JP2008239864A - 発泡剤組成物、発泡体用組成物および発泡体の製造方法 - Google Patents

発泡剤組成物、発泡体用組成物および発泡体の製造方法 Download PDF

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Akira Sekiya
章 関屋
Tatsuya Sugimoto
達也 杉本
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Zeon Corp
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Abstract

【課題】
地球環境への負荷が小さく、かつ、発泡性に優れる発泡剤組成物、発泡可能なポリマー又は発泡可能なポリマー前駆体を含有する発泡体用組成物、及び発泡体の効率のよい製造方法を提供する。
【解決手段】
下記式(1)で示されるフッ素化環状不飽和炭化水素を15重量%以上含有することを特徴とする発泡剤組成物;前記発泡剤組成物と、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体とを含有する発泡体用組成物;並びに、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体の存在下に、前記発泡剤組成物を蒸気化させる発泡体の製造方法。
【化1】
Figure 2008239864

(式中、X、Y及びZはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。ただし、X、Y及びZの少なくとも1つは水素原子である。nは2又は3である。)
【選択図】 なし。

Description

本発明は、フッ素化環状不飽和炭化水素を含有する発泡剤組成物、該発泡剤組成物と、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体とを含有する発泡体用組成物、並びに、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体の存在下に、前記発泡剤組成物を蒸気化する発泡体の製造方法に関する。
従来、冷蔵庫、冷凍庫などの断熱材として用いられてきた硬質発泡ポリウレタン樹脂などの発泡剤として、HCFC−141bやクロロフルオロカーボンなどが使用されてきた。近年においては、オゾン層破壊や地球温暖化の観点から、これらの代替物として、フッ素化炭素化合物(パーフルオロカーボン)などのフッ素化合物が開発され、新しい発泡剤としてその使用が拡大してきている。
前記フッ素化合物は、不燃性で化学的に安定であって、オゾン層破壊の元凶となる塩素原子を含まないなどの長所を有する。
特許文献1では、フッ素化飽和炭化水素又はフッ素化飽和炭素化合物を発泡剤として使用することが提案されている。しかしながら、一般的に大気中での安定性が非常に良いため、大気中での寿命が長く、温暖化係数(GWP)も非常に大きいなど、環境への負荷が非常に大きいという欠点があった。
このようなフッ素化合物の欠点を改善するべく、特許文献2と3では、フッ素化鎖状飽和炭化水素を含む発泡剤がいくつか提案されている。
例えば、特許文献2においては、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(GWP:950)を主成分とする発泡剤が報告され、特許文献3には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(GWP:890)を含む発泡剤が報告されている。
しかしながら、これらのフッ素化合物は、温暖化係数が依然として大きいものであって、オゾン層破壊や地球温暖化を抑制する観点から満足のいくものではなく、より環境影響への負荷が小さい(温暖化係数の小さい)化合物を含む発泡剤の開発が求められている。
一方、フッ素化合物を主成分とする発泡剤に代わって、ハロゲン原子を含まない低級脂肪族炭化水素を主成分とする発泡剤へ移行する動きも活発である。炭化水素はオゾン破壊係数を持たないことや、温暖化係数が非常に小さいという長所を有し、近年その使用が拡大してきている。
特許文献4と5では、シクロペンタンなどの低級脂肪族炭化水素と、上述したフッ素化合物とを混合した発泡剤組成物も種々提案されている。
例えば、特許文献4においては、C2〜C4のフッ素化鎖状飽和炭化水素又はそのエーテルとシクロペンタンとの共沸組成物が、特許文献5においては、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルとシクロペンタンとの共沸混合物が報告されている。
しかしながら、これらのフッ素化合物と低級脂肪族炭化水素とを混合してなる発泡剤組成物においても、用いるフッ素化合物は大気中での寿命が長く、温暖化係数が小さいものとは言い難いものであった。また、シクロペンタンなどの低級脂肪族炭化水素は、上述したように環境影響への負荷は非常に小さいものであるが、気体熱伝導率が大きく、これらを発泡剤として製造した発泡体は断熱性能が従来のものよりも低いという欠点を抱えている。
また、特許文献6には、フッ素化環状飽和炭化水素又はフッ素化環状不飽和炭化水素を、好ましくはフッ素化環状飽和炭化水素を発泡剤に使用する旨の記載がなされており、さらにはシクロペンタンなどの脂肪族炭化水素を混合しても良い旨も記載されている。なお、フッ素化環状不飽和炭化水素の具体例として、ペンタフルオロシクロブテン、ヘキサフルオロシクロペンテン、ヘプタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン、及びノナフルオロシクロペンテンが記載されている。
特表平2−86635号公報 特開平10−81772号公報 国際公開第2003/091305号パンフレット 特表2000−506143号公報 特開2000−007602号公報 特開平11−158316号公報
上記の通り、発泡剤として種々のフッ素化合物が知られている。機能性、大気中での寿命、及び地球温暖化への影響の観点から総合的に判断すると、フッ素化炭化水素の有用性は高いと思われる。一方、他の成分と併用した場合、非共沸組成であると、各成分の沸点差により均一な発泡が困難となる。例えば、冷蔵庫等に使用される硬質発泡ポリウレタン樹脂の断熱性には発泡の均一性が大きく影響するため、問題である。
従って、本発明は、発泡剤としての機能性に優れ、地球環境への負荷が小さく、なおかつ共沸混合物組成物として使用可能な発泡剤組成物、該発泡剤組成物と、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体とを含有する発泡体用組成物、並びに、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体の存在下に、前記発泡剤組成物を蒸気化することにより、均一で微細な構造を有する気泡が形成されてなる発泡体を効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のフッ素化環状不飽和炭化水素を発泡剤組成物の必須成分として用いれば、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)の発泡剤組成物が提供される。
(1)式(1)
Figure 2008239864
(式中、X,Y,及びZはそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表す。ただし、X、Y,及びZの少なくとも1つは水素原子である。nは2または3である。)
で示されるフッ素化環状不飽和炭化水素を15重量%以上含有することを特徴とする発泡剤組成物。
(2)C10、C10およびC12のいずれかの化学式で表される脂肪族飽和炭化水素をさらに含有する(1)に記載の発泡剤組成物。
(3)前記脂肪族飽和炭化水素がn−ペンタン、イソペンタン、およびシクロペンタンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、かつ共沸混合物組成物である(2)に記載の発泡剤組成物。
(4)前記式(1)で示されるフッ素化環状不飽和炭化水素が、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、および3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡剤組成物。
本発明の第2によれば、下記(5)の発泡体用組成物が提供される。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の発泡剤組成物と、少なくとも一種の発泡可能なポリマーおよび/または少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体とを含有することを特徴とする発泡体用組成物。
本発明の第3によれば、下記(6)の発泡体の製造方法が提供される。
(6)少なくとも一種の発泡可能なポリマーおよび/または少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体の存在下に、本発明の発泡剤組成物を蒸気化させることを特徴とする発泡体の製造方法。
本発明によれば、発泡剤としての機能性に優れ、地球環境への負荷が小さく、なおかつ共沸混合物組成物として使用可能な発泡剤組成物が提供される。
本発明によれば、均一で微細な構造を有する気泡が形成されてなる発泡体を効率よく製造することができる発泡体用組成物が提供される。
本発明の発泡体の製造方法によれば、均一で微細な構造を有する気泡が形成されてなる発泡体を効率よく製造できる。
以下、本発明を、1)発泡剤組成物、2)発泡体用組成物、および、2)発泡体の製造方法に項分けして詳細に説明する。
1)発泡剤組成物
本発明の発泡剤組成物は、式(1)
Figure 2008239864
で示されるフッ素化環状不飽和炭化水素(以下、「フッ素化環状不飽和炭化水素(1)」ということがある。)を、組成物全体に対して15重量%以上含有することを特徴の1つとする。
前記式(1)中、X、Y及びZはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。ただし、X、Y及びZの少なくとも1つは水素原子である。
nは2または3である。
フッ素化環状不飽和炭化水素(1)の具体例としては、以下に示す、炭素数が5である化合物や、炭素数が6である化合物が挙げられる。
(A)炭素数が5である化合物
下記式:
Figure 2008239864
で表される、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点46℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点51℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点77℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、1,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点74℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、2,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点68℃)など。
(B)炭素数が6である化合物
下記式:
Figure 2008239864
で表される、1,3,3,4,4,5,5,6,6−ノナフルオロシクロヘキセン(沸点64℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、1,2,3,4,4,5,5,6,6−ノナフルオロシクロヘキセン(沸点70℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、1,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロシクロヘキセン(沸点88℃)、
下記式:
Figure 2008239864
で表される、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロシクロヘキセン(沸点86℃)など。
これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、2,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンなどの炭素数5の化合物が好ましい。
更には、フッ素化環状不飽和炭化水素(1)としては、当該化合物自体が引火点を有しないことから、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、及び3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンがより好ましく、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、及び1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンが特に好ましい。
本発明に用いるフッ素化環状不飽和炭化水素(1)は、塩素原子を含まないため環境にやさしい。
本発明に用いるフッ素化環状不飽和炭化水素(1)の地球温暖化係数(GWP)については、現時点では数値が出ていない。しかしながら、類似化合物であるオクタフルオロシクロペンテンのGWPが90(100年積算値)であることを考慮すれば、同様に小さいものと推測される。なお、オクタフルオロシクロペンテンは半導体用ガスとしては公知であるが、発泡剤としては使用されない化合物である。
本発明の発泡剤組成物中のフッ素化環状不飽和炭化水素(1)の含有量は、15重量%以上、好ましくは15〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%、特に好ましくは55〜70重量%である。
フッ素化環状不飽和炭化水素(1)は、従来公知の方法により製造することができる。得られた化合物は、公知の方法に従って精製して、本発明の発泡剤組成物に使用される。
フッ素化環状不飽和炭化水素(1)は、一般的にはパーフルオロシクロアルケンのオレフィン炭素に結合したフッ素原子を、金属水素化合物などの還元剤で還元する方法や、1,2−ジハイドロパーフルオロアルカン、あるいは1,1,2−トリハイドロパーフルオロシクロアルカンを、金属水酸化物などの塩基と接触させる方法により製造することができる。
より具体的には、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンは、Journal of American Chemical Society,第86巻,5361頁、1964年に記載の方法に従い、オクタフルオロシクロペンテンを水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤と接触させることで製造することができる。
1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンは、US3449304号に記載の方法に従い、1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンタンを水酸化カリウムと加熱下に接触させることにより製造することができる。
3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンは、Tetrahedron、第22巻、433頁、1966年に記載の方法に従い、オクタフルオロシクロペンテンを還元剤である水素化リチウムアルミニウムヒドリドと接触させることにより製造することができる。
また、このものは、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを水酸化カリウムなどのアルカリと接触させることにより製造することもできる。
1,3,3,4,4,5,5,6,6−ノナフルオロシクロヘキセン、1,2,3,4,4,5,5,6,6−ノナフルオロシクロヘキセン、1,3,4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロシクロヘキセン、および、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロシクロヘキセンについては、Journal of Chemical Soceity,4828頁、1963年に記載されているように、対応するデカフルオロシクロヘキセンを水素化リチウムアルミニウムと接触させることにより混合物として得られるので、それらを蒸留分離することで製造することができる。
本発明の発泡剤組成物は、フッ素化環状不飽和炭化水素(1)を必須成分として含有するものであるが、さらに、少なくとも一種の他の発泡剤を含有するのが、発泡体の断熱性能を向上させる上で好ましい。
他の発泡剤の具体例としては、水;鎖状の脂肪族飽和炭化水素や環状の脂肪族飽和炭化水素のような脂肪族飽和炭化水素;不活性ガス;などが挙げられ、脂肪族飽和炭化水素が好ましく、炭素数4〜6の脂肪族飽和炭化水素がより好ましい。
鎖状の脂肪族飽和炭化水素としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサンなどが挙げられる。
環状の脂肪族飽和炭化水素としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
不活性ガスとしては、例えば、空気、窒素などが挙げられる。
これらの他の発泡剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、前記他の発泡剤としては、C10、C10及びC12のいずれかの化学式で表される脂肪族飽和炭化水素がより好ましい。C10としては、例えば、n− ブタンが、C10としては、例えば、シクロペンタン、1,2−ジメチルシクロプロパン、1,1−ジメチルシクロプロパンが、C12としては、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンが、それぞれ挙げられる。かかる脂肪族飽和炭化水素としては、n−ペンタン、イソペンタン、及びシクロペンタンからなる群から選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。
他の発泡剤は、本発明の発泡剤組成物中、85重量%以下の含有量範囲で適宜使用することができる。通常、20〜85重量%の含有量範囲で使用するのが適当である。
本発明者らは、フッ素化環状不飽和炭化水素(1)と、前述したような脂肪族飽和炭化水素とを適当な割合で混合することにより、共沸混合物組成物が得られることを見出した。本発明の発泡剤組成物としては、前記脂肪族飽和炭化水素がn−ペンタン、イソペンタン、及びシクロペンタンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、かつ共沸混合物組成物であるものが特に好適である。
本発明において、共沸混合物組成物とは共沸混合物及び共沸様混合物をいう。共沸混合物とは、その蒸気組成と液体組成が同一であり、蒸発や凝縮を繰り返した後の混合物の組成変化がないものを意味する。また、共沸様混合物とは、その蒸気組成と液体組成とが実質的に同一であり、蒸発や凝縮を繰り返した後の混合物の組成が無視できる程度にしか変化しないものを意味する。ここで、「蒸気組成と液体組成とが実質的に同一」とは、液体での構成成分の含有量比と対比した場合に、蒸気での構成成分の含有量比の変動割合が±5%以内であることをいう。共沸様混合物は、共沸混合物と、構成成分は同じであるが、当該成分の含有量比が幾分異なっており、共沸混合物と類似の物性を示す。
本発明においては、フッ素化環状不飽和炭化水素(1)と脂肪族飽和炭化水素とを、これらが共沸混合物組成物を形成するような混合割合で使用することが好ましい。
中でも、フッ素化環状不飽和炭化水素(1)の少なくとも一種と、n−ペンタン、イソペンタン、及びシクロペンタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂肪族飽和炭化水素とで共沸混合物組成物を形成して使用するのがより好ましい。
フッ素化環状不飽和炭化水素(1)は少量を添加するだけで速やかに発泡の中心核となり低級(炭素数4〜6)炭化水素の発泡を助長し、より均一で微細な気泡構造を形成するものと考えられる。本発明の共沸混合物組成物を用いることにより、発泡初期から終了段階まで安定した速度で発泡させることが可能となる。よって、より均一で微細な構造を有する気泡が形成されてなる発泡体を得ることができる。
また、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、及び3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンなどのフッ素化環状不飽和炭化水素(1)は、前記の通り、それ自体が引火点を持たないため、上記低級脂肪族飽和炭化水素と混合することにより、燃焼性が小さくなって、火災などの危険性が減少するという効果も得ることができる。
フッ素化環状不飽和炭化水素(1)と脂肪族飽和炭化水素との共沸混合物組成物は、例えば、後述の「実施例1」に記載する方法を参照して適宜調製することができる。
フッ素化環状不飽和炭化水素(1)と脂肪族飽和炭化水素との共沸混合物組成物としては、例えば、次のものが挙げられる。
(1)1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン45〜60重量%及びイソペンタン35〜55重量%からなる共沸様混合物、好ましくは1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン50.4重量%及びイソペンタン49.6重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は24.4℃(大気圧1hPa)である。
(2)1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン55〜75重量%及びn−ペンタン25〜45重量%からなる共沸様混合物、 好ましくは1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン62.5重量%及びn−ペンタン37.5重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は29.3℃(大気圧1hPa)である。
(3)1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン60〜80重量%及びシクロペンタン20〜40重量%からなる共沸様混合物、好ましくは1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン69.6重量%及びシクロペンタン30.4重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は35.0℃(大気圧1hPa)である。
(4)1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン35〜50重量%及びイソペンタン45〜65重量%からなる共沸様混合物、好ましくは1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン40.9重量%及びイソペンタン59.1重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は26.3℃(大気圧1hPa)である。
(5)1,2、3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン50〜60重量%及びn−ペンタン40〜50重量%からなる共沸様混合物、好ましくは1,2、3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン54.7重量%及びn−ペンタン45.3重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は31.6℃(大気圧1hPa)である。
(6)1,2、3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン65〜75重量%及びシクロペンタン25〜35重量%からなる共沸様混合物、好ましくは1,2、3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン70.1重量%及びシクロペンタン29.9重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は38.0℃(大気圧1hPa)である。
(7)3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン15〜30重量%及びイソペンタン70〜85重量%からなる共沸様混合物、好ましくは3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン20.0重量%及びイソペンタン80.0重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は27.2℃(大気圧1hPa)である。
(8)3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン30〜40重量%及びn−ペンタン60〜70重量%からなる共沸様混合物、好ましくは3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン35.3重量%及びn−ペンタン64.7重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は34.4℃(大気圧1hPa)である。
(9)3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン45〜55重量%及びシクロペンタン45〜55重量%からなる共沸様混合物、好ましくは3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン50.5重量%及びシクロペンタン49.5重量%からなる共沸混合物である。この共沸混合物の沸点は44.4℃(大気圧1hPa)である。
本発明の発泡剤組成物には、その他、後述の発泡体用組成物の構成成分として記載される任意の成分を適宜含有させてもよい。本発明の発泡剤組成物は、それらの成分との相溶性に優れており、かかる特性は、発泡体における均一で微細な構造を有する気泡の形成に大きく寄与する。
2)発泡体用組成物
本発明の発泡体用組成物は、上述した本発明の発泡剤組成物と、少なくとも一種の発泡可能なポリマー及び/又は少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体とを含有する。
本発明に用いる発泡可能なポリマー、及び発泡可能なポリマー前駆体はそれぞれ単独で使用しても両者を合わせて使用してもよい。好ましくは少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体を使用する。
本発明の発泡体用組成物中に発泡可能なポリマーと発泡可能なポリマー前駆体とが含まれる場合、発泡可能なポリマーと発泡可能なポリマー前駆体との含有量比(発泡可能なポリマー/発泡可能なポリマー前駆体)は、重量比で、通常、50/50〜0/100である。
前記発泡可能なポリマーとしては、例えば、スチレンポリマー類、塩化ビニルポリマー類、エチレンポリマー類、及びプロピレンポリマー類が挙げられる。これらの発泡可能なポリマーは、それぞれ単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
スチレンポリマー類は、スチレン化合物の単独重合体、又はスチレン化合物とこのものと共重合可能なオレフィン性モノマーとの共重合体である。
スチレン化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、シクロアルキル化スチレン類、及びハロゲン化スチレンなどが挙げられる。シクロアルキル化スチレン類に含まれるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチルやシクロヘキシルが、ハロゲン化スチレンに含まれるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子や塩素原子が、それぞれ挙げられる。
スチレン化合物と共重合可能なオレフィン性モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、N−ビニルカルバゾール、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
塩化ビニルポリマー類は、塩化ビニルの単独重合体、又は塩化ビニルと他のビニルモノマー類との共重合体である。
他のビニルモノマー類としては、例えば、2−ブテン、アクリル酸、プロピレン、ブタジエンなどが挙げられる。
エチレンポリマー類は、エチレンの単独重合体、又はエチレンと他のビニルモノマー類との共重合体である。
プロピレンポリマー類は、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンと他のビニルモノマー類との共重合体である。
他のビニルモノマー類の具体例としては、2−ブテン、アクリル酸、プロピレン、ブタジエンなどが挙げられる。
発泡可能なポリマー前駆体とは、発泡体の製造時において重合してポリマーになると同時に発泡するものをいう。
発泡可能なポリマー前駆体の重合により形成されるポリマーとしては、例えば、フェノール系ポリマー、シリコーン系ポリマー、イソシアネート系ポリマーが挙げられる。中でも、イソシアネート系ポリマーが好ましい。
本発明において発泡可能なポリマー前駆体としては、これらのポリマーを構成する一種又は二種以上の単量体が用いられる。
前記イソシアネート系ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリ尿素、ポリカルボジイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
イソシアネート系ポリマーは、少なくとも一種の有機ポリイソシアネートと、少なくとも2個以上の反応性水素含有官能基を有する化合物(以下、反応性水素含有官能基含有化合物という。)とを反応させて得ることができる。
有機ポリイソシアネートは公知の化合物であり、イソシアネート基を平均して2個以上有する、鎖状脂肪族系、脂環式系、又は芳香族系のポリイソシアネート、それらを変性して得られるポリイソシアネート、及びそれらの二種以上の混合物などが挙げられ、特に制限はない。
鎖状脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,12―ドデカジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、及びシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、及びナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートなどが挙げられる。
変性して得られるポリイソシアネートの具体例としては、前記ポリイソシアネートのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、及びウレア変性体などがある。好ましくは、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称クルードMDI)及びポリフェニレンポリフェニルイソシアネートが挙げられる。
反応性水素含有官能基含有化合物は、上記有機ポリイソシアネートと反応するものであれば、特に制限されない。反応性水素含有官能基含有化合物は、通常、有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基1当量に対して、活性水素が1〜3当量程度になるように使用すればよい。
反応性水素含有官能基とは、活性水素を持つ官能基をいう。当該官能基としては、例えば、水酸基、1級又は2級アミノ基、カルボン酸基、及びチオール基などが挙げられる。反応性水素含有官能基としては、通常、水酸基が好適である。
反応性水素含有官能基含有化合物中、同一又は相異なる反応性水素含有官能基が存在していてもよい。また、反応性水素含有官能基含有化合物には、通常、反応性水素含有官能基は1〜3個含まれる。
反応性水素含有官能基含有化合物は、単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用しても良い。特に、2個以上の水酸基を有する化合物やその混合物、又はかかる化合物を主成分とし、さらに、ポリアミンなどを含む混合物として使用するのが好ましい。
2個以上の水酸基を有する化合物としては、ポリオールが挙げられる。
ポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエチレン系ポリマーなどがある。
ポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、グリセロール、グリセロールプロポキシレート、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、高級ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、高級ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルプロパン、ポリ(ジエチレングリコール)フタレートジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコール、糖類、及び芳香族アミンなどのイニシエーターに、環状エーテル、特にプロピレンオキシドやエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加させて得られるポリエーテル系ポリオールが挙げられる。
また、ポリオールとして、ポリマーポリオールあるいはグラフトポリオールと称される主にポリエーテル系ポリオール中に、ビニルポリマーの微粒子が分散したポリオール組成物を使用することができる。
本発明の発泡体用組成物中、本発明の発泡剤組成物の含有量は、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体100重量部に対して、通常、1重量部以上であり、5〜20重量部の範囲が好適である。
本発明の発泡体用組成物は、整泡剤をさらに含有していてもよい。
用いる整泡剤としては、界面活性剤、気泡制御剤、起泡安定剤など公知のもであれば良く、例えば、シリコン系整泡剤や含フッ素化合物系整泡剤などが挙げられる。これらの整泡剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
整泡剤の使用量は、前記発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部である。
本発明の発泡体用組成物は、触媒をさらに含有してもよい。
用いる触媒としては、例えば、反応性水素含有基とイソシアネート基との反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒や、トリエチレンジアミンなどの3級アミン触媒などが挙げられる。また、イソシアネート基同士を反応させるためにカルボン酸金属塩などの多量化触媒も目的に応じて使用できる。
これらの触媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
触媒の使用量は前記発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部である。
その他、本発明の発泡体用組成物には、例えば、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、染料、顔料、加水分解防止剤、抗菌剤などを配合してもよい。
本発明の発泡体用組成物は、以下のように調製することができる。
すなわち、本発明の発泡剤組成物、および、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能ポリマー前駆体、並びに、所望により、整泡剤、触媒、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、染料、顔料、加水分解防止剤、抗菌剤などを公知の方法により所定割合で混合すればよい。
例えば、発泡可能なポリマーとしてスチレンポリマー類を使用する場合、発泡剤組成物を押し出し機中の熱可塑化されたスチレンポリマー類の流中に注入し、種々の既知混合ヘッド及びスプレー装置のいずれかを用いて混合することにより発泡体用組成物を調製することができる。発泡可能なポリマー前駆体を用いる場合も同様にして発泡剤組成物を調製可能である。
3)発泡体の製造方法
本発明の発泡体の製造方法は、少なくとも一種の発泡可能なポリマー及び/又は少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体の存在下に、本発明の発泡剤組成物を蒸気化させることを特徴の1つとする。
本発明に用いる発泡可能なポリマー及び発泡可能なポリマー前駆体としては、上述した本発明の発泡体用組成物に用いられるのと同様のものが挙げられる。
本発明の発泡体の製造方法においては、発泡体を製造する直前に、発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体を本発明の発泡剤組成物と合わせて(混合を含む。)、本発明の発泡剤組成物を蒸気化させてもよいし、予め調製しておいた本発明の発泡体用組成物を使用して、発泡体用組成物に含まれる発泡剤組成物を蒸気化させてもよい。
本発明の発泡体の好ましい製造方法としては、下記の(α)及び(β)の方法が挙げられる。
(α)第1の好ましい製造方法は、本発明の発泡剤組成物、並びに発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体を成型枠に注入し、成型型枠内で発泡剤組成物を蒸気化させて気泡を形成する方法である。
この場合、発泡剤組成物を蒸気化する方法としては、本発明の発泡剤組成物、並びに発泡可能なポリマー及び/又は発泡可能なポリマー前駆体を成型枠に注入した後、加熱炉の中を通過させて加熱する方法;や、発泡可能なポリマー前駆体を含有する発泡体用組成物を型枠に注入した後、発泡可能なポリマー前駆体の重合反応熱によって蒸気化する方法;などが挙げられる。
以上により発泡体が形成されるが、所望により、射出成形、高圧成形、低圧成形などの公知の成形法により成型することで、所望の形状を有する発泡体を得ることができる。
成形型枠の材質には特に制限はなく、金属製、木製又は樹脂製のいずれであってもよい。成形は成形型枠を開放又は閉鎖の状態で行えばよい。
(β)第2の好ましい製造方法は、二種の発泡可能なポリマー前駆体を使用して発泡体を製造する方法である。
本態様においては、使用する発泡可能なポリマー前駆体としては、汎用性優れることから、前記反応性水素含有官能基含有化合物と有機ポリイソシアネートが特に好適であり、これらを反応させてポリマーとする。
例えば、反応性水素含有官能基含有化合物、整泡剤、触媒及びフッ素化環状不飽和炭化水素(1)を含有する混合物を成分(A)とし、有機ポリイソシアネートを成分(B)として、それぞれ出発成分を調製する。次いで、成分(A)と成分(B)を混合し、型に注入して発泡、成形する。
出発成分の混合温度は、通常、15〜60℃であり、開放成形型あるいは加圧下に閉鎖成形型に入れられる。成分(A)及び(B)の混合物は、攪拌機、あるいは攪拌スクリューにより、あるいは向流貫入法により加圧下に給送される。
本発明方法においては、通常、70〜300℃、好ましくは80〜200℃の温度下にて発泡剤組成物を蒸気化させるのが好適である。
本発明により製造される発泡体の平均気泡径は、通常、50μm〜300μmであり、好ましくは100μm〜200μmである。
本発明によれば、均一で微細な構造を有する気泡が形成されてなる発泡体を効率よく製造することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「重量部」を表す。
以下においてガスクロマトグラフィーによる分析は、以下の条件にて行った。
装置名:日立製作所製 G−5000
カラム:Neutrabond−1(GLサイエンス社製)
(60m×I.D0.25μm、1.5μmdf)
カラム温度:40℃ → [20℃/分] → 240℃
インジェクション温度:200度
キャリヤーガス:窒素(流量1mL/分)
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
[製造例1] 1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点46℃)の合成
1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンは文献(Journal of American Chemical Society,1964,Vol.86,5361)に従って合成した。
攪拌機および滴下ロートを付したガラス製四つ口反応器に、無水トリエチレングリコールジメチルエーテル(Aldrich社製)700部、およびオクタフルオロシクロペンテン(日本ゼオン製)300部を仕込み、アセトン/ドライアイス浴に浸して、−30℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウムのトリエチレングリコールジメチルエーテル溶液(濃度2mol/L)62部を滴下ロートから分けて滴下した。滴下終了後、−30〜−20℃の温度範囲で2時間さらに攪拌後、攪拌を継続しながら、6時間かけて室温まで温度を上昇させた。反応終了後、反応液に水1500部を少量づつ加えて二層分離させた。下層を取り出し、飽和重曹水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、得られた濾液を、KS型蒸留塔(東科精機社製、理論段数30段)を用いて精製を行った。目的物である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(フッ素化環状不飽和炭化水素Aとする。)を178部得た(沸点46℃)。
[製造例2] 1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点51℃)の合成
オクタフルオロシクロペンテン(日本ゼオン社製)を水素化して得られる、1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンタン890部、n−テトラブチルアンモニウムブロミド15部、2.5mol/Lの炭酸カリウム水溶液2000部を、冷却管および攪拌機を付したガラス製反応器に仕込み、全容を45℃にて約7時間強攪拌した。反応液を室温まで冷却し、静置した。下層をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料である1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンタンは消失していた。そこで、下層を分離し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ別したところ、790部の生成物が得られた。生成物をさらにガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンと、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンがGC面積比で9:1の割合の混合物であった。この混合物についてスルーザー型蒸留塔(東科精機社製、理論段数50段)を用いて蒸留精製を行い、目的物である1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(フッ素化環状不飽和炭化水素Bとする。)を49部得た(沸点51℃)。
[製造例3] 3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点77℃)の合成
冷却管、攪拌機を付したガラス反応器に、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン790部、2mol/Lの水酸化カリウム水溶液2000部を仕込み、温度60℃で6時間強攪拌した。反応液を室温まで冷却し、静置した。下層をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンは消失していた。そこで、下層を分離し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し硫酸マグネシウムをろ別したところ、645部の生成物が得られた。生成物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、目的物である、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンが、GC面積比で96.1%含まれていた。この混合物についてスルーザー型蒸留塔(東科精機社製、理論段数50段)を用いて蒸留精製を行い、目的物である3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(フッ素化環状不飽和炭化水素Cとする。)を489部得た(沸点77℃)
<引火性試験>
タグ密閉式、およびクリーブランド開放式の自動引火点測定試験機を使用して、製造例1〜3で得たフッ素化環状不飽和炭化水素の引火点をJIS K2265に準拠して測定した。 1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、および、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンのいずれの化合物も沸点付近で炎が消煙し、引火点は認められなかった。
<燃焼性試験>
製造例1〜3で得たフッ素化環状不飽和炭化水素のそれぞれと、空気および水蒸気を含む試験ガスを調製し、その混合ガスの燃焼性を、FIRE SAFETY JOURNAL,Vol.41,406−417(2006)に記載の方法に従って調べた。その結果を下記第1表に示す。
Figure 2008239864
[実施例1] 共沸混合物からなる発泡剤組成物の製造
マグネチックスターラー、オイルバス、ガラス製蒸留釜、理論段数7段の還流装置付き蒸留塔(東科精機製、KS型)、冷却器、留分受器などからなる精留装置を用いた。また、オイルバス温度、蒸留釜内温度、蒸留塔の塔頂部温度を測定記録するために熱電対式温度記録計を用いた。具体的な手順を以下に示す。
200mLの蒸留釜に、フッ素化環状不飽和炭化水素A〜Cそれぞれ50gと、低級脂肪族飽和炭化水素(n−ペンタン、イソペンタン又はシクロペンタン)50gを仕込み、ポリテトラフルオロエチレン製回転子にて攪拌した。蒸留釜を精留装置に取りつけて、混合溶液を攪拌した。オイルバスを80〜100℃に加熱した。塔頂温度が上昇し、一定温度に達してから約1時間全還流させた。その後、留分の抜き出し/還流=2/40秒の還流比で、約5mLずつ5回(フラクション1〜5)に分けて留分を受器に抜き出した。 各留分の組成比はガスクロマトグラフィー分析より求めた。
結果を第2表に示す。第2表中、共沸温度はフラクション3の抜き出し時の塔頂温度を示し、共沸組成比はフラクション3の組成比を示す。
得られた9種類の発泡剤組成物(共沸混合物)の沸点(共沸温度)はいずれも、炭化水素単独の沸点よりも低いことが分かる。
Figure 2008239864
<ポリオールとの溶解性試験>
ガラス製サンプル瓶に所定量のポリオール(トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコール)を秤量し、さらに、実施例1で得た各発泡剤組成物を加えた。その混合液を振とう器にかけて5分間振とうさせた。静置後、層分離したうちの上層部分を分離し、下層部分の重量を測定した。その重量と仕込んだポリオールの重量差から、ポリオールに溶解した発泡剤組成物の重量を求め、ポリオールへの溶解度(%)を求めた。結果を第3表に示す。
[比較例1]
実施例1の発泡剤組成物をシクロペンタン又はn−ペンタンに代えて、該発泡剤組成物と同様にして溶解度を算出した。結果を第3表に示す。
Figure 2008239864
第3表より、シクロぺンタンやn−ペンタンを単独使用すると、発泡材料の構成成分であるポリオールへの溶解性が不十分なため、発泡過程そのものが不均一になるおそれがあることがわかる。
[実施例2] 発泡体の製造
反応性水素含有官能基含有化合物である芳香族系ポリエーテルポリオール(水酸基価460mgKOH/g)100部に対して、アミン系触媒であるカオライザーNo.1(花王社製)2部、整泡剤としてシリコン系界面活性剤であるF−335(信越化学工業社製)1.5部、発泡剤組成物として、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンとシクロペンタンとの共沸混合物〔組成比(重量比)69.6:30.4〕5部、水0.5部、及び有機ポリイソシアネート(アミン当量135のクルードMDI)を液温50℃で混合し、30cm四方の金属製ボックスに注入して硬質発泡ポリウレタン樹脂を形成した。得られた硬質発泡ポリウレタン樹脂の断面を電子顕微鏡で観察したところ、およそ100〜150μmの均一な気泡が形成されていることが分かった。
[比較例2]
実施例2において、用いた発泡剤組成物である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンとシクロペンタンとの共沸混合物から、シクロペンタン単独に変更した以外は実施例2と同様にしてウレタン発泡体を得た。
得られたウレタン発泡体の断面を同様に電子顕微鏡で観察したところ、200μmを超える大きさの気泡がところどころ形成されており、気泡の均一性が低いことが分かった。
[比較例3]
実施例2において、用いた発泡剤組成物を1,1,1、4,4,4−ヘキサフルオロブタン(沸点25℃)とシクロペンタンの混合物(重量比で50:50、この重量比は共沸混合物ではない。)に変更した以外は実施例2と同様にしてウレタン発泡体を得た。
得られたウレタン発泡体の断面を同様に電子顕微鏡で観察したところ、100μm未満の気泡、100〜200μmの気泡、200μmを超える大きさの気泡が様々に形成されており、気泡の均一性が低いことが分かった。
このように、共沸混合物でない発泡剤組成物を用いて発泡させた場合、二段発泡になる現象が起こりうるため、気泡の大きさが一定とならず、硬質発泡ポリウレタン樹脂の断熱性能に影響を与え得ると思われる。

Claims (6)

  1. 式(1)
    Figure 2008239864
    (式中、X,Y,およびZはそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表す。ただし、X、Y,およびZの少なくとも1つは水素原子である。nは2または3である。)
    で示されるフッ素化環状不飽和炭化水素を15重量%以上含有することを特徴とする発泡剤組成物。
  2. 10、C10およびC12のいずれかの化学式で表わされる脂肪族飽和炭化水素を更に含有する請求項1に記載の発泡剤組成物。
  3. 前記脂肪族飽和炭化水素がn−ペンタン、イソペンタン、およびシクロペンタンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、かつ共沸混合物組成物である請求項2に記載の発泡剤組成物。
  4. 前記式(1)で示されるフッ素化環状不飽和炭化水素が、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、および3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡剤組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の発泡剤組成物と、少なくとも一種の発泡可能なポリマーおよび/または少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体とを含有することを特徴とする発泡体用組成物。
  6. 少なくとも一種の発泡可能なポリマーおよび/または少なくとも一種の発泡可能なポリマー前駆体の存在下に、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡剤組成物を蒸気化させることを特徴とする発泡体の製造方法。
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