JP2008239676A - 光学用樹脂組成物、光学部品、及び耐レーザー性改善方法 - Google Patents

光学用樹脂組成物、光学部品、及び耐レーザー性改善方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い光線透過率を示し、レーザー光に対する耐性(耐レーザー性)に優れた光学用樹脂組成物、特に、波長390〜430nmの青紫レーザーの照射と透過の条件下でも、性能の劣化が抑制され、長期にわたって安定した透明性を示す光学用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】脂環式構造含有重合体及び蛍光増白剤を含有し、相対蛍光強度が2〜250である光学用樹脂組成物、該樹脂組成物を成形してなる光学部品、並びに脂環式構造含有重合体の耐レーザー性改善方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、光線透過率が高く、耐レーザー性に優れた光学用樹脂組成物に関する。本発明の光学用樹脂組成物は、波長390〜430nmの青紫レーザー用の光学レンズなどの光学部品として好適に用いられる。また、本発明は、脂環式構造含有重合体の耐レーザー性改善方法に関する。本発明において、レーザービームを、単に「レーザー」ということがある。
通信や放送などの異なる複数のサービス形態を用いて、映像、画像、音、文字などの情報を高速で送受信するマルチメディアが発達し、該マルチメディアに対応するパーソナルコンピューター、オーディオ・ビジュアル機器、テレビゲーム機などが急速に普及している。
マルチメディア対応機器には、情報を保存し再生するために、CD−ROM、CD−R、MD、DVDなどの光学式記録媒体が備わっている。マルチメディアによる情報量が年々増加しているため、それに対応すべく、光学式記録媒体の記録密度を高くして、記録容量を大きくすることが求められている。光学式情報記録媒体の高記録密度化が進められると、光学式情報記録媒体への情報の書き込み及び記録された情報の読み出しに使用するレーザー光を、より短波長とする必要がある。
近年、波長390nm〜430nmの青紫レーザーなど、発振波長の短い半導体レーザーの開発が進められおり、従来の赤色半導体レーザーよりも、より短波長のレーザー発振が可能になった。
レーザー光を用いた光学式情報記録方式には、レーザー光の焦点を記録面上に合わせるためのレンズ(「ピックアップレンズ」と呼ばれている)が用いられている。このレンズとしては、一般に、非球面形状のプラスチックレンズが使用されている。該プラスチックレンズは、レーザー光が照射され透過する条件下で用いられるため、耐レーザー性に優れており、レーザー光の照射と透過によって性能が劣化することなく、高度の透明性を安定して保持できることが求められている。
特許文献1(特開2001−139756号公報)には、脂環式構造含有重合体と酸化防止剤とを含有する光学用樹脂組成物が提案されている。特許文献1には、該光学用樹脂組成物からなる成形体は、透明性に優れる上、長期間にわたる耐熱性と耐熱着色性に優れることが記載されている。
特許文献2(特開2003−270401号公報)には、ビニル脂環式炭化水素重合体とリン系酸化防止剤及び/またはヒンダードフェノール基を有するフェノール系酸化防止剤とを含有する光学用成形体が提案されている。特許文献2には、該光学用成形体は、短波長レーザー光線を高強度で透過させて情報記録媒体への情報の書き込みや該媒体からの情報の読み出しを行っても、長期間にわたってエラーレートが増加せず、機械的強度の劣化もないことが記載されている。
特許文献3(WO2004/085538)には、脂環式構造含有重合体とヒンダードアミン化合物とを含有する樹脂組成物が提案されている。特許文献3には、該樹脂組成物からなる成形体は、青色レーザーなどの短波長光線の照射に対して、成形体表面にアブレーションが生ぜず、安定した透明性を維持できることが記載されている。
このように、脂環式構造含有重合体と各種酸化防止剤とを含有する樹脂組成物は、光学レンズなどの光学部品の用途に適した諸特性を有している。他方、波長390〜430nmの青紫レーザーは、レーザー透過物体を劣化させる傾向が極めて強い。従来の光学用樹脂組成物を成形してなる光学部品は、耐レーザー性が未だ充分ではなく、とりわけ波長390〜430nmの青紫レーザーに対する耐性が不十分である。そのため、従来の光学用樹脂組成物から成形された光学部品は、青紫レーザーの照射と透過により機能が劣化し、長期にわたって高い光線透過率を維持することが困難である。
特開2001−139756号公報 特開2003−270401号公報 WO2004/085538号公報
本発明の課題は、高い光線透過率を示し、かつ、レーザー光に対する耐性(耐レーザー性)に優れた光学用樹脂組成物を提供することにある。
特に、本発明の課題は、波長390〜430nmの青紫レーザーの照射と透過の条件下でも、性能の劣化が抑制され、長期にわたって安定した透明性を示す光学用樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の課題は、該光学用樹脂組成物を成形してなる光学部品を提供することにある。さらなる本発明の課題は、脂環式構造含有重合体の耐レーザー性改善方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、脂環式構造含有重合体に蛍光増白剤を含有させて、特定の数値範囲の相対蛍光強度を有する樹脂組成物としたところ、該樹脂組成物が光学用樹脂組成物として、高い光線透過率を示すことに加えて、波長390〜430nmの青紫レーザーに対して優れた耐性を示すことを見出した。
かくして、本発明によれば、
脂環式構造含有重合体及び蛍光増白剤を含有し、下記式(I)
F=(F/F)×100 …(I)
で表される相対蛍光強度Fが2〜250である光学用樹脂組成物が提供される。
式(I)中、Fは、光学用樹脂組成物から成形した縦65mm×横65mm×厚み3mmの平板状の成形体試料を、その平板面が入射光に対して45°の角度となるように配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該成形体に入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される蛍光強度である。
式(I)中、Fは、内径の二辺が10mmの直角二等辺三角形を底面とする三角柱セル内に、標準溶液として分光蛍光光度計用ローダミンB溶液を入れ、該三角柱セルにおける直角二等辺三角形の底辺の面が入射光に対し45°の角度となるよう配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該三角柱セルに入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される標準溶液の蛍光強度である。
また、本発明によれば、前記光学用樹脂組成物を成形してなる光学部品が提供される。
さらに、本発明によれば、脂環式構造含有重合体に蛍光増白剤を添加して、下記式(I)
F=(F/F)×100 …(I)
で表される相対蛍光強度Fを2〜250の範囲に制御することを特徴とする脂環式構造含有重合体の耐レーザー性改善方法が提供される。
式(I)中、Fは、「光学用樹脂組成物」を「蛍光増白剤を含有する脂環式構造含有重合体」と変えたこと以外は、前記と同じである。Fは、前記と同じである。
本発明によれば、高い光線透過率を示し、かつ、耐レーザー性に優れた光学用樹脂組成物が提供される。特に、本発明によれば、波長390〜430nmの青紫レーザーの照射と透過の条件下でも、性能の劣化が抑制され、長期にわたって安定した透明性を示す光学用樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、該光学用樹脂組成物を成形してなり、前記諸特性に優れた光学レンズなどの光学部品が提供される。さらに、本発明によれば、脂環式構造含有重合体に蛍光増白剤を添加することにより、その耐レーザー性を顕著に改善する方法が提供される。
1.脂環式構造含有重合体:
本発明で使用する脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/または側鎖に脂環式構造を有する重合体であり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられるが、機械強度、耐熱性、耐光性、耐候性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素数は、機械強度、耐熱性、成形加工性などの観点から、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、その上限は、100重量%である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあることが、透明性、耐熱性、耐光性などの観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(5)これらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及びそれらの水素添加物が好ましく、ビニル脂環式炭化水素系重合体及びその水素添加物が耐レーザー性、透明性の点からより好ましい。
(1)ノルボルネン系重合体:
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとビニル化合物との付加共重合体が挙げられる。
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名「ノルボルネン」)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エンなどのノルボルネンとその誘導体;トリシクロ[4.3.12,5.01,6]−デカ−3,7−ジエン(慣用名「ジシクロペンタジエン」)、トリシクロ[4.3.12,5.01,6]−デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,5.01,6]−ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.12,5.01,6]−ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ[4.4.12,5.01,6]−ウンデカ−3−エンなどのジシクロペンタジエンとその誘導体;テトラシクロ[7.4.110,13.01,9.02,7]−トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(「1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン」ともいう)とその誘導体;テトラシクロ[8.4.111,14.01,10.03,8]−テトラデカ−3,5,7,12−11−テトラエン(「1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン」ともいう)とその誘導体;などのノルボルナン環を有しないノルボルネン系モノマーが挙げられる。
また、ノルボルネン系モノマーとして、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン(慣用名「テトラシクロドデセン」)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]−ドデカ−3−エンなどのテトラシクロドデセンとその誘導体;ペンタシクロ[6.5.11,8.13,6.02,7.09,13]−ペンタデカ−3,10−ジエンとその誘導体;ペンタシクロ[7.4.13,6.110,13.01,9.02,7]−ペンタデカ−4,11−ジエンとその誘導体;などのノルボルナン環を有するノルボルネン系モノマーが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ノルボルネン系モノマーと、それ以外の共重合可能なモノマーとを使用して共重合体とすることができる。
ノルボルネン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20個を有するα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ノルボルネン系モノマーの開環重合体は、開環重合触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と還元剤とからなる触媒系;あるいはチタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;を用いて、溶媒中または無溶媒で、通常、−50℃〜100℃の重合温度、0〜50kg/cmの重合圧力で、ノルボルネン系モノマーを開環重合させることにより得ることができる。2種以上のノルボルネン系モノマーを併用すれば、開環共重合体が得られる。ノルボルネン系モノマーと、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとを併用することによっても、開環共重合体が得られる。水素添加ノルボルネン系重合体は、常法に従って、開環重合体(開環共重合体を含む)を水素添加触媒の存在下に水素により水素添加する方法により得ることができる。
ノルボルネン系モノマーと共重合可能なモノマーとの付加共重合体は、これらのモノマー成分を、溶媒中または無溶媒で、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系の存在下で、通常、−50℃〜100℃の重合温度、0〜50kg/cmの重合圧力で共重合させる方法により得ることができる。
(2)単環の環状オレフィン系重合体:
単環の環状オレフィン系重合体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体及びその水素添加物を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体:
環状共役ジエン系重合体としては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素添加物を用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体:
ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体及びその水素添加物;などを用いることができる。これらのビニル脂環式炭化水素系重合体の立体配置については、アタクティック、アイソタクティック、シンジオタクティックの何れでもよく、ダイアッド表示によるシンジオタクティシティーが0〜100%の何れのものも用いることができる。
脂環式構造含有重合体の分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは10,000〜200,000、より好ましくは20,000〜100,000である。脂環式構造含有重合体の重量平均分子量が前記範囲であることが、機械強度と成形加工性とを高度にバランスさせる上で好ましい。GPCにより測定される脂環式構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常5.0以下、好ましくは2.5以下である。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常50〜300℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した値である。
脂環式構造含有重合体は、不飽和結合を有するものである場合、水素添加して用いることが、耐レーザー性、透明性、耐熱性などの観点から好ましい。脂環式構造含有重合体中の非共役の炭素−炭素二重結合の水素添加率は、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。脂環式構造含有重合体中の共役炭素−炭素二重結合(例えば、芳香環の共役二重結合)については、必ずしも水素添加する必要はないけれども、脂環式構造含有重合体中の共役炭素−炭素二重結合の通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上を水素添加することが、耐レーザー性及び透明性がさらに優れることから好ましい。
2.相対蛍光強度:
本発明の光学用樹脂組成物は、脂環式構造含有重合体と蛍光増白剤とを混合して、特定の範囲の相対蛍光強度を持たせることにより、優れた光線透過率と耐レーザー性を付与したものである。本発明の光学用樹脂組成物は、波長390〜430nmの青紫レーザーの照射と透過に対して優れた耐性を示すものである。
本発明において、相対蛍光強度とは、下記式(I)
F=(F/F)×100 …(I)
で表される相対蛍光強度Fを意味する。本発明の光学用樹脂組成物は、相対蛍光強度Fが2〜250の範囲を示すものである。
式(I)中、Fは、光学用樹脂組成物(蛍光増白剤を含有する脂環式構造含有重合体)から成形した縦65mm×横65mm×厚み3mmの平板状の成形体試料を、その平板面が入射光に対して45°の角度となるように配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該成形体に入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される蛍光強度である。
は、内径の二辺が10mmの直角二等辺三角形を底面とする三角柱セル内に、標準溶液として分光蛍光光度計用ローダミンB溶液を入れ、該三角柱セルにおける直角二等辺三角形の底辺の面が入射光に対し45°の角度となるよう配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該三角柱セルに入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される標準溶液の蛍光強度である。
本発明の光学用樹脂組成物の相対蛍光強度Fは、2〜250、好ましくは3〜200、より好ましくは4〜150、さらに好ましくは5〜100、特に好ましくは5〜50である。この相対蛍光強度Fが高くなると、耐レーザー性が向上する。しかし、相対蛍光強度Fが高すぎると、光線透過率が低くなる。蛍光増白剤の含有量を増やすと、光学用樹脂組成物の相対蛍光強度Fが高くなるが、光線透過率が低下傾向を示す。
耐レーザー性は、光学用樹脂組成物からなる成形体に、60℃の環境下で、波長400nmのレーザー光を240時間照射し、レーザー照射後の成形体の光線透過率を分光光度計を用いて測定する方法により評価した。成形体のレーザー照射前後における400nmの光線透過率の低下量が小さいほど、耐レーザー性に優れていることを示す。本発明の光学用樹脂組成物の耐レーザー性は、通常1%以下、好ましくは0.9%以下である。本発明の光学用樹脂組成物の光線透過率は、通常86%以上、好ましくは87%以上である。
したがって、脂環式構造含有重合体に蛍光増白剤を添加して、相対蛍光強度Fを2〜250の範囲に制御することにより、脂環式構造含有重合体の耐レーザー性を顕著に改善することができる。
3.蛍光増白剤:
本発明で使用する蛍光増白剤は、一般に、近紫外部に吸収をもち、青紫から青の蛍光を発する無色ないし淡黄色の化合物である。該蛍光増白剤としては、例えば、ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体が挙げられる。これらの中でも、アゾール系誘導体(以下、「アゾール系蛍光増白剤」という)が好ましい。
アゾール系蛍光増白剤としては、例えば、特開昭59−194393号公報に開示されているものが挙げられる。その代表例としては、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン;4,4−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン;4,4′−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン;2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン;2,5−ビス〔5−(α,α−ジメチルベンジル)−2−ベンゾオキサゾリル〕チオフェン;2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン;2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン;4,4′−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ビフェニル;5−メチル−2−[2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル〕ビニル]ベンゾオキサゾール;2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト(1,2−d)オキサゾール;2,5−ビス(5−tert−ブチル−2−ベンズオキサゾリル)チオフェン〔2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)ともいう〕などのベンゾオキサゾール系蛍光増白剤、2,2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系蛍光増白剤、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系蛍光増白剤が挙げられる。
市販の蛍光増白剤としては、TBO(住友精化社製ベンゾオキサゾール系誘導体)、カヤライトB(日本化薬社製)、カヤライトOS(日本化薬社製)等が用いられる。蛍光増白剤の吸光度を、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計(日本分光社製、商品名「V−570」)を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定すると、TBOが0.40、カヤライトBが0.09、そして、カヤライトOSが0.05である。
吸光度が0.2〜0.8の蛍光増白剤は、脂環式構造含有重合体100質量部に対し、通常、0.000001質量部以上、0.0001質量部未満の割合で含有させることが好ましい。吸光度が0.2未満の蛍光増白剤は、脂環式構造含有重合体100質量部に対して、0.0001質量部以上、0.01質量部以下の割合で含有させることが好ましい。吸光度が0.2未満の蛍光増白剤の吸光度の下限値は、通常0.01である。前記の通り、蛍光増白剤の吸光度は、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定したときに検出される吸光度値である。
4.その他の添加剤:
本発明の光学用樹脂組成物には、所期の目的を損なわない範囲内で、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、木粉、カップリング剤、可塑剤、着色剤、滑剤、シリコーンオイル、発泡剤、界面活性剤、離型剤などの各種添加剤を配合することができる。
5.光学用樹脂組成物の製造方法:
本発明の光学用樹脂組成物は、脂環式構造含有重合体と蛍光増白剤とを混合する方法により製造することができる。光学用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の混合方法を採用することができる。例えば、脂環式構造含有重合体のペレットと蛍光増白剤と必要に応じてその他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて混合し、さらに、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール等を用いて溶融混練する方法;脂環式構造含有重合体の樹脂溶液に蛍光増白剤と必要に応じてその他添加剤を混合した後、溶媒等の揮発成分を除去する方法;などが挙げられる。
6.光学部品:
本発明の光学用樹脂組成物を成形して光学部品を製造することができる。本発明の光学部品は、光学用樹脂組成物を加熱溶融成形することにより好適に製造することができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、ブロー成形法、キャスト成形法などの、通常の成形方法を用いることができる。
本発明の光学部品としては、例えば、ピックアップレンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡レンズ、レーザビーム用fθレンズなどのレンズ類;光学式ビデオディスク、オーディオディスク、文書ファイルディスク、メモリディスクなどの光ディスク類;OHPフィルム等の光学フィルムなどの光学材料;フォトインタラプター、フォトカプラー、LEDランプ等の光半導体封止材;液晶表示装置用の位相差板、光拡散板、導光板、偏光板保護膜、集光シートなどの各種光学部材;などが挙げられる。
本発明の光学部品は、ピックアップレンズやレーザービーム用fθレンズなどのレンズ類として、波長390〜430nmの青紫レーザーを用いる装置に使用するのに適している。本発明の光学部品の形状は、球状、棒状、板状、ファイバー状、筒状など任意である。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の製造例、実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、質量基準である。以下において、各種物性及び特性の測定法は、次のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定:
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィよる標準ポリスチレン換算によって求めた。
(2)ガラス転移温度:
ガラス転移温度は、示差走査熱量分析計(SIIナノテクノロジー社製「DSC6220」)を用いて、JIS K 6911に従って測定した。
(3)水素添加率:
重合体の水素添加率は、H−NMR測定により行った。
(4)吸光度:
蛍光増白剤の吸光度は、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計(日本分光社製「V−570」)を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定した。
(5)蛍光強度:
光学用樹脂組成物の相対蛍光強度Fは、標準溶液(分光蛍光光度計用ローダミンB溶液、和光純薬社製、製品コード「284−52953」)の蛍光強度Fに対する光学用樹脂組成物の蛍光強度Fの割合として評価した。すなわち、本発明において、相対蛍光強度Fは、下記式(I)により算出される値である。
F=(F/F)×100 …(I)
光学用樹脂組成物の蛍光強度Fは、光学用樹脂組成物から成形した縦65mm×横65mm×厚み3mmの平板状の成形体試料を、その平板面が入射光に対して45°の角度となるように配置し、次いで、分光蛍光光度計(日立製作所社製「F−4500」)を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該成形体に入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行い、最大蛍光ピーク高さとして測定した。
標準溶液の蛍光強度Fは、内径の二辺が10mmの直角二等辺三角形を底面とする三角柱セル(スタルナ社製「蛍光用三角セルSF3」)内に、標準溶液として分光蛍光光度計用ローダミンB溶液(和光純薬社製、製品コード「284−52953」、販売元:日立製作所社)を入れ、該三角柱セルにおける直角二等辺三角形の底辺の面が入射光に対し45°の角度となるよう配置し、次いで、分光蛍光光度計(日立製作所社製「F−4500」)を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該三角柱セルに入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして測定した。
蛍光光度計のランプとして、キセノンランプ(30KV、150W)を使用した。前記標準溶液の蛍光強度Fは、1674であった。
(6)光線透過率:
成形体の光線透過率(%)は、分光光度計(日本分光社製「V−570])を用いて、波長400nm及び光路長3mmで測定した。
(7)耐レーザー性:
耐レーザー性は、成形体に、60℃の環境下で、波長405±10nm、出力2800mW/cmのレーザーダイオード(ネオアーク社製「TC35-40200−4.5」)からのレーザー光を240時間照射し、レーザー照射後の成形体の光線透過率を分光光度計(日本分光社製「V−570」)を用いて測定し、照射前後の光線透過率の低下量(%)で評価した。成形体のレーザー照射前後における波長400nmの光線透過率の低下量が小さいほど、耐レーザー性に優れることを示す。
[製造例1]
乾燥窒素で置換したステンレス製耐圧容器に、スチレン76質量部及びイソプレン4質量部を密封し、攪拌して、混合モノマーを調製した。次に、乾燥窒素で置換した電磁撹拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、脱水シクロヘキサン320質量部、混合モノマー4質量部、及びジブチルエーテル0.1質量部を仕込み、これらを50℃で撹拌しているところに、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度15%)0.18質量部を添加して重合を開始した。反応開始から0.5時間経過した時点(転化率96%)で、重合反応溶液に混合モノマー76質量部を1時間かけて連続的に添加し、重合反応を継続させた。混合モノマー添加の終了時(転化率95%)からさらに0.5時間経過した時点で、イソプロピルアルコール0.1質量部を添加して重合反応を停止させた。このようにして、重合体(A1)を得た。重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は150,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。
次いで、重合体(A1)を含む反応溶液400質量部に、安定化ニッケル水素化触媒E22U(日揮化学工業社製「60%ニッケル担持シリカ−アルミナ担体」)8質量部を添加し、それをステンレス鋼製オートクレーブに仕込んだ。オートクレーブ内部を水素ガスで置換し、オートクレーブ内質量部の圧力を4.5MPaに保つように水素を供給し、160℃で6時間水素添加反応を行った。次いで、ラジオライト#800を濾過床とする加圧濾過器(石川島播磨重工社製「フンダフィルター」)を用いて、圧力0.25MPaで加圧濾過して、触媒を除去した無色透明な溶液を得た。
この水素添加反応溶液を、アセトン250質量部とイソプロパノール250質量部との混合溶液中に攪拌しながら注いで、水素添加物を沈澱させ、次いで、濾別して回収した。回収した水素添加物を、さらにアセトン200質量部で洗浄した後、1mmHg以下に減圧した100℃の真空乾燥器で24時間乾燥させ、水素添加物(A2)を得た。水素添加物(A2)の収率は、99%であった。
このようにして得られた水素添加物(A2)は、水素添加率が99.8%、重量平均分子量(Mw)が100,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.28、ガラス転移温度が125℃であった。
[製造例2]
窒素雰囲気下、脱水したトルエン690質量部に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン300質量部、1−ヘキセン1.1質量部、塩化タングステンの0.3重量%トルエン溶液11質量部、及びテトラブチルスズ0.6質量部を加え、60℃、常圧にて1時間重合させて、重合体(B1)を得た。得られた重合体(B1)の数平均分子量(Mn)は17,700、重量平均分子量(Mw)は35,400、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
次いで、重合体(B1)を含む反応溶液240質量部に、アルミナ担持ニッケル触媒(触媒1質量部中にニッケル0.7質量部及び酸化ニッケル0.2質量部を含み、細孔容積0.8cm/g、比表面積300cm/cm)6質量部とイソプロピルアルコール5質量部とを加え、オートクレーブ中、230℃、45kgf/cmで5時間水素添加反応させた。反応後、濾過によって触媒を除去した水素添加反応溶液を、アセトン250質量部とイソプロパノール250質量部との混合溶液中に攪拌しながら注いで、水素添加物を沈澱させ、次いで、濾別して回収した。回収した水素添加物を、さらにアセトン200質量部で洗浄し、次いで1mmHg以下に減圧した100℃の真空乾燥器で24時間乾燥させて、水素添加物(B2)を得た。水素添加物(B2)の収率は、99%であった。
水素添加物(B2)の水素添加率は、主鎖の炭素−炭素二重結合の水素添加率は99.9%以上であり、芳香環の炭素−炭素二重結合の水素添加率は99.8%であった。水素添加物(B2)の数平均分子量(Mn)は22,600、重量平均分子量(Mw)は42,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.88、ガラス転移温度(Tg)は136℃であった。
[製造例3]
窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン235mlを装入し、液相及び気相を50リットル/hrの流量のエチレンで飽和させた。その後、このオートクレーブに、2mlのテトラシクロ「4.4.0.12,5.17,10」−3−ドデセンと、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25mmolとを加え、さらに、下記の遷移金属化合物(1)を0.001mmol加え重合を開始した。
Figure 2008239676
エチレンガス雰囲気下、25℃、常圧で10分間反応させた後、少量のイソブチルアルコールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を5mlの濃塩酸を加えたアセトン/メタノール(それぞれ500ml)混合溶媒に投入してポリマーを全量析出させた後、攪拌し、そして、グラスフィルターで濾過した。ポリマーを130℃、10時間で減圧乾燥し、重合体(C1)を得た。
重合体(C1)の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、Mw=65,000、Mw/Mn=2.15であった。そのガラス転移温度は、132℃であった。
[実施例1]
1.樹脂組成物の調製:
水素添加物(A2)100質量部と、光安定剤としてポリ[〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]0.1質量部、酸化防止剤として、6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d、f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン0.1質量部、及び蛍光増白剤としてTBO〔2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、住友精化株式会社〕0.000005質量部を、2軸混練機(東芝機械社製「TEM−35B」、スクリュー径=37mm、L/D=32、スクリュー回転数=250rpm、樹脂温度=230℃、フィードレート=10kg/時間)で混練して、押し出し、ペレット化して、樹脂組成物(A2−1)を得た。
2.成形体の作製:
樹脂組成物(A2−1)を80℃で4時間加熱し乾燥させ、次いで、射出成形装置(ファナック株式会社製、製品番号「α−100B」)を用いて、樹脂温度250℃、金型温度115℃、射出速度20mm/sec、保圧80MPaにて射出成形を行い、65mm×65mm×3mmの成形体(a)を得た。得られた成形体(a)の波長400nmにおける蛍光強度F1、相対蛍光強度F、光線透過率、及び耐レーザー性の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、蛍光増白剤の使用量を、0.000005質量部から0.00002質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(A2−2)及び成形体(b)を得た。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、蛍光増白剤の使用量を、0.000005質量部から0.00008質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(A2−3)及び成形体(c)を得た。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例2において、水素添加物(A2)に代えて水素添加物(B2)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物(B2−1)及び成形体(d)を得た。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例2において、水素添加物(A2)に代えて重合体(C1)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物(C1−1)及び成形体(e)を得た。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、蛍光増白剤をTBOに代えてカヤライトB(日本化薬株式会社)を用い、かつ、その使用量を0.000005質量部から0.005質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(A2−4)、及び成形体(f)を得た。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、蛍光増白剤をTBOに代えてカヤライトOS(日本化薬株式会社)を用い、かつ、その使用量を0.000005質量部から0.0001質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(A2−5)及び成形体(g)を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、蛍光増白剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(A2−6)及び成形体(h)を得た。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、蛍光増白剤の使用量を0.000005質量部から0.0002質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(A2−7)及び成形体(i)を得た。結果を表1に示す。
Figure 2008239676
(脚注)
TBO;住友精化社製ベンゾオキサゾール系誘導体
カヤライトB;日本化薬社製
カヤライトOS;日本化薬社製
<考察>
蛍光増白剤を配合しない場合は、耐レーザー性が低い(比較例1)。蛍光増白剤を過剰に配合した場合は、耐レーザー性は良くなるが、光線透過率が悪くなる(比較例2)。
これに対して、脂環式構造含有重合体に、蛍光増白剤をその吸光度に合わせて適量配合して、所定の相対蛍光強度Fを持たせた光学用樹脂組成物(実施例1〜7)は、光線透過率及び耐レーザー性が共に優れており、これらの特性が高度にバランスしている。
本発明の光学用樹脂組成物は、高い光線透過率を有すると共に、青紫レーザーに対する耐性に優れており、光学レンズなどの各種光学物品として利用することができる。

Claims (9)

  1. 脂環式構造含有重合体及び蛍光増白剤を含有し、下記式(I)
    F=(F/F)×100 …(I)
    で表される相対蛍光強度Fが2〜250である光学用樹脂組成物。
    〔式(I)中、Fは、光学用樹脂組成物から成形した縦65mm×横65mm×厚み3mmの平板状の成形体試料を、その平板面が入射光に対して45°の角度となるように配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該成形体に入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される蛍光強度であり、並びに、Fは、内径の二辺が10mmの直角二等辺三角形を底面とする三角柱セル内に、標準溶液として分光蛍光光度計用ローダミンB溶液を入れ、該三角柱セルにおける直角二等辺三角形の底辺の面が入射光に対し45°の角度となるよう配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該三角セルに入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される標準溶液の蛍光強度である。〕
  2. 脂環式構造含有重合体100質量部に対し、吸光度が0.2〜0.8の蛍光増白剤を0.000001質量部以上、0.0001質量部未満の割合で含有する請求項1記載の光学用樹脂組成物。
    〔ただし、蛍光増白剤の吸光度は、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定したときに検出される吸光度値である。〕
  3. 脂環式構造含有重合体100質量部に対し、吸光度が0.2未満の蛍光増白剤を0.0001質量部以上、0.01質量部以下の割合で含有する請求項1記載の光学用樹脂組成物。
    〔ただし、蛍光増白剤の吸光度は、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定したときに検出される吸光度値である。〕
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学用樹脂組成物を成形してなる光学部品。
  5. 波長390〜430nmの青紫レーザー用光学部品である請求項4記載の光学部品。
  6. 光学レンズである請求項4または5記載の光学部品。
  7. 脂環式構造含有重合体に蛍光増白剤を添加して、下記式(I)
    F=(F/F)×100 …(I)
    で表される相対蛍光強度Fを2〜250の範囲に制御することを特徴とする脂環式構造含有重合体の耐レーザー性改善方法。
    〔式(I)中、Fは、蛍光増白剤を含有する脂環式構造含有重合体から成形した縦65mm×横65mm×厚み3mmの平板状の成形体試料を、その平板面が入射光に対して45°の角度となるように配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該成形体に入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される蛍光強度であり、並びに、Fは、内径の二辺が10mmの直角二等辺三角形を底面とする三角柱セル内に、標準溶液として分光蛍光光度計用ローダミンB溶液を入れ、該三角柱セルにおける直角二等辺三角形の底辺の面が入射光に対し45°の角度となるよう配置し、次いで、分光蛍光光度計を用いて、励起波長400nmの光をスリット幅5.0nmで該三角セルに入射し、その際、検出部のホトマル電圧を700ボルトに設定し、そして、発光領域400〜800nmにわたってスリット幅5.0nmで蛍光ピークの測定を行ったときに、最大蛍光ピーク高さとして検出される標準溶液の蛍光強度である。〕
  8. 脂環式構造含有重合体100質量部に対し、吸光度が0.2〜0.8の蛍光増白剤を0.000001質量部以上、0.0001質量部未満の割合で添加する請求項7記載の方法。
    〔ただし、蛍光増白剤の吸光度は、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定したときに検出される吸光度値である。〕
  9. 脂環式構造含有重合体100質量部に対し、吸光度が0.2未満の蛍光増白剤を0.0001質量部以上、0.01質量部以下の割合で添加する請求項7記載の方法。
    〔ただし、蛍光増白剤の吸光度は、蛍光増白剤の濃度0.00004質量%の塩化メチレン溶液からなる測定試料について、分光光度計を用いて、波長400nm及び光路長10mmで測定したときに検出される吸光度値である。〕
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