JP2008237050A - 体色変異水生生物の作出方法 - Google Patents

体色変異水生生物の作出方法 Download PDF

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憲二 難波
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仲弘 岩田
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Abstract

【課題】観賞対象として希少価値の高い体色変異水生生物を簡易且つ短期間に作出する。
【解決手段】飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整して水生生物を飼育し、水生生物の体色を変異させるようにした。水生生物がクマノミ類の場合には、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整し、この塩分濃度を少なくとも6日間維持するようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、体色変異水生生物の作出方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、観賞対象として希少価値の高い体色変異水生生物を作出する方法に関する。
観賞用水生動物は愛玩用としての人気が高いだけでなく、最近では、その色彩の鮮やかさ等から、観賞用水生動物や観賞用植物を収容した水槽がインテリアとして利用されつつある。
観賞用水生動物や観賞用植物の中でも、体色が変異した個体は希少価値が高く、観賞用水生動物や観賞用植物の愛好家から珍重されるだけでなく、インテリアの素材としても非常に貴重であることから、体色変異個体を作出するニーズが常に存在している。そこで、従来は、異系統交配により得られた個体を選別、淘汰することにより、体色変異個体の作出が行われていた。
他にも、遺伝子操作によりトランスジェニック魚を得る方法(特許文献1)や、観賞魚や観賞用植物に紫外線を照射しながら飼育し、体色を調節する方法(特許文献2)が提案されている。
特表2002−504821 特開平8−308383
しかしながら、異系統交配や個体の選別、淘汰には熟練を要すると共に、体色変異個体を作出するまでに長期間が必要である。また、特許文献1に記載された遺伝子操作によるトランスジェニック魚の作出方法は、操作が非常に煩雑であると共に、遺伝子汚染の虞がある。さらに、特許文献2に記載された飼育方法を用いた場合、観賞魚や観賞用植物の発色状態は良好になるものの、個体の体色や模様そのものを変異させることはできない。
そこで本発明は、観賞対象として希少価値の高い体色変異水生生物を簡易且つ短期間に作出する方法を提供することを目的とする。
本願発明者は、カクレクマノミを対象とした飼育試験を積み重ねた結果、海水(塩分濃度35‰)よりも塩分濃度を低濃度とした飼育水を用いることで、体色変異個体を高確率に作出し得ることを知見した。この結果から、水生生物全般について、飼育水の塩分濃度を海水の塩分濃度よりも低濃度とすることで、体色変異個体を高確率に作出し得る可能性が導かれることを知見し、本願発明に至った。
かかる知見に基づく本発明の体色変異水生生物の作出方法は、飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整して水生生物を飼育し、水生生物の体色を変異させるようにしている。
このように、飼育水の塩分濃度を35‰未満として海水の塩分濃度よりも低濃度とすることで、飼育水として海水を用いた場合と比較して体色変異個体の作出率を高めることができる。
尚、本明細書中における「体色変異」とは、水生生物の体表面の体色及び模様のうちの少なくともいずれか一方が変異していることを意味する。
ここで、水生生物をクマノミ類とした場合、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整し、この塩分濃度を少なくとも6日間維持することが好ましい。
本発明の体色変異水生生物の作出方法によれば、遺伝子操作等の煩雑な操作を行うことなく短期間に体色変異水生生物を作出することが可能になる。しかも、飼育水の塩分濃度を調整するという簡易な手法を用いているので、安全かつ環境負荷を与えることがなく、非常に低コストに体色変異個体の作出を行うことが可能になる。
以下、本発明の体色変異水生生物の作出方法について詳細に説明する。
本発明の体色変異水生生物の作出方法は、飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整して水生生物を飼育し、水生生物の体色を変異させるようにしている。以下、本実施形態では、水生生物種として海産魚であるクマノミ類を例に挙げて説明する。
本発明の対象となるクマノミ類としては、例えば、カクレクマノミ、ハマクマノミ、ハナビラクマノミ、トウアカクマノミ、セジロクマノミ、クマノミ、シロミスジ、さらには外産種のペルクラ、スパインチーク、インドトマトが挙げられるが、これらのクマノミ類に限定されるものではない。
クマノミ類を飼育する飼育水の塩分濃度の調整は、例えば、海水に淡水を添加することにより行う。
海水としては、天然の海水は勿論のこと、人工的に海水含有成分を調整してその組成を天然の海水に近づけた人工海水を用いることができる。以下、これらの海水を通常海水と呼ぶこととする。
淡水としては、河川水、井戸水、純水、蒸留水、水道水等の実質的に塩分を含有しない水が挙げられる。尚、水道水はそのまま用いてもよいが、脱塩素処理を行ってから使用に供することがより好適である。
ここで、飼育水の塩分濃度の調整は、海水に淡水を添加する方法には限定されない。例えば、人工海水を調整する段階で、塩分濃度を所望の濃度に調整するようにしてもよい。
体色が変異したクマノミ類の作出率の向上に寄与する飼育水の海水濃度は、本願発明者等の実験によれば、100%未満とすれば良く、75%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましく、25%以下とすることがさらに好ましいことが確認されている。尚、本明細書における「%」とは「体積%」を意味している。また、海水濃度とは、海水体積と淡水体積との和に対する海水体積の割合の百分率を意味している。
本願発明者等は通常海水として、塩分濃度が35‰の海水を用いて実験を行った。したがって、上記範囲を塩分濃度に換算すると、35‰未満とすれば良く、26‰以下とすることが好ましく、18‰以下とすることがさらに好ましく、9‰以下とすることが最も好ましいということになる。即ち、飼育水の塩分濃度をこの濃度範囲に調整することで、飼育水を通常海水とした場合と比較して体色が変異したクマノミ類の作出率が向上する。
ここで、飼育水の海水濃度を25%未満にすると、飼育水を通常海水とした場合と比較して生残率が低下する可能性があり、特に、飼育水の海水濃度を20%以下とした場合には、飼育水を通常海水とした場合と比較して生残率が確実に低下する。したがって、クマノミ類の生残率を低下させることなく、通常海水で飼育した場合よりも体色が変異したクマノミ類の作出率を高めるためには、飼育水の海水濃度を20%超〜100%未満とすれば良く、20%超〜75%とすることが好ましく、20%超〜50%とすることがより好ましく、20%超〜25%とすることが最も好ましい。より確実には、飼育水の海水濃度を25%〜100%未満とすれば良く、25%〜75%とすることが好ましく、25%〜50%とすることがより好ましく、25%とすることが最も好ましい。
上記範囲を塩分濃度に換算すると、7‰超〜35‰未満とすれば良く、7‰超〜26‰とすることが好ましく、7‰超〜18‰とすることがより好ましく、7‰超〜9‰とすることが最も好ましい。そして、より確実には、9‰〜35‰未満とすれば良く、9‰〜26‰とすることが好ましく、9‰〜18‰とすることがより好ましく、9‰とすることが最も好ましい。即ち、飼育水の塩分濃度をこの濃度範囲に調整することで、飼育水を通常海水とした場合と比較して体色が変異したクマノミ類の作出率が向上すると共に、通常海水で飼育した場合と同程度あるいはそれ以上の生残率が得られる。
また、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度を上記濃度とすることが好ましい。この場合には、体色が変異したクマノミ類の作出率をより確実に高めることができる。
さらに、上記の塩分濃度を少なくとも6日間維持すれば体色が変異したクマノミ類の作出率の向上の効果が認められるが、その効果をさらに確実なものとするためには、上記塩分濃度を15日間維持することが好ましく、30日間維持することがさらに好ましい。塩分濃度の維持を6日間未満とすると、体色が変異したクマノミ類が得られない可能性がある。
また、飼育水の海水濃度を25%以下として15日間以上飼育すると、通常海水で飼育した個体と比較して飼育個体の体重が低くなりやすい。したがって、通常海水で飼育した個体と同程度の大きさの体色変異クマノミ類を作出したい場合には、15日目以降は通常海水で飼育することが好ましい。逆に、15日目以降も飼育水の海水濃度を25%以下とすることにより通常海水で飼育した個体と比較して飼育個体の体重が低くなること利用して、通常海水で飼育した個体よりも小型で、且つ体色が変異したクマノミ類を作出することも可能であるが、上記塩分濃度で30日間を超えて飼育するとクマノミ類が充分に成長せず、その健康が害される虞があることから、上記塩分濃度による飼育は30日間以内とし、それ以降は通常海水で飼育することが好ましい。
クマノミ類は、孵化直後から2週間程度経過すると、体色、体型、鰭の条数が成体と同等となり、孵化直後から30日程度経過すると、体側の模様もはっきりと認識できるようになる。カクレクマノミの場合、孵化直後から30日間通常海水で飼育した個体は、図1に示すように3本の白色バンドが体側に見られるようになる。
本発明の体色変異水生生物の作出方法をカクレクマノミに適用した場合には、例えば、図2及び図3に示す体色変異個体が得られる。即ち、図2に示すように、体側に見られる3本の白色バンドのうち中央のバンドが分岐したり、尾びれの付け根に位置する白色バンドの両端が尾びれの方向とは逆方向に突出した個体が得られ、図3に示すように、頭部から数えて1本目の白色バンドと2本目の白色バンドとの間に、新たな白色バンドが発生した個体が得られる。
次に、図4〜6に示す体色変異水生生物作出装置の一実施形態についてクマノミ類を対象とした場合を例に挙げて説明する。この実施形態の体色変異水生生物作出装置17は、クマノミ類を飼育する水槽内の飼育水の塩分濃度を一定期間、一定濃度に維持する塩分濃度維持装置18を備えるようにしている。
本実施形態の体色変異水生生物作出装置17は、海域から分離されて構成された閉鎖循環系の装置であり、例えば海水を一定期間交換することなく或いは適量を交換しながら更に濾過・循環して飼育水を維持するものである。このような閉鎖循環系とすることにより、飼育水槽1内の飼育水の水質、温度、塩分濃度等を制御して一定の範囲内に維持できるようにしている。
図4において体色変異水生生物作出装置17における水槽1は、円形、または矩形、六角、八角などの多角形のものが用いられている。水槽1の底部は1/10から1/20程度の傾斜を有し、水槽1への注水の流れにより糞や残餌などが自動的に水槽中央部に集められて水槽底部の排出口2より飼育水とともに排出されるようになっている。また、水槽1の周囲には効率よく断熱材を組み込むことにより断熱性の向上が図られている。排出口2には、飼育中のクマノミ類の迷入、吸い込みを防止するためのプラスチック製筒状をした網が取り付けられる。なお、クマノミ類の成長段階に応じて網の目合いを換えるため脱着式とすることが好ましい。
沈澱槽3は水槽1の水位調節槽を兼ねて設置されている。沈澱槽3の形状は図5に示すように円筒または下部に逆円錐形状の部分を有する円筒形状であり、水槽1からの飼育水の排水注入口14は、前者の形状にあっては円筒体部3aの下部、後者の形状にあっては逆円錐形部分3bの直上の円筒体部3a下部に開口し、その位置は図6に示すように円筒体の中心から外側にずれ、注入水が円筒体の内壁に沿って流れることにより渦巻き流を生じる位置となっている。この渦巻き流によって排水中の糞や残餌を積極的に沈降させ捕集することができる。沈澱槽3の最下部には沈澱捕集された糞や残餌を水とともに排出できるように排出コック16が設けられている。沈澱物が除去された飼育水は沈澱槽3の上部側壁に設けられた出水管15から排出される。この沈澱槽3の効果により、次に設置した浮遊懸濁物除去のためのフィルター装置4にかかる負荷を減少でき、フィルター装置4のスクリーン部分の洗浄回数を減じることができ、また、このための逆洗水の使用量も少なくできる。なお、このフィルター装置4は、水位センサーが取り付けられており、フィルター効率の低下を検知して自動逆洗を行うことができる。
バイオフィルター5では、好気性バクテリアの働きにより毒性の高い排泄物のアンモニアが亜硝酸を経由して毒性の低い硝酸に酸化される。バイオフィルター5の容器の大きさおよび必要濾材量は、水槽1で飼育されるクマノミ類の大きさと個体数により変化するため、アンモニアなどの窒素排泄量と濾材のアンモニア酸化速度に基づき決定される。この決定方法については、例えば特公平7−55116号公報(特許第2035885号)の方法を用いる。また、バイオフィルター5中の前方に堰板を設け、フィルター装置4からの水が滝落ちとなるようにする。これにより、飼育水中の二酸化炭素の除去と飼育水への空気を利用した酸素補給を行う。
脱窒槽11は、飼育水中に蓄積される硝酸を嫌気性バクテリアの働きにより飼育水1中から除去するものである。また、浮遊懸濁物除去のためのフィルター装置4とバイオフィルター5との間には、飼育水中のタンパク質などの溶存有機物を微細気泡とともに除去するための微細気泡発生装置12が組み込まれている。微細気泡の発生には空気を用い、小型のエアーブロワー13により給気する。
バイオフィルター5からの飼育水は循環ポンプ6により紫外線照射装置7に通流される。紫外線照射は飼育水の殺菌にとどまらず、水中の有機物の分解つまり低分子化の効果をも有する。
次に、飼育水は酸素溶入器8に送られる。ここでは、酸素発生装置9から通気される純酸素を用いて飼育水中の酸素濃度を高める。通気量の調整は、クマノミ類の生理的要求量と飼育量から算定される酸素必要量に基づいて行われ、例えば、水槽1中で酸素飽和度70〜100%となるように調整する。
酸素溶入器8で酸素濃度を調整された飼育水(以下、「濾過済みの飼育水」と称する)は混合槽20を経由して水槽1へと供給されるが、一部はヒートポンプ10に送られ、対象となるクマノミ類の生育に適した水温に調整されてから、水槽1内へ供給される。濾過済みの飼育水は混合槽20に流入すると、そこで必要に応じて塩分濃度維持装置18によって淡水と海水の双方、あるいはそれらのうちのいずれか一方が加えられ、塩分濃度が調整されてから水槽1内へ供給される。勿論、混合槽20を設けずに、直接塩分濃度維持装置18によって制御された海水と淡水あるいはこれらの混合物が濾過済みの飼育水若しくは濾過前の飼育水に混入されて塩分濃度の調整が行なわれるようにしても良い。
塩分濃度維持装置18は水槽1内の飼育水の塩分濃度を一定期間、一定の範囲内に維持するものである。
本実施形態において一定期間とは、例えば、少なくとも孵化から12時間以内に少なくとも6日間以上15日間未満、または30日間以下のことを示す。クマノミ類の水槽1内への導入は、孵化前、即ち卵の段階で行ってもよいし、孵化後に行っても良い。何れの場合にも、少なくとも孵化から12時間以内に飼育水を体色変異個体の作出率の向上に寄与する一定の範囲内の塩分濃度とする。そして、この塩分濃度を少なくとも6日間以上15日間未満、または30日間以下維持し、その後、飼育水を通常海水に戻す。
また、一定の範囲内とは体色変異個体の作出率の向上に寄与する塩分濃度範囲、即ち、35‰未満、好ましくは26‰以下、さらに好ましくは18‰以下、最も好ましくは9‰以下のことを示す。または、体色変異個体の作出率の向上と共に生残率を充分に確保し得る塩分濃度範囲、即ち、7‰超〜35‰未満、好ましくは7‰超〜26‰、より好ましくは7‰超〜18‰、最も好ましくは7‰超〜9‰のことを示し、より確実には、9‰〜35‰未満、好ましくは9‰〜26‰、より好ましくは9‰〜18‰、最も好ましくは9‰のことを示す。
塩分濃度維持装置18は、水槽1内に設置され、水槽1内の飼育水の塩分濃度を測定する水槽用塩分濃度測定装置19と、濾過処理済みの飼育水を水槽1に供給する直前の段階で一時的に滞留させる槽であり、必要に応じて海水や淡水が混合される混合槽20と、この混合槽20に海水を供給する海水供給装置21と、混合槽20に淡水を供給する淡水供給装置22と、混合槽20内に設置され、混合槽20内の水の塩分濃度を測定する混合槽用塩分濃度測定装置23と、塩分濃度測定装置19、23の測定結果に基づいて海水と淡水の混合槽20への供給量を決定するとともに、その決定した供給量に基づいて海水供給装置21と淡水供給装置22の動作を制御するCPUまたはMPUからなる制御装置24とを備えている。ここで、海水と淡水の混合槽20への供給量は、海水と淡水の双方、あるいはいずれか一方が混合槽20内において濾過済みの飼育水と混合され、その混合水が水槽1内に供給されたときに水槽1内の飼育水の塩分濃度が上記の一定の範囲内の濃度になるように制御される。また、水槽1に飼育水を貯留する当初においては、混合槽20において予め調整された所定濃度の飼育水が供給されるようにしてもよいし、通常海水と同じ塩分濃度とした飼育水が供給された後、孵化から12時間以内に飼育水が所定の塩分濃度となるように調整してもよい。
海水供給装置21と淡水供給装置22は、海水、淡水を汲み上げるポンプ21a、22aと、開閉動作によってポンプ21a、22aで汲み上げられた海水や淡水の混合槽20内への供給を制御するバルブ21b、22bとを備えている。バルブ21b、22bのそれぞれには、例えば制御装置24からの命令信号に応答して駆動するソレノイドが組み込まれており、ソレノイドの駆動に伴って開閉動作するように構成されている。なお、淡水としては、上水道をそのままあるいは塩素分などを除去してから供給するようにしても良い。
以上のように構成された体色変異水生生物作出装置17においては、水槽1の飼育水は水槽1と水質・塩分濃度調整手段との間を循環する間に水質並びに塩分濃度が一定幅内に調整されて維持される。即ち、飼育水は、沈澱槽3、フィルター装置4、バイオフィルター5、循環ポンプ6、紫外線照射装置7、酸素溶入器8によって濾過されると、その濾過済みの飼育水は混合槽20に流入する。制御装置24は、水槽1内の飼育水の塩分濃度と混合槽20内の水の塩分濃度とを常時監視しており、水槽1内の飼育水の塩分濃度が予め定められた範囲内にある場合、混合槽20に海水と淡水を供給せず、水槽1内の飼育水の塩分濃度が上記の一定の範囲内になかった場合、バルブ21b、22bの開閉動作を制御することにより混合槽20に海水や淡水を適量供給する。
混合槽20内における濾過済みの飼育水と海水による混合水、濾過済みの飼育水と淡水による混合水、あるいは濾過済みの飼育水と海水と淡水とによる混合水が水槽1内に供給されることによって水槽1内の飼育水の塩分濃度が上記の一定の範囲内に復帰すると、バルブ21b、22bは制御装置24の命令に従って閉じられる。そして、水槽1内の飼育水の塩分濃度が再び上記の一定の範囲外になった場合には混合槽20内に海水と淡水の双方、あるいはいずれか一方が供給される。このように、槽内の飼育水の塩分濃度を監視しつつ予め定められた範囲内の塩分濃度となるように海水や淡水を適宜に混合してから水槽1内に供給することによって水槽1内の飼育水の塩分濃度は常に上記の一定の範囲内に維持される。そして、一定期間経過後は、混合槽20内に海水のみを供給することによって槽内の飼育水の塩分濃度が通常海水と同じ塩分濃度に維持される。
このように閉鎖循環系の体色変異水生生物作出装置17を用いて飼育水の塩分濃度を一定期間、一定範囲に維持し、そこでクマノミ類を飼育することによって、海水による飼育に比べ、体色変異個体の作出率の向上と共に海水使用量の削減を図ることができる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態においては、水生生物としてクマノミ類を例に挙げて説明したが、本発明の体色変異水生生物の作出方法の適用対象は、クマノミ類に限定されるものではない。
例えば、クマノミ類以外の観賞用海産生物、例えば、カニなどの甲殻類や、ヒトデ、貝類、海藻類などについても、本発明の体色変異水生生物の作出方法の適用することで、体色変異個体を作出できるものと推定される。
また、観賞用淡水生物である錦鯉、グッピー、レッドビーシュリンプ、水草類などについても、通常飼育水(淡水)よりも塩分濃度を高めて上記濃度範囲に調整した飼育水を用いることで、体色変異個体を作出できるものと推定される。
さらに、観賞用水生生物に限らず、従来観賞用水生生物としての価値が認められていなかった水生生物の体色を変異させることによって、観賞用水生生物としての価値を付与することも可能であると推定される。
また、上述した実施形態においては、塩分濃度維持装置18を用いることによって水槽1内の飼育水の塩分濃度を一定の範囲内に維持するようにしているがこれは一例に過ぎない。例えば、海水と淡水を一定の割合で混合した汽水をタンクに予め用意しておき、そのタンクに溜められている汽水を水槽1内に供給するとともに、その供給に伴って水槽1内に供給される汽水の量と同等量の水を水槽1から抜くことによって飼育水の塩分濃度を一定の範囲内に維持するようにしても良い。また、塩分濃度調整剤を水槽1に投与することによって水槽1内の飼育水の塩分濃度を一定の範囲内に維持するようにしても良い。
また、体色変異個体の作出対象としてカクレクマノミを選択した場合には、本願発明者等が先に出願した特開2006−271321に開示された飼育方法を併用することもできる。即ち、少なくとも孵化直後から成体とほぼ同等の形態に成長するまでの期間であるカクレクマノミの初期生活段階において、カクレクマノミを飼育する飼育水または初期生活段階において与える初期飼料として用いる生物飼料の一方または双方に銅を付加することで、飼育水中の銅濃度を好適な範囲にして、カクレクマノミの生残率を向上させる飼育方法を併用することができる。飼育水中の銅濃度の範囲は0.04〜0.32ミリグラム/リットルであれば好ましく、より好ましくは0.07〜0.21ミリグラム/リットル、さらに好ましくは0.09〜0.16ミリグラム/リットルである。また、孵化から36時間以内に飼育水中の銅濃度を前記濃度とし、少なくとも48時間前記濃度を維持すれば生残率の向上の効果が認められるが、その効果をより確実なものとするためには、前記濃度を48〜72時間維持することが好ましい。尚、前記濃度を48〜72時間維持した後は飼育水に銅を添加しなくても生残率の向上は充分見込めるため、銅を添加する必要はなく、よってコストダウンや飼育にかかる手間を省くことができる。ただし、初期生活段階中(孵化から14日間)は銅を添加し続けてもカクレクマノミの成長に何ら影響を与えるものではない。このカクレクマノミの飼育方法を本発明の体色変異個体作出方法と併用することによって、生残率を高めつつ、体色変異個体を作出することが可能になり、カクレクマノミの体色変異個体の作出効率が向上するものと推定される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
カクレクマノミを対象とした体色変異個体の作出実験を行った。市販の個体および本願発明者等が仔魚から育成したカクレクマノミ個体を用意し、雌雄1ペアごとにイソギンチャクを収容した水量270Lの循環濾過式水槽で飼育した。水温を27℃に設定して、アサリや配合飼料を与えて飼育したところ、親魚は飼育槽の底および岩の表面に産卵し、産卵から8〜9日後の消灯後に孵化を開始した。孵化仔魚は飼育槽内に設置した仔魚採取ネットに水流により集めて、翌朝(孵化から12時間後)ビニルチューブで採取し、実験に用いた。
500mlの飼育水を入れたプラスチック製のジョッキを16個用意し、カクレクマノミの孵化直後の仔魚を各ジョッキに15尾ずつ収容した。飼育水は、(a)通常海水(塩分濃度35‰)、(b)海水濃度75%(塩分濃度26‰)、(c)海水濃度50%(塩分濃度17‰)、(d)海水濃度25%(塩分濃度9‰)の4種類とし、同じ飼育水あたり4グループ飼育した。尚、通常海水として天然海水を用い、これを純水で希釈することにより(b)〜(d)の飼育水を得た。また、飼育期間は30日間とし、飼育開始から15日目以降は(b)〜(d)の飼育水を通常海水として飼育を継続した。
飼育条件は以下の通りとした。即ち、飼育水の水温は26.5±0.5℃に維持した。照明は15時間点灯させ、その後9時間消灯するようにした。また、エアレーションは行わなかったが、飼育水の溶存酸素飽和度は70%以上に維持されていた。餌として、孵化直後のブラインシュリンプ幼生を給餌した。ブラインシュリンプ幼生は以下のようにして得た後に給餌した。即ち、ブラインシュリンプ乾燥卵を海水に懸濁し、28℃に保温し、24時間後に孵化した幼生を、200μmおよび60μmのフィルタを用いて海水で卵殻の除去および洗浄を行った後に給餌した。給餌は毎日1回行い、給餌量は24時間後に摂餌しきれなかったブラインシュリンプ幼生が飼育水1mlあたり1個体以上残るように調整した。24時間毎に新たな飼育水に仔魚を移し、摂餌しきれなかった古いブラインシュリンプを飼育水から取り除いた。
上記条件で飼育を行った後、生残魚を肉眼で観察し、図1に示すように体側に見られる3本の白いバンドが滑らかな横縞となっている個体を正常個体と判定し、それ以外の個体、例えば、図2及び図3に示す個体を体色変異(模様乱れ)個体と判定した。この実験は2回実施した。1回目の実験結果を表1に示し、2回目の実験結果を表2に示す。
通常海水を飼育水とした場合、表1及び表2いずれの場合も体色変異個体が作出されなかったが、塩分濃度を通常海水よりも低濃度とした飼育水を用いた場合には、いずれにおいても体色変異個体が作出されることが明らかとなった。また、体色変異個体の作出率は飼育水の塩分濃度が低下するにつれて高まる傾向が見られ、特に表1の(d)の条件においては、10尾中9尾が体色変異個体となった。以上の結果から、飼育水を通常海水よりも低塩分濃度とすることで、希少価値の高い体色変異カクレクマノミ個体が作出できることが明らかとなった。また、体色変異個体の作出率の向上に寄与する飼育水の海水濃度は、100%未満とすればよいが、75%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましく、25%以下とすることが最も好ましいことが明らかとなった。
また、カクレクマノミ以外のクマノミ類、例えば、ハマクマノミ、ハナビラクマノミ、トウアカクマノミ、セジロクマノミ、クマノミ、シロミスジ、さらには外産種のペルクラ、スパインチーク、インドトマトなどのクマノミ類についても、上記結果が当て嵌まらないとの積極的な理由が存在しないことから、上記条件により飼育することで、体色変異個体を作出できるものと推定される。
さらに、クマノミ類以外の観賞用海産生物、例えば、カニなどの甲殻類や、ヒトデ、貝類、海藻類などについても、上記結果が当て嵌まらないとの積極的な理由が存在しないことから、上記条件により飼育することで、体色変異個体を作出できるものと推定される。
また、観賞用淡水生物である錦鯉、グッピー、レッドビーシュリンプ、水草類などについても、通常飼育水よりも塩分濃度を高めて上記濃度範囲に調整した飼育水を用いることで、体色変異個体を作出できるものと推定される。
尚、観賞用水生生物に限らず、従来観賞用水生生物としての価値が認められていなかった水生生物の体色を変異させて、観賞用水生生物としての価値を付与することも可能であると推定される。
(実施例2)
飼育水の塩分濃度の調整期間が体色変異個体の作出率に与える影響についてカクレクマノミを対象として調査した。500mlの飼育水を入れたプラスチック製のジョッキを24個用意し、カクレクマノミの孵化直後の仔魚を各ジョッキに15尾ずつ収容した。飼育実験は以下の条件で行った。即ち、(a)通常海水で30日間飼育を対照区とし、(b)海水濃度25%の飼育水で3日間飼育した後、27日間通常海水で飼育、(c)海水濃度25%の飼育水で6日間飼育した後、24日間通常海水で飼育、(d)海水濃度25%の飼育水で9日間飼育した後、21日間通常海水で飼育、(e)海水濃度25%の飼育水で15日間飼育した後、15日間通常海水で飼育、(f)海水濃度25%の飼育水で30日間飼育、の6種類とし、同じ飼育条件あたり4グループ飼育した。尚、海水濃度25%の飼育水による飼育は、孵化から12時間後に開始した。この理由は、孵化が起こる時間が夜間の消灯後であり、仔魚の採取時に親魚に刺激を与える可能性があったからである。他の飼育条件については、実施例1と同様とした。
飼育実験終了後に生残したカクレクマノミの仔魚の体色変異個体作出率、生残率及び体重を調査した結果を表3に示す。
表3に示されるように、少なくとも6日間飼育水の海水濃度を25%にすることで、飼育水を全期間通常海水とした場合と比較して、体色変異個体作出率を有意に高めることができることが明らかとなった。また、海水濃度25%の飼育水での飼育期間を長くするにつれて、体色変異個体の作出率が増加する傾向が見られた。尚、(d)の条件については、生残した個体数が1匹だったため、正確なデータが得られなかった。
次に、体重について検討すると、(a)、(b)、(c)、(d)と比較して(e)と(f)の飼育条件で得られる個体の体重が有意に少ないことが確認された。この結果から、低塩分濃度の飼育水を用いた飼育期間を15日間以上とすると、飼育水を全期間通常海水とした場合と比較して体重が低くなる可能性があることが明らかとなった。
ここで、本実施例においては、孵化から12時間経過時に飼育水の塩分濃度の調整を開始して生残率の飛躍的な向上が見られたことから、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度の調整を開始すれば良いということが確認された。カクレクマノミの孵化は夜間の消灯後に起こるが、本実施例の結果から、孵化直後である夜間の消灯後に飼育水の塩分濃度を調整しなくても、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度を調整すれば体色変異個体の作出率を高めることができるので、夜間の消灯後に塩分濃度を調整するといった手間がかからない。
以上の結果から、少なくとも孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度の調整を開始し、この塩分濃度を少なくとも6日間、好ましくは15日間、さらに好ましくは30日間維持することで、カクレクマノミの体色変異個体の作出率が高まることが明らかになった。また、海水濃度25%で15日間以上飼育した場合、通常海水で飼育した場合と比較して体重の低減が見られることが明らかとなった。
また、カクレクマノミ以外のクマノミ類、例えば、ハマクマノミ、ハナビラクマノミ、トウアカクマノミ、セジロクマノミ、クマノミ、シロミスジ、さらには外産種のペルクラ、スパインチーク、インドトマトなどのクマノミ類についても、上記結果が当て嵌まらないとの積極的な理由が存在しないことから、上記条件により飼育することで、体色変異個体の作出率をより確実に向上させることができるものと推定される。
さらに、クマノミ類以外の水生生物、例えば、観賞用海産生物であるカニなどの甲殻類や、ヒトデ、貝類、海藻類、観賞用淡水生物である錦鯉、グッピー、レッドビーシュリンプ、水草類などについても、上記結果が当て嵌まらないとの積極的な理由が存在しないことから、成長初期段階において低塩分濃度条件下で一定期間飼育することで、体色変異個体の作出率をより確実に向上させることができるものと推定される。
(実施例3)
カクレクマノミを対象として、飼育水の塩分濃度に対する生残率の変化について検討した。市販の個体および本願発明者等が仔魚から育成したカクレクマノミ個体を用意し、雌雄1ペアごとにイソギンチャクを収容した水量270Lの循環濾過式水槽で飼育した。水温を27℃に設定して、アサリや配合飼料を与えて飼育したところ、親魚は飼育槽の底および岩の表面に産卵し、産卵から8〜9日後の消灯後に孵化を開始した。孵化仔魚は飼育槽内に設置した仔魚採取ネットに水流により集めて、翌朝(孵化から12時間後)ビニルチューブで採取し、実験に用いた。
500mlの飼育水を入れたプラスチック製のジョッキを20個用意し、カクレクマノミの孵化直後の仔魚を各ジョッキに15尾ずつ収容した。飼育水は、(a)通常海水(塩分濃度35‰)、(b)海水濃度75%(塩分濃度26‰)、(c)海水濃度50%(塩分濃度17‰)、(d)海水濃度25%(塩分濃度9‰)、(e)海水濃度20%(塩分濃度7‰)、の5種類とし、同じ飼育水あたり4グループ飼育した。尚、通常海水として天然海水を用い、これを純水で希釈することにより(b)〜(e)の飼育水を得た。
実施例1と同様の飼育条件で14日間の飼育を行い、上記5種類の飼育水について生残率を比較した。図7に比較結果を示す。図7中の◆のプロットが通常海水での孵化仔魚の生残率の経時変化を示し、■のプロットが海水濃度75%での孵化仔魚の生残率の経時変化を示し、●のプロットが海水濃度50%での孵化仔魚の生残率の経時変化を示し、▲のプロットが海水濃度25%での孵化仔魚の生残率の経時変化を示し、*のプロットが海水濃度20%での孵化仔魚の生残率の経時変化を示す。尚、図7中の各飼育日数の生残率は、同じ飼育水を用いた4グループの平均値をとった。
図7に示される結果から、飼育水を海水濃度75%、海水濃度50%及び海水濃度25%とした場合には、通常海水を飼育水として用いた場合と比較して有意に生残率が向上することが確認された。一方、飼育水を海水濃度20%とした場合には、通常海水を飼育水として用いた場合と比較して有意に生残率が低減することが確認された。したがって、海水濃度20%と海水濃度25%の間に生残率が通常海水よりも高まるしきい値が存在することが明らかとなった。また、海水濃度50%とした場合に最も生残率が高まり、海水濃度25%とした場合よりも海水濃度75%とした場合の方が生残率が向上することが明らかとなった。
以上の結果から、カクレクマノミの生残率を向上させるための飼育水の海水濃度は、20%超〜100%未満とすれば良いが、25%〜100%未満とすることが好ましく、25%〜75%とすることがより好ましく、50%〜75%とすることがさらに好ましく、50%程度とすることが最も好ましいことが明らかとなった。
尚、海水濃度20%〜25%の間に存在するしきい値は、本実施例に示した初期生活段階におけるクマノミ類の生残率評価試験と同様の試験を行うことによって導き出すことが可能である。例えばクマノミ類の孵化仔魚を、通常海水と、海水濃度を20%〜25%の間の濃度とした複数の飼育水、例えば、20%〜25%の間で1%毎に濃度を振った飼育水にそれぞれ収容して、初期餌料を与えて飼育し、通常海水における孵化仔魚と20%〜25%の間の濃度とした複数の飼育水における孵化仔魚とで生残率を比較し、通常海水を飼育水とした場合と比較して生残率が高くなる最も低い海水濃度がしきい値となる。
次に、飼育実験終了後(14日後)に生残したカクレクマノミの仔魚の生残率及び体重を調査した結果を表4に示す。表4中において、生残率並びに体重は平均値±標準偏差で示している。飼育水を海水濃度75%、海水濃度50%及び海水濃度25%とした場合には、通常海水を飼育水として用いた場合と比較して有意に生残率が向上することが確認された。一方、海水濃度20%とした場合には、通常海水を飼育水として用いた場合と比較して生残率が大幅に低減することが確認された。また、飼育水を海水濃度75%、海水濃度50%とした場合には、通常海水を飼育水として用いた場合とほぼ同等の体重となることが確認された。一方、飼育水を海水濃度25%とすると、通常海水を飼育水として用いた場合と比較して有意に体重が低くなり、飼育水を海水濃度20%とした場合には、さらに体重が低くなることが確認された。
以上の結果から、カクレクマノミの生残率の向上を図りつつ、通常海水で飼育した場合と同程度の成長率を得るための飼育水の海水濃度は、25%超〜100%未満であれば良いが、25%超〜75%とすることが好ましく、50%〜75%とすることがより好ましく、50%程度とすることが最も好ましいことが明らかとなった。
(実施例4)
市販の個体および本願発明者等が仔魚から育成したハマクマノミ個体を用意し、雌雄1ペアごとにイソギンチャクを収容した水量270Lの循環濾過式水槽で飼育した。水温を27℃に設定して、アサリや配合飼料を与えて飼育したところ、親魚は飼育槽の底および岩の表面に産卵し、産卵から8〜9日後の消灯後に孵化を開始した。孵化仔魚は飼育槽内に設置した仔魚採取ネットに水流により集めて、翌朝(孵化から12時間後)ビニルチューブで採取し、実験に用いた。
500mlの飼育水を入れたプラスチック製のジョッキを2個用意し、飼育水を(a)通常海水(塩分濃度35‰)及び(b)海水濃度50%(塩分濃度18‰)として、(a)にはハマクマノミの孵化直後の仔魚を15尾、(b)にはハマクマノミの孵化直後の仔魚を14尾収容した。尚、通常海水として天然海水を用い、これを純水で希釈することにより(b)の飼育水を得た。
実施例1と同様の飼育条件で14日間の飼育を行い、上記2種類の飼育水について生残率を比較した。図8に比較結果を示す。図8中の●のプロットが通常海水での孵化仔魚の生残率の経時変化を示し、◆のプロットが海水濃度50%での孵化仔魚の生残率の経時変化を示す。
図8に示される結果から、飼育水を海水濃度50%とした場合には、通常海水を飼育水として用いた場合と比較して有意に生残率が向上することが確認された。したがって、カクレクマノミだけでなく、ハマクマノミに対しても本発明の生残率の向上効果が得られることが明らかとなった。また、カクレクマノミやハマクマノミ以外のクマノミ類、例えば、ハナビラクマノミ、トウアカクマノミ、セジロクマノミ、クマノミ、シロミスジ、さらには外産種のペルクラ、スパインチーク、インドトマトなどのクマノミ類についても、上記結果が当て嵌まらないとの積極的な理由が存在しないことから、これらのクマノミ類についても、飼育水の海水濃度を上記濃度とすることで、通常海水と比較して飛躍的に高い生残率が得られるものと推定される。
(実施例5)
飼育水の塩分濃度の調整期間が生残率に与える影響について調査した。実験方法の概略について図9に示す。500mlの飼育水を入れたプラスチック製のジョッキを20個用意し、カクレクマノミの孵化直後の仔魚を各ジョッキに15尾ずつ収容した。飼育条件は、(a)通常海水で14日間飼育を対照区とし、(b)海水濃度50%の飼育水で2日間飼育した後、12日間通常海水で飼育、(c)海水濃度50%の飼育水で4日間飼育した後、10日間通常海水で飼育、(d)海水濃度50%の飼育水で8日間飼育した後、6日間通常海水で飼育、(e)海水濃度50%の飼育水で14日間飼育し、14日後の生残率と体重を調査した。尚、同じ飼育水あたり4グループ飼育した。また、(a)と(e)については、14日目以降も飼育を継続し、30日後における生残率と体重を調査した。尚、海水濃度50%の飼育水による飼育は、孵化から12時間後に開始した。この理由は、孵化が起こる時間が夜間の消灯後であり、仔魚の採取時に親魚に刺激を与える可能性があったからである。
飼育水以外の飼育条件については実施例1と同様の飼育条件として飼育を行った。飼育実験終了後(14日後、30日後)に生残したカクレクマノミの仔魚の生残率及び体重を調査した結果を表5に示す。表5中において、生残率並びに体重は平均値±標準偏差で示している。また、(a)と(e)について、14日後の体重は、体重の計測により稚魚が死亡してしまうことにより、30日後の正確な生残率が得られなくなることから、実施例3により得られた結果を引用した。
表5の(b)に示されるように、海水濃度50%の飼育水で2日間飼育した後、12日間通常海水で飼育した場合、(a)の通常海水で14日間飼育と比較して生残率が向上することが確認された。また、表5の(c)に示されるように、海水濃度50%の飼育水で4日間飼育した後、10日間通常海水で飼育した場合、(a)の通常海水で14日間飼育と比較して生残率が飛躍的に向上することが確認された。尚、表5の(d)、(e)については、(c)の生残率と比較してほとんど差が見られなかった。また、(e)について、海水濃度50%の飼育水で30日間飼育した場合であっても、(c)の生残率と比較してほとんど差が見られなかった。したがって、低塩分濃度の飼育水を用いた飼育期間は、2日間とすることで生残率向上の効果が見られ、4日間とすることで生残率向上の効果が飛躍的に高まることが明らかとなった。また、低塩分濃度の飼育水を用いた飼育期間を6日間、8日間、14日間、30日間とした場合、低塩分濃度の飼育水を用いた飼育期間を4日間とした場合の生残率とほとんど差が見られなかった。
次に、体重について検討すると、14日後の体重については、(a)〜(e)間で有意差が見られなかったが、30日後の体重については、(a)と比較して(e)の方が体重が低いことが確認された。この結果から、低塩分濃度の飼育水を用いた飼育期間を30日とすると、飼育水を全期間通常海水とした場合と比較して体重が低くなる可能性があることが明らかになり、低塩分濃度の飼育水を用いた飼育期間は長くても14日間、即ち、初期生活段階のみで行うことが好適であることが明らかとなった。
ここで、本実施例においては、孵化から12時間経過時に飼育水の塩分濃度の調整を開始して生残率の飛躍的な向上が見られたことから、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度の調整を開始すれば良いということが確認された。しかしながら、孵化から12時間以内ではなく、孵化から36時間以内に飼育水の塩分濃度を調整してもよい。即ち、実施例3では、孵化から36時間経過時(飼育期間1日目)では通常海水を用いた場合であっても大幅な生残率の低下は見られていない。一方、60時間経過時(飼育期間2日目)では通常海水を用いた場合には生残率が大幅に低下してしまう。したがって、飼育水の塩分濃度の調整は孵化から36時間以内に行えばよく、12時間以内に行うことが好ましいと言える。カクレクマノミの孵化は夜間の消灯後に起こるが、本実施例の結果から、孵化直後である夜間の消灯後に飼育水の塩分濃度を調整しなくても、孵化から36時間以内、好ましくは12時間以内に飼育水の塩分濃度を調整すれば生残率向上の効果は得られるので、夜間の消灯後に塩分濃度を調整するといった手間がかからない。
以上の結果から、少なくとも孵化から36時間以内、好ましくは12時間以内に飼育水の塩分濃度の調整を開始し、この塩分濃度を少なくとも2日間、好ましくは4日間維持することで、初期生活段階におけるカクレクマノミの生残率が飛躍的に向上することが明らかとなった。また、海水濃度50%で30日間飼育した場合、通常海水で飼育した場合と比較して体重の低減が見られたことから、飼育水の塩分濃度の調整は、14日間、即ち、カクレクマノミの初期生活段階の期間のみで行うことが好ましいことがわかった。また、カクレクマノミ以外のクマノミ類、例えば、ハマクマノミ、ハナビラクマノミ、トオアカクマノミ、セジロクマノミなどのクマノミ類についても、上記結果が当て嵌まらないとの積極的な理由が存在しないことから、これらのクマノミ類についても、上記条件を適用することで、飛躍的に高い生残率が得られるものと推定される。
カクレクマノミの通常個体を示す図である。 カクレクマノミの体色変異個体の一例を示す図である。 カクレクマノミの体色変異個体の他の例を示す図である。 体色変異水生生物作出装置の一実施形態を示す構成図である。 体色変異水生生物作出装置の沈殿槽の側面概略図である。 体色変異水生生物作出装置の沈殿槽の横断面概略図である。 塩分濃度を各種調整した飼育水中でのカクレクマノミの初期生活段階の生残率の経時変化を示すグラフである。 塩分濃度を各種調整した飼育水中でのハマクマノミの初期生活段階の生残率の経時変化を示すグラフである。 飼育水の塩分濃度の調整期間が生残率に与える影響について調査した実験方法の概略を示す図である。

Claims (2)

  1. 飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整して水生生物を飼育し、前記水生生物の体色を変異させることを特徴とする体色変異水生生物の作出方法。
  2. 前記水生生物がクマノミ類であり、孵化から12時間以内に飼育水の塩分濃度を35‰未満に調整し、この塩分濃度を少なくとも6日間維持する請求項1に記載の体色変異水生生物の作出方法。
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