1スロットル弁開度に対応する圧力)に維持される。
このように、点火時期θを遅角させると、排気行程にて排気弁35が開弁した後も混合気の燃焼が継続し得る(所謂「後燃え」)。加えて、スロットル弁開度TAを大きくすると、筒内空気量(及び燃料量)が増大して燃焼エネルギーが増大する。これらのことから、通常制御時に比して、排ガスの温度を高くすることができ、この結果、触媒の温度を活性温度に迅速に近づけることができる。
また、負圧増大制御中(図9では、時刻t1〜t4)では、点火時期θが通常点火時期θ0と等しい時期に設定され、スロットル弁開度TAが通常スロットル弁開度TA0と等しい開度に設定される。この結果、スロットル弁開度TAが減少して、スロットル弁下流圧力Pmが、値Pm1から、TA=TA0に対応する比較的低い値Pm2(第2スロットル弁開度に対応する圧力)に向けて減少する。これにより、負圧増大制御開始から時間T1(1〜2秒程度)が経過するまでにPmが値Pm2に既に収束していて、この結果、負圧増大制御終了時点(図9では、時刻t4)では、ブレーキブースタ65内の負圧室圧力も値Pm2以下の十分低い値になっている。従って、負圧増大制御終了時点では、制動力の不足が解消され得る。換言すれば、車両発進直後から十分な制動力を発揮することができる。
また、第2触媒暖機制御中(図9では、時刻t4〜t6)では、点火時期θが、第1触媒暖機制御中の時期(θ0+θA)と負圧増大制御中の時期θ0との間の時期(θ0+θA−θB)に設定され、スロットル弁開度TAが、第1触媒暖機制御中の開度(TA0+TAA)と負圧増大制御中の開度TA0との間の開度(TA0+TAB)に設定される。この結果、スロットル弁開度TAが増大して、スロットル弁下流圧力Pmが、値Pm2よりも高く且つ値Pm1よりも低い値Pref(前記「所定圧力」に対応)に調整される。
この値Prefは、第2触媒暖機制御中での車両走行中においてブレーキ操作が比較的頻繁になされても、上述した「負圧の補充」が十分になされ得、上述した制動力の不足の発生を十分に抑制できる程度に十分低い圧力の範囲内の値(特に、その範囲内の上限値)である。
このように、第2触媒暖機制御中では、負圧増大制御中よりも点火時期θが(θA−θB)だけ遅角側に設定される。従って、負圧増大制御が継続される場合に比して、排ガスの温度を高くして触媒の温度を活性温度に迅速に近づけることができる。加えて、第1触媒暖機制御中よりもスロットル弁開度TAが(TAA−TAB)だけ小さい開度に設定される。従って、負圧増大制御の中止後に第1触媒暖機制御が開始・実行される場合に比して、スロットル弁下流圧力Pmを低い圧力(=Pref)に維持することができる。従って、第2触媒暖機制御中での車両走行中においてブレーキ操作が比較的頻繁になされても、制動力の不足の発生を抑制することができる。
また、負圧増大制御中(従って、1〜2秒程度)では、内燃機関10によるエアコンACの駆動が禁止され、その後の第2触媒暖機制御中では、内燃機関10によるエアコンACの駆動が許可される(上記エアコンスイッチがONの場合において実行される)(図5のステップ515、525を参照)。上述のごとく、エアコンACが駆動されていない場合、エアコンACの駆動中に比してスロットル弁開度TAが小さくされる。従って、エアコンACの駆動中に比してスロットル弁下流圧力Pmが低くなって上述の「負圧の補充」がより迅速になされ得る。また、エアコンACの駆動を比較的短時間(例えば、1〜2秒程度)だけ中断しても、車室内の空調制御に対して殆ど悪影響が及ぼされない。従って、負圧増大制御中にエアコンACの駆動を禁止することで、空調制御に対して悪影響を及ぼすことなく、負圧増大制御中において上述の「負圧の補充」がより確実に達成され得る。
また、第2触媒暖機制御中(且つ、Xa=「1」の場合)において、進角量θBが、冷却水温度Twが高いほど、エンジン回転速度NEが大きいほど、より小さい値に設定される(図7のステップ730を参照)。換言すれば、第2触媒暖機制御中における点火時期θが、冷却水温度Twが高いほど、エンジン回転速度NEが大きいほど、より遅角側に設定される。従って、「点火時期とスロットル弁開度との連動」により、第2触媒暖機制御中におけるスロットル弁開度TAが、冷却水温度Twが高いほど、エンジン回転速度NEが大きいほど、より大きい値に設定される。これは、以下の理由に基づく。
即ち、スロットル弁開度TAが一定の条件下、エンジン回転速度NEが大きいほどスロットル弁下流圧力Pmがより低くなる。このことは、エンジン回転速度NEが大きくなるにつれて点火時期θをより遅角側に設定しても(従って、スロットル弁開度TAをより大きい値に設定しても)、スロットル弁下流圧力Pmを上記値Pref(或いは、Pref以下)に維持できることを意味する。
また、上述のように、冷却水温度Twが高くなるにつれて、スロットル弁開度TAがより小さくされてスロットル弁下流圧力Pmがより低くなる。このことは、冷却水温度Twが高くなるにつれて点火時期θをより遅角側に設定しても(従って、スロットル弁開度TAをより大きい値に設定しても)、スロットル弁下流圧力Pmを上記値Pref(或いは、Pref以下)に維持できることを意味する。
以上のことから、第2触媒暖機制御中では、エンジン回転速度NEが大きいほど、又は冷却水温度Twが高いほど、点火時期θがより遅角側に設定され且つスロットル弁開度TAがより大きい開度に設定される。これにより、スロットル弁下流圧力Pmを上記値Prefに維持しながら、点火時期θを極力遅角側に設定して触媒の温度を極力早期に活性温度に近づけることができる。
また、第2触媒暖機制御中において、遅角戻し量θadvが暫定遅角量θAを超えないように、θadvがθAで制限される(図7のステップ736、738を参照)。即ち、第2触媒暖機制御中における点火時期θが通常点火時期θ0よりも進角側にならないように(従って、第2触媒暖機制御中におけるスロットル弁開度TAが通常スロットル弁TA0よりも小さい開度にならないように)設定される。これにより、第2触媒暖機制御中において、点火時期θが通常点火時期θ0よりも進角側になって触媒の暖機が促進され得ない事態が発生することが回避される。
加えて、第2触媒暖機制御中において、アイドリング状態にない場合、点火時期θが、第1触媒暖機制御中における時期(θ0+θA)と等しい時期に(従って、スロットル弁開度TAが、第1触媒暖機制御中における開度(TA0+TAA)と等しい開度に)設定される。これにより、ブレーキ操作がなされる可能性が非常に低い「アイドリング状態にない場合」、車両の制動力の不足の解消よりも触媒の暖機の促進が優先されて、点火時期θが極力遅角側に設定される。この結果、触媒の温度を極力早期に活性温度に近づけることができる。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の制御装置の実施形態によれば、触媒暖機要求がある場合において、実行されていた第1触媒暖機制御が中止されて負圧増大制御が実行された後において、第2触媒暖機制御が実行される。これにより、第2触媒暖機制御実行中において、触媒の暖機の促進と車両の制動力の不足の解消とを効果的に両立することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、負圧増大制御中において、第2点火時期が通常点火時期θ0と等しい時期に(従って、第2スロットル弁開度が通常スロットル弁開度TA0と等しい開度に)設定されているが、第2点火時期が、第1点火時期(θ0+θA)よりも進角側であって通常点火時期θ0よりも遅角側の時期に(従って、第2スロットル弁開度が、第1スロットル弁開度(TA+TAA)よりも小さくて通常スロットル弁開度TA0よりも大きい開度に)設定されてもよい。
また、上記実施形態においては、冷却水温度Twが高いほど、且つエンジン回転速度NEが大きいほど、第2触媒暖機制御中における点火時期θがより遅角側に(従って、第2触媒暖機制御中におけるスロットル弁開度TAがより大きい値に)設定されるが、第2触媒暖機制御中における点火時期θ(従って、スロットル弁開度TA)を、冷却水温度Tw及びエンジン回転速度NEの一方又は両方にかかわらず一定としてもよい。
加えて、上記実施形態においては、通常点火時期θ0に加算される遅角量θdelayを、暫定遅角量θAと遅角戻し量θadvとから求めているが(θdelay=θA−θadv)、遅角量θdelayを直接求めてもよい。
また、上記実施形態においては、第2触媒暖機制御中における点火時期θを、通常点火時期θ0と、暫定遅角量θAと、遅角戻し量θadvとから求めているが(フィードフォワード制御)、第2触媒暖機制御中における点火時期θを、スロットル弁下流圧力Pmが上記値Pref(或いは、Pref以下の基準圧力)に一致するように、推定又は検出されたスロットル弁下流圧力Pmに基づいて、点火時期θ(従って、スロットル弁開度TA)をフィードバック制御してもよい。
この場合、図7に示したルーチンに代えて図11にフローチャートにより示したルーチンが使用される。この図11のルーチンは、図7に示したルーチンにおいて、ステップ730、732、734をステップ1105、1110に置き換えたものである。この場合、具体的には、推定又は検出されたスロットル弁下流圧力Pmが値Prefよりも高い場合、点火時期θが現在の点火時期より進角側に調整され、且つ、スロットル弁開度TAが現在の開度より小さい開度に調整される。一方、推定又は検出されたスロットル弁下流圧力Pmが値Prefよりも低い場合、点火時期θが現在の点火時期より遅角側に調整され、且つ、スロットル弁開度TAが現在の開度より大きい開度に調整される。
これにより、第2触媒暖機制御中において、スロットル弁下流圧力Pmが値Prefに直接且つ確実に調整され得る。従って、第2触媒暖機制御中の車両走行中においてブレーキ操作が比較的頻繁になされても、上述した「負圧の補充」が確実になされ得、上述した制動力の不足の発生を確実に抑制することができる。
10…内燃機関、21…シリンダ、22…ピストン、24…クランク軸、25…燃焼室、30…シリンダヘッド部、37…点火プラグ、38…イグナイタ、39…インジェクタ、41…インテークマニホールド、42…サージタンク、43…吸気ダクト、45…スロットル弁、45a…スロットル弁アクチュエータ、52…エキゾーストパイプ、53…第1触媒、54…第2触媒、60…負圧蓄圧部、61…バイパス通路、61a…上流部、61b…下流部、61c…中央部、61c1…絞り部、62…バイパス流量制御弁、63…負圧導入用メイン通路、64…負圧導入用サブ通路、65…ブレーキブースタ、71…スロットルポジションセンサ、72…クランクポジションセンサ、73…冷却水温度センサ、76…アクセル開度センサ、77…車速センサ